ex. 憲法,刑法,行政法
平成20年度
xx市包括外部監査結果報告書
「工事・委託を中心とした契約手続
及び契約締結後の契約変更について」
(概 要 版)
平成21年1月
xx市包括外部監査人
弁護士 x x x x
目 次
第1章 | 総論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 1 |
第1 | 監査の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 1 |
1 | 選定した特定の事件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 1 |
2 | 監査対象事件を選定した理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・ | 1 |
3 | 監査の方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 1 |
第2章 | 契約と契約変更 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 3 |
第1 | 契約総論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 3 |
1 | 公法と私法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 3 |
2 | 契約とは何か ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 3 |
3 | 契約の分類と本外部監査の対象 ・・・・・・・・・・・・・・・ | 4 |
4 | 契約自由の原則とその適否 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 4 |
第2 | 契約制度概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 6 |
1 | 契約締結方法の種類について ・・・・・・・・・・・・・・・・ | 6 |
2 | 一般競争入札 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 6 |
3 | 指名競争入札 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 6 |
4 | 随意契約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 7 |
5 | せり売り ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 8 |
6 | 契約締結類型ごとの特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 8 |
第3 | 契約制度の新たな風 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 9 |
1 | プロポーザル方式とコンペ方式 ・・・・・・・・・・・・・・・ | 9 |
2 | 低入札価格調査制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 9 |
3 | 最低制限価格制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 10 |
第4 | 契約変更について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 11 |
1 | 契約変更総論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 11 |
2 | 法律上の定め ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 12 |
3 | xx市における契約変更の定め ・・・・・・・・・・・・・・・ | 12 |
4 | 契約変更の手順について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 13 |
5 | 当初契約上の定め ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 14 |
6 | 契約の種類による特殊性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 15 |
7 | 契約内容による特殊性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 15 |
第3章 監査のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
1 当初契約について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
2 契約変更について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
第4章 | 事例検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 37 |
第1 | スマートインターチェンジに関する契約 ・・・・・・・・・・・ | 37 |
1 | 鞍ケ池PAスマートIC ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 37 |
2 | 各契約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 38 |
第2 | 香xx待月橋架替工事 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 42 |
1 | 契約の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 42 |
2 | 各契約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 42 |
3 | 契約全体について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 45 |
第3 | 取付管設置契約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 47 |
1 | 取付管とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 47 |
2 | 各契約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 47 |
3 | 監査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 47 |
第4 | xx市xx公園温水プール建設工事契約及びその関連契約・・・・ | 49 |
1 | xx市xx公園温水プール建設工事契約及びその関連契約とは・・ | 49 |
2 | 監査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 50 |
第5 | 香xx秋季交通対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 53 |
1 | 香xx秋季交通対策とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 53 |
2 | 各契約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 53 |
第6 | 道路台帳整備業務委託契約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 56 |
1 | 道路台帳整備業務委託契約とは ・・・・・・・・・・・・・・・ | 56 |
2 | 道路台帳の整備の効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 56 |
3 道路台帳整備業務委託契約及び変更委託契約(平成18年度,19
年度) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56
第7 | 東部給食センターPFIアドバイザリー等業務委託契約 | ・・・・ | 60 |
1 | 東部給食センターPFIアドバイザリー等業務委託契約とは・・・ | 60 | |
2 | PFIアドバイザリー契約の効果 ・・・・・・・・・・・・・・ | 60 | |
3 | 東部給食センターPFIアドバイザリー等業務委託契約及び変更委 | ||
託契約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 60 | ||
4 | 監査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 61 | |
第8 | エコドライブ推進事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 65 | |
1 | エコドライブとは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 65 | |
2 | 各契約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 65 | |
3 | 監査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 65 |
第1章 総論
第1 監査の概要
1 選定した特定の事件
工事・委託を中心とした契約手続及び契約締結後の契約変更について
2 監査対象事件を選定した理由
⑵ 本件事件を選定した理由
ア 契約課の重点項目との関係
契約課においては,入札・契約手続の適正化に関することが,毎年重点目標となっているが,一旦,成立した契約について,その後変更がなされ,その変更手続が適正になされないのであれば,当初契約を締結する段階で,たとえ,入札・契約事務の適正化が進められたとしても,結果としては,変更契約によって不適正な契約が締結されることになり,不適正・不相当な金額が支払われている可能性も否定できない。
イ 市議会での指摘,市民の関心
平成19年6月の市議会において,契約手続に関する質問の1つとして,契約変更があまりに多く,安易になされているのではないかとの指摘もなされており,新聞にも,この契約変更の問題が取り上げられた。
3 監査の方法
⑴ 平成14年度から平成19年度までの「工事契約」「工事関係委託契約」「その他委託契約」について,調査をした。
「工事契約」「工事関係委託契約」については,1000万円以上の契約を,「その他委託契約」については,100万円以上の契約のみを対象とし,そのうち,増減幅が100万円以上のもの,又は,当初契約金額の1割以上の増減があるものの内容の把握に努めた。
(単位:件)
工事契約 | 工事関係委託契約 | その他委託 | |
変更/契約数(%) | 変更/契約数(%) | 変更/契約数(%) | |
平成14年度 | 185/299(61.8%) | 9/67(17.9%) | 12/287(4.1%) |
平成15年度 | 208/351(59.2%) | 10/71(13.4%) | 14/293(4.7%) |
平成16年度 | 208/383(54.3%) | 25/67(14.0%) | 13/296(4.1%) |
平成17年度 | 209/324(64.5%) | 32/71(37.3%) | 16/390(4.1%) |
平成18年度 | 216/352(61.3%) | 36/56(64.2%) | 28/455(6.1%) |
平成19年度 | 226/365(61.9%) | 30/63(47.6%) | 30/565(5.3%) |
※工事契約,工事関係委託契約については,1000万円以上の契約件数のうち,増減額が100万円
以上又は増減率1割以上の契約件数を表し,その割合を示す。委託契約については100万円以上の契約件数のうち,増減額が100万円以上又は増減率が1割以上の契約件数を表し,その割合を示す。
⑵ 監査対象
平成19年度の契約のなかで,増加率,減少率が高いもの,増加額が大きいもの等を中心に,8件の契約をとりあげ,各契約に関連する一連の契約について監査した。
⑶ 監査結果・監査意見
本報告書においては,監査をしていくなかで,【結果】【意見】を分けて記載したが,違法不当な疑いがあり,是正措置が必要と考えるものについては,【結果】に,直ちに,是正措置が必要とまでは考えないが,是正措置の検討が望まれるものについては【意見】に記載した。
第2章 契約と契約変更第1 契約総論
1 公法と私法
法律は公法と私法に大きく分類されるが,その区別を図示すると下記のとおりとなる。
【公法と私法の分類】
法律
公法:国(ないし地方公共団体)と個人の関係を規律する法律
ex. 憲法,刑法,行政法
私法:私人間の関係を規律する法律
ex. 民法,商法
⑵ 国(ないし地方公共団体)と私法の適用
国(ないし地方公共団体)と個人の関係は公法により規律されることとなり,私法が適用される余地がないようにも思えるが,例えば事務用品を購入するような場合にまで,特別扱いする必要はない。
そこで,一定の場合,国(ないし地方公共団体)が一方当事者となる場合であっても,公法ではなく私法が適用される場合が存在することとなる。
2 契約とは何か
⑴ 契約の定義
契約とは,両当事者の互いに対立する2個以上の意思表示の合致によって成立する法律行為をいう。一般的には,申込みと承諾が合致することによって成立する。
⑵ 契約の効果
ア 契約による正当化
契約が締結されることにより,各当事者には契約に基づく権利が基礎づけられる。
イ 契約の拘束力(法的拘束力)
契約が締結されることにより,各当事者は,それに拘束され,その実現を強制されることとなる。
【契約の効果】
契約の効果
契約による正当化⇒権利の取得
