Contract
[事案 24-41] 契約無効確認・既払込保険料返還請求
・平成 25 年 1 月 9 日 裁定不調
<事案の概要>
5年後には元本が返還されると口約束して契約したとして、一時払保険料の返還を求めて申立てがあったもの。
<申立人の主張>
平成 18 年9月に、、募集人(銀行員)に対し、5年間なら預けられると伝えたところ、募集人からは、「500 万円を一時払いすると、費用として最初に 30 万円が引かれるが、2年目から配当金が年 15 万円はつく。5年でも費用を除いて 30 万円の配当がつく」との説明があったた
め、変額個人年金保険に加入した。このように、契約期間は5年であること、その間年 15 万円の配当がつくこと、5年後には元本が返還されるとの双方の了解のもとで、本保険に加入したにもかかわらず、実際にはこのような内容の契約ではなかったので、一時払保険料を返還してほしい。
<保険会社の主張>
下記の理由により、申立人の請求に応じることはできない。
(1)募集人に確認したところ、申立人が主張する口約束をした事実は確認できず、また、その場に同席していた別の職員にも確認したが、同様に口約束の事実は確認できなかった。
(2)募集にあたっては、パンフレット、契約概要、特に重要なお知らせ、ご契約のxxx・約款、特別勘定のxxxを用いて商品説明を行い、本商品が運用実績によって解約払戻金額等が変動する変額個人年金であること、運用期間が 15 年間であること、運用期間中の「分配金」の受取りを選択した場合には、運用資産残高から控除されることを説明し、当該冊子を申立人に交付した。
(3)運用期間が5年ではなく 15 年であることは、申立人自身が保険契約申込書兼告知書の積立期間欄に記入している。
<裁定の概要>
裁定審査会では、当事者から提出された申立書、答弁書等の書面、および申立人、募集人からの事情聴取の内容にもとづき審理した。
審理の結果、下記の事情を踏まえ、本件は和解により解決を図るのが相当であると判断し、指定(外国)生命保険紛争解決機関「業務規程」第 34 項第 1 項にもとづき、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、申立人の同意が得られなかったので、不調として手続を終了した。
1.口約束による合意について
(1)本契約の約款によれば、運用期間を選択すると、その期間は支払った保険料を特別勘定で運用し、運用期間終了後に年金が開始するというものであり、契約期間を5年とするものではなく、元本の保証は年金払いの場合にのみなされ、更に、運用期間中、一定金額を受け取ることができるが、これは運用資産の一部払い戻しとなる。
(2)申立人は、募集人と申立人主張のような内容の口約束をしたことにより、保険会社と同内容の契約が成立したものと主張しているが、募集人には契約の締結内容の変更をする権限がな
いことは明らかであり、仮に申立人と募集人との間で、申立人主張のとおりの合意があったとしても、契約の内容に何ら影響を及ぼすものではない。
2.虚偽事実の説明について
(1)申立人は、事情聴取において、募集人の説明にあたり、説明文書、資料も交付されていないと主張しているが、申込書等には、ご契約のxxx、約款を受領した旨の文言の部分に申立人が署名、押印していることから、それらを受領したものと推認され、加えて、本件のように複雑な契約を説明文書もなしに説明することは困難であり、また契約者においても、契約の内容を説明する文書の交付なしで契約をすることは通常考えられないことから、募集時においてはご契約のxxx等の説明文書が提示されたものと推認される。
(2)ご契約のxxxには、一時払保険料を運用し、その資産残高には変動があること、運用期間、分配金の内容、運用が思わしくない場合の元本保証の条件等が明確に記載されており、これらのxxしてわかる記載と異なる説明をするとは通常考えられず、また、同行した銀行本部の職員があえて虚偽説明をする動機もみあたらないことから、加入時の説明において虚偽の説明がなされたと認定することは困難であり、消費者契約法4条1項および民法 96 条1項による契約の取消は認められない。
(3)本件においては、申立人に加入当時錯誤が存在したことを認定する証拠は申立人の陳述のみであり、客観的な証拠は存在しない。加えて、申立人は申込書に積立期間を 15 年と自ら記載しており、5年で終了する契約であると誤認したと推定することはできないことから、錯誤の存在を認定することは困難である。
(4)また、仮に錯誤が存在したとしても、ご契約のxxx等の資料を見れば、申立人の思い違いであることはxxして直ちに判明するのであり、資料も確認しないまま誤認したことは、申立人に重大な過失が存在することから、民法 95 条ただし書きにより、契約無効を主張することはできない。
3.和解の提案
(1)本保険は、運用により資産残高が変更するというリスクの高い商品であり、本商品を販売するためには、契約者において十分な理解を必要とする。
(2)募集人は、事情聴取において、説明は他の職員に委ね自分は何らの説明も行ってはいないと陳述しているが、一時払保険料が 500 万円と高額な保険契約を勧誘するにあたり、全く商品内容を説明せずにいきなり勤務中の時間を割いて申込をさせることは通常考え難く、事情聴取における双方の陳述内容、陳述態度その他本件に特有の事情を総合考慮すると、事前の説明において、募集人において何らかの不正確な説明があり、それに基づいて申立人に誤解が生じ、その誤解が先入観念となって他の職員の説明でもその誤解が払拭できなかった可能性がある。
(3)申立人は他にさしたる金融資産もなく、独身で、かつ、持病があり透析も受けている状態であり、いつ高額の治療費等の現金を必要とするかもしれない申立人に対し、募集人はある程度の事情を知りながら、運用期間が長期であり、かつリスクの高い商品を勧めること自体問題があると言える。