Contract
使用貸借・賃貸借・借地借家
明治学院大学法学部教授xxx x
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◼ 賃貸人の権利・義務
◼ 賃借人の権利・義務
◼ 参考文献
◼ 参考判例
◼ 参考図書
1. 賃貸借契約の典型とはどのようなものか?
2. 貸借型契約全体から見た場合に,賃貸借契約の冒頭条文
(民法601条)にはどのような欠陥があるか?
3. 民法601条は,どのように修正されるべきか?
4. 賃貸借契約は,どのような特色を有しているか?
5. 賃貸借契約には,どのような法律が適用されるか?
6. 賃貸借契約の種類によって,存続期間はどのように異なるか?
レンタル(賃貸借) リース(ファイナンス)
時間単位もあり(レンタカーなど)
長期もあり(不動産賃貸など)
耐用年数に相当
目的物
期間
(販売代金+手数料-残価)/月数
相場による(計算式はない)
料金
賃貸人が調達できる物(在庫品など) 何でもあり(サプライヤーから調達)
消費貸借,使用貸借
◼ 第587条(消費貸借)
◼ 消費貸借は,当事者の一方が種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して
◼ 相手方から金銭その他の物を受け取ることによって,その効力を生ずる。
◼ 第593条(使用貸借)
◼ 使用貸借は,当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して
◼ 相手方からある物を受け取ることによって,その効力を生ずる。
賃貸借
◼ 第601条(賃貸借)
◼ 賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを 約し,
◼ 相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって,その効力を生ずる。
◼ これまでの貸借型の条文と対比して,賃貸借の条文には,何か抜け落ちているものがあるのではないか?
◼ 第601条(賃貸借)
◼ 賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,
◼ 相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって,その効力を生ずる。
◼ 第616条(使用貸借の規定の準用)
◼ 第594条第1項〔借主による使用及び収益〕,第597条第 1項〔借用物の返還の時期〕及び第598条〔借主による収去〕の規定は,賃貸借について準用する。
◆ 民法601条の不備
◆ 賃貸借の冒頭条文である民法601条には,貸借型契約の不可欠の要素である「返還合意」が欠けている。
◆ 幸いにも,返還合意を規定している使用貸借に関する民法597条1項,および,民法598条を民法616条が準用している。
◆ そこで,民法616条によって,民法601条を以下のように変更することができる。
◆ 第601条(賃貸借の再定義)
◆ 賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,
◆ 相手方がこれに対してその賃料を支払うこと,
◆ 並びに,使用及び収益をした後に,その物を原状に復して返還することを約することによって,
◆ その効力を生ずる。
消費貸借,使用貸借,賃貸借のすべてに「返還合意」を完備
◼ 第587条(消費貸借)
◼ 消費貸借は,当事者の一方が種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して
◼ 相手方から金銭その他の物を受け取ることによって,その効力を生ずる。
◼ 第593条(使用貸借)
◼ 使用貸借は,当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して
◼ 相手方からある物を受け取ることによって,その効力を生ずる。
◼ 第601条(賃貸借)←不備あり
◼ 賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,
◼ 相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって,その効力を生ずる。
◆ 第601条(賃貸借)(完成版)
◆ 賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,
◆ 相手方がこれに対してその賃料を支払うこ
と,
◆ 並びに,使用及び収益をした後に,その物を原状に復して返還することを約することによって,
◆ その効力を生ずる。
準用規定を補って条文を完成させる試み
(例)民法570条を完成させる
瑕疵担保責任を規定している民法570条も,実は,不完全な条文である。民法566条の条文で補って,完全な条文に直してみよう。
◼ 第570条(売主の瑕疵担保責任)←未完成
◼ 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは,第566条〔地上xxがある場合等における売主の担保責任〕の規定を準用する。ただし,強制競売の場合は,この限りでない。
◼ 第566条(地上xxがある場合等における売主の担保責
任)
◼ ①売買の目的物が地上権,永xxx,地役権,留置権又は質権の目的【物】である場合において,買主がこれを知らず,かつ,そのために契約をした目的を達することができないときは,買主は,契約の解除をすることができる。 この場合において,契約の解除をすることができないときは,損害賠償の請求のみをすることができる。
