⑤ 本モデル約款においては、第一号事業・匿名組合契約型モデル約款と異なり、優先劣後構造を採用する場合の条項案は記載していない。特例事業においては、営業者が SPC であることから、第一号事業と異なり、営業者が劣後出資をすることは想定しなかった。事業参加者の出資について複数に階層を分け、投資家のリスク許容度に応じて 各階層に係る優先劣後構造を採用する場合、約款との関係では、各階層の事業参加者との間の契約に係る約款を、相互に関連させた内容にしてそれぞれ作成することになると考 えられる。
4. 特例事業・匿名組合契約型モデル約款の解説
特例事業用匿名組合契約型 不動産特定共同事業契約約款
不動産特定共同事業法(平成 6 年法律第 77 号、その後の改正を含む。以下「法」という。)第 2 条第 9項に規定される特例事業者である (以下「本事業者」という。)と (以下「本出資者」という。)は、以下のとおり合意し、ここに同条第 3 項に規定される不動産特定共同事業契約(以下「本契約」という。)を締結する。
■前提条件
① 本モデル約款は、第三号事業者の不特法第 2 条第 3 項第 2 号に掲げる契約に係る約款(特例事業・匿名組合契約型約款)である。
② 本モデル約款は、基本的に、特例事業者が、各事業参加者との間で匿名組合契約を締結し、事業参加者からの出資金をもって第三者又は不動産特定共同事業者から開発後の完成物件を対象不動産 として取得し、当該対象不動産の賃貸及び売却等を行う事業を想定して作成している。また、平成 29 年の不特法改正により、特例投資家のみを事業参加者とする不動産特定共同事業契約であって、当該不動産特定共同事業契約により当該不動産特定共同事業契約上の権利義務を他の特例投資家 に譲渡する場合以外の譲渡が禁止される旨の制限が付されている場合には、約款規制は適用されなくなったため、事業参加者は特例投資家以外の投資家(以下、「一般投資家」という。)を想定している。
③ 本モデル約款別紙 1 物件目録には、いわゆる開発型の仕組みを想定して新築建物に関する記載欄も設けているが、対象不動産の開発を想定した約款を作成する場合には、約款本体においても開発に関する条項を追加するなど、対象不動産の開発を踏まえた約款の内容にする必要がある。なお、一般投資家が事業参加者となる特例事業においては、対象不動産について、宅地の造成、建物の建築に関する工事又は施行規則第 2 条第 1 項に定める工事であってその費用の額が施行規則第 2 条第 2
項に定める金額を超えるものを行うことはできないため(不特法第 2 条第 8 項第 4 号)、かかる工事を行う事業は想定していない。
④ 本モデル約款は、倒産隔離型の不動産特定共同事業に係る約款であることから、金融機関等から不動産特定共同事業についてレバレッジを効かせるための借入れを行うことを想定したものとしている。
⑤ 本モデル約款においては、第一号事業・匿名組合契約型モデル約款と異なり、優先劣後構造を採用する場合の条項案は記載していない。特例事業においては、営業者が SPC であることから、第一号事業と異なり、営業者が劣後出資をすることは想定しなかった。事業参加者の出資について複数に階層を分け、投資家のリスク許容度に応じて各階層に係る優先劣後構造を採用する場合、約款との関係では、各階層の事業参加者との間の契約に係る約款を、相互に関連させた内容にしてそれぞれ作成することになると考えられる。
■前文の解説
旧標準約款には前文は記載されていなかったが、本モデル約款には前文を記載している。
これは、本モデル約款の○部分及び空欄部分(下線部分)に必要な記載を追記することによって、そのまま不動産特定共同事業契約に係る契約書(以下、「個別契約書」という場合がある。)として利用できるようにするためである。
前文においては、特例事業者及び本契約の不特法上の位置付けを明確にしているほか、一般的な契約書における前文の内容を踏まえたものとしている。
本事業者の名称及び本出資者の名称については約款作成時には空欄のままにしておき、個別契約書作成時に具体的な記載をすることを想定している。 なお、本モデル約款においては、約款記載事項として「欄」を記載すべきとされているもののほか(第 1条第 2 項の解説参照)、約款作成時に具体的な記載をすることが想定されない事項については空欄にしており、約款作成時に具体的な記載をすることも可能な事項については○としている。○とされている箇所であっても、約款作成時に必ずしもすべて具体的な記載をしなければならないものではないが、箇所によっては、約款の審査にあたり、具体的な記載をすることを求められる可能性がある。 | |
(本契約及び本事業) 第 1 条 本契約は、法第 2 条第 3 項各号に掲げる契約の種別のうち、同項第 2 号に規定する不動産特定共 同事業契約とする。また、本契約は、商法(明治 32 年法律第 48 号、その後の改正を含む。以下同じ。)第 535 条に規定する匿名組合契約とする。 【施行令第 6 条第 1 項第 1 号、施行規則第 11 条第 2 項第 1 号】 【法第 25 条第 1 項第 1 号】 2 本事業者は、別紙 1 記載の不動産(以下「対象不動産」という。)を本契約に係る不動産取引の目的となる不動産として、本契約に基づく法第 2 条第 8 項に規定される特例事業(以下「本事業」という。)を行うものとする。 【施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号イ】 【法第 25 条第 1 項第 2 号、施行規則第 47 条第 3 項第 1 号】 3 本事業者は、本事業者が本事業を専ら行うことを目的とする法人であることを確認する。本事業者は、本事業以外の事業に従事しないものとする。 | ■第 1 条の解説 第 1 条は、本契約の契約の種別や性質、及び本事業の概要について規定する。 1. 第 1 項について 不動産特定共同事業者の約款には、不特法第 2 条第 3 項各号に掲げる契約の種別に関する事項とし て、不特法第 2 条第 3 項各号に掲げる契約の種別のいずれに該当するかを明示して記載する必要があ る(施行令第 6 条第 1 項第 1 号及び施行規則第 11 条第 2 項第 1 号)。 契約成立時交付書面には、不動産特定共同事業契約の第 2 条第 3 項各号に掲げる契約の種別を記載 する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 1 号)。 第 1 条第 1 項前段は、本契約が不特法第 2 条第 3 項第 2 号に規定する不動産特定共同事業契約であることを明記することによって、これらの約款記載事項及び契約成立時交付書面記載事項について規定するものである。 また、第 1 条第 1 項後段においては、商法第 535 条に規定する匿名組合契約であることを記載することによって、本契約の法的性質を確認している。かかる規定によって、本契約について、本契約に記載される内容のほか、商法第2 編第4 章の規定やこれに係る判例が適用されることが明らかになる。 2. 第 2 項について 約款には、不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の目的となる不動産の特定に関する事項として、不動産特定共同事業契約を締結するときに対象不動産の所在、地番、用途、土地面積、延べ床面積その他の対象不動産を特定するために必要な事項を記載する欄を記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 2 号及び施行規則第 11 条第 2 項第 2 号イ)。 第 1 条第 2 項は、本契約における不動産取引の目的となる不動産が別紙 1 記載の不動産であること を明示すると共に、別紙 1 において、対象不動産の所在、地番、用途、土地面積、延べ床面積その他の対象不動産を特定するために必要な事項を記載する欄を設けることにより、かかる約款記載事項について規定するものである。 契約成立時交付書面には、不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の目的となる不動産を特定するために必要な表示として、対象不動産の所在、地番、用途、土地面積、延べ床面積その他の対象不動産を特定するために必要な表示に関する事項を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 2 号 及び施行規則第 47 条第 3 項第 1 号)。 個別契約書の作成時に別紙 1 の各項目に当該契約における対象不動産に関する具体的な記載をすることによって、かかる契約成立時交付書面記載事項が充足されることになる。 |
また、第 1 条第 2 項は、本契約の対象となる匿名組合事業が別紙 1 の不動産を対象不動産として不 | |
動産取引を行う特例事業であることを明らかにするものでもある。 | |
3. 第 3 項について | |
特例事業者は、不動産特定共同事業契約を締結して当該不動産特定共同事業契約に基づき営まれる | |
不動産取引から生ずる収益又は利益の分配を行う行為を専ら行うことを目的とする法人である必要 | |
がある(不特法第 2 条第 8 項第 1 号)。 | |
また、特例事業は倒産隔離型の不動産特定共同事業が想定されており、本事業者については、本事 | |
業以外の事業を行うことによって本事業以外のリスクを負うことを避けることが求められると考え | |
られる。 | |
第 1 条第 3 項は、これらを踏まえ、本事業者が本事業のみを行う特別目的会社であることを確認す | |
ると共に、本事業者に他の事業に従事しない義務を負わせるものである。 | |
4. 施行規則の改正について | |
平成 29 年の改正前の施行規則第 8 条第 2 項第 2 号ロにおいては、「売買、交換又は賃貸借のいずれ | |
の方法により対象不動産の取引を行うかが明示されているもの」であることが約款記載事項とされて | |
いたが、同改正によってかかる規定は削除された。したがって、本モデル約款においては、旧標準約 | |
款と異なり、この点についての直接的な記載は行っていない。 | |
(出資) | ■第 2 条の解説 |
第 2 条 本事業に対する出資予定総額は金 円とし、本出資者は、本事業に対して 金 円(出資予定総額に対する出資の割合: %)を出資するものとし、 年 月 日までに本事業者に対し出資金を支払うものとする。本項に基づき出資された金額を以下「本出資額」とい | 第 2 条は、本出資者による出資等について規定する。 1. 第 1 項について 本契約は、出資を伴う契約のうち金銭をもって出資の目的とする契約であるため、約款に、不動産 |
う。 | 特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、本契約を締結するときに支払期日又は支払 |
【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号イ】 | 期限及び出資総額の限度額又は出資予定総額を記載する欄を設ける必要がある(施行令第 6 条第 1 項 |
【施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ニ】 | 第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号イ)。 |
2 本事業者は、本事業につき、本出資者以外の出資者と別途、前項に定める出資の金額及び出資予定総額 | 第 2 条第 1 項は、これを踏まえ、本出資者の出資金の支払期限及び出資予定総額を記載する欄を規 |
に対する出資の割合を除いて本契約と同一内容の匿名組合契約を締結の上、出資を受けることができるも | 定したものである。 |
