(12)治験薬の製造、取扱い、保管及び管理は、「治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬 GMP)について」(平成20年7月9日付け薬食発第 0709002 号厚生労働省医薬食品局長通知)に遵守して行うこと。治験使用薬は審査委員会が事前に承認した治験実施計画書を遵守して使用すること。
札 幌 医 科 大 学 附 属 病 院 治験及び製造販売後臨床試験に係る業務手順書
札幌医科大学附属病院
【制定】西暦 2022年 4月 1日
目次
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第1章 総則
(総則)
第1条 本手順書は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号、以下「医薬品医療機器等法」という。)、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年厚生省令第28号。以下「医薬品GCP省令」という。)、「医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成17年厚生労働省令第36号。以下「医療機器GCP省令」という。)、
「再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成26年厚生労働省令第89号。以下「再生医療GCP省令」という。)及び関連する法規及び通知等(以下「医薬品GCP省令」「医療機器G CP省令」、「再生医療GCP省令」及び関連通知等を併せて「GCP省令等」という。)並びに「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準」(平成26年厚生労働省令第87号。以下「医薬品G PSP省令」という。)、「医療機器の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令」(平成1
7年厚生労働省令第38号。以下「医療機器GPSP省令」という。)、再生医療等製品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令(平成26年厚生労働省令第90号。以下「再生医療GP SP省令」という。)及び関連する法規及び通知等(以下「医薬品GPSP省令」、「医療機器GPSP省令」、「再生医療GPSP省令」及び関連通知等を併せて「GPSP省令等」という。)並びに学内各規程に基づいて、札幌医科大学附属病院(以下、「本院」という。)で行われる治験及び製造販売後臨床試験の実施に必要な手続き等を定めるものとする。
2 製造販売後臨床試験を行う場合には、原則、本手順書において、「治験」とあるのを「製造販売後臨床試験」、「治験使用薬」とあるのを「製造販売後臨床試験使用薬」と読み替えるものとする。
3 医療機器に係る治験を行う場合には、本手順書において「医薬品」とあるのを「医療機器」、「治験使用薬」とあるのを「治験使用機器」、「被験薬」とあるのを「被験機器」、「有害事象」とあるのを「有害事象及び不具合」とそれぞれ読み替えるものとする。
4 再生医療等製品に係る治験を行う場合には、本手順書において「医薬品」とあるのを「再生医療等製品」、「治験使用薬」とあるのを「治験使用製品」、「被験薬」とあるのを「被験製品」、「有害事象」とあるのを「有害事象及び不具合」とそれぞれ読み替えるものとする。
5 自ら治験を実施する者による治験のみに係る手続き等に関しては、別途「自ら治験を実施しようとする者による治験に係る業務手順書」等において取扱いを定めるものとする。
第2条 治験は、次に掲げる原則に則って実施されなければならない。
(1)治験は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則及び医薬品医療機器等法並びにGCP省令等を遵守して行うこと。
(2)治験を開始する前に、個々の被験者及び社会にとって期待される利益と予想される危険及び不便とを比較考量すること。期待される利益によって危険を冒すことが正当化される場合に限り、治験を開始し継続すべきである。
