Contract
[目 次] 第1 はじめに
中国民法典の制定について(3)
前JICA長期派遣専門家 弁護士 x x x x
第2 中国民法典の全条文について第一編 総則
第二編 物権 ~以上まで第85号第三編 契約
第十九章 運送契約 ~以上まで第86号第二十章 技術契約 ~以下本号
第四編 人格権 第五編 婚姻家庭
[本 文]
第2 中国民法典の全条文について第三編 契約
第二分編 典型契約第二十章 技術契約第xx 一般規定
第843条【技術契約の定義】1
技術契約とは,当事者が技術開発,譲渡,許諾,コンサルティング又はサービスについて相互間の権利及び義務を確立するために締結する契約である。
第844条【技術契約締結における遵守原則】
技術契約の締結は,知的財産権の保護及び科学技術の進歩に資するものでなければならず,科学技術成果の研究開発,実用化,応用及び普及を促進するものでなければならない。
第845条【技術契約の内容】
技術契約の内容は,一般にプロジェクトの名称,目的の内容,範囲及び要求,履行の計画,場所及び方式,技術情報及び資料の秘密保持,技術成果の帰属及び収益の分配方法,検収の基準及び方法,名詞及び専門用語の解釈等の条項を含む。
2 契約の履行に関する技術背景資料,フィージビリティ・スタディと技術評価報告,プロジェクト任務書と計画書,技術標準,技術規範,原始設計と工業技術文書,及びその
1 本文中の条文見出しは,主として全国人大法工委民法xxx・xxx編『中華人民共和国民法典合同編解読(上,下)』
(中国法制出版社・2020年7月),同室・xxx編『民法典新旧逐条対比』(中国検察出版社・2020年6月),及びxxxx監修・xxxx編集『逐条解説中国契約法の実務』(中央経済社,2004年1月)を参照したものである。
他の技術書類は,当事者の約定に従って契約の組成部分とすることができる。
3 技術契約が専利2に関わる場合,発明創造の名称,専利出願人と専利権者,出願日,出願番号,登録番号及び専利権の有効期限を明記しなければならない。
第846条【代❹等の支払方式】
技術契約の代金,報酬又は使用料の支払方式は,当事者が約定し,一括計算一括払い,又は一括計算分割払いを採用することができ,ロイヤルティ又はロイヤルティにイニシャルフィーを追加する方式を採用することもできる。
2 ロイヤルティに関する約定がある場合,製品価格,専利の実施及び技術秘密の使用後に新たに増加した生産額,利益又は製品販売額の一定比率に従って計算することができ,約定したその他の方式に従って計算することもできる。ロイヤルティの比率は固定比率,逐年逓増比率又は逐年逓減比率を採用することができる。
3 ロイヤルティに関する約定がある場合,当事者は関係する会計帳簿の閲覧方法を約定することができる。
第847条【職務上の技術成果の財産権帰属】
職務上の技術成果の使用権,譲渡権が法人又は非法人組織に属する場合,法人又は非法人組織は当該職務上の技術成果について技術契約を締結することができる。法人又は非法人組織が技術契約を締結し,職務上の技術成果を譲渡するときは,職務上の技術成果の完成者は同等の条件により優先的に譲り受ける権利を有する。
2 職務上の技術成果とは,法人又は非法人組織の業務上の任務を執行し,又は主に法人又は非法人組織の物資,技術に関する条件を利用して完成させた技術成果をいう。
第848条【非職務上の技術成果の財産権帰属】
非職務上の技術成果の使用権,譲渡権は,技術成果を完成させた個人に属し,技術成果を完成させた個人は,当該非職務上の技術成果について技術契約を締結することができる。
第849条【技術成果の人身権】
技術成果を完成させた個人は,関係する技術成果文書上に自己が技術成果の完成者である旨を明記する権利及び栄誉証書,奨励を取得する権利を有する。
第850条【技術契約の無効】
違法に技術を独占し,又は他人の技術成果を侵害する技術契約は無効とする。
第二節 技術開発契約
第851条【技術開発契約の定義】
技術開発契約とは,当事者間で新技術,新製品,新工業技術,新品種又は新材料及びそのシステムの研究開発について締結する契約をいう。
2 技術開発契約は,委託研究開発契約及び共同開発契約を含む。
2 専利には特許,実用新案,意匠が含まれる(中国専利法2条参照)。
3 技術開発契約は,書面形式を採用しなければならない。
4 当事者間で実用価値を有する科学技術成果の転用実施について締結する契約は,技術開発契約の関係規定を参照適用する。
第852条【技術開発契約委託者の義務】
委託開発契約の委託者は,約定に従って研究開発経費及び報酬を支払い,技術資料を提供し,研究開発要求を提出し,協力事項を完成させ,研究開発成果を受け取らなければならない。
第853条【技術開発契約研究開発者の義務】
委託開発契約の研究開発者は,約定に従って研究開発計画を制定及び実施し,研究開発経費を合理的に使用し,期限までに研究開発業務を完成させ,研究開発成果を引き渡し,関係する技術資料及び必要な技術指導を提供し,委託者による研究開発成果の把握を助けなければならない。
第854条【委託開発契約当事者の違約責任】
委託開発契約の当事者は,約定に違反して研究開発作業を停滞,遅延又は失敗させた場合,違約責任を負わなければならない。
第855条【共同開発契約当事者の義務】
共同開発契約の当事者は,約定に従って投資を行なわなければならず,これには技術によって投資すること,役割分担に従って研究開発業務に参加すること,研究開発業務に協力することを含む。
第856条【共同開発契約当事者の違約責任】
共同開発契約の当事者は,約定に違反して研究開発業務を停滞,遅延又は失敗させた場合,違約責任を負わなければならない。
第857条【技術開発契約の解除】
技術開発契約の目的としての技術が既に他人により公開されたため,技術開発契約を履行する意義がなくなった場合,当事者は契約を解除することができる。
第858条【技術開発契約のリスク責任分担】
技術開発契約の履行過程において,克服することができない技術的な困難が発生して研究開発が失敗し又は一部が失敗した場合,当該危険は当事者の約定による。約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定することができない場合,危険は当事者が合理的に分担する。
2 当事者の一方は,前項の規定する研究開発を失敗し又は一部が失敗するおそれがあることを発見したときは,速やかに他方に通知し,適切な措置を講じて損害を低減させなければならない。速やかに通知せず,かつ適切な措置を講じることなく損害を拡大させた場合,拡大した損害について責任を負わなければならない。
第859条【委託開発契約による発明創造専利出願権の帰属等】
委託開発により完成した発明創造は,法律に別段の規定があり又は当事者に別段の約定がある場合を除き,専利を出願する権利は研究開発者に属する。研究開発者が専利権
を取得した場合,委託者は法に基づき当該専利を実施することができる。
2 研究開発者が専利出願権を譲渡する場合,委託者は同等の条件により優先的に譲り受ける権利を有する。
第860条【共同開発契約による発明創造専利出願権の帰属等】
共同開発により完成した発明創造につき,専利を出願する権利は,共同開発の当事者が共有する。当事者の一方がその共有する専利出願権を譲渡する場合,その他の各当事者は,同等の条件により優先的に譲り受ける権利を有する。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
2 共同開発の当事者の一方がその共有する専利出願権の放棄を表明した場合,当事者に別段の約定がある場合を除き,他方が単独で出願し又はその他の各当事者が共同で出願することができる。出願人が専利権を取得した場合,専利出願権を放棄した一方は,当該専利を無償で実施することができる。
3 共同開発の当事者の一方が専利出願に同意しない場合,他方又はその他の各当事者は,専利を出願してはならない。
第861条【技術秘密成果の帰属等】
委託開発又は共同開発により完成した技術秘密成果の使用権,譲渡権及び収益の分配方法は,当事者が約定する。約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,同様の技術案が専利権を付与される前において,当事者はいずれも使用,譲渡する権利を有する。但し,委託開発の研究開発者は,研究開発成果を委託者に引き渡す前に,研究開発成果を第三者に譲渡してはならない。
第三節 技術譲渡契約と技術ライセンス契約
第862条【技術譲渡契約,技術ライセンス契約の定義】
技術譲渡契約は,合法的に技術を保有する権利者が,現有する特定の専利,専利出願,技術秘密に関連する権利を他人に譲渡するために締結する契約である。
2 技術ライセンス契約は,合法的に技術を保有する権利者が,現有する特定の専利,技術秘密に関する権利を他人が実施,使用することを許諾するために締結する契約である。
3 技術譲渡契約及び技術ライセンス契約において,技術実施のための専用設備,原材料の提供,又は関係する技術コンサルティング,技術サービスの提供に関する約定は,契約の組成部分に属する。
第863条【技術譲渡契約,技術ライセンス契約の種類,形式】
技術譲渡契約は,専利権譲渡,専利出願権譲渡,技術秘密譲渡等の契約を含む。
2 技術ライセンス契約は,専利実施許諾,技術秘密使用許諾等の契約を含む。
3 技術譲渡契約及び技術ライセンス契約は,書面形式を採用しなければならない。
第864条【技術譲渡契約,技術ライセンス契約の使用範囲】
技術譲渡契約及び技術ライセンス契約では,専利の実施又は技術秘密の使用の範囲を約定することができる。但し,技術競争及び技術発展を制限してはならない。
第865条【専利実施許諾契約の有効期限】
専利実施許諾契約は,当該専利権の存続期限内に限り有効である。専利権の有効期限が満了し又は専利権が無効を宣告された場合,専利権者は当該専利について他人と専利実施許諾契約を締結してはならない。
第866条【専利実施許諾契約の許諾者の義務】
専利実施許諾契約の許諾者は,約定に従って被許諾者が専利を実施することを許諾しなければならず,専利の実施に関する技術資料を交付し,必要な技術指導を提供しなければならない。
第867条【専利実施許諾契約の被許諾者の義務】
専利実施許諾契約の被許諾者は,約定に従って専利を実施しなければならず,約定以外の第三者による当該専利の実施を許諾してはならず,かつ約定に従って使用料を支払わなければならない。
第868条【技術秘密譲渡契約の譲渡人と技術秘密使用許諾契約の許諾者の義務】
技術秘密譲渡契約の譲渡人と技術秘密使用許諾契約の許諾者は,約定に従って技術資料を提供し,技術指導を行い,技術の実用性,信頼性を保証し,秘密保持義務を負わなければならない。
2 前項の規定する秘密保持義務は,許諾者による専利出願を制限しない。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第869条【技術秘密譲渡契約の譲受人と技術秘密使用許諾契約の被許諾者の義務】
技術秘密譲渡契約の譲受人と技術秘密使用許諾契約の被許諾者は,約定に従って技術を使用し,譲渡代金,使用料を支払い,秘密保持義務を負わなければならない。
第870条【技術譲渡契約の譲渡人と技術ライセンス契約の許諾者の保証義務】
技術譲渡契約の譲渡人と技術ライセンス契約の許諾者は,自己が提供した技術の合法的な保有者であることを保証し,かつ提供した技術が完全で,誤りがなく,有効であり,約定した目標を達成できることを保証しなければならない。
第871条【技術譲渡契約の譲受人と技術ライセンス契約の被許諾者の秘密保持義務】
技術譲渡契約の譲受人と技術ライセンス契約の被許諾者は,約定した範囲及び期限に従って,譲渡人,許諾者が提供した技術中の未公開である秘密部分に対して秘密保持義務を負わなければならない。
第872条【技術ライセンス契約の許諾者と技術譲渡契約の譲渡人の違約責任】
許諾者は約定に従って技術許諾を行わない場合,一部又は全部の使用料を返還し,かつ違約責任を負わなければならない。専利の実施又は技術秘密の使用が約定した範囲を超え,約定に違反して無断で第三者による当該専利の実施又は当該技術秘密の使用を許諾した場合,違約行為を停止し違約責任を負わなければならない。約定した秘密保持義務に違反した場合,違約責任を負わなければならない。
