この規則が適用される場合には、当事者、仲裁廷及びJCAA並びにこれらの間の関係は、この規則のほか、当事者間の別段の合意により規律される。ただし、第3編及び第4 編についてはこの限りではない。 当事者が仲裁人を選任する際の参考資料として、当事者の要請があるときは、JCAAは仲裁人候補者名簿を提供する。当事者は、当該名簿 に掲載されていない者であっても仲裁人に選任することができる。 仲裁人、JCAA及びJCAAの役職員は、故意又は重過失による場合を除き、仲裁手続に関する作為又は不作為について責任を負わない。
インタラクティヴ仲裁規則
2021年7月1日 改正・施行
第1編 仲裁手続
第1章 総則
第1条(目的)
この規則は、当事者が紛争をこの規則により解決する旨の合意をした場合に行われる仲裁に係る手続その他の必要な事項を定める。
第2条(定義)
1 この規則において「JCAA」とは、一般社団法人日本商事仲裁協会をいう。
2 この規則において「当事者」とは、申立人、被申立人又はその双方をいう。
3 この規則において、「書面」とは、電磁的記録を含むものとする。電磁的記録とは、電子的方式、磁気的方式その他の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。
4 この規則において、「商事仲裁規則」とは、JCAAの商事仲裁規則をいう。
5 この規則において、「UNCITRAL仲裁規則」とは、JCAAのUNCITRAL仲裁管理規則によって補充されるUNCITRAL仲裁規則をいう。
第3条(この規則の適用)
1 この規則は、仲裁合意においてこの規則による仲裁を行う旨の合意がある場合に適用される。
2 前項の規定にかかわらず、JCAAが確認又は選任した仲裁人が1人もいない段階において、すべての当事者が商事仲裁規則又はUNCITRAL仲裁規則による仲裁を行うことを書面により合意し、JCAAに通知した場合(申立人が申立書において商事仲裁規則又はUNCITRAL仲裁規則による仲裁を行うことを求める旨記載し、被申立人が書面によりこれに同意した場合を含む。)には、商事仲裁規則又はUNCITRAL仲裁規則が適用される。この場合、その合意の時までにインタラクティヴ仲裁規則に基づいて行われた手続はその効力を失わない。
第4条(第1編と第2編から第4編までとの関係)
インタラクティヴ仲裁規則による旨の合意は、この規則の第2編から第4編までの規則を含むものとみなす。
第5条(別段の合意)
この規則が適用される場合には、当事者、仲裁廷及びJCAA並びにこれらの間の関係は、この規則のほか、当事者間の別段の合意により規律される。ただし、第3編及び第4編についてはこの限りではない。
第6条(この規則の解釈)
1 この規則のxxは日本語及び英語とする。各言語の文言の意味するところに違いがあるとの疑義がある場合には、日本語の文言の意味するところが優先する。
2 この規則の解釈について争いがある場合は、JCAAの解釈に従うものとする。ただし、第1編及び第2編の規定について仲裁廷が行った解釈は、その仲裁事件においては、JCAAの解釈に優先する。
第7条(通知等)
1 この規則により行う通知、提出及び送付(以下「通知等」と総称する。)は、別段の定めのある場合を除き、クーリエ便、書留郵便、電子メール、ファクシミリその他の合理的な方法によって行う。
2 通知等の宛先は、通知等の相手方の住所、居所、営業所、事務所(通知の相手方が法人その他の団体である場合には、その代表者の住所又は居所を含む。)、当該相手方が通常使用する電子メールアドレス(ただし、当該相手方が指定したものがあるときは、その電子メールアドレスとする。)、ファクシミリ番号又は当該相手方が指定した宛先(以下「通知宛先」と総称する。)とする。
3 通知等は、通知等の相手方がこれを受領することによって効力を生ずる。
4 通知等の相手方がその受領を拒絶したときは、その発送の日から3日を経過した日(受領を拒絶した日が判明している場合には、その日)に受領されたものとみなす。
5 当事者(通知等の相手方を除く。)が相当の調査をしたにもかかわらずその相手方の通知宛先を知ることができないときは、通知等の相手方の最後に知れたる通知宛先に対して発送することにより通知等をすることができる。この場合において当該通知等は、発送の日から3日を経過した日に受領されたものとみなす。
6 前項の規定により通知等が相手方に受領されたものとみなされた場合には、同人に対して行うそれ以降の通知等は、同項に定める方法によって行うことができる。
7 当事者は、移転その他の事情により、通知宛先に変更が生じた場合には、遅滞なく変更後の通知宛先を指定し、JCAA、仲裁人及び他の当事者に通知しなければならない。
第8条(事務局)
1 この規則による仲裁の手続管理は、JCAAが行う。
2 JCAAは、仲裁x又は当事者の要請があるときは、仲裁手続を遂行するために必要な通訳者、速記者及び審問室を手配する。
第9条(仲裁人候補者名簿)
当事者が仲裁人を選任する際の参考資料として、当事者の要請があるときは、JCAAは仲裁人候補者名簿を提供する。当事者は、当該名簿に掲載されていない者であっても仲裁人に選任することができる。
第10条(代理及び補佐)
当事者は、この規則による手続において、自己の選択する者に代理又は補佐をさせることができる。
第11条(言語)
1 仲裁xは、当事者間に別段の合意がない限り、遅滞なく仲裁手続における言語を決定しなければならない。仲裁xは、言語を決定するに当り、仲裁合意を規定する契約書の言語、通訳及び翻訳の要否並びにその費用その他の関連する事情を考慮しなければならない。
2 仲裁xは、すべての証拠書類について、それを提出する当事者に対し、仲裁手続における言語による翻訳文を添付することを求めることができる。
3 JCAAと当事者又は仲裁人との通信は、日本語又は英語により行うものとする。
第12条(手続の期間)
1 この規則における期間の計算においては、初日を算入しない。
2 この規則における期間の計算においては、非営業日及び祝日を算入する。ただし、当該期間の末日が通知等の相手方が所在する地における非営業日又は祝日であるときには、期間は、その翌営業日に満了する。
3 当事者は、書面による合意により、第15条第2項、第18条第1項、第19条第1項、第20条及び第76条第7項に定める期間並びに仲裁x又はJCAAがそれぞれ第12条第4項又は第12条第5項により定めた又は変更した期間を除き、この規則に規定する期間を変更することができる。この場合は、当事者は、遅滞なくJCAA及び仲裁廷にその旨を通知しなければならない。
4 仲裁xは、必要と認めるときは、第61条第4項、第89条第1項及び第2項に定める期間及びJCAAが第12条第5項により定めた又は変更した期間を除き、この規則に規定する期間(仲裁廷が定める期間を含む)を変更することができる。この場合には、仲裁廷は、遅滞なくJCAA及び当事者にその旨を通知しなければならない。
5 JCAAは、必要と認めるときは、この規則による手続に関する期間を定め、又は変更することができる。
第13条(免責)
仲裁人、JCAA及びJCAAの役職員は、故意又は重過失による場合を除き、仲裁手続に関する作為又は不作為について責任を負わない。
第2章 仲裁手続の開始
第14条(仲裁申立て)
1 仲裁申立てをするには、申立人は、次に掲げる事項を記載した書面(以下「仲裁申立書」という。)をJCAAに提出しなければならない。
(1)紛争をこの規則による仲裁に付託すること
(2)援用する仲裁合意(仲裁人の数、仲裁人の選任方法、仲裁地及び仲裁手続に用いる言語の全部又は一部につき当事者間に合意がある場合には、かかる合意を含む。)
(3)当事者の氏名(当事者が法人その他の団体である場合には、その名称及び代表者の氏名)、住所及び判明しているその他の連絡先(当事者が個人の場合における勤務先住所等の書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(4)代理人を定める場合、その氏名、住所及びその他の連絡先(書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(5)請求の趣旨
(6)紛争の概要
(7)請求を根拠づける理由及び証明方法
2 仲裁申立書には、次の各号に定める事項を記載することができる。
(1)仲裁人を3人とする旨の事前の合意がある場合には、申立人が選任する仲裁人の氏名、住所及びその他の連絡先(書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(2)仲裁人の数、仲裁人の選任方法、仲裁地及び仲裁手続に用いる言語の全部又は一部に関する申立人の意見
(3)本案に適用すべき準拠法に関する申立人の意見
3 申立人は、仲裁申立書とともに、第1項(2)に定める仲裁合意を含む仲裁条項又は仲裁合意書の写しをJCAAに提出しなければならない。
4 申立人は、代理人によって仲裁手続を行う場合には、仲裁申立書とともに、委任状をJCAAに提出しなければならない。
5 申立人は、仲裁申立ての際、第4編に定める管理料金を納付しなければならない。JCAAは、申立人が管理料金を納付しないときは、仲裁申立てがなかったものとみなす。
6 仲裁手続は、仲裁申立書がJCAAに提出された日に開始したものとみなす。
第15条(請求の併合)
1 以下の各号に掲げる場合には、複数の請求について、単一の申立てによって仲裁申立てをすること(以下「請求の併合」という。)ができる。