(3)被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上に対する配慮が最も重要であり、科学と社会のための利益よりも優先されるべきである。
(4)治験薬に関して、その治験の実施を支持するのに十分な非臨床試験及び臨床試験に関する情報が得られていること。
(5)治験は科学的に妥当でなければならず、治験実施計画書にその内容が明確かつ詳細に記載されていること。
(6)治験は、本院における治験審査委員会である札幌医科大学附属病院臨床研究審査委員会(以下「審査委員会」という。)が事前に承認した治験実施計画書を遵守して実施すること。
(7)被験者に対する医療及び被験者のためになされる医療上の決定に関する責任は、医師又は歯科医師が常に負うこと。
(8)治験の実施に関与する者は、教育、訓練及び経験により、その業務を十分に遂行しうる要件を満たしていること。
(9)すべての被験者から、治験に参加する前に、自由意思によるインフォームド・コンセントを得ること。
(10)治験に関する全ての情報は、正確な報告、解釈及び検証が可能なように記録し、取扱い、保存すること。本原則は、その媒体によらず、GCPガイダンスで規定する全ての記録に適用される。
(11)被験者の身元を明らかにする可能性のある記録は、被験者のプライバシーと秘密の保全に配慮して保護すること。
(12)治験薬の製造、取扱い、保管及び管理は、「治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬 GMP)について」(平成20年7月9日付け薬食発第 0709002 号厚生労働省医薬食品局長通知)に遵守して行うこと。治験使用薬は審査委員会が事前に承認した治験実施計画書を遵守して使用すること。
(13)治験の被験者保護及び治験結果の信頼性確保に必要不可欠な局面の質を保証するための手順を示したシステムを運用すること。
(14)治験に関連して被験者に健康被害が生じた場合には、過失によるものであるか否かを問わず、被験者の損失は適切に補償すること。その際、因果関係の証明等について被験者に負担を課すことがないようにすること。
第2章 病院長の業務
(病院長の責務)
第3条 札幌医科大学附属病院長(以下「病院長」という。)は、治験及び製造販売後臨床試験に係る業務が適正かつ円滑に行われるよう必要な措置を講ずるものとする。
2 治験の実施に係る業務の一部を委託する場合には、理事長名をもって、当該業務の受託者と契約を締結し、病院長は当該受託者が委託した治験業務を遂行しうる要件をみたしていることを保証するとともに、実施された治験業務及び作成されたデータの信頼性を保証する措置を講ずるものとする。
(治験実施の承認等)
第4条 治験を依頼しようとする者は、次に掲げる文書を病院長に提出しなければならない。
(1)治験依頼書
(2)治験実施計画書
(3)治験薬概要書及び治験使用薬(被験薬を除く。)に係る科学的知見を記載した文書(製造販売後臨床試験においては添付文書)
(4)症例報告書の見本(治験実施計画書において、症例報告書に記載すべき事項が十分に読み取れる場合は、当該治験実施計画書をもって症例報告書の見本に関する事項を含むものと解してよい。)
(5)同意文書及び説明文書
(6)治験責任医師及び治験分担医師の履歴書、治験分担医師となるべき者の氏名リスト
(7)治験の費用の負担について説明した文書
(8)被験者の健康被害の補償について説明した文書
(9)被験者の募集手順(広告等)に関する資料(募集する場合)
(10)被験者の安全等に係る報告
(11)その他審査委員会が必要と認める資料
2 病院長は、治験依頼者から治験実施の依頼があった場合には、前項各号に掲げる資料を添えて、審査委員会の意見を聴くものとする。
3 病院長は、審査委員会が治験の実施を承認する決定を下し、その旨を通知してきた場合には、これに基づく病院長の指示、決定を、治験審査結果通知書により、治験依頼者及び治験責任医師に通知するものとする。
