Contract
0.はじめに 2
0-1 本講座の⽬的・⽬標 2
1. 知的財産権と産業財産権 4
1-1 知的財産権の基礎 4
1-2 知的財産戦略 7
1-3 産業財産権の基礎 9
1-4 知的財産戦略の基礎 10
1-5 著作権 12
1-6 知的財産戦略推進の環境づくり 13
2.契約実務 14
2-1 契約とは 14
2-2 デザイン契約の基本 16
3.ケーススタディ 23
ケース① 23
ケース② 24
4.まとめ エラー! ブックマークが定義されていません。
0.はじめに
0-1 本講座の⽬的・⽬標
●本講座の⽬的
ブランドは短期的に出来上がるものではなく、5年、10年と⻑期的なデザイン・プロデュース
(商品開発と情報発信)に取り組んでいくことで形成されていきます。その間、ブランドを形成するコンセプト、名称、意匠や形状などを競合他社から模倣されてしまっては、ブランドの価値を毀損してしまうことになるでしょう。ブランドを形成するためには市場に対して、ブランド価値を発信するだけでなく、ブランドの価値・権利を競争相⼿から適切な⼿段を通して守っていくことが求められます。
また、持続発展的に事業者と⽀援者がデザイン経営に取り組んでいくためにも、事業者と⽀援者が信頼関係で結ばれると同時に、Win-Win の関係を構築していくことが求められます。
本講座では、ブランド価値の形成を実現するために⽀援者と事業者がともに理解しておくべき知的財産権について取り扱います。また、⽀援者と事業者がお互いの利益を損なうことなく信頼関係を持続するための契約締結のポイントを取り扱い、継続的な協働とデザイン経営推進を実現します。
●本講座の学習⽬標
1. デザイン・プロデュースを推進する上で抑えておくべき知的財産権の基礎を理解する
2. デザイン・プロデュースを推進する上で締結しておくべき⽀援者と事業者の契約のポイントを理解する
1.知的財産権と産業財産権
我が国には、知的創造活動によって⽣み出されたものを、創作した⼈の財産として保護する知的財産権制度が存在します。これらの制度を活⽤すれば、⾃分たちが⽣み出したブランドの価値を守ることができます。他⽅、知的財産権制度を知らずにデザイン・プロデュースに取り組むことは、時に他社の権利を侵害することにつながりかねず、トラブルにまで発展することがありま す。本章では、このようにブランドを守り、トラブルを防ぐ知的財産権の基本的なポイントを理解しておきましょう。
1-1 知的財産権の基礎
「知的財産」及び「知的財産権」は、知的財産基本法において次のとおり定義されています。
●知的財産は「財産的価値を持つ情報」
知的財産とは⾔い換えると「財産的価値を有する情報」であることが挙げられます。かつて、財産とは物や⾦銭を指すものでした。これら「もの」に対して「情報」は次のような特質を持っています。
・容易に模倣される
・利⽤されることにより消費されることがない=多くの者が同時に利⽤可能
これらの特質を踏まえ、知的財産権制度は、創作者の権利を保護するために特定の情報に財産的価値があるとみなし、本来は⾃由に利⽤できる情報に社会が必要とする限度で⾃由を制限する制度ということができます。
●知的財産権の種類
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●知的財産権の所轄官庁
権利の種類 所轄官庁 | |
特許権・実⽤新案権・意匠権・商標権 | 特許庁 |
回路配置利⽤権(半導体集積回路の回路配置に関する法律)営業秘密(不正競争防⽌法) | 経済産業省 |
著作権 | ⽂化庁 |
(不当な表⽰) | (消費者庁) |
(肖像権・パブリシティ権) | ―――――――― |