(1)同一の手続によることにつき、当事者全員の書面による合意がある場合
(2)申立てに係る請求のすべてが同一の仲裁合意に基づく場合
(3)同一の当事者間において、(a)複数の請求が同一又は同種の法律問題又は事実問題を含み、(b)いずれの請求についてもこの規則による仲裁に付する旨の合意があって、(c)仲裁地、仲裁人の数、言語等の合意内容に照らして、同一の手続で審理することに支障がないと認められる場合
2 請求の併合に対する異議は、被申立人が仲裁申立ての通知を受領した日から4週間以内に、書面により述べなければならない。この異議については、仲裁xが第47条の規定に従って決定する。
第16条(仲裁申立ての通知)
1 JCAAは、第14条第1項から第5項までの規定(第2項を除く。)に適合した仲裁申立てがされたことを確認した後、遅滞なく、被申立人に対し、仲裁申立てがあったことを通知する。この通知は、仲裁申立書を添付して行うものとする。
2 JCAAは、仲裁人を選任し、又は仲裁人の選任を確認した後、遅滞なく、当該仲裁人に対し、仲裁申立書を送付する。
第17条(仲裁廷構成のための手続の続行)
JCAAは、被申立人が仲裁合意の存否若しくは効力又は請求の併合について異議を述べた場合であっても、仲裁廷構成のための手続を進めることができる。この場合において、仲裁合意の存否若しくは効力又は請求の併合についての異議の当否は、仲裁xの成立後、第46条第1項又は第47条第1項の規定に従い仲裁xが判断する。
第18条(答弁)
1 被申立人は、仲裁申立ての通知を受領した日から4週間以内に、次に掲げる事項を記載した書面(以下「答弁書」という。)をJCAAに提出しなければならない。
(1)当事者の氏名(当事者が法人その他の団体である場合には、その名称及び代表者の氏名)、住所及び被申立人のその他の連絡先(書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(2)代理人を定める場合、その氏名、住所及びその他の連絡先(書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(3)答弁の趣旨
(4)紛争の概要
(5)答弁の理由及び証明方法
2 答弁書には、次の各号に定める事項を記載することができる。
(1)仲裁人を3人とする旨の事前の合意がある場合に、被申立人が選任する仲裁人の氏名、住所及びその他の連絡先(書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(2)仲裁人の数、仲裁人の選任方法、仲裁地及び仲裁手続に用いる言語の全部又は一部に関する被申立人の意見
(3)本案に適用すべき準拠法に関する被申立人の意見
3 被申立人は、代理人によって仲裁手続を行う場合には、委任状をJCAAに提出しなければならない。
4 答弁書の提出があった場合には、JCAAは、遅滞なく、当事者、及び仲裁人が選任されているときは仲裁人にその写しを送付する。
第19条(反対請求の申立て)
1 被申立人は、以下の各号に掲げる場合には、仲裁申立ての通知を受領した日から4週間以内に限り、反対請求の申立てをすることができる。
(1)当事者全員の書面による合意がある場合
(2)申立人の請求と反対請求が同一の仲裁合意に基づくものである場合
(3)(a)申立人の請求と反対請求が同一又は同種の法律問題又は事実問題を含み、(b)いずれの請求についてもこの規則による仲裁に付する旨の合意があって、(c)仲裁地、仲裁人の数、言語等の合意内容に照らして、同一の手続で審理することに支障がないと認められる場合
2 前項の反対請求の申立てについては、第14条、第15条第2項、第16条、第18条及び第23条の規定を準用する。
第20条(相殺の抗弁)
被申立人による相殺の抗弁の提出は、仲裁申立ての通知を受領した日から4週間以内に限り、書面により、することができる。
第21条(申立ての変更)
1 申立人(反対請求の申立人を含む。)は、以下の各号に掲げる場合には、申立ての変更をする旨を記載した書面をJCAAに提出して、その申立ての変更をすることができる。
(1)当事者全員の書面による合意がある場合
(2)変更前の請求と変更後の請求が同一の仲裁合意に基づくものである場合
(3)(a)変更前の請求と変更後の請求が同一又は同種の法律問題又は事実問題を含み、(b)いずれの請求についてもこの規則による仲裁に付する旨の合意があって、(c)仲裁地、仲裁人の数、言語等の合意内容に照らして、同一の手続で審理することに支障がないと認められる場合
2 申立人(反対請求の申立人を含む。)は、仲裁xが成立した後に申立ての変更をする場合は、仲裁xの許可を得なければならない。仲裁xは、許可をするについて予め相手方当事者の意見を聴かなければならない。
3 仲裁xは、仲裁手続の進行の著しい遅延、相手方当事者の不利益その他の事情に照らしてその申立ての変更を許可することが不適当と認めるときは、前項の申立ての変更について不許可の決定をすることができる。仲裁xは、遅滞なく、許可又は不許可の決定を当事者に通知する。
4 申立ての変更については第14条、第15条第2項及び第16条の規定を準用する。
5 変更された申立てに対する答弁、反対請求又は相殺の抗弁については第18条、第19条又は第20条の規定を準用する。
第22条(提出部数)
1 第14条第1項、第15条第2項、第18条第1項(これらの規定を第19条第2項、前条第5項及び第57条第6項において準用する場合を含む。)、第20条及び前条第1項の規定により当事者が提出する書面の部数は、仲裁人の数(これが定まっていないときは3とする。)と相手方当事者の数に1を加えた数とする。ただし、委任状は1部で足りる。
2 前項の規定は、電子メール、ファクシミリその他の電子通信手段によって提出する場合には適用しない。ただし、JCAA又は仲裁xが当事者に対して一定部数の紙媒体の書面の提出を求めた場合には、当該部数を提出しなければならない。
第23条(仲裁申立てに係る請求の取下げ)
1 仲裁xが成立する前においては、申立人は、JCAAに対し、仲裁申立てに係る請求の一部又は全部を取り下げる旨を記載した書面(以下「申立取下書」という。)を提出することにより仲裁申立てに係る請求の一部又は全部を取り下げることができる。JCAAは、被申立人に、これを通知する。
2 仲裁xが成立した後においては、申立人は、仲裁xに対し、申立取下書を提出し、かつ仲裁xの許可を得て、仲裁申立てに係る請求の一部又は全部を取り下げることができる。
3 前項の許可申立てがあった場合には、仲裁xは、被申立人の意見を聴いた上で、被申立人が取下げに遅滞なく異議を述べ、かつ、仲裁手続に付された紛争の解決について被申立人が正当な利益を有すると仲裁xが認める場合を除き、仲裁申立ての一部又は全部の取下げを許可しなければならない。
4 前項の規定により仲裁申立てに係る請求の全部の取下げを許可した場合には、仲裁xは、仲裁手続の終了決定をしなければならない。
第3章 仲裁人及び仲裁x
第24条(仲裁人のxx・独立)
1 xxかつ独立でない者は仲裁人に就任してはならず、仲裁人は、その在任中はxxかつ独立であり続けなければならない。
2 仲裁人への就任の依頼を受けた者は、当事者の目から見て自己のxx性又は独立性に疑いを生じさせるおそれがある事実について合理的な調査を行わなければならない。その結果、そのような事実が判明した場合には、当該依頼を受けた者は、仲裁人への就任を辞退するか、又はそのような事実のすべてを依頼をした者に対して書面により開示し、その者に依頼の撤回をするか否かの判断を委ねなければならない。
3 仲裁人に選任された者は、書面(以下「xx独立表明書」という。)により、遅滞なく、当事者及びJCAAに対し、自己のxx性若しくは独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実の全部を開示し、又はそれがない事実を表明しなければならない。
4 仲裁人は、仲裁手続の進行中、当事者の目から見て自己のxx性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実(すでに開示したものを除く。)について合理的な調査を行わなければならない。その結果、そのような事実が判明した場合には、当該仲裁人は、書面により、遅滞なく、当事者及びJCAAに対し、これを開示しなければならない。仲裁人就任時に、その時点以降にかかる事実が生ずる可能性がある旨の一般的な開示を行うのみでは、この開示義務を履行したことにはならない。
第25条(仲裁人の選任及び確認)
1 仲裁人は、当事者間の合意に従って選任される。
2 当事者間に前項に定める合意がない場合には、次条から第30条までの規定に従って選任される。
3 当事者が仲裁人を選任する場合及び仲裁人が第三仲裁人を選任する場合における選任の効力は、JCAAが選任を確認することによって生ずる。
4 前項に定める確認を受けるため、仲裁人を選任した者は、JCAAに対し、次に定める文書を提出しなければならない。
(a)仲裁人選任通知書(確認を受けたい者の氏名、住所その他の連絡先(書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)及び職業を記載するものとする。)
(b)仲裁人就任承諾書
(c) xx独立表明書
5 JCAAは、前項に定める文書の写しを当事者及び仲裁人に遅滞なく送付する。