4 病院長は、審査委員会が治験実施計画書、説明文書及びその他の手順等について、何らかの修正を条件に治験の実施を承認する決定を下し、その旨を通知してきた場合には、これに基づく病院長の指示、決定を、審査委員会が修正を条件に承認したことを証する文書とともに、治験の依頼をしようとする者及び治験責任医師となるべき者に、文書で通知すること。なお、何らかの修正を必要とされた文書は速やかに最新のものとし、その変更部分について、審査委員会の確認を得るものとする。
5 病院長は、審査委員会が治験の実施を却下する決定を下し、その旨を通知してきた場合には、治験の実施を了承することはできない。
6 病院長は、治験責任医師から提出された治験分担医師・治験協力者リストに基づき、治験の業務の一部を分担させる者の了承を行い、病院長が了承した当該治験分担医師・治験協力者リストを治験依頼者及び治験責任医師に提出するものとする。
(治験実施の契約等)
第5条 治験の契約は、病院長が審査委員会の意見に基づいて治験の実施を了承した後に、理事長名をもって、治験依頼者と治験契約書により契約を締結するものとする。
2 治験責任医師は、契約内容を確認するが、必ずしも署名等は必要としない。
3 病院長は、審査委員会が修正を条件に承認した治験については、第4条第5項の規定に基づく治験実施計画書等修正報告書についての審査委員会の確認を得た後に契約を締結するものとする。
4 治験契約書の内容を変更する必要がある場合は、第1項から第3項の規定に準じて、変更契約書により契約を締結するものとする。
5 治験契約書等に定める通知及び報告の内容は次のとおりとする。
(1)治験依頼者は、被験者の安全又は治験の実施に影響を及ぼす可能性のある重大な情報(医薬品医療機器等法施行規則第273条に定めるものを含む。)を治験責任医師と病院長に通知する。
(2)治験依頼者は、次に掲げる事項を病院長に通知する。
①治験を中断し、又は中止する場合には、速やかにその旨及びその理由の詳細
②治験により収集された臨床試験の試験成績に関する資料を承認申請書に添付しないこと、すなわち、被験薬の開発を中止する場合には、その旨及びその理由の詳細
(3)病院長は、次の審査委員会の意見を治験責任医師及び治験依頼者に通知する。
①治験実施の妥当性についての意見
②治験期間が1年を超える場合における治験の継続の妥当性についての意見
③第1号に規定する事項に関して治験の継続の妥当性についての意見
④被験者の意思に影響を与える可能性が認められたために治験責任医師がその説明文書を改訂したことに対する意見
⑤その他病院長が必要と認めたことへの意見
(4)病院長は、治験責任医師からの次の情報を、審査委員会及び治験依頼者に通知する。
①治験を中断し、又は中止する場合には、その旨及びその理由
②治験終了の場合には、その旨及び治験結果の概要
(5)治験責任医師は、重篤な有害事象が発生したときは、病院長及び治験依頼者に報告する。なお、製造販売後臨床試験の場合は、軽微とは言えないものであって、かつ、添付文書又は注意事項等情報
の「使用上の注意」から予測できない有害事象を病院長及び製造販売後臨床試験依頼者に通知する。
(治験の継続)
第6条 病院長は、実施中の治験について、治験責任医師より治験実施状況報告書が提出された場合は、審査委員会の意見を聴き、継続の適否を決定するものとする。
2 前項の場合においては、第4条第3項から第5項の規定を準用する。
3 病院長は、審査委員会が治験を継続して行うことが適当でない旨の意見を述べたときは、治験の継続を了承することはできないため、当該治験契約を解除しなければならない。
(治験実施計画書等の変更)
第7条 病院長は、治験責任医師又は治験依頼者から治験実施計画書等の変更依頼があった場合には、提出された治験に関する変更申請書、その他参考となる資料等を添えて、審査委員会の意見を聴き、継続の適否を決定するものとする。
2 前項の場合においては、第4条第3項から第6項までの規定を準用する。
(治験実施計画書からの逸脱)
第8条 病院長は、治験責任医師から被験者の緊急の危険を回避するためその他医療上やむを得ない理由により治験実施計画書からの逸脱又は変更を行った旨の報告を受けた場合は、提出された治験実施計画書からの逸脱に関する報告書、その他参考となる資料等を添えて、審査委員会の意見を聴き、その継続の適否を決定するものとする。
