Contract
日本国政府 補償契約約款
第xx 総則
(この約款の内容)
第一条 この約款は、展覧会における美術品損害の補償に関する法律(平成二十三年法律第十七号)の規定に基づく美術品政府補償契約の約款とする。
(定義)
第二条 この約款における次に掲げる用語の定義は、それぞれ以下のとおりとする。
一 補償契約者:展覧会の主催者 二 被補償者:対象美術品の所有者
三 対象美術品:補償契約の対象となる美術品で別添一覧表に記載のもの
四 約定評価額:対象美術品の価額として、当該対象美術品の輸送を開始する前に文部科学大臣(以下「甲」という。)及び補償契約者(以下「乙」という。)の同意を得て、被補償者(以下「丙」という。)が提示した別添一覧表に記載の価額
第二章 補償内容
(補償対象損害)
第xx xは、全ての偶然の事故によって直接的に対象美術品に生 じた物理的損害(地震若しくは噴火若しくはこれらによる津波又 はテロリズム(合法的あるいは非合法に設立された一切の政体を、武力又は暴力によって転覆させあるいは支配するために仕向け られた活動を実行する組織のために活動し、あるいはその組織と 連携して活動する者(政治的、思想的又は宗教的動機から活動す る一切の者を含む。)の行為をいう。以下同じ。)によって生じた 損害を含み、第九条各号に規定する事由によって生じた損害を除 く。以下「補償対象損害」という。)に対して補償金を支払う。
2 対象美術品が補償対象損害によって次の各号に掲げる状態になった場合は、対象美術品に全損があったものとする。
一 対象美術品が滅失したか又はこれに類する大損害を受けた場合
二 丙が対象美術品を喪失して回収の見込みがない場合
三 対象美術品を積載している航空機の行方が不明となり、対象美術品が滅失したと合理的に判断される場合(ただし、その行方不明が補償対象損害以外の事故によるものと推定される場合を除く。)
(補償対象損害の額の評価)
第四条 補償対象損害の額は、約定評価額に基づいて算定する。
2 補償対象損害によって損傷を被った対象美術品が修復できる場合における補償対象損害の額は、修復費用及び修復後の減価の合計額(当該合計額が約定評価額を超える場合にあっては、約定評価額)とする。
(組み物・揃い物)
第五条 対象美術品が組み物又は揃い物の場合(組み又は揃いを構成する各個品にそれぞれ約定評価額が定められている場合を除く。)は、組み又は揃いを構成する各個品の重要性を考慮に入れて組み又は揃い全体の減価割合相当部分を補償対象損害の額とするが、一組み又は一揃いの全損とは評価しない。
(補償期間)
第六条 補償期間は、対象美術品が展示場所への輸送の目的をもっ て対象美術品の保管場所において壁から外し始められたとき、棚 から取り出され始めたとき、その他の方法で移動を開始したとき、又は政府補償証明書に記載された補償開始日のいずれか遅いと きに始まり、輸送、梱包、開梱、展示、一時保管等の通常の輸送 過程を経て対象美術品が丙の指示する保管場所の壁、棚その他の
置き場所に引き渡され、対象美術品の詳細な状態について記載した報告書(以下「状態報告書」という。)が乙及び丙(これらの者の代理人を含む。)によって確認されたとき、又は政府補償証明書に記載された補償終了日のいずれか早いときに終わる。ただし、補償期間内において、最初の梱包時に状態報告書が乙及び丙
(これらの者の代理人を含む。)によって確認されるまでは、いかなる対象美術品もこの補償契約によって補償されない。
2 輸送過程等の変更について甲、乙及び丙が同意したときは、補償期間を延長できるものとする。
3 前二項の規定に従うこととして、この補償契約は、乙又は丙の 支配しえない遅延、一切の離路、やむを得ない荷卸し、再積込又 は積替の期間中及び運送契約によって運送人に与えられた自由 裁量権の行使から生じる一切の危険(損害の発生の可能性をいう。以下同じ。)の変更の期間中、有効に存続する。
(損害保険契約の締結)
第七条 乙は、対象美術品について、補償対象損害の額のうちこの補償契約により補償される額を控除した額を填補するための損害保険契約を締結する場合には、当該対象美術品ごとの約定保険価額を約定評価額と同一の額とするものとする。
(補償金の支払)
第xx xがこの補償契約により支払う補償金は、次の各号に掲げる場合において、補償対象損害の額の合計額から当該各号に定める額(当該各号に掲げる場合のいずれにも該当する場合にあっては当該各号に定める額の合計額)を控除して支払うものとし、当該控除された金額は、乙により支払われるものとする。
