土工工事において、受注者が自己都合でバックホウ(0.35m3 級)で施工すると施工計画書に明示したが、発注者は、積算ではバックホウ(0.6m3 級)を設計計上しているので、現場での施工は、バックホウ(0.6m3 級)で施工するように指示をした。
xx市建設工事請負契約における設計変更ガイドライン
【 土 木 】
平成30年12月
中津市総務部契約検査課
目 次
1.設計変更ガイドライン制定の背景 ・・・1
(1)土木工事の特性
(2)適切な設計変更の必要性
(3)ガイドライン制定の目的
2.設計変更手続きフロー ・・・2
3.設計図書の照査 ・・・3
(1)設計照査の照査範囲
(2)照査結果に伴い必要となった資料作成
4.設計変更 ・・・5
(1)設計変更に必要な資料作成
(2)設計変更が可能なケース
(3)設計変更が不可能なケース
(4)設計図書の訂正・変更
(5)設計変更の責任者
5.工期・請負代金額の変更 ・・・13
6.指定・任意の使い分け ・・・14
添付資料 ・・・17
(1)設計図書の変更事例
1.設計変更ガイドライン制定の背景
(1)土木工事の特性
土木工事では、個別に設計された極めて多岐にわたる目的物を、多種多様な現地の自然条件、環境条件の下で生産される特殊性を有している。
1. 多種多様な現場の自然条件下で生産されるという特性から、設計図書に示された施工条件が実際とは一致しない場合がある。
2. 設計図書で想定していなかった条件が発生する場合がある。
3. 設計図書に誤謬(ゴビュウ)、脱漏(ダツロウ)、不明確な表示の場合がある。
(2)適切な設計変更の必要性
1. 平成26年6月に「公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律」が公布、同日施行され、工事内容の変更等が必要となる場合には、適切に設計図書の変更を行い、請負代金額及び工期に変動が生じる場合には、適切な変更が求められている。
(3)ガイドライン制定の目的
1. 契約関係の適正化、責任の所在の明確化。
2. 設計図書の変更手続きの円滑化。
3. 契約関係の適正化により、必要とする工事目的物の品質の確保。
-1-
2.設計変更手続きフロー
中津市公共工事請負契約約款 第18条第1項
(1) 図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないこと(これらの優先順位が定められている場合を除く。)。
(2) 設計図書に誤謬又は脱漏があること。
(3) 設計図書の表示が明確でないこと。
(4) 工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと。
(5) 設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じたこと。
発注者
受注者
約款第18条第1項に該当する事実を自ら発見
設計図書の照査 約款第18条第1項
大分県土木工事共通仕様書1-1-3第2項
設
計図
約款第18条第1項に該当する事実を発見 書
の照査
該当する事実(質問事項)が確認できる資料
を書面で提出 (約款第18条第1項)
調査結果のとりまとめ
発注者:調査の実施
受注者:立会い (約款第18条第2項)
約款
(約款第18条第3項) 意見 第
調査結果の通知:調査、協議終了後14日以内
(約款第18条第3項) 1受理 8
条に
必要があると認められるときは
設計図書の訂正又は変更
設計図書の訂正
(約款第18条第4項第1号)
(約款第18条第4項)
設計図書の変更
(約款第18条第4項第2号)
訂正・変更が認められないとき よる設
計
工事続行 変
更手続き
必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額の変更
(約款第18条第5項)
変更図面・追加特記仕様書・数量総括xxの変更設計書図書の作成
協議①工期の変更
②請負代金額の変更
※1 (約款第23条、第24条)
指示・協議内容・現地条件と 契
適合しているか確認 約
変
※1 更
手
訂正・変更指示の了解 続
き
設計変更に係る契約の変更内容が軽微な場合は、当該契約の履行期限前に一括して変更契約の締結を行うことができるため、訂正・変更の指示を行う。
契約締結(協議の成立) 工事着手
※xx「約款」:xx市公共工事請負契約約款
-2-
3.設計図書の照査
受注者は、「大分県土木工事共通仕様書(以下、「共通仕様書」という。)1-1-3 設計図書の照査等」により施工前及び施工途中において、自らの負担により設計図書の照査を行わなければならない。(設計図書照査の実施は受注者の責務。)
(1)設計図書の照査範囲
受注者は、xx市公共工事請負契約約款(以下、「契約約款」という。)、第 18 条第 1 項第 1 号から第 5 号に係る設計図書の照査を行わなければならない。
契約約款
第 18 条 受注者は、工事の施工に当たり、次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは、その旨を直ちに監督員に通知し、その確認を請求しなければならない。
(1) 図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問書が一致しないこと。(これらの優先順位が定められている場合を除く。)。