2 前項の場合においては、第4条第3項から第5項の規定を準用する。
(有害事象の発生)
第9条 病院長は、治験責任医師より重篤な有害事象発生の報告があった場合は、提出された重篤な有害事象に関する報告書、その他参考となる資料等を添えて、審査委員会の意見を聴き、その継続の適否を決定するものとする。
2 前項の場合においては、第4条第3項から第5項の規定を準用する。
(重大な安全性に関する情報の入手)
第 10 条 病院長は、治験依頼者より安全性に関する報告があった場合は、提出された安全性情報等に関する報告書、その他参考となる資料等を添えて、審査委員会の意見を聴き、その継続の適否を決定するものとする。
2 前項の場合においては、第4条第3項から第5項の規定を準用する。
(治験の中止、中断及び終了)
第 11 条 病院長は、治験依頼者から開発の中止等に関する報告書が提出されたときは、治験責任医師及び審査委員会に対し、治験終了(中止・中断)に関する報告書により通知するものとする。
2 病院長は、治験責任医師から治験終了(中止・中断)報告書が提出されたときは、治験依頼者及び審査委員会に治験終了(中止・中断)に関する報告書により通知するものとする。
(直接閲覧)
第 12 条 病院長は、治験依頼者によるモニタリング、監査並びに審査委員会及び規制当局による調査を受け入れ、これに協力しなければならない。また、モニター、監査担当者、審査委員会又は規制当局の求めに応じ、原資料等の全ての治験関連記録を直接閲覧に供しなければならない。
第3章 治験責任医師の業務
(治験責任医師の要件)
第 13 条 治験責任医師は、次に掲げる要件を満たさなくてはならない。
(1)教育、訓練及び経験によって、治験を適正に実施しうる者であること。
(2)治験依頼者と合意した治験実施計画書、最新の治験薬概要書、製品情報及び治験依頼者が提供するその他の文書に記載されている治験使用薬の適切な使用法に十分精通していること。
(3)合意された募集期間内に必要数の適格な被験者を集めることが可能であることを過去の実績等により示すことができること。
(4)合意された期間内に治験を適正に実施し、終了するに足る時間を有していること。
(5)治験を適正かつ安全に実施するため、治験の予定期間中に十分な数の治験分担医師及び治験協力者等の適格なスタッフを確保でき、また適切な設備を利用できること。
(治験責任医師の責務)
第 14 条 治験責任医師は次の事項を遵守しなければならない。
(1)医薬品医療機器等法、その他関係法令を熟知し、これを遵守すること。
(2)治験分担医師、治験協力者等に治験実施計画書、治験使用薬及び各人の業務について十分な情報を与え、指導及び監督すること。
(3)被験者となるべき者の選定に当たり、人権保護の観点から、治験実施計画書に定められた被験者の選択基準及び除外基準に基づき、被験者の健康状態、症状、年齢、性別、同意能力、治験責任医師等との依存関係、他の治験への参加の有無等を考慮のうえ、治験に参加を求めることの適否について慎重に検討すること。
(4)同意能力を欠く者については、当該治験の目的上、被験者とすることがやむを得ない場合を除き、原則として被験者としないこと。
(5)社会的に弱い立場にある者を被験者とする場合には、特に慎重な配慮を払うこと。
(6)治験実施計画書について治験依頼者と合意する前に、治験依頼者から提供される治験実施計画書案及び最新の治験薬概要書又は科学的知見を記載した文書、その他必要な資料、情報に基づき、治験依頼者と協議し、当該治験を実施することの倫理的及び科学的妥当性について十分検討すること。また、その検討結果に従って、治験実施計画書及び症例報告書を作成(確定)し、治験実施計画書、症例報告書及び本治験実施計画書を遵守して治験を実施することについて、治験依頼者と合意すること。治験実施計画書が改訂される場合も同様とする。
(7)治験実施の申請をする前に、治験依頼者の協力を得て、被験者から治験の参加に関する同意を得るために用いる同意文書及びその他の説明文書を作成すること。
