海外投資保険 Q&A 日本貿易保険 作成日 2017 年4月1日(最終更新日 2022 年4月 11 日)
海外投資保険 Q&A |
日本貿易保険 |
作成日 2017 年4月1日(最終更新日 2022 年4月 11 日) |
本書は海外投資保険におけるてん補内容、てん補事由、保険設計、保険契約条件、手続的事項等に関する取扱いをQ&A形式でまとめたものです。貿易保険のお申込み時等にご活用ください。
海外投資保険Q&A
目次
QⅠ-1-3:リース契約 2
QⅠ-1-4:第三国向け再投資① 2
QⅠ-1-5:第三国向け再投資② 3
QⅠ-1-6:現物出資の場合 3
QⅠ-1-7:第三国からの送金の場合 4
QⅠ-1-8:投資者がSPCである場合 4
Ⅱ.てん補の内容(全般) 4
QⅡ-1-1:海外投資保険約款でカバーされるリスク及び主要な事業資産等について 4
QⅡ-1-2:事業撤退リスク 5
QⅡ-1-3:パートナーリスク 5
QⅡ-1-4:保険金のお支払方法 5
QⅡ-1-5:事業の継続の不能 6
QⅡ-1-6:事業の休止 6
QⅡ-1-7:再投資スキームにおける投資先企業の事業休止 7
QⅡ-1-8:再投資スキームにおいて、投資先企業自身も事業を行っている場合における事業不能等 8
QⅡ-1-9:プレミアム① 8
QⅡ-1-10:プレミアム② 9
QⅡ-2-2:部分損失特約① 10
QⅡ-2-3:部分損失特約② 11
QⅡ-2-4:部分損失特約③ 14
QⅡ-2-5:契約違反リスク特約① 14
QⅡ-2-6:契約違反リスク特約② 15
QⅡ-2-7:契約違反リスク特約③ 15
QⅡ-2-8:契約違反リスク特約④ 16
QⅡ-2-9:契約違反リスク特約⑤ 17
QⅡ-2-10:契約違反リスク特約⑥ 18
QⅡ-2-11:事業拠点等特約 18
QⅡ-3-1:投資先企業の株式への担保設定 19
QⅡ-3-2:再投資先企業の株式への担保設定 21
QⅡ-3-3:再投資先企業への劣後ローンへの担保設定 21
QⅡ-3-4:保険期間中に担保設定を行う場合 22
Ⅲ.てん補の内容(事由ごと) 23
QⅢ-1-1:収用リスク 23
QⅢ-2-1:権利侵害リスク① 23
QⅢ-2-2:権利侵害リスク② 24
QⅢ-2-3:権利侵害リスク③ 24
QⅢ-3-1:戦争・内乱・テロリスク 25
QⅢ-4-1:天災等の異常な自然現象等① 25
QⅢ-4-2:天災等の異常な自然現象等② 26
QⅢ-4-3:天災等の異常な自然現象等③ 26
QⅢ-5-1:送金リスク① 26
QⅢ-5-2:送金リスク② 27
QⅢ-5-3:送金リスク③ 27
QⅢ-5-4:送金リスク④ 28
Ⅳ.保険設計、保険契約条件等 28
QⅣ-1-1:保険期間 28
QⅣ-1-2:中途解約の可否 29
QⅣ-2-1:保険金額の設定① 29
QⅣ-2-2:保険金額の設定② 30
QⅣ-2-3:保険金額の設定③ 30
QⅣ-2-4:保険金額の設定④ 31
QⅣ-2-5:保険金額の見直し① 31
QⅣ-2-6:保険金額の見直し② 32
QⅣ-2-7:保険金額の見直し③ 33
QⅣ-2-8:保険金額の見直し④ 33
QⅣ-2-9:保険金額の見直し⑤ 35
QⅣ-2-10:保険金額の見直し⑥ 35
QⅣ-2-11:保険金額の見直し⑦ 36
QⅣ-2-12:保険金額の見直し⑧ 36
QⅣ-2-13:保険金額の見直し⑨ 38
QⅣ-2-14:為替レート① 38
QⅣ-2-15:為替レート② 38
QⅣ-2-16:為替レート③ 39
QⅣ-2-17:為替レート④ 39
QⅣ-2-18:計算における端数処理① 39
QⅣ-2-19:計算における端数処理② 39
QⅣ-3-1:付保率 40
QⅣ-3-2:保険お申し込みタイプ① 40
QⅣ-3-3:保険お申し込みタイプ② 40
QⅣ-3-4:保険期間中の保険契約条件の変更 41
QⅣ-4-3:保険料返還 43
QⅣ-5-1:贈賄防止に係る誓約及び申告書 43
QⅣ-5-2:書類翻訳のご提出 44
QⅣ-5-3:証券統合 44
Ⅴ.保険期間中の承認、通知事項 47
QⅤ-1-3:重大な変更の通知義務③ 48
QⅤ-1-4:その他の変更の通知 48
QⅤ-2-1:増資分に対する新たな保険申し込み① 49
QⅤ-2-2:増資分に対する新たな保険申し込み② 49
QⅤ-3-1:株式譲渡① 50
QⅤ-3-2:株式譲渡② 50
QⅤ-3-3:株式譲渡③ 52
Ⅵ.免責・不払・解除 53
QⅥ-1-1:免責、不払・返還 53
QⅥ-2-1:保険契約の解除 53
Ⅶ.保険事故 54
QⅦ-1-1:損失額の算定 54
QⅦ-1-2:保険金のお支払い① 55
QⅦ-1-3:保険金のお支払い② 57
QⅦ-1-4:保険金のお支払い③ 58
QⅦ-1-5:保険金のお支払い④ 59
QⅦ-1-6:保険金のお支払い⑤ 60
QⅦ-1-7:保険金のお支払い⑥ 60
QⅦ-1-9:保険期間と事業休止のタイミング 63
QⅦ-2-1:保険金請求に必要な書類① 64
QⅦ-2-2:保険金請求に必要な書類② 64
QⅦ-2-3:保険金請求に必要な書類③ 65
QⅦ-3-1:回収納付義務① 67
QⅦ-3-2:回収納付義務② 67
Ⅷ.中小企業向け先払い(みなし財務諸表等) 68
QⅧ-1-1:中小企業向け先払いの概要① 68
QⅧ-1-2:中小企業向け先払いの概要② 68
QⅧ-2-1:中小企業向け先払いの損失額の算定方法① 69
QⅧ-2-2:中小企業向け先払いの損失額の算定方法② 69
QⅧ-2-3:中小企業向け先払いの損失額の算定方法③ 70
QⅧ-2-4:中小企業向け先払いの損失額の算定方法④ 70
QⅧ-3-1:中小企業向け先払いの保険金請求手続き① 71
QⅧ-3-2:中小企業向け先払いの保険金請求手続き② 71
QⅧ-3-3:中小企業向け先払いの保険金請求手続き③ 71
QⅧ-3-4:中小企業向け先払いの保険金請求手続き④ 72
1. 概要
海外投資保険のカバーの対象について教えてください。
海外投資保険は、我が国企業が海外に有する資産(株式や不動産等の権利)について、外国政府による権利・利益侵害や戦争、テロ、天災といったリスクによる損失が発生した場合に、保険金をお支払いするものです。
今後新たに取得する海外資産だけでなく、既に保有済みの資産についても保険付保の対象としています。
海外投資保険を利用できる投資形態にはどのようなものがありますか。保険利用の条件がありましたら教えてください。
出資に対する海外投資保険(株式等) と権利等の取得に対する海外投資保険(不動産等)があります。 出資に対する海外投資保険(株式等)としては、直接投資のみならず、投資先企業を通じた再投資についても対象とできます。
出資比率等による利用制限はありません。なお保険の対象となる投資については、以下の要件を満たす必要があります。
① 海外投資について、投資先国等の政府の許可又は承認を必要とする場合にあっては、当該許可又は承認を証する書面を取得していること。
② 海外投資の投資先国等の経済情勢及び政治情勢について著しい問題がないと認められること。
投資先国がお引き受けの対象国であるかどうかのご確認は、HP(国・地域ごとの引受方針)でもご確認いただけます。なお保険お引き受けにあたりましては、案件ごとに個別審査を行います。
我が国の航空機、電算機、その他機械等の貨物について、海外の客先とリース契約を結んだ場合、①これらの貨物が接収されたり、戦争等により損害を受けた場合、あるいは②送金規制等によりリース代金の受取不能となった場合には、海外投資保険でその損失をカバーすることができますか。
リース取引には大別してファイナンスリースとオペレーティングリースがあり、その種類によっては海外投資(不動産等)保険による対応が可能となります。
ファイナンスリースとは売買取引に準じたもので、オペレーティングリースは賃貸借契約に準じたものと考えられますが、このうちオペレーティングリースについては海外投資(不動産等)保険の対象となります。
すなわち、オペレーティングリースの場合、リース対象の貨物が貸し手の資産に計上されて いるため、その貨物が外国政府等(外国の政府若しくは地方公共団体又はこれらに準ずる者。以下同じ。)によって接収されたり、戦争等や自然災害等により損害を受けて事業の用に供 することができなくなったリスクについては、海外投資(不動産等)保険でカバーすること ができます。
なお、リース契約におけるリース代金の受取不能は海外投資保険のカバーの対象ではありませんが、ファイナンスリースのリース代金の回収不能は、貿易一般保険の代金回収不能で対応できる場合があります。
オランダの子会社経由、インドネシアに出資することになりました。インドネシアのカントリーリスクについて保険でカバーしたいのですが、可能でしょうか。また可能な場合に対象となる事象、保険料率についても教えてください。
このような投資先企業を通じた再投資についても、海外投資保険の付保は可能です。
インドネシアに起因する事業不能等については、「インドネシア事業会社が保険の対象事由
(戦争・自然災害・権利侵害等)により損害を受け事業不能等に陥り、それを直接的な原因としてオランダ子会社が事業不能等に陥ったことによる損失」をカバーします。
このようにオランダの子会社(投資先企業)が第三国であるインドネシアにおいて保有するインドネシア事業会社の株式やその生産設備などの主要な事業資産等にかかる損失をカバーする場合は、当該主要な事業資産等が所在する国(インドネシア)を保険申込書に記載いただく必要がございます。
その場合の保険料率は、投資先企業所在国(オランダ)と再投資先企業所在国(インドネシア)のうち、いずれか高い方の料率が適用されます。
(詳しくは主要な事業資産等に関するQⅡ-1-1をご参照ください。)
なお、オランダの子会社が複数事業を行っている場合、インドネシアの事業損失について保険カバーを希望する場合は、海外投資保険の部分損失特約を選択いただくことで、付保が可能となります。(詳しくは部分損失特約に関するご説明をご参照ください。)
特約をてん補する部分にあっては、投資先企業所在国と再投資先企業所在国のうち、いずれか高い方の料率が適用されます。また、対象とする再投資先企業が複数の場合は、再投資先企業ごとに計算の上、合算いたします。
今回、アジアのコイルセンターをシンガポールの持ち株会社で管理することになりました。この結果、シンガポールの事業投資会社の傘下には、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア等の企業が入ることになりました。このような第三国投資の場合、海外投資保険を付保することはできますか。
このような投資先企業を通じた複数の企業への再投資についても、海外投資保険の付保は可能です。
タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア等のそれぞれの企業の事業損失について保険カバーを希望する場合は、海外投資保険の部分損失特約を選択いただくことで、付保が可能となります。(詳しくは部分損失特約に関するご説明の部分をご参照ください。)
特約をてん補する部分にあっては、投資先企業所在国、又は再投資先企業所在国の保険料率のうち、高い方が適用されます。また、対象とする再投資先企業が複数ありますので、再投資先企業ごとに保険料を計算の上、合算いたします。
新規会社設立にあたり、当社は株式取得のために、現地会社で使用する設備を現物出資することになりました。設備を現物で出資する場合でも海外投資保険を付保することは可能ですか。また、その場合の取得のための対価の額の設定方法を教えてください。
株式等の取得のために現金を送金するのではなく、現物(役務提供を含む)を投資した場合
(以下「現物出資」)でも、当該現物出資についての資本金繰入価額が投資決議書等で確認できれば、海外投資保険を申し込むことが可能です。
取得のための対価の額は、出資者が取得した日(またはその貨物が生産された日)から起算して1年以内に輸出される貨物については、海外投資を行った者が当該貨物を取得又は生
産するために要した額に当該貨物の輸出のために要した費用を加えた額となり、取得した日から1年超が経過している場合は当該貨物の輸出日の属する会計年度の期首の帳簿価額に当該貨物の輸出のために要した額を加えた額となります。
海外企業への出資を、日本からではなく第三国からの送金によって行いたいと考えています。日本からの送金がなくとも海外投資保険を付保できますか。
海外投資保険を付保する際に、日本からの送金は要件としておりません。保険申し込みにあたっては、お客様が出資を行ったことを証する書類をご提出ください。
海外企業への出資を、日本のSPCを通じて行いたいと考えております。 この場合、S PCが保険申込者、被保険者、保険金受取人となることは可能でしょうか?
SPCであっても、本邦に籍を置く法人である場合は、保険の申込者、被保険者、保険金受取人になることは可能です。ただし、約款に定める被保険者義務を履行できる場合に限ります。
1. 約款のてん補内容(全般)
QⅡ-1-1:海外投資保険約款でカバーされるリスク及び主要な事業資産等について海外投資保険では、具体的にはどのようなリスクが保険金支払いの対象となりますか。
また、保険の対象となる主要な事業資産等にはどのようなものが含まれますか。
海外投資保険約款の対象リスクとしては、主として、収用・権利侵害リスク、戦争等リスク、自然災害等リスク、送金リスクが対象となります。また、一定の要件を満たす場合については、外国政府等の契約違反リスクなど、特約を付けることでてん補される場合もあります。
<主要な事業資産等について>
投資先企業が投資先国以外の第三国において保有する主要な事業資産等(※)について、権利
侵害リスク、戦争等リスク、自然災害等リスクのいずれかによる損失をカバーする場合は、当該主要な事業資産等の所在国又は地域を保険申込書に記載いただくことが必要です。申込書に記載いただいた国又は地域は保険証券上でご確認いただけます。(証券に記載のない国又は地域における主要な事業資産等についての損失はカバーされませんので、ご注意ください。)
このように主要な事業資産等をあらかじめ日本貿易保険に申告いただくことで、たとえば、A国に所在する投資先企業の隣国のB国内に重要な生産拠点を所有している場合など、投資先企業の所在国と主要な事業資産等の所在国が異なる場合であっても、B国政府による権利侵害により投資先企業が損害を受け事業不能等に至った場合の損失はカバーされます。
この場合の保険料率については、投資先国と主要な事業資産等の所在国の料率のうちいずれか高い方が適用されます。
(※)主要な事業資産等とは、被保険投資の相手方が直接又は間接に保有する不動産、設備、原材料その他の物に関する権利、鉱業権、工業所有権その他の権利又は利益であって事業の遂行上特に重要なものをいい、再投資先企業の株式及び再投資先企業向け貸付金債権を含みます。
海外に工場を造りましたが、事業がうまくいかず撤退することになりました。このような投資損失は対象になりますか。
海外投資保険は、投資国の戦争・災害等や投資国政府の投資協定違反等の明らかなカントリーリスクを直接的な原因として投資先企業が事業不能等に陥った場合の損失のみがてん補されます。したがいまして、お客様の事業の失敗による撤退はてん補されません。
海外のパートナー(民間企業)と合弁事業を立ち上げましたが、パートナーに資産を持ち逃げされました。このような場合の損失は、保険金支払いの対象となりますか?
海外投資保険は、投資国の戦争・災害等や投資国政府の投資協定違反等の明らかなカントリーリスクを直接的な原因として投資先企業が事業不能等に陥った場合の損失のみがてん補されます。ご質問のような合弁事業のパートナーリスクは対象としておりません。
損失のてん補方法について教えてください。
海外投資保険の保険金のお支払いは実損払いとなります。
証券記載の保険金額を限度として、約款の規定に従い算出される損失額にてん補率(95%※)を掛けた額が支払保険金額となります。
支払保険金 = 損失額 × てん補率(95%) ≦ 保険金額
※付保率100%のオプションを選択している場合は、てん補率が100%となります。
戦争・自然災害等リスクや権利侵害リスクの場合の要件となっている、「投資先企業に事業の継続の不能が生じたこと」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。また事業の休止との違いはなんでしょうか。
「事業の継続の不能」とは、事業継続が将来にわたって困難になったことをいいます。具体的には、爆撃による施設損壊等の物理的損害による事業継続不能のみならず、政情悪化による国外退去やサプライチェーンへの損害の影響継続により、将来にわたって事業を継続できなくなった場合(事業を継続しても長期的に事業会社の自己資本が毀損していくような状況が見込まれる場合も含みます。)も対象となります。
他方、「事業の休止」とは、事業再開を前提として事業会社が当該事業活動を停止することをいいます。事務所閉鎖など物理的な停止のみならず、治安の悪化やサプライチェーンの途絶などにより実態として操業不能な状態になっている場合も含みます。
なお「事業の再開」とは、 事業会社が停止していた事業活動を再開することをいいます。事業再開のタイミングについてはケースバイケースで異なりますが、例えば物理的な停止状態が解消した時(立入制限解除、電気供給再開、生産設備の修理が完了し稼働可能となった時 等)や、事業活動中断の原因が解消した時(必要部品や代替納入先の確保、取引先の事業再開、経済活動が正常化 等)等がこれにあたります。
なお、事業の休止については、1カ月以上の事業の休止が保険金お支払いの要件となります。
投資先企業は同じ国内に複数の工場を有しています。そのうちの1つの工場又は製造ラインの一部がストップした場合は、「投資先企業の事業の休止」に該当しますか?