●絶対的独占権と相対的独占権
絶対的独占権 | 客観的内容を同じくするものに対して排他的に ⽀配できる | 特許権、実⽤新案権、 意匠権、商標権及び育成者権 |
相対的独占権 | 他⼈が独⾃に創作したものには及ばない | 著作権、回路配置利⽤ 権、商号及び不正競争法上の利益 |
1-2 知的財産戦略
●中⼩企業の知的財産戦略
いわゆるビジネスモデル特許(コンピュータソフトウェア関連発明)も多く出願されるようになった昨今、製造業のみならず⾮製造業においても特許は⾝近な存在といえます。そこで注⽬が集まっているのが、知的財産戦略です。
知的財産戦略とはデザイン・プロデュースの構想段階や開発・加⼯段階においても、他社の知的財産権の状況を把握し、独⾃の開発戦略を⽴て、そして差別化した独⾃の成果に対して知的財産権を確⽴、活⽤し他社に対する参⼊障壁を構築しながら市場を獲得する戦略を⾔います。そし て、次のような理由で中⼩企業においてこそ知的財産戦略が重要です。
・資本⼒のない中⼩企業で先の事例のような知的財産戦略上の失敗による影響は多⼤
・グローバル競争環境が進む中、⾃社の技術、製品の品ぞろえを守る必要がある
(⼀つの技術・製品における優位性を失うことによる影響は多⼤)
●知的財産戦略のメリット
1.独⾃の成果について漏れのない的確な権利を取得できる
2.知財を武器に市場を維持、拡⼤できる → 結果的にブランドの形成につながる
3.知財の種々な活⽤による更なる収益の拡⼤
1-3 産業財産権の基礎
知的財産権のうち、特許権、実⽤新案権、意匠権及び商標権の 4 つを「産業財産権」といいま す。産業財産権制度は、新しい技術、新しいデザイン、ネーミングなどについて絶対的独占権を与え、他社の模倣から保護し、研究開発へのインセンティブを付与したり、取引上の信⽤を維持することによって、産業の発展を図ることを⽬的にしています。
これらの権利は、特許庁に出願し登録されることによって、⼀定期間、独占的に実施(使⽤)できる権利となります。そして、デザイン・プロデュースに取り組む際には、これらの権利を侵害していないかどうかについても⼗分に調査することが求められます。
●産業財産権の取得費⽤
産業財産権は、特許庁に出願し、登録されることによって権利が発⽣しますが、⼿続きに必要な費⽤はそれぞれ異なります。開発された新製品や新技術はやみくもに出願するのではなく、その費⽤も考慮に⼊れて考えねばなりません。
1-4 知的財産戦略の基礎
●権利化を⽬指すかノウハウで保持するか
・特許や実⽤新案:⼀定の期間、権利が与えられますが、その技術は公開される
特許などで権利化
侵害発⾒が容易
競合他社が追いつく可能性⾼い
・ノウハウ:知られるまではその技術は秘密のままで守られる
ノウハウとして秘密管理
侵害発⾒が困難
競合他社が追いつく可能性低い
●成果をどの知的財産権で守るのか?
権利化してデザイン・プロデュースの成果を保護する場合、どの知的財産権でどのように保護するのが⼀番よいか、これがまず知的財産戦略の第⼀歩です。せっかく作りあげた成果に対して守るべき知的財産権を間違えてはせっかくの成果が⽔泡と帰してしまいます。
●保護の対象は何か
特許と実⽤新案では権利の保護対象が異なります。
特許:その新製品の特徴ある技術の創作すべてが保護対象。新製品を構成する材料⾃体や形状、構造の他、その製法や装置、使⽤法等が対象
実⽤新案:保護の対象が特許より狭く、新製品の物の形状や構造またはその組合せが対象
●デザインの守り⽅ - 意匠
商品のデザインによって消費者の購買意欲に⼤きな差をもたらします。デザインは商品の顔でもあり企業の顔ともなる権利です。従ってデザイン・プロデュースの際には、他社デザインとは全く異なる独⾃性の⾼いデザインを施します。