(8)治験実施前及び治験期間を通じて、審査委員会の審査の対象となる文書のうち、治験責任医師が提出すべき文書を最新のものにすること。当該文書が追加、更新又は改訂された場合には、その全てを速やかに病院長に提出すること。
(9)治験関連の重要な業務の一部を治験分担医師又は治験協力者に分担させる場合には、分担させる業務と分担させる者のリストを病院長に提出し、その了承を受けること。
(10)病院長から新規又は継続中の治験に関する実施又は継続についての指示、決定の通知があったときは、その指示、決定に従うこと。
(11)治験契約締結前に、被験者を治験に参加させてはならないこと。
(12)本手順書第 17 条で規定する場合を除いて、治験実施計画書を遵守して治験を実施すること。
(13)治験使用薬の使用に当たっては、承認された治験実施計画書を遵守すること。
(14)治験使用薬の正しい使用方法を各被験者に説明、指示し、当該治験にとって適切な間隔で、各被験者が説明された指示を正しく守っているか否かを確認すること。
(15)実施中の治験においては1年に1回以上、又は審査委員会等の求めに応じて、治験実施状況報告書を病院長に提出すること。
(16)治験の実施に重大な影響を与え、又は被験者の危険を増大させるような治験のあらゆる変更につ
いて、治験依頼者及び病院長に速やかに報告書を提出すること。
(17)治験実施中に重篤な有害事象が発生した場合は、速やかに病院長及び治験依頼者に文書で報告するとともに、治験の継続の可否について病院長の指示を受けること。また、製造販売後臨床試験で重篤な有害事象が発生した場合は、直ちに病院長及び製造販売後臨床試験依頼者に報告するとともに、軽微とはいえないものであって、かつ、添付文書若しくは注意事項等情報の「使用上の注意」から予測できない有害事象についても文書で病院長及び製造販売後臨床試験依頼者に報告すること。
(18)治験が何らかの理由で中断又は中止された場合には、被験者に速やかにその旨を通知し、被験者に対する適切な治療及び事後処理を保証すること。
(19)治験実施計画書の規定に従って正確に症例報告書を作成し、その内容を点検し問題がないことを確認したときに氏名を記載し、治験依頼者に提出及びその写しを保管すること。また、治験分担医師が作成した症例報告書については、その内容を点検し問題がないことを確認したときに氏名を記載し、治験依頼者に提出及びその写しを保管すること。
(20)治験依頼者によるモニタリング、監査、並びに審査委員会及び規制当局による調査を受け入れ、協力すること。また、これらの場合においては、モニター、監査担当者、審査委員会又は規制当局の求めに応じて、原資料等の全ての治験関連記録を直接閲覧に供すること。
(21)治験が終了した場合には、速やかに病院長に治験の終了報告書を提出すること。なお、治験を中断又は中止した場合においても同様の手続きを行うこと。
(22)治験の実施に係る文書又は記録を任意様式又は電磁的記録媒体に記録することにより保存すること。なお、これらの保存の対象となる記録は、各被験者に関連する全ての観察記録を含む適切かつ正確な原資料及び治験に関する記録であり、治験の実施に関する重要な事項について行われた治験依頼者との書簡、会合、電話連絡等に関するものを含む。
(被験者の同意の取得)
第 15 条 治験責任医師又は治験分担医師は、被験者となるべき者が治験に参加する前に、被験者となるべき者に対して、文書による適切な説明を行った上で、被験者となるべき者から自由意思による同意を文書により得るものとする。
2 同意文書には、説明を行った治験責任医師又は治験分担医師並びに被験者となるべき者又は代諾者となるべき者が署名し、各自日付を記入するものとする。なお、治験協力者が補足的な説明を行った場合には、当該治験協力者も署名し、日付を記入するものとする。
3 治験責任医師又は治験分担医師は、前項の同意文書の写し及びその他の説明文書を被験者に渡すものとする。また、被験者の文書同意後に、同意文書の様式及びその他の説明文書が改訂された場合には、その都度、新たに文書により同意を得なければならない。この場合においては、第 1 項及び第2項の規定を準用する。