のとする。 | なお、平成 29 年の改正により、施行規則の文言が「表示」から「欄」に変更されたため、支払期 |
3 本出資者は、本事業に追加して出資する義務を負わない。 | 限の日付及び出資予定総額の金額を記載する箇所を空欄としている。 |
【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ニ】 | 本契約は、出資を伴う契約のうち金銭をもって出資の目的とする契約に該当するため、契約成立時 |
4 本事業者は、本出資者に本出資額の返還を保証する義務を負わない。本出資者及び本事業者は、本出資 | 交付書面記載事項として、事業参加者の出資額又は出資の限度額及び出資予定総額に対する出資の割 |
額の返還について保証されたものではないことをここに確認する。 | 合に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ニ)。 |
【施行規則第 11 条第 1 項第 2 号、同条第 2 項第 10 号イ】 | 第 2 条第 1 項は、これを踏まえ、本出資者の出資額及び出資予定総額に対する出資の割合を記載す |
【施行規則第 47 条第 2 項第 10 号、同条第 3 項第 3 号イ】 | る欄も設けることにより、個別契約書の作成時にかかる欄に具体的な金額及び割合を補充することに |
5 本事業に係る損失は、第 9 条第 4 項に基づき、本出資者に帰属する。但し、本出資者の損失の分担額は、 | よって当該契約成立時交付書面記載事項が充足されるようにしている。 |
本出資額を限度とする。 | 平成 29 年の施行規則の改正によって、「出資額又は出資の限度額」及び「出資予定総額に対する出 |
【施行規則第 11 条第 1 項第 2 号】 | 資の割合」は約款記載事項ではなくなったため、これらを約款に記載する必要はなくなった。しかし、 |
【施行規則第 47 条第 2 項第 10 号】 | これらは新たに契約成立時交付書面記載事項として追加されているため、本モデル約款のように約款 |
6 本事業に関して本事業者が取得した対象不動産その他の資産の所有権は、全て本事業者に帰属するものとし、本契約の定めに従って金銭の支払を受けることができることを除き、本出資者は、本事業に帰属する財産の全てについて所有権その他いかなる権利も有しない。
【施行規則第 11 条第 1 項第 1 号、同条第 2 項第 9 号】
【施行規則第 47 条第 2 項第 9 号】
7 本事業に係る第三者に対する債務は本事業者が負担し、本出資者は、本事業に関して、第三者に対し、債務を負担しない。
【施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ロ】
の空欄に具体的な記載を補充することによって個別契約書を作成し、当該契約書をもって契約成立時交付書面とすることを想定する場合には、約款にこれらを記載する欄も設ける必要があるので留意されたい。
2. 第 2 項について
第 2 条第 2 項は、本事業者が、本事業に関し、他の事業参加者との間でも本契約と基本的に同一内容の匿名組合契約を締結し、出資を受けることを注意的に規定するものである。
なお、匿名組合契約においては、各匿名組合員が営業者との間で締結する契約はそれぞれ別個独立の契約であり、他の匿名組合契約の効力は本契約の効力に影響を及ぼさない。
3. 第 3 項について
不動産特定共同事業契約においてあらかじめ定められた出資又は費用の額を超えて負担を求める場合にあっては、その要件及び事業参加者の同意に係る手続その他これに準ずるxxな手続に関する定めが約款記載事項となる(施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ニ)。
そのため、かかる要件及びxxな手続に関する定めを約款に記載することによって、事業参加者に一定限度の追加出資義務を課す内容の特約を規定することも可能である。
しかし、本モデル約款においては、本出資者に追加出資義務を負わせないこととし、追加出資の要件及びxxな手続に関する定めは置いていない。
4. 第 4 項について
本契約は出資を伴う契約であるため、元本の返還について保証されたものではない旨を明示することが約款記載事項及び契約成立時交付書面記載事項となる(施行規則第 11 条第 1 項第 2 号、同条第
2 項第 10 号イ、施行規則第 47 条第 2 項第 10 号、同条第 3 項第 3 号イ)。
第 2 条第 4 項前段は、本事業者の義務という観点からこの旨を規定するものであり、同項後段は、約款記載事項及び契約成立時交付書面記載事項をxxに記載する観点から、当該事項を当事者間で確認する旨の規定を設けたものである。
5. 第 5 項について
不動産特定共同事業契約に係る不動産取引から損失が生じた場合における当該損失の負担に関する事項は、約款記載事項であり、かつ、契約成立時交付書面記載事項でもある(施行規則第 11 条第
1 項第 2 号、施行規則第 47 条第 2 項第 10 号)。
第 2 条第 5 項は、本事業における損失の負担について、本事業に係る損益の分配の規定である第 9
条第 4 項を引用し、また、本事業における出資者の損失の分担について、出資の額を限度とすることを定めることによって、かかる約款記載事項及び契約成立時交付書面記載事項が充足されるようにするものである。
第 2 条第 5 項但書の規定により、出資の額を超える損失が発生した場合、本出資者に対しては出資の額の限度で損失が帰属することになり、出資の額を超える部分の損失は営業者たる本事業者の負担となる。
6. 第 6 項について
約款には、対象不動産の所有権の帰属に関する事項として、対象不動産の所有権の帰属する主体に関する定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 1 号、同条第 2 項第 9 号)。
また、契約成立時交付書面についても、同様に、対象不動産の所有権に関する事項を記載する必要 | |
がある(施行規則第 47 条第 2 項第 9 号)。 | |
匿名組合においては、匿名組合員の出資は営業者の財産に属し(商法第 536 条第 1 項)、営業者が | |
自己の営業としてその事業を遂行するものであるから(商法第 535 条及び第 536 条第 3 項)、匿名組 | |
合事業に係る財産はすべて営業者に帰属することになる。 | |
第 2 条第 6 項は、これらを踏まえ、対象不動産のみならず、本事業に関し本事業者が取得する財産 | |
について、本事業者に帰属し、本出資者は所有権その他の権利を有しないことを確認的に規定するも | |
のである。 | |
7. 第 7 項について | |
契約成立時交付書面には、事業参加者の第三者に対する責任の範囲を記載する必要がある(施行規 | |
則第 47 条第 2 項第 6 号ロ)。 | |
匿名組合における匿名組合員は、匿名組合事業について第三者に対する義務を負わないのが原則で | |
ある(商法第 536 条第 4 項)。 | |
第 2 条第 7 項は、これらを踏まえ、事業参加者が第三者に対して債務を負担しないことを確認的に | |
規定するものである。 | |
(対象不動産の取得) | ■第 3 条の解説 |
第 3 条 本事業者は、第 2 条第 1 項及び本事業につき締結された他の匿名組合契約(以下「他の匿名組合 | 第 3 条は、本事業者による対象不動産の取得等について規定する。 |
契約」という。)に基づき出資された金銭をもって、 年 月 日までに対象不動産を 金 円で取得する。但し、本事業者は、本出資者に対して書面又は電磁的方法(不動産特定共同事業法施行令(平成 6 年政令第 413 号、その後の改正を含む。)第 8 条第 1 項に定義する。以下同じ。) | 1. 第 1 項について 本契約は、出資を伴う契約のうち金銭をもって出資の目的とする契約であるため、約款において、不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の内容に関する事項として、対象不動産の取得の予定時期 |
により通知することにより、合理的な範囲内で当該期限を変更することができるものとする。 | に関する定めを記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ハ)。 |
【施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ハ】 | 第 3 条第 1 項は、これを踏まえ、対象不動産の取得の予定時期について規定するものである。なお、 |
【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ロ】 | 対象不動産の取得の予定時期については、約款の作成時に具体的な日付を記載することはできないた |
2 本事業者は、前項に定める期限までに対象不動産のいずれかを取得できなかった場合には、第 2 条第 1 | め、日付についてはこれを記載する欄を設けている。 |
項及び他の匿名組合契約に基づく出資の総額(以下「出資総額」という。)のうち、当該対象不動産により | また、約款においては、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、出資又は |
営むことを予定していた不動産取引を行うのに必要な額として出資された金員を、出資総額に対する本出 | 賃貸若しくは賃貸の委任の目的である財産を、当該不動産特定共同事業契約に係る不動産取引により |
資額の割合(以下「出資割合」という。)に応じて本出資者に返還するものとする。 | 運用する旨を明示して記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 |
【施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ハ】 | 4 号ロ)。 |
3 本事業においては、対象不動産の変更は行わないものとする。 | 本モデル約款においては、本契約及び他の匿名組合契約に基づき出資される金銭を、対象不動産の |
【施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ロ】 | 取得、賃貸及び売却等によって運用する事業を想定している。第 3 条第 1 項は、これらのうち本契約 |
及び他の匿名組合契約に基づき出資される金銭が対象不動産の取得に充てられることを明示するも | |
のであり、対象不動産の賃貸について定める第 4 条第 2 項及び対象不動産の売却等について定める第 | |
5 条とあいまって、かかる約款記載事項が充足されることになる。 | |
本契約締結後に事情の変更があり、本項に記載した予定時期までに対象不動産を取得できなくなる | |
ことも考えられる。この場合、第 3 条第 2 項により、当該対象不動産により営むことを予定していた | |
不動産取引を行うのに必要な額として出資された金員を本出資者に対して返還する必要が生ずるこ |
とになる。もっとも、対象不動産の取得が一時的に遅延した場合などにおいては、出資された金員の返還を行うのではなく、予定時期を延期し、本事業を遂行することが合理的な場合も考えられる。そこで、但書を設け、本事業者が書面又は電磁的方法によって通知することにより、合理的な範囲内でかかる予定時期を変更できることにしている。
2. 第 2 項について
