2.1)(B)受注者は、次の各号に掲げる届出をしていない建設業者
2022年 土木学会 契約管理技術セミナー
倫理・社会規範委員会 建設マネジメント委員会
主要条項分析とその対応
公共工事標準請負契約約款が第7条から第19条
第3回
2022.11.21.
x x x x
高知工科大学 名誉教授. 東京都市大学
客員教授
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
11
1
第7条(下請負人の通知)
発注者は、受注者に対して、下請負人の商号又は名称その他必要な事項の通知を請求することができる。
2010年版はこの条項のみであった。
2017年7月の約款改定で以下の下請労働者の保険加入徹底で追加された条項
2.1)(A)受注者は、次の各号に掲げる届出をしていない建設業者(建設業法(昭和24年法律第100号)第2条第3項に定める建設業者をいい、当該届出の義務がない者を除く。以下「社会保険等未加入建設業者」という。)を下請負人としてはならない。
① 健康保険法(大正11年法律第70号)第48条の規定による届出
② 厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第27条の規定による届出
③ 雇用保険法(昭和49年法律第116号)第7条の規定による届出
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
2
2
第7条(下請負人の通知)
2)前項の規定にかかわらず、受注者は、次の各号に掲げる下請
負人の区分に応じて、当該各号に定める場合は、社会保険等未加入建設業者を下請負人とすることができる。
① 受注者と直接下請契約を締結する下請負人次のいずれにも該当する場合
イ.当該社会保険等未加入建設業者を下請負人としなければ工
事の施工が困難となる場合その他の特別の事情があると発注者が認める場合
ロ.発注者の指定する期間内に当該社会保険等未加入建設業者が前項各号に掲げる届出をし、当該事実を確認することのできる書類(以下「確認書類」という。)を、受注者が発注者に提出した場合
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
3
3
第7条(下請負人の通知)
② 前号に掲げる下請負人以外の下請負人次のいずれかに該当する場合
イ.当該社会保険等未加入建設業者を下請負人としなければ工事の施工が困難となる場合その他の特別の事情があると発注者が認める場合
ロ.発注者が受注者に対して確認書類の提出を求める通知をした日から○日(発注者が、受注者において確認書類を当該期間内に提出することができない相当の理由があると認め、当該期間を延長したときは、その延長後の期間)以内に、受注者が当該確認書類を発注者に提出した場合
注:○の部分には、たとえば、30と記入する。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
4
4
第7条(下請負人の通知)
3.(a)受注者は、次の各号に掲げる場合は、発注者の請求に基づき、違約罰として、当該各号に定める額を発注者の指定する期間内に支払わなければならない。
① 社会保険等未加入建設業者が前項第1号に掲げる下請負人である場合において、同号イに定める特別の事情があると認められなかったとき又は受注者が同号ロに定める期間内に確認書類を提出しなかったとき 受注者が当該社会保険等未加入建設業者と締結した下請契約の最終の請負代金額の10分の○に相当する額 例:○=1
② 社会保険等未加入建設業者が前項第2号に掲げる下請負人である場合において、同号イに定める特別の事情があると認められず、かつ、受注者が同号ロに定める期間内に確認書類を提出しなかった とき 当該社会保険等未加入建設業者がその注文者と締結した下請契約の最終の請負代金額の100分の○に相当する額 例:○=5
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
5
5
第7条(下請負人の通知)
3.(b) 受注者は、社会保険等未加入建設業者が前項第1号に掲げる下請負人である場合において、同号イに定める特別の事情があると認められなかったとき又は同号ロに定める期間内に確認書類を提出しなかったときは、発注者の請求に基づき、違約罰として、受注者が当該社会保険等未加入建設業者と締結した下請契約の最終の請負代金額の10分の○に相当する額を、発注者の指定する期間内に支払わなければならない。
注:「10分の○」の○の部分には、たとえば、1と記入する。
「100分の○」の○の部分には、たとえば、5と記入する。
(A)は、すべての下請負人を社会保険等加入建設業者に限定する場合に使用する。
違約罰を課す場合は、(a)又は(b)を選択して使用し、課さない場合は、第3項を削除する。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
6
6
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
7
第7条(下請負人の通知)
2.1)(B)受注者は、次の各号に掲げる届出をしていない建設業者
(建設業法(昭和24年法律第100号)第2条第参項に定める建設業者をいい、当該届出の義務がない者を除く。以下「社会保険等未加入建設業者」という。)を下請契約(受注者が直接締結する下請契約に限る。以下この条において同じ。)の相手方としてはならない。
①健康保険法(大正11年法律第70号)第48条の規定による届出
②厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第27条の規定による届出
③雇用保険法(昭和49年法律第116号)第7条の規定による届出
2.1)(A)受注者は、次の各号に掲げる届出をしていない建設業者
(建設業法(昭和24年法律第100号)第2条第3項に定める建設
業者をいい、当該届出の義務がない者を除く。以下「社会保険等未加入建設業者」という。)を下請負人としてはならない。
7
