Contract
工事請負契約における設計変更ガイドライン
令和3年4月
高知市
総務部 契約課
都市建設部 技術監理課
目次
1 本ガイドライン策定の背景 1
(1)土木請負工事の特徴
(2)設計変更の現状(課題)
(3)工事の請負契約とは
(4)発注者・受注者の留意事項
(5)適切な設計変更の必要性
(6)ガイドライン策定の目的
(7)設計変更ガイドラインの契約図書への位置づけ
2 設計変更が不可能なケース 3
3 設計変更が可能なケース 4
(1)工事請負契約書第 18 条に該当(条件変更等)
(2)工事請負契約書第 19 条に該当(設計図書の変更)
(3)工事請負契約書第 20 条に該当(工事の中止)
(4)工事請負契約書第 22 条に該当(受注者からの請求による工期延長)
(5)工事請負契約書第 23 条に該当(発注者の請求による工期の短縮)
(6)「設計図書の照査」の範囲を超える作業
(7)工事打合せ簿への概算金額等の記載
4 設計変更手続きフロー 7
(1)契約書第 18 条関係
(2)契約書第 20 条関係
5 関連事項 9
(1)指定・任意の正しい運用
(2)入札・契約時の契約図面等の疑義の解決
(3)事前協議や設計変更協議の実施
1 本ガイドライン策定の背景
(1)土木請負工事の特徴
○xx請負工事は,個別に設計された極めて多岐にわたる目的物を,多種多様な自然条件・環境条件の下で生産されるという特殊性を有している。
≫当初積算時に予見できない事態,例えば土質・地下水位等の変化に備え,その前提条件を明示することにより,設計変更の円滑化を図る必要がある。
(2)設計変更の現状(課題)
○契約図書(図面・数量総括表・特記仕様書等)に明示されている事項
≫契約図書に明示されている内容と実際の現場条件が一致しない場合には,契約書の関連条項に基づき,設計図書に明示した事項を変更し,併せて金額変更が必要となるケースがある。
○任意仮設等とされている事項,あるいは契約図書に明示すべき事項が,脱漏・不明確な表示となっている事項
≫明示すべき前提条件が不明確であるために,その変更対応が問題となっているケースがある。
(3)工事の請負契約とは
○発注者と受注者は,各々の対等な立場における合意に基づいて,xxな契約を締結し,xxに従って誠実にこれを履行するものとする。(工事請負契約書より抜粋)
≫発注者と受注者の立場は【対等である】という相互認識が必要。
(4)発注者・受注者の留意事項
発注者
○工事発注に当たり,平成 22 年 1 月4日付け事務連絡「土木工事における施工条件明示事項について」に記載されている項目のうち,該当するものについては,必ず条件明示するよう徹底する。
≫工事に必要な関係機関との調整,住民合意,用地確保,法定手続きなどの進捗状況を踏まえ,現場の実態に即した施工条件(自然条件を含む)の明示等により,適切に設計図書を作成し,積算内容との整合性を図るよう努める。
受注者
○工事の着手にあたって設計図書を照査し,着手時点における疑義を明らかにするとともに,施工中に疑義が生じた場合は,発注者と「協議」の上で進めることが重要。
(5)適切な設計変更の必要性
改正品確法の基本理念に「請負契約の当事者が,対等の立場における合意に基づいて,xxな契約を適正な額の請負契約代金で締結」が示されているとともに,「設計図書に適切に施工条件を明示するとともに,必要があると認められたときは,適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請負代金又は工期の変更を行うこと」が規定されている。
設計変更を行うにあたっては,「設計変更に関する事務取扱要領(令和3年3月 30 日付け
2重技監第 18 号)」及び本ガイドラインに基づき,適切に設計変更を行うこととする。この場合において,特に,工事打合せ簿等で実施が決定し,施工が進められているにも関わらず,変更見込金額が著しく増大となることを理由に設計変更に応じない,若しくは,設計変更に伴って必要と認められる請負代金の額や工期の変更を行わないことはあってはならない。
(6)ガイドライン策定の目的