本契約は、出資を伴う契約のうち金銭をもって出資の目的とする契約であるため、約款に、不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の内容に関する事項として、予定時期までに取得できなかった対象不動産がある場合においては、当該対象不動産により営むことを予定していた不動産取引を行うのに必要な額として出資された額について出資総額に対する出資の割合に応じて事業参加者に対し返還する旨その他これに準ずるxxな定めを記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規
則第 11 条第 2 項第 2 号ハ)。
第 3 条第 2 項は、かかる約款記載事項を規定するものである。
3. 第 3 項について
約款には、対象不動産の変更の予定の有無に関する定めを記載する必要がある(施行令第 6 条第 1
項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ロ)。
第 3 条第 3 項は、かかる約款記載事項を規定するものである。
なお、かかる約款記載事項については、本契約の対象となる事業が対象不動産の変更を行わない事業であるという観点から、本事業について定める第 1 条に規定することも考えられるが、本モデル約款においては、対象不動産の変更は新たな対象不動産の取得を伴うことから、対象不動産の取得について定める第 3 条に規定している。
(対象不動産等の運用)
第 4 条 本事業者は、本契約に定める対象不動産に係る不動産取引その他本事業の目的を達成するために必要と判断する行為を行うことができる。本事業者は、善良な管理者の注意義務をもって誠実かつxxに本事業を遂行するものとする。但し、本事業者は、対象不動産について、宅地の造成、建物の建築に関する工事又は不動産特定共同事業法施行規則(平成 7 年大蔵省・建設省令第 2 号、その後の改正を含む。以下「規則」という。)第 2 条第 1 項に定める工事であってその費用の額が規則第 2 条第 2 項に定める金額を超えるものを行ってはならない。
2 本事業者は、対象不動産を賃貸して運用するものとする。
【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ロ】
3 本事業者は、本事業の目的のために、金融機関との間で金銭消費貸借契約(以下「本借入契約」という。)を締結し、本借入契約に従って金銭を借り入れ、本借入契約に基づく債務を担保するために対象不動産に担保権を設定することができる。本出資者及び本事業者は、本借入契約に基づく借入れを行うため、別紙 2借入関連条項の規定に従うものとする。
4 本事業者は、対象不動産を本事業の目的以外のために担保に提供し、又は出資の目的としてはならない。
【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ホ】
5 本事業者は、本事業に係る資産に属する金銭を運用する場合(第 2 条第 1 項及び他の匿名組合契約に基
■第 4 条の解説
第 4 条は、期中における対象不動産などの本事業の財産の運用等について規定する。
1. 第 1 項について
匿名組合においては、営業者が業務執行を行う権限を有する(商法第 535 条及び第 536 条第 3 項参照)。
第 4 条第 1 項第 1 文は、この点を踏まえ、本事業者が本事業に必要な行為を行う権限を有することを確認的に規定するものである。
匿名組合における営業者は善良な管理者の注意をもって営業を遂行しなければならないと解釈されている(民法第 671 条、第 644 条類推適用)。また、不動産特定共同事業者は、xxを旨とし、誠実にその業務を行わなければならない(不特法第 14 条)。
第 4 条第 1 項第 2 文は、これらを踏まえ、本事業者の善良な管理者としての注意義務及び誠実かつxxに事業を遂行する義務を規定するものである。
特例投資家のみを相手方又は事業参加者とする場合には、約款に基づいて不動産特定共同事業契約を締結する必要がないため(不特法第 68 条第 3 項及び第 4 項)、本モデル約款は一般投資家が事業参加者となる場合を想定するものである。しかるに、一般投資家が事業参加者となる特例事業においては、対象不動産について、宅地の造成、建物の建築に関する工事又は施行規則第 2 条第 1 項に定める
づく出資金を第 3 条第 1 項に定める期限までの間運用する場合を含む。)、金融機関(規則第 11 条第 2 項第 14 号ロに規定するものに限る。)の預金口座に預金する方法により運用するものとする。
【施行規則第 11 条第 1 項第 6 号、同条第 2 項第 14 号】
【施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ニ】
【施行規則第 47 条第 2 項第 14 号】
6 本事業者は、法第 58 条第 5 項により適用される法第 27 条に基づき、本事業に係る財産を自己の固有財産と分別して管理するものとする。本出資者及び本事業者は、本項に基づく分別管理が信託法(平成 18 年法律第 108 号、その後の改正を含む。)第 34 条に基づく分別管理とは異なることを確認する。
【法第 25 条第 1 項第 4 号、施行規則第 47 条第 3 項第 2 号イ及びロ】
7 修繕費、損害保険料その他対象不動産を管理するために必要な費用は、本事業の費用として本事業に係る資産から支出する。
【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ハ】
【法第 25 条第 1 項第 4 号、施行規則第 47 条第 3 項第 2 号ハ】
工事であってその費用の額が施行規則第2 条第2 項に定める金額を超えるものを行うことができない
(不特法第 2 条第 8 項第 4 号)。そこで、第 4 条第 1 項但書に、本事業者がかかる工事を行うことを禁止する規定を設けた。
2. 第 2 項について
約款においては、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、出資又は賃貸若しくは賃貸の委任の目的である財産を、当該不動産特定共同事業契約に係る不動産取引により運用する旨を明示して記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ロ)。
第 3 条第 1 項の解説で述べたとおり、本モデル約款においては、本契約及び他の匿名組合契約に基づき出資される金銭を、対象不動産の取得、賃貸及び売却等によって運用する事業を想定している。第 4 条第 2 項は、これらのうち、本契約及び他の匿名組合契約に基づき出資される金銭によって取得する対象不動産を賃貸によって運用することを明示するものであり、対象不動産の取得について定める第 3 条第 1 項及び対象不動産の売却等について定める第 5 条とあいまって、かかる約款記載事項が充足されることになる。
3. 第 3 項について
本モデル約款は、本事業者が金融機関等から不動産特定共同事業についてレバレッジを効かせるための借入れを行うことを想定したものである。そこで、第 4 条第 3 項第 1 文において、本事業者が金融機関等からの借入れを行い、対象不動産に担保権を設定することができる旨を規定した。
金融機関等から不動産特定共同事業についてレバレッジを効かせるための借入れを行う場合、金融機関の貸付債権を保全するために、金融機関等から、本契約に様々な条項を規定することを求められることが想定される。もっとも、求められる条項は金融機関等や案件によって異なり得るため、本モデル約款においては、これを本文に規定せず、別紙 2 借入関連条項に記載する欄を設けることとし、
第 4 条第 3 項第 2 文において当該借入関連条項の規定に従う旨を定めることとした。
4. 第 4 項について
本契約は出資を伴う契約であるため、約款に、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、対象不動産を当該不動産特定共同事業契約に基づく不動産特定共同事業の目的以外のために担保に供し、又は出資の目的とすることを禁ずる旨を明示して記載する必要がある(施行令第 6
条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ホ)。
第 4 条第 4 項は、かかる約款記載事項を規定するものである。
5. 第 5 項について
約款には、不動産特定共同事業の業務を行う上でのxxx(以下、「業務上の余裕金」という。)の運用に関する事項として、施行規則第 11 条第 2 項第 14 号イ及びロに掲げる方法によるほか、業務上
の余裕金を運用しない旨を記載する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 6 号、同条第 2 項第 14 号)。また、対象不動産の取得の予定時期までに出資された金銭を運用する場合にあっては、約款に、不
動産特定共同事業契約に係る不動産取引の内容に関する事項として、当該出資された金銭について約款に定められた施行規則第 11 条第 1 項第 6 号に掲げる事項に関する規定を適用する旨の表示を記載
する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ニ)。
さらに、契約成立時交付書面には、業務上の余裕金の運用に関する事項を記載する必要がある(施
行規則第 47 条第 2 項第 14 号)。
第 4 条第 5 項は、これらを踏まえ、対象不動産の取得の予定時期までに出資された金銭を含む本事
業に係る資産に属する金銭について、施行規則第 11 条第 2 項第 14 号ロに規定される金融機関の預金口座に預金する方法により運用することを規定するものである。
なお、かかる記載は 1 つの参考例にすぎない。約款の作成にあたっては、想定される金銭の運用方
法に応じて、金融機関の範囲を「銀行」等に限定したり、「施行規則第 11 条第 2 条第 14 号イ又はハに定める方法」全てを対象とすることなども考えられる。
6. 第 6 項について
契約成立時交付書面には、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、不特法第 27 条に規定する財産の分別管理を行っている旨、及び当該分別管理が信託法第 34 条に基づく分別
管理とは異なるときは、その旨を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 4 号、施行規則第 47
条第 3 項第 2 号イ及びロ)。
第 4 条第 6 項は、これらの契約成立時交付書面記載事項を規定するものである。
不特法第 27 条は、不動産特定共同事業契約に係る財産を、自己の固有財産及び他の不動産特定共同事業契約に係る財産と分別して管理すべき旨を定めるが、本事業者については本事業以外の事業に従事することは想定されていないため(第 1 条第 3 項)、自己の固有財産と分別して管理する旨のみ規定している。
また、信託法第 34 条に基づく分別管理においては、信託不動産について信託の登記を行うことによって分別管理をすることができるが、匿名組合においては、そのような制度はなく、対象不動産は営業者名義で登記されることになるため、本項に基づく分別管理が信託法第 34 条に基づく分別管理とは異なることを確認する規定にしている。
7. 第 7 項について
約款には、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、修繕費、損害保険料その他対象不動産を管理するために必要な費用の負担に関する定めを記載する必要がある(施行令第 6
条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ハ)。
