(PFS:Pay For Success)
成果連動型民間委託契約方式
(PFS:Pay For Success)
医療・健康及び介護分野の手引き
令和3年8月
厚生労働省 経済産業省
本手引きは、医療・健康及び介護分野のPFS事業を実施する際のポイントを解説するものです。PFS事業に関する一般的な内容は、「成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)共通的ガイドライン」を合わせて参照してください。
本手引きでは、共通的ガイドラインに沿って、国内で実施されている医療・健康及び介護分野のPFS事業の先行8事例を取り上げています。
PFS事業の発案から案件形成、民間事業者の選定・契約、事業実施、評価・支払までの各ステップにおいて、先行事例ではどのような検討を行い事業を実施しているのか、地方公共団体等職員の生の声も交えて紹介しています。
医療・健康及び介護分野においてPFS事業の実施を検討している地方公共団体等の担当者はもとより、この分野のPFS事業に参入を考える民間事業者、資金提供者のみなさまも、ぜひ参考としてください。
本手引きの問い合わせ先
●厚生労働省 政策統括官(総合政策担当)付政策統括室 TEL: 03-5253-1111 内線 7695
●経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 TEL: 03-3501-1790
E-mail: healthcare-seido@meti.go.jp
●株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門
E-mail: 200010-sib@ml.jri.co.jp
目次
「成果連動型民間委託契約方式共通的ガイド
ステップ3 民間事業者の選定・契約
ステップ2 案件形成
ステップ1 PFS事業の発案
PFS契約の締結
民間事業者の公募
成果水準書(仕様書)(案)等の作成
実施体制に関する検討
マーケットサウンディング
• 成果指標
• 成果指標の上限値等
• 評価時期、契約期間
• PFS事業効果
• 支払上限額
• 支払条件
• 成果評価の方法
事業目標の設定
行政課題の選定
ライン」におけるPFS事業実施手順との対応
掲載事例一覧
3
1 | 対象とする行政課題の選定 | 4 |
2 | 事業目標等の設定 | 6 |
3 | 成果指標の選定 | 9 |
4 | 成果指標の上限値等の設定 | 13 |
5 | 契約期間(評価時期を含む)の設定 | 16 |
6 | PFS事業効果の算出、評価 | 20 |
7 | 支払上限額の決定 | 25 |
8 | 支払条件の設定 | 27 |
9 | 成果評価の方法 | 32 |
10 | 実施体制に関する検討 | 36 |
11 | 民間事業者の選定方法 | 39 |
12 | 成果水準書(仕様書)(案)等の作成 | 41 |
13 | 選定基準等 | 43 |
14 | PFS契約の締結 | 44 |
15 | 事業実施期間中のモニタリング | 45 |
ステップ4 事業実施
16 | 成果の評価と支払 | 46 |
ステップ5 評価、支払
【参考】各事例のロジックモデルと成果指標 | 47 |
【参考】各事例の実施体制 | 51 |
【参考】マーケットサウンディングの実施方法 | 55 |
【参考】地方公共団体のPFS事業に対する支援 | 56 |
【参考】関係資料一覧・各事例の問い合わせ先 | 57 |
【参考】マーケットサウンディングとは PFS事業の実現性を高めるため、PFS事業の発案段階や案件形成段階において、事業条件等について民間事業者
(サービス提供者候補、資金提供者候補)の意見等を聴取することを言います。(詳細はP55参照)
事業名 | 実施主体 | 行政課題 | 期間 | 事業規模 (千円) | 分野 | PFS/SIB |
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | ||||||
神戸市 | 糖尿病性腎症の重症化予防 | 3年間 | 34,063 | 医療・健康 | SIB | |
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | ||||||
八王子市 | 早期がん発見 | 3年間 | 9,762 | 医療・健康 | SIB | |
③SIBの手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 | ||||||
広島県、竹原市、尾道市、福山市、府中市、三次市、庄原市 | 早期がん発見 | 3年間 | 22,294 | 医療・健康 | SIB | |
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム | ||||||
美馬市 | 運動機能の改善と運動習慣の定着 | 5年間 | 38,400 | 医療・健康介護 | SIB | |
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務 | ||||||
大牟田市 | 要支援・要介護度の維持・進行抑制 | 4年間 | 13,644 | 介護 | PFS | |
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業 | ||||||
厚生労働省 (実施場所:浦添市) | がんの早期発見 | 8カ月 | 9,500 | 医療・健康 | PFS | |
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業 | ||||||
厚生労働省 (実施場所: 雲南市) | 運動・認知機能の維持・改善 買い物弱者の救済 | 10カ月 | 9,500 | 介護 | PFS | |
Ⓑ服薬指導事業 | ||||||
厚生労働省 (実施場所: 大分県、別府市、中津市、豊後大野市) | 重複服薬の適正化 | 8カ月 | 8,794 | 医療・健康 | SIB |
4
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る行政課題の選定手順
対象とする行政課題候補の
抽出
(1) 地方公共団体等は、PFS事業の実施を検討する際、官民連携の有効性を確保していく観点から、以下のものについて、検討することが望ましい。
① 解決を目指す行政課題に関して、地方公共団体等において解決のための事業の実施方法が明確でない一方、民間事業者側にノウハウの蓄積がある
② より高い目標を設定することで、民間事業者のノウハウ等をより引き出し、成果を改善することができる
③ 当該行政課題の解決に向けた民間事業者の事業活動について一定の裁量を与えることができる
(2) 地方公共団体等は、これまでに、直営又は従来型の委託等により、行政課題の解決に向けた事業を実施している場合、期待する成果が出ていないと判断される事業について、PFS事業への切り替えを積極的に検討することが望ましい。
(3) 地方公共団体等は、民間事業者から行政課題を解決する事業の提案があった場合も、(1)及び(2)の事項を踏まえ、PFS事業として実施することが適当かどうかについて検討することが望ましい。
共通的ガイドライン抜粋
地方公共団体等が抱えている課題のうち、PFS事業の対象とする候補を抽出します。 【対象とする行政課題候補抽出の視点】 | ||
従来から取組を行っているが、解決に至っていない行政課題 | ||
PFS事業では、事業の効果を定量的に評価することから、試行的に新たな取組を行い、その取組が本当に課題解決に資する方策であるか把握することができます。 | ||
解決のために新たな取組が必要と考えられている行政課題 | ||
新規の取組の場合も同様に、 PFS事業として実施することで事業の効果を定量的に 評価することから、課題解決に資する方策であるか把握することができます。 | ||
医療・健康及び介護分野における主な行政課題として、「医療費・介護給付費の適正化」「住民の健康寿命・QOLの向上」等があります。 Point PFS事業を実施した地方公共団体職員の声 本市では従来よりこの分野に積極的に取り組んでおり、一定の成果を上げていましたが、無関心層へのアプローチは課題が残っていました。無関心層の行動変容につながる方法を把握したかったので、PFSを活用した新たな取組とその効果検証を目的とし、行政課題として選定しました。 【参考】行政課題とは PFS事業における行政課題とは、地方公共団体等の業務上の課題ではなく、事業の対象者となる住民にとっての課題を指す。「住民にとっては何が問題なのか?」という視点で考えることが有効であり、次に行う事業目標等の設定にもつながる。 |
対象とする 行政課題の候補のうち、PFS事業の対象とする行政課題を選定します。
行政課題
の選定
Point
【次頁に続く】
【対象とする行政課題の選定の視点】
PFS事業では、民間事業者がノウハウを発揮できるよう、原則として民間事業者が実施内容(仕様)を決定します。例えば法令により地方公共団体等が仕様を定める必要がある場合には、民間事業者がノウハウを発揮できる内容と組み合わせる等、民間事業者の裁量を高める工夫が必要となります。
民間事業者に対して、仕様を定めずに発注することが可能か
先行事例 <神戸市糖尿病性腎症等重症化予防事業における行政課題の選定方法>
Pick UP
●糖尿病性腎症等重症化予防を行政課題の候補として抽出した背景
• 一般的に、人工透析は、患者にとって身体的・精神的負担が大きく、QOLが著しく低下するのに加えて、高額な医療費により患者、保険者、国、地方公共団体の経済的な負担も大きいことから、人工透析への進行抑制は喫緊の行政課題であった。
• 神戸市では、受診勧奨や保健指導等の糖尿病性腎症等重症化予防策に取り組んできたが、重症化予防を効果的に行うために、保健指導の効果を「見える化」したいと考えていた。
●糖尿病性腎症等重症化予防を行政課題として選定した背景
• 事業の成果を客観的に評価できるSIBの仕組みを活用することにより、保健指導の効果を可視化することが可能であると考えられたため、糖尿病性腎症等重症化予防を行政課題として抽出した。
対象とする行政課題の選定
(続き)
Point
【対象とする行政課題の選定の視点】(続き)
候補として抽出した行政課題に対し、関連するサービスを提供する民間事業者が存在しない場合は、他分野も含めて類似するサービスを提供する民間事業者を探索します。
ノウハウを有する民間事業者が存在するか
先行事例における行政課題の一覧
先行事例では、それぞれ下表のように行政課題を選定しています。
事業名 | 行政課題 |
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | |
糖尿病性腎症の重症化予防(患者(市民)のQOLを維持・改善するため) | |
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | |
早期がん発見(がんが原因で死亡する市民を減らすため) | |
③SIBの手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 | |
早期がん発見(がんが原因で死亡する県民を減らすため) | |
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム | |
運動機能の改善と運動習慣の定着(市民の健康を改善し、要介護度進行を抑制するため) | |
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務 | |
要支援・要介護度の維持・進行抑制(市民のQOLを維持・改善するため) | |
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業 | |
がんの早期発見(がんが原因で死亡する市民を減らすため) | |
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業 | |
運動・認知機能の維持・改善、買い物弱者の救済(市民のQOL、自立度を高めるため) | |
Ⓑ服薬指導事業 | |
重複服薬の適正化(県及び市の医療費適正化のため) |
共通的ガイドライン抜粋
(1) 地方公共団体等は、PFS事業の対象とする行政課題の現状等も踏まえた上で、次の①及び②に関する事業目標を設定する。
① PFS事業の対象者層
② PFS事業実施後の対象者層の改善目標
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る事業目標等の設定手順
対象者層の設定
選定した行政課題に対し、PFS事業のターゲットとする対象者層を選びます。
対象者層は、選定した行政課題において、特に対応が必要な状況にある住民です。医療・健康及び介護分野のPFS事業においては、何らかの疾患を抱えている人や介護が必要な人の中から、「軽症者」や「重症者」といった区分により対象者層を選定するほか、健康な状態を維持することを目的として、病気に罹患していない人や要支援・要介護状態にない人を対象者にすることもあります。
Point
対象者層の条件を地方公共団体等が詳細に定めず、公募段階で民間事業者から提案を求めたり、契約締結後に民間事業者が設定したりする場合もあります。その場合、地方公共団体等は適切な条件設定がされているか確認します。
Point
対象者層の設定にあたり、事業目標の達成に偏重して、目標を達成しやすい人だけを選定する、もしくは目標を達成しにくい人を除外するといったことが生じていないか確認し、そのような設定になっている場合は、事業目的に照らして適切かどうか確認します。
Point
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
レセプトデータの分析を行い、住民の状況を把握した上で、対象者層の条件を設定しました。
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
対象者層の設定にあたり、庁内外の利害関係者との調整に難航しました。医療・健康及び介護分野は、既存の民間事業者や利害関係者も考慮して対象者層の設定を行う必要があります。
改善目標の設定
前手順で設定した対象者層について、選定した行政課題と照らし合わせ、どのような状態になれば課題が解決されたと言えるのかを考え、改善目標を設定します。
改善目標は個人単位で設定する場合もあれば、社会全体を単位として設定する場合もあります。例えば、個人単位の改善目標には、糖尿病性腎症のステージの進行の予防や、要支援・要介護度の維持等があります。社会単位の改善目標には、受診率の向上等があります。
Point
選定した行政課題を解決しようとする際、どこまでをPFS事業の目標に含めるかは地方公共団体等の判断によります。
例えば「大腸がん検診受診勧奨」をテーマとしている八王子市・広島県ほか・浦添市の事例では、「がんが原因で死亡する住民を減らすために、がんを早期に発見する」という行政課題は共通しているものの、PFS事業の改善目標は、八王子市と広島県ほか・浦添市で異なります。
八王子市は、行政課題そのものを改善目標としたのに対して、広島県ほか・浦添市は、早期がん発見と併せて政策的に受診者数の増加も目指したため、早期がんの発見につながる「受診者数の増加」等を改善目標としています。
早い段階から調整を行い、連携体制を築けばよかったと思います。
改善目標の設定
(続き)
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
行政課題を解決できた姿が事業目標になると考え、行政課題の選定から改善目標の設定までを一体で検討しました。
【大腸がん検診受診勧奨】((1)~(3)を全て満たす)
(1)八王子市国民健康保険被保険者
(2)前年度(2016年度)大腸がん検診未受診者
(3)サービス提供者が抽出した大腸がん検診受診確率及び反応確率の和が高い者
【大腸がん精密検査受診勧奨】
2017年度大腸がん検診受診者のうち、要精密検査判定者全員
先行事例 Pick UP
<八王子市大腸がん検診・精密検査受診率向上事業における事業目標等の設定方法>対象者等の設定条件
●対象者層の設定の背景
大腸がん検診受診勧奨においては、受診率の向上を目指すことから、受診勧奨による改善余地が大きい「前年度大腸がん検診の未受診者」を対象とした。
精密検査受診勧奨においては、早期がんの発見を目指すことから、要精密検査判定者全員を対象とした。
対象者層
●民間事業者のノウハウを生かした条件設定
条件(3)は、民間事業者の提案を踏まえて設定したものであり、該当者の抽出も民間事業者が行った。なお、前頁のポイント「改善しやすい人だけを選定していないか」に該当しないような条件設定とするため、市がベースとなる対象とすべき層(条件(1)及び(2)を満たす層)を定めたうえで、民間事業者がその中から受診勧奨効果が高いと考えられる層を抽出する方式としている。