設計変更に係る業務の円滑化を図るためには,発注者と受注者がともに,設計変更が可能なケース・不可能なケース,手続きの流れ等について十分理解しておく必要がある。
(7)設計変更ガイドラインの契約図書への位置づけ
契約の一事項として扱うこととし,特記仕様書へその旨を記載する。
○○条
設計変更等については,工事請負契約書第 18 条から第 20 条及び第 22 条から第 25 条
並びに高知市土木請負工事共通仕様書共通編 1-1-1-13 から 1-1-1-15 に記載しているところであるが,その具体的な考え方や手続きについては,「工事請負契約における設計変更ガイドライン(令和3年4月(高知市)」によることとする。
2 設計変更が不可能なケース
下記のような場合は,原則として設計変更できない。
(ただし災害時等緊急の場合は,この限りではない)
ア 契約図書に条件明示のない事項において,発注者との「協議」を行わず受注者が独自に判断して施工した場合。
イ 発注者と「協議」を行っているが,発注者からの回答前に施工した場合。
ウ 「承諾」で施工した場合。
エ 工事請負契約書・高知市土木請負工事共通仕様書に定められた所定の手続き(工事請負契約書第 18 条~20 条及び第 22 条~25 条,共通仕様書 1-1-1-13~1-1-1-15)を経ていない場合。
オ 口頭のみの指示・協議等,正式な書面によらずに施工した場合。
※ 受注者は,監督職員から契約図書の規定に違反する等の不適切な指示を受けたと思料するときは,当該監督職員等を経由せずに,発注者へ書面でその旨を報告できる。(契約書第12条)
3 設計変更が可能なケース
下記のような場合においては,所定の手続きを踏むことにより,設計変更が可能である。
(1)工事請負契約書第18条に該当(条件変更等)
ア 設計書,図面,標準仕様書,特記仕様書,現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しない場合。(第 1 項 1 号)
イ 設計図書に誤り,又は脱漏がある場合(第 1 項 2 号)
例)条件明示する必要があるにも係わらず土質に関する条件明示がない。例)図面に設計寸法の明示がない。
例)地下水位に関する一切の条件明示がない。
例)交通誘導警備員についての条件明示がない。 等
ウ 設計図書の表示が明確でない場合。(第 1 項 3 号)
例)土質柱状図は明示されているが地下水位が不明確。例)図面と工事数量総括表の記載事項が合致しない。
エ 設計図書に示された自然的,又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しない場合。(第 1 項 4 号)
例)設計図書に明示された地形・土質が現地条件と一致しない。例)地下水位が現地条件と一致しない。
例)交通誘導警備員の人数等が規制図と一致しない。
例)所定の手続きにより行った設計図書の訂正・変更で現地条件と一致しない。例)その他,新たな制約等が発生した場合。 等
(2)工事請負契約書第19条に該当(設計図書の変更)
ア 発注者から設計図書の変更に係る指示があった場合。
(3)工事請負契約書第20条に該当(工事の中止)
ア 受注者の責めに帰すことができない自然的,又は人為的事象により,受注者が工事を施工できないと認められる場合。
例)関係機関協議が未了のため工事に着手できない。
例)掘削中に予見できない埋設物が発見された。
例)設計図書に工事着工時期が定められた場合,その期日までに受注者の責めによらず施工できない場合。
例)警察,河川・鉄道管理者等の管理者間協議が未了の場合。 例)管理者間協議の結果,施工できない期間が設定された場合。
例)受注者の責めによらない何らかのトラブル(地元調整等)が生じた場合。
例)設計図書に定められた期日までに詳細設計が未了のため,施工できない場合。
例)予見できない事態が発生した(地中障害物の発見等)場合。
例)工事用地の確保ができない等のため,工事を施工できない場合。
例)設計図書と実際の施工条件の相違又は設計図書の不備が発見されたため,施工を続けることが困難な場合。
