事業範囲や現行の貴市条例や市営住宅の管理方法等を踏まえ、市と PPA 事業者で締結する契約スキームを複数パターン設定し、それぞれの特徴や概要を整理する。
3. 事業スキームの検討
事業範囲や現行の貴市条例や市営住宅の管理方法等を踏まえ、市と PPA 事業者で締結する契約スキームを複数パターン設定し、それぞれの特徴や概要を整理する。
本項で整理する事業スキーム(複数パターン)は、事業条件として事業者ヒアリングに活用する。
3.1 事業範囲の設定
(1) 事業内容の整理
本事業は、「一括受電事業」と「xxx発電事業」の2つを組み合わせた事業である。
本項では、官民連携によって民間ノウハウを最大限発揮させるための前提条件として、各事業において民間事業者に委ねる事業内容について整理する。
1) 一括受電事業
一括受電事業については、受変電設備を新設する場合、「①受変電設備の設置」、「②設備の保守管理」、「③一括受電(電力調達)」、「④電力供給」の4つの業務・サービスに大別される。
個別契約
従来の電力供給
電力会社
個別契約
電力供給、設備の保守管理、検針・集金等
住居専用部
(入居者)
共用部
(自治会
公営住宅
一括受電事業の業務・サービス
個別契約
電力会社
高圧一括契約
一括受電事業
一括受電事業者
②設備の保守管理
住居専用部
(入居者)
③一括受電(調達)
④電力供給
電気料金
①設備の設置
共用部
(自治会
高圧受電
公営住宅
低圧供給
公共のサービス対価又は補助金・交付金等
利益
その他経費
一括受電(電力調
電力供給 達)
(電気料金収入) 【高圧】
【低圧】
設備の提供・保守管理受変電設備の設置
収入 支出
通常の公共事業では、設置から管理運営までの業務・サービスを細分化し、各業務を発注・契約する。しかし、一括受電事業では、各業務を個別発注とする場合、円滑な事業推進に支障が生じるほか、民間ノウハウやスケールメリットを活かしきれず、公共財政負担や電気料金の軽減効果を期待できなくなってしまうため、可能な限り業務・サービスを一括して委ねることが一般的である。
事業期間中の収支
図 3-1 一括受電事業の業務・サービス内容と収益構造のイメージ
2) xxx発電事業(PPA)
xxx発電事業については、「①発電設備の設置」、「②設備の保守管理」、「③電力供給(自家消費)」、「④余剰電力の売電」の4つの業務・サービスに大別される。
xxx発電事業の業務・サービス
公営住宅
電力供給(余剰電力)
屋根等に関する貸借契約もしくは使用許可
電力供給契約
xxx 公共 発電事業 (建物貸
主)
住居専用部
(入居者)
共用部
(自治会
発電事業者
(建物借主)
電力会社・地域需要家
④
電気料金
電気料金
電力供給
公営住宅におけるxxx発電PPA事業は、施設(住宅)所有者である公共より設置場所を借り受けて(もしくは使用の許可を受けて)、発電事業者が自らの資金で設備を設置し、需要家である住宅入居者等へ電力を販売することで収益を得るビジネスモデルである。また、xxx発電PPA事業では、入居者への需要を超えて発電された余剰電力を売電することも可能である。
補助金・交付金等 余剰売電収入 | 利益 その他経費 設備の保守管理 発電設備の設置 | ||
電力供給 (電気料金収入) |
支出
収入
事業期間中の収支
図 3-2 xxx発電(PPA)事業の業務・サービス内容と収益構造のイメージ
(2) 官民の役割分担 前項で整理した事業内容(業務・サービス)は、民間ノウハウの発揮が期待できることから、基本 的には、すべて実施主体を民間事業者とすることが望ましく、各業務・サービスに係る費用負担についても、入居者から得られる電気料金収入で賄うことを前提として、民間事業者の経営に委ねる
ことが有効である。
しかし、一括受電事業における受変電設備は、当該設備は公営住宅の入居者への電力供給に必 須の施設であり、xx的に保持する必要がある。そのため、民間事業者の経営判断による低品質な設備の導入や自由に撤去されることの無いよう、設置に係るコストについては、公共側の負担とすることも検討する必要がある。
また、xxx発電による余剰電力の売電については、設置する設備容量と初期費を考慮した民 間事業者の収支予測を踏まえる必要がある。
下表に、本事業の官民の役割分担を示す。
表 3-1 官民の役割分担
事業 | 業務・サービス | 実施主体 | 費用負担 | 考え方 |
一括受電事業 | 受変電設備等の設置 | 民間 | 公共 or 民間 | ・設備の性能は、要求水準を満たした機器の選定等を民間の提案に委ねることが望ましいが、受変電設備は入居者への電力供給にあたり、xx的に保持する必要があることから、コスト負担に関しては、事業性及び事業者ヒア リングを踏まえて検討する必要がある |
受変電設備等の保守管理 | 民間 | 公共 or 民間 | ・民間所有モデルとする場合は、民間により選定された設備のライフサイクルコストを考慮する必要があることから、民間の提案に委ねることが望ましいが、住宅整備事業において設置する場合は公共側での費用負担となるため、事業者ヒアリング等を踏まえて検討する必要がある | |
一括受電 (電力調達) | 民間 | 民間 | ・調達先は民間の裁量に委ねることが望ましい | |
電力供給 | 民間 | 入居者 | ・民間が自ら設定する電気料金を入居者から徴収し、各業務・サービスに係る費用を賄うことが望ましい | |
xxx発電事業 | xxx発電設備等の設置 | 民間 | 民間 | ・PPA 事業の場合は、実施主体も費用負担も民間が前提となる |
xxx発電設備等の保守管理 | 民間 | 民間 | ||
電力供給 (再エネ電力) | 民間 | 入居者 | ||
余剰電力の売電 | 民間 | 電力会社・地域需要家等 | ・余剰電力の売電の可否は、事業者ヒアリングで確認 | |
蓄電池設備の 設置 | 民間 | 公共 or 民間 | ・xxx発電の容量に影響するため、基本的には民間事業者の負担とすることが想定されるが、BCP や事業収支の観点より、民間事業者の参入を促進するには、公共側で負担することも有効である。今後、事業者xxxxx等を 踏まえて検討する。 | |
蓄電池設備の保守管理 | 民間 | 公共 or 民間 |
3.2 事業スキームの整理
(1) 電気料金収入の帰属 一括受電事業及びxxx発電事業において、民間ノウハウを最大限活用するためには、事業者 に事業の経営そのものを委ねることが効果的である。具体的には、各事業における電力供給において事業者が電気料金の収受を行い、その収入によって各業務・サービスに係る経費を賄えるよう
にする必要があり、電気料金収入を民間事業者に帰属させることがポイントとなる。