このようなデザインを守る権利が意匠です。意匠の権利範囲は外観のみの権利ですが、極⼒その権利範囲を広く確実なものとするために意匠の特徴部分を部分意匠として出願するとか、本意匠と合わせて関連意匠の出願をし、他社参⼊を阻⽌していきます。
●特許権と意匠権を組み合わせる
デザイン・プロデュースの成果物の形状や模様、⾊彩を作るにはそこに必ず技術が⼊っているはずです。その技術に新規で特徴あるものが含まれるのであれば、特許権や実⽤新案権のとれる発明や考案が含まれいる可能性があります。新技術は特許、実⽤新案権で守り、デザインは意匠権で守るという組み合わせでさらにブランドを守ることができます。
●ネーミングを商標権で守り、⻑く親しまれることでブランド価値を⾼める
技術は特許権、実⽤新案権で守り、デザインは意匠権で守り、そしてブランドの看板としての名前を付けて、それを商標権で守ります。その名前が商品・サービスの品質、価値と相まって⻑く親しまれると、信頼の旗印となり、ブランド価値が⾼まっていきます。
1-5 著作権
グラフィック・デザイン、パッケージ・デザイン、WEB デザインなどの創作を⾏う際には著作権についても理解しておく必要があります。
著作権制度 : 創作した作品(著作物)を他⼈に無断で利⽤されないようにする制度
●著作権は相対的独占権である
先述の通り、産業財産権(特許権、実⽤新案権、商標権、意匠権)は絶対的独占権がありまし た。これに対して、著作権は相対的独占権が認められます。相対的独占権とは、「他⼈が独⾃に創作したものには及ばない独占権」のことで、意図的に(あるいは知り得る状況下で)他者の作品を模倣しない限りは、著作権を侵害したことにはならない、というのが原則です。
これは、特許庁などに申請・登録されることで権利が発⽣する産業財産権と異なり、著作権は創作した時点で発⽣する(⾃然発⽣的)ために、創作者にとっては他者の著作権を侵害しているかどうかを模倣しているかどうかを確認することが困難であるという特質を反映しています。
●著作権は表現に発⽣する
著作権は表現を保護していますので、「パッケージに地元の花をあしらってはどうか?」などのようなアイディアそのものは保護されません。
1-6 知的財産戦略推進の環境づくり
知的財産戦略を進めるために、最も重要なことは、事業者のトップが知的財産の重要性をしっかり認識し、事業者全体で共通認識を持つことです。デザイン企画、製造・販売の⼀連の流れの中で知的財産権を念頭において、デザイン経営に取り組むことで知的財産戦略を推進することができます。
●社内の知財エキスパートとの協働体制
発掘した知的財産をどの知的財産権で保護するか、また如何に強く広い権利を確保するかが極めて重要です。知的財産を担当する⼈材が知的財産の⽣み出す部署(製造現場など)と密接にコンタクトしながら、先⾏技術との対⽐を⾏い、的確な権利を取得する体制を敷かねばなりません。そして、的確な権利を取得するために、いつでも各都道府県の知財総合⽀援窓⼝や弁護⼠・弁理
⼠との関係を構築しておくことが重要です。
2.契約実務
持続発展的に事業者と⽀援者がデザイン経営に取り組んでいくためにも、事業者と⽀援者が信頼関係で結ばれると同時に、Win-Win の関係を構築していくことが求められます。本章では、⻑期的にデザイン経営を推進していくために、事業者がお互いの利益を損なうことなく信頼関係を持続するための契約締結のポイントを取り扱います。
2-1 契約とは
・「契約」とは「約束」のこと
・契約は、⼝約束でも成⽴するが、証拠がないため、トラブルが発⽣しやすい
→約束した事項を⽂⾯化したものが「契約書」
●契約を締結しないとどのようなトラブルが起きるか?
