APO_社労士通信
APO_社会保険労務士法人
第 36 号 発行日 2011.3.1
APO_社労士通信
有期労働契約の締結、更新、雇止め
有期労働契約の締結・更新・雇止めに際しては、労働基準法第 14 条第 2 項に基づいた「有期労働契約の締結、更新及び雇止 めに関する基準」が策定されています。(H15.10.22 厚生労働省告示、H20.3.1 一部改正)今回はこの基準を見ていきましょう。
1.契約の締結・解約
① 契約期間:有期労働契約期間の上限は原則 3 年です。例外として、高度の専門業務に従事している労働者や、満 60 歳以
上の労働者の場合は 5 年、一定の事業の完了に必要な期間を定める契約をしている場合はその期間、となって
います(詳細はミニ知識をご参照ください)。また、労働契約法第 17 条では、使用者に対し不必要に短い契約期間の反復とならないよう配慮すべきとしています。
② 解約(退職):契約期間の上限が原則 3 年である有期労働契約の場合、1 年を超える期間の契約締結をした労働者は、労働契約期間の初日から 1 年経過した後は、申し出によりいつでも退職が可能です。上記①の例外とされる契約期間の場合、期間中の退職は原則禁止となっています。
③ 解約(解雇):使用者は、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができないとされています(労働契約法第 17 条・民法第 628 条)。
2.契約の更新
① 更新の有無:契約締結時に更新の有無を労働者に明示する必要があります。
<例>自動的に更新する、更新する場合がある、契約の更新はしない、など
② 更新の判断基準:更新する場合はその判断基準(労働者の勤務態度や職務能力等)を明示する必要があります。
<例>契約期間満了時の業務量により判断する、労働者の勤務成績、態度、能力により判断する、など
③ 明示の方法:トラブルを未然に防ぐ観点から、使用者から労働者に対して書面により明示することが望ましい、とされています(H15.10.22 基発 1022001 号)。
④ 契約期間の配慮:契約を 1 回以上更新し、かつ 1 年を超えて継続している場合の契約更新は、契約の実態およびその労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません。
3.雇止め
① 雇止めの予告:以下の3つのいずれかの条件に該当する労働契約を更新しない場合、契約期間が満了する 30 日前までに雇止めの予告を行う必要があります。
・ 有期労働契約が 3 回以上更新されている
・ 1 年以下の契約が反復更新され、継続して 1 年を超える場合
・ 1 年を超える期間の契約を締結している場合
② 雇止め理由の明示:雇止めの予告後、または雇止め後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。この雇止めの理由は、契約期間の満了とは別の理由とする必要があります。
<例>前回の更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため、事業縮小のため、
第 36 回 雇用契約の期間
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担当していた業務が終了(中止)したため、業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため、など有期労働契約の更新や雇い止めはトラブルになりやすいので、労働関係法令を良く理解しておくことが必要です。
【雇用期間の上限について】労働契約の締結にあたってその期間を定めるかどうかは労使の自由ですが、期間の定めのある契約をする場合、その期間が長期に及ぶと労働者の自由を不当に拘束し事実上の強制労働をもたらすことになるので、労働契約による人身拘束の発生を防止するため契約期間には上限が定められています。その詳細は以下の通りです。
○原則・・・3 年(建設工事現場のような有期事業は除きます。有期事業はその事業期間が契約期間の上限となります)
○例外・・・5 年(高度専門業務従事者、満 60 歳以上の労働者との間に締結される労働契約)
※高度専門業務従事者とは専門的な知識、技術又は経験であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識を有する労働者を指します。<例>博士の学位を有する者、弁護士・医師等の有資格者、年収が 1075 万円以上の
システムエンジニア等一定の業務に従事する者であって一定の学歴と経験(大卒で実務経験 5 年以上等)を有する者など
【期間の定めとは】ここでいう「期間の定め」とは、期間満了まで使用者も労働者も勤務を拘束されるものをいいます。期間の定めのある契約をした場合、その期間中はやむを得ない事由がなければ労働者から退職することも使用者から解雇することもできません。したがって、雇用期間を定めたとしても労働契約の終期の定めのみで、労働者はいつでも退職できるという退職の自由のある契約であれば、仮に 6 年の期間を定めたとしても違反にはならないと言えます。ただし、その場合でも使用者は労働契約期間中にはやむを得ない事由がなければ解雇はできませんので注意が必要です。なお、定年制は定年までの退職が禁止されているわけではないので「契約期間の定め」にはあたらず、一種の最終期限付契約と解されています。
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