H21年度 海外制度調査
H21年度 海外制度調査
ハンガリーの雇用制度
2009年7月
日本貿易振興機構(ジェトロ)ブタペスト事務所
目 次
ハンガリーの雇用制度 2
1.雇用制度 2
1-1.労働市場 2
1-2.労働組合 2
1-3.雇用契約の成立と終了 3
1-4.労働時間と休暇 4
1-5.賃金・給与 6
1-6.社会保障 7
2.外国人就労・滞在許可 9
3.ハンガリー雇用制度一覧表 11
本報告書の利用についての注意・免責事項
本調査報告書は、日本貿易振興機構(ジェトロ)の各海外事務所を通じ委託調査を行い、貿易投資相談センターで取りまとめをしたものですが、本書の記述、所見、結論、および提言は必ずしも日本貿易振興機構(ジェトロ)の見解を反映したものではありません。
海外の制度・規制等は日々変化するため、最新の情報を確認する必要がある場合は、必ずご自身で最新情報をご確認ください。
ジェトロは、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、派生的、特別の、付随的、あるいは懲罰的損害および利益の喪失については、それが契約、不法行為、無過失責任、あるいはその他の原因に基づき生じたか否かにかかわらず、一切の責任を負いません。これは、たとえ、ジェトロがかかる損害の可能性を知らされていても同様とします。
ハンガリーの雇用制度
1.雇用制度
1-1.労働市場
ハンガリーの労働市場では、低賃金労働者だけでなく、多くの熟練労働者・高学歴労働者が供給されている。教育水準は中欧諸国の平均を上回ると言われている。平均賃金の水準は西欧諸国に比べると低いが、有能な労働者の賃金は特に需要の大きい分野で上昇しており、西欧諸国との格差も縮小傾向にある。また、実際の需給関係は、低賃金労働者については統計上の失業率が参考になるが、熟練労働者・高学歴労働者については地域の特性にも依存する。
技術者・研究者のレベルは相当高く、ブダペスト工科経済大学やコルビヌス大学(旧ブダペスト経済大学)の卒業生の能力水準は、日本の大学院のトップクラスに匹敵するとも言われている。
外国語についても、若年層を中心に外国語の習得率は高い。外資系企業を中心に外国語を話すマネージャー・クラスの需要は引き続き旺盛である。
中央統計局によると、2009 年 2 月~4 月期の失業者数は 41 万 2,000 人 、失業率は 9.9%、雇用者の数は 373 万 6,000 人である。
一方、高学歴の金融・会計等、外国語も出来る IT 専門家、エンジニアの要員は依然として供給不足である。また、新しい事業環境に適応できるよう訓練されているマネージャーの需要も大きい。このようなハンガリー労働市場の不均衡は、サービスを主体とした経済への構造変化により起こっている。
ポーランドやルーマニアなどに見られた、英国など西欧諸国への労働力の流出は顕著ではない。
1-2.労働組合
従業員は、会社内に労働組合を設立することができる。労働組合は、従業員の経済的・社会的利益に関わる問題についての情報提供を雇用主に要求することができ、また勤労条件に沿って勤務が行われているか確認する任務を負っている。問題発生時に雇用主に通報しても解決に至らない場合は、組合は適当な手続きを開始することができる。労働組合は雇用主の施設を雇用主との合意に基づき、勤務時間終了後または勤務時間中に利用することができる。
2001 年の労働法改正により、雇用主は、従業員が知る権利のある情報を公表または通知しなければならない。従業員は雇用主に対して労働組合加入の有無を申告する必要はない。また、雇用主は従業員を採用する際、労働組合への加入または非加入を採用の基準としてはならない。
旧国営企業を除き、ストライキはまれにしか起きず、一般に労働組合活動はそれほど活発ではない。
<労働者評議会>
従業員が 50 名を超える会社は、従業員が労働評議会メンバーを選任しなければならない。評議会のメ
ンバー数は従業員数に応じ 3 名~13 名である。事業所代表幹事および労働者評議会メンバーの任期は 3年である。
(従業員数と評議会のメンバー数)
・従業員数 100 名以内に対し評議会メンバー3 名
・従業員数 300 名以内に対し評議会メンバー5 名