例)埋蔵文化財の発掘又は調査,その他の事由により工事を施工できない場合。 等
(4)工事請負契約書第22条に該当(受注者からの請求による工期延長)
ア 受注者は,天候の不良,関連工事の調整協力,その他受注者の責めに帰すことができない事由により工期内に工事を完成することができない場合は,発注者へその理由を明示した書面により工期延長変更を請求することができる。
例)天候不良の日が例年に比べ多いと判断でき,工期の延長が生じた場合。
例)設計図書に明示された関連工事との調整に変更があり,工期の延長が生じた場合。
例)その他受注者の責めに帰することができない事由により,工期の延長が生じた場合。 等
(5)工事請負契約書第23条に該当(発注者の請求による工期の短縮)
ア 発注者は,特別な理由により工期を短縮する必要があるときは,工期の短縮変更を受注者に書面にて請求することができる。
例)工事一時中止に伴い工期延長が予想され,工期短縮が必要な場合。
例)関連工事等の影響により,工期短縮が必要な場合。
例)その他の事由(地元調整,関係機関調整など)により,工期の短縮が必要な場合。 等
(6)「設計図書の照査」の範囲を超える作業
ア 受注者が行うべき「設計図書の照査」の範囲を超える作業を実施する場合。(高知市土木請負工事共通仕様書 1-1-1-3「設計図書の照査等」第 2 項は,応力計算まで求めるものではありません)
例)構造物の位置・高さ・延長等が変更となり,構造計算の再計算が必要。 等
(7)工事打合せ簿等への概算金額等の記載
ア 設計変更を行うため,契約変更に先だって通知を行う場合は,工事打合せ簿等に,その内容に伴う請負代金額の概算増減額を記載するよう努める。ここで記載する概算増減額は,「参考値」であり,契約変更金額を拘束するものではない。
また,緊急的に行う場合,又は何らかの理由により概算増減額の算定に時間を要する場合があり,そのような場合は,「後日通知する」ことを添えて指示を行うよう努めるものとする。
【「工事打合せ簿」の場合】※監督様式第4号参照
ア 発注者から指示を行い,契約変更手続きを行う前に受注者へ作業を行わせる場合は,必ず書面(工事打合せ簿)にて指示を行う。
イ 工事打合せ簿には,変更内容による請負代金額の概算増減額を記載する。
4 設計変更手続きフロー
(1)契約書第 18 条関係
協議 ①工期の変更【第 24 条】
②請負代金額の変更【第 25 条】
設計図書の訂正又は変更【第5項】
変更内容・変更根拠の明確化,変更設計図書(図面,数量計算書等)の作成を行い,受発注者間で相互に確認する。
設計図書の変更
【第4項第2・3号】
設計図書の訂正
【第4項第1号】
発注者において工事目的物の変更を伴わないと判断した場合は協議【第4項第3号】
必要があると認められるときは,設計図書の訂正又は変更【第4項】
※ 必要に応じて発注者(複数の監督職員)と受注者で設計変更に関する協議を行う。
受理
調査結果及び取るべき措置の通知(原則として調査実施後14日以内)【第3項】
意見【第3項】
調査結果のとりまとめ【第3項】
通知し確認を請求
【第1項】
発注者:調査の実施
受注者:立会い【第2項】
上記の一つに該当する事実を発見【第1項】
上記の一つに該当する事実を発見【第2項】
受注者
発注者
① 図面,標準仕様書,特記仕様書,現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないこと
② 設計図書に誤り,又は脱漏があること
③ 設計図書の表示が明確でないこと
④ 工事現場の形状,地質,湧水等の状態,施工上の制約等設計図書に示された自然的,又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと
⑤ 設計図書で明示されていない施工条件について,予期することのできない特別な状態が
生じたこと
(2)契約書第 20 条関係
基本計画書に基づいた,施工の実施
承諾した基本計画書に基づき,施工監督及び設計変更を実施
不承諾の場合は,基本計画書を修正し,再度承諾を得る。