2 譲渡人の違約責任の負担については,前項の規定を参照適用する。
第873条【技術ライセンス契約の被許諾者と技術譲渡契約の譲受人の違約責任】
被許諾者は約定に従って使用料を支払わない場合,使用料の不足分を支払い,かつ約定に従って違約金を支払わなければならない。使用料の不足分を支払わず又は違約金を支払わない場合,専利の実施又は技術秘密の使用を停止し,技術資料を返還し,違約責任を負わなければならない。専利の実施又は技術秘密の使用が約定した範囲を超え,許諾者の同意を得ずに無断で第三者による当該専利の実施又は当該技術秘密の使用を許諾した場合,違約行為を停止し違約責任を負わなければならない。約定した秘密保持義務に違反した場合,違約責任を負わなければならない。
2 譲受人の違約責任の負担については,前項の規定を参照適用する。
第874条【専利実施等による他人の合法的権益侵害】
譲受人又は被許諾者が約定に従って専利を実施し,技術秘密を使用して,他人の合法的権益を侵害した場合,譲渡人又は許諾者が責任を負う。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第875条【後続改良による技術成果の享受方法】
当事者は,互恵の原則に従って,専利の実施,技術秘密の使用における後続改良による技術成果の享受方法について契約中で約定することができる。約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,当事者の一方の後続改良による技術成果につき,その他の各当事者は享受する権利を有しない。
第876条【その他知的財産権の譲渡,許諾の参照適用】
集積回路配置図設計の専用権,植物新品種権,コンピュータソフトウェアの著作xxその他の知的財産権の譲渡及び許諾には,本節の関係規定を参照適用する。
第877条【技術輸出入契約,専利,専利出願契約の法律適用】
法律,行政法規に技術輸出入契約又は専利,専利出願契約に関する別段の規定がある場合,その規定に従う。
第四節 技術コンサルティング契約及び技術サービス提供契約
第878条【技術コンサルティング契約,技術サービス契約の定義】
技術コンサルティング契約は,当事者の一方が技術知識により相手方のために特定の技術プロジェクトについてフィージビリティ・スタディ,技術予測,特別技術調査,分析評価報告等を提供することについて締結する契約である。
2 技術サービス契約とは,当事者の一方が技術知識により相手方のために特定の技術問題を解決することについて締結する契約をいい,請負契約及び建設工事契約を含まない。
第879条【技術コンサルティング契約委託者の義務】
技術コンサルティング契約の委託者は,約定に従ってコンサルティングを行う問題を明らかにして,技術背景資料及び関連の技術資料を提供し,受託者の業務成果を受け取り,報酬を支払わなければならない。
第880条【技術コンサルティング契約受託者の義務】
技術コンサルティング契約の受託者は,約定した期限に従ってコンサルティング報告を完成し又は問題に回答しなければならない。提出するコンサルティング報告は,約定した要求レベルに達していなければならない。
第881条【技術コンサルティング契約当事者の違約責任】
技術コンサルティング契約の委託者は,約定に従って必要な資料の提供を行わず,業務の進度及び品質に影響を及ぼし,業務成果を受け取らず又は期限を徒過して受け取った場合,支払った報酬を取り戻してはならず,未払い分の報酬を支払わなければならない。
2 技術コンサルティング契約の受託者は,期限に従ってコンサルティング報告の提出を行わず又は提出したコンサルティング報告が約定に適合しない場合,報酬の減額又は免除等の違約責任を負わなければならない。
3 技術コンサルティング契約の委託者が約定した要求に適合する受託者のコンサルティング報告及び意見に従って行った意思決定により発生した損害は,委託者が負担する。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第882条【技術サービス契約委託者の義務】
技術サービス契約の委託者は,約定に従って仕事の条件を提供し,協力事項を完成させ,仕事の成果を受け取り,かつ報酬を支払わなければならない。
第883条【技術サービス契約受託者の義務】
技術サービス契約の受託者は,約定に従ってサービス項目を完成させ,技術問題を解決し,仕事の品質を保証し,技術問題を解決するための知識を伝授しなければならない。
第884条【技術サービス契約当事者の違約責任】
技術サービス契約の委託者は,契約上の義務を履行せず又は契約上の義務履行が約定に適合せず,仕事の進度及び品質に影響を与え,業務成果を受け取らず又は期限を徒過して受け取った場合,支払った報酬を取り戻してはならず,未払いの報酬を支払わなければならない。
2 技術サービス契約の受託者は,約定に従ってサービス業務を完成しない場合,報酬免除等の違約責任を負わなければならない。
第885条【新たな技術成果の帰属】
技術コンサルティング契約,技術サービス契約の履行過程において,受託者が委託者の提供した技術資料及び業務条件を利用して完成させた新たな技術成果は,受託者に属する。委託者が受託者の業務成果を利用して完成させた新たな技術成果は,委託者に属する。当事者に別段の約定がある場合,その約定に従う。
第886条【受託者契約履行による費用負担】
技術コンサルティング契約及び技術サービス契約において,受託者が仕事を正常に行うための必要費用の負担に関する約定がない又は約定が不明確である場合,受託者が負担する。
第887条【技術仲立契約,技術研修契約の法律適用】
法律,行政法規に技術仲立契約,技術研修契約に関する別段の規定がある場合,その規定に従う。
第二十一章 寄託契約
第888条【寄託契約の定義】
寄託契約[保管合同]とは,受寄者[保管人]が寄託者[寄存人]の引き渡した寄託物[保管物]を保管し,かつ当該物を返還する契約をいう。
2 寄託者が受寄者の場所で商品購入,食事,宿泊等の活動を行い,物品を指定場所に預けた場合,保管とみなす。但し,当事者に別段の約定があり又は別段の取引慣習がある場合を除く。
第889条【保管料の支払い】
寄託者は,約定に従って受寄者に保管料を支払わなければならない。
2 当事者に保管料に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,無償寄託とみなす。
第890条【寄託契約の成立】
寄託契約は寄託物を引き渡したときに成立する。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第891条【目的物の引渡しと預り証の交付】
寄託者が受寄者に寄託物を引き渡した場合,受寄者は,預り証を発行しなければならない。但し,別段の取引慣習がある場合を除く。
第892条【保管の場所と方法】
受寄者は,寄託物を適切に保管しなければならない。
2 当事者は,保管場所又は方法を約定することができる。緊急の状況又は寄託者の利益を擁護するためである場合を除き,無断で保管場所又は方法を変更してはならない。
第893条【寄託者の告知義務】
寄託者が引き渡した寄託物に瑕疵が存在し,又は寄託物の性質に基づいて特殊な保管措置を講じる必要がある場合,寄託者は関係の状況を受寄者に告知しなければならない。寄託者が告知せず,寄託物が損害を受けた場合,受寄者は賠償責任を負わない。受寄者がこれにより損害を受けた場合,受寄者が知り又は知り得べきであるにもかかわらず補救措置を講じない場合を除き,寄託者は賠償責任を負わなければならない。
第894条【受寄者自身による保管】
受寄者は,寄託物を第三者に保管させてはならない。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
2 受寄者が前項の規定に違反して,寄託物を第三者に保管させ,寄託物に損害を与えた場合,賠償責任を負わなければならない。
第895条【寄託物の使用】
受寄者は,寄託物を使用し又は第三者に使用を許可してはならない。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第896条【第三者が寄託物につき権利主張した場合】
第三者が寄託物について権利を主張する場合,法に基づき寄託物に対して保全又は執行措置を講じる場合を除き,受寄者は,寄託者に寄託物を返還する義務を履行しなければならない。
2 第三者が受寄者に対して訴訟を提起し又は寄託物の差押えを申請した場合,受寄者は速やかに寄託者に通知しなければならない。
第897条【受寄者の損害賠償責任】
寄託期間内において,受寄者の保管が不適切であることにより寄託物が毀損,滅失した場合,受寄者は賠償責任を負わなければならない。但し,無償受寄者が自己に故意又は重過失がないことを証明した場合,賠償責任を負わない。
第898条【貴重品に関する明告義務】
寄託者は,貨幣,有価証券又はその他貴重品の保管を委託する場合,受寄者に表明しなければならず,受寄者が検収又は密封保存する。寄託者が表明せず,当該物品が毀損,滅失した場合,受寄者は一般の物品として賠償することができる。
第899条【寄託物の受け取り】
寄託者は,いつでも寄託物の返還を受けることができる。
2 当事者に保管期限に関する約定がない又は約定が不明確である場合,受寄者は,寄託物の受け取りを寄託者にいつでも請求することができる。保管期限に関する約定がある場合,受寄者は,特別な事由がなければ寄託物の期限前の受け取りを寄託者に請求することはできない。
第900条【受寄者の返還義務】
保管期限が満了し又は寄託者が期限前に寄託物を受け取る場合,受寄者は原物及びその果実を寄託者に返還しなければならない。
第901条【消費寄託】
受寄者が貨幣を保管する場合,同一の種類,数量の貨幣を返還することができる。その他の代替可能物を保管する場合,約定に従って同一の種類,品質,数量の物品を返還することができる。
第902条【保管料の支払】
有償の寄託契約において,寄託者は約定した期限に従って受寄者に保管料を支払わなければならない。
2 当事者に支払期限に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,寄託物の受取りと同時に支払わなければならない。
第903条【寄託物に対する留置権】
寄託者が約定に従った保管料又はその他の費用の支払わない場合,受寄者は寄託物に
対して留置権を有する。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第二十二章 倉庫保管契約
第904条【倉庫保管契約の定義】
倉庫保管契約[仓储合同]とは,受寄者が寄託者の引き渡した倉庫寄託物を貯蔵保管し,寄託者が倉庫保管費用を支払う契約をいう。
第905条【倉庫保管契約の成立】
倉庫保管契約は,受寄者及び寄託者の意思表示が合致したときに成立する。
第906条【危険物・変質しやすい物品の保管】
引火性,爆発性,有毒性,腐食性,放射性等の危険物又は変質しやすい物品を貯蔵保管する場合,寄託者は当該物の性質について説明し,関係資料を提供しなければならない。
2 寄託者が前項の規定に違反した場合,受寄者は倉庫寄託物の受取りを拒絶することができ,相応する措置を講じて損害の発生を回避することもでき,これにより発生した費用は寄託者が負担する。
3 受寄者は,引火性,爆発性,有毒性,腐食性,放射性等の危険物を貯蔵保管する場合,相応する保管条件を具えなければならない。
第907条【受寄者の検収義務】
受寄者は,約定に従って入庫する倉庫寄託物に対して検収をしなければならない。受寄者は,検収時に入庫する倉庫寄託物が約定に適合しないことを発見した場合は,寄託者に速やかに通知しなければならない。受寄者が検収を行った後に,倉庫寄託物の品種,数量,品質が約定に適合しない状況が発生した場合は,受寄者が賠償責任を負わなければならない。
第908条【倉庫証券等の交付義務】
寄託者が倉庫寄託物を引き渡す場合,受寄者は,倉庫証券,入庫票等の証書を発行しなければならない。
第909条【倉庫証券の記載事項】
受寄者は,倉庫証券上に署名又は捺印しなければならない。倉庫証券は,次に掲げる事項を含む。
(一)寄託者の氏名又は名称及び住所
(二)倉庫寄託物の品種,数量,品質,包装及びその個数と記号