6 JCAAは、仲裁人の選任が不適当であることが明らかであると認める場合には、当該仲裁人を選任した者の意見を聴いた上で、理由を示すことなく、当該仲裁人の選任の確認をしないことができる。
7 JCAAは、仲裁人の選任を確認したときは、遅滞なく、当事者及び仲裁人にその旨を通知する。
8 JCAAが仲裁人の選任を確認しなかった場合には、当該仲裁人を選任した当事者又は仲裁人は、JCAAが定める期限までに新たな仲裁人を選任しなければならない。
第26条(仲裁人の数)
1 仲裁人の数は、原則として1人又は3人とする。
2 当事者が、被申立人が仲裁申立ての通知を受領した日から4週間以内に、仲裁人の数に関する合意をJCAAに書面により通知しないときは、仲裁人は1人とする。
3 いずれの当事者も、被申立人が仲裁申立ての通知を受領した日から4週間以内に、JCAAに対し、仲裁人の数を3人とすることを書面により求めることができる。この場合において、JCAAが、紛争の金額、事件の難易その他の事情を考慮し、これを適当と認めたときは、仲裁人は3人とする。
4 JCAAは、遅滞なく、確定した仲裁人の数を当事者に通知する。
第27条(仲裁人の選任-仲裁人が1人の場合)
1 仲裁人を1人とする合意がある場合には、当事者は、被申立人が仲裁申立ての通知を受領した日から2週間以内に、仲裁人を合意により選任し、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁人の選任通知をしなければならない。
2 前条第2項の規定により仲裁人が1人とされた場合には、当事者は、前条第1項に定める通知期限から2週間以内に、合意により仲裁人を選任し、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁人の選任通知をしなければならない。
3 当事者が前二項の期間内に、第25条第4項の規定に従いJCAAに対して仲裁人の選任通知をしない場合には、JCAAがその仲裁人を選任する。
4 前項の規定によりJCAAが仲裁人を選任する場合において、当事者がいずれの当事者の国籍とも異なる国籍を有する仲裁人を選任することを求めたときは、JCAAはこれを尊重するものとする。
第28条(仲裁人の選任-仲裁人が3人の場合)
1 仲裁人を3人とする合意がある場合には、当事者は、被申立人が仲裁申立ての通知を受領した日から3週間以内に、それぞれ1人の仲裁人を選任し、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁人の選任通知をしなければならない。
2 第26条第3項の規定により仲裁人が3人とされた場合には、申立人及び被申立人は、JCAAによるその旨の通知を受領した日から3週間以内に、それぞれ1人の仲裁人を選任し、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁人の選任通知をしなければならない。
3 当事者が前二項の期間内に、第25条第4項の規定に従いJCAAに対して仲裁人の選任通知をしない場合には、JCAAがその仲裁人を選任する。
4 前三項の規定により選任された2人の仲裁人は、当該2人の仲裁人のJCAAによる確認又は選任通知を受領した日から3週間以内に、第三仲裁人を合意により選任し、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁人の選任通知をしなければならない。
5 当該2人の仲裁人は、すべての当事者の書面による合意がある場合に限り、第三仲裁人の選任について、自らを選任した当事者から個別に意見を聴くことができる。一方の当事者が仲裁人を選任しない場合には、当事者に選任された仲裁人は第三仲裁人の選任について当該当事者の意見を個別に聴くことはできない。
6 仲裁人が第28条第4項の期間内に、第25条第4項の規定に従いJCAAに対して第三仲裁人の選任通知をしない場合には、JCAAが第三仲裁人を選任する。
7 前項の規定によりJCAAが仲裁人を選任する場合には、前条第4項の規定を準用する。
第29条(多数当事者仲裁において仲裁人が3人の場合)
1 仲裁人が3人の場合であって、申立人又は被申立人が複数のときは、仲裁人は、本条の規定に従い選任される。
2 当事者の合意により仲裁人が3人とされた場合には、申立人(申立人が複数の場合を含む。以下本条において同じ。)及び被申立人(被申立人が複数の場合を含む。以下本条において同じ。)は、被申立人が仲裁申立ての通知を受領した日から3週間以内に、それぞれ1人の仲裁人を選任し、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁人の選任通知をしなければならない。
3 第26条第3項の規定により仲裁人が3人とされた場合には、申立人及び被申立人は、JCAAによるその旨の通知を受領した日から3週間以内に、それぞれ1人の仲裁人を選任し、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁人の選任通知をしなければならない。
4 前二項の規定により申立人及び被申立人がそれぞれ選任した2人の仲裁人は、当該2人の仲裁人のJCAAによる確認通知を受領した日から3週間以内に、第三仲裁人を合意により選任し、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁人の選任通知をしなければならない。
5 前項の規定による第三仲裁人の選任にあたっては、第28条第5項の規定を準用する。
6 仲裁人が第29条第4項の期間内に、第25条第4項の規定に従い、仲裁人の選任通知をしない場合には、JCAAがその仲裁人を選任する。
7 前項の規定によりJCAAが仲裁人を選任する場合には、第27条第4項の規定を準用する。
8 申立人又は被申立人のいずれか又はその双方が、第2項又は第3項の期間内に、第25条第4項の規定に従い仲裁人の選任通知をJCAAにしない場合には、JCAAが3人の仲裁人をすべて選任する。この場合において、いずれの当事者も異議を述べないときは、JCAAは、申立人又は被申立人のいずれかがすでに選任した仲裁人を、3人の仲裁人の1人として選任することができる。
第30条(JCAAが仲裁人の選任をした場合の通知)
JCAAが仲裁人を選任したときは、遅滞なく、当事者及び仲裁人に対し、第25条第4項(a)に定める文書を送付する。この場合において、JCAAは、同項 (b)及び(c)に定める文書の写しを添付する。
第31条(仲裁廷)
1 この規則による仲裁は、第25条から第30条まで、第36条及び第57条の規定により選任された1人又は3人の仲裁人によって構成される仲裁廷によって行う。
2 仲裁廷は、すべての仲裁人がJCAAにより確認又は選任された時に成立する。
3 仲裁人の数が3人の場合は、第三仲裁人を仲裁廷の長とし、仲裁人による別段の合意がない限り、仲裁廷の長は以下の職務を行う。
(1) 審問及び仲裁廷の合議を主宰する。
(2) 仲裁廷を代表して当事者及びJCAAに対し連絡を行う。
(3) 仲裁判断その他仲裁廷が作成する文書の最初の案を作成する。
第32条(仲裁廷の意思決定)
1 仲裁人の数が複数である場合には、仲裁廷の意思は、仲裁判断を含め、仲裁人の過半数をもって決定する。
2 仲裁廷の意思の決定について仲裁人の過半数で決することができないときは、仲裁廷の長の決するところによる。
3 仲裁手続における手続の進行に係る事項は、すべての当事者の合意又は他のすべての仲裁人の委任があるときは、仲裁廷の長である仲裁人が決することができる。
第33条(仲裁人による補助者の利用)
1 仲裁人は、仲裁判断を含む仲裁廷の決定に実質的な影響を与える作業を第三者に委ねてはならない。
2 単独仲裁人又は仲裁廷の長は、前項の定めに反しない限り、仲裁人の任務遂行に係る補助をさせる第三者(以下「仲裁人補助者」という。)を用いることができる。ただし、この場合には、仲裁人補助者に関する情報を示した上で、その用いようとする作業内容について説明し、書面によりすべての当事者の了解を得なければならない。
3 仲裁人補助者については、第24条及び第42条第2項の規定を準用する。
4 仲裁人補助者の報酬及び経費は、これを用いる単独仲裁人又は仲裁廷の長の負担とする。
第34条(仲裁人の忌避)
1 当事者は、仲裁人の公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるときは、その仲裁人を忌避することができる。
2 仲裁人を選任し、又は仲裁人の選任について推薦その他これに類する関与をした当事者は、選任後に知った事由を忌避の原因とする場合に限り、その仲裁人を忌避することができる。
3 仲裁人の忌避の申立てをしようとする当事者は、JCAAが仲裁人の選任を確認した旨の通知(JCAAが仲裁人を選任した場合は、仲裁人選任通知書)を受領した日又は第1項に定める事由のあることを知った日のいずれか遅い日から2週間以内に、忌避の原因を記載した書面(以下「忌避申立書」という。)をJCAAに提出しなければならない。
4 忌避申立書の提出があった場合には、JCAAは、遅滞なく、他の当事者及び当該仲裁人に対し、当該忌避申立書の写しを添えて、その旨を通知する。
5 JCAAは、他の当事者及び当該仲裁人の意見を聴いた上で、理由を示すことなく、忌避の当否について決定する。
第35条(仲裁人の解任)
仲裁人が任務を遂行せず若しくは任務の遂行を不当に遅滞させたとき、又は法律上若しくは事実上仲裁人が任務を遂行することができなくなったときは、JCAAは、当事者の書面による申立て又は職権により、当事者及び当該仲裁人の意見を聴いた上で、その仲裁人を解任することができる。
