「Facebook のアカウントを有する者であれば,誰でも他人の Facebook のアカウントに対しメッセー ジを送信することができる機能があるから,申立人は,自ら又は代理人,調査会社等を用いて,Facebook
知っておきたい民法の知識 資料 判例集,参考文献,参照条文
1 自治体契約が違法とされる場合(最判平25・3・28 集民243 号241 頁)
「地方公共団体の長がその代表者として一定の額の賃料を支払うことを約して不動産を賃借する契約 を締結すること及びその賃料の額を変更する契約を締結することは,当該不動産を賃借する目的やその必要性,契約の締結に至る経緯,契約の内容に影響を及ぼす社会的,経済的要因その他の諸般の事情を総合考慮した合理的な裁量に委ねられており,当該契約に定められた賃料の額が鑑定評価等において適正とされた賃料の額を超える場合であっても,上記のような諸般の事情を総合考慮した上でなお,地方公共団体の長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価されるときでなければ,当該契約に定められた賃料の額をもって直ちに当該契約の締結が地方自治法2条 14 項等に反し違法となるものではない」
2 支出命令が違法となる場合(盛岡地判平31・1・17 裁判所ウェブサイト)
「債務の履行として行う支出命令が違法となるのは,(1)普通地方公共団体が締結した支出負担行為 たる契約が私法上無効であるとき,(2)支出負担行為たる契約が違法に締結され,さらに,①普通地方公共団体が当該契約の取消権又は解除権を有しているとき,又は,②当該契約が著しく合理性を欠きそのためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存し,かつ,当該普通地方公共団体が当該契約の相手方に事実上の働きかけを真しに行えば相手方において当該契約の解消に応ずる蓋然性が大きかったというような,客観的にみて当該普通地方公共団体が当該契約を解消することができる特殊な事情があるときに限られる」
3 緊急性のない随意契約の工事契約は違法である(広島地判昭59・5・22 判例地方自治11 号31 頁)
「性質又は目的が競争入札に適しないもの)等挙げられているのみで3号(緊急の必要により競争入 札に付することができないとき。現行:施行令167 の2①(5))の摘示はなく,緊急の必要性は意識されていなかつたとも推測される。これらの事情に鑑みるとき,本件修理工事が競争入札に付することができないほどの緊急の必要があつたとは到底認めるに足りない。」
4 在監者の留守家族住所地の送達は適法とされた例(東京高判昭53・3・14 行裁例集29 巻3 号275 頁)
「在監者であつても,その家族が従前の住所に居住し,在監者との密接な連絡のもとに同人に代つて 経済活動を営む例が多々にあることは控訴人の自認するところであつて,このような場合には,毎年回帰的かつ大量に行なわれ,しかも,迅速性が要請される税務関係書類の送達に関する国税通則法12 条の適用上は,留守家族の住所地を在監者の生活関係の中心的場所すなわち住所とみてもさしつかえない」
* 送達の効力は「相手方が現実にこれを了知し,または相手方の了知し得べき状態におかれた時(最判昭29・8・24 刑集8 巻8 号1372 頁)」に生じる。
刑事施設収容者に対する送達を施設長とした趣旨(大阪高判平18・7・7 判タ1228 号344 頁)
「民訴法102 条3項は,刑事施設に収容されている者(以下「被収容者」という。)に対する送達 は刑事施設の長にすることを定めているが,その趣旨は,被収容者に対する通信監視の必要があることのほか,刑事施設収容前の本来の住居所に送達すると,送達書類が被収容者の手に渡るのにかえって日時がかかることが通常であるから,刑事施設の長に宛てて送達することが最も迅速確実であって妥当であるとするところにあると解され,それは刑事施設の長から本人に書類が確実に交付されることを当然の前提とする」
5 税における公示送達の要件(東京地判昭44・3・5 判時558 号45 頁)
「公示送達の送達方法(同法20 条の2第2項,第3項)は,(中略)いわゆる所要の調査とは,いか なる範囲・程度のものをいうかについては,直接法の明示するところではないけれども,当該地方団体
