2. Outline of the Procedures to Apply Special Taxation Measures( 税 制 特 例 適 用 申 告 の 手 続 の 概 要 : 英 語 に よ る 解 説 ) 62
部外秘/転載要許諾
平成 22 年 11 月
経済産業省 委託調査
平成 22 年度産業金融システムの構築及び整備に係る
調査委託事業
「最近の投資事業組合を巡る事業環境の変化を反映した投資事業有限責任組合モデル契約書の作成」に関する
報
告
書
経済産業政策局 産業資金課
(事務委託先)
xxxxx法律事務所
弁護士 | x | x | x | |
同 | x | x | x | |
同 | x | x | x | x |
同 | x | x | x | |
同 | x | x | x | x |
同 | x | x | x |
< 目 次 >
第 一 部 本 事 業 の 目 的 及 び 事 業 x x 1
1. 本 事 業 の 目 的 1
2. 本 事 業 の x x 及 び 手 法 1
3. 本 調 査 に 関 す る 留 意 事 項 2
第 二 部 本 事 業 の 結 果 3
第 x x 連 法 令 の 改 正 に よ る 影 響 3
1. x x 商 品 取 引 法 3
Ⅰ 開 示 規 制 3
1 概 要 3
2 実 務 上 の 影 響 3
Ⅱ x x 商 品 取 引 法 上 の 業 規 制 5
1 取 得 勧 誘 に 関 す る 業 規 制 5
2 運 用 に 関 す る 業 規 制 5
3 適 格 機 関 投 資 家 等 特 例 業 務 5
4 投 資 運 用 業 者 に 関 す る 規 制 8
5 無 限 責 任 組 合 員 ( 又 は 業 務 執 行 組 合 員 ) の 投 資 運 用 業 務 の 投 資 一 任 該 当 性 9
Ⅲ 公 開 買 x x 制 13
1 買 付 け 等 13
2 公 開 買 付 け を 行 う 者 13
3 株 券 等 所 有 割 合 14
4 資 金 証 明 16
Ⅳ 大 量 保 有 報 告 18
1 保 有 者 18
2 株 券 等 保 有 割 合 19
Ⅴ 特 定 組 合 等 に 係 る 短 期 売 買 差 益 等 に 関 す る 規 制 20
1 規 制 の 経 緯 20
2 x x 商 品 取 引 法 第 165 条 の 2 に よ る 規 制 の 概 要 21
Ⅵ 第 三 者 割 当 増 資 規 制 に お け る 論 点 23
1 金 商 法 上 の 開 示 規 制 23
2 x x 商 品 取 引 所 の 適 x x 示 ル ー ル 25
2. 会 社 法 27
3. 債 x x ( 民 法 ) 改 正 28
1 民法改正議論の動向が投資事業有限責任組合に与え得る影響28
4. 外 国 為 替 及 び 外 国 貿 易 法 29
1 外 国 為 替 及 び 外 国 貿 易 法 ( 以 下 「 外 為 法 」 と い う 。 ) の 届 出 ・ 報 告 x x の 概 観 29
2 近 時 の 動 向 31
3 日 本 の 投 資 事 業 組 合 に x x す る 外 国 投 資 家 の 取 扱 い に 関 す る 解 釈 33
5. 独 占 禁 止 法 34
1 改 正 の 趣 旨 ・ 背 景 34
2 事 前 届 出 x x の 要 件 ( 基 準 ) 34
3 効 果 36
4 投 資 事 業 組 合 で の 想 定 さ れ る 適 用 事 例 36
第二 平成 21 年度以降に導入された海外投資家向け税制措置 46
1. 税制特例適用申告の手続の概要(日本語による解説) 46
1 外国組合員に対するxx的施設の取扱いに関する特例 46
2 事 業 譲 x x 似 株 式 の 譲 x x 課 税 (25%/5% ル ー ル ) に 関 す る 特 例 48
2. Outline of the Procedures to Apply Special Taxation Measures( 税 制 特 例 適 用 x x の 手 続 の 概 要 : 英 語 に よ る 解 説 ) 62
1 Special measures for foreign partners concerning permanent establishment treatment 62
2 Special measures regarding taxation on capital gain from the
transfer of shares similar to business transfer (25%/5% Rule) 65
第 三 ヒ ア リ ン グ の 結 果 及 び そ の 分 析 81
1. は じ め に 81
2. ヒ ア リ ン グ 結 果 の 概 要 81
1 国 内 投 資 事 業 組 合 全 般 81
2 海外の組合型ファンドに標準的な規定の動向と国内の投資事業組合における取扱いの状況と展望 82
3 x x 的 施 設 及 び 事 業 譲 x x 似 株 式 の 譲 x x 課 税 に 関 す る 税 制 特 例 を 利 用 す る 場 合 の 問 題 点 85
4 旧 モ デ ル 契 約 に お い て 実 務 上 問 題 が 生 じ た 点 や 改 善 す べ き と 考 え ら れ る 点 85
5 税 法 上 及 び 規 制 x x x 他 の 問 題 点 85
6 そ の 他 86
3. 小 括 86
第 四 投 資 事 業 有 限 責 任 組 合 モ デ ル 契 約 87
第一部 本事業の目的及び事業内容
1. 本事業の目的
本事業の目的は、貴省からの委託により、最近の投資事業組合を巡る事業環境の変化を反映した投資事業有限責任組合モデル契約書を改定することにある。
我が国においては、投資事業組合1を組成する場合のビークルとして、投資事業有限責任組合を選択する実務が定着している。その場合、貴省が平成 16 年に公表した投資事業有限責任組合モデ
ル契約が活用されることが多いと思われるものの、当該モデル契約は平成 16 年以降の法改正を反
映していない。とりわけ、平成 21 年の税制改正により、投資事業有限責任組合における海外投資家向け税制措置が設けられたところ、当該措置の適用如何には組合契約の規定の内容が問題となることから、海外投資家向けの組合においてどのような規定が必要かを明らかにすることは喫緊の課題であるといえる。また、海外においては投資事業を行う組合における契約条項はある程度類型化が進んでおり、かかる海外投資家の組合への加入を求めるにあたっては、海外における組合契約の実務を踏まえる必要がある。
そこで本事業では、(1)平成 16 年以降の法制の変化等に基づき形成されてきた(又はいまだ形成途上の)実務の把握という観点、及び、(2)海外投資家にとっての投資環境の整備という観点を大きな軸として、分析及び検討を実施し、平成 16 年に貴省より公表された投資事業有限責任組合モデル契約を改定する形で、これらを反映したモデル契約を作成することとした。
2. 本事業の内容及び手法
本事業の内容は、(1)関連法令の改正等とその影響の分析、(2)平成 21 年度以降に導入された海外投資家向け税制措置とその影響の分析、(3)(1)及び(2)を反映した投資事業有限責任組合モデル契約書(xx及び英文)の作成、(4)海外投資家向けの投資事業有限責任組合モデル契約の参考情報としての税制特例適用申告の手続に関する概要説明(xx及び英文)の作成からなる。
このうち、(1)及び(2)については公表資料及び文献等を中心にその内容につき調査及び検討を行った上で、それらにおける各影響の分析については、さまざまな立場において投資事業組合組成の実務に関与する実務家に対してかかる影響等につきヒアリングを行い、その結果を分析した。また、(2)の税制措置の内容については、(4)の概要説明にて概説しているのでそれを参照することとしている。
1 本報告書においては、投資事業有限責任組合又は投資事業有限責任組合が投資事業有限責任組合契約に関する法律に従いなし得る事業を行う民法上の組合を投資事業組合という。
3. 本調査に関する留意事項2
報告者らは、本報告書の準備にあたって、本事業の過程で得た知見について、可能な限り網羅的に本報告書に盛り込むことを試みた。しかしながら、事業委託期間が3か月程度という限られた時間であったこともあり、報告者らが検討した全ての資料について、その内容の全てを本報告書に記載することは不可能である。また、実務的に生じる手続的な問題を含めて、必ずしも重要とはいえない論点については、却って全体的な議論の焦点がぼやけることをおそれ、意図的に割愛した部分もある。その意味では、本報告書は、本事業の過程で報告者らが得た知見の全てを反映したものではないことに御留意されたい。
2 なお、意見にわたる部分は、報告者らの属する法律事務所としての立場・見解を表明したものではない。ま た、本報告書は報告者らの調査結果及び契約書のモデルを示したものであり、実務にあたっては、読者がこれらにそのまま依拠することを想定するものではなく、必要な調査及び事案に応じた契約書ドラフトの改定が行われるべきである。
第二部 本事業の結果
第一 関連法令の改正による影響
1. 金融商品取引法
Ⅰ 開 示 規 制
1 概 要
投資事業有限責任組合の組成に際して、投資事業有限責任組合の組合持分、すなわち、投資事業有限責任組合契約に基づく権利は、金融商品取引法(以下「金商法」という。)において、いわゆる第二項有価証券として規制の対象とされている(金商法第 2 条第 2 項第 5 号)3。従って、組合持
分が有価証券投資事業権利等4(金商法第 3 条第 3 号イ)に該当し、当該組合持分の取得勧誘が「有
価証券の募集」(金商法第 2 条第 3 項)に該当する場合には、原則として、発行者である無限責任組合員が有価証券届出書を提出するとともに、出資者に対して目論見書を作成・交付することが必要となり(金商法第 4 条第 1 項、第 13 条第 1 項、第 15 条第 2 項)、またその後有価証券報告書等
による継続開示を行うことを要する(金商法第 24 条等)。
一方、組合持分の取得勧誘が有価証券の募集ではなく「有価証券の私募」(金商法第 2 条第 3 項)に該当する場合は、有価証券届出書の提出や目論見書の作成・交付は不要であり、その後の継続開示も原則として必要とならない。但し、取得勧誘を行う際に、一定の事項を勧誘の相手方に告知する必要がある(金商法第 23 条の 13 第 4 項、第 5 項)5。
2 実 務 上 の 影 響
(1) 発行開示に関して
組合契約に基づく権利を含む第二項有価証券の募集とは、新たに発行される有価証券の取得勧誘に応じることにより、当該取得勧誘に係る有価証券を 500 名以上の者が所有すること
3 民法上の組合契約(民法第 667 条第 1 項)に基づく権利は、金融商品取引法上、同法第 2 条第 2 項第 5 号に定める第二項有価証券であり、投資事業有限責任組合契約に基づく権利と同様なので、以下では、特に断らない限り、投資事業有限責任組合に関する記述は民法上の組合にも基本的に妥当する。
4 「有価証券投資事業権利等」とは、一定の場合を除き、集団投資スキームに係る権利を有する者が出資又は拠出をした金銭その他の財産の価額の合計額の 100 分の 50 を超える額をあてて有価証券に対する投資を行う出資対象事業に係る権利をいう(金融商品取引法施行令(以下本 1.において「施行令」という。)第 2 条の 9 第 1 項)。
5 なお、組合持分の譲渡の場合には、通常、有価証券の売出しに該当しない形、すなわち、いわゆる有価証券の私売出しの形で行われることが一般である。かかる場合には、組合持分の私募の場合と異なり、告知は必要とされていないものと解されるようである。これは、金商法第 23 条の 13 第 4 項において「各号に定める場合に該当するもの…を行う者」が告知の主体とされているところ、同項第 2 号には、「同法第 2 条第 4 項第 3 号に掲げる場合に該当しない場合」が掲げられていないことを根拠としている。
となる取得勧誘をいう(金商法第 2 条第 3 項第 3 号、施行令第 1 条の 7 の 2)。従って、組合
持分を取得する者が 500 名に至らない場合は、有価証券の募集ではなく私募となる。また、組合契約に基づく権利を含む第二項有価証券の売出しとは、既発行有価証券の売付け勧誘等のうち、その売付け勧誘等に応じることにより、当該売付け勧誘等に係る有価証券を 500 名以上の者が所有することとなる場合(取引所金融商品市場における有価証券の売買等、施行令第 1 条の 7 の 3 で定める有価証券の取引に係るものを除く。)をいう(金商法第 2 条第 4 項 3
号、施行令第 1 条の 8 の 5)。
これらの 500 名以上とは、勧誘の相手方の人数ではなく、取得勧誘に応じることにより結果として当該有価証券の所有者となる者の数が基準とされている。
投資事業有限責任組合の組成に際しては、有価証券届出書の提出等に伴う手間やコストを避ける観点から、実務上は、有価証券の私募に該当する形で組合持分の取得勧誘を行うことが一般的である。この場合、取得者ベースで 500 人に至らないことが要件であるため、かかる要件は充足し易いものと考えられる。
(2) 継続開示に関して
前述のとおり、組合持分の取得勧誘が有価証券の募集に該当する場合のほか、組合持分の所有者の数が 500 名以上となった場合には、発行者は、原則として有価証券報告書を提出す
る義務を負うことになる(金商法第 27 条、第 24 条第 5 項、第 24 条 1 項 4 号、施行令第 4 条
の 2 第 4 項、同条第 5 項)。組合持分の譲渡により継続開示義務が発生することを回避する観
点からは、組合持分の所有者が継続的に 500 名未満となるようにするため、譲渡制限に関する規定を設けることも考えられる。
Ⅱ 金融商品取引法上の業規制
1 取得勧誘に関する業規制
投資事業有限責任組合を運営する無限責任組合員が自ら当該投資事業有限責任組合の持分の取得勧誘を行う場合6、第二種金融商品取引業に該当することから(金商法第 28 条第 2 項第 1 号、第
2 条第 8 項第 7 号ヘ)、無限責任組合員は、原則として、第二種金融商品取引業の登録を行う必要
がある(金商法第 29 条)。
もっとも、上記にかかわらず、①適格機関投資家等特例業務として自己私募を行う場合(金商法第 63 条第 1 項第 1 号)(後述)又は②無限責任組合員が、第二種金融商品取引業者に組合持分の取得勧誘を委託し、自らは取得勧誘行為を一切行わない場合7には、第二種金融商品取引業の登録を要しない。
2 運用に関する業規制
無限責任組合員が有限責任組合員より出資を受けた投資事業有限責任組合の財産に関して主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に投資運用する行為については8、自己運用業務として投資運用業に該当することから(金商法第 28 条第 4 項第 3 号、第 2 条第 8 項第 15 号ハ)、無
限責任組合員は、原則として、投資運用業の登録を行う必要がある(金商法第 29 条)。
もっとも、上記にかかわらず、①適格機関投資家等特例業務として自己運用を行う場合(金商法第 63 条第 1 項第 2 号)(後述)又は②無限責任組合員が、投資運用業者である金融商品取引業者等との間で投資一任契約を締結し、当該契約に基づき、運用を行う権限の全部を委託する場合で、金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第 16 条第 1 項第 10 号の要件の全てに該当する場合には、投資運用業の登録を要しない。
3 適格機関投資家等特例業務
投資事業有限責任組合を運営する無限責任組合員は、その行う自己私募又は自己運用が適格機関投資家等特例業務の要件に該当する場合には、金融商品取引業の登録義務が免除され、届出を
6 民法上の組合を運営する業務執行組合員が当該組合の持分の取得の勧誘を行う場合についても同じであり、以下に述べる無限責任組合員による募集に関する金商法上の規制は民法上の組合の業務執行組合員に関しても同様にあてはまる。
7 「金融商品取引法制に関する政令案・内閣府令案」に対するパブリックコメントの結果等について―コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(平成 19 年 7 月 31 日公表)(以下本 1.において「パブリックコメント」という。)58 頁以下 103 番-114 番。なお、取得勧誘を一切行わないかどうかは、個別事例ごとに実態に即して実質的に判断されるべきものとされる。
8 民法上の組合を運営する業務執行組合員が当該組合の財産の運用を行う場合につき同じであり、以下述べる無限責任組合員の運用面に関する業規制は民法上の組合の業務執行組合員に関しても同様にあてはまる。
行うことで足りる(金商法第 63 条第 1 項、第 2 項)。
(1) 適格機関投資家等特例業務の要件
投資事業有限責任組合を運営する無限責任組合員の自己私募及び自己運用に係る適格機関投資家等特例業務の要件は、次のとおりである。
① 自 己 私 募
(ⅰ) 適格機関投資家 1 名以上9及び適格機関投資家以外の者(以下「一般投資家」という。)49 名以下(以下「適格機関投資家等」という。)10で、以下のいずれにも該当しない者を相手方とするものであること(金商法第 63 条第 1 項第 1 号、施行令第 17
条の 12 第 1 項、同条第 2 項)。
(ア) その発行する資産対応証券を一般投資家が取得している特定目的会社(金商法第 63 条第 1 項第 1 号イ)
(イ) 一般投資家を匿名組合員とする匿名組合の営業者又は営業者になろうとする者 (金商法第 63 条第 1 項第 1 号ロ)
(ウ) その株式及び新株予約権、社債、コマーシャル・ペーパー、合同会社等の社員権を一般投資家が取得している特別目的会社(金商法第 63 条第 1 項ハ、金融商
品取引業等に関する内閣府令(以下「取引業府令」という。)第 235 条第 1 項第 1
号)
(エ) 一般投資家から出資等を受けている他の集団投資スキーム11(以下「親ファンド」といい、当該親ファンドから出資等を受ける当該投資事業有限責任組合を
「子ファンド」という。)の運営者12(金商法第 63 条第 1 項第 1 号ハ、取引業府
令第 235 条第 1 項第 2 号)
但し、次に掲げる運営者を除く。
(a) 親xxxxが投資事業有限責任組合又は有限責任事業組合(これらに類す
9 投資事業有限責任組合を運営する無限責任組合員を除いて、1 名以上である必要がある(パブリックコメント
539 頁 8 番、9 番)。
10 当該人数要件は、実際に取得勧誘に応じた取得者の人数で計算してよいものと解されている(パブリックコメント 540 頁 15 番)。また、一般投資家の数は「49 名以下」であれば良いので、0 名であってもよい(「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(案)」に対するパブリックコメントの結果等について(平成 19 年 7 月 31 日公
表)239 番参照)。
11 法第 2 条第 2 項第 5 号又は第 6 号に掲げる権利に対する投資事業に係る契約その他の法律行為で、当該契約その他の法律行為に基づく権利が同項第 5 号又は第 6 号に掲げる権利に該当するものをいう(取引業府令第 235 条第 1 項第 2 号。)。
12 いわゆるファンド・オブ・ファンズの場合である。
る外国の法令に基づくものも含む。)13であり、当該親ファンドに投資する一般投資家14(但し、当該親ファンドの運営者が投資運用業者である場合は算入しない。)と子ファンドに投資する一般投資家の合計数が 49 名以下であるとき15の当該親ファンドの運営者
(b) 親ファンドの運営者と子ファンドの運営者が同一の場合であって、当該親ファンドに投資する一般投資家と子ファンドに投資する一般投資家の合計数が 49 名以下であるときの当該親ファンドの運営者
(ⅱ) 適格機関投資家等以外の者が当該組合持分を取得するおそれが少ないものとして、以下に掲げる要件に該当すること。
(a) 当該組合持分の取得勧誘に応ずる取得者が適格機関投資家の場合は、投資事業有限責任組合契約により、当該組合持分を適格機関投資家に譲渡する場合以外の譲渡が禁止される旨の制限が付されていること16(金商法第 63 条第 1 項第 1号、施行令第 17 条の 12 第 3 項第 1 号)
(b) 当該組合持分の取得勧誘に応ずる取得者が一般投資家の場合は、投資事業有限責任組合契約により、当該組合持分を取得し又は買い付けた者が当該組合持分を一括して他の一の者に譲渡する場合以外の譲渡が禁止される旨の制限が付されており、かつ、6 月以内に同種の権利17が有価証券として発行されている場合には、当該 6 月以内の同種の権利の取得者である一般投資家の人数との合計が 49 名以下となること(金商法第 63 条第 1 項第 1 号、施行令第 17 条の 12 第 3 項第 2 号)。
