フィリピン「アセアン日本開発基金 カテゴリー B ( フィリピン土地銀行) 」
フィリピン「アセアン日本開発基金 カテゴリー B ( フィリピン土地銀行) 」
事業要項
評価報告:2000 年 3 月現地調査:1998 年 12 月
借 入 x x x x 関 | : : | フィリピン土地銀行 フィリピン土地銀行 |
交換xx締結 | : | 1991 年 5 月 |
: | 1992 年 3 月 | |
貸 x x 了 | : | 1997 年 3 月 |
貸 x x 諾 額 | : | 6,686 百万円 |
貸 x x 行 額 | : | 6,686 百万円 |
x x 条 件 | : | 一般アンタイド |
貸 付 条 件 | : | 金利 2.5% |
償還期間 30 年 (うち据置 10 年)
参 考
(1) 通貨単位:ペソ (Peso)
(2) 為替レート(IFS 年平均市場レート)
年 | 1990 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | 1998 | |
レート | Peso/US$ | 24.311 | 27.479 | 25.512 | 27.120 | 26.417 | 25.714 | 26.216 | 29.417 | 40.893 |
円/US$ | 144.79 | 134.71 | 126.65 | 111.20 | 102.21 | 94.06 | 108.76 | 120.99 | 130.91 | |
円/Peso | 6.0 | 4.9 | 5.0 | 4.1 | 3.9 | 3.7 | 4.1 | 4.1 | 3.2 | |
CPI (1990 年= 100) | 100.0 | 118.7 | 129.3 | 139.1 | 151.7 | 164.0 | 177.8 | 186.8 | 203.5 |
出所:IFS (円/Peso は上記数値より算出。CPI は IFS を元に算出)
(3) 会計年度:1 月 1 日~12 月 31 日
(4) 略語
AJDF:Asean Japan Development Fund (アセアン日本開発基金) LBP:Land Bank of the Philippines (フィリピン土地銀行) TSL:Two Step Loan (開発金融借款)
SAPI:Special Assistance for Project Implementation (案件実施支援調査) PCR:Project Completion Report (事業完了報告書)
USP:Unified System Project (統一制度プロジェクト)
(5) 用語説明
リボルビング・ファンド:エンドユーザーからのサブローンの元本返済金およびx
x支払い金によって形成されたファンド。引き続き、貸出しのために用いられることが一般的である。
Baguio
PHILIPPINES
Manila
Iloilo
Bacolod
Cebu
Davao
BRUNEI
Zamboanga
Menado
Samarinda
Balikpapan
事 業 地
Ⅰ. 事業実施の背景と必要性
1.1 事業目的
本事業は、フィリピン土地銀行を通じた開発金融により、農業生産のための低利の資金を農業協同組合(以下、「農協」)に供与することによって、農協の組織・活動強化を支援し、また組合員への資金貸与により、小規模農民/漁民の生産性向上・生活水準向上をはかるものである。
1.2 事業の背景
1970 年代から 80 年代において、アセアン諸国は、一次産品価格の低迷・国際通貨情勢の変動等による経済困難を、経済の効率化、経済構造の多様化、輸出能力の拡大等を通じて克服すべく、特に民間産業部門の強化に力を注いでいた。 1987 年 12 月マニラで開催されたアセアン首脳会議において、日本政府からはアセアン各国の民間部門の発展および域内協力推進のため 20 億ドル強の基金の供与を行なう旨が明らかにされた。 1988 年 7月、アセアン日本開発基金 (AJDF) に係わる「実施ガイドライン」が日本・アセアン間で合意され、その中で協力形態の一つであるツー・ステップ・ローンを中心とした資金協力に関し、域内経済協力促進に資する事業を対象としたカテゴリー A とともに、アセアン各国の民間産業部門の育成に資する事業を対象としたカテゴリー B に係わる供与条件の詳細についても規定された。
フィリピンに対しては、本事業の他に中小企業への金融支援を目的としたフィリピン開発銀行(DBP:Development Bank of the Philippines) を通じたツー・ステップ・ローンがカテゴリー B として供与された。
1.3 事業の必要性
フィリピンの農業 (含む漁業) は、1980 年当時 GDP および輸出額の約 1/4、雇用者数では全体の約半分を占めていた。しかし、当時の農地総面積約 973 万 ha の内、完全な自作農地は農家戸数で 58%、農地面積で 72%を占めており、残りは小作あるいは一部自作
/小作の併存となっていた。また、xx面積 5ha 以下の農家戸数が全農家の 85%を占める一方、面積では全農地の約半分にすぎず、農家戸数の 15%にすぎない大農家が残りの約 50%の面積を占めていたことが分かる。すなわち、零細農民が大半であった。また、漁民についても、その約 8 割は極めて零細で、かつ貧困層に属している等、小農/漁民の生産性向上と所得向上とが大きな課題であった。
農業金融に関しては、金融機関の総貸付残高に占める農業部門の割合は約 2 割弱で 1988
年の貸付残高は 283 億ペソであった。その内訳は商業銀行の貸付が全体の約 6 割、次いで農村銀行 (Rural Bank) が 2 割弱、政府系特殊銀行が 1 割強であった。新規貸付ベースでは、1990 年に農業部門に対し 322 億ペソの貸付 (同年の貸付総額の約 6.5%) が行われた。農業部門への貸付額は名目ベースでは伸びているものの、インフレを考慮した実質ベースでは 1983 年をピークに減少しており、1990 年の貸付額は実質ベースでは 1983 年の半分程度にしかならないのが実状であった。このため、高利貸/精米業者等のいわゆる私的金融により極めて高利の融資が依然として行われており、農業金融制度の近代化と強化が課題とされていた。フィリピン政府は、従来から農村銀行を通じた貸付を行っていたが、農
