事件の表示 事 件 名 報酬請求事件判 決 平成18年6月1日/広島地判平16年(ワ)1004号…等/判決 事案の概要 ⚫ 原告 X(株式会社)は、被告 Y ら(A 会社の非公開株式(1株額面 500 円)の株主)との間で、平成 13 年 10 月頃以降、コンサルタント契約と称する契約(「本件各契約」)を締結した。本件各契約の目的は、Y らの保有する株式の売却の委任であり、X が本件株式の多数の株主を糾合し、少数株主権を背景としてA 会社に対する圧力を加えて同株式を高額で売却することにあった。⚫...
「第267回判例・事例研究会」
テーマ:非公開株式の売買をあっせんするコンサルタント契約は、弁護士法72 条に反し、公序良俗違反により無効
日 時 | 平成30年8月28日 |
場 所 | 湊総合法律事務所 第1会議室 |
報 告 者 | 弁護士 xxxxx |
【判例】
事件の表示 | 事 件 名 報酬請求事件 判 決 平成18年6月1日/広島地判平16年(ワ)1 004号…等/判決 |
事案の概要 | ⚫ 原告 X(株式会社)は、被告 Y ら(A 会社の非公開株式(1株額面 500 円)の株主)との間で、平成 13 年 10 月頃以降、コンサルタント契約と称する契約(「本件各契約」)を締結した。本件各契約の目的は、Y らの保有する株式の売却の委任であり、X が本件株式の多数の株主を糾合し、少数株主権を背景としてA 会社に対する圧力を加えて同株式を高額で売却することにあった。 ⚫ X は、A 社定時株主総会に株主の委任状を持参して出席した。平成 14 年 1 月、A 会社社員持株会(以下「持株会」という)が発足した。X xは、持株会の元理事長に委任して、平成 15年 3 月、第三者に対して1株当たり 1 万 3050 円で株式を売却した。 ⚫ X が Y らに対し、本件各契約に基づき報酬及び遅延損害金を 請求するため、訴えを提起した。 |
論点 | 本件各契約は弁護士法72条に違反し公序良俗違反で無効といえ るか |
判旨 | 【結論】 原告の請求棄却(弁護士法72条に違反し公序良俗違反で無効) |
【理由】 ⚫ 本件各契約が「弁護士又は弁護士法人でない者」により「報酬を得る目的で」「業と」してされたものであることはいずれも明らかである。 ⚫ 「法律事件」とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり又は新たな権利義務関係の発生する案件をいう。 非公開株式の売買にあって、売却先の選定や売却価格、売却の手続を巡って争いや疑義が生じ得ることは見易い道理であり、売買条件交渉を非専門家が受任すれば委任者又は相手方が不適正な価格による取引を強いられるおそれが類型的に存在する。したがって、これらは実質的にも専門的法律知識と特別の事務処理能力の担保された弁護士に独占させることが国民の利益に適うものと解され、本件各契約は一般の法律事件に関するものに該当するというべきである。 ⚫ 本件各契約は前項の法律事件に関して代理、和解その他の 「法律事務」(広く法律上の効果を発生・変更する事項及びその効果を保全・明確化する事項の処理を含むものと解される)を取り扱うものに当たるものというべきである。 ⚫ なお、原告は、本件各契約上、法律事務については弁護士に委任する予定であった旨反論する。しかし、本件全証拠によっても本件各契約においてそのような合意が成立したものと認めるに足りないし、仮にそのような合意が成立していたとしてもそのこと自体弁護士法七二条の禁止する法律事務の「周旋」に該当することになると考えられる。 原告の前記反論はいずれにせよ理由がない。 | |
その他の説示 | 【その他の争点】 本件各契約は証券取引法違反に当たり無効といえるか 【結論の判旨】 同法がその違反を刑罰をもって禁圧しようとしていることに照らすと、これに違反する本件各契約は公序良俗に反し私法上無効であるとすべき。 【上記判旨の理由】 ⑴ 証券取引法(平成一七年法律第八七号による改正前のもの。以下同じ)二八条は「証券業は、内閣総理大臣の登録を受けた株式会社でなければ、営んではならない」と規定し、同法一九xxxx号によってこれに違反した者に対して三年以下の懲役若しくは三〇〇万円以下の罰金又はその併科をもって臨むこととしている。 そして、有価証券の売買の媒介、取次ぎ又は代理を営業として 行うことは証券業に含まれ(同法二条八項二号)、そこで「媒介」 |
とは他人間の売買の成立に尽力することであり、「取次ぎ」とは自己の名義でかつ他人の計算で売買をすること、「代理」とは他人の名義でかつ他人の計算で売買をすることをそれぞれ指すと解されるところである。 ⑵ 原告が上記登録を得たことについて主張立証はなく、前記前提事実によれば、原告は被告らとの間で有価証券である本件株式を売却することの委任を受け、同様の契約をすることによって多数の株主を糾合し、本件株式を高額で売却することを目的としたというのである。 そうすると、本件各契約は同法二条八項二号にいう「媒介」ないし「代理」に該当することが明らかである。 ⑶ そして、同法がその違反を刑罰をもって禁圧しようとしていることに照らすと、これに違反する本件各契約は公序良俗に反し 私法上無効であるとすべきである。 |