Contract
租税に関する情報の交換のための日本国政府と英領バージン諸島政府との間の協定
日本国政府及びグレートブリテン及び北アイルランド連合王国政府によって正当に授権された英領バージン諸島政府は、
租税に関する情報の交換のための協定を締結することを希望して、次のとおり協定した。
第一条 目的及び適用範囲
両締約者の権限のある当局は、この協定の対象となる租税に関する両締約者の法令の運用又は執行に関連する情報の交換を通じて支援を行う。そのような情報には、この協定の対象となる租税の決定、賦課及び徴収、租税債権の回収及び執行並びに租税事案の捜査及び訴追に関連する情報を含む。情報は、各締約者の法令に従うことを条件として、この協定に従い入手し、交換し、かつ、秘密として取り扱う。
第二条 管轄
被要請者は、その当局によって保有されておらず、かつ、その領域的管轄内にある者によって保有され、
又は管理されていない情報については、それを提供する義務を負わない。
第三条 対象となる租税
1 この協定は、一方の締約者のために課される全ての種類の租税について適用する。
2 両締約者の権限のある当局は、各締約者の租税に関する法令について行われた重要な改正を相互に通知する。
3 この協定は、一方の締約者の地方政府又は地方公共団体のために課される租税については、適用しない。
第xx xx
1 この協定の適用上、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、
(a)
「日本国」とは、地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されている全ての
領域(領海を含む。)及びその領域の外側に位置する区域であって、日本国が国際法に基づき主権的権
利を有し、かつ、日本国の租税に関する法令が施行されている全ての区域(海底及びその下を含む。)をいう。
(b)
「英領バージン諸島」とは、地理的意味で用いる場合には、二千七年バージン諸島憲法令(二千七年
法令第千六百七十八号)に規定するバージン諸島の領域をいう。
(c)
「国民」とは、次の者をいう。
(i)
日本国については、日本国の国籍を有する全ての個人及び日本国において施行されている法令に
よってその地位を与えられた全ての法人、組合又は団体
(ii)
英領バージン諸島については、二千七年バージン諸島憲法令に基づいて英領バージン諸島に属し、
又は移民旅券令(第xx十章)に基づいて英領バージン諸島の居住証明書を有する全ての者及び英領
バージン諸島において施行されている法令によってその地位を与えられた全ての法人、組合又は団体
(e) (d)
「締約者」とは、文脈により、日本国又は英領バージン諸島をいう。
「権限のある当局」とは、次の者をいう。
(i)
日本国については、財務大臣又は権限を与えられたその代理者
(ii)
英領バージン諸島については、財務次官又は財務次官が書面により指定する者若しくは当局
(f)
「者」には、個人、法人及び法人以外の団体を含む。
(g)
「法人」とは、法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有する団体として取り扱われる団体をい
う。
(h)
「株式公開法人」とは、その主たる種類の株式が公認の有価証券市場に上場されている法人をいう。
ただし、その上場された株式が一般に容易に購入され、又は販売される場合に限る。株式は、その購入
又は販売が限られた投資家の集団に黙示的にも明示的にも制限されていない場合には、一般に容易に購入され、又は販売されるものとする。
(i)
「主たる種類の株式」とは、法人の議決権及び価値の過半を占める一又は二以上の種類の株式をい
う。
(j)
「公認の有価証券市場」とは、次のものをいう。
(i)
日本国の金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)に基づき設立された有価証券市場
(ii)
両締約者の権限のある当局が公認の有価証券市場として合意するもの
(k)
「集団投資基金又は集団投資計画」とは、あらゆる集団投資の媒体(法的な形態のいかんを問わな
い。)をいう。「公開集団投資基金又は公開集団投資計画」とは、その持分証券、株式その他の持分が
一般に容易に購入され、販売され、又は償還される集団投資基金又は集団投資計画をいう。集団投資基
金又は集団投資計画の持分証券、株式その他の持分は、その購入、販売又は償還が限られた投資家の集団に黙示的にも明示的にも制限されていない場合には、一般に容易に購入され、販売され、又は償還されるものとする。
(o) (n) (m) (l)
「租税」とは、この協定が適用される租税をいう。
「要請者」とは、情報の提供を要請する締約者をいう。
「被要請者」とは、情報の提供を要請された締約者をいう。
「情報収集のための措置」とは、一方の締約者が要請された情報を入手し、かつ、提供することを可
能にするための法令及び行政上又は司法上の手続をいう。
(q) (p)
「情報」とは、事実、記述又は記録(形態のいかんを問わない。)をいう。
「犯則租税事案」とは、要請者の刑事法に基づいて訴追されるべき故意による行為に係る租税事案を
いう。
(r)
「刑事法」とは、租税に関する法令、刑法又はその他の法令のいずれに含まれるかを問わず、要請者
の法令の下において刑事法として特定される全ての刑事法をいう。
