Contract
建設工事の下請契約における法令遵守のポイント
岩 手 県 県 土 整 備 部
適正な元請下請関係の構築や下請契約の当事者間での紛争防止のため、下請契約の締結、履行に際しては、建設業法や関係通達を整理した以下のポイントを遵守してください。
【元請負人】
・見積依頼は、工事内容、工期等の契約内容をできる限り具体的に提示して行わなければならない(建設業法20条3項)
見積依頼は①工事名称、②工事場所、③工事概要、④予定工期( 全体工期及び見積対象工事の双方)、⑤工
法、⑥支給品の有無、⑦施工条件・範囲、⑧支払条件、⑨現場説明・図渡しの日時・場所、⑩見積書の提出期限、
⑪制約条件等その他の必要な事項 が記載された書面で行ってください。
・下請負人が見積を行うに足りる期間を設けなければならない(建設業法20条3項)
①500万円に満たない工事は中1日以上、②500万円以上5000万円に満たない工事は中10日以上、③5000
万円以上の工事は中15日以上 です。
(注)②③については、やむを得ない事情があるときに限り、見積期間を5日以内に限り短縮できます。
・自己の取引上の地位を不当に利用し、通常必要と認められる原価に満たない金額で請負契約を締結してはならない(建設業法19条の3)
「自己の取引上の地位を不当に利用」するとは、注文者の提示した請負代金の額に従わない場合はその後の取引において不利益な取扱いがあり得ることを示唆し、請負人を脅かし、対等な立場における自由な意志決定を阻害することを言います。「通常必要と認められる原価」とは、施工しようとする工事に係る標準的な単価等に基づく直接工事費、現場管理費等の間接工事費及び一般管理費を合計したものです。なお、ここにいう一般管理費には利潤相当額は含みません。
・下請代金の支払いは、できる限り現金払いとすること(国指針)
できる限りの現金払を心がけ少なくとも労務費相当分は現金で支払うようにしてください。
・前払金を受けたときは、下請負人に対して、資材の購入、労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない(建設業法24条の3第2項)
元請負人が前払金の支払をうけたときは下請負人に対しても工事着手に必要な費用を前払金として支払うよう努
めるべきこととされています。
・下請工事に必要な資材を注文者が有償支給した場合は、正当な理由がある場合を除き、当該資材の代金を下請代金の支払期日前に下請負人に支払わせてはならない( 国指針)
有償支給した資材の対価は、当該下請代金の支払期日以降でなければ、下請負人に支払わせてはならないことと
されています。「正当な理由がある」とは、例えば、下請負人が有償支給された資材を他の工事に使用したり、あるいは転売してしまった場合等です。
・下請工事の完成を確認するための検査は、工事完成の通知を受けた日から20日以内に行い、かつ、検査後に、下請負人が引渡しを申し出たときは、直ちに工事目的物の引渡しを受けなければならない(建設業法24条の4)
下請負人からの「工事完成の通知」や「引渡しの申し出」は口頭でも足りますが、後日の争いを避けるため書面で行
うことが適切です。
・注文者から請負代金の出来高払又は竣工払を受けたときは、その支払の対象となった工事を施工した下請負人に対して、相当する下請代金を1ヶ月以内に支払わなければならない( 建設業法24条の3)
1月以内であれば何時でもよいというのではなく、できる限り短い期間内に支払わなければなりません。
・特定建設業者は、下請負人(特定建設業者又は資本金額が 4, 000 万円以上の法人を除く。)からの引渡し申出日から起算して50日以内に下請代金を支払わなければならない(建設業法24条の5)
特定建設業者が下請代金の全額の支払いを完了していない場合は、当該未払金額について、51日目からその支
払いをする日までの期間に対応する遅延利息(年 14.6%)を支払わなければならないことになります。
・特定建設業者は、下請代金の支払いを一般の金融機関による割引を受けることが困難と認められる手形により行ってはならない(建設業法24条の5)
手形期間は120日以内で、できる限り短い期間としてください。(120日以内で→国指針)
【元請負人・下請負人】
・下請契約の締結に当たっては、契約の内容を明示した適正な契約書を作成し、元請下請の双方が相互に交付しなければならない(建設業法19条)
適正な契約書とは、次の14項目が記載されたものを指します。なお、建設工事標準下請契約約款又はこれに準拠
した内容の契約書を使用することにより、適正な契約を締結することができます。
①工事内容 | ⑨注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め |
②請負代金の額 | |
③工事着手の時期及び工事完成の時期 | |
④前払金又は出来高払の時期及び方法 | ⑩注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引き渡しの時期 |
⑤当事者の申し出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め | |
⑪ 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法 | |
⑥天災その他の不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め | ⑫ 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容 |
⑦価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更 | ⑬各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金 |
⑧工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め | ⑭契約に関する紛争の解決方法 |
【下請負人】
・建設工事の見積書は「工事の種別」ごとに「経費の内訳」が明らかとなったものでなければならない(建設業法20条1項、2項)
工事の種別とは、切土、盛土、型枠工事、鉄筋工事のような「工種」及び本館、別館のような「目的物の別」を、経
費の内訳とは、労務費、材料費、共通仮設費、現場管理費、機械経費等の別を言います。
⇒ 元請負人と下請負人の関係に係る留意点の詳細については、国土交通省作成の「建設業法令遵守ガイドライン」をご参照ください。国土交通省のホームページでご覧いただけます。
【紛争の解決について】
○元請、下請のトラブルを専門家に相談したい場合、「建設業取引適正化センター」( 電話:00-0000-0000)にご相談ください。弁護士や土木・建築の学識経験者等が紛争解決やトラブル防止に向けたアドバイスを実施しています。
○建設工事の請負契約をめぐる紛争の簡易・迅速・妥当な解決を図る機関として、建設工事紛争審査会が
設置されています。詳細は所管の建設工事紛争審査会事務局へお問い合わせください。