八王子市は、死因の中でがんが最も多く、がん死亡者数の減少が喫緊の課題であった。加えて、がん治療に要する医療費が疾患別で2番目に高く、適正化が喫緊の課題であった。また、八王子市ではがん検診・精密検査で高い効果を上げているものの、大腸がんの精密検査受診率が国の目標に達しておらず、受診率の向上が喫緊の課題であった。
そこで、受診率の向上を通した大腸がんの早期発見を目指すこととした。
改善目標
先行事例における事業目標等の一覧
先行事例では、それぞれ下表のように事業目標等を設定しています。
事業名 | 事業目標 | |
PFS事業の対象者層 | PFS事業実施後の対象者層の改善目標 | |
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | ||
国民健康保険加入者のうち、特定健診結果より腎機能低下・糖尿病のリスクがある (糖尿病性腎症第2~3期)が、医療機関を未受診もしくは治療を中断している者 | 糖尿病性腎症のステージ進行の予防、人工透析への移行の予防 | |
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | ||
大腸がん検診受診勧奨:国民健康保険被保険者で、前年度検診未受診者及び受診確率及び反応確率の高い人 大腸がん精密検査受診勧奨:当年度要精密検査判定者全員 | 大腸がんの早期発見 | |
③SIBの手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 | ||
大腸がん検診:平成30年度大腸がん検診未受診の国民健康保険被保険者 大腸がん精密検査:平成29~30年度精密検査未受診者・未把握者・要精検者等 | 大腸がん検診受診数の増加及び精密検査受診率向上 | |
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム | ||
20歳以上の市民 | 運動機能の改善、運動習慣の定着 | |
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務 | ||
市内の全通所介護事業所・通所リハビリテーション事業所の利用者 | 要支援・要介護度の維持 | |
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業 | ||
40~74歳の国民健康保険被保険者 | 大腸がん検診受診者数の増加 | |
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業 | ||
65歳以上の市民のうち、介護予防・日常生活支援総合事業のサービス対象者と判定された人、または介護保険の要支援1・ 2の認定を受けた人 | 運動機能、認知機能の改善 | |
Ⓑ服薬指導事業 | ||
県民のうち重複服薬している人 | 重複服薬の適正化 |
共通的ガイドライン抜粋
(1) 地方公共団体等は、PFS事業の成果指標について、次の①から③の点に留意しながら、1-2(ガイドライン P11「事業目標等の設定」)において設定したPFS事業の事業目標の達成状況を定量的に示すものとして設定する。
① 事業目標との間に一定の因果関係があること
② 成果指標値の改善状況を把握するためのデータが収集でき、測定可能なものであること
③ 成果指標値の変動要因について、PFS事業以外の要因が相対的に小さいと想定されるものであること
(2) 設定したPFS事業の事業目標について、同様の事業目標によるPFS事業の実施例がある場合、地方公共団体等は、当該先行事例の成果指標を活用することが可能であるが、地域の実情や特性に留意する。
【参考】ロジックモデルとは
事業の実施に要するインプット(資金や人員、道具等)、それを用いて行う事業・取組、事業・取組の結果として生み出されるもの(=アウトプット)、それによりもたらされる変化
(=アウトカム)の関係を整理したもの。
インプット
事業・取組
アウトプット
初期アウトカム
長期アウトカム
活動に投じられた経済的・人 具体的な活動的資源(金額、人数等)
活動に基づく有形の産出物 活動に基づく効果の変化 最終的に生じた効果
(参加数、購入数等) (対象層への効果)
出所:社会的インパクト評価に関する調査研究最終報告書(内閣府)をもとに作成
達成したい成果(アウトカム)を起点として、「アウトカムを実現するために必要なアウトプットは何か?」「そのアウトプットを生み出すにはどのような活動が必要か?」「その活動を行うために必要なリソースは何か?」という順に遡って検討する。
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る成果指標の選定手順
ロジックモデルの作成
サービス内容と成果の関係を整理するために、ロジックモデルを作成します。ロジックモデルの作
【ロジックモデルに関する参考資料】
●内閣府 社会的インパクト評価の普及促進に係る調査「社会的インパクト評価実践研
修 ロジック・モデル作成の手引き」
https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/h28-social-impact-sokushin-chousa-02.pdf
●公益財団法人日本財団「ロジックモデル作成ガイド」
https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2019/01/gra_pro_soc_01.pdf
成にあたっては、以下の資料等を参照してください。
医療・健康及び介護分野においては、目指すアウトカムが実現するまでの過程や、各要素間の関係を整理するにあたり、各種調査研究や学術論文からエビデンス
(例:生活習慣を改善することで糖尿病性腎症の重症化を予防できる等)を探
索・収集することが有効です。
Point
事前に設定した事業目標は、ロジックモデルの中のアウトカムとして位置づけます。
Point
ロジックモデルは、地方公共団体等の担当者が単独で作成するのではなく、庁内関係部署と調整を行ったり、マーケットサウンディング(P55参照)により把握する民間事業者の意見を反映する等して、関係者間で合意できるものとします。
また、有識者の助言を得たり、中間支援組織を設ける場合には、その支援を受け
る等により、第三者の視点からも確認します。
Point
成果指標候補の 抽出
作成したロジックモデルの要素から、以下の5つの視点により成果指標候補を抽出します。
【成果指標候補抽出の視点】
事業目標の達成状況を把握 できる | 事業目標の達成状況を直接的・間接的に把握できる指標を抽出し ます。例えば事業目標が「要支援・要介護の維持」であれば要支援・要介護度の維持率そのもの、「運動機能の改善」であればそれを把握できるもの(基本チェックリスト等)を成果指標とすることを検討します。 |
3~5年以内に評価できる | 民間事業者への委託料の支払は成果の評価後に行うため、成果が 現れるまでに時間を要する場合、民間事業者の負担が大きくなります。このため、事業実施後3~5年以内に評価が可能な指標を抽出し ます。 |
定量的に評価できる | 成果の評価においては、PFS事業を実施した場合と実施しなかった場合の事業目標の達成状況を比較することから、定量的に評価できる指標を抽出します。 |
客観的なデータを活用して評価 できる | 対外的な説明責任を果たすために、客観的なデータ(公的なデータ等)を用いて評価を行うことができる指標を抽出します。 アンケート調査により評価する場合、公に利用されている調査票や有識者の確認を経た調査票、集計方法を活用することで、説明責任を果たすことができます。 |
歪んだインセンティブを生まない | その成果指標を設定することでどのような懸念があるか検証(民間事業者の利益が対象者の不利益につながらないか等)した上で、懸念のある成果指標は採用しない、もしくは採用する場合には懸念が顕在化しないスキームを構築する必要があります。 |
医療・健康及び介護分野のPFS事業は、倫理的観点から、当該成果指標を改善することで別の健康被害が生じる恐れがないか慎重に検討し、成果指標の候補を抽出する必要があります。
Point
成果指標の選定
成果指標候補から採用する成果指標を選定します。
先行事例では、1~4つの成果指標が選定されています。
事例の数 3 3
2
1
0
1 2 3 4 5以上
成果指標
の数
新しいサービスで実績がない、前例はあるが成果を定量的に評価したことがない等の試行的な取組の場合や、事業目標達成の難易度が高い場合等には、達成が見込めそうな他のアウトカムや、必要に応じてアウトプット要素からも成果指標を選定します。マーケットサウンディング(P55参照)において把握した民間事業者の意向を踏まえて検討します。
Point
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
過去に例のないサービス内容であり、本当に成果が得られるのか明らかではなかったため、アウトカムのみを成果指標として支払を行うことにすると、民間事業者にとってはリスクが大きすぎると考えました。
このため、アウトプットも成果指標とし、ある程度確実に支払が見込める部分も設けることで、民間事業者が負担するリスクを軽減することとしました。
先行事例 <神戸 Pick UP 成果指標 | 市糖尿病性腎症等重症化予防事業における成果指標の選定方法> ロジックモデル作成に用いた調査研究: 日本医師会・日本糖尿病対策推進会議・厚生労働省 (2016)「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」 【成果指標候補抽出の5つの視点】 ⮚ 事業目標の達成状況を把握できる ⮚ 3~5年以内に評価できる ⮚ 定量的に評価できる ⮚ 客観的なデータを活用して評価できる ⮚ 歪んだインセンティブを生まない 選定理由 |
腎機能低下抑制率 | • 本事業の事業目標である「糖尿病性腎症のステージ進行の予防、人工透析への移行の予防」の達成状況を表す指標であり、かつその他の成果指標候補抽出の5つの視点(前頁)も満たすことから選定した。 |
生活習慣 改善率 | • 事業目標の達成状況を直接的に表す指標ではないが、事業目標の達成において必 ず達成しなければならない指標であり、かつ5つの視点を満たすことから選定した。 |
プログラム修了率 | • 事業目標の達成状況を直接的に表す指標ではないが、事業目標の達成につながる指標であり、かつ5つの視点を満たす。また、民間事業者によるサービスのアウトプットに該当する指標として選定した。 |
3
成果指標の選定
先行事例における成果指標の一覧
事業名 | 事業目標 | 成果指標 | |
PFS事業の対象者層 | PFS事業実施後の対象者層の改善目標 | ||
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | |||
国民健康保険加入者のうち、特定健診結果より腎機能低 下・糖尿病のリスクがある(糖尿病性腎症第2~3期)が、医療機関を未受診もしくは治療 を中断している者 | 糖尿病性腎症のステージ進行の予防、人工透析への移行の予防 | • プログラム修了率(中間評価) • 生活習慣改善率(中間評 価) • 腎機能低下抑制率(最終評価) | |
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | |||
大腸がん検診受診勧奨:国民健康保険被保険者で、前年度検診未受診者及び受診確率及び反応確率の高い人大腸がん精密検査受診勧 奨:当年度要精密検査判定者全員 | 大腸がんの早期発見 | • 大腸がん検診受診率 • 大腸がん精密検査受診率 • 追加早期がん発見者数 |
先行事例では、それぞれ下表のように成果指標を選定しています。
※各事例のロジックモデルは、巻末に参考資料として掲載しています(P47参照)。
事業名 | 事業目標 | 成果指標 | |
PFS事業の対象者層 | PFS事業実施後の対象者層の改善目標 | ||
③SIBの手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 | |||
大腸がん検診:平成30年度大腸がん検診未受診の国民健康保険被保険者 大腸がん精密検査:平成29 ~30年度精密検査未受診者・未把握者・要精検者等 | 大腸がん検診受診数の増加及び精密検査 受診率向上 | • 大腸がん検診受診者数 • 大腸がん精密検査受診率 | |
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム | |||
20歳以上の市民 | 運動機能の改善、運動習慣の定着 | • 運動習慣の改善度 • 基本チェックリスト改善度 | |
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務 | |||
市内の全通所介護事業所・ 通所リハビリテーション事業所の利用者 | 要支援・要介護度の維持 | (令和元~3年度成果指標:サービス提供者が提案した成果指標) • 研修会参加事業所数及び訪 問説明実施事業所数 • 個別介入を実施した事業所数 • セルフケア定着支援ツールを活用する要支援・要介護認定者・事業対象者数 • 市民公開講座の実施 • 基本チェックリストによるリスク数の維持改善率(令和3年度追加) • 体力測定結果(令和3年度追加) (令和4年度成果指標) • 大牟田市内にある全通所介護・通所リハビリテーション事業所における利用者の要支援・要介護度の改善維持率 | |
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業 | |||
40~74歳の国民健康保険被保険者 | 大腸がん検診受診率向上 | 大腸がん検診受診者数 | |
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業 | |||
65歳以上の市民のうち、介護予防・日常生活支援総合事業のサービス対象者と判定された人、または介護保険の要支援1・2の認定を受けた人 | 運動機能、認知機能の改善 | 出席率 基本チェックリスト点数 | |
Ⓑ服薬指導事業 | |||
県民のうち重複服薬している人 | 重複服薬の適正化 | 削減薬剤数 |
共通的ガイドライン抜粋
(1) 地方公共団体等は、支払額が最大となる場合の成果指標値(以下「上限値」という。)及び支払額が最小となる場合の成果指標値(以下「下限値」という。)について、以下を考慮の上、2-4(ガイドラインP16「PFS事業効果の算出、評価」)及び2-5(ガイドラインP19「支払上限額の決定」)との関係を含めて、事業全体を総合的に勘案し、設定する。
① 上限値:政策的に達成が必要な成果指標の目標値
② 下限値:成果指標の現状値、既存事業による実績値
(2) その際、地方公共団体等は、マーケットサウンディングを活用すること等により、民間事業者が想定する事業活動の実施方法における実績値を参考にする等、上限値の達成可能性の難易度に留意する。
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る上限値等の設定手順
上限値等の設定
上限値等の設定には、以下のような方法があります。
先行事例では、「上限値」「下限値」の両方を設けているもの、「上限値」のみを設けているものがあります。地方公共団体等として必ず達成することを求める目標水準がある場合には、下限値を設けます。
また、「目標値」を設けている事例もありますが、これは上限値と同義です。
【上限値等の設定方法】
• 既存事業の実績値を参照します。 |
• マーケットサウンディング(P55参照)により、PFS事業として実施した場合に期待される水 準を把握します。 |
• PFS事業効果と事業費を比較し、PFS事業効果が得られる水準から決定します。 |
既存事業の実績値を参照する場合は、過去の実績値の傾向を中長期にわたって把握します。例えば毎年変動が大きい場合は、統計学的に採用可能な値(中央値等)をとる方法等が考えられます。ただし、妥当な上限値等が得られない場合には、過去に類似事業を実施した地方公共団体等における実績を参照するか、他の設定方法を検討する必要があります。
Point
求める上限値が高すぎて達成が困難な場合には、事業に参画する民間事業者を見つけられないことが懸念されます。先行事例ではマーケットサウンディングを行い、上限値等の設定に反映しています。
Point
上限値を達成するために、対象者に過度な負担を強いるサービス提供が行われないか等の配慮が必要です。
Point
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
上限値・下限値は、庁内で検討した案を前提としつつ、サービス提供者候補や資金提供者候補に複数回マーケットサウンディングを行って設定しました。 PFS事業では対価の支払が成果指標の改善状況により変動するため、あまりにも達成困難な値の場合、事業に参加するサービス提供者・資金提供者が見つからない可能性があります。本市として実現したい成果を踏まえつつ、成果連動のリスクを負う民間事業者の意見とバランスを取るようにしました。
4 成果指標の上限値等の設定
先行事例 Pick UP
<八王子市大腸がん検診・精密検査受診率向上事業における上限値等の設定方法>
