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生命保険契約における復活と危険選択の範囲
弁護士 xx xx
1 問題の所在
失効と復活は、 2 回目以降の保険料不払いが発生した際の保険契約の解消に関して定めた制度である。生命保険契約において、 広く約款に規定が設けられているが、 我が国の保険法には平成20年改正前商法の規定から通じて特段の定めはなく、 約款上の制度である 1 。
失効は、約款上、 一定の保険料不払いが発生した際、無催告で保険契約が失効すると定めている。一方で、 失効した契約について、復活の請求を認めることが通常である。これは、一定期間( 通常失効後3 年間 )、未払の保険料 を支払うことで契約を失効前の内容で復活させることを認めるものである。ただし、復活の際には告知義務を課した上、保険者が承諾することにより、その効力を生ずるものとされている。
この復活の際の告知義務及び復活の承諾に関し 、契約 の申込時とは異なり、 復活の際には 、一定の 事情について 、保険者 の危険選択を許すべきではない、 あるいは一定の場合には不承諾を許すべきではないという議論がなされている。
この問題をどう考えるかについては、 様々な観点から考えることは可能であると思われるが、 復活請求の場面は、 保険者側には危険選択をしなければならないという要請があり、一方で、保険契約者が継続させてきた生命保険契約を持続させたいという要請がある、 という場面であると思われる。これをどう調整するかの問題と見ることができると考える。本稿では、 この観点から復活における危険選択の範囲について検討していきたい。
2 危険選択の必要性と生命保険契約の特徴
保険者が告知義務を課した上で危険選択をするのは 、「逆選 択の危険 」を 防ぐためとされる 2 。復活の場面においてもこの趣旨がどこまで妥当するのか 検討する必要がある。
一方で 、「逆選 択の危険 」が認められ るとしても 、それが 直ちに危険選択を 許すこととイコールにはならないと思われ、何らかの利益を害することを理由に一定の危険選択を許さないという議論もありうる。生命保険契約は、 長期間、契約関係を存続させるのが通常であり、また、 契約関係が長期になっているほど、 他の保険契約へ再加入すると保険料が割高になること、場合によっては、保険契約者が他の保険契約に再加入することは困難を伴うことがあることから、保険契約者には、 現在加入している保険契約を存続させる期待が存在する。復活について、危険選択を許すかどうかは、 この点との関係について良く検討しなければならないと思われる。
また、復活は、保険契約者の保険料不払いによる失効を前提とするものである。失効と復活は、保険契約の契約解消に関する一連の手続であり、保険契約者の保護については、一連の手続全体として、十分であるかという観点から見るべきであると思われる。 平成2 4年3月16 日民集6 6巻5号2 2
16頁(以下「平成24年判例」 という)は、失効約款について、消費者契約法第10条との関係で、一定の要件を付した上で有効としたが、消費者契約法の適用のある生命保険契約においては、このような要件の下、失効となった生命保険契約の保険契約者にどの程度契約の存続について保護すべきか考える必要がある。
3 復活における危険選択に関する見解の整理
(1) 契約申込時の告知義務の概要
生命保険契約における告知義務は、保険契約の申込の際、 保険契約者ま たは被保険者に対して、保険事故の発生の可能性(危険) に関する重要な 事項のうち保険者が告知を求めたものにつき、回答させる義務を課すこと が許されている(保険法37条 )。
契約締結後、 告知義務違反が発覚した場合、これを理由とした解除をす ることが許されうる(保険法55 条 )。一 方で、契約申込時には、契約自由 の原則により、保険者が、告知を受けた事実の内容にかかわらず、契約を 締結しないことも原則として自由であるとされる 3 。
(2) 復活における危険選択に関する見解
復活請求の際にも、約款上 4 、保険者は保険契約者または被保険者告知 義務を課すこととされており、これに反した場合は、 告知義務違反解除を することができるものと定められている。また、復活の成立には保険者の 承諾を要するものとしている。
