Contract
連帯保証責任とxxx
当社は、10年以上前から所有する建物を賃貸し、何度か契約を更新して現在まで賃貸借契約が継続していましたが、賃借人が賃料を滞納したまま倒産してしまいました。連帯保証人に対し賃借人の延滞賃料を請求したところ、賃料滞納を全く知らなかったとして支払を拒否しています。このような連帯保証人の言い分は認められるのでしょうか。
1 保証債務
保証債務は、主たる債務者が債務を履行しないときにその履行をする責任を負う債務です(民法446条)。保証人が責任を負う範囲は、主たる債務のほか、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含します(民法447条)。
保証契約は主債務の履行を担保するものとしてなされるものですから、主債務者が倒産した場合でも、保証人に対して保証債務の履行を求めることができます。
2 主債務の発生原因の契約が更新された場合
主債務の発生原因である契約が更新された場合に、更新前の契約の保証人が更新後の契約においても保証人となるか否かは、更新前後で契約の同一性があるか否かによります。すなわち、更新前と更新後の契約が同一の契約であると認められる場合には、更新前の契約の保証人の責任は、更新後に発生した債務についても及びます。
最高裁判所平成9年11月13日判決は、建物賃貸借契約が更新された場合に、賃貸人が更新前の契約の保証人に対し、更新後の賃借人の債務について請求した事案ですが、この判決は、更新前の契約の保証人が「期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、保証人は、賃貸借において保証債務の履行を請求することがxxxに反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないというべきである」と判示しています。
上記のとおり、保証人は原則として、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責任を負うことになります。
3 xxxによる制限
上記最高裁判決に示されているように、「保証債務の履行を請求することがxxxに反すると認められる場合」には、例外的に保証人の責任が全部又は一部責任を免れる場合があると考えられます。保証人の予期に反して保証債務が過大となったような場合にxxxにより保証人の責任を軽減した裁判例があります。
⑴ 東京地方裁判所平成22年6月8日判決
この判決の事案は、平成9年、賃借人の父が賃借人の連帯保証人となり建物賃貸借がなされ、2年毎に契約更新されていたところ、賃借人が平成10年半ばころから賃料を滞納し始め、平成11年5月ころから全く賃料の支払がなくなり、その後行方不明になったというものですが、賃貸人は、前記のようのな状態であったにもかかわら
ず、平成11年に一度連帯保証人に対して支払督促を行ったのみで、以後積極的に債権回収を図ることもなく、約8年もの長期にわたって何らの連絡もせず、平成19年
11月には未払賃料が2000万円を超えていました。
このような事情のもとで、連帯保証人としては、賃料不払の状況が長期間継続した後に発生する債務についてまで、自らの保証責任が発生するとは予期していなかったというべきであり、平成14年12月分以降の未払賃料(なお、平成14年11月分までの未払賃料は時効により消滅)、賃料相当損害金、執行手続き費用及び原状回復費用の支払を求める部分について、連帯保証人に対して保証債務の履行を求めることはxxxに反し許されないとしました。
⑵ 東京地方裁判所平成20年12月5日判決
この事案は、平成5年建物賃貸借及び連帯保証契約が締結され、平成7年には合意により更新され、平成9年以降は平成20年まで法定更新され、賃借人が平成10年から賃料を滞納し始め平成20年までに合計1548万円を滞納していたというものです。
判決は、原告(賃貸人)は、漫然と本件賃貸借契約を法定更新させ、契約解除が可能なほどの賃料未払が発生した後においても、契約解除等の措置を取らず、被告(連帯保証人)に対して賃料の不払状況の連絡も取らず、放置したことにより、多額の賃料債務を新たに生じさせたものであるから、原告が被告に対してこれらの債務につき連帯保証債務の履行を求めることは、xxxに反し許されないと解するのが相当である。そして、上記事情に照らすと、被告が連帯保証人として責任を負うのは、本件賃貸借契約が法定更新された時から、本件賃貸借契約における本来の契約期間であった
2年間が経過する平成11年9月30日までの期間と解すべきであるとして、連帯保証責任を負う期間を一定の期間に制限しました。
4 本件の場合
建物賃貸借契約の更新があったとしても、更新前の契約の保証人に対し、更新後の契約の債務について保証債務の履行を請求できるのが原則ですが、賃料不払の状況や保証人への連絡の経緯などが問題になります。
賃料の不払を長期間にわたり放置すると、上記の裁判例のようにxxx違反の問題が生じ、滞納賃料の一部しか保証人に請求できない場合がありますから、賃料滞納が生じた場合には、保証人に対して賃料滞納発生を通知をしたり一定の段階で契約を解除する等、滞納期間や滞納額が通常想定される範囲を超えないよう対処しておくのがよいでしょう。