投資先企業の事業の休止に該当するには、投資先企業の事業全体がストップしていることが要件となります。投資先企業が複数の事業や拠点をお持ちの場合、そのうちの一つの工場
の停止や、一工場内の製造ラインの一部がストップした場合は、投資先企業の事業全体が休止しているわけではありませんので、「投資先企業の事業の休止」には該当しません。
なお、直接投資、再投資の場合を問わず、事業拠点等特約を付けていただいている場合は、事業の休止を認定する単位は特約で定めた拠点単位ごとになりますので、その場合は会社の事業全体がストップしていなくても、複数あるうちの一つの工場の停止についても「事業の休止」に該当します。他方で、認定する単位が機械ごと、工場のラインごとのような、一事業拠点とするにはあまりに細かい単位となっている場合は、この特約を付けることができません。事業拠点等特約についてはQⅡ-2-14をご参照ください。また、どのような単位で特約を付けることができるかは、事業の形態や個別の状況によって異なります。
シンガポールの子会社経由、インドネシアに再投資をしています。インドネシアの再投資先企業がストップしてしまっても、シンガポールの子会社自体は通常どおりの業務が可能ですが、この場合でも「事業の休止」に該当するのでしょうか。なお、シンガポールの子会社は、持ち株の保有・管理のみを行っており、実態はほとんどありません。
投資先企業が再投資先企業1社の持ち株管理のみを行っているSPC等である場合、再投資先企業が事業休止となった場合には、投資先企業が物理的には業務を行うことが可能であったとしても、再投資先企業の事業不能等により投資先企業の持ち株管理業務は行えない状態にあると判断し、投資先企業の事業不能等と認定します。本事例の場合、シンガポールの子会社自体は通常どおりの業務を行うことが可能だとしても、インドネシアの再投資先企業が事業休止となったことを以て、シンガポールの子会社の事業休止を認定します。
投資先企業が複数の再投資先企業の持ち株管理を行っている場合は、仮にそのうちの1つの再投資先企業が事業を休止したとしても、他の再投資先企業は事業を継続していれば、投資先企業の事業全体は中断していない状態ということになりますので、投資先企業自体の事業休止は発生していないということになります。投資先企業自体が業務を行うことが可能なケースにおいては、全ての再投資先企業が事業休止となった場合にのみ投資先企業の事業休止が認定されることになります。なお、そのような投資形態の場合は、部分損失特約を付し、再投資先企業単位での事業休止を保険事故とすることが可能です。同特約が付されている場合においては、特約の対象である再投資先企業の事業全体が中断し、再投資先企業が事業の休止に至れば、投資先企業の当該再投資先企業に係る持ち株管理事業についての事業不能等として保険事故となります。
QⅡ-1-8:再投資スキームにおいて、投資先企業自身も事業を行っている場合における事業不能等
上記QⅡ-1-7のケースにおいて、シンガポール子会社自身が事業を行っている場合
についての事業不能等の考え方を教えてください。
投資先企業が持ち株管理のみならず自らも事業を行っている場合、当該投資先企業の事業休止は、再投資先企業の事情によるものに加え、自らの事情によるものも考えられます。 再投資先企業(複数ある場合は全ての再投資先企業)が事業休止となれば、投資先企業の事業のうち、持ち株管理事業は中断していると判断されることになりますが、自らが行う事業については継続されているのであれば、投資先企業の事業全体が休止しているとは言えず、よって投資先企業の事業休止は認定されません。(ただし、この場合であっても、別途部分損失特約を付していれば保険事故としててん補できる場合があります。再投資先企業単位での事業休止による損失を部分損失特約によりカバーする場合については上記QⅡ-1-
7及びQⅡ-2-3をご参照ください。)
ただし、投資先企業の所在国の事情等により、投資先企業が自ら行う事業(複数ある場合は 全て)が中断した場合は、当該投資先企業について事業の休止が発生したものと認定します。このケースにおいては、投資先企業自身が行う事業が中断状態にあるとしても、再投資先企 業は通常どおり事業を継続している可能性がありますが、実態としての業務がほとんど発 生しない持ち株管理を除き全ての事業が中断しているということであれば、それを以て、投 資先企業の事業のほぼ全てが中断状態にあるとして、当該投資先企業の事業の休止を認定 します。
プレミアム(=のれん)付きで取得した株式等について、プレミアムを含めて取得に要した全額を対象として付保することができますか。
保険申込書にてプレミアムへの保険カバーを希望された場合は、プレミアムを含めて取得に要した全額を対象として付保することが可能です。
この場合、収用・権利侵害、戦争、自然災害などにより保険事故が発生した場合に、お客様の財務諸表における投資額と、投資先企業の簿価純資産額のうちお客様の持ち分に相当する額との差額(以下「プレミアム相当額」といいます。)について、てん補の対象とするものです。(プレミアム相当額については証券に記載されている必要がございます。)
通常、支払保険金は事故直前の投資先企業の簿価での純資産額持ち分のうち、損失として認められた部分が従来通り基準となりますが、プレミアムへの保険カバーを希望された場合
には、証券に記載のプレミアム相当額の内、損失と認められた部分を加算することができます。
この場合の保険金は、以下のように算出されます。
((事故直前の投資先企業の簿価純資産額(持ち分)と元本にかかる取得のための対価の額のうち、いずれか少ない金額-事故直後の投資先企業の簿価純資産額(持ち分)の残存価値)
+(事故直前のプレミアム相当額とプレミアム相当額にかかる取得のための対価の額のう ち、いずれか少ない金額-事故直後のプレミアム相当額))×95%(てん補率)*=保険金
(ただし、下線部分がマイナスの場合、ゼロとします。)
*付保率100%のオプションを選択している場合は、てん補率は100%となります。
(注1)
2021年1月の制度改正前においてプレミアムは特約を付してカバーしており(プレミアム特約)、プレミアム相当額はお客様の当初投資計画の期間に基づき決定した償却期間(最長20年)で定額償却する仕組みでした(20201年1月改正においてプレミアム特約は廃止)。したがって当該改正前の制度において事故直前のプレミアム相当額は、当該定額償却後の金額がそのまま適用されます。他方、同改正以降は財務諸表等に基づく事故直前に評価したプレミアム相当額が適用されます。
(注2)
契約違反リスク特約の事故の場合は、上記はそのまま適用されず、損失額認定にあたっては特約で定める上限が適用されますので、ご注意ください。(契約違反リスク特約の損失額については、QⅡ-2-6に記載するとおりです。)
保険の対象となるプレミアム相当額の設定方法について教えてください。
保険の対象となるプレミアム相当額については、保険年度単位において見直しが可能であり、見直しを行わない限りは保険設計上のプレミアム相当額は減少しません。そのため、保険お申込み当初よりプレミアムの償却が行われない場合は、特段のお手続きは不要です。なお、お客様がプレミアム相当額の見直しを希望される場合は、取得のための対価の額の見直しと同様に、毎年の応当日の1カ月前までに手続が必要です(QⅣ-2-5をご参照ください。)。「別紙様式第6 海外投資保険 増額・減額 承認請求書」を、保険カバーを希望されるプレミアムの額を示すエビデンスとともにご提出ください。
2. 特約
海外投資保険の特約にはどのようなものがありますか。
海外投資保険の主たる特約としては、以下のとおりです。
①部分損失特約
②事業拠点等特約
③契約違反リスク特約
※それぞれの内容については関連部分の説明をご参照ください。お引き受けにあたっては事前の審査が必要になります。
投資先企業の所在国自体のリスクに加え、その下にある複数の再投資先企業の事業についても保険のカバー対象とすることはできますか。
特定の再投資先企業の事業単位のリスクについては、部分損失特約を付して保険を付保することが可能です。本保険の対象となる投資先企業とは、日本のお客様が直接投資(出資)されている相手先企業を指し、この投資先企業単位での事業不能等については約款でカバーされる事故となりますが、一の海外投資拠点(投資先企業)から、複数の再投資先企業に事業展開されるお客様が、一部の再投資先企業の事業単位での損失カバーを対象に本保険を利用される場合に選択いただくのが「部分損失特約」です。なお部分損失特約では、投資先企業の財務諸表等における当該再投資先企業の株式等評価額が保険価額や保険金算定のベースとなりますので、原則は投資先企業の財務諸表等において当該特約の対象となる再投資先企業の株式等評価額が確認できることがご利用の条件となります。
部分損失特約の概要については下記のとおりです。
(1)保険契約
投資先企業に対する契約を本契約とします。再投資先企業をてん補する場合は、特約で、てん補対象とする再投資先企業をご選択ください。
(2)取得のための対価の額(保険価額)
投資先企業については、本邦からの出資金送金または投資先企業の純資産額のうちお客様 持ち分が保険価額となります。再投資先企業については、上記の投資先企業の保険価額の内、原則として、てん補対象に選択した再投資先企業に対する出資額が保険価額となります。
なお、特約の保険価額合計は、本契約における保険価額を上回ることはできません。
(3)保険料
本契約の保険料は以下の計算式で計算されます。
保険金額(除く特約部分の被保険者持分)× 投資先企業所在国の料率(※)特約に対する保険料は以下の計算式で計算されます。
てん補対象再投資先企業の被保険者持分 × 投資先企業所在国又は再投資先企業所在国の料率(※)の内、高い方。
てん補対象再投資先企業が複数存在する場合には、各再投資先企業毎に計算の上、合計します。
※料率は、各特約対象企業の所在国のリスク(各特約対象企業が有する主要な事業資産等が各特約対象企業の所在国又は地域以外の国又は地域に所在する場合には、当該主要な事業資産等所在国のリスクも勘案されます。)により異なります。
(4)損失額の算定について
再投資先企業の損失額の算定については、投資先企業の財務諸表等における再投資先企業株式等の毀損額が基準となります。具体的な算定方法については、個別案件ごとに特約にて規定されることになります。
上記QⅡ-2-2のケースで、先進国に所在する投資先企業については対象とせず、カントリーリスクの高い再投資先企業のみを対象として保険を付保したいと思いますが、このような当社ニーズを満たす付保方法はありますか。
2016年4月に新設された特定の再投資先に係る部分損失のみをカバーの対象とする特約を付して保険を付保する方法があります(以下、部分損失のみ特約という。)。この場合、QⅡ
-2-2(投資先企業のリスクに加えて再投資先企業の事業単位での損失をカバー)とは特約の内容が少々異なります。また、投資先企業から中間会社を経て、再々投資を行っている場合は、最終投資先に限らず中間会社を含めて部分損失のみ特約の対象とすることが可能です。概要としては以下のとおりとなります。
(1)保険契約
てん補の対象とする再投資先企業(以下「特約対象企業」といいます。)を特定し、当該特約対象企業について生じた損失のみを対象とすることを特約において定めます。したがい
まして、投資先企業のリスクについては、通常は本契約でてん補されるところ、本特約を付した保険契約においてはカバーされないこととなります。
(2)付保対象額及び保険金額
付保対象額は、特約対象企業ごとに、当該企業に対する被保険者の持分となり、これに付保率を乗じてそれぞれの特約対象企業ごとの保険金額(=各特約対象企業の事故に対する保険金のお支払上限額)を設定します。
(3)保険料
特約対象企業の保険金額に料率(※)を乗じた額が、特約対象企業ごとの適用保険料となります。一つの保険契約において複数の特約対象企業がある場合は、特約対象企業ごとの適用保険料の合計額がその保険契約における適用保険料となります。
なお、各特約対象企業の保険金額の合計額が取得のための対価の額を上回る場合は、取得の ための対価の額が上限となりますので、超過部分に係る保険料はいただきません。その場合、国カテゴリの低い(料率の高い)特約対象企業から順に保険料をいただくことになります。
※料率は、各特約対象企業の所在国のリスク(各特約対象企業が有する主要な事業資産等が各特約対象企業の所在国又は地域以外の国又は地域に所在する場合には、当該主要な事業資産等所在国のリスクも勘案されます。)により異なります。
(4)カバー範囲(対象となる事故、損失額、保険金のお支払い額)
①対象となる事故
特約対象企業が戦争等(2号)、不可抗力等(3号)及び権利侵害(4号)により、事業不能等となったことによる損失をてん補します。(送金不能(5号)はオプション。ただし、特約対象企業より被保険投資の相手方向けに行われた送金に係る第5号の事故につき、本邦への送金不能へとつながる事故であることが要件となります。)
上記(1)にもありますとおり、特約対象企業について生じた損失以外の損失(投資先企業の株式収用や、特約対象ではない再投資先企業の事業不能等による損失等)はてん補しません。
②損失額
事故における損失額の計算は、通常の部分損失特約と同様に、特約対象企業に対する持分評価額の毀損額をベースに算出することになりますが、当該毀損額が保険契約上の取得のための対価の額(お客様の投資先企業に対する持ち分をいいます。)を超過する場合は、当該取得のための対価の額を損失額とします。(同一の投資先企業向け出資を付保する別の保険契約があり、そちらの契約で既に保険金を支払っている場合又は支払う予定となっている場合は、当該保険金を控除した額を取得のための対価の額とみなします。)
③保険金の支払額
上記②の損失額にてん補率を乗じた額を保険金としてお支払いします。ただし、当該特約対象企業の保険金額がお支払いの限度となります。
【部分損失特約・部分損失のみ特約の比較表】
部分損失特約 | 部分損失のみ特約 | ||
保険対象 | 投資先国事由 | 〇 | ✕ |
再投資国事由 | 〇 | 〇 | |
保険金額 | 取得のための対価の額×付保率 | 投資先企業の財務諸表等における特約対象企業の株式等の評価額×付保率 ※特約対象企業毎に設定 | |
損失額 | ①【投資先企業にかかるもの】 投資先企業の財務諸表等における純資産額のうち、被保険者持ち分の毀損額 ②【再投資先企業にかかるもの】 投資先企業の財務諸表等の資産の部における再投資先企業の株式等の毀損額 | ① - ②投資先企業の財務諸表等における特約対象企業の株式等の毀損額と取得のための対価の額のうちいずれか小さい金額 | |
てん補責任金額 | 損失額×てん補率 ※上限は保険金額 | 損失額×てん補率 ※上限は、特約対象企業毎の保険金額 | |
保険料 | 以下①・②の合計額 ①【投資先企業にかかるもの】 保険金額(除く特約部分の被保険者持分)×投資先企業所在国の料率 ②【再投資先企業にかかるもの】 特約対象企業の保険金額×投資先企業所在国又は再投資先企業所在国の料率のいずれか高い方 ※特約対象企業が複数存在する場合には、企業毎の保険料を合計 | ① - ②特約対象企業の保険金額×特約対象企業所在国の料率 ※特約対象企業が複数存在する場合には、企業毎の保険料の合計額 | |
付保のタイミング (送金を伴う場合) | 投資先企業への送金後(出資持分の取得後) | 特約対象企業への送金後(出資持分の取得後) |
投資先企業から中間会社を経て、複数の事業会社に対し再々投資を行っています。この場合、投資先企業の単体財務諸表等には、中間会社に対する株式等評価額のみ記載され、各再々投資先企業の株式等評価額は中間会社の単体財務諸表等に記載されることになり、部分損失特約利用の条件である「特約の対象となる企業の株式等評価額が投資先企業の財務諸表等において当該評価額が確認できること」を充足しませんが、このような場合であっても部分損失特約を付けて海外投資保険を利用することはできますか。
原則は、財務諸表等において特約の対象となる再投資先企業の株式等評価額が確認できることがご利用の条件となりますが、この条件を充足しない場合であっても、個別案件毎にスキームを確認の上、特約対象となる事業会社の株式等評価額等について何らかのエビデンスをもって確認が可能である場合は、部分損失特約を付保することが可能です。