しかし、 上記のように、復活の際には、契約申込時とは異なり、復活の承諾の裁量について制限し、あるいは、 一定の事由による復活の不承諾を 許すべきではないという議論がなされている。まずは、この見解の内容に ついて概観する。
失効は保険金支払いの責任が喪失するにすぎず、契約関係は存続し、 復活はその責任を再開させる手続きに過ぎないとの立場から、保険契約 者に再度の告知義務の履行を求める根拠は完全に欠如しているとし、た またま保険料の不払いより「失効」した保険契約をとらえて、保険者が 再度危険選択を行うのは、果たして保険契約者の利益保護の観点からみ て適切な措置と言えるのか、疑問があるとする。
③ 復活請求時には、復活告知事項以外の事由を理由として復活の承諾の 拒絶はできないとする見解 7 。
これは、 約款の規定ぶりからすると、保険契約者には単に復活の申し 込みをする権利が与えられているだけにとどまらず、 被保険者が保険適 格者であることを条件として保険者に承諾を求める権利が与えられてい ると解するのが自然であるとする。
④ 失効前に生じた身体的危険の事由を理由とする復活の拒絶について疑
問を呈するもの
この見解は、 身体的危険事由以外の事情を考慮するかどうかという点から
ア 失効前の発病を理由として復活を拒絶することはxxxに反し許 されないとする見解 8
イ 失効前の発病が理由となる場合、復活の裁量を狭めることを肯定 するにとどめ、復活の拒絶を肯定するかは具体的事情を考慮して信 xxに反するかを検討する見解
東京高判平成2 4年10月2 5日判タ1387号266 頁(平成
24年判例の差戻審)
「 契約の失効前すなわち保険契約者が被保険者集団の一員であっ た当時において、保険事故自体は発生していなかったとしても、既 に健康を損ねていた場合においては、保険事故発生のリスクを共同 で引き受けようとする意思が被保険者集団に存在していたと考える のが相当であるから、契約の失効後に初めて健康を害した場合と異 なり、失効前罹患の場合においては、保険契約の復活はある程度緩 やかに認められるべきであり、保険者の裁量の余地は狭まるものと 解される 。」
に分けて考えることができる。
このように、告知義務を課すべきか、その裁量を狭めるべきかの対立のほ か、失効前の健康状態の悪化について別途の考慮を要するかという点においても見解の対立が存在する。
そこで、適宜、失効前の健康状態の悪化について、 別段の意義付けがなしうるかも検討していくこととする。
4 復活における逆選択の危険
(1) 告知義務の趣旨
告知義務の趣旨については、保険者の逆選択の危険を防止するためであ
これがどういうことか確認しておくと、生命保険契約は、保険事故の発生リスクが高い者の方が低い者よりも保険に加入する傾向が強い(逆選択 の危険) ので、保険者は、保険契約の申込に対して、 正確に保険事故発生 のリスクを測定し、 それに応じて契約の可否を決定し、契約に応じるとし ても保険事故発生のリスクに応じた保険料を定める( 危険選択をする)必 要性がある。 そうしなければ、保険料の支払見込額に比して、保険事故の 発生リスクの高い者しか加入しない傾向が強まり、保険制度が成り立たな くなる。
しかし、生命保険契約の保険事故発生のリスクを測定するために必要な 事実は、契約申込者側に偏在していることがほとんどであり、保険者は、 情報を有していないので、保険者が情報を取得する手段が必要である。こ のために、保険者に許された手段が、保険契約者または被保険者に対して 告知義務を課すことである。
このように、保険者が告知義務を課すことが許されるのは、危険選択をする必要性があり、 その判断に必要な情報を取得するためである。
(2) 復活における逆選択の危険
復活においても危険選択を肯定する必要があることは、 従来から指摘されるところであり 、「 死亡危険の高い被保険者の契約の復活が無差別に認め られるとなると、予定された事故発生率を上回る保険事故発生も招きかね ず、また、特別に高い事故発生率を有する被保険者の生命保険には、標準 的な事故発生率を有する被保険者の生命保険よりも多くの費用(保険料) を要するにも拘わらず、同一水準での発生率で計算された保険料を払い込 むことになるため 、契 約者間で保険費用負担のxx性を欠くことにもなる」とされる 10 。
前述のとおり、 逆選択の危険を防ぐため、保険者が危険選択をすることは、保険制度を維持するために必要な措置であり、失効前の発病した者で あっても、失効前に発病していなかった者に比べて( たとえ、失効前に発
