Contract
1 WTO政府調達協定(資料Ⅲ-1)における関連措置
(1) WTO政府調達協定の加盟国・地域の現状
平成 6 年に作成されたWTO政府調達協定の締約国・地域は発効当初 23 であったが、
平成 31 年 3 月現在、46 の国・地域が同協定の締約国・地域(注)となっている。
「政府調達に関する協定を改正する議定書」については、このうちスイスを除く 45
の国・地域が締結している。
(注) WTO政府調達協定の締約国・地域(平成 31 年 3 月 1 日現在)
日本、アルメニア、カナダ、欧州連合(EU)加盟国(オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、イギリス)、香港、アイスランド、イスラエル、大韓民国、リヒテンシュタイン、モンテネグロ、蘭領アルバ、ニュージーランド、ノルウェー、シンガポール、スイス、台湾、米国、ウクライナ、モルドバ
(2)WTOにおける議論(資料Ⅲ-2)
政府調達における他の締約国の産品及び供給者に対する内国民待遇の原則並びに入札の手続等について定める政府調達協定(GPA)に関する交渉は昭和 51 年から開始
され、最初の協定(旧協定)は昭和 56 年に発効した。その後、協定の適用範囲を広げ
るべく締約国が交渉を重ね、昭和 63 年に旧協定が改正され、平成 8 年に新協定(現行協定)が発効した。
現行協定は、適用を受ける機関を中央政府機関から地方政府機関及び付表に掲げるその他機関(独立行政法人等)に拡大し、またこれらの機関による特定のサービスの調達も適用範囲に含めている。さらに、締約国は供給者が関心を有する調達に係る協定違反の疑いについて苦情を申し立てることができる手続を定めること及び紛争解決手続としてWTO協定の紛争解決了解を用いることとしている。
平成 9 年からは、現行協定の適用範囲を更に拡大するためWTO政府調達委員会において議論が開始された。締約国間の交渉の結果、協定の適用を受ける機関及びサービスの拡大、開発途上国の協定加入に対する特別な取扱い、電子的手段の活用による調達手続の簡素化、協定適用範囲の修正通報及び異議申立てに関する問題の円滑な解決のため
の規定を将来導入すること等について合意され、平成 24 年 3 月に「政府調達に関する協定を改正する議定書」が作成された。
右議定書は、平成 26 年 3 月 7 日、協定の締約国の 3 分の 2 が受諾書を寄託したこと
から、その 30 日目の日である同年 4 月 6 日に発効した。我が国については、同月 16 日に同議定書が発効し、同日から同議定書を受諾済みの国との間で改正後の協定が適用されることとなった。
2 経済連携協定の関連規定
現在までに日本が署名・締結した経済連携協定(EPA)の多くでは、政府調達に関して独立の章を設け、関連の規定を定めてきている。WTO政府調達協定の締約国は我が国を含む先進国を中心とした 46 の国・地域にとどまっており、EPAにおいて政府調達についての規定を置くことは相手国がWTO政府調達協定の締約国でない場合に特に意義があるほか、相手国がWTO政府調達協定の締約国である場合でも、対象基準額の引下げや対象機関の拡大等によって規律を強化できる等の意義がある。これまでに発効したEPAのうち、政府調達章を含むものは次のとおりである(WTO政府調達協定の締約国はシンガポール及びスイスのみ)。
(1)日・シンガポール新時代経済連携協定
平成 14 年 11 月に発効した本協定は、我が国にとってはじめてのEPAである。シンガポールはWTO政府調達協定の締約国であるが、本協定においては、物品とサービスの政府調達分野についてWTO政府調達協定上の義務を上回る内容の措置をとることが盛り込まれている。具体的には、両国は対象基準額を 13 万SDRから 10 万SDRに引き下げ、相手国の供給者に対して入札の機会を拡大することを約束している。
(2)日・メキシコ経済連携協定
本協定は平成 17 年 4 月に発効した。
