Contract
(3)(A)方式(設計合意書と設計施工契約書を用いて契約を締結する方式)について
1)概要
発注者と受注者が設計・施工・工事監理一括での工事発注、受注を前提にしつつ、初期段階の契約手続きとしては、必要最低限の契約条件に関する「設計合意書」(前記イメージA①)を取り交わしたうえで設計業務に着手し、後日、第二段階の手続きとして設計・施工・工事監理の契約(前記イメージA②)を締結する方式です。
2)設計合意書
設計業務に着手する際に、なるべく簡便な手続きで設計契約を結ぶための書式として、設計合意書のみの形式を採用しました。
設計合意書の取り交わしの時期は、設計業務報酬がおおむね算定でき、双方の協議が可能となる段階を想定しており、基本設計業務に着手する段階が一つの目安となります。
設計合意書が対象とする設計業務の範囲は、段階を追ってプロジェクトを進める趣旨から、プロジェクトの初期段階である基本設計及び工事費の積算が可能となる設計成果物の作成までを標準とし、その先の設計、施工、工事監理については、後日、第二段階の手続きとして設計・施工・工事監理の契約(前記イメージA②)を締結する構成となっています。
なお、この設計合意書は設計受託契約ですので、この合意書を締結する前には、建築士法上の重要事項説明が必要ですが、この合意書には法第 24 条の 8
書面の項目が全て盛り込まれていますので、合意書締結後の法第 24 条の 8 書面の交付は不要となります。
3)設計施工契約書(A)
その時点までの設計業務により作成された設計成果物(図面他)に基づいて、発注者がその先の段階(設計、施工、工事監理)に進む意思決定を行い、受注者との間で合意が成立した際に取り交わされる契約書です。
契約締結の時期は、工事請負契約締結のための条件が概ね整うと考えられる実施設計着手のタイミングを一つの目安としています。もし実施設計がある程度まで進んだ段階で設計施工契約を結ぶような場合には、当初の設計合意書の業務範囲と整合しているかを確認し、必要に応じ変更するなどの手続きを行ってください。
なお、この設計施工契約が対象とする設計業務の範囲は、上記の設計合意書に基づいて既に行われた基本設計業務他も取り込んだ設計業務全体としてお
り、設計業務全体に関する詳細な事項を合意することを想定しています。
この第二段階で行う設計契約と工事監理契約に関しても、この契約締結前には、建築士法上の重要事項説明が必要ですが、この契約書には法第 24 条の 8
書面の項目が全て盛り込まれていますのでこの契約締結後の法第 24 条の 8 書面の交付は不要となります。
4)設計施工契約約款
設計施工契約書(A)に添付される契約約款。設計業務、工事監理業務、施工業務を一括して受注する内容の契約約款です。
全体が五つの章で構成されています。第xx「基本的事項」
第二章「設計業務」
第三章「工事監理業務」第四章「施工業務」
第五章「共通事項」
基本的に「民間(七会)連合協定工事請負契約約款」及び「四会連合協定建築設計・監理等業務委託契約約款」を参考に各条文を構成しておりますが、前述のように、工事監理業務も一括して行うことから、実務との整合を図るための所要の変更を加えています。
なお、令和2年の契約約款改正において、(A)方式、(B)方式に使用する契約約款を一本化しました。
5)設計等業務一覧(詳細版)
受注者が行う設計業務及び工事監理業務の内容が具体的に記載される一覧です。以下のような項目で構成されています。
1「設計に関する業務」
一 「基本設計に関する業務」二 「実施設計に関する業務」
三 「工事施工段階で設計者が行うことに合理性がある実施設計に関する業務」
2「工事監理に関する業務」
3「特記事項」
上記各項目に関して「業務一覧」が記載されており、設計業務に関しては「成果物一覧」により具体的に作成する成果物を特定する内容となっています。なお、設計等業務一覧には、上記詳細版とは別に、内容を簡単にした設計等業務一覧(いわゆる簡易版)があります。
この簡易版は、上記詳細版の項目のみを一覧に纏めたものです。設計成果物やオプション業務は、発注者受注者間で合意したものを書き込む方式になっています。
詳細版を使用するか簡易版を使用するかは、当該プロジェクトに応じて、発注者と受注者間で協議して決める必要があります。
6)設計施工契約が締結されない場合の措置
設計施工契約の締結に至らず、設計合意書に基づいた業務の段階で契約が解除されるか又は終了した場合には、設計業務報酬、設計成果物の取り扱い等については、発注者と受注者の協議に基づいて決定することになります。
(4)(B)方式(設計施工契約書と工事確定合意書を用いて契約を締結する方式)について
1)概要
発注者と受注者が設計・施工・工事監理一括での工事発注及び受注を前提にしつつ、初期段階において、設計・施工・工事監理の各業務に関する具体的な契約条件(契約約款、設計等業務一覧xx)を了解のうえ、業務の着手に合意する場合の契約書式です。まず、第一段階としては、設計業務に着手する段階で「設計施工契約」(前記イメージB①)を締結し、第二段階で、「工事確定合意書」(前記イメージB②)を取り交わす構成となっています。
2)設計施工契約書(B)
設計業務、工事監理業務、施工業務を一括して発注することを前提として取り交わされる契約書です。
契約締結の時期は、設計業務報酬がおおむね算定でき双方の協議が可能とな る段階を想定しており、基本設計業務に着手する段階が一つの目安となります。
ただし、この段階では、工事内容や工事請負代金等が決まっておらず、工事請負契約まで成立させることについては、建設業法上の問題があることから、設計契約だけが成立する構成としています。
施工業務及び工事監理業務については、発注を前提としているにとどまり、後日、工事請負代金等の具体的契約条件が確定した時点で、「工事確定合意書」を取り交わす方式となっています。
3)設計施工契約約款
令和2年の改正において、(A)方式、(B)方式とも共通の契約約款を使用することとしましたので、上記(3)4)をご参照ください。