・従業員数 500 名以内に対し評議会メンバー7 名
・従業員数 1,000 名以内に対し評議会メンバー9 名
・従業員数 2,000 名以内に対し評議会メンバー11 名
・従業員数 2,000 名超に対し評議会メンバー13 名
以下の問題についての措置を取る場合、雇用主は事前に労働者評議会に意見を求める。
② 織改革、組織単位の変更に関する事項等
②人員登録システムの設置に関する案件
③従業員の訓練に関する案件
④作業能力が低下した従業員のリハビリテーション
⑤年次休暇の計画
⑥新しい作業組織手法や勤務ノルマの導入
⑦従業員の利益に影響を及ぼす内部規則案
⑧金銭的報酬や模範的な行動への理解を求める提出を雇用主により告知するとき
雇用主は、労働評議会に対し以下の事項を通知する義務がある。
①従業員の経済状態に影響を与えるようなxx的問題(最低半年毎)
②会社の活動xxxの重要な変更に関する重大な決定の計画
③賃金・給与や労働条件、労働時間等の動向(最低半年毎)
④遠距離通信を利用して自宅で仕事をしている人の数とその仕事の内容(最低半年毎)
1-3.雇用契約の成立と終了
<雇用契約>
労働法は多くの点で西欧の労働法に類似しており、特に欧州大陸法に非常に近い。同法の特色は企業または労働組合、従業員代表組合に組織的な労働交渉の基盤を提供していることである。
<雇用関係の成立>
雇用契約は、書面による労働契約により成立する。書面による労働契約は雇用者側が用意し、被雇用 者の労働開始後 30 日以内に用意されない場合、被雇用者側は契約の不履行を申し立てることができる。従業員との雇用契約は、当初に契約された労働協約と矛盾してはならない。さらに労働法で定められ
ている最低基準も遵守しなければならない。また、労働契約において基本給、職務内容、勤務地を規定しなければならない。
雇用期間は不確定期間でも確定期間でもよいが、確定期間の場合は 5 年を超える労働契約を結んでは
ならない。また契約に試用期間を設けることもでき、期間は最長で 3 ヶ月と規定されている。
試用期間は通常 30 日であるが、労働契約もしくは両者の合意により、短期もしくは長期(最長 3 ヶ月)とすることができる。この期間中両者とも雇用関係を即時解除することができる。
雇用者、被雇用者双方が雇用若しくは外国派遣契約に同意しない限りは、ハンガリー労働法はハンガリー国内の事象に対してだけ適用される。 (ACT CLIV OF 2005 PAR.1. ON THE MODIFICATION OF LABOUR CODE, VALID FROM 1 JANUARY 2006)
労働関連法に従わなかった場合(外国人を雇用する場合も含む)の罰金は、最大 2,000 万 FT となった。
<雇用関係の終了>
不確定期限による雇用関係の終了は、当事者双方の合意または「通常解雇」、「特別解雇」もしくは試用期間中の即時解雇により行われる。
「通常解雇」には従業員が老齢年金の受給資格を有していたり、早期退職金を受領済みである場合などを除き、解雇理由の存在が必要。解雇理由は当該社員の能力、雇用関係と関連する従業員の行為、会社の経営と関連するものであり雇用者により証明できなければならない。
以下の期間中、「通常解雇」による雇用関係の終了は認められていない。
従業員の病気が理由で出社できない期間(最大 1 年間)、また病気の子供の看護を行っている期間(傷
病休暇扱い)、近い親戚の世話時、妊娠中、出産後 3 ヶ月間、育児休業期間中、子供が 3 歳まで、徴兵時、
公務、リハビリテーションの給付を受けている期間など。
「通常解雇」による雇用関係終了の通知期間は、基本的に 30 日以上 1 年以内であり、その期間は、雇用年数に応じて増加する。
・雇用 3 年後、 トータル 35 日~365 日
・雇用 5 年後、 トータル 45 日~365 日
・雇用 8 年後、 トータル 50 日~365 日
・雇用 10 年後、トータル 55 日~365 日
・雇用 15 年後、トータル 60 日~365 日
・雇用 18 年後、トータル 70 日~365 日
・雇用 20 年後、トータル 90 日~365 日
雇用関係終了が「通常解雇」により行われた場合、同雇用主のもとで 3 年以上勤務した従業員は、既に恩給受給資格を有している場合を除き、雇用主より解雇手当を受取ることができる。
