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2022年4月改訂版
国選弁護関連業務の解説
※この解説は、令和元年9月5日法務大臣認可、令和元年10月1日施行の国選弁護人の事務に関する契約約款に対応しています。
目 次
第1 諸規則全体の構造 1
1 業務方法書について 1
2 法律事務取扱規程について 1
3 国選弁護人の事務に関する契約約款について 2
第2 契約約款と個別事件との関係 4
第3 契約締結の方法 5
1 契約申込書の提出 5
2 弁護士会による申込書のとりまとめ 6
3 諾否の通知 6
4 契約申込書記載内容の変更 6
第4 指名通知業務の準備 6
1 指名通知用名簿の作成 6
2 指名通知用名簿の種類 7
第5 センターに対する報告 7
第6 指名通知の方法 8
1 指名通知用名簿に基づく指名打診、承諾の確認 8
2 指名打診に対する承諾の努力義務 8
第7 報酬及び費用の算定・支払の方法 8
1 報酬算定の手続の概要 8
2 事件の終了から報酬及び費用の支払までの流れ 9
3 報告書の記載内容 12
第8 報酬及び費用の算定基準 14
1 総則 14
(1)基本的な考え方 14
(2)弁護人の労力を反映させた客観的基準(労力基準) 14
(3)一定の成果に対する加算報酬(成果基準) 15
(4)報酬と費用の別立て 15
(5)消費税調整額について 16
2 被疑者国選弁護の算定基準 17
(1)基礎報酬・多数回接見加算報酬 18
(2)第1回公判期日前の証人尋問等期日加算報酬 19
(3)要通訳事件加算報酬 19
(4)遠距離接見等加算報酬 19
(5)特別案件加算報酬 21
(6)合意制度加算報酬 21
(7)特別成果加算報酬 21
(8)遠距離接見等交通費・遠距離接見等宿泊料 22
(9)出張に伴う旅費・日当・宿泊料 24
(10)通訳人費用 24
(11)訴訟準備費用 25
3 被告人国選弁護の算定基準(第xx)
(即決被告事件及び裁判員裁判事件以外) 26
(1)公判前整理手続に付されない事件の基礎報酬 28
(2)公判前整理手続に付された事件の基礎報酬 28
(3)実質公判期日に対する加算報酬 28
(4)判決宣告期日等に対する加算報酬 29
(5)公判前整理手続・期日間整理手続期日に対する加算報酬 29
(6)追起訴加算報酬 30
(7)第1回公判期日前の証人尋問等期日加算報酬 30
(8)遠距離接見等加算報酬 30
(9)重大案件加算報酬 31
(10)特別案件加算報酬 31
(11)合意制度加算報酬 32
(12)特別成果加算報酬 32
(13)記録謄写費用 34
(14)遠距離接見等交通費・遠距離接見等宿泊料 36
(15)出張に伴う旅費・日当・宿泊料 36
(16)通訳人費用 36
(17)訴訟準備費用 36
(18)被疑者国選弁護人から被告人国選弁護人を継続して務めた場合の取扱い
---------------------------------------------------------------37
(19)基礎報酬の算定の特則 37
4 裁判員裁判事件の算定基準 39
(1)基礎報酬 40
(2)実質公判期日に対する加算報酬 40
(3)判決宣告期日等に対する加算報酬 41
(4)整理手続期日に対する加算報酬 41
(5)評議対応加算報酬 41
(6)xx加算報酬 42
(7)その他の加算報酬 42
(8)費用及び基礎報酬の算定の特則 42
5 即決被告事件の普通契約に関する算定基準 43
(1)基礎報酬 43
(2)実質公判期日に対する加算報酬 43
(3)基礎報酬の算定の特則 43
(4)費用 43
6 即決被告事件の一括契約に関する算定基準 44
(1)一括契約の定義 44
(2)基礎報酬 44
(3)実質公判期日に対する加算報酬 44
(4)基礎報酬の算定の特則 44
(5)費用 45
7 控訴審における算定基準 45
(1)基礎報酬 45
(2)控訴審公判加算報酬 46
(3)その他 46
8 上告審における算定基準 47
9 再審事件における算定基準 47
第9 法律事務取扱規程 48
1 弁護士職務基本規程をもとにした24項目の基準 48
2 契約に違反した場合の措置 48
3 法律事務の取扱いの基準と措置との関係 49
4 法律専門職者団体への通知 49
5 その他の措置 50
6 措置に関する手続等 50
7 契約の終了等 50
8 弁護士会及び日本弁護士連合会に対する協力 51
本書中で引用している「総合法律支援法」「業務方法書」「法律事務取扱規程」「国選弁護人の事務に関する契約約款」は、日本司法支援センター(法テラス)のHPに掲載しています。
日本司法支援センター(法テラス)xxxxx://xxx.xxxxxxxxx.xx.xx/
第1 諸規則全体の構造
日本司法支援センター(以下「センター」といいます。)では、国選弁護人になろうとする弁護士との契約、国選弁護人候補の指名及び裁判所への通知、国選弁護人に対する報酬・費用の支払などの業務を行います(総合法律支援法(以下「支援法」といいます。)第30条第1項第6号)。
国選弁護関連業務に関するセンターの基本的なあり方等は「業務方法書」「法律事務取扱規程」「国選弁護人の事務に関する契約約款」に規定されていますが、それぞれ、規則としての位置づけや対象範囲が異なります。
1 業務方法書について
業務方法書は、独立行政法人などの法人が行う業務の具体的な方法の要領を記載した書類のことです。法人が行う業務の公共的性格に鑑み、業務の具体的方法について一定程度主務大臣の関与に係らしめる必要があることから、法人に作成が義務づけられるとともに、主務大臣の認可が求められています。こうした業務方法書の位置づけは、独立行政法人の枠組みを一部利用しているセンターにおいても同様であり、センターは、業務開始にあたり、業務方法書の作成を義務づけられ、法務大臣による認可を受けており、また変更に当たっても認可を受けています(支援法第34条)。
業務方法書は、センターが行う業務全般について規定しています。
2 法律事務取扱規程について
法律事務取扱規程は、他の独立行政法人等に例を見ない、センター固有のものです。センターにおいては、他の独立行政法人とは異なり、弁護士や司法書士という法律
専門家と契約して、他者の権利・利益に関して法律事務を取り扱わせるという特殊な業務を行いますので、その業務の遂行の上で、これらの法律専門家の職務の独立性を確保しなければならないという特別な課題が課せられています。そこで、支援法では、法律専門家の職務の独立性を確保するとともに、センターが契約弁護士・契約司法書士に対して契約上の措置をとる場合の判断の客観性を確保するため、第三者機関として審査委員会を設置し、センターが契約した法律の専門家に対して契約上の措置をとる場合には、審査委員会の議決を経なければならない旨定めています(支援法第29条第8項第1号)。
また、支援法は、契約弁護士等による法律事務の取扱いの基準に関する事項や、契約に違反した場合の措置に関する事項などを定めるための規定として、法律事務取扱規程を設け、その作成及び変更に当たっては、審査委員会の議決を経なければならない旨定めています(支援法第29条第8項第2号)。契約上の措置をとる場合の実体的要件や、措置の具体的内容についても、審査委員会によるxxかつ中立的な判断を
経ることとされています。
法律事務取扱規程は、法律事務を取り扱う契約弁護士等が遵守すべき法律事務の取 扱いの基準と、契約に違反した場合の措置について規定しています(支援法第35条)。なお、法律事務取扱規程は、民事・刑事・少年を問わず、また、受託業務(日弁連
の委託援助業務を含む)に関しても、法律事務の取扱いに関する契約全般が対象となります。また、センターのスタッフ弁護士については、司法過疎地域において私選の刑事弁護事件を担当する場合なども対象となります。
3 国選弁護人の事務に関する契約約款について
国選弁護人の事務に関する契約約款(以下「国選弁護人契約約款」又は単に「契約約款」といいます。)は、一般の弁護士との間で、国選弁護人の事務の取扱いについて締結する契約の内容を規定するものであり、国選弁護人の契約の締結に関する事項、国選弁護人候補の指名通知に関する事項、報酬及び費用の算定基準とその支払に関する事項並びに契約解除その他契約に違反した場合の措置に関する事項を定めるものです(支援法第36条参照)。
国選弁護以外の法律事務に関する契約、例えば、民事事件に関する契約や、刑事事件でも私選弁護に関する契約は、適用対象になりません。また、国選弁護事務の取扱いに関する契約でも、スタッフ弁護士との間の契約のように、給与の支払という方法によって法律事務の取扱いに対する対価が支払われる契約も、この契約約款の対象にはなりません。スタッフ弁護士については、別途契約(勤務契約)が締結されています(業務方法書第71条第16・17号、法律事務取扱規程第2条第5号参照)。
【表1】諸規則全体の構造
第2 契約約款と個別事件との関係
契約締結から個別事件に関する権利義務関係の発生に至るまでのメカニズムについては、契約約款による契約を基本契約と位置づけ、これに基づくセンターからの指名通知及び裁判所からの選任によって、個別事件に関する権利義務関係が発生する、という法的構成を採用しています。これは、基本契約の締結によって国選弁護人候補者をあらかじめ確保するとともに、個別事件については、迅速な手続によって権利義務を発生させる必要があるためです。
【表2】契約締結から個別事件についての権利義務関係の発生まで
なお、契約約款において規定する契約の種類としては、
①普通国選弁護人契約(普通契約)・・報酬・費用が事件ごとに定められる契約
②一括国選弁護人契約(一括契約)・・複数の即決申立被告事件について報酬・費
用が一括して定められる契約
という2種類の契約類型を設けました。普通契約が通常想定される契約類型ですが、即決裁判手続の申立てがされた被告事件(以下「即決申立被告事件」といいます。)については、手続も簡易かつ類型的であることから、一括して処理することで効率化を図る余地があるものと考え、一括契約という契約類型を設けました。なお、一括契約のみの契約ですと、対象となる事件が複数の即決申立被告事件に限られるため、通常は、普通契約のみの締結又は普通契約と一括契約の両方の契約の締結を想定しています。
また、普通契約を締結している弁護士(普通国選弁護人契約弁護士)が、同一の日に、複数の即決申立被告事件についてセンターから指名打診を受け、これらを承諾したときは、当該承諾に係る複数の即決申立被告事件に関する報酬及び費用は、当該複数の即決申立被告事件について一括国選弁護人契約が成立した場合の例により算定されます(契約約款第15条)。
普通契約は、被疑者国選・被告人国選を問わず、全ての国選弁護事件を対象とする契約ですが、この契約を締結したからといって、全ての国選弁護事件を担当しなければならなくなる、というものではありません。具体的に担当する事件の種類は、当該種類の事件に対応する指名通知用名簿への登載を承諾するかどうかによって決まります(契約約款第7条参照)。したがって、例えば、被告人国選弁護事件は受任するが、被疑者国
選弁護事件は受任しない、という場合には、被告人国選弁護事件用の指名通知用名簿のみに登載を承諾し、被疑者国選弁護事件用の指名通知用名簿には登載を承諾しない、という選択が可能であり、その場合には、被告人国選弁護事件についてのみ指名の打診がなされ、被疑者国選弁護事件については指名の打診がなされない、という取扱いが行われることになります(後記「第6 指名通知の方法」参照)。もっとも、どのような種類の指名通知用名簿を作成するかは、各地における協議を踏まえて決定されており、具体的な運用は各地の実情に応じて異なっています。