(2) 設計図書に誤謬又は脱漏があること。
(3) 設計図書の表示が明確でないこと。
(4) 工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと。
(5) 設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じたこと。
(2)照査結果に伴い必要となった資料作成
共通仕様書では、契約約款第 18 条第 1 項の照査について次のように規定しており、受注者自らの負担により設計図書の照査を行うべきこと、及び照査の結果、該当する事実があった場合に、その事実が確認できる資料の提出を義務付けている。
共通仕様書
1-1-3 設計図書の照査等
2.設計図書の照査
受注者は、施工前および施工途中において、自らの負担により約款第 18 条第1項第1号から 第5号に係る設計図書の照査を行い、監督員に書面により提出しなければならない。なお、該当する事実がある場合は、監督員にその事実が確認できる資料を書面により提出し、確認を求めなければならない。なお、確認できる資料とは、現地地形図、設計図との対比図、取合い図、施工図等を含むものとする。また、受注者は、監督員から更に詳細な説明または資料の追加の要求があった場合は従わなければならない。
(確認資料:受注者が作成する資料)
・現地地形図 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 実測縦断図・横断図等
・設計図との対比図 ・ ・ ・ ・ 当初設計図への現地盤線の作図等
・取合い図 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 当初設計図への既設構造物の追記等
・施工図 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 実施工程上問題となる施工資料等
これらの資料作成に必要な費用については契約変更の対象としない
4.設計変更
(1)設計変更に必要な資料作成
契約約款第 18 条第 1 項に基づき設計変更をするために、必要な資料の作成については、契約
約款第 18 条第 4 項に基づき発注者が行うものであるが、受注者が行う場合は、以下の手続きによるものとする。
【書面による手続き】
① 設計照査に基づき設計変更が必要な内容については、受発注者間で確認する。
② 設計変更するために必要な資料作成については書面により協議し、合意を図った後、発注者が具体的な指示を行うものとする。(「3.設計図書の照査」での範囲内)
③ 発注者は、書面による指示に基づき受注者が設計変更に係わり作成した資料を確認する。
契約約款【第 18 条第 4 項第 1 号から第 3 号】
① 第 1 項第 1 号から第 3 号までのいずれかに該当し、設計図書を訂正する必要があるもの発注者が行う。
② 第 1 項第 4 号又は第 5 号に該当し、設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴うもの発注者が行う。
③ 第 1 項第 4 号又は第 5 号に該当し、設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴わないもの
発注者と受注者とが協議して発注者が行う。
(2)設計変更が可能なケース
以下のような場合は、所定の手続き(書面による協議・指示)を踏むことにより設計変更が可能である。
【設計変更における基本事項】
① 契約約款第 18 条第 1 項に該当する場合
② 発注者が変更を必要と認める場合(契約約款第 19 条)
③ 工事を一時中止する必要がある場合(契約約款第 20 条)
【設計変更における留意事項】
・当初設計の考え方や設計条件を再確認して協議にあたる。
・当該工事での設計変更の必要性を明確にする。
・変更指示は速やかに行う。(手戻り工事を避ける)
・任意仮設において、当初積算時の条件と現地条件に齟齬(ソゴ)がある場合は、設計図書の訂正・変更ができる。
(2)-1.「①契約約款第 18 条第 1 項に該当する場合」に関する具体例
契約約款第 18 条第 1 項第 1 号~第 5 号に該当する例を以下に示す。
■契約約款第 18 条第 1 項第 1 号(図面・仕様書等が一致しない)
・設計書と図面で相互に材料の規格が一致しない。
■契約約款第 18 条第 1 項第 2 号(誤謬又は脱漏がある)
・条件明示する必要がある場合にも係わらず、土質や地下水位に関する一切の条件明示がない。
・条件明示する必要がある場合にも係わらず、交通誘導員について条件明示がない。
・設計図書に示されている工法では明示されている土質に対応していない。
■契約約款第 18 条第 1 項第 3 号(表示が明確ではない)
・土質柱状図は明示されているが、地下水位が不明確である。
・水替工実施の記載はあるが、作業時または常時排水などの運転条件等の明示がない。
・使用する材料の規格(種類、強度等)が明確に示されていない。
■契約約款第 18 条第 1 項第 4 号(施工条件と工事現場が一致しない)
・設計図書に明示された土質や地下水位、地下埋設物が現地条件と一致しない。
