Ex.生命保険金の請求
相続財産等承継業務委託契約書作成に当たっての注意点
逐条解説
1見出し 相続財産等承継業務委託契約書
(1)委任と委託と請負の違い
委任は、当事者の一方(委任者)が法律行為をなすことを相手方(受任者)に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約をいう(民法643条)。法律行為以外の事務の処理を委託するのを準委任という(民法656)。→委任契約書には印紙税が課されない
請負は、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することによって成立する契約(民法634条)→請負契約書には印紙税が課される
委託は、何らかの法律行為又は事実行為をなすべきことを他人に依頼することをいい、特に契約書では、委任・準委任・請負のほか、複数の契約類型が混在している場合等に広く用いられる。
(2)相続財産等承継業務の特色
法律行為の外、法的助言の求めに応じるといった法律行為以外の事務が含まれたりといった要素があり「委託」に馴染む
2 当事者の表示
(1)委託契約になるので、委託者と受託者
(2)被相続人の特定事項として何を記載するか
第1条(目的)
(1)なぜ目的を規定するのか
①契約の成立を明確にする
②委託契約であることを明確にする
(2)委託内容
①管理および処分に関する法律行為
②その他の事務
③同人の死亡に起因する権利の行使
Ex.生命保険金の請求
第2条(承継対象財産)
(1)承継対象財産とは何か
受託者が管理・保管し、処分等に必要な行為を行う財産
=相続人または受遺者あるいは受取人に帰属する一切の財産
(2)この財産の範囲をどのように決定するか
利益衡量
①後から遺産が出現しても受託者の善管注意義務違反の責任を負わないようにする必要がある。→第2項
委託者から引渡を受け、または指示されたもの
②受託者で主導的に調査できる範囲も決めておきたい。→第3項
ⅰ名寄せの取得
ⅱ預金残高証明
第3条(委託事務及び代理権の範囲)
(1)委託事務の対象として想定される機関
ⅰ金融機関→①
ⅱ証券会社→①
ⅲ保険会社→①
ⅳ法務局→③
ⅴ墓地管理組合→④
ⅵ弁護士、税理士、宅地建物取引士等の専門士業→⑤
ⅶ市役所市民課・固定資産税課→⑧
ⅷその他
(2)代理行為の範囲
司法書士法29条、施行規則31条の趣旨を明言する
ただし、法令等による制限により乙が行うことができない事務を除く
(3)契約締結後の委託事務の範囲の変更と代理権の追加
委託事務の範囲の変更とは
狭めることも広げることも可能→合意の内容を書面化する必要がある
代理権の追加→合意の内容を書面化する必要がある
代理権を削減すること→可能だし合意の内容を書面化する必要もない
第4条(証書等の引渡し)
預かり証を交付する。
何を預かり証に記載するか→日時、相手方、明細と保管方法
第5条(注意義務等)
本契約の趣旨とは、法29条、施行規則31条の趣旨
【報告書と報告義務について】
委託契約(本契約書)に基づく委託事務(第3条)の関係 委託事務が終了した場合の報告 委託契約が終了する場合には、委託事務が終了した場合と委託事務が途中で終了した場合とがある。 |
第6条(報告書等)
必ず、書面でしなければならないとする範囲
委託事務終了時には書面で報告書と付属書類を作成する
委託事務終了時の報告書の保存期間は10年
第7条(報告義務等)
第1項→委託事務処理中の報告はどの時点でどのような方法でするべきか
いつ報告しなけばならないとするか
委託者から請求があったとき、受託者が報告すべきと考える適切な時期
報告の方法
途中の報告まで書面でする必要があるか→直ぐに報告する必要がある
書面または面談その他適切な方法
第2項→清算事務
委託事務が終了していても、清算はまだ終了していない。そこで契約が終了したときには清算事務を報告をしなければならない。
この報告を書面でしなければならないとするか適切な方法によることを認めるか。清算事務の報告も書面ですることが一般的ではあるが、そこまで要求しない相続人がいるかも知れない。個々の相続人の状態に合わせて報告することを認めてもよいのでないか。
第8条(費用の負担)
第1項→委託者が一人の場合と複数の場合がある
委託者が一人の場合は特に問題になることはないが、委託者が複数の場合は問題になる。委託契約につき個別契約説によればそれぞれの人と個別に委託事務の処理に関する費用額を決めることになるが、最終的に何人と契約することになるのか不明なので個別に費用額を決めることができない。その為、連帯債務とした。
第2項→民法650条(受任者による費用等の償還請求等)の規定によらず民法649条(受任者による費用の前払請求)の規定によることで委託事務を円滑に行うことができる。
第9条(受任者等の報酬)
報酬規程表による
個別成果方式か成功報酬方式か→成功報酬ではない
責任報酬の要素を加味することはできるか→できるのでないか
第10条(契約の解除)