国立大学と MIT の受託研究契約書の対比
国立大学と MIT の受託研究契約書の対比
(注1)国立大学の受託研究契約書…出所「大学と産業界との研究協力実務必携」(平成 4 年以降掲載) (注2)MIT の標準契約書は一つの事例に過ぎず、大学によって様々な契約書がある。
<条文:国立大学の事例> | <MIT の事例> | <留意事項等> |
第1条(受託研究の題目等) ・研究題目、研究内容を規定 ・研究期間を規定 ・契約に受託費用の金額を明記。 | 第1条、補足A ・受託研究の内容を規定第2条 ・主研究者を規定第3条 ・期間を規定第4条 ・受託費用の最高額を規定。研究遂行に伴い 実際に生じる費用を支払う。 | |
第2条(研究経費の納付) ・企業は大学に研究開始日迄に支払う。 | 第5条 ・企業は大学に事前に支払う。大学は、契約完了後、余った資金は返還する。 | |
第3条(研究経費により取得した設備等の帰 属) | ||
第4条(提供物品の搬入等の経費等) | ||
第5条(損害の賠償) |
<条文:国立大学の事例> | <MIT の事例> | <留意事項等> |
第6条(受託研究の中止又は期間の延長) ・企業側に一方的な中止権なし。 | 第6条 ・企業側は、60 日前に書面にて契約終了を通知。大学側は、研究継続が困難になった場合に契約を終了。 | ・契約の変更等は書面で行うべき。 |
第7条(同上) ・大学側に、やむを得ない場合は中止、期間延長可能。 | ||
第8条(同上) | ||
第9条(研究経費の返還) ・契約を中止する場合も、大学側は原則、受託費用の返還義務なし。研究経費に不用が生じた場合、返還することが可能。 | 第6条 ・契約終了の場合、大学は企業から、実際生じた費用と解約不能な費用を、受託費用の最高額の範囲内で受領。 | |
第10条(研究経費が不足した場合の処置) ・大学は、企業と協議し、不足額を企業に負担させることが可能。 | 第4条 ・受託費用は、企業が書面により承認しない限り、最高額を超過することは不可。 | |
第11条(工業所有xxの帰属) ・工業所有xxの帰属は大学または教官 ・大学に帰属した場合は、企業に対して無償使用、譲渡は不可。 ・但し、研究交流促進法に基づき、企業に対して特許権又は実用新案権の一部を譲与することは可能。xxの際は、別に譲与契約書を締結。 | 第9条 X ・xx権は大学に帰属。 ・発明は、TLO に開示されるや否や企業側に通知される。 |
<条文:国立大学の事例> | <MIT の事例> | <留意事項等> |
第12条(優先的実施) ・企業に 10 年以内の優先的実施権付与の可能性あり。 | 第9条B ・企業は、内部研究目的に関しては、非独占、譲渡不可、無償で発明を利用可能。 ・ライセンシングの方法に3つのオプションあり。企業は特許申請受理後6ヶ月以内に、オプションの1つを選択。 (1)非独占実施権。無償、譲渡不可、全世界対象の実施権。企業側は事業化努力、年間 3,000ドルの支払い必要。大学側は特許維持義務無し。 (2)独占実施権。期限限定、有償、サブライセンス可能。条件面は、オプション選択後3ヶ月以内に別途交渉で定める。なお、特許費用は企業負担。 (3)企業は成果に係る一切の権利を放棄し(内部使用は可)、第三者にライセンスすることが可能。その際、企業は、特許実施料収入を大学と分け合う。 第9条 C ・企業が6ヶ月以内に選択しない場合は、原則上記(3)を選択したものとみなす。 | |
第13条(第三者に対する実施の許諾) ・企業が2年目以降、特許xxを正当な理由なく実施しない場合は、大学は、第三者に実施権を許諾することが可能。 | ||
第14条(実施料) ・別に実施契約を締結し、企業は大学に実施料を支払う。 | ・優先的実施権に関する選択肢を確保してはどうか。その際のオプションの選択期限も規定しておくべき。 |
<条文:国立大学の事例> | <MIT の事例> | <留意事項等> |
第15条(実用新案xxの取扱い) | ||
第16条(研究成果の報告) ・大学は、受託研究完了の際に、研究成果報告書を企業に提出。 | ||
第17条(研究結果の公表) ・大学に属する教官は、研究成果の公表が可能。但し、必要な場合には、公表の時期・方法を大学と企業が協議して定める。 | 第7条 ・大学側に研究成果公表の権利あり。但し、 公表日の 30 日前に企業側に通知し、特許の範囲、企業の機密事項を確認。 | ・契約当事者の合意に基づき公表する必要があるのではないか。 |
第18条(契約の解除) ・大学は、企業が研究経費の納付期限を守らない場合は契約の解除可能。 | 第6条(再掲) ・大学側は、研究継続が困難になった場合に契約を終了。 | |
第19条(協議) ・契約に定めのない事項について、定める必要があるときは、甲乙協議のうえ定める。 | 第16条 ・契約の修正・変更は、書面かつ、大学・企業双方の署名が必要。 | ・契約の変更等は書面で行うべき。 |
追加条項 (データベース等の著作権) ・著作権は大学と企業で共有。持分は協議により定める。 (著作権料) ・大学に帰属したデータベース等を企業が利用するときは、別に定める著作権料を大学に支払う。 | 第9条F(著作権の規定) ・著作権は大学に帰属 ・コンピュータソフト以外は、企業に、改変不可・無償・譲渡不可の非独占実施権あり。 ・コンピュータソフトの内部使用に関しては、企業に、改変不可・無償・譲渡不可の非独占実施権あり。商業使用に関しては、有償、 大学の許可要。 |
<条文:国立大学の事例> | <MIT の事例> | <留意事項等> |
第8条、補足B(企業所有情報の取扱) ・大学側のメンバーが企業所有情報に接する際の権利義務を補足 B で規定。 | ・企業側の権利保護の規定なし。(企業秘密の情報の非公開等) | |
第9条 A(特許申請の規定) ・大学は、独自の判断で特許申請が可能。また企業の要請に基づき企業の費用負担で特許申請を行う。 | ・特許申請の規定が必要ではないか。 | |
第9条 D(外国出願) ・第9条 B で(2)を選択した場合、企業は、大学に出願したい国を通知。費用は企業負 担。 | ||
第9条 E(発明開示の秘密保持) ・企業は、大学側から開示された発明を秘密保持。 | ||
第9条 G(リサーチツールの規定) ・リサーチツールの権利については別に契約。但し、大学側は、少なくとも研究用の使用に関する権利は留保。 | ・リサーチツールに関する規定が必要ではないか。 | |
第9条 H(ライセンスの効力日) ・ライセンスアグリーメント締結後、ライセンスは効力を発する。 |
<条文:国立大学の事例> | <MIT の事例> | <留意事項等> |
第10条(名義の使用) ・広報の際、相手の名義を使用する際は、お互いの了承が必要。 | ||
第11条(連絡) ・両当事者の連絡は、書面で契約書記載の宛先に行う。 | ||
第12条(xxxx) ・権利の承継は、相手側の書面による同意が無ければ無効。 |