契約の拘束力⇒義務の負担
3 契約の分類と本外部監査の対象
⑴ 私法上の契約と公法上の契約
契約は,大きく,私法上の契約と公法上の契約に分類される。図示すると下記のとおりとなる。
【契約の分類】
契約
公法上の契約
私法上の契約
(狭義の契約)
:公法上の効果の発生を目的とする複数の対等
の当事者間の反対方向の意思の合致によって成立する公法行為
:私法上の効果の発生を目的とする複数の対等の当事者間の反対方向の意思の合致によって
成立する法律行為
⑵ 本外部監査の対象となる契約
本外部監査の対象は上記分類に従えば、いわゆる公法上の契約を含まない私法上の契約(狭義の契約)である。
4 契約自由の原則とその適否
⑴ 契約自由の原則
契約自由の原則とは,個人(ないし個人と同等の立場に立つ地方公共団体)は,契約によって自由に法律関係を形成できるという原則をいう。
⑵ 契約自由の積極的側面と消極的側面ア 契約の自由の積極的側面
契約の自由の積極的側面とは,国家によって契約を強制的に実現してもらう権利が存在することをいう。
イ 契約の自由の消極的側面
契約の自由の消極的側面とは,契約をするかしないかについても禁
止も命令もないという意味での自由をいう。
そして,その具体的内容としては,契約締結の自由(契約を締結してもしなくてもよいという自由),相手方選択の自由(誰と契約をしてもよいという自由),内容形成の自由(どのような内容の契約をしてもよいという自由),方式の自由(どのような方式で契約をしてもよいという自由)がその内容と解されている。
⑶ 地方公共団体の私法契約における修正ア 原則
「契約」は,地方公共団体が一方当事者となるものの,対立当事者である一般私人と対等の立場において締結される売買,賃貸,請負その他私法上の契約である。
したがって,地方公共団体もまた,私人同様にすべての私法の適用を受け,いわゆる契約自由の原則も適用されることとなる。
イ 修正
地方公共団体が私法契約の一方当事者となる場合においては,地方公共団体が公的性格を有することから,一定の修正を受けることとなる。これをまとめると下記のとおりとなる。
【契約自由の原則の修正】
契約締結の自由 | ⇒ | 概ね妥当 |
相手方選択の自由 | ⇒ | 原則,競争入札 |
内容形成の自由 | ⇒ | 原則,入札で最も地方公共団体に有利な内容 |
方 式 の 自 由 | ⇒ | 法令の定める方式による |
第2 契約制度概要
1 契約締結方法の種類について
地方公共団体が一方当事者となる契約の締結方法について概観すると下記のとおりとなる。
【契約の締結方法による区分】
競争型
入札
一般競争入札
せり売り
指名競争入札
随意契約
見積り合せ
特命随意契約
2 一般競争入札
一般競争入札とは,不特定多数の者の間で競争させ,契約主体にとって最も有利な条件を提供する者との間において契約を締結する方式をいう。
一般競争入札の特徴(長所・短所)は下記のとおりである。
【一般競争入札の長所・短所】
長 所 | 短 所 |
・公共性に優れる ・経済性に優れる ・機会の平等性に優れる | ・手続に時間がかかり経費の増加を招くおそれがある ・不信用・不誠実な者が入札に参加する可能性がある ・ダンピング受注が起きやすい ・債務不履行等の発生する危険性が高い |
3 指名競争入札
指名競争入札とは,多数の者の間で競争させ,契約主体にとって最も有利な条件を提供する者との間において契約を締結する方式のうち,契約主体が予め指名した競争参加者のみにより競争を行う方法をいう。
指名競争入札の特徴(長所・短所)は下記のとおりである。
【指名競争入札の長所・短所】
長 所 | 短 所 |
・不信用・不誠実な者を排除し易い ・手続が比較的簡単 ・機会の平等性に優れる | ・入札参加者が固定化・偏重するおそれがある ・一般競争入札に比して談合がし易い |
4 随意契約
⑴ 随意契約とは
随意契約とは,競争の方法によらないで,特定の相手方を任意に選択して契約を締結する方法をいう。
随意契約の特徴(長所・短所)は下記のとおりである。
【随意契約の長所・短所】
長 所 | 短 所 |
・手続が簡略で経費が低廉に抑えられる ・能力を熟知して相手方を選定でき る | ・恣意・情実が混入し易い |
⑵ 随意契約ができる場合
随意契約については,締結できる場合が地方自治法施行令第167条の2第1項各号の場合に限られている。
そして,同項によれば,随意契約できる場合は,①予定価格が施行令に定める額の範囲内で,地方公共団体の規則で定める額を超えないとき,
②その性質または目的が競争入札に適しないものをするとき,③福祉関係施設等で制作された物品の買い入れやシルバー人材センター等から役務の提供を地方公共団体の規則で定める手続により契約をするとき,④認証を受けたベンチャー企業が生産する新商品を地方公共団体の規則で定める手続により買い入れる契約をするとき,⑤緊急の必要により競争入札に付することができないとき,⑥競争入札に付することが不利と認められるとき,⑦時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき,⑧競争入札に付し入札がないとき,又は再度の入札に付し落札者がないとき,⑨落札者が契約を締結しないとき,の9つに限られている。
5 せり売り
せり売りとは,入札の方法によらないで,不特定多数の者を口頭または挙手によって競争させる契約締結方法をいう。
せり売りの方法は,動産の売り払いで,例えば遺失物等の売り払いのようなその契約が売り払いに適しているものをする場合に限られている。
6 契約類型ごとの特徴
契約類型ごとの特徴をまとめると下記のとおりとなる。
【契約類型ごとの特徴】
xx性 | 経済性 | 機会均等性 | 手続の簡明さ | 業者信頼度 | |
一般競争入札 | ◎ | ◎ | ◎ | △ | △ |
指名競争入札 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
随 意 契 約 | △ | △ | △ | ◎ | ◎ |
第3 契約制度の新たな風
1 プロポーザル方式とコンペ方式
⑴ プロポーザル方式
最適な「設計者」を選ぶために,設計者自身の創造力,技術力,問題解決能力,経験等を評価する方式をいい,この点から技術提案方式とも呼ばれる。
提出を求める「技術提案」は構想図程度にとどめておき,ヒヤリングなどを通して,設計者の当該業務への適性を総合的に判断することとなる。
したがって,コンペ方式と異なり,提案自体に厳格に拘束されるものではなく,場合によっては変更も認められ得る。
⑵ コンペ方式
最適な「設計案」を選ぶために,設計案の優劣を具体的に判断する必要方式であり,このことから設計競争方式とも呼ばれる。
設計案を選ぶための競争方式であるから,必然的に,完成予想図や立面図・平面図などの提出を求めることとなる。
また選定された設計案が,原則として,そのまま実現されることとなる点においてもプロポーザル方式と異なる。
⑶ xx市における運用
xx市においては,委託業務プロポーザル・コンペの手引き(その他委託)が作成され,これに基づいてその他委託において必要に応じて活用されている。また,プロポーザル方式・コンペ方式の有効性はその他委託にとどまるものではないことから,工事関係委託においてもこの手引きを準用するなどしてプロポーザル方式・コンペ方式の活用が試みられている。
2 低入札価格調査制度
⑴ 低入札価格調査制度とは
低入札価格調査制度とは,地方自治法施行令第167条の10第1項の規定に基づき,工事又は製造その他についての請負の契約の入札において,予め設定した低入札価格調査基準を下回る入札があった場合に,適正な工事の施工その他契約の履行が可能かどうか疑義が生じ,または不当なダンピングにより入札の適切性が害されるおそれがあると認められるため,市が入札者の積算根拠等について調査を行う制度をいう。
低入札価格調査制度の制度趣旨は,①履行確保と②ダンピング防止の
2つである。
⑵ xx市における低価格調査制度の導入範囲
xx市低価格入札調査等実施要綱第3条第1項に基づいて,原則として設計金額が4000万円以上の工事請負契約について低入札価格調査制度が導入されている。
なお,同要綱第3条第3項に基づき,契約担当課長が必要と認めるときには,上記原則にとらわれず適用対象を変更することができるとされている。
3 最低制限価格制度
⑴ 最低制限価格制度とは
最低制限価格制度とは,地方自治法施行令第167条の10第2項の規定に基づき,工事又は製造その他についての請負の契約の入札において,契約内容に適合した履行を確保するため,予め最低制限価格を設けて,予定価格の範囲内で最低の価格をもって入札した者であっても,最低制限価格を下回る場合には,これを落札者とせず最低制限価格以上で最低の価格をもって入札した者を落札者とする制度である。
最低制限価格の制度趣旨は,①履行確保と②ダンピング防止,及び③時間・費用の節減の3つである。
⑵ xx市における最低制限価格制度の導入範囲
xx指定入札価格調査等実施要綱第3条第2項に基づいて,原則として設計金額4000万円未満の工事請負契約に最低制限価格制度が導入されている。
なお,同要綱3条3項に基づき,契約担当課長が必要と認めるときには,上記原則にとらわれず適用対象を変更することができるとされている。
第4 契約変更について
1 契約変更総論
⑴ 定義,意義
契約変更とは,給付の内容,契約金額,契約当事者,危険負担,違約金額その他当初契約によって定められていた契約内容を変更することをいう。
⑵ 契約変更の位置付け―法的拘束力と不可変更性の関係ア 契約の不可変更性と契約変更
一旦契約が成立した以上,成立した契約は遵守されねばならず,ここから一方当事者の意思のみによってこれを変更することができないという「契約の不可変更性」が導かれる。
したがって,一旦成立した契約については,これを変更できないの が原則であり,契約変更それ自体は例外的な処理ということができる。もっとも,一般私人間の契約においては,地方公共団体のような公
共的要請が働かないことから,変更契約の締結それ自体がそもそも契約自由の原則の適用を受けることとなる。そのため,両当事者の合意が得られるのであれば,結局,その限りで自由に契約変更をなし得ることとなる。
イ 地方公共団体との関係
契約の不可変更性については,当然に地方公共団体にも及ぶ。
加えて,地方公共団体の契約締結方法については,競争入札の方法が原則とされており,契約の各条件は当該入札(随意契約の場合は見積り作成)の前提となっているため,新たな合意をもって契約を変更することは,結局その価格算定の前提となった条件を覆し,競争を原則とする契約締結方法を採用した法の趣旨を没却することになるから,一般私人間の場合と異なり,原則的に許されない。すなわち,地方公共団体との関係では,契約の不可変更性が一層強調される結果となるのである。
2 法律上の定め
⑴ 地方自治法の定め
地方自治法は第2編第9章第6節に「契約」の節を置くが,その中においては契約変更について何ら定められていない。
⑵ 独占禁止法
ア 地方公共団体に対する独占禁止法の適用の有無
私的独占の禁止及びxx取引の確保に関する法律(いわゆる「独占禁止法」)は,地方公共団体が事業を行う場合にも適用される。したがって,地方公共団体が契約の一方当事者となる場合は独占禁止法との関係も注意しなければならないこととなる。
3 xx市における契約変更の定め
⑴ 条例等の定め
xx市においては,xx市契約規則が存在しており,その第42条において契約変更について規定されている。
【xx市契約規則第42条】
契約担当者は,技術,予算その他やむを得ない理由があるときは,契約者と協議して契約の内容を変更し,又は契約の履行を一時中止させることができる。
2 契約担当者は,工事の請負契約で設計変更に基づき契約金額を変更するときは,変更設計工費に当初の契約金額と原設計工費との比率を乗じて算出(ただし,千円未満の金額は切り捨てるものとする。)しなければならない。この場合における計算は,前乗後除の方法によるものとする。
3 契約担当者は,第1項の規定により契約期間を変更する必要があるときは,契約者と協議して書面によりこれを定めるものとする。
4 契約担当者は,契約内容の変更協議が整ったときは,第31条又は第34条第2項の規定により遅滞なく変
更契約書(様式第8号),変更請書(様式第9号)等を作成しなければならない。
⑵ 要領等
ア 工事請負契約,工事関係委託
(ア) 工事請負契約及び工事関係委託については,「設計変更事務取扱要領」が定められている。
本要領は,同第3条に定めるような各種事由の発生により,設計変更を余儀なくされる可能性が工事請負に内在しているため,そのような可能性が現実化した際に対処する必要性があることから,定められたものである。
(イ) 期末における一括処理
xx市においては,国の通達(昭和44・3・31建設省東地厚発31の2)に基づいて,軽微な設計変更については期末にまとめて契約変更をするという手法を採用している(以下,かかる手法を
「期末一括処理」という。)。イ その他委託契約
その他委託契約については豊田市委託業務事務要綱等が存在しているものの,原則として契約変更は認められていない。
なお,その他委託契約の契約変更が原則許されないとの扱いは従前からとられていたが,その旨を明確化すべく,平成20年11月改訂の「委託契約事務の手引き(工事関係委託を除く)第6版」においては,その48頁において「その他委託業務では,原則として契約の変更は認めていません」との記述が明記された。
4 契約変更の手順について契約変更の手順
工事等契約及び委託契約についてそれぞれ典型的な契約変更の手順を図示すると下記のとおりとなる。
【工事等請負の契約変更の手順(設計変更の場合)】
契約変更の必要
設計変更協議
設計変更協議
予算担当課合議
契約課合議
技術管理課合議
設計変更協議書作成
設計変更協議書作成
出 納 室*
者
業
技術管理課
財 政 課
契 約 課
工事担当課
予算担当課
委託担当課
契約課
その他
YES
NO
契約変更
・契約変更協議書
・変更積算書作成
・金抜き変更積算書等(2部)
・予算執行伺書《変更》作成
NO
財政課合議
支出負担行為決議
変更契約事務
NO
変更契約締結
変更契約締結
着手
期間延長協議
NO
契約課合議
YES
期間延長協議
(承諾書)
小規模委託業務等?
委託先が公共的
団体か?
YES
契約期間の延長のみ?
