JIPDECの2018年調査時点で、すでにクラウドサインをはじめとする電子契約サービスの利用を「導入している」は 4 割超、「検討している」が2 割超と、合計6割超の企業が電子契約をなんらかのかたちで採用・検討しています。(次ページ図)
電子契約の基礎知識
ゼロから学べる
ー 電子契約の導入メリットと注意点 ー
ー 収入印紙が電子契約では不要になるのはなぜか? ー
目次
第1章 電子契約の導入メリットと注意点
電子契約の基礎知識、電子署名法や電子帳簿保存法等の法令、導入時のメリットや注意点など、電子契約について知っておくべきことをまとめました。
04 電子契約とは
・ 電子契約の普及率
・ 電子契約の市場規模およびシェア
06 書面契約と電子契約の比較
06 電子署名とは
・ コピーが容易な電子ファイルの作成者をどう証明するか
・ 公開鍵暗号システムを用いて電子ファイルの作成者を証明
08 電子契約と電子署名に関する主な法令
・ 電子署名法
・ 電子帳簿保存法
09 電子契約の導入メリット
(1)コスト削減
(2)業務効率化
(3)コンプライアンス強化
12 電子契約導入にあたっての注意点
・ 法律で書面が求められる契約類型が一部に存在する
・ 受信者側(契約相手方)の理解
目次
第 2 章 収入印紙が電子契約では不要になるのはなぜか?
電子契約は、紙の契約書との大きな違いとして、収入印紙によって納付する税金である「印紙税」が不課税となり、コスト削減ができるというメリットがあります。
なぜ同じ契約にもかかわらず印紙税がかからないのか?
前半ではその根拠となる通達と、通達の解釈を裏付ける税務当局の3つの見解をご紹介し、後半では実際に電子契約を利用することで印紙税を80%以上削減することに成功した企業様の例をご紹介します。
14 収入印紙による印紙税の納税義務
15 なぜ電子契約で収入印紙が不要になるのか
・ 基本となる印紙税法基本通達
・ 当局見解その1:請負契約に用いる注文請書についての判断事例
・ 当局見解その2:コミットメントライン契約に関して作成する文書についての判断事例
・ 当局見解その3:国会質問における政府答弁
17 電子契約による印紙税コスト削減事例
・ 株式会社アペックス様
・ 株式会社クレディセゾン様
・ リノベる株式会社様
19 まとめ
第 1 章 電子契約の導入メリットと注意点
電子契約とは
電子契約とは、電子ファイルをインターネット上で交換して電子署名を施すことで契約を締結し、企業のサーバーやクラウドストレージなどに電子データを保管しておく契約方式を言います。
2000年以降、「電子署名法」や「電子帳簿保存法」といった電子契約に関する法的環境が整備され、電子署名やクラウドストレージ等の技術的開発も進んでおり、電子契約を導入しやすい環境になりました。
日本の商慣習において当たり前に行われてきた「紙と印鑑」による契約締結だけでなく、電子契約による契約締結も徐々に増加してきています。
電子契約の普及率
JIPDECの2018年調査時点で、すでにクラウドサインをはじめとする電子契約サービスの利用を「導入している」は 4 割超、「検討している」が2 割超と、合計6割超の企業が電子契約をなんらかのかたちで採用・検討しています。(次ページ図)
2019年現在では、これがさらに拡大をしているものと推測されます。
契約書送信者
電子署名・タイムスタンプ
(改ざん防止)
クラウド型電子契約のイメージ図
契約書受信者
JIPDEC「企業IT利活用動向調査2018」P23 電子契約の利用状況の経年比較(2016年~ 2018年調査) xxxxx://xxx.xxxxxx.xx.xx/xxxxxxx/xxxxxxxx/0000xxxxxxxx_xxxxxx.xxxx
電子契約の市場規模およびシェア
矢野経済研究所の2018年8月末時点の調査「リーガルテックウォッチ2018 ~電子契約サービス編」によれば、電子契約の市場規模は売上高ベースで40億円前後と推計され、対前年比で150%前後の成長率と見込まれています。
また、クラウドサインは、当該調査において発注者側ベース(有償無償含む)の累計利用登録者数で8割以上のシェアを占め、No.1という結果となりました。
※電子契約サービス主要12社において、有償・無償を含む発注者側ベースでの利用登録社数(株)xx経済研究所調べ 2019年7月末現在
