商事法務No.2334
● 実 務 問 答 金 商 法 第 回 ●
資本業務提携契約上の義務の履行と業規制
xxxx 弁護士
2023. 8. 5
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金商法・実務研究会
xxxx 東京大学教授企画・監修
● 設問●
商事法務No.2334
非上場会社であるA社は、B社に対する第三者割当増資を行うのに際して締結した資本業務提携契約において、A社に表明保証違反があった場には、B社が保有するA社株式を第三者に一括して譲渡できるようにする義務を負うこととなった。A社がこうした義務に基づき、B社が保有するA社株式を第三者に譲渡できるようにすることは、「金融商品取引業」(金商法二条八項)に該当するか。
● 回答●
A社の行為が「有価証券の売買の媒介」(金商法二条八項二号)に該当すると評価される場合においても、基本的には「業として」(金商法二条八項柱書)有価証券の売買の媒介を行うものではなく、金融商品取引業に該当しないと解することができる。
凡例
本稿では、法令名について以下の略語を用いる。金商法:金融商品取引法
定義府令:金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令
証取法:証券取引法
● 解説●
一 問題の所在
実務においては、有価証券の発行会社が、その発行した有価証券の保有者のために、当該有価証券の譲渡先を探索する行為を行うことがあり得ると思われるが、そうした行為についてはその行為態様によっては「有価証券の売買の媒介」に該当すると評価される場合もあると考えられる(注一)。しかしながら、たとえば、株主から譲渡制限株式の譲渡等承認請求があった場合(会社法xx六条)であり、かつ譲渡等承認請求者が不承認となる際の買取先指定請求をして
いた場合(同法xxxxx号ハ)において、当該譲渡等承認請求を不承諾としつつ(同法xx九条)、財源規制の観点から株式会社自身による買取りができないときに、当該譲渡等承認請求に係る譲渡制限株式を購入することができる者を探してきて指定買取人とし(同法一四〇条四項・五項、一四二条)、当該指定買取人に対する譲渡ができるようにすることにつき、それが形式的には「有価証券の売買の媒介」に該当すると評価される場合においても、基本的には「業として」行っていることにはならないと解するのが妥当であるように思われる。では、こうした事例はどのような根拠に基づき「業として」行うものでないといえるのか。また、そうした根拠は、たとえば有価証券の発行会社である株式会社が資本業務提携契約等の契約上の義務の履行として有価証券の譲渡先を媒介する場合にも及ぼすことはできないか。本稿では、金商法における業概念の整理を振り返りつつ、有価証券の発行者が法令上の定めや契約上の義務の履行として行う媒介行為と金融商品取引業の関係について検討を行うこととしたい。
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48 ─
二 「業として」についての見解
1 規制範囲の限定の必要性
周知のとおり、金融商品取引業に係る「業として」の要件に関しては、「反復継続性」のみを基準とした場合には、個人投資家や事業会社が
行う有価証券の売買等が業規制の対象となってしまうこととなり、過度にxxな規制を課することとなるという問題意識の下、「反復継続性」以外の要件を課することにより、一定の限定をかける必要があるとの問題意識が共有されてきた。
2 「対公衆性」を要件とする見解
「
」
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そうした見解の一つとして、 業として 行うかどうかについては、一般に「対公衆性」のある行為を「反復継続性」をもって行うかどうかにより判断されるものとする見解がある。この見解においては、「対公衆性」や「反復継続性」については、現実に「対公衆性」のある行為が反復継続して行われている場合のみならず、
「対公衆性」や「反復継続性」が想定されている場合等も含まれるとされている(注二)。
しかしながら、「対公衆性」を要件としつつも、「対公衆性」の意義につき、定義府令において関係会社のためにのみ行う行為についても
《掲載の趣旨》 実務問答金商法の第二シーズンを始めます。本シーズンも、「金商法をめぐる実務的論点について、理論的に担保された考え方・実務指針を示す」というコンセプトはそのままに新執筆陣も加わっています。第一シーズンについては、xxxx監修=金商法・実務研究会編著『実務問答金商法』
(商事法務、二〇二二)をご覧ください。 (編集部)