第36条(仲裁人の補充)
1 仲裁人の忌避、解任、辞任又は死亡により、仲裁手続終了前に仲裁人が欠けたときは、JCAAは、遅滞なく、当事者及び他の仲裁人に、その旨を通知する。
2 前項の場合において、欠けた仲裁人が当事者又は他の仲裁人によって選任された者であるときは、当事者間に別段の合意がない限り、選任した当事者又は当該他の仲裁人は、前項の通知を受領した日から3週間以内に、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、補充すべき仲裁人(以下「補充仲裁人」という。)の選任を通知しなければならない。当事者又は当該他の仲裁人がこれを行わないときは、JCAAが補充仲裁人を選任する。
3 第1項の場合において、欠けた仲裁人がJCAAによって選任された者であるときは、当事者間に別段の合意がない限り、JCAAが補充仲裁人を選任する。
第37条(審理終結後に仲裁人が欠けた場合)
前条の規定にかかわらず、審理の終結後、仲裁判断前に仲裁人が欠けた場合において、JCAAが、仲裁人及び当事者の意見を聴いて、仲裁人を補充しないことを相当と認めるときは、仲裁廷は、仲裁人を補充することなく仲裁手続を続行し、仲裁判断をすることができる。
第38条(仲裁人を補充した場合の手続)
第36条の規定により仲裁人を補充した場合には、仲裁廷は、当事者の意見を聴いて、すでに行われた手続を再び行うかどうか、及び行う場合にはその程度について決定しなければならない。
第4章 仲裁手続
第1節 審理手続
第39条(仲裁地)
1 仲裁地は、当事者間に別段の合意がない限り、第14条第1項に定める仲裁申立書を申立人が提出したJCAAの事務所の所在地とする。
2 仲裁廷は、当事者間に別段の合意がない限り、適当と認めるいかなる場所においても、仲裁手続を行うことができる。
第40条(審理手続の進行)
1 審問その他の審理手続は、仲裁廷の指揮の下に行う。
2 仲裁廷は、当事者を平等に扱い、当事者が主張、立証及びこれに対する防御を行うに十分な機会を与えなければならない。
3 仲裁廷は、紛争の迅速な解決に努めなければならない。
4 当事者は、審理手続において提出するすべての書面を、仲裁人、相手方当事者及びJCAAに送付するものとする。仲裁廷は、当事者に対して書面による通知等を行う場合には、JCAAにその写しを送付するものとする。
第41条(時機に後れた主張及び証拠申出の却下)
仲裁廷は、時機に後れた主張及び証拠申出を却下することができる。
第42条(非公開・守秘義務)
1 仲裁手続及びその記録は、非公開とする。
2 仲裁人、当事者、その代理人及び補佐人、JCAAの役職員その他の仲裁手続に関係する者は、仲裁事件に関する事実又は仲裁手続を通じて知り得た事実を他に漏らしてはならず、これらに関する見解を述べてはならない。ただし、その開示が法律に基づき又は訴訟手続で要求されている場合その他の正当な理由に基づき行われる場合には、この限りでない。
第43条(仲裁判断までの期間及び審理予定表の作成)
1 仲裁廷は、その成立の日から7.5か月以内に仲裁判断をするよう努めなければならない。
2 仲裁廷は、前項の目標を達成するため、できる限り速やかに、ビデオ会議、書面の交換その他の仲裁廷が定める方法により当事者と協議を行い、必要かつ可能な範囲で、審理手続の予定を書面により作成し(以下「審理予定表」という。)、当事者及びJCAAに送付しなければならない。
3 仲裁廷は、当事者の意見を聴いて、前項の審理予定表を随時変更することができる。
第44条(主張書面及び証拠の提出)
1 当事者は、この規則又は仲裁廷が定める期間内に、法律及び事実に関する主張を記載した書面(以下「主張書面」という。)及び証拠を仲裁廷に提出しなければならない。
2 仲裁廷は、当事者から提出された主張書面及び証拠の受領を確認しなければならない。
第45条(当事者の懈怠)
1 仲裁廷は、一方の当事者がこの規則又は仲裁廷が定める期間内に主張書面(答弁書を含む。)を提出しない場合であっても、当該一方の当事者が他方の当事者の主張を認めたものとして取り扱うことなく、仲裁手続を続行しなければならない。
2 仲裁廷は、一方の当事者が、正当な理由なく、審問期日に出席せず、又は証拠書類を提出しない場合であっても、審理を続行し、又は審理を終結してその時までに収集された証拠に基づいて仲裁判断をすることができる。
第46条(仲裁権限に対する異議申立てについての決定)
1 仲裁廷は、仲裁合意の存否若しくは効力に関する主張についての判断その他の自己の仲裁権限の有無についての判断を示すことができる。
2 仲裁廷は、自己が仲裁権限を有しないと判断する場合には、仲裁手続の終了決定をしなければならない。
第47条(請求の併合に対する異議申立てについての決定)
1 仲裁廷は、請求の併合に対する異議申立てについて判断を示すことができる。
2 仲裁廷は、第15条第1項に定める請求の併合の要件を満たさないと認める場合には、仲裁手続を分離する決定(以下「分離決定」という。)をし、その旨を当事者に通知しなければならない。ただし、第15条第2項に定める期間内に異議がなかった場合には、分離決定をすることができない。
3 分離決定があった場合には、仲裁廷の任務は終了し、分離された各請求について、各別に仲裁手続を行う。ただし、(a)第15条第2項に定める期間内に、異議をとどめなかった被申立人に係る請求及び(b)被申立人が分離決定の通知を受領した日から1週間以内に仲裁廷の任務の続行を求めた請求については、仲裁廷の任務は終了しない。
4 前項の規定により各別に仲裁手続を進める場合には、仲裁申立ての通知を受領した日を基準とする期間の計算においては、被申立人が分離決定の通知を受領した日を基準として計算する。
5 第67条第2項、第4項、第5項及び第6項並びに第69条から第71条までの規定は、分離決定について準用する。
6 前五項の規定は、(a)反対請求の申立てが第19条第1項の要件を満たさないものとされた場合、(b)(i)申立ての変更が第21条第1項の要件を満たさない場合、若しくは(ii)同条第3項の規定により許可されなかった場合、又は(c)(i)手続参加の申立てが第57条第1項の要件を満たさない場合、若しくは(ii)同条第5項の規定により許されなかった場合に準用する。
7 前項の規定にかかわらず、以下の各号に掲げる請求については、仲裁廷の任務は終了しない。
(1) 反対請求の申立て又は申立ての変更の前から係属する請求
(2) 仲裁廷の成立後にされた手続参加の申立ての前から係属する請求
第48条(仲裁廷による当事者の主張整理及び争点の提示)
1 仲裁廷は、手続のできるだけ早い段階で、当事者の請求に関する事実上及び法律上の根拠についての主張を整理し、それを前提として導き出される暫定的な事実上及び法律上の争点とともに、書面により当事者に提示して、期限を定めて、当事者に意見を述べる機会を与えなければならない。
2 当事者は、仲裁廷が定めた期限までに、前項により仲裁廷が提示した当事者の主張の整理及び争点について、同意する部分としない部分とを明らかにして、書面により、意見を述べるものとする。
3 仲裁廷は、前項により当事者が述べた意見を考慮して、当事者の主張の整理及び争点を修正することができる。
4 仲裁廷は、前項の規定により加筆修正された当事者の主張の整理を、そのまま、仲裁判断における当事者の主張の部分の記載とすることができる。
5 前項の規定に関わらず、その後の手続の進行に伴い、当事者の主張の整理について加筆修正が必要であると思料する当事者は、その旨仲裁廷に書面により申し出ることができる。仲裁廷は、時機に後れていることを理由にその申し出を退けない限り、その加筆修正後の当事者の主張の整理を仲裁判断における当事者の主張の部分として採用することができる。
第49条(中間決定)
仲裁廷は、仲裁手続中に生じた争いにつき相当と認めるときは、これを裁定する中間決定をすることができる。この場合には、第67条第2項及び第68条の規定を準用する。ただし、理由の記載は省略することができる。
第50条(審問の要否の決定)
1 仲裁廷は、仲裁手続を、審問を行って進めるか、又は文書その他の資料のみに基づいて進めるかを決定しなければならない。ただし、手続の適当な段階でいずれかの当事者の申立てがあれば、仲裁廷は審問を行わなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、証人尋問を行うか否かについては、第56条第3項及び第4項による。
3 審問を行う場合、仲裁廷は、ビデオ会議その他の方法も選択肢に入れて、適切な方法を選択するものとする。
第51条(審問の予定日時及び場所)
1 審問の予定日時及び場所は、仲裁廷が当事者の意見を聴いた上で決定する。審問が2日以上にわたる場合には、できる限り連続する日に開かなければならない。
2 審問の予定日時及び場所が決定されたときは、仲裁廷は、遅滞なくこれを当事者に通知しなければならない。
3 当事者双方から審問の予定日時の変更の申し出があったときは、その予定日時を変更しなければならない。一方の当事者から審問の予定日時の変更の申し出があったときは、仲裁廷は、やむを得ない事情があると認める場合に限り、その予定日時を変更することができる。
4 前項の申し出は、審問においてする場合又は第43条第2項に基づく協議を口頭で行う際にする場合を除き、書面でしなければならない。
