Contract
報 告 書
(xxx消費者被害救済委員会)
平成28年2月
xxx生活文化局
xxxは、6つの消費者の権利のひとつとして、「消費生活において、事業者によって不当に受けた被害から、xxかつ速やかに救済される権利」をxxx消費生活条例に掲げています。
この権利の実現をめざして、xxxは、都民の消費生活に著しく影響を及ぼ し、又は及ぼすおそれのある紛争について、xxかつ速やかな解決を図るため、あっせん、調停等を行う知事の附属機関としてxxx消費者被害救済委員会
(以下「委員会」という。)を設置しています。
消費者から、xxx消費生活総合センター等の相談機関に、事業者の事業活動によって消費生活上の被害を受けた旨の申出があり、その内容から必要と判断されたときは、知事は、消費生活相談として処理するのとは別に、委員会に解決のための処理を付託します。
委員会は、付託を受けた案件について、あっせんや調停等により紛争の具体的な解決を図り、個別の消費者の被害を救済するとともに、解決にあたっての考え方や判断を示します。
この紛争を解決するにあたっての委員会の考え方や判断、処理内容等は、xxx消費生活条例に基づき、広く都民の方々や関係者にお知らせし、同種あるいは類似の紛争の解決や未然防止にご活用いただいております。
本書は、平成27年8月11日に知事が委員会へ紛争処理を付託した「個別クレジットを利用した痩身エステの次々契約に係る紛争」について、平成28年2月 10日に委員会から、審議の経過と結果について知事へ報告されたものを、関係機関の参考に供するために発行したものです。
消費者被害の救済と被害の未然防止のために、広くご活用いただければ幸いです。
平成28年2月
xxx生活文化局
第1 紛争案件の当事者 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1
第2 紛争案件の概要 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1
第3 当事者の主張
1 申立人の主張 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2
2 相手方の主張 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2
第4 委員会の処理と結果 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4
第5 報告にあたってのコメント
1 あっせん案の考え方について ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4
2 同種・類似被害の再発防止に向けて ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 18
■資 料
1 申立人(消費者)からの事情聴取 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 22
2 相手方(事業者)からの事情聴取 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 24
3 合意書 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 30
4 「個別クレジットを利用した痩身エステの次々契約に係る紛争」処理経過‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 32
5 xxx消費者被害救済委員会委員名簿 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 33
申立人(消費者) 1名 60 歳代女性 (年収約 70 万円)相手方(事業者) 3社 相手方甲:エステティック事業者
相手方乙:クレジット事業者相手方丙:クレジット事業者
第2 紛争案件の概要
申立人の主張による紛争案件の概要は、次のとおりである。
スーパーマーケットで、「痩身エステのモニター募集」、「施術回数5回、1万 5,750円」と書かれた相手方甲のチラシを受け取った申立人は、挑戦してみようと思い、平成 26 年4月に相手方甲のエステティックサロンに出向き、痩身エステのモニターコース(施術回数5回)に申し込んだ。
モニターコースではあまり効果が出なかったが、4回目の施術後、店長から「このまま続ければ必ず痩せられる。」と引き続き施術を受けるよう勧誘された。モニター分の施術がまだ1回分残っていたが、20 回分の施術(役務提供期間3か月)及び関連商品の購入がセットになったコースを勧められ、合計約 42 万円の契約を結んだ。支払には個別クレジットを勧められ、24 回払の個別クレジット契約(支払総額約 47 万円)に申し込み、契約書に自分の年収などを記入した。
施術を受けるためにエステティックサロンへ出向くと、前のコースの施術が残っているにもかかわらず、通うたびに次の施術や健康食品などの関連商品の購入を勧められた。申立人は「今受けているコースが終了してから契約するか考えたい。」と訴えたが、聞き入れてもらえなかった。また、申立人が「これ以上支払えない。」と断っているのにもかかわらず、6月にはコンテストに推薦されるなどした。
申立人は「これ以上は無理です。」、「支払が厳しい。クレジットの支払が全て終わってから、新しい契約を考えたい。」と言って何度も断ったが、店長らから「ここで止めたらリバウンドする。今までやってきたことが全て無駄になる。」と勧誘され続け、12月までの8か月間に合計7契約、支払総額約 225 万円の契約を結んだ。しかし、6月頃には既に支払が苦しくなっており、翌年にはクレジット事業者への支払が遅れ、督促されるようになってしまった。
断っても、断っても勧誘され続け、断りきれずに結んだ契約であり、また、年収の約3倍もの契約を結んでしまったことから、過量な契約なので解約したいと相手方甲に訴えた。しかし相手方甲は申立人が施術を全て受けてしまったことを理由に、解約や返金には応じられないと主張し、紛争となった。
第3 当事者の主張
事情聴取時における当事者の主張は、次のとおりである。
1 申立人の主張
(1) 施術が終わって疲れている時に勧誘され、契約を渋ると、「ここまで頑張ったのに、ここで止めたらリバウンドする。」と言われた。「あなただったら痩せられる。」、「いついつまでに、ここまで体重を落として。」などと言われ続け、痩せなくてはならないというプレッシャーを感じ、契約し続けた。
(2) 「クレジットの支払が全て終わってから新たな契約を考えたい。」と何度も相手方甲に伝えたが、「支払が終わるのを待つと、その間にリバウンドする。」と言われ、「まだこれぐらいの枠だったら、クレジットを組める。」と言われた。
(3) 私の年収は 70 万円ぐらいで、月収は 6 万円弱。平成 26 年8月には毎月の支払が約5万円になり、相手方甲に「もう払えない。」と伝えた。しかし、相手方甲は「まだクレジットを組めるから大丈夫。」と言って勧誘を続けた。
(4) これまでクレジットを利用した時は、当然に支払が終わってから次の契約をしてきた。それなのに今回に限ってどうしてこんなに次々と契約をしたのか自分でも理解できない。
(5) 断っているのにもかかわらず、痩せたいという気持ちにつけ込まれて次々と契約をしてしまった。できれば全ての契約を解約したいが、それが無理だとしても支払額を減らしたい。
(詳細は資料1のとおり)
2 相手方の主張一 相手xx
(1) 消費者契約法第4条及び特定商取引法第 44 条ほか、関連法規に反する違法な勧誘行為は一切なかったと考えている。
(2) 中途解約やクーリング・オフを妨げる行為は一切していない。
(3) エステティック事業者が顧客の支払能力を知る術はない。
(4) 全ての施術を受けた後に申立人がこのような主張をすることは、全く理解し難い。
(5) 単に支払能力を超えた契約だったということのみで当社に何らかの金銭的負担を求めるのであれば、およそ受け入れ難いものである。そのような場合は、申立人に対し、債務不存在確認訴訟を提起するなどして、最終的な決着を司法判断に委ねることもありうる。
(6) たとえ委員会のあっせんに応じたとしても、それは経営上の判断であって、申立人が主張する勧誘行為の問題を認めたという訳ではない。
二 相手xx
(1) 基本的にエステティック契約があった上でのクレジット契約であり、相手方甲を抜きにして当社単独で判断することはできかねる。
(2) 施術等の効果を申立人がどのように判断しているのか、申立人の要望がどのようなものなのかは、クレジット事業者には分からない。申立人が何らかの負担を感じたり、何らかの威圧的なイメージを持っていたのであれば、申立人自身が契約の取消しや否認をすることはできたのではないか。
(3) 本件を解決するに当たり、単独でクレジット債務だけを減額することはでき
ない。相手方甲と申立人との契約代金が減額されれば、それを前提にクレジット債務を清算することになるだろう。
三 相手xx
(1) 第3契約において、申立人への与信は限度であって、この契約で一旦終了すると判断し、相手方甲に伝えた。
(2) 第7契約は一旦断ったが、申立人が頭金を追加で支払ったので、当初 20 万円 だった申込金額が 15 万円まで減額された。その他収入や預貯金額の申請も受け、申立人がそこまでして契約したいのであればと思い、最終的に与信を通した。
(3) 本件が付託されたことに驚いているが、委員会から示されたあっせん案には当社としてしっかりと応えていきたいと考えている。円満な解決に向けて、取り組んでいくつもりだ。
(詳細は資料2のとおり)
契約日及び契約内容 | クレジット事業者 | 支払回数 | 現金価格 | 支払総額 | |
第1契約 | 平成 26 年4月 24 日痩身エステコース ・施術回数 20 回 ・関連商品 | 相手方乙 | 24 回 | 42 万 4,872 円 | 46 万 7,112 円 |
第2契約 | 平成 26 年5月 22 日 痩身エステオプション ・施術回数 20 回 ・関連商品 | 相手方丙 | 24 回 | 25 万 9,200 円 | 29 万 2,200 円 |
第3契約 | 平成 26 年6月 28 日痩身エステコース ・施術回数 25 回 ・関連商品 | 相手方丙 | 24 回 | 52 万 560 円 | 58 万 5,240 円 |
第4契約 | 平成 26 年7月 28 日 健康食品 12 箱 | 相手方乙 | 36 回 | 21 万 3,840 円 | 25 万 3,440 円 |
第5契約 | 平成 26 年8月 21 日痩身エステコース ・施術回数 12 回 ・関連商品 | 相手方乙 | 36 回 | 27 万 7,668 円 | 32 万 9,148 円 |
第6契約 | 平成 26 年9月 30 日 痩身エステオプション ・施術回数 12 回 | 相手方乙※ | 1 回 | 10 万 1,520 円 | 10 万 1,520 円 |
《契約内容及び金額》
契約日及び契約内容 | クレジット事業者 | 支払回数 | 現金価格 | 支払総額 | |
第7契約 | 平成 26 年 12 月 22 日痩身エステコース ・施術回数 8回 ・関連商品 | 相手方丙 | 30 回 | 19 万 9,692 円 | 22 万 4,442 円 |