【表3】国選弁護人契約の種類
第3 契約締結の方法
1 契約申込書の提出
センターとの間で国選弁護人契約を締結しようとする弁護士は、その所属する弁護士会に対応するセンターの地方事務所(以下「地方事務所」といいます。)に対し、契約申込書及び所属弁護士会発行の会員登録証明書(その発行日付が提出日から1か月以内のものに限る。)を提出します。ただし、現にセンターとの間で国選付添人契約又は国選被害者参加弁護士契約を締結している弁護士については、会員登録証明書の提出を要しません(業務方法書第72条第3項、契約約款第4条第1項)。
契約申込書には、契約約款第4条第2項に定める必要的記載事項を記載しますが、指名通知用名簿作成の便宜のため、地域の実情に応じて契約約款に定める事項以外の事項を記載する形式の書式を用いることも可能です。契約約款に定める記載事項以外
のものとしては、例えば、受任する事件が係属する地裁支部・簡裁の特定、各種事件名簿への登載の諾否などが考えられますが、どのような事項の記載を求めるかは、各地の地方事務所と弁護士会との協議により決定しています。各地の書式については、各地の地方事務所又は弁護士会に備え置いています。
2 弁護士会による申込書のとりまとめ
地方事務所は、その所在地にある弁護士会からの申出があるときは、弁護士会に所属弁護士の申込書のとりまとめを依頼し、弁護士会から申込書をまとめて受領する方法により申込みを受け付けます(業務方法書第72条第4項)。
また、地方事務所は、申込書のとりまとめを行う弁護士会から、あらかじめ、国選弁護人として推薦する弁護士についてのみ申込書のとりまとめを行う旨の通知を受けているときは、弁護士会によるとりまとめを経ずにされた所属弁護士からの申込みについて、弁護士会が申込書のとりまとめを行っている旨を告げた上で申込書を受理し、当該申込者との契約締結について弁護士会に意見を求めた上で、申込みの諾否を判断する取扱いをします(業務方法書第72条第5項)。
3 諾否の通知
センターは、申込みを受け付けたときは、速やかに諾否を決定して申込者に通知します(業務方法書第72条第8項、契約約款第6条)。
なお、弁護士会が申込書のとりまとめを行った場合で、申込者からその旨の指示があるときには、諾否の通知を、弁護士会を通じて行う取扱いとすることも可能です。
4 契約申込書記載内容の変更
契約申込書の記載事項に変更があった場合、センターと契約した弁護士は、遅滞なくその旨を契約申込書を提出した地方事務所に届け出てください(契約約款第9条第
1項、第13条第1項)。また、所属弁護士会を変更したときは、遅滞なくその旨を変更後の所属弁護士会に対応する地方事務所に届け出てください(契約約款第9条第
2項、第13条第2項)。変更届の書式については各地の地方事務所に備え置いています(センターのHPからダウンロードすることもできます。)。
第4 指名通知業務の準備
1 指名通知用名簿の作成
センターは、裁判所等から、国選弁護人の候補を指名して通知するよう請求があったときは、遅滞なく、国選弁護人契約弁護士の中から、国選弁護人の候補を指名し、
裁判所に通知するための体制を整備します(業務方法書第73条第1項)。
指名通知業務の体制整備は、指名通知業務を迅速かつ確実に行うために必要なものであり、国選弁護人候補の指名通知を請求する裁判所等と指名通知業務を行う地方事務所との対応関係の決定(業務方法書第73条第4項)、土曜日・日曜日その他地方事務所の休業日における指名通知業務の処理方式の決定(同条第3項)、作成すべき名簿の種類、国選弁護人の候補として指名する手順の決定(同条第8項)などを行います。
そして、指名通知業務の体制整備の中で最も重要な作業が、指名通知を行うために用いる名簿(以下「指名通知用名簿」といいます。)の準備です。指名通知業務を迅速かつ確実に遂行するため、地方事務所ごとに、あらかじめ指名通知用名簿を調製し、地方事務所に備え置きます(同条第6項)。
なお、地方事務所は、弁護士会から申出があるときは、弁護士会に指名通知用名簿の調製への協力を依頼し、これに基づいて同名簿を調製します(同条第7項)。
2 指名通知用名簿の種類
指名通知用名簿は、各地域において、裁判所や弁護士会との協議を経て作成されています。一般的には、次のような名簿が考えられます。
① 被疑者国選用名簿 担当日を決める待機制の名簿、担当日を特定せずに受任用意のある弁護士を登載する名簿制など。
② 被告人国選用名簿ア 通常事件用名簿
イ 裁判員裁判事件用名簿
指定された公判期日ごとに受任用意のある弁護士を登載する公判期日指定方式や、指名通知の請求があった日に打診を受ける弁護士を登載する請求日対応方式など。
③ 即決裁判用名簿
④ 重大事件用名簿 (被疑者・被告人共通) 重大事件や複雑困難事件など、弁護活動に特別な負担を要する事件に対応するための名簿など。
⑤ 控訴審用・上告審用名簿
⑥ その他の名簿 例えば、少年事件用名簿、支部ごと・地区ごとの名簿など。
第5 センターに対する報告
次のような場合には、センターに対する報告をお願いします。
① 国選弁護人を解任されたとき(契約約款第10条第2項)
② 被疑者が起訴若しくは釈放(勾留の執行停止によるときを除く。)され又は家庭裁判所に送致されたとき(契約約款第11条第1項)
③ 被告事件の審級における弁護活動が終了したとき(契約約款第11条第2項)
④ センターが、訴訟費用の負担に関する判断を行う裁判所等の要請に応じる等の理由のため、国選弁護人に係る訴訟費用の概算額を算定するために必要な事項の報告を求めたとき(契約約款第12条)
第6 指名通知の方法
1 指名通知用名簿に基づく指名打診、承諾の確認
地方事務所は、裁判所等から国選弁護人候補の指名通知請求を受けたときは、遅滞なく、国選弁護人契約弁護士の中から、国選弁護人の候補を指名し、裁判所等に通知します(業務方法書第74条第1項)。
このうち、一般の契約弁護士について指名通知を行う場合には、指名通知用名簿に基づき、あらかじめ定められた指名の手順に従って指名することについての打診を行い、弁護士の承諾を確認した上で、国選弁護人候補として指名し、裁判所等に通知します(業務方法書第74条第2項、契約約款第7条第1項、第8条第1項)。
2 指名打診に対する承諾の努力義務
契約約款第7条第3項に、指名打診を受けた一般国選弁護人契約弁護士は、これを承諾するよう努めなければならない旨規定されています。
第7 報酬及び費用の算定・支払の方法
1 報酬算定の手続の概要
国選弁護人に対する報酬及び費用は、契約約款別紙として定められる「報酬及び費用の算定基準」(以下「算定基準」といいます。)に基づいて算定します。算定基準は、できるだけ客観的な指標に基づいて報酬及び費用を算定するよう、策定されています。また、国選弁護人に対して支払う報酬及び費用は、国選弁護人契約弁護士からの報告に基づいて算定します。センターが算定した金額に対し、当該弁護士から不服の申立てがあった場合には再算定を行いますが、再度の不服申立制度は設けず、金額は再算定を経た段階(不服申立てがない場合には不服申立期間が経過した段階)で確定させる、という方式になっています。算定の手続がこのような方式とされているのは、国選弁護人に支払われる報酬及び費用は訴訟費用の一部となるため、手続上、早期にその金額を確定させる必要があるとの事情によるものです。
なお、センターは、国選弁護人から提出された報告書に基づいて報酬及び費用を算定しますが、その報告のxx性を担保するため、センターは報告書の内容を確認するため必要な調査を行うことができ、また国選弁護人はセンターが行う調査に協力しなければならない旨が定められています(契約約款第26条)。
2 事件の終了から報酬及び費用の支払までの流れ
【表4】事件終了から報酬及び費用の支払までの流れ
担当事件の終了(被疑者の起訴・釈放・家裁送致・判決宣告・解任等)
14営業日以内
報告書提出
14営業日以内に報告書提出なし
弁護士・弁護士会に通知
通知から
7営業日経過
急病・事故の報告
遅延のやむを得ない事由の疎明資料を添えて請求
7営業日以内 (活動内容の証明資料添付を含む) 7営業日以内
7営業日以内
(やむを得ない事由あり) (やむを得ない事由なし)
活動内容の証明資料添付
活動内容の調査
(添付あり) (添付なし)
7営業日以内
報酬額の算定
報酬額の算定
一定額の算定
最低額の算定
(0円もあり)
報酬額の算定
最低額の算定
(0円もあり)
7営業日以内
不服申立
7営業日以内
7営業日以内
不服申立
7営業日以内
7営業日以内
不服申立
不服申立不可
7営業日以内
再算定
再算定
再算定
金額確定 (翌月20日までに指定口座に入金)
(1)報告書の提出
国選弁護人が、報酬及び費用を請求しようとするときは、事件終了日から14日
(土日休日、1月2日、同月3日及び12月29日から同月31日までの日を含みません。以下、報酬及び費用の算定及び支払に関する期間の計算については同じです(契約約款第18条)。)以内に、センターに報告書を提出して報酬及び費用を請求しなければなりません。
ここでいう「事件終了日」とは、以下のとおりです(契約約款第19条)。
① 被疑者国選事件
被疑者が起訴若しくは釈放され又は家庭裁判所に送致された日、それ以前に解任された場合は当該解任の日(なお、継続して被告人国選を担当する場合にも、被疑者国選事件の終了時に報告書の提出が必要です。)
② 被告人国選事件
○ 判決の宣告その他の事由により事件の審級における公判手続が終了したときは当該終了の日(上訴期間満了時ではありません。)
○ 国選弁護人を解任されたときは当該解任の日
○ 選任に係る被告事件の略式命令に対する正式裁判の請求が取り下げられたときは当該取下げの日
○ 選任に係る被告事件の上訴が取り下げられたときは当該取下げの日
(2)センターによる報酬算定等
センターは、報告書が提出されたときは、提出があった日から7日以内に報酬及び費用を算定して、当該弁護士にその額及び内訳を通知します(契約約款第22条第1項)。当該弁護士は、この通知を受けた日から7日以内に、不服の対象となる算定項目及び理由を付して、不服の申立てをすることができます(同条第2項、第3項)。センターは、不服の申立てを受けたときは、報酬及び費用を再度算定し、不服の申立てを受けた日から7日以内にその結果を通知します(同条第4項)。これにより、センターが支払うべき金額が確定し、当該弁護士は、再度にわたって不服の申立てをすることはできません。
センターは、当該契約弁護士に対し、金額が確定した日の属する月の翌月20日までに、報酬及び費用を指定口座に送金して支払います(同条第5項)。
(3)所定の期間内に報告がなかった場合の手続
① 弁護士及び弁護士会に対する通知
センターは、国選弁護人契約弁護士が報告書の提出期間内に報告書を提出しないときは、当該弁護士及びその所属弁護士会に対し、その旨を通知します(契約
約款第23条第1項本文)。ただし、センターが通知するまでの間に報告書が提出されたときは、弁護士会への通知は行いません(同項ただし書)。
② 報酬及び費用の請求
通知を受けた弁護士は、通知を受けてから7日以内に、報告書の提出期間内に請求できなかったやむを得ない事由を疎明する資料を添えて、地方事務所に対し報告書を提出して、報酬及び費用の請求をすることができます(契約約款第23条第2項)。
ア やむを得ない事由があると認められる場合
センターが、やむを得ない事由により報告書の提出期間内に請求することができなかったと認めるときは、所定の期間内に行われた請求と同様に取り扱い、報告書に基づいて報酬及び費用を算定し、請求から7日以内に国選弁護人契約弁護士にその額及び内訳を通知します。当該弁護士は、算定の結果に対して不服の申立てをすることもできます(契約約款第23条第5項、第6項)。