「金融商品取引業」に該当することを前提に一定の要件のもと「金融商品取引業」から除外する旨の規定があえて置かれていること等を根拠に、不特定多数の者を相手方とするものという
意味ではなく、当該行為が公衆とかかわり合いを持つ行為であることを要するという意味であり、しかも公衆とのかかわりは必ずしも直接的なものであることを要求されていないとする見解(注三)も主張されており、「対公衆性」の意義について明確な理解の一致があるわけではない。
この点、「対公衆性」を要件とする証取法時代の有力説(注四)は、「対公衆性」とは不特定多数の者を相手とすること、ないしは一般大衆を相手に取引する体制がある場合をいうが、結局は社会通念によるというほかないと説明していた。こうした説明を踏まえると「対公衆性」の要件への該当性は、最終的には社会通念により決められることになると考えられる(注五)(注六)。
3 投資目的を要件とする説明
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一方、「単に自己のポートフォリオの改善のために行う投資目的の売買」等は、基本的に「業として」行うものに該当しないとする説明もみられる(注七)。金商法xx条一項ただし書は、金融機関が他の法律の定めるところにより投資の目的をもって行う取引には有価証券関連業の
禁止の規定は適用されない旨を定めているが、そうした規定もこうした説明を補強するものと考えられる。しかし、いかなる取引が「自己のポートフォリオの改善のために行う投資目的の売買」等に該当するか否かは個別事例ごとに実態に即して実質的に判断されるべきと指摘されており(注八)、それへの該当性は必ずしも明確ではない。また、自己のポートフォリオ改善目的の売買は「対公衆性」に欠けると説明する見解があることに関して、「混乱を生じている」とも指摘されており(注九)、こうしたことは「対公衆性」の要件も「投資目的」の要件も実質的な差が大きくないことを示しているとみることができる。
4 「要保護性」を判断基準とする見解
こうしたこともあり、「対公衆性」の要件も
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「投資目的」の要件も相手方の要保護性の要件に置き換えることができるとしつつ、相手方が保護を必要としているか否かは取引類型ごとに判断しなければならない上、直接の取引相手方以外の保護を目的としている規制も存在するから、結局、「業」に該当するか否かは、取引類型ごとに規制の必要性を検討して判断せざるを得ないとする見解もみられる(注一〇)。この見解によれば、「規制の必要性」という利益衡量により「業」への該当性が決められるべきことになると考えられる。
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5 「社会通念上事業の遂行とみることができる程度のものか」
「
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法制執務においては、「業とする」とは、ある者の同種の行為の反復的継続的遂行が、社会通念上、事業の遂行とみることができる程度のものである場合を指すと説明されており、具体的な場合において、一定の行為の反復的継続的遂行が「業」としてされたかどうかについて判定に困難な場合が少なくないが、結局、社会通念上それが事業の遂行とみられる程度の社会的地位を形成するかどうかによって決定するほかないであろうと説明されている(注xx)。こうし
下においては規制の趣旨を踏まえつつ、「社会通念上事業の遂行とみることができる程度のものか」(別の言葉でいうと「規制の必要性があるといえるか」)という基準を踏まえて検討を行うこととする。その際には「要保護性」を判断基準とする見解の指摘を踏まえ、取引類型ごとに規制の必要性の有無を検討することとする。
なお、「対公衆性」の要件や「投資目的」の要件は、基本的には自らが当事者となる取引を想定しているように思われるが、そうした取引以外の類型であっても、業規制の対象とする必要がない場合があると考えられるところであり、
「社会通念上事業の遂行とみることができる程
により金融商品取引が行われることになる危険性が低いと評価できる場合については、当該仲介者の行為を規制対象とする必要性は高くなく、「社会通念上事業の遂行とみることができる程度のもの」には至っていないと判断することができると考えられる。
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50 ─
前記一のとおり、譲渡制限株式の譲渡等承認
請求があった場合であり、かつ譲渡等承認請求者が買取先指定請求をしていた場合において、財源規制の観点から株式会社自身による買取りができないときに、株式会社が指定買取人を探してきて、当該指定買取人に対する譲渡ができるようにすることは、その行為態様によっては