金 額 合 計 | 199 万 7,352 円 | 225 万 3,102 円 |
※第6契約は、相手方乙が発行するクレジットカードによる翌月一括払
第4 委員会の処理と結果
本件は、平成 27 年8月 11 日、xxx知事からxxx消費者被害救済委員会に付託され、同日、同委員会会長より、その処理が、あっせん・調停第二部会(以下「部会」という。)に委ねられた。
部会は、平成 27 年8月 18 日から同年 12 月16 日までの6回に渡って開催された。(処理経過は資料4のとおり)
紛争は、あっせんの成立により解決した。(合意書の内容は資料3のとおり)
第5 報告にあたってのコメント
1 あっせん案の考え方について
(1) 本件契約における法的問題点ア 特定商取引法
(ア) 特定商取引法における特定継続的役務提供契約該当性
特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)第 41 条第2項によると、特定継続的役務提供契約とは、国民の日常生活に係る取引において有償で継続的に提供される役務であって、(ⅰ)役務の提供を受ける者の身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもって誘引が行われ、(ⅱ)役務の性質上、その目的が実現するかどうかが確実ではない契約を指し、適用対象となる具体的な取引類型は施行令で指定される。これを受けて特定商取引法施行令(以下「施行令」という。)第 12 条では、いわゆるエステティックサロンや語学学校などの6業種が指定され、各指定役務ごとに指定期間と指定金額が定められている(施行令第 11 条、別表第4)。このうち、エステティック契約について
は、指定期間が 1 か月超、指定金額が5万円超と定められており、本件の第
1~第3契約、第5~第7契約 1はいずれも指定期間と指定金額の要件を具備している。それ故、「法形式上」、本件は6件のエステティック契約(第1~第3契約、第5~第7契約)と6件の関連商品販売契約(第4契約のみ単独で、それ以外の関連商品販売契約は第1契約、第2契約、第3契約、第5契約、第7契約のエステティック契約と同時に)が締結されており、各契約に
1 本報告書3~4頁参照 以下同じ。
ついて特定商取引法における特定継続的役務提供契約の規定(第 41 条以下)が適用される。
(イ) 特定継続的役務提供契約におけるクーリング・オフ
事業者は特定継続的役務提供契約を締結したときに遅滞なく必要事項が記載された契約書面(法定書面)を消費者に交付しなければならない(特定商取引法第 42 条第2項)。記載事項は特定商取引法第 42 条第2項及び特定商取
引法施行規則(以下「施行規則」という。)第 33 条に定められており、通達
また、法定された記載事項は原則として一通の文書に必要事項が正確に洩れなく記載されていることを要する 3。契約書面の交付が事業者に義務付けられているのは、契約内容が正確に記載されている法定書面を冷静な状態で熟読した上でクーリング・オフすべきか否かを考える機会を消費者に与えるためであるが、複数の文書に必要事項が分散して記載されていると、必要事項がどこに記載されているのか分からなくなる事態が生じ、消費者に対して十分な情報提供がなされたとはいえないからである。
法令で定められた必要事項が記載された法定書面が消費者に対して適時に交付されてはじめて8日間のクーリング・オフ期間が進行を開始する(特定商取引法第 48 条第1項)。法定書面が交付されなかった場合、あるいは、交付された法定書面の記載事項に不備があった場合には、クーリング・オフ期間は進行しないので、契約締結から8日以降であっても消費者はクーリング・オフを主張しうる(通達第4章関係9(1)(イ))。
クーリング・オフが行使されると、特定継続的役務提供契約と関連商品販売契約は解除され、消費者は一切の経済的負担を免れる。事業者は消費者に対して解除に伴う損害賠償や違約金の支払を請求できない(特定商取引法第 48 条第4項)。消費者に引渡済の商品の返還費用は事業者の負担となる(同条第5項)。また、事業者は消費者に対して提供済みの役務の対価の支払を請求できず(同条第6項)、消費者から支払われた金銭を消費者に返還しなけれ
2 xxxx=xxxx=xxxx 「条解消費者三法」(弘文堂、2015 年)816~822 頁参照
3 東京地判平成 16 年7月 29 日「判例時報1880 号」80 頁。「条解消費者三法」378 頁
4 xxx判平成6年8月 31 日「判例時報1530 号」64 頁参照。評釈、xxxx「消費者法判例百選」112 頁
ばならない(同条第7項)。
個別信用購入あっせん(以下「個別クレジット」という。)において役務提供事業者は、クレジット事業者から立替金を受領しているので、消費者がクレジット事業者に支払った既払金相当額について事業者に不当利得(民法第 703 条)があるといえることから、役務提供事業者は消費者に対して返還義務を負う。また、クーリング・オフにより、消費者は一切の経済的負担を免れるので、クレジット契約の解約手続も事業者が行うべきである。なお、クレジット事業者が徴収したクレジット手数料についてはクレジット事業者が不当利得返還義務を負うが、後述のように役務提供事業者の勧誘行為について不法行為の成立が認められる場合には、役務提供事業者はクレジット手数料相当額の損害について消費者に賠償する責任を負う。
(ウ) 本件契約の実態
本件では、エステティック事業者である相手方甲と申立人との間で「法形 式上」は6件のエステティック契約が締結され、それぞれに特定商取引法が 適用されることになるが、各契約における役務の内容をみると、同一当事者 間で締結された相互に独立した6件の個別契約と捉えるよりも、むしろ全体 として一つの継続的役務提供契約と解した方が実態に合致しているといえる。第1、第3、第5、第7契約はいずれも役務内容は同じ名称であり、そのう ち、第1、第3、第5契約は同じオプションコースが付加されている点でも 共通している。第2契約と第6契約はその他の契約とはコースの名称こそ違 うものの、役務内容が著しく相違するというわけではない。さらに、第2契 約は第1契約と、第3契約は第1、第2契約と、第5契約は第2、第3契約 と、第6契約は第2、第3、第5契約と、第7契約は第2、第6契約と、そ れぞれ契約期間が重複している。加えて、申立人の陳述によると、申立人は 相手方甲の従業員から「リバウンド」のおそれを強調され、一連の個別契約 を立て続けに締結しており、こうした事情を総合的に考慮すると、各個別契 約は単独では「痩身効果」を達成できないものであると考えられる。
前述のように、特定商取引法の適用を受ける特定継続的役務提供契約は、
(ⅰ)役務の提供を受ける者の身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもって誘引が行われ、(ⅱ)役務の性質上、その目的が実現するかどうかが確実ではない契約であることが要件とされており、一定の目的(効果)を達成できるかどうか保証はできないものの、最低限、一定の目的(効果)を達成しうる契約であることは必要であると思われる。
本件契約の目的は「痩身(リバウンドのない減量)」であると解されるが、本件における一連の個別契約が各々それ自体において痩身という目的を「達成しうる」ものとしてプログラムされていたといえるのか甚だ疑わしい。各契約単独では痩身効果の実現は「不可能」であり、同一あるいは類似の施術を内容とする複数の契約を繰り返し締結して施術を受けることによってはじめて痩身の実現が「可能」となる性質の役務提供であったと思われる。
以上の実態を鑑みると、本件における一連の個別契約群は「痩身」という
同一目的を達成するための「一つの継続的役務提供契約」と捉えることが可能といえる。
《各契約内容及び契約日・期間等》 ※上段始期、下段終期
契約内容 | 契約日 | 有効期限※ | 施術を受けた期間※ | 支払期間※ | |
第1契約 | 痩身エステコース ・施術回数 20 回 ・関連商品 | 平成 26 年 4月 24 日 | 契約日 平成 26 年7月 23 日 | 平成 26 年4月 26 日 平成 26 年8月 11 日 | 平成 26 年6月 平成 28 年5月 |
第2契約 | 痩身エステオプション ・施術回数 20 回 ・関連商品 | 5月 22 日 | 契約日 平成 27 年5月 21 日 | 平成 26 年5月 30 日 平成 26 年8月 12 日 | 平成 26 年7月 平成 28 年6月 |
第3契約 | 痩身エステコース ・施術回数 25 回 ・関連商品 | 6月 28 日 | 契約日 平成26 年10 月27 日 | 平成 26 年7月2日 平成26 年10 月11 日 | 平成 26 年8月 平成 28 年7月 |
第4契約 | 健康食品購入契約 | 7月 28 日 | 平成 26 年10 月 平成 29 年9月 | ||
第5契約 | 痩身エステコース ・施術回数 12 回 ・関連商品 | 8月 21 日 | 契約日 平成26 年10 月20 日 | 平成26 年10 月15 日 平成26 年12 月13 日 | 平成 26 年11 月 平成 29 年10 月 |
第6契約 | 痩身エステオプション ・施術回数 12 回 | 9月 30 日 | 契約日 平成 27 年9月 29 日 | 平成26 年10 月15 日 平成 27 年1月5日 | 翌月一括払 |
第7契約 | 痩身エステコース ・施術回数 8回 ・関連商品 | 12 月22 日 | 契約日 平成 27 年2月 21 日 | 平成26 年12 月26 日 平成 27 年2月 14 日 | 平成 27 年2月 平成 29 年8月 |
(健康食品購入契約)
翌月一括払い
第7契約
第6契約
第5契約
第4契約
第3契約
第2契約
第1契約
2月
1月
12月
11月
10月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
有効期限 支払期間
施術期間 契約日
(エ) 中途解約権
特定商取引法第 49 条は特定継続的役務提供契約について消費者に中途解約権を認めているが、前述のように本件における一連の個別契約群が実質において一個の長期にわたる継続的役務提供契約と捉えることができれば、第
2契約以降の個別契約の勧誘に対する消費者の拒絶行為は長期の継続的役務提供契約における中途解約権の行使と同視することが可能となる。そして、特定商取引法第 49 条第2項は中途解約がされた場合に、事業者が消費者から受領できる損害賠償額等に制限を設けており、役務提供開始前においては施行令第 16 条が定める「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」と
して定められた金額(エステティック契約の場合は2万円)(第 49 条第2項第2号)、役務提供開始後には「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」と「解除によって通常生ずる損害の額として」施行令第 15 条で定められ
た金額の合計がそれぞれ上限となる(第 49 条第2項第1号)5。