業金融を強化するためにフィリピン土地銀行 (Land Bank of the Philippines:LBP) を卸売銀行とする農協を通じた貸付に力を入れ始めていた。これは、農民の支援には農協強化が有効であること、また個々の農民への融資には農協が有効なチャネルとなることが主な理由である。しかし、農協を通じた貸付に使用される農地改革基金 (ARF :公営企業の民間への売却が主な資金ソース) は、資金が不足気味であり他の資金源が必要な状況に置かれていた。
上記の方針を受けて、フィリピン土地銀行 (LBP) は 1987 年にカントリー・サイド・クレジット・デリバリー・プログラム (CCDP) を開始した。CCDP は、小農民 (xx地が 5ha以下の農民)、小漁民(保有漁船が 3 トン以下の漁民) および 1987 年に発表された農地改革
により新たに自作農になる農民の支援のための貸付であり、小農民約 520 万人、小漁民約
60 万人、合計約 580 万人 (農/漁業部門従事者総数は約 1 千万人) と推定される対象者の内、徐々に貸付額を増やし、最終的には 1995 年に対象者の約 1/4 に当る 150 万人に対し新規貸付額ベースで 200 億ペソを達成する目標であった。1987 年から 1990 年までの実績
および 1991 年から 1995 年までの計画は次表のとおりであり、本事業はこのプログラムへの新たな資金源として要請されたものである。CCDP では、小農/漁民への直接貸付も行われていたが、農協強化の方針および LBP の人的/組織的な制約から直接貸付の割合を減らし、農協経由ないし農村銀行経由の貸付の比重を増やしていく考えであった。この結果、1990 年の直接貸付の割合は 14%に減少し、農村銀行経由は 22%、農協経由は 64%へと 1987 年と比べ貸付ルートの構成比が大きく変化した。
年 | 貸付ルート | 新規貸付額 (百万ペソ) | 受益農民数 | 借入農協数 | 農協経由割合 (②/①) |
1987 | ①全貸付 | 105 | 14,385 | - | - |
②うち農協経由貸付 | 7 | 2,278 | 20 | 7% | |
1988 | ①全貸付 | 343 | 53,813 | - | - |
②うち農協経由貸付 | 81 | 18,353 | 281 | 24% | |
1989 | ①全貸付 | 1,116 | 164,161 | - | - |
②うち農協経由貸付 | 412 | 69,669 | 841 | 37% | |
1990 | ①全貸付 | 2,828 | 306,239 | - | - |
②うち農協経由貸付 | 1,798 | 210,522 | 2,879 | 64% | |
計画 | |||||
1991 | 5,000 | 500,000 | |||
1992 | 8,000 | 700,000 | |||
1993 | 12,000 | 1,000,000 | |||
1994 | 18,000 | 1,200,000 | |||
1995 | 20,000 | 1,500,000 |
2. 事業内容
2.1 事業の概要
本事業は、いわゆるツー・ステップ・ローンである。国際協力銀行(以下、「本行」)から貸付けられた資金は、フィリピン土地銀行を通じ、エンドユーザーである農協および農協組合員に貸付けられる。資金の流れは図 1 のとおりとなる。
図 1 資金の流れ
保証
フィリピン政府
国際協力銀行
金利:年 2.5%
償還期間:30 年 (うち据置 10 年)
LBP (フィリピン土地銀行)
・プロダクション・ローン金利:年 15%
償還期間:通常 2 年以内
* LBP を経由し、農業協同組合を通じた小農/漁民のための短期転貸資金
の貸付
・固定資産ローン金利:年 19%
償還期間:3 年以上 10 年以内
・運転資金ローン金利:年 15%
償還期間:1 年以内
* LBP を通じた農業協同組合の行う事業
(固定資産投資・運転資金)への貸付
農協組合員
農業協同組合
・プロダクション・ローン
金利:商業条件より優遇された条件 21.0~25.0%
償還期間:通常 2 年以内
* 小農/漁民への生産資金の短期貸付
2.2 転貸スキーム
(1) 対象部門・セクター
本事業の転貸スキーム (LBP から農協へのローン方式) には、次の 2 種類がある。
① LBP を通じた農業協同組合の行なう事業 (固定資産投資/運営資金) への貸付 (フィックスト・アセット・ローン:Fixed Assets Loan、ワーキング・キャピタル・ローン: Working Capital Loan)。具体的には、
・農協が保有し組合員が共同で利用する倉庫/精米施設/農機具等の農業設備・農業機器等の調達 (フィックスト・アセット・ローン)
・上記施設等の運用に必要な資金、農業投入財の共同購入/生産物の共同販売等に必要な資金 (ワーキング・キャピタル・ローン)
が貸付対象となる。
② LBP を経由し、農業協同組合を通じた小農/漁民への生産資金の貸付け (プロダクション・ローン:Production Loan)。
具体的には、肥料・種子の購入や家畜の飼育、養魚池の設営等のための生産資金が対象となる。
(2) エンド・ユーザーの要件
本事業のエンド・ユーザーは、農業協同組合およびその組合員である。 それぞれの貸付対象としての基本要件は以下のとおりである。
①農業協同組合
a)組合員の過半数(全体の 51%以上)が小農民ないし小漁民であること。
・小農民: PD27 (「小作農地解放令」1972)のもとで土地所有が 7ha 以下の者。 PD6657 (「総合農地改革法」1988)のもとで土地所有が 5ha 以下の者。 Homestead Act のもとで、土地所有が 24ha 以下の者。
・小漁民: 漁船が 3 トンを越えない所有者。 また、海岸・湖岸から、25km 以内で漁業を営む者。
b) 政府機関 (CDA, SEC (Security Exchange Commission) 等) に正式に登録されていること。
c) 簿記担当者がいること。あるいは、会計システム/手続きが確立していること。
d) LBP からの貸付実績が 2 年以上の期間におよびかつ返済実績が良好であること。
②組合員
上記農業協同組合の組合員。農業協同組合に加入する条件として以下の要件が挙げられる。