公営住宅において、電気料金収入を民間事業者に帰属させる方法には、下表に示す3つの方法がある。
受変
太
受変
太
受変
表 3-2 設備の使用において民間事業者に電気料金収入を帰属する方法
方法 | 民間所有の設備とする | 公共所有の設備を 民間に貸付ける(使用させる) | 公共所有の設備の運営権を民間に設定(譲渡)する |
【民間所有モデル】 | 【公共所有モデル】 | ||
概要 | 公共は設備を設置する公営住宅の屋根又は敷地等を民間に貸付け又は使用許可を与え、民間は自らの資金及び所有で設備を設置する | 設備は公共所有とするが、入居者(地域)に電力供給を行うための収益確保に繋げることを条件として、民間に貸付け又は使用許可を与える | 設備は公共所有とするが、入居者(地域)に電力供給を行うための収益確保に繋げることを条件として、民間に運営権を設定(譲渡)する |
イメージ | 陽光発電設備 (⺠間所有) 公営住宅 電設備(⺠間所有) | 陽光発電設備 (公共所有) 公営住宅 電設備(公共所有) | xxx発電設備 (公共所有) 公営住宅 電設備(公共所有) |
公共と事業者の関係 | 公営住宅(建物・土地)の貸付契約(又は使用許可) | 設備の貸付契約 (又は使用許可) | 設備の運営権設定契約 |
留意事項 | ・xxx発電PPA 事業の考え方である ・設備は民間所有となるため、公共側の都合で自由に更新・撤去はできない ・行政財産の貸付又は使用許可では、通常、貸付料又は使用料を徴収し、その額は電気料金に転嫁される(入居者負担)。本事業では、蓄電池・受変電設備を公共所有モデルでの無償貸付を想定しており、当該利益によって相殺以上の効果が見込まれることから、xxx発電事業では貸付料の提案を求め、事業者選定時の評価対象とする ・事業終了時に、建物・土地は現状有姿での返還が原則であり、一般的に設備は撤 去される | ・設備は行政財産であるため、管理責任は公共が負う (民間が自由に設備を更新・撤去できない) ・設備の設置及び管理に係る費用は、所有者である公共側が負担することが一般的である ・民間から徴収する設備の貸付料又は使用料は、その額が電気料金に転嫁される (入居者負担)が、設備の設置及び管理に係る費用を公共側で負担する場合は、受益者負担の考え方に基づ き、事業期間中に係る当該費用相当分を徴収することが望ましい | ・設備は行政財産であるため、管理責任は公共が負う (民間が自由に設備を更新・撤去できない) ・設備の設置及び管理に係る費用は、所有者である公共側が負担することが一般的である ・設備の運営権の設定(譲 渡)にあたり、民間は運営権対価を公共に支払う ・運営権対価は、設備の設置及び管理に係る費用を公共側で負担する場合、事業期間中に係る当該費用相当 分とすることが望ましい ・運営権の設定には新たな条例の制定が必要となる |
(2) 想定される事業手法
事業手法は、設備の所有者の違いによって大きく 2 区分に大別され、設置に係る費用の資金調達、管理運営に係る業務の責任分界等により、下表に示す手法に分類される。
なお、本事業では、入居者の手続き面での影響を考慮し、従来の公営住宅どおり、住居専用部分と共用部分への電力供給に係る電気料金収入の帰属を民間とすることを前提とした手法を前提とする。
表 3-3 本事業で想定される事業手法
区分 | 事業手法 | 概要 | 留意事項 |
公共所有デル | DBO 方式 | ・公共の資金調達により、設備の設置から管理運営までを一括して民間事業者に委ねる手法 ・設備の所有者は公共である | ・電気料金収入の帰属を民間とする場合は、設備(行政財産)の貸付又は使用許可を民間に付与する必要がある |
PFI 方式 (BTO) | ・民間の資金調達により、設備の設置から管理運営までを一括して民間事業者に委ねる手法 ・設備の所有者は公共である | ||
PFI 方式 (BT コンセッション) | ・民間の資金調達により、設備の設置・管理を民間に委ねるとともに、設備の運営権を民間に譲渡し、運営を民間に委ねる手法 ・設備の所有者は公共である | ・運営権を譲渡することで、住居専用部や共用部の電気料金収入の帰属や収受を民間とすることが可能となる | |
民間所有モデル | PFI 方式 (BOT 又はBOO) | ・民間の資金調達により、設備の設置から管理運営までを一括して民間事業者に委ねる手法 ・事業期間中の設備の所有者は民間である(BOT 方式の場合は、事業終了後の所有権は公共に移転される) | ・設備の設置に係る費用を、公共が民間に分割で支払う ・設備の所有者は民間となるため、住居専 用部や共用部の電気料金収入の帰属や収受を民間とすることは可能であり、設備の更新・交換も民間が自由に実施することができる |
PPA 方式 | ・公共は設備の設置場所を民間に貸し付け、民間の資金調達により設備を設置、管理運営する ・設備の所有者は民間である | ・設備の所有者は民間となるため、住居専用部や共用部の電気料金収入の帰属や収受を民間とすることは可能であり、設備の更新・交換も民間が自由に実施することができる ・公共の費用負担はないため、民間による事業の独立採算の成立が前提 |
次頁に各手法の特徴を詳細に示す。
1) DBO 方式
公共
請負契約
委託契約+
行政財産の貸付
基本契約 (又は使用許可)
JV(共同企業体)
管理・運営会社
設計会社 建設会社 (
)
サービス提供
(電力供給契約)
xxx発電設備・一括受電設備等
電気料金
公営住宅
公共が資金調達し、設備の設置から保守管理及び運営を一括で性能発注する方式。
電力会社
一括性能発注により、民間ノウハウを活用した複数業務間の効率的が図られ、コスト削減が期待できる。
公共所有モデルであり、電気料金収入を民間事業者に帰属するためには、設備を民間に貸付け又は使用許可を与える必要がある。
設備の設置は設計・建設企業が実施する。維持管理・運営の実施にあたっては特定目的会社
(以下、「SPC(※)」という。)を設立することが多い。
DBO 方式は、設計・建設請負契約、維持管理・運営業務委託契約、設備の貸付契約(又は使用許可)及びこれらをまとめるための基本契約により構成される複合的な契約形態になる。
※SPC(特定目的会社)を設立することにより、本事業以外の業務を行って経営が悪化することや代表企業等の倒産が事業継続に影響を及ぼすことを避けることが可能になる。
表 3-4 DBO 方式の特徴
根拠法 | ∙ 法令上の規定なし(地方自治法) |
事業期間の目安 | ∙ 10~30 年 |
官民の契約形態 | ∙ 設備の設置については従来の公共発注の工事となるため、設計・建設企業と設計・建設請負契約を、SPC と維持管理・運営業務委託契約及び設備の貸付契約(又は使用許可)を、そしてこれらをとりまとめる契約として、基本契約を締結する |