(三)倉庫寄託物の損耗基準
(四)貯蔵保管場所
(五)貯蔵保管期限
(六)倉庫保管費用
(七)倉庫寄託物について保険手続が既に行われている場合,その保険金額,期間及び保険者の名称
(八)必要事項記入者,記入交付地及び記入交付日
第910条【倉庫証券の譲渡】
倉庫証券とは,倉庫寄託物を引き取るための証書をいう。寄託者又は倉庫証券の保有者は,倉庫証券上に裏書きし,受寄者の署名又は捺印を経て,倉庫寄託物を引き取る権利を譲渡することができる。
第911条【倉庫寄託物の検査等】
受寄者は,寄託者又は倉庫証券の保有者の請求に基づいて,その倉庫寄託物の検査又はサンプル採取に同意しなければならない。
第912条【変質・損壊の通知義務】
受寄者は,入庫する倉庫寄託物に変質又はその他損壊があることを発見した場合,寄託者又は倉庫証券の保有者に速やかに通知しなければならない。
第913条【変質等を発見した場合の処理】
受寄者は,入庫する倉庫寄託物に変質又はその他損壊があり,その他倉庫寄託物の安全及び正常な保管を脅かすことを発見した場合,必要な処置の実施を寄託者又は倉庫証券保有者に催告しなければならない。緊急の状況により,受寄者は,必要な処置を行うことができる。但し,事後に寄託者又は倉庫証券保有者に当該状況を速やかに通知しなければならない。
第914条【貯蔵保管期限の約定がない場合】
当事者に貯蔵保管期限に関する約定がない又は約定が不明確である場合,寄託者又は倉庫証券の保有者は,倉庫寄託物をいつでも引き取ることができ,受寄者も寄託者又は倉庫証券の保有者に対して倉庫寄託物の引取りをいつでも請求することができる。但し,必要な準備時間を与えなければならない。
第915条【貯蔵保管期限満了後の処理】
貯蔵保管期限が満了した場合,寄託者又は倉庫証券保有者は,倉庫証券,入庫票等に基づいて倉庫寄託物を引き取らなければならない。寄託者又は倉庫証券保有者が期限を過ぎてから引き取った場合,倉庫保管費用を追加しなければならない。引取りを繰り上げた場合,倉庫保管費用を減額しない。
第916条【受寄者の供託権】
貯蔵保管期限が満了し,寄託者又は倉庫証券の保有者が倉庫寄託物を引き取らない場合,受寄者は,合理的期間内の引取りを催告することができ,期間を過ぎても引き取らない場合,受寄者は,倉庫寄託物を供託することができる。
第917条【受寄者の賠償責任】
貯蔵保管期限内に,受寄者の保管が不適切であることにより倉庫寄託物が毀損,滅失した場合,受寄者は,賠償責任を負わなければならない。倉庫寄託物自体の自然的性質,包装が約定に適合せず又は有効な貯蔵保管期限を過ぎたことにより倉庫寄託物が変質,損壊した場合,受寄者は賠償責任を負わない。
第918条【寄託契約規定の準用】
本章に規定がない場合,寄託契約の関係規定を適用する。
第二十三章 委任契約
第919条【委任契約の定義】
委任契約とは,委任者と受任者の約定により,受任者が委任者の事務を処理する契約をいう。
第920条【委任権限】
委任者は,特別に一項目又は複数項目の事務処理を受任者に委託することができ,まとめて一切の事務処理を受任者に包括的に委託することもできる。
第921条【委任事務処理費用等】
委任者は,委任事務の処理費用を事前に支払わなければならない。受任者が委任事務を処理するために立て替えた必要費用は,委任者が当該費用を償還し,併せて利息を支払わなければならない。
第922条【受任者の指示に従った事務処理】
受任者は,委任者の指示に従って委任事務を処理しなければならない。委任者の指示を変更する必要がある場合,委任者の同意を得なければならない。緊急の状況により,委任者と連絡を取ることが困難である場合,受任者は,委任事務を適切に処理しなければならない。但し,事後において当該状況を速やかに委任者に報告しなければならない。
第923条【受任者自らによる事務処理】
受任者は,委任事務を自ら処理しなければならない。委任者の同意を得て,受任者は,復委任をすることができる。復委任が同意又は追認を得た場合,委任者は,委任事務について復委任された第三者に直接指示することができ,受任者は,第三者の選任及びその第三者に対する指示についてのみ責任を負う。復委任が同意又は追認を得ていない場合,受任者は,復委任された第三者の行為に対して責任を負わなければならない。但し,緊急の状況下で受任者が委任者の利益を維持保護する必要から第三者に復委任する場合を除く。
第924条【受任者の報告義務】
受任者は,委任者の要求に従って委任事務の処理状況を報告しなければならない。委任契約が終了したときは,受任者は,委任事務の結果を報告しなければならない。
第925条【第三者が代理関係を知っている間接代理】
受任者が自己の名義により,委任者の授権範囲内で第三者と締結した契約について,第三者が契約を締結する時点で受任者と委任者の間の代理関係を知っている場合,当該契約は,委任者及び第三者を直接拘束する。但し,当該契約が受任者及び第三者のみ拘束することを証明する証拠がある場合を除く。
第926条【委任者の介入権と第三者の選択権】
受任者が自己の名義により第三者と契約を締結する時点で,第三者が受任者と委任者
の間の代理関係を知らない場合において,受任者が第三者の原因により委任者に対して義務を履行しないときは,受任者は,委任者に対して第三者を開示しなければならず,委任者は,これにより受任者の第三者に対する権利を行使することができる。但し,第三者が受任者と契約を締結する時点で当該委任者を知っていたならば契約を締結しなかった場合を除く。
2 受任者は,委任者の原因により第三者に対して義務を履行しない場合,第三者に対して委任者を開示しなければならず,第三者は,これにより受任者又は委任者のいずれかを相手方として選択し,その権利を主張することができる。但し,第三者は,選定した相手方を変更してはならない。
3 委任者が受任者の第三者に対する権利を行使した場合,第三者は,委任者に対し,その受任者に対する抗弁を主張することができる。第三者が委任者をその相手方として選択した場合,委任者は,その受任者に対する抗弁及び受任者の第三者に対する抗弁を第三者に主張することができる。
第927条【受任者の財産引渡義務】
受任者は,委任事務の処理により取得した財産を,委任者に引き渡さなければならない。
第928条【委任者の報酬支払義務】
受任者が委任事務を完成した場合,委任者は,約定に従って報酬を支払わなければならない。
2 受任者の責めに帰することができない事由により,委任契約が解除され又は委任事務が完成不能となった場合,委任者は,受任者に相応する報酬を支払わなければならない。当事者に別段の約定がある場合,その約定に従う。
第929条【受任者が委任者に与えた損害の賠償責任】
有償の委任契約において,受任者の過失により委任者に損害を与えた場合,委任者は,損害の賠償を請求することができる。無償の委任契約において,受任者の故意又は重過失により委任者に損害を与えた場合,委任者は,損害の賠償を請求することができる。
2 受任者は,権限を越えて委任者に損害を与えた場合,損害を賠償しなければならない。
第930条【委任者の受任者に対する損害賠償責任】
受任者は,委任事務を処理するときに,自己の責めに帰することができない事由により損害を受けたときは,損害の賠償を委任者に請求することができる。
第931条【受任者以外の第三者への委任】
委任者は,受任者の同意を得て,委任事務の処理を受任者以外の第三者に委任することができる。これにより受任者に損害を与えた場合,受任者は,損害賠償を委任者に請求することができる。
第932条【共同受任】
二名以上の受任者が委任事務を共同で処理する場合,委任者に対して連帯して責任を負う。
第933条【委任契約の任意解除】
委任者又は受任者は,委任契約をいつでも解除することができる。契約の解除により相手方に損害を与えた場合,当該当事者の責めに帰することができない場合を除き,無償委任契約を解除した一方は,解除時期が不当であることによる直接損害を賠償しなければならず,有償委任契約を解除した一方は,相手方の直接損害及び契約の履行後に取得できる利益を賠償しなければならない。
第934条【委任契約の終了事由】
委任者が死亡,終了し,又は受任者が死亡,民事行為能力を喪失,終了した場合,委任契約は終了する。但し,当事者に別段の約定があり又は委任事務の性質に基づいて終了すべきでない場合を除く。
第935条【委任契約終了後の委任者の継続処理】
委任者が死亡し又は破産宣告を受け,解散したことによる委任契約の終了が委任者の利益を害する場合,委任者の相続人,遺産管理人又は清算人が委任事務を引き継ぐまでの間,受任者は,委任事務処理を継続しなければならない。
第936条【受任者の死亡等】
受任者が死亡し,民事行為能力を喪失し又は破産宣告を受け,解散したことにより委任契約が終了した場合,受任者の相続人,遺産管理人,法定代理人又は清算人は,速やかに委任者に通知しなければならない。委任契約の終了により委任者の利益を害する場合,委任者が善後処理をなすまでの間,受任者の相続人,遺産管理人,法定代理人,又は清算人は,必要な措置を講じなければならない。
第二十四章 不動産管理サービス契約
第937条【不動産管理サービス契約の定義】
不動産管理サービス契約[物业服务合同]とは,不動産管理サービス事業者が不動産管理サービス区域内で,建物及びその付属施設の維持,補修,環境衛生及び関連の秩序維持等の不動産管理サービスを区分所有者のために提供し,区分所有者が不動産管理費を支払う契約をいう。
2 不動産管理サービス事業者は,不動産管理サービス企業及びその他管理者を含む。
第938条【不動産管理サービス契約の内容】
不動産管理サービス契約の内容は,一般にサービス事項,サービスの品質,サービス費用の基準及び受領の方法,修繕資金の使用,サービス用建物の管理と使用,サービス提供期限,サービスの引継ぎ等に関する条項を含む。
2 不動産管理サービス事業者が公開で行った区分所有者に有益となるサービスの承諾は,不動産管理サービス契約の組成部分とする。
3 不動産管理サービス契約は,書面形式を採用しなければならない。
第939条【不動産管理サービス契約の法的拘束力】
建設業者が法に基づき不動産管理サービス事業者と締結した前期不動産管理サービス
契約,及び区分所有者委員会と区分所有者総会が法に基づき選出した不動産管理サービス事業者と締結した不動産管理サービス契約は,区分所有者に対して法的拘束力を有する。
第940条【期限満了前に新たな契約が発効した場合】
建設業者が法に基づき不動産管理サービス事業者と締結した前期不動産管理サービス契約で約定したサービス提供期限の満了前において,区分所有者委員会又は区分所有者が新たな不動産管理サービス事業者と締結した不動産管理サービス契約が発効した場合,前期不動産管理サービス契約は終了する。
第941条【専門サービス提供組織等に委託した場合の責任等】
不動産管理サービス事業者は,不動産管理サービス区域内の一部の特定の不動産管理サービス事項を専門的なサービス提供組織又はその他第三者に委託した場合,当該部分の特定の不動産管理サービスについて区分所有者に対して責任を負わなければならない。
2 不動産管理サービス事業者は,その提供すべき不動産管理サービスの全部を第三者に再委託してはならず,又は不動産管理サービスの全部を分解した後に個別に第三者に再委託してはならない。
第942条【不動産管理サービス事業者の主要義務】
不動産管理サービス事業者は,約定及び不動産使用の性質に従って,不動産管理サービス区域内の区分所有者の共有部分に対して適切な維持,補修,清掃,緑化及び運営を行い,不動産管理サービス区域内の基本的秩序を維持し,合理的措置を講じて区分所有者の人身,財産の安全を保護しなければならない。
2 不動産管理サービス区域内における治安,環境保全,消防等に関する法律法規に違反する行為に対して,不動産管理サービス事業者は,速やかに合理的措置を講じて制止し,関連の行政管理部門に報告し,かつ処理に協力しなければならない。
第943条【不動産管理サービス事業者の公開・報告義務】
不動産管理サービス事業者は,定期的に,サービス事項,責任者,品質要求,サービス費項目,サービス費の収受基準,履行状況,及び修繕資金の使用状況,区分所有者の共有部分の運営と収益状況等について,合理的方法により区分所有者に公開し,かつ区分所有者総会,区分所有者委員会に報告しなければならない。