・設計図書に明示された地盤高と工事現場の地盤高が一致しない。
■契約約款第 18 条第 1 項第 5 号(予期せぬことのできない特別な状態)
・当初設計では想定し得なかった埋蔵文化財による調査が必要となった。
・当初設計では想定し得なかった工事範囲に一部に軟弱地盤があり、地盤改良が必要となった。
・その他。当初設計では想定し得なかった事象が発生した等。
(2)-2.「②発注者が変更を必要と認める場合」に関する具体例
契約約款第 19 条に基づき、発注者が施工前、施工途中に変更を必要と認める場合の具体例について、以下に示す。
・地元調整の結果、施工範囲、施工時間、施工期間を変更する場合。
・同時に施工する必要がある工種が判明し、その工種を追加する場合。
・警察・河川・鉄道等の管理者、電力・ガス等の事業者、消防署等との協議により、施工内容の変更、工事の追加をする場合。
・発注者が使用材料を変更する場合。
・関連する工事の影響により施工条件が変わったため、施工内容を変更する場合。
発注者が変更を必要と認める場合のフロー図
【受注者】 【発注者】
設計図書の変更が必要と判断
【契約約款第 19 条】
照査内容の確認(内容の通知)
設計図書を変更
【契約約款第 18 条第 4 項】
工期・請負代金額の変更
【契約約款第 18 条第 5 項】
【契約約款第 23 条】
工事着工
【契約約款第 24 条】
(2)-3「③工事を一時中止する必要がある場合」に関する具体例
契約約款第 20 条に基づき、受注者の責に帰することができないものにより、工事を一時中止する必要がある場合の具体例について、以下に示す。
・設計図書に工事着工時期が定められていた場合、その期日までに受注者の責によらず着工できない場合。
・警察、河川、鉄道管理者等の管理者間協議が未了の場合。
・管理者間協議の結果、施工できない期間が設定された場合。
・受注者の責によらない何らかのトラブル(地元調整等)が生じた場合。
・予見できない事態(地中障害物の発見等)が発生した場合。
・工事用地等の確保が行われていない場合。
・埋蔵文化財の発掘又は調査の事由により工事を施工できない場合。
(3)設計変更が不可能なケース
施工途中において、以下のような場合は、原則として設計変更ができない。但し、契約約款第 26 条(臨機の措置)による場合は、この限りではない。
【設計変更対象外における基本事項】
①設計図書に条件明示のない事項において、発注者と「協議」を行わず受注者が独自 に判断して施工を実施した場合。
→受注者は、契約約款第 18 条第 1 項に該当する事実を発見したときは、その事実が確認できる資料を書面により提出し監督員に確認を求める必要がある。
②発注者と「協議」をしているが、協議の回答(指示)がない時点で施工を実施した場合。
→発注者は、契約約款第 18 条第 3 項により調査の終了後 14 日以内に協議の回答をしなければならない。しかし、協議内容によっては、各種検討や関係機関との調整が必要となる場合もあり、受注者の意見を聴いたうえで回答期限を延長する場合もある。よって、受注者は、その事実が判明次第、できるだけ早い段階で協議を行うことが必要である。
③契約約款、共通仕様書に定められている所定の手続きを経ていない場合。
「契約約款第 18 条~第 24 条、共通仕様書 第1編 共通編 1-1-13~1-1-
15
→発注者及び受注者は書面による協議のうえ、設計図書の変更、工期の変更、請負代金の変更など、所定の手続きを行う必要がある。
④正式な書面によらない事項(口頭のみの指示・協議等)の場合。
→発注者及び受注者は書面(指示・承諾・協議書)を取り交わさなければならない。
⑤受注者の任意の都合による提案を発注者が「承諾」して施工した場合。
→承諾とは受注者が自らの都合により、施工方法等について監督員の同意を得るのもである。設計図書と工事現場の不一致、条件明示のない事項等の場合は、契約約款第18 条による協議をすることが必要であり、安易な承諾による施工は避ける必要がある。
⑥当初の設計図書に従って施工しても支障がない場合。
⑦任意仮設において、施工方法を変更する場合。
(ただし、現場条件に齟齬がある場合は除く。)
→工事目的物を完成するための一切の手段は受注者の責任で処理しなければならず、元々任意としている工法の変更は設計変更の対象とはならない。
(4)設計図書の訂正・変更
契約約款【第 18 条第 4 項第 1 号から第 3 号】
① 第 1 項第 1 号から第 3 号までのいずれかに該当し、設計図書を訂正する必要があるもの発注者が行う。
② 第 1 項第 4 号又は第 5 号に該当し、設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴うもの発注者が行う。
③ 第 1 項第 4 号又は第 5 号に該当し、設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴わないもの
発注者と受注者とが協議して発注者が行う。
契約約款第 18 条第 1 項に該当する場合は、契約約款第 18 条第 4 項に基づき、設計図書の訂正か変更かを確定する。
設計図書の訂正・変更フロー図
発注者の作業両者の作業
契約約款第 18 条第 1 項に該当する
該当する内容の契約約款第 18 条第 1 項の該当号は?