成果指標 | 基準値(過去実績) | 下限値 | 上限値 |
(1)大腸がん検診受診率 | 9% | 15% | 19% |
(2)大腸がん精密検査受診率 | 77% | 79% | 87% |
(3)追加早期がん発見者数 | 100人 | +1人 | +11人 |
• (1)(2)の上限値は、過去の実績を基準値とし、基準値「+10%」とした (本事業のサービス内容は従来の受診勧奨と比較して「+10%」程度の受診率改善が見込まれること、サービス提供者が参画意欲を喪失しない現実的な水準であることから決定)。
• (1)(2)の下限値は、財政メリットが得られる(医療費適正化額が事業費を上回る)水準とした。
• (3)は、過去の実績を基準値とし、 「+1人」を下限値、「+11人」を上限値とした。
先行事例における上限値等の一覧
先行事例では、それぞれ下表のように成果指標の上限値等を設定しています。
事業名 | 成果指標 | 上限値等 | 考え方 | ||
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | |||||
ⅰ ⅱ ⅲ | プログラム修了率 生活習慣改善率 腎機能低下抑制率 | ⅰ ⅱ ⅲ | 目標値80%目標値75%目標値80% | ⅲ:既存事業の実績を上回り、PFS事業効果(行財政効果)が得られる水準として設定。 | |
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | |||||
ⅰ ⅱ ⅲ | 大腸がん検診受診率 大腸がん精密検査受診率 早期がん追加発見者数 | ⅰ ⅱ ⅲ | 下限15%、上限 19% 下限79%、上限 87% 下限1人、上限 11人 | ⅰ ⅱ:PFS事業効果(行財政効 果)が得られる水準を下限値、サービス内容から期待される水準かつ民間事業者が参画意欲を喪失しない現実的な 値として上限値とした。 ⅲ:過去の実績値を基準にして下限値を設定し、期待されるPFS事業効果 (行財政効果)が得られる水準を上限値とした。 | |
③SIBの手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 | |||||
ⅰ ⅱ | 大腸がん検診受診者数精密検査受診率 | ⅰ下限1,350人、上限 3,375人 ⅱ 下限3%、上限19% | ⅰ ⅱ:PFS事業効果(医療費適正化効果)を得られる水準を下限値、期待される水準を上限値とした。 | ||
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム | |||||
ⅰ ⅱ | 基本チェックリスト改善率運動習慣改善率 | ⅰ ⅱ | 目標値70%目標値60% | ⅰ ⅱ:政策的な目標値として設定。 | |
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務 | |||||
ⅰ~ⅲ 令和元~令和3年 度成果指標(サービス提供者が提案した成果指標(P12参照)) ⅳ 要支援・要介護度の改善維持率(令和4年度成果指標) | ⅳ | 下限10%、上限 20% | ⅳ:PFS事業効果(行財政効果)が得られる水準を下限値、サービス内容から期待される水準かつ民間事業者が参画意欲を喪失しない現実的な値として上限値とした。 |
事業名 | 成果指標 | 上限値等 | 考え方 | ||
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業 | |||||
ⅰ | 大腸がん検診受診者増 加数 | ⅰ | 下限なし、上限500 人 | ⅰ:1人あたり支払額を決定し、支払 上限額より上限値を決定した。 | |
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業 | |||||
ⅰ ⅱ | ショッピングリハビリ出席率基本チェックリスト悪化者数 | ⅰ ⅱ | 下限なし、上限なし下限なし、上限なし | ⅰ:出席率(0~100%)に応じて支払額を算出する。 ⅱ:悪化者数に応じて減額を行う。 | |
Ⓑ服薬指導事業 | |||||
ⅰ | 削減薬剤数 | ⅰ | 下限28剤、上限65剤 | ⅰ:PFS事業効果(行財政効果)が得られる水準を下限値とした。また、1剤あたりの支払額を決定し、支払上限額より上限値を設定した。 |
共通的ガイドライン抜粋
サービス提供期間 | マーケットサウンディング(P55参照)によりサービス提供に要する期間を把握します。 |
評価期間 | 「3 成果指標の選定」において、成果指標候補抽出の視点として『3~5年以内に評価できる』(P10参照)と示しているとおり、サービス提供の結果としての成果が現れる時期をもとに設定します。 |
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る契約期間の設定手順
契約期間 契約期間は「サービス提供期間」と「評価期間」からなります。
の設定
Point
Point
先行事例における契約期間の一覧
契約期間が複数年となる場合は、それに応じて債務負担行為を設定します。
既存の統計情報や地方公共団体等が保有するデータを評価に用いる場合は、データのとりまとめ周期・公表時期も考慮します。(例:がん検診受診率のデータは年度毎にとりまとめを行うため、サービス提供期間は年度末を区切りとする等)
(1) 地方公共団体等は、民間事業者の創意工夫を引き出し、成果指標値を改善するため、民間事業者の事業実施期間を複数年とすることが望ましい。
(2) 地方公共団体等は、成果指標値の改善状況の測定等及び成果評価を実施する時期(以下、「評価時期」という。)について、成果指標ごとに、次の①及び②を考慮して設定する。この際、必要な場合は民間事業者の事業活動の実施終了から一定期間経過後に評価時期を設定する。
① 民間事業者の事業活動の影響が現れる時期
② 成果指標値の改善状況の測定等及び成果評価が可能な時期
(3) 地方公共団体等は、評価時期を含む契約期間が複数年となる場合、2-6(ガイドラインP20「支払条件の設定」)で設定する支払条件を踏まえ、年度ごとの支出上限額を定めた債務負担行為を設定する。
先行事例では、それぞれ下表のように契約期間を設定しています。
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | ||||
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | |
契約期間 | ||||
サービス提供 | 7月 | |||
評価データとりまとめ | 3~ プログラム修了率・ | 4月 生活習慣改善度 | 2月 特定健診データ | |
評価 | プログラム修 | 7月 了率・生活習慣改善率 | 3月 腎機能低下抑制率 | |
支払 | 3月 固定支払 | 7月 成果連動支払(プログラム | 3月 修了 成果連動支 | 払 |
率、生活習慣改善率)
• サービス提供(保健指導の実施)は、2017年7月から2018年3月にかけて行う。
(腎機能低下抑制率)
• 評価のうち、「プログラム修了率」「生活習慣改善度」はサービス提供の終了を受けて2018年7月に、「腎機能低下抑制率」は2019年度の神戸市国民健康保険特定健診データの提供を2020年2月に受けて、同年3月に行う。
• 支払は、固定支払(保健指導の完了に伴う)を2018年3月に、 「プログラム修了率」「生活習慣改善度」による成果連動支払を2018年7月に、「腎機能低下抑制率」による成果連動支払を2020年3月にそれぞれ行う。
• 以上より、契約期間はサービス提供期間及び評価期間をあわせた、2017年7月から2020年3月までの約3
年間とした。債務負担行為の設定あり。
【次頁に続く】
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業
2017年度 2018年度 2019年度
契約期間
サービス提供
(※)
5月 8月
大腸がん検診受診勧奨業務 8月
大腸がん精密検査受診勧奨業務 8月
※分析・評価までを含む業務実施時期として規定されている。実際の受診勧奨は、大腸がん検診については 2017年度中に、大腸がん精密検査については2017年度及び2018年度中に実施。
評価データとりまとめ
評価
6月末~7月
「地域保健・健康増進事業報告」
8月
大腸がん検診受診率
6月末~7月
「地域保健・健康増進事業報告」
8月
精密検査受診率・追加早期がん発見者数
支払 9月 9月
成果連動支払(大腸がん検診受診率)
成果連動支払(精密検査受診率、追記早期がん発見者数)
• サービス提供のうち、大腸がん検診受診勧奨業務は2017年5月から2018年8月にかけて、大腸がん精密検査受診勧奨業務は同年月から2019年8月にかけて行う。
• 評価のうち、「大腸がん検診受診率」は、2017年度の大腸がん検診の受診有無を把握し、2018年8月に行う。
「大腸がん精密検査受診率」は、2017年度に要精密検査となった対象者の2018年度の精密検査受診の有無を把握し、2019年8月に行う。評価に使用する「地域保健・健康増進事業報告」は毎年6月末までに厚生労働省に報告する規定となっていることから、それを踏まえて8月に評価時期を設定した。
• 支払は、「がん検診受診率」による成果連動支払を2018年9月に、「精密検査受診率・追加早期がん発見者数」による成果連動支払を2019年9月にそれぞれ行う。
• 以上より、契約期間は、サービス提供期間と評価期間を合わせた、2017年5月から2019年8月までの約2年間とした。債務負担行為の設定あり。
③SIBを用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務
2018年度
2019年度
2020年度
契約期間
サービス提供
10月
大腸がん検診受診勧奨
12月
12月
評価データとりまとめ
評価支払
12月
精密検査受診勧奨
9月
大腸がん検診受診者数
6月末~7月
健康増進事業報告」 「地域保
3月 固定支払
6月末~7月
健・健康増進事業報告」
「地域保健・
9月
精密検査受診率
1月
成果連動支払(がん検診受診者数、精密検査受診率)
• サービス提供のうち、大腸がん検診受診勧奨業務は2018年10月から2019年3月にかけて、精密検査受診勧奨業務は2018年12月から2019年3月及び2019年12月に行う。
• 評価のうち、「大腸がん検診受診者数」は、2018年度の大腸がん検診の受診有無を把握し、2019年9月に行う。「精密検査受診率」は、2019年度の精密検査受診の有無を把握し、2020年9月に行う。評価に使用する
「地域保健・健康増進事業報告」は毎年6月末までに厚生労働省に報告する規定となっていることから、それを踏まえて9月に評価時期を設定した。
• 支払は、固定支払を2019年3月に、成果連動支払を2021年1月にそれぞれ行う。
• 以上より、契約期間は、サービス提供期間と評価期間を踏まえて、2018年10月から2020年12月までの2年
3ヶ月間とした。債務負担行為の設定あり。
【次頁に続く】
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
契約期間 | |||||
サービス提供 | |||||
評価データとりまとめ | 9、12、3月 (毎年度6月、9月、12月、3月) 6、9、12月
| ||||
評価 | 9、12、3月 (毎年度6月、9月、12月、3月) 6、9、12月
各評価時期において運動習慣の改善度、基本チェックリスト改善度を評価 | ||||
支払 | 4月 4月 4月 4月 1月
|
固定支払
成果連動支払(運動習慣の改善度、基本チェックリスト改善度)
同左 同左 同左 同左
• サービス提供は、2019年4月から7月に準備を行い、2019年7月から2023年11月にかけて行う(四半期を1クールとして、全18クール)。
• 評価(運動習慣の改善度、基本チェックリスト改善度)は、クールごとに、プログラム前及びプログラム終了3週間後にアンケートを行い、そのデータを用いて行う。
• 支払は、2020年4月、2021年4月、2022年4月、2023年4月、2024年1月に前年度の評価結果に対して行う(ただし2024年1月の支払は、同年度の評価結果に対して行う)。各期の支払は、固定支払、成果連動支払(運動習慣の改善度、基本チェックリスト改善度に応じた支払)から成る。
• 2024年2月~3月は、事業全体の成果のとりまとめや評価、課題検討等を行う。
• 以上より、契約期間は、サービス提供期間(準備含む)、評価期間及びとりまとめ等期間を合わせた、2019年
4月から2024年3月までの5年間とした。債務負担行為の設定あり。
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
契約期間 | 8月 | |||
サービス提供 | 7月 | |||
評価データとりまとめ | 3月 3月 3月 3月
業務実施報告書 業務実施報告書 業務実施報告書 介護レセプト | |||
評価 | 3月 3月 3月 3月
令和元年度 令和2年度 令和3年度 要支援・要介護度の成果指標 成果指標 成果指標 改善維持率 | |||
支払 | 3月 3月 3月 3月
|
成果連動支払
(令和元年度成
果指標)
成果連動支払
(令和2年度成
果指標)
成果連動支払
(令和3年度成
果指標)
成果連動支払
(要支援・要介護
度の改善維持率)
• サービス提供は、2019年8月から2022年7月にかけて行う。
• 評価は、各年度3月に評価に必要なデータをとりまとめて行う。
• 支払は、成果連動支払が、各年度に行われる評価を受けて同月に行う。
• 以上より、契約期間は、サービス提供期間と評価期間を合わせた、2019年8月から2023年3月までの約4
年間とした。債務負担行為の設定あり。
【次頁に続く】
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業
2019年度
契約期間 サービス提供
評価データとりまとめ
評価
8月
支払
1月
1月
レセプトデータ
2月
大腸がん検診受診者数
固定支払 3月
• サービス提供は、2019年8月から2020年1月にかけてサービス行う。 成果連動支払(大腸
• 評価は、サービス提供終了後、2020年2月に行う。支払は、2020年3月に行う。 がん検診受診者数)
• 以上より、契約期間は、サービス提供期間と評価期間に支払期間を加えた、2019年8月から2020年3月までの8か月(単年度)である。
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業 | ||
• • • | 2019年度 | |
契約期間 | 6月 | |
サービス提供 | 2月 | |
評価データとりまとめ | 2月 | |
評価 | 2月 出席率、基本チェックリスト点数 | |
支払 | 固定支払 3月 | |
成果連動支払(出席率 サービス提供は、2019年6月から2020年2月にかけて行う。 基本チェックリスト点数)評価は、サービス提供終了後、2020年2月にデータをとりまとめ、行う。支払は、2020年3月に行う。 以上より、契約期間は、サービス提供期間と評価期間に支払期間を加えた、2019年6月から2020年3月までの10か月(単年度)である。 | ||
Ⓑ服薬指導事業 | ||
2018年度 | ||
契約期間 | 8月 | |
サービス提供 | 1月 | |
評価データとりまとめ | 2月 | |
評価 | 3月 削減薬剤数 | |
支払 | 固定支払 3月 成果連動支払 | |
、
• サービス提供は、2018年8月から2019年1月にかけて行う。
(削減薬剤数)
• 評価は、サービス提供終了後、2019年2月にデータをとりまとめ、3月に行う。支払は、2019年3月に行う。
• 以上より、契約期間は、サービス提供期間と評価期間に支払期間を加えた、2018年8月から2019
年3月までの8か月(単年度)である。
共通的ガイドライン抜粋
(1) 地方公共団体等は、PFS事業による効果について、次の項目に関し、可能な限り定量的に算出、評価する。
① 社会的便益の創出効果
② 成果改善効率の向上効果(既存の同種の事業がある場合)
(2) 地方公共団体等は、社会的便益について、次の項目に関し、可能な限り定量的に算出する。
① 社会的コストの削減額
② 地方公共団体等に生じる行財政効果額
医療・健康及び介護分野の先行事例から見るPFS事業効果の算出、評価手順
成果指標の改善によって見込まれるPFS事業効果の把握
事業目標の達成状況を把握できる成果指標(アウトプットによる成果指標は該当しない)が改善された場合に見込まれるPFS事業効果を把握します。
【参考】PFS事業効果とは
医療・健康及び介護分野におけるPFS事業効果のうち、社会的便益は、医療費や介護給付費適正化効果のほか、健康による幅広い価値が考えられる。なお、社会的便益は
「社会的コストの削減額」と「地方公共団体等に生じる行財政効果額」からなる(共通的ガイドラインP16参照)。