第1~第3契約、第5~第7契約は期間が3か月から長くて1年であり、しかも契約期間内に当該契約において履行されるべき施術が全て履行される前に新たに後続の契約が締結されるという状況が繰り返され、複数の契約の期間が重なることにより(特に第5契約は期間全体が第3契約の期間と重複している。)、申立人は自身が受けた施術がどの契約の何回目の施術なのかを正確に把握することができない状態で施術を継続的に受け続けている。その結果、中途解約が可能であるにもかかわらず、既に履行済みであると誤認した状態で施術を受け続け、気が付いたときには施術が実際に履行済みとなってしまい、中途解約の機会を失うということが繰り返されていたといえる。これにより、本件の各契約における中途解約の機会が申立人から実質的に剥奪されており、このような仕組みは中途解約権規定の脱法行為と捉えることができよう。
(オ) 不実告知取消権
特定商取引法第 44 条第1項では、役務提供事業者の禁止行為として、契約締結の勧誘に際しての不実告知が禁止されており、不実告知が禁止される事項として以下のものが列記されている。①役務の種類、内容又は効果、②関連商品の種類、性能、品質、③役務等の対価、④対価の支払時期、支払方法、⑤役務の提供時期、⑥申込の撤回や解除に関する事項、⑦消費者が契約の締結を必要とする事情に関する事項、⑧①~⑦以外の契約に関する事項で消費者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの。
前述のように、本件における一連の個別契約群の実態は痩身という一つの
5 「条解消費者三法」866~881 頁
6 「条解消費者三法」828~831 頁
目的を実現するための長期にわたる一個の継続的役務提供契約であると解されるが、申立人はそのような実態に気付くことなく個別契約を立て続けに締結しており、また、申立人の陳述によると、申立人が各個別契約を締結するに際して、相手方甲の従業員は次の契約を締結して施術を受けないとリバウンドする旨を告げて勧誘をしている。
しかし、このような勧誘方法は二つの点で不実告知に該当する可能性がある。まず第一に、各個別契約を締結して当該契約で履行される施術を受ければ痩身という目的を実現しうることを前提にしているが、実際には、その後も同種の契約を繰り返し締結して長期間にわたり施術を受け続けなければ痩身という目的は達成できないのであるから、この点で、「役務の効果」について不実告知があるといえる。第二に、以前の契約における施術の未履行分が残っており、同種の施術を内容とする次の契約を締結する必要がないにもかかわらず、次の契約を締結しなければ施術が受けられなくなりリバウンドの危険性が高まると告げていることから、この点は「契約締結を必要とする事情に関する事項」についての不実告知であるといえる。
(カ) 威迫行為の禁止
特定商取引法第 44 条第3項は、役務提供事業者が特定継続的役務提供契約を締結させるため、または契約の解除を妨げるために、消費者を威迫し困惑させてはならない旨を規定している。そして、通達第4章法第 44 条(禁止行為)関係(3)(イ)②によると、エステティックにおいて衣服を脱がされた状態で多数の者に囲まれて執拗に勧誘されることが、「威迫行為」の例として挙げられている。申立人の陳述によると、本件の第2契約以降、施術直後の申立人に対して執拗に勧誘が行われており、これらの行為は威迫行為に該当する可能性がある。不実告知とは異なり、特定商取引法上の威迫行為は顧客の取消権には直結しないものの、後述する「つけ込み型勧誘」を構成する行為といえる。
(キ) 指示対象行為
特定商取引法第 46 条第3号は「特定継続的役務提供に関する行為であって、特定継続的役務提供に係る取引のxx及び」消費者の「利益を害するおそれがあるものとして主務省令で定めるもの」について役務提供事業者に対して主務大臣が必要な措置をとるべきことを指示することができると定めており、これを受けた施行規則第 39 条では、顧客に迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘し、あるいは、迷惑を覚えさえるような仕方で解除を妨害すること
(第1号)、老人その他の者の判断力の不足に乗じて契約を締結させること
(第2号)、顧客の知識、経験および財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行うこと(第3号)、契約を締結させる際に契約に係る書面に年齢、職業その他の事項について顧客に虚偽の記載をさせること(第4号)などが指示対象行為とされている 7。このうち、第1号と第2号の迷惑行為は、
7 「条解消費者三法」838~840 頁
後述する「つけ込み型勧誘」を構成する行為といえる。また、第3号と第4号はいわゆる「適合性原則(顧客の知識、経験、取引目的、財産状態に不適合な取引への勧誘を禁止する法理)」と呼ばれる法理の具体化である 8。適合性原則違反の勧誘行為は後述のように損害賠償責任を発生させうる 9。
イ 消費者契約法・民法
(ア) 暴利行為・つけ込み型勧誘により締結された契約の公序良俗違反
民法第 96 条によると、強迫により締結された契約は取り消すことができる。また、消費者契約法第4条第3項によると、事業者が消費者の住居等において消費者契約締結についての勧誘を行った際に消費者が事業者に対して住居等から退去すべき旨の意思を表明したにもかかわらず、事業者が退去しなかった場合(不退去)、あるいは、事業者が消費者契約締結についての勧誘を行っている場所から消費者が退去する旨の意思を表明したにもかかわらず、事業者がその場所から消費者を退去させなかった場合(退去妨害)、消費者は契約を取り消すことができる。不退去と退去妨害は、いずれも消費者を困惑させて契約を締結させる不当勧誘行為であり、消費者契約法により取消しの対象となる。その一方で、顧客の無知、軽率、判断力の低下、心理的な圧迫状態、従属状態等、消費者が契約を締結するか否かについて合理的な判断ができない状態を利用して不必要な契約を締結させる「つけ込み型勧誘」の場合について、消費者に取消権を認めるxx規定は現行法上存在しない。
しかしながら、判例をみると、「つけ込み型勧誘」により対価的不均衡な契約が締結された事案において、いわゆる暴利行為論に基づき、民法第 90 条の公序良俗違反により契約を無効とするによって消費者保護が実現されている。大判昭和9年5月1日最高裁判所民事判例集 13 巻 875 頁 10は、他人の窮迫、軽率、無経験を利用して著しく過当な利益の獲得を目的とした契約は公序良俗違反により無効になるとしている。また、最近では、いわゆるデート商法により宝飾品を不当な高値で消費者に購入させた事案において、最判平成 23 年 10 月 25 日最高裁判所民事判例集 65 巻7号 3114 頁は、原審である名
古屋高判平成21 年2月19 日最高裁判所民事判例集65 巻7号3143 頁 11が「本件宝飾品の販売価格が市場価格に照らして不均衡であり、顧客の軽率、窮迫、無知等につけ込んで契約を締結させ、女性販売員との交際が実現するような錯覚を抱かせ、契約の存続を図るという著しく不xxな方法による取引であり、公序良俗違反により無効である。」と判示した内容をそのまま認めている。
さらに、平成 27 年8月に公表された消費者委員会消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ 12」20~21 頁において、判例で示された暴利行為論は
8 金融商品取引法第 40 条第1号参照
9 消費者法における適合性原則については、特集「適合性原則と消費者法」現代消費者法 28 号4頁以下の各論考参照
10 評釈、xxxx 「民法判例百選Ⅰ(第7版)」32 頁
11 評釈、xxxx 「消費者法判例百選」 84 頁
12 xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxxx/xxxxxxx/00/xxxxxxxxxxx/xxxxx/xxxxxxx0/xxx/000000_xxxxxxx.xxx
要件が厳格すぎるとして、「消費者の判断力や知識・経験の不足、心理的な圧迫状態、従属状態など、消費者が当該契約を締結するか否かについて合理的な判断を行うことができないような事情を利用して、不必要な契約を締結させた場合に、必ずしも対価的な均衡を著しく欠くとまではいえなくても当該契約の効力を否定する規定を設けるべき」ことが消費者契約法改正の検討課題として挙げられている 13。この考えは、同委員会が平成 27 年 12 月に公表した「報告書 14」5頁にも踏襲されている。つまり、「つけ込み型勧誘」については不退去や退去妨害と同様に顧客の困惑状態を利用してなされる不当勧誘として消費者に契約の取消権を与えるべきとの判断が消費者委員会消費者契約法専門調査会という公的な調査会において示されているのであり、専門調査会の提言の趣旨は、具体的な法改正以前においても、司法や行政の場における現行規定の解釈において反映されるべきであろう。
そこで考えられる法解釈としては、つけ込み型勧誘が不退去・退去妨害と類似の困惑型不当勧誘である点を考慮して消費者契約法第4条第3項を類推適用するという方法もありうるが、むしろ、勧誘態様の悪質性を重視すれば従来からの判例法理である暴利行為論との類似性に着目して、消費者の無知や窮状に付け込んで締結された不必要な契約を公序良俗違反により無効(民法第 90 条)とする方がよいと思われる。よって、つけ込み型勧誘により締結された不必要な契約は現行民法の解釈として公序良俗違反による無効になると解される。
(イ) 取消し・無効の効果
特定商取引法上又は消費者契約法上の取消権を行使した場合の効果については、特定商取引法及び消費者契約法には規定がないので、民法の規定が適用される。それによると、取消しによって契約は遡及的に消滅し(民法第 121 条)、契約が無効の場合と同様に、債権債務がはじめからなかったことになるので、債務履行として受領した給付物は法律上の原因がない不当利得となる(民法第 703 条以下)。各当事者は受領した給付物を相互に相手方に返還しなければならない。個別クレジットにおいて役務提供事業者はクレジット事業者から立替金を受領しているので、消費者がクレジット事業者に支払った既払金相当額について事業者に不当利得があるといえることから、事業者は消費者に対して返還義務を負う。なお、クレジット事業者が消費者から徴収したクレジット手数料については、クレジット事業者が不当利得返還義務を負うが、役務提供事業者の勧誘行為について不法行為の成立が認められる場合、役務提供事業者がクレジット手数料相当額の損害について賠償責任を負う。
消費者の返還義務の範囲については、民法第 703 条によると善意の受益者は「その利益の存する限度」(現存利益)で返還すれば足りるので、受益全てを返還する必要があるとは限らない。本件との関係では、申立人が拒絶の意
13 xxxx編 「消費者契約法改正への論点整理 」(信山社、2013 年)16~17 頁(xxxxx担当)も参照
14 xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxxx/xxxxxxxxxxxxx/0000/xxx/00000000_xxxxxxx_xxxxxxx0.xxx
向を示した後に提供された役務提供は「押しつけられた給付」といえるので、
