第11回 団体協約 (Convention collective)
フランスの労務知識
第11回 団体協約 (Convention collective)
業種別団体協約
2024年5月更新
ジェトロ・パリ事務所
業種別団体協約とは、全国的に組織された労働組合と経営者が締結する労働全般に係る条件(労働契約、衛生、有給、給与、職級、解雇)と福利厚生を決定する協定である。鉄鋼業、繊維業など業種別に締結される。 団体協約とは別に、ある一定の内容についてのみ定める団体協定(Accord collectif)がある。協約も協定も適用する地理的範囲(全国、地域圏、県、自治体)と職業的範囲(複業種、産業部門、職種、企業内など)が明記されている。
適用する団体協約は、国立経済統計局(INSEE)が企業の業務形態に応じて発行する分類番号(APEコード)に基づいて決定される。適用可能な団体協約が存在しない場合は、労働法が適用される。 化学、金属など代表的な製造業の団体協約は労働者に非常に有利に定められていることが多い。本社の業務内容ではなく、フランス事業体の活動に応じた団体協約を適用する。登記時に間違えて本社の団体協約を適用していても、途中で変更することが可能である。複数の業界に属する場合は主な業種の団体協約を適用する。
企業内協定
適用される業種別団体協約・協定の内容を企業の実情に則したものにするために、企業内交渉をすることができる。企業内協定の締結は中小企業でも可能である。
企業内協定当事者:
⮚ 組合代表がいる企業:雇用主と組合代表
⮚ 組合代表が不在の企業
・ 従業員が 11 人未満の企業および従業員が 11 人以上 20 人以下で従業員代表機関である
社会経済委員会がない企業:雇用主が合意を提案し、従業員の 3 分の 2 以上の賛同を以って承認。
・ 従業員が 11 人以上 50 人未満の企業(従業員が 11 人以上 20 人以下で社会経済委員会がない企業は除く):
- 組合から交渉を委任された従業員と結ぶ。ただし、当該従業員が社会経済委員会のメンバーではない場合には従業員の過半数の承認が必要。
- または、直近の社会経済委員選挙で有効投票数の過半数を獲得した委員会の正メンバーと結ぶ。
・ 従業員数が 50 人以上の企業:交渉を委任された社会経済委員会の正メンバーと結ぶ。さらに、従業員の過半数の承認が必要。
労働条件に関する内容は労働法を基準とするが、団体協約・協定が適用される場合は労働法と協約・協定のうち労働者に有利な条件が適用される。一般的に団体協約・協定は労働法と比較して労働者にとって有利な条件が定められている。
一部の例外事項を除いて、企業内協定が業種別団体協約・協定より優先される。ただし、例外事項であっても、企業内協定で業種別団体協約・協定より従業員にとって有利な内容が定められている場合は、企業内協定が適用される。
例外的に業種別協約・協定が企業内協定より優先される13項目
- 職位係数に応じた最低賃金
- 職位
- 労使組合団体の運営資金基金への拠出
- 職業訓練基金への運営資金拠出
- 社会保障に関する補足的な集団保証
- 労働時間に関する諸事項(夜間勤務、1 週間を超える単位での労働時間調整、パートタイム、追加的な労働時間)
- 期限付き雇用契約や派遣契約に関する諸事項
- 工事・建設現場の労働無期限雇用契約
- 雇用均等
- 試用期間の更新条件や期間
- 雇用契約の移転
- 雇用促進のための派遣労働利用
- 業務提携従業員の最低賃金と利益に対する手当
企業内協定に対し、業種別団体協約・協定が上位規定となると定めることができる事項
- 職業上のリスク予防
- 身体障害労働者の雇用促進および雇用維持
- 組合代表に関する諸規定
団体協約は労使間において双方が法的根拠とすべき基本的な協約であるため、労働者が自由に適用される団体協を閲覧できるよう、社内に置いておくことが法律で定められている。
団体協約は下記のサイトにて内容を無料でダウンロードすることができる。