◼ ②前項の規定は,売買の目的【物】である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
◼ ③前2項の場合において,契約の解除又は損害賠償の請求は,買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。
◼ 第570条(売主の瑕疵担保責任)(完成版)
◼ ①売買の目的物に隠れた瑕疵があった場合において,そのために契約をした目的を達することができないときは,買主は,契約の解除をすることができる。この場合において,契約の解除をすることができないときは,損害賠償の請求のみをすることができる。
◼ ただし,強制競売の場合は,この限りでない。
◼ ②前項の場合において,契約の解除又は損害賠償の請求は,買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。
◆ 第601条(賃貸借)(完成版)
◆ 賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,
◆ 相手方がこれに対してその賃料を支払うこと,並びに,使用及び収益をした後に,その物を原状に復して返還することを約することによって,その効力を生ずる。
◼ 諾成契約
◼ 賃貸人の目的物の引渡義務
◼ 要物契約である使用貸借契約の場合と異なり,賃貸人は,目的物の引渡義務を負う。
◼ 有償・双務契約
◼ 賃貸人の義務
◼ 目的物引渡義務(民法601条)
◼ 担保責任(民法599条)
◼ 修繕義務(民法606条)
◼ 賃借人の義務
◼ 賃料支払い義務
◼ 用法遵守義務(民法594条1項の準用)
◼ 貸借型契約
◼ 返還合意(欠落→補充の必要あり)
◼ 返還時期
◼ 期間の定めがある場合(民法604条)
◼ 期間の定めがない場合(民法617~619条)
◼ 継続的契約
◼ 対価後払いの原則(民法614条)
◼ 信頼関係破壊の法理
◼ 解除の効力の不遡及(民法620条)
民法
(1898)
(1921借家法)
(1921借地法)
建物の所有を 目的と する土地
農地法
(1952)
農地
民法
(1898)
駐車場等更地
建物 土地
動産
不動産
短期賃貸借
◼ 第602条(短期賃貸借)
◼ 処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には,次の各号に掲げる賃貸借は,それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
◼ 一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年
◼ 二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年
◼ 三 建物の賃貸借 3年
◼ 四 動産の賃貸借 6箇月
◼ 第603条(短期賃貸借の更新)
◼ 前条に定める期間は,更新することがで
きる。
◼ ただし,その期間満了前,土地については1年以内,建物については3箇月以内,動産については1箇月以内に,その更新をしなければならない。
◼ 長期賃貸借は,処分行為とみなされる
◼ 期限の定めのない賃貸借は,民法602条の適用はない(大判大3・7・13民録20輯 607頁)。
◼ 行為能力の制限を受けた者とは?
◼ 財産管理能力はあるが,処分能力を制限された者。
◼ 被保佐人(民法11条,13条1項)
◼ 被補助人(民法15条,17条1項)
◼ 財産管理能力のない者は除く
◼ 未xx者(民法5条)
◼ xx被後見人(民法7条,9条)
◼ 処分の権限を有しない者とは?
◼ 不在者の財産管理人(民法25条,28条)
◼ 権限の定めのない代理人(民法103条)
◼ 後見監督人がある場合の後見人(民法
864条)
◼ 相続管理人(民法918条,952条,953条)
◼ 第604条(賃貸借の存続期間)
◼ ①賃貸借の存続期間は, 20年を超えることができない。
◼ 契約でこれより長い期間を定めたときであっても,その期間は,20年とする。
◼ ②賃貸借の存続期間は,
更新することができる。
◼ ただし,その期間は,更新の時から20年を超えることができない。
◼ 借地借家法(1921→1991)
◼ 借地の存続期間
◼ 借地借家法第3条
◆30年以上
◼ 借地借家法4条(更新)
◆最初の更新 20年
◆次からの更新 10年
◼ 借家の存続期間
◼ 借地借家法28条
◆xxの存続期間保護は
ない。しかし,
◆正当事由によらなければ更新拒絶・解約できない。
借地借家の存続期間
30年以上
20年以上
50年以上
30年~
50年
10年~
30年
30年以上
1年 期間の
以上 定めなし
期間の
定めなし
3条 7条1項建物の
通常 滅失・
再築
22条
通常定期借地
23条
1項
事業用定期借地
23条
2項
事業用借地
24条
建物譲渡特約付借地
26条1
項
本文
1年以上
29条
1項
1年未満
26条1
項
但書
更新後
の借家
通常借地
定期借地
の借家
の借家
借地 借家
借地借家の存続期間
通常借地
通常の場合 3条 30年以上
建物の滅失・
再築の場合
7条1項 20年以上
借地 定期借地権 22条 50年以上
定期借地
事業用
定期借地権
23条1項 30年~50年未満
事業用借地権 23条2項 10年~30年未満
建物譲渡特約付
借地権
24条1項 30年以上
1年以上の借家 26条1項 1年以上
借家 1年未満の借家 29条1項 期間の定めなし
更新後の借家 26条1項
但し書き
期間の定めなし
1. 地震売買とは何か?