なお、上記のようなケースの場合、中間会社の財務諸表等における各再々投資先企業の株式 等評価額の毀損額が直接に本事業における毀損額にはなるわけではありません。各再々投 資先企業の株式等評価額の毀損により中間会社の純資産においても毀損が生じ、当該中間 会社の純資産の毀損額が更に投資先企業の財務諸表等における中間会社株式等評価額の毀 損として反映された結果が、投資先企業における対象事業の事業不能等による毀損額とな ります。その点を踏まえ、本特約における損失額の算定方法やエビデンスについて判断の上、具体的に特約上で規定することになります。
「外国政府等の契約違反」については特約でカバーされる場合があるということですが、どのようなリスクが対象となるのでしょうか。
契約違反リスク特約は、投資先国での事業に関し「外国政府等」と電力や燃料の供給契約、売電契約などの私的な契約を結んだ場合、当該契約について、「外国政府等」の契約違反や一方的な契約破棄といった行為に起因して投資先企業が事業不能等となったことによる損失をカバーします。この場合は、約款の規定に基づく損失額の算定を行った上で、当該損失額にてん補率を掛けた金額が対象契約に基づき外国政府等に対して請求可能な額にお客様の持分割合を掛けた金額を上回る場合には、当該請求可能な額にお客様持分を掛けた金額が上限となり、証券記載の保険金額を限度として保険金をお支払いします。外国政府等と契約違反の有無や賠償金額について争いがある場合は、対象契約に基づく仲裁等の方法により確定した金額が損失額となります。また、お引き受けにあたっては、原則として当該契約において契約相手方である外国政府等との間に紛争が生じた場合の解決方法が規定されて
いることが必要です。
また、お引き受けできるか否か、どういった事象で保険金をお支払いできるかについては個々のケースごとの判断となります。なお、特約付保に際しては、追加保険料(年0.2%)の支払いが必要となります。
「契約違反リスク特約」の契約とはどのようなものを指しますか。また、引受にあたっての条件はあるのでしょうか。
契約違反リスク特約の付保にあたっては、外国政府等との間で、書面での「契約書」を以て契約を締結していることが必要です。特約の対象となる契約は、契約上の不履行の責任を法的に金銭損害賠償の形で相手方に追求できるものに限ります。
契約の相手方である外国政府等は中央政府、地方公共団体、又は国営企業(外国政府が直接又は間接的に経営の意思決定権を掌握する法人)のいずれかである必要があります。なお、保険期間の途中において、契約の相手方が「外国政府等」に該当しなくなった場合は保険金をお支払できませんので、ご注意ください。投資者側の契約当事者は、本邦親会社(保険ご利用者)であっても、あるいは投資先企業(再投資スキームの場合は事業会社)であっても対象となります。
また、契約の相手方が国営企業である場合、原則として、①対象契約に対し中央政府による履行保証(支払保証を含みます。)があること、又は②当該国法令、又はそれに準ずる制度的な枠組みに基づいて相手国政府に法的にリコースする権利が確保されていること、のいずれかの条件を満たす必要があります。なお、当該条件が満たされない場合であっても、その事情・背景、及び当該企業の事業内容を総合的に勘案の上、お引き受けする場合もありますので、ご相談ください。
契約違反リスク特約の対象となる「外国政府等」に該当する国営企業とは、どのようなものをいうのでしょうか。
契約相手方が「外国政府等」に該当するか否か、また契約違反リスクをカバーするだけの信用力を有するか否かについては、案件毎に審査することになりますが、次の何れかに該当す
ると考えております。
イ.政府が出資割合50%超を保有していること。
ロ.政府が当該企業の代表者の任命権を有していること。
ハ.当該企業のために制定された根拠法、又は政令等に基づき設立されていること。
ニ.当該企業の予算決定については議会の議決が必要であること、又は当該企業が所属する政府若しくは地方公共団体の承認等が必要であること。
ホ.上記の他、外国政府が直接又は間接的に経営の意思決定権を掌握すると認められること。
契約違反リスクの対象となる事故の例について教えてください。
想定されるケースとしては、発電所の建設にあたり、現地政府との間で価格等を定めた電力購入契約を結んだが、建設完了後、現地政府はその履行を実施しなかったため、これが原因で投資先企業が操業不能となり、契約に定める損害賠償金を現地政府が支払わなかった場合が考えられます。契約違反の有無、損害賠償金額について現地政府と争いがある場合については、QⅡ-2-5に記載するとおりです。
当社はA国の発電事業へのプロジェクト参画を検討しており、投資スキームは、当社100%出資の在オランダ中間法人経由、事業地国に設立予定の事業会社(SPC)に出資及び劣後ローン融資の形で再投資を行うというものです。同事業では、事業会社(SPC)が発電した電気をA国の国営電力会社a社が買い取るスキームとなっており、事業会社(SPC)は国営電力会社a社との間で20年間の電力購入契約(PPA)を締結する予定ですが、a社による月々の買取代金不払いがあった場合など、プロジェクト期間途中で何らかの問題が発生した場合には、事業者側からPPA契約を解除し、a社に事業資産を買い取ってもらった上でプロジェクトから撤退することが可能となっています。また発電プラントの操業予定期間である20年が無事終了した場合も、プラント操業終了後には同様にa社が事業資産を買い取る義務があります。なお、a社のPPA契約上の義務不履行に対してはA国政府が保証することとなっており、事業会社(SPC)と政府との間で保証契約が締結される予定です。このような案件において、期間中又は操業終了後のa社による資産買取が約束通り行われず、更にA国政府に保証履行請求しても支払保証が履行されなかった場合、契約違反リスク特約の事故として保険金を受け取ることは可能でしょうか(対象契約上に解除条項も
資産買取条項も無いケースについてはQⅡ-2-11をご参照ください)。
ご相談のような案件については、A国政府との保証契約に係る義務不履行について契約違反リスク特約の対象とすることが可能です。a社によるPPA契約不履行が生じ、それを受けてA国政府に対し保証契約に基づく履行請求を行ったけれども先方がそれを履行せず、その結果として、予め契約で定められた買取が行われなかった場合は、契約違反リスク特約でカバーする事故として、保険金をお支払いすることが可能です(保険金のお支払い額については QⅡ-2-5をご参照ください)。この場合、A国政府の契約違反(保証債務不履行)発生当時において発電プラントが既に操業を終了していたのかという点は、必ずしも事故認定の要件とはしておらず、一連の事象を踏まえててん補責任を判断することになります。
なお、A国政府との保証契約を契約違反リスク特約の対象とする場合は、PPA契約の相手方であるa社自身が「外国政府等」の要件を満たすことは保険金支払いの要件とはなりませんので、例えばa社が保険期間の途中に民営化された場合などであっても、A国政府との保証契約に係る義務不履行については引き続きてん補の対象となります。
当社は B 国の発電事業へのプロジェクト参画を検討しており、投資スキームは、当社 100%
出資の在オランダ中間法人経由、再投資を行うというものです。同事業では、事業会社
(SPC)が発電した電気を B 国の国営電力会社b 社が買い取るスキームとなっており、事業会社(SPC)は国営電力会社 b 社との間で 20 年間の電力購入契約(PPA)を締結する予定です。
他国の同様の電力事業案件では、売電先による月々の電力買取代金不払いがあった場合など、プロジェクト期間途中で何らかの問題が発生した場合には、事業者側から PPA を解除し、売電先に事業資産を買い取ってもらった上でプロジェクトから撤退することが可能となっているものが多いですが、B 国ではそのような解除条項や事業資産買取の条項は盛り込まれないことが一般的であり、本件においても、事業者側が契約を解除する権利が規定されておらず、よって解除時の支払規定や b 社が事業資産を買い取る規定も想定されておりません。
なお、b 社の PPA 契約上の義務不履行に対してはB 国政府が保証することとなっており、事業会社(SPC)と政府との間で保証契約が締結される予定です。このような事業者側からの PPA 契約解除と電力会社による事業資産買取の条項がない案件において、契約違反
リスク特約の事故として保険金を受け取ることは可能でしょうか。
ご相談のような案件については、以下の条件イ)及びロ)が揃えば、契約違反リスク特約の事故として保険金をお支払いすることが可能です。(保険金のお支払額については、QⅡ-2
-5をご参照ください。)
イ) b 社による PPA 契約不履行が生じ、それを受けて事業者側が事業終了の意思決定を行う、あるいは融資契約においてレンダーによる Step-in 又は期限の利益の喪失により借入人たる事業会社(SPC)が直ちに債務を弁済しなければならない状況に陥ることにより、事業会社(SPC)が事業継続不能に至る。
ロ) 仲裁等により事業会社(SPC)の事業継続不能の原因が b 社にあること及びその損失額が確定され、b 社に損害賠償請求するも支払わず、保証契約に基づき B 国政府に対し同額の請求を行ったにもかかわらず、B 国政府も支払わない。
事業拠点等特約とはどのようなものでしょうか。
投資先企業に複数の事業拠点等がある場合、通常は一部の拠点において事業不能等が発生したとしても、他の事業拠点等が事業活動を継続している場合は保険金のお支払い対象と
はなりませんが、この特約を付けることにより特定の事業拠点等のみが事業不能等となった場合についても保険金のお支払い対象とすることができます。
本特約をお引き受けできるのは、事業拠点等において事業不能等が発生した場合についての損失額算定が可能な場合に限ります。具体的には、事業拠点等別にB/Sを作成している場合や、投資先企業の経理台帳(当該企業の監査済財務諸表を作成する際の基礎となるもの)において、各事業拠点等における事業資産等の内容・簿価資産額等の確認ができる場合をいいます。お引き受けにあたっては、そのような経理書類にて区分・金額の内容を事前に確認した上で、特約の対象とします。
なお、特約付保にあたっては、追加保険料(年0.1%)のお支払いが必要となります。また、どのような事業拠点等ごとを事故単位とできるかは個々のケースごとの判断となります。
3. 担保設定
プロジェクトファイナンスによる資金調達を予定しており、投資先株式にはシニアレンダーのために質権が設定されますが、海外投資保険を付保することは可能でしょうか。
保険の目的である投資先企業の株式に質権が設定される場合でも、通常は、海外投資保険を付保することが可能です。質権設定に際しては、事前に日本貿易保険に対し承諾申請を行って頂く必要があり、日本貿易保険は、必要な条件を付して承諾を行うことになります。どのような条件を付すのかという点は、案件によっても異なります。また、案件によっては質権設定を承諾しかねるケースもありますので、個別にご相談ください。
株式に質権が設定されている案件については、保険事故にあたり、原則は保険金請求時までに質権を解除して頂く必要がありますが、質権解除を要件とせずに保険金をお支払いすることも可能です。その場合、通常は保険料率について 10%の割増が適用されます。ただし、質権者等が同じプロジェクトへの貸付にあたり海外事業資金貸付保険又は貿易代金貸付保険を付保している場合であって、以下の①及び②の要件を満たす場合には、10%の割増が不要となります。
(10%割増不適用の要件)
① 全ての貸付等の合計額(A)に対する海外事業資金貸付保険又は貿易代金貸付保険の付保部分(B)の割合が 10%以上であること
② 市中銀行等による貸付等(※)の額(C)に対する海外事業資金貸付保険又は貿易代金
貸付保険の付保部分(B)の割合が 50%以上であること
(※)「市中銀行等による貸付等」には、MIGA 等の国際機関や他国 ECA によるカバー部分を含みます。
(B)
貸付金全体(A)
(C)
NEXI
付保部分
等
市中銀行貸付等
国際協力銀行(JBIC)貸付
国際機関(IFC 等)の貸付及び
他国 ECA の貸付
①:(A)における(B)の割合が 10%以上
②:(C)における(B)の割合が 50%以上
*保険期間中に上記の要件を満たさなくなった場合は、期中より割増が適用されます。
なお、事故の発生前に投資先株式に設定されていた質権が実行されてしまった場合(事業休止事故の場合は、事業がストップしてから1ヶ月が経過する前に質権が実行されてしまった場合をいいます。)、原則として保険金をお支払いすることができなくなります。
事業休止事故の例外的な取扱いとして、質権実行後も海外投資保険の被保険者たる地位が元々の出資者(海外投資保険のご利用者)に存続すること、及び、質権実行により新たに株主となったシニアレンダーが保険金請求を行わないこと等を合意するなど、一定の要件を充足する場合には、投資先企業に保険金請求原因が発生し(戦争等てん補リスクの発生により投資先企業が損害を受けることをいいます。)、その後1ヶ月の事業休止期間経過を待たずに質権が実行された場合についても保険金をお支払いします。ただし、戦争等が発生していたとしても、それにより投資先企業が損害を受ける前に質権が実行された場合は、保険の対象とはなりませんので、ご注意ください。
(※シニアレンダーと合意して頂く内容を記載した雛形を用意しておりますので、上記の取扱いをご希望の場合はご相談ください。)
保険金のお支払額は投資先企業の純資産の毀損額をベースに算出することになります。事故直後の評価額を確認するため、質権実行後であっても投資先企業の財務諸表等をご提出いただく必要がありますので、ご注意ください。
投資先企業から再投資により行う事業について、部分損失特約を付けて海外投資保険を付保しており、当該再投資先企業(事業会社)の株式には質権が設定されています。戦争等により再投資先企業が1カ月以上の事業休止となった場合、事業休止後すぐに質権が実行されてしまったとしても保険金を受け取ることができますか。
再投資先企業の株式に質権が設定される場合も、投資先企業株式に対する質権設定の場合とほぼ同様の取扱いとなります(QⅡ-3-1をご参照ください。)。
なお、保険金請求原因発生後且つ事故発生前(戦争等てん補リスクの発生により再投資先企業が損害を受けた後、事業停止となり、その後、事故要件である事業休止期間の1ヶ月が経過する前をいいます。)に再投資先株式に設定された質権が実行された場合は、QⅡ-3-
1に記載するようなレンダーとの合意等の要件充足を必要とせず、保険金をお支払いすることが可能です。ただし、投資先株式における場合と同じく、戦争等の発生後、再投資先企業が損害を受ける前に質権が実行された場合は、当該再投資先企業に関する損失については保険の対象とはなりません。
保険金のお支払にあたっては、再投資先企業に関する持ち分の毀損額を勘案の上で損失額を算定することになり、質権実行後であっても当該再投資先企業の財務諸表等を提出していただく必要がありますので、ご注意ください。
投資先企業から劣後ローンにて再投資先企業に融資する場合において、当該ローンにシニアレンダーのために担保権が設定されているケースでも、海外投資保険を付保することは可能でしょうか。
再投資先企業に対する劣後ローン債権に担保権が設定される場合であっても、海外投資保険を付保することができます。基本的な取扱いは、QⅡ-3-2の再投資先企業株式に対する質権設定とほぼ同様です。
なお、株主から投資先企業に対して供与する劣後ローンについて海外事業資金貸付保険(劣後ローン特約)をご利用頂く案件において、当該ローンにシニアレンダーを担保権者とする担保権が設定されるケースについても、QⅡ-3-1の投資先企業株式に対する質権設定とほぼ同様の取扱いとなります(※保険金請求原因の定義等については若干異なりますので、詳細はお問い合わせください。)。
既に海外投資保険を付保している場合において、保険期間中に投資先企業の株式や再投資先企業の株式、再投資先企業に対する貸付金債権に質権を設定することが求められました。付保後の質権設定は可能でしょうか?
