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上級ファンダメンタル講座
再受験生のための 法的思考プロセス講座
民法①
オリジナルレジュメ
【再受験生のための法的思考プロセス講座・民法①】
1 制限行為能力 1
2 贈与契約 11
3 遺言 13
4 行政書士試験過去問 16
01
再受験生のための法的思考プロセス講座・民法➀
制限行為能力
事例 01-1-01 | |
未xx者Aは、A所有のパソコンを親権者Bの同意なく、xx者Cに売却する旨の契約を締結した。本件売買契約を締結するに際し、AはCに自己が未xx者であることを告げず、CはAがxx者であると信じて本件売買契約を締結した場合、Aは、本件売買契約を取り消すことができるか。 B (親権者) 売買契約 A C (未xx者) (相手方) |
1 意義
行為能力とは、法律行為を単独で有効になしうる法律上の地位または資格のことをいう。
2 趣旨
意思無能力者の行為は無効であるが、一般に、行為当時の意思無能力を立証することは困難である。しかし、その立証ができなければ契約の無効を主張できないとすると、その者の保護に欠けることになる。そこで、民法は、制限行為能力者制度を設け、原則として、取り消すことができる行為としている。
-図解- | 制限行為能力者制度 |
未xx者
制限行為能力者
xx被後見人被保佐人
被補助者
1
1
行為能力
A
3 効果
民法は、行為能力が不十分な者を「制限行為能力者」として類型化し、行為時に意思能力があったか否かを問わず、一律に法律行為を取り消すことができるものとしている。
4 制限行為能力者の相手方の保護
(1) 総説
制限行為能力者の行為は、取り消されることがある。そこで、不安定な地位に置かれる取引の相手方の保護が必要となる。
-図解-
制限行為能力者の相手方の保護
A
B
(未xx者) (相手方)
静的安全
動的安全
(2) 催告権(20条)
催告権とは、制限行為能力者の相手方が、取り消しうる行為について、制限行為能力者側に対して、一定の期間を定めて、追認をするか否かの確答を促し、もしその期間内に確答がなかった場合、追認ないし取消しの効果があったとみなされる制度をいう。
-図表- | 確答がない場合の効果 |
保護者及び能力者となった本人に対する催告 | 被保佐人及び被補助人に対する催告 | 未xx者及びxx被後見人に対する催告 |
1か月以上の期間を定め催告した場合に期間内に確答がない場合には、追認したものとみなされる(20条1項、 2項)。 | 1か月以上の期間を定め催告した場合に期間内に確答がない場合には、取り消したものとみなされる(20条4 項)。 | これらの者は受領能力がないため、これらの者に対する催告は意味がない。 |
(3) 制限行為能力者の詐術(21条)ア 意義
「詐術」とは、広く相手方を欺く行為をいう。制限行為能力者が積極的に行為能力者だと明示した場合は「詐術」に当たる。
判例(最判昭 44.2.13)
無能力者であることを黙秘していた場合でも、それが、無能力者の他の言動などと相俟つて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、
2
なお詐術に当たるというべきであるが、単に無能力者であることを黙秘していたことの一事をもつて、右にいう詐術に当たるとするのは相当ではない。
イ 効力
制限行為能力者が自らを行為能力者だと信じさせるために詐術を用いた場合には、制限行為能力者はその行為を取り消すことができなくなる。そのような制限行為能力者を保護する必要はないからである。
この場合、制限行為能力者のみならず、法定代理人等の取消権も消滅する。
なお、制限行為能力者が詐術を用いた場合であっても、相手方がその行為能力の制限を知っていた場合は、民法21条は適用されず、制限行為能力者がした契約の取消しは認められることになる。
(4) 取消権の期間制限
取消権は、追認できるときから5年、行為の時から20年で消滅する(126条)。
3
2 未xx者 A
1 意義
未xx者とは、20歳未満の者をいう(4条)。未xx者は、判断能力が不十分なため、行為能力を制限されている。
2 保護者
保護者は、原則として、親権者、親権者がいないときは未xx後見人となる。保護者は、代理権(824条本文)、取消権(120条1項)、追認権(122条1項)、同意権
(5条1項本文)を有する。
3 行為能力
(1) 原則
法律行為を単独ではできず、法定代理人の同意が必要となる(5条1項本文)。同意を得ずにした行為は、取り消すことができる(5条2項)。
(2) 例外
以下の場合には、法定代理人の同意がなくても取消権が発生しない。
① 単に権利を得、または義務を免れる行為(5条1項ただし書)
たとえば、負担のない贈与を受けること、債務免除を受ける等は、未xx者の利益を害しないためこれに該当するが、負担付贈与を受けることや、弁済を受ける等はこれに該当しない。なぜなら、弁済を受けることは、一方で債権を失うということでもあり、単に権利を得ることにはならないからである。
② 法定代理人が処分を許した財産(5条3項)
