Contract
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32 消費貸借
(1)成立要件(587 条の 2)
要物契約たる消費貸借を原則としつつ、諾成契約である消費貸借が併存する形となり、後者は書面又は電磁的記録による合意を成立要件とすることになった。
諾成契約である消費貸借の場合、借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまでであれば、契約を解除することができる。この場合において、貸主がその契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し損害賠償請求をすることができる。また、諾成契約たる消費貸借において、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に、当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。これに合わせて、消費貸借の予約と破産手続開始決定に関する規定は削除された。
(2)利息(589 条)
改正法では、以下の2点を明文化した。
① 貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。
② 特約があるときは、貸主は借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる。
(3)期限前の弁済
改正法では、以下の2点を明文化した。
① 返還の時期の定めの有無にかかわらず、期限前弁済ができる。
② 当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は借主がその期限前の弁済をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し損害賠償の請求をすることができる。
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33 賃貸借
(1)不動産賃貸借の対抗力、賃貸人の地位の移転
① 不動産の賃貸借は、これを登記したときに物権を取得した第三者に対抗できる。
② ①の場合、借地借家法その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、賃貸人の地位は譲受人に移転する。
③ ②の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない。なお、譲渡人と譲受人の間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は譲受人に移転する(605 条の 2 第 2 項) ← ここだけ変わった
(2)敷金(622 条の 2)
改正法では、以下の 3 点が明文化された。
① 敷金とは、いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生じる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭、をいう。
② 敷金返還の発生要件は、ⅰ賃貸借が終了し、かつ目的物が返還された時、
ⅱ賃借人が適法に賃借権を譲渡した時、である。
③ 敷金の充当について、賃貸目的物の返還時または賃借権の適法な譲渡時において、賃貸借に基づく賃借人の賃貸人に対する金銭債務が残存するときは、敷金はその債務の弁済に当然に充当される。なお、敷金返還債務が具体的に生ずる前であっても、賃貸人の意思表示による敷金の充当が認められる。
(3)転貸に関する規定
改正法は、適法な転貸借がなされた場合における賃貸人と転借人との法律関係について明文化した。
① 転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して、貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う (613 条 1 項)。この場合においては、賃料の前払いをもって賃貸人に対抗することができない。
② ①の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
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③ 適法な転貸借の場合には、賃貸人は賃借人との間の合意により賃貸借を解除したことをもって転借人に対抗することはできない。
(4)原状回復に関する規定(622 条)
①賃借人の収去義務を明文化した。
ⅰ 誰の所有物かにかかわらず、賃借人が賃借物を受け取った後にこれに付属させた物については賃借人が収去義務を負う。
ⅱ 付属物を分離することができない場合や、付属物の分離に過分の費用を要する場合については、賃借人は収去義務を負わない。
②原状回復義務の範囲について明文化した。
ⅰ 通常損耗→負わない
ⅱ その他の損傷 → 賃借人に帰責事由がなければ負わない
(5)その他の改正
①契約期間の上限 (604 条) (前)20 年 → (後)50 年
②目的物の一部が使用収益できなくなった場合(611 条) (前)減額請求できる → (後)当然に減額される
34 使用貸借
(1)使用貸借の成立
使用貸借も諾成契約とされ、それに伴って使用貸借の合意の拘束力を緩和する方策として、借主が目的物を受け取るまでの間、貸主に解除権を付与した(593条の 2)。
(2)使用貸借の終了事由
① 使用貸借の期間を定めた場合において、期間が満了したとき