・3 年勤務:平均給与の 1 ヶ月分
・5 年勤務:平均給与の 2 ヶ月分
・10 年勤務:平均給与の 3 ヶ月分
・15 年勤務:平均給与の 4 ヶ月分
・20 年勤務:平均給与の 5 ヶ月分
・25 年勤務:平均給与の 6 ヶ月分
<定年>
男女共に 62 歳。
政府案(T/9180)では社会保障法(LXXXI/1997)を変更し、定年の年齢を 2012 年より段階的に 65 歳まで引き上げる予定である。
1-4.労働時間と休暇
<労働時間>
フルタイム勤務の場合、1 日の労働時間は基本的に 1 日 8 時間、1 週間 40 時間。1 日の労働時間は残業を含め 12 時間以内。
週労働時間は 48 時間以内。休憩なしで勤務する場合及び法定休日に勤務する場合の労働時間は別規定に基づく。シフト制を採用している事業所についても別の規定がある(シフト制を採用するには雇用者が継続的に基礎的公共サービスを提供することなどの一定の条件を満たさなければならない)。
労働時間は基本的に 4 カ月間もしくは 16 週間以内のサイクルで決められるが、労使協定により最大 6カ月サイクルもしくは 26 週間サイクルまで延長可。 シフト制を採用している事業所及び季節労働、休憩なしなどの特例については最大 1 年または 52 週まで延長可。
1 日の勤務を終了して次の勤務につくまでの間隔は 11 時間以上だが、労使協定により 8 時間まで間隔を短縮することができる。
週休 2 日、日曜は休み。法規外の勤務体系にある被雇用者は週 1 回、連続 48 時間の休みをとる。その場合、24 時間は基本的に日曜とする。
法定祝祭日は休み。祝祭日は以下の通り。元旦、3 月 15 日、イースターの月曜日、メーデー、聖霊降臨祭の月曜日、8 月 20 日、10 月 23 日、11 月 1 日、12 月 25、26 日。交通機関など、祝祭日にも稼動・営業する企業・事業体は例外。
なお、祝祭日を利用して連休を設けるため、土曜日を労働日に定めることがある。
<残業の取扱い>残業とは
◇時間外労働(規定の勤務時間を外れた時間帯に働く)
◇残業(規定の労働時間を超えて勤務)
◇休祭日勤務―― を指す。休日出勤に対しては、翌月末までに代休を与えることが望ましい。
◇従業員の就労時間は 1 日 12 時間、1 週間で 48 時間を越えてはならない。
◇残業時間の上限は個別労使協定(被雇用者が単数)で合意した場合は 1 年 200 時間以内
◇業界労使協定(被雇用者が複数)で合意した場合は 1 年 300 時間以内。
2007 年 7 月から労働法改正により、従業員 10 人以上の企業では 1 名、より数が多い企業では従業員数
の 1 割まで、労使協定がなくても個人との合意・協定により 300 時間まで残業させることが可能となった。但し、対象は特定(高度技術や知識が必要)の職種で残業をカバーする新たな従業員がみつからない
(労働局での斡旋も含む)場合との条件がある。
<休暇制度全般>
年次有給休暇は 20 日以上。また、法律xxxに達していない者は 18 歳になるまで、更に年 5 日の休
暇(計 25 日)が与えられる。被雇用者の年齢に応じ最大 30 日まで(以下参照)。休暇の 4 分の 1 は被
雇用者が希望する時期にとることができる(但し、就職後 3 カ月はこの限りではない)。
被雇用者は休暇が始まる日の 15 日前までに休暇願を提出しなければならない。
有給休暇は 4 分の 3 を当該年内に取得させねばならない、残り 4 分の 1 は経済的に極めて重要な事情
がある場合、天災や健康への危険がある場合は翌年 3 月 31 日に取得を延期させられる。団体協約があれ
ば 6 月 30 日まで延期できる
・25 歳を超える被雇用者に対し 21 日
・28 歳を超える被雇用者に対し 22 日
・31 歳を超える被雇用者に対し 23 日
・33 歳を超える被雇用者に対し 24 日
・35 歳を超える被雇用者に対し 25 日
・37 歳を超える被雇用者に対し 26 日
・39 歳を超える被雇用者に対し 27 日
・40 歳を超える被雇用者に対し 28 日
・43 歳を超える被雇用者に対し 29 日