また、契約が公序良俗違反により無効になると解する場合、すでになされた給付は民法第 708 条における不法原因給付となりうるので、本件において申立人が受けた施術の価値相当額は不法原因給付として返還の必要はないと解すべきである。
(ウ) 取消権の消滅時効の起算点、法定追認
特定商取引法第 49 条の2第2項で準用されている第9条の3第4項によると、「追認をすることができる時から」6月が経過すると取消権は時効により消滅する。時効の起算点は追認ができるときからであり、不実告知による取消しの場合には、事業者が告げたことが不実であることを消費者が認識した時点から時効期間が進行すると解される 16。本件において申立人はクレジット事業者に支払をしていたので、この行為が法定追認に該当するかが問題となるが、法定追認に該当する行為は「追認をすることができる時以後に」行われたことを要するので(民法第 125 条)、取消権における消滅時効の起算点と同じ考えにより、法定追認に当たらないと解すべきである 17。
(エ) 不当勧誘と取引的不法行為
前述のように、継続的役務提供契約のクーリング・オフあるいは取消しの効果としては消費者がクレジット事業者に支払った立替金相当額については不当利得として役務提供事業者が消費者に対して返還義務を負うが、クレジット手数料についてはクレジット事業者の利得であるため役務提供事業者には返還義務はない。しかしながら、不実告知、つけ込み型勧誘、適合性原則違反などの不当勧誘行為があり、これにより、正確かつ十分な情報に基づいて自由に判断できる状況においてなされるべき消費者の自己決定権が侵害され、不本意な契約が締結されたことにより財産的損害が生じているので、民法第 709 条の不法行為が成立すると解される 18。本件の相手方甲は不当勧誘を行って申立人に損害を生じさせたといえるので、仮に本件エステティック契約の不実告知取消しや公序良俗違反による無効が認められなかった場合であっても、相手方甲は申立人がクレジット事業者に支払った既払金相当額について損害賠償義務を負うと解される(後述する割賦販売法の適用により個別クレジット契約が取り消され、申立人がクレジット事業者に対して既払金返還請求権を取得する場合は、申立人はいずれかから既払金相当額
15 「条解消費者三法」59~63 頁、434~440 頁
16 「条解消費者三法」72~73 頁、441 頁
17 「条解消費者三法」72 頁
18 最判平成17 年7月14 日民集59 巻6号1323 頁は金融商品取引の事案において明白かつ重大な適合性原則違反行為について損害賠償責任が発生しうることを認めている。評釈、xxxx「金融商品取引判例百選」40 頁
ウ 割賦販売法
(ア) 顧客支払能力調査義務・過剰与信防止義務・適正与信義務
個別信用購入あっせん業者(以下「個別クレジット事業者」という。)は個別クレジット契約を締結する前に消費者の年収、預貯金、債務の支払状況、借入状況などを調査する義務を負うとともに(顧客支払能力調査義務)(割賦販売法第 35 条の3の3)、消費者が一年間で支払う債務額が一年間当たりの消費者の個別支払可能見込額を超える場合には、個別クレジット契約を締結してはならないとされている(過剰与信防止義務)(割賦販売法第 35 条の
3の4)19。
(イ) 抗弁の接続(抗弁の対抗)
個別クレジット事業者との間で個別クレジット契約を締結した消費者は供給契約において供給業者に対して主張しうる抗弁事由(供給契約のクーリング・オフ、無効、取消し、中途解約等)を個別クレジット事業者に対しても主張できる(割賦販売法第 35 条の3の 19)。この規定により供給契約がクーリング・オフ、取消し、中途解約等により消滅した場合、消費者は個別クレジット事業者からの立替金返還請求に対して支払を拒絶できる。
消費者が包括信用購入あっせん業者(以下「クレジットカード会社」という。)との間で包括信用購入あっせん契約(包括クレジット契約)を締結していた場合も同様であり、消費者は供給業者に対して主張しうる抗弁事由をクレジットカード会社に対しても主張できるので(割賦販売法第 30 条の4)、供給契約がクーリング・オフ、取消し、中途解約等により消滅した場合、消費者はクレジットカード会社からの立替金返還請求に対して支払を拒絶でき
19 「条解消費者三法」1348~1361 頁
(ウ) マンスリークリア方式のクレジットカードによる支払
クレジットカードを用いた包括信用購入あっせん(包括クレジット)については、個別クレジットとは異なる規定が割賦販売法第 30 条から第 35 条の
エ 消費者のクレジット事業者に対する既払金返還請求権
(ア) 割賦販売法上の既払金返還請求
割賦販売法上の既払金返還請求権に関する規定は、「与信契約の消滅原因に関する規定」と「清算関係に関する規定」に大別される。
まず、個別クレジット契約の消滅原因については、三種類の消滅原因が明文化されている。①特定契約に該当する供給契約に関して個別クレジット契約が締結された場合、消費者は供給契約のみならず個別クレジット契約についてもクーリング・オフができる(第 35 条の3の 10、第 35 条の3の 11)。
②訪問販売によって締結された供給契約が日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品を販売する過量販売契約に該当する場合、消費者は供給契約のみならず個別クレジット契約についても解除できる(第 35条の3の 12)。③特定契約において個別クレジット契約の締結を媒介した供給業者が個別クレジット契約に関する重要事項、あるいは、個別クレジット契約の動機部分に当たる供給契約の重要事項について不実告知をした場合や故意に告知をしなかった場合、消費者に個別クレジット契約の取消権が与えられる(第 35 条の3の 13~第 35 条の3の 16)。
次に、解除や取消しにより与信契約が消滅した場合の個別クレジット事業者、供給業者、消費者の三当事者間における清算に関する規定によると、個別クレジット事業者は供給業者に支払済みの立替金相当額について消費者に支払を請求することが禁止され(第 35 条の3の 10 第7項、第 35 条の3
の 12 第4項、第 35 条の3の 13 第2項)、供給業者は個別クレジット事業
者から受領した立替金を個別クレジット事業者に返還する義務を負い(第 35
条の3の 10 第8項、第 35 条の3の 12 第5項、第 35 条の3の 13 第3項)、
消費者は個別クレジット事業者に対して既払金の返還を請求できる(第 35
条の3の 10 第9項、第 35 条の3の 12 第6項、第 35 条の3の 13 第4項)。
特定継続的役務提供における個別クレジット契約の場合には第 35 条の3の
15 第3項により第 35 条の3の 13 第2項以下が準用されている。
本件では、第1、第4、第5契約に係る個別クレジット契約を相手方乙が、第2、第3、第7契約に係る個別クレジット契約を相手方丙がそれぞれ申立人との間で締結しているが、前述のように、各エステティック契約について相手方甲が不実告知を行っていると考えられ、相手方甲は各個別クレジット契約の締結を媒介しているので、第 35 条の3の 15 第1項により申立人に個別クレジット契約の取消権が与えられる。申立人は取消しの意思表示をしているので、第 35 条の3の 15 第3項により申立人は個別クレジット事業者に対して既払金返還請求権を取得する。
なお、割賦販売法は、供給契約が公序良俗違反により無効となる場合の消費者の個別クレジット事業者に対する既払金返還請求権について定めていないが、公序良俗違反の違法性の高さに鑑み、「清算関係に関する規定」を類推適用すべきである。後述のように、つけ込み型勧誘を理由に特定継続的役務提供契約と個別クレジット契約が公序良俗違反により無効となる場合、第35 条の3の15 の類推適用により個別クレジット事業者、役務提供事業者、消費者の三当事者間において清算がなされる。
(イ) 判例による既払金返還請求
大判昭和 13 年3月 30 日最高裁判所民事判例集 17 巻6号 578 頁 22は、公序良俗違反の賭博契約のために金銭を使用することを借主が貸主に告げていた場合、金銭貸借契約も公序良俗違反により無効になるとした。借主が表示した不法な動機を貸主が認識していたこと(不法の認識)、金銭を貸すことにより不法な取引が助長されたこと(不法の助長)が理由に挙げられている(動機不法構成)。
名古屋高裁xxx判昭和 62 年8月 31 日判例時報 1254 号 76 頁 23は、個別クレジットの事案においても動機不法構成を採用し、公序良俗違反の無限連鎖講(ねずみ講)式金銭配当契約であることをクレジット事業者が認識したうえで個別クレジット契約を締結することによってねずみ講が助長されたとして、個別クレジット契約も公序良俗違反により無効になるとした。最近の同旨の裁判例として、東京地判平成 16 年8月 27 日判例時報 1886 号 60 頁がある。
また、xxx判平成 20 年1月 29 日判例時報 2012 号 79 頁は、呉服の過量販売が問題になった事案において、動機不法構成に依拠することなく、クレジット事業者の過剰与信防止義務違反を認定したうえで、公序良俗違反により個別クレジット契約を無効とした。
さらに、個別クレジット契約においてクレジット事業者の不法行為責任を認定した最近の裁判例として、静岡地裁xxx判平成 17 年7月 11 日判例時報 1915 号 88 頁(不適正な販売行為を助長するような重過失による加盟店管理調査義務違反があった場合にクレジット事業者の不法行為責任を認定)、及び大阪地判平 20 年4月 23 日判例時報 2019 号 39 頁(クレジット事業者が
22 評釈、xxxx 「民法判例百選Ⅰ(第6版)」32 頁
23 評釈、xxx 「消費者取引判例百選」106 頁
社会的に著しく不相当な販売行為であることを認識したうえで与信に応じることにより販売業者の不法行為を助長したという理由でクレジット事業者の不法行為責任を認定)が挙げられるが、悪意や重過失がなければ不法行為が成立しないとしている点、不法の助長を要件としている点などから、いずれも動機不法構成の影響を受けていると思われる。
これに対して、最判平成 23 年 10 月 25 日最高裁判所民事判例集 65 巻7号
3114 頁 24は、デート商法による売買契約を暴利行為として公序良俗違反により無効になるとしながら、売買契約と個別クレジット契約を法的に別個の契約と捉え、売買契約が公序良俗違反により無効となっても、個別クレジット契約は原則として無効にならないとした。その一方で、「販売業者とクレジット事業者との関係」(第一基準)、「販売業者の個別クレジット契約締結手続への関与の内容及び程度」(第二基準)、「販売業者の公序良俗に反する行為についてのクレジット事業者の認識の有無及び程度」(第三基準)等に照らし、販売業者による公序良俗違反行為の結果をクレジット事業者に帰せしめ、売買契約と一体的に個別クレジット契約についてもその効力を否定することをxxx上相当とする特段の事情があるときは、例外として個別クレジット契約も無効になるとした。