学費や小遣いなど法定代理人が一定の範囲において処分を許した財産については、法定代理人が包括的に処分を認めたことと考えられるため、単独で処分することができる。
③ 法定代理人が許した一定の営業に関する行為(6条)
営業とは、営利を目的とする継続的な事業をいう。この営業許可は、明示でも黙示でもよいが、営業の種類は特定しなければならない。
④ 行為能力の制限によって取り消すことができる行為の取消し(120条)
⑤ xx擬制(753条)
未xx者が婚姻したときは、xxに達したものとみなされる。なお、未xx者のうちに離婚しても、xx擬制の効果は失われない(通説)。
⑥ 身分行為
たとえば、認知(780条)、遺言(ただし15歳に達していることが必要 961
条)。
4
1 意義
xx被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあり、一定の者からの請求により家庭裁判所が後見開始の審判をした者をいう(7条)。
2 請求権者
請求権者は、本人、配偶者、4親等内の親族、本人の保護者、保護者の監督人、検察官である(7条)。なお、本人以外の者が後見開始の審判の請求をした場合でも、本人の同意は不要である。
3 保護者
保護者は、xx後見人である(8条)。保護者は、代理権(859条)、取消権(120条1項、9条)、追認権(122条)を有するが、同意権はない。xx被後見人に対する同意は無意味であるからである。
4 行為能力
(1) 原則
xx被後見人の法律行為は取り消しうる(9条本文、120条1項)。
(2) 例外
以下の行為は、取り消すことができず、xx被後見人が単独でなしうる。
① 日用品購入等、日常生活に関する行為(9条ただし書)
「日常生活に関する行為」とは、食料品・衣料品の購入、電気・ガス代等の支払い、そのための預貯金の引き出しなど、本人が生活を営む上で通常必要な行為をいう。
② 行為能力の制限によって取り消すことができる行為の取消し(120条
1項)
③ 後見開始の審判の請求(7条)、後見開始の審判の取消しの請求(10条)
④ 一定の身分行為(婚姻 738条等)
5 後見開始の審判の取消し
民法7条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人または検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない(10条)。
5
3
xx被後見人
A
4 被保佐人 A
1 意義
被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分であり、一定の者からの請求により家庭裁判所が保佐開始の審判をした者をいう(11条)。
2 請求権者
請求権者は、xx被後見人の場合と同じである。なお、本人以外の者が保佐開始の審判の請求をした場合でも、本人の同意は不要である。
3 保護者
保護者は、保佐人である。保護者は、同意権(13条1項、2項)、取消権(120条1項)、追認権(122条)を有するが、当然には、代理権を有しない(876条の4)。保佐人に「特定の法律行為」について代理権を付与することができる(876条の4第
1項)が、代理権付与に際しては、被保佐人の同意が必要である(876条の4第2項)。
4 行為能力
(1) 原則
被保佐人は、保佐人の同意なく、原則として単独で法律行為をすることができる。
(2) 例外
被保佐人が13条1項に列挙された行為や13条2項の行為をするには保佐人の同意または同意に代わる家庭裁判所の許可が必要となる(13条3項)。
≪13条1項列挙事由≫
① 元本を領収し、または利用すること。
② 借財または保証をすること。
③ 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
④ 訴訟行為をすること。
⑤ 贈与、和解または仲裁合意(仲裁法第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
⑥ 相続の承認若しくは放棄または遺産の分割をすること。
⑦ 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付遺贈を承認すること。
⑧ 新築、改築、増築または大修繕をすること。
⑨ 第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。
保佐人の同意または同意に代わる許可を得ずにした行為は、取り消すことができる(13条4項)。
6
5 保佐開始の審判の取消し
民法11条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未xx後見人、未xx後見監督人、保佐人、保佐監督人または検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない(14条1項)。
7
5 被補助人 A
1 意義
被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分であり、一定の者からの請求により家庭裁判所が補助開始の審判をした者をいう(15条1項)。