【第 1 号~第 3 号】
【第 4 号~第 5 号】
訂
正
変
更
工事目的物の変更を伴うか
【YES】 【NO】
「設計変更の責任者」による設計変更
受発注者で協議
変更の通知
(調査終了後原則 14 日以内)
訂正の通知
(調査終了後原則 14 日以内)
発注者:結果のとりまとめ 受注者:意見
発注者:調査の実施 受注者:立会
【契約約款第 18 条第 2 項】
【契約約款第 18 条第 3 項】
【契約約款第 18 条第 3 項】
【契約約款第 18 条第 4 項】
(5)設計変更の責任者
設計図書の訂正・変更は、契約約款第 18 条第 4 項のとおり発注者が行わなければならない。また、発注者は、受注者から提出される確認資料の活用、必要に応じてコンサルタント等への発注を行い設計図書の訂正・変更を行う。但し、設計成果物の瑕疵による設計図書の訂正・変更が生じた場合は、発注者とコンサルタント等において当該契約の契約内容に基づき別途調整を行うものとする。
① 条件変更に伴う場合
② 新たに構造計算が必要になった場合
(5)-1「① 条件変更に伴う場合」に関する作業内容
契約約款第18 条第1 項に該当する変更の場合、受注者から提出される確認資料を活用して、発注者が作成することが基本である。
受注者から提出される確認資料とは、現地地形図、設計書との対比図、取り合い図、施工図(変更設計図ではない)である。
■条件変更に伴う場合
発注者の作業内容 | 受注者の作業内容 | |
変更設計図 | ・受注者が作成する確認資料をも とに作成する。 | ・確認資料を作成す る。 |
変更数量計算書 | ・受注者が作成する確認資料をもとに作成する。 | ・確認資料を作成する。 |
変更特記仕様書等 | ・受注者が作成する確認資料をも とに作成する。 | ・確認資料を作成す る。 |
(5)-2「② 新たな構造計算が必要になった場合」に関する作業内容
新たに構造計算、線形等の設計が必要になった場合、発注者は必要に応じてコンサルタント等へ業務を発注する。また、受注者は必要に応じて土質資料等の試験結果を提出するものとする。
■新たな構造計算が必要になった場合
発注者の作業内容 | 受注者の作業内容 | |
変更設計図 | ・必要に応じて、コンサルタント等へ業務を発注する。(新たに構造計算、線形等の設計が必要な場 合) | ・土質試験等の試験結果を提出する。 |
変更数量計算書 | ・必要に応じて、コンサルタント等へ業務を発注する。(新たに構造計算、線形等の設計が必要な場 合) | ・土質試験等の試験結果を提出する。 |
変更特記仕様書等 | ・受注者から提出された確認資料をもとに作成す る。 | ・確認資料を作成する。 |
5.工期・請負代金額の変更
設計図書の訂正または変更が行われた場合、契約約款第 23 条、第 24 条に基づき、工期・請負代金額の変更、または損害を及ぼしたときの必要な費用の負担は、発注者と受注者とが協議して定める。
(1)工期変更
工期変更の対象であると確認された場合、共通仕様書1-1-15より受注者は、必要とする変更日数の算出根拠、変更工程表その他必要な資料を添付した工期変更の協議書を発注者へ提出し、協議を行い工期の変更期間を定める。
(2)請負代金額の変更
発注者は、請負代金額の変更に加えて必要な費用を負担しなければならない。必要な費用とは、設計図書の訂正・変更によって生じた、
①手戻り費用、または改造費
②不要となった材料の売却費
③不要となった建設機械器具の損料及び回送費
④不要となった仮設物に係る損失
などの発注者の過失による損害賠償や、予期できない施工条件の変更に伴い発生する受注者の費用の填補である。(契約約款第 18 条第 5 項)
なお、発注者が負担する費用の額は発注者と受注者とが協議して定める。
6.指定・任意の使い分け
指定・任意については、契約約款第 1 条第 3 項に定められているとおり、適切に扱う必要がある。
基本事項
①任意については、仮設・施工方法の一切の手段は受注者の責任で行う。
②任意については、仮設・施工方法に変更があっても原則として設計変更の対象としない。