が管掌する受送達者の住民票関係の書面調査,租税賦課関係帳簿書類の調査,実地調査をなす等,当該
事情に応じて具体的にその必要性を判断すべきものと解する」
6 公示送達につきFacebook アカウントを調査要件とする(京都地判平31・2・5 判タ1464 号175 頁)
「Facebook のアカウントを有する者であれば,誰でも他人の Facebook のアカウントに対しメッセー ジを送信することができる機能があるから,申立人は,自ら又は代理人,調査会社等を用いて,Facebook
の上記メッセージ機能を用いて本件アカウントに対してメッセージを送信することができ,これにより
相手方Bに接触を試みることが可能である。」
* メールで連絡可能な場合,公示送達の要件を満たさない(札幌地判令1・5・14 判タ1461 号237 頁)
7 保佐人は公示送達できない(広島地判平23・8・31 税務訴訟資料(250 号~)261 号1174 順号)
「民事訴訟法102 条が訴訟無能力者である未xx者,xx被後見人に対する送達はその法定代理人と
ることになると解されるところ(同法31 条,32 条参照),税務行政庁がする処分の通知書である本件各
する旨定めていることからして,被保佐人については,同条は適用されず,送達は被保佐人に宛ててす
通知書1の送達について,民訴法上の上記取扱いと別異に解すべき根拠に乏しいことからすれば,(中略)本件各通知書1の送達は被保佐人に対してすべきであり,保佐人に対してこれを送達しても,当該送達 は効力を生じない」
8 法人が設立されていない状態による契約は個人契約である(東京高判昭50・8・21 判タ333 号204 頁)
「被控訴人が,控訴人の支配下にある営業の特定地域における形式的経営主体にすぎず,しかもいま
だ設立中の段階にあるA社を代表する控訴人との間で,従業員宿舎の賃貸借契約を締結したものと解す |
るのは,それが発起人の権限には本来属しない開業準備行為であることも考慮すると,被控訴人の意思 |
に著しく反すること明らかであつて相当ではなく,被控訴人は,A社グループの営業の実質的支配者で |
おる控訴人を賃借人として,同人との間で右賃貸借契約を締結したものと解する」
9 延滞税(延滞金)の性質(東京地判平21・11・13 租税関係行政・民事事件判決集(徴収関係)平成21年1 月~12 月順号21-43)
「国税を完納しない者に対して延滞税を課する趣旨は,納期限内に国税を完納した者とそうではない 者との権衡を図るとともに,納付を間接的に強制することにあると解することができ,延滞税は,国税
の納付義務の履行遅滞に対する損害賠償の性質を有するとともに,納付の遅延に対する制裁という性質
をも有するものということができる。そして,延滞税については,納付を間接的に強制するという観点
から,一般の金利水準よりも高めである年14.6%という課税割合が定められたものと解される。」
10 延滞金の発生を防ぐには督促を争うしかない(東京高判平19・3・13 訟務月報54 巻5 号1130 頁)
「厚生年金保険法の上記の規定からすれば,延滞金の発生を防ぐためには,厚生年金保険料に係る督
し,納付義務者に対する履行の催告行為にすぎない納入告知(会計法6条)について独自に抗告訴訟の
促を争うべきものと解される。厚生年金保険料の延滞金の納入告知は,滞納処分の要件となっていない
対象とすることは予定されていない。(中略)納入告知がされる前に,滞納処分の前提要件である厚生年
金保険料に係る督促がなされているのであるから,それに対して抗告訴訟などを提起すればよく,延滞
し,その指定期限までに納付されなかった場合に,延滞金の発生を妨げあるいはその額を減少させるこ
金の納入告知に対して抗告訴訟等を提起する必要性は認められない(厚生年金保険料に係る督促が確定
とは法令上予定されていないと考えられる。)。」
* 延滞税(金)の目的(最判平26・12・12 集民248 号165 頁)
「延滞税は納付の遅延に対する民事罰の性質を有し期限内に申告及び納付をした者との間の負担のxxを図るとともに期限内の納付を促すことを目的とする」
11 下水道使用料の不服の教示(東京地判平27・10・27 裁判所ウェブサイト)