イ やむを得ない事由があるとは認められない場合
やむを得ない事由により報告書の提出期間内に請求することができなかったとは認められない場合は、原則として、請求がされなかった場合と同様に取り扱うことになり、ゼロ円とすることを含む最低限の金額を報酬及び費用の額として算定します(契約約款第24条第1項第2号、算定基準第36条、第46条(第54条により準用される場合を含む。))。例えば、第xxの被告人国選事件の場合、原則として基礎報酬の額の50%のみとなり(費用は算定されません。)(算定基準第36条第1項第6号)、さらに、第1回公判期日前に解任その他の理由により国選弁護人の活動を終了した場合には基礎報酬も算定されません(同項第7号)。
ただし、活動実績の存在が明らかな下記の場合には、一定の基礎報酬及び通訳人費用を算定します。
1) 被疑者国選
被疑者と接見、電話交通又は準接見を行ったことを証する書面を提出したときには、接見、電話交通又は準接見の回数に応じた基礎報酬全額及び通訳人費用を算定します(契約約款第24条第7項、算定基準第36条第2項)。
2) 被告人国選(第xx)
判決の宣告によってその審級の手続が終了したことを証する書面(判決書又は判決宣告期日調書の写し等)を提出し、かつ、算定基準第17条第1項各号に掲げる事由がいずれもないと認めると
きには、事件が公判前整理手続に付されないものとして(当該被告事件が裁判員裁判事件である場合は公判前整理手続の回数が1回として)、基礎報酬全額及び通訳人費用を算定します(公判加算報酬は算定されません。)(契約約款第24条第8項、算定基準第3
6条第3項)。
3) 被告人国選(控訴審、上告審)
控訴審においては、控訴趣意書、答弁書又は弁論内容を記載した書面を提出したことを証する書面を提出し、かつ、算定基準第40条各号に掲げる事由がいずれもないと認めるとき、上告審においては、上告趣意書、答弁書を提出したことを証する書面を提出し、かつ、算定基準第53条各号に掲げる事由がいずれもないと認めるときは、通常の基礎報酬(控訴趣意書等、上告趣意書等の提出に対する報酬。ただし、記録丁数に応じた加算はされません。)及び通訳人費用を算定します(公判加算報酬は算定されません。)(契約約款第24条第8項、算定基準第36条第3項、第47条、第54条)。
なお、契約弁護士は、期間内に請求することができなかったことに関するやむを得ない事由の有無について、不服の申立てをすることができます(契約約款第24条第2項)。
ウ 期間経過の通知から7日以内に請求がない場合
期間経過の通知から7日以内に請求がない場合には、請求がないものとして取り扱い、被疑者国選事件についてはゼロ円と算定し(算定基準第36条第1項第1号)、被告人国選事件についてはゼロ円とすることを含む最低限の金額を報酬として算定します(同項第2号ないし第7号)。
ただし、期間経過の通知を受けた弁護士会が、7日以内にセンターに資料を提出し、当該弁護士が急病又は事故により期間内に報酬及び費用を請求することができなかったことを疎明したときは、センターは、弁護士会から提出された資料等を踏まえてセンターが調査したところに従い、報酬及び費用を算定します(契約約款第24条第5項)。この算定の結果に対して、当該弁護士は、不服の申立てをすることができます(同条第6項)。
3 報告書の記載内容
報告書には、接見回数(被疑者)、公判回数・時間(被告人)、加算事由、費用等の記載欄が設けられています(個別の記載項目(算定項目)については後述)。センターは、個別事件の指名通知の際に、契約弁護士に対し、担当事件の種類に対応した
報告書の書式を送付しています(なお、報告書の書式はセンターのHPからダウンロードすることもできます。)。
第8 報酬及び費用の算定基準
1 総則
国選弁護人に支給する報酬及び費用は、算定基準に基づいて算定します。
(1)基本的な考え方
① 弁護人の労力を反映させた客観的基準(労力基準)
② 一定の成果に対する加算報酬(成果基準)
③ 報酬と費用の別立て
という3点を軸に、具体的な算定基準を策定しています。
(2)弁護人の労力を反映させた客観的基準(労力基準)
① 労力の目安とすべき基本的な指標
まず、労力の目安とすべき基本的な指標としては、被疑者国選においては接見を、被告人国選においては公判期日を用いています。これは、被疑者弁護においては被疑者との接見が、また被告人弁護においては、公判期日における活動が弁護活動の中心になることによるものです。もとより、国選弁護人の活動は、接見や公判期日における弁護活動に限られるものではなく、その前後に様々な活動が行われることが一般的ですが、接見や公判における活動以外の活動については、その活動の有無・内容を全て把握することは困難であることから、客観的な把握が比較的容易な接見と公判期日の回数・時間が報酬算定における基本的な指標としています。
② 手続の類型に応じた基準設定
以上のような考え方に加え、被告人国選の算定基準については、次の2つの要素に基づいて場合を分け、手続の類型に応じた算定基準が設定されています。 ア:罪の軽重(事件の重大性)
イ:整理手続に付されたか否か(事案の困難性)
そして、ア:罪の軽重による分類としては、次のとおり6つの類型に分けられています。
・即決被告事件 ・簡裁事件 ・単独事件(地裁)
・通常合議事件 ・重大合議事件 ・裁判員裁判事件
さらに裁判員裁判事件については、上記に加えて公判前整理手続期日の回数及び複数選任の有無も指標としています。
(注)裁定合議事件の場合は、公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件については通常合議事件の例により、上記整理手続に付されなかった事件については単独事件の例により、報酬及び費用を算定します(算定基準第11条第2項)。
(3)一定の成果に対する加算報酬(成果基準)
また、国選弁護人が、身柄釈放や示談、無罪判決などの顕著な成果をあげたときには、通常の報酬(労力に基づく報酬)とは別に、成果の大きさに見合った特別の加算報酬を支給することとしています(算定基準第30条)。
成果基準(特別成果加算報酬)は、あくまでも成功報酬ですから、弁護活動(例えば示談交渉等)にいくら労力を要したとしても、現実に所期の成果があがらなければ、支給の対象とはなりません。
(4)報酬と費用の別立て
裁判所が国選弁護報酬を支払っていた時代には、費用は事実上報酬と一体として支払われていましたが、算定基準では、費用は、報酬と別立てで支給することになりました(算定基準第31条ないし第35条)。
もっとも、弁護活動に伴って通常支出される経費(通信費や近距離の交通費等)は、基礎報酬で賄うものと整理され、通常の経費の枠内に収まらない支出についてのみ、支給範囲と上限を定めて支給することとしています。
(5)消費税調整額について
次頁以降で説明する報酬額については、消費税が5%の時代に、消費税額を含めた額として定められたものですが、消費税が10%に改正された令和元年10月1日以降においては、報酬の費目で算定された額の合計額(A)に105分の100を乗じ、さらに100分の110を乗じた額(B)をもって、報酬の額とします(算定基準第1条の2。AとBの差額は、算定結果通知において、「消費税調整額」という費目で計上されます。)。
なお、費用の費目で算定される部分については、実費を償還するとの考え方に立っており、実費には基本的に消費増税分も含まれていますので、調整の対象とはされません。
【表5】消費税率の引上げに伴う調整例
(報酬の費目で算定される額の総額が10万円であった場合の調整額)
2 被疑者国選弁護の算定基準
【表6】通常の被疑者国選弁護算定基準(概要)
(1)基礎報酬・多数回接見加算報酬
① 算定方法
報酬は、接見の回数に応じて算定します。具体的には、4日に1回のペースで接見に赴いた場合の接見回数を基準接見回数と定めた上で、1回目の接見から基準接見回数前までの接見は1回当たり2万円、基準接見回数と同数回目の接見は
2万6400円を基礎報酬の額として算定します(算定基準第12条第2項)。また、接見回数が基準接見回数を超えた場合は、多数回接見加算報酬として、
1回超過した場合は1万円、2回超過した場合は1万6000円を算定し、以後、基準接見回数と超過回数の合計回数が弁護期間の日数に達するまで、前記1万6
000円に超過回数が1回増えるごとに4000円(超過回数が10回以上となる部分については超過回数が1回増えるごとに3000円)を加算した額を算定します(算定基準第19条第2項)。
同一日の接見等は、その回数にかかわらず、1回とカウントします(算定基準第12条第3項第1号)。
基礎報酬 | 基準接見回数に満たない接見回数の場合 20,000×接見回数 基準接見回数以上の接見をした場合 20,000円×(基準接見回数-1)+26,400円 |
多数回接見加算報酬 | 基準1回超 +10,000円 基準2回超 +16,000円 基準3回超から9回超まで 上記16,000円に加え3回 目以降1回につき+4,000円 基準10回超以上 基準9回超までの多数回接見加 算の合計額44,000円(16,000円 +4,000円×7回)に加え基準10回目以降1回につき+3,000円 ※基準回数と超過回数の合計回数につき上限あり |
② 特則
ア 家裁送致前の少年の被疑事件の国選弁護人に選任された国選弁護人契約弁護
士が、基準接見回数以上の接見をし、基準接見回数と同数回目の接見報酬として2万6400円の支給を受けた場合であって、当該少年の検察官送致後の少年の被疑事件の国選弁護人に選任されて当該少年と接見したときは、検察官送致後少年被疑事件の国選弁護人としての基準接見回数と同数回目の接見に対する報酬を2万円と算定します(算定基準第13条第1項)。
イ 即決裁判手続によることについての同意確認のための国選弁護事件(即決被疑者国選事件)の基礎報酬は、接見回数にかかわらず2万6400円の定額です(算定基準第13条第2項)。
ウ 鑑定留置の前後のいずれにも勾留がない場合、鑑定留置期間7日を弁護期間
1日とみなして算定します。ただし、弁護期間としてみなせる日数の上限は、
20日です(算定基準第12条第1項、第4項)。
③ 接見資料
被疑事件の国選弁護人が基礎報酬及び多数回接見加算報酬を請求するときには、接見の事実を疎明するに足りる客観的な資料として、センターが細則で定めるものを提出しなければなりません(契約約款第21条、別表B番号1)。接見資料用紙が提出されない場合には原則として、被疑者国選弁護事件における基礎報酬及び多数回接見加算報酬は算定されません。
(2)第1回公判期日前の証人尋問等期日加算報酬
第1回公判期日前の証人尋問期日(刑事訴訟法第226条、第227条第1項)、証拠保全期日又は勾留理由開示期日(これらを総称して「第1回公判期日前の証人尋問等期日」といいます。契約約款本則別表A1番号2参照)に出頭した場合に、第1回公判期日前の証人尋問等期日加算報酬を支給します(算定基準第25条の2第1項)。支給額は、1回の出頭ごとに、刑事訴訟法第226条、第227条第1項の証人尋問期日及び証拠保全のうち証人尋問の期日については1万円、それ以外の期日については5000円です(算定基準第25条の2第2項)。
ただし、被疑者国選弁護事件のうち即決同意確認のための事件については、この加算報酬を算定することはできません(算定基準第10条第2項参照)。
(3)要通訳事件加算報酬
日本語に通じない被疑者の国選弁護人に選任され、被疑者との接見、打合せその他の弁護活動に通訳人を要したときは、要通訳事件加算報酬として通常報酬(上記
(1)及び(2))の20%を加算します(算定基準第26条)。
(4)遠距離接見等加算報酬