第944条【不動産管理サービス事業者に対する報酬支払】
区分所有者は,約定に従って不動産管理サービス事業者に不動産管理費を支払わなければならない。不動産管理サービス事業者が約定及び関係規定に従ってサービスを既に提供した場合,区分所有者は,関連の不動産管理サービスを受けていない,又は受ける必要がないことを理由に不動産管理費の支払いを拒絶してはならない。
2 区分所有者が約定に違反して期限を徒過しても不動産管理費を支払わない場合,不動産管理サービス事業者は,合理的期間内の支払いを区分所有者に催告することができる。合理的期間を徒過してもなお支払わない場合,不動産管理サービス事業者は,訴訟を提起し,又は仲裁を申し立てることができる。
3 不動産管理サービス事業者は,電気,水道,熱,ガス等の供給を停止する方式で不動産管理費の支払を督促してはならない。
第945条【区分所有者の事前告知・協力義務】
区分所有者は,建物の装飾,改修を行う場合,不動産管理サービス事業者に事前に告知し,不動産管理サービス事業者が提示した合理的注意事項を遵守し,かつその行う必要な現場検査に協力しなければならない。
2 区分所有者は,不動産の専有部分を譲渡,賃貸し,居住権を設定し又は法に基づき共有部分の用途を変更する場合,速やかに不動産管理サービス事業者に関連の状況を告知しなければならない。
第946条【不動産管理サービス契約の解除等】
区分所有者は,法定手続に従って不動産管理サービス事業者の解任を共同で決定した場合,不動産管理サービス契約を解除することができる。解任を決定した場合,60日前までに書面で不動産管理サービス事業者に通知しなければならない。但し,契約に通知期限に関する別段の約定がある場合を除く。
2 前項の規定により契約を解除し,不動産管理サービス事業者に損害を与えた場合,区分所有者の責めに帰することができない事由を除いて,区分所有者は損害を賠償しなければならない。
第947条【不動産管理サービス契約の更新】
不動産管理サービス期限が満了する前に,区分所有者は,法に基づき任用の継続を共同で決定した場合,契約期限が満了する前に原不動産管理サービス事業者と不動産管理サービス契約を更新しなければならない。
2 不動産管理サービス期限が満了する前に,不動産管理サービス事業者は,任用の継続に同意しない場合,契約期限が満了する90日前までに書面で区分所有者又は区分所有者委員会に通知しなければならない。但し,契約に通知期限に関する別段の約定がある場合を除く。
第948条【不動産管理サービス契約の黙示更新】
不動産管理サービス期限が満了した後に,区分所有者が法に基づき不動産管理サービス事業者の任用の継続又は新たな任用の決定を行わず,不動産管理サービス事業者が原契約に従って不動産管理サービスの提供を継続する場合,原不動産管理サービス契約は引き続き有効とする。但し,サービス提供期限は不定期とする。
2 当事者は,期限の定めのない不動産管理サービス契約をいつでも解除することができる。但し,60日以前に書面で相手方に通知しなければならない。
第949条【契約終了後の引継業務等】
不動産管理サービス契約が終了した場合,原不動産管理サービス事業者は,約定期限又は合理的期間内に不動産管理サービス区域から退出し,不動産管理サービス用建物,関連施設,不動産管理サービスに必要な関連資料等を区分所有者委員会,自ら管理を行うことを決定した区分所有者又はその指定した者に返還し,新たな不動産管理サービス
事業者に協力して引継業務を行い,かつ不動産の使用及び管理状況を事実通りに告知しなければならない。
2 原不動産管理サービス事業者は,前項の規定に違反した場合,不動産管理サービス契約終了後の不動産管理費の支払いを区分所有者に請求してはならない。区分所有者に損害を与えた場合,損害を賠償しなければならない。
第950条【契約終了後,新契約成立までの期間の関連事項】
不動産管理サービス契約の終了後,区分所有者又は区分所有者総会が選定した新たな不動産管理サービス事業者又は自ら管理を行うことを決定した区分所有者が引き継ぐ前において,原不動産管理サービス事業者は,不動産管理サービス事項の処理を継続しなければならず,かつ当該期間の不動産管理費の支払いを区分所有者に請求することができる。
第二十五章 取次契約
第951条【取次契約の定義】
取次契約[行纪合同]とは,取次人が自己の名義により委託者のために取引活動に従事し,委託者が報酬を支払う契約をいう。
第952条【取次人の費用負担】
取次人が取次事務の処理のために支出した費用は,取次人が負担する。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第953条【取次人の保管義務】
取次人は,委託物を占有する場合,委託物を適切に保管しなければならない。
第954条【取次人の委託物処分義務】
目的物が取次人に引き渡される時点で瑕疵が存在し又は腐乱,変質しやすい場合,委託者の同意を得て,取次人は,当該物を処分することができる。委託者と速やかに連絡を取ることができない場合,取次人は,合理的に処分することができる。
第955条【指定価格による売買義務】
取次人は,委託者が指定した価格より安く売却し又は委託者が指定した価格より高く購入する場合,委託者の同意を得なければならない。委託者の同意を得ずに,取次人がその差額を補償する場合,当該売買は,委託者に対して効力を生じる。
2 取次人は,委託者が指定した価格より高く売却し又は委託者が指定した価格より安く購入する場合,約定に従って報酬を増額することができる。約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定できない場合,当該利益は委託者に属する。
3 価格に対して委託者の特別な指示がある場合,取次人は,当該指示に反して売却又は購入してはならない。
第956条【取次人の介入権】
取次人は,市場定価がある商品を売却又は購入する場合,委託者に相反する意思表示
がある場合を除き,自己が買主又は売主になることができる。
2 取次人に前項の規定する事由がある場合でも,なお報酬の支払いを委託者に請求することができる。
第957条【委託者の受領・引取義務,取次人の供託権】
取次人が約定に従って委託物を購入した場合,委託者は,速やかに受領しなければならない。取次人の催告を受け,委託者が正当な理由なく受領を拒絶した場合,取次人は法に基づき委託物を供託することができる。
2 委託物の売却が不能又は委託者が売却を撤回する場合に,取次人の催告を受け,委託者が当該物を引き取らず又は処分しないとき,取次人は法に基づき委託物を供託することができる。
第958条【取次人の直接履行義務等】
取次人は第三者と契約を締結した場合,当該契約に対して直接権利を有し義務を負う。
2 第三者が義務を履行せず,委託者が損害を受けた場合,取次人は,賠償責任を負わなければならない。但し,取次人と委託者の間に別段の約定がある場合を除く。
第959条【取次人の報酬請求権・留置権】
取次人が委託事務を完成又は一部完成させた場合,委託者は,取次人に相応する報酬を支払わなければならない。委託者が期限を過ぎても報酬を支払わない場合,取次人は,委託物に対して留置権を有する。但し,当事者に別段の約定がある場合を除く。
第960条【委任契約規定の参照適用】
本章に規定がない場合,委任契約の関係規定を参照適用する。
第二十六章 仲立契約
第961条【仲立契約の定義】
仲立契約[中介合同]とは,仲立人が委託者に契約締結の機会を報告し又は契約締結のための媒介サービスを提供し,委託者が報酬を支払う契約をいう。
第962条【仲立人の報告義務】
仲立人は契約締結に関する事項について委託者に事実通りに報告しなければならない。
2 仲立人は,契約締結に関する重要事実を故意に隠ぺいし又は虚偽の状況を提供し,委託者の利益を害した場合は,報酬の支払いを請求できず,かつ賠償責任を負わなければならない。
第963条【仲立人の報酬請求権】
仲立人が助力して契約を成立させた場合,委託者は,約定に従って報酬を支払わなければならない。仲立人の報酬に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第
510条の規定によってもなお確定できない場合,仲立人の労務に基づいて合理的に確定する。仲立人が契約締結のための媒介サービスを提供し,契約を成立させた場合,当該契約の当事者が仲立人の報酬を均等に負担する。
2 仲立人が助力して契約を成立させた場合,仲立活動の費用は,仲立人が負担する。
第964条【仲立人の必要費用請求権】
仲立人が助力しても契約の成立に至らなかった場合,報酬の支払いを請求してはならない。但し,約定に従って仲立活動を行うにあたり支出した必要費用の負担を委託者に請求することができる。
第965条【委託者が直接第三者と契約した場合】
委託者は,仲立人のサービスを受けた後に,仲立人が提供した取引の機会又は媒介サービスを利用して,仲立人を介さずに直接契約を締結した場合,仲立人に仲立報酬を支払わなければならない。
第966条【委任契約規定の参照適用】
本章に規定がない場合,委任契約の関係規定を参照適用する。
第二十七章 組合(パートナーシップ)契約第967条【組合契約の定義】
組合契約[合伙合同]とは,二名以上の組合員(パートナー)が共同の事業目的のために締結し,利益を共に享受し,危険を共に負担する合意をいう。
第968条【出資義務の履行】
組合員は,約定した出資方式,金額及び払込期限に従って,出資義務を履行しなければならない。
第969条【組合財産】
組合員の出資,組合事務により法に基づき取得した収益及びその他の財産は,組合財産に属する。
2 組合契約が終了する前に,組合員は,組合財産の分割を請求してはならない。
第970条【組合事務の決定と執行】
組合員が組合事務に関して決定をする場合,組合契約に別段の約定がある場合を除き,組合員全員の同意を得なければならない。
2 組合事務は,組合員全員が共同で執行する。組合契約の約定又は組合員全員の決定に従って,一名又は複数名の組合員に組合事務の執行を委託することができる。その他の組合員は組合事務を執行しないが,執行状況を監督する権利を有する。
3 組合員が組合事務を個別に執行する場合,事務執行組合員は,その他の組合員が執行する事務に対して異議を提出できる。異議が提出された後,その他の組合員は当該事務の執行を一時的に停止しなければならない。
第971条【事務執行と報酬】
組合員は,組合事務の執行により報酬の支払いを請求してはならない。但し,組合契約に別段の約定がある場合を除く。
第972条【利益分配,欠損分担】
組合の利益の分配及び損失の分担は,組合契約の約定に従って処理する。組合契約に約定がない又は約定が不明確である場合,組合員が協議を経て決定する。協議が調わな
い場合,組合員が実際に出資した比率に従って分配,分担する。出資比率を確定できない場合には,均等に分配,分担する。
第973条【組合債務の連帯責任】
組合員は,組合債務について連帯責任を負う。組合債務の弁済が,自己が負うべき持分額を超えた組合員は,その他の組合員に対して求償権を有する。
第974条【財産持分の譲渡と全員の同意】
組合契約に別段の約定がある場合を除き,組合員が組合員以外の者にその全部又は一部の財産持分を譲渡する場合には,その他の組合員全員の同意を得なければならない。
第975条【債権者代位権行使の制限】
組合員の債権者は,組合員が本章の規定及び組合契約によって有する権利を代位行使してはならない。但し,組合員が有する利益分配請求権を除く。
第976条【組合期限の推定】
組合員の組合期限に関する約定がない又は約定が不明確であり,本法第510条の規定によってもなお確定することができない場合,不定期の組合とみなす。
2 組合期限が満了し,組合員が組合事務の執行を継続し,その他の組合員が異議を述べない場合は,原組合契約は引き続き有効とする。但し,組合期限は不定期とする。
3 組合員は,不定期の組合契約をいつでも解除することができる。但し,合理的期間の前にその他の組合員に通知しなければならない。
第977条【組合員死亡等と組合契約の効力】
組合員が死亡,民事行為能力を喪失,又は終了した場合,組合契約は終了する。但し,組合契約に別段の約定がある,又は組合事務の性質に基づいて終了すべきでない場合を除く。