発注形態 | ∙ 設備の設置から保守管理・運営まで一括発注 ∙ 性能発注(公共側は仕様を定めず、達成される水準のみを規定する。規定された達成水準が満足されるのであれば、その達成方法については民間側の自由裁量に任せる。)が原則 |
民間ノウハウの活用度 | ∙ 設備の設置から保守管理・運営まで一括で民間事業者に委ねるため、民間ノウハウの発揮が期待される |
資金調達 | ∙ 資金調達は公共が行う ∙ 金融機関から借り入れを行わないため、金利コストがかからない ∙ 金融機関から借り入れを行わないため、財務状況の監視機能が働かない |
公租公課 | ∙ 設備は公共の所有物となるため、民間は固定資産税等の公租公課は負担しない |
公募の手続き | ∙ 従来通りの公募(PFI 法に準じて手続きを行うことも多い) |
2) PFI 方式(BTO)
直接協定
公共
金融機関
PFI 事業契約+
設計会社
SPC(特定目的会社)
管理・運営会社
建設会社
(
)
サービス提供
(電力供給契約)
xxx発電設備・一括受電設備等
電気料金
公営住宅
電力会社
設備の設置から保守管理・運営までを一体の業務として公共が一括性能発注する方式であり、複数年契約となる。
一括性能発注により、民間ノウハウを活用した複数業務間の効率的が図られ、コスト削減が期待できる。
従来⽅式での負担
初期投資の削減
+平準化
PFI ⽅式での負担
・・・
維持管理・運営期間
時間軸
建設期間
また、PFI では、設置に係る初期費を民間が調達(民間資金を活用)することになる。公共側は、その費用を事業期間に亘り、民間に分割払いで支払うため、財政負担を平準化できる。
初期投資भ財政負担額
公共所有モデルであり、電気料金収入を民間事業者に帰属するためには、設備を民間に貸付け又は使用許可を与える必要がある。
PFI 方式の実施にあたっては、SPC を設立することが一般的である。
表 3-5 PFI 方式(BTO)の特徴
根拠法 | ∙ PFI 法 |
事業期間の目安 | ∙ 10~30 年 |
官民の契約形態 | ∙ 設備の設置から保守管理・運営まで業務及び設備の貸付( 又は使用許可)を包含した事業契約 |
発注形態 | ∙ 設備の設置から保守管理・運営まで一括発注 ∙ 性能発注(公共側は仕様を定めず、達成される水準のみを規定する。規定された達成水準が満足されるのであれば、その達成方法については民間側の自由裁量に任せる。)が原則 |
民間ノウハウの活用度 | ∙ 設備の設置から保守管理・運営まで一括で民間事業者に委ねるため、民間ノウハウの発揮が期待される |
資金調達 | ∙ 資金調達は民間が行う ∙ 金融機関との直接協定により、民間事業者の財務状況が監視される ∙ 金融機関から借り入れるため、金利コストがかかる |
公租公課 | ∙ 設備は公共の所有物となるため、民間は固定資産税等の公租公課は負担しない |
公募の手続き | ∙ PFI 法に基づき手続きを行う |
3) PFI 方式(BT コンセッション)
直接協定
公共
金融機関
PFI 事業契約
運営権設定
(運営権対価※民間)
SPC(特定目的会社)
設計会社 建設会社 管理・運営会社
( )
サービス提供
(電力供給契約)
xxx発電設備・
一括受電設備等
電気料金
公営住宅
設備の設置から保守管理・運営までを一体の業務として公共が一括性能発注する方式であり、複数年契約となる。
電力会社
一括性能発注により、民間ノウハウを活用した複数業務間の効率的が図られ、コスト削減が期待できる。
また、設備の設置に係る初期費は分割払いすることとなるため、財政支出の平準化が可能となる。公共所有モデルであるが、運営に関しては、設 備の所有権を公共が有したまま、運営権を民間事
業者に設定(譲渡)することで、電気料金収入の帰属を民間にすることができる。
民間事業者による安定的で自由度の高い運営を可能とすることにより、利用者ニーズを反映した質の高いサービスの提供を実現することを目的としている。
民間事業者による独立採算による運営が原則であり、実施にあたっては、SPC を設立することが一般的である。
指定管理者制度や通常の PFI 方式では事業の経営主体は公共であるが、コンセッション方式では、民間(運営権者)が経営主体となり、事業リスクを民間に移転する手法であることから、民間は、事業に対する責任が与えられる代わりに、より経営の自由度が得られる。
表 3-6 PFI 方式(BT コンセッション)の特徴
根拠法 | ∙ PFI 法 |
事業期間の目安 | ∙ 10~30 年 |
官民の契約形態 | ∙ 設備の設置から保守管理・運営まで業務及び設備の貸付( 又は使用許可)を包含した事業契約(運営権の設定を含む) |
発注形態 | ∙ 設備の設置から保守管理・運営まで一括発注 ∙ 性能発注(公共側は仕様を定めず、達成される水準のみを規定する。規定された達成水準が満足されるのであれば、その達成方法については民間側の自由裁量に任せる。)が原則 |
民間ノウハウの活用度 | ∙ 設備の設置から保守管理・運営を一括で民間事業者に委ねるため、民間ノウハウの発揮が期待される |
資金調達 | ∙ 資金調達は民間が行う ∙ 運営権を財産権と認め、その譲渡を可能とするとともに、 抵当権の設定、減価償却等による資金調達の円滑化等が図られる |
公租公課 | ∙ 設備は公共の所有物となるため、民間は固定資産税等の公租公課は負担しない |
公募の手続き | ∙ PFI 法に基づき手続きを行う ∙ 発注前に公共は実施方針策定条例を制定する。当該条例で定める電気料金の範囲内であれば、事業者は地方公共団体の承認を要せず、届け出のみで事業の実施が可能とされており、ニーズ等に合わせて柔軟に電気料金を変更することができる |
4) PFI 方式(BOT・BOO)
直接協定
公共
金融機関
PFI 事業契約+
SPC(特定目的会社)
管理•運営会社
設計会社 建設会社 ( )
サービス提供
(電力供給契約)
xxx発電設備•
一括受電設備等
電気料金
公営住宅
設備の設置から保守管理・運営までを一体の業務として公共が一括性能発注する方式であり、複数年契約となる。
電力会社
一括性能発注により、民間ノウハウを活用した複数業務間の効率的が図られ、コスト削減が期待できる。
また、設備の設置に係る初期費は分割払いすることとなるため、財政支出の平準化が可能となる。民間により設置・管理された設備において、入 居者ニーズを反映して提供される質の高いサービ
スを、公共は分割払いで買い取る(リース)という考え方の手法である。
事業期間中は設備の所有権は民間となるため、電気料金収入の帰属も民間となる。(BOT 方式の場合は、事業終了後、所有権は公共に移転。BOO 方式の場合は、事業終了後、設備は撤去。)