また、契約成立時交付書面についても、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、修繕費、損害保険料その他対象不動産を管理するために必要な費用の負担に関する事項を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 4 号、施行規則第 47 条第 3 項第 2 号ハ)。
第 4 条第 7 項は、これらを踏まえ、修繕費、損害保険料その他対象不動産を管理するために必要な費用を本事業に係る資産の負担とする旨を規定するものである。
なお、旧標準約款においては、対象不動産の修繕の費用に充てるため相当額の金銭の積立てを行う旨の規定や、対象不動産に相当と認められる方式及び額の損害保険契約を締結する旨の規定があったが、これらは約款記載事項でも契約成立時交付書面記載事項でもないため、本モデル約款においては記載していない。もっとも、約款の作成にあたり、これらの事項など、本事業者が行う事業の遂行について具体的な定めを置き、本事業者が遂行すべき事業の内容を明確化することも考えられるところである。
(対象不動産の処分) 第 5 条 本事業者は、対象不動産の売却等(売却し、又は本事業者の固有財産とし、若しくは他の不動産特定共同事業契約に係る財産とする行為をいう。以下同じ。)を相当と判断するときは、適切な手続により対象不動産の売却等を行うものとする。 【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ロ】 【施行規則第 11 条第 1 項第 4 号、同条第 2 項第 12 号イ】 【施行規則第 47 条第 2 項第 12 号】 | ■第 5 条の解説 第 5 条は、対象不動産の処分について規定する。 約款には、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、出資又は賃貸若しくは賃貸の委任の目的である財産を、当該不動産特定共同事業契約に係る不動産取引により運用する旨を明示して記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ロ)。 第 3 条第 1 項の解説で述べたとおり、本モデル約款においては、本契約及び他の匿名組合契約に基づき 出資される金銭を、対象不動産の取得、賃貸及び売却等によって運用する事業を想定している。第 5 条は、これらのうち、本契約及び他の匿名組合契約に基づき出資される金銭によって取得する対象不動産を売却等によって運用することを明示するものであり、対象不動産の取得について定める第 3 条第 1 項及び対象 不動産の賃貸について定める第 4 条第 2 項とあいまって、かかる約款記載事項が充足されることになる。また、約款には、対象不動産を売却し、又は自己の固有財産とし、若しくは他の不動産特定共同事業契 約に係る財産とする行為(以下、「対象不動産の売却等」という。)に関する事項として、対象不動産の売却等の予定の有無並びに対象不動産の売却等を予定する場合においては、当該対象不動産の売却等の手続に関する定めを記載する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 4 号、同条第 2 項第 12 号イ)。 さらに、契約成立時交付書面には、対象不動産の売却等に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 12 号)。 第 5 条は、これらを踏まえ、対象不動産の売却等の予定があること、及び対象不動産の売却等の手続を規定するものである。 対象不動産の売却等の手続については、出資者全員にとっての重大な関心事であるため、約款作成にあたり、商品設計に応じて、出資者の意思を反映させるための手続等を詳細に規定することも考えられる。もっとも、適時に売却を行うためには意思決定を迅速に行う要請もあるところ、匿名組合における業務執行は営業者が行うものであることから(商法第 535 条、第 536 条第 3 項)、本モデル約款においては、旧標準約款と同様に、本事業者が相当と判断するときに適切な手続によって対象不動産の売却等を行う旨を規定するに留めている。 なお、平成 29 年の施行規則の改正により、対象不動産の売却等の時期については、約款記載事項ではなくなった。 |
(業務の委託) 第 6 条 本事業者は、本事業を営むため、法の規定に従い、本事業に関し営まれる不動産取引に係る業務を、法第 2 条第 8 項第 2 号に規定される第三号事業を行う不動産特定共同事業者である以下の者(以下「第三号事業者」という。)に委託するものとする。当該委託に係る契約(以下「本委託契約」という。)の概要は別紙 3 本委託契約の概要に記載のとおりとする。 商号又は名称:○住 所:○代表者の氏名:○許 可 番 号:○ 【施行規則第 11 条第 1 項第 9 号、同条第 2 項第 17 号イ及びロ】 | ■第 6 条の解説 第 6 条は、本事業者の第三号事業者及び第四号事業者に対する業務の委託について規定する。 1. 第 1 項について 特例事業者は、不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引に係る業務を第三号事業者に委託する必要がある(不特法第 2 条第 8 項第 2 号)。 第三号事業者の約款には、不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引に係る業務の委託先に関する事項として、不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引に係る業務の委託先の商号又は名称及び住所並びに不動産特定共同事業契約の締結をするときに当該委託に係る契約の概要を記載する欄を記載する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 9 号、同条第 2 項第 17 号イ及びロ)。 第 6 条第 1 項は、これらを踏まえ、本事業者が本事業に関し営まれる不動産取引に係る業務を第三 |
【施行規則第 47 条第 2 項第 2 号、第 3 号】 2 本事業者は、本委託契約に基づき、第三号事業者に対し、前項に規定する業務の対価として、以下のとおり報酬を支払う。 (1) [アップフロントフィー/本事業の組成の対価]として、対象不動産の取得時に、[取得価格の○% /金○円] (2) 各計算期間(第 9 条第 2 項に定める。以下同じ。)に係る対象不動産の管理運営の対価として、第 9 条第 5 項及び第 11 条第 2 項の金銭の分配時に、[[対象不動産の取得価格/対象不動産の賃料収入/本事業に係る分配金の合計額/本事業に係る税引前利益]の○%[(但し、当該金額が対象不動産の取得価格の○%を下回る場合には、対象不動産の取得価格の○%)]/金○円](但し、計算期間が ○ヶ月に満たない場合又は○ヶ月を超える場合には、実日数に基づく日割計算(1 円未満の端数は切り捨て)により算出する。) (3) 対象不動産の全部又は一部の売却等の対価として、第 9 条第 6 項及び第 11 条第 2 項の金銭の分配時に、売却等の価格の○% 【施行令第 6 条第 1 項第 8 号、施行規則第 11 条第 2 項第 8 号】 【施行規則第 47 条第 2 項第 7 号】 3 本事業者は、法の規定に従い、本契約及び他の匿名組合契約の締結の勧誘の業務を法第 2 条第 8 項第 3号に規定される第四号事業を行う不動産特定共同事業者(以下「第四号事業者」という。)に委託したことを確認する。本事業者は、本事業に関し匿名組合契約の締結の勧誘(追加出資の勧誘を含む。)を行う場合、第四号事業者にその勧誘を行わせ、自らその勧誘を行わないものとする。 | 号事業者に委託することを規定すると共に、同項及び別紙 3 において第三号事業者の商号又は名称及び住所並びに本委託契約の概要を記載する欄を設けたものである。 特例事業に係る契約成立時交付書面には、委託特例事業者の委託を受けた不動産特定共同事業者の商号又は名称、住所及び代表者の氏名並びに不動産特定共同事業者の許可番号を記載する必要がある (施行規則第 47 条第 2 項第 2 号、第 3 号)。 第 6 条第 1 項は、これを踏まえ、第三号事業者の商号又は名称、住所、代表者の氏名及び許可番号を記載する欄を設けている。個別契約書の作成時にかかる欄に第三号事業者に関する具体的な記載をすることによって、かかる契約成立時交付書面記載事項が充足されることになる。 2. 第 2 項について 不動産特定共同事業者の約款には、不動産特定共同事業者の報酬に関する事項として、不動産特定共同事業者の報酬の額の算定の方法並びに収受の時期及び方法に関する定めを記載する必要がある (施行令第 6 条第 1 項第 8 号、施行規則第 11 条第 2 項第 8 号)。 また、契約成立時交付書面には、不動産特定共同事業者の報酬に関する事項を記載する必要がある (施行規則第 47 条第 2 項第 7 号)。 第 6 条第 2 項は、これらを踏まえ、第三号事業者の報酬の額の算定の方法、収受の時期、及び収受の方法について規定するものである。 報酬の定め方は各不動産特定共同事業者毎に異なるため、本モデル約款においては、約款作成に際して参考になるようにいくつかのサンプルを記載している。約款の作成にあたっては、商品設計に応じて、不要な記載は削除し、報酬の額の算定方法を選択するなどして、第三号事業者の報酬につき明確に定めることが重要である。 3. 第 3 項について 特例事業者は、不動産特定共同事業契約の締結の勧誘の業務を第四号事業者に委託する必要がある (不特法第 2 条第 8 項第 3 号)。 第 6 条第 3 項は、これを踏まえ、本事業者が、本契約及び他の匿名組合契約の締結の勧誘の業務を第四号事業者に委託したことを確認すると共に、期中において匿名組合契約の締結の勧誘又は追加出資の勧誘を行う場合には第四号事業者にその勧誘を行わせることを本事業者の義務として規定するものである。 なお、「不動産特定共同事業者の報酬」(施行規則第 11 条第 2 項第 8 号)は第一号事業者又は第三 号事業者の報酬を意味すると解されているため(平成 29 年の施行規則改正に係るパブリックコメント回答 No.25)、第四号事業者の報酬については約款に記載する必要はない。これに対し、契約成立時交付書面に記載すべき「不動産特定共同事業者の報酬」(施行規則第 47 条第 2 項第 7 号)については、第四号事業者が交付すべきものであるため、第四号事業者の報酬も記載すべきと考えられる。本モデル約款には記載がないが、約款の空欄部分等に必要な記載を追記することによってそのまま個別契約書兼契約成立時交付書面として利用する場合には、第四号事業者の報酬についても約款に記載する必要があるので留意する必要がある。 |
(本事業の状況に係る報告等)【施行規則第 47 条第 2 項第 6 号イ、同項第 11 号】 | ■第 7 条の解説 |
第 7 条 本事業者は、毎年 月 日までに、第三号事業者をして、法第 28 条第 2 項に定める本事業に係る財産の管理の状況について報告書を作成させ、本出資者に対し書面により交付させ、又は電磁的方法により提供させるものとする。
【施行規則第 11 条第 1 項第 3 号、同条第 2 項第 11 号イ】
2 本事業者は、本出資者が請求する場合には、第三号事業者をして、財産の管理の状況について説明させるものとする。
3 本事業者は、第三号事業者をして、法第 29 条に定める本事業に係る業務及び財産の状況を記載した書類を事業所ごとに備え置かせ、本出資者の請求に応じてこれを閲覧させるものとする。
【施行規則第 11 条第 1 項第 3 号、同条第 2 項第 11 号ロ】