・予算が曖昧となり、仕事の品質が低下する(なあなあになる)
・対価の対象となる作業が不明確(プレゼン費⽤をどちらが負担するか、予算以上の要求などのトラブル発⽣)
・費⽤がなかなか⽀払われない
・作業後に事業者からデザイナーへの値引き要請
・撮影費、サンプル購⼊、出張費などの実費、コンセプトの変更に伴う追加費⽤の発⽣が認められない
・作業の⼀⽅的な中⽌(確認への回答がない、ペンディング)
・知的財産の帰属が曖昧で後々トラブルになる
このようなトラブルを起こすことなく、事業者と⽀援者や各利害関係社が強浮き的に Win-Winの関係を構築できるような契約書締結ポイントを理解しておきましょう。
2-2 デザイン契約の基本
以下、事業者を甲、⽀援者を⼄として、契約書締結時の⼀般的な記載の仕⽅とポイントを解説していきます。
●業務内容
第1条(契約の⽬的)
1 甲は⼄に対し、下記業務(以下「本件業務」という。)を委託し、⼄はこれを受託する。
1)業務内容:○○○○のデザイン開発
2)成果物(以下「本件成果物」という。):○○○○
3)委託する業務の詳細は、別紙仕様書に記載のとおりとする。
2 甲は⼄が本件業務を遂⾏するに際して、必要な協⼒を⾏う。
業務の⽬的・内容は、具体的に記載します。
・新規開発なのか既存製品の改良なのか
・商品の機能も含まれるか形状のデザインのみなのか
・パッケージであれば何をどれだけの量包装するための容器なのか
・提案するデザイン案に数、データ形式
これらの記載事項が成果物を納⼊した際の「検収」の基準になるからです。
●対価・報酬の取扱い
第2条(対価)
1 本件業務の対価は、⾦〇〇〇円(消費税を含む。)とする。
2 第4条第 1 項に定める検収に合格した⽇をもって納品⽇とし、この納品⽇を起算⽇として
〇⽇
以内に、⼄は甲に対し、第 1 項に定める委託料を⼄が指定する銀⾏⼝座に振り込むことにより、
⽀払うものとする。振り込み⼿数料は甲の負担とする。
3 本件業務に関連して別途経費が発⽣した場合は、甲⼄で協議し、その⽀払いに関して決定する。
デザイン費⽤の算出⽅法はデザイン事務所などによって異なりますが、⼀般的に以下のような費
⽤項⽬があります。
企画料:デザインの企画⽴案費⽤
技術料:形状、パッケージなどのデザイン費⽤ライセンス料:デザイン成果物を利⽤する費⽤
直接⼈件費:取材・撮影などの稼働に対して⽀払う費⽤経費:取材・撮影・印刷などの経費
また、対価の⽀払い⽅法は以下の⼆つのパターンがあります。
・⼀括払い
⼀括でデザイナーに費⽤が⽀払う⽅式です。、デザイナーはリスクを負いませんが、デザイン・プロデュースの結果、爆発的に売上が伸びたとしても⾒返りはありません。
・頭⾦+実施料(ロイヤルティ)
頭⾦でデザイン費⽤を⽀払い、さらに出来⾼によって定期的にロイヤルティを⽀払う⽅式です。
・実施料の決め⽅
定額⽅式:売上⾼とは関係なく、年に○○○円、⽉に○○○円と定める料率⽅式:売上⾼などをベースに、実施料率(%)で計算
●期間と納期の取決め
第3条(開発期間)
1 ⼄は、本件業務を平成○年○⽉○⽇までに完成し、本件成果物を甲に提出する。
2 ⼄は前項に定める期⽇までに本件業務を完成することができないおそれが⽣じたときは、ただちにその旨を甲に通知し、甲の指⽰に従う。
3 本契約の締結後、甲からの指⽰により委託内容に変更があり、その変更により納期を遵 守できないおそれが⽣じた場合は、第 1 項の完成期⽇は無効とし、甲⼄で協議し、改めて完成期⽇を定める。
第4条(納品)
1 甲は本件成果物が提出された後、遅滞なく検収を⾏い、合格したときは、⼄に対して速やかにその旨を通知する。
2 ⼄が甲に対して本件成果物を提出した後○⽇以内に、甲より⼄への連絡が無い場合は、前
項の検収に合格したものとみなす。
委託業務がいつ、どのような形で完了するとみなすかを定義します。
・検収
事業者がデザイナーの成果物が依頼通りであったかを確認する作業を⾔います。検収において、事業者の指定した条件(デザイン与件)に沿っていないと判断された場合、デザインを修正する必要があり、検収に合格しないと契約は終了しません。