実施にあたっては、SPC を設立することが一般的である。
表 3-7 PFI 方式(BOT•BOO)の特徴
根拠法 | ∙ PFI 法 |
事業期間の目安 | ∙ 10~30 年 |
官民の契約形態 | ∙ 設備の設置から保守管理・運営まで業務及び設備の貸付( 又は使用許可)を包含した事業契約 |
発注形態 | ∙ 設備の設置から保守管理・運営まで一括発注 ∙ 性能発注(公共側は仕様を定めず、達成される水準のみを規定する。規定された達成水準が満足されるのであれば、その達成方法については民間側の自由裁量に任せる。)が原則 |
民間ノウハウの活用度 | ∙ 設備の設置から保守管理・運営まで一括で民間事業者に委ねるため、民間ノウハウの発揮が期待される ∙ 特に、事業期間中の設備の所有権は民間となるため、設備の保 守管理・運営についての自由度は高い |
資金調達 | ∙ 資金調達は民間が行う ∙ 金融機関との直接協定により、民間事業者の財務状況が監視される ∙ 金融機関から借り入れるため、金利コストがかかる |
公租公課 | ∙ 設備は民間の所有物となるため、事業期間中、民間は固定資産税等の公租公課は負担することになる |
公募の手続き | ∙ PFI 法に基づき手続きを行う |
5) PPA 方式
公共
土地・建物の貸付契約
(一括受電・太陽光発電事業の条件付き)
SPC(特定目的会社)または企業グループ
管理•運営会社
設計会社 建設会社 ( )
サービス提供
(電力供給契約)
太陽光発電設備•
一括受電設備等
電気料金
公営住宅
電力会社
施設の所有者である公共より設置場所を借り受けて(もしくは使用の許可を受けて)、民間が自らの資金で設備を設置し、需要家(本事業の場合は住宅入居者等)へ電力を供給する方式である。
貸付(または使用許可)と電力供給を組み合わせた事業であり、設備の耐用年数や投資回収期間を踏まえた複数年契約となる。
公共側の初期費やメンテナンス費の負担がかからない民間所有モデルとして、近年、公共施設における太陽光発電事業で多く採用されている。
民間が経営主体となり、事業リスクを負う手法であることから、民間は、事業に対する責任が与えられる代わりに、より経営の自由度が得られる。
表 3-8 PPA 方式の特徴
根拠法 | ∙ 法令上の規定なし(地方自治法、借地借家法など) |
事業期間の目安 | ∙ 20 年 |
官民の契約形態 | ∙ 設備の設置場所(屋根等)に係る貸付契約または使用許可 |
発注形態 | ∙ 一括受電や太陽光発電等の事業実施を条件とした公共施設の屋根等の貸付事業もしくは設置事業を発注 ∙ 性能発注(公共側は仕様を定めず、達成される水準のみを規定 する。規定された達成水準が満足されるのであれば、その達成方法については民間側の自由裁量に任せる。)とすることも可 |
民間ノウハウの活用度 | ∙ 設備の所有及び設置から保守管理・運営までの一切の業務について民間が責任を負うため、民間ノウハウの発揮が期待される反面、事業リスクは大きいため事業採算性の成立が条件となる |
資金調達 | ∙ 資金調達は民間が行う ∙ (公共事業ではないため、金融機関との直接協定はない) |
公租公課 | ∙ 設備は民間の所有物となるため、民間は固定資産税等の公租公課は負担することになる |
公募の手続き | ∙ 従来通りの公募 |
3.3 事業スキームのメリット•デメリット検討
前項で整理した5つの事業手法について、特徴及び留意点等を踏まえ、下表にメリット・デメリットを一覧で整理する。
PFI 事業
電力会社
電力会社
電力会社
電力会社
電力会社
表 3-9 想定される事業手法の特徴及びメリット•デメリット
区分 | 公共所有モデル | 民間所有モデル | |||
事業手法 | DBO 方式 | PFI 方式(BTO) | PFI 方式(BT コンセッション) | PFI 方式(BOT•BOO) | PPA 方式 |
概要 | ・公共の資金調達により、設備の設置から管理運営までを一括して民間事業者に委ねる手法 (設備の所有者は公共) ・公共は、設備の設置、維持管理に係る各業務を束ねて一括で発注し、民間は、公共が求める性能を満たす業務を行う ・運営(電力供給)については、公共が設備の使用許可を民間に与えて運用する | ・民間の資金調達により、設備の設置から管理運営までを一括して民間事業者に委ねる手法(設備の所有者は公共) ・公共は、PFI 法に基づき、設備の設置、維持管理を一括して事業発注し、民間は、公共が求める性能を満たす業務を行う ・運営(電力供給)については、公共が設備の使用許可を民間に与えて運用する | ・民間の資金調達により、設備の設置・管理を民間に委ねるとともに、設備の運営権を民間に譲渡し、運営を民間に委ねる手法 ・PFI 法に基づき、設備の所有者は公共のまま、設備の運営権を設定し、運営(電力供給)を含め、設置から管理運営までを民間に委ねる ・民間は、公共が求める性能(仕様)を満たす業務を行う | ・民間の資金調達により、設備の設置から管理運営までを一括して民間事業者に委ねる手法 ・事業期間中の設備の所有者は民間である (BOT 方式の場合は、事業終了後の所有権は公共に移転される) ・民間は、公共が求める性能を満たす設備の設置や、所有・維持管理を行い、設備から発電された電力を住宅に供給する | ・公共は設備の設置場所を民間に貸し付け、民間の資金調達により設備を設置、管理運営する手法(設備の所有は民間) ・民間は、公共が求める性能を満たす設備の設置や、所有・維持管理を行い、設備から発電された電力を住宅に供給する ・公共の費用負担は無く、民間は電気料金等でサービス提供に係る費用を賄う |
スキームイメージ | 公共 委託契約+ 行政財産の貸付 請負契約 基本契約 (又は使用許可) JV(共同企業体) 管理•運営会社設計会社 建設会社 ( ) サービス提供 (電力供給契約) 太陽光発電設備• 一括受電設備等 電気料金 公営住宅 | 直接協定 公共 金融機関 PFI 事業契約+ 融資契約 SPC(特定目的会社) 設計会社 建設会社 管理•運営会社 ( ) サービス提供 (電力供給契約) 太陽光発電設備• 一括受電設備等 電気料金 公営住宅 | 直接協定 公共 運営権設定 契約 (運営権対価※民間) 金融機関 SPC(特定目的会社) 設計会社 建設会社 管理•運営会社 ( ) サービス提供 (電力供給契約) 太陽光発電設備• 一括受電設備等 電気料金 公営住宅 | 直接協定 公共 金融機関 PFI 事業契約 SPC(特定目的会社) 管理•運営会社 設計会社 建設会社 ( ) サービス提供 (電力供給契約) 太陽光発電設備• 一括受電設備等 電気料金 公営住宅 | 公共 土地・建物の貸付契約 (一括受電・太陽光発電事業の条件付き) SPC(特定目的会社)または企業グループ設計会社 建設会社 管理•運営会社 ( ) サービス提供 (電力供給契約) 太陽光発電設備• 一括受電設備等 電気料金 公営住宅 |