a) フィリピンの国籍を有する者。
b) 加入契約を結べる者(法的年齢 15 歳以上、また所得取得能力のあること)。
c) 当該農業協同組合の活動地域の小農民または小漁民。
2.3 サブローンの融資条件
(1) 固定資産ローン/ 運転資金ローン ( Fixed Assets Loan/Working Capital Loan)
①貸付対象項目
a) 農協設備・機器への貸付。
b) 農業生産物の加工事業等への貸付。
c) 漁船、その他漁獲設備のための貸付。
d) 商品作物の在庫資金に対する貸付。
e) 農業生産物・作物の買付け・販売のための必要資金に対する貸付。
②貸付上限・貸付比率
・貸付上限: 特別に上限・下限無し。
・貸付比率: プロジェクトコストのうち、
80%: LBP からの貸付
15%: 農協よりの自己資金
5%: 他の政府機関からの貸付
・貸付金利:固定資産ローン:年 19%、運転資金ローン:年 15% (図 1 参照)
・貸付期間・返済条件:固定資産ローン:3~10 年、
運転資金ローン:1 年以内 (図 1 参照)
・担保・保証等: 建物、土地等の不動産 等
(2) プロダクション・ローン(農協から組合員への貸付)の場合
①貸付対象項目
a) 農業生産目的
b) 家畜の飼育
c) 養魚池
②貸付上限・貸付比率
貸付上限:米、コーンおよびさとうきびのみ。
米・コーン:8,000 ペソ/ha、さとうきび:18,000 ペソ/ha
③貸付金利:LDB から農協:年 15%、農協から組合員:21~25% (図 1 参照)
農協は貸付コスト、その他農協強化の必要性を勘案して、組合員に対しての金利を決定する。LBP はこの金利水準が AJDF の主旨に照らして、xxxxより優遇されたものとなるよう管理・ 指導する。
④貸付期間・返済条件:通常 2 年以内(図 1 参照)。ただし、家畜の飼育等が貸付対象となった場合、3~4 年の貸付期間となることがある。また、短期貸付のため、据置期間は設定されていない。
⑤担保・保証等: 生産物、生産物保険に対する質権の設定。
2.4 事業内容の評価
LBP による小農/漁民向け融資では、LBP から小農民および小漁民への直接貸付も行われているが、AJDF 資金を使用する本事業では小農/漁民への貸付は農・漁業協同組合を経由した貸付に一本化されている。
当時のフィリピンでは、農村での雇用と所得増大がフィリピンの国内需要の拡大・貯蓄増加・投資拡大の必須条件であり、そのためには、まず農民組織と農業金融の強化・発展が必要であった。 LBP は、人的、組織的な制約に加え、農協強化を推進するために農民への貸付は農協を経由する方針に転換しており、本事業の資金の流れも農協経由へ一本化したということである。この貸付方法に統一することは資金管理の面からも適切であり、問題はなかったと思われる。
また、農協強化を目的とした固定資産ローン・運転資金ローンおよび小農/漁民の営農資金貸付を目的としたプロダクション・ローンは事業目的に沿うものであり適切なサブローンの形態であったと判断される。
Ⅱ. 事業実施にかかる評価
1. 資金の流れ( 貸付実施期間と事業費)
本事業の事業費は 6,686 百万円であり、これを原資として 1992 年から 1996 年にわたり
円借款が供与され、総額 1,642 百万フィリピン・ペソのサブローンが貸付けられた。貸付実施期間については、計画では、1992 年 4 月~1997 年 3 月となっているが、実際は、表 1 に示したように、1992 年 3 月に開始され、1996 年 1 月に終了している。LBP 側の回答によると、LBP の地域営業グループ (Field Operation Group) による優良プロジェクトの選定と、それに対する早い貸付手続きによるものである。
表 1 事業費支出実績( 円借款資金の貸付け実績)
暦年 | 所要資金(百万円) | 貸付累計(百万円) | 貸付進捗率 |
1992 | 2,230 | 2,230 | 34.8% |
1993 | 2,103 | 4,333 | 64.8% |
1994 | 1,005 | 5,338 | 79.8% |
1995 | 1,271 | 6,609 | 98.8% |
1996 | 77 | 6,686 | 100.0% |
1992~1996 合計 | 6,686 |
(1) サブローンの運用状況
本事業のサブローンの運用状況について、問題はなかったと思われる。xxxxxは、貸付の完了した 1996 年末で貸付総額 1,642 百万ペソとなっている。 その内訳は、79.84%
(1,311 百万ペソ) がプロダクション・ローン、16.50% (271 百万ペソ) が運転資金ローンで
あり、残りの 3.66% (60 百万ペソ)が固定資産ローンである。運用実績の概要は表 2.のとおりである。
貸付対象となる農業協同組合の構成組合員数についてみると、50 人から 200 人の組合員をもつ農協が組合数で約 54%、貸付金額で約 40%、300 人以上の組合員を持つ農協が組合数で 12%、貸付金額で約 40%を占めており、既に組織的に成長した大規模農協と、規模は小さいが経営の比較的上手な農協が結果的に選定された、という LBP 側の説明を裏付けるものといえる。 融資対象一件当たりのサブローンの額としては、300 万ペソ以下の融資が 8 割を占めている。 サブローンの返済期間は、1 年以下が 7 割である。 地域別にみると、中央ルソン、南タガログ、西ビザヤおよび南ミンダナオで 7 割近くを占めている。
表 2 事業費運用実績
分類 | 農協向けサブローン | ||
件数 | 金額 (百万ペソ) | 金額構成比(%) | |
①種類別サブローン a) 固定資産ローン b) 運転資金ローン c) プロダクション・ローン(農協向け) | 97 117 601 | 60 271 1,311 | 3.66 16.50 79.84 |
合計 | 815 | 1,642 | 100.00 |
②組合員数別融資実行農協 | |||
a) 50 人以下 | 170 | 150 | 9.13 |
b) 51 人~100 人 | 208 | 339 | 20.65 |
c) 101 人~200 人 | 129 | 308 | 18.76 |
d) 201 人~300 人 | 38 | 193 | 11.75 |
e) 301 人以上 | 75 | 652 | 39.71 |