「地方公共団体等に生じる行財政効果額」は、事業目標の達成状況を把握できる成果指標(アウトプットの成果指標は該当しない)が改善された場合に見込まれる地方公共団体の歳出削減、歳入増加が考えられる。
【社会的便益のイメージ】
金額 社会的便益
【社会的コストの削減額】+【地方公
共団体等に生じる行財政効果額】
社会的コストの削減額
地方公共団体等に生じる行財政効果額
成果指標の改善状況
【例1】成果指標「腎機能低下抑制率」の改善により見込まれるPFS事業効果
行財政効果 | 医療費の適正化 | 腎機能が低下して人工透析に移行すると人工透析の治療費が発生するのに対して、これを抑制することで人工透析への移行が阻止されて現状の治療費が維持され、医療費が適正化される。 |
所得税収の維持 | 腎機能が低下して人工透析に移行することで就労の継続が困難となり、所得が減少するのに対して、これを抑制することで所得が維持され、所得税収も維持される。 | |
削コ社減ス会額ト的の | 企業の収益損失の回避 | 腎機能が低下して人工透析に移行することで就労の継続が困難となり、就労していれば得られたであろう雇用主の収益が失われるのに対して、腎機能低下を抑制することで損失が回避される。 |
【次頁に続く】
行財政効果 | 介護給付費の適正化 | 要支援・要介護度の進行によって介護給付費が増加するのに対して、進行を抑制することで、現状の介護給付費が維持される。 |
家族の負担軽減による所得税収の維持 | 要支援・要介護度の進行によって家族の介護負担が増大し介護離職が発生するのに対して、進行を抑制することで家族の負担増を防ぎ、介護離職を阻止することで、家族の所得が維持され、所得税収も維持される。 | |
社会的コストの削減額 | 行政、家族、地域等によ る見守り費 用の軽減 | 要支援・要介護度の進行によって行政、家族、地域等の複数の主体による見守りの負担が増大するのに対して、進行を抑制することで、負担増が回避される。 |
成果指標の改善によって見込まれるPFS事業効果の把握
(続き)
【例2】要支援・要介護度の進行を抑制をすることで見込まれるPFS事業効果
Point
作成したロジックモデルをもとに、ロジックモデルのアウトカムの要素が実現した場合に見込まれるPFS事業効果を検討します。
【参考】地方公共団体等に生じる行財政効果額の定量化の例
先行事例では、地方公共団体等に生じる行財政効果として、医療・介護給付費の適正化が定量化されています。
=
-
前手順で把握したPFS事業効果を定量化します。
なお、先行事例では、定量的に算出可能なPFS事業効果として、地方公共団体等に生じる行財政効果を算出しています。
Point
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
関連学会が発表している重症化予防に関するガイドラインにおいて、病気のステージごとに一般的な医療費が示されているため、この差額を、病期進行を抑制した場合の医療費適正化額としました。
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
一人あたり医療費適正化効果額の単価は、既存データを用いてサービス提
供者が算定しました。
このため、事業終了後に学術機関に依頼して、実際の結果を踏まえた医療費適正化効果額を改めて算定しました。
行財政効果を定量化するとそれに関心が集まるため、客観的な根拠のある数値とする必要があります。各種調査研究や学術論文により、サービス内容と効果の関係を整理するほか、効果額の算定に用いるデータを収集します。
PFS事業を実施する場合に発生する、事業期間終了時点の医療費・介護給付費
PFS事業を実施しない場合に発生する、事業期間終了時点の医療費・介護給付費
医療費・介護給付費適正化額
PFS事業効果の定量化
PFS事業効果の定量化
(続き)
行財政効果の中には定量化が難しいものもあります。例えば重症化予防の結果として就労継続による所得税収の維持を考える場合、対象者の所得額について客観性のある数値を設定することが困難であると予想されます。
そのような場合は、有識者や中間支援組織の支援を受けて定量化の方法を検討することが考えられます。検討が難しい、もしくは検討した結果として定量化が難しいと判断した場合は、定性的な効果として整理します。
Point
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
行財政効果として、「介護給付 の適正化」、「医療の適正化」、「インフォーマルケアコストの削減」、「介護離職阻止による所得税収維持」の4項目を把握しました。
「インフォーマルケアコストの削減」「介護離職阻止による所得税収維持」については、学術論文や各種調査報告書等を調べましたが参照できるものが見つからず、要支援・要介護度が仮に改善した場合の削減額や所得税維持額を算定することができませんでした。
このため、定量化を行ったのは「介護給付 の適正化」及び「医療 の適正化」の2項目のみで、その他2項目は定性的な行財政効果として整理しました。
先行事例 Pick UP
<浦添市大腸がん検診受診勧奨PFS事業における行財政効果の算出・評価方法>
【浦添市大腸がん検診受診勧奨PFS事業のロジックモデル】
【行財政効果の把握】
ロジックモデルをベースにして、行財政効果として「医療 の適正化」を把握した。
【行財政効果の定量化】
浦添市のレセプトデータによると、大腸がん早期発見による医療 適正化効果は、患者1人あたり3,080千円。また、大腸がん検診受診者のうち大腸がんが発見される人は約300人に1人。
以上より、大腸がん検診受診者1人あたりの医療 適正化効果は約10千円/人(3,080千円÷約 300人=約10千円/人)。
対象者数を500人とした場合の医療 適正化効果は、5,000千円(1人あたり医療 適正化効果10千円×500人=5,000千円)。
先行事例におけるPFS事業効果の一覧
先行事例では、それぞれ下表のように行財政効果額を算出・評価しています。
事業名 | 行財政効果 (◎:定量化した効果) | 行財政効果額 |
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | ||
• 糖尿病性腎症の重症化を予防 することによる医療の適正化 (◎) • 人工透析に移行することによる逸失所得の削減 | 医療 適正化効果:約120,000千円 • 糖尿病性腎症の病期別の年間医療(ステージⅢ 約430千円/年、ステージⅣ約710千円/年、ステージ Ⅴ約5,500千円/年)をもとに移行しなかった場合の医療 を算定。それに、対象者数に移行抑制率(非公表)を乗じた移行抑制者数と、神戸市実効給付率を乗じて算定。 | |
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | ||
• 大腸がんの早期発見による医療の適正化(◎) | 医療適正化効果:約17,000千円 • (早期がん以外のがん患者の医療2,520千円ー早期がん患者の医療650千円)×実効給付率約 82%×11人 • 医療はレセプトデータより把握。 | |
③SIBの手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 | ||
• 大腸がんの早期発見による医療 の適正化(◎) | 医療適正化効果:総額は非公表 • 早期がん発見による1人あたりの医療適正化効果約1,870千円×県及び市の医療財源負担率 56.8%×想定早期がん発見者数 | |
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム | ||
• 運動習慣の改善による医療の適正化(◎) • 運動機能の改善による介護給付 の適正化(◎) • 休業・離職による逸失所得の抑制 | 医療 ・介護給付適正化効果:4,485千円 • 運動習慣のない人(720人想定)のうち6割の運動機能が改善することにより、医療 適正化額185千円。 • 基本チェックリストの該当項目が5問中3問以上の人 (213人想定)のうち7割において、該当項目が5問中2問以下に改善することにより、介護給付 適正化額4,300千円。 | |
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務 | ||
• 要支援・要介護度の進行を抑制することによる介護給付の適正化(◎) | 介護給付適正化効果:約41,000千円 • 要支援・要介護度の進行を20%抑制した場合の要支援1~要介護4の人数×平均介護給付額。 • 人数は介護レセプトデータより把握。 | |
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業 | ||
• 大腸がんの早期発見による医療 の適正化(◎) | 医療適正化効果:5,000千円 • 1人あたり医療適正化効果10千円×500人 |
事業名 | 行財政効果 (◎:定量化した効果) | 行財政効果額 |
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業 | ||
• 介護予防による将来の医療・介護給付の適正化(◎) • 地域の活性化 | 医療・介護給付等適正化効果:非公表 | |
Ⓑ服薬指導事業 | ||
• 重複薬剤の削減による医療の適正化(◎) | 医療適正化効果:136千円/1剤 • 民間事業者の先行事例により、1年分の削減額は 45千円。3年間効果を持続させると仮定し45千円/年×3年分 |
※実行給付率:医療 に対する医療給付 の割合を指す。医療給付とは、医療から患者の自己負担額を除いたものを指す。
※医療財源負担率:医療給付のうち都道府県及び市町村が負担する割合を指す。
共通的ガイドライン抜粋
(1) 地方公共団体等は、全ての成果指標が上限値まで改善した場合の支払額(以下「支払上限額」という。)を、 2-4(ガイドラインP16「PFS事業効果の算出、評価」)で算出される社会的便益を下回るよう決定する。
(2) 地方公共団体等は、従来型の委託事業をPFS事業に切り替える場合又はPFS事業終了後に再度PFS事業として実施する場合、支払上限額を、既存事業において成果指標を単位あたり改善するのに必要な 用を下回るよう決定する。
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る支払上限額の決定手順
サービス提 マーケットサウンディング(P55参照)を行い、サービス提供者候補となる民間事業者から、
供に要する サービス提供に要する 用を聞き取り、必要に応じて見積りを取得します。
費用の把握
Point
支払上限額がサービス提供に要する 用を下回ると、民間事業者は事業への参画が困難になることから、サービス提供に要する 用を上回るように支払上限額を設定する必要があります。
リターン 民間事業者がより高い成果を創出するための動機づけとして、成果指標の改善状況が高い (上乗せ) 場合に、支払額が民間事業者のサービス提供に要する 用を上回るよう、民間事業者が負の設定 う成果連動リスクに見合ったリターン(上乗せ)を設定します。
当該リターンは、成果指標の改善が難しい取組や、実績のない試行的な取組ほど高くなる傾向があります。
Point
先行事例では、サービス提供に要する 用の10~30%がリターンとしてサービス提
供に要する 用に上乗せされています。
支払上限額の決定
前手順までの合計額を、「6 PFS事業効果の算出、評価」において算出した定量的なPFS
事業効果と比較した上で、支払上限額とします。
「PFS事業効果>支払上限額」となるよう、対象者数の見直し等によりPFS事業効果を高める、あるいは、サービス提供に要する 用・リターンの見直しを行う等、事業条件を見直します。
Point
支払上限額が、PFS事業効果のうち行財政効果額を上回っている場合は、その 是非について検討します。PFS事業効果全てを金額換算できるわけではないため、先行事例においては、必ずしも「行財政効果額>支払上限額」となっている訳ではなく、定量化できない効果も重視して、支払上限額の妥当性を地方公共団体等が判断します。
Point
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
支払上限額の設定にあたり、所管課は、事業実施に必要な 用を賄えなければサービスの質が下がることを懸念し、民間事業者の見積りを重視しましたが、財政課は定量的な行財政効果を重視しました。
当初は見積額が行財政効果額を上回ったため、民間事業者に再度マー
ケットサウンディング(P55参照)を行い、これに合わせて条件設定を見直して行財政効果額を再算定しました。時間を要しましたが、支払上限額を設定でき、予算も確保できました。
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
行財政効果額がサービス提供に要する 用を下回ることは明白であったため、その点は考慮しませんでした。行財政効果はPFS事業効果の一部であり、それ以外の効果を含めると幅広いPFS事業効果が見込まれることから、庁内ではこうした幅広い効果を説明し、理解を得ました。
先行事例 <大牟田市要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務における支払上限額の決定方法>
Pick UP
(1)サービス提供に要する 用は、サービス提供者候補から見積りを取得して把握した。
(2)リターンは、主に以下の2点を勘案し、サービス提供に要する 用の約22%とした。
⮚ 民間資金を活用した場合に資金提供者に支払う利息や配当利回り(資金提供者へのマーケットサウンディング(P55参照)を踏まえて設定)
⮚ 先行事例のリターンが、サービス提供に要する 用の10~30%であること
(3)サービス提供に要する 用及びリターンの合計が、行財政効果額(介護給付 適正化額)を下回ることを確認し、支払上限額とした。
先行事例における支払上限額の一覧
先行事例では、それぞれ下表のように支払上限額を設定しています。
事業名 | 支払上限額 | 考え方 |
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | ||
34,063千円 | サービス提供に要する用(26,202千円)+リターン(7,862千円。サービス提供に要する用の30%) | |
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | ||
9,762千円 | サービス提供に要する用(8,874千円)+リターン(888千円。サービス提供に要する用の10%) | |
③SIBの手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 | ||
22,294千円 | 資材作成・郵送等の実相当額(3,880千円)+人件等 (18,414千円) | |
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム | ||
38,400千円 | サービス提供に要する用(35,400千円)+リターン(3,000千円。サービス提供に要する用の約8%) | |
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務 | ||
13,644千円 | サービス提供に要する用(11,133千円)+リターン(2,511千円。サービス提供に要する用の約22%) | |
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業 | ||
9,500千円 | 厚生労働省モデル事業にてあらかじめ支払上限額が設定されている | |
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業 | ||
9,500千円 | 厚生労働省モデル事業にてあらかじめ支払上限額が設定されている | |
Ⓑ服薬指導事業 | ||
8,794千円 | 厚生労働省モデル事業にてあらかじめ支払上限額が設定されており、その範囲内で、1人あたり医療適正化額と対象者数をもとに設定 |
共通的ガイドライン抜粋
(1) 地方公共団体等は、PFS事業における委託 等の支払時期及び支払額について、民間事業者が負担することができる成果連動リスクや、地方公共団体等の財政的な制約等を考慮し、以下のいずれかで設定する。
① 契約終了時に成果指標値の改善状況に応じた委託等を一括で支払う
② 事業期間中に確認できる成果指標(以下「中間成果指標」という。)の改善状況に応じて、段階的に支払う
(2) 地方公共団体等は、中間成果指標を設定する場合は、以下とする。
① 2-1(ガイドラインP12「成果指標の選定」)で設定した成果指標のうち事業期間中に確認できるもの
② 2-1 (ガイドラインP12「成果指標の選定」)で設定した成果指標と論理的につながる定量的指標であって、事業期間中に確認できるもの
(3) 以下に該当する場合、地方公共団体等は、委託等のうち、成果に関わらず支払う部分(以下「固定支払額」という。)を設けるものとする。
① 成果指標値の改善状況とは別に、契約上、民間事業者に仕様を定めた業務の実施や成果物を求め
る場合