電子契約市場シェア No.1
クラウドサインは累計利用登録社数でNo.1
書面契約と電子契約の比較
ここで、書面契約と電子契約とを表にして比較してみましょう。
分類 | 書面契約 | 電子契約 |
書類媒体 | 紙への印刷 | 電子データ |
署名方法 | 記名押印、署名 | 電子署名 |
締結日時の証明 | 日付記入、確定日付の取得 | 認定タイムスタンプ |
相互確認 | 原本の郵送、持参による受け渡し | イ受ンけタ渡ーしネット上での電子データによる |
保管方法 | 倉物庫理や的キなャ保ビ管ネットによる原本の | に自社よ内るの電子サー的バなー保や管外部のデータセンター |
メリットについてはまた後ほど詳細に解説をしますが、特に企業間の取引においては
・ 契約に関する費用の削減
・ 契約締結スピードと管理の業務効率向上
・ 契約に関する各種コンプライアンスリスクの低減
といった、電子契約ならではの大きなメリットを得ることができます。
電子署名とは
ところで、電子契約に用いられる電子署名とはどのようなものでしょうか。
「電子」の「署名」と聞くと、タブレットなどを使って電子ファイルに電子ペンを使って手書きで文字を書き込む姿を想像するかもしれませんが、電子契約における「電子署名」は、それとは違った意味を持ちます。
コピーが容易な電子ファイルの作成者をどう証明するか
書面を用いた契約では、押印した印影や手書きの署名を施すことによって、その紙に書いた内容が本人の意思であることを証明できるようにします。これは、一般に印鑑が本人だけが保有しているものであることが推定されること、また手書きの署名であれば筆跡鑑定で本人が推定されることを前提とした仕組みです。
一方、電子ファイルを用いる電子契約では、ファイルそのものに印影や署名を
施すことはできません。もちろん、デジタルな印影や署名を画像として上書きすることはできますが、デジタル画像はコピーが容易であるため、本人の意思によることを証明することは出来ず、意味がありません。そのため、別の手段によってその内容が本人の意思であることを証明できるようにする必要があります。
公開鍵暗号システムを用いて電子ファイルの作成者を証明
現在、これを証明できるようにする手法として用いられているのが、コンピュータの暗号技術を用いた公開鍵暗号システムです。
一対になった暗号化鍵と復号鍵の鍵ペアを作り、特定の復号鍵で復号できる暗号文がある場合、その暗号文は、その復号鍵に対応する暗号化鍵で平文を暗号化したものと証明できます。この2つの鍵のうち、復号鍵をインターネット上に公開し(公開鍵とし)、暗号化鍵を本人だけが知りうるパスワード等で管理された秘密鍵とするのです。公開鍵で復号できる暗号文は、その公開鍵と一対となっている秘密鍵の管理者によって暗号化されたものであると推定されます。
JIPDECウェブサイト xxxxx://xxxx.xxxxxx.xx.xx/xxxxx/xxxxxxx.xxxx より
この公開鍵暗号システムを用いて、その電子ファイルの作成者を推定できるようにした仕組みが、一般に電子署名と呼ばれているものの正体です。「署名」と言う言葉が紛らわしさを生んでいますが、手書きによる書面上の署名と似たような本人確認の機能を有するところから「署名」という言葉が用いられているに過ぎません。
電子契約と電子署名に関する主な法令
電子契約に関わる法的環境は、2000年以降xx整備されています。以下、代表的な法律について紹介します。
電子署名法
2000年に施行された電子署名法により、本人による電子署名を施した電子ファイル(電磁的記録)についての法的効果が定められました(電子署名法第3条)。
第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
以下の要件を満たす電子署名を付与された電子ファイルは、書面に押印または署名された契約書に同等の法的効力が生じることとなります(電子署名法第2条)。
1. 本人性の証明—電子文書が署名者本人により作成されていることが証明できること
2. 非改ざん性の証明—署名された時点から電子文書が改ざんされていないことが証明できること
電子帳簿保存法
税法上、契約書、注文書、領収書、見積書等の取引情報に係る書面は、7年間保存する義務があります(法人税法施行規則59条ほか)。