13 従って、民法上の組合が投資家の場合はかかる特例は適用がないことに留意する必要がある。また、海外の Limited Partnership やLimited Liability Company(以下「LLC」という。)等が「これらに類する外国の法令に基づくもの」に該当するか否かについては、当該制度が各根拠法に基づく登記制度を有するなど、投資事業有限責任組合等と同程度の透明性が確保されたものである必要があるとされる。また、LLC については、合同会社の社員権に類するもの(金商法第 2 条第 2 項第 4 号)に該当するか集団投資スキームに類するもの(同項第 6 号)に該当するかについても判断する必要がある(パブリックコメント 550 頁以下 59 番、60 番)。
14 かかる一般投資家は、親ファンドの投資家までを算入の対象とすれば足り、さらに親ファンドに投資を行うファンドに対する投資家を算入する必要はないとされる(パブリックコメント 549 頁 49 番-52 番)。
15 当該人数要件は、延べ人数ではなく実数で計算するものとされている(金融庁・前掲資料 549 頁 53 番)。また、複数の親ファンドが子ファンドに出資を行っている場合は、全ての親ファンドの一般投資家の数を合計する必要があるとされている(パブリックコメント 549 頁 54 番)。
16 自己運用に係る適格機関投資家等特例業務には、自己私募の場合に課せられている譲渡制限は不要であるが、事後的に特例業務の要件を欠くこととなることを避けるため、実務上は適切な譲渡制限を施すことが必要となろう(xxxx『注釈金融商品取引法【第 2 巻】業者規制』(金融財政事情研究会、2009)757 頁)。
17 当該権利と発行者及び出資対象事業が同一である有価証券としての権利をいい(取引業府令第 234 条)、単に投資事業を行う組合契約というだけではこれに該当しないが、その分配について優先劣後構造を設けたとして も、出資対象事業が同一であれば、「同種」に該当する(パブリックコメント 543 頁以下 27 番、31 番、32 番)。
② 自 己 運 用
同一の出資対象事業18に係る組合持分を有する者が適格機関投資家等のみであり、それらの者が、上記①(ⅰ)(ア)から(エ)までのいずれにも該当しないものであること。
(2) 適格機関投資家等特例業務に関する規制
適格機関投資家等特例業務を行う者は、あらかじめ、内閣府令で定めるところにより、一定の事項を内閣総理大臣に届け出なければならない(金商法第 62 条第 2 項)。
適格機関投資家等特例業務を行う者に対する行為規制としては、虚偽告知の禁止(金商法第
38 条第 1 号)及び損失補てんの禁止(金商法第 39 条)のみである(金商法第 63 条第 4 項)。
4 投資運用業者に関する規制
無限責任組合員が投資運用業登録を受け自己運用を行う場合の無限責任組合員、又は投資運用業者に運用業務を一任する場合における当該投資運用業者(上記無限責任組合員と併せて、以下
「投資運用業者」という。)が、投資事業有限責任組合に係る運用業務との関係において金商法上課せられる行為規制は多岐に及ぶが、主として以下のようなものが挙げられる。
(1) 対顧客説明義務
① 広告等の表示規制(金商法第 37 条)
② 取引態様の事前明示義務(金商法第 37 条の 2)
③ 契約締結前の書面の交付(金商法第 37 条の 3)
④ 契約締結時等の書面の交付(金商法第 37 条の 4)
⑤ (ⅰ)虚偽告知・断定的判断その他誤解を生ぜしせる表示、(ⅱ)偽計・暴力・脅迫等による勧誘等、(ⅲ)損失補てんを約する勧誘の禁止(金商法第 38 条第 1 号、第 2 号、第 7
号、取引業府令第 117 条第 1 項第 2 号、第 4 号等、金商法第 38 条の 2)
⑥ 適合性の原則等(金商法第 40 条)
(2) 対顧客xx業務
① 善管注意義務、xx義務(金商法第 36 条第 1 項、第 42 条)
② 自己取引、運用財産相互間取引の禁止(金商法第 41 条の 2 第 1 号、第 2 号、取引業府令
第 128 条、第 129 条)
(ⅰ)一定の取引、(ⅱ)所管金融庁長官等の承認を受けた取引、及び(ⅲ)権利者の同意を
18 組合持分に対する分配について優先劣後構造を設けても、出資対象事業が同一であれば適格機関投資家等の人数要件において合算の対象となる(パブリックコメント 544 頁 31 番、32 番)。
得た取引19を除き、自己取引又は運用財産相互間取引を行ってはならない。
③ その他の投資運用業者に係る各種禁止行為(金商法第 42 条の 2)
(3) 弊害防止措置
① 投資助言・投資運用業務と他の業務の兼業を行う場合の禁止行為(金商法第 44 条)
② 金融商品取引業と他の業務の兼業を行う場合の禁止行為(金商法第 44 条の 2)
③ 親法人等又は子法人等が関与する行為の制限(アームズレングスルール・ファイアーウォール規制等)(金商法第 44 条の 3)
(4) その他の行為規制
① 分別管理義務(金商法第 42 条の 4、取引業府令第 132 条)。
② 自己執行義務(金商法第 42 条の 3 第 1 項)。
③ 金銭又は有価証券の預託の受入れ等の禁止(金商法第 42 条の 5、施行令第 16 条の 9、第 16 条の 10)
④ 金銭又は有価証券の貸付け等の禁止(金商法第 42 条の 6、施行令第 16 条の 13)
⑤ 取引残高報告書・運用報告書等の作成・交付義務(金商法第 37 条の 4 第 1 項、取引業府
令第 98 条第 1 項第 3 号、金商法第 42 条の 7、取引業府令第 134 条)
⑥ 法定帳簿書類・事業報告書等の作成、保存、縦覧及び内閣総理大臣への提出等(金商法第 47 条から第 47 条の 3 まで)
5 無限責任組合員(又は業務執行組合員)の投資運用業務の投資一任該当性
投資事業有限責任組合又は民法上の組合の業務執行を行う者(無限責任組合員又は業務執行組合員)による投資運用業務が投資一任契約に係る業務(金商法第 2 条第 8 項第 12 号)に該当するかについて、以下のような問題がある。
(1) 投資顧問業法時代における投資事業組合に関する議論
旧・有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律(以下「投資顧問業法」という。)の時代においては、業務執行組合員が組合財産を運用する民法上の組合(以下本 5 において「投資
19 権利者の同意は、原則として全ての権利者から取得する必要があるが、投資事業有限責任組合契約等に、全ての組合員の半数以上であって組合持分全体の 4 分の 3 以上にあたる多数の同意を得た場合には自己取引・運用財産相互間取引を行うことができる旨及び同意しない組合員の請求により一定の条件で組合持分を買い取る旨の定めがある場合には、かかる同意で足りるものとされている(取引業府令第 128 条第 2 号、第 129 条第 2
号)。
事業組合」という。)が、投資顧問業法第 3 条20により禁止されないかという問題が存在しており、この点については、当時の監督官庁内研究会による逐条解説において、投資事業組合は以下の理由から投資顧問業法第 3 条により禁止されない旨の見解が示されていた21。これを受けて、実務上は、組合の業務執行を行う者が一定程度の出資を行っていればよいと考えられていたようである。
① 民法上、組合財産は総組合員の共有(合有)に属するとされている(民法第 688 条)ことから、投資事業組合の業務執行組合員が、他の組合員の委任を受けて組合財産を運用することは、投資顧問業法第 3 条で禁止される「他人から投資判断を一任され、他人のために投資を行うこと」には該当しないと考えられる22。
② 業務執行組合員に選任された者が組合財産を運用することは、組合員の権限として民法で認められている(民法第 670 条第 3 項)ところであり、組合員でない者(他人)は、業務執行組合員になれないと解される23。
(2) 平成 16 年証券取引法一部改正時の投資事業有限責任組合に関する議論
有価証券に投資する投資事業有限責任組合に係る投資顧問業法の適用の有無について、監督官庁の職員による平成 16 年証券取引法等の一部改正の解説記事においては、「投資事業有限責任組合は、法律上、組合員の共有に属する組合財産を、組合員の共同の事業として運用する組合であると規定されており、実務上も、組合の業務を執行する無限責任組合員とその他の有限責任組合員との間で話合いを行いながら投資判断をしていることが一般的であるとのことである。このように、話合いによって投資対象を選定するなど、他人から投資判断を一任されているとはいえない場合については、証券投資顧問業には当たらないと考えられる。一方で、組合型ファンドの形態をとっていても、他人から投資判断について一任され、
20 廃止前の投資顧問業法第 3 条本文は「何人も、投資一任契約に係る場合又は他の法律に特別の規定のある場合を除くほか、他人から、有価証券の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任され、当該投資判断に基づき当該他人のため投資(以下この条において「投資判断の一任による投資」という。)を行うことを営業としてはならない。」と規定されていた。
21 大蔵省証券局内投資顧問業関係法令研究会『投資顧問業法逐条解説』(xx財務協会、1994)17 頁。
22 なお、投資顧問業法第 3 条の点については、さらに、企業再建ファンドとの関係において、「企業再建ファンドが商法上の匿名組合形式又は民法上の組合の形式などであって、運営会社が自分自身の財産又は民間出資者との共有財産として運用を行う場合には、投資顧問業法 3 条で禁止される「他人から投資判断を一任され、他人のために投資を行う」ことには、原則として該当しないものと考えられ」るとし、その上で、「ただし、当該組合が投資顧問業法上の規制を免れる目的(脱法目的)での法形式としてのみ使われる可能性があることからその運用については、投資対象、取得目的、保有期間等に関し、企業再建を目的とする企業再建ファンドの趣旨に合致した限定が行われているかどうかを基準として、脱法目的か否かを判断していくこととしている。」との説明が金融庁の担当官よりなされていた(xxxx「【特集】企業再建 金融再生への最後の審判 デット・エクイ
ティ・スワップ、企業再建ファンドの活用に向け環境整備を図る」金融財政事情(2002)22 頁)。基本的には本文
①と同様の理由付によっており、その上で、脱法目的の場合の判断要素について述べているものである。
23 但し、民法上の組合について、組合契約において組合員以外の第三者に業務執行を委任することができるものと解されており(xxxx編『新版注釈民法(17)債権(8)』(有斐閣、1993)99 頁以下(xxx執筆部分))、かかる理由付けの意義については、疑念もあるところである。
その投資判断に基づいて当該他人のために投資を行っている営業の実態があれば、証券投資顧問業に当たると考えられる。」とされていた24。
(3) 金融商品取引法制施行時の投資事業有限責任組合に関する議論
「投資ファンド」(民法上の組合、投資事業有限責任組合等)の業務執行を行う者(業務執行組合員、投資運用業者)の投資運用が、他の組合員との「投資一任契約」に基づく業務に該当するか否かについて、金融商品取引法制施行時の金融庁によるパブリックコメントにおいて、①
「金商法では、規制の実効性を担保する観点から、集団投資スキーム持分等を有する者から出資又は拠出を受けた金銭等を主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として運用する業務(いわゆる『自己運用』)を、明確に、『投資運用業」』と位置付けることとしています(金商法第 2 条第 8 項第 15 号、第 28 条第 4 項第 3 号)。」、②「従って、金商法の下では、集団投資スキームの構成員であって、実質的に集団投資スキーム財産の『投資運用』を行っている者の業務は、基本的に、『投資一任契約に係る業務』(金商法第 2 条第 8
項第 12 号ロ)ではなく、『自己運用業務』(同項第 15 号)に該当する可能性が高いものと考えられます。」、③「ただし、集団投資スキーム財産の投資運用を行っている場合であっても、実質的に『投資一任契約に係る業務』を行っていると認められる場合には、『自己運用業務』ではなく『投資一任契約に係る業務』に該当するものである点に留意が必要と考えられます。」という考え方が示されている25。
(4) 検 討
(3)の金融庁の見解によれば、投資事業有限責任組合又は民法上の組合の業務執行を行う組合員(無限責任組合員又は業務執行組合員)による投資運用行為が投資一任(金商法第 2 条第 8
項第 12 号)に該当するか否かは、「実質的に『投資一任契約に係る業務』を行っていると認められる」か否かとされているものの、その判断のメルクマールは示されていない。
そこでいかなるメルクマールが妥当するのかが問題となるが、(1)の当時の監督官庁内研究会の見解は、民法上の組合において組合財産が組合員の共有(合有)に属するとされていることに着目しているところ、このことは投資事業有限責任組合にも同様に当てはまるため、かかる見解からは業務執行を行う組合員による実質的な出資がされているか否かという観点から「実質的に『投資一任契約に係る業務』を行っていると認められる」か否かを判断すべきことになると考えられる。
他方、(2)の監督官庁職員の見解は、投資事業有限責任組合に関し、投資判断に対する組合員の関与の有無に着目しているところ、かかる見解からは業務執行を行う組合員以外の組合員が投資判断に関与しているかという観点から「実質的に『投資一任契約に係る業務』を行っ
24 xxxxx「証券取引法等の一部改正の概要」商事法務 1703 号(2004)10 頁。
25 パ ブ リ ッ ク コ メ ン ト 76 頁 175 番 -178 番 。
ていると認められる」か否かを判断すべきことになると考えられる(民法上の組合についても同様に当てはまるものと思われる。)。
このように、上記(1)及び(2)で示された観点は現在においても投資事業有限責任組合又は民法上の組合の業務執行を行う組合員(無限責任組合員又は業務執行組合員)による投資運用行為が投資一任契約に係る業務(金商法第 2 条第 8 項第 12 号)に該当するか否かを考えるにあたって、重要な視点となるものと思われる。
もっとも、上記(2)で示された観点については、投資事業有限責任組合においては、当該組合の業務執行権限は無限責任組合員のみが有しており(投資事業有限責任組合契約に関する法律第 7 条第 1 項)、有限責任組合員は業務執行権限を有しないことから、他の組合員による投資判断への関与は業務執行とならない程度のものである必要がある。さらに、当該投資事業有限責任組合において、外国組合員に対する課税の特例(租税特別措置法第 41 条の 21、第 67条の 16)又は国内にxx的施設を有しない外国組合員の課税所得に関する特例(租税特別措置法施行令第 26 条の 31 及び第 39 条の 33 の 2)を利用する場合、当該外国組合員は「当該投資組合契約に基づいて行う事業に係る業務の執行として政令で定める行為26を行わないこと」とされており(租税特別措置法第 41 条の 21 第 1 項第 2 号、第 67 条の 16 第 1 項、租税特別措置
法施行令第 26 条の 31 第 1 項第 2 号、第 39 条の 33 の 2 第 1 項第 2 号)、より組合員の関与が制限されている。従って、投資事業有限責任組合においては、上記組合員の投資判断への関与は、例えば業務執行に該当しない諮問や助言27等の範囲に限定する等、上記の制限との関係で配慮する必要があることに留意を要する。
26 具体的には、①投資組合事業に係る業務の執行、②投資組合事業に係る業務執行の決定及び③投資組合事業に係る業務執行又は業務執行の決定についての承認、同意その他これらに類する行為をいう(租税特別措置法施行令第 26 条の 30 第 1 項)。
27 経済産業省作成に係る「外国組合員に対する課税の特例、xx的施設を有しない外国組合員の課税所得の特例における『業務執行として政令で定める行為』について」4 頁においても、無限責任組合員の投資業務に対する助言は、拘束力を有しない限り、投資事業有限責任組合の業務xxxについての承認には該当しないと解されている。
Ⅲ 公開買付規制
1 買 付 け 等
公開買付けが必要となるのは、一定数以上の株券等(施行令第 6 条第 1 項に定める株券等をいう。以下同じ。)の「買付け等」を行う場合である。「買付け等」とは、株券等の買付けその他の有償の譲受けをいい、株券等の売買の一方の予約に係る予約完結権の取得や株券等の売買に係るオプションの取得を含む概念である(金商法第 27 条の 2 第 1 項、施行令第 6 条第 3 項、発行者以外の
者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令(以下「他社株買付府令」という。)第 2 条の
2)。
株券等を組合が所有する場合には、組合員が、組合の解散に伴い残余の組合財産の分配として株券等を取得することが買付け等に該当するのかが問題となる。この点については、当該残余の組合財産の分配による取得の方法が(当該組合員以外の)業務執行を決定する組合員の裁量により決定された場合には、通常、自らの意思に基づき株券等を取得すると認められないため、「株券等の買付け等」に該当しないと考えられている。これに対して、実質的に当該組合員が自らの意思に基づき当該株券等を取得すると認められる場合(最終的に当該株券等を取得するために当該組合への出資という方法を利用した場合を含む。)には、「株券等の買付け等」に該当すると解され得る
28。
2 公開買付けを行う者
公開買付けを行う者は、当該株券等の買付け等を行う者であるが、組合がその事業活動として株券等の買付け等を行う場合、組合が法人等29に該当する場合であれば、公開買付規制との関係においては、組合自体を公開買付者とすることができると考えられている30。実務上、投資事業有限責任組合及び民法上の組合はかかる「法人等」に該当すると解されているようである。
28 金融庁「株券等の公開買付けに関する Q&A」(平成 22 年 3 月 31 日最終改訂)(以下「公開買付け Q&A」という。)問 16 参照。具体的には、例えば以下のような場合に、当該組合員が自らの意思に基づき当該株券等を取得していると認められるとされる。
① 残余の組合財産の分配の方法(現物によるか金銭によるか)を当該組合員が自ら選択する場合(現物によることを業務執行組合員等が裁量により決定した場合に、当該組合員が金銭により分配することを求めることができるに過ぎない場合は、これに含まれない。)や当該組合員と業務執行組合員等が合意(書面であるか口頭であるかを問わない。)により決定する場合
② 近いうちに当該組合が解散し、残余の組合財産の分配として当該株券等が交付されることを知って当該組合に出資を行い、結果的に当該株券等を取得する場合
③ 組合契約の締結時に、当該組合が当該株券等を取得すること及び残余の組合財産を現物により分配することが合意されていた場合
29 「法人等」とは、法人その他の団体をいう(施行令第 4 条の 4 第 1 項第 2 号)。
30 公開買付け Q&A 問 28 参照。組合が公開買付者となる場合、公開買付開始公告(金商法第 27 条の 3 第 1 項)の
「公開買付者の氏名又は名称」の項目及び公開買付届出書(同条第 2 項)の表紙の「届出者の氏名又は名称」の欄には、組合名及び業務執行組合員等の氏名又は名称(業務執行組合員等が法人等である場合には、その代表者の役職・氏名)を記載すべきとされる。
3 株券等所有割合
買付者の所有に係る株券等に関する株券等所有割合と特別関係者の株券等所有割合の合計が一定割合を超える場合に公開買付けが必要になるとされているところ、株券等所有割合とは、次の計算式により求められる割合をいう(金商法第 27 条の 2 第 8 項、施行令第 9 条の 2)。
買付者及び特別関係者の所有に係る当該株券等の議決権の数÷(総株主等の議決権の数+買付者及びその特別関係者に係る新株予約権付社債その他の政令で定める有価証券(いわゆる潜在株式)の議決権の数)
以下、特別関係者の意義を検討した上で、組合が株券等を所有する場合の取扱いについて検討する。
(1) 特別関係者
特別関係者とは、次に掲げる、①形式基準による特別関係者及び②実質基準による特別関係者をいう(金商法第 27 条の 2 第 7 項)。
① 形式基準による特別関係者(金商法第 27 条の 2 第 7 項第 1 号) (ⅰ) 意義
株券等の買付け等を行う者が個人である場合には、(a)その者の親族31(施行令第
9 条第 1 項第 1 号)、並びに(b)その者及びその者の親族が法人等に対して特別資本
関係にある場合等32における当該法人等及びその役員33(施行令第 9 条第 1 項第 2号)をいい、株券等の買付け等を行う者が法人等である場合には、(a)その者の役員 (施行令第 9 条第 2 項第 1 号)、(b)その者が他の法人等に対して特別資本関係を有
する場合における当該他の法人等及びその役員(施行令第 9 条第 2 項第 2 号)、並びに(c)その者に対して特別資本関係を有する個人及び法人等並びに当該法人等の役員(施行令第 9 条第 2 項第 3 号)をいう。