【委託業務契約の契約変更の手順】
50万円以下? | |
YES |
5 当初契約上の定め
豊田市においては,契約締結に際し,工事請負契約約款,豊田市工事関係業務委託契約約款,業務委託契約約款等が用いられることが通常であり,その約款中に契約変更についての定めがなされている。
6 契約の種類による特殊性
契約変更は,合理的必要性に基づいて行われる限り,やむをえない部分もあるが,どのような形で契約が締結されているかによって,契約変更が許容される範囲は異なってくる。
つまり,入札によって競争を行わせて契約した場合に,契約変更を容易に認めると,競争をした意味を失わせてしまうことになる。
そのため,一般競争,指名競争入札によって契約が成立している場合は,随意契約の場合に比して,契約変更により慎重でなければならない。
ただ,随意契約の場合は,特定の者と契約しているという点で,更に変更を認めることについて,別の意味での公正さが求められる。
7 契約内容による特殊性
⑴ 工事請負の場合
ア 客観的基準の有無
工事請負の場合においては,豊田市では、基本的に愛知県の基準を準用する形で設計価格を算出するなどしており,変更部分の単価算出方法が客観的に類型化されていることから,後述する委託類型の場合よりは客観的な基準が存在しやすい特殊性がある。
イ 設計変更事務取扱要領に基づく変更基準
工事請負の場合,工事現場の地形的状況や天候等の諸条件の結果,当初の契約内容どおりの履行をなしえず,履行条件を変えざるを得ない状況が発生しやすい性質を有している。
ウ 設計変更できる範囲
設計変更できる範囲については,設計変更事務取扱要領第3条に規定が存在している。具体的に設計変更できる範囲としては,①発注後に発生した外的条件によるもの(同1号),②発注時において確認困難な要因に基づくもの(同2号),③予算措置に基づくもの(同3号),
④認可条件等の処理に伴うもの(同4号)の4つに大別され,更に①
1号の場合についてはその具体的場合として○ア 自然現象その他不可抗力による場合(同号ア),○イ 他事業及び施工条件等に関連する場合(同号イ),○ウ 地元調整等による場合(同号ウ)が,また②2号の場合については○ア 推定岩盤線の確認に基づく場合(同号ア),○イ 地盤支持力の確認に基づく場合(同号イ),○ウ 土質の確認に基づく場合(同号ウ),○エ地下埋設物位置の確認に基づく場合(同号エ),○オ その他確認困難な要因及び誤測等でやむを得ない場合(同号オ)がそれぞれ列挙されて
いる。
エ 設計変更による契約変更の範囲 (ア) 増減率と契約変更
設計変更による契約変更の範囲については,設計変更事務取扱要領第4条に規定があり,これによれば,増額変更の場合については,
①設計変更による増加額が当初契約の20%以内の場合は,別件発注が妥当な場合を除き契約変更ができるとされており(同条第1号),②設計変更による増加額が当初契約の20%を超える場合には,現在施工中の工事と分離して施工することが著しく困難な場合に限るとされている(同条第2号)。これに対し,減額変更の場合については,特に変更率に制限なくなし得ることとされている(同条第1号)。
(イ) 「当初契約金額」の解釈
「当初契約金額」とは問題となっている契約変更がなされる直前の金額の意ではなく,当該契約ついて一番最初に締結された際の契約金額であると解するのが相当である。
具体例をあげれば,最初に締結した契約が1億円であり,その後,第1回目の契約変更において1000万円の増額を行った場合において,再度,増額の契約変更の必要が生じたような場合,1回目の変更で当初契約金額の10%にあたる1000万円の変更を行ってしまっている以上,2回目の契約変更として変更なし得る額は22
00万円ではなく1000万円と解すべきこととなるのである。 (ウ) 増加額と減少額の関係
減額の契約変更と増額の契約変更が併存する場合,20%の算定にあたっては原則として減額分を考慮すべきではない。
例えば,当初1億円で契約した工事について考えると,1度目の契約変更で500万円を減じた場合,2度目の契約変更を行うにあたっては,一旦500万円の減額をしたとしても,設計変更事務取扱要領第4条第1号に基づく増額可能金額は累計として2000万円に限られるため,2度目の契約変更で2500万円の増額変更をすることは認められないこととなるのである。
なお,例えばA材という材料(100万円)にBという加工(3
0万円)を行う予定であったところ,材料をC材という材料(15
0万円)に変えたところB加工が不要となった場合,これはB加工の消滅はAからCへの変更との関係で不可分一体のものと評価すべきであるから,この場合は,材料としての50万円の増加(=15
0万円-100万円)と捉えるのではなく,例外的にB加工が不要となった部分も加味し(すなわち,一体と捉え)20万円の増加(=
150万円-100万円-30万円)として扱うことが考えられる。オ 契約変更の留意点
(ア) 最終調整としての契約変更について
豊田市においては,工事請負契約に基づいて工事がなされた場合,通常最終段階において軽微な変更点も含め実際の工事内容に合致するよう変更契約を締結する扱いが事実上採られているが,価格変更を伴う契約変更を安易に認めることは許されず,運用面でも検討が必要と思われる。
(イ) いわゆる期末一括処理について
軽微な変更について適用される期末一括処理の運用については,問題点も多いため,その運用に当たっては注意が必要である。
a 設計変更による契約変更の範囲
設計変更による契約変更の範囲は,期末一括処理に基づく一括変更を行う場合であっても,設計変更事務取扱要領第4条の20
%基準の適用を免れることはできない。
c 期末一括処理における増加額と減少額の関係
期末一括処理に基づく一括変更の場合であっても,便宜上,契約変更手続きを1回で処理しうるにすぎないことから,先に述べた数次にわたって契約変更が行われる場合同様,20%の算出にあたっては,増加工事と不可分一体になって発生する減額工事が存在するなど特段の事情が存在する場合を除いて,減額分を考慮すべきでないと解するのが相当である。
⑵ 工事関係委託
ア 客観的基準の有無
工事関係委託の場合,その性質上業務内容が非定型的であることから,工事請負契約のような客観的基準は存在していない。
イ 20%基準について
設計変更事務取扱要領第1条に規定する限り,すなわち「工事に係る委託契約等設計内容の変更及びこれに伴う契約変更」に関する限りは,設計変更事務取扱要領が適用され,いわゆる期末一括処理に基づく契約変更を行うことができるとされている。
⑶ その他委託の場合の場合ア 客観的基準の有無
工事関係委託,その他委託のいずれにおいても,委託契約はその性
質が非定型的であることから,工事請負のような客観的基準は存在していない。
イ 期末一括処理について
その他委託においては,工事請負の20%基準に対応する制度は存在していない。
ウ その他
(ア) その他委託契約においては,契約変更が原則許されないとの扱いは従前からとられていたが,その旨を明確化すべく,平成20年1
1月改訂の「委託契約事務の手引き(工事関係委託を除く)第6版」においては,その48頁において「その他委託業務では,原則として契約の変更は認めていません」との記述が明記された。
(イ) 工事関係委託については,上記のような記述は手引きにおいてなされていないが,原則として契約の変更を認めないとするその他委託契約における取扱いは工事関係業務委託についても同様に妥当する。
第3章 監査のまとめ
1 当初契約について
⑴ 紐付き入札
ア 今回監査した事例のなかには,関連する2件の契約のうち,1件目の契約については,入札により契約者(業者)を選定するが,2件目の契約については,1件目の契約を締結したのと同じ業者との間で契約することが,最初から予定されているものがあった。
1つの例としては,「エコドライブ社会実験等業務委託契約」と「エコドライブ社会実験に関する広報等業務委託契約」のように,本来,
1個の契約であるべきものを,国等からの補助の関係で,その補助対象を明らかにするよう求められて,その部分を切り離して,2個の契約としたものである。
そして,もう1つの例としては,井上公園温水プールでみられたような,設計業務委託契約と監理業務委託契約の関係である。つまり,民間の場合であると,設計業務と監理業務とを別の業者に発注する場合もあるが,一緒に契約する例も多い。この点,豊田市の場合には,設計業務委託契約と監理業務委託契約は別の契約とするが,設計業務委託契約については,入札等で業者を選び,監理業務委託については,設計業者として選定された者との間で,特命随意契約を締結するとのことである。
イ しかし,いずれの形であれ,紐付き入札は,認めるべきでない。 なぜなら,紐付き入札の場合は,当初契約において,入札手続によ
って,価格競争がなされたとしても,結局,2番目の契約を特命随意契約で締結することにより,価格競争をした意味を潜脱することになるからである。
【意見】(エコドライブの事例)
エコドライブの事例は,豊田市としては,補助対象を別契約にするためにやむを得ず,行ったものとのことであるが,
① 2つに区分できるものであれば,各々について入札手続をする
② 両方合わせた1つの契約として入札を行い,あくまで,入札によって決まった価格を,豊田市の予定価格算出にあたっての割合に応じて,補助対象部分の金額を明らかにする方法をとる
③ 補助対象の価格が特定できるようにするとのことであれば,プ
ロポーザル方式を活用して,各々の範囲の金額を提示してもらったうえ,総合的に判断する方法をとる
等によるべきであって,たとえ,補助対象を明らかにするためであっても紐付き入札は行うべきではないと考える。
【結果】(井上公園温水プールの事例)
設計業務と監理業務については,同一業者に発注するかどうかの問題はあるが,同一業者に発注するのであれば,設計監理業務委託契約全体について入札手続によって契約相手,契約金額を決めるべきであるし,別々に契約をするのであれば(設計業者を入札に参加させるか否かは別として),各々について入札手続によって契約相手,契約金額を決すべきである。
特に,本件の場合であると,設計業者が監理業務を請けることがほぼ確定しているにもかかわらず,そのことを明らかにしないまま,設計業務委託契約の入札手続を行い,それによって確定した業者との間で,特命随意契約にて,監理契約を締結するのはあまりに不適切な契約手続といわざるを得ず,設計業務,監理業務に関する契約手続については早急に改善すべきものである。
⑵ 指名業者の妥当性
指名業者の選定は,指名審査会において審査している。
ところで,取付管設置契約のなかで,契約時に予定された取付管施工個所数を大幅に下回る施工実績しか認められないため,53.25%もの減額による変更契約がなされた例があり,実際には,受注業者側の事情により,取付管設置の申請がなされたのに対応できなかったものがあった。
この場合,債務不履行責任を追及すべきケースにも思われるが,このような事情が指名審査会等に伝わっていないため,結局,この業者は,その後の取付管設置契約においても,指名業者に指定された。
【結果】
契約履行に問題があった業者については,その情報が確実に指名審査会に伝わるシステムを構築し,不誠実な業者が入札に参加することのないようにすべきである。
⑶ 特命随意契約
随意契約はあくまで例外的に認められるにすぎず,競争という方法をとらないので,特に,価格の公正と適正を図る必要がある。
そのため,豊田市契約規則においても,
第27条(見積書の徴収)
契約担当者は,随意契約によろうとするときは,なるべく2人以上の者から見積書(様式第3号)又はこれに類する書類を徴さなければならない。ただし,法令によって価格の定められているものその他市長が特に認めたものは,見積書の徴収を省略することができる。
と規定されている。
そして,同条の規定について,豊田市では,随意契約のうち,特命随意契約については,同条項の適用はなく,特命随意契約以外の場合にのみ,見積合わせをしている。
しかし,前記のとおり,随意契約の場合には競争がなく契約が締結されるため,価格の公正と適正を競争以外の方法で確保する必要がある。
【意見】
実際,要件を充たす業者が1社しかない場合には,同規則第27条の規定にしたがって,見積合わせをすることができないともいえるが,価格の公正さと適正さを確保するためには,同様類似の業務を扱う業者から参考見積りを徴したり,あるいは,随意契約を締結しようとする業者の取引実績等を明らかにすることを求めたりする必要があると考える。
たとえば,第27条第2項を設けて,
2 前項本文の規定にかかわらず,契約対象の性質から,2人以上の者から見積書等を徴することができない場合においても,類似業者からの見積書や,契約相手の取引実績に関する書類を徴するなどして,価格の適正を図らなければな
らい。
のような規定を設けることも考えてよいであろう。
2 契約変更について
⑴ 契約を成立させた以上,契約の拘束力が認められ,これを変更できないのが原則であり,契約変更それ自体,例外的な処理といえる。
契約変更に関する規定としては,豊田市契約規則に,