ただし、電子契約のように電子データで保存する場合、以下の要件を満たすことで、紙の契約書等の原本と同等に扱われ、長期保存にかかる負担が解消できます(電子帳簿保存法10条)。
1. xx性の確保—認定タイムスタンプまたは社内規程があること
2. 関係書類の備付—マニュアルが備え付けられていること
3. 検索性の確保—主要項目を範囲指定および組み合わせで検索できること
4. 見読性の確保—納税地で画面とプリンターで契約内容が確認できること
電子契約の導入メリット
これまでの書面による契約を電子契約に切り替えることで、企業は大きく3つのメリットを受けることができます。
(1)コスト削減 : 印紙代、郵送代、封筒代、インク代、人件費、保管費用が削減できる。
(2)業務効率化 : 文書を紙面に印刷するなどの手間や保管先から検索する手間が削減できる。
(3)コンプライアンス強化 : 原本の紛失や劣化、改ざん等のリスクが低減できる。
(1)コスト削減
書面による契約の締結は、印紙代、郵送代、印刷費、さらにはそれらの作業にかかる人件費や、書類の保管費(法人税法上、紙の契約書は7年間の保存義務)といった様々なコストが発生します。一件あたりの費用は数百円から数千円程度に過ぎなくても、総額では毎月数十万円以上の費用になっていることも少なくありません。
電子契約を導入することで、契約書類はインターネット上でデータを受け渡しするため、郵送費はもちろん、印刷費、保管費などが不要になります。
また、ファイルをインターネット上にアップロードするだけなので、業務フローが簡素化され人件費も最小限にできます。
書面を取り交わして保管する場合、印刷代なしでも
1 契約につき700円以上のコストがかかっていると想定されます。
人件費: 260 円
お印こ刷な、っ郵た送場、回合収の、xx額管でをす時。給 2,000 円の人が 8 分間かけて
書面 1 件あたり
レターパックで郵送した場合の金額です。
郵送費:360 円
700円以上
その他:100 円
印紙+ 税
封筒・用紙・印刷・保管 (7 年間) 等にかかる金額です。
書面を取り交わして保管する場合1契約あたり700円以上かかる
そして電子契約の導入でもっとも分かりやすいメリットが、印紙代のコスト削減です。印紙代は、印紙税法第二条において、印紙税の対象となる課税文書が定義されています。その金額は、1通数百円から、数万円を超えるものまであります。
2018年9月現在において、課税文書とされるのは、以下の要件を満たすものとされています。
・ 印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証明される べき事項(課税事項)が記載されていること。
・ 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
・ 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている 非課税文書でないこと。
しかし、国税庁は課税文書を「紙の原本」と定義しています。したがって、契約書の電子データはもちろん、電子データのコピー(写し)も課税対象文書に当たらないため印紙代はかかりません。
2005年に当時の首相であるxxxxxxは、以下のような答弁をしています。
参議院議員xxxx提出印紙税に関する質問に対する答弁書(5の一部を抜粋)
事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである
xxxx://xxx.xxxxxxx.xx.xx/xxxxxxxx/xxxx0/xxxxxx/xxxxxxx/000/xxxx/x000000.xxx
(2)業務効率化
書面で契約を締結する場合は、原本を印刷、押印、郵送、取引相手に押印後の原本返送の依頼等によって、契約締結まで2~3週間程度かかることもあります。さらに、途中で契約内容の変更などあれば、再度印刷からやり直すことになり、二重、三重の手間が発生していました。
また、監査等の対応で過去の契約内容を確認する時は、倉庫やキャビネットから探し出す必要があり、整理されていない状態だと探すのに苦労することもあります。
電子契約の場合は、お互いがパソコンやスマートフォンで作業するだけなので、早ければ2~3分で契約締結に関わる全ての作業を終えることができます。契約書の送信者は、互いが電子データを確認できる環境にファイルをアップロードして、署名してもらうだけで契約が完了します。仮に、修正があっても、再度ファイルをアップロードするだけです。