(ⅱ) 組合が公開買付者となる場合の判断基準
組合自体が公開買付者となる場合に、その形式基準による特別関係者の判断に関して、(a)当該組合の役員、(b)当該組合が特別資本関係を有する法人等、(c)当該組合に対して特別資本関係を有する者については、以下のとおり考えられている
31 「親族」とは、配偶者並びに一親等内の血族及び姻族に限る。
32 「特別資本関係」とは、当該法人等の総株主等の議決権の 20%以上の議決権に係る株式又は出資を自己又は他人 (仮設人を含む。)の名義をもって所有する関係にある場合等をいう(施行令第 9 条第 3 項のみなし規定を適用した場合を含む。)。
33 「役員」とは、取締役、執行役、会計参与及び監査役(理事及び監事その他これらに準ずる者を含む。)。
34。
(a) 当該組合の役員
当該組合の業務執行を決定する者、すなわち、業務執行組合員等がこれに該当する。
(b) 当該組合が特別資本関係を有する法人等
組合財産として他の法人等の総株主等の議決権の 20%以上を有する場合における当該他の法人等がこれに該当する。
(c) 当該組合に対して特別資本関係を有する者
当該組合の財務及び営業又は事業の方針を決定する権限(通常、業務執行組合員等が有すると考えられる。)全体の 20%以上を有する者(例えば、5 名の多数決により決定する場合、それぞれの者が権限全体の 20%を有すると考えられる。)がこれに該当する。投資事業有限責任組合の場合であれば、有限責任組合員は出資額が 20%以上であっても特別資本関係にある場合にはあたらず、「業務執行の権限」を有する無限責任組合員が当該議決権を全て有しているものと考えられる35。
② 実質基準による特別関係者(金商法第 27 条の 2 第 7 項第 2 号)
株券等の買付け等を行う者との間で、共同して当該株券等を取得し、若しくは譲渡し、若しくは当該株券等の発行者の株主としての議決権その他の権利を行使すること又は当該株券等の買付け等の後に相互に当該株券等を譲渡し、若しくは譲り受けることを合意している者。
(2) 組合が株券等を所有する場合の取扱い36
買付者又はその特別関係者が出資する組合が組合財産として株券等を所有する場合の取扱いは以下のとおりである。なお、例えば、組合が買付者となり、その組合員が特別関係者となる場合のように、同一の株券等が、複数の買付者又は特別関係者の所有に係る場合、株券等所有割合の計算においては、買付者(買付者又は特別関係者のいずれか一方が複数である場合には、いずれかの買付者又は特別関係者)の所有に係る株券等として計算すれば足りる(二重に計算する必要はない。)と考えられる。
① 買付者又はその特別関係者が、組合財産である対象者の株券等のうち、自己の持分に相当する部分を、自らの意思に基づき取得することができる場合(例えば、役員持株会の会員である場合は、これに該当すると考えられる。)には、当該部分を、当該者が了知
34 公 開 買 付 け Q&A 問 28 x x 。
35 xxx他『ファンドビジネスの法務』(金融財政事情研究会、2009)191 頁参照。
36 公 開 買 付 け Q&A 問 31 x x 。
し、又は容易に了知し得る範囲で、その所有に係る株券等として計算すべきであると考えられる37。
② 買付者又はその特別関係者が、組合財産である対象者の株券等について議決権を行使することができる権限若しくは議決権の行使について指図を行うことができる権限又は投資するのに必要な権限を有する場合、その所有に係る株券等として計算する必要がある (施行令第 7 条第 1 項第 2 号及び第 3 号)。
③ 当該組合自体が買付者の特別関係者に該当する場合、組合財産である対象者の株券等の全てを買付者の株券等所有割合に算入する必要がある。
4 資 金 証 明
公開買付けを行う者は、公開買付開始公告を行った日に、関東財務局長に公開買付届出書を提出しなければならない(金商法第 27 条の 3 第 2 項)。あわせて、公開買付届出書には、「公開買付者の銀行等への預金の残高その他の公開買付けに要する資金(有価証券等をもって買付け等の対価とする場合には、当該有価証券等)の存在を示すに足る書面」(他社株買付府令第 13 条第 1 項第 7号。いわゆる資金証明)を添付しなければならない。
公開買付けを行う者が投資事業組合の場合には、資金効率を図るため、投資実行時にあわせて、業務執行組合員等が組合員に出資の履行を請求し、組合員が当該請求に応じて出資の払込みを行うという方式を採用することが一般的である(いわゆるキャピタル・コール方式)。この点、公開買付けにあたっては、公開買付期間として、公開買付開始公告を行った日から起算して 20 営
業日以上(60 営業日以内)を定める必要があり(施行令第 8 条第 1 項)、投資事業組合においては、キャピタル・コールに応じた払込みが、公開買付けの決済日直前に実施され、公開買付届出書提出時において完了していることは一般的な実務においては考えにくいことから、資金証明として法令(他社株買付府令第 13 条第 1 項第 7 号)で例示されるような預金の残高証明を公開買付届出書の添付書類として提出することは難しいものと考えられる。そのため、投資事業組合における資金証明としては以下に述べる出資証明書を資金証明として提出する例が多いものと思われる38。
出資証明書の記載内容については、これまで、投資事業組合におけるキャピタル・コール方式による出資を踏まえた簡素な内容のものが一般的であったが、金融庁が、平成 22 年 3 月に公表し
37 容易に了知し得るか否かは、組合契約の内容や当該組合の実態のほか、株券等所有割合の計算が問題となる状況によっても異なり得ると考えられ、例えば、組合員が少数であれば少数であるほど、通常、了知することが容易になると考えられる。また、多数の取引が反復継続して行われているような状況においては、個々の取引の時点での自己の持分に相当する部分は容易に了知し得ないと考えられる一方、公開買付けのような単発の取引が行われる状況においては、当該時点での自己の持分に相当する部分は、通常、容易に了知し得ると考えられるものとされる(公開買付け Q&A 問 31 参照)。
38 なお、投資事業組合において、預金の残高証明書を公開買付届出書に添付した実例もあるが、投資事業組合におけるキャピタル・コールの実務としてはイレギュラーな対応と考えられる。
た改訂版の公開買付け Q&A において、資金証明には「決済に要する資金の調達が可能であることを相当程度の確度をもって裏付けるものでなくてはならないと考えられます。」39と回答したことから、出資証明書において求められる「相当程度の確度をもった裏付け」とはどのようなものか、という点が問題となる。
この点、近時の実務上の取扱いにおいては、公開買付者である投資事業組合が添付書類として提出する出資証明書について、①組合員が出資義務を履行する十分な資力を有していることを確認したとの記載や、又は②組合員が出資義務を履行できない場合にも資金を確保できることといった記載が、金融庁及び関東財務局からは求められるようである。近時の出資証明書の実例としては、①の事例(組合員の資力を確認したとの記載)が多いものと思われるが、その場合には、出資証明書において、業務執行組合員等が各組合員の財務状態を財務諸表等で確認したことのほか、組合員の属性(銀行、保険会社、投資事業組合又は個人であるかの別)の記載まで行っている実例が存在している。
これらの、投資事業組合における組合員の資力の確認や、組合員に関する一定の情報の開示は、投資事業組合においてこれまで想定されなかった対応を必要とするものといえる。そのため、バイアウトを行う投資事業組合においては、公開買付けを実施する際のこれらの対応にそなえ、組合員からの財務諸表等の資料提供を求められるよう組合契約上定めることや、組合員に関する一定の情報の開示を行なうことが可能である旨を組合契約上定めるといった対応が必要となり得る。
企業買収の実務は、金融庁及び関東財務局における解釈及び運用を踏まえつつも、なお流動的な議論状況であり、これらの投資事業組合における対応にあたっては今後の議論の展開に十分に注意する必要があろう。
39 公 開 買 付 け Q&A 問 32 x x 。
Ⅳ 大量保有報告
1 保 有 者
(1) 保有者の意義
大量保有報告制度における「保有者」は、①自己又は他人(仮設人を含む。)の名義をもって株券等(金商法第 27 条の 23 第 1 項、施行令第 14 条の 4 の 2)を所有する者(売買その他の契約に基づき株券等の引渡請求権を有する者その他これに準ずる者40を含む。)、②議決権その他の権利に関する行使権限又は指図権限を有する者、及び③株券等の投資決定権限を有する者をいう(金商法第 27 条の 23 第 3 項)。
(2) 組合の財産として株券等を保有した場合の取扱い
① x x
組合の財産として株券等を保有した場合は、組合自体が保有者に該当するのではなく、組合財産に関する投資の権限を有する組合の運営者(投資事業有限責任組合の場合は無限責任組合員、民法上の組合の場合は業務執行組合員)が保有者に該当すると考えられる(金商法第 27 条の 23 第 3 項第 2 号、第 3 号、株券等の大量保有の状況の開示に
関する内閣府令(以下「大量保有府令」という。)第 1 号様式記載上の注意(9)a)41。そして、組合の運営者が組合財産に係る株券等保有者として大量保有報告書等を提出する場合には、運営者以外の単に組合に持分を有する組合員は、自己の持分に相当する部分の当該株券等の保有者として扱わないでよいと考えられている42。
② 例 外
(ⅰ) 投資一任契約等に基づき運用を第三者に委託する場合
組合の運営者が、運用財産である株券等について、その運用を投資一任契約等の契約により第三者に委託する場合は、当該運営者が、議決権その他の権利を行使することができる権限若しくは当該権利の行使について指図を行うことができる権限又は投資をするのに必要な権限をいずれも有しない場合、「保有者」には該当しない
40 (ⅰ)株券等の売買の一方の予約(当該売買を完結する権利を有し、かつ、当該権利の行使により買主としての地位を取得する場合に限る。)を行っている者、及び(ⅱ)株券等の売買に係るオプション(当該オプションが施行令第 14 条の 4 の 2 第 1 号に掲げる有価証券において表示されている場合を除く。)の取得(当該オプションの行使により当該行使をした者が当該売買において買主としての地位を取得するものに限る。)をしている者をいう (施行令第 14 条の 6)。
41 金融庁「株券等の大量保有報告に関する Q&A」(平成 22 年 3 月 31 日公表)(以下「大量保有 Q&A」という。)問 12、xxx他・前掲注(35)194 頁参照。そして、この場合は、組合の形態で株券等を保有している旨を「当該株券等に係る担保xxの重要な契約」の欄に記載する必要がある(大量保有府令第 1 号様式記載上の注意(9)a)。
42 大 量 保 有 Q&A 問 19 x x 。
と考えられる。
もっとも、当該投資一任業者は、運用財産である株券等について投資権限を有するため、議決権の行使に関する権限の有無にかかわらず、保有者に該当すると解されている43。
(ⅱ) 運営者以外の組合員が指図権を有する場合
運営者以外の組合員等が、組合の財産である株券等について、議決権その他の権利を行使することができる権限若しくは当該権利の行使について指図を行うことができる権限(いずれも、発行者の事業活動を支配する目的を有する場合)又は投資をするのに必要な権限を有する場合、当該組合員は、当該株券等全体について、「保有者」となると解される(金商法第 27 条の 23 第 3 項第 1 号、第 2 号)44。
2 株券等保有割合
株券等保有割合とは、次の計算式により求められる割合をいう(金商法第 27 条の 23 第 4 項)。
(自己保有分の株式数及び潜在株式数45+共同保有者分の株式数及び潜在株式数)÷(発行済株式の総数等+自己保有分及び共同保有者分の潜在株式数)。
共同保有者には、実質共同保有者46とみなし共同保有者47があるところ、投資事業有限責任組合に係る無限責任組合員又は民法上の組合に係る業務執行組合員との関係でみなし共同保有者となり得るものとしては、50%以上の議決権に係る親子会社及び兄弟会社並びに業務xxxを有する組合員として運営している他の組合等が考えられる48。
43 大量保有 Q&A 問 8 参照。なお、投資一任業者が顧客との関係で投資決定権限を有していたとしても、投資決定権限を全て外部委託しており、現実に投資決定権限を有しない場合には 2 号保有者にあたらないと考えられている(xxxx=xxxxx「大量保有報告書の作成・提出上の留意点(上)」商事法務 1861 号(2009)48 頁参照)。
44 大量保有 Q&A 問 19 参照。この点については、大量保有府令第 1 号様式記載上の注意(9)a において、「組合
…、又は社団等の場合には、当該組合又は社団等を保有者として提出せず、株券等を保有し、又は法第 27 条の
23 第 3 項各号に規定する者に該当する業務執行組合員等(明示又は黙示の合意又は契約に基づき、形式的な業務執行組合員等とは別に当該株券等に係る処分権限を有する者がいる場合には当該者を含む。)を保有者として提出すること。」とされており、保有者については実質的な権限を基準として決定されることが明確にされている。
45 「潜在株式」とは、「株券等」の意義から株券を除いた有価証券(新株予約権証券等)を指す。
46 株券等の保有者が、当該株券等の発行者が発行する株券等の他の保有者と共同して当該株券等を取得し、若しくは譲渡し、又は当該発行者の株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している場合における当該他の保有者をいう(金商法第 27 条の 23 第 5 項)。
47 他の保有者が、(ⅰ)夫婦の関係、(ⅱ)他の会社の 50%を超える議決権に係る株式又は出資を有している者(支配株主等)と当該他の会社(被支配会社)の関係、(ⅲ)被支配会社とその支配株主等の他の被支配会社との関係、並びに(ⅳ)財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則第 8 条第 3 項に規定する子会社(組合に限る。)と同項に規定する親会社の関係にある場合においては、当該他の保有者を当該保有者に係る共同保有者とみなす(金商法第 27 条の 23 第 6 項、施行令第 14 条の 7、大量保有府令第 5 条の 3)。
48 xxx他・前掲注(35) 195 頁参照。
Ⅴ 特定組合等に係る短期売買差益等に関する規制
1 規 制 の 経 緯
旧証券取引法下においても、上場会社等(金商法第 163 条第 1 項)の総株主等の議決権を 100 分
の 10 以上の割合で保有している主要株主が、非公開情報を入手しやすい立場を利用して不xxな取引を行うことを未然に防止すること等を目的として、短期売買等に係る規制(旧証券取引法第 163 条から第 165 条まで)が規定されていた。
もっとも、民法上の組合等の組合が、その組合財産として、上場会社等の総株主等の議決権の 100 分の 10 以上の割合の株式を有している場合において、当該組合又はその組合員に主要株主についての短期売買等に係る規制が適用されるかについてxxの規定はなく、必ずしも明らかではなかった。この点について、実務上は、組合においては取得した株式を契約に基づき各構成員が共有していることから、株主は各構成員であり、議決権は各構成員が共有持分に応じて保有するものと考えられ、組合財産としては 100 分の 10 以上の議決権が保有されていたとしても、共有持
分としての株式数が 100 分の 10 に達している組合員がいなければ、主要株主は存在しないことになり、短期売買等に係る規制の適用はないものと解されていた49。
かかる見解は民法上の組合財産の所有関係についての伝統的理解に合致するものであった(民法第 668 条、最判昭 33 年 7 月 22 日民集 12 巻 12 号 1805 頁)が、組合として共同性が緊密であり、その構成員は組合として一体的に行動し、当該議決権も統一的に行使されると考えられる50にもかかわらず、組合全体としての保有議決権を基準に主要株主の有無が判断されないことが立法論的に妥当であるのかが議論された。
そして、旧証券取引法から金融商品取引法への改正時に、組合の場合の特則(金商法第 165 条の
2)が新設され、組合財産として保有される株式に係る議決権の総株主等の議決権に占める割合が
100 分の 10 以上になる場合に、主要株主の場合の短期売買等に係る規制(金商法第 163 条から第
165 条まで)とほぼ同等の規制を課すことになった51。
49 法令適用事前確認手続における金融庁の平成 14 年 9 月 6 日付回答参照。
50 上場会社等に対して大株主として統一的に行動すれば非公開情報を入手しやすくなるので、金商法第 163 条及び第 165 条の立法目的たる不xx取引の未然防止の趣旨が当てはまる。
51 主要株主の場合の短期売買等に係る規制との関係では、金商法第 165 条の 2 と、第 163 条から第 165 条までの規制の適用の重複を避けるため、組合等の財産として上場会社等の株式を所有(共有)することにより当該上場会社等の主要株主に該当することとなる主要株主については、第 163 条から第 165 条までは適用されない(第 165 条の 2 第 16 項)という整理がなされている。
2 金融商品取引法第 165 条の 2 による規制52の概要
(1) 売買報告制度
特定組合等の組合員が当該特定組合等の財産に関して当該上場会社等の特定有価証券等に係る買付け等又は売付け等をした場合、当該買付け等又は売付け等を執行した組合員は、以下の手続に従い、その売買等の報告をする義務を負う(金商法第 165 条の 2 第 1 項)。但し、一定の方式による持株会を通じた買付けや安定操作取引による特定有価証券の売買等、一定の場合が除かれている(金商法第 165 条の 2 第 1 項但書き、有価証券の取引等の規制に関する
内閣府令(以下「取引規制府令」という。)第 40 条第 4 項)。
① 報告義務者
当該買付け等又は売付け等が行われた場合における報告義務者は、当該買付け等又は売付け等を執行した組合員である(金商法第 165 条の 2 第 1 項)。買付け等又は売付け等の執行とは、当該売買等を行うことについて対内的に執行することを意味しており、特定組合等を対外的に代表して当該売買等の注文等を行うことを意味するものではない。一般には、「当該買付け等又は売付け等を執行した組合員」とは、当該売買等を行うことを決定した組合員であるとされている53。
② 手 続
特定組合等が投資事業有限責任組合である場合における報告書の提出については、その売買等があった日の属する月の翌月 15 日までに、その主たる事務所その他これに準
ずるものの所在地を管轄する財務局長へなされなければならない(金商法第 165 条の 2
第 1 項、取引規制府令第 41 条第 2 項)。
但し、売買等が金融商品取引業者等又は取引所取引許可業者への委託等によって行われた場合及び売買等の相手方がこれらの者であった場合は、報告書はこれらの者を経由して提出すべきとされる(金商法第 165 条の 2 第 2 項)。この場合の報告書の提出先は、当該金融商品取引業者等を経由する場合であればその本店の所在地を管轄する財務局長、取引所取引許可業者を経由する場合であれば関東財務局長である(取引規制府令第 41 条第 3 項)。
(2) 短期売買差益提供制度
52 本条の規制の対象は、特定組合等の組合員による上場会社等の特定有価証券等に係る買付け等や売付け等が「当該特定組合等の財産に関して」行われる場合であり、組合員が組合等外で個人として買付け等や売付け等をする場合は本条の規制対象外である(金商法第 165 条の 2 第 1 項から第 3 項まで、第 15 項)。
53 xxxx=xxxx監修・xxxx編『一問一答金融商品取引法〔改訂版〕』(商事法務、2008)394 頁。民法上の組合であれば業務執行組合員が該当することが多いものと考えられるものの、これに限られるものではなく、実質的に売買等を行うことを決定した組合員がこれにあたるとされる(パブリックコメント 568 頁 6 番)。
① 短期売買利益の提供
特定組合等の組合員が、当該特定組合等の財産に関し、当該上場会社等の特定有価証券等について、それに係る買付け等をした後 6 ヵ月以内に売付け等をし、又は売付け等
をした後 6 ヵ月以内に買付け等をして、当該特定組合等の財産について利益を生じた場合、当該上場会社等は、その利益を当該上場会社等に提供すべきことを請求することができる(金商法第 165 条の 2 第 3 項)54。かかる請求は、(i)第一次的に当該特定組合等の財産に対して行うものとされ、当該特定組合等が債務超過の場合又は当該特定組合等の財産に対する強制執行が功を奏さなかった場合には、(ii)第二次的に当該特定組合等の各組合員(有限責任の組合員55を除く。)に対して請求することができる(金商法第 165 条