・追加対応の費⽤は誰が負担するか
条件に沿っていない・満たさない場合、デザイナーに責任がある場合は無償でデザインを修正することが⼀般的です。そして、発注者がデザイン与件と異なる修正を指⽰した場合には追加の対価を⽀払うこともあります。これらの取り扱いについても契約書に規定しておくことが望ましいでしょう。
・検収後のデザイン変更
基本的に検収を終えた時点で、契約は完了しています。よって、検収後の追加でのデザイン変更依頼は、新たな業務となり、追加費⽤が発⽣します。
●知的財産権の扱い
第5条(本件成果物に係る権利の帰属)
1 本件成果物(これを構成する⽂章、図画、写真等を含む。以下同じ。)の所有権及び著作権(著作権法第 27 条及び第 28 条に定める権利を含む。)その他の⼀切の知的財産権は、第
4条第 1 項で定める合格通知をもって、⼄から甲に移転するものとする。
2 甲は、⼄の承諾を受けることなく本件成果物を改変し、⼜は本件業務以外の⽤途にも使⽤することができるものとする。
3 本件成果物の制作過程で発⽣した本件成果物を構成しない⽂章、図画、写真等の所有権及び不採⽤になったデザインの知的財産権は、⼄に帰属するものとする。
4 ⼄は本件成果物につき、著作者⼈格権を⾏使しないものとする。
原則、何も契約を取りかわさない場合、デザイン・プロデュースの成果物はデザイナーに帰属します。たとえ事業者が対価を⽀払って、発注したとしても、デザイナーが「発注者に譲渡する」ことに同意しなければ、発注者は権利を取得できません。
知的財産権の保有のパターンは以下の3パターンがあります。
デザイナーが保有 | ・デザイナーは、事業者が成果物を利⽤(新たに同じデザインで、別商品を製作するな ど)することを管理できる(事業者は別途実施料を⽀払う) ・デザイナーは⾃ら出願し、権利を維持するコストを負担 ・デザイン委託契約とは別に、発注者との間 で「実施許諾契約」を締結 |
事業者(発注者)に譲渡 | ・デザイン委託契約に知的財産権の帰属について規定する ・権利を譲渡する対価を設定する ・企業が保有しても「ロイヤルティー契約」は可能 |
共有(権利の⼀部を企業に譲渡) | 実務上は可能だが、⼀般的には⽤いられない |
・知的財産権の他への転⽤
デザインが契約対象外の「他の⽤途へ転⽤する場合」についても明確にしておく必要がある。そうでなければ後々のトラブルへ発展するおそれがあります。
基本的には契約で合意された「開発テーマ」以外の⽤途での使⽤は、デザイナーの許諾が必要です。
しかし、どこまでが「開発テーマ」に含まれる使⽤⽅法なのかということについて、事業者とデザイナーとで⾒解が異なる場合もあるので、念⼊りな意思疎通が必要です。そのためにも「契約の⽬的」を明確に記載することが重要です。
●保証
第6条(知的財産権を侵害しないことの保証)
⼄は甲に対し、本件成果物が、第三者の知的財産権を侵害していないことを保証する。
デザイン提案が第三者の知的財産権を侵害し、事業者が損害を被る事態を起こさないようにデザイナーの保証責任を規定しています。なお、全ての知的財産権をデザイナーが保証するわけではなく、保証する権利と保証しない権利があります。
・産業財産権:保障できない
・著作権:⼀応保障できる
・不正競争防⽌法:⼀応保障できるものとできないものがある
産業財産権は、以下の特徴を持っています。
・登録されて権利が発⽣する=市場を⾒ても権利の有無はわからない
・権利の存在は、調査をしなければわからず、調査のためには専⾨知識が必要
・権利の存在を知らなくても、同じものを作れば権利侵害になる。
これらの性質上、その責任をデザイナーが持つことは困難かつ重すぎるため、デザイナーは産業財産権については責任を持ってはいけません。
●守秘義務
第7条(資料等の提供及び返還等)
1 甲は⼄に対し、本件業務に必要な資料等(以下「資料等」という。)を提供する。
2 ⼄は、甲から提供された資料等を❹良なる管理者の注意をもって管理、保管し、かつ本件業務以外の⽤途に使⽤してはならない。