② 事業の規模、内容、特性等を勘案し、成果指標値の改善リスクの全部を民間事業者に負担させるのが適当でないと判断される場合
(4) 成果指標の上限値、委託 等の支払時期及び支払額等によって、民間事業者の負う成果連動リスクが決まることから、地方公共団体等は、マーケットサウンディングを実施し、必要に応じて、民間事業者が参画しやすい条件となるよう見直しを行う。
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る支払条件の設定手順
固定支払の有無の決定
事業の内容に応じて、固定支払を設けるかどうか、設ける場合にはその割合を検討します。
民間事業者がサービス提供に要する 用のうち、必要な資機材の購入や会場借上げ 用などの実 支出が大きい事業においては、事業 の全額を成果連動支払とすると、民間事業者は成果指標の改善状況が小さい場合に赤字となるリスクが大きくなります。このような場合、固定支払を行うことにより、民間事業者の負担を軽減することが考えられます。
Point
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
「成果指標の改善状況に応じて対価を支払う」という点を重視してPFSを導入したため、固定支払は行いませんでした。
ただし、実績のないサービスの提供を想定していたため、民間事業者の負担を軽減するために、事業目標に対応したアウトカムによる成果指標の支払額は小さくし、アウトプット指標や初期アウトカム指標の支払額を大きくしました。
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
サービス提供者の初期投資が大きかったため、固定支払を設けました。本事業に要する 用については、事業実施主体である本市も一定の負担をするべきと考えたためです。
成果連動型対価は、民間事業者のモチベーション確保の目的で導入しました。
成果指標と支払額の関係の整理
成果指標が複数ある場合、支払上限額から固定支払額を除いた成果連動支払額をそれぞ
れの成果指標に配分します。
各成果指標の上限値及び下限値を起点として(下限値を設定しない場合は上限値のみ)、この間の値ごとの支払額を設定します。
Point
【次頁に続く】
地方公共団体等として説明責任が果たせるかという視点だけでなく、マーケットサウンディング(P55参照)も踏まえて、民間事業者(サービス提供者・資金提供 者)が参画できる条件であるかという点からも検討します。
成果指標と支払額の関係の整理
(続き)
【参考】民間事業者のサービス提供に要する 用構造
民間事業者のサービス提供に要する 用は、固定 と変動 から成る。固定 と変動 の割合は主にサービス内容によって異なり、地方公共団体等が設定する対象者、支払条件等に応じて2つの類型がある。
類型1:サービス提供に要する 用が、成果指標の改善状況に応じて変動する
• 民間事業者は、より高い成果指標の改善状況を目指すほど、
変動 が増加
• 変動 の割合が大きい場合は、損益分岐点が類型2より低い
該当する事業条件の例:成果連動支払の支払条件が対象者1人あたり額の場合や、地方公共団体等が対象者数を事前に定めておらず、民間事業者の裁量により対象者数が決まる場合
類型2:サービス提供に要する 用が、成果指標の改善状況に関わらず一定
• サービス提供する対象者数等が事前に定まっているため、民間事業者は成果指標の改善状況がどのような状態であっても一定の 用が発生する
該当する事業条件の例:地方公共団体等が対象者数を事前に定めており、その対象者数へのサービス提供を前提として支払条件が設定されている場合
サービス提供に要する 用の構造(変動 と固定 の割合)にもよりますが、一般的には、類型2のほうが損益分岐点が高く、民間事業者の負担が大きいと言えます。
地方公共団体等はマーケットサウンディング(P55参照)を通して民間事業者の用構造を把握することで、民間事業者のリスクを踏まえた事業条件を設定する
ことができます。
Point
成果指標と支払額の関係の整理
(続き)
固定支払額
【参考】先行事例から見る支払条件の工夫
行財政効果額>行政の支払額
角度d
a
角度e c b
行政の支払額の条件緩和(角度d>角度e)
行財政効果額を上回る行政の支払額
●行政が行財政効果を享受する工夫(グラフ中のa)
地方公共団体等が行財政効果の享受を重視する場合、成果指標の改善状況によらず、『行財政効果額>行政の支払額』となるように支払条件を設定します。
Point
●民間事業者のリスク軽減の工夫
(1)行財政効果額を上回る行政の支払額の設定(グラフ中のb)
成果指標の改善状況が小さい場合は行財政効果額を上回る行政の支払額を設定し、成果指標の改善状況が一定を超えると、行財政効果額を下回る行政の支払額を設定します。
(2)行政の固定支払額の追加(グラフc)
民間事業者のリスクを軽減するために、成果に連動しない固定支払額(グラフ
中のc)を設定します。
(3)民間事業者の損益分岐点までの支払条件の緩和(グラフ中の角度d> e)
民間事業者の損益分岐点までは、改善値の単位あたりの支払額を大きく設定します。
Point
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
財政課は常に行財政効果が行政の支払額を上回るような設定を重視しました。一方で、所管課は、民間事業者のリスクやサービスの質の確保を優先して、行財政効果が行政の支払額を下回るのはやむを得ないと考え、固定支払の導入を検討しました。
支払時期の設定
固定支払額(設ける場合)、成果連動支払額について、支払時期を設定します。
Point
複数年度にまたがるPFS事業の場合、契約終了時に一括で支払を行うこととすると、民間事業者の資金繰りの負担が大きくなる可能性があります。この場合、固定支払については評価結果を待たずに支払を行う、中間成果指標を設けて年度毎に支払を行う等の方法を検討します。
協議の結果、財政課の意向を反映することになったため、厳しい支払条件となり、民間事業者の難易度がかなり高くなりました。そのため、マーケットサウンディングを通して民間事業者と調整を行い、最終的には民間事業者の参画意欲を阻害しない事業にすることができました。
8 支払条件の設定
先行事例 Pick UP
<神戸市糖尿病性腎症等重症化予防事業における支払条件の設定方法>
成果指標 | 支払基準 |
(固定支払額) | 神戸市が履行確認を行い、固定支払額を支払う。 |
プログラム修了率 | 実際の修了率/目標値80%×事 業 相当額の20% |
生活習慣改善率 | 実際の改善率/目標値75%×事 業 相当額の40% |
腎機能低 下抑制率 | 実際の抑制率/目標値80%×事 業 相当額の30% |
※目標値を達成した場合は下線部の金額を支払う
• サービス提供者が行うサービスは、腎機能低下抑制率のトラックレコードがない等による資金提供者のリスク(達成した成果が小さく、それに応じて支払われる対価が小さいことにより、提供した資金を回収できないリスク)に配慮して、成果連動支払に加えて固定支払も導入してリスクを軽減した。
• アウトプット指標である「プログラム修了率」と初期アウトカム指標である「生活習慣改善率」によりサービス提供に必要な事業 の6割が支払われる設計とし、前例がないこと等により不確実性のある「腎機能低下抑制率」に基づく支払額の割合を小さくすることで、資金提供者のリスクを軽減した。
先行事例における支払条件の一覧
先行事例では、それぞれ下表のように支払条件を設定しています。
事業名 | 支払上限額 | 固定払 | 成果連動払 | |
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | ||||
34,063千円 | 10,482千円 | プログラム修了率 | (実際の修了率/目標値80%)×5,240 千円(事業相当額の20%) | |
生活習慣改善率 | (実際の改善率/目標値75%)×10,481 千円(事業相当額の40%) | |||
腎機能低下抑制率 | (実際の抑制率/目標値80%)×7,860 千円(事業相当額の30%) | |||
※目標値を達成した場合は下線部の金額を支払う | ||||
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | ||||
9,762千円 | ― | 大腸がん検 診受診率 | ||
大腸がん精密検査受診率 | ||||
追加早期がん発見者数 |
【次頁に続く】
事業名 | 支払上限額 | 固定払 | 成果連動払 | |
③SIBの手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 | ||||
22,294千円 | 3,880千円 | 大腸がん検診受診者数・精密検査受診率 | • 検診受診者数+4.1%未満かつ精密検査受診率70%未満:支払なし • 検診受診者数+8.1%かつ精密検査受診率79%:12,445千円 • 検診受診者数+8.8%かつ精密検査受診率85%:18,414千円(最大額) ※上記の間で成果指標の改善状況に応じて支払額が決定 | |
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム | ||||
38,400千円 | 35,400千円 | 基本チェックリスト改善率 | 支払上限額480千円×達成率に応じた支払率 | |
運動習慣 改善率 | 支払上限額120千円×達成率に応じた支払率 | |||
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務 | ||||
13,644千円 | ― | 令和元年度成果指標 | 公募段階で民間事業者が提案した基準を満たした場合、2,470千円を支払う。 | |
令和2年度成果指標 | 公募段階で民間事業者が提案した基準を満たした場合、2,470千円を支払う。 | |||
令和3年度成果指標 | 公募段階で民間事業者が提案した基準を満たした場合、6,193千円を支払う。 | |||
要支援・要介護度の改善維持率 | 10%(下限値)のとき1,044千円から 20%(上限値)のとき2,511千円の間で 設定 | |||
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業 | ||||
9,500千円 | 4,500千円 | 大腸がん検診受診者数 | 1人あたり10千円×受診者増加数(最大 500人) | |
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業 | ||||
9,500千円 | 4,500千円 | ショッピングリハビリへの出席率 | 出席率80%未満の場合、出席率×50千円出席率80%以上の場合、(出席率-20) ×200千円÷3(支払上限額5,000千円) | |
基本チェックリスト悪化者数 | 140千円×人数を減額 | |||
Ⓑ服薬指導事業 | ||||
8,794千円 | 4,000千円 | 削減薬剤数 |
共通的ガイドライン抜粋
(1) 成果評価の方法は、民間事業者の事業活動が成果指標値の改善に与えた影響分のみを適切に把握するため、可能な限り、PFS事業が実施されなかった場合に想定される成果指標値の変化分を、全国平均等の既存の統計データ等から把握、比較し、PFS事業の事業対象者に係る成果指標値の改善状況からその影響を取り除くことが望ましい。
(2) 地方公共団体等は、成果指標の特性、入手可能な統計データ等を踏まえ、適切な成果評価の方法を検討
する。
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る成果評価方法の検討手順
評価方法の設定
選定した成果指標について、評価方法を設定します。
成果評価については、①事業目標の達成状況を把握できる、②事業目標の達成が民間事業者のサービスによって生じたものかどうか把握できるという2点を満たす方法を設定します。ただし、アウトプットによる成果指標の場合にはこの限りではありません。
Point
評価方法には、以下のようなものがあります。
評価方法 | 概要 | メリット | デメリット |
ランダム化比較試験 | 対象者を介入群(サービスを提供する群。以下同じ。)と対照群 (サービスを提供しない群。以下同じ。)に無作為に割り付け、両者を比較する手法 | • 厳密性を担保できる | • 時間・コストがかかる • 倫理的に適さない場合がある |
マッチング法 | 介入群と可能な限り類似したグループを対照群とし、両者を比較する手法 | • 介入群を無作為に選定できない場合でも活用できる • 一定の厳密性を担保 できる | • 利用可能なデータがなければ実施できない |
既存データとの比較 | 過去のデータから介入群と類似するグループのデータを選び、両者を比較する手法 | • 低コスト • 倫理的な問題がない | • 比較可能なデータがなければ実施できない • 一定のバイアスがかかる可能性がある |
事前事後比較 | 事業の実施前のデータと事業の実施後のデータを比較する手法 | • 簡易 • 低コスト • 倫理的な問題がない | • 当該事業以外の外部要因を除外することが難しく、厳密性が低い |
医療・健康及び介護分野のPFS事業は、対象者の生命やQOLに直結することから、対照群を設定することについて、慎重に判断する必要があります。
対照群を設ける場合には、サービス提供を複数期に分け、今期の対照群を次期以降の介入群にするといった工夫も検討します。
Point
アウトプットの成果指標については、アウトプットを把握できる評価方法を設定します。
Point
【次頁に続く】
評価方法の設定
(続き)
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
対照群を設定することは現実的ではなく、また、手法として複雑で職員が理解するのは困難なことから、ランダム化比較試験やマッチング法は想定していませんでした。
PFS事業の目的にもよりますが、汎用性のあるサービスの開発等であれば厳密性が求められる一方、個別の事業のみの評価であれば、本市が説明責任を果たせる範囲で厳密性を担保すればよいと考えます。
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
対照群を設定しようとすれば、健康状態が改善する可能性のあるサービスをあえて提供しない市民の群を作ることになります。それは将来的に命に関わることであり、対照群の設定はすべきではないと考えました。
本市が保有するデータで評価可能であり、事業期間が短期であったため大きな外部要因は想定されないと判断し、事前事後比較を採用しました。
データ収集 評価に必要なデータの収集方法を設定します。
方法の設定
Point
Point
評価結果は支払額に直結するため客観性が求められますが、どの程度厳密な評価とするかは地方公共団体等の考え方によります。事業の説明責任を有するのは地方公共団体等であることから、事業内容や各評価方法のメリット・デメリットを踏まえて判断します。
公的な統計データや地方公共団体等が業務を通じて把握しているデータを活用する場合には、当該データが入手できる時期を確認します。
評価体制の設定
用いるデータや評価方法を踏まえ、客観性を担保できる評価体制を検討します。
公的な統計資料やレセプトデータ等を用いることで恣意性が排除できる場合には、地方公共団体等が自ら評価を行うことも可能ですが、アンケート調査等を用いるために客観性を高める必要がある場合や、マッチング法・ランダム化比較試験といった専門的なノウハウを要する評価方法を用いる場合には、第三者評価機関を活用することが有効です。
第三者評価機関を活用する場合、そのための 用が必要となります。
PFS事業自体の事業 が大きくない場合、評価に要する 用の割合が相対的に大きくなるため留意が必要です。
Point
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
ランダム化比較試験やマッチング法等の本格的な評価方法を用いる場合、本市職員の独力では実施できないので、第三者評価機関への委託が必要でした。しかし、PFS事業自体の事業 に対して評価に要する 用が大き
かったため、庁内の理解を得ることが困難であり、断念しました。結果的に、職
員が単独で評価できるよう、既存データとの比較による評価方法としました。
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
本市では、成果指標の改善状況を把握するだけでなく、成果指標の改善状況と本事業の因果関係を客観的に評価する必要があると考え、マッチング法を採用しました。第三者評価機関が評価を行ったことで、評価の厳密性に加えて客観性、公平性が確保できました。
先行事例 Pick UP
<神戸市糖尿病性腎症等重症化予防事業における成果評価の方法>
• 成果評価は、第三者評価機関である未来工学研究所が実施(神戸市の承諾を得てサービス提供者が選定・再委託)。
• 未来工学研究所は、サービス提供者が事業実施を通じて記録・収集したデータ及び神戸市から提供された特定健診データを用い、以下のとおり評価を行った。