合計 | 000 | 0,000 | 000.00 |
xxxxxxxxx(xxx) | |||
a) 500 千ペソ以下 | 505 | 485 | 30.15 |
b) 501~1,000 千ペソ | 288 | 411 | 25.03 |
c) 1,001~3,000 千ペソ | 146 | 436 | 26.55 |
d) 3,001~5,000 千ペソ | 16 | 123 | 7.49 |
e) 5,001~7,000 千ペソ | 5 | 40 | 2.44 |
f) 7,001 千ペソ以上 | 2 | 137 | 8.34 |
合計 | 962 | 1,642 | 100.00 |
④融資期間別サブローン(月数) | |||
a) 12 ヶ月未満 | 555 | 1,147 | 69.85 |
b) 12~18 ヶ月 | 128 | 271 | 16.50 |
c) 19~36 ヶ月 | 84 | 59 | 3.59 |
d) 37~48 ヶ月 | 41 | 10 | 0.61 |
e) 48 ヶ月超 | 160 | 155 | 9.44 |
合計 | 968 | 1,642 | 100.00 |
⑤融資年度別サブローン | |||
a) 1992 年度 | 426 | 585 | 35.63 |
b) 1993 年度 | 343 | 513 | 31.24 |
c) 1994 年度 | 189 | 357 | 21.74 |
d) 1995 年度 | 148 | 187 | 11.39 |
合計 | 1,106 | 1,642 | 100.00 |
⑥実施地域別 | |||
a) サブローンイロコス (Ilocos) | 31 | 29 | 1.77 |
b) カガヤンヴァレイ (Cagayan Valley) | 46 | 74 | 4.51 |
c) コーディレラ (Cordillera) | 9 | 10 | 0.61 |
d) セントラル・ルソン (Central Luzon) | 152 | 377 | 22.96 |
e) サザーン・タガログ (Southern Tagalog) | 71 | 292 | 17.78 |
f) ビコル (Bicol) | 23 | 51 | 3.11 |
g) xxxxxx・xxx (Western Visayas) | 129 | 187 | 11.39 |
h) セントラル・ビサヤ (Central Visayas) | 35 | 149 | 9.07 |
I) xxxxxx・xxx (Eastern Visayas) | 11 | 78 | 4.75 |
j) ウェスターン・ミンダナオ (Western Mindanao) | 17 | 25 | 1.52 |
k) ノーザン・ミンダナオ (Northern Mindanao) | 2 | 13 | 0.79 |
l) サザーン・ミンダナオ (Southern Mindanao) | 58 | 249 | 15.17 |
m) セントラル・ミンダナオ (Central Mindanao) | 31 | 90 | 5.48 |
n) ARMM | 1 | 2 | 0.12 |
o) CARAGA | 4 | 16 | 0.97 |
合計 | 620 | 1,642 | 100.00 |
出所:PCR
注 :サブローンの件数が合わないのは、LBP 地方事務所毎で集計方法が異なるためである。
なお、1.3 事業の必要性で述べたように、円借款の資金は LBP が進めるカントリー・サイド・デリバリー・プログラム (CCDP) の中で運用されている。1995 年 9 月 30 日時点の CCDP の貸付残高は表 3 のとおりであり、円借款資金 (AJDF) は全体の約 15%を占めている。一方、同プログラムによる 1987 年から 1995 年 6 月末迄の貸付額累計は、340 億
ペソ強、貸付け農・漁協数は 25,769、対象農・漁民は 8,765 千人に達している。(表 4)。
表 3. 小農/漁民向け貸付残高( 1995 年 9 月 30 日現在)
経済活動別 | 資金源別 | ||||
貸付残高 (百万ペソ) | 割合 | 貸付残高 (百万ペソ) | 割合 | ||
作物生産 | 5,154 | 57.1% | アジア開銀 | 1,292 | 14.3% |
畜産 | 1,933 | 21.4% | 円借款 (AJDF) | 1,390 | 15.4% |
漁業 | 440 | 4.9% | その他 | 1,051 | 11.7% |
農業サービス | 19 | 0.2% | LBP 自己資金 | 5,292 | 58.6% |
マーケティング | 1,006 | 11.2% | |||
設備投資 | 416 | 4.6% | |||
その他 | 57 | 0.6% | |||
合計 | 9,025 | 100.0% | 9,025 | 100.0% |
出所:JBIC 資料
表 4 小農/漁民向け貸付額、対象農漁協数、対象農漁民数の推移
年度 | 貸付額(百万ペソ) | 対象農漁協数 | 対象農漁民数(千人) |
1987~1990 | 4,392 | 4,021 | 539 |
1991 | 6,132 | 6,476 | 973 |
1992 | 7,515 | 6,345 | 1,688 |
1993 | 6,936 | 5,198 | 2,574 |
1994 | 6,031 | 3,729 | 2,991 |
1995 | 3,016 | - | - |
累計 | 34,022 | 25,769 | 8,765 |
出所:JBIC 資料
注 :1995 年度は 1995 年 6 月末までの実績
一方、xxxxxの返済金を原資 (リボルビング・ファンド) としてxxxxxと同条件で再貸付が行われている。LBP によると、xxxxxの返済状況およびリボルビング・ファンドの 1996 年現在の残高は表 5 のように報告されている。
表 5 サブローンおよびリボルビング・ファンド残高推移
単位:百万円
1992 年末 | 1993 年末 | 1994 年末 | 1995 年末 | 96 年 3 月末 | |
サブ・ローン | |||||
1. 年初貸付残高 | 0 | 2,230 | 885 | 296 | 0 |
2. 年間貸付金額 | 2,230 | 2,103 | 1,005 | 1,195 | 153 |