4 本事業者は、第三号事業者をして、法第 30 条第 1 項に定める本事業に係る事業参加者名簿を作成及び保存させ、本出資者の請求に応じてこれを閲覧させるものとする。
【施行規則第 11 条第 1 項第 3 号、同条第 2 項第 11 号ハ】
第 7 条は、本事業の状況に係る報告等について規定する。
1. 第 1 項について
不動産特定共同事業者の約款には、業務及び財産の状況に係る情報の開示に関する事項として、不特法第 28 条第 2 項の規定により交付される財産の管理の状況についての報告書(以下、「財産管理報告書」という。)の記載事項が事業参加者に開示されるための方法に関する定めを記載する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 3 号、同条第 2 項第 11 号イ)。
第 7 条第 1 項は、かかる約款記載事項を規定するものである。
不特法第 28 条第 2 項は、不動産特定共同事業者の財産管理報告書の交付義務を定めるため、本項においては、本事業者が、第三号事業者をして、財産管理報告書を交付すべき義務を規定している。
平成 29 年の不特法改正により、電磁的方法によって財産管理報告書を交付することが可能になっ
た(不特法第 28 条第 4 項)。そこで、第 7 条第 1 項についても、電磁的方法による財産管理報告書の交付を想定した規定にしている。なお、電磁的方法による財産管理報告書の交付を行うにあたっては、交付先たる本出資者の承諾を取得するなど不特法第 28 条第 4 項が準用する同第 24 条第 3 項の要件を充足する必要があるため、留意する必要がある。
2. 第 2 項について
不動産特定共同事業者は、不特法第 28 条第 1 項に基づき、事業参加者の求めに応じ、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理の状況について説明する義務を負う。
第 7 条第 2 項は、これを踏まえ、本事業者が、第三号事業者をしてかかる義務を履行させることについて規定するものである。
3. 第 3 項について
不動産特定共同事業者の約款には、業務及び財産の状況に係る情報の開示に関する事項として、不特法第 29 条の規定により閲覧される業務及び財産の状況を記載した書類の記載事項が事業参加者に
開示されるための方法に関する定めを記載する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 3 号、同条第
2 項第 11 号ロ)。
第 7 条第 3 項は、かかる約款記載事項を規定するものである。
不特法第 29 条は、第三号事業者に対して、委託特例事業者の業務及び財産の状況を記載した書類の備置義務及び事業参加者に当該書類を閲覧させる義務を負わせるため、本項においては、本事業者が、第三号事業者をして、当該書類を備置させ、事業参加者への閲覧させることを規定している。
4. 第 4 項について
不動産特定共同事業者の約款には、業務及び財産の状況に係る情報の開示に関する事項として、不特法第 30 条第 2 項の規定により閲覧される事業参加者名簿の記載事項が事業参加者に開示されるた
めの方法に関する定めを記載する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 3 号、同条第 2 項第 11 号ハ)。
第 7 条第 4 項は、かかる約款記載事項を規定するものである。
不特法第 30 条は、第三号事業者に対して、事業参加者名簿の作成・保存義務及び事業参加者に事業参加者名簿を閲覧させる義務を負わせるため、本項においては、本事業者が、第三号事業者をして、事業参加者名簿の作成・保存及び事業参加者への閲覧させることを規定している。
5. 契約成立時交付書面記載事項について
契約成立時交付書面には、出資又は賃貸若しくは賃貸の委任の目的である財産に関する事業参加者 | |
の監視権の有無及びその内容(施行規則第 47 条第 2 項第 6 号イ)、並びに業務及び財産の状況に係る | |
情報の開示に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 11 号)。 | |
第 7 条は、これらの契約成立時交付書面記載事項を規定するものでもある。 | |
(本事業者の報酬) | ■第 8 条の解説 |
第 8 条 本事業者は、本事業の遂行に係る役務の対価として、各計算期間につき金○円(以下「本事業者 | 第 8 条は、本事業者の報酬について規定する。 |
報酬」という。)を、第 9 条第 5 項及び第 11 条第 2 項の金銭の分配時に、本事業に係る資産から本事業者 | 第三号事業者の約款には、委託特例事業者の報酬に関する事項として、委託特例事業者の報酬の額の算 |
の固有財産とすることができるものとする。但し、計算期間が○ヶ月に満たない場合又は○ヶ月を超える | 定の方法並びに収受の時期及び方法に関する定めを記載する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 10 号、 |
場合には、実日数に基づく日割計算(1 円未満の端数は切り捨て)により算出する。 | 同条第 2 項第 18 号)。 |
【施行規則第 11 条第 1 項第 10 号、同条第 2 項第 18 号】 | また、特例事業に係る契約成立時交付書面には、委託特例事業者の報酬に関する事項を記載する必要が |
【施行規則第 47 条第 2 項第 8 号】 | ある(施行規則第 47 条第 2 項第 8 号)。 |
第 8 条は、これらを踏まえ、本事業者の報酬の額の算定の方法、収受の時期、及び収受の方法について | |
規定するものである。 | |
(出資者に対する損益及び金銭の分配)【施行令第 6 条第 1 項第 3 号、施行規則第 11 条第 2 項第 3 号】【法 | ■第 9 条の解説 |
第 25 条第 1 項第 3 号】【施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ハ】 | 第 9 条は、出資者に対する損益及び金銭の分配について規定する。 |
第 9 条 本事業の損益は、法令及び本契約に従って計算されるものとする。本事業者は、商法第 19 条に基 | 約款には、事業参加者に対する収益又は利益の分配に関する事項として、事業参加者に対し分配すべき |
づき、一般にxx妥当と認められる会計の慣行に従い、本事業に関する全ての取引に関する正確な帳簿及 | 収益又は利益の額の算定の方法並びにその分配の時期及び方法に関する定めを記載する必要がある(施行 |
び記録を作成し、かつ、保持するものとする。 | 令第 6 条第 1 項第 3 号、施行規則第 11 条第 2 項第 3 号)。 |
2 本事業の計算期間は、各計算期日(計算期間の末日をいい、初回を 年 月 日とし、以降毎年 月 日及び本事業の清算手続において本事業に係る一切の債務を弁済した日又は本事業に帰属する財産の全てが本事業に係る債務の弁済に充てられた日とする。以下同じ。)の翌日(但し、最初の計算期間 | 契約成立時交付書面には、事業参加者に対する収益又は利益の分配に関する事項を記載する必要がある (不特法第 25 条第 1 項第 3 号)。 第 9 条は、これらを踏まえて本事業に係る損益及び金銭の分配について定めている。 |
については 年 月 日)から直後の計算期日までとする。[但し、最後の計算期間を除き、各計算 期日において当該計算期日が属する計算期間に対応する匿名組合損益(次項に定義する。)として損失が生 | また、契約成立時交付書面には、事業参加者の権利及び責任の範囲等に関する事項として、収益又は利 益の受領権に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ハ)。 |
じることが見込まれる場合、当該計算期間の末日は翌計算期日に延期されるものとする。] | 第 9 条は、かかる契約成立時交付書面記載事項を規定するものでもある。 |
3 本事業者は、各計算期間末に、当該計算期間の第(1)号に規定される本事業から生じた収益から第(2) | 1. 第 1 項について |
号に規定される本事業から生じた費用を控除することにより、本事業に係る税引前利益(以下「匿名組合 | 第 9 条第 1 項は、本事業における損益の計算方法について規定するものである。 |
利益」という。)又は税引前損失(以下「匿名組合損失」といい、匿名組合利益及び匿名組合損失を総称し | 匿名組合が組成された場合、匿名組合に係る損益の計算と営業者に係る損益の計算の 2 つの損益の |
て「匿名組合損益」という。)を計算する。 | 計算がなされることになる。このうち、匿名組合における損益の計算については、「一般にxx妥当 |
(1) 本事業から生じた収益 | と認められた会計基準」は存在しないため、第 9 条第 1 項前段は「法令及び本契約」に従って計算す |
① 対象不動産から生じる賃料収入 | ることを定めている。 |
② 対象不動産の売却益 | 営業者に係る損益の計算に関しては、商法第 19 条の適用があり、営業者は、その営業のために使 |
③ 対象不動産に係る保険金 | 用する財産について、一般にxx妥当と認められる会計の慣行に従って、適時に、正確な商業帳簿を |
④ 本事業に係る金銭の運用から得られる受取利息 | 作成し、保存しなければならない。匿名組合事業は、営業者の事業であり(商法第 535 条)、通常は、 |
⑤ 匿名組合出資金償還益及び本事業に関連する債務の債務免除益 | 匿名組合の貸借対照表は営業者の貸借対照表の一部と整理されている。そのため、本事業者は、本事 |
⑥ 本事業に係るその他の収益 | 業に関する取引についても、一般にxx妥当と認められる会計の慣行に従って正確な帳簿及び記録を |
(2) 本事業から生じた費用
① 対象不動産の取得、管理、修繕及び売却等に要する諸費用
② 対象不動産の売却損
③ 対象不動産に係る損害保険料
④ 対象不動産に係る公租公課
⑤ 本借入契約に係る諸費用及び支払利息相当額
⑥ 本事業に係る日常的な経理業務や一般管理業務に要する費用その他の一切の営業費用
⑦ 匿名組合出資金償還損
⑧ 第三号事業者及び第四号事業者に対する報酬
⑨ 本事業の遂行に係る本事業者報酬
4 各計算期間に対応する匿名組合損益は、出資割合に応じて、本出資者に帰属するものとする。なお、匿名組合利益がある場合で、当該計算期間の前の計算期間まで(以下「経過済計算期間」という。)に本項に従って本出資者に分配された匿名組合損失(もしあれば。但し、経過済計算期間までに本項に従って補てんされた金額を控除する。)があるときは、当該匿名組合利益はまず当該匿名組合損失の補てんに充当するものとする。
5 本事業者は、各計算期間末の属する月の 2 ヶ月後応当月の最終営業日までの間で、本事業者が裁量により指定する日(以下「金銭配当日」という。)に、金銭配当日において本事業に係る資産に属する金銭(但し、本借入契約に従い本契約に基づき分配可能な金額に限る。)から、運転資金、修繕積立金、公租公課積立金、敷金・保証金等の預り金その他本事業者が本事業の継続的遂行のために留保すべきと合理的に判断した金額を控除した残額に、出資割合を乗じた金額を本出資者に支払うものとする。但し、各金銭配当日に本出資者に支払われる金額は、本出資者に分配された対応する計算期間に係る匿名組合利益(もしあれば。但し、前項に基づき匿名組合損失の補てんに充当された匿名組合利益は含まれない。)相当額を上限とする。なお、別紙 2 借入関連条項に定める配当停止事由(以下「配当停止事由」という。)が発生した場合、配当停止事由が全て解消するまでの間、本事業者は本項に従った金銭の分配を行わない。かかる分配の停止は、本事業者の債務不履行を一切構成しないものとし、本出資者はこれを異議なく承諾する。