3 ⼄は甲から提供を受けた資料等を、本契約が終了したとき、遅滞なく甲に返還する。
第8条(守秘義務)
1 甲及び⼄は、本件業務遂⾏に際し相⼿⽅から得た⼀切の秘密情報につき、秘密を保持し、これを第三者に開⽰、または漏洩してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する情報についてはこの限りではない。
相⼿側から取得する前に、既に公知であったもの
相⼿側から取得した後に、⾃らの責によらず公知となったもの
相⼿側から取得する前に、既に⾃らが所有していたことを⽴証できるもの正当な権限を有する第三者から合法的⼿段により取得したもの
2 秘密情報の提供を受けた当事者は、当該秘密情報を秘密として管理するものとする。
3 本条の規定は、本契約終了後○年間存続する。
デザイン・プロデュースは、事業者の事業の根幹に関わるプロジェクトとなるため、事業者にとって極めて重要な情報(他社に漏れては困る情報)を取り扱います。
・企業から取得する情報は全て「秘密」
デザイナーは、⾃⼰のみでなく、従業員や外注先に対しても⾃⼰と同様に秘密保持義務を遵守させる義務があります
・デザイナーの提案も「秘密」
デザイナーに対して発注者から提供された情報に秘密保持義務が課されるのと同様に、発注者に対しても、デザイナーから提供する情報もまた秘密保持義務の対象となります
●経費
第 9 条(経費)
本件業務のために発⽣する交通費、外注費、モデル作成費等については別途協議の上決定する。
報酬とは別に必要経費の取り扱いを明確にしておきます。
●業務の中⽌
第10条(解約)
1 甲⼜は⼄は、相⼿⽅が以下の各号のいずれか1つにでも該当した場合は、何ら催告することなく直ちに本契約を解除することができる。
① 他の当事者が差押、仮差押または仮処分を受けたとき
② 他の当事者の振出、裏書、保証にかかる⼿形または⼩切⼿が不渡になったとき
③ 他の当事者につき、⺠事再⽣、商法上の整理開始、特別清算、会社更正開始のいずれかの申⽴があったとき
2 甲⼜は⼄は、相⼿⽅の債務不履⾏が相当期間を定めてなした催告後も是正されないときは、本契約を解除することができる。
3 甲⼜は⼄は、相当の対価を⽀払うことにより、本契約を解除することができる。
第11条(協議)
1 本契約に定めのない事項および本契約各条項の解釈に疑義が⽣じた場合は、甲⼄互いに信義・誠実の原則に従い、協議・決定するものとする。
何かしら⽌むを得ない事情で、業務を中⽌せざるをえない場合の対応を規定しておきます。
発注者の事情による業務の中⽌(契約の解除)については、不必要となった経費を除く、契約の全額が⽀払われるように定めるべきです。やむを得ない中⽌の場合は、それまでの業務量に応じた報酬とすることもあり得ます。作業の途中で報告を求められた後、その後の指⽰がなく「⽴ち消え状態」となることもありえます。そのような場合への対応も合意しておくことが望ましいでしょう。
3.ケーススタディ
ケース①
事業者 A はデザイナーX とのプロジェクトと通して新商品ブランド開発に取り組んだ。その2 年後、事業者 A は好調であったブランドをさらに伸⻑すべく、社内のデザイナーが中⼼となるプロジェクトを⽴ち上げ同⼀ブランドでラインナップを増加させた。(元のラインナップ5に対して、11に増加)
すると、デザイナーX から、追加費⽤を請求したい旨、連絡が⼊った。
このような事態を想定し、契約書段階でどのような事項をどのように規定しておくべきか?
ケース②
事業者 B はデザイナーY とともに新商品の開発に取り組んだ。デザイナーY には、商品の意匠について5案の提案を受け、結果その内1つを採⽤し、商品を市場に発表した。その3ヶ⽉後、Bと競合関係にある事業者 C も同様の商品を発表した。聞けば、C 社のデザインもデザイナーY が⼿がけているらしい。C 社の商品デザインは当社に提案を受けた5案の中で、不採⽤になった
デザインに酷似している。
このような事態を想定し、契約書段階でどのような事項をどのように規定しておくべきか?