2 請求権者
請求権者は、xx被後見人の場合と同じである。被補助人は、他の制限行為能力者に比べて能力が高いので、本人以外の者が請求する場合には、本人の自己決定権の尊重から本人の同意が必要とされている(15条2項)。
3 保護者
保護者は、13条1項の中の特定の行為につき同意権(17条1項)、取消権(120条1項)、追認権(122条)と代理権の一方又は双方を持つ。
この同意権付与の審判及び代理権付与の審判は、補助開始の審判の際に、一方もしくは双方を共にしなければならず、本人以外の請求の場合には本人の同意が必要となる。
4 行為能力
(1) 原則
被補助人は、補助人の同意なく、原則として単独で法律行為をすることができる。
(2) 例外
補助人に同意権が付与された法律行為をするには、補助人の同意または同意に代わる家庭裁判所の許可が必要である(17条3項)。補助人の同意または同意に代わる許可を得ないでした行為は、取り消しうる(17条4項)。
なお、同意を得なければならないとされる行為は、13条1項列挙事由の一部に限る(17条1項)。
5 補助開始の審判等の取消し
民法15条1項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未xx後見人、未xx後見監督人、補助人、補助監督人または検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない(18条1項)。
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-図表- | 制限行為能力者制度のまとめ① |
未xx者 | xx被後見人 | 被保佐人 | 被補助人 | |
請求権者本人の 同意 | 本人、配偶者、4親等内の親族、本人の保護者、保護者の監督人、検察官 | |||
本人以外の者が後見開始の審判の請求をした場合でも、本人の 同意は不要 | 本人以外の者が保佐開始の審判の請求をした場合でも、本人の 同意は不要 | 本人以外の者が請求する場合には、本人の同意が必要 | ||
保護者の権能 | 保護者は、代理権、取消権、追認権、同意権を有する。 | 保護者は、代理権、取消権、追認権を有するが、同意権はない。xx被後見人に対する同意は無意味であるからである | 保護者は、同意権、取消権、追認権を有するが、当然には、代理権を有しない。保佐人に「特定の法律行為」について代理権を付与することができるが、代理権付与に際しては、被保佐人 の同意が必要。 | 13 条1 項の中の特定の行為につき同意権、取消権、追認権と代理権の一方又は双方を持つ。この同意権付与の審判及び代理権付与の審判は、本人以外の請求の場合には本人の同意が必 要。 |
x x | 法律行為を単独ではできず、法定代理人の同意が必要。 同意を得ずにした行為は、取り消すことができ る。 | xx被後見人の行為は取り消しうる。 | 原則として単独で法律行為をすることができる。 | 原則として単独で法律行為をすることができる。 |
例 外 | 以下の場合には、法定代理人の同意がなくても取消権が発生しない。 ① 単に権利を得、または義務を免れる行為 ② 法定代理人が処分を許した財産 ③ 法定代理人が許した一定の営業に関する行為 ➃ 行為能力の | 以下の行為は、取り消すことができず、xx被後見人が単独でなしうる。 ① 日用品購入等、日常生活に関する行為。 ② 行為能力の制限によって取り消すことができる行為の取消し ③ 一定の身分行為(婚姻等) | 被保佐人が13条1項列挙された行為や13 条 2項の行為をするには保佐人の同意が必要となる。 保佐人の同意を得ずにした行為は、取り消すことができる。 | 補助人に同意権が付与された法律行為をするには、補助人の同意が必要である。 補助人の同意なくした行為は、取り消しうる。なお、同意を得なければならないとされる行為は、13条1項列挙事由の一部に限る。 |
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制限によって取り消すことができる行為の取消し ⑤ xx擬制 ⑥ 身分行為 |
-図表- | 制限行為能力者制度のまとめ② |
未xx者 | xx被後見人 | 被保佐人 | 被補助人 | ||
保護者 | 親権者 未xx後見人 | xx後見人 | 保佐人 | 補助人 | |
保護者の権限 | 同意権 | ○ (5条1項本文) | × | ○ (13条1項) | △ 特定の法律行為家裁の審判 (17条1項) |
取消権 | ○ (120条1項) | ○ (120条1項) | ○ (120条1項) | △ 同意権がある場合 (120条1項) | |
追認権 | ○ (122条) | ○ (122条) | ○ (122条) | △ 同意権がある場合 (122条) | |
代理権 | ○ (824条本文) | ○ (859条1項) | △ 特定の法律行為家裁の審判 (876条の4) | △ 特定の法律行為家裁の審判 (876条の9) |