第978条【契約終了後の残余財産処理】
組合契約が終了した後,終了により発生した費用の支払及び組合債務を弁済した後に組合財産に残余がある場合は,本法第972条の規定に従って分配する。
第三分編 準契約3
第二十八章 事務管理
第979条【事務管理の定義】
管理者は,法定又は約定の義務はないが,他人の利益が損害を受けることを回避する
3 民法典総則編121条,122条ではそれぞれ事務管理・不当利得制度に関する原則的規定を置いている。しかし,事務管理,不当利得による債権・債務の具体的ルールは複雑であり,実生活では事務管理,不当利得に関する紛争も増加していることから,上記二条だけでは不十分であり,事務管理・不当利得制度をより詳細かつ具体的に規定する必要がある。もっとも,債権編を単独で設けることはせず,契約編通則によって債権編の機能を代行し,かつ権利侵害行為による債権債務は主として「第七編 権利侵害責任」に組み入れることを前提に,事務管理・不当利得の債権債務の具体的ルールをいかに扱うかを考慮する必要がある。この問題につき,事務管理・不当利得は権利侵害行為と同じく債権債務の発生原因ではあるが,権利侵害責任編に組み入れるのは望ましくないとの意見が多かった。他方で,権利侵害行為は法律が否定する行為であるのに対して,事務管理による債権・債務は本質的に法が奨励する行為であるが,これを権利侵害責任編に規定すると価値上の矛盾が生じるおそれもある。不当利得は,権利侵害によって生じる可能性もあるが,権利侵害型の不当利得は不当利得のごく一部に過ぎず,不当利得の多くは契約によって生じ,権利侵害責任のルールを完全に参照適用することは難しい。
こうして民法典編纂過程では,債権編を単独で置かないことを前提に,事務管理・不当利得による債権債務の具体的問
ために他人の事務を管理した場合,受益者に対して事務管理により支出した必要費用の償還を請求することができる。管理者は,事務管理により損害を受けた場合,受益者に対して適切な補償を請求することができる。
2 事務の管理が受益者のxxの意思に適合しない場合,管理者は,前項の規定する権利を有しない。但し,受益者のxxの意思が法律に違反し,又は公序良俗に反する場合を除く。
第980条【要件不適合な事務管理】
管理者の事務管理が前条の規定する場合に属せず,受益者が管理による利益を有する場合,受益者は,その取得する利益の範囲内で事務管理者に対して前条第1項の規定する義務を負わなければならない。
第981条【管理者の善良な管理義務】
管理者は,他人の事務を管理する場合,受益者に有益となる方法を採用しなければならない。管理の中断が受益者にとってさらに不利益となる場合は,正当な理由なく中断してはならない。
第982条【管理者の通知義務】
管理者は,他人の事務を管理するとき,受益者に通知することができる場合は,速やかに受益者に通知しなければならない。管理する事務が緊急処理を必要としない場合,受益者の指示を待たなければならない。
第983条【管理者の報告及び財産引渡義務】
管理が終了した後,管理者は,事務管理の状況を受益者に報告しなければならない。管理者が事務管理により得た財産は,受益者に速やかに引き渡さなければならない。
第984条【受益者による管理事務の追認】
管理者による事務管理が受益者による事後の追認を得た場合,事務管理が開始した時点から委任契約の関係規定を適用する。但し,管理者に別段の意思表示がある場合を除く。
第二十九章 不当利得
第985条【不当利得返還請求権と例外】
利得者が,法律の根拠なく不当な利益を取得した場合,損害を受けた者は,利得者に対して取得した利益の返還を請求することができる。但し,次のいずれかに該当する場合を除く。
(一)道徳的義務を履行するために行った給付
(二)履行期限が到来する前の債務弁済
(三)給付義務がないことを明らかに知りながら行った債務弁済
題を解決しなければならないことを考慮し,海外の立法例を参考として,特に契約編に「第三分編 準契約」を単独で設けて事務管理・不当利得制度の具体的ルールを規定している。事務管理・不当利得を準契約として位置づける理由は,立法技術の観点以外に,事務管理・不当利得制度がいずれも契約制度と密接な関連を有することである(xxx編『中華人民共和国民法典合同編・釈義』(法律出版社,2020年7月)1027~1029頁参照)。
第986条【善意・無過失の利得者】
利得者は,取得した利益に法律の根拠がないことを知らず,かつ知り得べきでなく,取得した利益が既に存在しない場合,当該利益を返還する義務を負わない。
第987条【悪意・有過失の利得者】
利得者が,自己が取得した利益に法律の根拠がないことを知り又は知り得べき場合,損害を受けた者は,取得した利益の返還及び法に基づく損害賠償を利得者に請求することができる。
第988条【無償譲渡を受けた第三者の返還義務】
利得者が取得した利益を既に第三者に無償で譲渡した場合,損害を受けた者は,相応する範囲内での返還義務の負担を第三者に請求することができる。
第四編 人格権4第xx 一般規定
第989条【本編の調整範囲】
本編は人格権の享有と保護により発生する民事関係を調整する。
第990条【人格権の類型】
人格権は,民事主体が享有する生命権,身体権,健康権,姓名権,名称権,肖像権,名誉権,栄誉権,プライバシーxxの権利である。
2 前項の規定する人格権のほか,自然人は,人身の自由,人格の尊厳に基づいて発生するその他の人格上の権益を有する。
第991条【人格権に対する法律保護】
民事主体の人格権は法律の保護を受け,いかなる組織又は個人も侵害してはならない。
第992条【人格権の人身専属性】
人格権を放棄,譲渡,相続することはできない。
第993条【氏名,名称,肖像等の使用許諾】
民事主体は,自己の氏名,名称,肖像等の使用を他人に許諾することができる。但し,法律の規定又はその性質に基づき許諾できない場合を除く。
第994条【死者の人格権侵害】
死者の氏名,肖像,名誉,栄誉,プライバシー,遺体等が侵害を受けた場合,その配偶者,子,父母は,行為者に対して法に基づき民事責任の負担を請求する権利を有する。死者に配偶者,子がなく,かつ父母が既に死亡している場合は,その他の近親族が行為者に対して法に基づき民事責任の負担を請求する権利を有する。
第995条【人格権侵害の民事責任】
人格権が侵害を受けた場合,被害者は本法及びその他の法律の規定に従って,行為者
4 人格権は民事主体がその特定の人格的利益に対して有する権利であり,各個人の人格の尊厳に関係する,民事主体にとって最も基本的な権利である。第四編「人格権」(989条以下)では,現行の関連する法令及び司法解釈に基づいて,民事法規範の角度から自然人及びその他民事主体の人格権の内容,境界線,保護方式について規定しており,合計6章,
51ヶ条からなる。
に対し,民事責任の負担を請求する権利を有する。被害者の侵害停止,妨害排除,危険除去,影響除去,名誉回復,謝罪の請求権には訴訟時効の規定を適用しない。
第996条【当事者の違約行為が人格権を侵害する場合】
当事者の一方の違約行為が,相手方の人格権を侵害して重大な精神的損害を与え,損害を受けた一方が違約責任の負担を選択して請求する場合,損害を受けた一方による精神的損害賠償の請求に影響しない。
第997条【人格権侵害行為に対する停止措置】
民事主体は,その人格権を侵害する違法行為を行為者が行っている又は行おうとしていることを証明する証拠があり,速やかに制止しなければその合法的権益が回復することの困難な損害を受ける場合,法に基づき人民法院に対して行為者の関係行為の停止を命じる措置を採るよう申し立てる権利を有する。
第998条【人格権侵害の民事責任認定要素】
行為者について生命権,身体権及び健康権以外の人格権侵害の民事責任の負担を認定する場合は,行為者及び被害者の職業,影響範囲,過失の程度,及び行為の目的,方式,結果等の要素を考慮しなければならない。
第999条【公共利益のための報道等と氏名等の合理的使用】
公共利益のためにニュース報道,世論による監督等の行為を実施する場合,民事主体の氏名,名称,肖像,個人情報等を合理的に使用することができる。合理的に使用せず民事主体の人格権を侵害する場合,法に基づき民事責任を負わなければならない。
第1000条【人格権侵害に対する影響除去,名誉回復,謝罪等】
行為者が人格権の侵害により,法に基づき影響除去,名誉回復又は謝罪等の民事責任を負う場合,行為の具体的方式及び与えた影響の範囲に相当しなければならない。
2 行為者が前項の規定する民事責任の負担を拒絶した場合,人民法院は,刊行物,ネットワーク等のメディア上で公告し又は発効した裁判文書を公表する等の方式によって執行することができ,発生した費用は行為者が負担する。
第1001条【身分的権利の保護】
自然人の婚姻家庭関係等によって生ずる身分的権利の保護については,本法第一編,第五編及びその他の法律の関連規定を適用する。規定がない場合,その性質を根拠として本編の人格権保護の関係規定を参照適用することができる。
第二章 生命権,身体権及び健康権第1002条【生命権】
自然人は,生命権を有する。自然人の生命の安全及び生命の尊厳は法律の保護を受ける。いかなる組織又は個人も他人の生命権を侵害してはならない。
第1003条【身体権】
自然人は,身体権を有する。自然人の身体の完全性及び行動の自由は法律の保護を受ける。いかなる組織又は個人も他人の身体権を侵害してはならない。
第1004条【健康権】
自然人は,健康権を有する。自然人の心身の健康は,法律の保護を受ける。いかなる組織又は個人も他人の健康権を侵害してはならない。
第1005条【法定救助義務】
自然人の生命権,身体権,健康権が侵害を受け又はその他危難状況にある場合,法定の救助義務を負う組織又は個人は速やかに救助しなければならない。
第1006条【人体細胞等の無償提供に関する自主決定権】
完全民事行為能力者は,法に基づきその人体細胞,人体組織,人体器官,遺体の無償提供を自主的に決定する権利を有する。いかなる組織又は個人も強迫,詐欺,利益誘導によりそれを提供させてはならない。
2 完全民事行為能力者が前項の規定に基づき提供に同意する場合,書面形式を採用しなければならず,遺言形式によることもできる。
3 自然人が生前に提供に不同意であることを表示していない場合,当該自然人の死亡後に,その配偶者,xxの子,父母は共同して提供を決定することができ,提供の決定には書面形式を採用しなければならない。
第1007条【人体細胞等の売買禁止】
いかなる形式でも人体細胞,人体組織,人体器官,遺体の売買を禁止する。
2 前項の規定に違反する売買行為は無効とする。
第1008条【人体臨床試験】
新薬,医療器械の研究開発,又は新たな予防及び治療方法の発展のために臨床試験を行う必要がある場合,法に基づき関連主管部門の承認及び倫理委委員会の審査同意を得なければならず,さらに試験の目的,用途及び発生する可能性があるリスク等に関する詳細な状況を被験者本人又はその後見人に告知し,かつその書面による同意を得なければならない。
2 臨床試験を行う場合,被験者から試験費用を徴収してはならない。
第1009条【ヒト遺伝子・ヒト胚子等に関する研究活動】
ヒト遺伝子,ヒト胚子等に関する医学的及び科学的研究活動に従事する者は,法律,行政法規及び国家の関係規定を遵守しなければならず,人体の健康に危害を及ぼしてはならず,倫理道徳に反してはならず,公共利益を侵害してはならない。
第1010条【セクシャルハラスメント】
他人の意思に反して,言語,文字,図画,肢体行為等の方式により他人にセクシャルハラスメントを行った場合,被害者は法に基づき行為者に対して民事責任の負担を請求する権利を有する。
2 機関,企業,学校等の単位は,合理的な予防,苦情受理,調査処置等の措置を講じて,職権・従属関係を利用する等のセクシャルハラスメントを防止,制止しなければならない。
第1011条【人身の自由の侵害】
違法な拘禁等の方式により他人の行動の自由を剥奪,制限し,又は他人の身体を違法に捜査した場合,被害者は,法に基づき行為者に対して民事責任の負担を請求することができる。
第三章 氏名権及び名称権
第1012条【自然人の氏名権】
自然人は氏名権を有し,法に基づき自己の氏名を決定,使用,変更し,又は他人による使用を許諾する権利を有する。但し,公序良俗に反してはならない。