しかしながら、最高裁平成 23 年判決は売買契約と個別クレジット契約を法的に別個の契約であると解する別契約論(抗弁接続の範囲が問題になった最判平成2年 25判決で採用された法理)を売買契約が公序良俗違反により無効となる事案において踏襲しているが、この点は前述の大審院昭和9年判決との関係で問題があるように思われる。供給契約が公序良俗違反で無効とされる場合のクレジット契約の去就については、むしろ、大審院昭和9年判決の動機不法構成に依拠すべきと解される。そして、動機不法構成の要件のうち「不法の認識」要件についてはクレジット事業者が加盟店管理調査義務を負っていることを勘案し、「加盟店管理を適切に行わなかったことにより公序良俗違反の契約であることに気付かなかった。」という「加盟店管理調査義務違反」の要件に替えるべきであろう。つまり、適切に加盟店を管理調査しなかったことにより、公序良俗違反の契約であることに気付くことができず、かつ、立替払に応じることにより公序良俗違反の行為を助長することになる場合には、動機不法構成の判例法理により個別クレジット契約も公序良俗違反により無効になると解すべきである。本件では、少なくとも第4契約以降の各契約については、相手方甲のつけ込み型勧誘により締結されたものであることから、暴利行為に準じて公序良俗違反により無効となり、また、クレジット事業者である相手方乙と相手方丙は適切に相手方甲を管理調査しなかったためにその事実に気付かず、立替払に応じることによりつけ込み型勧誘が助長されているのであるから、第4契約以降の各契約に係る個別クレジット契約も公序良俗違反により無効になると解する。
なお、第6契約は相手方乙が発行するクレジットカードによってマンスリ
24 評釈、xxx 「民法判例百選Ⅱ(第7版)」114 頁、xxxx 「私法判例リマークス45 号」 22 頁
25 最判平成2年2月 20 日 「判例時報 1354 号」76 頁
ークリア方式で支払がなされているが、相手方乙はそれに先立つ第1、第4、第5契約において個別クレジットに応じることによりつけ込み型勧誘を助長しており、その後の一連の流れで締結された第6契約においてマンスリークリア方式のクレジットカード支払に応じる行為も同様の批判が当てはまると解されることから、第6契約に係るマンスリークリア方式のクレジットカード支払を内容とする契約についても公序良俗違反により無効になると解すべきである。そして、この場合の清算については割賦販売法の清算規定を類推適用すべきであり、その結果、申立人はクレジット事業者である相手方乙と相手方丙に対して既払金返還請求権を取得する。
(2) あっせん案の考え方
本件契約が目指した痩身という効果は、リバウンドをすることなく体重を減少させることを意味すると解されるが、相手方甲が提供する個別の各エステティック契約を締結して実際に施術を受けただけではその目的を達成できず、類似の契約をいくつか締結して施術を繰り返し受けることによってはじめて効果が得られるものであり(これは「次の契約を締結しなければリバウンドのおそれがある。」と述べて勧誘した第2契約以降の相手方甲の勧誘方法からも推測できる。)、本来は、一つの長期にわたる継続的役務提供契約を締結することではじめて当初の目的(効果)が達成できる類の契約であったと思われる。
もし、本件契約が長期にわたる一つの継続的役務提供契約として申立人に提示されていたのであれば、期間の長さに加え、全体の料金が高額になることから、申立人が契約の締結に応じなかった可能性が高い。また、仮に申立人が契約締結に応じたとしても、立替金額が高額になることからクレジット事業者である相手方乙と相手方丙が立替払に応じたか甚だ疑問であり、また、長期にわたる一つの継続的役務提供契約の高額料金についてクレジット事業者が立替払に応じることは申立人の経済状態から判断して過剰与信に該当する可能性が高いことから、このような立替払に応じることは割賦販売法上許されないはずである。さらに、長期にわたる一つの継続的役務提供契約として本件契約が締結された場合、申立人は何時でも自由に中途解約権を行使することができ、中途解約がなされると特定商取引法が役務提供事業者に取得を許している額を超える既払金について相手方甲は申立人からの返還請求に応じなければならないはずであった。
しかしながら、本件契約は7件の契約に細分化され、各契約の期間は短く、中途解約を決断する前に契約期間が満了し、かつ、期間内に未履行の施術については当該契約期間満了後、後続の契約の期間内において施術が履行されており、個々の個別契約において施術の既履行分と未履行分を消費者が正確に把握することができず、実質的に中途解約ができないように仕組まれている。また、契約を細分化することにより、個々の契約についての申立人の負担感を軽いものにすると同時に、複数のクレジット事業者の利用も可能になることから、申立人の立替払についてクレジット事業者である相手方乙と相手方丙を交互に利用することによって、相手方乙と相手方丙が過剰与信であることに気付きにくくして、トータルでは過剰与信になる案件であるにもかかわらず各個別契約に細分化することによってクレジットの審査を通りやすくしたものと思われる。契約の細分化によって得られるこれらの効
果はいずれも相手方甲に不当な利益をもたらすものである。
申立人の陳述によると、相手方甲の従業員は施術直後の申立人に対して執拗な勧誘をしていた。このことから、申立人の判断力や知識・経験の不足、心理的な圧迫状態、従属状態など、申立人が契約を締結するか否かについて合理的な判断を行うことができないような状況を利用して、不必要な契約を締結させた「つけ込み型勧誘」が行われていたと解され、少なくとも第4契約以降の契約は公序良俗違反により無効になると解される。
加えて、クレジット事業者である相手方乙と相手方丙は、適切な加盟店管理を怠るとともに、申立人の一年間当たりの個別支払可能見込額の算定を適切に行ったといえるか疑問があり、結果として、申立人の資力を超えた過剰与信に応じることにより、相手方甲による公序良俗違反の契約の締結を助長しているといえる。よって、相手方乙が申立人との間で締結した第4契約と第5契約に係る個別クレジット契約及び第6契約のマンスリークリア方式の包括クレジット契約、並びに、相手方丙が申立人との間で締結した第7契約にかかる個別クレジット契約は、いずれも公序良俗違反により無効になるものと考えられる。
2 同種・類似被害の再発防止に向けて
(1) エステティック契約に関する問題点
エステティック契約のうち、痩身を目的としたエステティック契約は、美容だけではなく健康にも関連しており、20 歳台から団塊の世代に至るまで、男女を問わず、強い関心をもたれている分野である。このような中、全国ネットでxxな宣伝広告を行っている事業者も見受けられる。
身体の健康と金銭処理の両面において健全な事業の展開が強く望まれるところであるが、本件のような継続的役務提供契約に該当する契約については、継続的に役務提供を受けることにより一定の効果が得られることをもって誘引され、長期間の役務に見合う高額な対価の支払を予め約定するという特徴があり、以下のような問題が指摘される。
第一に、有形の商品と異なり、役務の内容が一般消費者には理解しにくい。本件においても、様々な施術の種類があり、また、それらを組み合わせてコースが設けられていた。しかし、各施術やコースの内容がどのようなもので、それぞれがどのように異なるのか容易には分からない。消費者が十分に理解するためには相当に丁寧な説明が必要不可欠であろう。
第二に、役務の質や効果の客観的評価が困難であることが挙げられる。痩身の効果は、施術を受ける者の日常生活、特に食生活次第で大きな差が生じるものであり、役務提供を受ける全ての者が皆同等の効果を得られるとは限らない。施術を受ける者の体質や生活習慣、また、施術を行う者の技量等により、施術の質や効果にばらつきが生じるのはやむを得ないだろう。しかし、事業者においては、勧誘の際に短期間で痩身効果が出るような過度の効果を強調しがちである。
第三に、本件が典型であるが、短期間に痩身の効果が表れる旨を標榜し、モニター契約等で誘引しても、本当に痩身の結果を出してこれを定着させるためには、相当期間を要するのが実情である。このような事情があるため、消費者は施術を受
けて一旦痩せても、日々の生活においてその効果を維持できるのか不安を持つ。そのような消費者の心理からすると、事業者にリバウンドのおそれを指摘されて勧誘された場合、リバウンドを恐れて更に新たな契約をしてしまうという問題がある。また、特定商取引法第 49 条では中途解約権を消費者に与えているものの、施術を受け続けなければ効果が生じるのか否か判断するのが難しく、本件のように細切れにされた複数のコース契約を締結している場合、気が付いた時には以前の契約の施術が履行済みになってしまい、中途解約の機会を失ってしまうというケースもある。
以上のような問題を有する痩身エステティック契約は、本質的に消費者がその役務の内容や効果、対価の総額などを把握しにくく、誤認を招きやすい契約であると考えられる。また、施術直後にリバウンドのおそれを指摘され、契約の継続や新規契約を勧められると、消費者は断りにくい実情があるだろう。中途解約権が法令上保障されているにもかかわらず、これを行使することが容易でない実態もうかがえるところである。このような実情をふまえ、同種・類似紛争の再発防止に向けて次の諸点が留意されるべきである。
(2) エステティック事業者に対して
本件のようなエステティック契約は、前述のとおり、役務の内容や、役務に関連して販売される商品の性質や効能等が、一般的な消費者には理解し難い。そこで消費者に対し、より分かりやすく説明をし、理解を求める必要がある。説明の際には消費者に資料等を交付して、後日、本人や家族が再度確認できるようにしておくことも大切である。
また、説明や勧誘、契約の手続等は、施術の後の肉体的にも精神的にも疲労、消耗している時間帯は避けるなど配慮すべきである。コース契約の場合、まだ前のコースのサービスが残っているにもかかわらず新しい契約を締結させることは、過量な契約になりかねない。モニター募集やコンテスト参加等に乗じてことさら勧誘することについても慎重にされたい。
特に痩身を目的としたエステティック契約においては、本人の体質や食生活など日常生活との関係で、その効果が大きく異なり、しかも効果の発揮と定着までに相当期間を要する。契約に当たっては、予めこのことを本人の納得が得られるまで十分に説明する必要がある。また、効果に差があるのだから、短期間で過度の効果を標榜することは避けるべきである。例えば、「1か月で 10 ㎏痩せる。」と明記しているが、小さな字で「個人によって例外がある。」などと記載して契約を誘引することは、消費者の誤認をもたらす可能性が高い。
なお、エステティック契約などの場合、本件の申立人のように家族等の扶養に入って生計を維持している者が契約をするケースが見受けられる。このような場合、その者の単独の収入の中で契約をしつつも、配偶者や親族等の収入や財産の助けを借りようと考えるケースもあるかもしれない。しかし、前述のとおり顧客の財産の状況に照らして不相応な契約の勧誘をすることは指示(特定商取引法第 46 条)の対象であり、事業者は顧客の収入源や支払能力等に十分配慮するべきである。融資枠の制約を免れる目的で、複数のクレジット事業者を利用することは、顧客の生活を圧迫するほどの過大な契約につながる可能性があり、慎むべきである。
消費者の中には、勧誘を拒否する際に、「契約しません。」等ときっぱり断ることができず、「お金がない。」等と婉曲に断る者も少なくない。その際、事業者が消費者の拒絶の意向を汲まず、xxxxxの利用を勧める等して勧誘を続けると、消費者は断りきれずに契約をしてしまい、トラブルになりがちである。このようなトラブルを防ぐために、事業者は十分に消費者に契約意思を確認すべきである。