国選弁護人の事務所所在地を管轄する簡易裁判所(以下「最寄簡裁」といいます。)から目的地まで直線で片道25キロメートル以上、又は、最も経済的な通常の経路及び方法で片道50キロメートル以上の移動を要する被疑者との接見、準抗告の申立て、被害者との示談交渉、犯行現場の確認、目撃者、証人予定者その他事件関係者との打合せ、被疑者の親族、身元引受人又はこれに準じる者との打合せ(以下「遠距離接見等」といいます。)が行われた場合は、1回の移動距離に応じ、次のとおり、遠距離接見等加算報酬を加算します(算定基準第27条第1項、第2項)。
4,000円又は8,000円
(移動距離に応じた2段階制)
遠距離接見等加算報酬
① 4000円の遠距離接見等加算報酬が加算される場合
次のいずれかの場合に加算されます。
ア 最寄簡裁から目的地までの直線距離(以下「直線距離」といいます。)が片道25キロメートル以上50キロメートル未満のとき
イ 直線距離が片道25キロメートル未満であって、最も経済的な通常の経路及び方法により移動した場合に片道50キロメートル以上100キロメートル未満となるとき
② 8000円の遠距離接見等加算報酬が加算される場合
次のいずれかの場合に加算されます。
ア 直線距離が片道50キロメートル以上のとき
イ 直線距離が片道25キロメートル以上50キロメートル未満であって、最も経済的な通常の経路及び方法により移動した場合に片道100キロメートル以上となるとき
③ 按分等
遠距離移動が同一事件の手続期日等への出頭のための出張(後記3(14)参照)を兼ねる場合は、遠距離接見等加算報酬は支給されません(算定基準第27条第1項ただし書)。また、他の国選弁護事件、国選付添事件、国選被害者参加事件と同一機会の遠距離移動の場合は、それぞれの事件に按分します(同条第3項、第4項)。
【被疑者国選における遠距離接見等加算の対象活動】
・被疑者との接見
・準抗告の申立て
・被害者との示談交渉
・犯行現場の確認
・目撃者、証人予定者その他事件関係者との打合せ
・被疑者の親族、身元引受人又はこれに準じる者との打合せ
【遠距離接見等加算報酬~直線距離と経路距離ごとの適用関係】
100㎞
50㎞
25㎞
50㎞
直線片道
4000円
0円
8000円
4000円
8000円
経路片道
(5)特別案件加算報酬
刑事訴訟法第38条の3第1項第5号の規定により国選弁護人が解任された事件
(弁護人に対する暴行、脅迫等の事由により解任された事件)について選任された後任の国選弁護人には、特別案件加算報酬として通常報酬の50%が加算されます
(算定基準第10条第1項、第29条第2項第2号)。
(6)合意制度加算報酬
国選弁護人が、検察官と刑事訴訟法第350条の4に規定する協議を行った場合には、協議回数にかかわらず、4万円を加算します。同条の協議の結果、検察官と被疑者との間で同法第350条の2第1項に規定する合意があった場合には、さらに1万円を加算します(算定基準第29条の2)。
なお、合意制度加算報酬を請求するときには、協議の実施、合意の成立を疎明するに足りる客観的な資料として、センターが細則で定める疎明資料の添付が必要となります(契約約款第21条,別表B番号2-2)。
(7)特別成果加算報酬
① 釈放
勾留決定に対する準抗告の申立てにより勾留決定が取り消されるとともに勾留請求が却下され被疑者が釈放された場合や、勾留取消の申立てにより勾留が取り消されて被疑者が釈放された場合、勾留延長決定に対する準抗告の申立てにより勾留延長決定が取り消されるとともに勾留延長請求が却下され被疑者が釈放された場合には、5万円を加算します(算定基準第30条第1項、別表G1番号1ないし2)。
② 示談成立等
被疑事実に係る被害に関し、被害者等との間で和解契約が成立した場合、全損害の実質的賠償がなされた場合、全損害の50%相当分以上の賠償がなされた場合、減刑嘆願書(被疑者又は被告人を宥恕し寛大な処分を求める内容の文書)を取得した場合の各々について、その事実を証する書面(注)の写しが報告書提出期限内に検察官に提出されたときは、被害者の人数に応じて特別成果加算報酬を算定します(ただし、上記①の特別成果加算報酬が支給される場合は除きます。)
(算定基準第30条第1項、別表G1番号3ないし6)。
例えば、被疑事実に係る被害者が1名の事案で当該被害者と和解が成立した場合は3万円、被害者が2名の事案で被害者全員と和解が成立したときは3万60
00円、被害者が3名の事案で被害者全員と和解が成立したときは4万2000円をそれぞれ加算します。被害者が2名の事案でうち1名の被害者と和解が成立したときは1万8000円、被害者が3名の事案でうち2名の被害者と和解が成立したときは2万8000円をそれぞれ加算します。
ただし、交通事故に関する被疑事件で、損害賠償責任保険によって損害賠償に要する額が全額賄われたときは、特別成果加算報酬は算定されません(同条第1項ただし書)。
(注)例えば、和解(示談)契約成立を証明する書面については、いわゆる「清算条項」が記載されていること、減刑嘆願書の取得を証する書面については、被疑者を許し、かつ、寛大処分を嘆願する旨が記載されていることなどが目安となります。
(8)遠距離接見等交通費・遠距離接見等宿泊料
遠距離接見等(前記(4)参照)が行われたときには、交通費及び宿泊料を算定します(算定基準第32条第1項本文、第3項本文)。
なお、交通費については、原則として次の①から③のうちいずれか一つの方法のみ選択することができます。例えば、移動の一部を①、別の一部を②により算定することはできません。
遠距離移動が同一事件の手続期日等への出頭のための出張を兼ねる場合は、遠距離接見等交通費と期日等への出頭のための旅費のうち最も高額なもののみを支給し
(算定基準第32条第1項ただし書)、他の国選弁護事件、国選付添事件、国選被害者参加事件と同一機会の遠距離移動の場合は、それぞれの事件に按分します(同条第4項第1号、第5項第1号)。
① 直線距離キロ数に応じた定額支給
当該移動が「通常の経路及び方法」と認められない場合や、経路の確認ができない場合、疎明資料の提出がない場合等は、民事訴訟費用等に関する規則第2条第1項の規定に従って、最寄簡裁から目的地までの直線距離キロ数(片道)に定額(100キロ未満は30円/㎞)を乗じた額を算定します(算定基準第32条第2項第3号)。
② 実費支給
当該移動が「通常の経路及び方法」であることが認められ、かつ、当該移動に要した費用の額を疎明する資料が提出された場合で、実際に支払った交通費の額が①の方法で算定した額を超える場合には、移動に要した交通費の実費を算定します(算定基準第32条第2項第1号)。
実費請求には、実費を疎明する資料の提出が必要です。航空運賃や船賃等を請求する場合には、領収書・半券が必要となりますが、領収書の取得が困難な普通列車や路線バス(市内バス)の利用については、遠距離移動の目的地までの移動の経路及び方法と現に支払った交通費の額を具体的に記載すれば、それで疎明したものと取り扱っています。
③ 自家用車を使用した場合の燃料代及び有料道路の通行料金
自家用車で遠距離移動をした場合で、目的地までの交通手段の実情その他を考慮した上で、自家用車の使用が通常の方法と認められるときには、遠距離移動の通常の経路を基準として、センターの定める「国選弁護人の事務に関する契約約款別紙報酬及び費用の算定基準第32条第2項第2号、国選付添人の事務に関する契約約款別紙報酬及び費用の算定基準第20条第2項第2号及び国選被害者参加弁護士の事務に関する契約約款別紙報酬及び費用の算定基準第15条第2項第
2号に規定する自家用車を使用して遠距離移動をした場合の交通費の算定に関する細則」に基づき、燃料代(ガソリン又は軽油)を算定します(算定基準第32条第2項第2号)。有料道路の利用が通常の経路と認められる場合は、有料道路の通行料金(実費)を算定します。
上記燃料代及び有料道路の通行料金の支給は、①の方法で算定される額を超える場合を対象としています。また、有料道路の通行料金を請求する場合は、疎明資料(領収書・ETC 利用証明書等)の提出が必要になります。
④ 宿泊料
遠距離移動の目的のために宿泊を要した場合は、民事訴訟費用等に関する法律第2条第4号の当事者等の宿泊料の例により算定した宿泊料を算定します。
当該宿泊が同一事件の手続期日等への出頭のための宿泊を兼ねる場合は、遠距離接見等宿泊料は支給されません(算定基準第32条第3項ただし書)。また、他の国選弁護事件、国選付添事件、国選被害者参加事件と同一機会の宿泊の場合は、それぞれの事件に按分します(同条第4項第2号、第5項第2号)。
(9)出張に伴う旅費・日当・宿泊料
国選弁護人が第1回公判期日前の証人尋問等期日に出頭するための出張(手続が最寄簡裁の管轄区域以外の場所で行われるとき。ただし、手続が行われる場所が、最寄簡裁から直線距離で8キロメートル以内であるときを除く。)をしたときには、旅費・日当(移動のみに要した日に対するもの)・宿泊料を算定します
(算定基準第33条)。
なお、他の国選弁護事件、国選付添事件、国選被害者参加事件と同一機会の移動の場合は、それぞれの事件に按分します。
(10)通訳人費用
通訳人費用は、国選弁護人が接見等の弁護活動に通訳人を要したときに、国選弁護人が現に支払った額又は通訳人から請求されている額をもって算定します(算定基準第34条)。
通訳人は、国選弁護人との契約に基づいて通訳を行うことになります。通訳人に通訳を依頼する場合の通訳料については、センターにおいて次のような基準を設けており、国選弁護人は、この基準に従って依頼をするよう努めなければならない旨定められています(契約約款第17条)。
通訳人に通訳を依頼する場合には、この基準に従って依頼されるようお願いします。
【センターの定める通訳料基準(概要)】
※国選弁護事件、国選付添事件、国選被害者参加事件共通(金額はいずれも消費税込み)
費 目 | 基 準 (*1) | ||
通訳料 | 基本料金 | 1日の通訳時間(実際に通訳を行った時間。待機時間を含まない)の合計が30分以内の場合(*2) | 8,380円 |
延長料金 | 1日の通訳時間の合計が30分を超える分について、その超過分が10分に達するごとに(10分未満は切捨て) | 1,047円 | |
待機手当 | 1日の待機時間(通訳予定場所に到着した時刻、同場所における契約弁護士との待ち合わせ時刻のうち、いずれか遅い時刻から、通訳を開始するまで〔通訳が実施されなかった場合は不実施が確定したときまで〕の時間)の合計が20分に達するごとに(20分未満は切捨て) | 1,047円 (上限 4,188円) | |
交通費 | 公共交通機関を利用した場合に算定される金額(*3)を上限とする実費(*4)(*5) | ||
遠距離移動手当 | 通訳のための移動が遠距離(往復100㎞以上)にわたる場合(*5) | 4,190円 | |
振込・書留手数料 | 通訳人に振込・書留により支払った場合、振込・書留に要した手数料の実費 |
*1 本基準は令和元年10月1日以後の国選弁護人等の活動に通訳人を要した場合に適用し、その余の場合については改正前の基準が適用されます。
*2 同一事件に関し、同一日に複数回の通訳を行った場合、基本料金の支給は1回のみです。
*3 公共交通機関(タクシーは含みません)を利用して最も経済的な通常の経路及び方法により移動した場合の金額を指します。
*4 特急料金及び座席指定料金は、特急券の有効区間が片道 100km 以上の場合、急行料金は、急行券の有効区間が片道 50km 以上の場合のみ支給します。なお、グリーン料金は支給されません。
*5 複数の事件について同一の移動機会に通訳をした場合は、交通費及び遠距離移動手当については、事件の件数に応じて按分します。