第1013条【法人,非法人組織の名称権】
法人,非法人組織は,名称権を有し,法に基づき自己の名称を決定,使用,変更,譲渡し,又は他人による使用を許諾する権利を有する。
第1014条【氏名権,名称権の侵害禁止】
いかなる組織又は個人も干渉,盗用,冒用等の方式により他人の氏名権又は名称権を侵害してはならない。
第1015条【自然人の姓氏の選択】
自然人は父の氏又は母の氏に従わなければならない。但し,次のいずれかに該当する場合,父の氏及び母の氏以外の氏を選択することができる。
(一)その他の直系尊属の氏を選択するとき
(二)法定扶養者以外の者が扶養することにより扶養者の氏を選択するとき
(三)公序良俗に反しないその他正当な理由があるとき
2 少数民族の自然人の氏は,自民族の文化伝統及び風俗慣習に従うことができる。
第1016条【氏名,名称の決定,変更,及び名称譲渡】
自然人が氏名を決定,変更し,又は法人,非法人組織が名称を決定,変更,譲渡する場合,法に基づき関係機関に対して登記手続を行わなければならない。但し,法律に別段の規定がある場合を除く。
2 民事主体が氏名,名称を変更した場合,変更前に行った民事法律行為は,それに対して法的拘束力を有する。
第1017条【氏名・名称に対する保護の拡張】
一定の社会的知名度を有し,他人による使用が公衆を混淆させるに足りるペンネーム,芸名,ハンドルネーム,翻訳名,屋号,氏名及び名称の略称等については,氏名権及び名称権の保護に関する規定を参照適用する。
第四章 肖像権
第1018条【肖像権】
自然人は肖像権を有し,法に基づき自己の肖像を製作,使用,公開し,又は他人による使用を許諾する権利を有する。
2 肖像とは,映像,彫塑,絵画等の方式を通じて一定の媒体上に反映された特定自然人を識別することができる外部イメージをいう。
第1019条【肖像権の侵害禁止】
いかなる組織又は個人も醜悪に描き,汚損し,又は情報技術手段の利用による偽造等の方式により他人の肖像権を侵害してはならない。肖像権者の同意を得ずに,肖像権者の肖像を製作,使用,公開してはならない。但し,法律に別段の規定がある場合を除く。
2 肖像権者の同意を得ずに,肖像作品の権利者は,肖像作品の発表,複製,発行,賃貸,展示等の方式により肖像を使用又は公開してはならない。
第1020条【肖像権者の同意が不要な場合】
次に掲げる行為を合理的に実施する場合,肖像権者の同意を得なくてもよい。
(一)個人学習,芸術鑑賞,教室での授業又は科学研究のために,必要な範囲内で肖像権者の既に公開された肖像を使用すること
(二)ニュース報道を行うために,やむを得ず肖像権者の肖像を製作,使用,公開すること
(三)法に基づき職責を履行するために,国家機関が必要な範囲内で肖像権者の肖像を製作,使用,公開すること
(四)特定の公共環境を展示するために,やむを得ず肖像権者の肖像を製作,使用,公開すること
(五)公共利益又は肖像権者の合法的権益を維持保護するために,肖像権者の肖像を製作,使用,公開するその他の行為
第1021条【肖像権使用許諾契約の解釈】
当事者に肖像権使用許諾契約における肖像使用条項の理解について争いがある場合,肖像権者の有利に解釈しなければならない。
第1022条【肖像権使用許諾契約に使用期限がない,不明確な場合】
当事者に肖像権使用許諾期限に関する約定がない又は約定が不明確である場合,いずれの当事者も肖像権使用許諾契約をいつでも解除することができる。但し,合理的期間の前に相手方に通知しなければならない。
2 当事者に肖像権使用許諾期限に関する明確な約定があり,肖像権者に正当な理由がある場合,肖像権使用許諾契約を解除することができる。但し,合理的期間の前に相手方に通知しなければならない。契約解除により相手方に損害を与えた場合,肖像権者の責めに帰することができない事由を除き,損害を賠償しなければならない。
第1023条【氏名等の使用許諾,声の保護】
氏名等の使用許諾については,肖像の使用許諾の関係規定を参照適用する。
2 自然人の声の保護については,肖像権保護の関係規定を参照適用する。
第五章 名誉権及び栄誉権第1024条【名誉権】
民事主体は,名誉権を有する。いかなる組織又は個人も侮辱,誹謗等の方式により他人の名誉権を侵害してはならない。
2 名誉とは,民事主体の人徳,名声人望,才能,信用等に対する社会的評価をいう。
第1025条【報道等と名誉権の関係】
行為者が公共利益のためにニュース報道,世論監督等の行為を実施し,他人の名誉に影響を与えた場合,民事責任を負わない。但し,次のいずれかに該当する場合を除く。
(一)事実をねつ造,歪曲したとき
(二)他人が提供した著しく事実に反する内容について合理的な事実確認審査義務を尽くしていないとき
(三)侮辱的な言辞等を使用して他人の名誉を貶め害するとき
第1026条【合理的事実確認審査認定の考慮要素】
行為者が前条第2号の規定する合理的な事実確認審査義務を尽くしたかどうかの認定において,次に掲げる要素を考慮することができる。
(一)内容の情報源の信頼度
(二)明らかに紛争を引き起こすおそれがある内容に対して必要な調査を行ったかどうか
(三)内容の時限性
(四)内容と公序良俗との関連性
(五)被害者の名誉が貶め害される可能性
(六)審査能力及び事実確認審査コスト
第1027条【文学・芸術作品と名誉権】
行為者が発表した文学,芸術作品が,実在の人物と事実を表現し,又は特定の人物を描写対象とし,侮辱的,誹謗的な内容を含み,他人の名誉権を侵害した場合,被害者は法に基づき当該行為者に対して民事責任の負担を請求することができる。
2 行為者が発表した文学,芸術作品が,特定の人物を描写対象としておらず,その中のプロットが特定の人物の状況と類似しているだけの場合,民事責任を負担しない。
第1028条【報道による名誉権侵害の訂正・削除請求】
民事主体が,新聞雑誌等の刊行物,インターネット等のメディア報道の内容がxxでなく,その名誉権を侵害したことを証明する証拠を有する場合,当該メディアに対して速やかに訂正又は削除等の必要な措置を講じるよう請求する権利を有する。
第1029条【信用評価に誤りがある場合】
民事主体は,法に基づき自己の信用評価を照会することができる。信用評価が不当であることを発見した場合,異議を提出し,かつ訂正,削除等の必要な措置を講じるよう請求する権利を有する。信用評価を行う者は,速やかに調査しなければならず,調査を経て事実である場合は,速やかに必要な措置を講じなければならない。
第1030条【信用情報の収集,処理の法律適用】
民事主体と,信用情報収集機関等の信用情報処理者との間の関係は,本編の個人情報保護の関係規定及びその他の法律,行政法規の関係規定を適用する。
第1031条【栄誉権】
民事主体は栄誉権を有する。いかなる組織又は個人も違法に他人の栄誉称号を剥奪し,他人の栄誉を中傷し,貶め害してはならない。
2 獲得した栄誉称号について記載すべき記載がない場合,民事主体は,記載を請求することができる。獲得した栄誉称号の記載について誤りがある場合,民事主体はその訂正を請求することができる。
第六章 プライバシー権及び個人情報第1032条【プライバシー権】
自然人はプライバシー権を有する。いかなる組織又は個人も密偵,侵入,漏えい,公開等の方式により他人のプライバシー権を侵害してはならない。
2 プライバシーとは,自然人の私生活の平穏及び他人に知られたくない私的秘密空間(プライベート空間),私的秘密活動(プライベート活動),私的秘密情報(プライベート情報)をいう。
第1033条【プライバシー権侵害の禁止】
法律に別段の規定があり又は権利者の同意がある場合を除き,いかなる組織又は個人も次に掲げる行為を実施してはならない。
(一)電話,ショートメール,インスタントメッセージ,電子メール,ビラ等の方式により他人の私生活の平穏を侵すこと
(二)他人の住宅,宿泊客室等の私的秘密空間に侵入し,撮影,盗視すること
(三)他人の私的秘密活動を撮影,盗視,盗聴,公開すること
(四)他人の身体の私的秘密部位を撮影,盗視すること
(五)他人の私的秘密情報を処理すること
(六)その他の方式により他人のプライバシー権を侵害すること
第1034条【個人情報保護】
自然人の個人情報は,法律の保護を受ける。
2 個人情報とは,電子又はその他の方式によって記録された,単独で又はその他の情報と結合して特定の自然人を識別することができる各種情報をいい,自然人の氏名,生年月日,身分証明書番号,生体識別情報,住所,電話番号,メールアドレス,健康情報,移動履歴情報等を含む。
3 個人情報中の私的秘密情報については,プライバシー権の関係規定を適用する。規定がない場合,個人情報保護の関係規定を適用する。
第1035条【個人情報の処理に関する原則】
個人情報を処理する場合,合法,正当,必要の原則に従わなければならず,かつ次に
掲げる条件に適合しなければならない。
(一)当該自然人又はその後見人の同意を得ること。但し,法律,行政法規に別段の規定がある場合を除く。
(二)情報の処理に関する規則を公開すること
(三)情報を処理する目的,方式及び範囲を明示すること
(四)法律,行政法規の規定及び双方の約定に違反しないこと
2 個人情報の処理には,個人情報の収集,保存,使用,加工,伝送,提供,公開等を含む。
第1036条【個人情報処理の免責事由】
個人情報の処理が,次のいずれかに該当する場合,行為者は民事責任を負わない。
(一)当該自然人又はその後見人が同意する範囲内で実施する行為
(二)当該自然人が自ら公開し,又はその他の既に合法的に公開された情報を合理的に処理するとき,但し,当該自然人が明確に拒絶する場合,又は当該情報の処理により重大な利益侵害となる場合を除く。
(三)公共利益又は当該自然人の合法的権益を維持保護するため,合理的に実施するその他の行為
第1037条【個人情報主体の権利】
自然人は,法に基づき情報処理者からその個人情報を閲覧又は複製することができる。情報に誤りがあることを発見した場合,異議を提出し,かつ速やかに訂正等の必要な措置を講じるよう請求する権利を有する。
2 自然人は,情報処理者が法律,行政法規の規定又は双方の約定に違反して当該個人情報を処理していることを発見した場合,情報処理者に対して速やかに削除するよう請求する権利を有する。
第1038条【個人情報処理者の安全保護義務】
情報処理者は,その収集,保存する個人情報を漏えい,改ざん,毀損してはならない。自然人の同意を得ずに,個人情報を他人に対して違法に提供してはならない。但し,加工を経て特定個人を識別することができず,かつ復元できない場合を除く。
2 情報処理者は,技術的措置及びその他の必要な措置を講じて,その收集,保存する個人情報の安全を確保し,情報の漏えい,改ざん,紛失を防止しなければならない。個人情報が漏えい,改ざん,紛失する状況が発生し又は発生するおそれがあるときは,速やかに救済措置を講じ,規定に基づいて自然人に告知し,かつ関係主管部門に報告しなければならない。
第1039条【国家機関等の秘密保持義務】
国家機関,行政職能を担当する法定機関及びその職員が,職責履行過程において知った自然人のプライバシー及び個人情報については,その秘密を保持しなければならず,漏えい又は他人に対して違法に提供してはならない。
第五編 婚姻家庭5第xx 一般規定
第1040条【本編の調整範囲】
本編は婚姻家庭により発生した民事関係を調整する。
第1041条【婚姻家庭関係の基本原則】
婚姻家庭は国家による保護を受ける。
2 婚姻の自由,xx一婦,男女平等の婚姻制度を実行する。
3 女性,未xx者,高齢者,障害者の合法的権益を保護する。
第1042条【婚姻家庭の禁止行為】
許婚,売買婚及び婚姻の自由に干渉するその他の行為を禁止する。婚姻を利用した財物の要求を禁止する。
2 重婚を禁止する。有配偶者が他人と同居することを禁止する。
3 家庭内暴力を禁止する。家庭構成員間の虐待及び遺棄を禁止する。
第1043条【婚姻家庭道徳規範】
家庭は優れた家風を確立し,家庭のxxを発揚し,家庭の文明構築を重視しなければならない。
2 夫婦は互いにxxで,互いに尊重し,互いを大切にしなければならない。家庭構成員において,高齢者を敬い幼少の者を慈しみ,相互に助け合い,平等で,仲睦まじく,文明的な婚姻家庭関係を維持保護しなければならない。
第1044条【養子縁組の基本原則】