(3) クレジット事業者に対して
顧客の支払可能見込額を算定するに当たっては、顧客の年収や年間請求予定額などに関し、法律等に従った厳格な調査が必要である。本件のクレジット事業者が算出していた支払可能見込額は、一部その数値のとり方に疑問があった。与信審査に当たっては、割賦販売法や日本クレジット協会 26の自主規制基準等を遵守し、適正な運用が望まれる。
なお、本件の場合、申立人は8か月という短期間に合計7契約、支払総額約 225万円の契約を結んでいる。このように次々と同種の契約をする場合は、より慎重な与信審査が必要である。特に供給業者が一人の顧客について複数のクレジット事業者を使い分ける場合、クレジット事業者はその連続性を正確に供給業者に報告させるべきである。なぜならば、次々と高額な契約を締結するケースにおいては、前の契約で利用したクレジット事業者が、次回以降の契約は与信できない旨を供給業者に告げているケースがあるからである。このことにもう一方のクレジット事業者が気付くことができたのであれば、本件のような問題の発生を未然に防ぐことができただろう。与信審査の際には、支払可能見込額調査のみではなく、顧客のクレジットの利用状況についても確認することが大切である。
割賦販売法第 35 条の3の5では、特定契約を行う供給業者を加盟店としているクレジット事業者に対し、加盟店の調査及び管理を求めている。クレジット事業者は、供給業者が強引な勧誘を行っていないか、不適切なサービスの説明を行っていないか等について、供給業者が用いている販売マニュアル等の資料を調査するなどし、より一層加盟店の調査・管理に努めるべきである。
また、割賦販売法は個別クレジット事業者に個別契約調査を義務付けており(割賦販売法第 35 条の3の5、施行規則第 75 条第2号、第 76 条 10 項から第 12 項)、クレジット事業者はクレジット契約を結んだ顧客に対して電話をかけるなどして、契約に関する確認を行う。本件のクレジット事業者もこの規定に従い、申立人に電話をかけて調査を行っていたが、申立人が契約を結んだ事情について十分に確認されていたとは言い難い。同種類似被害を防ぐためにも、確認の電話の際には、形式的な質問のみではなく、より詳しく契約意思や契約に至った経緯などを確認して頂きたい。
(4) 消費者に対して
痩身で最大かつ健康的に効果をもたらすのは適正な食生活、規則正しい生活及び適度な運動である。安易にエステティックに依存するべきでないことを肝に銘
26 割賦販売法第 35 条の18 第1項に基づく「認定割賦販売協会」として、経済産業大臣から認定を受けた団体。同条第2項に基づき、割賦販売等に係る取引のxxの確保を実現するために、業界における自主規制ルールを策定している。
じ、本当に契約をする必要があるのか、申し込む前に冷静に考えることが大切である。
施術を受けて短期的には効果があっても、上記のとおり適正な食生活、規則正しい生活及び適度な運動が伴わなければリバウンドするのは当然である。事業者が、更なる役務の提供を受ければ著しい効果が得られるとか、目的が実現される等と告げて新しい契約を勧めたとしても、消費者は自分の生活習慣等を省みた上で冷静に判断してほしい。
本件は、クレジットを利用することにより、短期間の間に高額な契約が次々と結ばれていた。クレジットを利用することによって、契約時には金銭の持ち合わせがなくとも契約ができ、代金を後日に分割して支払うことができる。しかし、複数のクレジット契約を結ぶと、支払総額がいくらになるのか、月々の支払額がいくらになるのか、いつからいつまで支払うのか等を把握するのが難しくなる。複数のクレジット契約を結ぶに当たっては、各クレジット契約の内容と自分の支払能力とを照らし合わせ、慎重に検討してほしい。
特定継続的役務提供については、クーリング・オフ期間経過後も役務提供契約の期間内であれば中途解約ができる。このことは概要書面や契約書に記載され、消費者に交付されることになっているので、契約書などにはよく目を通して欲しい。また、契約等に関して困ったこと等がある場合は、すぐに最寄りの消費生活センターへ相談されることを勧める。
(5) 行政に対して
広く注目をあびている痩身エステティックについては、その事業としての伸展が予想される一方で、前述したように内在する問題が少なくない。
更なる消費者トラブルの発生を防ぐためにも、行政は積極的に消費者の声を汲み取り、実情の把握に努める必要がある。消費生活相談情報等から、契約の内容が消費者に十分理解されず誤認されたままの契約になっていないか、中途解約権の行使権限が事実上侵害されていないか、過量な契約になっていないかなど、調査・分析するよう努められたい。
また、健全な市場の発展のためにも、行政は消費者が不当な被害を受けることがないよう、適切な措置を講ずるべきである。事業者が特定商取引法等の法令を順守していない場合は、行政において措置を講じることも必要である。
本件の申立人は、中途解約など特定商取引法における規定等を理解していなかったが、行政においては、本件及び平成 24 年6月の当委員会の事例 27の紹介をはじめとして、消費者に契約に関する問題点や注意点を指摘した広報をより一層行うよう求める。
27 エステティック契約などの次々販売に係る紛争
xxxx://xxx.xxxxxxxxxxxxx.xxxxx.xxxxx.xx/xxxxx/xxxxxx/xxxxxxxxx/x_xxxxxx00.xxx
申立人からの事情聴取
項 目 | x x |
契約内容 | 痩身エステ施術契約及び関連商品購入契約(合計7契約)現金価格 199 万 7,352 円 支払総額約 225 万 3,102 円 ※報告書 3~4 頁参照 |
モニター契約について | ○ 平成 26 年1月か2月頃、買物に行った際にモニター募集のチラシをもらった。チラシに3㎏~5㎏痩せると書いてあり、モニターに通えばそうなると思った。 ○ チラシを見て1か月ほど考えていたが挑戦してみようと思い相手方甲に電話をした。 ○ モニター契約の際、「モニターは通常よりも安く契約できるが、そのまま続けて会員になると、より多くのサービスが受けられる。」と説明された。 ○ モニター契約時は、申込書一枚しか渡されていない。色々なコースがあるという説明は聞いたが、とにかくモニターとして施術を受け、その後考えてくださいと言われた。 ○ モニター契約時に目標体重は聞かれなかったが、施術を受けるうちに目標体重を聞か れたので、10 ㎏ぐらい落としたいと伝えた。 |
契約に関する説明 | ○ 説明を受ける時にカタログのようなものは見たが、交付はされなかった。コースや施術の内容等、契約の内容が分かるような書面は渡されなかった。 ○ 料金表はもらったが、料金の説明は特になかった。 ○ 中途解約に関する説明はなかった。消費生活センターに相談するまで中途解約ができるとは知らなかった。 |
施術の状況 | ○ なるべく週2回通うよう指導されたので、大体週2回のペースで通った。一度の施術に2時間ほどかかった。 ○ 空腹でサウナに入るため、何度か貧血になった。しかし、「施術によって悪いものや脂肪を出しているから多少気分が悪くなる。気分が悪くなるのは効果が出た証拠だ。」と言われた。 ○ 第2契約の痩身エステオプションについては、内容も、いつ施術されたのかも思い出 せない。 |
勧誘された時の状況 | ○ モニターコースの4回目の施術後に、店長から「このまま続ければ必ず痩せる。」と言われ、本コースの契約を結んで引き続き施術を受けるよう勧められた。 ○ 第1契約で施術を 20 回受ければ、目標である 10 ㎏減になると思った。第1契約で終わりだと思って契約をした。 ○ コースの施術回数は、顧客が払える金額から割り出された回数で、顧客が回数を指定するのではなく、相手方甲が回数を決めた。 ○ 施術後疲れてボーッとしている時に契約の話をされた。 ○ 今どの契約の何回目の施術を受けているという説明はなく、前のコースの施術が終わる前に新たな契約を勧められた。 ○ 支払が厳しいし、クレジットの支払が終わっていないのに次の契約をすること自体お |
項 目 | x x |
勧誘された時の状況 | かしいと伝えた。しかし、「クレジットの支払が終わるのを待つと、その間にリバウンドする。」と何度も言われた。 ○ 6月ぐらい(第3契約あたり)から契約を断っていた。 ○ 相手方甲に「支払額が収入より多くなる。」と言ったが、私の話は全然聞いてくれず、 「大丈夫、クレジットを組めるから。」の一点張りだった。 ○ 「あなただったら痩せられる。」、「いついつの施術までに、ここまで体重を落として。」などと言われ、「痩せなきゃ、痩せなきゃ。」と思い、プレッシャーに感じた。 ○ 食事に関する指導を受け、「体重を何g落としてこなかった。」と厳しく言われた。 ○ 「リバウンドする。」と言われ続け、リバウンドすることが恐怖になってきた。 |
コンテストについて | ○ 6月ぐらい(第3契約あたり)にチーフからコンテストに推薦するという話があったが、それまではコンテストがあることを知らなかった。 ○ 「コンテストの出場者にあなたが選ばれた。」と言われたが、コンテストに出る気は全くなかったので、「結構です。」と断り続けた。 ○ 8月頃には施術に通うことがすごく重荷になっていたが、「9月に一次審査通過者対象の説明会があるので、それまでに頑張って体重を落として。」と言われた。4人に入れ代わり立ち代わりに説得され、「何かもう面倒くさい。」と思った。 ○ 断って、断って、断ったけれども説得されて、「じゃあしょうがない。」と思った。 ○ 「12 月に行われる最終審査は、できればお断りしたい。」と願い出た。理由は分からないが、最終審査には呼ばれなかった。 |
商品の購入について | ○ ジェルや発汗シート等は施術に必要だが、値段などを把握していたわけではない。これらの商品コースにセットされていて、買わなければならなかった。 ○ 第4契約の健康食品は、「要らない。」と言って断った。しかし、「もうこの商品はなくなるから、今買っておいた方が絶対にお得」、「今買わないと、次は無いですよ。」、 「この分だけお店で預かっておくから。」と言われた。 ○ 錠剤がのどにつかえて飲み込めないので、お店で指導を受けながら飲んだ。 |
クレジット契約(2社)について | ○ 契約の翌日から数日後に、クレジット事業者から確認の電話がかかってきた。 ○ クレジット事業者から「今回は何件目の契約ですが、大丈夫ですか。」等の問いかけは一切なかったし、毎月の支払額の確認などもなかった。 ○ これまでクレジットを利用した時は、当然に支払が終わってから次の契約をしてき た。それなのに今回に限ってどうして次々と契約をしたのか自分でも理解できない。 |
支払状況 | ○ 私の年収は 70 万円ぐらいで、月収は 6 万円弱。夫は定年退職している。 ○ 預貯金を取り崩して払っているが、翌年には支払が遅れ、督促されるようになった。 |
その他・希望する解決 方法 | ○ 私の経済状況を分かっているのに、痩せたいという気持ちにつけ込んで次々と契約させるのはおかしい。 ○ できれば全部解約したいが、それが無理だとしても支払額を減らしたい。 |
相手方甲からの事情聴取
項 目 | x x |