2. 賃貸借契約をもって第三者に対抗するためには,どのような方法があるか?
3. 賃貸人はどのような権利を有し,義務を負うか?
4. 賃借人はどのような権利を有し,義務を負うか?
5. 無断譲渡・転貸の場合,賃貸人は常に解除をなしうるか?
6. 適法転貸借の場合,賃貸人と転借人との間の関係はどうな
るか?
7. 賃貸借契約の合意解除は,転借人に対抗できるか?
8. 賃貸借契約の合意解除が転借人に対抗できない場合,賃貸人と転借人とはどのような関係となるか?
民法
(賃借権の登記がない場合には,
「売買は賃貸借を破る」)
◼ 第605条(不動産賃貸借の対抗力)
◼ 不動産の賃貸借は,これを登記したときは,その後その不動産について物権を取得した者に対しても,その効力を生ずる。
◼ 不動産登記法
◼ 第3条8号…賃借権の登記
◼ 第60条…共同申請主義
◆ 通説は,賃借権の登記は,強制できないと解している。
◆ しかし,不動産登記の共同申請主義は,賃借人に使用・収益をさせる義務を負っている賃貸人が,賃借権の登記を妨げる理由にはならないと解すべきである。
(賃借権の登記がなくても,
「売買は賃貸借を破らず)
◼ 借地借家法第10条(借地権の対抗力等)
◼ ①借地権は,その登記がなくても,土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは,これをもって第三者に対抗することができる。
◼ 借地借家法 第31条(建物賃貸借
の対抗力等)
◼ ①建物の賃貸借は,その登記 がなくても,建物の引渡しがあったときは,その後その建物について物権を取得した者に対し,その効力を生ずる。
現実の地震の場合 建物敷地の売買の場合(民法)
B所有乙建物
甲土地
A所有
BB所所有有
甲甲土土地地
AA所所有有
A→C
売却
甲土地
C所有
乙乙建建物物
◼ 「地震売買」における比喩的表現(類比から「隠喩」へ)
◼ 建物(A)に対する地震(B)の効力(建物の崩壊)は,
◼ 敷地売買(C)の建物への効力(建物の崩壊)の如し。→「地震売買」←建物保護法(1909)
◼ 隠喩の原型としての「人生の夕暮れ(黄昏)」
◼ AのBにおけるは,CのDにおけるが如し。(類比)→「BのC」(隠喩)
◼ 老年(A)の人生(B)におけるは,夕暮れ(C)の一日(D)におけるが如し。
→「人生の夕暮れ(黄昏)」(BのC:隠喩)
◼ 隠喩の応用としての「謎かけ」の表現
◼ 「(敷地)売買」と掛けて,「地震」と解く。その心は? どちらも,「建物が壊される」
◼ (例題)「葬式(埋葬)」と掛けて「うぐいす」と解く。その心は?
◼ 第606条(賃貸物の修繕等)
◼ ①賃貸人は,賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
◼ ②賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは,賃借人は,これを拒むことができない。
◼ 第607条(賃借人の意思に反する保存行為)
◼ 賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において,そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは,賃借人は,契約の解除をすることができる。
◼ 第608条(賃借人による費用の償還請求)
◼ ①賃借人は,賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは,賃貸人に対し,直ちにその償還を請求することができる。
◼ ②賃借人が賃借物について有益費を支出したときは,賃貸人は,賃貸借の終了の時に,第196条第 2項〔占有者による有益費の償還請求〕の規定に従い,その償還をしなければならない。
◼ ただし,裁判所は,賃貸人の請求により,その償還について相当の期限を許与することができる。
◼ 第196条(占有者による費用の償還請求)
◼ ①占有者が占有物を返還する場合には,その物の保存のために支出した金額そ の他の必要費を回復者から償還させる ことができる。ただし,占有者が果実を
取得したときは,通常の必要費は,占有
者の負担に帰する。
◼ ②占有者が占有物の改良のために支
出した金額その他の有益費については,その価格の増加が現存する場合に限り,回復者の選択に従い,その支出した金 額又は増価額を償還させることができる。
◼ ただし,悪意の占有者に対しては,裁判所は,回復者の請求により,その償還について相当の期限を許与することができる。
目的が明確な場合の数量不足と
減額請求の法理
◼ 第609条(減収による賃料の減額請求)
◼ 収益を目的とする土地の賃借人は,不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときは,その収益の額に至るまで,賃料の減額を請求することができる。
◼ ただし,宅地の賃貸借については,こ
の限りでない。
◼ 第610条(減収による解除)