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02 贈与契約
再受験生のための法的思考プロセス講座・民法➀
事例 02-1-01 | |
Aは、Bとの間で、A所有の甲建物を贈与する旨の契約を締結した。この場合、 AB間の法律関係はどうなるか。 贈与契約 A B (贈与者) (受贈者) 目的物引渡請求権 A B (贈与者) (受贈者) |
1 意義
贈与契約とは、当事者の一方(贈与者)が、ある財産を、無償で相手方に与えることを約束し、これに対して相手方(受贈者)が同意をすることによって成立する契約をいう(549条)。贈与契約は、諾成・片務・無償契約である。
2 成立
事例 02-1-02 | |
Aは、Bとの間で、A所有の既登記の甲建物を贈与する旨の契約を締結したが、その後、右贈与契約を撤回したいと考えている。Aは、どのような要件のもとであれば、Bとの贈与契約を撤回することができるか。 贈与契約 A B (贈与者) (受贈者) |
贈与契約は、諾成契約であるため、書面にしておかなくても、有効に成立する。しかし、書面にしておかなければ、各当事者は、贈与契約を撤回することができ
11
1
贈与契約
B
る(550条本文)。もっとも、書面によらない贈与であっても、履行の終った部分については、撤回することができない(550条ただし書)。
たとえば、不動産の贈与では、不動産の引渡しがなくても、所有権移転登記がされた場合には履行が終わったとされるし(最判昭40.3.26)、所有権移転登記がなくても、引渡しがされた場合には履行が終わったとされる(大判明43.10.10、最判昭31.1.27)。
3 効力
① 財産権移転義務
② 担保責任
贈与者は、贈与の目的である物または権利の瑕疵または不存在について、その責任を負わない(551条1項本文)。ただし、贈与者がその瑕疵または不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、担保責任を負う(551条1項ただし書)。
4 特殊な贈与
-図表- | 特殊な贈与 |
定期贈与 | 負担付贈与 | 死因贈与 | |
意 義 | 定期の給付を目的とする贈与をいう。 | 贈与契約の際に受贈者に負担を課す贈与をいう。 | 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与をいう。 |
効 力 | 贈与者または受贈者の死亡によって、その効力を失う(552条)。 | その性質に反しない限り、双務契約に関する規定(同時履行の抗弁権、危険負担、解除)が 準用される(553条)。 | その性質に反しない限り、遺贈に関する規定が準用される( 554条)。 |
備 考 | 負担の限度において、贈与者の給付と受贈者の給付とは対価関係に立つため、贈与者は、売主と同様の担保責任を 負う(551条2項)。 | 死因贈与の方式については、遺贈に関する規定は準用されない(最判昭32.5.21)。 |
12
03 遺 言
再受験生のための法的思考プロセス講座・民法➀
1 意義
遺言とは、遺言者(被相続人)の死亡により、その者の最後の意思に一定の効力を発生させることを目的とする意思表示をいう。
2 法的性質
遺言は、遺言者による単独の意思表示である。ただし、所定の一定の方式に従ってなされなければ無効となる要式行為である(960条)。
3 遺言能力
未xx者であっても、満15歳以上であれば、法定代理人の同意なく遺言をすることができる(961条、962条、963条)。
xx被後見人は、事理弁識能力が一時的に回復した状態で医師2人以上の立会いがあれば、遺言をすることができる(973条1項)。
4 遺言の方式
遺言の方式には、普通方式と特別方式の2種類がある。
(1) 普通方式
① 自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の本文、日付及び氏名を自分で書き
(自書)、押印して作成する方式の遺言をいう(968条1項)。
② xx証書遺言
xx証書遺言とは、遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記してxx証書による遺言書を作成する方式の遺言をいう(969条)。
③ 秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言者が遺言内容を秘密にしたうえで、封印をした遺言証書の存在を明らかにすることを目的として行われる遺言のことをいう
(970条1項)。
(2) 特別方式
特別方式の遺言には、危急時遺言(一般危急時遺言・難船危急時遺言)と隔絶地遺言(伝染病隔絶者遺言・在船者遺言)がある。普通方式によることができない特別の事情がある場合にのみ、特別方式によって遺言することができる。
13
1 遺
言
A
-図表- | 普通方式 |
自筆証書遺言 | xx証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