「水道料金・下水道料金は一つの書面によって請求されているところ,その書面の裏面(甲5の3) には,『指定期限までにお支払がないときは,後日,xxx給水条例第 32 条に基づく給水の停止や民事訴訟法382 条に基づく支払督促の申立て等を行います。』とだけ記載されるなど,水道料金と下水道料金のいずれもが,民事訴訟手続によって支払を請求される性格のものであるかのように誤解されかねない書きぶりとなっていた。こういった被告側の教示懈怠や誤教示等が,被告側の責めに帰するべきものであることを考慮すると,かかる状況の下で,本件別訴を担当した弁護士が本件各通知は行政処分ではないと誤信したからといって,『やむをえない理由』がないということはできない。」
12 公営住宅の使用関係は信頼関係の法理が適用される(最判昭59・12・13 民集38 巻12 号1411 頁)
「公営住宅の使用関係については,公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法 に優先して適用されるが,法及び条例に特別の定めがない限り,原則として一般法である民法及び借家法の適用があり,その契約関係を規律するについては,信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。」
* 公営住宅の入居は行政処分という考え(下記ア)と行政処分でないとする考えがあり(下記イ,ウ),近年は民事的解決を図るべきとする考え方が多いようです。
ア 公営住宅の入居決定は行政処分である(大阪地判昭49・12・10 判時770 号76 頁)
「公営住宅の入居者決定後事業主体と入居決定者との間で設定される公営住宅利用の法律関係は 私法上の賃貸借関係であるけれども,右利用関係の発生原因である公営住宅法18 条に定める入居者の決定は事業主体の長が法令の規定に従って行なう行政行為とみることができ,行政事件訴訟法44条にいう『行政庁の処分』に該当する」
イ 公営住宅の入居取消しは賃貸借契約の解除と同じである(東京地判平25・11・22 D1-Law29031179)
「本件取消しは,被告と原告との間での,公営住宅である本件住宅の使用関係の設定後,住宅条 例の規定に該当するものとして,原告に対する本件住宅の使用許可を取り消すものであって,これは私法上の賃貸借契約の解除と同様に解すべきものということができる。」
ウ 入居決定は行政処分,抗告訴訟の対象ではない(徳島地判平7・1・27 判時1548 号57 頁)
判例タイムズ896 号98 頁
「公営住宅の利用関係が,非権力的な契約関係である以上,公営住宅の利用関係を発生させる行 為も非権力的行為というべきであろう。したがって,入居許可という行為が本来的に権力的な性格を有するということはできない。しかし,このように非権力的な法律関係の中に行政処分を介在させ,これを争う余地を認めるという立法政策もあり得るところであり,問題は,公営住宅法及び本件条例がこのような立法政策を採っているかという解釈問題に帰着することとなる。入居許可を行
判例評釈
「公営住宅の利用関係は基本的には対等な法主体間における契約上の権利義務関係にほかならな い の で あ っ て , 利 用 関 係 発 生 の 原 因 で あ る 入 居 の 許 否 関 係 も , 法 律 が 当 該 行 政 庁 の 優 越 的 な 意 思 の 発動として行わせ,私人に対してその結果を受忍すべき一般的拘束を課すという『公権力の行使』には本来該当しないものと解するのが相当である。(中略)入居拒否に対しては損害賠償を求める等民事訴訟による救済の可能性も存在するから,救済の途がとざされるわけではない。(中略),同法は,公共団体と住民との『契約』によって,公営住宅の利用関係は発生する旨規定する一方,公共団体が右契約を結ぶにあたっては,公営住宅設置の目的に照らして,その承諾の自由を規制したものとみることもできるのであって,原告の主張はこれを採用することができない。抗告訴訟が行政庁の行為に公定力がある場合にそれを消滅させるための特別な訴訟制度であることにかんがみれば,本件公営住宅への入居手続は抗告訴訟の対象とならない」