◼ 前条の場合において,同条の賃借人は,不可抗力によって引き続き2年以上賃料より少ない収益を得たときは,契約の解除をすることができる。
単位が明確な場合の数量不足と
減額請求の法理
◼ 第565条(数量の不足又は物の一部滅失の場合における売主の担保責任)
◼ 前2条〔権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任〕の規定〔減額請求,または,契約解除の規定〕は,数量を指示して売買をした物に不足がある場合又は物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において,買主がその不足又は滅失を知らな
かったときについて準用する。
賃借物の一部不能(滅失)
後発的一部不能の場合の
代金減額・解除の法理
◼ 第611条(賃借物の一部滅失
による賃料の減額請求等)
◼ ①賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは,賃借人は,その滅失した部分の割合に応じて,賃料の減額を請求することができる。
◼ ②前項の場合において,残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは,賃借人は,契約の解除をすることができる。
原始的一部不能の場合の
代金減額・解除の法理
◼ 第565条(数量の不足又は物の一部滅失の場合における売主の担保責任)
◼ 前2条〔権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任〕の規定〔減額請求,または,契約解除の規定〕は,数量を指示して売買をした物に不足がある場合又は物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において,買主がその不足又は滅失を知らなかったときについて準用する。
賃貸借
◼ 第612条(賃借権の譲
渡及び転貸の制限)
◼ ①賃借人は,賃貸人の承諾を得なければ,その賃借権を譲り渡し,又は賃借物を転
貸することができない。
◼ ②賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは,賃貸人は,契約の解除をすることができる。
使用貸借
◼ 第594条(借主による使用及び収益)
◼ ①借主は,契約又はその目的物の性質に
よって定まった用法に従い,その物の使用及び収益をしなければならない。
◼ ②借主は,貸主の承諾を得なければ,第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
◼ ③借主が前2項の規定に違反して使用又は収益をしたときは,貸主は,契約の解除をすることができる。
◼ 第616条(使用貸借の規定の準用)
◼ 第594条第1項〔借主による使用及び収益〕,第597条第1項〔借用物の返還の時期〕及び第598条〔借主による収去〕の規定は,賃貸借について準用する。
判例の準則 判例準則による条文の修正
◼ 最二判昭28・9・25民集7巻9号979頁
◼ 賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用収益をなさしめた場合においても,賃借人の当該行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときは,本条に基づく解除権は発生しない。
◼ 最一判昭41・1・27民集20巻1号136頁
◼ 土地の賃借人が賃貸人の承諾を得ることなくその賃借地を他に転貸した場合においても,賃借人の右行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは,賃貸人は民法612条2項による解除権を行使し得ない。
◼ しかしながら,かかる特段の事情の存在は土地の賃借人において主張,立証すべきものと解する。
◼ 第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)(民法改正私案)
◼ ①賃借人が契約の目的に違反して使用又は収益をしたため,賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されるに至ったときは,賃貸人は,契約の解除をすることができる。
◼ ②賃借人が,賃貸人の承諾を得ないで,その賃借権を譲り渡し,又は賃借物を転貸したときは,信頼関係が破壊されたものと推定し,賃貸人は,契約の解除をすることができる。
◼ ただし,賃借人の行為が,賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があることを賃借人が証明したときは,賃貸人は,契約の解除をすることができない。
民法612条と
信頼関係破壊の法理との関係
賃借人が無断で賃借物を転貸した。
お誤そりらく
賃貸人は,賃貸借契約を解除する。
賃借人は,民法 612条1項に違反しており,2項に基づいて契約を解除できる。