意 義 | 遺言者が遺言書の本文、日付及び氏名を自分で書き(自書)、押印して作成する方式の遺言をいう(968条1項)。 | 遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記してxx証書による遺言書を作成する方式の遺言をいう(969条)。 | 遺言者が遺言内容を秘密にしたうえで、封印をした遺言証書の存在を明らかにすることを目的として行われる遺言のことを いう(970条1項)。 |
方式要件 | ① 全文、日付及び氏名の自署 ② 押印 ※ 自筆証書に一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉に署名し、印を押さなければならない。 | ① 2人以上の証人の立会い ② 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること ③ 公証人がこれを筆記して遺言者等に読み聞かせること ➃ 遺言者及び証人が筆記の正確性を承認した後、各自が署名押印すること ⑤ 公証人が方式に従って作成したことを付記した上、署名押印すること | ① 遺言者が遺言書を作成し、署名押印すること ② 遺言者がその遺言書を封じて、遺言書に押印した印章で封印すること ③ 遺言者が公証人 1人及び2人以上の証人の前に封書を提出して、自己の遺言書であること及び筆者の氏名と住所を申述すること ➃ 公証人が封書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人がともに署名押印する こと |
5 共同遺言の禁止
共同遺言の禁止とは、2人以上の者が同一の証書で遺言をすることができないことをいう(975条)。共同遺言を認めてしまうと、遺言が自由に撤回できず遺言者の意思が制約されてしまうからである。
判例(最判平 5.10.19)
遺言書が、各葉ごとに甲の印章による契印がされた数枚のものを合綴したものであっても、甲名義の遺言書の形式のものと乙名義の遺言書の形式のものとが、容易に切り離すことができる場合には、975条によって禁止された共同遺言には当たらない。
特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、被相続人が特定の財産を特定の相続人に単独で相続させようとする趣旨であって、遺産分割方法の指定にあたるから、特段の事情のない限り、何らの行為なくして、当該相続人に直ちに当該財産が承継される。
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6 遺言の効力
遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる(985条1項)。また、遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる(985条2項)。
7 遺言の撤回
(1) 意義
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができる(1022条)。
(2) 撤回の方法
ア 抵触行為による撤回
①前の遺言が後の遺言と抵触する場合(1023条1項)、②遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合(1023条2項)、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされる。
イ 破棄による撤回
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなされる(1024条)。
(3) 撤回された遺言の効力
撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、または効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない(1025条本文)。ただし、その行為が詐欺または強迫による場合は、この限りでない(1025条ただし書)。
判例(最判平9.11.13)
遺言(以下「原遺言」という。)を遺言の方式に従って撤回した遺言者が、更に右撤回遺言を遺言の方式に従って撤回した場合において、遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が原遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、民法1025条ただし書の法意にかんがみ、遺言者の真意を尊重して原遺言の効力の復活を認めるのが相当と解される。
判例(最判平 27.11.20)
赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は、その行為の有する一般的な意味に照らして、その遺言書の全体を不要のものとし、そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であるから、その行為の効力について、一部の抹消の場合と同様に判断することはできない。