第7条(下請負人の通知)
2.1)(B)受注者は、次の各号に掲げる届出をしていない建設業者
(建設業法(昭和24年法律第100号)第2条第3項に定める建設業者をいい、当該届出の義務がない者を除く。以下「社会保険等未加入建設業者」という。)を下請契約(受注者が直接締結する下請契約に限る。以下この条において同じ。)の相手方としてはならない。
①健康保険法(大正11年法律第70号)第48条の規定による届出
②厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第27条の規定による届出
③雇用保険法(昭和49年法律第116号)第7条の規定による届出
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
8
8
第7条(下請負人の通知)
2)前項の規定にかかわらず、受注者は、当該建設業者と下請契約を締結しなければ工事の施工が困難となる場合その他の特別の事情があると発注者が認める場合は、社会保険等未加入建設業者を下請契約の相手方とすることができる。
この場合において、受注者は、発注者の指定する期間内に、当該社会保険等未加入建設業者が前項各号に掲げる届出をし、当該事実を確認することのできる書類(以下「確認書類」という。)を発注者に提出しなければならない。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
9
9
第7条(下請負人の通知)
3)受注者は、前項に定める特別の事情があると認められなかった場合又は同項に定める期間内に確認書類を提出しなかった場合
は、発注者の請求に基づき、違約罰として、受注者が当該社会保険等未加入建設業者と締結した下請契約の最終の請負代金の額の10分の○に相当する額を、発注者の指定する期間内に支払わなければならない。 注:○の部分には、たとえば、1と記入する。
(B)は、下請契約の相手方のみを社会保険等加入建設業者に限定する場合に使用する。違約罰を課さない場合は、第3項を削除する。
留意点
第3条第2項の記述 :内訳書には、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に係る法定福利費を明示するものとする。
第3条第3項で内訳書は契約的拘束力を持たないとしているので、第
2項は契約的拘束力を持たないものとなってしまうのでは。
2022/11/21 Shunji Kusayanagi
10
10
第8条(特許xxの使用)
受注者は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権その他日本国の法令に基づき保護される第3者の権利(以下「特許xx」という。)の対象となっている工事材料、施工方法等を使用するときは、その使用に関する一切の責任を負わなければならない。
ただし、発注者がその工事材料、施工方法等を指定した場合において、設計図書に特許xxの対象である旨の明示がなく、かつ、受注者がその存在を知らなかったときは、発注者は、受注者がその使用に関して要した費用を負担しなければならない。
発注者が「受注者がその存在を知っていたはず」と主張するには、受注者が「その存在を知らなかった」ことを証明することを求められにではなく、発注者が「受注者がその存在を知っていた」 ことを証明することが求められる。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
11
11
第9条(監督員)
1. 発注者は、監督員を置いたときは、その氏名を受注者に通知しなければならない。監督員を変更したときも同様とする。
2. 監督員は、この約款の他の条項に定めるもの及びこの約款に基づく発注者の権限とされる事項のうち発注者が必要と認めて監督員に委任したもののほか、設計図書に定めるところにより、次に掲げる権限を有する。
① この契約の履行についての受注者又は受注者の現場代理人に対する指示、承諾又は協議
② 設計図書に基づく工事の施工のための詳細図等の作成及び交付又は受注者が作成した詳細図等の承諾
③ 設計図書に基づく工程の管理、立会い、工事の施工状況の検査又は工事材料の試験若しくは検査(確認を含む。)
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
12
12
第9条(監督員)
3.発注者は、2名以上の監督員を置き、前項の権限を分担させたときにあってはそれぞれの監督員の有する権限の内容を、監督員にこの約款に基づく発注者の権限の一部を委任したときにあっては当該委任した権限の内容を、受注者に通知しなければならない。
4.第2項の規定に基づく監督員の指示又は承諾は、原則として、書面により行わなければならない。
5.発注者が監督員を置いたときは、この約款に定める請求、通知
、報告、申出、承諾及び解除については、設計図書に定めるものを除き、監督員を経由して行うものとする。この場合においては、監督員に到達した日をもって発注者に到達したものとみなす。
6 発注者が監督員を置かないときは、この約款に定める監督員の権限は、発注者に帰属する。
Shunji Kusayanagi
2022/11/21 Shunji Kusayanagi
13
13
13
第9条(監督員)
総監督員:工事事務所長 xx監督員:出張所長/建設監督官
発注者と監督員の権限 (約款の解説書の記述から)
会計法29条「契約」では、各省各庁の長が当該各省各庁所属の職員に契約に関する事務を委任することができるとしており、委任された職員が発注者としの権限と責務を担うことになる。
監督員は発注者の代行権限を有するが、会計法上の問題で、請負代金の変更協議を行う権限を与えれていない。
工期変更についても発注者の権限事項であり、特別な委任が無い限り監督員には協議権限が与えれていない。
工事完成時の検査、部分引渡し時の検査及び部分払いの検査に付いても、会計法(予算決算及び会計法例第101条7項)が監督職員と検査職員の兼職を禁止いるので、監督員に権限なし。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