の 2 第 3 項から第 6 項まで)。但し、当該買付け等又は売付け等をしたいずれかの時期において当該特定組合等が特定組合等でない場合、及びその他売買報告制度における除外事由と同様の事由が短期売買差益規制の除外事由として規制の対象から除かれている (金商法第 165 条の 2 第 13 項、取引規制府令第 45 条)56。
② その他の手続
当該上場会社等の株主が当該上場会社等に利益提供要求をするよう請求をしたにもかかわらず、その後 60 日以内に当該上場会社等が当該請求をしなかったときには、当該
株主は上場会社等を代位して当該請求をすることができる(金商法第 165 条の 2 第 7項)。また、内閣総理大臣は、上記売買報告制度により提出された報告書に基づき特定組合等に短期売買差益が生じていると認める場合には、一定の手続により、当該報告書の一部を当該上場会社等に送付すると共に、公衆の縦覧に供するものとされる(金商法第 165 条の 2 第第 9 項から第 12 項まで、取引規制府令第 43 条、第 44 条)。
(3) 空売り等の禁止
特定組合等の組合員は、当該特定組合等の財産に関して、以下の行為を行うことが禁じられる(金商法第 165 条の 2 第 15 項、取引規制府令第 47 条)。
① 特定取引57であって、当該特定取引に係る特定有価証券の額が、その者が有する当該
54 なお、金商法第 165 条の 2 第 3 項における、「特定組合等の組合員がその地位により取得した秘密を不当に利用することを防止するため」との文言は、組合員が秘密を実際に取得・利用したことを要件として要求する趣旨ではなく、短期売買利益の返還制度の趣旨・目的を明確にしたものに過ぎないと解されている(金商法第 164 条第 1 項に関する最判平成 14 年 2 月 13 日民集 56 巻 2 号 331 頁参照)。
55 外国の法令に基づいて設立された団体については、根拠法において有限責任である旨が規定されているなど対外的にも有限責任を対抗できることが必要であり、単に契約上で団体内部の各構成員の責任範囲の限定(すなわち内部的求償関係)を定めているのみでは該当しない(パブリックコメント 568 頁 7 番)。
56 明示的に適用除外とされているものに加え、類型的にみて取引の態様自体から、役員又は主要株主がその職務又は地位により取得した秘密を不当に利用することがおよそ認められない場合には、本条の適用はないものと解される(金商法第 164 条第 1 項に関する、前掲注(54)最判平成 14 年 2 月 13 日参照)。
57 「特定取引」とは、特定有価証券の売付け、関連有価証券(特定有価証券に係るオプションを表示する有価証券等をいい(施行令第 27 条の 4)、特定有価証券とあわせて、②において「特定有価証券等」という。)の売付け等をいう(金商法第 165 条第 1 号、施行令第 27 条の 7、取引規制府令第 35 条)。
上場会社等の同種の特定有価証券の額として取引規制府令で定める額を超えるもの。
② 当該上場会社等の特定有価証券等に係る売付け等(特定取引を除く。)であって、その売付け等において授受される金銭の額を算出する基礎となる特定有価証券の数量が、その者が有する当該上場会社等の同種の特定有価証券の数量として取引規制府令で定める数量を超えるもの。
Ⅵ 第三者割当増資規制における論点
1 金商法上の開示規制
上場会社における第三者割当のxx性や透明性を確保する観点から、株券、新株予約権証券又は新株予約権付社債券の募集又は売出しが第三者割当(企業内容等の開示に関する内閣府令(以下
「開示府令」という。)第 19 条第 2 項第 1 号ヲ)に該当する場合には、有価証券届出書、臨時報告書等において、当該第三者割当に係る割当予定先に関する情報等の記載が求められることとなった (例えば、開示府令第 2 号様式記載上の注意(以下本Ⅵにおいて「記載上の注意」という。)(23-2)を参照)58。
その中で、「割当予定先の状況」の項目において、割当予定先ごとに、割当予定先の概要、提出者と割当予定先との間の関係、割当予定先の選定理由、割り当てようとする株式の数、株券等の保有方針、払込みに要する資金等の状況及び割当予定先の実態を記載することが求められている。
この中で「割当予定先の概要」においては、以下のような記載が求められる(例えば、記載上の注意(23-3)を参照)。
「次のaからgまでに掲げる事項について、割当予定先(第三者割当により提出者が割当てを予定している者をいう。以下この様式において同じ。)ごとに当該aからgまでに定めるところにより記載すること。
a 割当予定先の概要 次の(a)から(d)までに掲げる割当予定先の区分に応じ、当該(a)から (d)までに定める事項を記載すること。(d)に定める事項については可能な範囲で記載すること。
(a) 個人 氏名、住所及び職業の内容
(b) 有価証券報告書提出会社 名称、本店の所在地及び届出書の提出日において既に提出されている当該割当予定先の直近の有価証券報告書(当該有価証券報告書の提出後に提出された四半期報告書又は半期報告書を含む。)の提出日
(c) 有価証券報告書提出会社以外の法人 名称、本店の所在地、国内の主たる事務所の責任者の氏名及び連絡先(割当予定先が非居住者の場合に限る。)、代表者の役職及び氏名、資本金、事業の内容並びに主たる出資者及びその出資比率
(d) 有価証券報告書提出会社及び有価証券報告書提出会社以外の法人以外の団体 名称、所
58 第三者割当増資について金商法上開示が必要となるのは上場会社等の有価証券報告書の提出義務を負う会社である(施行令 1 条の 4 第 1 号イ、2 号イ、1 条の 7 第 1 号イ、2 号イ参照)。
在地、国内の主たる事務所の責任者の氏名及び連絡先(割当予定先が非居住者の場合に限る。)、出資額、組成目的、主たる出資者及びその出資比率並びにその業務執行組合員又はこれに類する者(以下この様式において「業務執行組合員等」という。)に関する事項((a)から(d)までに掲げる当該業務執行組合員等の区分に応じ、当該(a)から(d)までに定める事項とする。)なお、割当予定先又は業務執行組合員等が個人である場合における住所の記載にあたっては、市町村(政令指定都市にあっては区)程度の記載で差し支えない。」
b 以 下 ( 省 略 )
かかる記載に関しては、投資事業組合が第三者割当の割当予定先となる場合、「有価証券報告書提出会社及び有価証券報告書提出会社以外の法人以外の団体」として、主たる出資者及びその出資比率に係る情報の記載が要求されるところ、どのような者が「主たる」出資者に該当するかは文言上明らかではなく、また、投資事業組合においては出資者が自らに関する情報を開示されることに抵抗する場合(典型的には、出資者も投資事業組合であり、その運営者が投資家に対し秘密保持義務を負う場合等)には実務上開示が困難であるという問題がある。
この点、平成 21 年 12 月 11 日付「『企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)』等に対するパブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」(以下「金融庁の考え方」という。)No.6 によれば、「主たる出資者及びその出資比率」について、「記載すべき情報のうち、割当予定先から取得しなければ記載することができない情報については、記載できない旨及びその理由を記載する必要があります。実際の状況に応じ、個別に検討する必要があると考えられます。」とされている。従って、上場会社においては主たる出資者に関する情報を含めどのような情報の開示が必要となるか、開示しない場合開示書類にどのような記載を行うか、また投資事業組合運営者はこれらの点につき組合員との関係でどのような対応を採るかが実務上の問題となりえよう59。
また、「提出者と割当予定先との間の関係」においては、「提出者と割当予定先との間に出資、人事、資金、技術又は取引等において重要な関係がある場合には、その内容を具体的に記載すること。また、割当予定先が組合その他の団体であって、その業務執行組合員等と提出者との間に出資、人事、資金、技術又は取引等において重要な関係がある場合には、その具体的な内容を併せて記載すること。」とされている(記載上の注意(23-3)b)。
さらに、割当予定先の実態として、割当予定先が特定団体等60 61であるか、及び特定団体等と
59 例えば、主たる出資者及びその出資比率につき、「主たる出資者との契約において、守秘義務の問題があるため、開示することができません。」としている例がある。
60 暴力若しくは威力を用い、又は詐欺その他の犯罪行為を行うことにより経済的利益を享受しようとする個人、法人その他の団体をいう(記載上の注意(23-3)g)。いわゆる反社会的勢力を指す(金融庁の考え方 No.11)。
何らかの関係を有しているかについて確認した結果並びにその確認方法も具体的に記載することが求められている(記載上の注意(23-3)f)。割当予定先が特定団体等に該当するか否かについては、当該割当予定先のみならず、当該割当予定先の親会社、主たる出資者、子会社、役員等についても確認する必要があるとされている点については留意が必要である(金融庁の考え方 No.13)。また、割当予定先と特定団体等との関係については、例えば、これらの割当予定先の関係者が特定団体等の運営に関与し又は特定団体等がこれらの関係者の経営に関与する関係にあるかについて確認する必要があり、その確認方法としては内部規程等に従い、割当予定先が独自に取り組んでいる事項等を確認することが考えられるとされている(同 No.13)。確認方法としては、「例えば、公開情報に基づく調査、割当予定先に対するヒアリング、信用調査機関の利用等」が掲げられている(同 No.14)。従って、投資事業組合においては、割当予定先として、主たる出資者が特定団体等との関係を持っていないかにつきどのように確認を行うか、また確認内容につき投資事業組合運営者から発行会社に対し情報提供することをどの程度許容するか、実務上問題となり得よう
62。
2 金融商品取引所63の適時開示ルール
上場会社が第三者割当を行うことを決議した場合には、上場会社の決定事実としてプレスリリースによる開示が必要となる(有価証券上場規程第 402 条第 1 号 a、同施行規則第 402 条の 2 参照)。
その中で、上記の法定開示の場合と同様に、割当先の概要の開示が求められており、特に、割当先がファンドである場合は、名称、所在地、設立根拠等、組成目的、組成日、出資の総額、出資者・出資比率・出資者の概要、業務執行組合員の概要(名称、所在地、代表者の役職・氏名、事業内容、資本金)、(海外ファンドの場合には、当該ファンドの本邦内における事務連絡先(国内代理人)の概要(名称、所在地、代表者の役職・氏名、事業内容、資本金))、上場会社と当該ファンドとの間の関係(出資の状況・その他特筆すべき関係)、上場会社と業務執行組合員・国内代理人との間の関係(資本関係・人的関係・取引関係・その他特筆すべき関係)を可能な範囲で記載することが要求される点に留意が必要である64。
また、上場会社は、かかる開示を行うとともに、原則として、東京証券取引所所定の「割当てを受ける者と反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」を東京証券取引所に提出することが求
61 金融庁の考え方 No.11 によれば、「『反社会的勢力』をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会 屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することになると考えられ」るとされている。
62 実務上は、次に述べる金融商品取引所の適時開示ルールとの関係もあり、組合契約において組合員及びその関係者が反社会的勢力と関係がないことにつき組合員による表明保証を求める場合がみられるようである。
63 以下、東京証券取引所を念頭に解説することとし、各規則への言及は東京証券取引所の規則を指すものとする。
64 株式会社東京証券取引所『東京証券取引所会社情報適時開示ガイドブック 2010』(2010)80 頁以下。
められる。
投資事業組合が第三者割当の割当予定先となる場合、どのような情報の開示が必要となるか、投資事業組合においては組合員との関係でどのような対応を採るかが実務上の問題となりえよう。また、上場会社による確認書の提出の前提として、例えば発行会社と投資事業組合との契約において投資事業組合が反社会的勢力との関係がないことの表明保証を求められることも考えられ、かかる表明保証を行うため投資事業組合運営者として組合員との関係でどのような措置を行うかも実務上の問題となりえよう。
さらに、東京証券取引所自主規制法人より平成 22 年 9 月に発行された「上場管理業務について
‐不適切な第三者割当の未然防止に向けて‐」において言及されている事例の中で、「割当予定先の属性確認が不十分であったケース」として記載されている事例の考え方において、投資事業組合に関する属性確認に関連して、「割当予定先が投資事業組合である場合には、投資事業組合の運用実績や運用方針、業務執行組合員(業務執行組合員が団体である場合には当該団体の出資者、当該出資者が団体である場合にはさらにその出資者等、最終的に個人となるまで把握することが望まれます。)の経歴等を確認し、投資事業組合の実態を把握することが望まれます。割当予定先が個人である場合には、その勤務先の経営実態について確認することが望まれます。」とされている。従って、投資事業組合が第三者割当を受ける場合には、投資事業組合側として発行会社からの要請にどのように対応していくのかについて実務上問題となりえよう65。
65 以上の各論点につき、組合契約との関係では、組合員の秘密保持義務をどう設定するか、反社会的勢力との関係につきどう扱うか、組合員からファンド運営者への情報提供をどの程度行う形とするかといった形で問題となると思われる。
2. 会 社 法
投資事業有限責任組合法第 3 条において、投資事業有限責任組合が事業目的とすることのでき
る業務が列挙されているところ、投資事業有限責任組合法第 3 条各号のいずれにも合同会社の持分の取得は含まれていないため、合同会社の持分の取得及び保有を投資事業有限責任組合の事業目的とすることは認められない66。
66 他方、民法上の組合については、事業目的を制限する規定はないため、合同会社の持分を直接取得及び保有することができる。
3. 債権法(民法)改正
1 民法改正議論の動向が投資事業有限責任組合に与え得る影響
(1) 議論動向
本報告書作成時点で、法務省法制審議会第 18 回民法(債権関係)部会において組合に関する議論もなされたようであるが、同部会の議事録が準備中であるため、議論の内容は確認できていない67。
この点、法制審議会民法(債権関係)部会以前の議論をみると、法務省担当官及び研究者が参加する民法(債権法)改正検討委員会(以下「検討委員会」という。)の議論において、民法以外の制定法上の組合、有限責任型の組合、構成員の個人責任のない団体、匿名組合については、対象外とされている68。また、他の学者・弁護士らの改正草案においても、投資事業有限責任組合等の、民法以外の組合について言及はなされていない。
(2) 投資事業有限責任組合に与え得る影響
しかしながら、投資事業有限責任組合契約に関する法律は、第 16 条において、民法の組合に関する規定を準用しているため、かかる準用規定を通じて、民法の組合に関する規定の改正の影響を受けることとなる。特に、第 16 条において準用対象としている規定が改正される場合に、準用すべきでない条項を準用の対象外とすることや、新設される規定のうち準用対象に含めるべきと考えられる場合もあり、この点は、民法(債権法)改正とあわせて投資事業有限責任組合契約に関する法律の整備も必要となろう。
また、法制審議会での議論に最も影響があると思われる検討委員会の改正試案において、民法の組合の条項について、委任や有償寄託の規定を準用する提案がなされているが、これらの規定が民法組合さらには投資事業有限責任組合においてどのように準用されるかという点には留意する必要があろう。また、民法の組合において新たに明記される規律がある場合、投資事業有限責任組合における有限責任組合員の有限責任性、及び、業務執行を行えないという特殊性に照らして、いかに準用されるかについても、改めて、十分な議論が必要となろう。
67 xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxx0/xxxxxxxxx_xxxxxx.xxxx( 平 成 22 年 11 月 28 日 最 終 ア ク セ ス )
68 民法(債権法)改正検討委員会「債権法改正の基本方針」別冊 NBL126 号(2009)392 頁、民法(債権法)改正検討委員会『詳解 債権法改正の基本方針Ⅴ 各種の契約(2)』(商事法務、2010)261 頁。
4. 外国為替及び外国貿易法
1 外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」という。)の届出・報告義務の概観
「外国投資家」が「対内直接投資等69」のうち一定のものを行う場合には、対内直接投資等の事前届出又は事後報告が必要となる(外為法第 27 条第 1 項、第 55 条の 5)70 71。
(1) 対内直接投資等の事前届出の要件
① 「外国投資家」とは
「外国投資家」とは、以下のものをいう(外為法第 26 条第 1 項各号)。(ⅲ)及び(ⅳ)は内国法人であるものの、その出資者及び役員の構成から外国投資家として扱われる。 (ⅱ)及び(ⅳ)の「法人その他の団体」には、法人格のない社団や組合も含まれると解される72。
(ⅰ) 非居住者である個人(以下「非居住者個人」という。)
(ⅱ) 外国法令に基づいて設立された法人その他の団体又は外国に主たる事務所を有する法人その他の団体(以下「外国法人等」という。)
(ⅲ) 会社で、(ⅰ)及び(ⅱ)であるものにより直接又は間接に保有されるその議決権73の数の合計が当該会社の総株主又は総社員の議決権の数に占める割合が、50%以上に相当するもの
(ⅳ) 法人その他の団体で、(ⅰ)の者がその役員(取締役その他これに準ずるものをいう。)又は役員で代表する権限を有するもののいずれかの過半数を占めるもの
69 会社の事業目的の実質的な変更に関して行う同意(外為法第 26 条第 2 項第 4 号)、本邦にある支店等の種類又は事業目的の変更(同項第 5 号)など、投資そのものでもない行為も含まれていることから、対内直接投資「等」という用語が用いられているものと思われる。
70 以下、説明の便宜のため、法令の用語法とは異なる用語法を用いることもある。
71 なお、対内直接投資等に該当しない取引については、資本取引(外為法第 20 条)として事後報告の対象とならないか、別途検討が必要である。
72 外国為替貿易研究グループ編『逐条解説 改正外為法』(財団法人通商産業調査会、1998 年)(以下本 4.において
「逐条解説」という。)453 頁。外国籍のリミテッド・パートナーシップは(b)の「外国法令に基づいて設立された団体」として外国投資家に該当するものと解されるが、他方で日本の組合については、(d)の役員(又は代表権限を有する者)の過半数が非居住者である場合に該当しないケースでは、対内直接投資等の規制上どのように取扱われるか条文上明らかではない。
73 株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法第 879 条第 3 項の規定により議決権を有するものとみなされる株式(同法第 308 条第 1 項の、株式会社がその総株主の議決権の 4 分の 1 以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして会社法施行規則第 67 条第 1 項で定める株主が有する株 式)についての議決権を含む。
② 「対内直接投資等」とは
対内直接投資等として外為法及び政省令に規定されている行為のうち、株式の取得については、以下の行為が対内直接投資等に該当する(日本銀行「外為法 Q&A(対内直接投資編)」(平成 22 年 8 月改訂版)(以下「対内直投 Q&A」という。)より抜粋)。
(ⅰ) 国内の上場会社の株式の取得で、出資比率が 10%以上となるもの(出資比率には、当該取得者と特別の関係74にある外国投資家の所有株式を含む。)
(ⅱ) 国内の非上場会社の株式又は持分を、外国投資家以外から取得すること75
(2) 事前届出手続
外国投資家が一定の業種(対内直投政令第 3 条第 2 項第 1 号、対内直接投資等に関する命令
(以下「対内直投命令」という。)第 3 条第 3 項、対内直接投資等に関する命令第 3 条第 3 項の規定に基づき財務大臣及び事業所管大臣が定める業種を定める件)を営む会社に対して対内直接投資等として株式の取得を行う場合76、事前届出書を提出する義務を負う77(外為法第 27 条
第 1 項及び第 2 項、対内直投政令第 3 条第 3 項、対内直投命令第 3 条第 6 項)。事前届出書の
提出は、当該株式取得をしようとする日の 6 か月前から行うことが可能であるが、事前届出