6 前項にかかわらず、本事業者は、対象不動産の一部の売却等が行われた場合には、当該売却等が行われた日を計算期日とみなして、前三項を準用して、遅滞なく、本出資者に対し匿名組合損益及び金銭の分配を行うものとする。
【施行規則第 11 条第 1 項第 4 号、同条第 2 項第 12 号ロ】
7 本条に基づき分配された匿名組合損失については、同額の出資の払戻しとして会計処理する。また、当該匿名組合損失が本条に基づき匿名組合利益によって補てんされた場合、同額について出資の増加があったものとして会計処理する。
作成し、保存する必要があることになる。第 9 条第 1 項後段は、この点を確認的に規定するものである。
2. 第 2 項について
第 9 条第 2 項は、本事業における計算期間を規定するものである。
第 9 条第 2 項但書は、対象不動産の開発・改修を行う場合の個人投資家の税務を考慮した規定案である。事業開始当初は損失が発生し、開発・改修が終了した後に利益が発生するようなケースにおいて、当初の計算期間において損失が帰属し、後の計算期間において利益が帰属することとなった場合、個人の投資家については、損失は切り捨てられ、利益部分について課税されることになってしまう。このようなことを避けるための方策として、損失が発生することが見込まれる場合については計算期日を延期し、利益が出るまでの期間を 1 つの計算期間として損益を分配することが考えられる。かかる但書については、個別の事業特性に応じて、会計税務的な観点からの検討を経た上で規定することを想定している。なお、法人が事業参加者に含まれることが想定される場合には、当該法人にとって匿名組合事業の計算期間が 1 年を超えることについて支障がないかを確認する必要があるため留意されたい。
3. 第 3 項について
第 9 条第 3 項は、損益の計算の時期及び計算方法について規定するものである。
4. 第 4 項について
第 9 条第 4 項は、損益の分配について規定するものである。
5. 第 5 項について
第 9 条第 5 項は、現金の分配について規定するものである。
前述のとおり、本モデル約款は、本事業者が金融機関等から不動産特定共同事業についてレバレッジを効かせるための借入れを行うことを想定したものである。金融機関等からかかる借入れを行う場合、貸付人から、貸付債権の保全のため、LTV(Loan to Value:借入金等の負債額を資産価値で割った比率)や DSCR(Debt Service Coverage Ratio:一定期間の営業収益を同期間の元利返済額で割って求める数値)が悪化した場合等、一定の場合には匿名組合契約に基づく配当を停止することを求められることが多い。また、収益のすべてを投資家に分配するのではなく、一定の積立や留保を求められることも多い。そこで、第一号事業・匿名組合契約型約款とは異なり、分配される金銭を分配される利益と一致させておらず、また、分配可能な金銭を本借入規約に従い本契約に基づき分配可能な金額に限定すると共に、配当停止事由が発生した場合には金銭の分配を行わないことを規定している。配当停止事由については、貸付人や案件によって異なり得るため、約款に具体的な記載をするのではなく、別紙 2 にこれを記載する欄を設けることにより、本契約作成時に記載することができるようにしている。
商品設計としては、各本組合員に対して分配された利益相当額を上回る現金を分配できるようにすることも可能である。しかし、実際には出資元本が取り崩されているにもかかわらず、現金の分配によって一般投資家が実態以上の利益が生じていると誤認するようなことを防止するため、本モデル約款においては、利益(但し、損失の補てんに充当された利益は含まれない。)相当額を上限として現金の分配ができるものとしている。
なお、本モデル約款の記載は 1 つの例にすぎない。金融機関等から不動産特定共同事業についてレ | |
バレッジを効かせるための借入れを行う場合、金銭の分配の規定については、想定する商品の商品性 | |
や金融機関等によって様々な規定の仕方があり得るところであり、実際の約款の作成にあたっては、 | |
必要に応じて金融機関等と協議を行うなどして、各事業者が工夫する必要があると考えられる。 | |
6. 第 6 項について | |
約款(対象不動産変更型契約に係る約款を除く。)には、対象不動産の売却等に関する事項として、 | |
不動産特定共同事業者等は、対象不動産の売却等をした場合には、遅滞なく、事業参加者に当該対象 | |
不動産の売却等により生ずる収益又は利益の分配を行う旨その他これに準ずるxxな定めを記載す | |
る必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 4 号、同条第 2 項第 12 号ロ)。 | |
第 9 条第 6 項は、かかる約款記載事項を踏まえ、対象不動産の一部の売却等が行われた場合に、売 | |
却等が行われる日を計算期日とみなして、遅滞なく損益及び金銭の分配を行うことを規定するもので | |
ある。 | |
なお、約款記載事項との関係では、対象不動産の一部の売却等の直後の計算期日において損益の分 | |
配を行う旨の規定にすることも可能である(国交省事務ガイドライン第 3-2(1)①及び金融庁事務 | |
ガイドライン 7-2-2(1)①)。 | |
対象不動産の全部の売却等が行われた場合には、第 11 条第 1 項第(2)号に基づき本契約は終了し、 | |
同条第 2 項に従って損益及び金銭の分配が行われることになる。 | |
7. 第 7 項について | |
第 9 条第 7 項は、損失が分配された場合及び損失が補てんされた場合の会計処理の根拠となる規定 | |
を定めるものである。 | |
(契約期間) | ■第 10 条の解説 |
第 10 条 本契約の契約期間は、 年 月 日から 年 月 日までとする。 2 前項にかかわらず、本契約の契約期間内に対象不動産全部の売却等が完了しない場合には、本事業者は、 | 第 10 条は、本契約の契約期間について規定する。 約款には、契約期間に関する事項として、不動産特定共同事業契約を締結するときに契約期間を記載す |
本契約の契約期間の満了日の○ヶ月前までに本出資者に書面又は電磁的方法により通知をすることによ | る欄並びに契約期間の延長を予定する場合にあってはその要件及び手続に関する定め(契約期間を定めな |
り、○年を超えない範囲で本契約の契約期間を延長することができる。 | い場合にあっては、その旨の定め)を記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 5 号、施行規則第 11 条 |
【施行令第 6 条第 1 項第 5 号、施行規則第 11 条第 2 項第 5 号】 | 第 2 項第 5 号)。 |
【法第 25 条第 1 項第 5 号】 | 第 10 条第 1 項は、これを踏まえ、契約期間を記載する欄を規定するものであり、第 10 条第 2 項は、契 |
約期間の延長の要件及び手続を規定するものである。 | |
また、契約成立時交付書面には、契約期間に関する事項を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 | |
5 号)。 | |
個別契約書の作成時に契約期間を記載する欄に具体的な日付を記載することによって、かかる契約成立 | |
時交付書面記載事項が充足されることになる。 | |
(本契約の終了・本事業の清算)【施行令第 6 条第 1 項第 6 号、施行規則第 11 条第 2 項第 6 号イ及びロ】【法 | ■第 11 条の解説 |
第 25 条第 1 項第 6 号】 | 第 11 条は、本契約の終了及び本事業の清算について規定する。 |
第 11 条 本契約は、以下のいずれかの事由が生じた場合には終了する。かかる事由の発生により本契約が | 約款には、契約終了時の清算に関する事項として、契約終了の原因となる事由及び契約終了時の残余財 |
終了した場合、本事業者は、本出資者に直ちに通知するものとする。
(1) 第 10 条に定める本契約の契約期間の満了
(2) 対象不動産全部の売却等の完了
(3) 本事業の継続の不能
(4) 本事業者に係る破産手続開始の決定
(5) 出資総額が第 2 条第 1 項に定める出資予定総額に満たない場合であって、第三号事業者が出資を行わないときその他のやむを得ない事由があるとき
2 前項の規定によって本契約が終了した場合、本事業者は、本事業において金銭以外の資産があればこれを換価処分した上、本事業に係る資産から本事業者報酬、第三事業者及び第四号事業者の報酬並びに本借入契約に基づく債務を含む本事業に係る一切の債務を弁済し、第 9 条第 4 項に従い、速やかに最終の計算期間に係る匿名組合損益及び本出資者に分配すべき匿名組合損益を確定し、本事業に属する金銭から清算手続に要する費用その他の残余財産から支払われるべき費用を控除した金額に出資割合を乗じた金額を本出資者に支払うものとする。
【施行規則第 11 条第 1 項第 4 号、同条第 2 項第 12 号ロ】
【施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ハ】
産の分配の方法その他の清算の手続について明確かつxxな定めを記載する必要がある(施行令第 6 条第 1
項第 6 号、施行規則第 11 条第 2 項第 6 号イ)。
契約成立時交付書面には、契約終了時の清算に関する事項を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 6 号)。
第 11 条は、これらを踏まえ、第 1 項において契約終了の原因となる事由を規定し、第 2 項において契約終了時の残余財産の分配の方法その他の清算の手続について規定するものである。
1. 第 1 項について
前述のとおり、第 11 条第 1 項は、契約終了の原因となる事由を規定するものである。
第 2 条第 2 項の解説で述べたとおり、匿名組合においては、各匿名組合員が営業者との間で締結する契約はそれぞれ別個独立の契約であるため、契約の終了についても、匿名組合契約ごとに終了事由の発生の有無が判断され、また、終了の効果が発生することになる。しかし、本事業者、本出資者及び他の匿名組合契約の匿名組合員は、本事業全体について共通の利害関係を有しており、契約の終了事由についても、本事業に係るすべての匿名組合契約に共通する終了事由と、本契約のみを対象とする終了事由の 2 つが存在する。第 11 条第 1 項は、これらのうち本事業に係るすべての匿名組合契約に共通する終了事由を規定するものである。
第 11 条第 1 項第(4)号は、商法第 541 条第 3 号を踏まえた終了事由である。商法第 541 条第 3 号においては、匿名組合員が破産手続開始決定を受けたことも終了事由と定められているが、本出資者の破産は本事業全体を終了させるべき事由ではないため、第 11 条第 1 項には規定せず、本契約のみ
を対象とする終了事由として、第 13 条第 2 項に規定している。
約款には、契約終了時の清算に関する事項として、出資が予定した財産に満たない場合であって不動産特定共同事業者等が出資を行わないときその他のやむを得ない事由があるときには、不動産特定共同事業契約が終了する旨の定めを記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 6 号、施行規則第
11 条第 2 項第 6 号ロ)。