3. 年間返済金額 | 0 | 3,448 | 1,594 | 1,491 | 153 |
4. 年末貸付残高 | 2,230 | 885 | 296 | 0 | 0 |
リボルビング・ファンド | |||||
1. 年初貸付原資 | - | - | - | - | 0 |
2. 年間貸付金額 | - | - | - | - | 1,370 |
3. xx・xxx返済額(ファンド原資) | - | - | - | - | 4,633 |
4. 年末貸付原資 | - | - | - | - | 3,263 |
出所:PCR
注 :リボルビング・ファンドは 1993 年から形成されているが、再貸付は 1996 年から開始された。
リボルビング・ファンドを利用した再貸付はxxxxxの貸付が完了した 1996 年から実施された。LBP によると、1997 年 6 月現在で、xxxxxx・xxxxによる再貸付は 861 百万ペソに達し、本事業による貸付延べ金額 (サブローン+リボルビング・ファンド) は 2,504 百万ペソとなった。この内償却済みの不良債権は 40 百万ペソ (90 件) で、全体の 1.6%である。延滞状態の債権は 199 百万ペソ (553 件) であり、延滞債権率 (Past Due Rate) は 7.9%である。LBP は、本事業にあたり、本行と事前協議の上決定された貸付基準 (協同組合開発庁等の政府機関に登録されている農協の内、過去 2 年間の返済状況が良好な農協等) を満たす 836 の農協 (1995 年8 月現在) を本事業の貸付対象としているため、貸付金の返済に関して大きな問題はないと判断している。
2. 実施機関
(1) フィリピン土地銀行(LBP)
実施機関であるフィリピン土地銀行(LBP)は、農業部門への貸付を目的として 1963 年に設立された特殊銀行で、農地改革関連の金融業務を政府に代わって行なうことがその主たる業務であった。その後、1973 年に LBP の根拠法が改正され、商業銀行業務を営み得ることとなり、以降は商業銀行的活動が大きな比重を占めるようになった。しかし、1988年 6 月に総合農地改革法 (Comprehensive Agrarian Reform:CARP) が成立し、LBP はフィリピンの農地改革における金融業務の責任を負うこととなった。
この結果、従来の商業銀行的部分(バンキング部門)中心の LBP では CARP を担当する農業部門の拡充が進み、1989 年の貸付残高 7,491 百万ペソの約半分が農業部門 (農地改革関連 27%、小農関係 22%)によるものとなっている。さらに、LBP では 1996 年に効率的サービス提供・コスト削減のため、農業関連部門 (Agrarian Sector) と商業銀行業務部門 (Banking Sector) を統合し、農業・国内商業業務部門 (Agrarian & Domestic :ADBS) を設立した。支店レベルでも両部門の統合が図られ、統一制度プロジェクト(Unified System Project:USP) として地方でも総合的なサービス提供が可能となっている。 ADBS はサポーティング部門以外に 5 部門に分かれ、そのうち本事業を実質的に担当する部署が Domestic Banking GroupⅠとⅡ(DBG Ⅰ、Ⅱ) である (図 2)。DBGⅠが北・中央ルソンおよびミンダナオ、DBGⅡがメトロマニラ、南ルソン、ビコールおよびビザヤを担当している。
図 1 LBP 組織図(1)
Board of Directors | ||||||
Trust Banking Group | ||||||
President & CEO | ||||||
Audit Group | Sr. Credit Officer | |||||
Operating Support Sector | Agrarian Domestic Banking Sector | Institutional Banking Sector |
図 2 LBP 組織図(2) :ADBS 組織図
Countryside Enterprise Assistance Group
DB-Operation Group
DB-Credit Group
Domestic Banking Group
I & II
Landowners Compensation &
Assistance Group
Banking Administration Department
Cooperative Dept. Assistance Group
DB-Administrative Support Dept.
DB-Technical Support Dept.
Agrarian Domestic Banking Sector
LBP の資本金は 1998 年 8 月、収益保持と地方における信託業務拡大を目指し、90 億ペソから 250 億ペソ に増資された。1998 年 12 月現在、本店はマニラ、支店は全国に 87、 Unified System Project (USP)の事務所が 166、地域事務所 (Field Office) が 5、駐在事務所 (Extension Office) が 44 ある。行員は 8,873 名、うち1/4 にあたる 2,202 名が本店に、2,020名が支店に、半数近い 4,206 名が USP の事務所に勤務している。また、全行員の 2/3 強が大卒以上の学歴となっている。
1997 年 12 月現在、貸借対照xxの資本・負債総額は 1,601 億ペソで、内訳は 9.2%が自己資本(資本金、 各種積立金および留保利益)、70%が政府および関係機関からの預金となっている。他方資産サイドは、61%が一般貸付金、投資が 22%となっている。収益状況は概ね良好であり、97 年では約 36 億ペソの税引き前利益を計上しており、これは総資産に対し 2.3%の利益率である。
前述するとおり、LBP は 1987 年より CCDP による小農/漁民向けの融資を実行しており、貸付残高も前出の表 3.で示した 1995 年 9 月の約 90 億ペソは、1997 年末には約 124億ペソへと着実に増加している。LBP の貸付手続きシステム、貸付審査体制、貸付金の管理・回収システムは円滑に機能しており、実施体制の問題はないと判断される。