また、過去の書類を確認する必要があれば、検索機能を利用して書類や契約相手方の名前などで容易に検索が可能です。
(3)コンプライアンス強化
第1に、電子署名と認定タイムスタンプを電子データに組み合わせて施すことで、契約内容の改ざんリスクを最小化できます。
3Dプリンタで偽造された印鑑の印影を人間の眼で見破ることは困難ですが、電子署名であれば、PDFファイルの「署名パネル」を確認することで、改ざんの有無をデジタルに、誰でもかんたんに確認できます。
電子署名はPDFファイルの「署名パネル」からかんたんに確認できる
従来の紙と印鑑での契約締結
契約合意 印刷 製本
捺印
封入郵送 (先方)捺印 (先方)捺印 ファイリング 保管
クラウドサインでの契約締結
契約合意
アップロード
メール通知
(先方)
合意締結
自動保管
作業時間を大幅削減!
作業時間の大幅な短縮が可能
また、書面での契約書を倉庫やキャビネットに保管するリスクとして、管理漏れや紛失などが挙げられます。企業の中では、日々に多くの契約書類の受け渡しがあり、どの契約書を、今誰が、どのように進めているのか、全てを把握するのは難しいのではないでしょうか。
そして、いざ過去の契約書の確認が必要になって倉庫やキャビネットを探してみると、一部の書類が紛失していたというリスクがあります。災害などで倉庫やキャビネットが破壊され、そこに保存していた書類も復元できなくなってしまうという可能性もあります。
電子契約では、契約書を電子データとしてxx管理することで、業務の透明性が向上し、抜け・漏れを少なくすることができます。当社が提供しているクラウドサインでは、書類の締結状況や、送信先での確認状況までステータス管理できますので、契約の締結漏れを減らすことも可能です。
さらに、クラウドサーバは一般企業のファイルサーバーと比較して高いセキュリティ基準を設定しているので、不法な侵入を防いでくれます。また、災害に備えて耐震性なども強化しています。
電子契約導入にあたっての注意点
ここまで、電子契約の良い面を中心に紹介してきました。しかしながら、電子契約の導入にはいくつか注意していただきたいポイントもあります。
法律で書面が求められる契約類型が一部に存在する
契約方式自由の原則により、基本契約・秘密保持契約・売買契約・業務委 託契約・請負契約・雇用契約など、ほとんどの契約において電子契約が利用可能となっています。
一方、電子契約が普及している中でも、消費者保護などを目的として、法律で書面(紙)による締結や交付が義務付けられているものも一部ですが存在します。
以下に書面が必要となる代表的な類型を紹介します。
・ 定期借地契約(借地借家法22条)
・ 定期建物賃貸借契約(借地借家法38条1項)
・ 投資信託契約の約款(投資信託及び投資法人に関する法律5条)
・ 訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売 取引における書面交付義務(特定商品取引法4条etc)
このような契約を扱う場合、電子契約の導入の前に、顧問弁護士にも確認の上ご利用いただくことをおすすめします。
受信者側(契約相手方)の理解
自社で導入できたとしても、電子契約の受信者側の理解も必要になります。相手が合意することで契約は締結されますので、受信者である相手が電子契約を拒んで従来の書面による契約を希望した場合には、相手に合わせなければならないケースも少なくありません。
また、導入する電子契約サービスによっては、相手にも同様の電子契約サービスを利用してもらう必要もあるため、相手に費用を負担させてしまうこともあります。
「自分たちのために同じ電子契約を使ってください」と言ったところで、相手にメリットがなければ同じ電子契約サービスは利用してくれません。
この点クラウドサインでは、受信者は利用規約をご確認いただくだけで、サービスのアカウント登録作業は必要ありません。もちろん、費用負担も契約相手方に強いることなく、スピーディに契約を締結することができます。
また、豊富な図解入りの受信者様向けガイドコンテンツを豊富にご用意して、この点をサポートしています。
第 2 章 収入印紙が電子契約では不要になるのはなぜか?
