1.革新的将来宇宙輸送プログラムの狙いとJAXAの新たな知財方針
革新的将来宇宙輸送プログラムの共同研究において創出された知的財産の扱いについて
1.革新的将来宇宙輸送プログラムの狙いとJAXAの新たな知財方針
2.「共同研究契約書雛型」のポイント
3.改正条文
革新的将来宇宙輸送プログラム事務局
■革新的将来宇宙輸送プログラムにおける狙い
革新的将来宇宙輸送プログラムの共同研究では、地上産業の課題解決を目指しつつ、宇宙への適用を考えるDual Utilizationをコンセプトとし、以下のように地上と宇宙への成果の社会実装を推進します。
✓地上産業への適用に向けて技術向上した知財の地上活用を促進していきます。
✓文科省ロードマップ実現のため、JAXAが革新的将来宇宙輸送プログラムの基幹ロケット発展型及び高頻度往還飛行型に係る実証及び運用を実施する目的で第三者へ非独占的実施許諾を行う場合は、これに同意いただきます。
✓革新輸送プログラム以外の宇宙輸送事業者への知財活用も促進していきます。
■JAXAの新たな知財方針
2021年8月、JAXAは以下新たな知財方針の下、共同研究成果の取扱いの見直しを行いました。
①自己実施の自由化 (不実施補償の廃止)
②第三者実施許諾の自由化(非独占原則) 及び 独占制度の導入
③実施の自由に対するノウハウ秘匿義務の優先
■ 企業・大学等のコメント
本プログラムでは、プログラムの狙いと企業・大学等からいただいたコメントを踏まえ、
JAXAの新たな知財方針に基づき、次頁のように「共同研究契約書雛型」を改正いたしました。
1.革新的将来宇宙輸送プログラムの狙いとJAXAの新たな知財方針
対応策 | ||
①第三者実施許諾の自由化 | 【競合他社への許諾】 ・JAXAが共有の知的財産の実施等を競合する企業に施許することが可能であり不合理と思われる。事前に相手方の書面による同意を得ることを前提とする内容へ契約書の修正 を希望する。 | 【競合他社への許諾】 ・ノウハウの秘匿は第三者許諾の自由化に優先することは契約書第1条(定義)及び第22条(研究成果におけるノウハウの特定)から自明ではあるが、第19条(知的財産の実施等に関する取扱い)において、許諾対 象にノウハウが含まれる場合は別途協議のうえ合意が必要、の旨を記 |
載し、第三者許諾自由化の例外であることを明記する。 | ||
【バックグラウンド知財への影響】 ・当社がすでに保有している知財は適切に保護されるかの | ・JAXAの第三者許諾が自己の事業に重大な影響を与えると判断される 等の場合は「独占制度」の利用を提案させていただく。 | |
懸念がある。 ・弊社所有の技術・ノウハウについては、第三者実施許諾自由化の対象から除外してほしい。 | 【バックグラウンド知財への影響】 ・バックグランド知財は第三者許諾の自由化の対象とはならないこと | |
・バックグランドIPの第三者実施許諾の自由化には同意できない。 | は契約書第5条(情報交換)から自明ではあるが、第19条(知的財産の実 xxに関する取扱い)において、バックグランド知財が含まれる場合 は別途協議のうえ合意が必要、の旨を記載し、第三者許諾自由化の例 | |
外であることを明記する。 | ||
②独占制度の導入 | 【独占・非独占の選択時期】 ・共有知財が生じた後に、その都度、独占・非独占を選択 | 【独占・非独占の選択時期】 ・独占・非独占は、知財が創出された時点でその都度、選択いただく |
できるのか? | ことを第2回RFP公募資料で説明。 | |
【非独占選択後の変更】 ・企業側が非独占を選択した後に、途中で独占へ切り替え | 【非独占選択後の変更】 ・共同研究契約締結時に非独占を選択した場合、以降、独占へ変更で | |
ることは可能か? | きないことを第2回RFP公募資料で説明。 | |
【独占料】 ・独占料の請求計算式もしくは過去の実例を教示してほし | 【独占料】 ・独占料の算定式と革新的将来宇宙輸送プログラムの基幹ロケット発 | |
い。 ・独占期間中、モノに実装されてから実施料を支払う、試験期間中は支払わないといったことは可能か? | 展型及び高頻度往還飛行型に係る実証及び運用を実施するためJAXAが 第三者許諾する場合は独占料について協議することを第2回RFP公募資料で説明。 ・独占期間中は実施の有無に関係なく独占料をお支払いいただくこと | |
を第2回RFP公募資料で説明。 |
1.革新的将来宇宙輸送プログラムの狙いとJAXAの新たな知財方針
– JAXAの新たな知財方針に対する企業・大学等のコメント
・商用目的で実施する場合、相手方の同意を不要とし、利用料の徴収(不実施補償)を廃止します。
②第三者実施許諾の自由化(非独占原則) 及び 独占制度の導入
・第三者へ実施許諾する場合、相手方の同意を得ずに事前通知のみとします。
ただし、以下の場合は別途協議のうえ、合意を必要とします。
①許諾先が日本国籍を有しない個人又は法人の場合
②許諾の対象に相手方のバックグラウンド知財が含まれる場合
③許諾の対象にノウハウとして指定するものが含まれる場合
・相手方が「独占」を希望する場合は、JAXAは対価を条件に「独占」を認めることとします。
(汎用的・基盤的に使用できる技術など、JAXAが広く成果普及すべき知的財産が生じる共同研究については原則、「非独占」とすることにご理解をいただきたいと考えます。)
⇒この場合、JAXAとは「共同研究契約書(独占)」を締結いただきます。
⇒本契約を締結した場合も、独占の対象は共同研究で生じた共有の知的財産毎に選択いただきます。