第42条(契約の変更又は一時中止)
契約担当者は,技術,予算その他やむをえない理由があるときは,契約者と協議して契約の内容を変更し,又は契約の履行を一時中止させることができる。
2 契約担当者は,工事の請負契約で設計変更に基づき契約金額を変更するときは,変更設計工費に当初の契約金額と原設計工費との比率を乗じて算出(ただし,千円未満の金額は切り捨てるものとする。)しなければならない。この場合における計算は,前乗後除の方法によるものとする。
3 契約担当者は,第1項の規定により契約期間を変更する必要があるときは,契約者と協議して書面によりこれを定めるものとする。
4 契約担当者は,契約内容の変更協議が整ったときは,第31条又は第34条第2項の規定により遅滞なく変更契約書(様式第8号),変更請書(様式第9号)
等を作成しなければならない。
が規定されており,工事請負契約,工事関係業務委託契約については,
「豊田市工事等契約事務細則」「設計変更事務取扱要領」が,その他委託契約については,「豊田市委託業務事務要綱」が規定されている。
ところで,実際の契約変更手続については,上記豊田市契約規則第4
2条第4項の規定によれば,変更協議が調ったときは,遅滞なく契約変更書等を作成することになっているが,設計変更事務取扱要領第6条には,
第6条(契約変更の手続)
契約変更に伴う契約変更の手続は,その必要が生じた場合に遅滞なく行うものとする。ただし,契約条件等を著しく変更することとならないものは,工期の末(債務負担行為に基づく工事にあっては各会計年度末)までに行うことが
できるものとする。
と規定がなされており,同規定に基づき,工期の末までに行うことにしており,いくつかの変更協議を経て,これらを合わせて,変更契約の内容としているものである。
⑵ 契約の種類による契約変更に関する考え方ア 工事契約,工事関係委託契約
工事契約,工事関係委託契約については,設計変更事務取扱要領第
3条において,「設計変更ができる範囲」として,設計変更ができる事由が記されており,第4条において,「設計変更による契約変更の
範囲」として,第3条の事由が認められる場合においても,変更が増額となる場合か,減額となる場合か,また,増額の場合でも,その増加率が20%を超えるか否かで判断基準を異にしている。
イ その他委託契約
平成20年11月版の手引きにおいて,原則として変更が認められないことが明記された。
ウ したがって,その他委託契約については,工事契約,工事関係委託契約に比して,契約変更を認める要件は極めて厳しくなっている。
⑶ 契約変更か否か
【意見】
契約変更の対象となるか,別契約と捉えるかについては,当初契約の内容と追加内容との関係によるが,それは,同一性・関連性が認められるかを実質的に判断すべきであり,
① 別発注できるものか否か
② 契約内容の数量的変更にとどまるか否か
③ 契約対象にどの程度の関連性があるか否か
等の要素から,実質的に同一性が認められるか否かによって,判断すべきである。
⑷ 契約変更手続による区別
【意見】
当初契約が競争入札によってなされている場合には,変更契約を許容することによって,実質的には,競争によって,当初契約の内容(契約金額,契約相手等)を決めた意味を没却してしまうおそれが強いため,変更契約の要件は厳格に解する必要がある。
それに対し,随意契約の場合には,追加する業務内容についても,随意契約を締結することができるものである場合には,当初業務と追加業務との間に一定の関連性が認められれば,敢えて,別契約の締結を求める必要はなく,契約変更手続を許容することができる場合があるといえる。
ただ,変更金額の公正さ,適正さを担保するため,他者の参考見積りを徴したり,場合によっては,契約相手の他での取引実績等によって,価格の適正を維持するようにすべきである。
⑸ 設計変更事務取扱要領
工事契約,工事関係委託契約については,設計変更事務取扱要領第3条において,
第3条(設計変更のできる範囲)
設計変更のできる範囲は,次に掲げる理由により,やむを得ず元設計を変更する必要が生じた場合とする。
⑴ 発注後に発生した外的条件によるもの ア 自然現象その他不可抗力による場合 イ 他事業及び施工条件等に関連する場合ウ 地元調整等の処理による場合
⑵ 発注時において確認困難な要因に基づくものア 推定岩盤線の確認に基づく場合
イ 地盤支持力の確認に基づく場合ウ 土質の確認に基づく場合
エ 地下埋設物位置の確認に基づく場合
オ その他確認困難な要因及び誤測等でやむを得ない場合
⑶ 予算処置に基づくもの
⑷ 認可条件等の処理に伴うもの
と規定されている。
ただ,今回の事例検討を行うなかで,「地元調整等の処理による場合」に該当するとして契約変更を認めているケースがかなり認められた。
しかし,「地元調整等の処理等」といっても,あくまで,条文上(要領第3条第1号),発注後に発生した外的条件と捉えられるときに限り,契約変更が認められるのであって,発注時に,地元調整ができている場合は勿論のこと,発注時に地元住民との協議が可能であり,あるいは,その意向を推認できる場合には,契約変更は認めることはできない。
また,岩盤線の問題については,実際に調査等をしないと判断できないとの側面もあるが,スマートインターの関係では,変更契約分と新たな追加工事契約分を合わせて,契約当初予算に比して合計3億円もの費用を余分に要することになったのであり,そもそも,事業計画自体の是非にまで,影響するとも思われる。
【意見】
工事等をするにあたっては,十分な準備・計画のもとに行われるべき
であり,契約時から予測できるような事由については,十分な調査をすべきである。
そして,工事をする前提として,調査委託,設計委託等をしている例がほとんどと思われるが,調査,設計段階での協議・調査等が十分でないことにより,変更契約をせざるをえず,余分な支出が伴う場合には,調査業者,設計業者に対する損害賠償の余地もでてくるものと思われる。
⑹ 設計変更の20%基準ア 変更不可の原則
設計事務取扱要領においては,第3条で設計変更ができる事由を規定するとともに,第4条で,設計変更の増額か減額か,増額の場合,その増加率が20%以内か否かによって,要件を異にしている。
ただ,増加率20%以内の場合においても,別発注が相当であれば,そもそも,契約変更を認めるべきでなく,あくまで,原則は,契約の変更は認められないものである。
そのため,同規定の基準が相当か否かの問題はあるにしても,増加率20%以内の場合は,あたかも,変更が原則として認められるかのようにも捉えられるため,原則と例外を逆にすべきである。
【意見】
設計変更事務取扱要領第4条については,
第4条
前条により,元設計を変更する必要が生じた場合においても,当初契約の変更手続を行えるのは次の場合に限る。
⑴ 設計変更による増加額が当初金額の20%以内の場合には,別契約で発注するのが相当でないとき。
⑵ 設計変更による増加額が当初金額の20%を超える場合には,現在施工中の工事と分離して施工することが著しく困難なとき
⑶ 設計変更により減額するとき
のような規定にすべきである。
イ 何回も設計変更を重ねた契約変更
設計変更を何回か重ねた場合にも,その都度,変更契約書を作成せず,変更契約書は,契約終了間近か,契約年度終了間近にまとめて,
締結するのが通例となっていることは,前記のとおりである。
ただ,香嵐渓待月橋架替工事の「架替工事その1」で意見を付したように,たとえば,契約変更をすることにより,契約金額が1億50
00万円以上になり,契約締結に議会の議決が必要となるような場合には(施行令第121条の2第1項,別表第3),その要件を具備した時点で,速やかに仮変更契約書を締結したうえ,議会の議決を求めるべきである。
【意見】
契約変更により,当初契約の要件が加重される場合には,その時点で速やかに,当該要件の具備を求めるべきである。
ウ 変更契約を何回か重ねた場合
変更契約を繰り返す場合,現在の豊田市の運用は,変更契約で増減した金額を基準にして,変更幅が20%を超えるか否かを判断している。
しかし,当初契約の金額を基準にして考えるべきである。
【意見】
設計変更事務取扱要領第4条については,変更契約が何回なされたとしても,あくまで,当初契約から20%を超えるか否かを基準に判断すべきである。
エ 追加と削減
契約変更には,追加(増額)と削減(減額)の両方がある。
ただ,契約の拘束力から考えれば,追加(増額)するのも,削減(減額)するのも,あくまで,例外的に許されるべきものである。
【意見】
契約変更の是非を考えるときに,追加(増額)と削減(減額)がある場合には,両者が一体の関係にある場合は格別,そのような関係にない場合には,増額分については,増額分のみを捉えて,契約変更の是非を考えるべきである。
オ 20%以外の判断要素
【意見】
20%基準によって,変更契約の是非を判断する場合においても,
① 変更事由の必要性
② 変更額,変更率の大小
③ 当初契約と追加(削減)部分との関連性
④ 別契約を締結することの相当性
等を総合的に判断すべきであって,20%を超えるか否かの基準にだけとらわれる必要はないと考える。
⑺ 見せかけの減額
当初予定した部分の一部を履行せずに,その一部を,今後の契約に委ねる場合がある。
その場合,実際には,追加があるのに,減額分を合わせて計算することにより,変更幅が過小評価されることもある。
これは,上記20%基準を判断するときの「追加分(増額)と削減分
(減額)」で記述したのと同じ問題を含んでいることになる。
⑻ 契約年度と契約変更
ある年度で履行できない部分について,当初契約については減額等の形で,契約を終了させることがあり,その残った部分について,別途,契約手続をとることになる。
たとえば,「市道スマートインター線測量調査設計委託契約」においては,当初契約した詳細設計について,一部概略設計をする必要が生じたため,その段階で,一旦契約を終了させても,当然,当該概略設計に基づいて詳細設計をする必要が残る事案であった。
【意見】
契約を締結した以上,契約の拘束力を受けるのであって,その後の事由で,追加業務が加わり,従前業務の一部が,年度を越えて積み残しとなった場合においては,繰越明許費等の形で,翌年度に繰り越すことを考えるべきであって,年度で契約を打ち切ることが相当とは考えない。
⑼ 契約変更と変更後の金額
契約変更により金額を変更する場合には,変更設計工費に当初の契約金額と原設計工費との比率を乗じて算出した金額をもって,変更金額とすることになっており(豊田市契約規則第42条第2項),その他委託
契約についても,豊田市委託業務事務要綱第21条第4項に同様な算出方法が規定されている。
しかし,第42条第2項の算出方法は明確であり,妥当するケースも多いとは思われるが,例外なくこの基準で変更契約金額を確定するには疑問があり,第42条第2項には,ただし書で例外規定を設けるのが相当と考える。
【意見】
豊田市契約規則第42条第2項の規定はあまりに硬直的すぎると思われるため,
2 契約担当者は,工事の請負契約で設計変更に基づき契約金額を変更するときは,変更設計工費に当初の契約金額と原設計工費との比率を乗じて算出(ただし,千円未満の金額は切り捨てるものとする。)しなければならず,この場合における計算は,前乗後除の方法によるものとする。ただし,原設計内容に含まれていない内容の内容を追加するなど,この方法による算出が相当でないと判
断される場合には,その限りでない。
などの形でただし書を設け,そのただし書に該当する場合の金額算出方法(他社の見積書を徴する等)を細則に設けるなどするのが望ましいと思われる。
⑽ 契約変更と効率性(担当課の裁量)
契約変更については,原則禁止であり,特に,その他委託契約については,手引きにおいてもその旨明記されたものである。
しかし,契約の拘束力があるとはいえ,工事契約,工事関係委託契約の場合には,設計変更事務取扱要領第3条に示されるように,その前提事実が違ってくる場合もあって,一定の範囲で契約変更を認める必要もある。
ただ,現場サイドで,担当課が契約相手と変更協議をすることにより,契約課の監視がないまま,本来,別契約で行うべきものが,変更契約で行われてしまう危険もあり,従前にも,そのような例があったとのことである。
【意見】
ア 従来,工事契約,工事関係委託契約の場合には,設計変更事務取扱要領第5条において,請負増減額(累計額)が当初契約の20%を超
える場合には,契約課,財政課,技術管理課の合議をとることになっているが,その段階以前に,一定の場合に,契約課に報告する手続を認めるべきではないかと考える。
たとえば,設計変更事務取扱要領第5条第1項にただし書を付して,
監督員は,設計変更をしようとするときは,事前に当該契約の内容を掌握し,予算の範囲内で処理できることを確認したうえで,設計変更協議書(様式第1号)により,次表に掲げるところにより決定及び合議を受け,契約者に協議しなければならない。ただし,増減額(累計額)が当初契約金額の●%を超える場合,又は,契約変更の是非に疑義が生じる場合には,設計変更協議書により,決定及び合議を受ける前に,契約課に,変更内容を報告するものとし,契約課