・45 歳を超える被雇用者に対し 30 日(最大)
<病欠>
医者の証明書が必要。病欠手当は最初の 15 日まで雇用主が 80%負担する。これを超える分については最大 1 年間社会保険から 70%支給される。
<産休>
子どもが 2 歳になるまでは、最後に働いた年の平均給与の 70%が育児休暇手当(GYED)として社会保険から給付される。それ以降は育児手当(GYES)として最低限の年金手当が給付される。
育児休暇手当(GYED)を受け取らない人は、子供が 0 歳から育児手当 (GYES 最低限の年金手当。2009 年はHUF28,500/月)を受け取ることが出来る、子供が1 歳になったら同手当を受けながら働くことも出来る。育児手当 (GYES)の支給期間は、子供の年齢が 3 歳までとなるが、双子の場合は 5 歳まで、子供が慢性
的な病気もしくは身体障害を持つ場合は 10 歳までとなる。
1-5.賃金・給与
<支払計算>
現物給付以外の賃金ならびに給付はフォリント建てで決定され、支払われなければならない。労働の対価としての現物支給は、従業員やその家族が必要とする商品やサービスでなければならない。現物給付の割合はフォリント建てで決定される給与の 20%を超えてはいけない。現物支給はアルコール飲料やその他の健康に害となるものによる支給であってはならない。
<最低賃金>
雇用主は政府が制定する最低賃金を支払う義務がある。最低賃金額の決定は全国利益調整組織(従業員、雇用者、政府の代表により組織され、毎年物価上昇を考慮に入れて賃金引き上げについて合意する)でなされた合意または決定に大きく影響される。
最低グロス賃金(2009 年 1 月 1 日現在)は 71,500HUF、また高卒もしくは職業訓練高卒レベルで 87,000HUF
(2009 年 7 月 1 日から 2009 年 12 月 31 日まで 87,500HUF)と定められている。これは極めて低い設定で、従業員のインセンティブを引き出すためには、雇用者はより多くの賃金を払っているのが現状である。
<時間外手当>
被雇用者は時間外労働時間部分に対し、50%付加した給与が与えられる権利がある。
<ボーナス>
ボーナスは労使協定などの規定によるが、通常 1 ヵ月分ないし販売部門の場合、売り上げの 1~5%である。
<食事手当>
雇用主に手当を支給する義務はない。月 6,000HUF まで(冷たい食品用)もしくは月 12,000HUF(温かい食品用)の食券を非課税で支給できる。
<通勤手当>
法による規定、支払の義務はないが、雇用者が被雇用者に定期代の支払いをした場合、被雇用者は雇用者に領収書を提示し、雇用者は支払った定期代に対し税額が免除される。
<賃金水準>
賃金レベルは西欧諸国に比べ低い。実際の水準はドイツの 4 分の 1 などとよく言われるが、職種、地域によって水準が異なるので単純な比較はむずかしい。中央統計局によると工場労働者の賃金(グロス)は、140,167 HUF(2009 年 4 月 )。
賃金レベルをみる場合、注意すべきことが 2 点ある。第 1 点は、賃金額は低いが、(他の欧州諸国同様)雇用主の社会保障費負担が大きいため、社会保障費負担を含めた労働コストで比較する必要がある。このため、アジア諸国と比較した場合、当国の労働コストの方が高い。第 2 点は、一般労働者の賃金は低いが、外資系企業で通用する程度の能力を有した管理職や英語などの外国語を理解する人材の給与は、その需給関係から一般労働者の 10 倍以上となる場合がある。
なお 2006 年 1 月から給与に関するパフォーマンスについて、雇用者は被雇用者の殆どが達成出来ない条件を設定してはならない。
<夜間勤務>
従業員が夜勤に従事する場合、雇用者は追加賃金を支払う義務がある。(基本給の 15%増し)また、シ フト勤務により午後および夜間勤務に従事する従業員も追加賃金を受け取ることができ、その際の追加 賃金は午後勤務で基本(時)給の 15%増し、夜間勤務(夜の 10 時から朝の 6 時まで) で 30%増しである。 また超過勤務を行う従業員に対して雇用者は 50%の追加賃金を支払うか、あるいは当事者の合意により、追加の休暇を与える義務がある。課すことのできる時間外勤務は年間 200 時間である。団体交渉により、