2 一方の締約者によるこの協定の適用に際しては、この協定において定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、当該一方の締約者の法令において当該用語がその適用の時点で有する意義を有するものとする。当該一方の締約者において適用される租税に関する法令における当該用語の意義は、当該一方の締約者の他の法令における当該用語の意義に優先するものとする。
第五条 要請に基づく情報の交換
(a)
1 被要請者の権限のある当局は、第一条に定める目的のため、要請者の書面による要請に応じて情報を
入手し、及び提供する。そのような情報は、次に掲げる情報を含む。
(i)
銀行その他の金融機関及び代理人として活動し、又は受託者の資格で活動する者(名義人及び信託
の受託者を含む。)が有する情報
(ii)
法人、組合、信託、財団その他の者の所有に関する情報(第二条の規定の範囲内で、所有の連鎖に
おける全ての者の所有に関する情報を含むものとし、信託については委託者、受託者及び受益者に関
する情報、財団については設立者、理事会の構成員及び受益者に関する情報を含む。)
(b)
(a)
に規定する情報は、調査の対象となる行為が被要請者内において行われたとした場合にその法令の
下において犯罪を構成するか否かを考慮することなく提供される。
2 被要請者は、その権限のある当局が保有する情報が情報提供の要請に応ずるために十分でない場合には、自己の課税目的のために必要でないときであっても、要請された情報を要請者に提供するために全ての関連する情報収集のための措置をとる。
3 要請者の権限のある当局から特に要請があった場合には、被要請者の権限のある当局は、記録の原本の写しに認証を付した形式で、この条の規定に基づく情報の提供を行う。
4 この協定は、両締約者に対し、過重な困難を生じさせることなしに株式公開法人又は公開集団投資基金若しくは公開集団投資計画の所有に関する情報を入手することができる場合を除くほか、当該情報を入手し、又は提供する義務を生じさせるものではない。
5 要請者の権限のある当局は、この協定に基づいて情報の提供を要請するに際しては、求める情報とその要請との関連性を示すため、被要請者の権限のある当局に対し、次に掲げる情報を提供しなければならない。
(d) (c) (b) (a)
要請の対象となる者を特定する事項
要請者の課税目的のために必要なものとして要請する情報の対象となる期間
要請する情報の性質及び要請者が希望する当該情報を受領する形式
要請する情報を必要とする課税目的及び当該情報が要請者の法令の運用又は執行に関連すると認める
理由
(e)
要請する情報を被要請者が保有しているか又は被要請者の領域的管轄内にある者が保有し、若しくは
管理していると認める合理的な根拠
(f)
要請する情報を保有し、又は管理していると認められる者の名称及び住所(判明している場合に限
る。)
(g)
次のことの記述
(i)
要請が要請者の法令及び行政上の慣行に従って行われていること。
(ii)
要請する情報が要請者の領域的管轄内にあったとしたならば、要請者の権限のある当局が要請者の
法令に基づいて、又は要請者の通常の行政上の慣行を通じて当該情報を入手することができること。
(iii)
要請がこの協定に従って行われていること。
(h)
要請する情報を入手するために要請者が自己の領域的管轄内において利用可能な全ての手段(過重な
困難を生じさせるものを除く。)をとった旨の記述
6 被要請者の権限のある当局は、できる限り速やかに要請された情報を要請者の権限ある当局に提供する。迅速な対応を確保するため、被要請者の権限のある当局は、次のことを行う。
(a)
要請者の権限のある当局に対し、要請の受領を書面によって確認すること及び当該要請に不備がある
場合には、要請者の権限のある当局に対し、当該要請の受領の日から六十日以内に当該不備を通知する
こと。
(b)
要請の受領の日から九十日以内に要請された情報を入手し、及び提供することができない場合(当該
情報を提供することについて障害がある場合又は当該情報を提供することを拒否する場合を含む。)に
は、要請者の権限のある当局に対してその旨を直ちに通知し、そのような入手及び提供が不可能である理由、当該障害の性質又はその拒否の理由を説明すること。
第六条 海外における租税に関する調査
1 被要請者の権限のある当局は、要請者の権限のある当局の要請があったときは、被要請者の法令に従
い、被要請者内における租税に関する調査の適当な部分に要請者の権限のある当局の代表者が立ち会うことを認めることができる。
2 租税に関する調査を行う被要請者の権限のある当局は、1に規定する要請に応ずる場合には、できる限り速やかに、要請者の権限のある当局に対し、当該調査の時間及び場所、当該調査を行う当局又は職員並びに当該調査を行うために被要請者が求める手続及び条件を通知する。租税に関する調査の実施についての全ての決定は、被要請者の法令に従い、当該調査を実施する被要請者が行う。
第七条 要請を拒否することができる場合
(b) (a)
1 被要請者の権限のある当局は、次の場合には、支援を拒否することができる。要請者の要請がこの協定に従って行われていない場合
要請する情報を入手するために要請者が自己の領域的管轄内において利用可能な全ての手段をとらな