において,異議がある場合には,速やかに,監督員にその旨伝えるものとする。
のような規定に改正してはどうかと考える。
なお,●は,市が相当と思われる数値を設定する(以下,同様)。
イ また,その他委託契約については,委託内容が追加されない限り,本来,変更が予定されてない契約類型であって,平成20年11月版の手引きで,設計変更の原則禁止がうたわれた。
そのため,これについても,要領等で明記すべきものと考える。たとえば,
●条(契約変更の禁止)
豊田市が行う委託業務(工事関係委託委託を除く)については,次の場合を除くほか,契約変更を認めない。ただし,あらかじめ,契約課の承認手続をとった場合は除く。
⑴ 委託業務の一部を中止して,減額する場合
⑵ 当初契約の数量的変更にとどまり,その気変更額も,当初契約金額の●%未満のもの
のような規定を設けるべきである。
第4章 事例検討
第1 スマートインターチェンジに関する契約
1 鞍ケ池PAスマートIC
スマートインターチェンジとは,既存の高速道路の有効活用や地域経済の活性化等を推進するため,高速道路の本線やサービスエリア,パーキングエリア,バスストップから乗り降りできるように設置されたインターチェンジであり, 鞍ケ池PAスマートICについては,平成18年7月に,国土交通省において示された「スマートインターチェンジ(スマートIC)
[SA・PA接続型]制度実施要綱」を受けて,その設置計画をスタートさせた。
そして,平成20年2月10日から社会実験が開始されたが,社会実験用の道路は,従前ある工事道路の幅員・傾斜に手を加えて利用するものの,同道路では,傾斜・カーブがきつくて,大型車両が通行できないため,社会実験用の道路とは別に,本格運用のための道路を新たに開設する予定である。
2 各契約
鞍ケ池PAスマートICに関する契約,変更契約の内容は,平成18年度に委託契約2件,工事請負契約1件,平成19年度に委託契約3件,工事請負契約4件,平成20年度に委託契約4件,工事請負契約2件の合計
16件の契約がなされているが,以下,監査に重要なものを記す。
⑴ 鞍ケ池ハイウェイオアシス周辺整備用地調査委託契約
本件は,社会実験線周辺の用地測量調査を行うものであるが,早急に社会実験ルート案の図面作成,その道路詳細設計を行うための路線測量作業を行う必要があるとして,契約変更したものである。変更額は,3
93万7500円から769万5450円への増額である(375万7
950円増。95.4%増)。
しかし,社会実験開始には特に期限もなく,当初契約と密接には関連しない業務である。しかも,増額幅は375万7950円であって,9
5.4%の増加率になる大幅な変更である。
【結果】
本件のように,大幅な増額を招く契約変更を考えるには,契約変更の
要件を厳格に解すべきであり,それに違反する形で契約変更がなされている場合には,その契約に基づいて支出された追加工事代金は適正なものとはいえない。
⑵ 鞍ケ池スマートインター道路詳細設計委託契約
本件は,スマートインターを設置するための設計業務であるが,社会実験整備工事において予想されていなかった硬岩が広範囲にわたって出現したため,本格ルートでの土質調査を行い,結局,本格運用ルートの詳細設計の一部を撤回し,概略設計とした
変更額は1459万5000円から1861万7550円への増額である(402万2550円増,27.6%増)。
なお,本件契約は特命随意契約である。
【意見】
ア 特命随意契約を安易に認めるべきでない。
事業内容に高度の専門性を求める場合においても,プロポーザル方式によるなどして,契約相手を選定すべきである。
イ 随意契約で当初契約がなされている場合には,追加する業務内容についても,当初契約と同様,随意契約を締結することができるものである場合には,当初業務との間に一定の関連性があれば,契約変更手続を許容することができるものと考える。
ただ,その場合においても,増加額が適正なものである必要はあり,場合によっては,他業者から参考見積りを徴することなども検討すべきものと思われる。
⑶ 鞍ヶ池PAスマートIC 社会実験交通誘導委託契約社会実験交通誘導委託契約については
① 平成20年2月15日契約分
② 平成20年4月22日契約分
③ 平成20年9月9日契約分の各契約がある。
上記①の契約は,4社による指名競争入札がなされたが,入札不調となり,最終的には,随意契約で契約をしている。そして,②③の契約については,指名競争入札をしているが,いずれも,①の契約相手が予定価格と同額での入札をし,落札しており,入札手続の公正さに疑問をもたざるをえず,同社において,予定価格を知りうる状態であった可能性
が高い。
【結果】
入札手続を行う場合には,入札業者に予定価格が分かることのないよう,注意を払う必要があり,入札業者に予定価格が分かるような状況でなされた入札手続は,適正さを欠くものと言わざるを得ない。
⑷ 市道鞍ケ池スマートインター線測量調査設計委託契約
本件は,平成19年6月13日付道路詳細設計委託契約において,硬岩調査が必要となって,当初予定していた詳細設計を概略設計にしたことから,その概略設計に基づく詳細設計に関する契約をしたものであり
(契約金額2730万円),電子入札によっている。
【意見】
詳細設計は,6月13日付契約の内容に含まれている以上,工法等に根本的な違いがない限り,年度末までに完了できないとしても,契約変更をして概略設計を含めたうえで,繰越明許費等の形で,そのまま,翌年度に引き継がせるべきものと思われる。
また,今回の予定価格についても,概略設計に何ら関与していない業者が詳細設計等をする前提となっているため,当初から同一業者が設計する前提で金額を確定するとすれば,より低額で契約を締結できるとも思われ,入札手続に付するのが必ずしも適切であったとはいえないと思われる。
⑸ 鞍ケ池ハイウェイオアシス周辺整備工事
公安協議等によって,契約変更したものである。
【意見】
関係機関との十分な協議がなされていないと,結局,工事着手後,契約変更する必要がでてきてしまい,入札によって価格競争をした意味も損なわれるおそれがある。
関係機関との協議を含め,計画を十分精査したうえで,設計,工事に着手すべきである。
⑹ 鞍ケ池ハイウェイオアシス周辺整備工事(社会実験)
岩盤線の判断を誤った結果,大量の硬岩の掘削が必要となったもので
あり,変更額は8914万5000円から1億4983万2900円への増額であり(6068万7900円増。68.1%増),工期も約2倍となってしまった。
【結果】
今回のスマートインター計画においては,早期に社会実験を施行でき,費用の削減を図れることから,従来の工事用道路を活用したうえでの社会実験ルートの開設を予定したが,結局は,岩盤調査が不十分なために,多大な費用と時間を要することになったものであって,十分な調査をしないまま,工事を進めた点で,本件工事契約が相当なものであったとは到底いえない。岩盤調査が不十分なために,本工事追加分と硬岩掘削のための別契約分の合計3億5500万円余りの金額を支出することになってしまったものである。そのため,この支出した金額すべてが損害であったとまではいわないとしても,一定の金額については,適正な支出であったとは到底いえない。
⑺ 鞍ケ池ハイウェイオアシス周辺整備工事(社会実験)その2
予想外の硬岩の存在から,硬岩掘削費用とその残土運搬費用を要することになったものであり,それ以外にも,公安委員会との現場立会・協議に基づく変更部分が約1500万円ある。
変更額は6405万円から1億3758万8850円への増額(73
53万8850円増。114.8%増)であり,異常な増額である。
【意見】
前記「周辺工事(社会実験)」の結果でも記載したとおり,いずれにしても,十分な調査・計画をもって,進めないことには,契約内容の変更を何度も行ったり,当初予定していなかった契約を別途締結しなくてはならなくなるものであり,結果的に,事業に対する採算を見誤り,事業としての正当性にも,疑問をいだかざるをえなくなる結果となる。
⑻ 鞍ケ池スマートインター整備工事
工事中に発覚した硬岩を掘削するものであるが,特殊な工法による割岩機を有しての作業が必要であって,随意契約を締結した。そして,当初予定した岩掘削量を大幅に超える量の掘削が必要となり,契約変更をした。変更額は,1億4700万円から2億9435万8050円への
増額(1億4735万8050円増。100.2%増)である。
【意見】
一度,計画した事業に,費用をつぎ込んだ後に,その事業を打ち切ることは困難であり,事業維持のために多大な費用が執行されてしまう危険性があるため,事業に向けての調査・計画は,十分に行う必要がある。
そして,そのことが,契約内容の変更を最小限にとどめ,不当な契約変更を行わせないことにつながるものである。
⑼ 市道鞍ケ池スマートインター線 道路修繕工事
大雨により,市道鞍ケ池スマートインター線の法面が崩落したため,本件法面工を施工した業者(下請業者)と随意契約を締結した。
【結果】
施工後に,大雨等を原因に生じた瑕疵といえども,設計上,施工上の責任がないかを十分検討すべきであって,その点の検討が十分なされないまま,緊急補修工事の費用を全面的に負担する場合には,その支出が適正なものでないと判断される余地がある。
⑽ 市道鞍ケ池スマートインター線 法面補修工事
大雨により,市道鞍ケ池スマートインター線の法面上部からレキ片,土砂が落下したため,法面工を施工した業者と随意契約を締結したもので,前記「⒁ 市道鞍ケ池スマートインター線 道路修繕工事」と同様の問題である。
第2 香嵐渓待月橋架替工事
~建設部 土木課 ~
1 契約の内容
香嵐渓待月橋架替工事に関する契約としては,次のものがある。
なお,下記契約のほか,関連するものとして,物件移転補償費として,中部電力に対し155万9232円,NTTに対し35万7600円の支出がある。
⑴ 香嵐渓待月橋測量調査設計委託契約
待月橋を拡幅する手法について,架け替え案・既設橋拡張案を含む橋梁予備設計を行うものである。
⑵ 香嵐渓待月橋詳細設計業務委託契約
平成17年度に実施した香嵐渓待月橋測量調査委託による橋梁予備設計成果や河川条件等の諸条件に基づき,工事施工に必要な橋梁詳細設計及び地質調査を行うものである。
⑶ 香嵐渓待月橋地元材調達加工業務
待月橋の親柱や床版に使用する,地元の檜の調達,加工を目的とするものである。
⑷ 香嵐渓待月橋架替工事その1
詳細設計に基づいて,新しい待月橋を施工することを目的とするもので,「その1」は,旧橋の撤去と,橋梁下部工を主な内容とする。
⑸ 香嵐渓待月橋架替工事その2
詳細設計に基づいて,新しい待月橋を施工することを目的とするもので,「その2」においては,橋梁上部工と取付道の整備を主な内容とする。
⑹ 香嵐渓待月橋架替工事その3
待月橋に隣接する市道沿いで用水路が漏水しており,その解消のために,用水路付替工事をするための契約である。
2 各契約
以下,監査に重要な契約について,記述する。
⑴ 香嵐渓待月橋測量設計委託契約
「測量調査設計業務」と「設計詳細設計業務」を別途,予定していたが,詳細設計の前提となるボーリング調査を行うことになり,契約を変更した。変更額は,714万円から797万4750円への増額(83
万4750円増。11.69%増)である。理由は,4月以降になると出水期で調査が困難になるためとのことである。
【結果】
本来,年度をまたいで,複数の契約を予定している場合において,年度内に,次年度の契約を行うべき業務の一部を行う必要が生じたとしても,本来,当初契約で予定している内容と異なるものである以上,契約変更手続で行うべきでない。
⑵ 香嵐渓待月橋詳細設計委託
ア 2625万円から2841万0900円への増額21万0900円増。8.23%増)である。
イ 監査
(ア) 20%基準等
追加分と削減分がある場合に,両者に関連性がないのであれば,
20%の基準を考えるには,両者を合算するのでなく,追加分のみをもって判断すべきであるとの指摘であり,「監査のまとめ」で記載済みである。
(イ) 変更契約額
豊田市契約規則第42条にしたがって,当初契約の請負率で,変更契約の増減額を算出することの是非で,これも,「監査のまとめ」で記載済みである。
⑶ 香嵐渓待月橋地元材調達加工業務
随意契約で,地元材を,豊田森林組合から購入するにあたり,随意契約を締結したものである(契約額871万5000円)。
【意見】
特命随意契約の場合に,予定価格を算出するにあたって,当該業者からの参考見積りのみによって算出するのは望ましくなく,他の業者からの見積りあるいは,当該業者の他での取引実績などを取り寄せるべきである。
⑷ 香嵐渓待月橋架替工事その1ア 変更契約①
関係管理者や地元との協議,現場精査によって,契約内容を変更した。変更額は,1億3597万5000円から1億4911万155
0円への増額(1313万6550円増,9.66%増)である。イ 変更契約➁
変更協議を2回重ねたうえでの契約変更(約1200万円増額と約
1600万円増額)であり,変更額は1億4911万1550円から
1億7761万8000円への増額(2850万6450円増,19.