第52条(当事者出席の原則)
1 審問期日は、すべての当事者の出席の下に開くことを原則とする。
2 当事者の一部又は全部が欠席した場合には、その欠席のまま審問期日を開くことができる。
第53条(異議権の放棄)
当事者が、この規則の規定が遵守されていないことを知りながら、遅滞なく異議を述べないときは、異議を述べる権利を放棄したものとみなす。
第54条(証拠)
1 当事者は、その請求又は防御の根拠となる事実を立証する責任を負う。
2 仲裁廷は、必要があると認めるときは、職権により、当事者から申し出がない証拠を取り調べることができる。
3 証拠調べは、審問期日外においても行うことができる。この場合においては、当事者に対し、当該証拠について口頭又は書面により意見を述べる機会を与えなければならない。
4 仲裁廷は、当事者の書面による申立て又は職権により、一方の当事者の所持する文書の取調べの必要があると認めるときは、その当事者の意見を聴いた上で、提出を拒む正当な理由があると仲裁廷が認める場合を除き、その提出を命じることができる。
第55条(仲裁廷による鑑定人の選任)
1 仲裁廷は、当事者の意見を聴いた上で、鑑定人を選任し、必要な事項について鑑定をさせ、文書又は口頭によりその結果の報告をさせることができる。
2 仲裁廷は、鑑定人が前項の規定による報告をした後、当事者が要請したときは、審問期日において鑑定人に対して質問する機会を与えなければならない。仲裁廷は、必要と認めるときは、当事者が選任する他の鑑定人の意見書を提出する機会を与えることができる。
第56条(仲裁廷の暫定的な考え方の提示)
1 仲裁廷は、当事者が主張立証活動を過不足なく、かつ効率的に行うことができるようにするため、証人尋問の要否を決定する前までに、次に定める事項を可能な限り整理し、当事者に対し書面により提示しなければならない。
(1) 仲裁廷が重要と思料する事実上の争点及びそれについての暫定的な考え方
(2) 仲裁廷が重要と思料する法律上の争点及びそれについての暫定的な考え方
(3) その他重要であると思料する事項
2 仲裁廷は、前項に定める各項目について、期限を定めて、当事者に対し、意見を述べる機会を与えければならない。
3 当事者は、前項により定められた期限までに、書面により、第1項に定める各項目について意見を述べることができる。この意見においては、証人尋問を求めるか否かについての意見も述べることができる。
4 仲裁廷は、第3項に従い提出された当事者の意見を勘案し、証人尋問を行うか否かを決定しなければならない
5 第1項の規定により提示された見解は、その後の仲裁廷の判断を何ら拘束するものではない。
6 当事者は、仲裁人が第1項の規定により見解を提示したことを理由として当該仲裁人の忌避を申し立てることはできない。
第57条(手続参加)
1 仲裁手続の当事者となっていない者であっても、以下の各号に掲げる場合には、申立人として仲裁手続に参加し、又はこの者を被申立人として仲裁手続に参加させることができる。
(1)その者及び当事者全員の書面による当該参加に係る合意がある場合
(2)各申立てが同一の仲裁合意に基づくものである場合。ただし、仲裁手続の当事者となっていない者が、仲裁廷の成立後に被申立人として参加させられる場合には、その者の書面による同意を必要とする。
2 前項の手続参加が仲裁廷の成立前である場合には、仲裁人は、第25条から第27条、第29条及び第30条の規定に従って選任される。この場合、すでにこれらの規定に従って行われた仲裁人の選任は、その効力を失う。
3 前項の規定に従い仲裁人を選任する場合においては、第26条、第27条第1項及び第29条第2項に定める期間は、手続参加に係る請求の被申立人が手続参加の申立ての通知を受領した日を基準として計算する。
4 第1項の手続参加が仲裁廷の成立後である場合には、仲裁廷の構成に影響を及ぼさない。
5 仲裁廷は、第1項に掲げる場合であっても、手続参加が仲裁手続を遅延させると認めるときその他の相当の理由があるときは、手続参加を許さないことができる。
6 手続参加の申立てについては第14条、第15条第2項及び第16条の規定を準用する。この場合において、第15条第2項、第16条第1項及び第47条第3項ただし書の「被申立人」は、「参加申立人以外の当事者及び被申立人として参加を求められた者」と読み替える。
7 手続参加に係る請求に対する答弁、反対請求又は相殺の抗弁については第18条、第19条又は第20条の規定を準用する。
第58条(複数の仲裁手続の併合)
仲裁廷は、当事者の書面による申立てにより、以下の各号に掲げる場合で、必要があると認めるときは、係属中の仲裁申立てと他の仲裁申立て(仲裁廷の成立前のものに限る。)とを併合して審理することができる。
(1)当事者(当該他の仲裁申立てに係る当事者を含む)全員の書面による合意がある場合
(2)係属中の仲裁申立てに係る請求と、当該他の仲裁申立てに係る請求が、同一の仲裁合意に基づくものである場合。ただし、当該他の仲裁申立てに係る請求の当事者が係属中の仲裁申立てに係る請求の当事者と異なる場合、当該他の仲裁申立てに係る請求の当事者の書面による同意を必要とする。
(3)係属中の仲裁申立てに係る請求と、当該他の仲裁申立てに係る請求が、同一の当事者間におけるものであり、(a)同一又は同種の法律問題又は事実問題を含み、(b)いずれの請求についてもこの規則による仲裁に付する旨の合意があって、(c)仲裁地、仲裁人の数、言語等の合意内容に照らして、同一の手続で審理することに支障がないと認められる場合
第59条(調停)
1 当事者は、いつでも、書面による合意により、仲裁事件に係る紛争をJCAAの商事調停規則に基づく調停手続に付することができる。この場合には、次条第1項の場合を除き、当該紛争を担当している仲裁人とは異なる者を調停人に選任するものとする。
2 仲裁廷は、当事者が第1項に規定する合意をしたときは、申立てにより、仲裁手続を停止しなければならない。
3 いずれの当事者も、当事者の合意がない限り、調停手続で当事者がした提案、自白その他の陳述又は調停人の示した提案を仲裁手続において証拠として提出してはならない。
4 調停手続が、商事調停規則第28条第1項(1)から(7)までに定める事由により終了した場合、仲裁廷は、申立てにより、仲裁手続を再開する。
第60条(仲裁人が調停人を務める場合の特則)
1 前条第1項の規定にかかわらず、当事者は、書面による合意により、仲裁人を調停人に選任して、仲裁事件に係る紛争を商事調停規則に基づく調停手続に付することができる。この場合において、当事者は、仲裁人が調停人を務めたこと又は務めていることを理由として当該仲裁人の忌避を申し立てることはできない。
2 商事調停規則第22条第1項の規定にかかわらず、仲裁事件に係る紛争について調停人を務める仲裁人は、当事者の書面による合意がなければ、一方の当事者と個別に協議することはできない。仲裁人は、一方の当事者と個別に協議した場合には、個別に協議したという事実(意見の内容等を含まない。)を、その都度、他のすべての当事者に伝えなければならない。
3 当事者は、第1項の規定により紛争を調停手続に付したときは、第1項に定める合意書の写しをJCAAに提出しなければならない。
4 本条の規定による調停人の報償金、申立料金及び管理料金は、以下のとおりとする。
(1)調停手続に係る申立料金及び管理料金は、納付を要しない。
(2)仲裁人による調停手続に係る報償金及び経費については、第81条、第82条及び第3編の規定を適用する。
5 本条による調停の場合には、商事調停規則(第12条から第14条、第16及び第17条を除く)の規定を適用する。
第61条(審理の終結及び再開)
1 仲裁廷は、請求について当事者が主張、立証及びこれに対する防御を行うに十分な機会を与えられ、仲裁判断を行うことができると認めるときは、審理の終結を決定しなければならない。
2 仲裁廷は、仲裁手続において申し立てられた請求の一部について前項に定める要件を満たすと認めるときは、審理の一部の終結を決定することができる。
3 仲裁廷は、前二項に規定する審理終結の決定をするときは、適当な予告期間をおかなければならない。
4 仲裁廷は、必要があると認めるときは、審理を再開することができる。審理の再開は、原則として審理終結の日から3週間を経過する日以後には行わないものとする。
第62条(仲裁手続の終了)
1 仲裁手続は、仲裁判断が下された時、仲裁廷成立前に仲裁申立てに係る請求の全部が取り下げられた時、又は仲裁手続の終了決定があった時に、終了する。
2 仲裁廷は、以下の各号に掲げる場合には仲裁手続の終了決定をしなければならない。
(1)第23条第3項の規定に従い仲裁申立てに係る請求の全部の取り下げを許可した場合
(2)第46条第2項の規定により自己が仲裁権限を有しないと判断する場合
(3)仲裁手続を続行する必要がないと認める場合又は仲裁手続を続行することが不可能であると認める場合
3 仲裁手続が終了したときは、仲裁廷の任務は終了する。ただし、第69条から第71条までに規定する場合はこの限りではない。
4 第67条第2項、第4項、第5項及び第6項並びに第68条の規定は、仲裁手続の終了決定について準用する。
第2節 仲裁判断
第63条(全部仲裁判断、一部仲裁判断、和解仲裁判断)
1 仲裁廷は、仲裁手続において申し立てられた請求の全部について、仲裁判断をする。
2 前項の規定にかかわらず、仲裁廷は、第61条第2項に定める審理の一部終結決定をした場合には、当該決定に係る請求について、他の請求に先立って、仲裁判断をすることができる。