成果指標 | 評価方法 |
プログラム修了率 | プログラム完了後、修了した対象者数を把握。 【算定方法】 プログラム修了率= (プログラム修了者-プログラム開始後に除外基準に該当することが判明した者)÷ (対象者-プログラム開始後に除外基準に該当することが判明した者) |
生活習慣 改善率 | 事前事後比較にて把握(担当看護師の指導報告書から、対象者のプログラム実施前と実施後の自己管理行動指標値を比較して評価) 【算定方法】 食事療法による生活習慣改善率= (食事療法による生活習慣改善者-プログラム開始後に除外基準に該当することが判明した者)÷(プログラム修了者-データ未提出者(プログラム開始後に除外基準に該当することが判明した者を含む)) ※運動療法、セルフモニタリング、薬物療法についても上記算定式を用いてそれぞれ生 活習慣改善率を算定する。 本事業による生活習慣改善率の算定本事業による生活習慣改善率= (食事療法による生活習慣改善率+運動療法による生活習慣改善率+セルフモニタリングによる生活習慣改善率+薬物療法による生活習慣改善率)÷4 |
腎機能低下抑制率 | 傾向スコアマッチング法にて把握(健診データで得られる各種背景情報(年齢、性別、血圧、HbA1c、eGFR値等)から介入群と似た集団を選び出し、比較する方法) (1)基準値となる2016年度神戸市国民健康保険特定健診データ(以下「健診データ」という。)を用いて、傾向スコアマッチング法を用いて対照群を選定。 (2)評価期の2019年度の健診データを用いて、対照群のデータを基に2016年度からのeGFR値の低下率を目的変数とする重回帰分析を行い、回帰式を導出。 (3)導出した回帰式に、介入群の対象者毎にプログラム実施前の変数の値を代入し、腎機能低下率の予測値を算出。 (4)プログラム実施後、対象者毎に、(3)で算出した2019年度の予測値と実績値を比較し、予測値より低下率が低ければ、その者を腎機能低下抑制者とする。 (5) (4)で算出した腎機能低下抑制者から以下の算定方法を用いて腎機能低下抑制率を算出する。 【算定方法】 腎機能低下抑制率= (生活習慣改善者のうち2019年度の特定健診の結果から、腎機能低下抑制者と認められた者)÷(生活習慣改善者のうち2019年度の特定健診の結果が確認できた者) |
9
成果評価の方法
先行事例における成果評価方法の一覧
先行事例では、それぞれ下表のように成果表方法を設定しています。
事業名 | 成果評価方法 | 評価者 |
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | ||
プログラム修了率:プログラム修了者/事業対象者 生活習慣改善率: 生活習慣改善者/プログラム修了者 腎機能低下抑制率:傾向スコアマッチング法腎機能低下抑制者/生活習慣改善者 | 第三者評価機関:公益財団法人未来工学研究所(研究機 関) | |
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | ||
大腸がん検診受診率:既存データとの比較 大腸がん精密検査受診率:既存データとの比較 追加早期がん発見者数:対象者のうち大腸がん精密検査を受診し、早期がんが発見された人数を算定 | 八王子市 | |
③SIBの手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 | ||
大腸がん検診受診者数:既存データとの比較 大腸がん精密検査受診率:既存データとの比較 | 広島県 | |
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム | ||
運動習慣の改善度:事前事後比較 基本チェックリスト改善度:事前事後比較 | 美馬市 | |
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務 | ||
要支援・要介護度の改善維持率:既存データとの比較 | 大牟田市 | |
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業 | ||
大腸がん検診受診率向上:既存データとの比較 | 第三者評価機関:特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会(インパクト評価機関) | |
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業 | ||
出席率:対象者の出席状況を集計 基本チェックリスト点数:事前事後比較 | 第三者評価機関:一般財団法人CSOネットワーク(インパクト評価機関) | |
Ⓑ服薬指導事業 | ||
削減薬剤数:事前事後比較 | サービス提供者 第三者評価機関(※):特定非営利活動法人ソーシャルバリュージャパン(インパクト評価機関) ※サービス提供者による評価結果の確認 |
(1) 地方公共団体等は、案件形成後に実施する民間事業者の選定において、直接型、間接型、SPC型のいずれの実施体制とするか、資金提供者が事業に参画するかどうか(SIBとするかどうか)について、民間事業者から提案を求める。
(2) 地方公共団体等は、当該提案についての審査を行った上で、選定された民間事業者と実施体制について、協議し、決定する。
(3) 地方公共団体等は、民間事業者の提案により、PFS事業の実施体制として、受託者たる民間事業者からサービス提供者への再委託を行う場合、再委託を実施できるように、必要に応じて関連する規則等の改正等の対応を行う。
(4) 地方公共団体等は、評価の透明性、客観性を担保する観点から、第三者評価機関の活用を検討する。ただし、成果指標が定量的に測定できる指標に限定され、成果指標値の改善状況の測定等により民間事業者の事業活動の影響分を透明性、客観性をもって評価できる場合は、第三者評価機関を活用する必要は必ずしもない。
10 実施体制に関する検討
共通的ガイドライン抜粋
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る実施体制に関する検討手順
実施体制の検討
PFS事業に参画する主体は以下のとおり分類されます。なお、「地方公共団体等」「サービス提供者」は必ず参画しますが、それ以外は、事業の内容を踏まえて必要性を検討します。
主体 | 役割 |
地方公共団体等 【必須】 | • 発注者として、解決したい行政課題、達成したい成果を設定します。 • 事業により得られた成果に応じて、民間事業者に支払を行います。 |
サービス提供者 【必須】 | • 事業目標の達成に資するサービスを提供し、PFS事業実施の中心を担います。 |
中間支援組織 | • 地方公共団体等やサービス提供者等の事業関係者の間の調整や、案件形成の支援を行います。(必要に応じて活用) |
第三者評価機関 | • 成果指標の測定や評価を、第三者の立場から実施します。 |
資金提供者 | • サービス提供者に対し、事業実施に要する用を提供します。 • 地方公共団体等からの成果に応じた支払いにより返済・償還を受けるため、資金を回収できないリスクを負います。 |
第三者評価機関の必要性は、「9 成果評価の方法」(P32参照)において検討した評価方法によります。アンケート調査を行うために客観性を高める場合や、分析に専門的な知識を要する場合等には、第三者評価機関を設けることが望ましいと 言えます。
Point
資金提供者の必要性は、発注者である地方公共団体等に民間資金活用の意向がない場合、事業実施を担うサービス提供者の判断によります(サービス提供者が自己資金により事業を実施できる場合には、必要ありません)。
民間資金の活用が想定される場合は、マーケットサウンディング(P55参照)により資金提供者候補の意向を把握します。
Point
地方公共団体等は、発注者として、以下の点を踏まえて実施体制を検討します。
• 地方公共団体等が複数の場合、その連携関係
• 第三者評価機関の有無
• サービス提供者が複数の場合、民間事業者間の実施体制(マーケットサウンディング(P55参照)により把握)
• 資金提供者を設ける場合、資金提供者間の実施体制(マーケットサウンディン
グ(P55参照)により把握)
Point
10 実施体制に関する検討
先行事例
Pick UP
<広島県ほかSIBを用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務における実施体制>
【発注者である地方公共団体等の体制(地方公共団体等が複数の場合)】
• 発注者である地方公共団体等は、広島県及び県下6市の複数団体から構成されている。
• 広島県及び県下6市は、協定を締結し以下を合意した。
⮚ サービス提供者は広島県が選定し、
6市はそれぞれ県が選定したサービス提供者と契約を締結。
⮚ 6市は評価に必要なデータを広島県に提供。
⮚ 予算が成立しなかった地方公共団体等は、本協定を終了。
先行事例
Pick UP
<神戸市糖尿病性腎症等重症化予防事業における事業実施体制>
【第三者評価機関及び資金提供者の体制】
先行事例 Pick UP
• 第三者評価機関あり。
⮚ 神戸市の承諾を得て、 サービス提供者が再委託した。
• 資金提供者あり。
⮚ 神戸市は、案件形成段階で、信託方式(資金提供者が資金を信託受託会 社(SMBC信託銀行)に託し、信託受託会社が資金を管理・運用する手法)による資金調達であることを踏まえて体制を構築した。
<美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラムにおける事業実施体制>
【サービス提供者の体制(サービス提供者が複数の場合のみ)】
• 美馬市、大塚製薬、徳島ヴォルティス
は覚書を締結。
• サービス提供者は複数の民間事業者から構成されている。
• 複数のサービス提供者のうち、徳島ヴォルティスが美馬市と契約を締結し、その他のサービス提供者のうち、R-Body Project及びタニタヘルスリンクは、徳 島ヴォルティスから委託を受ける体制。
• 美馬市は案件形成段階でサービス提供者の体制について把握した。
10
実施体制に関する検討
先行事例における実施体制の一覧
先行事例における実施体制は、下表のとおりです。
事業名 | 地方公共団体等 | サービス提供者 | 資金提供者 | 第三者評価機関 | 中間支援組織 |
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | |||||
神戸市 | DPPヘルスパートナ―ズ | 三井住友銀行、個人投資家、社会的投資推進財団(現:社会変革推進財団) | 未来工学研究所 | 社会的投資推進財団(現:社会変革推進財団) | |
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | |||||
八王子市 | キャンサースキャン | デジサーチアンドアドバタイジング、みずほ銀行、個人投資家、社会変革推進財団 | なし | ケイスリー | |
③SIBの手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 | |||||
広島県、竹原市、尾道市、福山市、府中市、三次市、庄原市 | キャンサースキャン | 社会変革推進財団、広島銀行、みずほ銀行、 ミュージックセキュリティーズ(クラウドファンディング) | なし | ケイスリー | |
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム | |||||
美馬市 | 徳島ヴォルティス、大塚製薬、R- Body Project、タニタヘルスリンク | 阿波銀行、徳島 県信用保証協会 | なし | 日本総合研究所 | |
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務 | |||||
大牟田市 | くまもと健康支援研究所 | なし | なし | 日本総合研究所 | |
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業 | |||||
厚生労働省(浦添市) | ケイスリーアクリート | なし | 日本ファンドレイジング協会 | ケイスリー | |
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業 | |||||
厚生労働省(雲南市) | 光プロジェクト | なし | CSOネットワーク | Cono-base | |
Ⓑ服薬指導事業 | |||||
厚生労働省(大分県、別府市、中津市、豊後大野市) | キャンサースキャン | 社会的投資推進財団(現:社会変革推進財団) | ソーシャルバリュージャパン | なし |
共通的ガイドライン抜粋
(1) 地方公共団体等は、公平性、透明性の観点から、公募により民間事業者を選定することを原則とする。地方 公共団体等は、公募を行わない場合、受託者たる民間事業者の選定理由を公表する等、透明性を確保する。
(2) 地方公共団体等は、民間事業者の提案する事業活動の実施方法について、予算の範囲内で、成果指標値の改善がいかに達成されるかを審査する必要があり、次の選定方法により実施することが望ましい。
① 競争性のある随意契約(公募型プロポーザル方式等)
② 総合評価落札方式による一般競争入札
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る⺠間事業者の選定手順
選定方法の決定
民間事業者の選定は、従来の委託事業と同様に公募方式が原則ですが、事業によっては、非公募としている場合もあります。
公募方式は複数がありますが、先行事例では、提案内容を評価(価格評価なし)する「公募型プロポーザル方式」が導入されています。
Point
非公募となった先行事例では、非公募の理由として、案件形成の段階から特定の民間事業者が参画して検討を行っていたこと、当該地方公共団体等におけるPFS事業の1号案件であり前例がなかったこと、公募を行ったとしても他の民間事業者の参加が想定されなかったこと等があります。
Point
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
特定の民間事業者(サービス提供者)と連携して案件形成を行ったこと、本市1号案件であり前例がないことから、公募による選定は行わず、非公募としました。契約課も案件形成に参画していたため、非公募とすることについてスムーズに庁内の意思決定ができました。
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
本市は、原則として公募により民間事業者選定を行うこととしており、PFSも例外ではありません。具体的には公募型プロポーザル方式を採用しました。支払条件は本市が案件形成の段階で設定し、その条件の下で公募を行いましたので、価格競争はありません。
公募書類の作成
決定した選定方式に合わせ、民間事業者の選定に必要な書類を作成します。
作成する書類は以下を参考に、各地方公共団体等の入札・調達にかかる規程等に基づき必
要なものを確認します(地方公共団体等により、書類の名称は異なる場合があります)。
※成果水準書(仕様書)、契約書については、「12 成果水準書(仕様書)等の作成」
(P41参照)を参照
※民間事業者選定基準については、「13 選定基準等」(P43参照)を参照
【参考】選定方式別必要書類
【非公募の場合】
成果水準書(仕様書)
契約書案
【公募方式の場合】
• 募集要項
• 成果水準書(仕様書)
• 民間事業者選定基準
• 契約書案
先行事例における⺠間事業者選定方法の一覧
先行事例では、それぞれ下表のように民間事業者を選定しています。
事業名 | 選定方法 |
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | |
非公募 | |
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | |
非公募 | |
③SIBの手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 | |
非公募 | |
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム | |
非公募 | |
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務 | |
公募型プロポーザル方式 |
※大腸がん検診受診勧奨PFS事業、ショッピングリハビリによる介護予防事業、服薬指導事業は、民間事業者が厚労省モデル事業に応募し採択を受けて実施されたものであり、民間事業者の選定は行われていない。
共通的ガイドライン抜粋
(1) PFS事業の委託契約は、契約書と成果水準書(仕様書)で構成されるものとする。
(2) 地方公共団体等は、公募型プロポーザル方式や総合評価落札方式による一般競争入札の実施に際して、契
約書(案)及び成果水準書(仕様書)(案)を作成し、提示する。