設備所有 | 公共 | 公共 | 公共 | 民間 (BOT の場合は事業終了後、公共に移転) | 民間 |
資金調達 | 公共 | 民間 | 民間 | 民間 | 民間 |
設置•管理費用負担 | 公共による一括支払い | 公共による分割払い | 公共による分割払い (基本的には設置コストのみ) | 公共による分割払い (基本的には設置コストのみ) | 公共の費用負担なし |
やや大 | 大 | やや小 | やや小 | 小 | |
メリット | 〇従来の発注・契約方法に近い 〇設備の性能を公共側で定める 〇公共側の都合で設備の更新•交換•処分をコントロールすることができる 〇民間は、設置コストや管理コストを公共側に負担してもらえるため、投資回収効率が高い | 〇公共側が負担する設備の設置に係る初期費等を事業期間中で平準化できる 〇設備の性能を公共側で定めることができる 〇民間は、一時的な資金調達が必要であるものの、設置コストや管理コストを公共側に負担してもらえるため、投資回収効率は高い 〇金融機関との直接協定を締結(プロジェクトファイナンス)する場合は、第三者による監視機能が働き、事業破綻による影響の回避措置を講じることができる | 〇公共側が負担する設備の設置に係る初期費等を事業期間中で平準化できる 〇設備の性能を公共側で定めることができる 〇公共は設備の運営権対価を得ることができるため、費用負担が軽減される 〇民間は、一時的な資金調達が必要であるものの、設置コストを公共側に負担してもらえるため、投資回収効率は比較的高い 〇金融機関との直接協定を締結(プロジェクト ファイナンス)する場合は、第三者による監視機能が働き、事業破綻による影響の回避措置を講じることができる 〇運営権の譲渡を含めた長期契約であり、使用 許可は不要である | 〇公共側が負担する設備の設置に係る初期費等を事業期間中で平準化できる 〇設備の性能を公共側で定めることができる 〇設備のメンテナンスの責任は民間が負う 〇民間は、一時的な資金調達が必要であるものの、設置コストを公共側に負担してもらえるため、投資回収効率は比較的高い 〇金融機関との直接協定を締結(プロジェクトファイナンス)する場合は、第三者による監視機能が働き、事業破綻による影響の回避措置を講じることができる 〇長期契約で、設備所有も民間であるため、使 用許可は不要である 〇設備を公共所有の資産として計上しない | 〇太陽光発電事業では数多くの実績がある 〇初期費やメンテナンス費(責任を含む)を公共側で負担する必要はなく、民間の裁量に委ねることができる 〇長期契約で、設備所有も民間であるため、使 用許可は不要である 〇設備を公共所有の資産として計上しない |
デメリット | △設備の所有者及び設置•管理運営に係る費用の負担者として、公共側で性能を定める必要がある △公共側で設備の設置に係る初期費を一括で 負担しなければならない △業務毎の契約が必要になるため、手続きがやや煩雑となる △設備を公共所有の資産として管理・計上する △公共が設備のメンテナンス費用や責任を負う △電気料金収入を民間に帰属するため設備を貸付け又は使用許可を与える必要がある △事業破綻による影響の回避措置は限定的で あり、公共のモニタリングが重要になる | △設備の所有者及び設置•管理運営に係る費用の負担者として、公共側で性能を定める必要がある △長期契約となることから、公共都合で設備の 処分・交換などをコントロールしにくい △設備を公共所有の資産として管理・計上する △公共が設備のメンテナンス費用や責任を負う △電気料金収入を民間に帰属するため設備を貸付け又は使用許可を与える必要がある | △設備の所有者及び設置•管理に係る費用の負担者として、公共側で性能を定める必要がある △長期契約となることから、公共都合で設備の 処分・交換などをコントロールしにくい △設備を公共所有の資産として管理・計上する △公共が設備のメンテナンス費用や責任を負う △新たな条例の制定や運営権対価の設定など、発注•契約手続きに手間を要する | △設備の設置に係る費用の負担者として、公共側で性能を定める必要がある △事業期間中の設備の所有者は民間となるため、公共都合で設備の処分•交換はできない △電力供給を継続するためには、事業終了後の設備の取り扱いについて検討を要する | △設備の性能を公共側で細かく定めることはできない(貸付の条件程度) △設備の所有者は民間となるため、公共都合で 設備の処分•交換はできない △民間の独立採算での設置•管理運営が原則であり、リスクが高く事業性の判断が必要 △事業破綻による影響を最小限に抑えるためには、企業グループでの参画(連帯責任)と SPC 設立を条件とする必要がある。 △電力供給を継続するためには、事業終了後の設備の取り扱いについて検討を要する |
35
(1) 事業手法適用の考え方
事業手法の適用フローを下図に示す。
事業手法の適用の考え方は、各方式の特性を踏まえ、下記5つの視点に基づく指標で、定性的・定量的に簡易に判定することができる。
本考え方をもとに、一括受電事業と太陽光発電事業に適する事業手法を検証する。
表 3-10 事業手法の適用にあたっての判断指標
視点 | 指標 | 基準 |
1 | 初期費を平準化するか(負担しないか) ※補助負担分を除く | 市の財政状況や事業者ヒアリングを踏まえて検証 |
2 | 設備を民間所有とするか | 公営住宅の一部として市が管理(責任)者となる・ならない |
3 | 新たに条例を制定できるか | 市内同種施設・設備との整合や 供用開始までのスケジュールを踏まえて検証 |
4 | 公共負担なしで事業が成立するか | 投資回収 15 年以上・未満 |
5 | 事業終了後、設備の譲渡を受けるか | 電力供給を継続するための必須設備か・否か |
視点①
初期費を平準化するか
(ℝ担しないか)
NO
DBO 方式
YES
視点②
設備を
⺠間所有とするか
NO
視点③
新たに条例を制定できるか
NO
PFI 方式(BTO)
YES
YES
BT コンセッション方式
視点④
公共ℝ担無しで事業が成立するか
NO
視点⑤
事業終了後
設備の譲渡を受けるか
NO
PFI 方式(BOO)
YES
YES
PFI 方式(BOT)
PPA 方式
図 3-3 事業手法適用フロー
1) 一括受電事業
一括発電事業は、事業収支の試算結果(第 4 章参照)や事業者へのヒアリング結果(第 5 章参照)を踏まえ、想定される事業手法は「DBO 方式」となる。