背信行為と認めるに足りない特 段の事由がある。
無断譲渡・転貸の場合に賃貸借契約を解除できるかどうか:
1. 継続的契約関係の当事者が,信頼関係を破壊したときは,契約を解除できる(原則)。
2. 賃借人が無断譲渡・転貸を行ったときは,信頼関係の破壊が推定される(推定規定)。
3. 信頼関係を破壊したと認められない事由があるときは,契約は解除できない(例外)。
背信行為と認めるに足りない特段の事情の例
◼ 一部分を短期間貸したにとどまるなど軽微な転
貸の場合
◼ 最三判昭31・5・8民集10巻5号475頁
◼ 家屋の賃借人が,同居の女婿の勤務する協同組合の事務所として,4畳半1室を数か月間使用させた場合に,賃借人が多年にわたり多額の費用を投じて右家屋の改良増築等をしていた事情をも考慮して,背信行為に当らないとして,解除が否定された事例
◼ 賃借人と転借人・譲受人との間柄が,夫婦ないし内縁の夫婦であるなど密接な身分関係にある場合
◼ 最一判昭44・4・24民集23巻4号855頁
◼ 夫は宅地を賃借し妻はその地上に建物を所有して同居生活をしていた夫婦の離婚に伴い,夫が妻へ借地権を譲渡した場合において,賃貸人は右同居生活および妻の建物所有を知って夫に宅地を賃貸したものである等の事情があるときは,借地権の譲渡につき賃貸人の承諾がなくても,賃貸人に対する背信行為とは認められない特別の事情があるというべきである。
◼ 個人企業者が法人に変ったがその実体に変り
がない場合
◼ 最一判昭39・11・19民集18巻9号1900頁
◼ 賃借家屋を使用してミシン販売の個人営業をしていた賃借人が,税金対策のため,これを株式会社組織にしたが,その株主は賃借人の家族や親族の名を借りたにすぎず,実際の出資はすべて賃借人がなし,該会社の実権はすべて賃借人が掌握し,その営業,従業員,店舗の使用状況等も個人営業の時と実質的になんら変更がない等判示事実関係のもとにおいては,
◼ 賃貸人の承諾なくして賃借家屋を右会社に使用させていても,賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるから,賃貸人に民法612条による解除権が発生しない。
◼ 最二判平成8・10・14民集50巻9号2431頁
◼ 賃借人である小規模で閉鎖的な有限会社において,持分の譲渡及び役員の交代により実質的な経営者が交代しても,そのことは,民法612条にいう賃借権の譲渡に当たらない。
◼ 第613条(転貸の効果)
賃貸借契約
賃貸人
賃料債権
賃料債権
賃借人
(転貸人)
移転
適法
抗弁
転
前
払の
抗弁
借
転
料
借
債
料
権債
権
転
貸借
契約
転借人
◼ ①賃借人が適法に賃借物を転貸したときは,
◼ 転借人は,賃貸人に対し
て直接に義務を負う。
◼ この場合においては,賃料の前払をもって賃貸人
に対抗することができない。
◼ ②前項の規定は,賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
前払は賃貸人に対抗できないとは?
第613条(転貸の効果)
①賃借人が適法に賃借物を転貸したときは,転借人は,賃貸人に対して直
接に義務を負う。
この場合においては,賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
通説
◼ 第613条(転貸の効果)
◼ ①賃借人が適法に賃借物を転貸したときは,… 賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
◼ 条文の反対解釈
◼ 後払いは,賃貸人に対抗できる。
◼ したがって,賃貸人が直接請求した場合でも,転借人は賃借人に転借料の支払いをすることができる。
加賀山説
◼ 直接訴権の解釈。
◼ 直接訴権が発生する賃貸人の意思表示以降は,転借人は,賃貸人にのみ直接の義務を負う。
◼ 反対解釈は慎重に
◼ 直接訴権の行使前の転借人の賃貸人への支払は,原則として直接訴権の成立を正当に阻害する。
◼ 詐害的な前払のみが,賃貸人に対抗できない。
民法613条の改正私案
現行民法
◼ 第613条(転貸の効果)
◼ ①賃借人が適法に賃借物を転貸したときは,転借人は,賃貸人に対して直接に義務を負う。
◼ この場合においては,賃料の前払をもって賃貸人に対抗 することができない。
◼ ②前項の規定は,賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
民法改正私案(加賀山説)
◼ 第613条(転貸の効果)
◼ ①賃借人が適法に賃借物を転貸したときは,転借人は,賃貸人に対して直接に義務を負う。
◆ この場合においては,賃料の詐害的な前払をもって賃貸人に対抗することができない。
◆転借料の期日前弁済は,詐害的な前払と推定する。
◼ ②前項の規定は,賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
前払が賃貸人に対抗できないのなら,後払いは賃貸人に対抗できるか?