(11)訴訟準備費用
次のとおり、診断書の作成料、弁護士法第23条の2に基づく弁護士会照会の利用料又は行政機関が発行する証明書の発行手数料につき、総額3万円を限度として、実費をもって算定します(算定基準第35条第1項)。
① 診断書の作成料
② 弁護士会照会の手数料
③ 行政機関が発行する証明書の発行手数料
訴訟準備費用
(上限30,000円)
※郵送料・振込手数料等は含みません。
3 被告人国選弁護の算定基準(第一審)(即決被告事件及び裁判員裁判事件以外)
地
裁
・家
裁
90,000
基礎報酬
88,000
基礎報酬
80,000
基礎報酬
77,000
基礎報酬
通常合議事件
単独事件
66,000
基礎報酬
70,000
基礎報酬
公判加算額 | ||
公判時間 | 1回目 | 2回目以降 |
~45分 | 0 | 6,200 |
45分~1.5h | 6,200 | 9,100 |
1.5h~2.5h | 9,100 | 15,800 |
2.5h~3.5h | 15,800 | 24,100 |
3.5h~4.5h | 24,100 | 34,500 |
4.5h~5.5h | 34,500 | 48,200 |
5.5h~ | 48,200 | 56,500 |
【表6-①】被告人国選弁護算定基準(概要)
公判前整理手続なし
公判前整理手続あり
簡裁
公判加算額 | ||
公判時間 | 1回目 | 2回目以降 |
~45分 | 0 | 5,600 |
45分~1.5h | 5,600 | 7,700 |
1.5h~2.5h | 7,700 | 12,600 |
2.5h~3.5h | 12,600 | 18,600 |
3.5h~4.5h | 18,600 | 26,400 |
4.5h~5.5h | 26,400 | 36,900 |
5.5h~ | 36,900 | 42,900 |
公判加算額 | ||
公判時間 | 1回目 | 2回目以降 |
~45分 | 0 | 6,200 |
45分~1.5h | 6,200 | 9,100 |
1.5h~2.5h | 9,100 | 15,800 |
2.5h~3.5h | 15,800 | 24,100 |
3.5h~4.5h | 24,100 | 34,500 |
4.5h~5.5h | 34,500 | 48,200 |
5.5h~ | 48,200 | 56,500 |
公判加算額 | ||
公判時間 | 1回目 | 2回目以降 |
~45分 | 0 | 5,800 |
45分~1.5h | 5,800 | 8,200 |
1.5h~2.5h | 8,200 | 13,600 |
2.5h~3.5h | 13,600 | 20,500 |
3.5h~4.5h | 20,500 | 29,100 |
4.5h~5.5h | 29,100 | 40,600 |
5.5h~ | 40,600 | 47,400 |
公判加算額 | ||
公判時間 | 1回目 | 2回目以降 |
~45分 | 0 | 6,400 |
45分~1.5h | 6,400 | 9,600 |
1.5h~2.5h | 9,600 | 16,800 |
2.5h~3.5h | 16,800 | 25,900 |
3.5h~4.5h | 25,900 | 37,200 |
4.5h~5.5h | 37,200 | 52,000 |
5.5h~ | 52,000 | 61,100 |
公判加算額 | ||
公判時間 | 1回目 | 2回目以降 |
~45分 | 0 | 6,000 |
45分~1.5h | 6,000 | 8,700 |
1.5h~2.5h | 8,700 | 14,700 |
2.5h~3.5h | 14,700 | 22,300 |
3.5h~4.5h | 22,300 | 31,800 |
4.5h~5.5h | 31,800 | 44,400 |
5.5h~ | 44,400 | 52,000 |
公判加算額 | ||
公判時間 | 1回目 | 2回目以降 |
~45分 | 0 | 7,500 |
45分~1.5h | 7,500 | 12,300 |
1.5h~2.5h | 12,300 | 23,200 |
2.5h~3.5h | 23,200 | 36,800 |
3.5h~4.5h | 36,800 | 53,600 |
4.5h~5.5h | 53,600 | 74,700 |
5.5h~ | 74,700 | 88,300 |
基礎報酬 | 基礎報酬 | ||||||||
重 | 99,000 | 100,000 | |||||||
大合議 事 | |||||||||
件 | |||||||||
公判加算額 | ||
公判時間 | 1回目 | 2回目以降 |
~45分 | 0 | 7,900 |
45分~1.5h | 7,900 | 13,200 |
1.5h~2.5h | 13,200 | 25,300 |
2.5h~3.5h | 25,300 | 40,400 |
3.5h~4.5h | 40,400 | 59,000 |
4.5h~5.5h | 59,000 | 82,200 |
5.5h~ | 82,200 | 97,400 |
【表6-②】被告人国選弁護算定基準(裁判員・即決を除く)(概要)
被告人国選弁護における通常報酬については、基礎報酬のほか、第1回公判期日から立会時間に応じた公判加算報酬等を算定します(即決被告事件を除きます。算定基準第20条第4項)。なお、公判期日の立会時間については、開廷日ごとに計算しますので、例えば同一日に同一事件で2期日あった場合には、1回の期日としたうえで立会時間をカウントします。
(1)公判前整理手続に付されない事件の基礎報酬
公判前整理手続に付されない事件(期日間整理に付された事件も含みます。)の基礎報酬は次のとおりです。
【公判前整理手続に付されない事件の基礎報酬】
裁判所 | 基礎報酬 |
簡裁 | 66,000円 |
単独(簡裁以外) | 77,000円 |
通常合議 | 88,000円 |
重大合議 | 99,000円 |
(2)公判前整理手続に付された事件の基礎報酬
公判前整理手続に付された事件の基礎報酬は次のとおりです。
【公判前整理手続に付された事件の基礎報酬】
裁判所 | 基礎報酬 |
簡裁 | 70,000円 |
単独(簡裁以外) | 80,000円 |
通常合議 | 90,000円 |
重大合議 | 100,000円 |
(3)実質公判期日に対する加算報酬
国選弁護人が実質公判期日(手続期日(公判、公判準備その他の裁判手続が行われた期日のうち、第1回公判期日前の証人尋問等期日以外のものをいう)のうち、実質審理(弁論又は証拠調べ)が行われた期日。契約約款別表A3番号1(5))に出頭したときは、開廷日ごとに、立会時間に応じて公判加算報酬を加算します(加算額は表6-①のとおり)。
また、前述のとおり、期日の回数は「日」を単位としているため、同一事件について、同一日の午前と午後に公判が行われた場合には、期日1回として算定することになり、午前の公判期日の開始時点から午後の公判期日の終了時点までの通算時間から、昼の休廷時間その他在廷の必要のない休廷時間を除外した時間を立会時間として算定します(契約約款別表A4番号1(13)、算定基準第20条第4項)。
一般的な意味での「昼休み」の時間帯だけでなく、当該国選弁護事件について時間的拘束を受けていない場合には、その時間を休廷時間として立会時間から除外します。
(4)判決宣告期日等に対する加算報酬
国選弁護人が判決宣告期日等(手続期日のうち、第一審の被告事件における第1回公判期日以外のもので、実質審理期日、公判前整理手続期日、期日間整理手続期日及び裁判員等選任手続の期日のいずれにも該当しないもの(注)。契約約款別表 A4番号1(15))に出頭したときは、次のとおり、判決宣告期日等に対する加算報酬として、出頭した期日ごとに3000円を加算します(算定基準第22条)。
(注)「判決宣告期日等」には、判決宣告期日のほか、例えば、以下のような期日が該当し得ます。
・実質審理が行われなかった公判期日・公判準備期日
・進行協議のための打合せ期日(ただし、公判前整理手続に付された事件について行われる刑事訴訟規則第178条の10に基づく事前打合せ期日に出頭したときは、下記(5)のとおり、整理手続期日に対する加算報酬として算定されます。契約約款別表A4番号1(14)。)なお、いわゆる保釈面接などのように、専ら被告人の身柄に関してなされた打合
せは、「手続期日」、すなわち、公判、公判準備その他の裁判手続が行われた期日
に当たるとはいえないため、これに出頭しても公判加算報酬は算定されません。
3,000円
判決宣告期日等に対する加算報酬
(5)公判前整理手続・期日間整理手続期日に対する加算報酬
国選弁護人が、公判前整理手続期日又は期日間整理手続期日に出頭したときは、出頭した整理手続期日(同一の日に複数回の整理手続期日に出頭したときは1回と算定)につき、次のとおり報酬を加算します(算定基準第21条、同別表F)。国選弁護人が、公判前整理手続に付された事件について、刑事訴訟規則第178条の
10の規定に基づく事前打合せ期日に出頭したときも同様です(契約約款別表A4番号1(14))。
【整理手続期日報酬】
簡裁 単独(簡裁以外)通常合議(同) | 8,300円 8,700円 10,900円 |
重大合議(同) | 11,700円 |
(6)追起訴加算報酬
第1審の被告事件において、追起訴がなされ、併合審理された場合において、国選弁護人が追起訴された事件の審理に関与したときは、追起訴の回数にかかわらず、次のとおり、追起訴加算報酬として1万5000円を加算します。ここにいう「追起訴」には「起訴状」又は「追起訴状」(刑事訴訟法第256条第1項)による場合のほか、訴因変更(同法第312条第1項)の手続により盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律第2条から4条までに規定する罪に係る訴因が追加された場合も含まれます(算定基準第25条)。
15,000円
追起訴加算報酬
(7)第1回公判期日前の証人尋問等期日加算報酬
第1回公判期日前の証人尋問期日(刑事訴訟法第226条、第227条第1項)、証拠保全期日又は勾留理由開示期日(これらを総称して「第1回公判期日前の証人尋問等期日」といいます。前記2(2)参照)に出頭した場合に、第1回公判期日前の証人尋問等期日加算報酬を支給します(算定基準第25条の2第1項)。支給額は、1回の出頭ごとに、刑事訴訟法第226条、第227条第1項の証人尋問期日及び証拠保全のうち証人尋問の期日については1万円、それ以外の期日については5000円です(算定基準第25条の2第2項)。
ただし、即決被告事件については、この加算報酬を算定することはできません(算定基準第11条第1項参照)。
(8)遠距離接見等加算報酬
最寄簡裁から目的地まで直線で片道25キロメートル以上、又は、最も経済的な通常の経路及び方法で片道50キロメートル以上の移動を要する被告人との接見、記録の閲覧若しくは謄写、被害者との示談交渉、犯行現場の確認、目撃者、証人予定者その他事件関係者との打合せ、被告人の親族、身元引受人又はこれに準じる者との打合せ、保釈保証金の納付が行われた場合は、被疑者国選事件と同様に、遠距
離接見等加算報酬を加算します。
なお、対象となる移動距離及び加算額、同一事件の出張や他の国選弁護事件等の移動を兼ねる場合の処理等は、前記2(4)被疑者国選弁護における遠距離接見等加算報酬の項を参照してください。
【被告人国選における遠距離接見等加算の対象活動】
・被告人との接見
・被害者との示談交渉
・記録の閲覧・謄写
・犯行現場の確認
・目撃者、証人予定者その他事件関係者との打合せ