病していなかった者が3年以内に発病する可能性を考慮しても )、復活請求 する傾向が強いということは認められると思われる。 予定以上の保険事故 発生の防止という観点からは、失効前の健康状態についても危険選択は許 されるべきということになると考えられる。
ただし、失効前の健康状態の悪化は、元々失効前に保険者が引き受けて いた危険である一方、失効後の健康状態の悪化は、保険者が引き受けた危 険となったことはない。保険契約者が失効する前から保険契約者の復活後 保険集団内の事故発生率の上昇の程度を比較してみたとき、 失効後に健康 状態が悪化した場合の方が、失効前から健康状態が悪化していた場合より も、事故発生率の上昇の程度は高いといえる。そうすると、 危険選択をす る必要性は、 失効後の健康状態の悪化の方が高いということになると考え られる。
また、xxな保険料の負担という観点からすると、復活の場合、契約時とは異なった評価がなしうるのではないかと思われる。復活請求時におい て保険契約者の保険事故リスクは高いため、この点だけを見れば、失効前 の保険料がリスクに比して過少である、 あるいは保険の引受をすることが xxを欠くということになるかもしれない。しかし、 生命保険契約では、 通常、契約後の健康状態の悪化は、契約時に取り決めた保険料に織り込み 済みであるとされる 11 。そうすると 、元々 身体的危険が増加した時点では その危険は保険者に支払っている保険料で当然に引き受けられていたはず のものであったはずである。保険契約者が失効時までに支払ってきた保険 料も考慮すれば、失効後に未払の保険料の払込をしても復活を認めないと いうことは、 保険事故リスクに対応したxxな保険料の負担という観点か らは、却って不xxなのではないかと考えられる。
このように考えると、復活における告知義務を根拠づけるのは、保険事故のリスクに対応した保険料の徴収というよりは、保険集団内の保険事故 率が想定を上回る事態になることを防ぐことで、保険制度を維持するとい う観点からになるのではないかと思われるが、危険選択の必要性自体は認
められると考えられる。
5 保険契約者の契約存続への期待
(1) 保険契約者の契約維持の必要性
生命保険契約は、長期間の継続的契約となるのが通常であり、保険契約者も契約関係の継続を前提とした生活設計がなされていくことになる。
また、上記のように、生命保険契約は、長期間、 契約関係を存続させるのが通常であり、保険契約者の多少の経済状況等の変動は、 契約時から想 定されうる。 また、 契約関係が長期になっているほど、他の保険契約へ加 入すると保険料が割高になること、場合によっては、 保険契約者が他の保 険契約に再加入することは困難を伴うことがあることから、 保険契約者に は、現在加入している保険契約を存続させる期待が存在する。
このような事情からすると、 生命保険契約について、簡単に解消させるべきではないとの要請が働くことになると考えられる。
(2) 失効前の健康状態の悪化について
保険契約者が 、復活請 求時において 、保護さ れるべきであるというには、 保険契約者が契約の維持へ合理的な期待を有しているということが必要と 思われる。保険料の負担をしたくない等の自らの思惑で契約を失効させ、 契約を放置している者が、自身の健康状態に不安を覚えた等の理由で復活 を請求するような場合には、保険契約者を保護すべき必要性は低いと思わ れる。
失効前から健康状態が悪化していたと言える場合、保険契約者は、このリスクを保険によって補填したいと考えるであろうから、通常生命保険契 約をできる限り継続させたいという意思があることが推測しうる。
一方で、 失効時には、健康状態が悪化していなかったという場合、保険契約者が失効させる理由については上記のような推認は働きづらい。預金 の預入を失念する等の単なるうっかりミスである可能性もあるが、保険料 の支払いを止めたいが保険契約の解約が面倒なので、 引き落とし口座を故
意に空にしているとうこともありうる。 仮に、契約者が望んで契約を失効 させたということであれば、その後に生じた事態については、自己責任で あり、後に翻意して、復活を請求したとしても保護すべきとは言えないと 考えられる。
そうすると、失効前から健康状態が悪化している場合は、保護に値しうる契約関係存続への期待が存することを示す、一つの指標となりうると思 われる。