政処分と捉えた場合には違法に入居申込みを拒絶された場合の直接的救済の道が開かれ,または入 居許可に関する事業主体の判断の適正化が担保される余地が広がるというメリットが考えられよう。逆に,行政処分性を認めると出訴期間の制限(行政事件訴訟法14 条)や仮処分排除(同法44条)等が働くことを認めることによって,かえって不利益が生じないかという問題も生じようし,本来的には行政庁の内部的行為と思われるような行為に行政処分性を認めることとなるわけであるから,法律上相当の根拠が必要であるといえよう。このように考えてくると,入居許可に行政処分性を認めるためには法律上明確な根拠が必要であるというべきであろうし,入居許可が行政処分であることを前提として,利益調整のための規定が整備されているかどうかといった点についても,検討する必要があるものと思われる。入居許可の処分性の有無が正面から問題となり,これを肯定した裁判例としては,処分について仮処分の排除を定める行政事件訴訟法 44 条の通用の有無が争点となった大阪地決昭49・12・10 判時770 号76 頁があるが,本判決は,右に述べたように入居の許可・不許可の決定に公権力性がないこと,公営住宅法や本件条例に不服申立手続が明定されていないことを検討した上で入居許可・不許可決定の処分性を否定したものであり,実務上参考に
なるものとして紹介した。」
13 援用により債権は消滅する(最判昭61・3・17 民集40 巻2 号420 頁)
「民法 167 条1項は『債権ハ 10 年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス』と規定しているが,他方,同法 145 条及び 146 条は,時効による権利消滅の効果は当事者の意思をも顧慮して生じさせることとしてい ることが明らかであるから,時効による債権消滅の効果は,時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく,時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずる」
14 時効完成を知らない場合の承認の効力(最判昭41・4・20 民集20 巻4 号702 頁)
「債務者が,自己の負担する債務について時効が完成したのちに,債権者に対し債務の承認をした以 上,時効完成の事実を知らなかつたときでも,爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されないものと解するのが相当である。けだし,時効の完成後,債務者が債務の承認をすることは,時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり,相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから,その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが,xxxに照らし,相当であるからである。また,かく解しても,永続した社会秩序の維持を目的とする時効制度の存在理由に反するものでもない。」
15 時効完成後の債務承認における時効の進行(最判昭45・5・21 民集24 巻5 号393 頁)
「債務者が消滅時効の完成後に債権者に対し当該債務を承認した場合には,時効完成の事実を知らな かつたときでも,その後その時効の援用をすることが許されないことは,当裁判所の判例の示すところであるけれども(最高裁判所昭和 37 年(オ)第 1316 号同 41 年 4 月 20 日大法廷判決,民集 20 巻 4 号 702 頁参照),右は,すでに経過した時効期間について消滅時効を援用しえないというに止まり,その承認以後再び時効期間の進行することをも否定するものではない。けだし,民法 157 条が時効中断後にもあらたに時効の進行することを規定し,さらに同法 174 条ノ2が判決確定後もあらたに時効が進行することを規定していることと対比して考えれば,時効完成後であるからといつて債務の承認後は再び時効が進行しないと解することは,彼此権衡を失する」
16 税の第三者納付と民法の第三者弁済の違い,徴収猶予の準用(福岡高裁那覇支部判平 23・7・7 判タ
1376 号263 頁)
「国税に係る準用の立法例としては,『国税徴収の例による』とするものと『国税滞納処分の例による』とがあるところ,その趣旨にかんがみると,前者においては国税の徴収(賦課を含む徴収金の収受一般) に関する規定のうち国税固有のもの(たとえば附帯税に関する国税通則法 60 条ないし 69 条)を除くすべてが準用され,後者においては国税の徴収(賦課を含む徴収金の収受一般)に関する規定のうち徴収