年間 300 時間まで増加させることができる。
1-6.社会保障
ハンガリーでは 雇用主、従業員とも年金、社会保険料を支払う義務がある。定年は一般的に男女とも 62 歳と定められている。政府の年金制度に対する負担を緩和する目的で、新年金制度が 98 年から導入された。要点は、国民年金料の引き下げとともに従業員の民間年金への強制加入を導入し、国民年金の拠出比率を大きく変動させることである。これらの年金制度への支払いは 97 年 7 月 1 日以降に勤務を開始した全従業員が行うことができる。
また、国民および民間強制保険に加え、任意年金への拠出も可能になった。さらに EU 加盟以前までは外資系企業に勤める外国人の社会保険料納付は免除となっていたが、2004 年 5 月 1 日より社会保険法 11 条 C 項が削除されたことにより、ハンガリーに登記されている企業と雇用関係がある駐在員は社会保険料を支払うことで、社会保障サービスを受けられるようになった。
雇用者は、被雇用者に支給した給与+その他の報酬の総額(現物給付額含む)の 2%に相当する健康保険及び 24%に相当する年金保険の合計 26%に相当する社会保険料を納付しなければならない。
被雇用者は、給与の 9.5%(給与の上限額は 20,400 HUF/日)を年金保険へ、また 6%(現物給付額は含まず、また上限額なし)を健康保険料として、それぞれ本人負担部分として納付しなければならない。雇用者の負担した社会保険料は、法人所得税(個人事業者の場合は個人所得税)の計算上、損金に算入することが認められる。
外国の事業者または外国資本の参加したハンガリー企業に雇用された外国国籍者(ハンガリー企業から所得を得ていない者)は、当国の社会保険制度への加入義務はないが、社会保険局と別途合意することで任意に加入することができる。社会保険は、疾病、出産、および年金、労働災害に対する補償等をカバーしており、加入者の医療費は無料である。
居住者である被雇用者または当該課税所得の負担者が保険料を支払う。さらに雇用者は、被雇用者
(含外国籍者)1 人当たり月額 1,950 HUF の定額健康拠出金(EHO)を納付しなければならない。
雇用者は、被雇用者への給与+その他の支給額の総額の 1%に相当する失業保険を納付しなければならない。その他の支給額には退職金、社会保険料の負担対象外の現物給付、食事手当、休暇手当などが含まれる。また、被雇用者は給与総額の 1.5%を本人負担部分として納付するが、個人所得税の計算上、控除することができる。
法人所得税の対象となる法人は、被雇用者の職業訓練基金へ拠出金を納付しなければならない。当該職業訓練基金拠出金は、雇用者の人件費総額に対し 1.5%の料率で計算されるが、雇用者の法人所得税の計算上、損金算入が認められる。
なお、2007 年 4 月 1 日から、特別な滞在許可を得ている外国籍保有者、EE(A EUROPEAN ECONOMIC AREA)
市民(非居住者)とその家族、およびハンガリー市民(非居住者)は、毎月一定額を国に納付すれば、無料の公的医療サービスを受けられるようになった。成人の納付額は法定最低賃金相当、また 18 歳未満の未xxの納付額は法定最低賃金の 30%である。
◇主な社会保険料(給与に対するパーセンテージ) 2009年7月時点
雇用者(%) | 被雇用者(%) | |
年金保険 | 24.0 | 9.5 |
健康保険 | 2.0 | 6.0 |
失業保険 | 1.0 | 1.5 |
職業訓練基金拠出金 | 1.5 | 0.0 |
計 | 28.5 | 17.0 |
<社会保障の対象者>
すべての被保険者は、社会保障のすべてのサービスを享受する権利を有する。健康保険制度の下では医療給付、金銭給付(疾病給付、出産休暇)、事故給付(事故疾病給付、事故手当て)を享受できる。 年金保険は老齢年金、傷害年金、寡婦年金および孤児年金をカバーしており、該当者は支払を受けることができる。
2.外国人就労・滞在許可
<滞在許可取得の流れ>
外国人が当国で就労するためには、まず当国で「労働許可証」を取得し、同許可をもとに「就労ビザ」の発給申請を(日本人の場合)在日ハンガリー大使館にて行う。ビザ受給後、当国に入国、「滞在許可証」の申請を内務省の入国管理局(BAH)へ行う。