4 治験責任医師、治験分担医師及び治験協力者は、治験への参加又は治験への参加の継続に関し、被験者となるべき者又は代諾者となるべき者に対し、強制したり又は不当な影響を及ぼしてはならない。また、説明の際に用いる文言は、可能な限り平易なものとするとともに、被験者となるべき者又は代諾者となるべき者に権利を放棄させるかそれを疑わせる語句、又は治験責任医師、治験分担医師、治験協力者、本院、治験依頼者の法的責任を免除するかそれを疑わせる語句が含まれていてはならない。
5 治験責任医師又は治験分担医師は、同意を得る前に、被験者となるべき者が、質問をする機会と、治験に参加するか否かを判断するのに十分な時間を与えなければならない。その際、当該治験責任医師、治験分担医師又は補足的説明者としての治験協力者は、全ての質問に対して被験者となるべき者が満足するように答えなければならない。
6 被験者の同意に関連し得る新たな重要な情報が得られた場合には、治験責任医師は、速やかに当該情報に基づき同意文書及びその他の説明文書を改訂し、審査委員会の承認及び病院長の了承を得なければならない。この場合において、治験責任医師又は治験分担医師は、すでに治験に参加している被
験者に対して、当該情報を被験者又は代諾者に速やかに伝え、治験に継続して参加するか否かについて、被験者又は代諾者の意思を確認するとともに、審査委員会の承認及び病院長により了承された同意文書及びその他の説明文書を用いて改めて説明し、治験への参加の継続について被験者又は代諾者から自由意思による同意を文書により得なければならない。
7 治験への参加の継続について被験者又は代諾者の意思に影響を与える可能性のある情報が得られた場合には、治験責任医師又は治験分担医師は、当該情報を速やかに被験者又は代諾者に伝え、被験者の治験への参加の継続について、被験者又は代諾者の意思を確認しなければならない。この場合にあっては、当該情報を被験者又は代諾者に伝えたことを文書に記録しなければならない。
8 同意の能力を欠く等により被験者となるべき者の同意を得ることは困難であるが、当該治験の目的上それらの被験者を対象とした治験(未xx者や重度の認知症患者を対象とする治験等)を実施することがやむを得ない場合には、治験責任医師又は治験分担医師は、代諾者となるべき者に対して同意文書及びその他の説明文書を用いて十分説明し、治験への参加について文書による同意を得るものとする。この場合、同意に関する記録とともに、代諾者と被験者との関係を示す記録を残すものとする。この場合においては、第1項から第7項までの規定を準用する。
9 前項の場合においても、治験責任医師又は治験分担医師は、被験者となるべき者の理解力に応じて説明を行い、可能であれば被験者となるべき者からも同意文書への署名と日付の記入を得るものとする。
10 被験者に対する直接の臨床的利益が予測されない非治療的な内容の治験においては、必ず当該被験者となるべき者から同意を得なければならない。ただし、次の要件を全て満たす場合には、代諾者による同意を得て治験を行うことができる。この場合においては、第1項から第9項までの規定を準用する。
(1)治験の目的が、本人による同意が可能な被験者による治験では達成されないこと。
(2)被験者に対する予見しうる危険性が低いこと。
(3)被験者の福祉に対する悪影響が最小限とされ、かつ、低いこと。
(4)代諾者となるべき者の同意に基づいて被験者を治験に組み入れる旨を明示した上で審査委員会に申請がなされ、かかる被験者の参加を承認する旨が治験審査結果通知書に記載されていること。
11 緊急状況下における救命的な内容の治験であって、被験者となるべき者から事前の同意を得ることが不可能である場合においては、被験者となるべき者の代諾者からその同意を得るものとする。被験者となるべき者の事前の同意が不可能で、かつ、被験者となるべき者の代諾者から同意を得ることができない場合には、次の各号の全てに該当する場合に限り治験に参加させることができる。この場合においては、第1項から第8項までの規定を準用する。
(1)被験者となるべき者に緊急かつ明白な生命の危険が生じていること。