かった場合(そのような手段をとることが過重な困難を生じさせる場合を除く。)
(c)
要請された情報を公開することが被要請者の公の秩序に反することとなる場合
2 被要請者は、要請された情報が要請者の領域的管轄内にあったとしても要請者の権限のある当局が要請
者の法令に基づいて、又は要請者の通常の行政上の慣行を通じて入手することができない場合には、当該情報を入手し、又は提供することを要求されない。
(a)
3 この協定は、一方の締約者に対し、営業上、事業上、産業上、商業上若しくは職業上の秘密又は取引の過程を明らかにするような情報を提供する義務を課するものではない。そのような情報には、弁護士その他の法律事務代理人がその職務に関してその依頼者との間で行う通信に関する情報であって、各締約者の法令に基づいて保護されるものを含む。この3の前段及び中段の規定にかかわらず、第五条1 に規定す
る情報は、同規定に規定する情報であることのみを理由として、そのような秘密又は取引の過程として取り扱われることはない。
4 情報提供の要請は、当該要請を行う契機となった租税債権が係争中であることを理由として、拒否されることはない。
5 被要請者は、要請者が要請者の租税に関する法令の規定又はこれに関連する要件であって、同様の状況にある要請者の国民との比較において被要請者の国民を差別するものを運用し、又は執行するために情報
の提供を要請する場合には、その要請を拒否することができる。
第八条 秘密
1 この協定に基づき両締約者の権限のある当局が提供し、及び受領した全ての情報は、秘密として取り扱う。
2 1に規定する情報は、第一条に定める目的(不服申立てについての決定を含む。)に関与する者又は当局(裁判所及び行政機関を含む。)であって、両締約者内にあるものに対してのみ開示するものとし、これらの者又は当局は、当該目的のためにのみ当該情報を使用する。当該情報は、当該目的のため、公開の法廷における審理又は司法上の決定において開示することができる。
3 1に規定する情報は、被要請者の権限のある当局の書面による明示の同意なしに、第一条に定める目的以外の目的のために使用することができない。
4 1に規定する情報は、非締約者内にある者又は当局に開示することができない。第九条 保護
この協定を実施するに当たり、被要請者の法令又は行政上の慣行によりその要請に係る情報を有する者に
対して保障されている権利及び保護は、引き続き適用される。被要請者は、実効的な情報の交換を不当に妨
げ、又は遅延させる方法でこのような権利及び保護を適用してはならない。第十条 費用
支援の提供において生じた費用の負担については、両締約者の権限のある当局の間で合意される。第十一条 相互協議手続
1 両締約者の権限のある当局は、この協定の実施又は解釈に関し困難又は疑義が生ずる場合には、その問題を合意によって解決するよう努める。
2 両締約者の権限のある当局は、1に規定する合意に加え、第五条及び第六条の規定の適用のための手続について相互に合意することができる。
3 両締約者の権限のある当局は、この条の規定に基づく合意に達するため、直接相互に通信することができる。
第十二条 見出し
この協定中の条の見出しは、引用上の便宜のためにのみ付されたものであって、この協定の解釈に影響を
及ぼすものではない。
第十三条 効力発生
両締約者の政府は、この協定の効力発生のために必要とされる内部手続を完了した旨を外交上の経路を通じて書面により相互に通知する。この協定は、双方の通知が受領された日のうちいずれか遅い方の日の後三十日目の日に効力を生ずるものとし、
(a)
犯則租税事案に関しては、対象となる犯則租税事案に係る課税年度にかかわらず、この協定が効力を
生ずる日から適用し、
(b)
第一条の規定の対象となる他の全ての事案に関しては、この協定が効力を生ずる日以後に開始する課
税年度(課税年度がない場合には、同日以後に課される租税)に関する要請についてのみ適用する。
第十四条 終了
1 この協定は、一方の締約者によって終了させられる時まで効力を有する。いずれの一方の締約者も、この協定の効力発生の日から三年の期間が満了した後に開始する各暦年の末日の六箇月前までに、他方の締約者に対し外交上の経路を通じて書面による終了の通告を行うことにより、この協定を終了させることが
できる。この場合には、この協定は、次のものについて適用されなくなる。
(b) (a)
源泉徴収される租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に租税を課される額
源泉徴収されない所得に対する租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に開
始する各課税年度の所得
(c)
その他の租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に課される租税
2 この協定が終了する場合においても、各締約者は、この協定に基づき当該締約者の権限のある当局が提
供し、及び受領した情報について、引き続き第八条の規定に拘束される。
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。
二千十四年六月十八日にロンドンで、ひとしくxxである日本語及び英語により本書二通を作成した。
日本国政府のために
x xx
英領バージン諸島政府のためにxxxxx・xxx