3 仲裁廷は、仲裁手続の進行中に和解した当事者双方の申立てがあるときは、当該和解の内容を仲裁判断とすることができる。
第64条(少数意見の公表の禁止)
3人の仲裁人で構成される仲裁廷の場合、仲裁判断には第32条第1項及び第2項に基づく仲裁廷としての決定のみを記載し、仲裁人は、その少数意見をいかなる形であれ仲裁廷の外に漏らしてはならない。
第65条(仲裁判断の効力)
仲裁判断は、終局的であり当事者を拘束する。
第66条(本案の準拠法)
1 仲裁廷が仲裁判断において準拠すべき法は、当事者が合意により定めるところによる。
2 前項の合意がないときは、仲裁廷は、仲裁手続に付された紛争に最も密接な関係がある国の法令であって事案に直接適用されるべきものを適用しなければならない。
3 仲裁廷は、当事者双方の明示された求めがある場合に限り、前二項の規定にかかわらず、衡平と善により判断することができる。
第67条(仲裁判断書の部数及び記載事項)
1 仲裁廷は、当事者の数に1を加えた部数の仲裁判断書を作成する。
2 仲裁判断書には、次の事項を記載しなければならない。
(1)当事者の氏名及び住所(当事者が法人その他の団体である場合には、その名称及び住所並びに代表者の氏名)
(2)代理人がある場合は、その氏名及び住所
(3)主文
(4) 手続の経緯
(5)判断の理由
(6)判断の年月日
(7)仲裁地
3 当事者が判断の理由を要しない旨を合意している場合又は第63条第3項の規定により仲裁廷が和解の内容を仲裁判断とした場合は、理由の記載は省略する。この場合には、省略の理由を記載しなければならない。
4 仲裁廷は、仲裁判断書において、第81条第1項に定める費用について、合計額及び当事者間の負担割合を記載しなければならない。ただし、一部仲裁判断においてはこの限りでない。
5 前項の負担割合に基づき一方の当事者が他方の当事者に対して償還すべき額があるときは、仲裁廷は、仲裁判断書の主文において、その額を支払うべき旨の命令を記載しなければならない。
6 仲裁人は、仲裁判断書に署名しなければならない。ただし、仲裁人の数が複数の場合においては、仲裁人の過半数が署名すれば足りる。この場合には、署名が欠けている理由を仲裁判断書に記載しなければならない。
第68条(仲裁判断書の送付)
1 JCAAは、当事者が仲裁人報償金、仲裁人経費その他仲裁手続のための合理的な費用であってJCAAに納付すべき金額の全額をJCAAに納付した後、仲裁判断書を各当事者に送付しなければならない。
2 JCAAは、仲裁判断書1部を保管する。
第69条(仲裁判断の訂正)
1 仲裁廷は、当事者の書面による申立てにより又は職権で、仲裁判断における計算違い、誤記その他これらに類する誤りを訂正することができる。
2 当事者は、仲裁判断書を受領した日から4週間以内に限り、仲裁廷に対し、仲裁判断の訂正の申立てをすることができる。
第70条(仲裁廷による仲裁判断の解釈)
当事者は、仲裁判断書を受領した日から4週間以内に限り、仲裁廷に対し、仲裁判断の特定の部分の解釈を求める申立てを書面によりすることができる。
第71条(追加仲裁判断)
当事者は、仲裁手続において申し立てられた請求のうち仲裁判断において判断が示されなかったものがあるときは、仲裁判断書を受領した日から4週間以内に限り、仲裁廷に対し、その申立てについての仲裁判断を求める申立てを書面によりすることができる。
第5章 仲裁廷又は緊急仲裁人による保全措置命令
第1節 仲裁廷による保全措置命令
第72条(保全措置命令)
1 当事者は、書面により、仲裁廷が相手方当事者に対して保全措置を講じるべきことの命令(以下「保全措置命令」という。)を求めることができる。求めることができる保全措置には、以下に掲げるものを含む。
(1)現状を維持し、又は原状を回復すること
(2)現在若しくは急迫の損害若しくは仲裁手続の妨害を防ぐ行為をし、又はこれを生じさせるおそれのある行為をやめること
(3)仲裁判断の内容を実現させる原資となる資産を保全すること
(4)紛争の解決に関連性を有し、かつ重要である可能性のある証拠を保全すること
2 前項(1)から(3)までに定める保全措置命令は、次に掲げる事由のいずれもが認められる場合にのみ発することができる。
(1)保全措置命令が発されない場合、損害賠償を命じる仲裁判断では適切に回復できない損害が生じる可能性があり、かつその損害が保全措置命令によりその名宛人となる当事者に生じる可能性のある損害を十分に上回ること
(2)保全措置命令の申立てをした当事者の本案請求が認められる合理的な可能性があること
3 第1項(4)に定める保全措置命令は、仲裁廷が前項に掲げる事情を考慮して適当と認める場合にのみ発することができる。
4 仲裁廷は、保全措置命令を発するにあたっては、すべての当事者に意見を述べるための合理的な機会を与えなければならない。
5 保全措置命令には、第67条第2項、第68条及び第69条の規定を準用する。
6 当事者は、保全措置命令を受けた場合には、これを遵守しなければならない。
第73条(担保の提供)
仲裁廷は、保全措置命令を発するにあたって、保全措置命令を求める申立てをした当事者に対し、相当な担保を提供することを命じることができる。
第74条(事情変更の開示義務)
当事者は、保全措置命令の申立て又は保全措置命令の基礎となった事実に重大な変化があったときは、これを仲裁廷に開示しなければならない。
第75条(変更、停止及び取消し)
仲裁廷は、当事者の書面による申立てにより、又は特段の事情がある場合には職権で、当事者の意見を聴いて、保全措置命令を変更し、停止し、又は取り消すことができる。この場合には第72条第5項の規定を準用する。
第2節 緊急仲裁人による保全措置命令
第76条(緊急保全措置命令の申立て)
1 当事者は、仲裁廷の成立前又は仲裁人が欠けている場合において緊急の保全措置命令を求めるときは、書面により、JCAAに対し、緊急仲裁人による保全措置命令(以下「緊急保全措置命令」という。)を求める申立てをすることができる。
2 緊急保全措置命令の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
(1)緊急仲裁人による保全措置命令を求めること及びその命令の内容
(2)援用する仲裁合意
(3)当事者の氏名(当事者が法人その他の団体である場合には、その名称及び代表者の氏名)、住所及び判明しているその他の連絡先(当事者が個人の場合における勤務先住所等の書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(4)代理人を定める場合、その氏名、住所及びその他の連絡先(書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(5)紛争の概要
(6)緊急保全措置命令の必要性を基礎づける具体的事実
3 緊急保全措置命令の申立人は、緊急保全措置命令の申立書とともに、第2項(2)に定める仲裁合意を含む仲裁条項又は仲裁合意書の写しをJCAAに提出しなければならない。
4 申立人は、代理人によって緊急保全措置命令の申立てをする場合には、緊急保全措置命令の申立書とともに、委任状をJCAAに提出しなければならない。
5 申立人は、緊急保全措置命令の申立ての際、第102条第2項に定める緊急仲裁人報償金並びに第108条第2項に定める管理料金及び予納金を納付しなければならない。JCAAは、申立人がこれらの全額を納付しないときは、当該申立てがなかったものとみなす。
6 第16条及び第22条の規定は、緊急保全措置命令の申立てについて準用する。
7 緊急保全措置命令の申立書がJCAAに提出された時点で当該緊急保全措置命令の申立てに係る紛争に関し仲裁申立てがされていない場合には、当該申立書の提出の日から10日以内に仲裁申立書を提出しなければならない。
第77条(緊急仲裁人)
1 緊急仲裁人の数は、1人とし、JCAAがこれを選任する。
2 公正かつ独立でない者は緊急仲裁人に就任してはならず、緊急仲裁人は、その在任中は、公正かつ独立でありつづけなければならない。
3 緊急仲裁人への就任の依頼を受けた者は、当事者の目から見て自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれがある事実について合理的な調査を行わなければならない。その結果、そのような事実が判明した場合には、当該依頼を受けた者は、緊急仲裁人への就任を辞退するか、又はそのような事実のすべてをJCAAに対して開示しなければならない。
4 JCAAが(a)第76条第1項から第6項の規定に適合した緊急保全措置命令の申立てがされたことを確認し、(b)緊急仲裁人を選任することを適当と認めるときは、緊急保全措置命令申立書の提出を受けた日から2営業日以内に緊急仲裁人を選任するよう努めなければならない。
5 JCAAは、緊急仲裁人を選任したときは、第30条の規定を準用する。
6 第34条に基づく緊急仲裁人に対する忌避申立ては、これを妨げない。ただし、同条第3項の規定にかかわらず、緊急仲裁人の選任通知を受領した日又は緊急仲裁人の公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があることを知った日のいずれか遅い日から2営業日以内に忌避申立書をJCAAに提出しなければならない。
7 緊急仲裁人の任務が終了したときは、緊急仲裁人に対する忌避申立てをすることができず、すでにした忌避申立てに係る手続は終了する。