賃貸人に 対抗できる | 賃貸人に 対抗できない | 賃貸人に 対抗できない |
慣習に従った | 詐害的な | 賃借人への支払 |
前払 | 前払 | (後払い) |
直訴権の行使前
(広義の前払)
直接訴権の行使後
(後払い)
詐害的な前払だけが,賃貸人に対抗できない
◼ 適法な前払
◼ 直接訴権の成立を正当に妨げる
◼ 賃貸人に対抗できる
◼ 詐害的な前払
◼ 直接訴権の成立を不当に妨げる
◼ 賃貸人に対抗できない
直接訴権の行使前(前払)
慣習に従った適法な前払
賃貸人に対抗できる
詐害的な前払 賃貸人に対抗
できない
直接訴権の行使後(後払)
常に賃貸人に対抗できない
◼ 第312条(不動産賃貸の先取特権)
賃貸人
賃料債権
先取特権
移転
適
法
抗弁
賃借人
(転貸人)
転
前
払の
抗弁
先転借
先取借料
取特料債
特権
権 債権
権
転借人
◼ 不動産の賃貸の先取特権は,その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し,賃借人の動産について存在する。
◼ 第314条〔不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲〕
◼ 賃借権の譲渡又は転貸の場合には,賃貸人の先取特権は,譲受人又は転借人の動産にも及ぶ。
◼ 譲渡人又は転貸人が受けるべき金銭〔転借料債権等〕についても,同様とする。
賃貸人の直接訴権と先取特権
◼ 民法613条に基づく賃貸人の転借人に対する直接の権利(直接訴権)の効力
◼ 民法613条の直接訴権は,賃貸人(A)が受益の意思表示をした時点で効力を生じ(民法537条参照),
賃貸人(B)の転借人(C)に対する債権が先取特権とともに,賃貸人に移転する(民法314条)。
◼ この効力は,賃借人に対する権利を保持したまま(民法613条2項),しかも,転付命令と同様,移転的効力を生じるので,賃借人の他の債権者(D)の差押えに優先する。
◼ さらに,直接訴権は,民法314条の先取特権によって,転借人の債権者(E)にも優先する。
賃貸人A
賃料債権
先取特権
賃借人B
(転貸人)
転 先転借 先取借料
取特料債
債権
債権者D
移転
特権 権
権 債
権
転借人C
債権
債権者E
◼ 大判昭9・3・7民集13巻278頁
◼ 甲が其の所有物を乙に賃貸し,乙が甲の承諾を得て之を丙に転貸したるときは,
◼ 丙は其の転貸借契約の内容に従ひて右物件の使用収益を為す権利を有し,其の使用収益は甲に於ても之を認容せざるべからざるものにして,
◼ 乃ち,丙は甲に対しても右の権利を主張し得る。
◼ 其の権利は甲単独の意思を以て任意に之を消滅せしめ得べき道理なきは勿論,甲乙間の合意を以てするも之を消滅せしめ得べき理由なきものと云ふべく,
◼ 此の結論たるや信義の原則よりし て観るも洵に当然のことなりと云ふべし。
◼ 最一判昭38・2・21民集17巻1号219頁
◼ 土地賃借人と賃借人との間において土地賃貸借契約を
合意解除しても,土地賃貸人は,特別の事情が
ないかぎり,その効果を地上建物の賃借人
に対抗できない。
賃貸借契約の解除が転借人に対抗できない場合の転貸借契約の移転
◆ 旧賃貸人の権利が移転
転借人
(債務者)
転転借借料料債債権権
債権譲渡通知
賃借人
(譲渡人)
抗弁
債権譲渡
賃貸人
(譲受人)
(通常の債権譲渡によることで可能)
◆賃貸人が債務を引受け
(第三者のためにする契約によることで可能)
対価関係
転借人
(受益者)
使使用用収収益益
賃借人
(要約者)
抗弁
債務
引受
(補償
関係)
賃貸人
(諾約者)
契約上の地位の譲渡
同一当事者間の契約で権利と義務を同時に移転する方法の解明
旧賃貸人が権利を譲渡
(通常の債権譲渡によることで可能)
新賃貸人が債務を引受け
(第三者のためにする契約によることで可能)
賃借人
(債務者)
賃料債権
債権譲渡通知
旧賃貸人
(債権者)
抗弁
債権譲渡
契約
新賃貸人
(譲受人)
対価関係
賃借人
(受益者)
使使用用収収益益
旧賃貸人
(要約者)
抗弁
債務
引受契約
(補償
関係)
新賃貸人
(諾約者)
最二判昭46・4・23民集25巻3号388頁