付保後であっても、質権設定することは可能です。投資先企業の株式のみに質権を設定する場合は、約款に定める義務により、被保険者より日本貿易保険に対し事前の承諾申請を行っていただく必要がございます。また、投資先企業の株式のみならず、保険金請求権にも質権が設定される場合の申請は、質権設定者である被保険者と質権者である銀行等の双方連名でのお手続きが必要となります。再投資先企業(投資先企業が中間法人を経由して投資を行う場合には、当該中間法人も含む)の株式や当該企業に対する貸付金債権に質権が設定される場合も、当該再投資先企業等の事業に係る損失をてん補する場合に限り、同様に事前の承諾申請を行っていただく必要がございます。
なお、予め質権設定に係る予約契約(質権設定者の意思によらず質権が設定されるものに限ります。)が締結される場合にあっては、実際の担保設定時ではなく、それよりも前の、予約契約を締結しようとするときに承諾申請を行っていただきます。また、保険期間満了時に継続して保険契約を締結する際にも新たに承諾申請が必要になります。
1. 収用
収用リスクでカバーされるのは、具体的にどのようなケースでしょうか。
外国政府等が収用や国有化宣言を行ったことにより、本邦投資者(保険ご利用者)が保有する投資先企業の株式を奪われた場合や、投資先に対する配当金の支払い請求権を外国政府等により奪われたことによる損失をカバーします。
なお投資先企業が保有する株式・不動産等が外国政府等により収用された場合については権利侵害リスクでカバーできる場合がありますので、QⅢ-2-1をご参照ください。
2. 権利侵害
海外投資(株式等)保険約款第2条第1項第4号(「事業の遂行上特に重要なものを外国政府等により侵害されたこと」)で保険金の支払い対象となる具体的な事例を教えてください。
権利侵害は「外国政府等」による行為を対象とするもので、民間企業等による侵害行為は対象とはなりません。また、外国政府等による行為の結果、権利・利益等について損害が生じたとしても、その行為が合法的なものである場合には保険の対象とはならず、国際法または国内法に照らして違法な行為と同等な行為であることが要件となります。また、外国政府等と結んだ契約が不履行となったことによる損失は、別途特約を付すことにより保険の対象としてお引き受けできる場合があります。(QⅡ-2-6をご参照ください。)
典型的な事例としては、外国政府等が投資先企業の重要な資産(土地・建物等)を収用し、かつ補償金が支払われないことが挙げられます。また、投資者であるお客様や投資先企業に責がないにもかかわらず、一方的に外国政府等が事業の継続に必要なライセンスを剥奪するようなケースも該当する場合があります。
上記に加えて、外国政府等が国際協定や二国間投資協定等に違反する政策を保険契約締結後新たに導入したことと、投資先企業の事業継続不能との因果関係が認められた場合も権利侵害に該当いたします。
国際法違反と同等な行為であることの認定にあたっては、必ずしも国際仲裁による判断等を求めるものではなく、仲裁判断の事例や公正な第三者意見を参考に、権利侵害に該当する
かを個別に判断します。
国産化政策がとられた結果、必要な原材料の調達が難しくなり、製品の生産量が徐々に減少し、最終的に事業継続不能(または1カ月以上の事業休止)に陥りました。この場合、保険金は支払われますか。
このような国産化政策が、「外国政府等による権利侵害」に該当する場合には、保険事故として保険金のお支払い対象となります。
「外国政府等による権利侵害」に該当する場合とは、たとえば投資先の国がWTOに加盟しており、このような国産化政策がWTOのTRIM違反措置に該当する場合や、日本と投資先国が二国間投資協定を結んでおり、その中で規定されている内国民待遇に違反する場合などが考えられます。
保険事故の認定にあたっては、投資先国の事業継続不能(または1カ月以上の事業休止)と国産化政策導入の間に因果関係があることが必要ですので、事業不能等の発生経緯や損害の状況、代替手段の有無、今後の事業見通しなどについて、お客様よりご説明をいただきます。
なお、事業継続が可能な場合であって、当初予定された利益率を確保できないために事業撤退(売却)するようなケースは保険事故とみなすことはできません。
C国に家電製品の合弁会社を設立して、製品を国内販売しておりますが、地場企業が当社の特許権を侵害して模造品を製造し、当社のブランドを付けて販売しているため、合弁会社は甚大な損害を被っております。この場合、海外投資保険でてん補されるでしょうか。
このようなケースの場合は海外投資保険では保険金は支払われません。本ケースの場合、偽ブランド商品を製造販売しているのは民間企業であって、それが違法行為であっても、相手国政府が投資先企業の権利を直接侵害しているわけではないので、保険金をお支払いする対象とはなりません。
3. 戦争・内乱・テロ
海外子会社であるA社は、B国で自動車製造販売事業を行っています。戦争により、A社の販売先がすべて爆破されてしまいました。A社の工場は爆破地点からかなり離れた場所にあったので無事でしたが、販売先がすべて爆破されたことに伴い、A社は在庫を抱えたまま連鎖倒産に追い込まれました。倒産時点では既に戦争が終わっていましたが、このような場合、保険金が支払われる対象となるのでしょうか。
戦争による取引先の被害を原因とした販売不能は、実質的に操業不能な状態であることを確認できた場合には保険金をお支払いする対象となります。
保険事故の認定にあたっては、子会社の破産と戦争の間に因果関係があることが必要ですので、連鎖倒産に至るまでの発生経緯や損害の状況などについて、お客様よりご説明をいただきます。
4. 天災等の異常な自然現象等
投資先国においてSARSなどの伝染病が流行し、感染の拡大を防止するために投資先である製造会社の所有する工場を閉鎖し、その期間が1カ月を超えた場合、海外投資保険の
「1カ月の事業の休止」でカバーすることができますか。なお投資先企業の製造拠点は1
箇所のみですので、工場閉鎖により投資先企業の事業はストップしてしまいます。
SARS、コレラ、チフス、コロナなどの伝染病の流行のため操業を1カ月以上停止せざるを得ない場合は、「異常な自然現象による事業不能等による損失」として保険金のお支払い対象となります。
保険事故の認定にあたっては、工場の閉鎖に伴う投資先企業の事業休止とSARS発生との間に因果関係があることが必要ですので、事業休止の発生経緯や損害の状況、事業再開の見込などについて、お客様よりご説明をいただきます。
なお投資先企業が複数の拠点を有しており、別の事業拠点では通常どおり事業が継続されている場合、「投資先企業の事業休止」とは言えず、保険金お支払いの対象とはなりませんのでご注意ください。ただし、投資先企業が複数の拠点を有する場合であっても、事業拠点等特約を付けていただいている場合には、単一の事業拠点等の事業休止とSARS発生との間に因果関係が認められれば、保険金お支払いの対象となります。
停電、配水不能、鉄道不通などにより、投資先企業が事業継続不能や1カ月以上の事業の休止に陥った場合、海外投資保険で保険金は支払われるのですか。
停電、水の供給不能、鉄道不通などによる投資先企業の事業継続不能や1カ月以上の事業の休止については、天災等との因果関係がない場合において、海外投資(株式等)保険約款第
2条第1項第3号に列記されている事由に該当しないため、保険金をお支払いする対象にはなりません。
ただし、電力供給や水供給について投資先政府との間で契約がある場合において、当該契約違反が生じたことによる事業不能等については、あらかじめその「契約違反」のリスクについて特約を付して保険を付保した場合は、保険金をお支払いいたします。
また、特に鉄道不通については、海外投資(株式等)保険約款第2条第1項第3号に規定されている「ストライキによる輸送施設の機能の停止」に該当する場合は保険金をお支払いする対象となります。
自然災害により現地工場の設備が被害を受けました。事業は継続していますが、工場設備の損害について、保険金の請求はできますか?
海外投資保険においては、自然災害により投資先企業が損害を受け、事業が1カ月以上休止した場合または事業撤退を余儀なくされた場合にお客様が被る損失が対象となります。よって、投資先企業が事業を継続している状態で工場設備に発生した損害については、本保険ではカバーしておりません。
5. 送金リスク
元本部分についての送金リスクは、どのようなものが対象となるのでしょうか。
元本については、「元本喪失取得金」、すなわち株式の売却代金や会社清算による配当金などの送金リスクが対象となります。
送金不能事故は、具体的には以下の5つをいいます。イ.為替取引の制限又は禁止
ロ.戦争等による為替取引の途絶
ハ.政府による管理(モラトリアム等)
ニ.送金許可の取消し又は外国政府等がその許可すべきことをあらかじめ約していた場合においてその許可をしなかったこと
ホ.イからニまでに掲げる事由の発生後における外国政府等による没収
為替取引の制限又は禁止については、外国政府のとった措置であれば、為替取引の制限、禁止の根拠が法令に基づく措置か、行政処分に基づく措置か、あるいは法令の根拠のない単なる事実上の措置かは問いません。ただし、保険契約締結後に新たに行われた措置であることが必要です。また、当該外国政府の措置に関し、当事者に何らかの帰責性がある場合には保険事故には該当しません。
子会社からの配当金や投資資金の引き揚げにあたり外貨送金許可制をとっている国において、当該資本取引について許可がおりなかった場合も保険カバーの対象となりますか。
保険契約締結時点において、既に送金許可制がとられていた場合において、許可が出なかったことにより送金ができない場合については保険カバーの対象とはなりません(外国政府等が許可すべきことを予め約していた場合を除きます。)。
ただし、許可が出なかった場合であっても、当該不許可の理由が外貨不足である場合など実質的に為替取引の制限又は禁止と同視できるような場合には、保険金支払いの対象となります。
中間会社(A国)を経由して第三国再投資(B国)を行っている場合、事業地国であるB国からA国の中間会社への配当金の送金について生じた送金不能は、「配当金の送金不能事故」として保険金支払いの対象になりますか。
保険事故となるのは「本邦への送金」において不能が生じた場合ですので、通常は中間会社
(A国)からお客様(日本)への送金のみが対象となります。
ただし、中間会社(A国)において、「B国の事業会社から配当があった場合には、本邦株主への配当を行う」等の株主総会決議その他の中間会社の設立準拠法に従った配当に係る社内手続を行うことができる場合は、B国からA国への配当金送金不能をA国から本邦への配当金送金不能につながるものとして取扱い、B国からA国への配当金送金に対する送金リスク
を保険の対象とすることができます。この場合、B国からA国への送金不能額のうち、A国中間会社において配当決議等の対象となった金額をベースに損失額が算出され、保険金のお支払いは配当金に対する保険金額が限度となります。
同様に、元本についても、仮にB国事業会社の株式売却や減資等によりA国への資金引き揚げが発生する途上で送金不能が生じた場合、「B国の事業会社から出資金引き揚げがあった場合には、A国中間会社は減資を行う」等の株主総会決議その他の中間会社の設立準拠法に従った手続がなされる場合は、B国からA国への資金送金不能をA国から本邦への資金送金不能につながるものとして取扱います。損失額の考え方についても同様ですが、元本の場合は元本に対する保険金額が保険金お支払いの限度となります。
保険契約締結後に、新たな外貨送金規制が導入された場合において、当該規制導入後に行った配当決議に基づく利益配当金の送金不能についても保険カバーの対象となりますか。また同様に、当該規制導入後に事業の撤退や売却を決めた場合の清算配当金や株式の転売代金に関する送金不能についてはいかがでしょうか。
どちらのケースについても、保険契約締結後に導入された規制に基づく送金不能であれば、保険カバーの対象となります。ただし、他の送金手段について検討するなど損失の防止軽減のために必要な措置を行わなかった場合や、故意に損失を発生させた場合などには、保険金をお支払いできないことがあります。
1. 保険期間
海外投資保険の申し込みを行いました。保険の効力はいつから発生しますか。保険申込日からとなるのでしょうか。
海外投資保険の場合、「保険申込日」=「保険の効力発生日」とはなりません。保険申込日 以降、案件の引受審査を経たのち、日本貿易保険が承認することで保険契約締結となります。審査期間は案件により異なりますが、必要書類が全てそろっていれば、通常は数週間~1カ 月程度です。そして、この「保険契約締結日」の属する月の1日が、「保険の効力発生日」
=「保険責任期間開始日」となります。
つまり、5月25日に申し込みした案件の審査に2週間かかり、6月10日に保険契約が締結されたとすると、「保険契約締結日」は6月10日、「保険責任期間開始日(保険の効力発生日)」は6月1日からとなります。したがって、6月1日以降発生した保険事故が保険金をお支払いする対象となります。
ただし、株式取得が保険契約締結以降となる場合、株主となる前に生じた事由については保険の対象とはなりません。
2年前に保険期間10年で保険契約を締結しました。投資先の国の治安が良くなってきたので、保険契約を解約したいのですが、可能ですか。
保険の対象となる投資をご継続されている間は、お客様のご都合で保険を中途解約することはできません。保険期間は2年(期間満了に伴う新規契約の場合は1年)から30年の間で自由に選択いただけますので、リスクの変化によって保険内容や保険利用を見直したい場合は、保険お申し込みの際にその点も含めて保険期間をご検討ください。
なお、投資先企業の解散や出資持ち分の全ての譲渡・喪失など、保険の対象となる投資そのものが消滅した又は消滅することが確定している場合については、ご申請により保険契約を解約することができます。
なお、この解約申請は、解散手続きや譲渡手続きが完了する前であっても、保険の対象とな る投資事業から撤退することが正式に決定された時点以降であれば行うことができます。 ここでいう撤退とは、事業規模の縮小や複数事業のうちの一部事業からの撤退ではなく、投 資対象となっている事業の全てから完全に撤退することをいいます。また、正式な決定とは、当該決定に係る権限のレベルに応じたものであり、例えば、取締役会での決定を指します。 解約申請手続きにあたっては、お客様が正式な撤退の意思決定を行ったことを証するエビ デンスをご提出いただくことになります。
2. 保険金額、対価の額
「取得のための対価の額」を簿価純資産額で設定したいのですが、可能でしょうか。設定する際に、どういった書類が必要になるでしょうか。
保険対象額は、財務諸表で確認できる「純資産額」と既に保険証券に記載されている「取得のための対価の額」との間の範囲内で任意に設定することが可能です。
また、保険対象額見直しのための確証として使用する財務諸表は、原則、公認会計士により監査またはレビューされた最新の財務諸表をご提出いただきます。
株式の「取得のための対価の額」の設定を、送金額をベースにしたいのですが、現地で税金がかかるため、実際に株式を取得する金額は送金額よりも少なくなる予定です。この場合は、送金額の全額を、海外投資保険の対象とすることはできますか。
株式を取得するために実際に要した額を、「取得のための対価の額」として設定することが可能となっております。現地での税金を「取得のための対価の額」に含める場合には、当該税金が株式取得に係る送金に付随して発生する点について確認が必要となります。
ただし、戦争等による事業不能などの保険事故が発生した際の損失額の評価は、送金額ではなく、投資先企業の純資産額をベースに行います。
投資先企業の簿価純資産を「取得のための対価の額」として設定したいのですが、当該投資先企業の単体B/Sではなく、孫会社である再投資先企業の事業も含んだ連結B/Sにおける簿価純資産を用いることはできますか。
「取得のための対価の額」の算出根拠として、子会社の単体B/Sだけではなく、連結B/Sにおける簿価純資産も使用することができます。この場合、連結B/Sにおける簿価純資産とは少数株主持分を控除した額とします。原則として、連結B/Sは公認会計士等による監査またはレビュー済みのものであるか、親会社であるお客様の監査済財務諸表等の基礎となったものであることが必要です。
ただし、一度連結B/Sを用いた後に、単体B/Sの簿価純資産額が大きくなった場合には、保険期間の途中で単体B/Sに変更することは認められません。なお、連結決算を行わなくなった場合は、単体B/Sへの変更が認められます。
A国において、同国の企業とJVで新規事業を行う予定です。新たに会社を設立し、当社からは総額10億円の出資を行うことを決定しております。送金は2億円ずつ5回に分割して行う予定であり、初回送金後すぐに保険の申込みを行いたいと考えております。総額10億円の送金予定額の全額について、保険の引受は可能でしょうか。それとも送金毎に保険の引受審査が必要なのでしょうか。また、分割で送金を行う場合の手続きについて教えてください。
送金が分割して行われる場合であっても、事前に策定された投資計画と、投資決定の確実性を裏付けるエビデンス(例えば送金予定の全額についての出資決議書等)があれば、送金予定の全額についてあらかじめ保険の引受を行うことも可能です。そうでない場合は、送金が確定する毎に保険の引受が必要になります。
送金予定の全額について保険の引受を行った場合には、保険契約締結後に送金された分について、送金日から1ヶ月以内に「別紙様式第3 海外投資保険送金確定通知書」をご提出いただきます。同通知を以て保険契約が変更され、保険契約締結後の送金部分については、送金日以降に日本貿易保険の保険責任が発生することになります。仮に、通知日時点でA国のリスクが悪化していたとしても、保険申込み時に送金予定の全額について保険の引受を行っていた場合には、申告済の送金額(保険申込書において「送金予定」と記入いただいた額となります)まではてん補されます。
なお、再投資先に係る部分損失のみを対象とする保険契約において、投資先企業から対象の再投資先に対して分割送金が行われる場合は、保険契約締結後に行われた送金について、上記と同様に「別紙様式第3 海外投資保険送金確定通知書」をご提出ください。
分割送金の場合の保険料計算は月割りとなります。詳しくは、QⅣ-4-1をご参照ください。
海外投資保険の契約期間の途中で保険金額を変更することはできるでしょうか。
保険金額の設定に必要な付保率については、当初設定した率を保険期間の途中で変更することはできません。ただし、設定している率からの10%以上の引き上げを希望される場合には、一旦今の保険契約を解約していただき、新たな条件にて新しい保険契約を締結し直していただくことが可能です(詳しくはQⅣ-3-4をご参照ください。)。
「取得のための対価の額」については、保険期間中の投資先企業の純資産額、為替換算率の変動に応じて変更することが可能です。(ただし、増額の場合は、著しい状況の悪化が認められる場合など、変更に応じられない場合もあります。)
具体的には、出資(株式等)の場合、直近の被保険投資の相手方の純資産額のうち被保険者の持ち分相当額、為替換算率または配当額(おのおの根拠となる確証が必要)と保険証券記載のそれぞれの額との間で自由に設定(為替換算率については、5%以上の変動が必要)することができます。権利等の取得(不動産等)の場合、直近の被保険者の財産目録又は鑑定評価書等における当該権利等の評価額と保険証券記載の額との間で自由に設定することができます。保険金額は変更後の円貨額に当初付保したときに設定した付保率を乗じて算定することになります。
なお、金額の変更を行うためには、毎年の応当日の1カ月前までに手続が必要です。例えば
6月1日に保険期間が開始した案件は、4月30日までに「別紙様式第6 海外投資保険 増額・減額 承認請求書」の提出が必要となります。
投資した事業の業績が良く、内部留保も蓄積されてきましたので、資産価値の増大に見合った保険のかけ方をしたいのですが、どのように金額を設定したらよいのでしょうか。
海外投資保険における損失額は、円貨に換算した「事故直前の評価額」と「取得のための対価の額」のいずれかの小さい額から、「事故直後の評価額」を引いた金額となります。「取得のための対価の額」は、投資先企業の簿価上の純資産額に見合った金額に変更することができます。
「事故直前の評価額」は付保された株式の持ち分に対応する純資産額ですから、「取得のための対価の額」を「事故直前の評価額」まで引き上げて付保すれば、純資産額相当額すべてが保険金をお支払いする対象となります。