14
14
第9条(監督員)
5.発注者が監督員を置いた時は、この約款に定める請求、通知、報告、申出、承諾及び解除については、設計図書に定めるものを除き、監督員を経由して行うものとする。この場合においては、監督員に到達した日をもって発注者に到達したものとみなす。
第9条5項の解釈 (約款の解説書の記述から)
監督員を経由して行うものとしたのは、円滑で適正な施工確保のためには、監督員が発注者と受注者の間に何が発生しているかを把握しておく必要があるからでる。
したがって、監督員は発注者に提出されたこれらの書面等に自ら対処することはできないことはもちろん、書面等を修正することはできない。
受注者が監督員にしようとしても監督員が受領しようとしない場合には、受注者は発注者に直接提出することができる。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
15
15
第10条(現場代理人及びxx技術者等)
1.受注者は、次の各号に掲げる者を定めて工事現場に設置し、設計図書に定めるところにより、その氏名その他必要な事項を発注者に通知しなければならない。これらの者を変更したときも同様とする。
① 現場代理人
② (A)[ ]xx技術者。
(B)[ ]監理技術者
2019年12月改定で追記された
(C)監理技術者補佐(建設業法第26条第3項ただし書に規定する者をいう。以下同 じ。)
③ 専門技術者(建設業法(昭和24年法律第百号)第26条の2に規定する技術者をいう。以下同じ。)
注(B)は、建設業法第26条第2項の規定に該当する場合に、(A)は
、それ以外の場合に使用する。[ ]の部分には、同法第26条第3項の工事の場合に「専任の」の字句を記入する。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
16
16
16
第10条(現場代理人及びxx技術者等)
(B)は、建設業法第26条第2項の規定に該当する場合に、(A)は、それ以外の場合に使用する。(C) は、(B)を使用する場合において、建設業法第26条第3項ただし書の規定を使用し監理技術者が兼務する場合に使用する。 [ ]の部分には、同法第26条第三項本文の工事の場合に「専任の」の字句を記入する。 2019年12月改定で追記された
監理技術者の設置条件:
下請請負金額が土木3,000万円以上、建築4,500万以上
2.現場代理人は、この契約の履行に関し、工事現場に常駐し、その運営、取締りを行うほか、請負代金額の変更、請負代金の請求及び受領、第12条第1項の請求の受理、同条第3項の決定及び通知並びにこの契約の解除に係る権限を除き、この契約に基づく受注者の一切の権限を行使することができる。
注意点:NEXCOの契約約款は黄線で囲った部分が「設計図書に示したものを除き」となっており、特Shuにnji Xxusaめxxxxがgi なければ金額交渉は可能17 。
2022/11/21 Shunji Kusayanagi
17
17
第10条(現場代理人及びxx技術者等)
現場代理人は契約に基づく受注者の一切の権限を行使できる。但し、以下の権限は持たない。
①請負代金額の変更、請負代金の請求及び受領、
②第12条第1項の請求受理、同条第3項の決定及び通知
③契約の解除に係る権限 (約款の解説書の記述から)
3.発注者は、前項の規定にかかわらず、現場代理人の工事現場における運営、取締り及び権限の行使に支障がなく、かつ、発注者との連絡体制が確保されると認めた場合には、現場代理人について工事現場における常駐を要しないこととすることができる。
4.受注者は、第2項の規定にかかわらず、自己の有する権限のうち現場代理人に委任せず自ら行使しようとするものがあるときは、あらかじめ、当該権限の内容を発注者に通知しなければならない。
5. 現場代理人、監理技術者等(監理技術者、監理技術者補佐又はxx技術者をいう。以下同じ。) 及び専門技術者は、これを
兼ね2022る/11/こ21 とができる。 Shunji
2019年12月改定で追記された
KKuussaayyaannaaggii 1188
18
公共工事標準請負契約約款の管理体制
建設契約
当
者
契約的基本事項の管理
現場代理人は
出来高支払請求権がない
監理者は工期
延伸と追加費用の協議権がない
現場代理
現場の遂行・品質監理
監督員
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
19
19
現場の遂行者と監理者には限定した範囲しか契約的権限を持たせないシステム
発注者 契約担
官
人
受注
19
FIDIC契約約款のプロジェクト管理基本構造
建設契約に監理者の工事中止権、工期延伸、追加費用の協議と決定権を明記
建設契約
発注者
役務契約
者
全ての契約的事項を管理
現場代理
現場代理人は受注者から全権委任される
2022/11/21
現場の遂行・品質監理
Shunji Kusayanagi
監督員
現場監理者は契約的権限と工事監理権限定権を持つ
20
20
現場の遂行者と監理者に全権限を持たせるシステム
人
受注
20
第11条(履行報告)
受注者は、設計図書に定めるところにより、契約の履行について発注者に報告しなければならない。
国土交通省の「土木工事共通仕様書(平成25年4月改定)」第1編 共通編 総則の「用語の定義」
19.報告:報告とは、受注者が監督職員に対し、工事の状況または結果について書面により知らせることをいう。
土木工事共通仕様書に規定する報告は、受注者が監督職員。公共工事標準請負契約約款に規定する報告は、受注者が発注者に行うもの。この違いを理解する必要がある。
受注者は、第11条(履行報告)に基づき、週報、あるいは月報の形でプロジェクトで発生している各種契約関連問題を発注者に報告し、記録として残すことが可能。
2022/11/21 Shunji Kusayanagi 21
21
第12条(工事関係者に関する措置請求)