「 」
た考え方を踏まえつつ、 業
とは、 反復継続
度のものか」という基準で判断するほうが、よ
形式的には「有価証券の売買の媒介」に該当す
」
「 」
性 のみならず、規制の趣旨や社会通念に照らしてさらに適用範囲を限定する要件を含み得る概念であるとの考え方が、 業 との語の一般的な理解に合致しているとの指摘がなされている
(注xx)。
前述の要保護性を判断基準とする見解は、こうした法制執務における「業」概念にxxな解釈ということができる。そして、「対公衆性」の要件や投資目的の要件も、規制の趣旨を踏まえつつ、「社会通念上事業の遂行とみることができる程度のものか」どうかを判定する要素として、「対公衆性」の欠如や「投資目的」であることを指摘するものと理解することができる(注xx)。
そこで、こうした理解を前提とした上で、以
り適当な結論を導くことができると考えられる。
三 検討
1 法令上の定めに基づく媒介行為
そもそも、「有価証券の売買の媒介」を業として行うことが規制対象とされている趣旨は、基本的には投資者が不適格・不適切な業者を介して金融商品取引を行ってしまうことがないよう、金商法が定める一定の要件を備えた者にのみ、投資者による金融商品取引の成立に向けた一定範囲の関与行為を行うことを許容するものと理解することができる(注一四)。そうすると、取引の類型からみて、不適格・不適切な仲介者
ると評価されることもあり得る。しかしながら、そうした株式会社の行為は、会社法が定める譲渡制限株式の譲渡等承認請求制度に基づくものであり、法令に基づき行われる行為である。譲渡制限株式を発行した株式会社にとって法令に基づく義務的な行為であり、そもそも当該株式会社が関与することが会社法において類型的に想定されているとみることができる。さらにいうと、会社法自体が、そうした局面においては、当該株式会社こそが適格・適切な関与者であると判断しているといえるように思われる。
こうしたことからすれば、当該株式会社の行為が「有価証券の売買の媒介」に該当すると評価される場合においても、これを規制対象とす
る必要は乏しいということができ、「社会通念上事業の遂行とみることができる程度のもの」ではなく、「業として」の要件は満たさないと解することができる(注一五)。
2 契約上の義務の履行としての媒介行為
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それでは、設問のように非上場会社である株式会社が第三者割当増資を行うのに際して締結した資本業務提携契約において表明保証違反があった場合に株式保有者が保有する株式を第三者に譲渡する義務を負っていることを前提として、当該株式会社が義務の履行として行う行為が「有価証券の売買の媒介」に該当すると評価されるときに、当該行為は「業として」の要件を満たすことになるか。取引の類型からして、不適格・不適切な仲介者により金融商品取引が行われることになる危険性を踏まえつつ、検討を行うこととする。
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そもそも、有価証券の売買の媒介契約に基づき媒介行為を行うことは有価証券の売買の媒介を「業として」行う場合の典型例であるから、法令とは異なり、契約上の義務の履行として行われることを主たる理由として「業として」の要件を満たさないと解することは困難であると考えられる。一方、シンジケートローンの担保として担保権の信託(セキュリティトラスト)を用いる場合、その信託受益権がローンと不可分一体であることが信託行為などにより確保されていれば、シンジケート団のアレンジャーによ
るその受益権の取扱いは第二種金融商品取引業に該当しないと整理されているところであり
(注一六)、その理由としては当該信託の受益権がローンと不可分一体であることが信託行為等により確保されており、実質的にローンとは別の付加価値または独自の経済的価値を有しないのであれば、実態としては各行がローンの担保権を有するものと変わらないことが挙げられている(注一七)。シンジケートローン自体は金商法の規制対象とならないことを前提として、シンジゲート団のアレンジャーがシンジゲートローンのアレンジを行うとともにシンジケートローンと不可分一体の担保としての信託に係る受益権に係る私募の取扱い(受益権を取得させる行為)を行うことは、金商法の規制対象ではないシンジゲートローンおよびその担保に係るアレンジと別の付加価値または独自の経済的価値を有しないということができ、そうした取引の類型からみて、不適格・不適切な仲介者により金融商品取引が行われることになる危険性が低いと評価され、「社会通念上事業の遂行とみることができる程度のもの」には至ってないとの判断が行われたものとみることができる。