なお、永黒団地での事業を想定した場合は、現状で住宅部分の設計・施工が進んでいることから、 受変電設備の「DB(設計施工)」は住宅整備事業者が行い、受変電設備の「O(管理運営)」は公共側が実施することとなる。この場合においては、受変電設備自体は、北九州市が所有・管理を行うことになるため、一括受電事業者は、各戸の電力使用量が確認できるよう、受変電設備に計量器
(スマートメーター)の設置・管理を行い、電気料金の収受を行うこととする(使用許可)。
今後、公営住宅を新設する場合は、住宅建築と受変電設備の設計・施工・維持管理を一体とした DBO 方式とするパターンと、永黒団地のように受変電設備と計量器の設計施工・管理運営を分け るパターンの実施が考えられる。
表 3-11 一括受電事業における事業手法の判定理由
視点 | 指標 | 基準 |
事業者へのヒアリング結果(第 5 章参照)では、受変電設備 | ||
と太陽光発電設備をともに民間所有とし、市による初期費 | ||
1 | 初期費を平準化するか(負担しないか) ※補助負担分を除く | の支払いを不要とすることも可能であるという企業もあった。しかしながら、受変電設備は、入居者への電力供給に必 須となる設備であり、初期費も大きくないことから市の負 |
担とすることが妥当であると考える。 | ||
2 | 設備を民間所有とするか | 受変電設備は電力供給にあたり、建物と一体を成す必須設備となるが、建物と同様に、公営住宅の一部として市が管 理(責任)者となることが望ましい。 |
3 | 新たに条例を制定できるか | 特定の公営住宅における一設備に関し、新たな条例を制定 することは困難であると想定。 なお、令和 8 年度の供用開始に間に合わせるためには、新たな条例(運営権条例)の制定は、事業者の公募を開始する 令和 6 年度までに完了させる必要がある。 |
4 | 公共負担なしで事業が成立するか | 一括受電事業と太陽光発電事業を一括して発注すること で、投資回収 15 年未満とすることは可能である。 |
5 | 事業終了後、設備の譲渡を受けるか | 受変電設備は、電力供給を継続するための必須設備であ り、譲渡を受けることが望ましい(なお、本事業では、公共 所有モデルを想定しており、当該指標は関係ない( 公共所有物なので譲渡はない))。 |
視点①
初期費を平準化するか
(ℝ担しないか)
NO
電力供給に必須となる設備であり、初期費も大き
くないことから市の負担とすることが妥当である
YES
×
視点②
設備を
NO
視点③
新たに条例を制定できるか
NO
⺠間所有とするか
YE
PFI 方式(BTO)
新たな条例制定は
公営住宅の一部として市が管理(責任)者と
なることが望ましい
×視点④
困難と想定
YES
視点⑤
公共ℝ担無しで
NO
×
事業が成立するか
事業終了後
PFI 方式(BOO)
YES
一括受電事業と太陽光発電事業を組み合わせることで、投資回収を 15 年未満とすることは可能
×設備の譲渡を受けるか ×
電力供給を継続する
YES
ための必須設備である
PPA 方式
PFI 方式(BOT)
BT コンセッション方式
DBO 方式
(使用許可)
S
NO
図 3-4 一括受電事業の事業手法判定フロー
2) 太陽光発電事業
太陽光発電事業は、公営住宅の電力供給にあたり必ずしも建物と一体を成す設備とする必要はなく、本事業では、民間所有モデルとして事業が十分成立することから、事業手法は「PPA 方式」と することを前提とする。
ただし、太陽光発電事業と一体的に整備される蓄電池設備については、防災の観点(BCP 等) や事業性等を踏まえ、公共所有とするか民間所有とするか、公営住宅ごとに検討が必要である。
永黒団地の場合は、太陽光発電事業にあたり、防災の上、必要となる容量の蓄電池設備の設置を条件とし、蓄電池設備の設置費は公共側での負担を想定することとした(第 4 章参照)。
表 3-12 太陽光発電事業における事業手法の判定理由
視点 | 指標 | 基準 |
1 | 初期費を平準化するか(負担しないか) ※補助負担分を除く | 初期費を公共が負担しなくとも、民間の独立採算で事業は成立する |
2 | 設備を民間所有とするか | 公営住宅の電力供給にあたり、建物と一体を成す設備ではなく、民間所有モデルで事業は成立する |
3 | 新たに条例を制定できるか | (民間所有モデルは確立しているため、公共所有モデルのために新たに条例を制定する必要はない) |
4 | 公共負担なしで事業が成立するか | 太陽光発電事業を単独で考えた場合、投資回収 15 年未満であり、事業採算性は高い |
5 | 事業終了後、設備の譲渡を受けるか | (太陽光発電設備は、電力供給にあたり必ずしも必要ないため、撤去に係る財政負担を考慮し、事業期間終了時に撤去することを原則とする) |
公共が初期費を負担しなくても
⺠間の独⽴採算で事業は成⽴する
視点①
初期費を平準化するか
(ℝ担しないか)
NO
×
DBO 方式
YES
視点②
設備を
⺠間所有とするか
YES
N
視点③
新たに条例を制定できるか
NO
PFI 方式(BTO)
新たな条例制定は
困難と想定
×
YES
建物と一体を成す設備ではなく、⺠間所有モデル
で事業は成⽴する
BT コンセッション方式
視点④
公共ℝ担無しで事業が成立するか
視点⑤ ×
事業終了後 NO
×設備の譲渡を受けるか
PFI 方式(BOO)
投資回収 15 年未満であり、
事業採算性は高い
YES
YES
太陽光発電設備は、電力供給にあ
たり必ずしも必要
PFI 方式(BOT)
PPA 方式
O
NO
図 3-5 太陽光発電事業の事業手法判定フロー
(2) 事業スキームのまとめ 事業収支の試算結果による投資回収の視点、事業者へのヒアリング結果に基づく民間意向の視 点を踏まえると、本事業は一括受電事業と太陽光発電事業を組み合わせた事業として、両事業を
余剰電力
の売電
《本事業の事業スキーム》
■事業手法
一括受電事業 :DBO 方式(※永黒団地では「使用許可」のみ)太陽光発電事業 :PPA 方式
■民間事業者の事業内容
〇一括受電事業
・受変電設備への計量器(スマートメーター等)の設置(撤去を含む)
・計量器の保守管理
・電力会社(小売電気事業者)からの高圧による系統電力の調達(電気料金の支払いを含む)
・住居専用部及び共用部への電力供給(電気料金の徴収を含む)
[・受変電設備の設計・施工、管理運営](※永黒団地の場合は除く)
〇太陽光発電事業
・太陽光発電設備(蓄電池を含む)の設置(撤去を含む)
・太陽光発電設備(蓄電池を含む)の保守管理
・太陽光発電設備からの住居専用部及び共用部への電力供給(電気料金の徴収を含む)
・太陽光発電設備により発電された余剰電力の売電
※蓄電池については、投資回収の観点を踏まえて公共側での費用負担を想定する