1.発注者は、現場代理人がその職務(監理技術者等又は専門技術者と兼任する現場代理 人にあっては、それらの者の職務を含む。)の執行につき著しく不適当と認められるときは、受 注者に対して、その理由を明示した書面により、必要な措置をとるべきことを請求することが できる。
2 発注者又は監督員は、監理技術者等、専門技術者(これらの者と現場代理人を兼任する者を 除く。)その他受注者が工事を施工するために使用している下請負人、労働者等で工事の施工又 は管理につき著しく不適当と認められるものがあるときは、受注者に対して、その理由を明示 した書面により、必要な措置をとるべきことを請求することができる。
2019年12月改定で修正された
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
Shunji Kusayanagi
22
22
第12条(工事関係者に関する措置請求)
3.受注者は、前2項の規定による請求があったときは、当該請求に係る事項について決定し、その結果を請求を受けた日から10日以内に発注者に通知しなければならない。
4.受注者は、監督員がその職務の執行につき著しく不適当と認められるときは、発注者に対して、その理由を明示した書面により、必要な措置をとるべきことを請求することができる。
5.発注者は、前項の規定による請求があったときは、当該請求に係る事項について決定し、その結果を請求を受けた日から10日以内に受注者に通知しなければならない。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
23
23
第13条(工事材料の品質及び検査等)
1.工事材料の品質については、設計図書に定めるところに
よる。設計図書にその品質が明示されていない場合にあっては、中等の品質を有するものとする。
2.受注者は、設計図書において監督員の検査(確認を含む
。以下この条において同じ。)を受けて使用すべきものと指定された工事材料については、当該検査に合格したものを使用しなければならない。この場合において、当該検査に直接要する費用は、受注者の負担とする。
3.監督員は、受注者から前項の検査を請求されたときは、請求を受けた日から〇日以内に応じなければならない。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
24
24
第13条(工事材料の品質及び検査等)
4.受注者は、工事現場内に搬入した工事材料を監督員の承諾を受けないで工事現場外に搬出してはならない。
5.受注者は、前項の規定にかかわらず、第二項の検査の結果不合格と決定された工事材料については、当該決定を受けた日から〇日以内に工事現場外に搬出しなければならない。
注;平成15年版では、「当該決定を受けた日から〇日以
内(国土交通省直轄工事工事は7日以上と規定)に工事現場外に搬出しなければならない」よい記述があった。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
25 25
25
第14条
(監督員の立会い及び工事記録の整備等)
1.受注者は、設計図書において監督員の立会いの上調合し、又は調合について見本検査を受けるものと指定された工事材料については、当該立会いを受けて調合し、又は当該見本検査に合格したものを使用しなければならない。
2.受注者は、設計図書において監督員の立会いの
上施工するものと指定された工事については、当該立会いを受けて施工しなければならない。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
26
26
第14条
(監督員の立会い及び工事記録の整備等)
3.受注者は、前2項に規定するほか、発注者が特に必要があると認めて設計図書において見本又は工事写真等の記録を整備すべきものと指定した工事材料の調合又は工事の施工をするときは、設計図書に定めるところにより
、当該見本又は工事写真等の記録を整備し、監督員の請求があったときは、当該請求を受けた日から〇日以内に提出しなければならない。
4.監督員は、受注者から第1項又は第2項の立会い又は見本検査を請求されたときは、当該請求を受けた日から〇日以内に応じなければならない。
注;平成15年版では、(直轄工事: 7日以上)と規定
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
27
27
第14条(監督員の立会い及び工事記録の整備等)
正当な理由なく受注者の請求に応じないのは監督員の義務違反
5.前項の場合において、監督員が正当な理由なく受注者の請求に〇日以内に応じないため、その後の工程に支障をきたすときは、受注者は、監督員に通知した上、当該立会い又は見本検査を受けることなく、工事材料を調合して使用し、又は工事を施工することができる。
この場合において、受注者は、当該工事材料の調合又は当該工事の施工を適切に行ったことを証する見本又は工事写真等の記録を整備し、監督員の請求があったときは、当該請求を受けた日から〇日以内に提出しなければならない。
(○:直轄工事は7日)
6.第1項、第3項又は前項の場合において、見本検査又は見本若しくは工事写真等の記録の整備に直接要する費用は、受注者の負担とする。
2022/11/21 Shunji Kusayanagi
28
28
第15条 (支給材料及び貸与品)
1.発注者が受注者に支給する工事材料(以下「支給材料」という
。)及び貸与する建設機械器具(以下「貸与品」という。)の品名、数量、品質、規格又は性能、引渡場所及び引渡時期は、設計図書に定めるところによる。
2.監督員は、支給材料又は貸与品の引渡しに当たっては、受注者の立会いの上、発注者の負担において、当該支給材料又は貸与品を検査しなければならない。
この場合において、当該検査の結果、その品名、数量、品質又は規格若しくは性能が設計図書の定めと異なり、又は使用に適当でないと認めたときは、受注者は、その旨を直ちに発注者に通知しなければならない。
3.受注者は、支給材料又は貸与品の引渡しを受けたときは、引渡しの日から〇日以内に、発注者に受領書又は借用書を提
出しなければならない。