したがって、取得原価にとらわれることなく、現時点での純資産額を現時点の換算率で円貨に転換した金額が、最大限の保険金をお支払いすることが可能な「取得のための対価の額」になります。
以下例をあげてご説明します。(Rp=インドネシア・ルピー/exch.=為替換算率)
① 払込資本金
Rp1,500,000,000×(exch. Rp9,000 = US$1 = \120)
=出資時取得原価¥20,000,000
② 純資産額
Rp5,000,000,000×(exch. Rp12,000 = US$1 = \90)
=事故直前の評価額¥37,500,000
現地通貨ベースの純資産額が膨らんでも、現地通貨の下落があれば相殺されますし、円貨の騰落も評価額に影響しますので、純資産と為替換算率を同時に勘案して、「取得のための対価の額」を設定する必要があります。本例では、「取得のための対価の額」を¥37,500,000と見直した結果、保険金額は付保率95%を乗じた¥35,625,000となり、資産価値の変動に見合った対応が可能となったことになります。
外貨建て投資について、契約期間中に為替変動に伴う「取得のための対価の額」の増額もしくは減額ができるとのことですが、具体的に教えてください。
外国通貨が上昇(下落)したことに伴って、被保険利益が増加(減少)している場合に、当該増加(減少)部分について次年度以降の「取得のための対価の額」を増額(減額)することが認められています。
「取得のための対価の額」の増額(減額)申請ができるのは、保険証券記載の適用換算率と次年度の保険期間開始日の2カ月前の1日の為替相場(TTBレート)とを比較して5%以上の上昇(下落)があった場合です。この場合、「取得のための対価の額」は、次年度の保険期間開始日の2カ月前の1日の為替相場(TTBレート)を上限(下限)として、現在の金額との範囲内で任意に設定することができます。
為替変動に伴う増額(減額)申込書「別紙様式第6 海外投資保険 増額・減額 承認請求書」の提出期限は、次年度の保険期間開始日の応当日の1カ月前までとなります。
別紙様式第6の「為替適用換算率」には、各保険年度の開始日の2カ月前の月の1日のTTBレートをご記入ください。例えば、12月1日に次年度が始まる場合には、10月1日のTTBレートをご記入ください。「変更申請換算率」には、「証券記載の適用換算率」と「為替適用換算率」との間で、お客様が希望する換算為替レートをご記入ください。
5年前に付保していた保険契約が2018年3月末で期間満了しますが、契約を継続したいと思っています。保険は付保後も一度も見直しをしていないので、この機会に見直しをしようと思っています。「取得のための対価の額(保険価額)」の設定や、その他注意すべきこ
とを教えてください。
次の表1の例をもとに説明します。
まず、直近の財務諸表の純資産額と保険証券記載の「取得のための対価の額」を比較します。
送金時(保険証券) | 現在価値 | |
送金額等 | ①US$1,000,000 | ⑤US$1,500,000 (2016年12月末B/S) |
為替換算率 | ②\120/US$1 | ⑥\100/US$1 (2018年2月1日のレート) |
「取得のための対価の 額」 | ③\120,000,000 (③=①×②) | ⑦\150,000,000 (⑦=⑤×⑥) |
保険期間 | ④5年 |
「取得のための対価の額」について、表の①と⑤を比較すると、⑤の額の方が大きくなっています。海外投資保険では、保険事故になった場合は事故直前の「純資産額」をもとに損失額を算定しますので、新契約を締結する場合は⑤の額をもとに「取得のための対価の額」を設定すれば最大限の保険金をお支払いすることが可能となります。
また、期間満了に伴う契約締結の場合には、「取得のための対価の額」の設定は、「①」もしくは「⑤」または「①と⑤の間の任意の額」での設定が可能となっていますので、①と⑤の間の額であれば任意の額を設定できます。
さらに、為替換算率も、表の「②\120/US$1」もしくは「⑥\100/US$1」または「②と⑥の間のレート(ただし5%以上の増減があることが条件)」で設定が可能です。(詳しくはQⅣ
-2-5をご参照ください。)
例えば、「取得のための対価の額」の設定可能額は、現時点で確認できる純資産額である「⑤ US$1,500,000」に対して、為替換算率は既存保険証券で用いられているレート(\120/US$1)をそのまま用いて「⑤US$1,500,000」×「②\120/US$1」=\180,000,000と設定することも可能です。
※手続きとしては「海外投資(株式等)保険申込書(別紙様式第1)」又は「海外投資(不動産等)保険申込書(別紙様式第2)」に必要事項を記入の上、営業担当までご提出をお願いいたします。変更箇所がない場合は、様式中「その1」と「その2」のみ(不動産等については「その1」のみ)の提出で構いません。全項目を記入する必要はなく、太枠の箇所のみの記入で構いません。
「取得のための対価の額」を送金額ではなく、純資産額で設定する場合には、原則、以下のいずれかの写しの提出をお願いします。
①投資先企業の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしたもの)
②お客様の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしたもの)の作成の基礎となる投資先企業の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしていないもの)
環境のスクリーニング・フォームと贈賄防止に係る誓約及び申告書は、ご提出の必要はございません。
新たな保険契約に係る保険期間は、お客様のご希望により、1年間~30年の間で任意に設定できます(保険期間は1年単位)。保険期間の開始日は、通常は現保険期間の満了日の翌日となります。2017年12月31日が期間満了日であれば、新たな保険期間の開始日は2018年1月1日からとなります。
本申込書の提出期限は、原則として、期間満了日の2カ月前です。例えば、2017年12月31日が期間満了日であれば、原則として、2017年10月31日までに申込書の提出をお願いいたします。なお、一部エビデンスの確認に時間を要する等、何らかやむを得ないご事情がある場合は、当該申込みの期限までに日本貿易保険までご連絡をいただいた上で、申込書の提出期限を期間満了日の1カ月前までとすることが可能ですので、そのような場合はお早めにご相談ください。
なお、増資を行っている場合は、QⅤ-2-1をご参照ください。
ある海外子会社に対する新規出資分とその後の増資分について、それぞれ保険契約を締結しています。どちらも送金額ベースで取得のための対価の額を設定していたのですが、応当日を迎えるタイミングで、純資産ベースの設定に変更したいと考えています。保険契約が複数ある場合に、どのように対価の額を設定したらよいのでしょうか。
取得のための対価の額を投資先企業の純資産額ベースで設定する場合、通常は当該純資産額のうちお客様の持ち分に相当する額が取得のための対価の額となりますが、保険証券が複数に分かれている場合や、出資持ち分のうち一部についてのみ保険を付保している場合については、お客様の持ち分のうち当該保険契約が付保されている部分の持ち分割合(株式数)をそれぞれ算出し、設定していただきます。
例えば、投資先企業の発行済株式数100のうち新規出資時において取得した株式数が70、増資時において取得した株式数が30のケースにおいて、投資先企業の純資産額が2,000万米ドルである場合、新規取得分に対する保険契約における取得のための対価の額は1,400万米ドル(=2,000万x70/100)、増資分に対する保険契約における取得のための対価の額は600万米ドル(=2,000万x30/100)となります。
配当は保険申し込み時に予定額で付保することになっていますが、保険期間の途中で金額を変更することや配当開始年度を変更することは可能でしょうか。
配当額の変更には、その根拠となる証拠が必要となります。すなわち、配当がなされない、または当初予定額より少なく(または多い)ことを証明する資料、例えば「株主総会決議書」、
「Audit Report」などの利益処分の記述をもとに配当額を変更することになります。このため、必要な証明資料なしに「5年目から配当される予定だったが、現在の事業計画では当面配当は無理」「8年度目から5%になる見込み」では変更できません。
例えば、前述の書類で5年目に配当されないことが確認できた場合は、それ以降は配当額に関してゼロから当初定めた配当率までの範囲内で減額変更することが可能となります。
いったん配当額をゼロにした後でも、その後配当がなされることが確認できる証拠がある場合は、配当額の増額変更を行うことが可能です。(配当額をゼロにしても、適用保険料率は保険契約全体を対象としたものですので、保険契約締結時のまま(「混合型」(出資+配当))の料率となります。)
なお、保険申し込み時点では配当を予定しておらず「非償還型」(出資元本のみを対象)で保険契約された場合で、その後、配当が生じることとなったために配当金に係る保険契約も加えた「混合型」への変更を希望される場合は、QⅣ-3-4をご参照ください。
投資先企業は、会計帳簿上「資産の再評価(インフレ会計による調整)」を行っています。この場合の保険変更手続き方法について教えてください。
「インフレ会計」とは、著しいインフレにより、資産価値の変動が激しくなり、法令によりインフレによる資産等の再評価積立金を資本に組み入れ増資することをいいます。
この増資は一般の無償増資または株式配当とは異なり、単にインフレにより生じる会社資産・負債・資本勘定の名目価値と実質価値の差を指数(インフレ調整率)によって調整・再評価したにすぎず、実質的な資本価値が増加するものではありません。
このため、資本価値が増加する一般的な無償増資(QⅤ-2-1を参照してください。)と異なり、「海外投資保険変更承認申請書」で通知をすることで、現保険契約の「取得のための対価の額」(外貨の価額)の変更を行うこととなります。
投資先企業の簿価純資産に対する持ち評価額分ベースで保険を付保しています。持ち分評価額については毎年最新の額に見直しを行っていますが、保険期間の途中で投資先企業が債務超過となってしまった場合についてどうなるのでしょうか。
取得のための対価の額の洗い替えのタイミングで、投資先企業が債務超過となってしまっ
ている場合、直近の純資産持ち分評価額は0円となりますが、その場合における対応としては以下が考えられます。
対応その1
取得のための対価の額は洗い替えせず、前年通りのままとする。
次の洗い替えまでの間に、業績が回復し債務超過が解消されることが見込まれる場合は、業績回復後に生じた事故について損失が発生する可能性があります。そのような場合については、保険契約を前年度条件のままとすれば、前年度の純資産持ち分評価額に基づく保険金額までは保険金をお支払いすることが可能となります。
<例>
(X-1)年度:取得のための対価の額:10 (付保率95%、保険金額:9.5)
X年度 :純資産持ち分評価額が0(債務超過)のため、洗い替えは行わず、前年度と同条件で継続
X年度中に全損事故が発生
・取得のための対価の額:10
・損害発生直前の評価額:8(※直近財務諸表等において、債務超過を解消)
・事由発生直後の評価額:0(※回収金等は無し)
この場合、損失額(8)×てん補率(95%)について、保険金をお支払いします。
対応その2
取得のための対価の額をゼロに洗い替えする。
当分の間は業績回復が見込まれず、当年度中の債務超過の解消が難しい場合は、当年度の取得のための対価の額を0円に洗い替えしていただき、当年度の保険契約をゼロとしていただくことが可能です。
保険期間最終年度の洗い替えタイミングまでに債務超過が解消すれば、お客様からご連 絡をいただくことにより、従来の保険料率にて、再び取得のための対価の額、保険金額及 び保険料を設定し直すことが可能です。ただし、保険期間途中から変更はできませんので、取得のための対価の額を再び増やせるのは、実際に債務超過を解消したところからでは なく、その後に到来する保険年度に洗い替えしてからとなることにご注意ください。
送金額ベースで取得のための対価の額を設定して保険を付保していますが、事業が出資金を回収する段階に入ってきており、投資先企業が有償減資を行うこととなりました。取得のための対価の額の設定を純資産ベースに変更することなく、減資配当による回収分について取得のための対価の額の変更(減額)を行うことは認められていますか。
取得のための対価の額については、簿価純資産額ベースで設定している場合には、保険期間中の投資先企業の純資産額の変動に応じて変更することは可能です。他方、送金額ベースでの付保の場合には、お客様のご希望の額を自由に減額するといった取扱いは認められておりませんが、ご照会のような投資先企業における減資配当による取得のための対価の額の減額については、投資先企業の財務諸表等により減資の事実とその額が確認できる場合であれば変更が可能です。
また同様に、株式等の一部売却による取得のための対価の額の減額についても、当該売却に係る確証をご提出いただくことで変更が可能です。
なお、取得のための対価の額の変更を行うためには、毎年の応当日の1カ月前までに所定の手続が必要となります。例えば6月1日に保険期間が開始した案件は、4月30日までに「別紙様式第6 海外投資保険 増額・減額 承認請求書」及び変更を証する書類のご提出が必要となります。
保険証券に記載する投資先企業の株式の「取得のための対価の額」の邦貨を算出する際に、どの時点の為替相場を使用できますか。
送金日の為替相場(TTBレート)、申込月の1日の為替相場(TTBレート)、または株式を購入するために外貨を取得した際の為替相場を使用することができます。なお、外貨を取得した際の為替相場を使用するには、当該株式の購入のために外貨を取得したことのエビデンスを提出していただく必要があります。
QⅣ-2-14につき、申込日の属する月の1日の為替レートがない場合、いつの時点のレートを用いることができますか。
休日などの理由から、申込日の属する月の1日の為替レートがない場合には、その直前の為
替レートを使用できます。例えば、6月1日が土曜日であれば、前日の5月31日(金曜日)の為替レートを使用できます。6月1日が日曜日であれば、5月30日(金曜日)の為替レートを使用できます。
計算すると為替レートが小数点第6位までとなります。どのように処理すればいいですか。
小数点第4位までを有効とし、小数点第5位以下を切り捨てていただくようお願いいたします。
送金はユーロで行いましたが、証券記載の取得のための対価(外貨)は米ドルで設定したいと考えております。送金日のユーロ・米ドルレートが分かりません。どの為替レートを使って、米ドル建ての取得のための対価を計算すればよいですか。
送金日のレートがわからなければ、保険申込日の属する月の1日の為替レートを使用することが可能です。ユーロ・米ドルレートが入手できない場合、日本貿易保険がHPで公表している「外国為替相場」のユーロ・円レートと米ドル・円レートを使って、ユーロ・米ドルレートを算出することも可能です。
円建て金額の小数点以下の端数については、どのように処理すればいいですか。
1円未満の端数については、切り捨てて計算いただくようお願いしています。保険金額、支払保険金、回収金、保険料の計算でも同様です。
外貨建て金額の小数点以下の端数については、どのように処理すればいいですか。
小数点第三位以下については、切り捨てて計算いただくようお願いしています。
3. 付保率、申込タイプ、保険契約条件の変更
付保率は、申し込み時に95%までの範囲内または100%にて被保険者が自由に設定できることになっていますが、保険期間中に付保率の変更を行うことは可能ですか。
新たな保険年度の開始に合わせて行うことが認められている為替換算率や純資産額の変動による「取得のための対価の額」の変更と異なり、付保率については保険期間の途中での変更は認められません。ただし、設定している率からの10%以上の引き上げを希望される場合には、一旦今の保険契約を解約していただき、新たな条件にて新しい保険契約を締結し直していただくことが可能です(詳しくはQⅣ-3-4をご参照ください。)また、保険期間満了時に引き続き継続して保険契約を締結する際には、新たな保険契約にあたり、任意に付保率を設定しなおすことができます。
保険料率表を見ると、①非償還型(出資金)、②混合型(出資+配当)、③償還型(配当のみ)という3種類があります。「償還型」の料率が適用される事例を教えてください。
また、配当が出資後5年目から、という場合でも「償還型」で付保することは可能ですか。
「③償還型」の料率が適用されるのは、出資金については付保せず、「配当金」のみを付保するケースです。また、配当が出資後5年目からという場合でも付保することが可能です。保険契約・手続は、配当予定が5年後であっても、出資金の送金時に行うのが原則となっていますが、配当が予定されている5年目からでも申込は可能です。なお、配当がいつ頃からされる見込みかを示す「事業計画書」などの提出が必要となります。
また保険料の請求は配当金の付保が対象となる5年度目からスタートしますので、最初の
4年分は請求されません。
外国の投資先企業の株式を短期で売却することを想定しておらず、また配当も特に予定していないため、投資先国から本邦への送金は発生しないと考えています。そのため、投資先国の送金リスクについてはカバーが不要なのですが、保険のカバー対象となるリス
クを選んで海外投資保険を付保することはできますか。
「①収用・権利侵害」「②戦争・内乱・テロ、天災等の異常な自然現象等」「③送金」の3つのリスクから、カバーされるリスクを自由に選択することが可能です。
保険料率について、2つのリスクのカバー(2事由てん補型)を選択した場合はフルカバー
型から約30%引き、1つのリスクのカバー(1事由てん補型)を選択した場合はフルカバー型から約35%引きとなります。
海外投資保険の保険期間中に付保率の変更や特約の追加といった保険契約条件の変更はできますか。
原則として保険期間中に保険契約の条件を変更することはできませんが、下記のいずれかに該当するものについては、日本貿易保険が認めた場合に限り、現在の保険契約を解約し、新たな条件にて保険契約を締結し直すことで変更が可能です。(※)
⚫ 10%以上の付保率の引き上げ
⚫ てん補事由タイプのフルカバー型への変更又は1事由てん補型から2事由てん補型への変更
⚫ てん補対象範囲の混合型への変更
⚫ 新たな特約の付保によるてん補リスクの拡大
※新たに締結する保険契約の保険期間は、解約時点における保険期間の残存期間と同じかそれよりも長いものとしていただく必要がございます。
本中途更改制度は、原則として保険期間の開始日の毎年の応当日の前日に保険契約を解約し、当該応当日より新たな保険契約を締結する取扱となります。(例外的に、当該応当日ではなく、それ以外のNEXIが認めた日に保険契約を解約し、その翌日より新たな保険契約を締結する取扱とすることを認める場合もあり得ますが、その場合であっても既納保険料の未経過部分に対する保険料の返還は行いませんので、その点ご留意ください。)
変更事項や案件の内容によっては、審査に時間を要する場合もありますので、本更改制度の利用の際は、お早めに日本貿易保険にご相談ください。
4. 保険料
会社設立にあたり、分割送金3回で出資する予定にしています。初回送金:4月、2回目送金:8月、3回目送金:翌年3月を予定しています。保険期間は1年単位ですが、2回目、3回目送金分についての保険料計算方法について教えてください。
初回送金に対する保険責任期間開始後、これに続いて行われる分割送金に対する保険料計算方法は、月割り計算となっております。
分割送金の場合でも、保険証券単位では1つの保険契約となりますので、保険期間終了日は同時期になりますが、初年度分について保険責任期間開始日が送金ごとに異なった形で保険が設計されます。つまり、分割送金のそれぞれについて送金日の属する月の1日が保険責任期間開始日となります。(ただし、初回送金については、保険契約締結日の属する日の1日となります。)
以下のような事例に基づいて説明します。
送金日 | 送金確定 通知提出日 | 保険契約日 (変更承認日) | 初年度保険料 支払期間 | 保険料 支払月数 | |
初回 送金日 | 4月15日 | 5月10日 | 5月21日 | 5月1日~4月30日 | 12月 |
2回目 送金日 | 8月25日 | 9月20日 | 9月30日 | 8月1日~4月30日 | 9月 |
3回目 送金日 | 3月28日 | 4月25日 | 5月1日 | 3月1日~4月30日 | 2月 |