(2)現在利用可能な治療方法で十分な効果が期待できないこと
(3)被験薬の使用により被験者となるべき者の生命の危険が回避できる可能性が十分にあると認められること。
(4)予測される被験者に対する不利益が最小限度のものであること。
(5)代諾者となるべき者と直ちに連絡をとることができないこと。
12 被験者となるべき者又はその代諾者となるべき者が同意文書及びその他説明文書等を読むことができないが、口頭又は他の伝達方法ではその内容を理解することができる場合には、説明に際してxxな立会人を要することとする。この場合においては、第1項から第9項までの規定を準用する。なお、第1項の規定の準用に当たっては、文書による説明に代えて口頭、その他の伝達方法によるものとする。また、第2項の規定の準用に当たっては、さらに当該立会人の署名及び日付の記入を必要とするものとする。
(被験者に対する責務)
第 16 条 治験責任医師は、治験に関連する医療上の全ての判断に責任を負うものとする。
2 病院長及び治験責任医師は、被験者の治験参加期間中及びその後を通じ、治験に関連した臨床上問題となる全ての有害事象に対して、十分な医療が被験者に提供されることを保証するものとする。また、治験責任医師又は治験分担医師は、有害事象に対する医療が必要となったことを知った場合には、被験者にその旨を伝えるものとする。
3 治験責任医師又は治験分担医師は、被験者に他の主治医がいるか否かを確認し、被験者の同意のもとに、主治医に被験者の治験への参加について知らせるものとする。
4 被験者が治験の途中で参加を取りやめようとする場合、又は取り止めた場合には、被験者はその理由を明らかにする必要はないが、治験責任医師又は治験分担医師は、被験者の権利を十分に尊重した上で、その理由を確認するための適切な努力を払うものとする。
(治験実施計画書からの逸脱等)
第 17 条 治験責任医師又は治験分担医師は、治験責任医師が治験依頼者との事前の文書による合意及び審査委員会の事前の審査に基づく文書による承認を得ることなく、治験実施計画書からの逸脱又は変更を行ってはならない。ただし、被験者の緊急の危険を回避するためのものである等医療上やむを得ないものである場合又は治験の事務的事項(例:治験依頼者の組織・体制の変更、実施医療機関の名称・診療科名の変更、実施医療機関及び治験依頼者の所在地又は電話番号の変更、モニターの変更)のみに関する変更である場合には、この限りではない。
2 治験責任医師又は治験分担医師は、治験実施計画書から逸脱した行為を理由のいかんによらず全て記録しておくものとする。
3 治験責任医師又は治験分担医師は、被験者の緊急の危険を回避するためのものである等医療上やむを得ない事情のために、治験依頼者との事前の文書による合意及び審査委員会の事前の承認なしに治験実施計画書からの逸脱又は変更を行うことができる。その際には、治験責任医師は、逸脱又は変更の内容及び理由並びに治験実施計画書の改訂が適切な場合にはその案を可能な限り早急に治験依頼者並びに病院長及び病院長を経由して審査委員会に提出してその承認を得るとともに、病院長の了承及び病院長を経由して治験依頼者の合意を文書で得るものとする。
第4章 治験使用薬の管理
(治験使用薬の管理)
第 18 条 本院における治験使用薬の管理責任は、市販品を用いて実施する製造販売後臨床試験の場合を除き、病院長が負うものとする。
2 病院長は、治験使用薬を適正に管理させるため、治験薬管理者を置くものとする。
3 治験薬管理者は本院薬剤部長とし、本院で実施される全ての治験の治験使用薬を適正に管理するものとする。また、治験薬管理者は、必要に応じ、治験薬管理補助者を指名し、治験薬管理者の管理、監督の下に治験使用薬を管理させることができる。
4 病院長又は治験薬管理者は、治験依頼者が作成した治験使用薬の取扱い及び保管、管理並びにそれらの記録に際して従うべき指示を記載した手順書及び省令を遵守して適正に治験使用薬を保管、管理する。
5 治験薬管理者は次の業務を行う。
(1)治験使用薬を受領し、治験使用薬受領書を発行すること。ただし、治験使用薬の出納が WEB 上などの専用システム(IXRS)にて管理されている場合はその入力を行うことをその代わりとする。