一 次号以外の補償対象損害(以下「通常損害」という。)の額の合計額が50億円を超える場合 50億円
二 次に掲げる補償対象損害(以下「特定損害」という。)の額の合計額が1億円を超える場合 1億円
イ 地震若しくは噴火又はこれらによる津波、洪水その他の水災を直接又は間接の原因とする火災、破裂若しくは爆発
(気体又は蒸気の急激な膨張を伴う破壊又はその現象をいう。)、損壊、埋没又は流失によって生じた損害
ロ テロリズムによって生じた損害
2 2以上の事故が1展覧会の期間中において発生するときは、補償対象損害の額は、それら全ての事故による損害の総額とする。
3 第一項の規定にかかわらず、甲がこの補償契約により支払う補償金の合計額は、950億円を限度とする。
(免責事由)
第xx xのいずれかに該当する事由によって生じる滅失又は損傷については、この補償契約による補償の対象としない。
一 丙又はその法定代理人若しくは使用人(独立した請負業者を除く。以下同じ。)の故意又は重大な過失によって生じる滅失、損傷又は費用
二 対象美術品の通常の漏損、重量若しくは容積の通常の減少、対象美術品の固有の瑕疵若しくは性質によって生じる滅失、損傷若しくは費用又は自然の消耗
三 直接であると間接であるとを問わず、下記の事由から生じる滅失、損傷、責任又は費用
イ 一切の核燃料、核廃棄物又は核燃料の燃焼による電離放射線又は放射能汚染
ロ 一切の原子力設備、原子炉その他の原子力構造物又はそれらの原子力構成部分の持つ放射能の有毒性、爆発性その他の危険性又は汚染させる性質
ハ 原子核分裂、原子核融合若しくは他の同種の反応又は放射線若しくは放射性物質を利用する一切の武器若しくは装
置
ニ 一切の放射性物質の有毒性、爆発性その他の危険性又は汚染させる性質。ただし、核燃料以外のラジオ・アイソトープ(放射性同位体)が、商業用、農業用、医療用、科学用その他の平和的目的のために作られ、輸送され、保管され、又は使用される場合には、適用されない。
ホ 化学兵器、生物兵器、生物化学兵器又は電磁器兵器の使用
四 陸上において下記の事由から生じる滅失、損傷又は費用
イ 戦争、内乱、革命、謀反、反乱若しくはこれらから生じる国内闘争、又は敵対勢力によって若しくは敵対勢力に対して行われる一切の敵対的行為
ロ イの危険から生じる捕獲、拿捕、拘束、抑止又は拘留及びこれらの結果又はこれらの一切の企図
ハ 遺棄された機雷、魚雷、爆弾その他の遺棄された兵器
(個々の補償金の額の算定方法)
第xx xが個々の対象美術品ごとに支払う補償金の額は、補償対象損害の額の合計額から第八条第一項に定める額を控除した金額(当該金額が950億円を超える場合には950億円)に、当該対象美術品に生じた補償対象損害の額が補償対象損害の額の合計額に占める割合を乗じて算定する。具体的には、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする。
一 第八条第一項第一号に掲げる場合(第三号に掲げる場合に該当する場合を除く。)における通常損害が生じた対象美術品ごとの補償金の額は、以下の数式により算出する。
個々の美術品について生じた通常損害の額
(通常損害の額の合計額-50億円)(※)×
通常損害の額の合計額
※当該額が950億円を超える場合は950億円
二 第八条第一項第二号に掲げる場合(第三号に掲げる場合に該当する場合を除く。)における特定損害が生じた対象美術品ごとの補償金の額は、以下の数式により算出する。
個々の美術品について生じた特定損害の額
のうち当該対象美術品に係る部分については、その効力を失う。ただし、乙又は丙がその旨を甲に申し出て、甲の承認を得た場合は、この限りでない。
(補償契約の取消し)
第十三条 乙又は丙の詐欺又は強迫によって甲が補償契約を締結した場合には、甲は、乙に対する書面による通知をもって、この補償契約を取り消すことができる。
(補償契約の解除)
第十xx xは、次のいずれかに該当する事由がある場合には、乙に対する書面による通知をもって、この補償契約を解除することができる。
一 乙又は丙が、甲にこの補償契約に基づく補償金を支払わせることを目的として損害を生じさせ、又は生じさせようとしたこと
二 前号に掲げるもののほか、乙又は丙が、前号の事由がある場合と同程度に甲のこれらの者に対する信頼を損ない、この補償契約の存続を困難とする重大な事由を生じさせたこと
三 乙又は丙が、この補償契約の締結の際、第十六条の規定により甲が告知を求めたものについて、故意又は重大な過失によって事実を告げなかったこと又は事実と異なることを告げたこと