以上によれば、遺言書に故意に本件斜線を引く行為は、民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当するというべきであり、これにより遺言者は本件遺言を撤回したものとみなされることになる。
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04
上級ファンダメンタル講座 プレ講義
行政書士試験過去問
問題1 画家Aは、BからAの絵画(以下「本件絵画」といい、評価額は 500万円〜600万円であるとする。)を購入したい旨の申込みがあったため、500万円で売却することにした。ところが、A・B間で同売買契約(本問では、「本件契約」とする。)を締結したときに、Bは、成年被後見人であったことが判明したため(成年後見人はCであり、その状況は現在も変わらない。)、Aは、本件契約が維持されるか否かについて懸念していたところ、Dから本件絵画を気に入っているため600万円ですぐにでも購入したい旨の申込みがあった。Aは、本件契約が維持されない場合には、本件絵画をDに売却したいと思っている。Aが本件絵画をDに売却する前提として、Aは、誰に対し、 1か月以上の期間を定めてどのような催告をし、その期間内にどのような結果を得る必要があるか。なお、AおよびDは、制限行為能力者ではない。
「Aは、」に続け、下線部分につき40字程度で記述しなさい。記述に当たっては、「本件契約」を入れることとし、他方、「1か月以上の期間を定めて」および「その期間内に」の記述は省略すること。
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問題2 制限行為能力者と取引をした相手方の保護に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 制限行為能力者が自己の行為を取り消したときには、相手方は受け取っていた物を返還しなければならないが、相手方は、制限行為能力を理由とする取消しであることを理由に、現に利益を受けている限度で返還をすれば足りる。
2 制限行為能力者が未成年者の場合、相手方は、未成年者本人に対して、1か月以上の期間を定めてその行為を追認するかどうかを催告することができ、その期間内に確答がなければその行為を追認したものとみなされる。
3 制限行為能力者が成年被後見人であり、相手方が成年被後見人に日用品を売却した場合であっても、成年被後見人は制限行為能力を理由として自己の行為を取り消すことができる。
4 制限行為能力者が被保佐人であり、保佐人の同意を得なければ ならない行為を被保佐人が保佐人の同意またはそれに代わる家庭 裁判所の許可を得ずにした場合において、被保佐人が相手方に対 して行為能力者であると信じさせるために詐術を用いたときには、制限行為能力を理由としてこの行為を取り消すことはできない。
5 制限行為能力者が被補肋人であり、補助人の同意を得なければならない行為を被補助人が補助人の同意を得てした場合であっても、相手方は、制限行為能力を理由として被補助人の行為を取り消すことができる。
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問題3 甲自動車(以下「甲」という。)を所有するAは、別の新車を取得したため、友人であるBに対して甲を贈与する旨を口頭で約し、Bも喜んでこれに同意した。しかしながら、Aは、しばらくして後悔するようになり、Bとの間で締結した甲に関する贈与契約をなかったことにしたいと考えるに至った。甲の引渡しを求めているBに対し、Aは、民法の規定に従い、どのような理由で、どのような法的主張をすべきか。40 字程度で記述しなさい。なお、この贈与契約においては無効および取消しの原因は存在しないものとする。
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問題4 贈与者Aと受贈者Bとの関係に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らして妥当でないものはどれか。
1 未登記の建物を書面によらず贈与した場合において、AがBにその建物を引き渡したときは、Aはその贈与契約を取り消すことができない。
2 既登記の建物を書面によらずに贈与した場合において、AがBにその建物を引き渡したときは、所有権移転登記が未了であっても、Aはその贈与契約を取り消すことができない。
3 既登記の建物を書面によらずに贈与した場合において、Aから Bにその建物の引渡しが行われていないときであっても、所有権移転登記がなされていれば、Aはその贈与契約を取り消すことができない。
4 負担付贈与においてBがその負担である義務の履行を怠るときは、Aは契約の解除をすることができる。
5 Bに対する定期の給付を目的とする贈与であらかじめ期間の定めがあるものは、Aが死亡しても、その期間内は効力を失うことはない。
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上級ファンダメンタル講座 プレ講義