2022/11/21
(○Shu:nj直i Kus轄ayan工agi 事は7日)
Shunji Kusayanagi
29
29
第15条 (支給材料及び貸与品)
4.受注者は、支給材料又は貸与品の引渡しを受けた後、当該支給材料又は貸与品に種類、品質 又は数量に関しこの契約の内容に適合しないこと(第2項の検査により発見することが困難で あったものに限る。)などがあり使用に適当でないと認めたときは、その旨を直ちに発注者に通知しなければならない。
5.発注者は、受注者から第2項後段又は前項の規定による通知を受けた場合において、必要があると認められるときは、当該支給材料若しくは貸与品に代えて他の支給材料若しくは貸与品を引き渡し、支給材料若しくは貸与品の品名、数量、品質若しくは規格若しくは性能を変更し、又は理由を明示した書面により、当該支給材料若しくは貸与品の使用を受注者に請求しなければならない。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
30
30
第15条 (支給材料及び貸与品)
6.発注者は、前項に規定するほか、必要があると認めるときは、支給材料又は貸与品の品名、数量、品質、規格若しくは性能、引渡場所又は引渡時期を変更することができる。
7.発注者は、前2項の場合において、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
支給材料及び貸与品の変更、遅延等は工期延伸と
追加費用の請求対象となる
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
3311
31
第15条 (支給材料及び貸与品)
8受注者は、支給材料及び貸与品を善良な管理者の注意をもって管理しなければならない。
9.受注者は、設計図書に定めるところにより、工事の完成、設計図書の変更等によって不用となった支給材料又は貸与品を発注者に返還しなければならない。
10.受注者は、故意又は過失により支給材料又は貸与品が滅失若しくはき損し、又はその返還が不可能となったときは、発注者の指定した期間内に代品を納め、若しくは原状に復して返還し、又は返還に代えて損害を賠償しなければならない。
11.受注者は、支給材料又は貸与品の使用方法が設計図書に明示されていないときは、監督員の指示に従わなければならない。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
32
32
第16条(工事用地の確保等)
1.発注者は、工事用地その他設計図書において定められた工事の施工上必要な用地(以下「工事用地等」という。)を受注者が工事の施工上必要とする日(設計図書に特別の定めがあるときは、その定められた日)までに確保しなければならない。
■ 受注者が“工事の施工上必要とする日”を示すには、詳細な工程表を作成して発注者に提出することが必要。
■ 土工協調査結果 (1999年実施)
■工事用地確保されないままに工事が進められている 27%
■ 日建連調査結果 (2012年実施)
■工事用地確保等の原因で工事中止が発生 47%
■ 第16条では受注者が工事用地が確保されない場合どうするかの記述がない。この場合、「契約条件変更」として、第18条(条件変更等)に従い工期延伸と追加費用請求することになる。
2022/11/21 Shunji Kusayanagi 33
33
第16条(工事用地の確保等)
2.受注者は、確保された工事用地等を善良な管理者の注意をもって管理しなければならない。
3.工事の完成、設計図書の変更等によって工事用地等が不用となった場合において、当該工事用地等に受注者が所有又は管理する工事材料、建設機械器具、仮設物その他の物件(下請負人の所有又は管理するこれらの物件を含む。)があるときは、受注者は、当該物
件を撤去するとともに、当該工事用地等を修復し、取り片付けて、発注者に明け渡さなければならない。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
34
34
第16条(工事用地の確保等)
4.前項の場合において、受注者が正当な理由なく、相当の期間内に当該物件を撤去せず、又は工事用地等の修復若しくは取片付けを行わないときは、発注者は、受注者に代わって当該物件を処分し、工事用地等の修復若しくは取片付けを行うことができる。この場合においては、受注者は、発注者の処分又は修復若しくは取片付けについて異議を申し出ることができず、また、発注者の処分又は修復若しくは取片付けに要した費用を負担しなければならない。
5.第3項に規定する受注者のとるべき措置の期限、方法等については、発注者が受注者の意見を聴いて定める。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
35
35
第16条に関わる契約変更の論理
検討が必要
第16条 工事用地の確保等
な契約条項 本工事着工までに確保されなかった。
工事用地が約定工程表に示された
第1条 第3項
住民との合意で指定さ
れた工法が変更された
第18条 条件変更等第1項第4号、第5号施工条件の変更
第19条 設計図書の変更
発注者による指定仮設の桟橋の仕様と図面の変更
第20条 工事の中止発注者から工事中止指示が出された
第23条
発注者の請求による工期短縮等
第24条
工期の変更方法
第22条
受注者の請求による工期の延長
第25条
請負代金額の変更方法等
受注者による工期延
伸および追加費用請求図書作成
2022/11/21 請求基盤契約条項構造の分析
Shunji Kusayanagi 36
36
工事用地の定義
■ 1-1-1-7 工事用地等の使用
国土交通省の「土木工事共通仕様書
第1編 共通編 総則の「用語の定義」
2. 用地の確保: 設計図書において受注者が確保するものとされる用地及び工事の施工上受注者が必要とする用地については、自ら準備し、確保するものとする。この場合において、工事の施工上受注者が必要とする用地とは、営繕用地(受注者の現場事務所、宿舎、駐車場)及び型枠または鉄筋作業場等専ら受注者が使用する用地並びに構造物掘削等に伴う借地等をいう。