日本人が当国での就労を目的とせず、観光・商用目的で当国に短期滞在(90 日以内)する場合、ビザは不要である。
就労滞在許可証発給手続きは、①当国労働局で労働許可証取得→在日ハンガリー大使館で就労ビザ取得
→当国移民局で滞在許可証取得、の流れとなる。
2007 年 12 月にハンガリーがシェンゲン協定加盟国となったのに伴い、入国管理関連法が変更となり、就労ビザなく渡航しても「労働許可証」取得手続きを開始したことを証明する書類を用意すれば、現地で直接「滞在許可証」の申請手続きを行えることとなった。但し、在京ハンガリー大使館では、同変更は「就労ビザ」申請をしている時間がない場合などの利用を想定しており、原則的に日本で就労ビザを取得してから渡航し、現地で滞在許可証に切り替えることを勧めるとしている。
<労働許可証>
就労目的で入国を希望する外国人は、当該外国人がハンガリー企業(現地法人)と雇用関係を持つ場合であれ、親会社からの派遣の場合であれ、まず、労働許可証(WORK PERMIT)を得る必要がある。労働許可証は就労先であるハンガリー企業が当国で申請する。
「人材募集届け(LABOR FORCE DEMAND)」を労働局(LABOR OFFICE)に提出して約30 日経過後、労働許可証申請の手続きに入る。同証の申請書類には卒業証明書、健康診断書等を添付する必要がある。特別なポストでない場合、労働許可証の有効期間は 2 年間で、2 年毎に更新する必要がある。 更新に
ついては、当国国内で行うことができる。更新手続きは期限の 60 日前に始める。
但し、主に以下の場合には、労働許可証を取得する必要はない。
a.外資系企業の最高経営責任者や監査役会メンバー
b.外資系企業の支店や駐在員事務所の最高責任者として就業する外国人(但し、国際協定を結んでいる場合)
c.大学、学術研究所などで外国人が客員として滞在する場合
d.外国サプライヤーが契約に基づき自社製品、設備に関わる据付作業やその他サービスを施す場合等なお、外国人の雇用が、総雇用数の 5%未満の場合は、自動的に労働許可証が発行される。
<就労ビザ>
労働許可を取得後、在日ハンガリー大使館で労働許可を提示し、就労ビザを申請する。帯同家族については、家族ビザを申請する。取得には通常申請から 30 日程度要する
<滞在許可証>
就労並びに家族ビザを取得した外国人は、入国後に滞在許可証(RESIDENCE PERMIT)の発給申請を内務省の入国管理局(BAH)に行う必要がある。
滞在許可証は、通常労働許可証の有効期限内でしか発行されない。従って労働許可と同時期に滞在許可の更新手続きが必要となる。
滞在許可の申請時と許可証の受け取りの際は、通常本人の出頭が必要。 就労目的等の場合、滞在許可の有効期間は初回時最大 2 年、延長毎最大 2 年。健康診断(レントゲン、血液検査、便検査、皮膚関連
疾病検査など)が必要。滞在許可更新の場合は期限切れの最低 30 日前までに必要な書類を提出しなければならない。
発給事務所は内務省。ブダペスト在住者の手続き場所は次の通り入国管理局(IMMIGRATION OFFICE, BAH)
① 住所 1117 Budapest Budafoki ut .60、電話 000-0000
② 住所 1104 Budapest Harmat u.131、電話 000-0000, 0494, 0482
<現地人の雇用義務>
特になし。但し、特定の税優遇を受けるためには一定数以上の現地労働者の雇用が条件。
上記手続きについては、頻繁な変更、当局の運用、解釈等により内容が異なる場合があるので、必ず申請窓口ほか専門家に確認をすることが望ましい。
3.ハンガリー雇用制度一覧表
制度 | 主な内容 | 根拠法 | |
法令・機関等 | A-1 労働関係法 (最上位法) | 労働法典。2001 年7 月までに欧州指令に基づき大幅な改定が加えられた結果、欧州諸国の労働法と似通った内容となった。団体労使交渉や労使協定のあり方などを定めるほか、「派遣制度(work-force lease)」、 間接的差別についての規定、出向制度の規定などが含まれる。2003 年 4 月 1 日に労働法典の修正案が議会で承認され、さ らに母性保護の項目などが追加された。 | 労働法典(Labor Code Act XXII/1992) |