そこで、第 11 条第 1 項第(5)号において、かかる約款記載事項を踏まえた終了事由を規定している。
2. 第 2 項について
第 11 条第 2 項は、第 11 条第 1 項によって本契約が終了した場合の清算について規定している。匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員にその出資の価額を返還しなければならな
い(商法第 542 条)。第 11 条第 2 項は、その具体的な手続を定めるものである。
また、第 11 条第 2 項は、本契約終了時までに対象不動産の売却が行われていない場合における対
象不動産の売却の手続を定めるものであるため、施行規則第 11 条第 1 項第 4 号及び同条第 2 項第 12号ロの約款記載事項を記載するものでもある。
契約成立時交付書面には、収益又は利益及び契約終了時における残余財産の受領権並びに出資を伴う契約にあっては出資の返還を受ける権利に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第
2 項第 6 号ハ)。
第 11 条第 2 項により、第 11 条第 1 項によって本契約が終了した場合における残余財産の受領権及び出資の返還を受ける権利に関する事項が記載されることになる。
(本契約上の地位の譲渡) 第 12 条 本出資者は、本事業者の事前の書面又は電磁的方法による承諾がある場合に限り、本契約上の地位を譲渡することができる。但し、本事業者は、当該承諾を正当な理由なく拒否できないものとする。 【施行規則第 11 条第 1 項第 5 号、同条第 2 項第 13 号】 【施行規則第 47 条第 2 項第 13 号】 2 本出資者は、前項に基づき本契約上の地位を譲渡した場合、第三号事業者に対し、本契約上の地位の譲渡に伴う事務手続に関し、金○円を支払うものとする。 | ■第 12 条の解説 第 12 条は、本契約上の地位の譲渡について規定する。 1. 第 1 項について 約款には、事業参加者の契約上の権利及び義務の譲渡に関する事項として、契約の相手方である不動産特定共同事業者等の同意を得た場合に限り、事業参加者の契約上の権利及び義務を譲渡することができる旨の定めを記載する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 5 号、同条第 2 項第 13 号)。 また、契約成立時交付書面には、事業参加者の契約上の権利及び義務の譲渡に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 13 号)。 第 12 条第 1 項は、これらを踏まえ、本事業者の事前の書面又は電磁的方法による承諾がある場合に限り、本出資者が本契約上の地位を譲渡することができることを規定するものである。 本契約においては、本出資者の主導によって本契約を終了させることができるのは、第 13 条第 1 項に定めるやむを得ない事由が存在する場合等の解除及び第 16 条に定めるクーリングオフに係る解除であるが、これらの解除権の行使が認められるのはかなり限定的な場面であるため、本契約上の地位の譲渡は、本出資者にとって、投下資本の回収のための重要な手段である。そこで、本モデル約款においては、第 12 条第 1 項但書を設け、本事業者は本項の承諾を正当な理由なく拒否できないことを定めている。 2. 第 2 項について 第 12 条第 2 項は、本出資者が本契約上の地位を譲渡した場合に、第三号事業者に対して本契約上の地位の譲渡に伴う事務手続の対価を支払うべきことを定めた規定である。 特例事業者たる本事業者は SPC であるため、本契約上の地位の譲渡に伴う事務手続を行うのは第三号事業者と考えられる。本出資者と第三号事業者との間には契約関係はないため、本出資者が本事業者に支払い、本事業者が第三号業事業者に支払うという整理も考えられる。しかし、本モデル約款においては、より直接的に、本出資者が第三号事業者に支払うこととした。第三号事業者がかかる対価を受領する根拠については、本委託契約において定めることを想定している。 なお、本項の「本契約上の地位の譲渡に伴う事務手続」については、事業参加者名簿の書換等の事務を想定しており、不動産特定共同事業契約の代理又は媒介に該当する行為を第三号事業者が行うことは想定していない。 |
(本契約の解除等)【法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 1 号ないし第 4 号】 第 13 条 本出資者は、やむを得ない事由が存在する場合には、本事業者に対して書面によって通知することにより、本契約を解除することができる。また、本出資者が死亡した場合又は後見開始の審判を受けた場合には、その相続人又はxx後見人は、本事業者に対して書面によって通知することにより、本契約を解除することができる。 【施行令第 6 条第 1 項第 7 号、施行規則第 11 条第 2 項第 7 号】 2 本出資者が破産手続開始の決定を受けた場合には、本契約は当然に終了する。 3 前二項の規定によって本契約が終了した場合、本事業者は、第 9 条第 4 項に準じて、速やかに本出資者 | ■第 13 条の解説 第 13 条は、本契約の解除等について規定する。 第 11 条第 1 項の解説で述べたとおり、本契約の終了事由については、本事業に係るすべての匿名組合契 約に共通する終了事由と、本契約のみを対象とする終了事由の 2 つが存在するが、第 13 条第 1 項及び第 2項は、これらのうち本契約のみを対象とする終了事由を規定するものである。 1. 第 1 項について 約款には、契約の解除に関する事項として、やむを得ない事由が存する場合に契約を解除し、又は組合から脱退することができる旨の定めを記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 7 号、施行規 |
に分配すべき本契約の終了日までの匿名組合損益を算定し、当該損益を分配した場合に生ずる本出資者に対する債権債務を計上した上で、本出資者に対し、出資の価額の返還として、本事業の純資産額(本事業に係る資産の価額から負債の価額を控除した額をいう。)に本出資者の出資割合を乗じた金額を支払うものとする。但し、別紙 2 借入関連条項記載の出資返還制限条項に従うものとする。
【施行令第 6 条第 1 項第 6 号、施行規則第 11 条第 2 項第 6 号イ】
【法第 25 条第 1 項第 6 号】
【施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ハ】
4 本出資者及び本事業者は、本事業に対して出資を行う匿名組合契約の解除が多発したときは、本事業を継続できなくなるおそれがあることを確認する。
【法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 5 号】
則第 11 条第 2 項第 7 号)。
また、商法第 540 条第 2 項は、匿名組合の存続期間を定めたか否かにかかわらず、やむを得ない事由があるときは、各当事者はいつでも匿名組合契約の解除をすることができると定める。
第 13 条第 1 項前段は、これらを踏まえ、やむを得ない事由が存在する場合に本出資者が本契約を解除することができる旨を規定するものである。やむを得ない事由については、当事者の重要な義務、例えば、出資・利益分配・営業執行義務等の懈怠、又はその義務の履行不能のような場合をいうと解されている(xxxx『商行為法』(有斐閣、第三版、昭和 60 年)183 頁、xxxx・xxxx編『別冊法学セミナーNo.147 基本法コンメンタール[第四版]商法総則・商行為法』(日本評論社、平成 9年)129〔xxxx〕等)。
商法第 541 条第 2 号は、営業者の死亡又は営業者が後見開始の審判を受けたことを匿名組合契約の終了事由として定めるが、営業者に該当する本事業者は法人であるので、その適用がない。本モデル約款においては、商法と同様に、匿名組合員の死亡又は匿名組合員が後見開始の審判を受けたことは匿名組合契約の終了事由とはしていない。第一号事業・任意組合契約型モデル約款においては、民法第 679 条第 1 号及び第 3 号を踏まえ、組合員の死亡及び組合員が後見開始の審判を受けたことを組合からの脱退事由として規定している。本モデル約款においても、第一号事業・任意組合契約型モデル約款と同様に本契約が当然に終了するという規定を置くことも考えられるが、匿名組合員は出資者としての立場で事業に関与するにすぎず、当然に本契約を終了させる必要はないことから、旧標準約款と同様に、相続人や後見人が本契約上の地位を一旦承継した上で解除することができるものとしている。
契約成立時交付書面には、契約の解除に関する定めがあるときには、その内容として、契約の解除又は組合からの脱退の可否及びその条件、契約の解除又は組合からの脱退の方法、契約の解除又は組合からの脱退に係る手数料、契約の解除又は組合からの脱退の申込期間を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 1 号ないし第 4 号)。
第 13 条第 1 項は、これを踏まえ、契約の解除の可否及びその条件として、やむを得ない事由が存在する場合、本出資者が死亡した場合及び後見開始の審判を受けた場合に本契約の解除が可能であること、契約の解除の方法として、書面によって通知する方法によるべきことを規定している。契約の解除に係る手数料及び契約の解除の申込期間については、記載しないことによって手数料及び申込期間がないことを意味するものと考えられ、記載しなくとも契約成立時交付書面記載事項の充足に問題はないと解されるため、記載していない。
2. 第 2 項について
第 11 条第 1 項の解説で述べたとおり、第 13 条第 2 項は、商法第 541 条第 3 号を踏まえた本契約の終了事由である。
3. 第 3 項について
前述のとおり、約款には、契約終了時の清算に関する事項として、契約終了の原因となる事由及び契約終了時の残余財産の分配の方法その他の清算の手続について明確かつxxな定めを記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 6 号、施行規則第 11 条第 2 項第 6 号イ)。
また、契約成立時交付書面には、契約終了時の清算に関する事項を記載する必要がある(不特法第