賃貸人の地位の譲渡の場合,新所有者に義務の承継を認めることが賃借人にとって有利であるから,賃借人の承諾を必要とせず,旧所有者と新所有者間の契約をもってこれをなすことができる。
◼ 第614条(賃料の支払時期)
◼ 賃料は,動産,建物及び宅地については毎月末に,その他の土地については毎年末に,支払わなければならない。
◼ ただし,収穫の季節があるものについては,その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。
◼ 継続的契約における対価後払いの原則
◼ 第624条(報酬の支払時期)
◼ ①労働者は,その約した労働を終わった後でなければ,報酬を請求することができない。
◼ ②期間によって定めた報酬は,その期間を経過した後に,請求することができる。
◼ 第633条(請負の報酬の支払時期)
◼ 報酬は,仕事の目的物の引渡しと同時に,支払わなければならない。
◼ ただし,物の引渡しを要しないときは,第 624条第1項〔報酬の支払時期・労務の提供の後〕の規定を準用する。
◼ 第648条(受任者の報酬)
◼ ②受任者は,報酬を受けるべき場合には,委任事務を履行した後でなければ,これ を請求することができない。
◼ ただし,期間によって報酬を定めたときは,第624条第2項〔報酬の支払時期・期間経過後〕の規定を準用する。
◼ 第665条(委任の規定の準用)
◼ 第646条から第650条まで(同条第3項を 除く。)の規定は,寄託について準用する。
◼ 第615条(賃借人の通知義務)
◼ 賃借物が修繕を要し,又は賃借物について権利を主張する者があるときは,賃借人は,遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない。
◼ ただし,賃貸人が既にこれを知っ ているときは,この限りでない。
◼ 民法615条の立法理由
◼ 賃借人は自ら賃借物の修繕を為すを要せず。賃貸人をして之を為さしむることを得。
◼ 従て,物が損壊して使用し難きに至らんとせば,必ず賃貸人に通知し来りて之が修繕を要求すべしと雖も,時としては懈怠して,其通知を為さず,又契約期限の終了に近づくに当りては,面倒なりとて特別に此通知を為さざることあらん為めに,賃借物に損害を生ずべきを以て,特に法律に明文を設けて,賃借人に通知の義務を負担せしめたるなり。
◼ 後半即ち第三者の妨害を通知する義務は既成法典財産編第142条第2項と全く同一なりとす。
◼ 旧民法第142条
◼ ①賃借人は,賃借物の看守及び保存に付き,用益者と同一の義務を負担す。
◼ ②第三者が賃借物に侵奪又は作業を為すときは,賃借人は第96条〔用益権者の告発義務〕に記載したる如く,用益者と同一の責に任ず。
使用貸借の規定の準用による賃貸借の規定の補充・完成
◼ 第616条(使用貸借の規定の準用)
◼ 第594条第1項〔借主による使用及び収益〕,第 597条第1項〔借用物の返還の時期〕及び第598条〔借主による収去〕の規定は,賃貸借について準用する。
◆ 第601条(賃貸借の再定義)
◆ 賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,
◆ 相手方がこれに対してその賃料を支払うこと,並びに,使用及び収益をした後に,その物を原状に復して返還することを約することによって,その効力を生ずる。
◆ 第616条の2(期間の定めのある賃貸借の終了)
◆ ①賃借人は,契約に定めた時期に,借用物の返還をしなければならない。
◆ ②賃借人は,賃借物を原状に復して,これに附属させた物を収去するもの とする。
Coffee Break
1. 期間の定めがない賃貸借には,どのようなものがあるか?
2. 期間の定めがない賃貸借は,どのようにして終了するのか?
3. 期間の定めがある賃貸借は,どのようにして終了するのか?
4. 借地借家の場合,更新拒絶が認められる要件は何か?
5. 賃貸借の解除の効力は,遡及するか?
6. 他の契約の場合の解除はどうか?
7. 賃貸借契約から生じた債権関係はいつ消滅するのか?
8. 賃貸人・賃借人が破産した場合に,賃貸借契約は消滅するか?