発注者は,現場管理上,最低限必要な施設・人数等を吟味し,基本計画書を承諾
発注者より,一時中止の指示(契約上一時中止をかけることは発注者の義務)
受注者は、高知市土木請負工事共通仕様書1-1
-1-13 第3項に基づき,基本計画書を作成し,発注者の承諾を得る。
「契約書第 20 条(工事の中止)第1項」により,発注者は工事の全部,又は一部の施工を原則とし
て一時中止しなければならない。
受注者の責めに帰することができないものにより,工事目的物等に損害を生じ若しくは工事現場の状態が変動したため,受注者が工事を施工できないと認められる場合の手続き
発注者 | 受注者 | |||
地元調整や予期しない現場条件等のため,受注者が工事を施工することができない。 |
5 関連事項
(1)指定・任意の正しい運用
基本事項
指定・任意については,建設工事請負契約書第1条第3項に定められているとおり,適切に扱う必要がある。
ア 任意については,その仮設・施工方法の一切の手段の選択は受注者の責任で行う。イ 任意については,その仮設・施工方法に変更があっても原則として設計変更の対象
としない。
ウ ただし,設計図書に示された施工条件と実際の現場条件が一致しない場合は変更できる。
留意事項
ア 仮設,施工方法等には,指定と任意があり,発注においては,指定と任意の部分を明確にする必要がある。
イ 任意については,受注者が自らの責任で行うもので,仮設,施工方法等の選択は,受注者に委ねられている。(変更の対象としない)
ウ 発注者(監督職員)は任意の趣旨を踏まえ,適切な対応が必要。
※任意における下記のような対応は不適切
・○○工法で積算しているので,「○○工法以外での施工は不可」との対応。
・標準歩掛かりではバックホウで施工となっているので,「クラムシェルでの施工は不可」との対応。
・新技術の活用について受注者から申し出があった場合に,「積算上の工法で施工」するよう対応。
エ ただし,任意であっても,設計図書に示された施工条件と実際の現場条件が一致しない場合は変更できる。
(2)入札・契約時の契約図書等の疑義の解決
契約図書等に係る疑義については,下記により,入札前の段階,設計照査の段階で解決しておくことが,スムーズな設計変更に繋がることになる。(受注者等への指導)
【入札前】
ア 高知市建設工事等競争入札心得 第4条第2項(入札に参加できる者)
入札参加者は,設計書,図面,仕様書,現場等(設計書,図面,仕様書についての質疑およびこれに対する回答を含む。)を熟知の上,入札に参加しなければならない。
イ 高知市建設工事の予定価格に係る積算疑義申立手続に関する要綱 第1条(趣旨)この要綱は,市が発注する建設工事の請負契約に係る競争入札の透明性及びxx性を
確保するため,競争入札の執行に際し,予定価格の積算に関する疑義が生じたときに,入札参加者がその内容の確認を申し立てる場合の手続き及び取扱いについて必要な事項を定めるものとする。
【契約後】
ア 受注者は,施工前及び施工途中において,自らの負担により契約書第 18 条第1項第
1号から第5号に係わる設計図書の照査を行い,該当する事実がある場合は,監督職員 にその事実が確認できる資料を書面により提出し,確認を求めなければならない。なお,確認できる資料とは,現場地形図,設計図との対比図,取り合い図,施工図等を含むも のとする。また,受注者は監督職員から更に詳細な説明又は資料の追加の要求があった 場合は従わなければならない。ただし,設計図書の照査範囲を超える資料の作成につい ては,契約書第 19 条によるものとし,監督職員からの指示によるものとする。
(高知市土木請負工事共通仕様書1-1-1-3 設計図書の照査等 第2項)
(3)事前協議や設計変更協議の実施
設計変更に関する事務取扱要領(令和3年3月30日付け2重技監第18号)では,契約した工事について設計を変更する必要が生じたときは,設計変更手続きの透明性とxx性の向上及び迅速化を目的として,発注者と受注者が一堂に会して,設計変更の妥当性の協議及び設計変更等に伴う工事中止等の判断等を行うこととする。