・被告人の親族、身元引受人又はこれに準じる者との打合せ
・保釈保証金の納付
(9)重大案件加算報酬
次の要件を全て満たすときは、国選弁護人の申出に基づき、重大案件加算報酬として通常報酬の50%を加算します(算定基準第28条)。
① 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪(注)に係る被告事件で、死亡した被害者が2名以上である重大合議事件
② 公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件
◎ 重大案件加算
(要件)
(加算額) 通常報酬の50%
+
整理手続
故意の犯罪行為で2名以上死亡
(注)「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」とは、故意の犯罪行為により被害者を死亡させたことが構成要件要素となっている罪(殺人罪、傷害致死罪等)をいい、故意の犯罪行為により被害者を死亡させても、死亡させたことが構成要件要素となっていない罪(被害者の自宅に放火し、被害者を死亡させたが、被害者が自宅にいたことを認識していない場合〔現住建造物等放火罪〕)は、これに含まれません。
(10)特別案件加算報酬
刑事訴訟法第38条の3第1項第5号の規定により、国選弁護人が解任された事件(弁護人に対する暴行、脅迫等の事由により解任された事件)について選任された後任の国選弁護人には、特別案件加算報酬として通常報酬の50%を加算します
(算定基準第29条第1項本文、第2項第2号)。ただし、当該事件が前記重大案
件加算報酬の対象事件であるときは、加算されません(同条第1項ただし書)。
(11)合意制度加算報酬
国選弁護人が、検察官と刑事訴訟法第350条の4に規定する協議を行った場合には、協議回数にかかわらず、4万円を加算します(ただし、国選弁護人が、被疑者段階でも国選弁護人に選任されており、前記4万円の加算を受けた場合を除きます。)。また、同条の協議の結果、検察官と被告人との間で同法第350条の2第
1項に規定する合意があった場合には、さらに1万円を加算します(算定基準第2
9条の2)。
なお、合意制度加算報酬を請求するときには、協議の実施、合意の成立を疎明するに足りる客観的な資料として、センターが細則で定める疎明資料の添付が必要となります(契約約款第21条,別表B番号2-2)。
(12)特別成果加算報酬
① 無罪等
ア 全部無罪
判決主文において公訴事実の全部について無罪が言い渡されたときは、50万円を限度として、通常報酬の100%を加算します。ただし、国選弁護人が公訴事実を争わなかったときは加算の対象にはなりません(注1)(算定基準第
30条第2項、別表G2番号1)。
イ 一部無罪
判決主文において公訴事実の一部について無罪が言い渡されたとき(注2)は、30万円を限度として、通常報酬の50%を加算します。ただし、国選弁護人が公訴事実を争わなかったときは加算の対象にはなりません(算定基準第
30条第2項、別表G2番号2)。
ウ 縮小認定等
次のいずれかに該当する場合は、20万円を限度として、通常報酬の30%を加算します。ただし、国選弁護人が刑の減免事由があることを争点とする弁護活動をしなかったときは加算の対象にはなりません(算定基準第30条第2項、別表G2番号3ないし5)。
1) 公訴事実は法定刑に死刑の定めのある罪に係るものであったが、判決で法定刑に死刑の定めのない罪に係る犯罪事実が認定されたとき
2) 公訴事実は死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係るものであったが、判決でこれらの罪以外の罪に係る犯罪事実が認定されたとき。
3) 判決で刑の減免事由に該当する事実(注3)が認められ、かつ刑の免除が言
い渡され、又は法令の適用において刑の減軽がされたとき。
類 型 | 加算額 |
全部無罪 | 通常報酬の100%(加算上限50万) |
一部無罪 | 通常報酬の 50%(加算上限30万) |
縮小認定 | 通常報酬の 30%(加算上限20万) |
(注1)構成要件該当性は認められるが、正当防衛が認められるとして全部無罪となる場合を例にとると次のようになります。
国選弁護人が・・・
構成要件該当性 | 正当防衛 | 成果加算 | |
① ② ③ ④ | 争わない | 争う(主張する) | ○ |
× | |||
争わない | 争わない(主張しない) | ||
○ | |||
争う | 争う(主張する) | ||
× | |||
争う | 争わない(主張しない) |
上記で加算の対象になるのは、①と③の場合です(①については、公訴事実は「正当防衛が成立しない」ことを含むものと解されるので、国選弁護人が正当防衛を主張した以上、「公訴事実を争わなかったとき」には該当しないこととなります。)。他方で、②の場合は、何ら争っていないこと、④の場合も、裁判所が無罪の判断をした根拠は正当防衛であり、国選弁護人は正当防衛を主張していない(正当防衛が成立しないことを争っていない。)ことから、ただし書が適用され、加算の対象になりません。
(注2)科刑上一罪の一部を構成する犯罪事実が認定されなかったとき(例:住居侵入、窃盗被告事件において、窃盗罪の成立が認められなかった場合)は、判決主文において、無罪又は一部無罪が言い渡されることはなく、無罪又は一部無罪による特別成果加算の対象にはなりません(縮小認定による特別成果加算の可否の問題となります。)。
(注3)「刑の減免事由に該当する事実」とは、法律上の刑の減軽又は免除がなされる事由であり、過剰防衛、心神耗弱、自首、未遂、従犯等がこれにあたります。酌量減軽のみがなされた場合は加算対象となりません。
② 示談成立等
判決の罪となるべき事実に摘示された被害に関し、被害者等との間で和解契約が成立した場合、全損害の実質的損害賠償がなされた場合、全損害の50%相当額以上の賠償がなされた場合、減刑嘆願書を取得した場合の各々について、これ
を証明する書面(注)が公判手続において証拠として取り調べられたときは、被害者の人数に応じて特別成果加算報酬を加算します(算定基準第30条第4項、別表 G3)。
ただし、交通事故に関する被告事件で、損害賠償責任保険によって損害賠償に要する額が全額賄われたときは、特別成果加算報酬は算定されません(算定基準第30条第4項ただし書)。
加算額については、被疑者国選における特別成果加算報酬(示談加算等)と同様の算定方法となります(前述2(6)②参照)。
(注)例えば、和解(示談)契約成立を証明する書面については、いわゆる「清算条項」が記載されていること、減刑嘆願書の取得を証する書面については、被告人を許し、かつ、寛大処分を嘆願する旨が記載されていることなどが目安となります。
③ 保釈等
即決被告事件以外の被告事件の被告人が、勾留されている場合において、国選弁護人が次に掲げるいずれかの成果をあげたときには、特別成果加算報酬として
1万円を加算します(算定基準第30条第3項)。
1) 勾留決定に対する準抗告又は抗告の申立てによる勾留決定の取消し及び被告人の釈放
2) 勾留取消しの申立てによる勾留の取消し及び被告人の釈放
3) 保釈請求による保釈許可決定及び被告人の釈放
被告人が現に釈放されたことが算定の要件とされているため、国選弁護人が勾留決定の取消し、勾留の取消し又は保釈の請求をし、裁判所が勾留決定の取消し、勾留の取消し又は保釈許可決定をしたものの、実際に釈放に至っていない場合には加算の対象とはなりません。
また、同一の審級において2回以上の保釈等がされた場合であっても、当該審級での加算は1回限りとされています。例えば、第1審で保釈された被告人に対して、禁錮刑以上の実刑判決がなされると、保釈の効力が失効することから(刑事訴訟法第343条)、被告人は刑事施設に収容されますが、国選弁護人が控訴することを前提として再度保釈請求をし、これが認められて再度被告人の身柄が解放された場合でも、保釈加算報酬は1回限りとなります。
(13)記録謄写費用
① 原則
国選弁護人が謄写した記録の枚数が200枚を超えるときに、次のとおり記録謄写費用を算定します(算定基準第31条第1項、第2項)。
ア 通常の場合
{(謄写枚数)-200}×20円(定額)
イ 謄写枚数1枚につき20円を超える額を現に支払った場合
{(謄写枚数)-200}×40円を上限とする実費
写真機(デジタルカメラ等)を使用して撮影し、事務所で印刷した場合についても、上記ア、イの基準で算定します。
カラー印刷されている記録をカラー謄写したときは、カラー謄写1枚当たり謄写枚数2枚と換算します(算定基準第31条第3項)。カラーのみのときは、1
00枚超で謄写費用支給対象となります。
② 例外
ア 否認事件等に対する実費支給
下記の事件の記録に限り、謄写枚数の全部について、40円(カラーは1枚
100円)を上限とする実費を支給します(算定基準第31条第4項)。
・否認事件(一部否認事件を含む。)(注)
(注)否認事件とは、公訴事実を争う場合のほか、正当防衛の成否や責任能力の有無を争う場合も含みますが、犯行動機等の情状事実のみを争う場合は含みません。
・法定刑に死刑の定めがある罪に係る事件
・公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件
・記録丁数が2000を超える事件
イ 複数国選弁護のための記録複製
上記アに該当する被告事件で、同一の被告事件に複数の国選弁護人が選任された場合であって、一方の国選弁護人が相弁護人のための謄写記録の複製を作成したときは、複製枚数×10円の謄写費用を支給します(算定基準第31条第6項、第7項)。
ウ 紙以外の媒体による記録謄写
録音テープ、ビデオテープ、DVD等による記録を謄写したときは、実費を支給します(算定基準第31条第8項)。
エ 第1回公判期日前に解任された場合等
国選弁護人が第1回公判期日前に解任された場合等は、謄写枚数全部について1枚20円又は1枚20円を超える額を現に支払った場合は1枚4
0円を上限とする実費を支給します(算定基準第31条第9項)。カラー謄写は謄写1枚当たり2枚と換算します。
(14)遠距離接見等交通費・遠距離接見等宿泊料
遠距離接見等(前記(8)参照)が行われたときには、交通費及び宿泊料を支給します(算定基準第32条)(具体的な内容は、前記2(7)の被疑者国選弁護における遠距離接見等交通費の項参照。)。なお、記録謄写又は保釈保証金の納付については、履行補助者(法律事務所の事務職員)を用いてするときも、遠距離接見等交通費・宿泊料の支給対象となります(同条第1項、第3項)。
(15)出張に伴う旅費・日当・宿泊料
国選弁護人が手続期日等(手続期日及び第1回公判期日前の証人尋問等期日をいいます。算定基準第27条第1項ただし書参照)に出頭するための出張(手続が最寄簡裁の管轄区域以外の場所で行われるとき。ただし、手続が行われる場所が、最寄簡裁から直線距離で8キロメートル以内であるときを除く。)をしたときには、旅費・日当(移動のみに要した日に対するもの)・宿泊料を算定します(算定基準第33条)。
なお、他の国選弁護事件、国選付添事件、国選被害者参加事件と同一機会の移動の場合は、それぞれの事件に按分します。
(16)通訳人費用
被告人段階に要した通訳人費用は、国選弁護人が接見等の法廷外における弁護活動に通訳人を要したときに、国選弁護人が現に支払った額又は通訳人から請求されている額が支給されます(算定基準第34条)(通訳料の基準額等については、前記2(10)の被疑者国選における通訳人費用の項参照。)。
(17)訴訟準備費用
国選弁護人が以下の5つの費目について手数料等を支出したときは、総額3万円を限度として、実費を支給します(算定基準第35条第2項)。