A-2 労働監督機 関(届出機 関) | 労働省(労働大臣) | 労働法典(Labor Code) | |
A-3 労使紛争解 決のための法的手続き | 労働裁判所 | 労働法典(Labor Code) | |
B. 雇用条件 | B-1 雇用契約形 態及びその手続き | 雇用契約は書面で行う。雇用条件は法律および労使協定の規定を守らなければならない。ただし、雇用契約に定められる条件がこれらの規定よりも被用者に有利な内容となっている場合はこの限りでない。雇用契約には基本給の額、役職及び勤務地を明記しなければならない。すべての雇用契約は、労働法典に定められた最低条件を満たさなければならない。 | 労働法典(Labor Code Section 76.§. ) |
B-2 試用期間 | 通常 30 日~3 カ月 | 労働法典(Labor Code Section 81.§.) | |
B-3 退職 | 通常、両当事者が合意した期限で雇用契約を解消できる。解約事前通告期限は 1~ 3 カ月以内だが、雇用契約で定められている場合はこの限りでない。相応の事由がある場合(被用者の重大な過失あるいは事業所の破産)は即時解約(非常解約)ができ る。 | 労働法典(Labor Code) | |
B-4 解雇 | 正当な事由が必要。 | 労働法典(Labor Code Section 89.§. ) | |
B-5 定年 | 男女ともに 62 歳。 | 労働法典(Labor Code) | |
B-6 労働組合 (職種別)へ の加入 | 従業員が 15~50 人の事業所には従業員代表者(plant delegate)、50 人を超える事業所には事業所委員会(plant council)を置く。両者とも任期は 3 年以上。事業所委員会の定数は従業員の数に応じ 3~13 人。 雇用主は以下の事項を計画する場合、事業所委員会の意見を聞く義務がある。◇事業再編など多数の従業員に関係する措置◇人事記録システムの立ち上げ◇職業訓練◇病気などにより勤務軽減が必要な被用者の職場復帰◇年次休暇◇被雇用者に関係する社内規則の変更。 雇用主は以下の事項に関し、事業所委員会に通知する義務がある。◇経営状態(年 2 回以上)◇事業内容の変更◇賃金の変更(半年に 1 回以上) | 労働法典(Labor Code) | |
C. 労働時間 | C-1 労働時間 | ・フルタイム勤務の場合、1 日の労働時間は基本的に 1 日 8 時間、1 週間 40 時間。 ・労働時間は基本的に残業を含め 1 日 12 時間もしくは 1 週間 48 時間以内。 ・1 日の勤務を終了して次の勤務につくまでの間隔は 11 時間以上だが、労使協定により 8 時間にまで短縮することができる。 ・週休 2 日、日曜は休み。これに該当しない場合、被用者は週 1 回、連続 48 時間の休みをとる。その場合、24 時間は基本的に日曜とする。 ・法定祝祭日は休み。祝祭日は以下の通り。元旦、3 月 15 日、イースターの月曜日、メーデー、聖霊降臨祭の月曜日、8 月 20 日、10 月 23 日、11 月 1 日、12 月 25,26日。交通機関など、祝祭日にも稼動・営業する企業・事業体は例外。 | 労働法典(Labor Code 117/B, 118/A (1) modified by ACT XXXVIII / 2009. 2009 年 6 月 1 日より + (2), 123, 124, 124/A, 125) |
C-2 残業の取扱 い | 残業とはà 時間外労働(規定の勤務時間を外れた時間帯に働く)à 規定の労働時間を超えての労働 à 休祭日勤務、を指す。休日出勤に対しては、翌月末までに代休を与えることが望ましい à 従業員の就労時間は 1 日 12 日間、1 週間で 48 時間を超えてはならない。à 残業時間の上限は個別労使協定(被雇用者が単数)で合意した場合は 1 年 200 時間以内à 業界労使協定(被雇用者が複数)で合意した場合は 1 年 300 時間以内。 | 労働法典(Labor Code) |