養子縁組は,養子にとって最も有利とする原則を遵守し,養子及び養親の合法的権益を保障しなければならない。
2 養子縁組の名を借りた未xx者の売買を禁止する。
第1045条【親族,近親族,家庭構成員】
親族は,配偶者,血族及び姻族を含む。
2 配偶者,父母,子,兄弟姉妹,父方の祖父母,母方の祖父母,内孫,外孫を近親族とする。
3 配偶者,父母,子及びその他共同で生活する近親族を家庭構成員とする。
第二章 結 婚6
第1046条【自由意思による結婚】
結婚は,男女双方の完全な自由意思によるものでなければならず,いずれの一方も他
5 婚姻家庭制度は,夫婦関係及び家族関係を規範化する基本的準則である。婚姻関係についての考え方,家族関係の変化に伴って婚姻家庭法分野には新たな状況と問題が発生している。夫婦が尊敬し合い,高齢者を敬い家族を大切にし,家族が仲睦まじいという中華民族に代々伝わる家族のxxをより一層発揚させ,社会主義核心的価値観を反映し,家族の安定した関係を促すために,「第五編 婚姻家庭」(1040条以下)では,婚姻法(1980年成立,2001年改正,全51条),養子縁組法(1991年成立,1998年改正,全34条)を基礎として,婚姻の自由,xx一婦制等の基本原則を堅持する前提の下で,社会発展のニーズを踏まえて,一部規定に対して修正するとともに新たな規定を追加している。第五編は計5章,79ヶ条からなる。
6 本編では[婚姻]と[结婚]が使い分けられており,原文どおりの文言を使用している。
方に強迫を加えること,いかなる組織又は個人も干渉することを禁止する。
第1047条【法定結婚年齢】
結婚年齢は,男性は満22歳を下回ってはならず,女性は満20歳を下回ってはならない。
第1048条【近親婚の禁止】
直系血族又はxx以内の傍系血族との結婚を禁止する。
第1049条【結婚の手続】
結婚しようとする男女双方は,自ら婚姻登記機関で結婚登記を申請しなければならない。本法の規定に適合する場合,登記し,結婚証を交付する。結婚登記の完了により婚姻関係が確立する。結婚登記手続をしていない場合,補充登記手続をしなければならない。
第1050条【結婚後の家庭組成】
結婚登記の後,男女双方の約定に基づいて女性は男性側の家庭構成員になることができ,男性は女性側の家庭構成員になることができる。
第1051条【婚姻無効】
次のいずれかに該当する場合,婚姻を無効とする。
(一)重婚
(二)結婚が禁止されている親族関係があるとき
(三)法定の結婚年齢に達していないとき
第1052条【強迫による婚姻取消】
強迫により結婚した場合,強迫を受けた一方は,婚姻の取消を人民法院に請求することができる。
2 婚姻の取消を請求する場合,強迫行為が終了した日から1年以内に提出しなければならない。
3 人身の自由を不当に制限された当事者が,婚姻の取消を請求する場合,人身の自由が回復した日から1年以内に提出しなければならない。
第1053条【重大な疾病の不告知】
一方が重大な疾病に罹っている場合,結婚登記の前に他方に事実通りに告知しなければならない。事実通りに告知しない場合,他方は,婚姻の取消を人民法院に請求することができる。
2 婚姻の取消を請求する場合,取消事由を知り又は知り得べき日から1年以内に提出しなければならない。
第1054条【婚姻の無効・取消の効果】
無効の婚姻又は取り消された婚姻は,始めに遡って法的拘束力がなく,当事者は夫婦の権利及び義務を有しない。同居期間に得た財産は,当事者の協議により処理する。協議が調わない場合,人民法院は過失がない一方に配慮する原則に基づいて判決を下す。重婚により婚姻が無効となった場合の財産処理は,合法な婚姻当事者の財産権益を侵害
してはならない。当事者が出産した子は,本法の父母と子に関する規定を適用する。
2 婚姻が無効又は取り消された場合には,過失がない一方は損害賠償を請求する権利を有する。
第三章 家庭関係第xx 夫婦関係
第1055条【夫婦平等】
夫婦の婚姻家庭における地位は平等である。
第1056条【夫婦氏名権】
夫婦双方は,各人が自己の氏名を使用する権利を有する。
第1057条【夫婦の人身自由権】
夫婦双方は,生産,仕事,学習及び社会活動に参加する自由を有し,一方が他方を制限又は干渉してはならない。
第1058条【夫婦の子に対する権利義務】
夫婦双方は,未xxの子に対して扶養,教育及び保護に関する権利を平等に有し,未xxの子に対して扶養,教育及び保護に関する義務を共同で負う。
第1059条【夫婦の相互扶養義務】
夫婦は相互に扶養する義務を負う。
2 扶養が必要な一方は,他方が扶養義務を履行しないときは,その扶養費の給付を求める権利を有する。
第1060条【夫婦の日常家事代理権】
夫婦の一方が家庭の日常生活の必要により実施する法律行為は,夫婦双方に対して効力を生じる。但し,夫婦の一方と相手方の間に別段の約定がある場合を除く。
2 夫婦間に一方が実施できる法律行為の範囲に対する制限がある場合,善意の相手方に対抗することができない。
第1061条【夫婦の遺産相続権】
夫婦は相互に遺産を相続する権利を有する。
第1062条【夫婦共同財産】
夫婦が婚姻関係の存続期間に得た次に掲げる財産を,夫婦の共同財産とし,夫婦の共同所有に属する。
(一)給与,賞与,労務報酬
(二)生産,経営,投資の収益
(三)知的財産権の收益
(四)相続又は受贈により得た財産。但し,本法第1063条第3号の規定する場合を除く。
(五)共同所有に属すべきその他の財産
2 夫婦は,共同財産に対して平等の処理権を有する。
第1063条【夫婦一方の個人財産】
次に掲げる財産を夫婦一方の個人財産とする。
(一)一方の婚姻前財産
(二)一方が人身損害を受けたことにより得た賠償又は補償
(三)遺言又は贈与契約において一方のみに帰属することが確定されている財産
(四)一方が専用する生活用品
(五)一方に帰属すべきその他の財産
第1064条【夫婦の共同債務】
夫婦双方が共同で署名し,又は夫婦の一方が事後に追認する等共同の意思表示により負担した債務,及び夫婦の一方が婚姻関係の存続期間に個人名義により家庭の日常生活の必要のために負担した債務は,夫婦の共同債務に属する。
2 夫婦の一方が婚姻関係の存続期間に個人名義により家庭の日常生活の必要を超えて負担した債務は,夫婦の共同債務に属さない。但し,当該債務が夫婦の共同生活,共同の生産経営に用いられ,又は夫婦双方の共同の意思表示に基づくものである旨を債権者が証明できる場合を除く。
第1065条【夫婦の約定財産】
男女双方は,約定により婚姻関係の存続期間に得た財産及び婚姻前財産を各自の所有,共同所有又は一部を各自の所有,一部を共同所有とすることができる。約定は書面形式を採用しなければならない。約定がない又は約定が不明確である場合,本法第1062条,第1063条の規定を適用する。
2 婚姻関係の存続期間に得た財産及び婚姻前財産に関する夫婦間の約定は,双方に対して法的拘束力を有する。
3 夫婦が婚姻関係の存続期間に得た財産を各自の所有とする旨を約定した場合,夫又は妻の一方が対外的に負った債務について相手方が当該約定を知っているときは,夫又は妻の一方の個人財産により弁済する。
第1066条【夫婦共同財産の婚内分割請求】
婚姻関係の存続期間に,次のいずれかに該当する場合,夫婦の一方は人民法院に共同財産の分割を請求することができる。
(一)一方に夫婦の共同財産を隠匿,移転,換価,毀損,浪費又は夫婦の共同債務を偽造する等の夫婦の共同財産の利益を著しく害する行為があったとき
(二)法定扶養義務を負う一方が重大な疾病に罹って治療する必要があり,他方が関連する医療費用の支払いに同意しないとき
第二節 父母と子の関係及びその他近親族の関係第1067条【扶養費の給付請求】
父母が扶養義務を履行しない場合,未xxの子又は独立して生活することができないxxの子は,扶養費の給付を父母に求める権利を有する。
2 xxの子が扶養義務を履行しない場合,労働能力を有さず又は生活が困難である父母は,扶養費[赡养费]の給付をxxの子に求める権利を有する。
第1068条【父母の未xx子に対する保護・教育の権利義務】
父母は,未xxの子を教育,保護する権利及び義務を有する。未xxの子が他人に損害を与えた場合,父母が法に基づき民事責任を負わなければならない。
第1069条【父母の婚姻権に対する尊重】
子は,父母の婚姻の権利を尊重しなければならず,父母の離婚,再婚及び婚姻後の生活に干渉してはならない。父母に対する子の扶養[赡养]義務は,父母の婚姻関係の変化によって終了しない。
第1070条【父母と子の遺産相続権】
父母及び子は,相互に遺産を相続する権利を有する。
第1071条【非嫡出子】
非嫡出子は,嫡出子と同等の権利を有し,いかなる組織又は個人も危害を加え,差別してはならない。
2 非嫡出子を直接扶養していない実父又は実母は,未xxの子又は独立して生活することができないxxの子の扶養費を負担しなければならない。
第1072条【継親子】
継父母とxxの間に,虐待又は差別があってはならない。
2 継父又は継母とその扶養,教育を受けるxxの間の権利義務関係は,父母と子の関係に関する本法の規定を適用する。
第1073条【親子関係異議の訴え】
親子関係に異議があり,かつ正当な理由がある場合,父又は母は人民法院に訴訟を提起し,親子関係の確認又は否認を請求することができる。
2 親子関係に異議があり,かつ正当な理由がある場合,xxの子は人民法院に訴訟を提起し,親子関係の確認を請求することができる。
第1074条【祖父母と孫の間の扶養義務】
負担能力を有する父方の祖父母,母方の祖父母は,父母が既に死亡し,又は父母が扶養能力を有しない未xxの内孫,外孫に対して,扶養する義務を有する。
2 負担能力を有する内孫,外孫は,xが既に死亡し,又は子が扶養[赡养]能力を有しない父方の祖父母,母方の祖父母に対して,扶養[赡养]する義務を有する。
第1075条【兄弟姉妹間の扶養義務】
負担能力を有する兄,姉は,父母が既に死亡し,又は父母が扶養能力を有しない未xxの弟,妹に対して,扶養する義務を有する。
2 兄,姉の扶養により成長した負担能力を有する弟,妹は,労働能力だけでなく生活のための収入源も有しない兄,姉に対して,扶養する義務を有する。
第四章 離 婚
第1076条【協議離婚】
夫婦双方が自由意思により離婚をする場合,書面により離婚協議を締結しなければならず,かつ自ら婚姻登記機関で離婚登記を申請しなければならない。
2 離婚協議には双方の自由意思による離婚の意思表示及び子の扶養,財産と債務処理等の事項について合意した意見を明記しなければならない。
第1077条【離婚冷静期】
婚姻登記機関が離婚登記申請を受理した日から30日以内に,いずれか一方が離婚を望まない場合,婚姻登記機関に対して離婚登記申請を撤回することができる。
2 前項の規定する期限が満了してから30日以内に,双方は,自ら婚姻登記機関で離婚証の交付を申請しなければならない。申請しない場合には,離婚登記申請を撤回したものとみなす。
第1078条【婚姻登記機関による離婚協議の確認】
婚姻登記機関は,双方が確かに自由意思により離婚し,かつ既に子の扶養,財産及び債務処理等の事項について合意したことを調査により確認した場合,登記して離婚証を交付する。
第1079条【訴訟離婚】
夫婦の一方が離婚を請求する場合,関係組織が調解を行い,又は直接人民法院に離婚訴訟を提起することができる。
2 人民法院は離婚事件を審理する場合,調解を行わなければならない。感情が確かに既に破綻し,調解が無効となった場合,離婚を認めなければならない。
3 次のいずれかに該当し,調解が無効となった場合,離婚を認めなければならない。
(一)重婚又は他人と同居しているとき
(二)家庭内暴力を行い,又は家庭構成員を虐待,遺棄したとき
(三)賭博,薬物使用等の悪習があり何度教育を受けても改めないとき
(四)感情の不和により別居して満2年経過したとき
(五)夫婦感情の破綻に至らしめるその他の事由
4 一方が失踪宣告を受け,他方が離婚訴訟を提起した場合,離婚を認めなければならない。
5 人民法院が離婚を認めない旨の判決をした後,再び別居して満1年経過し,一方が再び離婚訴訟を提起した場合,離婚を認めなければならない。
第1080条【婚姻関係の解消】
離婚登記が完了し,又は離婚判決書,調解書が発効したとき,すなわち婚姻関係は解消する。
第1081条【現役軍人配偶者の離婚請求】