書受理後、審査期間としての不作為期間(株式の取得ができない期間)が原則として 30 日(通
常 2 週間、案件によっては 5 営業日に短縮される運用である。)に設定されている78。
(3) 不作為期間の趣旨
我が国の安全等の面で支障があると認められた場合には、財務大臣及び事業所管大臣は、
74 資本関係、役員のxxxの人的関係、及び、共同での議決権行使合意等の関係が特別の関係として列挙されている(対内直接投資等に関する政令(以下「対内直投政令」という。)第 2 条第 4 項)。
75 すなわち、非上場会社株式については、1 株の取得であっても対内直接投資等に該当することとなる。但し、対内直投 Q&A 別紙 2(4)、(5)等の事後報告の免除事由が定められている。
76 以下、対内直接投資等の典型的な場合として、外国投資家が事前届出業種を営む会社(特に非上場会社)の株式を取得する場面を念頭において論述している。
77 その他にも、事前届出を行った対内直接投資等の実行(株式の取得、処分等)の報告書の提出義務等が生じる(外為法第 55 条の 8、対内直投政令第 6 条の 5、対内直投命令第 7 条第 1 項)。
78 なお、事前届出の対象となる業種以外の業種への投資の場合、事後報告義務が生じることがある(外為法第 55条の 5)。また、事前届出義務に違反した場合や、不作為期間内に対内直接投資等を行った場合、事後報告義務や実行報告義務に違反した場合には罰則がある(外為法第 70 条第 1 項第 22 号、第 23 号、第 71 条第 6 号、第 9号)。
その投資内容の変更や中止を勧告又は命令することができ79、そのための審査期間として、届出受理から 30 日間(但し、通常 2 週間(案件によっては 5 営業日。)に短縮され、審査の必
要により最長 5 か月間まで延長もされ得る。)の取引を行うことができない期間(不作為期間)
が定められている(外為法第 27 条第 2 項、第 3 項、第 5 項、第 6 項)。
2 近 時 の 動 x
x時、対内直接投資等規制に関して、改正が複数回行われている。そのうち、投資事業組合による投資活動に対し大きな影響があると考えられる平成 19 年の対内直接投資規制に関する政省令改正にのみ以下言及する80。
(1) 事前届出業種の対象として子会社等が含まれることに
改正前の対内直投政令では、事前届出対象事業を発行会社ではなくその子会社等のみが行う場合、外国投資家による発行会社株式取得について対内直接投資等の事前届出を義務づけるxx規定が存在しなかった。しかし、持株会社制度の解禁や会社再編法制の整備に伴い、複雑な企業グループ形態を採用する企業が増加していることを踏まえ、外国投資家が取得する株式の発行会社だけでなくその子会社等も外国投資家による実質的な支配を受ける可能性があるものとして、子会社等において事前届出対象事業を実施する場合にも、外国投資家による発行会社株式の取得について事前届出の対象とすることとされた(対内直投政令第 3 条第
2 項第 1 号)。
当該改正により、外国投資家による事前届出が必要となる案件が大幅に増加している81。実務上は、多数の子会社の事業のほんの一部についてのみ事前届出業種が含まれることで親会社への投資につき届出義務が生じ得ることに留意する必要がある。
(2) 外国投資家に該当する国内会社の範囲の見直し
外国投資家のうち、上記 1(1)①の「(ⅲ)会社で、非居住者個人及び外国法人等であるものにより直接又は間接に保有されるその議決権の数の合計が当該会社の総株主又は総社員の議決権の数に占める割合が、50%以上に相当するもの」における、間接に議決権の 50%を保有
79 但し、実際に中止命令が出されたのは、TCI ファンドの電源開発株式取得に関する中止命令
<xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxx/00000000000/00000000000.xxxx>の 1 件であると考えられる。財務省「外国為替及び外
国貿易法に基づく対内直接投資制度の概要」(平成 21 年 3 月)。
<xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxx/xxxxxxxxxxxxxx_xxxxxx.xxx>
80 このほか、平成 21 年には対内直接投資等の届出・報告手続を合理化・簡素化する政省令改正がなされており、実務に影響を及ぼすものであるが、投資事業組合による投資固有の問題と離れることから割愛する。
81 財務省の公表資料によれば、対内直接投資等の届出件数は、平成 18 年度が 163 件であるのに対して、平成 19年度は 462 件、平成 20 年度は 12 月末時点までで 503 件と大幅に増加しており、同資料においても、当該政省令改正が増加要因の 1 つとして挙げられている。<xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxx/xxxxxxxxxxxxxx_xxxxxx.xxx>
される場合の計算式についても、見直しが行われた。
改正前の対内直投政令では、50%の間接保有の出資比率を乗数方式で計算していたが、改正後は非居住者個人及び外国法人等が 50%以上議決権を保有する他の国内会社が国内会社の議決権を 50%以上保有している場合には、当該国内会社が外国投資家に含まれることとされた(改正後の対内直投政令第 2 条第 1 項。改正前後での変化の詳細は下図参照)。改正の理由は、非居住者個人及び外国法人等に意思決定が実質的に支配される国内会社が「外国投資家」に含まれず、会社法制の整備等に伴う最近の投資形態の複雑化に十分対応できないおそれがあったためとされる。
当該改正により、実務上は、内国法人において、その株主のみならずさらにその株主の株主レベル(下図の A 会社でいえば、B 会社の株主である C 会社)の属性を確認する必要性により一層留意する必要がある82。
【図】「間接に保有」の計算方法の見直し83
Onshore
80%
C 会社
計算方法
改正前:A 会社は外国投資家に該当しない。60%×80%=48%<50%
改正後:A 会社は C 会社に 50%以上間接保有されているといえ、「外国投資家」に該当する。
C 会社の B 会社議決権比率 80%≧50% B 会社の A 会社議決権比率 60%≧50%
Offshore
B 会社
60%
A 会社
(3) 外国人議決権比率の高い上場会社の一部適用除外
内国法人である上場会社のうち、非居住者個人・外国法人等による議決権保有比率が 50%以上であることで外国投資家として扱われるもの(上記 1(1)①(ⅲ)類型)のうち、特定の外国法人及び非居住者個人による株式取得比率が 10%以上となっていないものによる株式取得については、事前届出義務・事後報告義務を免除することとされた(改正後の対内直投政令第 3
条第 1 項第 6 号)。
当該改正は、形式的に内国法人が外国投資家に該当する場合であっても、実質的には特定
82 なお、このように直接又は間接に外国法人等に議決権を 50%以上保有されている内国法人が対内直接投資等の事前届出を行う場合、かかる直接的及び間接的な出資者である外国法人等の名称、所在地及び事業の概要を届出書に全て記載することを要するものとされている(例えば、対内直投命令の様式 1 号の「6 その他の事項」欄の記入要領参照)。本(2)の下図のようなシンプルな出資者構成である場合には確認に特に手間取らないかもしれないが、直接的な出資者が多数いる場合、それらの出資者の出資者(すなわち間接的な出資者)である外国法人等の確認は相当程度の作業負担が生じることも考えられる。
83 なお、当該比率の算定は、改正前においては出資比率に基づき判断された一方、改正後においては議決権比率に基づいて判断されることとなった。
の非居住者個人・外国法人等に意思決定が支配されている可能性が低い上場会社による株式取得について、事前届出義務・事後報告義務を免除することにより、手続を合理化するものといえる。
3 日本の投資事業組合に出資する外国投資家の取扱いに関する解釈
外国投資家が投資事業組合を通じて内国法人に投資を行った場合、対内直接投資等の事前届出又は事後報告が必要となるか、また誰が事前届出又は事後報告の主体になるかという点については、外国投資家の定義(上記 1(1)①)その他の外為法の条文上も必ずしも明らかではなく、投資事業組合において投資を実行する際にはこの点の確認作業を行う必要があろう(実務的には、日本銀行のウェブサイトで入手できる対内直投 Q&A や、日本銀行の窓口に照会することで確認を行うことになろう。)。この点、仮に、投資事業組合の組合員に外国投資家が存在する場合に、当該外国投資家において事前届出義務が生じるとされると、外国投資家である組合員が全て事前届出を行い、届出後の不作為期間を経ていなければ、投資事業組合の業務執行組合員は投資実行できないこととなり得る。かかる帰結は、外国投資家を組合員とする投資事業組合の運営者において、外国投資家に対する外為法上の手続説明のほか、必要なドラフトの準備、外国投資家である組合員による届出の完了、不作為期間の満了の確認等、相当な事務作業を発生させる可能性があり、また、投資事業組合における投資実行後、及び投資の終了(投資対象の売却時)における外為法上の手続も複雑になるおそれがある。当局においても、投資事業組合の実態に沿った解釈運用が行われることが望まれる。
5. 独 占 禁 止 法
1 改正の趣旨・背景
平成 22 年 1 月 1 日に施行された「私的独占の禁止及びxx取引の確保に関する法律の一部を改
正する法律」(平成 21 年法律第 51 号)によって、同法施行前には事後報告制に過ぎなかった会社による株式取得のうち、一定の株式取得についてxx取引委員会への事前届出義務が課されることとなった。
法改正の背景としては、合併等において事前届出制が採用されていることと対比して、株式取得のみを事後報告制としていることは規制としての整合性に欠けることや、国際的な規制の水準を踏まえ、合併等と同様の事前届出制が採られることとなったものである84。
同事前届出規制の導入にあたっては、組合を通じた株式の取得について、組合の実態を踏まえたみなし規定が導入されている(私的独占の禁止及びxx取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)第 10 条第 5 項)。
2 事前届出義務の要件(基準)
(1) 要件の内容(独禁法第 10 条第 2 項本文)
会社(外国会社を含む(独禁法第 9 条第 2 項)。)は、以下の要件に該当する場合、他の株式の取得に関して、xx取引委員会に事前届出を行う必要がある。但し、あらかじめ届出を行うことが困難である場合としてxx取引委員会規則で定める場合は、この限りでない(独禁法第 10 条第 2 項但書き、私的独占の禁止及びxx取引の確保に関する法律第九条から第十六条までの規定による認可の申請、報告及び届出等に関する規則(以下「届出等規則」という。)第 2 条の 7 参照)。
① 取得者である会社(以下本 5.において「株式取得会社」という。)に関する売上高要件
株式取得会社の国内売上高85と当該会社が属する企業結合集団86に属する当該株式取得
84 詳しくは、xxxx=xxxx『逐条解説 平成 21 年改正 独占禁止法』(商事法務、2009)28、29 頁参照。
85 国内において供給された商品及び役務の価額の最終事業年度における合計額としてxx取引委員会規則で定めるものをいう。届出等規則第 2 条において詳細が規定されている。なお、事後報告制とされていた旧法下で は、株式取得会社並びにその国内の直接の子会社及び親会社の「総資産合計額」が報告基準とされていたため、株式取得会社が外国会社であって日本市場において全くプレゼンスを持たない場合であっても届出対象となり得たが、国内売上高を届出基準とすることによって、かかる事態は生じないこととなった(xxx・前掲注 (84)101 頁参照)。また、国内売上高合計額においては、親会社や子会社が外国会社であるか国内の会社である
かを問わず国内売上高がある場合には、当然にその国内売上高を加算する必要がある、とされている(xx取引委員会ウェブサイト<xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xx/xx-0/xxxxxxxxxx.xxxx#xxxxxxxx>「届出制度 Q&A」の届出基準につい ての Q6 を参照)。
86 下 記 4(1)② x x 。
会社以外の会社等87の国内売上高の合計額が 200 億円を超えること88
② 取得の対象となる株式の発行会社(以下本 5.において「株式発行会社」という。)に関する売上高要件
株式発行会社の国内売上高と当該株式発行会社の子会社の国内売上高をxx取引委員会規則で定める方法により合計した額が 50 億円を超えるものの株式の取得にあたること89
③ 株式取得会社に関する議決権比率要件
株式取得会社が当該取得の後において所有することとなる当該株式発行会社の株式に係る議決権の数と、当該株式取得会社の属する企業結合集団に属する当該株式取得会社以外の会社等が所有する当該株式発行会社の株式に係る議決権の数とを合計した議決権の数の当該株式発行会社の総株主の議決権の数に占める割合が、20%又は 50%を超えることとなること90
(2) 組合を経由して取得する場合の株式取得会社に係るみなし規定(みなし規定の適用関係の概略については下記 4(1)参照)
会社の子会社である組合(民法上の組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合及び外国の法令に基づいて設立された団体であってこれらの組合に類似するもの(以下「特定組合類似団体」という。))の組合員(特定組合類似団体の構成員を含む。)が組合財産(特定組合類似団体の財産を含む。)として株式発行会社の株式の取得をしようとする場合91には、当該組合の親会社(親会社の定義については下記 4(1)参照)が、その全ての株式の取得をしようとするものとみなし、会社の子会社である組合の組合財産に株式発行会社の株式が属する場合92に
87 会社、組合(外国における組合に相当するものを含む。)その他これらに類似する事業体をいう。
88 私的独占の禁止及びxx取引の確保に関する法律施行令(以下本 5.において「施行令」という。)第 16 条第 1 項及び第 2 項。
89 金銭又は有価証券の信託に係る株式について、自己が、委託者若しくは受益者となり議決権を行使することができる場合又は議決権の行使について受託者に指図を行うことができる場合において、受託者に株式発行会社の株式の取得をさせようとする場合を含む。
90 株式発行会社の株式の取得の結果、20%以下から 20%超(50%以下)になる場合(施行令第 16 条第 3 項第 1
号)、及び、50%以下から 50%超になる場合(施行令第 16 条第 3 項第 2 号)。
91 金銭又は有価証券の信託に係る株式について、会社の子会社である組合の組合員の全員が、委託者若しくは受益者となり議決権を行使することができる場合又は議決権の行使について受託者に指図を行うことができる場合において、受託者に株式発行会社の株式の取得をさせようとする場合を含む。
92 会社の子会社である組合の組合財産に属する金銭又は有価証券の信託に係る株式について、当該組合の組合員の全員が、委託者若しくは受益者となり議決権を行使することができる場合又は議決権の行使について受託者に指図を行うことができる場合を含む。
は、当該組合の親会社が、その全ての株式を所有するものとみなして上記 1 の事前届出義務
に係る要件を適用する(独禁法第 10 条第 5 項。詳細な検討については下記 4 参照)。
3 効 果
(1) 事前届出手続
該当することとされた株式の取得を行う 30 日より以前に、当該株式の取得に関する計画を
xx取引委員会に届け出なければならない(独禁法第 10 条第 2 項)。
事前届出を行った会社は、届出受理の日から 30 日を経過するまでは、当該届出に係る株式
の取得をしてはならない(独禁法第 10 条第 8 項本文)。但し、xx取引委員会は、その必要が
あると認める場合には、当該期間を短縮することができる(独禁法第 10 条第 8 項但書き。詳
細はxx取引委員会「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」(平成 22 年 1 月 1 日改訂)9337、38 頁参照)94。
(2) 排除措置命令との関係
会社は、他の会社の株式を取得し、又は所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式を取得し、又は所有してはならず、及び不xxな取引方法により他の会社の株式を取得し、又は所有してはならないとされており (独禁法第 10 条第 1 項)、当該規定に違反する行為があるときは、xx取引委員会による排除
措置命令が講じられることとなる(独禁法第 17 条の 2 第 1 項。排除措置命令が講じられるかに係る審査の詳細については別紙 2 参照)。xx取引委員会が排除措置を命じる場合には、原則として、30 日の待機期間において事前届出を行った会社に対し排除措置命令の事前通知を行う必要があるとされる(独禁法第 10 条第 9 項本文)。
4 投資事業組合での想定される適用事例
(1) 総 論
① 投資事業組合が株式を取得する場合に届出者となる「株式取得会社」95とは
上記 2(2)のとおり、組合を経由して株式を取得する場合は、親会社のみなし規定が適
93 xx取引委員会ウェブサイト<xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxxxxxxx.xxxx>
94 事前届出をしない者、虚偽の記載をした届出書を提出した者、又は届出から 30 日を経過する前に株式の取得をした者は、200 万円以下の罰金に処せられる(独禁法第 91 条の 2 第 3 号、第 4 号)。
95 なお、匿名組合については、その財産は「営業者」の財産であって組合員の共有財産とならないことから、独禁法第 10 条第 5 項のみなし規定の対象からは除外されている(xxx・前掲注(84)118 頁参照)。
用され、当該組合の親会社が、「株式取得会社」とみなされ、それを前提として、上記 2記載の各要件に該当した場合に、当該組合の親会社が事前届出を行う義務を負うこととなる(独禁法第 10 条第 5 項)。
ここで、投資事業組合の場合、当該組合の親会社は、「業務執行を決定する権限」の過半数96を有する投資事業有限責任組合又は民法上の組合における無限責任組合員又は業務執行組合員(以下「GP」といい、その余の組合員を以下「LP」という。)であり、従って、GP が「株式取得会社」となる(親会社の定義等詳細については別紙 1 参照)。
また、この場合、投資事業有限責任組合又は民法上の組合における LP については、届出義務を負わない97こととされている。
② 組合が株式を取得する場合の企業結合集団
「企業結合集団」とは、以下の会社から成る集団をいう(独禁法第 10 条第 2 項)。
(ⅰ) 会 社(ⅱ)当該会社の子会社
(ⅲ)当該会社の親会社であって他の会社の子会社でないもの (ⅳ)当該親会社の子会社(当該会社及び当該会社の子会社を除く。)
投資事業組合の場合、「株式取得会社」となるのは GP であるため(上記①参照)、GP を基準に、企業結合集団を検討することとなる。
(ⅰ) 「会社」
GP 自身
(ⅱ) 「当該会社の子会社」
GP がその議決権又は業務執行権限の過半数を有する等、財務及び事業の方針の決定を支配している会社等を全て含む(届出等規則第 2 条の 9 第 3 項各号)。例えば、GP の子会社の子会社(いわゆる孫会社)も、ここでいう「当該会社の子会社」に含まれることとなる(届出等規則第 2 条の 9 第 3 項第 1 号柱書参照)98。
(ⅲ) 「当該会社の親会社であって他の会社の子会社でないもの」
96 「業務執行権限については、業務執行を決定する権限の全体に対する自己(その子会社を含む。)の計算において所有している業務執行を決定する権限の割合により計算を行」うものとされている(独占禁止法施行令及びxx取引委員会規則等の一部改正案に対して提出された意見及びxx取引委員会の考え方(平成 21 年 10 月 23 日公表)(以下本 5.において「パブリックコメント」という。)、2(2)第 2 条の 9(親子会社)の項目を参照)。
97 なお、組合に親会社が存在しない場合、投資事業有限責任組合におけるLP による届出が不要であると規定されており(独禁法第 10 条第 2 項但書き、届出等規則第 2 条の 7 第 4 号、第 5 号)、組合に親会社が存在する場合は当該親会社が届出義務を負うことから、当然ながらLP は届出義務を負わない、とされている(パブリックコメント 2(2)第 2 条の 7 第 4 号及び第 5 号(届出困難である場合)の項目を参照)。
98 xx取引委員会ウェブサイト「届出制度Q&A」の届出基準についての Q5 を参照。
GP の最終の親会社99である。
(ⅳ) 「当該親会社の子会社(当該会社及び当該会社の子会社を除く。)」