初回送金分の保険責任期間は、保険契約締結日の属する日の1日からとなりますので5月
1日となります。
2回目送金分の初年度保険責任期間は、「送金日の属する月の1日から」となりますので、
8月1日となります。(「変更承認日」の属する月の1日からとなり、「通知提出日」ではありません。)
そこで分割送金の場合は、経過した月分は割り引いて保険料を計算することとなりますから、2回目送金分の保険料は次の式のとおりとなります。
保険料率(年率)÷12(月)×9(月)=適用保険料率
3回目送金に対する 保険料 | ||
2回目の送金に | 対する保険料 | |
最初の送金に対する保険料 | ||
▲
5 月 1 日
▲
8 月 1 日
▲
3 月 1 日
▲
~4 月 30 日
3回目送金も同様です。3月に送金を実施すれば、4月に送金確定通知を提出し、結果として契約日が5月になったとしても、保険料は3月~4月までの2月分となります。
2回目以降の分割送金を行った場合には、送金日から1カ月以内に「別紙様式第3 海外投資保険送金確定通知書」と送金を証する書類の写しを日本貿易保険へご提出ください。当通知書に記載する為替レートについては、(1)送金日のTTBレート、または(2)当通知書の提出日の属する月の1日付のTTBレート(1日が休日の場合には、直前の営業日のTTBレート)のいずれかを使用できます。(1)を使用する場合には、上記にあわせて、当該送金日のTTBレートをご提出ください。
2年目以降は、分割送金の合計金額に対して通常の保険料率(年率)を乗じた額が保険料となります。
会社設立にあたり、分割して株式を発行する予定にしています。株式の額面金額で「取得のための対価」を設定しているのですが、保険料計算方法について教えてください。
分割での株式発行に対する保険料計算方法は、月割り計算となっております。計算方法は、 QⅣ-4-1の送金額を分割する方法と同様です(送金日を株式発行日に置き換え)。
持ち株会社を売却したので、保険契約を解約しました。保険期間は8月1日からでしたが、解約したのはその年の12月です。保険期間開始前にその年の保険料を200万円払って
いますが、解約の時期に応じて既払いの保険料返還は可能でしょうか。
海外投資保険の保険料は、各保険年度開始前月に1年分を一括してお支払いいただくことになっております。年度の途中で解約された場合であっても、既にお支払いいただいた保険料の返還は行いません。
5. その他手続き
保険契約者と被保険者が異なります。「贈賄防止に係る誓約及び申告書」は誰がサインしたものが必要ですか。
保険契約者と被保険者について、それぞれ1部ずつの提出が必要です。
決算書等、保険申込に必要な書類が、現地語の書類しかございません。申込は可能でしょうか。
必要書類が日本語または英語以外で記載されている場合は、当該書類の主要部分を日本語に翻訳したものを添付してください。翻訳が必要な箇所等につきましては、営業担当までご相談ください。
なお、翻訳などの費用につきましては、お客様に負担をお願いしております。
A国の投資先企業について、複数の保険契約を締結しています。管理が煩雑なので、保険契約を一本にしたいのですが、そのような手続きは可能でしょうか。
同じ投資先企業に対して複数の保険契約を締結いただいている場合、以下の条件を充たせば、保険契約を統合していただくこと(「証券統合」といいます。)が可能です。このとき、複数の保険契約のうち、他の契約の統合先として存続させる保険契約(「統合先証券」といいます。)をお客様に指定していただき、それ以外の保険契約(「被統合証券」といいます。)については、統合先証券に一本化されます。証券統合は、統合先証券又は被統合証券の保険年度の開始日(※)のいずれかのタイミングにおいて可能です。
(※)保険期間の満了に伴い保険契約を更新するケースにおける更新後の開始日を含みます。
<条件>
対象となる保険契約のてん補事由の範囲が同じであること。
(※同じてん補事由タイプであることに加え、付保パターンも同じである必要があります。)
てん補事由の範囲 | 収用/権利侵害 | 戦争・内乱・テロ/天災等の異常な自 然現象等 | 送金 | |
てん補事由タイプ | 付保パターン | |||
フルカバー型 | 1パターンのみ | ○ | ○ | ○ |
2事由てん補型 | パターン① | ○ | ○ | |
パターン② | ○ | ○ | ||
パターン③ | ○ | ○ | ||
1事由てん補型 | パターン① | ○ | ||
パターン② | ○ | |||
パターン③ | ○ |
<方法>
証券統合は、以下の方法で行われます。
① 被統合証券の保険年度の変更
証券統合にあたり、被統合証券の保険年度は、統合先証券の保険年度に併せる形で変更されます。この際、統合先証券と被統合証券における保険年度の開始月が異なる場合、統合先証券の保険年度の開始月が被統合証券の付保部分についても適用されることになりますが、被統合証券最終保険年度における12カ月未満の部分の取扱いについては以下のとおりとなります。
a) 被統合証券の保険期間が30年の場合 →12カ月未満の部分は切り捨て(最長期間である30年を超えてはならないため)
b) 被統合証券の保険期間が2年(更新の場合は1年)の場合 →12カ月未満の部分は切り上げ(最短期間である2年又は1年を下回ってはならないため)
c) 上記a)およびb)以外の場合 →12カ月未満の部分は切り捨て又は切り上げ(お客様に選んでいただくことになります。)
② 保険料
統合先証券と被統合証券の保険年度の開始月が異なる場合、上記①の変更に伴い、被統合証券の付保部分に対する統合日を含む保険年度(統合先証券の保険年度)に対する保険料は、月割計算で調整されます。なお、月割計算に基づく保険料は、証券統合時にお支払いいただくことになります。
(例)以下の5契約を統合する場合(てん補事由の範囲は全て同一とします。)
保険契約 | 保険契約締結日 (保険責任開始日) | 保険責任終了日 | 保険期間 | 統合先/被統合 |
契約1 | 2004年4月1日 | 2019年3月31日 | 15年 | 統合先証券 |
契約2 | 2006年6月1日 | 2036年5月31日 | 30年 | 被統合証券 |
契約3 | 2008年8月1日 | 2021年7月31日 | 13年 | 被統合証券 |
契約4 | 2015年2月1日 | 2017年1月31日 | 2年 | 被統合証券 |
契約5 | 2016年12月1日 | 2017年11月30日 | 1年 | 被統合証券 |
*統合後の証券*
保険契約 | 変更前 | 変更後 | ||
保険責任終了日 | 保険期間 | 保険責任終了日 | 保険期間 | |
契約1 | 2019年3月31日 | 15年 | (変更なし) | (変更なし) |
契約2 部分 | 2036年5月31日 | 30年 | 2036年3月31日 | 29年10カ月 |
契約3 部分 | 2021年7月31日 | 13年 | 2021年3月31日又は 2022年3月31日 | 12年2カ月又は 13年2カ月 |
契約4 部分 | 2017年1月31日 | 2年 | 2017年3月31日 | 2年2カ月 |
契約5 部分 | 2017年11月30日 | 1年 | 2018年3月31日 | 1年4カ月 |
<ご注意>
① 統合先証券の保険年度の開始日において証券統合を行う場合であって、統合日が被統合証券の最終保険年度の期中である場合、証券統合に伴う被統合証券の保険期間短縮による保険料の返還は行いませんので、ご留意ください。
② 統合先証券の保険年度の開始日において証券統合を行う場合、統合日における被統合証券の取得のための対価の額の見直しはできませんので、ご注意ください。
1. 重大内変
日本貿易保険に通知の義務のある「重大な変更」とは、どのようなものでしょうか。通知はどのように行えばよいのでしょうか。
お客様が保険でカバーされた投資について、保険の内容に影響を与えるような「重大な変更」があった場合に、お客様には、日本貿易保険に対し通知を行っていただくことが義務づけら れています。
「重大な変更」とは、具体的には以下のとおりです。
① 投資先企業やその下の事業会社が、合併、会社分割、営業譲渡等により別の法人へ変更となった場合。
② 投資や事業を行う国又は地域(保険証券に記載される「投資先国又は地域」「事業地国又は地域」をいいます。)の変更
③ 投資先企業又は事業会社の事業内容(保険証券に記載される「主たる事業内容」をいいます。)の変更
④ 保険でカバーされた投資についての政府等との間の契約等の内容の変更(契約違反リスク特約を付けている場合に限ります。)
また、「重大な変更」以外の「変更」が生じた場合は、任意でお知らせ/ご相談頂いても差し支えありませんが、通知の義務はありません。また、重大な変更以外の変更に関する通知の有無は、保険金のお支払には影響いたしません。
通知を行う場合は「別紙様式第4 海外投資保険変更承認申請書及び変更請求書」に変更内容の確認できる書類を添付し、原則として変更日から1カ月以内に日本貿易保険に提出していただく手続きとなります。
なお、重大な変更の場合、変更後の内容について保険契約を継続するにあたっては、日本貿易保険の承認が必要となります(前述の通知が、日本貿易保険に対する内容変更の承認申請となります。)。日本貿易保険は、変更後の投資の内容についても引き続き保険のお引受が可能と判断した場合、当該申請について承認し、保険契約内容の変更を行います。お引受の継続が困難と判断した場合には、保険契約を解除する場合もあります。
投資先会社の会社名と住所を変更しました。通知義務のある「重大な変更」にあたるのでしょうか。
社名変更は「重大な変更」にあたりません。また、同一国内の住所の移転に関しても同様で、
「重大な変更」にあたりませんので、申請や通知の義務はありません。
一方で、お客様の必要に応じて、変更承認請求及び海外商社名簿の変更(バイヤー登録の社名・住所変更手続き)を行うことができます。
外国の子会社のA社、B社への投資に、それぞれ海外投資保険を付保しています。B社がA社を吸収合併することになったのですが、必要な手続を教えてください。
被合併企業であるA社向けの契約については、QⅤ-1-1に記載の「重大な変更」のうち
「投資先企業やその下の事業会社が、合併、会社分割、営業譲渡等により別の法人へ変更となった場合」に該当しますので、変更発生から1カ月以内に、被保険投資の相手方の変更の手続が必要となります。存続企業であるB社向けの契約については、特にお手続きの必要はございません。
当社が出資している企業に増資を行ったため、これに伴い当社の出資総額も増加しましたが、増額分については保険の付保を希望しません。必要な手続などを教えてください。
増資については、「重大な変更」に該当しませんので、増資部分について保険の付保を希望しない場合は、特段の手続きは必要ありません。
日本貿易保険に任意で通知をすることができますので、通知される場合は、「別紙様式第4海外投資保険変更承認申請書及び変更請求書」で「重大以外の変更」を選択し、ご提出ください。
なお、増資部分につき保険をご利用されない場合、お客様が所有する投資先企業株式のうち、一部のみに保険が付保されている状態となります。その場合における損失額の計算方法に ついては、QⅦ-1-7をご覧ください。
2. 増資
既に投資を行っている子会社に対し、新たに増資を行いました。こちらの増資分についても保険をかけたいのですが、手続き方法について教えてください。保険料率は、既に保険がかかっている分と同じものが適用されるのでしょうか。増資分については、既存契約と異なる付保率を設定したいのですが、可能でしょうか。
同じ投資先について新規増資や株式取得などにより追加出資を行った場合の保険付保の方法は、以下のとおりです。
(その1)
追加出資分について、新たな保険契約を締結する方法。増資分については申込時の保険料率が適用されます。異なる付保率を設定することは可能です。
(その2)
追加出資分について、既存の保険契約の増額として、保険契約内容変更を行う方法。増資分については申込時の保険料率が適用されます。異なる付保率を設定することは可能です。
(その3)
現在の保険契約を解約し、追加出資後の総投資額について新たな保険契約を締結する方法。
(新たな保険契約の保険期間・付保率は、解約前の保険契約の残存期間・付保率をそれぞれ下回ることはできませんのでご注意ください。)
いずれの場合も追加出資の関連書類を添えて、「海外投資(株式等)保険申込書」のご提出が必要となります。
当社が出資しているA国の企業で、出資者への配当を行うかわりに、出資者の持ち分比率に応じて「無償増資」を実施することになりました。当該増資分に保険を付保したいのですが、可能でしょうか。また、可能な場合の手続きを教えてください。
無償増資の場合でも海外投資保険を申し込むことは可能です。
この場合、保険申込書に加えて、増資金が投資先企業の資本金に組み入れられたことが分かる書類(組み入れ証明等)の写しが必要となります。
3. 株式譲渡
当社(Z社)が出資している海外の事業投資会社の持ち株を、国内のメーカーA社に譲渡することになりました。当社は海外投資保険を付保していましたが、A社も保険の継続を希望しています。この場合の手続きおよび期限について教えてください。また、保険料の支払いはどのようになるのでしょうか。
本件では、譲渡者(Z社)が海外投資保険を付保している株式をメーカーA社へ譲渡するこ とになりますので、保険契約ごとに「別紙様式第7-1 海外投資保険目的等譲渡承認申請 書」の提出を譲渡前に行い、日本貿易保険から譲渡に関して承認を取得する必要があります。承認を取得すると、Z社が付保している保険契約の「被保険者」としての地位をA社が引き 続くことになりますので、既保険証券の条件(保険料率、為替換算レートなど)がそのまま 引き継がれます。
その後、譲渡完了後1カ月以内に「別紙様式第7-2 海外投資保険目的等譲渡終了申請書」にて譲渡が完了したことを日本貿易保険に通知します。この結果、日本貿易保険より、Z社 の既存保険証券の保険金額のゼロへの減額が行われ、新たにA社名義の保険証券が発行さ れます。
この際、保険証券番号は新たに取得されますが、既存保険証券の継続という扱いになることから、すでに保険料が支払われた期間に対してはA社が再度支払う必要はありません。すなわち翌保険年度(新保険証券の2年度目)からの保険料をA社が支払えばよいこととなります。
なお、譲受人に保険付保義務はありませんので、譲受人が保険の継続を希望しない場合には上記の手続きは不要です。また譲受人が外国企業の場合は、保険の継続はできません。
当社の出資持ち分の一部をパートナーに売却することになりました。そこで、保険証券が
①出資時(35)、②1回目増資(30)、③2回目増資(20)、④3回目増資(無付保15)に分割さ
れています。パートナーに売却するのは、25となっていますが、どの出資分かは判別できません。このような場合の減額変更方法について教えてください。
この場合、売却額(25)相当分がどの保険証券分か特定できない場合は、①から④の各出資の出資金額に応じて、売却額(25)を按分の上、減額申請をする必要があります。
具体的な計算方法は、以下手順1~3のとおりです。
【手順1】:①から④の各出資割合を計算します。
(①の場合:35÷100=35%)
【手順2】:売却分(25)を【手順1】の出資割合で按分。
(①の場合:25×35%=8.75)
【手順3】:【手順2】の金額分を譲渡金額とみなし、減額する。
(①の減額後の額は35-8.75=26.25)同様に計算した結果は以下のとおりとなります。
【手順1】各保険証券の出資割合を計算
出資金額a | 出資割合 | |
保険証券① | 35 | 35% |
保険証券② | 30 | 30% |
保険証券③ | 20 | 20% |
無付保④ | 15 | 15% |
合計 | 100 | 100% |
【手順2】各保険証券ごとの出資割合に応じた譲渡金額該当分を計算
譲渡金額b | 出資割合 | |
保険証券① | 8.75 | 35% |
保険証券② | 7.5 | 30% |
保険証券③ | 5 | 20% |
無付保④ | 3.75 | 15% |
合計 | 25 | 100% |
【手順3】譲渡後の額を計算
譲渡前a | 譲渡金額b | 譲渡後c (=a-b) | |
保険証券① | 35 | 8.75 | 26.25 |
保険証券② | 30 | 7.5 | 22.5 |
保険証券③ | 20 | 5 | 15 |
無付保④ | 15 | 3.75 | 11.25 |
合計 | 100 | 25 | 75 |
※株数に小数点以下の端数が生じる場合は四捨五入。四捨五入した結果、合計額が合わない場合は、一番古い保険証券で調整する。
変更には、譲渡契約書、譲渡金額・譲渡日(譲渡金額入金日)等がわかる書類を添付の上、
「別紙様式第6 海外投資保険 増額・減額 承認請求書」を提出してください。
なお、売却する株式が①②③④いずれかに該当するかが、譲渡契約書や株式番号などから判別できれば、当該分のみ減額することが可能です。
全株式を売却する予定です。次の保険年度の保険料請求書が届いたのですが、どのような手続を行えば保険料請求を止められますか。
全株式の売却または投資先企業の清算といった理由で、保険を解約する場合、「別紙様式第
6 海外投資保険 増額・減額 承認請求書」に売買契約書(譲渡契約書)と売却完了が確認できる書類(譲渡代金入金にかかる受領証等)を添付して、保険期間開始日の応答日の1カ月前までにご提出が必要です。例えば保険年度が5月1日~4月30日のケースでは、承認請求書の提出期限は3月31日となります。
1. 免責、不払・返還事由
海外投資保険で保険金が支払われない場合、または保険金の返還が求められる場合について、教えてください。
主に次の損失については免責となります。
①保険期間前に生じた事由による損失
②申込時に損失を受けるおそれのある重要な事実を告げない告知義務違反のため、契約を解除された場合に、当該事実に基づいて発生した損失
③お客様や投資先企業等の故意または重大な過失によって生じた損失
④お客様が法令違反(外国の法令を含む)によって取得した株式等、配当金請求権、取得金等、不動産に関する権利等について生じた損失
⑤お客様が不正競争防止法又は刑法の贈賄に関する規定違反によって取得した株式等、配当金請求権、取得金等、不動産に関する権利等について生じた損失
また、主に次の場合については、保険金の一部又は全部をお支払いしない、または保険金の返還を求めることがあります。
①お客様や投資先企業等の過失(重大な過失を除く。)によって損失が発生した場合
②お客様が故意または過失により事実を告げず、または真実でないことを告げたとき
③お客様が海外投資保険の約款の条項に違反されたとき
④お客様が暴力団、暴力団員(暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者を含む。)、暴力団準構成員、暴力団関係企業その他の反社会的勢力に該当し、又は反社会的勢力若しくはこれと密接な関係にある者(以下「反社会的勢力等」という。)による経営の支配若しくは実質的関与、反社会的勢力等に対する資金等の提供若しくは便宜の供与、その他反社会的勢力等と社会的に非難されるべき関係にあると認められるとき
2. 解除事由
海外投資保険の保険契約は、どのような場合に解除されますか。
日本貿易保険は、以下の場合、海外投資保険の保険契約を解除することがあります。
①申込時に損失を受けるおそれのある重要な事実を告げない告知義務違反があったとき
②保険でカバーされた投資について重大な変更がされたとき(日本貿易保険が重大な変更を承認したとき、条件を付して承認し当該条件が成就したときを除きます。)
③指定日までに保険料の全額又は延滞金の全額を納付されなかったとき
④お客様が海外投資保険の約款の条項に違反されたとき
⑤環境ガイドラインに基づくスクリーニング・フォームの内容が、お客様等の故意又は過失により事実に反しているか、記載すべき事項を記載していないため、環境ガイドラインのカテゴリA又はBに分類されるべきプロジェクトがカテゴリCに分類されたとき
⑥お客様が、株式等、配当金請求権、取得金等、不動産に関する権利等の取得に関して不正競争防止法又は刑法の贈賄に関する規定に違反されたとき
⑦お客様が、反社会的勢力等による経営の支配若しくは実質的関与、反社会的勢力等に対する資金等の提供若しくは便宜の供与、その他反社会的勢力等と社会的に非難されるべき関係にあると認められるとき
1. 損失額の算定
戦争により投資先企業が損害を受け、1カ月以上の事業休止が発生しました。保険金請求の対象損失額は、どのように計算したらよいでしょうか?