③ただし、指定・任意ともに設計図書に示された施工条件と現場条件が一致しない場合は変更を行う。
契約約款【第 1 条第 3 項】
仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段(以下「施工方法等」という。)については、この契約書及び設計図書に特別な定めがある場合を除き、受注者がその責任において定める。
(1)指定と任意の考え方について
指定と任意の設計図書、書面による協議方法及び設計変更の対象の可否について、以下に示す。
x x | 任 意 | |
設計図書 | 施工方法等について具体的に指定する(契約条件として 位置づけ) | 施工方法等について具体的に指定しない(参考図と して標記する場合あり) |
施工方法等の変更 | 書面による発注者の指示または承諾が必要 | 受注者の任意 (施工計画書等の修正、提出は必要) |
施工方法等の変更が ある場合の設計変更 | 対象とする | 対象としない |
条件明示の変更に対 応した設計変更 | 対象とする | 対象とする |
(2)発注積算と監督業務に係る留意点
標準歩掛は、標準的な施工を想定した予定価格を算出するためのツールであり、実際のx x方法や機械を規定するものではない。
標準歩掛は、以下の条件をもって設定されている。
①各種施工条件が同一の範囲と考えられる現場
②標準的な施工がおこなわれた場合の所要量
③調査データの平均値
よって、以下のことは十分起こりえることである。
①労務等が標準歩掛に比べて差があること。
②使用機械の機種・規格が異なったりすること。
土工工事において、受注者が自己都合でバックホウ(0.35m3 級)で施工すると施工計画書に明示したが、発注者は、積算ではバックホウ(0.6m3 級)を設計計上しているので、現場での施工は、バックホウ(0.6m3 級)で施工するように指示をした。
(3)発注者の指示が不適切な事例具体的事例①
機械の規格選定に関し不適切である
具体的事例②
下水道工事における小口径深礎工の掘削において、設計図書には何も条件明記はなかったので、受注者が油圧式クラムシェルと人力併用によって計画した。
発注者が、積算では掘削は人力、排土はトラッククレーンとなっているので積算のとおり施工するように指示した。
機械の機種選定に関し不適切である
添 x x 料
(1)設計図書の変更事例
事例1.契約約款第 18 条 1 項に該当する事例
(第 1 号)図面の表示に不一致があった事例
■内容
ある工事において、図面と数量総括表を照査したところ、図面には、防護柵 H=1.10mが明記されているが、数量総括表に計上されていなかった。
■受注者の対応
受注者は、この内容が工事着工前の設計図書の照査の段階で判明したため、照査の内容が確認できる資料として図面、数量総括表を示し確認を要請した。また、以下の内容を質問した。
①.本工事で防護柵を設置する必要があるか。
②.必要なら数量総括表に計上が必要である。
③.後施工なら柵設置用の箱抜きが必要ではないか。
■設計変更等の内容
発注者は、本工事で防護柵を設置する考えであったが、数量総括表に計上漏れをしていた。発注者は、受注者との協議に基づき、数量総括表の設計変更を行った。
図面に明示された防護柵
(第3号)材料仕様が不明確だった事例
■内容
ある工事において、特記仕様書に鉄筋D25以外はSD295A となっているが、D29のSD295Aはメーカーが生産中止しており、入手が困難となっていることから材料の表示が明確でなかった。
■受注者の対応
受注者は、確認できる資料として、鉄筋メーカーへの生産状況の問い合わせ結果を示し、SD345への変更を提案した。
■設計変更等の内容
発注者は、現在の土木構造物で使用される鉄筋がSD295AからSD345に移行していること、S D295Aが生産中止された事実を把握し、協議に基づきSD295AからSD345とする特記仕様書及び図面、数量総括表の変更を行った。
特記仕様書
鉄筋の種類 | 摘要工種 |
SD345 | 上屋差筋(D25) |