GP の最終の親会社の子会社(例えば、いわゆる孫会社も含む。)である。
以上を踏まえた、投資事業組合が株式を取得する場合における企業結合集団の概略図については別紙 2 参照。
(2) 事例毎の分析
① ファンド・オブ・ファンズを通じた投資の場合
組 合 A
LP
GP
組 合 B
対 象 会 社
… 国 内 売 上 高 5 0 億 円 超
投資事業組合 A が、別の投資事業組合 B に投資することを目的とする、いわゆるファンド・オブ・ファンズの投資形態を採る場合には、投資事業組合 B の業務執行権限の過半数を有している GP が届出義務者となり、投資事業組合 B の LP に過ぎない投資事業組合 A においては届出義務は生じないものと考えられる100。
一方、その帰結としては、仮に、投資事業組合 A が対象会社へ直接投資を行うとするとその GP101に事前届出義務が生じる場合(GP の属する企業結合集団の国内売上高合計額が 200 億円を超える場合)に、同様の義務が GP に生じない投資事業組合 B を通じて投資を行うことで、事前届出義務を免れることが可能であると思われるため、潜脱的な目的で、投資事業組合を中間に挟む手法が問題とされる可能性も今後生じ得るようにも思われる。
99 xxx・前掲注(84)100 頁参照。
100 前 掲 注 97 x x 。
101 以下では、GP は 1 社であり、対象会社株式の取得については、20%超又は 50%超の要件を満たし、また対象会社に係る国内売上高要件 50 億円超も満たしていることを前提として論じる。また、株式の保有関係として示されるものは、特に断りのない限り、100%の株式保有関係を示すものとする。
② 銀行・証券会社等の企業グループに属するベンチャー・キャピタルが GP となる場合
銀行・証券会社
LP
GP
企業結合集団
組合
銀行系・証券系ベンチャー・キャピタルが GP となる場合は、当該 GP を基準として企業結合集団を考えることになる以上、当該 GP の最終の親会社である銀行又は証券会社のホールディング・カンパニー(もしあれば)が「当該会社の親会社」となり、当該ホールディング・カンパニーを頂点とする銀行グループ又は証券グループの全てが企業結合集団に含まれることになると考えられるため、国内売上高合計額も、かかる銀行グループ又は証券グループ全体で、200 億円を超えているか否かを判断することとなる。
従って、銀行系・証券系ベンチャー・キャピタルが GP となる場合、事前届出義務の要件のうち、「株式取得会社に関する売上高要件」(上記 2(1)①)については、要件を充足する可能性が高いものと思われる。
③ GP が複数の投資事業組合の GP を兼ねている場合
LP
GP
GP
LP
組 合
A
組 合
B
新規投資
既存投資
対象会社
対象会社
企業結合集団
投資事業組合 A の GP が投資事業組合 B の GP も兼ねている場合で、投資事業組合 Aが新たに株式を取得しようとするとき、企業結合集団は投資事業組合 A の GP を基準として考えることになるが、当該 GP は投資事業組合 B の GP も務めているため、投資事業組合 B は当該 GP の「子会社」に該当することになる。そして、当該 GP の子会社である投資事業組合 B が、既に投資している会社の株式の 50%超を取得している等、その既に投資している会社の財務及び事業の方針の決定を支配していると認められる場合には、当該投資事業組合 B の既投資先である会社も、投資事業組合 B の子会社(当該 GPのいわゆる孫会社)として、投資事業組合 A の GP の「子会社」に含まれることになる。このように、GP が複数の投資事業組合の GP を兼ねている場合は、企業結合集団の判定上、他の投資事業組合の投資先までその対象に含まれる可能性があることになる。
④ 海外ファンドが内国法人の発行する株式を取得する場合
外国会社が、外国法準拠の組合型ファンドを組成し、日本企業に投資する場合にも、事前届出規制に服する。届出義務者である株式を取得する者及び企業結合集団の判断において、外国法準拠の組合型ファンドも「特定組合類似団体」として、日本法上の投資事業組合に関する上記の取扱いと同様の規律を受ける可能性がある102。
もっとも、日本企業への投資を株式の過半数又はそれに近い割合の株式を取得する態様では行っていないような海外ファンドの業務執行者であれば、事前届出義務の発生要件である、企業結合集団の国内売上高合計額の算定対象となる子会社が存在せず、事前届出義務が発生しない場合も多いであろう。
102 日本法上の組合に類似するか、個別の実態に応じて判断した上で決することになろう。
※ 「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」39 頁より抜粋。
別紙 1
組合における「親会社」の定義
「親会社」とは、会社等の経営を支配している会社としてxx取引委員会規則で定めるものをいう(独禁法第 10 条第 7 項)。
そして、「xx取引委員会規則で定めるもの」とは、会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該会社とされ(届出等規則第 2 条の 9 第 2 項)、「財務及び事業の方針の
決定を支配している場合」とは、以下の各場合をいう(届出等規則第 2 条の 9 第 3 項各号)。なお、この場合において、他の会社等が民法上の組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合及び特定組合類似団体である場合におけるこの項の規定の適用については、「議決権」の数ではなく、「業務執行を決定する権限」の数を基準として、その適用を行う(届出等規則第 2 条の 9 第 3 項柱書)。
一 他の会社等(次に掲げる会社等であって有効な支配従属関係が存在しないと認められるものを除く。次号及び第三号において同じ。)の議決権の総数に対する自己(その子会社を含む。次号及び第三号において同じ。)の計算において所有している議決権の数の割合が 100 分の 50を超えている場合
イ 民事再生法の規定による再生手続開始の決定を受けた会社等 ロ 会社更生法の規定による更生手続開始の決定を受けた株式会社ハ 破産法の規定による破産手続開始の決定を受けた会社等
ニ その他イからハまでに掲げる会社等に準ずる会社等
二 他の会社等の議決権の総数に対する自己の計算において所有している議決権の数の割合が 100 分の 40 以上である場合(前号に掲げる場合を除く。)であって次に掲げるいずれかの要件に該当する場合
イ 他の会社等の議決権の総数に対する自己所有等議決権数(次に掲げる議決権の数の合計数をいう。次号において同じ。)の割合が 100 分の 50 を超えていること。
(1) 自己の計算において所有している議決権
(2) 自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有している議決権
(3) 自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権
ロ 他の会社等の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の総数に対する次に掲げる者(当該他の会社等の財務及び事業の方針の決定に関して影響を与えることができるものに限る。)の数の割合が 100 分の 50 を超えていること。
(1) 自己の役員
(2) 自己の業務を執行する役員
(3) 自己の使用人
(4) (1)から(3)までに掲げる者であった者
ハ 自己が他の会社等の重要な財務及び事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること。
ニ 他の会社等の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限る。次号において同じ。)の総額に対する自己が行う融資(債務の保証及び担保の提供を含む。次号において同じ。)の額(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係のある者が行う融資の額を含む。次号において同じ。)の割合が 100 分の
50 を超えていること。
ホ その他自己が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配していることが推測される事実が存在すること。
三 他の会社等の議決権の総数に対する自己所有等議決権数の割合が 100 分の 50 を超えている場合(自己の計算において議決権を所有していない場合を含み、前二号に掲げる場合を除く。)であって前号ロからホまでに掲げるいずれかの要件に該当する場合。この場合において、他の会社等が民法上の組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合及び特定組合類似団体であるときは、資金調達額の総額に対する自己が行う融資の額の割合を考慮しないものとする。
別紙 2
組合が株式を取得する場合の届出者・企業結合集団の概略図
(ⅲ)
最終親会社
(ⅳ)
(ⅳ)
(ⅳ)
(ⅳ)
LP
GP
GP
(ⅱ)
組合
(ⅱ)
組合
新規投資
既存投資
(ⅱ)
対象会社
(ⅱ)
対象会社
(ⅱ)
企業結合集団
対象会社
(ⅰ)
※ 「企業結合集団」とは、以下の会社から成る集団をいう(独禁法第 10 条第 2 項)。
(ⅰ)会社
(ⅱ)当該会社の子会社
(ⅲ)当該会社の親会社であって他の会社の子会社でないもの
(ⅳ)当該親会社の子会社(当該会社及び当該会社の子会社を除く。)
第二 平成 21 年度以降に導入された海外投資家向け税制措置
1. 税制特例適用申告の手続の概要(日本語による解説)
1 外国組合員に対するxx的施設の取扱いに関する特例
(1) 特例措置の内容
投資組合の組合員は組合を通じて共同で事業を行うものであると考えられている。そのため、組合が国内のxx的施設(以下「PE」という。)を通じて事業を行う場合、当該投資組合の組合員である非居住者又は外国法人は、国内に PE を有するものとして取り扱われ、その結果、当該投資組合の事業から生じた所得について日本の税法に基づき所得税・法人税等の源泉徴収及び申告納税が必要になると理解されている。
しかし、租税特別措置法は、投資事業有限責任組合又はそれに類する外国法上の事業体(以下「投資組合」という。)の組合員である非居住者又は外国法人(以下「外国組合員」という。)が一定の要件をみたす場合には、当該組合員を国内に PE を有しない非居住者又は外国法人とみなして所得税法及び法人税法を適用するとの特例を設けている。本特例の適用を受ける外国組合員は組合の事業から生じる利益については申告納税が不要となり、源泉徴収が行われないこととなる。
(2) 本特例の要件及び手続
外国組合員が、本特例の適用を受けるためには、以下の①乃至⑤の全ての要件を充足する必要がある(括弧書きの概念については、特に、租税特別措置法において規定される内容に留意されたい。)。
① 外国組合員が、投資組合の有限責任組合員であること
② 外国組合員が、投資組合事業に係る「業務の執行」を行わないこと
③ 外国組合員の「投資組合の組合財産に対する持分割合」が 25%未満であること
④ 外国組合員が、投資組合の無限責任組合員と「特殊の関係のある者」でないこと
⑤ 外国組合員が、他に国内に PE を有しないこと
また、外国組合員は、本特例の適用を受けるためには、特例適用申告書 3 通を作成し、無限責任組合員で、利益配分の取扱をする者(以下「配分の取扱者」という。)を通じて、当該特例適用申告書を所轄税務署長に提出する必要がある。配分の取扱者は、外国組合員から受理した特例適用申告書 2 通を、その受理した日の属する月の翌月 10 日までに所轄税務署長に提出する。配分の取扱者が特例適用申告書を所轄税務署長に提出した場合、当該特例適用申告書が配分の取扱者に受理された日が当該特例適用申告書の提出日とされる。なお、本特例
は、特例適用申告書の提出の日以後の期間について適用される。
■ 特例適用申告書103
① 記 載 x x
特例適用申告書には以下の事項を記載しなければならない。
・ 外国組合員の氏名又は名称、住所又は所在地
・ 投資組合の事業内容、存続期間
・ 外国組合員の投資組合の財産に対する持分割合
・ 投資組合契約に係る損益分配の割合
・ その他財務省令で定める事項
② 添 付 書 類
・ 投資組合の組合契約書の写し(当該契約書が外国語で作成されたものであるときは、その日本語訳も添付)2 通
(3) 留意点
・ 本特例の適用を受ける組合契約は、日本法上の投資事業有限責任組合契約及びそれに類する外国法上の契約(以下「投資組合契約」という。)である。
・ 外国組合員は、外国組合員の氏名又は名称、住所又は所在地の記載のある官公署から発行された書類その他これに類する書類(6 ヶ月以内に作成されたものに限る。以下「本人確認書類」という。)を配分の取扱者に提示しなければならない。
・ 外国組合員が、国内の PE を通じて事業を行う投資組合に係る組合契約を複数締結している場合、当該外国組合員が本特例の適用を受けるためには、当該外国組合員は全ての投資組合に関して特例適用の申告をしなければならない。
・ 特例適用を申告した外国組合員は、以下の(a)及び(b)に定める書類を所轄税務署長に提出する義務を負う。
(a) 変更申告書
外国組合員は、特例適用申告書の記載事項の変更をした場合には、一定の日(非居住者の場合は、変更後、最初に国内源泉所得の支払いがあったものとみなされる日の前日、若しくは、変更後、最初に国内源泉所得を有することとなった日の属する年の翌年 3 月 15 日のいずれか早い日。外国法人の場合は、所得税法について、変更後、最初に国内源泉所得の支払いがあったものとみなされる日の前日、及び、法人税法について、変更後、最初に国内源泉所得を有することとなった日を含む事業年度に係る確定申告書の提出期限)までに、配分の取扱者を通じて、所轄税務署長に変更申告書を提出しなければならない。外国組合員はかかる変更申告書を提出しなかった場合、本特例の適用を受けることができなくなる。なお、変更内容が外
103 別添 1 参照。国税庁のウェブサイトより特例適用申告書のフォームがダウンロードできる。
<xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxxxx/xxxxxxx/xxxxx/xxxxxx/xxxxx/xxx0/000.xxx>
国組合員の氏名・名称、住所・所在地に関するものである場合には、外国組合員は、本人確認書類を配分の取扱者に提示しなければならない。
(b) 外国組合員は、本特例の適用により、所得税法上の総合課税の課税標準、又は法人税法上の課税標準とされないこととなる国内源泉所得の種類、金額その他の事項を記載した書類を、一定の日(非居住者の場合は、当該国内源泉所得に係る所得の金額を有することとなった日の属する年の翌年 3 月 15 日。外国法人の場合は、当該国内源泉所得に係る所得の金額を有することとなった日を含む事業年度に係る申告書の提出期限。)までに、所轄税務署長に提出しなければならない。
2 事業譲渡類似株式の譲渡益課税(25%/5%ルール)に関する特例
(1) 概 要
国内にxx的施設を有しない非居住者又は外国法人については、事業譲渡類似の株式譲渡による所得などの一定の所得に限って、所得税及び法人税が課されることとなる。
ここで、事業譲渡類似の株式の譲渡とは、以下の 2 つの要件をみたす株式譲渡をいう。
① 譲渡年(非居住者の場合)又は譲渡事業年度終了の日(外国法人の場合)以前 3 年内のいずれかの時において、内国法人の特殊関係株主等が、その内国法人の発行済株式の 25%以上に相当する株式を所有していたこと(所有株数要件)
② 譲渡年(非居住者の場合)又は譲渡事業年度(外国法人の場合)において、その譲渡を行った内国法人の特殊関係株主等が最初にその内国法人の株式の譲渡をする直前のその内国法人の発行済株式の 5%以上の株式を譲渡したこと(譲渡株数要件)
内国法人の特殊関係株主等とは、一定の内国法人の株主その他の政令において規定される者をいう。非居住者又は外国法人が、組合を通じて内国法人の株式を保有している場合には、当該組合の他の組合員も内国法人の特殊関係株主等に含まれるため、25%及び 5%の算定は、各組合員の当該内国法人株式の保有割合ではなく、当該組合の当該株式の保有割合で計算されることになる。
しかし、租税特別措置法は、以下の要件をみたす場合には、当該投資組合の他の組合員は内国法人の特殊関係株主等に含まれないこととされ、従って、25%及び 5%の算定を、各組合員の当該内国法人株式の保有割合で計算するという特例が設けられている。
(2) 本特例の要件及び手続
譲渡年(非居住者の場合)又は譲渡事業年度終了の日(外国法人の場合)以前 3 年内のいずれの時においても、当該外国組合員に係る特殊関係株主等(特殊関係株主等には、上記のとおり、本特例の適用を受ける組合における他の組合員は含まれない。)が、内国法人の発行済株
式の 25%以上を所有していなかったことを要する。
特例の適用を受けようとする非居住者又は外国法人は、一定の日(非居住者の場合は、譲渡年の翌年の 3 月 15 日。外国法人の場合は、当該譲渡事業年度に係る申告書の提出期限。)ま
でに、所轄税務署長に対して特例の適用に関する届出書 1 通(調査課所管法人の場合は 2 通)を提出することを要する。
■ 特例適用届出書104
① 記 載 x x
特例適用届出書には以下の事項を記載しなければならない。
・ 外国組合員の氏名又は名称、住所又は所在地
・ 譲渡株式の銘柄、数
・ その他財務省令で定める事項
② 添 付 書 類
・ 投資組合の組合契約書の写し(当該契約書が外国語で作成されたものであるときは、その日本語訳も添付)
(3) 留意点
・ 本特例は、以下の組合契約が対象となる。
(a) 上記 1.の PE に関する特例の適用を受ける投資組合契約
(b) 国内に PE を有しない非居住者又は外国法人が締結する投資組合契約(当該非居住者又は外国法人が、譲渡年(非居住者の場合)又は譲渡事業年度終了の日(外国法人の場合)以前 3 年以内で投資組合契約を締結していた期間において、有限責任組合員であって、かつ、当該投資組合の「業務の執行」を行わないことを要する。)
・ 以下の譲渡は本特例の対象外とされる。
(a) 組合が投資組合財産として株式を取得した日の翌日から引き続き株式を所有していた期間が 1 年に満たない株式の譲渡
(b) 預金保険機構から取得した預金保険法に基づく特別危機管理銀行の株式の譲渡
<xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxxxx/xxxxxxx/xxxxx/xxxxx/xxxxx/xxx0/000.xxx>
別添 1
投資組合の外国組合員に対する PE の特例に関する(変更)申告書(様式) (国税庁ウェブサイトより、平成 22 年 11 月 30 日ダウンロード)
別添 2
xx的施設を有しない外国組合員の課税所得の特例の適用に関する届出書(様式) (非居住者)
(国税庁ウェブサイトより、平成 22 年 11 月 30 日ダウンロード)
56
別添 3
xx的施設を有しない外国組合員の課税所得の特例の適用に関する届出書(様式) (外国法人)
(国税庁ウェブサイトより、平成 22 年 11 月 30 日ダウンロード)
59
2. Outline of the Procedures to Apply Special Taxation Measures(税制特例適用申告の手続の概要:英語による解説)
1 Special measures for foreign partners concerning permanent establishment treatment
(1) Details of measures for special measures
A partner of an investment partnership is considered to conduct its business jointly with other partners through the partnership. Therefore, if an investment partnership conducts its business through a permanent establishment (“PE”) within Japan, its non-resident or foreign corporation partner shall be deemed to have a PE within Japan. As a result, it will be subject to withholding tax and be required to file a tax return on its income from the investment partnership for income tax and corporation tax under Japanese tax law.