(2) 農業協同組合
LBP は、地方信用供与計画のもと、農協を農民への資金貸付のための監査機関として重視し、また貸付対象事業/借入金の保証・承認、貸付金の返済回収等の機能を負うものとして、その組織強化・活動支援を推進している。 また、総合的農業協同組合への脱皮を促すことで、地域経済を活性化し、農業部門の発展、農民の生活向上を図ることが期待
されている。 農協は、組合員への貸付業務の他、農業生産、マーケティング、各種サービス等の活動を行なっている。
農協は、通常 5 人以上 15 人以下からなる役員会 (Board of Directors) を筆頭に、預金業務 (Credit)、選任 (Election)、監査・調査 (Audit & Inventory) の 3 つの委員会により組織される。 各委員会は、1 名の委員長および最低 2 名のメンバーにより構成されている。 農協の活動のうち、特に預金業務および経営上の問題については、Manager の権限のもとで、管理・運営される。 以上 3 つの委員会のうち、組合員への貸付について承認を与えるのは、預金業務委員会 (Credit Committee) である。
1995 年 6 月現在で、LBP が融資対象としている農協数は 8,300 余りであるが、このう
ち本事業による貸付適格農協は 836 でしかない。本事業では、過去 2 年間の返済率が 100%の農協のみを融資対象としているため、貸付適格農協数は LBP 全体の貸付適格農協数の約 1/10 に絞り込まれている。また、実際に本事業によるサブローンの貸付が実行されたのはこのうち 620 農協であった。さらに、農協の組合員に対する貸付手続き、審査体制、貸付資金の管理体制に特別の問題はなかった。
3. コンサルタント
当初雇用が予定されていたコンサルタントは、1990 年のアプレイザルで雇用されないこととなった。 その理由としては、LBP 側が、サブローンの貸付を重視したいという希望に鑑み、借款額全てをサブローンに充当したい意志を表明したこと、また LBP は貸付業務の経験が豊富であり、事業実施上問題ないと判断されたことによる。本事業でコンサルタントを雇用しなかったことには問題がなかったと思われる1。
4. 事業実施にかかる評価
本事業によるサブローン、リボルビング・ファンドともに順調に運用されており 1997
年 6 月までに延べ 2,504 百万ペソが農・漁協および農・漁民に融資されている。一方、小農・漁民向けの貸付事業全体としては、1994 年までに延べ 8.7 百万人以上の小農漁民が融資を受けており、事業は効果的に実施されていると評価できる。
1 本事業の後続事業にあたる「農村・農地改革支援政策金融事業」(1996 年借款契約締結) では、LBP の事業実施能力をより一層向上させるために、LBP の監理・評価、貸付・モニタリングの改善および農協強化プログラムの改善等を内容とするコンサルティング・サービスを供与している。
Ⅲ. 事業の継続性にかかる評価
1. 回転資金の運用状況
既述のとおり、xxxxxの返済金を原資とするリボルビング・ファンドは 1996 年か
ら運用されており、1997 年 6 月までの 1 年半の間にサブローンの半額以上に相当する 861百万ペソが再貸付されている。このことから、リボルビング・ファンドは効果的な運用が行われていると判断される。一方、LBP による小農/漁民への貸付残高は 1997 年末で 123.8
億ペソ (1995 年 9 月の残高は約 90 億ペソ) に達するなど、事業規模が順調に拡大していることから、事業全体の運用状況も問題ないと思われる。
2. エンド・ユーザーの延滞および経営状況
1995 年に 100 農協を対象に行われたアンケート調査によると、調査回答における農民への貸付け 480 件の内延滞状態の債権2 が全債権数の 62%と高率に達していた。農民の約 75%は、プロダクション・ローンの融資対象となった農産物の販売収入を返済原資としている。そのため、何らかの原因で農産物収入が落ち込むと延滞が発生する可能性がある。延滞の理由として最も多いのが、自然災害による減収であり、約 4 割を占める。次いで、農産物市況の低迷による減収、返済意志の欠如、低い生産技術による収量の低下と続いているが、LBP 側の説明では、現在も延滞理由の構成比にほとんど変化は無い。延滞は、経営能力の低い農協の組合員に多く発生しており、LBP や他の機関による農協組織・活動強化策が延滞の改善のために必要である。
1997 年 6 月時点での延滞債権は 199 百万ペソ、件数で 553 件であり全貸付額の 7.9%を占める。ただし、生産物が担保として設定されていること、および政府の生産物保険の加入を義務づけられており、その保険金に対する質権が設定されていることから、直ちに延滞債権が不良債権になることはないと思われる。しかし、本行としては、LBP に対し十分な管理を求めている。
3. 事業の継続性にかかる評価
上記 2.で指摘した農協組織・活動強化にはまだ改善の余地が残っているものの、農協を経由し小農/漁民を支援する制度そのものはフィリピンに必要かつ有効な農・漁村金融の制度であると考えられ、継続的に実施すべき事業であると判断される。また、現在の運用体制も継続的に事業を実施できる体制であると考えられる。
事業の継続性をさらに確実なものにするには、LBP の体制強化以外にも農協組織の強化、特に農協の財務面の強化が必要である。そのためには、フィリピン政府が農協の倉庫や収穫後処理設備の保有を支援し農協の収入を増加させるなど、多方面からの農協強化の方策を実行に移し LBP の本事業の推進を支援する必要があると思われる。
2 本事業の融資条件では、返済期日から 3 ヶ月以内に元本・金利が返済された場合には延滞債権と見なさないとされている。
Ⅳ. 事業効果、インパクトにかかる評価
1. 効果の類型化
(1) 定量・定性的効果
本事業では 620 農協にサブローンが供与され、約 133 千人の小農/漁民および畜産農家に貸付がなされた (事業全体では、1994 年までに延べ 25,759 農協、8.9 百万人へ貸付)。事業の目的の一つであった農民の生産性/生活水準の向上に関しては、本事業が導入される以前の 1991 年では 1ha 当りの平均収入は 20,026 ペソ/ha であったものが、1995 年には 33,656 ペソ/ha へと金額では 13,630 ペソ/ha、比率では 68%の上昇となったことが 1995年の調査で明らかになった。収入の増加は金融支援の強化のみが要因ではないが、種子・肥料等の投入財の支出が先行する農民にとって、利用しやすい金融制度の導入は増産・増収意欲の向上に大きな役割を果たしていると言える。