訴訟準備費用 | ① ② ③ ④ ⑤ | 診断書の作成料 弁護士会照会の手数料 行政機関が発行する証明書の発行手数料謄写記録の引継ぎを受けるのに要した送 料(ただし、原審(または前任)の弁護人が 、法テラスから謄写費用の支払を受けている場合に限る。) 判決書謄本の交付手数料 |
(上限30,000円) |
※①~③、⑤については郵送料・振込手数料等は含みません。
(18)被疑者国選弁護人から被告人国選弁護人を継続して務めた場合の取扱い
被疑者国選事件と被告人国選事件を別々の国選弁護人が受任した場合と比較し、両者を同じ国選弁護人が担当した場合の方が、弁護活動の量・内容に関し若干の効率化を図ることが可能と考えられます。そこで、被疑者国選弁護人に選任された弁護士が、当該被疑者の起訴後引き続き被告人の国選弁護人を務めたときは、次のとおり、被告人国選の報酬から一定額が控除されます(算定基準第16条)。
① | 即決被告事件又は簡裁被告事件の場合 | 9000円 |
② | 裁判員裁判事件の場合 | 1万5000円 |
③ | 上記以外の第一審の被告事件の場合 | 1万2000円 |
(19)基礎報酬の算定の特則
① 接見や記録閲覧・謄写を行わなかった場合
次のいずれかの事情があるときは、基礎報酬の額は、前記(1)及び(2)で定める基礎報酬の額の50%となります(算定基準第17条第1項)。
ア 事件記録の閲覧も謄写もすることなく第1回公判期日に立ち会ったとき
イ 第1回公判期日の前日までに、被告人と接見、電話交通、打合せのいずれも行うことなく第1回公判期日に立ち会ったとき(弁護人が被告人に対して接見若しくは打合せの申入れを行ったとき又は起訴前に国選弁護人又は国選付添人として接見、電話交通若しくは打合せを行ったときを除く。)
② 第1回公判期日の前に活動を終了した場合
第1回公判期日の前に活動を終了した場合(解任等)には、それまでの活動内容に応じて、次のとおり基礎報酬を算定します(算定基準第18条第3項、同別表A4)。
ア | 接見、電話交通又は打合せを行ったとき | 9000円 |
イ | 記録の閲覧又は謄写を行ったとき | 6000円 |
ウ 記録の閲覧又は謄写を行った上、記録を十分に検討したとき
1万6000円
エ 接見、電話交通又は打合せを行い、かつ、記録の閲覧又は謄写を行ったとき
1万5000円
オ 接見、電話交通又は打合せを行い、かつ、記録の閲覧又は謄写を行った上、記録を十分に検討したとき 2万5000円
なお、上記ア、エ、オの場合で、実際には接見等をせず、その申入れをしたにとどまる場合、又は、接見等をせず、裁判所に意見書等を提出した場合は、上記の金額より4000円を控除した額を基礎報酬と算定します。
また、前記(12)②エのとおり、第1回公判期日前の解任等の場合には、記録謄写費用は200枚超との制限を外し、全謄写枚数分を算定します。
4 裁判員裁判事件の算定基準
【表6-③】(裁判員裁判事件)被告人国選弁護算定基準(概要) ~加算報酬・費用等~
(1)基礎報酬
基礎報酬の額は次のとおりであり(算定基準第15条第3項、別表A2)、公判前整理手続期日の回数を、当該事件の複雑、困難度を表す基本的な指標としたうえで、その複雑、困難度に応じた4段階制(注)となっています。また、複数選任であるかどうかによってその額が変わる仕組みとなっています。
「
【裁判員裁判事件の基礎報酬】
複数選任 | 単独選任 | ||
段階1 | 公判前整理 1~4回 | (1:4型)170,000円 | (1:4型)170,000円 |
(3:6型)190,000円 | (3:6型)240,000円 | ||
段階2 | 公判前整理 5~7回 (かつ公判3日以上) | 240,000円 | 300,000円 |
段階3 | 公判前整理 8回~10回 (かつ公判3日以上) | 300,000円 | 380,000円 |
段階4 | 公判前整理 11回以上 (かつ公判4日以上) | 400,000円 | 500,000円 |
「1:4型」とは、裁判官1人、裁判員4人の合議体で審理された被告事件、「3:
6型」とは、裁判官3人、裁判員6人の合議体で審理された被告事件です。
段階2及び3の事件の公判期日の日数が2日以下であるとき又は段階4の事件の公判期日の日数が3日以下であるときは、基礎報酬の額は、それぞれ段階を1つ下げた場合に支給すべき基礎報酬の額となります(算定基準別表A2※)。
(注)基礎報酬の額に係る「段階」を決定する公判前整理手続期日の回数は、弁護人が現に出頭した当該期日の回数ではなく、実施された期日の全回数となります。したがって、活動終了後の報告には、弁護人が現に出頭した当該期日の回数、実施日及び出頭していない期日の回数を記載します。
(2)実質公判期日に対する加算報酬
次のとおり、実質公判期日に対する加算報酬は、基礎報酬と同様に、事件の複雑困難度に応じた4段階制とされています(算定基準第20条第4項、別表E)。
【裁判員裁判事件の公判加算報酬】
立会時間 | 段階1 | 段階2 | 段階3 | 段階4 | ||||
第1回 | 2回目以降 | 第1回 | 2回目以降 | 第1回 | 2回目以降 | 第1回 | 2回目以降 | |
45分未満 | 0円 | 7,900円 | 0円 | 8,690円 | 0円 | 9,875円 | 0円 | 11,850円 |
45分-1.5h | 7,900円 | 13,200円 | 8,690円 | 14,520円 | 9,875円 | 16,500円 | 11,850円 | 19,800円 |
1.5h-2.5h | 13,200円 | 25,300円 | 14,520円 | 27,830円 | 16,500円 | 31,625円 | 19,800円 | 37,950円 |
2.5h-3.5h | 25,300円 | 40,400円 | 27,830円 | 44,440円 | 31,625円 | 50,500円 | 37,950円 | 60,600円 |
3.5h-4.5h | 40,400円 | 59,000円 | 44,440円 | 64,900円 | 50,500円 | 73,750円 | 60,600円 | 88,500円 |
4.5h-5.5h | 59,000円 | 82,200円 | 64,900円 | 90,420円 | 73,750円 | 102,750円 | 88,500円 | 123,300円 |
5.5h以上 | 82,200円 | 97,400円 | 90,420円 | 107,140円 | 102,750円 | 121,750円 | 123,300円 | 146,100円 |
段階2及び3の事件の公判期日が2日以下であるとき又は段階4の事件の公判期日の日数が3日以下であるときは、公判加算報酬の額は、それぞれ段階を1つ下げた場合に支給される公判加算報酬の額とされています(算定基準別表E※)。
(3)判決宣告期日等に対する加算報酬
判決宣告期日等に対する加算報酬は、裁判員裁判事件等以外の場合と同様に、 出頭した期日ごとに3000円です(算定基準第22条)。
なお、裁判員等選任手続の期日は「判決宣告期日等」から除外されている上(前記3(4)参照)、実質公判期日、公判前整理手続期日及び期日間整理手続期日のいずれにも該当しないため、裁判員等選任手続の期日に出頭しても、公判加算報酬は支給されません。これは、裁判員等選任手続の期日に出頭したことに対する報酬は、裁判員裁判事件の基礎報酬に含まれており、重ねて報酬を支給すべきものではないとの考慮に基づくものです。
この趣旨からすれば、裁判員等選任手続に引き続いて公判期日が開かれ、実質審理が行われた場合であっても、実質公判期日の立会時間に裁判員等選任手続に立ち会った時間は含まれないことになります。
(4)整理手続期日に対する加算報酬
整理手続期日に対する加算報酬は、次のとおり、整理手続期日1回につき、2万
1000円を算定します。国選弁護人が同一の日に当該被告事件の複数の整理手続期日に出頭したときは、回数は1回と算定されます(算定基準第21条第2項、別表F)。
公判前整理手続期日には、刑事訴訟規則第178条の10に規定に基づく事前打合せの期日も含まれます(契約約款別表A4番号1(14))。
21 ,000円
整理手続期日等に対する加算報酬
(5)評議対応加算報酬
公判期日において、国選弁護人が裁判所から評議が行われている間在廷するよう求められ、その在廷の時間が1時間30分以上である場合には、次のとおり、評議対応加算報酬として3000円を算定します(算定基準第23条)。
なお、評議のため在廷を命じられた時間が1時間30分未満の場合は、当該在廷時間は公判の立会時間の一部として算定します(契約約款別表A4番号1(13))。
3,000円
評議対応加算報酬
(在廷時間が1時間30分以上)
(6)主任加算報酬
複数の国選弁護人が選任された裁判員裁判事件で、当該被告事件の主任弁護人(刑事訴訟法第33条、刑事訴訟規則第19条)に定められた国選弁護人については、主任加算報酬として3万円を算定します。算定の対象となる事件は、段階2、段階
3及び段階4の事件であり、段階1の事件では主任加算報酬の規定は適用されません(算定基準第24条)。
30,000円
主任加算報酬
(段階2以上の事件が対象)
(7)その他の加算報酬
その他の加算報酬については、通常第一審と同一の加算報酬が設けられていますが、重大案件加算報酬及び特別案件加算報酬の額は、通常報酬の25%とされています(算定基準第28条第2項第1号、第29条第2項第1号)。
(8)費用及び基礎報酬の算定の特則
被告人国選弁護の算定基準(第1審)(即決被告事件及び裁判員裁判事件以外)と同じ(前述3(12)ないし(18)参照)ですが、接見や記録閲覧等を行わなかった場合の基礎報酬の額は、通常の場合の25%となります(算定基準第17条第
2項)。
5 即決被告事件の普通契約に関する算定基準
(1)基礎報酬
即決被告事件の基礎報酬は、5万円とされています(算定基準第14条第2項)。
50,000円(定額)
(即決)基礎報酬
(2)実質公判期日に対する加算報酬
国選弁護人が、複数回の公判、公判準備その他の手続期日に出頭したときは、次のとおり、2回目以降の出頭した手続期日について、3000円の公判加算報酬を加算します(算定基準第20条第1項、第2項)。同一日における複数回の出頭は、
1回と算定します。
3,000円
(即決)公判加算報酬
(2回目以降1回あたり)
(3)基礎報酬の算定の特則
① 接見や記録閲覧・謄写を行わなかった場合
通常被告事件の場合と同様です(前記3(18)①参照)。
② 第1回公判期日の前に解任された場合
国選弁護人が第1回公判期日の前に解任された場合で、起訴後解任前に被告人と接見、電話交通若しくは打合せを行ったとき又は記録の閲覧若しくは謄写を行ったときの基礎報酬は9000円(ただし、接見等の申入れ又は裁判所への意見書の提出等にとどまるときの基礎報酬は5000円)を算定します(算定基準第18条第1項、別表A3)。
(4)費用
被告人国選弁護の算定基準(第1審)(即決裁判事件及び裁判員裁判事件以外)と同じ(前記3(12)ないし(16)参照)です。
6 即決被告事件の一括契約に関する算定基準
(1)一括契約の定義
複数の即決申立被告事件について、国選弁護人に支給すべき報酬及び費用が一括して定められる契約を一括契約といいます(契約約款第2条第6号)。
国選弁護人契約弁護士が、センターから、同一の日に、複数の即決申立被告事件について指名打診を受け、これらを承諾したときは、当該複数の即決申立被告事件に関する報酬及び費用は、一括契約が成立した場合の例により算定されます(契約約款第15条)。
(2)基礎報酬
基礎報酬の額は次のとおりです(算定基準第14条)。
2件一括 9万5000円(即決被告事件2件分から5%減額)