(3) 復活による保険契約者救済の必要性について
しかし、 復活は、保険契約者の債務不履行による失効を前提とするものである。失効と復活は一連の手続きであるところ、保険契約者に対する契 約存続の保護に関しては、失効の場面で考慮すれば十分ではないかという 問題は考えなければならない。
従来、無催告で保険契約が失効する失効制度の有効性についての議論につき、その有効性を認める根拠の一つとして、失効に対応して復活の制度 が設けられていることを挙げられることがあった 12 。もし 、復 活が失効の 制度の有効性を支えているのだとすれば、復活の要件は、失効となった保 険契約者の救済として十分なものとなるように解釈すべき必要性は認めら れたと思われる。
しかし、 平成2 4年判例は、 消費者契約法第10 条後段に該当せず有効であると認めるためには、以下のような条件があれば良いとし、復活の存 在については触れなかった。
「本件各保険契約においては、保険料は払込期月内に払い込むべきものとされ、それが遅滞しても直ちに保険契約が失効するものではなく、この 債務不履行の状態が一定期間内に解消されない場合に初めて失効する旨が 明確に定められている上、上記一定期間は、 民法54 1条により求められ る催告期間よりも長い1か月とされているのである。 加えて、払い込むべ き保険料等の額が解約返戻金の額を超えないときは、 自動的に上告人が保 険契約者に保険料相当額を貸し付けて保険契約を有効に存続させる旨の本
件自動貸付条項が定められていて、長期間にわたり保険料が払い込まれて きた保険契約が1回の保険料の不払により簡単に失効しないようにされて いるなど、保険契約者が保険料の不払をした場合にも、その権利保護を図 るために一定の配慮がされているものといえる 。」
「さらに、 上告人は、本件失効条項は、保険料支払債務の不履行があっ た場合には契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う実 務上の運用を前提とするものである旨を主張するところ、仮に、上告人に おいて、本件各保険契約の締結当時、保険料支払債務の不履行があった場 合に契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う態勢を整 え、そのような実務上の運用が確実にされていたとすれば、 通常、保険契 約者は保険料支払債務の不履行があったことに気付くことができると考え られる。多数の保険契約者を対象とするという保険契約の特質をも踏まえ ると、 本件約款において、 保険契約者が保険料の不払をした場合にも、 その権利保護を図るために一定の配慮をした上記イ《前鍵括弧内の部分》 のような定めが置かれていることに加え、 上告人において上記のような運用 を確実にした上で本件約款を適用していることが認められるのであれば、本件失効条項はxxxに反して消費者の利益を一方的に害するものに当た らないものと解される 。」
このように失効自体に 、保険契 約者保護のための条件が付されたことで、 少なくとも民法54 1条の通常の解除手続との関係で見れば、契約者保護 に欠けるとまでは言い難いということになったと思われる。
しかし、 これをもって保険契約者に対する契約者保護として十分であるかというと問題があると思われる。上述のように、生命保険契約は、通常 の契約に比して 、契約 関係維持への要請はなお高いと思われるからである。 そうすると、 失効につき、平成2 4年判例のような条件が付されなかった 場合に対して保護の要請は低くなるかもしれないが、 なお保険契約者を保 護するための配慮は必要となると思われる 13 。
6 失効と復活の法的性質論について
なお 、失効と 復活については 、古く から法的性質論について争われてきた。 従来の通説は 、失効 を 、復活を 条件とした解除条件付のもの捉え 、復活は 、
契約当事者間の合意により、前契約は最初からその効力を失わなかったことにする特殊の契約である、と説明する。 解除条件が成就しない限り、執行により保険契約は完全に消滅することになる(保険契約完全消滅説) 14 。
このほかには、従来の通説によれば、 失効により、 復活に関する合意や解約返戻金支払いに関する合意まで消滅してしまい、これらの法的基礎が失われてしまうことから、復活及び解約返戻金に関する契約関係だけが存続し、そのほかの契約の効力が消滅するのが失効であるとする見解もある(復活条項存続説) 15 。