投資先企業の損害発生の直前及び事故発生直後の評価額を比較し、純資産額の差額を損失額とします。(合弁事業の場合は、当該損失額のうち、お客様の投資額相当の額。なお、直前の評価額については、QⅦ-1-4をご参照ください。)
<保険金支払いの対象となる損失額のイメージ>
残余財産
事故による損失
投資先の 損害発生直前の
株式等の評価額
保険金支払いの対象となる損失
戦争により工場が爆撃されて、投資先企業が事業継続不能となりました。残余財産はすべて売却して清算しましたが、株主にはまったく分配されませんでした。支払われる保険金はどのように計算されるのでしょうか。
次の設例に基づいて説明します。
(1)当社は、資本金30,000,000ペソの会社に50%を出資しました。(当社出資額は【表2】 aのとおり)
(2)その後の好業績により、純資産額は90,000,000ペソに膨れあがりましたので、保険上の「取得のための対価の額」を純資産額にあわせて増額しました。為替レートも変動していたので、同時に変更手続き(レート減額)を行いました。(【表2】bのとおり)
(3)事故発生直前の純資産額(総額)は100,000,000ペソ(【表1】cのとおり)でした。したがって、当社持分の損害発生直前の純資産額(「事故直前の評価額」) は、 100,000,000 ペソ×50%×事故時為替換算率( exch.)[ 200ペソ=US$1=\110]=
\27,500,000(【表2】c-①のとおり)でした。
(4)残余財産を売却した結果、債権者に対して分配する原資が8,000,000ペソ残りました。これを債権者に支払いましたので、株主への分配金はありませんでした。
【表1】投資先企業全体の資本金推移
払込資本金 (ペソ) | 剰余金 (ペソ) | 合計(資本) (ペソ) | |
a 出資時 | 30,000,000 | 0 | 30,000,000 |
b 変更後(純資産増加) | 30,000,000 | 60,000,000 | 90,000,000 |
c 損害発生の直前 | 30,000,000 | 70,000,000 | 100,000,000 |
【表2】当社出資分の資本金推移
(出資比率:50%)
払込資本金 (ペソ) | 剰余金 (ペソ) | 合計(資本) (ペソ) | 為替換算率 | 取得のための対価の額・円 | 付保率 | 保険金額 (取得のための対価の額×付保率) | |
a 出資時 | 15,000,000 | 0 | 15,000,000 | 1.200 | \18,000,000 | 95% | \17,100,000 |
b 変更後 ( 純 資 産 増 加) | 15,000,000 | 30,000,000 | 45,000,000 | 0.500 | \22,500,000 | 95% | \21,375,000 |
c 損害発生 の直前 | 15,000,000 | 35,000,000 | 50,000,000 | 0.550 | 95% |
約款上の保険金をお支払いする額の計算式は、以下のとおりとなります。
①「直前の評価額」
①と②のいずれか小さい額(③)-④「直後の評価額」=⑤「損失額」」
②「取得のための対価の額」
⑤「損失額」×⑥「てん補率95%」=⑦「保険カバーの対象額」
⑦「保険カバーの対象額」
⑧「保険金額」
⑦と⑧のいずれか小さい額(⑨)=「実損てん補額」(支払保険金)
【表2】から①~⑨の額を算出していくと、以下のとおりとなります。
① 「直前の評価額」=50,000,000ペソ
② 「取得のための対価の額」=45,000,000ペソ
③ ①と②のいずれか小さい額=45,000,000ペソ
④ 「直後の評価額」=0ペソ
⑤ 「損失額」=③-④=45,000,000ペソ
⑥ 「てん補率」=95%
⑦ 「保険カバーの対象額」=⑤×⑥×損害発生の直前の為替換算率=45,000,000×0.95
×0.550=¥23,512,500
⑧ 「保険金額」=\21,375,000
⑨ 実際に「カバーされる額」=⑦と⑧のいずれか小さい額→⑧の方が小さい=
\21,375,000
したがって、実際に支払われる保険金は、\21,375,000となります。
ちなみに、本ケースにおける貸借対照表の推移は、以下のとおりです。
投資先企業設立時のB/S(単位:百万ペソ)
資産 | 負債・資本 |
資産 60 | 負債 30 資本金 30 |
付保金額変更時のB/S(単位:百万ペソ)
資産 | 負債・資本 |
資産 120 | 負債 30 資本 90 資本金 30 剰余金 60 |
損害発生の直前のB/S(単位:百万ペソ)
資産 | 負債・資本 |
資産 130 | 負債 30 資本 100 資本金 30 剰余金 70 |
事故直後のB/S(単位:百万ペソ)
資産 | 負債・資本 |
分配原資 8 | 負債 30 資本 -22 |
QⅦ-1-2の例において、爆撃されたときは事業が継続しうるか否かの判断ができなかったので、取りあえず「損失発生通知書」を提出して様子を見ることとしていました。
5年後戦争が終結して調査してみたところ、被害は大きかったものの、再建可能との判断に至りました。工場の損害額は60,000,000ペソでした。また、休業期間中に負債が 20,000,000ペソ増加しました。その結果、再開日のB/Sは以下のとおりでした。「1カ月以
上の事業の休止」により保険でカバー額はどのように計算されるのでしょうか。
再開日のB/S(単位:百万ペソ)
資産 | 負債・資本 |
資産 70 | 負債 50 資本 20 資本金 30 欠損金 -10 |
算出方法はQⅦ-1-2と同様です。
QⅦ-1-2の【表2】と「直後の評価額」(再開日のB/S参照)から①~⑨の額を算出していくと、以下のとおりとなります。
① 「直前の評価額」=50,000,000ペソ
② 「取得のための対価の額」=45,000,000ペソ
③ ①と②のいずれか小さい額=45,000,000ペソ
④ 「直後の評価額」=20,000,000ペソ×50%=10,000,000ペソ
⑤ 「損失額」=③-④=35,000,000ペソ
⑥ 「てん補率」=95%
⑦ 「保険カバーの対象額」=⑤×⑥×損害発生の直前の為替換算率=35,000,000×0.95
×0.55=\18,287,500
⑧ 「保険金額」=\21,375,000
⑨ 実際に「カバーされる額」=⑦と⑧のいずれか小さい額→⑦の方が小さい=
\18,287,500
したがって、実際に支払われる保険金は、\18,287,500となります。
当初の出資金額100百万ドルについて海外投資保険を付保していました。後に戦争に巻き込まれ工場が爆破された結果、同社は操業不能に陥ることとなりました。そこで、戦争によって生じた損失について保険金請求の申請を行ったところ、同社は戦争直前まで相当の利益を上げていた結果、海外預金が120百万ドルありこれがそのまま債務支払後も残余財産として残ったために、「支払保険金の算定は、保険約款上『直前の評価額』と『取得のための対価の額』のいずれか少ない額から残余財産を引いた額なので、保険金は支払いできない。」と言われました。なぜ保険金は支払われないのでしょうか。また、この場合は海外投資保険についてどのような手続きが必要だったのでしょうか。戦争直前の財務諸表上では、同社の純資産額は220百万ドルになっていました。
保険事故になった場合、海外投資保険では「直前の評価額」と「直後の評価額」の差額を計算し、これを実際に生じた損失として保険カバーの対象とすることにしています。したがって、支払保険金の算定に際しては「残余財産」を控除することとなります。
また、「直前の評価額」の算定については、「取得のための対価の額」と「損害発生の直前の純資産額」のいずれか少ない方から、残余財産を引いた額が対象となります。
そこで、上記のケースは「取得のための対価の額=100」<「残余財産=120」、すなわち「直後の評価額」は「直前の評価額」を超過していたことから、損失額が発生していないこととなり、保険金をお支払いすることができないこととなります。
④100 事故による損失 | ②220 純資産額 | |||
③120 | ||||
①100 取得のための | 残余財産 |
対価の額
上図でみると「①=100」、「④=100」なので、損失(④)がフルカバーされるように思えますが、この場合はまず、①と②のいずれか少ない方から③を引くことにより損失額が算出されます。
具体的には以下のとおり計算されます。
①「取得のための対価の額」=100
「付保率」=95%
②「損害発生の直前の純資産額」=220
③「残余財産」=120
④’「保険金額」=100×95%=95
実際に保険金をお支払いする金額=①と②のいずれかの少ない額から③を引いた額となりますので、
100-120=▲20・・・⑤
本来なら⑤×95%(てん補率)=保険金(ただし④’の額より小さいこと)となりますが、結果がマイナスですので保険金支払いはありません。
このような場合は、「取得のための対価の額」を、投資先企業の純資産額にあわせて増額する必要があったと考えられます。
出資に際し送金はドルで行ったため、ドル建てで保険設計して頂きましたが、実際の決算は監査を含めルピー建てで行うこととなりました。送金額ベースで付保している場合、事故時の査定はルピー建てになるのでしょうか?また、付保済みのドルベースの保険証券を、決算書が提出された段階でルピー建てに変更することは可能でしょうか?
事故時の査定は、直近の事業年度の決算書と事故後の決算内容を比較した場合の「実損部分」を保険でカバーいたしますので、このような場合はルピー建ての決算書を用いて査定した 上、円貨換算後の実損部分を保険金(証券上の保険金額を上限として)としてお支払いいた します。
また、送金時ドル建てで計算されていた保険証券について、実際の決算書に合わせてルピー建てに改めることは可能です。年一回、次年度保険期間開始日の応当日の1カ月前までに
「別紙様式第6 海外投資保険 増額・減額 承認請求書」を提出いただくことで、実態に即して見直しをして頂けます。
出資金にかかわる投資者の簿価は取得原価なので、原価が保険でカバーされればよいという考え方で、投資先企業の純資産額が増加しても「取得のための対価の額(保険価額)」の増額変更は行っていません。海外投資保険は実損てん補制なので、損失額の95%が保険金額の範囲内であれば、大きな損失でも小さな損失でも損失額の95%の額の保険でのカバーが受けられると理解してよいでしょうか。(なお、本保険契約における付保率は100%を設定しているものではありません。)
損失額の計算については、「直前の評価額」と「取得のための対価の額」とのいずれかの小さい額から「直後の評価額」を引いた金額となっています。このため、投資先企業の純資産額が増えているにもかかわらず、「取得のための対価の額」が低いまま付保していると、損害が発生した後でも「直後の純資産額」が「取得のための対価の額」を上回ってしまう場合が発生します。その場合には、損失が発生していないこととなり、保険でカバーされる額はゼロということになります。
このような状況を避けるためには、「取得のための対価の額」を純資産に見合った額で変更しておく必要があります。
なお、お客様持ち分のうち一部のみに保険が付保されている場合は、お客様持ち分のうち保険付保対象部分の割合を用いて損失額を計算することになります。詳しくはQⅦ-1-7をご覧ください。
当社が100%出資している海外子会社があります。初回の投資については海外投資保険を付保しましたが、その後に行った増資部分については付保しなかったので、現在は投資持ち分のうち一部についてのみ部分的に付保している状態になっています。このような状態で事業がストップして事故となった場合、保険金の額はどのように算定されますか。
お客様持ち分の一部についてのみ保険がかかっている場合、お客様持ち分のうち保険付保対象部分の割合を用いて付保部分に係る損失額の計算を行います。
お客様持ち分のうち保険付保対象部分の損失額計算にあたっては、当該付保対象部分に対応する株式数に基づいた持ち分比率にて損害発生直前及び事故直後の評価額を算定し、損失額の計算を行います。例えば、保険が付保されている初回投資では70株を取得、その後に行われた保険無付保の増資では30株を取得した場合については、70株に相当する部分すなわち、70%(70株/(70株+30株))が保険付保対象部分の持ち分比率となります。この、株式数を基準とした評価は、保険付保対象部分の持ち分取得の際に投資先企業の純資産評価額以上の額の送金が行われた場合(例:プレミアム付きの第三者割当増資の場合等)であっても同様となります。
上記の例において、具体的には以下のとおりとなります。
<保険付保対象部分についての直前の評価額>
直前の投資先企業純資産評価額のうちお客様持ち分に相当する額を100(資本金80+資本準備金10+利益剰余金10)とします。
お客様持ち分のうち保険付保対象部分の割合が70%である場合、保険付保対象部分についての直前の評価額は、
100×70%=70(資本金56+資本準備金7+利益剰余金7)となります。
<保険付保対象部分についての直後の評価額>
事故直後の投資先企業純資産評価額のうちお客様持ち分に相当する額が20まで毀損したとします。(※通常、利益準備金→資本準備金→資本金の順に毀損すると考え、ここでは残額の20全てを資本金としています。)
お客様持ち分のうち保険付保対象部分の割合が70%である場合、保険付保対象部分についての直後の評価額は、
20×70%=14(資本金14)
となります。(つまりは、直前の評価額から利益準備金7+資本準備金7+資本金42=56が毀損したということになります。)
【直前の評価額 100】
【直後の評価額 20】
付保
(70 株)
無付保
(30 株)
付保
(70 株)
無付保
(30 株)
毀損分
56
毀損分
24
資本金 6
資本金 14
資本金 56 | 資本金 24 |
資本準備金 7 | 資本準備金 3 |
利益剰余金 7 | 利益剰余金 3 |
事業不能等による事故の場合、
「損害発生の直前の評価額と保険契約における取得のための対価の額のいずれか低い方」と「事由発生直後の評価額」との差額が損失額となります。
(※損害賠償等により取得した金額がある場合は、その分を損失額から控除します。)上記の損失額について、保険契約に定める保険金額を限度として、「損失額×てん補率
(通常は95%)」の額を保険金としてお支払いします。
上記の算定方法は、同一の投資先企業への出資が複数の保険証券に分かれている場合における保険証券毎の損失額算定方法にも適用されます。
部分損失特約の事故については、個々の案件において定められる特約の内容によりますが、投資先企業が行う特定の事業に係る部分のみを対象とする目的で当該対象事業に係る出資持ち分(お客様の投資先企業に対する出資部分をいいます。以下同じです。)について保険契約が締結されている場合(特定の再投資先事業に係る損失のみにてん補対象を限定する特約を付している場合や、特定の事業に向けた資金のため行われた出資に係る持ち分について保険が付保されている場合などがこれに該当します。)にあっては、取得のための対価の額を限度として、当該対象事業に係るお客様の持ち分評価額の毀損額を損失としててん補します。この場合、当該対象事業に係る出資持ち分以外の部分(例えば、保険の対象としていない事業会社向けの資金拠出を目的として行われた被保険投資の相手方に対する増資等)について保険が付保されていなくても、当該対象事業に係る出資持ち分の全てについて保険が付保されている場合においては、損失額の算定にあたり、上述の「お客様の投資先企業株式持ち分のうち保険付保対象部分の割合」については考慮しません。
他方、特定の対象事業に係る出資持ち分の全てについて保険が付保されていない場合にあっては、当該特定の対象事業に係る出資持ち分のうち保険付保対象部分の割合(株式数に基づき計算します。)を用いて当該付保部分についての損失額の算定をいたします。
上記ご説明のとおり、基本的には、株式数を以て保険付保対象部分に関する損失額を算定することになりますが、新規の株式取得を伴わない増資がなされた場合など、持ち分割合を株式数ベースで計算することが困難となるようなイレギュラーなケースにつきましては、別途ご相談ください。
部分損失のみ特約を付帯している案件において2021年12月1日に保険事故が発生しました。当該案件においては下表のとおり、再投資先企業に対して途中で増資を行った関係で証券上には2つの枝番があります。部分損失のみ特約の場合、証券上の各枝における取得のための対価の額は、直接投資先の被保険者持分の全額で設定することになります。この取得のための対価の額は、枝毎に異なる金額で設定が可能であり、例えば下表においては、保険契約締結時に出資時の送金額(US$ 100,000)で設定し、再投資先企業への増資時にはその時点における被保険投資の相手方の簿価純資産額(US$ 120,000)で設定しています。部分損失のみ特約では取得のための対価の額の範囲で損失が算定されるところ、下表の場合、枝番00と枝番01のうち、どちらの取得のための対価の額を基準とすべきでしょうか。 | ||||
枝番00 | 枝番01 | |||
保険契約締結日/保険変更承認日 | 2020年4月1日 | 2021年7月1日 | ||