(3) 地方公共団体等は、成果水準書(仕様書)(案)において、主に以下の項目を定める。このうち、➃は民間事業者に提案を求めるものであるが、必要最小限の範囲で事業活動の実施方法について記載することも妨げない。
① 事業目的(事業目標)
② 契約期間、事業実施期間、評価時期
③ 事業対象者
➃ 委託内容
⑤ 成果指標
⑥ 成果指標値の測定等、評価方法(データの収集、測定、成果評価の方法やその実施者)
⑦ 支払条件(成果指標値の改善状況に応じた支払額)
(4) 契約書(案)は、地方公共団体等における標準的な委託契約約款を活用することが可能である。
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る成果⽔準書等の作成手順
成果⽔準書の作成
成果水準書は、従来型の委託事業における仕様書に相当するものです。
「1 対象とする行政課題の選定」から「9 成果評価の方法」までの各項目での検討結果をもとに作成します。
【成果水準書の項目例】
仕様書の項目 | 記載概要 |
事業目的 | 「1 対象とする行政課題の選定」、「2 事業目標等の設定」の中の 「PFS事業実施後の対象者層の改善目標」の内容を記載 |
対象者 | 「2 事業目標等の設定」の中の「PFS事業の対象者層」の内容を記載 |
契約期間 | 「5 契約期間の設定」の内容を記載(サービス提供期間、評価期間それぞれ記載) |
業務内容 | 必須業務や実施すべきでない事項等がある場合はその内容を記載 |
成果指標 | 「2 事業目標等の設定」の中の「PFS事業実施後の対象者層の改 善目標」及び「3 成果指標の選定」の内容を記載 |
支払条件等 | 「8 支払条件の設定」の内容を記載 |
評価方法 | 「9 成果評価の方法」の内容を記載 |
民間事業者の創意工夫により成果が創出されることを踏まえ、成果水準書の「業務内容」には、原則として従来の委託事業の仕様書のように受託者が実施すべき事項を記載せず、記載する場合にも最低限にとどめます。
ただし、医療・健康及び介護分野のPFS事業は対象者の生命やQOLに直結することから、民間事業者が実施すべき事項、実施すべきでない事項等がある場合は、その内容を「業務内容」として記載する必要があります。
Point
契約書
(案)の作成
先行事例では、契約書は従来の委託契約約款を使用し、成果水準書に必要事項を記載しています。
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
契約書は、本市の標準的な契約約款をそのまま活用しました。PFS事業に合わせて契約約款を修正するとなると、弁護士に依頼をして助言を得る必要がありますが、時間的にも 用的にも難しかったためです。
そのため、支払条件等のPFS事業に特有の内容は全て成果水準書に盛り込みました。
先行事例 Pick UP
<大牟田市要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務における成果水準書>
成果水準書の構成は以下に示す目次のとおり。このうち、「4.本業務期間」「6.業務内容」「8.支払条件等」がPFS事業に特有の内容となっている。
●成果水準書 目次
• 業務期間は履行期間と評価期間から構成される
• 履行期間は上限を示し、民間事業者提案内容を踏まえて市との協議により決定する
1. 業務名
2. 目的及び概要
3. 業務の対象範囲及び対象者
4. 本業務期間
• 基本的な考え方のみを示し、具体的な業務内容は受託者の提案による
• 上記のほか、必ず実施すべき業務を規定
5. 目指す成果
6. 業務内容
7. 業務に関わる特記事項
8. 支払条件等
• 成果指標、支払条件、成果指標の評価方法を規定
9. 個人情報保護及び受託者の責務 10.暴力団排除
契約書は標準の委託契約約款を使用した。
13
選定基準等
共通的ガイドライン抜粋
(1) 地方公共団体等は、意欲ある民間事業者の参加機会を必要以上に制限しないよう、参加資格要件を設定する。
(2) 地方公共団体等は、応募者からの提案の審査項目、審査基準、配点等を公募の際にあらかじめ明示する。その際、PFS事業では、民間事業者のノウハウ等を活用することで高い成果を創出することが重要であるため、以下の審査項目等を設定することが望ましい。
① 有効性(提案する事業活動の実施方法が高い成果を生み出すことの理由や根拠となる実績、定量的なデータの有無等)
② 実現可能性(実施計画の具体性、実施体制の構築状況、資金調達方法等)
③ 先進性(従来手法と比べた新しさ、革新性等)
➃ 発展性、波及効果(対象事業の範囲外で期待される効果等)
⑤ 効率性
(3) 地方公共団体等は、公告から提案書類の提出まで十分な期間を設ける等、公平性を確保する。また、質問の機会を与えるとともに、質問に対する回答については公平性を確保するため他の応募者にも公表する。
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る選定基準等
民間事業者を選定する基準を設定します。成果水準書等と併せて公募資料とします。
Point
「民間事業者が提案するサービスは成果創出に資するか」、「成果を創出できる体制や仕組みか」に加えて、「民間事業者が提案したサービスは、対象者に過度な負担を強いていないか」という点から評価します。
選定基準の設定
先行事例 <大 Pick UP プ 評価項目 | 牟田市要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務における選考基準>ロポーザル実施要領に定める選定基準は以下のとおり。 評価の視点 |
業務の取組方針 | • 本業務の目的及び概要、大牟田市の現状等を踏まえた本業務の取組方針、コンセプトが明確に示されているか。 |
業務遂行能力 | • 本業務の実施体制は適当か。 • 本市との連絡体制が確保されているか。 • 令和4年度に対象者の要支援・要介護度の悪化改善率向上を達成する現実的なスケジュールか。 |
業務計画 の実現性 | • 令和4年度に対象者の要支援・要介護度の悪化改善率向上を達成するための提案が詳細に検討され、具体化されているか。 • 提案内容が、要支援・要介護度の悪化改善率向上に至ることを、根拠に基づいて説明されている か。 • 現状維持を前提とした場合の令和4年度時点の対象者の悪化率の推計方法について、詳細に検討され、具体化されているか。 • 提案内容を遂行する上でのリスク・課題を分析し、対応策が事前に検討されているか。 |
成果指標の妥当性 | • 令和元、2、3年度の成果指標は、対象者の要支援・要介護度の悪化改善率向上に関連する指標であることが具体的に説明されているか。 • 令和3年度の成果指標は、生活機能の改善を定量的かつ客観的に表す指標であることが具体的に説明されているか。 • 令和元、2、3年度の成果指標は、各年度の業務に関連した指標であることが具体的に説明されているか。 • 令和元、2、3年度の成果指標は、本市の成果としても有効な指標であることが具体的に説明さ れているか。 |
成果指標の目標値の妥当性 | • 令和元、2、3年度の成果指標の目標値は、対象者の要支援・要介護度の悪化率20%改善に関連する値であることが、根拠に基づいて説明されているか。 • 令和元、2、3年度の成果指標の目標値はチャレンジングな指標であり、達成することで本市の成果として有効な値であることが根拠に基づいて説明されているか。 • 令和4年度の成果指標の達成見込み値が根拠に基づいて説明されているか。 |
14 PFS契約の締結
共通的ガイドライン抜粋
(1) 地方公共団体等は、選定された民間事業者の提案に基づき、成果水準書(仕様書)、契約書の内容につい
て、当該民間事業者と協議の上、契約を締結する。
(2) 地方公共団体等は、民間事業者が資金提供者から資金調達する場合において、民間事業者の提案する資金調達方法により標準的な委託契約約款の修正を行う必要が生じる場合は、適切に対応する。
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る契約締結の手順
契約の締結
選定された民間事業者と契約を締結します。「10 実施体制に関する検討」を踏まえて、再委託や資金提供者との契約等、必要に応じて締結します。
先行事例における契約関係の一覧
先行事例における契約締結は、下表のとおりです。
事業名 | 契約関係 | |
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | ||
PFS契約 | 神戸市⇔DPPヘルスパートナーズ(サービス提供者) | |
再委託 | DPPヘルスパートナーズ(サービス提供者)⇔未来工学研究所(第三者評価機関) | |
その他 | 社会的投資推進財団(中間支援組織)※2016年度経済産業省事業により派遣。 | |
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | ||
PFS契約 | 八王子市⇔キャンサースキャン(サービス提供者) | |
その他 | ケイスリー(中間支援組織)※2016年度経済産業省事業により派遣。 | |
③SIBの手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 | ||
PFS契約 | 広島県⇔キャンサースキャン(サービス提供者) | |
委託契約 | 参加6市⇔キャンサースキャン(サービス提供者) | |
その他 | ケイスリー(中間支援組織)※2017年度経済産業省事業により派遣。 | |
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム | ||
PFS契約 | 美馬市⇔徳島ヴォルティス(サービス提供者) | |
再委託 | 徳島ヴォルティス(サービス提供者)⇔R-Body Project(サービス提供者)徳島ヴォルティス(サービス提供者)⇔タニタヘルスリンク(サービス提供者) | |
その他 | 日本総合研究所(中間支援組織)※2018年度経済産業省事業により派遣。 | |
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務 | ||
PFS契約 | 大牟田市⇔くまもと健康支援研究所(サービス提供者) | |
その他 | 日本総合研究所(中間支援組織)※2018年度経済産業省事業により派遣。 | |
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業 | ||
PFS契約 | 厚生労働省⇔ケイスリー(サービス提供者・中間支援組織) | |
再委託 | ケイスリー(サービス提供者・中間支援組織)⇔アクリート(サービス提供者) | |
再委託 | ケイスリー(サービス提供者・中間支援組織)⇔日本ファンドレイジング協会(第三者評価機関) | |
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業 | ||
PFS契約 | 厚生労働省⇔Cono-base(中間支援組織) | |
再委託 | Cono-base(中間支援組織)⇔光プロジェクト(サービス提供者) | |
再委託 | Cono-base(中間支援組織)⇔CSOネットワーク(第三者評価機関) | |
Ⓑ服薬指導事業 | ||
PFS契約 | 厚生労働省⇔キャンサースキャン(サービス提供者) | |
再委託 | キャンサースキャン(サービス提供者)⇔ソーシャルバリュージャパン(第三者評価機関) |
15
事業実施期間中のモニタリング
共通的ガイドライン抜粋
(1) 地方公共団体等は、成果連動リスクを民間事業者が負っていることを踏まえ、事業活動の実施方法についての
民間事業者の裁量を確保する。
(2) 地方公共団体等は、事業対象者の選定やサービス提供の状況を含む、民間事業者の事業実施状況について、定期的に受託者たる民間事業者から報告を受けつつ、中間支援組織、第三者評価機関、資金提供者が参 画している場合はそれらの者の意見も踏まえながら、事業のモニタリングを行う。
(3) 地方公共団体等は、契約期間中に、地方公共団体等及び民間事業者のいずれの責によらない、事業の実施や成果指標に重大な影響を与える事象(不可抗力等のほか、事業分野に関連する社会的影響の大きな事象等)が発生した場合、受託者たる民間事業者から当該事象がPFS事業に与える影響について報告を求めた上で、必要に応じて、民間事業者が提案し決定した事業活動の実施方法や、場合によっては成果指標の上限値等を含む支払条件の見直し等について、中間支援組織、第三者評価機関、資金提供者の意見も踏まえて、受託者たる民間事業者と協議を行う。
医療・健康及び介護分野の先行事例から見るモニタリングの実施方法
モニタリングの実施
サービス提供期間中は、地方公共団体等は以下の視点でモニタリングを行います。
⮚ 民間事業者が成果水準書(仕様書)や提案事項等に基づいて業務を行っているか
⮚ 成果創出の観点から実施状況に課題はないか、ある場合の解決策はどういったものか
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
サービス提供者からサービス提供状況の報告を月次で受けました。さらに、その報告を受けて本市、サービス提供者、中間支援組織で月次モニタリング会議を開催しました。中間支援組織は随時データの分析を行っていたため、課題が発生した際にも早期に把握ができ、その場で議論し解決策を出すことができました。
先行事例 Pick UP
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
サービス提供状況や進捗について随時サービス提供者と地方公共団体で共
有しています。
サービス改善に向けた意見を双方が出し、採否を検討しています。
また、不測の事態が発生し、サービス提供を中断せざるを得なくなった際も、サービス提供者が地方公共団体に早期に相談し、中断時期、開始時期について検討しました。
PFS事業を実施した地方公共団体職員の声
案件形成時に様々な検討を行いましたが、肝心なのは、事業開始以降のモ
ニタリング、中間支援組織の分析、資金提供者の参画だと実感しました。
<神戸市糖尿病性腎症等重症化予防事業におけるモニタリング>以下の手順により、モニタリングを毎月実施。
(1)神戸市との契約に基づき、DPPヘルスパートナーズ(サービス提供者)が毎月モニタリングを行い、進捗状況とプログラム実施に係る課題の有無を把握。
(2)上記モニタリング結果を受けて、神戸市、DPPヘルスパートナーズ、社会的投資推進財団が月次モニタリング会議を開催。
【モニタリングの効果】
• 成果の創出を目的とすることが共通認識となり、課題が発生した場合にも解決策を検討することができた。
• 副次的な効果として、がん等他の疾患が発見された対象者の情報も月次で共有することで、当該対象者をスムーズに他の行政サービスや医療機関につなぐという連携支援ができた。
16
成果の評価と支払い
共通的ガイドライン抜粋
医療・健康及び介護分野の先行事例から見る評価・支払の手順
成果指標の測定、成果評価
あらかじめ定めた評価方法に沿って、成果評価を行います。
⮚ 第三者評価機関を設けている場合には、第三者評価機関による評価結果の報告を地方公共団体等が確認します。
Point
透明性を高める観点や他の地方公共団体等の先行事例になるという観点から、評価結果は可能な範囲で公表を行います。
ただし、民間事業者のノウハウに関する内容や、事業に参加した個々人のプライバシーに配慮する必要があります(例:BMIを指標としている場合、事業実施前後
での個々人のBMIの値を公表するのではなく、変化量の平均値等に加工する等)。
(1) 地方公共団体等は、成果評価の方法に沿って、当該PFS事業の参加者の役割分担に基づき、成果指標値の改善状況の測定等及び成果評価を実施する。
(2) 地方公共団体等は、成果評価の結果とPFS契約に定める支払条件に基づき、支払額を決定する。
(3) 地方公共団体等は、契約期間終了後、事例の蓄積という観点から、PFS事業の実施による成果指標値の改
善結果等を公表する。
支払
あらかじめ定めた支払条件に沿って、支払額を算定します。
Point
委託料の一部について固定支払を行う場合には、対外的な説明のため、必要に応じて、履行状況を確認できる書類等について民間事業者に提出を求めます。
先行事例 Pick UP
<神戸市糖尿病性腎症等重症化予防事業における評価・支払>
サービス提供者が選定し、神戸市の承諾を得て再委託を行った第三者評価機関が評価を実施。
【(1)プログラム修了率】
事業実施の中でサービス提供者が記録したデータをもとに算出
【(2)生活習慣改善率】 事業実施の中でサービス提供者が行ったアンケートの結果をもとに算出
【(3)腎機能低下抑制率】神戸市が提供する特定健診データをもとに、マッチング法により対照群を設定して抑制率を算出
【支払額】 結果:29,435千円(支払上限額34,063千円)
<内訳>
固定支払額:10,482千円
成果連動支払(1)プログラム修了率: 5,240千円(目標値達成のため満額)成果連動支払(2)生活習慣改善率: 10,481千円(目標値達成のため満額)
成果連動支払(3)腎機能低下抑制率: 3,232千円(32.9%/目標値80%×配分額7,860千円)