However, special measures have been introduced by the Act on Special Measures concerning Taxation (“Special Taxation Measures Act”) and apply to a non-resident or foreign corporation that is a partner (a “Foreign Partner”) of an investment limited partnership (xxxxxx jigyo xxxxx sekinin kumiai) under the laws of Japan or a similar entity formed under the laws of a foreign country (an “Investment Partnership”). If a Foreign Partner satisfies certain requirements, it will be deemed to be a non- resident or foreign corporation that does not have a PE within Japan. In this case, the Foreign Partner will not be required to file a tax return and will not be subject to withholding tax with respect to its income from the business of the Investment Partnership.
(2) Requirements and procedures for the special measures
If a Foreign Partner wants to enjoy the benefit of the special measures, such Foreign Partner shall be required to satisfy all the requirements of (i) through (v) below. Please pay attention to the precise meanings of the terms of the conditions, in particular, the underlined terms that are defined in the Special Taxation Measures Act.
(i) The Foreign Partner is a limited partner of the Investment Partnership.
(ii) The Foreign Partner will not be engaged in the “conduct of business affairs” regarding the business of the Investment Partnership.
(iii) The Foreign Partner must have a “percentage interest of the assets of the Investment Partnership” of less than 25%.
(iv) The Foreign Partner is not a “person who has a special relationship” with a general partner of the Investment Partnership.
(v) The Foreign Partner does not have another PE within Japan.
The Foreign Partner is required (i) to prepare three (3) copies of an application for special measures in order to enjoy the benefit from the special measures, and (ii) to submit them to the director of competent tax office (the “Competent Director”) through the general partner who is the person that is responsible for handling the distribution of profits (the “Person Responsible for Handling Dividends”). The Person Responsible for Handling Dividends shall submit two
(2) copies of the application for special measures received from the Foreign Partner to the Competent Director by the 10th day of the month following the month it is received. When Person Responsible for Handling Dividends submits the application for special measures to the Competent Director, the date that it received the application for special measures shall be deemed to be the submission date of the application for special measures. All special measures shall apply to the period on and after the submission date.
* Application for special measures105
(i) Matters to be described in the application
An application for special measures must include the following matters.
. Name and address of the Foreign Partner
. Details of the business and duration period of the Investment Partnership
. Percentage interest of the assets of the Investment Partnership held by the Foreign Partner
. Percentage of profit and loss to be distributed to the Foreign Partner under the Investment Partnership Agreement (defined below)
. Any other matters set forth in the Ordinance of the Ministry of Finance
(ii) Attachment
Two copies of the Investment Partnership Agreement (defined below) of the Investment Partnership (a Japanese translation is required to be attached if the Investment Partnership Agreement is prepared in a foreign language)
105 See Exhibit 1. The form of the application for special measures can be downloaded from the National Tax Agency’s website.
<xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxxxx/xxxxxxx/xxxxx/xxxxxx/xxxxx/xxx0/000.xxx>
(3) Notes
. The special measures may be applied to Foreign Partners under investment limited partnership agreements (xxxxxx jigyo xxxxx sekinin kumiai keiyaku) under the laws of Japan and agreements under the laws of foreign countries similar thereto (“Investment Partnership Agreements”).
. A Foreign Partner must present documents issued by a public agency stating the name and address of the Foreign Partner or other documents similar thereto (which must have been prepared within six (6) months; the “Identification Documents”) to the Person Responsible for Handling Dividends.
. If a Foreign Partner executes several Investment Partnership Agreements concerning an Investment Partnership carrying out business through a PE within Japan and the Foreign Partner wants to benefit from the special measures, it must apply for special measures with respect to each of the Investment Partnerships in which it is a partner.
. A Foreign Partner that has applied for special measures is obligated to submit the documents set forth in (a) and (b) below to the Competent Director.
(a) Amendment to the application
If the Foreign Partner changes any matter that is reported in a previous application for special measures, then it must submit an amendment to the application to the Competent Director through the Person Responsible for Handling Dividends by the applicable deadline subsequent to such change:
(i) For non-residents, the deadline is the earlier of the day immediately preceding the first day on which a payment of domestic source income shall be deemed to be made following such change, or March 15 of the year following the year in which domestic source income is earned following such change; and
(ii) For foreign corporations;
(a) with respect to the income taxation under the Income Tax Act of Japan, the deadline is the day immediately preceding the first day on which a payment of domestic source income shall be deemed to be made following such change; and
(b) with respect to the corporate taxation under the Corporate Tax Act of
Japan, the deadline is the due date for filing its tax return for the first business year that it earns domestic source income following such change.
If a Foreign Partner fails to submit the amendment to modify its previous application following a change to a matter reported in the application, it will no longer benefit from the special measures. If the name and address of a Foreign Partner is changed, the Foreign Partner must present Identification Documents to the Person Responsible for Handling Dividends, as well.
(b) A Foreign Partner must submit documents describing the category and amount of domestic source income which will not be subject to general taxation (sogo kazei) under the Income Tax Act of Japan or the corporate taxation under the Corporate Tax Act of Japan due to the application of the special measures, and other matters, to the Competent Director by the applicable deadlines. For non-residents, it is March 15 of the year following the year in which the income concerning the domestic source income was earned. For foreign corporations, it is the due date for filing its tax return for the business year in which the income concerning the domestic source income was earned.
2 Special measures regarding taxation on capital gain from the transfer of shares similar to business transfer (25%/5% Rule)
(1) Outline
A non-resident or foreign corporation that does not have a PE within Japan is subject to income tax and corporate tax under the Japanese tax law, but only with respect to certain types of income such as income from a share transfer that is similar to a business transfer.
Here, a share transfer similar to a business transfer means a share transfer which satisfies the following two (2) requirements.
(i) The Specially-related Shareholders (defined below) of a Japanese corporation hold shares of such Japanese corporation equivalent to 25% or more of the issued shares at any time within three (3) years prior to the transfer date (including the calendar year that the transfer occurs) with respect to non-residents, or at any time within three (3) years prior to the last day (including the day) of the business year in which the transfer occurs with respect to foreign corporations. (“Requirement of the Number of Holding Shares”)
(ii) The Specially-related Shareholders of a Japanese corporation have transferred 5% or more of the issued shares of such Japanese corporation during the same calendar year as the share transfer with respect to non-residents, or the same business year as the share transfer with respect to foreign corporations. The percentage of the transferred shares shall be calculated based on the number of issued shares of such Japanese corporation immediately before the first transfer of shares. (“Requirement of the Number of Transferred Shares”)
“Specially-related Shareholders” of a Japanese corporation means certain shareholders of a Japanese corporation provided in the relevant Cabinet Orders. If a non-resident or a foreign corporation holds shares in a Japanese corporation through a partnership, the other partners of the partnership will be included as Specially-related Shareholders of the Japanese corporation. Therefore, the calculation of 25% and 5% of outstanding shares for the test described above will be conducted by the percentage of the shares held by the partnership, and not the percentage of the shares held by each partner through the partnership, in the Japanese corporation.
However, special measures have been established in the Special Taxation Measures Act and apply to the partners of an Investment Partnership if the following requirements are met. In such case, the other partners of the Investment Partnership will not be included as Specially-related Shareholders of a Japanese corporation. In other words, the special measures allow partners of an Investment Partnership to calculate 25% and 5% of outstanding shares for the test described above based on each partner’s percentage of the shares in the Japanese corporation.
(2) Requirements and Procedures of the Special Measures
The Specially-related Shareholders (as mentioned above, the Specially-related Shareholders do not include other partners in the Investment Partnership if the special measures apply to the Investment Partnership) with respect to the Foreign Partner have not held 25% or more of the issued shares of the Japanese corporation at any time within three (3) years prior to the transfer date (including the calendar year that the transfer occurs) with respect to non-residents, or at any time within three (3) years prior to the last day of the business year (including the last day) in which the transfer occurs with respect to the foreign corporations.
A non-resident or a foreign corporation that wants to enjoy the benefit from the special measures is required to submit one (1) copy of the application of special measures to the Competent Director by the applicable deadline. For non-residents it is March 15 of the year following the year in which the transfer occurs. For foreign corporations it is the due date for submitting its tax return for the business year in which the transfer occurs. If a foreign corporation is under the supervision of the Large
Enterprise Examination Division, two (2) copies must be submitted.
* Application for special measures106
(i) Matters to be described in the application
An application for special measures must include the following matters.
. Name and address of the Foreign Partner
. Issue and number of the transferred shares
. Any other matters set forth in the Ordinance of the Ministry of Finance
(ii) Attachments
. A copy of the Investment Partnership Agreements of the Investment Partnership. (a Japanese translation is required to be attached if the Investment Partnership Agreement is prepared in a foreign language.)
(3) Notes
. The special measures may be applied to Foreign Partners under the following Investment Partnership Agreements.
(a) Investment Partnership Agreements to which the special measures to PEs as described in 1. above apply.
(b) Investment Partnership Agreements entered into by a non-resident or a foreign corporation without a PE in Japan as a limited partner, provided however that the limited partner must not be engaged in the “conduct of business affairs” of the Investment Partnership, during the period in which the Investment Partnership Agreements are effective and for three (3) calendar years prior to the transfer date (including the calendar year in which the transfer occurs) with respect to non- residents, or for three (3) years prior to the last day (including the day) of the business year in which the transfer occurs with respect to foreign corporations.
106 See Exhibit 2 (Non-resident) and Exhibit 3 (Foreign Corporation). The form of the application for special measures can be downloaded from the National Tax Agency’s website.
<xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxxxx/xxxxxxx/xxxxx/xxxx/xxxxx/xxx/xxxx000.xxx>
<xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxxxx/xxxxxxx/xxxxx/xxxxx/xxxxx/xxx0/000.xxx>
. The special measures may not be applied to the following share transfers.
(a) A transfer of shares that the Investment Partnership holds for less than one (1) year from the date following the date of the acquisition of the shares as the Investment Partnership assets
(b) A transfer of shares of a special crisis management bank under the Deposit Insurance Act obtained from a Deposit Insurance Corporation