ただし、革新的将来宇宙輸送プログラムの基幹ロケット発展型及び高頻度往還飛行型に係る実証 及び運用に用いる知的財産の実施については、独占の対象から外すことをご了解いただきたいと考えます。(独占の対価を協議させていただきます。)
③実施の自由に対するノウハウ秘匿義務の優先
・共同研究で生じたノウハウを知的財産として確実に識別・保護するため、xxxxの秘匿義務は実施の 自由(自己実施(第三者をして行う自己実施を含む)の自由 及び 第三者実施許諾の自由)に優先することを明確にしました。
2.「共同研究契約書雛型」のポイント
自己実施・第三者実施許諾の自由化
◆実施目的を問わず、自由に、相手方への金銭の支払いを伴わずに自己実施ができます。
◆相手方の同意を得ずに、事前に通知を行うことで、第三者に実施許諾できます。
ただし、実施許諾先が日本国籍を有しない個人又は法人の場合や、実施許諾しようと する対象に相手方のバックグラウンド知財やノウハウが含まれる場合は、別途協議のうえ、合意が必要です。
※「独占」の場合、第22条は第23条に読み替え。
非独占・独占
(知的財産の実施等に関する取扱い)
第19条 甲及び乙は、本共同研究の実施により得られた共有の知的財産を、自己の事業の目的で利用する場合(自己の事業目的で自己以外の者をして利用させる場合を含む。)は、相手方の同意を得ることなく無償で利用することができる。
2 甲及び乙は、相手方に書面による事前通知を行うことにより、相手方の同意を得ることなく、共有の知的財産を第三者に対して実施又は利用(「実施等」という)を許諾することができる。ただし、以下の各号に該当する場合には、本項の規定にもかかわらず、甲及び乙は別途協議のうえ、第三者への実施等許諾の可否及び条件等について合意し決定しなければならない。
(1) 実施等許諾をしようとする第三者が日本国籍を有しない個人又は法人である場合
(2) 実施等許諾しようとする共有の知的財産に第5条に基づき相手方から提供又は開示された知的財産が含まれる場合
(3) 実施等許諾しようとする共有の知的財産に第22条に基づき指定するノウハウが含まれる場合
3 (省略)
4 甲及び乙は、本条2項により第三者に実施等許諾する場合、当該第三者から徴収する実施等の対価は、当該知的財産の 持分に応じて甲及び乙に分配される。
3.改正条文 - 自己実施・第三者実施許諾の自由化 【第19条】
独占制度の導入
◆JAXAの第三者に対する実施許諾を
独 占
(甲による第三者実施許諾権の不行使)
第20条 前条にもかかわらず、乙が独占的な事業化を目的と して甲による第三者実施許諾権の不行使を希望する場合には、
一定期間不行使とすることができます。独占の対価、独占期間等について定めた契約を出願までに別
不行使の期間を独占期間とします。
◆条件
・共有知的財産の出願にかかる費用、維持管理費用の全額負担
・実績報告書の提出
・独占料の支払い (基本40万円/年)
ただし、JAXAの自己実施は制限されません。また、革新的将来宇宙輸送プログラム の基幹ロケット発展型及び高頻度往還飛行型に係る実証及び運用に用いる知的財産の実施については、独占の対象から外させて頂きたいと考えております。この場合の独占料については協議させていただきます。
途締結し、当該契約に定められた条件のもと、xは当該知的財産を第三者に実施許諾する権利を行使しないものとする。ただし、革新的将来宇宙輸送プログラムの基幹ロケット発展型及び高頻度往還飛行型に係る実証及び運用を実施するため(以下、
「本目的」という。)甲が第三者に当該知的財産権を実施許諾する必要がある場合には、乙は甲による第三者実施許諾に同意するものとし、当該第三者許諾の条件について本項にもとづき別途締結する契約において規定するものとする。
2 前項の場合において、独占期間に生じる当該共有の知的財産の出願および権利維持等に要する費用は、第17条の規定にも関わらず乙がその全額を負担するものとする。
3 前二項の場合でも、xは自己の研究開発目的(自己の研究開発目的で自己以外の者をして利用させる場合を含む。)に限り、共有の知的財産を自由に実施、使用又は利用する権利を有する。
3.改正条文 - 独占制度の導入 【第20条】
xxxx秘匿の優先
◆ノウハウの使用は、秘密保持が優先します。
(ノウハウの特定や秘匿について定めた
「研究成果におけるノウハウの特定」条項で、共有知財の自己実施及び第三者許諾を定めた条項に優先することを明記。)
ノウハウの特定にあたっては、過度な実施制限とならないよう、共同研究で得られた成果の普及、社会実装を見据えた知財の適切な識別・保護の在り方(何を出願し、何をノウハウとして秘匿するか)をご検討いただきますようお願いします。
※「独占」の場合、第22条は第23条に、 第19条は第19条及び第20に読み替え。
非独占・独占
(定義)第1条
(1)~(4) (省略)
(5)本契約において、知的財産の「利用」とは、特許法第2条第3項に定める行為、実用新案法第2条第3項に定める行為、意匠法第2条第2項に定める行為、商標法第2条第3項に定める行為、半導体集積回路の回路配置に関する法律第2条 第3項に定める行為、著作xx第21条から第28条に規定する権利の対象となる行為、種苗法第2条第5項に定める行為並びにノウハウの使用(本契約第22条に定めるノウハウの秘匿義務を遵守したうえで自らの事業目的に使用することをい う。)をいう。
(研究成果におけるノウハウの特定)第22条
1~3 (省略)
4 甲及び乙は、本条の規定は第19条に優先することを確認する。
3.改正条文 - ノウハウ秘匿の優先 【第1条】【第22条】