SD295A | 上記以外の鉄筋 |
本工事に使用する鉄筋は、全て異形鋼とし、摘要工種は下記のとおりとする。
鉄筋SD295Aの作成状況について
製造業者 鉄筋径 | ○○製鉄 | ㈱△△△ | □□製鉄 | ××製鉄 |
D13 | ○ | ○ | ○ | ○ |
D16 | ○ | ○ | ○ | ○ |
D19 | ○ | ○ | ○ | ○ |
D22 | ○ | ○ | ○ | ○ |
D25 | × | × | × | × |
D29 | × | × | × | × |
D32 | × | × | × | × |
○:製造中 ×:休止
(第4号)設計図書と現場状況に不一致があった事例
■内容
ある工事において、設計図書で既設道路を工事用道路として使用すると示されていたが、現場では幅員が狭く蛇行し、両端に構造物もありトレーラー(車幅 3.3m)が通行できず、設計図書と現場が一致しない。
■受注者の対応
受注者は、資料として既設道路の写真を示し、また工事用道路比較検討書として、設計図書に示された既設道路を改良した場合と、新たな工事用道路を新設した場合の資料を提出した。
■設計変更等の内容
発注者は、受注者立会のもと、直ちに調査を行い、協議に基づき、道路両端に構造物がない既設道路に新たな工事用道路を施工する設計変更を行った。
現場写真
比較検討による新設工事用道路の計画
(第5号)予期できない条件が生じた事例
■内容
ある工事において、直接基礎で設計されていたボックスカルバートで、布設のため掘削していたところ、ボックスカルバート中央付近に設計図書で明記されていない軟弱地盤が発見された。
■受注者の対応
受注者は、支持地盤が示されているボックスカルバート一般図と掘削の結果、一致しないことを報告した。また、発注者の指示により、基礎工の検討のための地質調査を行った。
■設計変更等の内容
発注者は、受注者立会のうえ調査を行ったところ、当初設計ではカルバート工指針で示すとおりボックスカルバートの両端で地質調査を行って基礎形式を決定していたが、中央部が軟弱地盤であることは予期できなかった。発注者は、基礎形式の検討を行い、変更設計図書を作成し、協議に基づき設計図書の変更を行った。
事例2.発注者が変更を必要と認める事例共同埋設工の追加工事の事例
■内容
ある新設道路工事において、地下埋設物占用者との協議により、地下埋設物の移設が必要となったため、発注者が移設のための掘削、埋戻(配管は別工事)を本工事に追加し、設計図書の変更が必要と認めた。
■設計変更等の内容
発注者は、受注者との協議に基づき変更内容を通知し、設計変更を行った
事例3.工事を一時中止する必要がある事例予見できない事態で工事を中止した事例
■内容
ある橋梁工事において、支持層が設計で想定していたより浅かったため、橋台の基礎杭が施工途中で高止まりした。発注者は再度構造計算を行い、その構造の安全が確認できるまで工事を一時中止した。
■発注者の対応
発注者は、受注者立会のうえ調査を行った結果、支持層の位置が設計での想定より浅く杭が高止まりしたため、現在の現場条件で杭の応力計算、安定計算を再度行い、その構造の安全を確認する必要があると判断した。発注者は、その構造の安全が確認された変更設計図書が作成されるまで工事を一時中止することとした。
■設計変更等の内容
発注者は、協議に基づき橋台基礎の土質変更に伴う設計変更を行うとともに、工事の一時中止を行った。
事例4.設計図書の変更が不可能な事例任意仮設における設計変更の事例
■内容
ある護岸工事の仮締切盛土において、上流側の仮締切盛土がxxにより崩れ始めた。受注者は大型土のうにより仮締切盛土の補強を行うため、発注者に対し設計図書の変更を求めた。
■発注者の対応
受注者は、確認できる資料として、現場写真、仮設計画平面図、標準断面図を示した。しかし、特記仕様書には仮締切盛土は任意工法と明記されており、工事目的物を完成するために必要な一切の手段については受注者の責任において処理することとなっている。したがって、発注者は本工事において設計図書の変更は不可能であることを通知した。