一括受電事業・太陽光発電事業の業務・サービス
公共
(建物貸主)
太陽光発電設備
計量器、太陽光発電設備等の設置
事業者
個別契約
高圧一括契約
設備の保守管理
住居専用部
(入居者)
電力会社
一括受電(調達)
電力供給
電気料金
共用部
(自治会
公営住宅
高圧受電
低圧供給
電力会社・地域需要家
受変電設備
(住宅と一体設備として整備)
※事業者は計量器(スマートメーター)のみ設置
■事業期間
設備の耐用年数及び投資回収年数を踏まえ、20~25 年とすることが望ましい。
一体的に発注して事業者を公募することが望ましく、事業スキームは、下記のとおりとなる。
3.4 民間賃貸住宅の類似事例調査
本調査では、民間賃貸住宅の集合住宅のみに限定せず、民間分譲住宅や公営住宅の集合住宅も含めて一括受電またはPPAの導入事例について、公開情報をもとに全8事例(一括受電事業:5事例、 PPA 事業:3事例)調査し、参考資料として、とりまとめた。ただし、一括受電“且つ”PPAの導入事例は全国的に見ても希少であるため、どちらかの事業を含む事例を基本的には調査対象とした。
3.5 PPA 事業条件の検討
PPA 事業の実施にあたり、市営住宅の屋根等の設置場所に係る規制(行政財産の使用又は貸付)や事業期間、事業終了時の発電設備の取り扱い、事業の倒産隔離等の事業条件について検討する。
(1) 受変電設備の取り扱い
本事業の一括受電事業では、DBO 方式により、公共側の所有・費用負担で受変電設備を設置し、民間事業者が当該設備を使用して、電気料金の収入を得ることになるが、公営住宅における一括受電事業は、「自家消費」であることが前提となるため、受変電設備そのものの使用権原を民間事業者に付与する必要はない。
ただし、電力会社からの系統電力の調達や各戸(住居専用部)及び共用部への電力供給は、民 間事業者が実施するため、各戸(住居専用部)と共用部の電力使用量が分かる計量器(スマートメーター等)を民間事業者が設置する必要がある(使用許可)。
また、受変電設備そのものは、住宅(建築)部分と一体を成す設備として、公共が所有することになり、公共側の電気主任技術者による保安(保守管理)を実施することとなるため、受変電設備を 更新する際の事業者とのスケジュール及び責任分担の検討・調整が必要となる。
(2) 太陽光発電設備等の民間事業者が設備を設置する場所に係る規制
太陽光発電設備等の民間事業者が設備を設置する場合、公共側はその場所については、貸付 契約を締結する、もしくは使用許可を与える必要がある。
地方自治法第 238 条の 4 第 2 項第 4 号では、行政財産の床面積に余裕がある場合には、貸付及び私権の設定が可能とされているものの、他市町村における太陽光発電 PPA 事業の事例の多くは、行政財産の目的外使用許可によって運用されている。
しかし、目的外使用許可は、原則として 1 年間の許可期間となるため、太陽光発電事業等に必要な事業期間で運用する場合は、毎年、許可の更新を行う必要があり、民間事業者は事業期間が担保されておらず、事業リスクを抱えることになる。
そのため、他市町村の先行事例では、公共施設の屋根貸しに関する規則・要項等を制定し、太陽光発電事業に係る目的外使用許可の期間を定めることによって、事業期間にわたる一括での使用許可を可能としている事例も見られる。
《他市町村の事例》
■いわき市太陽光発電に係る公共施設等の屋根等の使用に関する規則
(使用許可の通算期間)
第3条 使用許可の期間は、通算して 21 年を超えることができない。ただし、市長がやむを得ない理由があると認めたときは、この限りでない。
■下野市市有施設の屋根貸しによる太陽光発電事業実施要綱 (貸付期間)
第 6 条 貸付期間については、施設ごとに協定書で定めるものとし、1 施設につき最長で 20 年間とす
る。ただし、必要に応じて発電設備の設置工事期間と撤去期間を加えた期間とする。
本市の公営住宅における太陽光発電設備導入事業においても、今後の運用を想定し、公共施設 の屋根貸しに関する規則や要綱を定めることも有効である。
(3) 事業期間の設定
「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(別表第 2)」によれば、受変電設備や太陽光発電設備などは、「31 電気業用設備」の「その他の設備」の「主として金属製のもの」に該当し、法定耐用年 数は 17 年と定められている。
しかしながら、メーカーの製品保証は、太陽光パネル等では 20 年、パワーコンディショナ―は 10年のものが主流となっており、設備によって物理的な耐用年数は異なっている。
先行する他自治体の公共施設における PPA 事業の事業期間を見てみると、運転期間は 20 年 間と定められているものが多く、設置や撤去の期間を加えている事例も見られる(下表参照)。
そのため、本事業においても、事業期間は 20~25 年程度とすることが考えられる。
なお、第 4 章の事業収支で整理するように、民間事業者の投資は 20 年以内で回収できるものとなっている。
表 3-13 他自治体における PPA 事業事例の事業期間
発注機関 | 事業名 | 対象施設 | 事業期間 | |
1 | 札幌市 | 市有施設への太陽光発電設備導入事業 | 温水プール 市⺠利⽤施設学校 動物園 | 運転期間︓最⻑ 20 年間 運転開始までと撤去の期間︓2 年間 |
2 | 横浜市 | 市有施設への再生可能 エネルギー等導入事業 | 小中学校 | 最⻑ 20 年間(撤去・原状回復を含む) |
3 | 世田谷区 | 公共施設への再生可能 エネルギー等導入事業 | 小中学校 支所 | 20 年間(撤去・原状回復を含む) |
4 | 豊橋市 | 市有施設への再生可能エネルギー等導入事業 | 公⺠館 保育所支所 | 運転開始より 17 年間 (※設備は期間終了後、市へ譲渡) |
5 | 桑名市 | 市有施設への再生可能エネルギー等導入事業 | まちづくり拠点施設 | 最⻑ 20 年間(撤去・原状回復を含む) |
6 | 吹田市 | 市有施設の屋根貸しによる太陽光発電システム 設置促進事業 | ⾃転⾞駐⾞場庁舎 | 最⻑ 20 年間(撤去・原状回復を含む) |
(4) 事業終了時における民間事業者が設置する設備の取り扱い 太陽光発電設備や一括受電事業の実施ための計量器を民間所有モデル(PPA 方式、使用許可 など)とする場合、これらの設備に関しては、通常、条例等の定めにより、事業期間終了時に、撤去
の上、現状に回復することを義務付け、その解体・撤去費用は電気料金に上乗せされる。
そのため、先行する他自治体の PPA 事業では、事業期間終了後、公共に譲渡する事例も見られる。譲渡を受ける場合、設備が故障し、使用できなくなるまでは、太陽光発電設備等より得られる発電電力は無償で使用することができるものの、解体・撤去費用は公共負担となることに留意が必要である。