25 条第 1 項第 6 号)。 第 13 条第 3 項は、これらを踏まえ、第 13 条第 1 項及び第 2 項によって本契約が終了した場合の清算手続について規定したものである。 第 11 条第 2 項の解説で述べたとおり、匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員に その出資の価額を返還しなければならない(商法第 542 条)。第 13 条第 3 項は、第 11 条第 2 項と同様に、その具体的な手続を定めるものである。 第 13 条第 3 項に基づく清算は、本事業に係るすべての匿名組合契約に共通する終了事由ではないため、本契約の終了にかかわらず、他の匿名組合契約は終了せず、本事業は存続することになる。本事業に係る出資金を対象不動産の取得に充てている場合、本事業に係る財産には第 13 条第 3 項の出資の価額の返還を行うだけの現金が存しないことも想定されるところであり、これを行うと本事業に悪影響が生じる可能性がある。いわゆる GK-TK スキームにおける匿名組合契約では、出資の価額の返還によって事業の継続に支障が生じる場合には当該支障が解消されるまでこれを延期することができる旨の規定を置くことがあるが、本モデル約款は、一般投資家が事業参加者になる事業を想定しており、事業参加者の投下資本の回収が制限されることになるこのような規定は設けなかった。もっとも、出資の価額の返還を行うことによって事業に悪影響が生じた場合、他の匿名組合契約に係る事業参加者が不利益を被ることになる。これを避けるための方策としては、第 13 条第 1 項又は第 2 項に 定める事由が発生した場合に、契約の終了及び出資の価額の返還という方法ではなく、第 13 条に基づく本契約上の地位の譲渡によって本出資者の本事業からの離脱及び投下資本の回収を図ることが考えられる。そのため、第 13 条第 1 項又は第 2 項に定める事由が発生した場合、本事業者としては、本出資者等と協議し、本契約上の地位の譲渡を行うように誘導・説得することも検討に値すると思われる(但し、第 13 条第 2 項に定める事由が発生した場合については、破産管財人や裁判所との協議が必要であり、かかる方法を採り得るとは限らないことに留意されたい。)。第四号事業者に代理又は媒介させることによってこれを支援することも考えられる。 4. 第 4 項について 契約成立時交付書面には、契約の解除に関する定めがあるときには、その内容として、契約の解除又は組合からの脱退が多発したときは、不動産取引を行うことができなくなるおそれがある旨を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 5 号)。 第 13 条第 4 項は、これを踏まえ、本事業に対して出資を行う匿名組合契約の解除が多発したときは、本事業を継続できなくなるおそれがあることを本出資者及び本事業者の間において確認する旨の規定を設けたものである。 | |
(不動産流通税の軽減措置関連条項) 第 14 条 本出資者及び本事業者は、対象不動産の取得に際し登録免許税及び不動産取得税の軽減措置の適用を受けるべく、別紙 4 の規定に従うものとする。 | ■第 14 条の解説 不特法第 2 条第 3 項第 2 号の不動産特定共同事業契約に係る特例事業については、対象不動産たる建物の建替え・増築等をする場合又は対象不動産たる更地上に建物を新築する場合に、一定の要件を満たせば、敷地や建物に係る登録免許税及び不動産取得税の軽減を受けることができる(租税特別措置法第 83 条の 3、地方税法附則第 11 条第 14 項)。 その要件の 1 つに、一定の事項を不動産特定共同事業契約に記載することがある。 |
そこで、第 14 条は、登録免許税及び不動産取得税の軽減措置の適用を受けるために別紙 4 の規定に従う 旨を規定し、当該事項を別紙 4 に記載することができるようにしている。 | |
(反社会的勢力排除条項) 第 15 条 本出資者及び本事業者は、反社会的勢力を排除すべく、別紙 5 の規定に従うものとする。 | ■第 15 条の解説 第 15 条は、反社会的勢力排除条項について規定する。 反社会的勢力排除条項は、約款記載事項でも契約成立時交付書面記載事項でもないが、社会的に要請の強い事項であり、また、不動産特定共同事業者において反社会的勢力との関係を遮断すべきことは、国交省事務ガイドライン第 10 及び金融庁事務ガイドライン 7-9 が求めるところでもある。そこで、第 15 条として、反社会的勢力排除条項を規定している。 反社会的勢力排除条項は、様々な表現の規定があり、各事業者において雛形を有していることも考えられることから、本モデル約款においては、具体的な規定を設けるのではなく、別紙 5 に各事業者における反社会的勢力排除条項を記載できるようにしている。 反社会的勢力排除条項においては、反社会的勢力との関係を遮断できるようにするため、解除条項を定めるべきであるが、契約の解除に関する事項は約款記載事項であるため(施行令第 6 条第 1 項第 7 号)、約 款の作成にあたっては別紙 5 などに解除に関する記載をする必要があると考えられる。 |
(クーリングオフ)【法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 1 号ないし第 4 号】 第 16 条 本出資者は、法第 25 条の書面の交付を受けた日から起算して 8 日を経過するまでの間、本事業者に対して書面によって通知することにより、本契約を解除することができる。 2 前項に基づく解除は、本出資者が本契約の解除を行う旨の書面を発したときに効力を生じる。前項に基づく本契約の解除によって、本出資者は何らの手続を要することなく当然に本事業に係る出資者でなかったものとみなされる。 【法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 6 号】 3 第 1 項に基づき本契約が解除された場合、本事業者は、本出資者に対し、出資金額を返還するものとし、その解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することはできないものとする。 | ■第 16 条の解説 第 16 条は、クーリングオフについて規定する。 事業参加者は、不特法第 26 条に基づき、クーリングオフをすることができる。不動産特定共同事業契約 において同条第 1 項ないし第 3 項より事業参加者に不利な定めを設けたとしても、無効となる(不特法第 26 条第 4 項)。第 16 条は、これを踏まえ、不特法第 26 条に基づくクーリングオフについて確認的に規定するものである。 1. 第 1 項について 第 16 条第 1 項は、不特法第 26 条第 1 項の内容を確認的に規定したものである。 第 13 条第 1 項の解説で述べたとおり、契約成立時交付書面には、契約の解除に関する定めがあるときには、その内容として、契約の解除又は組合からの脱退の可否及びその条件、契約の解除又は組合からの脱退の方法、契約の解除又は組合からの脱退に係る手数料、契約の解除又は組合からの脱退の申込期間を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 1 号ないし第 4 号)。 第 16 条第 1 項は、クーリングオフに係る解除について、かかる契約成立時交付書面記載事項を定めるものでもある。 2. 第 2 項について 第 16 条第 2 項は、不特法第 26 条第 2 項の内容を確認的に規定したものである。 契約成立時交付書面には、契約の解除に関する定めがあるときには、その内容として、不特法第 26 条第 1 項の規定による契約の解除は、当該契約の解除をする旨の書面を発した時に、その効力を 生ずる旨を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 6 号)。 第 16 条第 2 項は、かかる契約成立時交付書面記載事項を定めるものでもある。 |
3. 第 3 項について 第 16 条第 3 項は、不特法第 26 条第 3 項の内容を確認的に規定すると共に、本出資者に対する出資金額の返還について規定したものである。 4. 実務上の工夫について 本出資者から出資を受け、それによって対象不動産を取得した後にクーリングオフがなされると、本出資者に対する出資金の返還原資が本事業に係る財産にないというような事態も想定されるところである。 そのため、実務上は、クーリングオフの期間が終了するまでの間は本出資者に出資させない又は対象不動産を取得しないといった工夫をする必要があると考えられる。 | |
(準拠法・管轄) 第 17 条 本契約は、日本国の法律に準拠し、日本国の法律に基づき解釈され、日本国の法律に基づき執行されるものとする。 2 本契約に関する紛争については○地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする。 | ■第 17 条の解説 第 17 条は、準拠法及び管轄について規定する。 一般的な契約書における準拠法・管轄に係る規定を踏まえたものとしている。 |
(規定外事項) 第 18 条 本契約に定めのない事項については、商法その他の関係法規に従うほか、本出資者及び本事業者がxxに則り誠意をもって協議の上定めるものとする。 | ■第 18 条の解説 第 18 条は、規定外事項について規定する。 一般的な契約書において規定される内容を踏まえたものとしている。 |
[以下余白] | |
上記を証するため、本契約を 2 通作成し、本出資者及び本事業者が各自記名捺印の上、各 1 通を保有する。 年 月 日本出資者 本事業者 [受理番号] [本店所在地] [社名] [代表者] | ■記名・押印頁の解説 特例事業に係る契約成立時交付書面には、次の事項を記載する必要がある。 ・当事者の商号若しくは名称又は氏名及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名(事業参加者にあっては、その商号若しくは名称又は氏名)(施行規則第 47 条第 2 項第 1 号) ・委託特例事業者の委託を受けた不動産特定共同事業者の商号又は名称、住所及び代表者の氏名 ・不動産特定共同事業者の許可番号(施行規則第 47 条第 2 項第 3 号) ・委託特例事業者の不特法第 58 条第 2 項の規定による届出の受理番号(施行規則第 47 条第 2 項第 4 号) ・不動産特定共同事業契約を締結した年月日(施行規則第 47 条第 2 項第 5 号) また、契約成立時交付書面には、業務管理者が記名押印する必要がある(不特法第 25 条第 2 項)。 記名・押印頁には、これらを踏まえて、契約締結日を記載する欄、本出資者、本事業者及び第四号事業者に関する事項を記載する欄並びに業務管理者が記名押印する欄を設けている。 |
第四号事業者 [許可番号] [本店所在地] |
[社名]
[代表者]
【施行規則第 47 条第 2 項第 1 号ないし第 5 号】業務管理者
[業務管理者名]
【法第 25 条第 2 項】
別紙 1
物件目録
(所在、地番、土地面積、延べ床面積その他の対象不動産を特定するために必要な事項を記載する)
(例示) 1.土地
所 在:
地 番:
地 目:
地 積:
2.建物
所 在:家屋番号:種 類:
構 造:床 x x:
3.新築建物
所 在:
種 類:
構 造:床 x x:
(土地及び建物については登記簿記載事項、新築建物については計画概要)
借入関連条項 (借入れを行うために必要な事項を記載する) (例示) 1.配当停止事由 2.対象不動産売却手続 3.倒産不申立特約 4.責任財産限定特約 5.劣後特約 6.出資返還制限条項 本委託契約の概要 (本委託契約の概要を記載する) (例示) 1.契約締結日 2.委託する業務 3.契約期間 4.委託報酬 本契約第 6 条第 2 項に規定のとおり。 5.契約終了事由 | 別紙 2 別紙 3 | ■別紙 2 借入関連条項の解説 第 4 条第 3 項の解説において述べたとおり、別紙 2 借入関連条項には、本契約を締結するときに、金融機関等からの借入れを行うにあたって、金融機関等から本契約に規定することを求められる条項を記載することを想定している。 具体的な条項については、金融機関等との協議・交渉の上、内容が定まることになる。 |
■別紙 3 本委託契約の概要の解説 第 6 条第 1 項の解説で述べたとおり、別紙 3 本委託契約の概要は、本契約を締結するときに本委託契約 の概要を記載する欄を設けたものである(施行規則第 11 条第 1 項第 9 号、同条第 2 項第 17 号ロ)。 なお、第四号事業者は、不動産特定共同事業契約の締結の勧誘にあたって、その相手方に対して説明義務を負うものと考えられ、かかる説明義務の一環として、勧誘の相手方に対して本委託契約に関する重要な事項について説明する必要があることに留意する必要がある。 |
反社会的勢力排除条項
別紙 5
不動産流通税の軽減措置関連条項
別紙 4
6.その他重要な事項