Contract
契約不適合責任に係るトラブルについて
住宅政策本部民間住宅部不動産業課
不動産取引特別相談室 弁護士 xx xx
1.契約不適合責任とは
売買契約において(※)、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときに、売主に発生する責任。
※ ただし、売買以外の有償契約への準用あり(民法第559条)
特徴:無過失責任
不動産の場合は、主に品質が問題となる。
2.契約不適合か否かの判断基準
契約当事者の合意、契約の趣旨に照らし、
目的物がその種類のものとして、
判断基準① 通常予定されていた(有すべき)品質を欠くか
判断基準② 特別に予定されていた品質を欠くか
3.不動産取引において
契約不適合責任が問題となる例
雨漏り | | 不同沈下 |
漏水・給排水の不具合 | | 土壌汚染 |
①通常の品質を欠く
内装の不具合
設備の不具合
シロアリ被害
建物について建築基準法違反
建物敷地の接道義務違反
地中工作物
天災等による浸水
心理的瑕疵
②特別に予定されていた品質を欠く
パンフレットとの相違
眺望(パンフレットなどで良好な眺望を謳っているような場合)
特別仕様の建物
4.中古物件の場合の対応
引渡し時の状況を「設備表」などにより告知することが重要
不具合がある場合は、契約書の付属書類に不具合の内容を具体的に記載することで、その部分について契約不適合責任を問われるリスクがなくなる。
5.契約不適合責任の効果
① 追完請求(民法第562条)
不具合の修繕・設備の取り替え等、目的物の修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しによる履行の追完
② 代金減額請求(民法第563条)
相当期間を定めての追完の催告 ➡ 追完なし ➡ 代金減額請求
催告に意味がない場合(追完履行不能・追完拒絶・特定の期間内に履行がなければ意味がない場合・催告をしても追完の見込みがない場合)は、催告無くして代金減額請求可能
6.損害賠償請求・契約解除
損害賠償請求(民法第415条)
債務不履行による損害賠償請求(売主の帰責事由が必要)
契約解除(民法第541条、第542条)
契約不適合の内容が軽微でない場合、解除が可能
7.買主の権利の期間制限(民法第566条)
買主は、種類・品質に関する契約不適合責任について、
る。
契約不適合を知ったときから1年以内にその旨、通知する必要があ
《例外》
売主が引渡し時に不適合を知っていたとき
売主が重過失によって知らなかったとき
買主の権利行使に係る期間制限がなくなる。
契約書に期間に係る特約がある場合は
特約が優先されます。
8.買主の権利の期間制限の特例
(xx業者が売主の場合)
宅地建物取引業法 第40条
、 る。
xx業者が売主である場合、買主の権利行使の期間について
「引渡しの日から2年以上」とする特約を設けることができ
これより買主に不利となる特約をした場合は、その特約は無効。
住宅の品質確保の促進等に関する法律 第95条
売主=xx業者
新築住宅
xx業者が新築住宅の売主である場合、引渡しの日から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について責任を負う。
売主=xx業者
9.契約不適合責任免責特約の制限(民法第572条)
契約不適合責任を免責とする特約は有効
ただし、
売主が知りながら告げなかった事実等については免責とならない。
xx業法第40条と品確法第95条の規定が適用となる場合は免責特約も無効。
10.瑕疵担保責任と契約不適合責任
令和2年4月1日に施行された改正民法により、
責任」
「瑕疵担保責任」 ➡ 「契約不適合
瑕疵の判断と不適合責任の判断はほぼ重なる。
契約不適合責任の判断の参考として、瑕疵担保責任が判断された3つの裁判事例を紹介します。
11.① 東京地裁 平成30年7月9日判決
賃貸用マンション 入居者の退居後、
1居室に雨漏りによる
染みを発見。他入居者からの苦情で、
給湯器と給水ポンプの故障も
発覚。
売買契約書
雨漏り・給排水設備等の故障について引渡後3か月のみ 瑕疵担保責任を負う。
買主
給湯器の故障は3か月以内、給水ポンプの故障は3か月経過後に発覚していた。
判断の概要
雨漏りについては瑕疵に該当するが、屋上全面防水費用は認めず、雨漏りが確認された
1居室のみの割合負担とし、給水ポンプの故障は給湯器の故障とは別物として期間経過により請求を認めなかった。
決
11.② xx地裁 平成22年3月3日判
瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求
消防用設備等点検結果報告書
し
違反事実の記載な
引渡後内装工事のため
消防署に問合せたところ、売主に対して消防法違反の
指摘があったことが判明。売主は消防署に改善書を提出したが、実際に是正をして
いなかった。
売主 提出 説明 買主
媒介業者 土地建物
売買契約書
瑕疵担保責任の免除特約
判断の概要
媒介契約の善管注意義務違反による損害賠償請求
消防法違反については瑕疵に該当、売主は違反事実を知りながら告げておらず、瑕疵担保免除特約の適用はない。媒介業者については、点検結果報告書以外に売主からの情報提供はなく、消防法違反を疑うべき状況もなかったので調査義務違反はない。
11.③ 東京地裁 平成25年7月3日判決
【①売買前】
【②契約締結前】
警察に問合せたところ
「事件性のない自然死」と回答があった。
【⑤契約締結後】
事件性のない自然死だ。
【⑥決済後】改めて警察に確認したところ、自殺
と判明した。
【➃契約締結後】
当該事案が「自殺ではないか?」とするインターネット記事を発見し、再
び管理会社へ問合せた。
入居者が死亡した事実あり
1棟売賃貸マンション
管理業者
【③明渡し時】部屋に自殺をうかがわせる状況はなく、連帯保証人
瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求
確認
確認 説明
買主
からもそのような話はなかった。
売主業者
媒介業者
調査説明義務違反に基づく損害賠償請求
判断の概要
瑕疵担保責任に基づく損害賠償は認容。調査義務違反に基づく媒介業者等に対する請求は棄却。自殺を疑うべき積極的事情がなく調査義務はない、この状況において媒介業者が独自に警察や居住者の親族に死因を確認するまでの調査義務はない。
困ったときは、ご相談ください
xxx 不動産取引特別相談室
【予約受付】都庁開庁日の9時~17時半 03ー5320-5015
【相談内容】不動産取引紛争の民事上の法律相談(弁護士、司法書士)
【対象者】都民のかた(xx業者及び法人は対象外)