契約約款の解説書の工事用地に関する記述
■ 工事用地とは、工事目的物が建設される場所そのものを意味し、その他設計図書において定められた工事の施工上必要な用地とは、設計図書において、発注者が提供すべきことを明示した工事用道路、機会プラントの用地、労務者宿舎の用地等である。
■ これらの用地については、設計図書において、発注者が特に提供
する20こ22/1と1/2が1
定められている時のみ確保義務が生ずるものである。
Shunji Kusayanagi 37
37
契約約款の解説書の工事用地に関する記述
発注者から受注者に引き渡される工事用地は、受注者が障害なく工事を行える状態でなければならない。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
38
■ 工事用地を「確保する」とは、必ずしも土地の所有権を取得することだけに限らず、請負い者の工事の施工を妨げる所有権以外の権利、たとえば、地上権、地役権等の用地物権のほか、抵当権等の担保物権、用役賃借権、協業権、鉱業権を消滅させることも含むものである。
■ また、このような権利を取得し、又はこれを消滅させることのほか、物理的に障害物を除去することも含まれると解される。
■ さらに、発注者が工事目的物の設置に関し河川、道路等の工作物の占用許可を得ることも含むものと解すべきであろう。
38
第17条 設計図書不適合の場合の改造義務
及び破壊検査等
1.受注者は、工事の施工部分が設計図書に適合しない場合において、監督員がその改造を請求したときは、当該請求に従わなければならない。
この場合において、当該不適合が監督員の指示によるときその他発注者の責めに帰すべき事由によるときは、発注者は、必要があると認められるときは工期若しくは請負代 金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
受注者の責に帰さない工事のやり直しは工期延伸と追加費用の請求対象となる。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
39
39
第17条 (設計図書不適合の場合の改造義務及び破壊検査等)
2.監督員は、受注者が第13条第2項又は第14条第1項から第3項までの規定に違反した場合において、必要があると認められるときは、工事の施工部分を破壊して検査することができる
3.前項に規定するほか、監督員は、工事の施工部分が設計図書に適合しないと認められる相当の理由がある場合において、必要があると認められるときは、当該相当の理由を受注者に通知して、工事の施工部分を最小限度破壊して検査することができる。
4.前2項の場合において、検査及び復旧に直接要する費用は受注者の負担とする。
第17条は工事中の検査であり、適用は工事完成まで。工事完成確認は第31条の適用となる。
Shunji Kusayanagi
2022/11/21 Shunji Kusayanagi 40
40
第18条(条件変更等)
1.受注者は、工事の施工に当たり、次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは、その旨を直ちに監督員に通知し、その確認を請求しなければならない。
① 図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないこと(これらの優先順位が定められている場合を除く。
② 設計図書に誤謬又は脱漏があること。
③ 設計図書の表示が明確でないこと。
④ 工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと。
⑤ 設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じたこと。
■ この条項に関わる「熟知義務」の議論は第4講義で行う。
Shunji Kusayanagi
2022/11/21 Shunji Kusayanagi
41
41
第18条(条件変更等)
2.監督員は、前項の規定による確認を請求されたとき又は自ら同項各号に掲げる事実を発見したときは、受注者の立会いの上、直ちに調査を行わなければならない。
ただし、受注者が立会いに応じない場合には、受注者の立会いを得ずに行うことができる。
3.発注者は、受注者の意見を聴いて、調査の結果(これに対してとるべき措置を指示する必要があるときは、当該指示を含む。)をとりまとめ、調査の終了後〇日以内に、その結果を受注者に通知しなければならない。(○:直轄工事は14日)
ただし、その期間内に通知できないやむを得ない理由があるときは、あらかじめ受注者の意見を聴いた上、当該期間を延長することができる。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
42
42
追加費用と工期延伸請求のケーススタディ
法面掘削の傾斜角度の変更
■ 道路建設工事に於いて受注者は施工計画書に示された建設機械を使用し、図面と仕様書に示された傾斜角度で掘削を開始した。
■ 図面と仕様書に示された傾斜角度は45度であった。
■ 掘削作業は順調に進められたが、掘削高+200m面まで掘り下げた時、法面から地下水がじわじわと噴出し始めた。
地下水
45°
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
43
43
法面掘削の傾斜角度の変更
■ 受注者はそのまま掘削作業を継続した。
■ しかし、噴出する地下水の量が次第に増加し、掘削法面の上部をチェックすると数条の亀裂が認められた。
■ 亀裂の状態を測定しながら掘削を進めると、掘削部が徐々に崩れ始めた。
■ 受注者は作業を止めて対応策を検討した。
地下水
45°
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
44
44
法面掘削の傾斜角度の変更
■ 検討の結果、法面角度を45度から30度に変更する必要があることが分かった。