3件一括 13万5000円(即決被告事件3件分から10%減額)
4件一括 17万円 (即決被告事件4件分から15%減額)
5件以上一括 5万円×件数×80%
(即決被告事件の件数分から20%減額)
(3)実質公判期日に対する加算報酬
国選弁護人が、複数回の公判、公判準備その他の手続期日に出頭したときは、2回目以降の出頭した手続期日について、3000円の公判加算報酬を算定します(算定基準第20条第1項及び第2項)。同一日における複数回の出頭は、1回と算定します。
3,000円
(即決一括契約) 公判加算報酬
(2回目以降1回当たり)
(4)基礎報酬の算定の特則
一括契約の対象となる複数の即決被告申立事件の中に、即決裁判手続によって審判する旨の決定がなされなかった事件又は即決裁判手続によって審判する旨の決定が取り消された事件があるときは、当該事件については、通常の手続により審理が行われた場合における算定基準の規定を適用して報酬及び費用を算定し(契約約款第16条)、その余の事件について一括契約に関する算定基準の規定を適用して報酬及び費用を算定し、これらを合算して事件全体に対する報酬及び費用とします。
(5)費用
被告人国選弁護の算定基準(第1審)(即決被告事件及び裁判員裁判事件以外)と同じ(前記3(12)ないし(16)参照)です。
7 控訴審における算定基準
(1)基礎報酬
① 原則
控訴審事件の国選弁護人が控訴趣意書、答弁書又は弁論内容を記載した書面を提出したときは、次のとおり、基礎報酬を算定します(算定基準第38条第1項及び2項、第39条)。
ア | 原審が即決被告事件である場合 | 4万円 |
イ | 原審が簡易裁判所の事件である場合(アの場合を除く。) | 5万円 |
ウ 原審が地方裁判所又は家庭裁判所の事件である場合(アの場合を除く。)
6万円
ただし、当該弁護人が第一審の国選弁護人を務めていなかった場合は、上記の各金額に1万7000円が加算されます(算定基準第39条)。
② 記録の分量に応じた加算
原審記録の丁数(注)が1000を超えるときは、前記①の各金額に次の区分に従った率を乗じた額を基礎報酬と算定します(算定基準第38条第3項)。
【原審記録】 | 【加算後の基礎報酬】 |
1000丁を超え5000丁以下 | 基礎報酬額の150% |
5000丁を超え1万丁以下 | 基礎報酬額の200% |
1万丁を超える場合 | 基礎報酬額の300% |
(注)記録に丁数の記載がないときは、「国選弁護及び国選付添における原審の記録に丁数の記載がないときの疎明資料等に関する細則」に基づいて基礎報酬を算定します。
【重量区分】 | 【丁数区分】 |
4.5キログラム以上22.5キログラム未満 | 1000丁を超え5000丁以下 |
22.5キログラム以上45キログラム未満 | 5000丁を超え1万丁以下 |
45キログラム以上 | 1万丁を超える場合 |
(2)控訴審公判加算報酬
公判加算報酬は、次のとおり算定します(算定基準第42条)。
① 実質審理を行った公判期日に対する加算報酬
国選弁護人が、実質公判期日に出頭したときは、開廷日ごとに、立会時間の区分に応じた額を算定します(同条第2項、同別表C5)。
② 整理手続期日に対する加算報酬
国選弁護人が、整理手続期日に出頭したときは、出頭した期日ごとに1万90
0円を算定します。
10,900円
整理手続期日加算
③ 判決宣告期日等に対する加算報酬
国選弁護人が、判決宣告期日等に出頭したときは、出頭した期日ごとに300
0円を算定します。
3,000円
判決宣告期日等に対する加算
(3)その他
上記(1)及び(2)以外は、おおむね、簡易裁判所以外の裁判所の第1審の被告事件(即決被告事件及び裁判員裁判事件を除く。)の国選弁護人の報酬及び費用と同様です(算定基準第40条、第41条、第43条ないし第47条)。
なお、控訴を取り下げられた後であっても、国選弁護人が、控訴が取り下げられた事実を知らなかったことについてやむを得ない事由がある場合であって、当該事実を知らずに行った活動を原因とするものに限っては、その費用を支給します(算定基準第45条第2項)。
また、第一審においてセンターから謄写費用の支給を受けた国選弁護人には、控訴審で選任された国選弁護人の求めに応じて、謄写記録を引き継ぐべき努力義務があり(契約約款第33条第1項)、これに対応して、控訴審の国選弁護人が謄写記録の引継ぎを受けた場合には、引継ぎを受けるのに要した送料につき、訴訟準備費用として支給します(算定基準第35条第2項)。なお、この場合、謄写記録の引継ぎを受けた国選弁護人は、当該謄写記録について、汚損、破損その他特段の事情がない限り、重複した謄写を避けるべき努力義務があります(契約約款第33条第
2項)。
8 上告審における算定基準
上告審事件の国選弁護人に支給される報酬及び費用については、立会時間の区分に応じた公判加算報酬の額が異なる点(算定基準第50条)を除いては、おおむね、控訴審の算定基準と同様です(算定基準第49条、第51条ないし第54条)。
9 再審事件における算定基準
再審事件の国選弁護人に支給される報酬及び費用については、当該事件の審級、当該事件が係属する裁判所、当該事件の種類、当該事件が公判前整理手続又は期日間整理手続に付されたか否かに応じて、上述の算定基準が適用されます(算定基準第55条)。
第9 法律事務取扱規程
1 弁護士職務基本規程をもとにした24項目の基準
法律事務取扱規程の中心となる「法律事務の取扱いの基準」(法律事務取扱規程第
4条)は、弁護士業務に関する弁護士職務基本規程、司法書士業務に関する司法書士倫理が、それぞれの業務の規律に関する規範として定められていることに鑑み、これらの規範、特に弁護士職務基本規程をベースとして、ここから、一般的な倫理規定や受任に関する規定など、契約弁護士等に対する適用になじまないものを除いて、24項目の基準を策定しました。
2 契約に違反した場合の措置
(1)一般契約弁護士等が契約に違反した場合の措置(法律事務取扱規程第5条第1項)
① 3年以下の契約締結拒絶期間を伴う契約の解除又は3年以下の契約締結拒絶期間の設定
② 契約の効力の2年以下の停止
(2)勤務弁護士等がその契約に違反した場合の措置(同第5条第2項)
① 3年以下の契約締結拒絶期間を伴う契約の解除又は3年以下の契約締結拒絶
期間の設定
② 1年以下の停職
③ 減給(1年以下の期間、給付月額の10分の1以下に相当する額を減ずる処分)
④ 注意
(3)措置の要件
契約に違反した場合の措置については、一般の契約弁護士等の場合と、センターに勤務する弁護士の場合とに分けて規定し、いずれの場合についても、違反の程度と措置の程度が対応するように要件を書き分けました。一般の契約弁護士等に対する措置の要件については同第6条、勤務弁護士等に対する措置の要件については同第7条をご参照下さい。
3 法律事務の取扱いの基準と措置との関係
法律事務の取扱いの基準(法律事務取扱規程第4条)には、弁護士職務基本規程において「弁護士の職務の行動指針又は努力目標」と位置づけられている規定とおおむね同じ表現のものが規定されていますが、「法律事務の取扱いの基準」に抵触する行為が発生した場合、直ちに措置の対象となる、という構成にはなっておりません。例えば、3年間以下の契約締結拒絶期間を伴う契約の解除措置の要件は、「第4条に規定する法律事務の取扱いの基準に違反し、その違反の程度が重大で、契約弁護士等としての責務を著しく怠ったとき。」とされており、このような要件を充足した場合にはじめて措置の対象となります(同第6条第1項参照)。
4 法律専門職者団体への通知
審査委員会に付議される問題は、弁護士等の不祥事と評価される可能性のある問題であり、日本弁護士連合会等の法律専門職者団体においても、懲戒処分等の可能性を含め、対応について検討を必要とする場合が想定されます。また、そうした法律専門職者団体における対応や検討のあり方は、審査委員会においてこの問題を審議する上でも、参考になりうるものと思われます。そこで、法律専門職者団体との連携の一環として、法律専門職者の規律維持に協力するとともに、審査委員会における議論を充実あらしめるために、審査委員会に付議される前の段階で弁護士会、日本弁護士連合会その他の法律専門職者団体に対する通知の制度を設けました(法律事務取扱規程第
8条第5項、同第9条第2項)。
なお、このような弁護士会や日本弁護士連合会等に対する通知は、措置の対象となる弁護士等にとっては、不利益な情報を他の機関に開示されることを意味します。そこで、この点に関する紛議を事前に回避するために、契約約款の中に、こうした通知
に異議を述べない旨の規定を設けました(契約約款第34条第7項)。
5 その他の措置
法律事務取扱規程には、「契約に違反した場合の措置に関する事項」(支援法第3
5条第2項)を記載すべきこととされていますが、契約上何らかの措置が求められる のは、契約違反があった場合だけには限りません。例えば、契約弁護士が懲戒処分により弁護士として職務を行えなくなった場合や、心身の故障等によって弁護活動ができない状態となってしまった場合には、契約関係の見直しを検討する必要があります。そこで、国選弁護人契約約款では、契約に違反した場合以外を理由とする措置とし
て、
① 弁護士法に基づく懲戒処分(業務の停止・退会命令・除名)を受けた場合(契約約款第35条)
② 心身の故障等のため契約弁護士としての職務の遂行に著しい支障がある場合(契約約款第36条)
には、解除措置や指名停止措置(②の場合のみ)をとることができる旨が定められています。これらの事項は、契約違反を理由とする措置ではないので、法律事務取扱規程の記載事項ではありませんが、具体的に措置をとる場合には、審査委員会の議決を経ることが必要となります(支援法第29条第8項第1号)。
6 措置に関する手続等
審査委員会において契約上の措置をとるべき旨が議決された場合には、センターは、対象となる弁護士にその旨を通知する(契約約款第34条第5項)とともに、裁判所及び弁護士会にも同様の通知を行います(同条第6項)。
なお、解除の効力が発生した時点で、当該弁護士が個別事件の国選弁護人に選任されている場合には、裁判所によって解任されるまで国選弁護人としての地位に留まることにはなりますが、センターに対し、解除後の弁護活動に対する報酬及び費用を請求することはできません。また、この場合に、裁判所が、当該国選弁護人を解任し、さらなる国選弁護人候補の指名通知を請求したときは、センターは、他の契約弁護士を国選弁護人候補として指名し、裁判所に通知することになります。
7 契約の終了等
(1)解約による終了
国選弁護人契約弁護士は、いつでも契約を将来にわたって解約することができます(契約約款第37条第1項)。ただし、解約時点で特定の事件の国選弁護人に選任されているときは、原則として、当該解約の効果は当該事件に関する契約関係に
は及びません(同条第2項)。
(2)当然の終了
国選弁護人契約は、国選弁護人契約弁護士が、①死亡したとき、又は②弁護士でなくなったときは、当然に終了します(契約約款第38条第1項)。
(3)契約上の措置に関する事項
前記(1)又は(2)②の事情により契約が終了した後であっても、センターは、当該国選弁護人契約弁護士に対する措置として、3年以下の契約締結拒絶期間を設定することができます(契約約款第37条第4項、第38条第2項)。
8 弁護士会及び日本弁護士連合会に対する協力
センターは、国選弁護人契約弁護士の所属弁護士会又は日本弁護士連合会から、正当な理由により資料の提供を求められた場合において、これに応ずることが適当であると認めるときは、当該弁護士から提出された報告書その他の資料を提供することができることが規定されています(契約約款第39条)。
以 上