四 乙が、第十八条の規定による報告をしなかったこと又は虚偽の報告をしたこと
2 前項の規定による解除が補償対象損害の発生した後になされた場合であっても、前項各号のいずれかに該当する事由が生じたときから解除がなされるときまでに発生した補償対象損害に対しては、甲は、補償金を支払わない。この場合において、既に補償金を支払っていたときは、甲は、乙又は丙(当該解除が乙の責めに帰すべき事由により行われたものであるときには乙)に対して、その返還を請求することができる。
第四章 補償契約者の義務
(安全配慮義務)
第十五条 乙、丙及びこれらの者の使用人は、展覧会を安全に実施
(特定損害の額の合計額-1億円)(※)×
特定損害の額の合計額
するために、梱包、輸送、展示その他の作業に当たっては、乙が
※当該額が950億円を超える場合は950億円
三 第八条第一項第一号及び第二号に掲げる場合のいずれにも該当する場合における補償対象損害が生じた対象美術品ごとの補償金の額は、以下の数式により算出する。
個々の美術品について生じた補償対象損害の額
xの承認を得て補償契約申請書に記載した計画に基づき、最大限の注意と配慮をもって対象美術品の安全を確保しなければならない。
(告知義務)
第十六条 乙及び丙は、この補償契約の締結の際、危険に関する重要な事項のうち、補償契約申請書その他の書類の記載事項とする
(補償対象損害の額の合計額-51億円)(※)×
補償対象損害の額の合計額
ことによって甲が告知を求めたものについて、甲に事実を正確に
告げなければならない。
※当該額が950億円を超える場合は950億円
(外国通貨による支払等)
第十一条 対象美術品の約定評価額を外国通貨で定めた場合における補償金の支払は、当該外国通貨で行うものとする。
2 前項の場合における第八条及び第十条の規定の適用に係る外国通貨と本邦通貨との間の換算は、この補償契約の締結時における外国貨幣換算率を用いて行うものとする。
第三章 補償契約の無効等
(補償契約の効力)
第十二条 乙が、補償金を不法に取得する目的又は第三者に補償金を不法に取得させる目的をもって締結した補償契約は無効とする。
2 補償契約締結後、対象美術品が譲渡された場合には、補償契約
(通知義務)
第十七条 補償契約締結後、次のいずれかに該当する事実が発生した場合には、乙、丙及びこれらの者の使用人は、事実の発生がその責めに帰すべき事由によるときはあらかじめ、責めに帰すことのできない事由によるときはその発生を知った後、遅滞なく、その旨を甲に申し出て、承認を請求しなければならない。
一 輸送の開始又は遂行が著しく遅延すること
二 航空機の所有者、管理者、用機者(チャータラー)又は運航者の支払不能又は金銭債務不履行により、輸送の通常の遂行が妨げられること
三 コンピュータ、コンピュータシステム、コンピュータソフトウェアプログラム、悪意あるコーディング、コンピュータウィルス、電子処理その他電子システムの使用又は操作による攻撃を受けること
四 前三号の事実のほか、補償契約申請書その他の書類の記載事
項の内容に変更を生じさせる事実が発生すること
2 前項各号のいずれかに該当する事実がある場合であって、危険の増大が認められ、かつ、安全を確保することができないと判断されるとき(前項の規定により甲が承認した場合を除く。)は、xは、その事実について承認を請求する書面を受領したと否とにかかわらず、乙に対する書面による通知をもって、この補償契約を解除することができる。
3 第一項に規定する手続を怠った場合には、甲は、同項各号のいずれかに該当する事実が発生したときから甲が承認を請求する書面を受領するまでの間に生じた補償対象損害に対しては、補償金を支払わない。ただし、当該手続を怠ったことについて、正当な理由がある場合にはこの限りでない。
(報告の徴収)
第十八条 乙は、甲がこの補償契約の履行に必要な限度において、当該展覧会の実施状況について報告を求めた場合は、これに応じなければならない。
(丙の同意書の提出)
第十九条 乙は、補償契約締結後速やかに、丙に対し、この補償契約書の記載内容を説明するとともに、丙がこの補償契約の利益を享受すること及びこの補償契約の記載内容に関する同意書を得て、その写しを甲に対して提出しなければならない。
2 当該同意書の写しが甲に提出されるまでは、この補償契約はその効力を生じない。
(対象美術品の状態報告書の作成)