顧客への対応 | ○ モニターは随時募集している。 ○ 本コースの勧誘の際には、コースの内容を記載した書類を用いて説明をしている。 ○ 本コースを結ぶ際には、概要書面及び契約書を渡している。 ○ xxxxx・xxや中途解約に関しては、概要書面等に記載しており、クーリング・オフについては口頭でも説明している。 ○ カウンセリングをして、その顧客にあったコースを提案している。 ○ 必要がないものは勧誘しないようにしており、契約するかどうか悩んでいる顧客には、しっかり考える時間を与えるようにしている。 ○ 顧客には、①週2回来店すること、②食事指導を受けること、③ホームケアを行うことを求めている。 ○ 当社の顧客対応窓口には、スタッフの対応に関する苦情や、解約したいという相談等は入るが、解除妨害等のクレームは無い。 ○ 当社に入った苦情については、月に一度会議を開いて、顧問弁護士が目を通し、対応している。 ○ クーリング・オフや中途解約にはきちんと応じている。 ○ 各店舗の顧客が結んだコースの有効期間、コースの履行状況、履行状況と新たな契約を締結した日との関係等は、本社では管理していない。 |
申立人に対する対応 | ○ 代謝が悪い人や冷え性がひどい人等はなかなか痩せないため、第2契約を結んだ時点において申立人の体重が 0.7kg しか減らなかったのだと思う。痩せやすい体質を作ることにより徐々に痩せていく。0.7kg が少ないというわけではない。 ○ 申立人が食事指導に従わず間食を摂るため、減量した体重をキープできなかった。 ○ 申立人は、施術後その日に受けた施術の内容を確認し、台帳にサインをしている。第 2契約の施術内容が分からないということはありえない。 ○ 申立人に減量したい体重を確認し、店長と申立人が話し合って施術回数等を決めたのだと思う。申立人の希望減量数からすると、不当に施術回数が多いわけではなく、妥当な回数だと思う。 ○ 申立人から「あと何回ぐらい施術を受ければいいのだろう。」等と相談されたので、新しい契約を勧めた。 ○ リバウンドするといって勧誘したのではなく、食事指導の一環としてリバウンドしないように食事に気をつけるようアドバイスした。 ○ 関連商品は施術料金に含まれておらず、別途購入する必要がある。このことは契約書にもきちんと書いており、説明もした。 ○ ダイエット時には不足しがちな栄養素があるので、きれいに痩せるためにサプリメン トを勧めた。 |
項 目 | x x |
クレジットについて | ○ 当社の場合、クレジットカードでは一括払しか利用できない。コース契約をした際に、申立人が分割払を希望したので、個別クレジットを案内した。 ○ 店長に確認したが、申立人から支払が厳しいといったことを一度も聞いたことが無いとのことだった。 ○ 各店舗に対し「クレジットを組めますよ。」と言って勧誘しないよう指導している。 ○ 顧客にはクレジット契約書に年収等を記入してもらうが、顧客の年収等を必ずしも店舗で把握しているものではない。 ○ 顧客の月々の支払額までは把握していない。毎月の支払が妥当なものか否かはクレジット事業者が判断することだ。与信の可否についてコメントすることも、「もうクレジットは止めたほうがいいです。」などアドバイスすることもない。 ○ 顧客の与信枠をクレジット事業者に問い合わせることはない。もし顧客から与信枠に関して質問された場合は、顧客自ら直接クレジット事業者に問い合わせるようお願い する。 |
コンテストについて | ○ コンテストに出たいという顧客の希望を優先しており、目標体重に達していなくとも応募は自由である。顧客からの申込みとは別に審査も行い、8月頃に参加者が絞られる。 ○ 目標に向かって頑張っている人や、痩身意識が高い人に声を掛けている。 ○ 申立人が記入したコンテストの応募動機を見ると、コンテストに向けて痩身結果を出したいという申立人の意欲が感じられる。多数のコースを契約したのは、申立人が意欲的に痩身結果を出したいと思ったからだ。 ○ コンテストに出ると申立人が決めた時に、申立人からxxxに「私はあと何回ぐらい施術を受ければいいですか。」という質問があった。その時も目標の体重に達するよ うに考え、必要以上のものは提案していない。 |
その他・希望する解決方法 | ○ 申立人の手元に未消化の商品があれば、基本的には返品返金に応じる。このことは消費生活センターとの交渉の際にも伝えている。 ○ 顧客の支払能力や資力に関しては、販売店という立場上、積極的に関与しないよう努めてきた。支払えないといっているのに無理な勧誘を行ったというのであれば、責任を取らなければならないと思っているが、申立人が契約をした店舗に確認しても、そのような勧誘は一切していないと言っている。 ○ 申立人が中途解約をするなどの手立てをとらず、しかも契約が終了して2か月も経ってから苦情を言っていることに不信感を抱く。 ○ 払えなくなったのは申立人の問題であり、与信はクレジット事業者の問題だ。 ○ 本件について譲歩することは、困難である。 ○ 委員会のあっせんに応じたとしても、それは経営上の判断であって、申立人が主張する勧誘行為の問題を認めたという訳ではない。 |
項 目 | x x |
加盟店調査について | ○ 特定継続的役務提供事業者と加盟店契約を結ぶに際しては、割賦販売法及び施行令並びに施行規則に従って、販売店の基礎事項などの調査を行う。販売店が扱う商品や役務の効能の根拠については、カタログやパンフレット、チラシ等を調査する。また、経営者に事情を聞き、店舗の現地調査を行うなどして、調査する。 ○ 顧客からの申出により、加盟店に対する苦情等を把握する。顧客から解約等の申出があった場合は、事実関係を調べ、顧客の申出に整合性があると判断できれば、解約返金等の手続きを行う。 ○ 加盟店に対する顧客からの苦情件数をカウントし、継続的に苦情が発生していないかを調べ、データベース化している。 ○ 加盟店契約を結ぶに際し、加盟店情報交換センターの情報は必ず調べる。加盟店情報交換センターに情報がある場合であっても、その情報の中身を確認し、過去の状況と現在の状況を調べ、加盟店契約時において改善されていると判断できた場合は、加盟店契約を結ぶこともある。 ○ エステティック契約の場合、施術の効果に対する不満がトラブル等となって、支払停止の抗弁へとつながることがある。 ○ 相手方甲に関しては、継続して頻繁に苦情が発生しているという訳ではない。 ○ 相手方甲と加盟店契約を結んで数年になるが、2年前に一度、顧客と販売員との話合いでは解決しないケースがあった。顧客の主張が、実際に勧誘を受けたこと自体を否定するような内容であったので、販売員に対し、きちんと顧客に説明をするよう求めたことがある。 |
与信判断等 | ○ 顧客の与信枠を加盟店に教えることは無い。 ○ クレジット契約が度重なる顧客に関しては、契約対象となる商品に重複はないか、加盟店による契約の強要はないか等に注意する。 ○ 具体的な契約内容は、顧客が記入した契約書で確認をしており、口頭でさらに詳しく確認するということはない。契約書を交付されているか、クーリング・オフの説明を受けたかなどを確認する。 ○ 申立人が結んだ当社2回目の契約(第4契約のこと)は、健康食品の購入契約であり、役務の消化状況を踏まえ健康食品を購入したのだという認識だった。 ○ 申立人の年収を上回る債務額になったこと自体が問題であるという認識ではないが、負担が増えているということは認識している。 ○ 毎月の支払額が月収を超えても、それ自体がダメだという判断はしていない。 |
項 目 | x x |
確認電話の対応 | ○ 基本的に申込みの翌日に電話にて契約時の状況などを確認をする。電話確認の際には、チェックシートを用い、シートに書かれている項目の内容を聞くルールになっている。 ○ 契約書の控えが手元にある顧客に対しては、趣旨説明や意向確認、禁止行為の確認は特に行わない。 ○ 申立人の確認電話に対する受け答えの様子を記した記録はないため、申立人が質問の趣旨や質問される内容等を理解していたか、不安そうな受け答えだったか等、確認電話に対する申立人の状況を確認することはできない。 ○ 顧客が契約に躊躇しているようであるならば、電話確認を中断し、加盟店へ確認をとる。本件においてはそのような事実がないので、申立人から無理な契約だった等の話はなかったと判断している。 ○ 申立人が中途解約できることを知っていたか否かについては、確認していない。 |
本件の各契約について | 【第1契約】 ○ 第1契約の年間請求予定額 16 万 8,000 円の内訳は、初回1万 7,240 円+月々1万 5,000 円×10 回=16 万 7,240 円として計算した。 ○ 申立人の年収-年間請求予定額=54 万 2,000 円であり、与信可能であると判断した。 ○ 申立人の直近の個人信用情報を確認したところ、支払遅延の記録があったが、平成 23 年に完済していることが分かり、問題ないと判断した。 【第4契約】 ○ この時の年間請求予定額は、第1契約から第4契約までの4件を足し合わせたもので、他社の債務については個人信用情報機関に照会した。 ○ 年収 72 万円に対し年間請求額は 65 万 9,000 円であり、与信可能と判断した。 ○ 世帯合算で考えた場合は、配偶者の生活維持費も勘案することになる。第4契約においては、本人の収入で賄えると判断した。 【第5契約】 ○ 本件の与信が限度であり、平成 27 年8月支払後まで追加契約はしないと判断した。 【第6契約】 ○ 第6契約はクレジットカード決済であり、個別クレジットの与信判断とは違う。 |
希望する解決方法等 | ○ 基本的にエステティック契約が前提となった上でのクレジット契約であり、相手方甲を抜いて当社単独で判断することはできかねる。 ○ 施術等の効果を、申立人がどのように判断しているのか、申立人の要望がどのようなものなのかは、クレジット事業者には分かりにくい。ただ、申立人が何らかの負担や、何らかの威圧的なイメージを持っていたのであれば、申立人自身が契約の取消しや否認をすることはできたのではないか。何ら手立てをとらなかった申立人に対し、多少なりとも義憤を感じる。 |
項 目 | x x |
加盟店調査について | ○ 特定継続的役務提供事業者と加盟店契約する際は、当該加盟店が法令等に則った販売方法をとっているか、またその役務を継続して提供できるか等を調査する。 ○ エステの効能等の根拠については、顧客からの苦情の発生状況やその内容、インターネット上の風評などを見て、問題点の有無を調べている。 ○ 加盟店の勧誘方法や役務等の効果・効能に問題はないかどうか、個別に 1 つずつ調べ、問題があれば社内ルールに基づいて対応している。 ○ 顧客から苦情等があれば、原因等を検討し、加盟店に問題がないか調べる。 ○ 加盟店契約を結ぶ際、必ず加盟店情報交換センターの情報を確認している。加盟店情報交換センターに情報があったとしても、総合的な判断のもとに加盟店契約を結ぶことはあるかもしれないが、基本的にはその加盟店とは契約を結ばない。 ○ 加盟店契約を結んだ後も、当社社内規程に基づいて調査、対応をしている。 ○ 相手方甲に関する苦情がないわけではないが、他のエステ事業者と比べて特に問題はない。 ○ 相手方甲については、効果・効能に関する苦情はほとんど無く、次々販売のような販売方法に起因するような苦情が入る。 ○ 相手方甲との加盟店契約においても、社内規程どおりに途上審査を行ってきた。その際に苦情の発生状況や加盟店情報交換センターの情報等を確認してはいたが、現段階で相手方甲と協議をするという状況には至っていない。 |