■ 法面傾斜角度の変更によって掘削量が増加することになり、追加費用と工期延伸が必要となる。
掘削増加量
■ 受注者として追加費用と工期延伸請求を行うためにはどの様なプロセスが必要か。
地下水
30°
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
45
45
第18条(条件変更等)
4.前項の調査の結果において第一項の事実が確認された場合において、必要があると認められるときは、次の各号に掲げるところにより、設計図書の訂正又は変更を行わなければならない。
① 第1項第1号から第3号までのいずれかに該当し設計図書を訂正する必要があるもの 発注者が行う。
② 第1項第4号又は第5号に該当し設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴うもの 発注者が行う。
③ 第1項第4号又は第5号に該当し設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴わないもの発注者と受注者とが協議して 発注者が行う。
発注者
が行うのは設計図書の訂正
のみ。
5. 前項の規定により設計図書の訂正又は変更が行われた場合に
おいて、発注者は、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
追加費用や工期延伸請求図書作成は受注者の仕事。
2022/11/21 Shunji Kusayanagi 46
46
第18条に関する留意事項
■ 受注者が18条第1項の各号に該当する事実を発見した時、監督員の確認を求めず発生事象に対応した場合、受注者は追加費用と工期延伸請求権を放棄したと見做される。
■ 第18条の2項、3項に記されているように、発注者側は変更事項が発見された場合、直ちに事実確認し調査しなければならない。
■ 注視すべきは、第2項は「監督員」が主語であり、第3項は「発注者」が主語となっていること。
■ つまり、監督者は事実確認を行うだけで、対応策明示は発注者が行うという構図。
■ 第3項の「〇日」は通常14日となり、この間に、監督員から報告
を受けた発注者(実質的には現場に常駐しない契約担当官)は、工事中止の判断、発生事象調査の実施、対応策の策定、受注者への指示等、迅速な対応が求められることになる。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
47
47
条件変更等の調査に関する留意事項
■ 第18条の2項、3項に記されているように、発注者側は変更事項が発見された場合、直ちに調査しなければならない。
■ 同時に、発注者には、当該変更に関連する工事を中止させる必要があるか否かの判断が求められる。
■ 調査期間中でも、発注者から工事中止指示が出されない限り、受注者には工事を遂行する義務がある。(注;受注者の工事 中止権があったが、平成7年(1995年)の改定で削除された)。
■ 発注者から修正通知が出されるまで、受注者が工事を続行したため、取壊しや再度施工が必要となった、資機材を調達してしまったといった場合、発生した時間と費用は全て発注者負担となる。
■ 工事中止の指示は、無駄の発生防止のためにも重要な判断
となるため、受注者から工事中止指示を要求することも必要。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
48
48
第18条に関わる契約変更の論理
検討が必要な契約条項
第18条 条件変更等第1項第4号、
第5号施工条件の変更
第1条 第3項
住民との合意で指定さ
れた工法が変更された
第23条
発注者の請求による工期短縮等
第19条 設計図書の変更
発注者による指定仮設の桟橋の仕様と図面の変更
第22条
受注者の請求による工期の延長
第24条
工期の変更方法
第25条
請負代金額の変更方法等
受注者による工期延
伸および追加費用請求図書作成
2022/11/21
請求基盤契約条項構造の分析
Shunji Kusayanagi
49
49
第19条(設計図書の変更)
■ 発注者は、必要があると認めるときは、設計図書の変更内容を受注者に通知して、設計図書を変更することができる。
■ この場合において、発注者は、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
■発注者は設計図書の変更に関し、変更理由を受注者に説明する義務もなく、合意を得る義務もない。
■逆に、受注者は、設計図書の変更に伴う工事内容変更による工期延伸と追加費用請求の権利を有することになる。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
50
50
条項内容解釈の注意点
例;第19条(設計図書の変更)
■ 発注者は、必要があると認めるときは、・・・・設計図書を変更することができる。
■ 発注者は、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
■ 発注者は、必要があると認めるときは、・・・。
■ 発注者は、必要があると認められるときは・・
決定権は全
て発注者側にあるのか
■ 前者は発注者が認めたときであり、後者は、客観的事実として
認められるときという解釈すべきもの。
対応と公正の原理
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
51
。
51
追加工事に関する受注者の義務
■ 追加工事には2つのタイプがある。
第1は「契約対象施設の機能を満たす」ために必要とされる追加工事。
第2は「契約対象施設の機能充足とは直接関係を持たない」追加工事。
■ 発注者から第1のタイプの追加工事遂行を要求された場合は
、物理的に不可能でない限り受注者はこれを行う義務がある。
■ 第2のタイプの場合は、受注者に遂行義務はなく、これを受けるか否かは受注者自身が決めることになる。
■ このように受注者は全ての追加工事を行う義務を負っているわけではない。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