結果:100%(目標値80%) 結果:95%(目標値75%) 結果:32.9%(目標値80%)上記評価結果を踏まえ、以下のとおり支払額を算定。
※本事業では、事業終了後に課題解決に対してサービス提供方法が有効であったか評価を行った。
【成果指標】プログラム 修了❹
【成果指標】
腎機能低下抑制❹
【成果指標】
生活習慣改善❹
• 中間成果指標として「プログラム修了率」及び「生活習慣改善率」を、本事業の目的である糖尿病性腎
症等重症化予防の成果を表す最終成果指標として「腎機能低下抑制率」を設定した。
①糖尿病性腎症等重症化予防事業
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業
【成果指標】大腸がん検診受診❹
【成果指標】大腸がん精密検査受診
❹
【成果指標】追加早期がん発見者数
• 「追加早期がん発見者数」は、地方公共団体の実施するがん検診事業で求められるプロセス指標には含まれず、また、母数が少ない等により指標になりうるのかという議論はあったものの、本事業の目的であるがんに係る医療の適正化の前提となる指標であることから、試行的に成果指標に含めた。
• 「大腸がん検診受診率」及び「大腸がん精密検査受診率」は、最終的な成果指標である早期がん発見者数につながる不可欠な要素であることから、成果指標として設定した。
• 大腸がん検診受診者数そのものの増加を目指して「大腸がん検診受診者数」を、精密検査受診率の向上を目指して「大腸がん検診精密検査受診率」を成果指標として設定した。
③SIBを用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務
• 「運動習慣の改善度」は、週2回以上、1日30分以上の運動習慣を有することにより、一定の医療適正化が見込まれることから、成果指標として設定した。
• 「基本チェックリストの改善度」は、基本チェックリストの運動器の機能低下に係る項目の改善により、一
定の介護給付 の適正化が見込めることから成果指標として設定した。
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム
【成果指標】大腸がん検診受診者数
【成果指標】大腸がん精密検査受診
❹
【成果指標】
運動習慣の改善度
【成果指標】
基本チェックリスト改善度
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務
【成果指標】
サービス提供者の提案による指標
(令和元~令和3年度成果指標)
【成果指標】
利用者の要支援・要介護度の改善維持❹
(令和4年度成果指標)
• 本事業において介護給付 等 用適正化事業を活用したことに伴い、年度毎に支払を行う必要が生じたため、年度毎に評価するアウトプット指標を設けた。
• サービス提供者の提案による指標は、公募段階で提案を受け、「目指す成果である要支援・要介護度の維持・進行抑制に寄与する指標であるか」、「大牟田市にとっての何らかの成果にもつながる指標であるか」という点から評価した。
• 令和4年度成果指標は、目指す成果を示す「利用者の要支援・要介護度の改善維持率」とした。
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業
【成果指標】
大腸がん検診受診者数
• 成果を評価するための成果指標は、「大腸がん検診受診者数」に加えて、「精密検査受診者数」及び
「早期がん発見者数」も評価することが望ましいものの、「精密検査受診者数」及び「早期がん発見者数」は評価時期が2021年度となり、事業期間内に評価することが難しい。そのため、本事業は事業期間内である2019 年度中に評価可能な「大腸がん検診受診者数」のみを成果指標とした。
※本事業は、「厚生労働省令和元年度保健福祉分野における民間活力を活用した社会的事業の開
発・普及のための環境整備事業」として実施したため、事業期間があらかじめ定まっていた。
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業
【成果指標】
出席❹
【成果指標】
基本チェックリスト点数
• 継続的な事業参加は、身体機能や認知機能の維持において重要であり、また、一般的な介護予防事業における参加率・継続率の低さも課題であることから、介護予防につながるキーファクターであり、それを表す成果指標として「出席率」を設定した。
【成果指標】
削減薬剤数
• 運動機能と認知機能の改善が介護予防の実現につながることから、介護予防の実現を表す成果指標として「基本チェックリスト点数」(BMIに関するNo12の項目を除く24項目の点数)を設定した。
• 事業目標を示す「削減薬剤数」を成果指標として設定した。
Ⓑ服薬指導事業
発注者
Ⓑ支払(固定支払、成果連動型支払)
*2016年度経済産業省健康寿命延伸産業創出推進事業の一環として実施
①案件形成支援*
神戸市
第三者評価機関
⑥進捗管理
未来工学研究所
⑦評価
➃債権譲渡合意書
②業務委託契約
資金提供者
対象者
⑥サービス提供
社会的投資推進財団
⑤信託受益権購入
➃信託契約
(債権の譲渡)
供
資金提供者
⑤資金提
⑤融資
⑨償還・返済
①糖尿病性腎症等重症化予防事業
DPP社
受託者・サービス提供者
SMBC信託銀行
社会的投資推進財団
三井住友銀行
個人投資家
中間支援組織
⑤評価
⑥成果連動型支払
②業務委託契約
①案件形成支援*
*2016年度経済産業省健康寿命延伸産業創出 推進事業の一環として実施
➃サービス提供
③資金提供
⑦償還等
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業
キャンサースキャン
受託者・サービス提供者
ケイスリー
八王子市
対象者
資金提供者
個人投資家
社会的投資推進財団
みずほ銀行
デジサーチアンドアドバタイジング
中間支援組織
発注者
※徳島県信用保証協会保証付融資
②覚書締結
⑤委託
※2
①案件形成支援(※1)
➃融資・出資
⑨返済・配当
③業務委託契約
Ⓑ固定支払
成果連動型支払
サービス提供者
⑦評価
⑥サービス提供
⑤委託
R-body Project
サービス提供者
対象者 タニタ
(20歳以上の市民) ヘルスリンク
(※1)2018年度健康寿命延伸産業創出推進事業の一環として実施
(※2)評価の支援
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム
大塚製薬
サービス提供者
徳島ヴォルティス
受託者・サービス提供者
阿波銀行
日本総合研究所
美馬市
発注者
資金提供者
中間支援組織
Ⓑ評価
③委託契約
①案件形成支援
資金提供者
対象者
(国保被保険者等)
⑥サービス提供
⑤出資等
中間支援組織
⑩償還等
*2017年度年度健康寿命延伸産業創出推進事業の一環として実施
⑦固定支払
庄原市
三次市
府中市
福山市
尾道市
竹原市
広島県
②協定締結
発注者
③SIBを用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務
キャンサースキャン
受託者・サービス提供者
ケイスリー
ミュージック セキュリティーズ
(➃匿名組合組成)
広島銀行
みずほ銀行
⑨成果連動型支払
社会的投資推進財団
*
➃評価
①案件形成
支援*
⑤成果連動型支払
②業務委託契約
* 2018年度健康寿命延伸産業創出推進事業の一環として実施
③サービス提供
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務
くまもと健康支援研究所
受託者・サービス提供者
日本総合研究所*
大牟田市
対象者
(通所介護・通所リハビリテーション施設)
中間支援組織
発注者
発注者
厚生労働省
①連携
成⑩果固連定動支型払支 払
⑨評価結果の報告
②業務委託契約
サービス提供者
受託者・中間支援組織サービス提供者
アクリート
③委託契約
ケイスリー
➃⑦データの提供
浦添市
⑤サービス提供
対象者
(国保被保険者)
⑥データ収集
⑥大腸がん検診受診勧奨PFS事業
日本ファンドレイジング協会
第三者評価機関
契①約業
務委託
⑥報告
成⑦果固連定動支型払支 払
②委託契約
➃評価
⑤評価結果の報告
②委託契約
助言
③サービス提供・データ収集
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業
光プロジェクト
受託者・サービス提供者
CSOネットワーク
厚生労働省
対象者
(65歳以上高齢者)
第三者評価機関
Cono-base
雲南市
外部
アドバイザー
中間支援組織
発注者
発注者
厚生労働省
大分県
発注者別府市
①業務委託契
第三者評価機関
ソーシャルバリュージャパン
報Ⓑ告評
価結果の
成⑨果固連定動支型払支
中津市
豊後大野市
②委託契約
約
払
受託者・サービス提供者
➃資金提供
キャンサースキャン
⑩償還等
資金提供者
社会的投資推進財団
⑥評価
⑦評価結果の報告
対象者
(重複服薬者)
⑤サービス提供
③資金提供のための匿名組合組成
資金提供者
ミュージック セキュリティーズ
Ⓑ服薬指導事業
案件形成の段階(本手引きの「3 成果指標の選定」~「10 実施体制に関する検討」)においては、事業の実現性を高めるため、民間事業者に対してマーケットサウンディングを行うことが有効です。
このページでは、マーケットサウンディングの実施方法、留意事項等を整理しています。
■目的
PFS事業では、民間事業者が成果指標の達成にかかるリスクを負うため、上限値等や支払条件の設定が厳しすぎる場合には、民間事業者が意欲を喪失してしまい事業への参画が得られないことが懸念されます。また、そもそも地方公共団体等が選定した行政課題に対して、その解決に資するサービスを提供できる民間事業者がいない場合、PFS事業が成り立ちません。
あらかじめ⺠間事業者の意見等を聴取した上で案件形成を進めることで、事業の実現性を高めることがマーケットサウンディングの目的です。
■対象
まずはサービス提供者候補となり得る民間事業者を対象とします。
「1行政課題の選定」において「※『ノウハウを有する民間事業者』の探索方法」として示しているとおり、選定した行政課題に関連するサービスを提供する民間事業者を、インターネット等から把握します。
サービス提供者候補が資金調達を想定している場合には、資金提供者候補も対象とします。
■内容
【サービス提供者候補に対して】
①PFS事業の発案(本手引きの「1 行政課題の選定」~「2 事業目標の設定」)を終えた段階
⮚ 設定した事業目標を達成するためのアイディア
⮚ それによりどの程度の効果が見込めるか
②案件形成段階
⮚ 成果指標の選定・上限値等の設定・支払条件の設定が、民間事業者が参画意欲を喪失する非現実的なものとなっていないか
⮚ サービス提供後、効果が現れるまでの期間はどの程度か
⮚ 想定される事業 はどの程度か(必要に応じて見積りも取得)
⮚ 民間事業者が負う成果達成リスクに対し、どの程度のリターンを期待するか
⮚ 資金調達を行う意向があるか(→ある場合、資金提供者候補にもマーケットサウンディングを行う)
【資金提供者候補に対して】
⮚ 期待する利回り
⮚ その他資金提供を行うための条件
■実施時期
サービス提供者候補に対する聴取内容のうち①は、PFS事業の発案を終えた段階でマーケットサウンディングを行います。この時に、②の内容についても可能な範囲で聴取しておくと良いでしょう。
地方公共団体等が案件形成を進める中で追加の聴取事項が発生する可能性もあるため、一度限りの
意見聴取でなく、必要に応じて複数回行います。
■留意事項
共通的ガイドラインP9では、以下のとおりマーケットサウンディングにおける留意事項が示されています。
(ア)公平性、透明性に配慮し、事業参画を検討する複数の民間事業者を対象とする。
(イ)民間事業者に過度な負担が生じないようにする。
(ウ)民間事業者から提示された情報に含まれる企業秘密の取り扱いに配慮する。
PFS事業の事業化検討段階における支援事業について
名称 | 目的 | 問い合わせ先 |
地方公共団体によるP FSに係る事業案件形成支援事業 | 地方公共団体におけるさらなる事例構築を分野横断的に支援すること | 内閣府成果連動型事業推進室(03-6257-1168) |
ヘルスケアサービス社会実装事業(旧:健康寿命延伸産業創出推進事業) | 民間事業者等による地域や職域の課題に応えるヘルスケアサービスの持続可能なビジネスモデルの確立等に向けた取組を総合的に支援し、新たなヘルスケアサービスを社会実装すること | 経済産業省 商務・サービスグ ループ ヘルスケア産業課 (03-3501-1790) |
PFS事業の事業に対する補助・助成補助制度
名称 | 国の負担割合 | 活用対象 | 問い合わせ先 |
成果連動型民間委託契約方式推進交付金 | 1/2等 | 事業実施経 (成果連動部分) (ファイナンス部分) | 内閣府成果連動型事業推進室 (03-6257-1168) |
【国民健康保険】保険者努力支援交付金 (事業分) | 10/10 ※交付限度額や対象外経 など、申請要件があることに留意 | 事業実施経 | 厚生労働省保険局国民健康保険課(代表03-5253-1111 内線 3255) |
【介護保険】 地域支援事業交付金 | 事業による | 事業実施経 | 厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課 (03-3595-2889) |
地方創生推進交付金 | 1/2 | 事業実施経 (固定支払額部分) | 内閣府地方創生推進本部事務局(03-6257-1417 内線37179) |
本手引きが則ったガイドラインはコチラ
各事例を詳細に把握したい方はコチラ
各事例のロジックモデルはコチラ
評価結果や、評価結果を踏まえた事業の総括結果を把握したい方は
コチラ
ロジックモデルの作成についてさらに詳しく知りたい方はコチラ
関係資料一覧
内閣府「成果連動型民間委託契約方式 (PFS: Pay For Success) 共通的ガイドライン」 | https://www8.cao.go.jp/pfs/gu idelines.pdf |
内閣府「PFS事業事例集」 | https://www8.cao.go.jp/pfs/jir ei.html |
経済産業省「地方公共団体向けヘルスケア領域におけるソーシャルインパクトボンド導入ノウハウ集」 | https://www8.cao.go.jp/pfs/m anual.pdf |
神戸市「神戸市におけるSIBを活用した未受診もしくは治療中断中の糖尿病等罹患者に対する糖尿病性腎症等重症化予防のための受診勧奨・保健指導事業 最終評価結果を踏まえた事業総括」 | 2020/10/20201009001/20201 009001-1.pdf |
八王子市「八王子市における大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 最終評価結果を踏まえた事業総括」 | https://www.meti.go.jp/press/ 2020/03/20210331001/20210 331001-1.pdf |
内閣府 社会的インパクト評価の普及促進に係る調査「社会的インパクト評価実践研修 ロジック・モデル作成の手引き」 | https://www.npo- homepage.go.jp/uploads/h28- social-impact-sokushin-chousa- 02.pdf |
公益財団法人日本財団「ロジックモデル作成ガイド」 | https://www.nippon- foundation.or.jp/app/uploads/2 019/01/gra_pro_soc_01.pdf |
各事例の問い合わせ先
①糖尿病性腎症等重症化予防事業 | 神戸市福祉局 国保年金医療課 | TEL: 078-322-0217 |
②大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | 八王子市医療保険部成人健診課 | TEL: 042-620-7428 |
③SIBを用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 | 広島県健康福祉局健康づくり推進課 がん予防グループ | TEL: 082-513-3063 |
➃美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム | 美馬市保険福祉部保険健康課 | TEL: 0883-52-5601 E-mail: |
⑤要支援・要介護者自立支援・重度化防止業務 | 大牟田市福祉課 | TEL: 0944-41-2683 |
⑥大腸がん検診受診勧奨 PFS事業 | 浦添市健康づくり課 | TEL: 098-875-2100 |
⑦ショッピングリハビリによる介護予防事業 | 雲南市政策推進課 チャレンジ創生グループ | TEL: 0854-40-1011 E-mail: seisakusuishin@city.unnan.shima ne.jp |
Ⓑ服薬指導事業 | 大分県福祉保健部国保医療課 | TEL: 097-506-2764 |