一方、本事業のもう一つの目的である農協組織の強化に関しては、対象となった 620 農
協の大半が、国内の農業金融強化のために 1986 年から 1992 年にかけて設立された。本事業により貸付の行われた 4 年間 (1992 年~1995 年) に、これらの農協は資産、収益および組合員数において増加をみせている。財務状況の報告がなされた 515 農協のうち、76%
に当たる 360 農協が資産を増加させており、半数に当る 259 の農協で収益増加が報告されている。また、66%に当たる農協が組合員を増加させている。本事業のみで農協強化が図れる訳ではないが、本事業が農協組織強化に果たした役割は大きいと判断される。
フィリピンの農林水産業の総生産額は、1995 年に約1,730 億ペソ (1985年の固定価格) となり GDP の 21.5%を占めている。1985 年の農林水産業の総生産額は 1,625 億ペソ (1985年価格) であり、GDP の 26.5%と製造業の 24.5%を上回っていたが、95 年では製造業の総生産額は GDP の 25.3%となり農林水産業の総生産額を上回った。このように、農業から工業へと産業構造は変化しているものの、農林水産業がフィリピンにとり重要な産業である位置づけは変わっていない。一方、農業労働人口は 1985 年に 9,780 千人 (全経済活動
人口の 49.2%) であったものが 1995 年には 11,768 千人に増加したにもかかわらず、全経 済活動人口に占める割合は逆に 42.1%へと低下した。この結果、農民 (農業労働従事者) 一 人当たりの総生産額は 1985 年の 16,616 ペソが 1995 年に 14,700 ペソ (ともに 1985 年の固 定価格) へと減少し、農村を取り巻く環境は依然厳しいことが窺われる。農村部の貧困者 比率3は 1985 年の 59.4%が 1994 年には 53.1%に改善している。しかし、都市部および全国 平均の貧困者比率はそれぞれ、1985 年に 45.2%、53.9%であったものが、1994 年には 28.0%、 40.6%へと減少していることを考慮すると農村の生活水準改善の歩みは遅いと言わざるを 得ないと思われる。本事業を含め、小農/漁民への支援策は、引続き重要性の高い施策と 考えられる。
(2) 自然環境へのインパクト
本事業においては、当初より自然環境へのプラス・マイナスのインパクトは予想されなかったことから、自然環境影響評価調査等のインパクト調査は行われていない。本事業により自然環境への重大な影響があったことは報告されていない。
3 「開発と貧困」(1998)、第 6 章(xx)による。
2. エンド・ユーザーのケース・スタディ
本事業の効果を多角的に評価するために、LBP の融資が農民からどのような評価を受けているかの簡単な聞き取り調査を 1998 年 12 月に実施した4。もとより、限られた時間での調査であったため、LBP が推薦した以下二地域の組合員の中からxxを対象に実施したものである。
① Batangas Assn. Of Free Planters Inc. ― Sugar Marketing Cooperative. (Calatagan, Batangas 州)
組合員:764 人、砂糖きび生産者が大多数。
1990 年 8 月に顧客として LBP に登録。
LBP の評価:農協活動は活発で経営状況も良好。
② Catmon Multi-purpose Cooperative, Inc. ( Santa Maria, Xxxxxxx x)組合員:198 人、養豚業が大多数。
1987 年 9 月に顧客として LBP に登録。
LBP の評価:農協活動・経営状況は普通。
聞き取り調査の結果(代表例)および考察は以下のとおりである。
両地域ともにマニラから車で二時間以内の近郊である。キリスト教徒であるタガログ族が大多数の人口をしめており、かれらの分布地域は歴史的にマニラに次いで比較的早くから開発が進められてきた都市近郊地帯である。前者の Batangas 州は Raurel 家が中心となって砂糖生産を最初に企業化したり、xx交易による港湾開発などで豊かな地域として知られている。後者の Xxxxxxx xは、小作農、零細沿岸漁業や特にニッパヤシから酢を生産していることで知られているが、xx地帯であるために生産性が上がらない地域である。従って自然条件の豊かさを地域的比較でみると、前者の Batangas 州は、後者よりもxxxに豊かな地域であると言われている。
両地域は、マニラ近郊という地理的条件に恵まれた地域であったので 16 世紀初頭からタガログ族の生活圏 (Barangay 社会) として開けていた。 調査個数が少ないために断定はできないが、両地域の質問回答者は本事業なくして現在ある生業の育成と発展はなかったと述べている。
本事業については、両地域の住民は、農協が設立されてから気兼ねなく借入ができ、資機材調達が容易になったので精神的に大変楽になったとの回答を多く寄せている。社会人類学的見地から考察すると、フィリピン社会の血縁中心志向の人間関係から地縁主義へと変容させるようなインパクトを本事業は与えていると考えられる。そして、人間関係を近代的合理性のもとで考え始めるきっかけになっているとも言えよう。農村社会が近代的・合理的な社会へと変わる上で、農村金融制度の拡充が果たす人間関係の変化の側面も一考に値しよう。
4 調査・考察に当っては、早稲田大学アジア太平洋研究センター xx x教授の協力を得た。
質問事項 | 回答 A(バタンガス州) (回答者:53 歳、男、 年収 80 千ペソ、砂糖きび生産) | 回答 B(ブラカン州) (回答者:55 歳、男、 年収 18 千ペソ、養豚業) |
1. 農協加入以前の暮し向きは? | 協同組合への加入以前は、砂糖きびの苗の購入資金調達(借入)が思うようにできなかったが、今日では組合から気兼ねせずに借入できるので便利 である。 | 農協へ入る前から、養豚業を営んでいる。組合加入後は、以前と違って飼料、疫病予防薬の購入や獣医の診断を仰ぐことも出来るようになっ た。 |