収入印紙による印紙税の納税義務
電子契約を導入するとなぜ印紙税が不課税になり、税金を収めなくですむのか?
その理由を理解する前提として、印紙税法を確認しましょう。契約書に収入印紙を貼ることで納税を行う義務は、印紙税法第2条および第3条に定められています。不要になった書類は捨てるに限るわけですが、法律上ポイポイ捨てるわけにもいかないのが契約書のつらいところでもあります。
第二条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
さらに印紙税法の別表第一には、課税対象となる文書20項目が一覧化されており、
・ 2号文書 請負に関する契約書
・ 7号文書 継続的取引の基本となる契約書(売買取引基本契約書、業務委託契約書、代理店契約書など)
・ 17号文書 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書(領収書など)
といった、日常業務でも頻繁に作成する契約書や文書が、印紙税の対象となっています。
なぜ電子契約で収入印紙が不要になるのか
印紙税法第2条によれば、別表第一を見れば課税文書が分かるかのような規定になっているものの、「電子契約は非課税」とはっきり規定している記述はありません。
そこで、印紙税法第2条および第3条の運用ルールをさらに詳細に規定した、「印紙税法基本通達」を緻密に検討する必要がでてきます。
基本となる印紙税法基本通達
冒頭で確認した印紙税法の第2条をよく読むと、「文書(略)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある」との規定があります。どうやら、課税文書を「作成」することが課税のポイントとなっているようです。
ここで、課税文書の「作成」とは何か、印紙税法基本通達第44条に記載されている定義を確認します。
第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
2 課税文書の「作成の時」とは、次の区分に応じ、それぞれ次に掲げるところによる。(平13課消3-12、平18課消3-36改正)
(1)相手方に交付する目的で作成される課税文書 当該交付の時
(2)契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書当該証明の時
(3)一定事項の付け込み証明をすることを目的として作成される課税文書当該最初の付け込みの時
(4)認証を受けることにより効力が生ずることとなる課税文書当該認証の時
(5)第5号文書のうち新設分割計画書 本店に備え置く時
このように、用紙等に課税事項を記載し行使する、つまり紙の書面に書いて交付することが「作成」行為となります。一方、電子データは紙ではありませんし、送信はしますが交付はしません。電子契約(データ)を締結(送信)することは課税文書の「作成」に該当せず、したがって印紙税は課税されないというわけです。
なお、電子契約をプリントアウトしたとしても、電子データの複製物(コピー)に過ぎないので、そこに印鑑を押すようなことをしない限り、課税物件には該当しません。
このことは、以下に示す税務当局見解や国会答弁においても、明確に述べられています。
当局見解その1:請負契約に用いる注文請書についての判断事例
請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の 印紙税の課税関係について
印紙税法に規定する課税文書の「作成」とは、印紙税法基本通達第44条により
「単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう」ものとされ、課税文書の「作成の時」とは、相手方に交付する目的で作成される課税文書については、当該交付の時であるとされている。上記規定に鑑みれば、本注文請書は、申込みに対する応諾文書であり、契約の成立を証するために作成されるものである。しかしながら、注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を