現役軍人の配偶者が離婚を請求する場合,軍人の同意を得なければならない。但し,軍人側に重大な過失がある場合を除く。
第1082条【男性側離婚請求の制限】
女性の妊娠期間,分娩後から1年以内又は妊娠後6か月以内において,男性は離婚を提起してはならない。但し,女性が離婚を提起し,又は人民法院が確かに男性の離婚請求を受理する必要があると認める場合を除く。
第1083条【離婚後の復婚】
離婚した後に,男女双方が自由意思により婚姻関係を回復させる場合,婚姻登記機関において改めて婚姻登記をしなければならない。
第1084条【離婚の親子関係への影響,子の扶養】
父母と子の間の関係は,父母の離婚によって消滅しない。離婚後に,xは,父又は母のいずれが直接扶養するとしても,依然として父母双方の子である。
2 離婚後に,父母は子に対してなお扶養,教育,保護の権利及び義務を有する。
3 離婚後に,満2歳未満の子は,母親が直接扶養するのを原則とする。既に満2歳以上の子について,父母双方に扶養問題について協議が調わない場合には,人民法院が双方の具体的状況に基づき,未xxの子にとって最も有利とする原則に従って判決を下す。子が満8歳以上の場合,そのxxの意思を尊重しなければならない。
第1085条【離婚後の子の扶養費負担】
離婚後に,一方が子を直接扶養する場合,他方が扶養費の一部又は全部を負担しなければならない。費用負担の金額及び期間の長さは,双方の協議による。協議が調わない場合,人民法院の判決による。
2 前項の規定する協議又は判決は,子が必要な時に父母のいずれか一方に対して協議又は判決で定めた元の金額を超える合理的要求の提出を妨げない。
第1086条【子との面会交流権】
離婚後に,xを直接扶養しない父又は母は子と面会交流する権利を有し,他方は協力する義務を有する。
2 面会交流権を行使する方式,時期は,当事者の協議による。協議が調わない場合,人民法院の判決による。
3 父又は母による子との面会交流が,子の心身の健康に不利益となる場合,人民法院が法に基づき面会交流を停止する。停止事由が消滅した後には,面会交流を回復させなければならない。
第1087条【夫婦共同財産の処理】
離婚をするとき,夫婦の共同財産は,双方の協議により処理する。協議が調わない場合,人民法院が財産の具体的状況に基づいて,子,女性及び過失がない一方の権益に配慮する原則に従って判決する。
2 夫又は妻が家庭土地請負経営において有する権益等は,法に基づき保護しなければならない。
第1088条【離婚の際の補償請求】
夫婦の一方が子の生育,高齢者の世話,他方の仕事への協力等により,比較的多くの
義務を負担した場合は,離婚をするときに他方に補償を請求する権利を有し,他方は,補償しなければならない。具体的方法は双方の協議による。協議が調わない場合,人民法院の判決による。
第1089条【夫婦共同債務の処理】
離婚をするとき,夫婦の共同債務は,共同で償還しなければならない。共有財産が弁済するのに不足し又は財産を各自が所有する場合は,双方の協議により弁済する。協議が調わない場合,人民法院の判決による。
第1090条【離婚の際の経済的援助】
離婚をするとき,一方の生活が困難である場合,負担能力を有する他方が適切な援助を与えなければならない。具体的方法は双方の協議による。協議が調わない場合,人民法院の判決による。
第1091条【離婚損害賠償】
次のいずれかに該当し,離婚に至った場合,過失がない一方は損害賠償を請求する権利を有する。
(一)重婚しているとき
(二)他人と同居しているとき
(三)家庭内暴力を行ったとき
(四)家庭構成員を虐待,遺棄したとき
(五)その他重大な過失があったとき
第1092条【夫婦共同財産を一方が侵害した場合の法的責任】
夫婦の一方が夫婦共同財産を隠匿,移転,換価,毀損,浪費し又は夫婦共同債務を偽造して他方の財産の不法占有を企図した場合に,離婚により夫婦の共同財産を分割するときは,当該一方に対して,少なめに分割し又は分割しないことができる。離婚後に,他方が上述の行為を発見した場合は,人民法院に訴訟を提起し,夫婦共同財産の再度の分割を請求することができる。
第五章 養子縁組
第xx 養子縁組の成立
第1093条【養子となる者の条件】
次に掲げる未xx者は,養子となることができる。
(一)父母を喪失した孤児
(二)実親を探し出すことができない未xx者
(三)特別な困難により扶養能力がない実親の子
第1094条【送養人の条件】
次に掲げる個人,組織は,送養人(養子に出す者)になることができる。
(一)孤児の後見人
(二)児童福祉機関
(三)特別な困難がxxxの扶養能力がない実親
第1095条【後見人が未xx者を養子に出す場合】
未xx者の父母がいずれも完全行為能力を有さず,かつ父母が当該未xx者に対して重大な危害を及ぼすおそれがある場合,当該未xx者の後見人はxxxを養子に出すことができる。
第1096条【後見人が孤児を養子に出す場合】
後見人は,孤児を養子に出す場合,扶養義務を有する者の同意を得なければならない。扶養義務を有する者が養子に出すことに同意せず,後見人が後見職責を継続して果たす意思がない場合,本法第一編の規定に従って別の後見人を確定しなければならない。
第1097条【実親が子を養子に出す場合】
実親が子を養子に出す場合,双方が共同で行わなければならない。実親の一方が不明であり又は探し出すことができない場合,単独で養子に出すことができる。
第1098条【養親となる者の条件】
養親となる者は,次に掲げる条件を同時に具備しなければならない。
(一)子がない,又は子を一名だけ有すること
(二)養子となる者を扶養,教育,保護する能力を有すること
(三)養子縁組をすべきではないと医学的に判断される疾病に罹っていないこと
(四)養子となる者の健全な成長に不利益となる違法・犯罪の記録がないこと
(五)年齢が満30歳以上であること
第1099条【xx以内の同世代傍系血族の子を養子とする場合の例外】
xx以内の同世代傍系血族の子を養子とする場合,本法第1093条第3号,第 1094条第3号及び第1102条の規定する制限を受けない。
2 華僑がxx以内の同世代傍系血族の子を養子とする場合,さらに本法第1098条第 1号の規定する制限を受けない。
第1100条【養子の人数】
養親となる者に子がない場合,二名の子を養子とすることができる。養親となる者に子がある場合は,一名の子のみを養子とすることができる。
2 孤児,障害児を養子とし,又は児童福祉機関が扶養する実親を探し出すことができない未xx者を養子とする場合は,前項及び本法第1098条第1号の規定する制限を受けない。
第1101条【有配偶者が養子縁組する場合】
有配偶者が養子縁組をする場合,夫婦が共同して行わなければならない。
第1102条【無配偶者が異性の子と養子縁組する場合】
無配偶者が異性の子と養子縁組をする場合,養親となる者と養子となる者の年齢差は満40歳以上なければならない。
第1103条【xx養子の特別規定】
継父又は継母は,xxの実親の同意を得て,xxを養子とすることができ,かつ本法
第1093条第3号,第1094条第3号,第1098条及び第1100条第1項の規定する制限を受けない。
第1104条【自由意思による養子縁組】
養親となる者が養子縁組をすること,及び送養人が養子に出すことは,双方の自由意思によらなければならない。満8歳以上の未xx者を養子とする場合,養子となる者の同意を得なければならない。
第1105条【養子縁組の登記等】
養子縁組は県級以上の人民政府民政部門で登記しなければならない。養子縁組関係は登記した日から成立する。
2 実親を探し出すことができない未xx者を養子とする場合,登記手続をする民政部門は,登記する前に公告を行わなければならない。
3 養子縁組関係の当事者が養子縁組合意の締結を希望する場合,養子縁組合意を締結することができる。
4 養子縁組関係の当事者の双方又は一方が養子縁組の公証手続を求める場合,養子縁組の公証手続を行わなければならない。
5 県級以上の人民政府民政部門は,法に基づき養子縁組の評価を行わなければならない。
第1106条【養子の戸籍登記】
養子縁組が成立した後,公安機関は,国家の関係規定に従って養子のために戸籍登記の手続をしなければならない。
第1107条【実親の親族・友人による扶養】
孤児又は実親が扶養能力を有しない子は,実親の親族,友人が扶養することができる。扶養者と被扶養者の間の関係には,本章の規定を適用しない。
第1108条【優先扶養権】
配偶者の一方が死亡し,他方が未xxの子を養子に出す場合,死亡した一方の父母は,優先的に扶養する権利を有する。
第1109条【渉外養子縁組】
外国人は,法に基づき中華人民共和国において養子縁組をすることができる。
2 外国人は,中華人民共和国において養子縁組をする場合,その所在国の主管機関が当該国の法律に従って行う審査を経て同意を得なければならない。養親となる者は,その所在国で権限を有する機関が交付した当該養親となる者の年齢,婚姻,職業,財産,健康,刑事罰を受けたことの有無等の状況に関する証明資料を提供しなければならず,かつ送養人と書面による協議を締結し,自ら省級,自治区,直轄市の人民政府民政部門で登記しなければならない。
3 前項の規定する証明資料は,その所在国の外交機関又は外交機関の授権を受けた機関の認証を受け,かつ当該国の中華人民共和国大使館・領事館の認証を受けなければならない。但し,国家に別段の規定がある場合を除く。
第1110条【養子縁組に関する秘密保持】
養親となる者,送養人が養子縁組に関する秘密保持を求める場合,その他の者は,その意思を尊重しなければならず,漏えいしてはならない。
第二節 養子縁組の効力
第1111条【養子縁組の効力】
養子縁組が成立した日から,養親と養子の間の権利義務関係は,本法の父母と子の関係に関する規定を適用する。養子と養親の近親族の間の権利義務関係は,本法の子と父母の近親族の間の関係に関する規定を適用する。
2 養子と実親及びその他近親族の間の権利義務関係は,養子縁組の成立により消滅する。
第1112条【養子の氏】
養子は,xx又は養母の氏を称することができ,当事者が合意した場合,元の氏を保留することもできる。
第1113条【養子縁組の無効】
本法第一編の民事法律行為を無効とする規定に該当する事由がある,又は本編の規定に違反する養子縁組行為は無効とする。
2 無効な養子縁組行為は行為時から法的拘束力を有しない。
第三節 養子縁組の解消
第1114条【養子縁組解消の条件】
養親は,養子がxxになる前において,養子縁組を解消してはならない。但し,養親,送養人の双方が協議を経て解消する場合を除く。養子が満8歳以上である場合,本人の同意を得なければならない。
2 養親が扶養義務を履行せず,虐待,遺棄等の未xx養子の合法的権益を侵害する行為がある場合,送養人は,養親と養子の間の養子縁組の解消を求める権利を有する。送養人,養親は,養子縁組の解消に関する協議が調わない場合,人民法院に訴訟を提起することができる。
第1115条【協議による養子縁組解消】
養親とxxの養子の間の関係が悪化し,共同で生活することができない場合,協議を経て養子縁組を解消することができる。協議が調わない場合,人民法院に訴訟を提起することができる。
第1116条【養子縁組の解消登記】
当事者は,協議を経て養子縁組を解消した場合,民政部門で養子縁組の解消登記手続をしなければならない。
第1117条【養子縁組解消の効果】
養子縁組が解消された後,養子と養親及びその他近親族の間の権利義務関係は直ちに消滅し,実親及びその他近親族との間の権利義務関係が自動的に回復する。但し,xx
の養子と実親及びその他近親族の間の権利義務関係が回復するか否かは,協議を経て確定することができる。
第1118条【養子縁組解消後の扶養費給付】
養子縁組が解消された後,養親が扶養するxxの養子は,労働能力が欠如し,生活のための収入源も有しない養親に対して,生活費を給付しなければならない。養子がxxになった後に養親を虐待,遺棄したことにより養子縁組が解消された場合は,養親は養子に対して養子縁組期間に支出した扶養費の補償を求めることができる。
2 実親が養子縁組の解消を請求した場合,養親は実親に対して養子縁組期間に支出した扶養費の適切な補償を求めることができる。但し,養親が養子を虐待,遺棄したことにより養子縁組が解消された場合を除く。
(つづく)