こうしたことからすれば、契約上の義務の履行として行われる媒介行為についても、それとは別のそれ自体は金商法の規制対象とならない正当な目的を有する主たる契約目的・内容が存在していることを前提として、そうした金商法の規制対象とならない主たる契約目的・内容と
不可分一体の付随的なものとして提供されるにすぎない場合、すなわち実質的にみて当該主たる契約目的・内容とは別の付加価値または独自の経済的価値を有しているとはいえない場合には、そうした媒介行為は取引の類型からみて不適格・不適切な仲介者により金融商品取引が行われることになる危険性は低いと評価することができるように思われる。そうした場合には、媒介行為のみを取り出して、「社会通念上事業の遂行とみることができる程度のものである」
(「規制の必要性がある」)として金融商品取引業に該当すると評価する必要性に乏しいといえるのではなかろうか。
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51 ─
設問は、第三者割当増資を行うに際して締結した資本業務提携契約というそれ自体は金商法の規制対象とならない正当な契約目的・内容が主たるものとして存在していることを前提として、非上場会社である有価証券の発行会社が、表明保証違反があった場合には株式保有者の株式を第三者に譲渡できるようにするという義務を負うとともに、実際に株式保有者が保有する株式を第三者に譲渡できるようにするという事例である。もとより、媒介行為を行う者が有価証券の発行者であることのみにより、規制の必要性が乏しいと評価することはできないと考えられるが(注xx)、金商法は企業による資金調達に過度の制約を課すことのないよう、株式会社自身による株式の自己募集を規制対象行為としてないところであり、株式会社が第三者割当
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増資(規制対象とならない自己募集)を行うに際して締結した資本業務提携契約において表明保証違反があった場合に第三者に対して株式の譲渡ができるようにするという義務は、そうした資本業務提携契約における適切なリスク分担の仕組みとして導入されるものであって、主たる資本業務提携契約と不可分一体の付随的合意ということができる。このため、有価証券の発行会社がそうした資本業務提携契約における規定に基づき「有価証券の売買の媒介」と評価される行為を行ったとしても、そうした行為はそれ自体金商法の規制対象とならない資本業務提携契約とは別の付加価値または独自の経済的価値
こうしたことからすれば、設問におけるA社の行為については、「有価証券の売買の媒介」に該当すると評価される場合においても、基本的には「業として」有価証券の売買の媒介を行うものではなく、金融商品取引業に該当しないと解することができる。
(注一)「媒介」とは、ある人と他の人との間に法律行為が成立するように、第三者が両者の間に立って尽力することをいうと解されているが
(上)
(下)
(xxxxほか共編『法令用語辞典〔第xx次改訂版〕』(学陽書房、二〇xx)六三五頁参照)、その外延は必ずしも明確でない。なお、媒介の範囲について論じた文献として、xxxx=岩
ての規制を受けることについての説明が困難になるとして「業」概念の要件として「対公衆性」を求めることに疑問を呈する見解も有力に主張されている。xxxx=xxxx=xxxx
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『金融商品取引法』(青林書院、二〇xx)六〇一頁、xxxx「金融商品取引業」xxxx=xxxx『金融商品取引法の理論と実務〔別冊金融・商事判例〕』(経済法令研究会、二〇〇七)五六頁参照。
(注六) そもそも金商法の「業」概念の中には、
「私募の取扱い」など、特定少数の者を相手方とする業務も含まれている。また、従前の証取法、金融先物取引法、投資顧問業法等の、金商法に統合された証取法以外の業法における「業」概
を有しているとまではいえないように思われ
xxx「『媒介』の範囲
」金融法務事情二一
念については、「対公衆性」は要件として解釈さ
る。
また、設問の事例では非上場会社の株式について第三者への一括での譲渡が想定されており、譲渡・勧誘の相手方は基本的に特定少数にとどまることになろう。さらに、有価証券の発行会社にこうした義務が課せられる場合には、当該発行会社が媒介手数料等を取得することは基本的に想定されない。そうすると、不適格・不適切な仲介者により金融商品取引が行われることになる危険性は類型的に低いとみることができ、それが「有価証券の売買の媒介」に該当すると評価される場合においても、基本的には