本協定においては、両国がこの協定の適用を受ける政府調達について、相手国の物品及びサービス並びにそれらを提供する者に対し、自国の物品、サービス及び供給者に与える待遇よりも不利でない待遇(内国民待遇)を与えることや、落札後の情報公開や苦
情申立ての手続等を約束している。
過去には、自由貿易協定(FTA)未締結を理由に日本企業がメキシコの政府調達から排除される事例があったが(メキシコはWTO政府調達協定未締結)、本協定の発効により日本企業も内国民待遇を享受することとなった。
(3)日・チリ経済連携協定
本協定は平成 19 年 9 月に発効した。
チリはWTO政府調達協定の締約国ではないが、我が国とチリの両国は、本協定により、内国民待遇、無差別待遇その他詳細な調達手続のほか、落札後の情報公開や苦情申立ての手続等について相互に約束した。また、本協定では、政府調達に関する小委員会の設置が規定されている。
(4)日・フィリピン経済連携協定
本協定は平成 20 年 12 月に発効した。
フィリピンはWTO政府調達協定の締約国ではないが、我が国とフィリピンの両国は、一方の締約国が政府調達に関する措置についての有利な待遇を第三国に与える場合に は、他方の締約国に対して同様の待遇を付与するための交渉の機会を与えることや、政 府調達に関する小委員会を設置することについて相互に約束した。また、本協定の発効 後遅くとも五年以内にそれぞれの政府調達市場の自由化を目的として、交渉を行うこと が規定されている。
(5)日・ペルー経済連携協定
本協定は平成 24 年 3 月に発効した。
ペルーはWTO政府調達協定の締約国ではないが、本協定は両締約国の政府調達市場への参加を促進するため、内国民待遇及び無差別待遇、入札等の調達手続、調達の効果を減殺する措置の禁止、苦情申立ての手続、透明性の確保等について定めている。
(6)日・オーストラリア経済連携協定
本協定は平成 27 年 1 月に発効した。
オーストラリアはWTO政府調達協定の締約国ではないが、本協定は両締約国の政
府調達市場への参加を促進するため、内国民待遇及び無差別待遇、入札等の調達手続、調達の効果を減殺する措置の禁止、透明性の確保等について定めている。
(7)環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11 協定)
本協定は平成 30 年 12 月に発効した(平成 31 年 3 月 1 日現在で効力を生じている国は、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア及びベトナム)。
本協定においては、この協定の適用を受ける政府調達について、相手国の物品及びサービス並びにそれらを提供する者に対し、公開入札を原則とすること、入札における内国民待遇及び無差別原則、調達の過程のxx性及びxx性、適用範囲の拡大に関する交渉等について定めている。
マレーシア、ベトナム及びブルネイは、WTO政府調達協定の締約国ではなく、日本 との二国間EPAにおいても、WTO政府調達協定と同水準の規定は置かれていないが、これら三か国との間では,本協定の政府調達章の対象調達について、内国民待遇、無差 別待遇原則及び調達手続の透明性確保に係る詳細な手続規則が、初めて国際約束として 規定された。
(注) TPP11 協定の署名国
オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの 11 か国
(8)日・EU経済連携協定
本協定は平成 31 年 2 月に発効した。
日本、EUともにWTO政府調達協定の締約国・地域であることから、同協定でそれぞれが約束している調達機関や物品・サービスを基本とし、日EU供給者の政府調達市場への参加を促進するため、双方が市場アクセスの改善を実現した。政府調達に関する規律についても、調達計画を無料で閲覧できるインターネット上のシングルアクセスポイントの設置等、WTO政府調達協定の規律に加えてより高い規律を定めている。
(9)その他
日・タイ経済連携協定(平成 19 年 11 月発効)及び日・インドネシア経済連携協定