52
52
受注者の「熟知義務範囲」に関する議論
■ 問題の第1は第18条第1項の
①設計図書の矛盾点。②誤謬又は脱漏。③表示不明瞭。
➡入札時に受注者が知り得ないもので有ったか否かという議論。
■ 問題の第2は同じく第18条の
④設計図書に示された施工条件と実際の工事現場が一致しない。
⑤設計図書に明示がない施工条件の発生
➡受注者にとって予測不可能なものであったか否かという議論。
■ これは受注者側の契約条件の「熟知義務」の議論であり、追加費用や工期延伸請求の権利の有無に深く関わるものとなる。
■ 発注者が、総価一式請負契約を理由に「熟知義務の範囲である」として受注者の請求を拒否するケースが多くみられる。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
53
53
受注者の「熟知義務範囲」に関する議論
■ 発注者側の主張内容。
■ 標準請負契約約款の第1条第2項「受注者は、契約書記載の工事を契約書記載の工期内に完成し、工事目的物を発注者に引き渡すものとし、発注者は、その請負代金を支払うものとする」と記している。
■ 総価一式請負契約では、受注者に工事を完成させるために必要となる事柄に関する「熟知義務」がある。
■ 受注者は工事の完成責任があり、これを全うするために契約条件に関する熟知義務があるが、公共工事標準請負契約約款や共通仕様書には「熟知義務」という言葉を記した条項はない。
■ 「熟知義務」に関連する条項としては共通仕様書の「設計図書の照査等」があり、その第2項「設計図書の照査」では以下のように記されている。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
54
54
共通仕様書の第2項「設計図書の照査」
第2項「設計図書の照査」
■ 受注者は、施工前及び施工途中において、自らの負担により契約書第18条第1項第1号から第5号に係る設計図書の照査を行い、該当する事実がある場合は、監督職員にその事実が確認できる資料を書面により提出し、確認を求めなければならない。
■ なお、確認できる資料とは、現地地形図、設計図との対比図、取合い図、施工図等を含むものとする。
■ また、受注者は、監督職員から更に詳細な説明または書面の追加の要求があった場合は従わなければならない」。
■ 「設計図書照査」とは、発注者から発給された設計図書を精査し疑問点があれば監督員に通知することであり、本質は受注者が自身の業務遂行に必要な事項を把握すること。
■ 現場の状況等、物理的な条件に関する熟知も、発注者から与えられた地形図、地質図、施工関連図書と現場の状況を相互確認す
るこ2と022に/11/2な1 る。
Shunji Kusayanagi
55
55
受注者の「熟知義務範囲」に関する議論
■ 公共工事標準請負契約約款における受注者の「熟知義務」
■ 設計施工分離の総価一式請負契約では、設計図書の内容確認及び設計図書と現場状況の確認が受注者側の「熟知義務」の範囲となり、工事完成責任を負っているのだから、受注者は発注者以上に工事遂行に必要な事項を熟知していなければならないといった解釈は契約的論理からすると過大解釈となる。
■ FIDIC単価数量精算契約約款の「予見不可能:Unforeseeable」
■ 「経験ある建設企業: experienced contractor 」の経験とは、発注者から発給された図書に記されている内容を咀嚼に必要な経験値ということになる。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
56
「not reasonably foreseeable by an experienced contractor by the Base Date」。
56
契約形態と「熟知義務範囲」
■ 「詳細設計を含む設計施工契約」では、発注者から基本設計で決定された詳細設計性能が示され、受注者の「熟知義務範囲」は詳細設計仕様を理解し、要求品質確保する施設を造るために必要な事項を把握することになる。
■ 「基本設計を含む設計施工契約」は、受注者は、発注者が概念設計で定めた要求を理解し、要求事項を確保出来る施設を造るために必要な事項を熟知しておくことが求められる。
■ PPPやPFIに適用される「BOT契約」の場合は、発注者は施設の使用目的やサービスレベルと言った基本的な要求事項を提示するのみとなり、受注者は基本計画、設計、施設運営に関わる全ての事項に付いて「熟知義務」を問われることになる。
■ このように契約形態から「熟知義務」を整理して行くと、公共工事標準請負契約約款における受注者の「熟知義務」範囲が鮮明になる。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
57
57
国際建設市場での契約図書に関する解釈の原則
■ 入札時点で入札者が設計図書の矛盾点、誤謬又は脱漏、表示不明瞭な点を発見したとしても、これを発注者に報告する義務はなく、是正を求める義務もない。
■ 入札者は自身が理解し得る範囲で施工計画を立て入札金額を提示すればよい。
■ 契約図書の解釈に関する基本認識には、契約に関する法的教義(legal doctrine)として知られている「起草者に不利なる解釈: Contra Proferentem(ラテン語):interpretation against the draftsman」という法則が適用されている。
■ これは、契約条文に曖昧な部分がある場合、その契約図書を起草した側に不利になるように解釈するというもの。
■ こういった契約に関する基本法則を取り込むことにより契約の公平性は格段と高まることになる。
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
58
58
参考書
公共工事標準請負契約
約款の条項の法的基盤を知るための必読書
現場視線で公共工事標準請負契約
約款の条項を分析し、契約管理の実践的方法を述べた図書
2022/11/21
Shunji Kusayanagi
59
59