Exhibit 1
(Form of) Application (Amended Application) for Special Measures to PE for Foreign Partner of Investment Partnership
(Downloaded on November 30, 2010 from the National Tax Agency’s website)
Exhibit 2
(Form of) Application for Special Measures for Taxable Income of Foreign Partner without Permanent Establishment
(Non-resident)
(Downloaded on November 30, 2010 from the National Tax Agency’s website)
75
Exhibit 3
(Form of) Application for Special Measures for Taxable Income of Foreign Partner without Permanent Establishment
(Foreign Corporation)
(Downloaded on November 30, 2010 from the National Tax Agency’s website)
78
第三 ヒアリングの結果及びその分析
1. は じ め に
モデル契約の改定に際して、国内における投資事業組合における近時の契約実務の動向や実務上の問題点を把握すること、及び、海外の投資家による投資事業有限責任組合を通じた日本企業への投資促進という観点から、海外のファンドにおけるパートナーシップ契約の実務動向を把握すること、日本法上の規制や税務上の問題点等を把握すること等を目的として、国内及び国外の合計 13 の実務者(運用業者、投資家、外国法弁護士)を対象としたヒアリングを、平成 22 年 10 月
5 日から平成 22 年 11 月 15 日までの期間において実施した。
ヒアリングにおいては、大きく、以下の観点から、質疑及び意見交換を行った。
(1) モデル契約の利用、海外投資家の呼び込み等の国内投資事業組合の実務動向
(2) 海外の組合型ファンドに標準的な規定の動向と国内の投資事業組合における取扱いの状況と展望
(3) xx的施設及び事業譲渡類似株式の譲渡益課税に関する税制特例の利用や問題点
(4) 旧モデル契約において実務上問題が生じた点や改善すべきと考えられる点
(5) 日本法上の規制や税法上の問題点
2. ヒアリング結果の概要
1 国内投資事業組合全般
(1) モデル契約の利用
・ 国内の投資事業組合に関わる実務者へのヒアリングにおいて、ほとんどのケースが、旧モデル契約をベースとしている、又は、旧モデル契約以前の投資事業組合契約をベースとしつつも、旧モデル契約を参考とした改定を行っているとのことであり、国内のファンド投資における投資事業有限責任組合の契約実務上、モデル契約が一つの標準になっているようであった。
・ モデル契約がこのように一般的に用いられている点については、以下のような利点が指摘された。
- 解説が付されており、契約条項の解釈の平準化が図られる。
- 投資家としては運用業者の作成したドラフトと比較して交渉することができる。
・ 一方で、以下のような指摘もあった。
- キャピタル・コールに応ずるか否かにつき解釈に争いが生じたことがあり、出資は義務であることを明確化すべきではないか。
- 個別の論点につきより深い議論が記載されるべきではないか。
- 投資家の立場から契約書ドラフトにつき意見を述べても、GP 運用業者側より「モデル契約の規定がこのようになっているから」との理由で受け入れてもらえないことがある。
・ 国内の運用業者の中には、国内投資家向けには投資事業有限責任組合、海外投資家向けにはケイマン等の海外の法域のファンドを組成している者もあり、そのような者にとっては、税制特例を活用して国内及び海外いずれの投資家も投資事業有限責任組合に加入してもらうことで対応することができれば運用実務の簡素化を図ることができ好ましいとの意見があった。
・ なお、モデル契約は海外のファンド投資実務者にはあまり認知されていないようであった。海外の運用業者がファンドを組成する場合は、ケイマン等の海外の法域で組成する場合が多いようであり、契約書フォーム及び経済条件も運用業者ごとに定型化されているようであった。
(2) 海外投資家の加入
・ 現段階において、海外投資家を投資事業有限責任組合に呼び込んだ事例は、いくつか散見される程度であり、いずれも本格的な呼び込みではないようであったが、海外投資家の呼び込みが検討された事例はそれなりの数があるようであり、潜在的なニーズが十分にあるという印象を受けた。
・ 特に、国内の運用業者においては、海外のリミテッド・パートナーシップではなく、国内の投資事業有限責任組合へ直接海外投資家を加入させることが、投資事業組合の運営管理上の労力及びコストとの関係では魅力的であるとの声が聞かれた。また、投資家側からも、国内の組合と別に海外投資家を併行投資のための海外ファンド(パラレル・ファンド)に加入させるような場合には契約条項にずれが生じて運用上解釈に疑義が生じることもあり、そのような事態を避けるのにも役立つとの意見もあった。
・ もっとも、税務上の扱いが不透明である点への懸念や、そもそも日本法が準拠法となることにつき海外投資家が不安に思わないかという懸念も聞かれた。
2 海外の組合型ファンドに標準的な規定の動向と国内の投資事業組合における取扱いの状況と展望
(1) 組合員による出資
・ バイアウト・ファンドにおいては投資案件ごとのキャピタル・コールが一般的なのに対し、ベンチャー・キャピタル・ファンドにおいては、その都度金額を指定してキャピタル・コールを行うのではなく一定額ずつの分割払いの形でキャピタル・コールを行う、一定額を使用した後に次のキャピタル・コールが可能となるといった事例もあるようである。
・ 新規組合員の加入の際には、ベンチャー・キャピタル・ファンドにおいては追加出資手数料を支払っている場合も支払われない場合もあるようである。バイアウト・ファンドにおいては追加出資手数料が支払われる場合が多いようである。手数料の扱いについては、バイアウト・ファンドではそのまま他の組合員に支払われる場合が多いようであるが、ベンチャー・キャピタル・ファンドの運用業者の中には組合財産としてそのまま維持した方が便宜との意見もあった。
・ 組合員による出資不履行の際の規定(Defaulting Partner 条項)については、遅延損害金を付する、除名事由とするという扱いは国内の多くの組合でみられるようである。除名の際には、除名された組合員に返還する金額を一定割合減ずるという例も多くみられるようである。海外では、不履行のあった組合員の持分の売却、持分の一部又は全部の没収といった多様な制裁が設けられているようである。
・ 組合員が特定の投資に対する出資の免除を受ける権利(Excuse)及び GP の判断により組合員を特定の投資から除外する条項(Exclusion)について、投資事業組合において盛り込んでいる例は非常に稀であり、また当該条項を発動させたという例はみられなかった。また、中東の投資家や海外の年金基金から特定の分野への投資に対する出資を免除するよう求められることがあるが、そのような場合国内の投資事業組合でも海外ファンドでもサイドレターで対応しているため、Excuse 又は Exclusion の発動に至るのは稀であるとの指摘もあった。かかる条項を設けていない運用業者からは、実際に投資実行までの限られた期間内に当該条項の該当性の判断等を適切に行えるか疑問であるとの意見もあった。
(2) ガバナンス
・ LP の組合運営への関与については、承認事項を設けるほか、GP による拘束力のない意見具申の機会を設けるケースもみられた。これらの承認及び意見具申は書面にて行われる場合や組合員集会で行われる場合のほか、LP 等の全部又は一部から成る委員会(諮問委員会、アドバイザリー・ボード等の名称が付される。)による場合も多くみられた。
・ GP による利益相反行為については LP 又はxxxxxxx・xxxの承認を要するとしている例が多くみられた。具体的な対象事項は以下のとおりで、具体的に記載している場合がみられる。
- ファンド設立後一定期間内の GP による新規ファンドの設立
- GP が運営する他のファンドとの併行投資。なお、併行投資の割合まで具体的に組合契約で規定している例はみられなかった。
- GP による運用財産相互間の取引
- 資産の評価(但し、投資事業組合においてはあまりみられないようである。)
なお、典型的な利益相反行為以外の事項についても、以下のような事項についてアドバイザリー・ボードの権限事項とする例がみられた。
- 投資ガイドラインに規定する制限(投資先一社あたりの投資額等)を超える投資
- 出資約束期間の延長
- 再 投 資
・ キーパースン条項(第四の第 10 条解説 1 参照)については、バイアウト・ファンドでは多くの場合用いられているほか、ベンチャー・キャピタル・ファンドでも近時用いられている例もみられた。その効果は、出資約束期間の停止、終了等がみられた。もっとも、組織が大規模な会社、グループ会社との人事異動の多い会社等ではキーパースン条項を受け入れることは実務上困難であるとの意見もあった。他方、キーパースンを複層化し、重要な者とそうでない者とでキーパースンの業務からの離脱に対する効果を異なるものとしている場合もみられた。国内外いずれの運用業者からも、運用業者のトラックレコードがキーパースン条項の厳しさに影響するのではとの意見があった。
・ No fault divorce 条項(第四の第 10 条解説 2 参照)については、LP の一定割合による無理由での解散を認めている場合は多いようである。海外ファンドにおいては、出資約束期間の停止、業務執行組合員の解任等といった効果に結びつけられているようである。No fault divorce 条項については今後盛り込まれるべきとの意見と、投資先や LP への影響に鑑み盛り込むのは慎重にすべきとの意見とがあった。
(3) 計 算
・ 現物分配については、組合契約上は可能としている場合が多いようであるが、金融機関が LP である場合には現物の受領を拒否する傾向にあることから、LP に現物か現金かの選択権を与えている場合が多いようである。なお、実際に現物分配を行うことは近年では稀なようである。
・ 管理報酬については、実務上交渉に委ねられることが多いようであり、出資約束金額総額ベースで算出する場合、組合の純資産額ベースで算出する場合等ケースバイケースのようであった。
・ 成功報酬については、ベンチャー・キャピタル・ファンドにおいてはハードルレート (第四の第 29 条解説 7 参照)を設けることなく、LP が出資約束金額全額を回収した時点から成功報酬が発生するという場合が比較的多いようであった。バイアウト・ファンドにおいては、海外ファンド同様、ハードルレートを超過した部分につき GP がキャッチアップにより一定割合まで成功報酬を受領し、その後 GP と LP とで一定割合で分けるという形が通常のようであった。このような場合にはクローバック(第四の第 33 条解説
6 参照)の規定が設けられるのも一般的であった。また、海外ファンド型の成功報酬の規定の場合、成功報酬がどの時点から発生するかについては、Exit 済みの投資案件に係る収益とそれに対応する出資金の累計額を基礎として、収益がかかる出資金に係るハードルレートを超えた時点から成功報酬が発生するとする場合もあれば、組合員の出資履行金額又は出資約束金額を超過した時点から発生するとする場合もあるようである。
・ バイアウト・ファンドにおいては、GP が投資先等から受領した報酬等の金額を管理報酬から減額する規定が一般的であった。
・ なお、組合の解散後の清算人の報酬については現在のモデル契約に準拠した場合、適正な報酬とのみ規定されているため、当事者間で争いとなることがあるとのことであった。
(4) その他の条項
・ バイアウト・ファンドでは、組合が短期間の投資を行うブリッジ・ファイナンシングの規定や、組合自らの借入れ及び担保提供の規定等、海外ファンドで典型的な条項が必要との意見があった。
・ 投資家より、反社会的勢力との関係の遮断についての条項が必要との意見があった。
・ 海外のみならず国内投資事業組合でもサイドレターが締結される事例もみられる。
3 xx的施設及び事業譲渡類似株式の譲渡益課税に関する税制特例を利用する場合の問題点
・ 税制特例を利用する場合、LP の承認権限が縮小され、助言や諮問といった拘束力のない権限を持つ形でないと難しいことから、LP となる者の抵抗が予想されるとの感想が多くみられた。特に、海外投資家が望む水準から乖離することにならないかと懸念する意見が国内外の運営業者からも投資家からも多くみられた。
・ 税務上どのような扱いがなされるかにつきセーフハーバーが示されないと税制特例の活用は困難との意見があった。
・ 組合契約の和訳を求められるのは実務上負担であるとの意見があった。
4 旧モデル契約において実務上問題が生じた点や改善すべきと考えられる点
・ 金融商品取引法の制定に対応していない。
・ 英文のモデル契約が公表されるのが望ましいとの意見があった。
5 税法上及び規制上その他の問題点
・ 国税当局の運用につき、どのような運用がなされるのかという点で漠然とした不安があるとの意見があった。実際の運用を行っている組合につき後から国税当局が問題視することがあり得るという懸念が聞かれた。
・ 独禁法上の事前届出制度の待機期間は投資の支障となりえる。
・ 外為法上の届出については投資の支障となりえるとの海外運用業者からの意見があった。
・ 財務局等への情報提供については、秘密情報がどの程度要求されるかにより負担が異なるとの意見があった。組合員より当初から受領している情報の範囲であればよいが、組合組成後に組合員に情報提供を要求するのは実務上容易ではないとの指摘があった。
6 そ の 他
(1) 会計基準について
・ 現在、投資事業有限責任組合では中小企業等投資事業有限責任組合会計規則に基づく会計処理が求められているところ、LP の中には、特に金融機関を中心に、金融商品会計に基づく会計処理の結果を別途示すよう求める者が多く、両方の会計処理を行うのが実務上負担である、また、IFRS がもし導入されるのであればさらに負担が増えるおそれがあるとの懸念を示す意見があった。
・ 海外投資家は日本の会計基準ではなく米国の会計基準又は IFRS での処理を求める場合が多いところ、日本の会計基準の処理だと時価との乖離が生じ、海外投資家が求める時価を示すことが困難になるとの意見があった。
(2) 海外投資制限について
・ 外国法人に投資する場合、投資事業有限責任組合契約に関する法律上出資の総額の 50%に満たない範囲のみとされており(同法第 3 条第 1 項第 11 号、同法施行令第 3 条)、実務上支障となっているとの意見があった。
(3) 外国の制度との関係
・ ファンド組成にあたり海外でも登録等の制約があることがあり、例えば日本での登録があれば海外での登録から除外されるといった制度があると好ましいとの意見があった。
・ 海外投資家が加入するファンドの場合、実務上は ERISA 条項、UBTI 等に対応する条項が必要となるとの指摘があった。ファンド組成にあたり弁護士等の専門家に高額の報酬を支払う余裕のない運用業者でもファンドを組成できるようこれらの情報が周知されるのが好ましいとの意見があった。
3. 小 括
以上のとおり、国内ではベンチャー・キャピタル・ファンドを中心に海外ファンドとは異なる独自の実務が形成されている一方、海外ファンドについては定型的に用いられる条項もあることから、投資事業組合や投資家の性質に応じて組合契約を作成することが実務上必要になると思われる。GP 及び LP のいずれも、当該条項が投資事業組合の運営にどのような影響を及ぼすかを意識して交渉を行うことが重要であろう。
また、税制特例については、予測可能性の高い実務が形成されることが、海外投資家の参加しやすい組合の組成のために重要と考えられる。とりわけ、利益相反行為に係る承認については、海外の標準的な実務を踏まえた現実的な扱いがなされることが望まれる。
第四 投資事業有限責任組合モデル契約
委託契約平成22年度調査研究
投資事業有限責任組合モデル契約
平成22年11月
経済産業省
委託先 xxxxx法律事務所
平 成 年 月 日
投資事業有限責任組合契約
[ ]投資事業有限責任組合
目 次
第 1 章 x x 1
第 1 条 定 義 1
第 2 条 名 称 7
第 3 条 所 在 地 8
第 4 条 組 合 員 8
第 5 条 組 合 の 事 業 9
第 6 条 x x 約 の 効 力 発 生 日 及 び 組 合 の 存 続 期 間 10
第 7 条 登 記 11
第 2 章 x x 12
第 8 条 x x 12
第 9 条 組 合 員 の x x x x の 免 除 及 び 除 外 16
第 10 条 x x 約 束 期 間 の 中 断 及 び 早 期 終 了 18
第 11 条 x x 約 束 金 額 の 減 額 19
第 12 条 追 加 x x 及 び x x 金 の 払 戻 19
第 13 条 x x 払 込 等 の 不 履 行 20
第 3 章 組 合 業 務 の 執 行 22
第 14 条 無 限 責 任 組 合 員 の 権 限 22
第 15 条 無 限 責 任 組 合 員 の 注 意 x x 26
第 16 条 有 限 責 任 組 合 員 の 権 限 26
第 17 条 組 合 員 集 会 28
第 18 条 利 益 相 反 29
第 19 条 諮 問 委 員 会 31
第 4 章 組 合 員 の 責 任 34
第 20 条 組 合 債 務 に 対 す る 対 外 的 責 任 34
第 21 条 組 合 財 産 に よ る 補 償 35
第 5 章 組 合 財 産 の 運 用 及 び x x 35
第 22 条 組 合 財 産 の 運 用 36
第 23 条 組 合 財 産 の x x 38
第 6 章 会 計 38
第 24 条 会 計 38
第 25 条 x x 諸 x x の x x 及 び 組 合 員 に 対 す る 送 付 39
第 7 章 投 資 先 事 業 者 の 育 成 40
第 26 条 投 資 先 事 業 者 の 育 成 40
第 8 章 組 合 財 産 の 持 分 と 分 配 41
第 27 条 組 合 財 産 の 帰 属 41
第 28 条 損 益 の 帰 属 割 合 41
第 29 条 組 合 財 産 の 分 配 43
第 30 条 分 配 制 限 49
第 31 条 公 租 公 課 50
第 9 章 費 用 及 び 報 酬 52
第 32 条 費 用 52
第 33 条 無 限 責 任 組 合 員 に 対 す る 報 酬 53
第 10 章 組 合 員 の 地 位 の 変 動 56
第 34 条 持 分 処 分 の 禁 止 56
第 35 条 組 合 員 た る 地 位 の 譲 x x 56
第 36 条 組 合 員 の 加 入 60
第 37 条 組 合 員 の 脱 退 60
第 38 条 組 合 員 の 死 亡 62
第 39 条 有 限 責 任 組 合 員 の 除 名 63
第 40 条 無 限 責 任 組 合 員 の 除 名 63
第 41 条 脱 退 組 合 員 の 持 分 及 び 責 任 64
第 42 条 組 合 員 の 地 位 の 変 動 の 通 知 65
第 11 章 解 散 及 び 清 算 65
第 43 条 解 散 65
第 44 条 清 算 人 の 選 任 66
第 45 条 清 算 人 の 権 限 67
第 46 条 清 算 手 続 67
第 47 条 清 算 方 法 68
第 12 章 雑 則 68
第 48 条 x x 可 等 69
第 49 条 通 知 及 び 銀 行 口 座 69
第 50 条 秘 密 保 持 70
第 51 条 x x 商 品 取 引 法 等 に 係 る 確 認 事 項 71
第 52 条 適 格 機 関 投 資 家 等 特 例 業 務 に 関 す る 特 則 72
第 53 条 反 社 会 的 勢 力 等 の 排 除 72
第 54 条 x x x 証 等 の 違 反 に よ る 補 償 73
第 55 条 x x 約 の 変 更 73
第 56 条 x x 約 の 有 効 性 、 個 別 性 74
第 57 条 言 語 、 準 拠 法 及 び 合 意 管 轄 74
別紙 | 1 | 組合員名簿 |
2 | 投資ガイドライン(例) | |
3 | 投資資産時価評価準則 | |
4 | 累積内部収益率計算方法書 |
投資事業有限責任組合契約
本契約書末尾の署名欄に記載された者は、事業者(以下に定義される。)に対する投資事業を行うた め、有限責任組合法(以下に定義される。)の規定に従い、平成 年 月 日(以下「本締結日」という。)をもって、以下のとおり、投資事業有限責任組合契約(以下「本契約」という。)を締結す る。
第 1 章 x x
第 1 条 定 義
1. 本契約において、下記の用語は、文脈上別段の意味を有することが明らかな場合を除き、以下の意味を有するものとする。
「外国有限責任組合員」 所得税法上の非居住者又は外国法人である有限責任組合員。
「監査人」 監査法人[ ]/公認会計士[ ]及び/又は無限責任組合員が同人に代え若しくは同人に加えて適宜選任し、その旨組合員に通知したその他の監査法人又は公認会計士(但し、辞任し、又は解任された者を除く。)。
[「既存出資比率」 ある時点における、当該時点において出資の不履行がない組合員の
出資履行金額の出資約束金額に対する比率。]
「金融商品取引法」 金融商品取引法(昭和 23 年法律第 25 号、その後の改正を含
む。)。
「 組 合 員 」 無 限 責 任 組 合 員 及 び 有 限 責 任 組 合 員 の 総 称 。
「組合会計規則」 中小企業等投資事業有限責任組合会計規則(平成 10 年 8 月 20 日
10・8・7 企庁第 2 号、その後の改正を含む。)及び日本公認会計士協会により公表された「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」(平成 19 年 3 月 15 日業種別監査委員会報告第
38 号、その後の改正を含む。)。
「組合口座」 本組合の事業のためにのみ利用される[ ]銀行に開設された本
組合名義の普通預金口座(口座番号: )又は無限責任組合員が随時開設し組合員に通知した本組合名義のその他の銀行口座。
「組合財産」 出資金及びこれを運用して取得した投資証券等、投資知的財産権そ
の他財産で本組合に帰属すべきもの。
「 組 合 持 分 」 本 組 合 に お け る 組 合 員 の 持 分 。
「 事 業 者 」 法 人 ( 外 国 法 人 を 除 く 。 ) 及 び 事 業 を 行 う 個 人 。
「市場性のある有価証券」 金融商品取引法第 2 条第 16 項に規定する金融商品取引所若しくは
これに類似するものであって外国に所在するものに上場され、又は同法第 67 条の 11 第 1 項の店頭売買有価証券登録原簿若しくはこれに類似するものであって外国に備えられているものに登録されている有価証券。
「指定有価証券」 金融商品取引法第 2 条第 1 項各号(同項第 9 号及び第 14 号を除
く。)に掲げる有価証券(同項第 1 号から第 8 号まで、第 10 号か
ら第 13 号まで、及び第 15 号から第 21 号までに掲げる有価証券に
表示されるべき権利であって同条第 2 項の規定により有価証券とみなされるものを含む。)のうち社債その他の事業者の資金調達に資するものとして以下に定める有価証券。
① 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 3 号に掲げる債券
② 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 4 号に掲げる特定社債券
③ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 5 号に掲げる社債券
④ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 6 号に掲げる出資証券
⑤ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 7 号に掲げる優先出資証券又は優先出資引受権を表示する証書
⑥ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 8 号に掲げる優先出資証券又は新優先出資引受権を表示する証券
⑦ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 10 号に掲げる受益証券
⑧ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 11 号に掲げる投資証券又は投資法人債券
⑨ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 12 号に掲げる受益証券
⑩ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 13 号に掲げる受益証券
⑪ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 15 号に掲げる約束手形
⑫ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 9 号若しくは第①号から第⑪号の各号に掲げる有価証券又は第⑬号に掲げる権利に係る同法第 2 条第 1 項第 19 号に規定するオプションを表示する証券又は証書
⑬ 第①号から第⑪号までに掲げる有価証券に表示されるべき権利であって、金融商品取引法第 2 条第 2 項により、有価証券とみなされるもの
「出資口数」 各組合員が本組合において有する出資の口数をいう。但し、本契約
における総有限責任組合員の出資口数の合計に対する一定割合の比率の計算について、不履行有限責任組合員が有する出資口数は、第 13 条第 5 項に従い除外される。なお、本契約において総有限責任組合員の出資口数の合計に対する一定割合の比率を満たすことが求められる場合、複数の有限責任組合員の出資口数を合計して当該比率を満たす場合を含む。
「出資未履行金額」 出資約束金額のうち未だ払込みをしていない金額。但し、本契約の
規定に従い、出資未履行金額の増減がなされた場合には、当該増減後の金額とする。
「出資約束期間」 効力発生日から[ ]年間。但し、本契約の規定により出資約束期
間がそれより早く終了する場合は当該終了の日までの期間とする。
「出資約束金額」 各組合員において第 8 条第 2 項に基づき本組合に出資することを約
した金額。[但し、第 11 条に従い、出資約束金額の減額がなされた場合には、当該減額後の金額とする。]
「出資履行金額」 各組合員において出資約束金額のうち第 8 条第 3 項から第 7 項まで
の規定に基づき出資の履行として本組合に現実に払い込んだ金額の総額(但し、追加出資手数料を除く。)。
「 主 要 担 当 者 」 [ ] 、 [ ] 、 [ ] 及 び [ ] 並 び に 第 10 条 第 2 項 に 基 づ き
選任された者。但し、第 10 条第 2 項に基づき後任者が選任された上で主要担当者でなくなった者を除く。
「主要担当者事由」 主要担当者の[全て/うち[ ]名]が、組合財産の運用に実質的
に関与しなくなったこと。
「所得税法」 所得税法(昭和 40 年法律第 33 号、その後の改正を含む。)。
「租税特別措置法」 租税特別措置法(昭和 32 年法律第 26 号、その後の改正を含
む。)。
「対象持分割合」 あるポートフォリオ投資に関して、当該ポートフォリオ投資に参加
した各組合員が出資した金額の、当該ポートフォリオ投資に参加した全組合員の出資の総額に対する割合。
「脱退組合員」 本組合の組合員だった者で、第 37 条に基づき本組合を脱退した
者。
「適格機関投資家」 金融商品取引法第 2 条第 3 項第 1 号に規定する適格機関投資家。
「投資組合等」 投資事業有限責任組合若しくは民法第 667 条第 1 項に規定する組合
契約で投資事業を営むことを約するものによって成立する組合又は外国に所在するこれらの組合に類似する団体。
「投資先事業者」 第 5 条第①号から第⑦号までの規定により本組合がその株式、持
分、新株予約権、指定有価証券、金銭債権、工業所有権、著作権、又は信託の受益権を保有している事業者。
「投資先事業者等」 投資先事業者、第 5 条第⑨号により本組合が出資している投資組合
等及び第 5 条第⑪号により外国法人向け出資等を保有している外国法人の総称。
「投資事業有限責任組合」 有限責任組合法第 2 条第 2 項に規定される投資事業有限責任組合。
「投資証券等」 第 5 条第①号から第⑥号、[第⑨号]から[第⑪号まで]の規定に
従い、本組合が取得した又は取得する予定の株式、持分、新株予約権、指定有価証券、金銭債権、信託の受益権、[投資組合等に対する出資]、約束手形、譲渡性預金証書若しくは動産又は[外国法人向け出資等]。
「投資総額」 ある時点までに本組合が取得した全ての投資証券等及び投資知的財
産権の取得価額の合計額。
「投資知的財産権」 第 5 条第⑦号に従い、本組合が取得した又は取得する予定の工業所
有権及び著作権。
「反社会的勢力」 以下のいずれかに該当するもの。
① 暴 力 団
② 暴 力 団 員
③ 暴力団準構成員
④ 暴力団関係企業
⑤ 総会屋等(総会屋、会社ゴロ等企業等を対象に不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者をいう。)
⑥ 社会運動等標ぼうゴロ(社会運動若しくは政治活動を仮装し、又は標ぼうして、不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者をいう。)
⑦ 特殊知能暴力集団等(第①号から第⑥号までに掲げる者以外の
、暴力団との関係を背景に、その威力を用い、又は暴力団と資金的なつながりを有し、構造的な不正の中核となっている集団又は個人をいう。)