12%増)である。
なお,契約金額が1億5000万円以上の契約については,契約締結に議会の議決が必要であり(施行令第121条の2第1項,別表第
3),そのため,仮契約を締結したうえで,議会の議決がなされているが,1回目の変更協議の時点で,変更後の契約金額が1億5000万円を超えていたといえるし,現場再調査の結果,前年度の時点で,既に,判明していた事由であるようにも思われる。
【意見】
工事変更によって,当該工事請負契約の金額が1億5000万円を超えることが判明した場合には,速やかに契約変更仮契約を締結し,議会の議決をとるようにすべきである。
ウ 変更契約③
前回の変更契約額1億7761万8000円から1億7853万3
600円への増額(91万5600円増,9.66%増)である。エ 契約変更全体の監査
変更契約を何回か重ねたときに,要領に規定する20%基準はどのように考えるか。
【意見】
ア 契約締結前には,十分な事前調査を行うべきであり,事前調査が不十分なために,設計変更が必要となった場合には,原則として契約変更を認めるべきでない。
イ 20%の基準は,当初契約に比して20%の増額があるかで判断すべきである。
ウ 増額率が20%以内の場合においても,原則として変更契約を認めるべきでなく,ただ,別契約で発注するのが相当でない場合に例外的に変更を認めると考えるべきである。
⑸ 香嵐渓待月橋架替工事その2
地元との協議等を根拠に,1億1424万円から1億2791万31
00円(1367万3100円増。11.97%増)への増額。
【意見】
本件についても,多くは,地元との協議,施設管理者との協議によって,契約変更を認めているものであり,仕上げ段階で,一定範囲の変更がなされることも止むを得ないと思われる。
しかし,「地元調整等の処理による場合」が設計変更理由として記載されているが,あくまで,「発注後に発生したもの」に限られ,しかも,それが止むを得ない場合に変更が認められるにとどまる。
⑹ 香嵐渓待月橋架替工事その3
本件は,当初予定されていたものでなく,工事を施工するなかで,用水の改修工事が必要であるとして,特に,工事を行うことになったものであるが,岩掘削に時間を要した結果(硬さと量),管渠工の長さを減らし,既設管に取り付けるなどしたものである。462万円から212万9400円への減額(249万0600円減。53.91%減)である。施工するなかで,用水の改修工事が必要であるとして,特に,工事を行うことになったものである。
【意見】
契約を締結した以上,契約変更が認められないのが原則であることを十分理解したうえで,契約を締結すべきであり,その前提となる仕様書も作成すべきであって,十分な調査・検討もないまま,入札手続を行ったり,契約を締結したりすることのないよう注意すべきである。
そして,本件の場合であれば,岩盤の問題が発生する余地が当然あったのであるから,そもそも,入札手続,契約手続の段階で,一般の契約約款とは別に,契約変更の余地があることを留保しておくべきで,契約締結にあたっても,別途,書面を取り交わしておく必要があると思われる。
3 契約全体について
待月橋の架設は,香嵐渓の紅葉時期に間に合わせることが絶対要件であり,数年前から計画されているものである以上,紅葉時期までに完了することを十分検討したうえで,工事に着工すべきものである。また,当地区では,岩盤があることも分かっており,事前調査を徹底して行う
ことにより,今回のように多くの契約変更を行うことはなかったと思われる。
【意見】
適正な契約条件によって,契約を締結するために,競争入札によって,契約相手,契約金額を定めているのであって,競争入札によって定まった契約内容を変更することは,競争入札の趣旨を没却するものであって,原則認めるべきでない。
そのため,本件のような重大事業において,十分な検討時間もあるなかで,十分な検討がなされていなかったがために,当初契約の内容を変更せざるをえない場合,安易に契約変更を認めるのには疑問があり,契約変更によって,競争に付されない支出がなされる虞れは高い。
よって,事前の調査を十分行うことによって,契約変更を最低限にすることが,支出面での適正さを維持でき,無駄な支出を防ぐようにすべきである。
第3 取付管設置契約
~豊田市上下水道局 下水道維持課~
1 取付管とは
取付管とは排水設備工事が行われる際に必要となる公共ますと下水道本管を接続するための管である。
取付管
2 各契約
平成19年度の取付管設置工事請負契約としては①平成19年4月4日取付管設置工事その1(以下「契約その1」という)②平成19年4月4日取付管設置工事その2(以下「契約その2」という)③平成19年4月
4日取付管設置工事その3(以下「契約その3」という)がある。本契約はすべて,変更契約がなされた。
3 監査
【結果】
市民のニーズに円滑に応えるためには,市としては申請があればその都度迅速に対応する必要があることは否定しえないものである。ただし,その方法として,契約変更によることが良いかは別に問題となろう。
⑴ 契約その1は,変更契約日平成20年3月10日変更額2495万円
→2111万6000円(383万4000円減,15.36%減)の変更契約がなされている。監査としては,現地を調査すれば,申請件数や舗装道か砂利道かなどの状況は把握できる可能性があるのであり,やむを得ない場合とまでは言えない。
【意見】
事前調査はできる限り行うべきである。濫用的に変更契約がなされないように当初契約の段階での工夫も必要とされよう。
⑵ 契約その2は変更契約日平成20年3月7日変更額2510万円→1
172万5000円(1337万5000円減,53.28%減)であった。監査としては,本件契約変更は取付管施工個所数が当初120箇所の予定であったが67箇所に確定したことが変更の理由である。受注業者が設置工事を対応しきれず断念したことから申請数が大幅に減少したものである。
【結果】
減額の契約であっても安易に変更契約を認めるべきではない。というのも,実際は,契約の相手方の債務不履行にある場面でも,契約の内容を縮小し,減額契約をすれば,債務不履行状態を解消することができるのである。このような温情的な減額方向での契約変更は許されるべきではない。
⑶ 契約その3は契約変更日平成20年3月7日契約金額2395万円→
2209万4000円(185万6000円減。7.74%減)で変更契約がされている。監査としては,契約その3の変更契約は7%と大きなものではないが,契約変更の方法でよいかは検討を要する。
⑷ 【意見】
最終的に申請件数が変更になったとしても,市と受注業者が勝手に変更金額を決定することがないよう,市と業者が明確に認識するように,当初契約の段階で,市と受注業者が,適切な積算根拠の確認し,当該積算根拠によって得られた額に落札率をかける方法等を文書で定め,申請件数が変更になっても,金額の確定しうる取決めは必要となろう。
第4 豊田市井上公園温水プール建設工事契約及びその関連契約
~ 都市整備部 営繕課 ~
プール外観 プール内風景
1 豊田市井上公園温水プール建設工事契約及びその関連契約とは
⑴ 昭和51年に設置され老朽化が進んだ井上公園プールについて,これに代わる温水プールを建設する工事が井上公園温水プール建設工事であり,その他関連契約は,本体工事に関連する空調関係,排水関係,電気関係の各工事並びに設計委託契約,建設監理業務委託契約である。
⑵ 本契約の内容
豊田市井上公園温水プール建設工事及びその関連契約としては,
①豊田市井上公園温水プール建設工事
11億6550万円から11億9560万2450円
(3010万2450円増。2.58%増)
11億9560万円から11億9673万6450円
(113万4000円増。0.10%増))
②豊田市井上公園温水プール建設空気調和設備工事
2億2533万円から2億2546万6500円
(13万6500円増。0.06%増)
③豊田市井上公園温水プール建設給排水衛生設備工事
1億4542万5000円から1億4648万5130円
(105万6300円増。0.72%増)
④豊田市井上公園温水プール建設電気設備工事
1億1518万5000円から1億2255万3900円
(736万8900円増。6.39%増)
⑤豊田市井上公園温水プール建設設計委託契約
819万0000円(変更なし)
⑥豊田市井上公園温水プール建設監理業務委託契約
2205万0000円(変更なし)の6つが存在する。
なお,①ないし④が工事請負契約(うち①は本体契約)であり,⑤⑥が工事関係業務委託契約であり,上記金額はいずれも税込みである。
また,⑥の契約は⑤の契約の相手方との間で随意契約の方法により締結されたものである。
2 監査
上記①ないし⑥の契約のうち,監査に重要なものを取り上げる。
⑴ 豊田市井上公園温水プール建設工事契約の変更について
豊田市井上公園温水プール建設工事契約については,2度の変更契約が行われている。
第1回変更には,安全性向上のための変更,利便性・機能性の向上のための変更なども含まれており,そのなかには下記ア,イ,ウ(豊田身障協会等との協議)が理由となるものがある。第2回変更にも,機能性の向上,安全性向上のための変更,施設運用方法と既存施設との取合い決定による変更がなされた。
ア 建築主事の指示による耐火塗装
本来であれば,これらの防火に関する部分については,契約締結以前にクリアしていなければならない事項である。
イ 光触媒フィルムと併用を予定していた飛散防止フィルムの廃止(光触媒フィルムに飛散防止機能があることが判明)
原設計段階では,光触媒フィルムの飛散防止機能を把握していなかったため,飛散防止フィルムも設計に計上していたものである。コスト意識を持って設計を行うことによってこのような事態を回避すべきである。
ウ 豊田身障協会等との協議や施設管理者からの指示事前調整が不十分な面も否定できない。
⑵ その他工事請負契約について
豊田市井上公園温水プール建設工事契約を除く豊田市井上公園温水プール建設空気調和設備工事,豊田市井上公園温水プール建設給排水衛生設備工事,豊田市井上公園温水プール建設電気設備工事の3つの工事請負契約においては,いずれも当初契約金額の20%を超えない範囲で一括契約変更を行う必要があったため,各々1度の契約変更がなされた。
⑶ 豊田市井上公園温水プール建設設計委託契約について本契約については,契約変更は行われていない。
⑷ 豊田市井上公園温水プール建設監理業務委託契約本契約については,変更契約は行われていない。
【結果】
ア 設計委託契約と監理業務委託契約の関係
(ア) 豊田市井上公園温水プール建設設計委託契約は入札の方法によって契約が締結されていたものの,豊田市井上公園温水プール建設監理業務委託契約については,豊田市井上公園温水プール建設設計委託契約の落札者,すなわち委託先との間で特命随意契約の方式によって契約が締結されていた事実が判明した。
(イ) 設計委託契約と監理業務委託契約の関係
地方公共団体が発注する建物の設計委託契約と,その設計に基づく監理業務委託契約については,一般的には両者を一括して同一業者に委託する例も多い。
しかし,豊田市においては,設計委託契約と監理業務委託契約については,両者を可分なものと捉え,別個の契約と捉えている。また,予算措置との関係において,設計・監理を一括して入札に付することができない仕組みとなっている。
そのため,豊田市においては,設計委託契約と監理業務委託契約が一括して入札に付される場合は存在しえない状況となっている。
(ウ) 両者の契約方法について
豊田市においては,設計委託契約については,入札の方法,或いはプロポーザル方式などの方法によって一定の公平性を保ちうる手法によって契約締結が行われているものの,監理業務委託契約については,設計委託契約の委託先に純然たる特命随意契約の方法によって委託するという手法が取られている。
イ 上記の問題点(一般論)
豊田市における上記運用には,次のような問題点が挙げられる。 (ア) ①設計委託先との間で監理委託契約について随意契約を締結する
運用に対し例外が存在しないこと
(イ) ②低入札価格調査が制度的に存在しないこと