与信判断等 | ○ 与信審査の際には、法令や業界団体の自主ルールに則って、個人信用情報を照会し、支払可能見込額調査を行う。加えて、契約件数や貸金業の利用状況などを考慮し、顧客の収入や支払可能見込額調査の結果をもって総合的に判断している。 ○ 契約件数による一律の判断は行っていないが、65 歳を超える高齢者への与信には、契約件数に関する基準を設けている。 ○ 申込み内容は、加盟店から提出された契約書で確認をしている。 ○ 加盟店に顧客の与信枠を教えることはない。与信は、実際に顧客から申込みがあって判断するものであり、その前に分かるというものではない。 ○ 個人信用情報機関への登録は、新規契約については月に3回、既存契約の残高更新については月に1回実施している。 ○ 申立人が複数の契約を結んでいることを相手方甲に確認したところ、申立人は積極的に施術を受けており、それぞれのコースをきちんと終わらせていることが確認できた。それゆえ申立人が納得して契約をしているものと判断した。 |
項 目 | x x |
確認電話の対応 | ○ 確認電話は、原則契約日の翌日以降にかけている。確認する内容についてはチェックシートを作成し、それに従って確認をする。 ○ 各コースの具体的な内容等は確認しないが、役務の効果についてパンフレット等に記載された内容どおりの説明を受けたかということは確認する。 ○ 勧誘行為に問題があるようであれば、一旦契約手続きを中断するが、申立人の場合は特に問題なさそうだった。 ○ コース契約の施術回数を誰がどのように決めたのか等も、特に確認はしない。 ○ 本件は前のコースが終わる前に、新たにコース契約を結んでいるが、支払回数と施術を受ける期間は、必ずしも一致するものではなく、クレジット会社が施術の進み具合を把握するのは難しい。 |
本件の各契約について | 【第2契約について】 ○ 年間請求予定額は、分割支払金(毎月の支払額)×12 か月で計算した。 ○ 個人信用情報で他社の債務残高、年間請求予定額を照会した。 【第3契約について】 ○ 第3契約の支払総額が 58 万 5,240 円であり、年間請求予定額は2万 3,100 円×12 か月 =27 万 7,200 円。この時の支払可能見込額は、年収 72 万円-クレジット債務 33 万 9,000 円=38 万 1,000 円であり、27 万 7,200 円ならば与信できると判断した。 ○ 第3契約において、申立人への与信は限度であり、申立人への与信を一旦終了すると判断した。このことは相手方甲に伝えた。 【第7契約について】 ○ 申込書の年収欄に、申立人がその他の収入(年金)を加えて記入してきた。その他の収入を加えても与信をするのが難しかったので、申立人に預貯金額を確認した。 ○ この契約では申立人の年収を、年収 71 万円+その他の収入(年金)35 万円+申立人の預貯金 33 万 2,000 円として計算をした。 ○ 年収にその他の収入や預貯金を加えて計算したが、この契約の与信は一旦断った。しかし、その後申立人が頭金を追加で支払ったので、当初 20 万円の申込金額が、15 万円まで減額された。申立人がそこまでして契約したいのであればと思って、最終的に与信を通した。 ○ 本件は配偶者の収入と合算して与信判断をしたわけではなく、いわゆる共働き世帯として、生活維持費を収入の比率により按分して計算をした。 ○ 第 7 契約における支払可能見込額は、年収 139 万 2,000 円-年間請求予定額 79 万 4,000円-生活維持費 52 万 8,000 円=7 万円。第 7 契約の年間請求予定額は 7 万円であり、与信した。しかし第 7 契約について、当社としても全く問題意識を持っていなかった わけではない。 |
希望する解決方法等 | ○ 本件が付託されたことに驚いているが、委員会のあっせん案には当社としてしっかりと応えていきたい。円満な解決に向けて、取り組んでいくつもりだ。 |
合意書
1 申立人と相手方甲及び相手方乙との間で取り交わされた合意書
(1) 申立人及び相手方甲は、第4契約及び第5契約並びに第6契約の効力が無いことを確認する。
(2) 相手方甲は、第4契約に係るクレジット契約について、相手方乙に対し解約処理をし、申立人の相手方乙に対する支払義務が発生することがないようにする。
(3) 相手方甲は、第5契約に係るクレジット契約について、相手方乙に対し解約処理をし、申立人の相手方乙に対する支払義務が発生することがないようにする。
(4) 第4契約及び第5契約の効力が無くなったことに伴い、相手方甲は申立人に対し、金3万 1,508 円(第4契約と第5契約の既払い頭金相当額)を申立人が指定する金融機関口座に速やかに振り込む方法により支払う。
(5) 第6契約の効力が無くなったことに伴い、相手方甲は申立人に対し、金 10 万 1,520 円(第
6契約の既払金相当額)を申立人が指定する金融機関口座に速やかに振り込む方法により支払う。
(6) 相手方乙は、第1契約の残債務金(22 万 5,000 円)に対し、第4契約及び第5契約の既払金(8万 6,480 円)を充当する。
(7) 申立人は、前項において精算後の債務残金金 13 万 8,520 円を、相手方乙に、平成 28 年
1月末日までに全額を振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は相手xxの負担とする。
(8) 申立人は相手方甲に未使用商品を返還する。
(9) 相手方乙は、第1契約及び第4契約並びに第5契約に関して、割賦販売法第 35 条の3の
19 による請求を停止した以降の請求については、遅延として扱わない。
(10) 申立人及び相手方甲並びに相手方乙は、本件契約に関して、本あっせん条項に定める外、相互に何らの債権・債務関係のないことを確認する。
2 申立人と相手方甲及び相手方丙との間で取り交わされた合意書
(1) 申立人及び相手方甲は、第7契約の効力が無いことを確認する。
(2) 相手方甲は、第7契約に係るクレジット契約について、相手方丙に対し解約処理をし、申立人の相手方丙に対する支払義務が発生することがないようにする。
(3) 第7契約の解約に伴い、相手方甲は、金4万 9,692 円(第7契約の既払い頭金相当額)の返還金がある事を確認し、相手方丙に対し、金4万 9,692 円を相手方丙が指定する金融機関口座に速やかに振り込む方法により支払う。
(4) 前項とは別に、第7契約の解約に伴い、相手方丙は申立人に対し、金 6,550 円(第7契約の既払金相当額)の返還金があることを確認する。
(5) 相手方丙は、第2契約及び第3契約に関する債務残金を合算し、相手方甲より受け取った金4万 9,692 円及び第7契約の解除に伴う返還金である金 6,550 円を、合算後の債務残金金 60 万 3,000 円に充当する。
(6) 申立人は、前項において精算後の相手方丙に対する第2契約及び第3契約の債務残金金 54 万 6,758 円を、平成 28 年4月以降平成 31 年3月まで毎月相手方丙所定の日に 36 回分割で支払う。
支払日は相手方丙が指定し、申立人が指定する口座より引き落とすことにより支払う。
(7) 申立人が次のいずれかの事由に該当した時は、申立人は本あっせん案に基づく債務について期限の利益を失い、直ちに債務を履行するものとする。
ア 分割支払金の支払いを2回分以上遅滞し、相手方丙から 20 日以上の相当な期間を定めてその支払を書面で催告されたにもかかわらず、その期限内に支払わなかったとき。
イ 自ら振出した手形、小切手が不渡りになったとき、または一般の支払いを停止したとき。
ウ 差押、仮差押、保全差押、仮処分の申立てまたは滞納処分を受けたとき。
エ 破産、民事再生、特別清算、会社更生その他裁判上の倒産処理手続きの申立を受けた時または自らこれらの申立をしたとき。
(8) 申立人が分割支払金の支払いを遅延した時は、支払期日の翌日から支払日に至るまでの当該分割払金に対し、年5%を乗じた額の遅延損害金を支払う。
(9) 申立人が第7項により期限の利益を喪失した時は、期限の利益喪失の日から完済に至るまで分割支払残金全額に対し、年5%を乗じた額の遅延損害金を支払う。
(10) 相手方丙は、第2契約及び第3契約並びに第7契約に関して、割賦販売法第 35 条の3の
19 による請求を停止した以降の請求について、遅延として扱わない。
(11) 申立人及び相手方甲並びに相手方丙は、本件契約に関して、本あっせん条項に定める外、相互に何らの債権・債務関係のないことを確認する。
「個別クレジットを利用した痩身エステの次々契約に係る紛争」処理経過
日 付 | 部会回数等 | x x |
平成27年 8月11日 | 【付託】 | ・紛争の処理を知事から委員会会長に付託 ・あっせん・調停第二部会の設置 |
8月18日 | 第1回部会 | ・紛争内容の確認 ・申立人からの事情聴取 |
9月18日 | 第2回部会 | ・相手方甲からの事情聴取 |
10月 6日 | 第3回部会 | ・相手方乙及び相手方丙からの事情聴取 |
10月23日 | 第4回部会 | ・問題点の整理 ・あっせん案の考え方の検討 |
11月 6日 | 第5回部会 | ・相手方にあっせん案の考え方等を示し、意見交換 ・あっせん案、合意書案の確定 |
11月20日 | (あっせん案) | ・あっせん案を紛争当事者双方に提示 (申立人、相手方双方が受諾) |
12月16日 | 第6回部会 | ・報告書の検討 |
12月16日 | (合意書) | ・合意書の取り交わし |
平成28年 2月10日 | 【報告】 | ・知事への報告 |
平成28年2月10日現在
氏 名 | 現 職 | 備 考 | |
学識経験者委員 | (16名) | ||
x x x x | 弁護士 | ||
x x x x | 東京大学社会科学研究所教授 | ||
x x x x | 弁護士 | ||
x x xxx | 弁護士 | ||
x x x | 法政大学法学部准教授 | ||
x x x 恵 | 立教大学法学部教授 | ||
x x x x | 早稲田大学法学学術院教授 | ||
x x x x | 明治大学法学部教授 | 本件あっせん・調停部会委員 | |
xxx x x | 弁護士 | ||
x x x x | 中央大学大学院法務研究科教授 | ||
x x xxx | 一橋大学大学院法学研究科教授 | ||
x x x | 弁護士 | 会長代理 | |
x x x x | 弁護士 | ||
x x x x | 慶應義塾大学大学院法務研究科教授 | ||
x x x 子 | 弁護士・東京経済大学現代法学部教授 | 会長 | |
x x x | 弁護士 | 本件あっせん・調停部会長 | |
消費者委員 | (4名) | ||
x x x x | xxx生活協同組合連合会 常任組織委員 | ||
x x xxx | 主婦連合会 参与 | ||
x x x x | xxx地域消費者団体連絡会 共同代表 | ||
x x x x | 特定非営利活動法人xxx地域婦人団体連盟理事 | ||
事業者委員 | (4名) | ||
x x x | xxx商工会連合会 副会長 | ||
篠 x x x | 一般社団法人東京工業団体連合会 事務局長 | ||
x x x x | 東京商工会議所 常任参与 | ||
xxx x x | xxx中小企業団体中央会 常勤参事 |