第二十条 乙、丙又はこれらの者の代理人は、補償期間の開始前に状態報告書を作成するとともに、対象美術品の借受時、梱包及び開梱時並びに返却時に、学芸員その他の美術品の点検及び修復について知識及び経験を有する者に対象美術品の状態を確認させ、その記録を作成及び保管しなければならない。
(損害防止義務)
第二十一条 乙及び丙は、補償対象損害が発生したこと又はその疑いがあることを知った場合は、正当な理由がある場合を除いて、遅滞なく、甲に対し、その旨の通知を発しなければならない。この場合において、甲は、事故が生じた又はその疑いがある対象美術品について、その状況を調査することができる。
2 乙、丙及びこれらの者の使用人は、補償対象損害が発生したことを知った場合は、これによる損害の拡大の防止に努めなければならない。
3 乙、丙及びこれらの者の使用人は、第三者に対して、損害に対する賠償、補償その他の給付を請求することができる場合には、その請求権の保全又は行使に努めなければならない。
第五章 補償金の請求及び支払に係る手続
(補償金の請求)
第二十二条 丙の甲に対する補償金請求権は、補償対象損害が発生したときから発生し、これを行使することができる。ただし、補償金の支払の請求は、原則として乙を経由して行うものとする。
2 前項の請求に当たっては、乙は、次の書類又は証拠のうち、甲が求めるものについて事実に基づいて、甲に提出しなければならない。
一 補償金の請求書二 損害見積書
三 その他甲が補償金の支払に必要な事項の確認を行うために欠くことのできない書類又は証拠として補償契約の申請要領において定めたもの
3 甲は、必要に応じ、乙及び丙に対して、前項に掲げるもの以外の書類若しくは証拠の提出又は甲が行う調査への協力を求めることができる。
4 前項の場合において、乙及び丙は、甲が求めた書類若しくは証拠を速やかに提出し、又は甲が行う調査に必要な協力をしなければならない。
(補償金の支払時期)
第二十三条 乙が前条の規定に基づいて補償金の請求手続を完了したときは、甲は、ただちに補償金を支払うために必要な事項を確認し、補償金を支払うための政府内の財政上の手続を完了した後、速やかに補償金を支払うものとする。
(この約款に定める義務違反)
第二十四条 乙、丙又はこれらの者の使用人が、第十五条、第二十一条並びに第二十二条第二項及び第四項に規定する義務を履行しなかった場合には、甲は、当該義務の不履行により生じた損害の額を差し引いて補償金を支払う(当該損害の額が丙に支払われるべき補償金の額以上の場合には補償金を支払わない)ものとする。
(時効)
第二十五条 補償金請求権は、補償対象損害が発生したときの翌日から起算して3年を経過した場合は、時効によって消滅する。
(請求権代位)
第二十六条 損害が生じたことにより丙が損害賠償請求権その他の債権を取得した場合において、甲がその損害に対して補償金を支払ったときは、その債権は甲に移転する。ただし、移転するのは次に掲げる額のうちいずれか少ない額を限度とする。
一 甲が支払った補償金の額二 丙が取得した債権の額
2 乙及び丙は、前項の規定により甲が取得する債権の保全及び行使並びにそのために甲が必要とする証拠及び書類の入手に協力しなければならない。この場合において、甲に協力するために必要な費用は、乙の負担とする。
(請求権の不行使)
第二十七条 この補償契約の補償期間内において対象美術品が最大限の配慮をもって取り扱われることを前提として、梱包時、輸送時及び展示時における損害について、乙、丙、梱包業者、輸送業者その他の関係する者に対しては、甲は請求権を行使しない。
(買い戻し)
第二十八条 対象美術品が盗難にあったことにより甲が補償金を支払った場合であって、その後、当該対象美術品が発見されたときは、丙は、発見から30日以内の書面による意思表示により、甲が支払った補償金の額にその他甲が取得に要した額を加えた額をもって甲が取得した当該対象美術品を買い戻すことができる。
(補償金支払後の補償契約)
第二十九条 対象美術品に全損があった場合は、この補償契約のうち当該対象美術品に係る部分については、その補償金支払の原因となった損害の発生したときに終了する。
(補償金支払後の弁済)
第三十条 乙又はその法定代理人若しくは使用人の故意又は重大な過失によって生じる滅失、損傷又は費用に対して甲が丙に補償金を支払ったときは、その補償金の額を乙は甲に支払うものとする。
第六章 雑則
(訴訟の提起)
第三十一条 この補償契約に関する訴訟については、日本国内における裁判所に提起するものとする。
(準拠法)
第三十二条 この補償契約に関する事項については、日本国の法令に準拠する。