(平成 20 年 7 月発効)は、政府調達の手続自体について約束するものではないが、政府調達章を設け、政府調達に関する情報の交換や政府調達に関する小委員会の設置を規定している。
日・スイス経済連携協定(平成 21 年 9 月発効)は、WTO政府調達協定上の両国の権利及び義務を再確認するとともに、両国間の連絡を円滑にするため、照会所を設置することや、追加的な交渉についても規定している。
日・ブルネイ経済連携協定(平成 20 年 7 月発効)及び日・ベトナム経済連携協定(平
成 21 年 10 月発効)では、ビジネス環境の整備章の中に政府調達に関する規定を設けている。
また、日・インド経済連携協定(平成 23 年 8 月発効)は、政府調達章を設け、透明性の確保及び情報交換について定めるとともに、締約国に対し第三国と比べ不利とならない待遇を与えること等を規定している(タイ、インドネシア、ブルネイ、ベトナムは WTO政府調達協定の締約国ではない)。
3 政府調達に関する自主的措置
(1) 政府調達セミナーの開催
「政府調達に関するアクション・プログラム」及び「物品に係る政府調達手続について(運用指針)」並びにこれらの文書を引き継ぐ「政府調達手続に関する運用指針等について」に基づき、外務省は毎年、政府調達セミナーを開催している。
政府調達に関する自主的措置では、外務省以外の各省庁等においても必要に応じ政府調達に関するセミナーを開催することとされている。平成 30 年における開催状況は次のとおりである。
表Ⅲ-1 各省庁等における政府調達セミナー等の開催状況(平成 30 年)
x x 機 x | x 催 日 | x x 分 野 |
国家公安委員会(警察庁) 文部科学省厚生労働省国土交通省 防衛省 | 平成30年6月4日平成30年5月18日平成30年5月18日平成30年5月23日 平成30年6月29日 | 政府調達セミナー、政府調達年次会合(電・コ)政府調達セミナー、政府調達年次会合(電・医)政府調達セミナー、政府調達年次会合(医) 政府調達セミナー、政府調達年次会合(電・コ) 政府調達セミナー、政府調達年次会合(医) |
(2) 自主的レビュー等会議の開催
「物品に係る政府調達手続について(運用指針)」、「日本の公共部門における電気通信機器及びサービスの調達に関する措置について」及び「日本の公共部門における医療技術製品及びサービスの調達に関する措置について」並びにこれらの文書を引き継ぐ「政府調達手続に関する運用指針等について」においては、政府調達に関する自主的措置のレビュー及びフォローアップを実施することとされている。また、レビューの際には内外の供給者(企業・団体)から意見・要望の聴取を行うこととされている。これらに基づき、自主的レビュー等会議(各省庁等の会計課長相当職で構成)では、毎年、自主的措置のレビュー及びフォローアップを行っている。
平成 30 年においても、自主的措置の実施状況及び活用状況について供給者から意見を聴取するため、質問票による調査(クエスチョネア調査)を実施した。さらに、平成 31 年 2 月 26 日には、自主的レビュー等会議を開催し、統計等に基づく自主的措置のフォローアップを行い、クエスチョネア調査の結果(資料Ⅲ-3)をも踏まえ、
「今後の政府調達の運営に関する取組について」(資料Ⅲ-4)をとりまとめた。また、平成 13 年度から、上記調査を通じて寄せられた意見・要望のうち、①多数
よせられたもの、②措置の改善のために重要であるもの及び③広く世の中に周知することが適当なものについて、政府等からの回答とともに首相官邸ホームページに掲載することとしている(資料Ⅲ-5)。
(3) 基準額
基準額については、WTO政府調達協定附属書Ⅰにおいて特定される調達契約の区分
に応じた適用基準額(SDR)を邦貨換算して得られる額が告示されている。(基準額の改訂は 2 年度毎)。
政府調達に関する各自主的措置に定められている基準額については、これらの告示に応じて改訂されており、平成 30 年 4 月 1 日から平成 32 年 3 月 31 日まで適用される基準額は資料Ⅲ-6のとおりである。