さらには、 失効は、保険契約に基づく保険者の責任を消滅させるものにすぎず、保険契約関係は消滅しないとする見解がある( 保険契約存続説) 16 。
ただ 、各々導 きやすい結論はあるものの 、保険契約の法 的性質については、 必ずしも、失効と復活の具体的要件解釈に結びつくものではないと指摘される 17 。
少なくとも、失効後も、契約当事者者が契約時に復活請求権または解約返戻金の請求権の行使を認める内容の約款を合意として取り決め、失効後も契約当事者が当初の合意に拘束されていることから、契約関係が完全に消滅したとは言い難いとは考えられる。
7 危険選択の範囲についての私見
(1) 保険者の危険選択を許すべきか
復活時においても、逆選択の危険が存在することは否定しがたく、保険者には、危険選択をする必要性は認められる。そうすると、 保険契約者ま たは被保険者に告知義務を課すこと、及び保険者が、 危険選択の結果、x xの場合、復活を不承諾とすることは、 認めるべきである。
(2) 危険選択の範囲について
さらに進んで、 失効前の健康状態の悪化について、危険選択の対象から外すべきであるか考える。
健康状態の悪化が失効前である場合、危険選択をする必要性は否定しがたいが、その必要性は、失効後の健康状態の悪化に比べると必要性が低い と思われるし、復活の請求をした保険契約者が失効をあえて望んだわけで はないという事情を推認しうる。 このように見ると、 危険選択の対象が失 効前の健康状態の悪化であるという場合、失効後の健康状態の悪化の場合 よりも、保険契約者を保護する方向で解釈すべきことは十分根拠づけられ ると考えられる。
そうなると、問題は、どの程度保護に値するか、 失効前の健康状態の悪化を全く危険選択の対象としないということまで認めてよいかである。こ の点については 、危険 選択の必要性自体が全く否定されるわけではないし、 保険契約者の失効に至った理由についても推認を覆しうる事情が存在する 場合もありうる。そうすると、ほかの具体的事情を考慮せずして、一律に 失効前の健康状態の悪化を危険選択から除外して良いかは疑問が残る。そ こで、上記見解の整理で言うところの④ -イ説を採用し、 失効前の疾病で あるときは 、復活の不 承諾についてその裁量を限定的に考えるとしておき、 その上で具体的事情を考慮してxxx違反または権利の濫用の有無を検討 すべきではないかと思われる。
その際には、 失効に至るまでの経緯、失効後復活に至るまでの経過、復 活の際に問題になった告知事項の内容( 失効前の健康状態の悪化か、生じ た保険リスクの増加の程度 )、保険 契約者の失効の不利益に対する理解の程 度等に鑑み、 失効という債務不履行を経てもなお保険契約者を保護すべき かの観点からxxx違反または権利の濫用による制限の可否を具体的事例 に即して検討するべきであると考える 18 。
8 失効と復活約款のあり方について
上記のように、失効と復活の問題は、 上述のとおり、 保険料の不払いとい
う債務不履行に陥った保険契約者の保護をどう考えるか、という問題であると思われ、一連の手続として保険契約者の保護が十分であるか、という問題として見るべきと思われる。
これまでの検討から、 復活の不承諾には、 xxx違反または権利の濫用となるリスクが生じうるし、 実務上はそのことをどう防ぐかが問題になると思われる。
現在、約款の改訂については様々な議論・提言がなされているところであ り、このことにも触れておきたい。
(1) 失効後、 一定の期間告知義務を課さないとすること
復活請求するのは、多くの場合、失効後短期間であるという実情を踏ま え、復活から短期間の場合には 、危 険選択をあえてする必要はないのでは ないかという提言がある 。例えば 、失効後1ヶ月以内に復活請求をする場 合には告知義務を課さないとする等である。
失効後1 ヶ月以内であるなら 、失効後 に健康状態が悪化したという者は 少なく 、逆選 択の危険はないわけでなはないがその程度は小さいとはいえ る。
また 、多くの 失効につき 、危険選択 自体を回避して復活時の紛争が発生 するリスクがなくなり、紛争の予防にも資する。
一方で、失効後1ヶ月以上経過したものに関しては 、保 険契約者のうっ かりミスである可能性は低くなると思われるし 、信 xx違反または権利の 濫用になりうる事案もかなりの割合で包含することになるのではないかと思われる。