(2)治験使用薬の保管、管理及び払い出しを行うこと。
(3)治験使用薬管理表を作成し、治験使用薬の使用状況及び治験進捗状況を把握すること。ただし、治験使用薬の管理が WEB 上などの専用システム(IXRS)にて行われており、治験依頼者が管理表の記載を必須としてない場合は、その入力を行うことをその代わりとする。
(4)未使用治験使用薬(被験者からの未服用返却治験使用薬、使用期限切れ治験使用薬、欠陥品を含
む。)を治験依頼者に返却し、未使用治験使用薬返却書を発行すること。ただし、治験使用薬の出納が WEB 上などの専用システム(IXRS)にて管理されている場合はその入力を行うことにてその代わりとする。
(5)治験実施計画書に規定された量の治験使用薬が被験者に投与されていることを確認すること。
第5章 治験センター
(治験センターの設置及び業務)
第 19 条 本院に治験業務の執行体制の強化及び円滑な治験実施のため、治験センターを置く。
2 センターに次の職員を置く。
(1)センター長
(2)副センター長
(3)センタースタッフ
3 センター長は、センターが行う業務の円滑な推進等を図るため、必要な業務を統括する。また、副センター長は、センター長を補佐し、センター長に事故あるときはその職務を代理する。
4 審査委員会委員長はセンター長を兼ねることはできない。
5 治験センターは、病院長の指示により、次の業務を行うものとする。
(1)治験依頼者に対する必要書類の交付と治験依頼手続きの説明
(2)治験実施依頼書及び審査委員会が審査の対象とする審査資料の受付(治験依頼者又は治験責任医師から、追加、更新又は改訂された審査対象資料及びその他の通知書又は報告書が提出された場合における審査委員会及び治験依頼者又は治験責任医師への送付を含む。)
(3)治験依頼者及び治験責任医師への治験審査結果通知書の交付(審査委員会の審査結果を確認するために必要とする文書の治験依頼者への交付を含む。)
(4)治験契約の締結
(5)治験終了(中止・中断)報告書の受領及び通知
(6)記録の保存
(7)治験の実施に係る協議
(8)その他治験に関する業務の円滑化を図るために必要な業務
第6章 記録の保存
(記録の保存責任者)
第 20 条 本院において保存すべき文書の保存責任者は次のとおりとする。
(1)診療録、検査データ、同意文書等:診療科長
(2)治験受託に関する文書等: 事務局研究支援課長
(3)治験使用薬に関する記録(治験使用薬管理表、治験使用薬納品書、未使用治験使用薬受領書等):治験薬管理者
2 病院長又は記録の保存責任者は、本院において保存すべき文書を適正に保存しなければならない。
(記録の保存期間)
第 21 条 病院長は、本院において保存すべき必須文書を、当該治験薬に係る医薬品の製造販売承認日
(開発が中止された場合には開発中止の通知を受けた日から3年が経過した日又は治験の中止又は終了後3年が経過した日うちいずれかの遅い日までの期間、また、製造販売後臨床試験の場合は、当該被験薬の再審査又は再評価の終了後5年が経過した日までの期間保存するものとする。ただし、治験
依頼者がこれよりも長期間の保存を必要とする場合には、保存期間及び保存方法について治験依頼者と協議するものとする。
2 治験依頼者は、病院長に対し、前項にいう製造販売承認取得、開発中止あるいは再審査又は再評価終了の報告を行うものとする。
第7章 その他
(書式)
第 22 条 治験に係る書式は、「治験の依頼等に係る統一書式について」(平成 24 年3月7日医xx発 0307 第1号、薬食審査発 0307 第2号)及び関連通知において示される統一書式を使用する。なお、その後に改正された場合にはそれによる。また、院内の手続きに関する書類については、別途、様式集にて定める。
2 再生医療等製品にかかる治験については医療機器の分類により前項の統一書式を準用し、「医療機器」を「再生医療等製品」、「被験機器」とあるのを「被験製品」と読み替える。
附 則
この業務手順書は、西暦 2022 年 4 月1日から施行する。附 則
この業務手順書は、西暦 2022 年 11 月 10 日から施行する。