電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。
当局見解その2:請負契約に用いる注文請書についての判断事例
コミットメントライン契約に関して作成する文書に対する印紙税の取扱い
請求書や領収書をファクシミリや電子メールにより貸付人に対して提出する場合には、実際に文書が交付されませんから、課税物件は存在しないこととなり、印紙税の課税原因は発生しません。また、ファクシミリや電子メールを受信した貸付人がプリントアウトした文書は、コピーした文書と同様のものと認められることから、課税文書としては取り扱われません。
当局見解その3:国会質問における政府答弁
参議院議員xxxx提出印紙税に関する質問に対する答弁書(5の一部を抜粋)
事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである
以上のように、法律および課税実務からも、電子契約において印紙税は不要となっています。
電子契約による印紙税コスト削減事例
企業間取引においては、基本契約で1通あたり4,000円の印紙を毎回貼っている企業様もいらっしゃいますので、電子契約に変更するだけで大幅なコスト削減を実現できる場合もあります。
ここでは、実際に電子契約クラウドサインを導入し、大きなコスト削減に成功した企業様の具体的事例を紹介させていただきます。
<導入前の課題>
クラウドサイン導入前は、本格ドリップコーヒーのパッケージ販売について、基本契約書を締結するごとに4,000円の収入印紙がかかっていました。
<導入後の成果>
月に100 ~ 150件を契約しているため、印紙代は無視できない金額でしたが、クラウドサインの導入によってこれが不要になりました。
収入印紙代は営業所の経費になっていましたが、利益を向上させないといけない営業所にとって収入印紙代が節約できるとあって、大歓迎での導入となりました。
<導入前の課題>
クラウドサイン導入前は、以下の2つの書類を印刷し、返信用封筒を入れて郵送するという方法で契約を締結していました。
・ 取引のベースとなる「基本契約書」
・ 債権譲渡の詳細な条件が記載された「個別契約書」
<導入後の成果>
一つの上記2つの契約を締結するために、1契約あたり収入印紙が4,200円(基本契約書が4000円、個別契約書が200円)かかっていました。しかし、クラウドサ インの導入によって印紙代は不要になり、印刷や郵送に必要だった費用も無くなったことで、コスト削減に成功されました。
<導入前の課題>
リノベーションをされるお客様との工事請負契約書をはじめ、そのほか関係取引先企業様との契約書、注文書があり、それらの書類を回収する事務作業のウェイトと手間が高い状態でした。
<導入後の成果>
半年経って、利用率は契約書類の80~90%にも達しています。勤務時間から、プリントアウトして、製本して、押印して、印紙を貼って、郵送して…、という一連の作業が一気になくなった!という実感があります。
まとめ
• 契約書に収入印紙を貼る義務は、印紙税法第2条において定められている。
• 印紙税法第2条の別表第一に、印紙税の対象文書として具体的な文書の類型が20項目が記載されているが、電子契約はここに含まれておらず、印紙税法基本通達第44条の「課税文書の作成」にも該当しない。
• 電子データのコピーやプリントアウトしたものも原本にならず、印紙税はかからない。
• 電子契約およびそのコピーに印紙税が課税されないことは、国税庁の見解や国会答弁等でも確認されている。
電子契約サービス・クラウドサインとは?
「クラウドサイン」は弁護士監修のもと運営を行なっている、国内シェア80%超※の電子契約サービスです。従来の「紙と印鑑」を「クラウド」に置き換え、契約作業をパソコンだけで完結することができます。
050 -7586 -3879( 平日10:00 ~19:00)
※電子契約サービス主要12 社において、有償•無償を含む発注者側ベースでの利用登録社数(株)xx経済研究所調べ 2019 年 7 月末現在
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