紛争予防の観点から効果的ではないかと思われる。
(2) 失効猶予期間の伸長について
また 、失効 が生じるまでの猶予期間を2ヶ月間にする等して伸長するこ とで、失効になりにくくする対応も最近では行われているという。
失効との消費者契約法10条との関係では 、特段意 義のあることにはな らないかもしれないが、このことも、保険契約者の契約存続の期待を保護
する方法の一つであり 、復活の 不承諾がxxx違反ないし権利の濫用とな ることがないようにするひとつの手段となりうると思われ 、復 活の不承諾 が無効とされうるリスクを低減できる有効な方法となりうると思われる。
以上
1 他国では、 法律上復活の規定を設けることを義務付けている法律もある。
2 xxxx=xx・高生編・保険法解説( 有斐閣,20 10) 247頁以下
[xxx・xxxx]に詳細な分析がなされている。
3 xxxx xxxx=xxxx 著「論点体 系保険法2 」第2 版( 第一法規,
2016年) 3 1頁参照。
4 近時、失効と復活の制度を廃止し、催告による解除手続を約款に導入した 保険会社も存在する。
5 大阪地判平成17年6月13日保険事例研究会レポート20 7号10頁、
東京地判平成27年3月26日判タ14 21号246 頁も同旨かと思われる。
6 xxx「生命保険契約における失効・復活制度の再検討」生命保険論14
0号(200 2 ) 8 0頁。
7 前掲注2) 2 45頁[xxxx ]。
8 xxxx「 共済契約をめぐる最近の法律問題― 保険法施行後3 年を経過し て(日本共済協会平成25年度第1回・第2回共済理論研究会報告要旨 )」共済と保険20 14年2月号26頁、xxxx「消費者契約法10条と復活」生命保険論集第18 4号(201 3 )1 29頁。
9 大判大正6年12月14日民録2 3 輯2 112頁。
10 xxxx・「判批」生命保険判例 百選( 増補版 )(有 斐閣, 1 988 ) 16
8頁。
11 xxx編著 「一問一答 保険法 」(商事 法務,200 9) 8 7頁。
12 xxxx「生命保険復活論」商法解釈の諸問題401 頁。
13 なお、平成24年判例後、自動貸付条項のない保険契約についても、消費 者契約法10 条との関係で、有効であるという判断をした裁判例がある。 東京地判平成2 7年3 月26日判例タイムズ1421号246 頁は、 以下のように述べている。
「原告は、本件保険契約に、猶予期間中に保険料の払込みが行われなかった場合に、一定の金額の範囲内で自動的に保険料相当額を貸し付けて保険契約を有効に存続させる自動貸付条項がないことを指摘する。
しかし、自動貸付条項がないのは、本件保険契約が、解約返戻金がないか極めて少ない定期保険であるためであることが窺え・・・、 合理的な理由がある。
そして、前記のような猶予期間の定めや督促態勢《 ①1ヶ月間の失効猶予期間、②はがきによる通知及び職員による電話、訪問等による督促態勢があったことが認定されている(但し、原告の以前の苦情により電話等による督促はなかった 。)。》を 前提とすると 、自 動貸付条項がないことをもって 、本件 失効条項が消費者の利益を一方的に害するものであると解することはできない 。」
自動貸付条項がない場合についても、 合理的理由があることを理由にその有効性を認めているが、 自動貸付条項がないことで、 失効までの期間が短くなることを考える必要がある。 当該裁判例では復活の不承諾のxxx違反も
争われたが、 特段自動貸付条項がないことに触れなかった。 しかし、 この点については、 復活裁量においても考慮すべきでないかと思われる。
14 xxxx「保険法(補訂版 )( 有斐閣, 1985 ) 3 14頁
15 xxx「生命保険契約の失効と復活」 xxxx追悼・保険法の現代的課 題288頁( 199 3年 )。
16 前掲注6 )・ x 5 4頁。
17 前掲注7 )・ xx2 43頁。
18 なお,失効に至る経緯としては,平成2 4年判例のxxxx裁判官が反対意見で述べられておられた多数意見の問題点は参考になると思われる。督 促通知の到達が遅くなった場合や,解約返戻金がほとんどなく自動貸付条 項が機能しなかった場合等については, 失効において契約者保護が十分で なかったということが言いうるから,これらの事情を,復活をみとめる認 めるべき事情として主張することはできると考える。