第78条(緊急仲裁人の任務)
1 緊急仲裁人は、第72条から第75条の規定に従い、緊急保全措置命令を発し、変更し、停止し、又は取り消すことができる。
2 緊急仲裁人は、その選任後直ちに、緊急保全措置命令に係る審理予定を立てなければならない。
3 緊急仲裁人は、緊急保全措置命令の適否の判断のために必要と認めるときは、1日に限り審問期日を開くことができる。
4 緊急仲裁人は、その選任の日から2週間以内に、緊急保全措置命令に係る決定をするよう努めなければならない。
5 当事者は、緊急保全措置命令を受けた場合には、これを遵守しなければならない。緊急保全措置命令は、仲裁廷が成立した時点、又は欠けた仲裁人について新たな仲裁人がJCAAにより確認若しくは選任された時点で、当該仲裁廷がした保全措置命令とみなし、仲裁廷が次条第2項による変更、停止又は取消しをするまで、その効力を維持する。
6 緊急保全措置命令は、次に掲げる場合には効力を失う。
(1)当該保全措置命令が発令されてから3か月以内に、仲裁廷が成立しないとき、又は欠けた仲裁人について新たな仲裁人がJCAAにより確認若しくは選任されないとき
(2)第62条第1項の規定により仲裁手続が終了したとき
(3)緊急保全措置命令の申立書がJCAAに提出された時点で当該緊急保全措置命令の申立てに係る紛争に関し仲裁申立てがされていない場合であって、当該申立書の提出の日から10日以内に仲裁申立書が提出されないとき
7 緊急仲裁人の任務は、次に掲げる場合には終了する。ただし、JCAAが必要と認めるときは、緊急仲裁人の任務終了を延期することができる。
(1) 緊急保全措置命令の申立書がJCAAに提出された時点で当該緊急保全措置命令の申立てに係る紛争に関し仲裁申立てがされていない場合であって、当該申立書の提出の日から10日以内に仲裁申立書が提出されないとき
(2) 仲裁廷が成立したとき
(3) 欠けた仲裁人について新たな仲裁人がJCAAにより確認又は選任されたとき
8 緊急仲裁人は、当該紛争に関して仲裁人となることができない。ただし、当事者間で書面による別段の合意がある場合はこの限りでない。
第79条(仲裁廷による承認、変更、停止又は取消し)
1 緊急保全措置命令に係る判断は、仲裁廷を拘束しない。
2 仲裁廷は、緊急保全措置命令の全部又は一部を承認し、変更し、停止し、又は取り消すことができる。
第80条(準用規定)
緊急仲裁人及び緊急保全措置命令については、その性質に反しない限り、他の章の規定を準用する。
第6章 費用
第81条(費用の負担)
1 仲裁手続の費用には、仲裁人報償金、仲裁人経費、管理料金、その他仲裁手続のための合理的な費用のほか、当事者が負担する代理人その他専門家の報酬及び経費であって、仲裁廷が合理的な範囲内であると認めるものが含まれる。
2 仲裁廷は、前項に定める各費用について、手続の経過、仲裁判断の内容その他の一切の事情を考慮して、各当事者の負担割合を定めることができる。ただし、仲裁廷が成立する前に、仲裁申立てに係る請求の全部が取り下げられた場合には、JCAAが各費用(当事者が負担する代理人その他専門家の報酬及び経費を除く。)について各当事者の負担割合を定めることができる。
3 仲裁人報償金及び仲裁人経費については第3編の規定により、管理料金については第4編の規定により定める。
第82条(料金等の連帯納付義務)
すべての当事者は、仲裁人報償金、仲裁人経費その他仲裁手続のための合理的な費用であってJCAAに納付すべきものについて、JCAAに対して連帯して責任を負う。
第83条(予納及び精算)
1 当事者は、仲裁人報償金、仲裁人経費その他仲裁手続のための合理的な費用に充当するため、JCAAの定める金額をその定める方法に従い、その定める期間内にJCAAに予納しなければならない。
2 当事者が前項の予納をしないときは、仲裁廷は、JCAAの求めにより、仲裁手続を停止し又は終了しなければならない。ただし、その予納されない分について他方の当事者が代わって予納したときは、この限りでない。
3 仲裁手続が終了した際に、当事者がJCAAに予納した金額が、第67条第4項の規定により仲裁廷が定めた当事者がJCAAに納付すべき金額を超えるときは、JCAAは、その差額を当事者に返還しなければならない。
第2編 迅速仲裁手続
第84条(第1編の規定との関係)
1 第2編は、第1編の規定の特則として、迅速に仲裁手続を進めるために必要な事項を定める。
2 第2編に規定がない事項については、第1編の規定の定めるところによる。
第85条(迅速仲裁手続の適用)
1 第2編の規定は、以下の場合に適用する。
紛争金額(申立ての請求金額、反対請求申立ての請求金額及び相殺の抗弁に供する自働債権の金額の合計額。利息及び費用の請求金額は算入しない。以下同じ。)が3億円(外国通貨から換算する場合には、申立ての日の直前の営業日におけるTTM(Telegraphic Transfer Middle Rate)を含む妥当な変換レートにより日本円に換算した額による。以下同じ。)以下の場合
当事者が迅速仲裁手続によるべき旨の書面による合意をJCAAに通知した場合
第2編の規定の適用に関しては、請求の経済的価値の算定ができない場合又は極めて困難であるとJCAAが判断するときは、前項(1)の紛争金額は、3億円を超えるものとみなす
第2編の規定は、以下の場合には適用しない。
当事者が迅速仲裁手続によらない旨の書面による合意をJCAAに通知した場合。
JCAAが、仲裁廷成立前に、当事者間の仲裁手続に関する合意の中に第2編の規定と相容れない条項が含まれていること、その他第2編の規定を適用することが明らかに不適当である事情が存在すると認める場合。
JCAAは、第19条に定める反対請求の申立て若しくは第20条に定める相殺の抗弁が提出された後、又は、その提出期限を経過した後、遅滞なく、当事者及び仲裁人に、第2編の規定によることが確定した旨を通知する。
前項に定める通知を行った後に、申立ての変更により紛争金額が3億円を超えることとなる場合であっても、引き続き第2編の規定による。
第86条(迅速仲裁手続の適用の中止)
前条第4項に定める通知を行った後であっても、以下の場合には、第2編の規定の適用を中止する。
当事者が第2編の規定によらない旨の合意をJCAAに通知した場合
JCAAが、仲裁廷及び当事者と協議の上、第2編の規定の適用を中止することを決定した場合
前項の規定により第2編の規定の適用が中止となった場合であっても、その時点までに既に行われた手続には影響を与えない。
第87条(仲裁人の選任)
仲裁人は1人とする。
前項の規定に関わらず、仲裁人の数を3人とする旨の当事者の合意がある場合は、仲裁人の数は3人とする。ただし、JCAAは、紛争金額、事案の複雑性その他の事情に鑑み、仲裁人の数を1人とする合意をすることを当事者に勧めることができる。
JCAAは、第85条第4項に定める通知がなされた後に、仲裁人を選任又は確認する。
第88条(書面審理の原則)
1 仲裁廷は、当事者の意見を聴いた上で、審問を行う必要があると認める場合を除き、書面審理により仲裁手続を進める。全ての当事者が合意をした場合には、審問を開催する。
2 審問を行う場合は、仲裁廷は、ビデオ会議その他の適切な方法を選択するものとし、審問の日数は可能な限り短い日数としなければならない。
第89条(仲裁判断の期限)
1 仲裁廷は、その成立の日から6か月以内に仲裁判断をするよう努めなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、紛争金額が5000万円以下の場合は、仲裁廷は、その成立の日から3か月以内に仲裁判断をするよう努めなければならない。
3 仲裁廷は、前二項の目標を達成するため、ビデオ会議、書面の交換その他の仲裁廷が定める方法により当事者と協議を行い、審理予定表を書面により作成し、原則としてその成立から2週間以内に、当事者及びJCAAに送付しなければならない。
第90条(仲裁判断の期限の延長)
JCAAは、やむを得ない事情があると認める場合には、前条第1項及び第2項の仲裁判断の期限を延長することが出来る。
第91条(手続参加及び複数の仲裁手続の併合の禁止)
第57条及び第58条の規定は、第2編の規定による手続には適用しない。
第3編 仲裁人報償金
第92条(第3編の規定の適用)
第3編の規定は、第1編及び第2編の規定に基づく仲裁における仲裁人報償金等に適用される。
第93条(定義)
1 第3編において、請求金額又は請求の経済的価値は、以下の各号を総計した額とする。なお、複数の仲裁手続の併合があった場合は、それらの仲裁手続における以下の各号を合算した額とする。
(a) 申立人の請求金額又は請求の経済的価値
(b) 被申立人が反対申立てをする場合の請求金額又は請求の経済的価値
(c) 第57条に基づく手続参加に係る請求の請求金額又は請求の経済的価値
(d) 第94条第2項に定めるみなし請求金額
(e) 利息を請求する場合には、申立ての日から1年間に生ずる利息の額
(f) 相殺の抗弁として提出した自働債権の金額
2 第3編における円表示の金額は、外国通貨から換算する場合には、申立ての日の直前の営業日のTTM(Telegraphic Transfer Middle Rate)を含む妥当な交換レートにより日本円に換算した額による。
第94条(単独の仲裁人の場合の仲裁人報償金)
1 単独仲裁人による仲裁の場合の仲裁人報償金は、以下の通りとする。
請求金額又は請求の経済的価値 |
仲裁人報償金 (消費税を含まない。) |