本事業では、太陽光発電設備や計量器などについては、系統からの電力供給には直接的に影響が無いため、条例等の定めに従い、事業期間終了時に撤去及び原状回復することが望ましい。
(5) 事業の倒産隔離措置 設備等について、設計・施工から保守管理までを一括して民間事業者に委ねる場合、設計会社、 建設会社、管理会社など、複数の企業がグループを構成して、事業を実施することが想定される。その際、長期間の契約となることが想定されるため、事業期間中に、当該企業グループを構成する企業が経営状況の悪化により、倒産してしまう可能性もある。仮に、保守管理業務を行う管理会社が倒産してしまった場合には、当該企業グループでは、保守管理することができず、事業中止とな
って電力供給が停止されるリスクがある。 そのため、公共側は当該企業グループと
の契約にあたり、資産の流動化に関する法律に定められる特定目的会社(SPC)を設 立することを義務付け、金融機関等の融資先による第三者監視機能の強化や、SPC構成企業の変更手続きを可能とする等の措置を講じることにより、倒産隔離や事業破綻リスクの低減化を図ることが有効である。
(6) 公募に必要となる手続き(公募スケジュールと募集書類)
1) 公募手続きとスケジュール上の留意点
公募に必要な手続きと、その期間の目安を下記に示す。
募集書類の作成・公表までに検討を要する条件設定に、どれくらいの時間を要するか次第であるが、通常の公募は、事業者による事業実施までに 12~15 か月かかる。
《公募に必要な手続きとその期間》
STEP1:募集書類の作成・公表【必要期間:約 4~6 か月】
・事業実施に必要となる条件を検討し、募集要項、要求水準書等の募集書類として作成する
・条件設定にあたり、公営住宅の設計及び受変電設備の設計は完了しておく必要がある
・議決を要する条件(条例改正、価格設定等)がある場合は、議会スケジュールを考慮 STEP2:応募者からの質問の受付、回答書の作成・公表【必要期間:約 1 か月】
・募集書類公表後、応募者から寄せられる参加・提案にあたっての質問を受付け、回答する
・募集書類公表から質問受付までは 2 週間程度、回答書の公表までに 2 週間程度必要 STEP3:提案書類の受付【必要期間:約 3~4か月(応募者による提案期間)】
・募集書類の公表から、応募者が提案書類を提出するまでに要する期間
・概略的な設計を提案させる場合は、長めの期間を設定する必要がある STEP4:・参加資格等の基礎審査及び結果通知【必要期間:約 1 か月】
・募集要項に示す参加資格要件を満たすか、提出書類の不備等、基礎的な内容を確認する
・基礎審査の合否を応募者に通知し、合格者にはプレゼンテーションの日時等を通知する STEP4:提案書類の提案審査及び事業者の選定【必要期間:約 1 か月】
・(仮称)事業者選定委員会を設置し、応募者のうち基礎審査合格者の提案内容を審査する
・委員会による審査は、書類での審査とプレゼンテーションによる審査の 2 回程度必要
・委員会では、優先交渉権者と次点交渉権者を選定する(事業者決定は庁内合意形成後) STEP5:事業契約の締結【必要期間:約 2 か月】
・優先交渉権者と市で協定書と契約書の締結に向けた協議を行う
・優先交渉権者と市の間で契約締結協議が整わない場合は、交渉権を次点交渉権者に移す
・契約締結にあたり議決を要する場合は、議会スケジュールを考慮 STEP6:事業実施(事業者による業務着手)
・契約締結後、事業者による業務を開始する
・事業者による設備設置にあたり、住宅工事、受変電設備設置は完了させておく必要がある
・住宅への入居開始は、少なくとも事業者による事業実施後とする必要がある
2) 公募に必要となる募集書類
本事業の公募時に必要となる書類は、下表に示す通り、大きく6種類ある。
これらの書類作成に必要な条件を決定し、事業者の公募時に示す必要がある。
表 3-14 事業者公募に必要となる募集書類
書類名 | 目的・位置づけ | |
1 | 募集要項 (説明書) | 事業への参画を検討する⺠間事業者に対し、事業概要や企画競争等の参加⼿ 続きに関する事項を示すもの |
2 | 要求水準書 (条件規定書) | 事業の実施にあたり、⺠間事業者に求める最低限のサービス水準(条件) を示すもの |
3 | 審査基準書 | 企画競争への参加者が提出した提案書類(参加申込書を含む)を評価し、優先交渉権者等を決定するための方法、⼿順、⼿続き、審査項目・基準等を示すもの |
4 | 協定書(案) 契約書(案) | 発注者(北九州市)と優先交渉権者等との間で、権利・義務関係やリスク分担等について規定したもの 本事業の場合は、以下 3 つの協定書・契約書となる想定 ①契約締結に関する基本的事項について合意する協定書(案) ②設備の設置場所に係る協定書(案)又は許可書 (※使⽤許可ではなく貸付とする場合は賃貸借契約書(案)) ③蓄電池設備の設置・管理運営に係る契約書(案) |
5 | 様式 | 企画競争の参加者が提案書を作成する際の提案様式を取りまとめたもの |
6 | その他提⽰資料 | 募集要項で示す事業概要や要求水準書で示す条件を補足するための図面・参考資料など |
次頁に公募スケジュール(案)を示す。
表 3-15 公募スケジュール(案)
項目(必要な手続き)募集書類の作成•公表
説明書(募集要項)の作成•公表要求水準書の作成•公表
1か月目
2 か月目
3か月目
4か月目
5か月目
6か月目
7か月目
8か月目
9 か月目
10か月目 11か月目 12か月目 13か月目 14か月目 15か月目
審査基準書の作成•公表
協定書(案)及び契約書(案)の作成•公表様式集の作成•公表
応募者からの質問受付及び回答書の作成•公表
公表(必要に応じて説明会の開催)
質問受付
回答書作成•公表 公表
提案書類の受付
提案書受付期間(3か月程度を想定)参加資格等の基礎審査及び結果通知
基礎審査
結果通知(プレゼンテーション案内)提案書類の提案審査及び事業者の選定
提案審査
審査講評の作成•公表事業者の選定
事業契約の締結
協定書締結に向けた事業者との協議•交渉協定書調印版の作成
協定締結
契約書締結に向けた事業者との協議•交渉契約書調印版の作成
契約締結事業実施
設計•建設内部手続き
予算確保•議決
(仮称)事業者選定委員会の開催
予算確保
①
協定締結
契約締結
(契約議決)
② ③
45
3.6 責任分界点の検討
PPA 事業及び一括受電事業、それぞれの責任分界点(事業範囲)を検討した結果を図 3-6 に示した。
図 3-6 PPA 事業及び一括受電事業の責任分界点(事業範囲)
46