本稿の目的は, 「契約理論」 (Contract Theory)と呼ばれる経済学分析の視点より, 上記の職務発明の対価をめぐる問題を理論的に整理することにある2)。 契約理論とは, 情報の非対称性などによって生じる取引の非効率性を最小化するための契約的・組織的制度の設計を議論する研究分野である。なぜこのような研究分野が, 職務発明に対する報酬体系の設計を考えるうえで重要なのか。 これを見るために, 職務発明が問題となる経済環境を特徴づけている要因を列挙してみよう。