「社会通念上事業の遂行とみることができる程度のもの」には該当せず、「業として」の要件を満たさないと解することができる(注一九)。
七八号(二〇二二)六一頁、二一八〇号(同)二五頁がある。
(注二) 金融商品取引法の立案担当者の見解である。xxxx=xxxx監修『一問一答金融商品取引法〔改訂版〕』(商事法務、二〇〇八)二一七頁参照。なお、証取法時代から、行政当局は対公衆性を要件として位置づけていた。証券法制研究会編『逐条解説証券取引法』(商事法務研究会、一九九五)二九頁参照。
(注三) xx・xx・xx法律事務所編『アドバンス金融商品取引法〔第三版〕』(商事法務、二
〇一九)六八五頁参照。
(注四) xxxx=xxxx『証券取引法〔新版〕』
(有斐閣、一九八四)xx五頁以下参照。
(注五) 対公衆性を必ずしも見出すことのできない少人数私募を行う者も金融商品取引業者とし
れていなかった。たとえば、従前の投資顧問業に関し、大蔵省証券局内投資顧問業関係法令研究会編『投資顧問業法逐条解説』(xx財務協会、一九九四)九頁では、「『営業』とは、『営利の目的をもって、同種の行為を反復・継続的に行うこと』をいう」と説明されていた。また、従前の信託受益権販売業に関し、xxxx『詳解新しい信託業法』(第一法規、二〇〇五)五八頁では、「『営業』とは『営利の目的をもって反復継続して行うこと』である」と説明されていた。こうしたことから、「対公衆性」を要件とする見解においても、対公衆性の欠如を理由に
「業として」行うものではないと解釈される場合は限定的な範囲に留まると考えられている。
(注七) xx=xx・前掲(注二)二一七頁、証券法制研究会・前掲(注二)二九頁参照。
(注八) xx=xx・前掲(注二)二一七頁参照。
(注九) xxxx『金融商品取引法〔第二版〕』(有斐閣、二〇二〇)六一二頁参照。
(注一〇) xx・前掲(注九)六一二頁参照。xxxx「金融商品取引業者の業規制と行為規制」金融商品取引法研究会編『金融商品取引法制の現代的課題』(日本証券経済研究所、二〇一〇)二一五頁も参照。
(注一一) 以上につき、大森ほか・前掲(注一)一六四頁、一六五頁参照。
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(注一二) 金融法委員会「金融商品取引業における『業』の概念についての中間論点整理」(二〇一二年九月一五日)一三頁参照。
(注一三) 金融法委員会・前掲(注一二)一五頁では、「『対公衆性』の要件も、規制の趣旨や社会通念に照らしてさらに適用範囲を限定するための要件(の一つ)として位置づけることができると考えられる」と指摘されている。
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(注一四) 平出慶道『商法Ⅲ(商行為法)』(青林書院、一九八八)一八一頁、一八二頁は、「仲立営業は、専門的知識さえあれば、資金や施設がなくても行いうる営業であるから、悪徳仲立人が跳梁するおそれもある。したがって、適当な取締の必要を生じ、若干の仲立営業については、証券取引法……等の業法により、行政的監 督と罰則が規定され、規制が加えられている」とする。また、飯田秀総「実務問答金商法の理論的検討 │ 連載第二一回〜第三〇回について」本誌二二七九号(二〇二一)一〇頁は、帝国議会における政府委員の説明を引用しつつ、かつての有価証券業取締法の立法理由は、当時
は取引所外における有価証券の売買についての証券業の営業が自由だったので、不正取引や犯罪行為を行う者もいるなどの弊害があったので、取引の安全を確保するために、免許制度として改善刷新を図ることにあったと指摘する。
(注一五) ただし、規制の潜脱的行為は許容されるべきではなく、仮に指定買取人による買取制度を悪用して、多数の投資家に対する株式の売買の媒介行為を行うような事例がみられた場合には、「業として」の要件を満たすことになると考えられる。
(注一六) 金融庁=証券取引等監視委員会「金融商品取引法の疑問に答えます」(二〇〇八年二月二一日)五頁。
(注一七) 池田唯一=澤飯敦「金融商品取引法質疑応答集の公表」本誌一八二六号(二〇〇八)三三頁。
(注一八) 実際にも未公開株の発行会社による株式の譲渡の媒介行為が無登録金融商品取引業として摘発される場合がある。
(注一九) なお、資本業務提携契約上の義務の履行に係る本文記載の枠組みを利用した潜脱的行為が許容されるべきではないのは法令上の義務の履行として行われる場合と同様である。
(おおごし・ありと)
•
予告⃝
53 ─
第三二回は、上島正道弁護士による「重要 事実の決定時期(仮題)」を予定しています。
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(編集部)