取得のための対価の額(外貨建) | US$ 100,000 | US$ 120,000 | ||
為替換算率 | 100.00 | 90.00 | ||
取得のための対価の額(邦貨) | \ 10,000,000 | \ 10,800,000 |
参照すべき取得のための対価の額は、保険事故発生の直前のものになります。
そのため、保険事故が 2021 年 12 月 1 日に発生したのであれば、直前の取得のための対価の額(邦貨)は\10,800,000(枝番 01)であるため、当該額の範囲で損失が算定されることになります。
保険期間中に戦争が発生し投資先企業が事業休止となりましたが、事業再開のタイミングは保険期間終了後となりました。なお、保険期間満了時点において投資先国の引受方針が「×」(引受停止)となっていたので、新たな保険契約の締結は行えませんでした。こ
の場合、保険金はどうなりますか。
投資先企業の事業休止期間が1カ月以上であれば、保険金をお支払いする対象となります。上記の保険金支払いにあたり、新たな保険契約が締結されているか否かは問いません。
※保険期間を30年として付保していた場合は、保険証券記載の保険期間の満了日時点において事業休止期間が1カ月以上となっていなければ、保険金をお支払いする対象とはなり
ませんのでご注意ください。
2. 請求手続き
海外投資保険で、収用や戦争等によって事業不能等が発生した際にカバーされる金額は、損害の発生の「直前に評価した額」と、事業不能等の事由の「直後に評価した額」の差額をベースに計算されるとのことですが、戦争等によって投資先企業が損害を被っている混乱した状況下において「直前」「直後」の関係書類はどのようなものを提出するのでし
ょうか。また、「直前」「直後」とはいつの時点を指すのでしょうか。
「直前に評価した額」「直後に評価した額」を証する書類として、以下のいずれかの写しの提出をお願いします。
①投資先企業の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしたもの)
②お客様の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしたもの)の作成の基礎となる投資先企業の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしていないもの)
③上記①または②の写しの提出が困難として日本貿易保険が認めた場合は、②以外の投資先企業の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしていないもの)やその他の書類
(公認会計士が作成した合意された手続実施結果報告書や、直前に評価した額については、出資金の払い込みを証する書類等)
「直前」の書類としては、事故が発生する前の直近のもの、「直後」の書類としては、事業継続不能の場合は、事故以降で事故が発生した時点に最も近いものをご提出いただきます。事業休止の場合は、事業を再開した日以降でその再開日に最も近いものを、見通しが不明な場合は、事業休止が1カ月以上継続した日以降の任意の日のものをご提出いただきます。 いずれの書類の写しも提出が困難な場合は、ケースバイケースで日本貿易保険が判断させていただきます。
投資先企業が天災による損害を受けたため、投資先企業の破産手続が開始されました。破産手続の開始を証する書類は、どのようなものを提出すればよいのでしょうか。
裁判所の通知等の投資先企業の事業地国において認められる破産手続開始の決定を通知する書類の写しを、これらが揃わない場合は、破産手続に関連する報道等の入手可能なその他の書類の写しをご提出いただきます。
いずれの書類の写しも提出が困難な場合は、ケースバイケースで日本貿易保険が判断させ
ていただきます。
5月に投資先企業が減資を行い、8月に保険事故が発生しました。事故の発生前の直近の財務諸表として存在するのは、当社と投資先企業がいずれも3月に作成したもので、減資による変動は反映されておりません。この場合は、何か追加的な書類の提出は必要でしょうか。
原則として、当該減資の内容が確認できる書類の写しをご提出いただく必要があります。この場合、てん補事由と因果関係のない減資による評価損は、てん補責任額から控除すべく調整を行います。
なお、評価には反映されていない増資、事業譲渡、合併、重要な資産の処分等を含む、事故と因果関係が認められない事象があり、その金額が明確に算定できる場合も同様です。
投資先国で戦争が始まりました。当初は投資先企業の工場への被害はありませんでしたが、やがて戦火が拡大し、工場が爆撃されたため、工場を一旦閉鎖しました。
3年後に戦争が終わったので、現地に出向いて調査した結果、修理をすれば再開が可能であるとの結論に達しました。修理を行い、1年後から操業を開始しました。
この場合、各種通知書の提出時期、保険金請求可能時期について、どのように考えればよ
いのでしょうか。
保険事故がいまだ発生していないものの、保険事故が発生して損失を受けるおそれが高まったと思われる状況が発生したときに、損失を受けるおそれが高まる事情発生の通知として「別紙様式第9 海外投資保険事情発生通知書」を提出いただく必要があります。本例の場合は戦争が始まったときなどが、損失を受けるおそれが高まる事情が発生したときであると考えられますが、通知の要否やタイミングにつきましては個々のケースにより判断が異なりますので、日本貿易保険にご相談ください。
戦争などで損害を受けて事業が休止した場合、「事業の継続の不能」に該当する保険事故か
「1カ月以上の事業の休止」に該当する保険事故かすぐには判断できない場合があります。契約上などで事業継続不能が確定する場合は、その段階で「別紙様式第10 損失発生通知書」を提出することとなります。いずれとも判定ができない場合でも、事業の休止が1カ月以上 となった場合には、「1カ月以上の事業の休止」に該当することとなり、「損失発生通知書」 を提出することが可能となります。
「別紙様式第15-1 海外投資(株式等)保険保険金請求書」は事業継続不能となった場合に
は損失の発生日から9カ月以内に、事業の休止期間が1カ月を超えた場合には当該期間が確定したとき(または保険期間満了日)から9カ月以内に、提出することができます。
投資先企業と事業地国政府との間でプロジェクトに関し契約が締結されており、契約違反リスク特約を付けて保険契約を締結しています。外国政府の契約不履行が発生し、事業がストップした場合には保険金支払の対象になると思われますが、保険金請求までに何を行わなければいけないでしょうか。
外国政府等による契約不履行が発生し、それにより事業不能等が生じ、かつ外国政府等が契約に定める損害賠償義務を履行しない場合、保険金のお支払い対象となります。
この場合、まずはお客様において外国政府等と損害賠償義務の有無及び範囲について合意頂く必要があり、合意が成立しない場合には、保険の対象契約において定められている裁判・仲裁等の手続きを行っていただきます。かかる合意又は裁判等により、外国政府等による損害賠償義務が確定するも、なお外国政府等がかかる義務を履行しない場合には、保険金を請求していただくことができます。
3. 回収
戦争により投資先企業が1年間の事業休止を余儀なくされたため、当該事業休止により生じた損失について海外投資保険の保険金支払を受けました。その後、戦争が終了したので事業を再開したところ、投資先企業の業績が急激に回復し、今期決算では利益剰余金が生じました。利益剰余金の一部については今期配当される見込みですが、配当金を受け取った場合は回収納付義務の対象になりますか。
海外投資保険について保険金の支払を受け、その後に事業を再開した結果、投資先企業で利益剰余金が発生し配当が生じる場合であっても、当該利益剰余金や配当金は回収納付義務等の対象とはなりません。
なお、配当金請求権を外国政府等に奪われた場合の損害賠償請求権や、外国における為替取引制限等により送金不能となった株式の売却代金に係る債権など、第三者に対する権利については、回収納付の対象となります。
戦争により投資先企業が損害を受け、事業を継続することができなくなったため、当該事業継続不能により生じた損失について海外投資保険の保険金支払を受けました。保険金算定にあたっては、事故直前の株式評価額が1億円、事故直後の評価額が4千万円であったため、損失額は6千万円と認定されました。その後、残余財産についての売却処分を行い
ましたが、この売却代金は回収納付義務の対象になりますか。
保険金の支払いの対象となった金額、すなわち「損失額」に該当する部分が回収義務等の対象です。したがって、事故直後の評価額として保険金計算の際に控除された部分は、保険金支払いの対象とならなかった残存価額部分に該当しますので、この部分が後日現金化されたとしても納付の対象とはなりません。
1. 概要
QⅧ-1-1:中小企業向け先払いの概要①どのような制度ですか。
以下の条件を満たす場合に、事業会社(被保険投資の相手方)の事業の休止期間(3カ月以内に限ります。)中に発生した一部費用について帳票などをエビデンスとして、QⅦ-1の方法で査定するのに先立ち、てん補します。
被保険者: | 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第1項に定める中 小企業者又は資本金の額若しくは出資の総額が10億円未満の会社 (中小企業者を除く。)であって、事故直後のB/Sを事業の休止の日から3カ月以内に日本貿易保険に提出できない(四半期毎に監査済財務諸表を作成していない)者 |
発生している事象: | てん補事由発生(1カ月以上の事業の休止) |
対象スキーム: | 直接投資(間接投資の場合は、中間投資会社に留保されている利益も確認する必要が生じるため、本制度の趣旨から、対象外とな ります。) |
QⅧ-1-2:中小企業向け先払いの概要②利用できる者に制限があるのはなぜですか。
海外投資保険では、てん補事由(1ヶ月以上の事業の休止)が発生し、損失が生じた場合に、保険金をお支払いします。
一方、損失額の算定に当たっては、原則として保険事故発生後に作成した監査済又はレビューを受けたB/Sを提出いただき、当該B/S上に記載された株式の評価額から当該評価額の減少額を確認しています。しかし、非上場の中小企業においては中間決算、四半期決算の開示が義務付けられていないことから、四半期又は半期で決算書類を作成している大企業を中心とした上場企業に比べ、保険金査定を開始できるタイミングが遅くなってしまう
(又は保険金請求のために新たに決算書類を作成するとコストがかかってしまう)問題がありました。
このような問題を解決するために、QⅧ-1-1の条件を満たす場合には、費用発生に係るエビデンスを提出いただき、これに基づいて一部の損失をてん補する制度を設けまし た。よって、ご利用いただける被保険者には制限がございます。
2. 損失額の算定
QⅧ-2-1:中小企業向け先払いの損失額の算定方法① 損失額はどのような費用についてどのように算定しますか。
損益計算書において「営業費用」に該当する費用のうち、従業員の給与、地代家賃、水道光熱費、通信費、といった事業休止中であっても経常的に発生する費用(注)を損失としててん補します。事業の休止の日以降3カ月以内に発生した費用に限るものとし、対象となる費用に当たるか否か、及びその額は、QⅧ-2-2のエビデンスを基に確認いたします。
(注)
・ 仕入や資本的支出など、資産として計上される場合は対象外となります。
・ 引当金、評価損益など決算前には金額が確定しない費用は対象外です。
・ 減価償却費は、減価償却費の対象となるものについて、事業休止直前月と物の数量、状態に変更がないことを証明いただける場合に対象となります。また、減損による減価償却費の増額は本制度の対象とはしません。
・ 営業外費用である為替差損や投資損失などの財務費用等や特別損失となる減損損失、災害費用なども本制度の対象外となります。
・ 本制度の対象から外れる費用については、再度の保険金請求(QⅧ-3-1)をご参照ください。
取得のための対価の額又は直前の評価額のどちらか少ない額を超えない範囲とする点は、
Ⅶ.保険事故の1.損失額の算定 と同様です(よって、直前に評価した額を証する書類を併せてご提出ください。)。
また、費用は財務諸表等の通貨で計算します。邦貨換算につきましては通常の損失額の算定に同じです。
営業費用とは具体的にはどのような費用について、どのようなエビデンスを提出すればよいですか。
通常のB/Sに基づく査定と異なり、以下のような複数のエビデンスをご提出いただくことになります。具体例は下表ご参照ください。
⚫ 事業の休止期間中に発生した同費用及び額を日本貿易保険が確認できる帳票
⚫ 同費用及びその額の発生を証する書類
⚫ 前月の財務諸表など事業休止直前において、当該費用を営業費用としていたことがわかる書類
⚫ 当該費用につき、事業休止直前から変更が発生している場合はその内容がわかる書類
⚫ その他日本貿易保険が求めた書類
営業費用の例 | エビデンス |
給与 | 当該費用の発生及びその額がわかる書類事業休止直前の支出明細 直前から従業員の変動がある場合はその書類 |
水道光熱費 | 当該費用の発生及びその額がわかる書類事業休止直前の支出明細 直前から契約内容に変更がある場合はその書類 |
地代家賃 | 当該費用の発生及びその額がわかる書類事業休止直前の支出明細 直前から契約内容に変更がある場合はその書類 |
注
⚫ 営業費用は業種ごとに異なるため、個別案件毎にご相談となります。
どの期間のエビデンスを用意すれば良いですか。
事業の休止期間(事業の休止の日から3カ月以内に限ります。)に発生した営業費用についてQⅧ-2-2に記載しているエビデンスをご提出ください。
加えて、最新の監査済財務諸表が作成されたのち、保険金請求時点までに株式に変動が生じている場合(一部株式を売却した、増資した、合併があったなど)は、必ずご連絡ください。
てん補事由(1カ月以上の事業の休止)が発生しましたが、投資先国政府・自治体から補償金の交付がありました。この場合の損失額はどのように算定されますか。
保険金請求の対象となった事業の休止期間に対して、補償金が交付された場合は、損失額から当該交付された補助金額を控除しますので、保険金請求時に交付された補償金額のわかる書類をご提出ください。
また、保険金支払後に保険金請求の対象となった事業の休止期間において補償金が交付された場合は、回収金として当該金額を日本貿易保険に納付いただくことになります。
その他、営業外収入があった場合には、都度ご相談ください。
3. 保険金請求手続き
現在事業の休止が継続しており、2カ月が経過しました。今後も事業の休止が継続すれば、さらに損失を受ける可能性がありますが、現時点で一旦先払いによる保険金請求をすることは可能ですか。また、この場合、さらなる損失について再度保険金請求はできますか。
事業の休止期間が継続している場合であっても、事業の休止の日から3カ月以内に受ける損失については先払いによる保険金請求が可能です。
上記の場合、事業の休止の日から2カ月を経過するまでに受けた損失について、エビデンスを提出いただき、損失額を算定の上、保険金をお支払いします。1つの保険事故について、先払いによる保険金請求は1回まで可能です。
なお、先払いによる保険金支払いの際、てん補した損失以上に損失が発生していることが確認される場合には、同保険金支払に際し、日本貿易保険は、当該損失について保険金をお支払いすることができる旨の条件を付します。よって、同条件が付された場合は、監査済財務諸表等の作成後に、再度保険金を請求いただくことが可能です。この場合、日本貿易保険は通常通り損失額の算定(「QⅦ. 保険事故」をご参照ください。)を行い、保険金をお支払いします。ただし、すでに先払いによる保険金請求に対して支払った保険金の額は差し引きます。
QⅧ-3-2:中小企業向け先払いの保険金請求手続き② 保険金支払にあたり、その他気を付けることはありますか。
保険金支払後、てん補した費用で戻し入れが発生した場合や、てん補した期間に収入が発生したことが判明した場合などは、速やかに日本貿易保険にご連絡いただくことが、保険金支払の条件となります。よって、上記のような場合は速やかにご連絡ください。
現在事業の休止が継続しており、再開を期待していたところ、3カ月が経過してしまいました。先払いによる保険金請求は可能ですか。
事業の休止の日から3カ月以内に発生した費用については、先払いによる保険金請求を行っていただくことは可能ですので、可能な限り速やかにエビデンスをまとめていただき、保険金を請求してください(この間に監査済みの財務諸表等の提出が可能となった場合 は、通常通り、B/Sにより損失額の算定を行いますので、「QⅦ. 保険事故」をご確認く
ださい。)。
先払いによる保険金請求をするための手続きを教えてください。
通常の保険金請求と同じく、事業の休止が1カ月以上となった場合には、てん補事由の
「1カ月以上の事業の休止」に該当することとなり、「損失発生通知書」を提出していただきます。
その後、エビデンスをまとめていただき、先払いによる保険金請求をしていただくことになります(エビデンスを提出いただく際は事前にご相談ください。)。