豊田市においては,設計委託契約については低入札価格調査制度が存在していない。
(ウ) ③監理業務委託の随意契約の予定価格設定については,豊田市建
設設計・工事監理業務委託基準により算出されているとのことであり,数社の見積りをとる等の措置も講じられていない。
そのため,設計・監理全体での利益を計算したダンピングが設計契約において行われる可能性が存在する。
(エ) まとめ
以上からすれば,このような紐付き入札は原則禁止とし,①設計
・監理全体についての入札を行うか,②仮に紐付き入札として随意契約の方式を採用するにしても見積合せを慎重に行うなど価格面において一定の公正性が担保される方式を採用する必要がある。また,設計委託についても低入札価格調査制度を導入し不当なダンピングが行われないよう十分な監視体制を整えることが必要不可欠である。
ウ 監査(本件プロパー) (ア) 落札率の分析
a 豊田市井上公園温水プール建設設計委託契約
入札予定価格3363万2000円に対し,入札金額が780万円であり,その落札率は,約23.2%となっている。
b 豊田市井上公園温水プール建設監理業務委託契約
こちらについては随意契約であるから,2100万円はほぼ予定価格通りと考えられる。
(イ) 設計と監理の割合について
設計と監理の委託金額を比較した場合,設計のほうが高額となる場合が一般的であるが,実際の落札額・契約額は,設計780万円に対し,監理2100万円となっており,極めて契約の比率が不自然である。
(ウ) 【結果】
①本件設計・監理の予定価格については,相当高額であった可能性が高いこと
②上記①を前提とすると,設計の落札価格は不当なダンピングである可能性も否定できないこと
第5 香嵐渓秋季交通対策
~建設部 調査課~
1 香嵐渓秋季交通対策とは
香嵐渓秋季交通対策は,紅葉シーズン中に,香嵐渓から猿投グリーンロードにまで伸びる国道153号の渋滞を,迂回路選択可能とする中金町日影交差点まで削減することを目標とした事業である。
当該事業は豊田市交通政策課が事務を担当する豊田市まちづくり推進本部の決定に基づき香嵐渓秋季交通対策ワーキンググループが実施する。名四国道事務所も交通まちづくり推進協議会,香嵐渓秋季交通対策部会に参画している。
2 各契約
香嵐渓秋季交通対策に関する契約として①平成17年10月12日香嵐渓秋季交通対策調査委託契約(以下「平成17年度委託契約」)~香嵐渓の秋季交通の状況把握のためのデータ収集をするため~②平成18年8月
30日香嵐渓秋季交通対策調査委託契約(以下「平成18年度委託契約」)
~時間・経路分散を期待した情報提供の試行をするため~③平成19年9月26日香嵐渓秋季交通対策調査委託契約(以下「平成19年度委託契約」)
~時間・経路分散を期待した情報提供,観光バスの分離による渋滞緩和するため~がある。なお,すべての契約について,契約変更がなされている。
⑴ 平成17年度委託契約は,変更契約日平成18年3月17日,変更額
1745万円→1673万円(72万円減,4.12%減)で変更契約がされている。監査として,変更の理由は調査業務については,国道に係わる部分は名四国道事務所,その他は豊田市で行う。また,駐車場調査については,国道から利用可能な駐車場について,名四国道事務所で調査を行うことに決まったためとの説明であった。
【結果】
ワーキンググループを作り国の施策と役割分担をする場合,十分な協議をせずに業務をすすめると,当該業務に関する変更契約を招くことがある。契約締結の前に事前の協議を十分にする必要がある。増額項目と減額項目が同時にある場合,併せて減額だけ採用するのは妥当ではない。増額項目と減額項目を分けて検討する必要がある。
また,その他に,平成17年契約の変更協議書に記載のない変更点として,①必要性があったため歩行者交通量調査を追加,②調査対象を限
定し観光客アンケート調査を観光バス乗客アンケート調査に変更等があった。
【結果】
変更協議書には変更概要しか記載されないため,重要な変更箇所が協議書で明らかになっていない例がある。しかし,変更の協議をするのに,変更点が明記されていないのであれば,協議したとはいえないのであり,注意が必要である。
⑵ 平成18年度委託契約については変更契約日平成19年3月16日,変更額1980万円→1698万2000円(281万8000円減。
14.23%減)で変更契約がされている。監査としては,減額変更で対応しているのである。しかし,変更項目,変更理由を検討するに,豊田市の調査項目を増加させるものもある。また,減額の理由についても,元契約の段階で見込みで発注していたことが理由とされた。
【結果】
見込みでも発注をすれば,豊田市としては一旦債務を負担し,場合によっては支払の可能性もあるのであるから,必要部分だけで発注すべきである。
【意見】
減額項目と増額項目を同時に検討するのではなく,分けて検討すべきである。
さらに,平成18年契約の変更協議書に記載のない変更点として,渋滞長調査の調査日数14日間を9日間等があった。
【意見】
変更協議書には,変更項目の漏れがないよう詳細な記載が求められる。
⑶ 平成19年度委託契約については,変更日平成20年3月17日,契約金額1190万円→2734万9000円(1544万9000円増。
129.82%増)で変更契約がされている。監査としては,変更の理由は名四国道事務所,豊田市で整理していたが当初発注段階で正確に調査内容が決まっていないものもあったため契約変更が発生したとのこと
であった。しかし,委託業務の契約変更については,「委託契約事務の手引き(工事関係委託を除く)」(平成20年11月作成版・第6版)においても,「その他委託業務では契約の変更は認められていない。」旨明記されており,契約変更ではなく別契約により対応すべきではないか疑問がある。名四国道事務所との協議を早期に十分に行っていれば,契約変更によらず当初契約の段階で対応も可能であったのではないか。しかも,変更金額は1500万円を超える高額であり,変更率は12
0%にもなるのである。安易に契約変更によったのには疑問がある。
【結果】
変更契約の方法ではなく,別契約の方法でなされるべきであった。
【意見】
豊田市の手続によれば,契約課等が契約変更の妥当性を判断する機会を持ち得なくなり担当課だけの判断で契約変更がなされかねない。契約変更は原則として許されないとの観点からすると,担当課には契約変更の必要性が生じた場合には直ちに契約課に決済を求める手続が検討されてもよい。
第6 道路台帳整備業務委託契約
~ 建設部 土木管理課 ~
1 道路台帳整備業務委託契約とは
道路台帳は,道路法に基づき,道路管理者が道路の状況を明らかにするために調製する台帳であり,調書及び図面からなり,路線ごとに調製することになっている(道路法第28条,道路法施行規則第4条の2参照)。
2 道路台帳の整備の効果
道路台帳に記載されている道路の延長及び面積は,総務省の行う下記交付税,交付金等の配分に用いる算定の基礎となっている。そのため,道路台帳が整備されていないと,同交付税,交付金等に反映されないことになってしまう。
記
自動車重量譲与税(自動車重量譲与税法第1,2条)
10億9810万8000円地方道路譲与税(地方道路譲与税法第1,3条)
3億7936万9000円自動車取得税交付金(地方税法第669条の32~33)
14億5723万0000円地方交付税<普通交付税>(地方交付税法第12条)
48億0209万4000円
(注)道路橋りょう費以外も含む。(旧町村分のみ)交通安全対策特別交付金
(交通安全対策特別交付金等に関する政令第4条)
8635万6000円
3 道路台帳整備業務委託契約及び変更委託契約(平成18年度,19年度)
⑴ 平成18年度契約についてア 契約・変更契約の内容
契約・変更契約の内容については次表のとおり。
当 初 契 約 | 変 更 契 約 | |
契約(変更)日 | 平成18年10月26日 | 平成19年2月19日 |
契約金額 | 6405万円 | 7320万8100円 (14.30%増) |
内 容 | 道路台帳加除修正業務 新規 150 路線(32.00 ㎞)補正 475 路線(48.32 ㎞) | 道路台帳加除修正業務 新規 61 路線(20.10 ㎞)補正 536 路線(49.12 ㎞) 合併町村の橋梁調書新規作 成 |
イ 変更契約
当初は,道路台帳加除修正業務を対象としていたところ,合併町村地域の橋梁調書の作成をするために,契約変更をしている。ただ,当初契約の対象とされていたのは道路台帳加除修正業務であり,橋梁調書作成・修正業務は,当初契約の範囲に含まれておらず,変更契約の許容範囲を超えているといわざるをえない。
【結果】
委託契約の変更は原則認められないのであり,数量の変更が予想されるもの(たとえば,本契約でいえば,路線の若干の延長等)は別として,別の業務を追加しようとする場合には,別途,契約を締結すべきであって,契約変更手続で行うべきでない。
【意見】]
委託業務については,平成20年の手引きにおいて,変更契約は原則認められないとの考えが新しく示されたが,従前は,工事,工事関係委託等について定めた設計変更事務取扱要領に準じて処理されていたため,今後は,上記手引きの内容を各担当課に周知徹底して,疑問になるものについては,事前に契約課に確認するルールを作る必要があると考える。
⑵ 平成19年度契約についてア 契約・変更契約の内容
契約・変更契約の内容については次表のとおり。
当 初 契 約 | 変 更 契 約 | |
契約(変更)日 | 平成19年11月8日 | 平成20年3月19日 |
契約金額 | 6615万円 | 1億1346万9300円 (71.53%増) |
内 容 | 道路台帳加除修正業務 新規 15 路線(34.35 ㎞)補正 446 路線(39.762 ㎞) | 道路台帳加除修正業務 新規 144 路線(65.97 ㎞)補正 566 路線(59.32 ㎞) 道路台帳整備ができていない供用実態のある路線を航 空写真で調査 |
イ 変更契約
平成19年9月議会にて,道路台帳の整備が十分なされていないことが指摘された。特に,道路台帳を整備すれば,本来受領できる交付金等の交付を受けられていないのが問題であるとの質問がなされた。そこで,道路台帳未整備路線の早期解消を目指して,道路台帳新規 作成及び補正路線ともに大幅な整備延長を図ることになり,大幅な契約変更をすることになった。そのような状態は早期に解消する必要はあるが,一方,契約変更手続にもルールがあり,そのルールを無視し
てまで,実行すべき緊急避難的要素があったとまではいえない。
【結果】
当初契約の対象と全く異なる業務内容を委託契約の内容とする以上,別途契約で行うべきである。
なお,本件については,契約変更で行える範囲でないと考えるが,変更契約で行うことを許容する余地があったとしても,当初契約の範囲を超える業務を委託する以上,変更金額が確定しない段階でも,変更協議書を作成して,変更内容を明らかにしておく必要がある。
【意見】
契約変更の問題ではないが,担当課においては,従来,交付税検査の折に,愛知県から指摘がなかったことをもって,路線が部分的に供用された場合に交付金等の算定対象になるとは考えてもいなかった。
ただ,各交付金等の根拠規定が何であるかの認識をもつことにより,
部分的な供用開始で,道路台帳を整備したり,それに基づいて交付金等の請求をしたりすることも十分検討する余地はあったように思われる。
第7 東部給食センターPFIアドバイザリー等業務委託契約
~ 教育委員会 保健給食課 ~
1 東部給食センターPFIアドバイザリー等業務委託契約とは
豊田市では,老朽化した現東部給食センターを下山給食センターと統合の上,新東部給食センターを設置する計画を進めている。
また,本事業においては,これをPFI事業(「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(平成11年法律第117号)に基づく事業,なお同法については以下「PFI法」という。)とすることで,民間の資金やノウハウを活用し,より効率的な給食センターの運営を目指すものとされている。