D. 休暇制度 | D-1 休暇制度全 般 | 年次有給休暇は 20 日以上。被雇用者の年齢に応じ最大 30 日まで。休暇の 4 分の 1 は被用者が希望する時期にとることができる(ただし,就職後 3 カ月はこの限りではな い)。被雇用者は休暇が始まる日の 15 日前までに休暇願を提出しなければならない。有給休暇は原則、当該年度にすべて消化しなければならない。 | 労働法典(Labor Code Section 134.§. (3) ) |
D-2 病欠 | 医者の証明が必要。病欠手当は最初の 15 日まで雇用主が 80%負担する。16 日目以降については最大 1 年間社会保険から 70%支給される。 | 労働法典(Labor Code Section 137.§. (1) and (3) ) | |
D-3 産休 | 子どもが 2 歳になるまでは最終給与の 70%が育児休暇手当として社会保険から給付される。それ以降は最低限の年金手当が給付される。復帰後、給与は休暇中の昇給率を加えて算出された額が支給される。 | 社会保険法(SOCIAL SECURITY ACT LXXXIII/1997 Section 42.§. b.) and Section 42.d.) | |
D-4 兵役 | 現在徴兵役は無い。雇用者は、徴兵された被雇用者を解雇することはできない。被 雇用者は、複職後に徴兵前と同じ地位につくことができるほか、給与は休職中の昇給 率に従って算出された額が支給される。 | 労働法典(Labor Code) Section 84. 90. | |
E. 賃金等 | E-1 最低賃 金 | 最低賃金は政府が規定する。2009 年 1 月現在での最低グロス賃金は 71,500HUF である。この金額は非常に少ないため、被用者の就労・労働意欲を引き出すため実際 の賃金は同水準を大きく超える傾向にある。賃金および諸手当はフォリント建てで支払われる。諸規定により、賃金の 20%まで現物給与とすることが可能だが、被雇用者及びその家族が必要とする物品・サービスに限られる。 | 労働法典(Labor Code) |
E-2 時間外 手当 | 被雇用者は時間外労働時間部分に対し、50%付加した給与が与えられる権利があ る。 | 労働法典(Labor Code) | |
E-3 ボーナ ス | 労使協定などの規定による。 | ― | |
E-4 退職金 | 退職金の規定はない。年金は社会保険から毎月支給される。 | ― | |
E-5 諸税 | 所得税の規定による。 | 所得税法 | |
F. 付加給付 | F-1 食事手当 | 雇用主に手当を支給する義務はない。月 6,000HUF まで(冷たい食品用)もしくは月 12,000HUF(温かい食品用)の食券を非課税で支給できる。 | 所得税法(Personal INCOME TAX ACT CXVII/1995 Appendix1.8.17. MODIFIED BY ACT CXXVI/2007 SECTION 35.§.) |
F-2 通勤手当 | 法による規定、支払の義務はない。 ただし、社会的慣例として交通費を支払うケースもみられる。 また、長距離通勤については、国鉄(2 等級クラス)料金の 86%、郊外電車および地方路線バス料金の 80%、また、勤務先までの公共交通機関が存在しないなど自家用車による通勤が不可避な場合は、同費用をを雇用者が負担する義務がある。 | 政令(Government Decree 78/1993 (V.12.)) | |
F-3 その他厚生 諸制度 | 個別合意による。 | ― | |
G. 各種保険 | G-1 労働保険 | 加入義務はない。 | ― |
G-2 社会保険 | 雇用主、被雇用者ともに国家年金基金および健康保険基金に保険料を納める義務がある。2001 年1 月1 日法改正により、初めて雇用関係を結ぶ被雇用者については、民間年金基金への加入が任意化された。94 年以来、いくつかの民間年金基金が運営されている。 | 社会保険法(SOCIAL SECURITY ACT) | |
H. その他 | H-1 職業訓練 | 地域労働開発・訓練センターが各地方政府および労働省にて運営されている。 | ― |
H-2 職員募集方 法 | 雇用主が独自に募集するか、職業あっせん所を通して探す。 | ― |