2. 農協加入後の暮し向きと、農協が土地銀行からローンを受けてからの違いは? | 経済的に以前とは比べ物にならいないほど生産資金借入が容易になったために、生産活動に支障をきたすこ とがなくなった。 | 前述のようなベネフィットはあるが、一度、疫病が流行ると豚の市場価格の下落によって大きな損害を受 ける。 |
3. 土地銀行からのローンに関する説明は充分であったか? | 勿論、LBP から当事業実施につての充分な説明が行われたことに強く満足している。とりわけ実施説明のたびに地域の人々との交わりが後の組合活動に大変役立っている。(人間関 係の拡大) | プロジェクトの目的とそれから享受する利益についてメンバーに対して説明と意見を求められた。 |
4. 説明会では発言の機会は与えられていたか? | コンサルテイションの会合においては、われわれの意見を述べる機会が充分に与えられた。 | プロジェクトの計画の段階から現在まで、自分の意見を発言してきた。すべての組合員に発言の機会が与え られている。 |
5. 本事業への参加はどの段階でなされたか? ①計画段階、②実施段階とモ ニタリング、③評価と事業変更 | 我々は、プロジェクトの実施とモニタリングに参加した。 | 自分はこのプロジェクト実施に参加できて幸せである。 |
6. xxxが実施された後、家族の生活はどのように変わったか? | ローン制度が確立したために、以前よりも資金繰りがよくなった。 しかし近年のxxxxxx現象によって 生産高は大きくは上昇していない。 | LBP ローン制度はわれわれ村人を援助してくれていると感謝している。それは、年齢性別関係なく利益が享 受できることである。 |
7. もし土地銀行のローンが農協に与えられなかったら、あなたの生活 はどうだったか? | もし LBP の持続的なローン制度がなければ、生活はもっと困窮していた だろう。 | もし、ローン制度がなければ、高利で飼料会社から融資を受けていただ ろう。 |
8. どのようにローンを返済しているか? どの位の期間にわたり返済す るか? | 一年をサイクルとして、年二回(12 月 ~2 月、6 月~7 月)の刈り入れ期に返済する。 | 4 ヶ月毎に返済して新しく次のローンを受ける。 |
9. もし土地銀行のような機関がなければ、どこから資金を調達するか? | Rural Bank(農村銀行)か親戚から資金調達をするだろう。 | もし、このような LBP のローン制度が出来ていなかったら、輪タクの仕事でその日暮らしをしていたかもし れない。(起業家へ転身した例) |
10. 現在のローンの制度に満足しているか? もし、不満足であればど こか? | 現在のローン制度に満足している。 | 今のローン制度に大変満足している。 |
11. 土地銀行ローンの資金がどこか ら来ているか知っているか? | LBP ローンがどこから援助されてい るかは知らない。(全員の解答) | ローンの資源は知らない。 |
12. 農産物の植付けから収穫までの生産サイクルは? | 生産のサイクル: xx地の鍬入れと整備、植付け、雑草とり、肥料をあたえる、刈り込み。4 ヶ月―5 ヶ月を 1 サイクルとしている。 | 生産サイクル:子豚の購入、同時に飼料購入、予防注射、肥育、獣医の診察。 |
13. 生産サイクルのそれぞれの段階 でどの程度費用がかかるか? | 年間トータル、2 サイクルで 80,000 ペソ必要である。 | 年間 12 頭の養豚費用は 18,000 ペソ。 |
14. この農協には何人の儀礼親族5 が いるか? | 協同組合のメンバーのほとんどが儀 礼親族関係にある。 | ほとんどの組合員は儀礼親族の関係 である。 |
15. この農協には何人の親戚がいるか? その関係は? | 同組合のなかには、親戚はいない。(大変珍しいケース、しかし儀礼親族を 作っている) | 同時に同じ地域集団に多くの親戚がいる。従ってほぼ全員が何らかの緊 密な関係にある。 |
16. 生活を改善するために計画を立てたり、決断を下すのは誰か、夫か妻か? | 家族の発展のためには、夫婦で事を決める。(妻が家庭内の決定権を持っているxxxが比較的多くみられ た。) | ほとんどの家庭内に決定権は妻にある。(典型的なフィリピンの夫婦関係) |
17. 儀礼親族や親戚は力になってくれるか? どの様に? | もちろん、他地域に住んでいる親戚は金銭的に援助してくれる。余裕が あれば。 | 隣組助け合い組織(Bayanihan System) が相互扶助関係を持っている。(固有の地縁共同体である。) |
18. 親戚はあなたからの援助を期待 しているか? どの様に? | 自分の方からも余裕(現金や有力者の 紹介など)があれば援助を断らない。 | もちろん、血縁者として相互に親戚 縁者を援助せねばならない。 |
19. xxxは目的以外には使わないか? | 自分の場合には、砂糖きび生産のため以外にはローンを使用しない。 | ローンは物資(豚や飼料など)で受け取るためもあり、目的以外に使用しな い。 |
3. 事業効果にかかる総合評価
本事業による経済的効果については一般的な経済指標による把握は困難であるが、本事業による貸付が行なわれた 4 年間に、貸付対象の農協の多くは、資産、収益および組合員数において増加をみせている。また、今回行われた貸付対象の農協の組合員 (農民) へのインタビューでは、農協の経営能力の問題は別として、ほぼ全員が本事業による貸付を有益に感じている。これらのことから、小農/漁民に対する支援策は依然として重要性の高い事業であり、本事業による貸付は小農/漁民の生活向上を支える効果的な金融支援策であったと判断される。
今後も、リボルビング・ファンドの有効利用により、更に事業効果を高めること (融資利用農民/漁民数の増加) が望まれるものの、円借款を原資とする貸付だけでも既に 13万人以上の小農/漁民が恩恵を受けていることから、事業の効果が挙がっていると判断される。
5 血縁によらずに、宗教儀式(洗礼、婚姻等)を介して形成される擬似親族関係。フィリピンにおいては、儀礼的親族の関係を結ぶと、親族に準ずる関係となり、社会的・経済的庇護関係が形成される。例えば、法的なものではないが身元保証をしたような効果や、生活が困窮した時に血族のように助け合う関係が生まれる。