5000万円未満 |
100万円 |
5000万円以上1億円未満 |
200万円 |
1億円以上50億円未満 |
300万円 |
50億円以上100億円未満 |
400万円 |
100億円以上 |
500万円 |
2 経済的価値が算定できないか又はその算定が困難な請求の経済的価値は7000万円とみなす。
第95条(3人の仲裁人の場合の仲裁人報償金)
1 3人の仲裁人による仲裁の場合の仲裁人報償金は、以下の通りとする。
請求金額又は 請求の経済的価値 |
当事者選任仲裁人の 報償金 (消費税を含まない。) |
仲裁廷の長の報償金 (消費税を含まない。) |
5000万円未満 |
70万円 |
120万円 |
5000万円以上1億円未満 |
150万円 |
250万円 |
1億円以上50億円未満 |
250万円 |
400万円 |
50億円以上100億円未満 |
350万円 |
500万円 |
100億円以上 |
400万円 |
600万円 |
2 前項の請求金額又は請求の経済的価値の算定においては、前条第2項の規定を適用する。
第96条(仲裁人報償金の減額等)
1 仲裁人報償金は、当事者によるすべての請求の取り下げにより仲裁手続が終了した場合であっても、減額されない。ただし、次項以下の規定の適用があるときはこの限りではない。
2 以下に定める場合には、仲裁人の報償金は支払われない。
(1) 仲裁廷が成立する前に仲裁手続が終了した場合:すべての仲裁人
(2) 死亡、忌避、解任(当事者間の合意による解任を除く。)又は辞任によって仲裁人が欠けた場合:当該仲裁人
3 前項(2)の規定にかかわらず、複数の仲裁人により仲裁廷が構成されている場合であって、死亡又は疾病により仲裁人が欠けたときは、最終的な紛争解決における貢献度その他の事情を勘案して、JCAAが当該仲裁人の仲裁人報償金の額を決定する。
4 第2項(2)の場合において、補充仲裁人が選任されたときには、補充仲裁人の仲裁人報償金は、第94条第1項又は第95条第1項によって計算される金額とする。
5 仲裁合意が不存在又は無効であることを理由として、仲裁手続の終了決定がされた場合には、その判断をした者の報償金は、第94条第1項又は第95条第1項によって計算される金額の半額とする。
第97条(仲裁廷成立前の仲裁人報償金に関する変更の合意)
1 前三条の規定に関わらず、第31条第2項に従って仲裁廷が成立する前に、すべての当事者が書面により合意する場合に限り、第3編の規定に定める仲裁人報償金の額及び仲裁人報償金の減額等について変更することができる。
2 第28条第6項及び第29条第6項に従って、JCAAが選任する仲裁人の報償金の額及び仲裁人報償金の減額等については、前項の合意により定められた条件のうち、仲裁人により有利な条件を下まわらないものとする。
3 当事者は、第1項に定める合意をした場合には、遅滞なく、JCAAにその合意内容を通知するものとする。
第98条(仲裁廷成立後の仲裁人報償金額に関する変更の禁止)
1 仲裁人は、第31条第2項に従って仲裁廷が成立した後は、当事者及びJCAAに対して仲裁人報償金の金額及び仲裁人報償金の減額等の変更について交渉してはならない。
2 すべての当事者が同意する場合であっても、第31条第2項に従って仲裁廷が成立した後は、第3編に定める仲裁人報償金の金額及び仲裁人報償金の減額等は変更することができない。
第99条(仲裁人の間での仲裁人報償金の支払額の変更)
1 3人の仲裁人による仲裁の場合において、当事者選任仲裁人が第31条第3項に定める仲裁廷の長の職務に属する事項を処理したときには、仲裁人3人全員の合意により、各仲裁人の報償金額を変更することができる。ただし、3人の仲裁人の仲裁人報償金の合計は、第95条第1項により定まる各仲裁人報償金の合計を超えることができない。
2 仲裁廷は、前項の合意をした場合には、その合意の内容を遅滞なくJCAAに通知するものとする。
第100条(仲裁人報償金の支払い)
1 JCAAは、仲裁人が仲裁判断をした場合、仲裁手続終了決定をした場合その他の仲裁手続が終了した場合は、第69条から第71条に定める期限を過ぎた後、遅滞なく、仲裁人報償金を支払う。
2 JCAAは、仲裁人が辞任その他の理由により仲裁人でなくなった場合は、第96条第2項により仲裁人報償金が支払われない場合を除き、第69条から第71条に定める期限を過ぎた後、遅滞なく、その仲裁人に関する仲裁人報償金を支払う。
第101条(仲裁人経費)
1 仲裁人は、以下の項目の経費を負担した場合には、仲裁手続の遂行に必要かつ合理的な範囲で償還を受けることができる。
(1) 交通費(航空運賃はビジネスクラス料金とし、他の交通手段においてもこれに相当するクラスの料金とする。)
(2) 郵便、クーリエ、電話、コピーその他事件の特性により合理的に必要な経費としてJCAAが認めるもの
2 仲裁人は、宿泊を必要とする場合には、宿泊費(食事代その他の費用を含む。)として、1泊あたり6万円の支払いを受けることができる。
3 前二項については、第97条の規定を準用する。
4 当事者は前三項に定める経費及び宿泊費を負担し、JCAAにその償還及び支払いの事務を委託する。
5 JCAAは、仲裁人からの領収書又はこれに準ずる証明書類の提出と引き替えに、第1項から第3項までに定める経費及び宿泊費の償還及び支払いを行う。
第102条(緊急仲裁人の報償金に関する特例)
1 第94条、第95条及び第99条の規定は、緊急仲裁人の報償金には適用しない。
2 緊急仲裁人の報償金は、請求金額又は請求の経済的価値にかかわらず、120万円(消費税を含まない。)とする。ただし、緊急仲裁人が緊急保全措置命令に係る決定をする前に手続が終了した場合には、緊急仲裁人の報償金は30万円(消費税を含まない。)とする。
3 第96条、第97条、第98条、第100条及び第101条の規定は、緊急仲裁人の報償金及び経費について準用する。
第4編 管理料金
第103条(管理料金)
1.申立人が仲裁の申立てにあたってJCAAに納付すべき管理料金は、次の額に消費税額を加えた額とする。
請求金額又は請求の経済的価値 |
管理料金の額 |
500万円未満の場合 |
請求金額又は請求の経済的価値の10%に相当する額 |
500万円以上2000万円未満の場合 |
50万円 |
2000万円以上、1億円未満の場合 |
50万円に2000万円を超える額の1%に相当する額を加えた額 |
1億円以上、10億円未満の場合 |
130万円に1億円を超える額の0.3%に相当する額を加えた額 |
10億円以上、50億円未満の場合 |
400万円に10億円を超える額の0.25%に相当する額を加えた額 |
50億円以上、100億円未満の場合 |
1400万円に50億円を超える額の0.1%に相当する額を加えた額 |
100億円以上 |
1900万円に100億円を超える額の0.05%に相当する額を加えた額。ただし、2500万円を上限とする。 |
2 経済的価値の算定ができない請求、又は算定が極めて困難である請求の経済的価値は、7000万円とみなす。
3 管理料金を算定する際には、請求金額は、申立ての日から1年間に生ずる利息の請求金額を含む。
4 第4編の規定における円表示の金額は、外国通貨から換算する場合には、申立ての日の直前の営業日におけるTTM(Telegraphic Transfer Middle Rate)を含む妥当な変換レートにより日本円に換算した額による。
第104条(請求金額の変更と管理料金)
1 申立人が管理料金を納付した後に請求を増額又は追加したときは、変更後の請求につき前条を適用して得た金額を管理料金とする。ただし、前条第3項中「申立ての日」とあるのは「請求を増額又は追加した日」と読み替えるものとする。
2 前条第2項の規定により、7000万円の経済的価値があるとみなされた請求について、7000万円を超える経済的価値があると判明した場合には、前項の規定を準用する。
第105条(仲裁申立てに係る請求の全部の取下げと管理料金)
申立人が、仲裁手続開始後30日以内で、かつ、仲裁廷が成立していないときに仲裁申立てに係る請求の全部を取り下げた場合には、JCAAは、管理料金の90%を返還する。
第106条(迅速仲裁手続が適用される仲裁申立てに係る請求の全部の取下げと管理料金)
第2編の規定が適用される場合において、仲裁手続開始後10日以内で、かつ、仲裁廷が成立していないときに仲裁申立てに係る請求の全部を取り下げたときは、JCAAは管理料金の90%を返還する。
第107条(反対請求の申立て及び手続参加についての適用)
前四条の規定は、被申立人による反対請求の申立て及び第57条に基づく手続参加の申立てについて適用する。
第108条(緊急保全措置命令の申立てに関する特例)
1 前五条の規定は、緊急保全措置命令の申立てには適用しない。
2 申立人が緊急保全措置命令の申立てにあたって納付すべき管理料金及び緊急仲裁人の費用その他手続のための合理的な費用の一部に充当するためJCAAに納付すべき予納金は、次のとおりとする。
管理料金:20万円に消費税を加えた額
予納金: 10万円
3 申立人が、緊急仲裁人が選任される前に緊急保全措置命令の申立てを取り下げた場合には、JCAAは、管理料金の90%を返還する。
附 則
1 この規則は2021年7月1日から施行する。
2 この規則の施行前に手続が開始された仲裁事件については、なお従前の例による。ただし、当事者の合意により、その後の手続をこの規則によって行うことができる。この場合、従前の規則により行われた手続はその効力を失わない。