そしてPFIを導入するとともにその導入にあたってはより効率的な給食センター運営をなし得る業者を選定すべく民間業者のノウハウを活用するため,本契約について,先行する「豊田市給食センター設置基本計画および東部給食センター整備の事業手法等検討調査委託」(以下,「手法等検討調査委託」という。)及び「東部給食センターPFI導入可能性調査業務委託」(以下,「導入可能性調査委託」という。)の委託先であるパシフィックコンサルタンツとの間で随意契約を締結する運びとなった。
2 PFIアドバイザリー契約の効果
PFIとはPrivate Finance Initiativeの略である。公共サービスの提供に際して公共施設が必要な場合に,従来のように公共が直接施設を整備せずに民間資金や経営能力・技術能力を活用して民間に施設整備と公共サービスの提供を委ねる手法であり,給食センターの設置・運営については,その性質上PFIに馴染みやすい事業といわれていた。
そのため,新設されたPFI制度を活用することについて前向きな検討が行われ,実際にPFI事業として行うことが有効適切か否かについて,東部給食センターPFIアドバイザリー等業務委託契約締結に先立ち,「手法等検討調査委託」に基づくPFI導入の可能性調査が実施され,その結果,PFI事業を行うに適している事実が判明したため,新東部給食センター整備にあたってはPFI方式の導入が決定された。
3 東部給食センターPFIアドバイザリー等業務委託契約及び変更委託契約
⑴ 契約手続
一者特命随意契約である。
なお,随意契約となったのは,スケジュール的に余裕が無いため,先行する可能性実施調査で実績があり,本件事業に通じており,更に給食 PFIについて全国的に高い実績を持つパシフィックコンサルタンツと随意契約を締結すべきとの理由に基づくものであった
⑵ 契約内容
契約金額は税込み4882万5000円であり,その後,変更契約で
2477万4798円(税込)に減額されている(2405万0202円減。49.25%減)。
4 監査
⑴ パシフィックコンサルタンツとの契約
豊田市は,本契約に先立つ「手法等検討調査委託」及び「可能性調査業務委託」をいずれもパシフィックコンサルタンツと契約を結んでいる。なお,「手法等検討調査委託」についてはプロポーザル方式が採用されていた。
工程的にタイトな作業が要求されたこと及びパシフィックコンサルタンツが本契約に先行する各種委託契約を行っており東部給食センターについての基礎資料・情報等を有していること,そして,パシフィックコンサルタンツが給食関係のPFIについて全国的に高い実績を有していることなどを理由として,地方自治法施行令第167条の2第1項第6号に基づく随意契約として締結されたものである。
なお,豊田市においては,随意契約に関する従前からのルールを明確化した「業務委託における随意契約のガイドライン(適正な運用について)」(以下,「随意契約ガイドライン」という。)を作成している。
【随意契約ガイドライン(抜粋)】*地方自治法施行令第167条の2第1項第6号関係
⑴ 現に契約履行中の業者に履行させた場合は,工期の短縮,経費の節減が確保できるなど有利と認められるとき。
ア 現在契約中の業務で,当初予期しなかった事情の変更等により必要となった業務を別途発注により委託するとき。
イ 履行中の業務委託と密接に関連する付帯的な業務を委託するとき。
⑵ 前回に引続き実施される業務で,前回業者に委託した場合に工期の短縮,経費の節減,円滑かつ適切な履行が確保できるとき。
【意見】
従前より先行する契約を締結していた相手方との随意契約については,類型的に見て随意契約を締結することの合理性を疑われる可能性が高い。
随意契約ガイドラインにも単に実績があるだけでは随意契約を締結することができないことが明示されており,このことは本契約に限らず,契約に携わる各課担当者は十分認識する必要がある。
そして,実績の延長上にあるような理由をもって特命随意契約を締結するにあたっては,本契約の締結過程で行われたように,他自治体など外部への聴取作業や客観的資料の収集などに努め,その正当性を根拠づけるだけの選定過程を経ておくことが有効である。
⑵ 契約変更
契約変更の理由は,新東部給食センターの事業用地について,当初予定されていた時期に事業用地の取得が出来なかったため,スケジュール全体に遅れが出てしまい,平成19年度内に行う予定の事業範囲に変更が生じたことに求められる。
なお,変更金額については,豊田市とパシフィックコンサルタンツの協議によって決定したものであるが,本契約の発注方式については,アドバイザリー契約全体を一括して発注する方法ではなく,事業内容を年度ごとに分断し,そのうち平成19年度実施予定分に限って業務委託の発注をかける方式がとられていた。
その結果,スケジュールの遅れに伴って,平成19年度内に行いうる業務内容が相当減少し,結果,49.25%もの大幅減額となった。
【結果】
ア 契約変更の理由について
本契約は,事業用地取得が相当程度遅延した結果,契約変更を余儀なくされた事例である。
事業用地取得が遅延した原因は,当初計画段階においては,特に資料を持ち合わせることなく,一般的な測量・用地確定に要する期間を見込んで,平成19年12月末までに用地取得できる前提で,本契約が締結されていた点に求められる
ところで,新東部給食センターを設置すること自体は,その運営方式如何はともかく既定の事実となっていたものであるから,事業用地についての調査ないし,その下準備程度は,可能性調査と同時期程度に行っておく必要があるものであり,かかる作業を怠り,一般的な測
量・用地確定に要する期間でこれらの作業をなしうると軽信して本契約の締結を行った点は,迂闊であったというほかない。
イ 大幅減額について
本件契約は,減額率にして49.25%であって,半額近い減額事例であり,金額についても2405万0202円もの減額を伴う,正に大幅減額事例であった。
この点について,豊田市の扱い上,年度ごとに履行される内容にあわせて契約変更を行う形となっているため,大幅なスケジュールのズレに伴いこのような減額となってしまったものであるが,売上を見込んでいた相手方への影響も否定できず,また,独占禁止法との関係でも,優越的地位の濫用に該当する可能性もあり,その点も十分検討しておく必要がある。
⑶ 契約方法
本契約については,当初より,少なくとも平成19年7月から平成2
2年4月までの間の約3年弱の間の業務遂行が予定されていたところ,これを年度ごとで区切り,別々に契約を行っている点に特徴がある。
【結果】
履行に数年度を要する契約を締結する場合は,地方自治法第212条の規定に基づいて継続費を設定し,その経費の総額及び年割額が予算で定められているのが通例であり,したがって,一般的には,その年割額に従って予算支出を行うこととなる。そして,このような措置の根底には,契約にかかる費用の支払を数年度に渡って行うものに過ぎず,契約自体については年度ごとに分割して行われるものではないとの理解が存在している。
したがって,そもそも,本契約のように年度ごとに別個独立の契約を締結する方法は,上記の理解とは異なる考え方に基づく方法といわざるをえない。
【意見】
ア 自治体財政の特殊性との関係
本契約は,年度ごとになすべき業務を区々に区切った上で平成19年度実施が予定されていた部分に限ってアドバイザリー契約を締結したものである。
この点,地方公共団体の支出については予算の年度に拘束され,複
数年度にまたがる支出については厳しい制限があるため,かかる契約方法にも一定の合理性はある。
イ 契約方法の問題点
しかしながら,このような区々の契約については下記のような問題点が有るものと考えられる。
① 契約金額が高くなる可能性があること
② 年度ベースでみると,当初予測と現実の履行状況の差が生じやすく,本来的に契約変更の必要性が生じやすいこと
③ 次年度以降同一業者との間で随意契約を締結する場合には,各年度ごとに随意契約を正当化すべき事由が存在しなければならないこと
④ 次年度以降の契約について締結できない可能性があることウ 現在の豊田市の扱いとの関係
現在,豊田市においては,会計年度独立の原則の例外としては,①継続費と②債務負担行為の二つが用いられているが,本契約は運用面においてこの両者が用いられない「隙間」の契約であった。
しかし本契約のような契約については,大幅減額が現実に発生してしまうと重大な民業圧迫になる可能性があるばかりか,独占禁止法違反を構成する可能性もある。そこで,契約金額が大きく,安易な減額変更が起ると問題が大きい契約等については,今後,年度ごとの契約変更額を可及的に減らすように,1年という細かい単位で区切るのではなく例えば2年ないし3年を限度とした継続費の活用を検討するなど,契約変更に伴う,特に民間業者のリスクを分散しうる方法を考察すべきである。
第8 エコドライブ推進事業
~都市整備部 交通政策課~
1 エコドライブとは
エコドライブとは,単なる運転操作のみならず,省エネを目的とした自動車の運転に係わる総合的な取組を意味している。エコドライブは「交通まちづくり行動計画」に位置づけられ,平成18年度より,交通部門における渋滞・環境対策の一環として取り組んでいる。エコドライブ事業は国との共同事業であり,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
(NEDO技術開発機構)(以下「NEDO」という。)の「地域省エネルギービジョン策定等事業」の補助事業である。
2 各契約
各契約のうち特に監査で重要なものは,以下の①から③の契約であった。
① 契約日平成18年8月31日に締結されたエコドライブ社会実験等業務委託(以下「契約①」という),② 契約日平成18年9月6日に締結された平成18年度エコドライブ社会実験に関する広報等業務委託(以下「契約②」という),③ 契約日平成19年5月10日に締結された平成19年度エコドライブ普及促進業務委託(以下「契約③」という)。
3 監査
⑴ 豊田市は契約②は前例がない内容であることから,契約①の「エコドライブ社会実験等業務委託」の入札時の条件に「エコドライブ社会実験に関する広報等業務委託」が落札者に紐付されて,随意契約となることを書面で通知し随意契約の方法で契約を締結している。
【結果】
紐付きにするのではなく,別の入札によるべきであった。
【意見】
紐付きの随意契約を安易に認めるべきではないことが挙げられる。
⑵ 契約②の契約変更は変更額672万円→841万7370円(169万7370円増,25.25%増)であった。監査としては,エコドライブのシステムにメモリーの追加については当初から予測しえたものであり,契約変更の方法によることは妥当でないことが挙げられる。
【結果】
単純な物品購入であれば,随意契約でできるのであって,見積あわせをしたうえで,随意契約によるべきであった。
【意見】
委託契約とは同一性を欠く物品の購入についてまで,委託契約の変更で対応することには疑問がある。契約②においても,体験試乗会を増加することは,別契約でも可能なものであり,安易に契約変更で対応すべきではない。
⑶ 契約③は平成19年12月25日に393万7500円→776万0
800円(97.09%増)の契約変更がなされた。その理由は国と連携した業務の中で,本契約で作成しているツール・コンテンツを活用したWebサイト構築が急務となった為である。監査としては,Webサイトの構築が急務であっても,高額であり,契約の同一性を欠くおそれもある変更契約であり,別契約による方法が本当にとり得なかったかは疑問が残る。
【結果】
当初契約と全く異なる契約変更をするものであり妥当とはいえない。しかも,参考見積を依頼している業者が現取引業者であり,3社中の最低見積額を算定しているが,公正な見積が得られていないものといえる。しかも,当初契約の価格と比べ変更価格が倍近いものであり,変更の方法によったことが妥当とはいえまい。
【意見】
参考見積は受注先とは関係のない公正な価格を提示しうる第三業者に前提条件を同一にして依頼すべきである。
(以上)