1年前
6ヶ月前
3ヶ月前
1日前
土
地
借家の
家主
から
その他
当事者
から
動
産
建物
解約申し入れ
◼ 第617条(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
◼ ①当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは,各当事者は,いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては,次の各号に掲げる賃貸借は,解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
◼ 一 土地の賃貸借 1年
◼ 二 建物の賃貸借 3箇月
◼ 三 動産及び貸席の賃貸借 1日
◼ ②収穫の季節がある土地の賃貸借については,その季節の後次の耕 作に着手する前に,解約の申入れを
しなければならない。
民法
◼ 第618条(期間の
◼ 借地
定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
◼ 当事者が賃貸借の期間を定めた場合で
あっても,その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは,前条の規定を準用する。
◼ 第3条(借地権の存続期間)
◼ 借地権の存続期間は,30年とする。ただし,契約でこれより長い期間を定めたときは,その期間とする。←解約不可
◼ 借家
◼ 第26条(建物賃貸借契約の更新等)
◼ ①建物の賃貸借について期間の定めがある場合において,,…従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし,その期間は,定めがないものとする。
◼ 第29条(建物賃貸借の期間)
◼ ①期間を一年未満とする建物の賃貸借は,期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
◼ 第38条(定期建物賃貸借)
◼ ⑤第1項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積が200平方メートル未満の建物に限る)において,転勤,療養,親族の介護その他のやむを得ない事情により,建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは,建物の賃借人は,建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
◼ この場合においては,建物の賃貸借は,解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。
民法
◼ 第619条(賃貸借の更新の推定等)
◼ ①賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において,賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは,従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。
◼ この場合において,各当事者は,第617条〔期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ〕の規定により解約の申入れをすることができる。
◼ ②従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは,その担保は,期間の満了によって消滅する。
◼ ただし,敷金については,この限りでない。
借地借家法
◼ 第5条(借地契約の更新請求等)
◼ ①借地権の存続期間が満了する場合において,
借地権者が契約の更新を請求したときは,建物がある場合に限り,前条の規定によるもののほか,従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし,借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは,この限りでない。
◼ ②借地権の存続期間が満了した後,借地権者が土地の使用を継続するときも,建物がある場合に限り,前項と同様とする。
◼ ③転借地権が設定されている場合においては,転借地権者がする土地の使用の継続を借地
権者がする土地の使用の継続とみなして,借地権者と借地権設定者との間について前項の規定を適用する。
期間満了 |
更新合意なし |
更新請求せず |
更新拒絶 |
正当事由あり |
使用継続せず |
異議あり |
正当事由あり |
借地借家法(5条,6条)における
START 期間満了と契約の終了
合意更新
法定更新
No
No
No
No
No
No
No
契約終了
END
更新拒絶の正当事由と借地の終了
更新なし
更新なし
異議・正当事由
更新なし
更新拒絶・
正当事由
使用継続せず
使用継続
更新請求
更新請求せず
更新合意 更新合意なし
期間満了
解除の効力の不遡及
◼ 第620条(賃貸借の解除の効力)
◼ 賃貸借の解除をした場合には,その解除は,将来に向かってのみその効力を生ずる。
◼ この場合において,当事者の一方に過失があったときは,その者に対する損害賠償の請求を妨げない。
民法620条の準用規定一覧
◼ 第630条(雇用の解除の効力)
◼ 第620条〔賃貸借の解除の効力の不遡
及〕の規定は,雇用について準用する。
◼ 第652条(委任の解除の効力)
◼ 第620条〔賃貸借の解除の効力の不遡
及〕の規定は,委任について準用する。
◼ 第684条(組合契約の解除の効力)
◼ 第620条〔賃貸借の解除の効力の不遡及〕の規定は,組合契約について準用する。
◼ 第621条(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限) 〔旧・ 622条〕
◼ 第600条〔使用貸借の場合の損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限〕の規定は,賃貸借について準用する。
◼ 第600条(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
◼ 契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は,貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。
◼ 大判昭8・2・8民集
12巻60頁
◼ 民法第622条〔現行民法621条〕,第600条の規定に依り,裁判上たると裁判外たるとを問はず,1年内
に請求するときは,其の1年の経過に因りて消滅するものに非ずと解す
べきものな〔り〕。
(破産法56条→旧民法621条の削除)
民法
◼ 第622条 削除 〔旧・第621条
【賃借人の破産による解約申入
れ・削除】→破産法第56条〕
◼ 2004年の破産法の改正により,賃借人の保護のため,賃貸人が破産した場合の解除は認められないことになった
(破産法56条1項)。
◼ 賃借人が破産した場合にも,その保護のために,本条も削除された(2004年)。
破産法
◼ 第56条(賃貸借契約等)
◼ ①第53条第1項及び第2項の規定〔管財人による双務契約の解除又は履行の請求の選択〕は,賃借権その他の使用及び収益 を目的とする権利を設定する契約について破産者の相手方が 当該権利につき登記,登録その他の第三者に対抗することができる要件を備えている場合には,適用しない。
◼ ②前項に規定する場合には,相手方の有する請求権は,財団債権とする。