金の収受に直接の関係を有するものに限定して準用され,納付義務の拡張を伴うもの(たとえば第二次納税義務に関する国税徴収法32 条ないし41 条)は準用されないものと解される。(中略)民法において第三者弁済の可否を債務者の意思に係らしめる趣旨は恩義を潔しとしない債務者の意思の尊重とより苛酷な求償権の行使のおそれの回避にあると解されるところ,国税及び地方税が法令に従って定型的に大量かつ反復的に生じかつこれらについては画一的な取扱いを要求されるという特殊性に鑑み,その徴収の確保を第三者による納付によっても達成するという目的のために,上記の立法がされたものと解される(中略)『地方税の滞納処分の例により処分することができる』(地方自治法 231 条の3 の 3 項)ことにより,『法律に定める使用料』についても徴収の猶予(地方税法15 条ないし15 条の9)をすることができると解されるところ,徴収の猶予は所定の担保(物的担保及び人的担保の双方)を徴することが要件となっているので(同法16 条1 項。同部分も性質上『地方税の滞納処分の例』による準用範囲に含まれる),港湾施設使用料の徴収の猶予に当たり抵当権及び保証人を徴することも法制度上可能である。」
17 過誤納金であっても滞納分があれば充当すべきである(最判令3・6・22 民集75 巻7 号3142 頁)
「複数の地方税を差押えに係る地方税とする滞納処分において,当該差押えに係る地方税に配当され
た金銭は,当該複数の地方税のいずれかに滞納分が存在する限り,法律上の原因を欠いて徴収されたも |
のとなるのではなく,当該滞納分に充当されるべきものである。滞納処分制度が地方税等の滞納状態の |
解消を目的とするものであることに照らせば,このことは,上記のように当初の充当が効力を有しない |
こととなった配当金についても同様に妥当し,当該配当金は,その配当時において差押えに係る地方税 |
のうちに他に滞納分が存在する場合には,これに充当されるべきものである。仮に,当該配当金が直ち |
に法律上の原因を欠いて徴収された過納金に当たるものとして還付されるとすれば,その配当時におい |
て当該差押えに係る地方税に滞納分が存在したにもかかわらず,その滞納状態を解消する効果が生じず, 当該滞納状態を基礎とする延滞金が生ずることにもなって,滞納処分制度の上記目的に反するものといわざるを得ない。」
* 「滞納処分制度が地方税等の滞納状態の解消を目的とするものであることに照らせば,このこと は,(中略)当初の充当が効力を有しないこととなった配当金についても同様に妥当し,当該配当金は,その配当時において差押えに係る地方税のうちに他に滞納分が存在する場合には,これに充当されるべきものであるとした。(中略)延滞金の利率は還付加算金の利率よりも原則として年7.3%も高いため(同法321 条の2 第2 項,附則3 条の2),当該配当金がそのまま過納金として還付されて他の滞納分に充当されないとすると,納税者は,当初から瑕疵のない賦課決定に基づく徴収がされた場合と比べて,この還付加算金と延滞金との差に相当する負担を強いられる結果となる。本判決は,このような結果は容認し得ないものと解したものと考えられる(判例タイムズ1490号71 頁)。」
18 充当は行政処分として位置付けられる(最判平5・10・8 集民170 号1 頁)
「国税通則法57 条による充当は,行政庁である税務署xxが所定の場合に一方的に行うべきものとされ(同条1項),その結果,充当された還付金等に相当する額の国税の納付があったものとみなされることになるものであり(同条2項),また,税務署xxは,右充当をしたときは,その旨を相手方に通知するものとされている(同条3項)。このような実定法規の定めからすると,右充当は,公権力行使の主体である税務署xxが一方的に行う行為であって,それによって国民の法律上の地位に直接影響を及ぼすものというべきであり,同法75 条1項にいう『国税に関する法律に基づく処分』に当たると解するのが相当である(なお,地方税法19 条9号,同法施行規則1条の7第4号参照)。」
会議時のメモが契約とみなされるか争われた例(東京高判平12・4・19 判時1745 号96 頁)
「本件メモの記載内容は,ライセンス契約における基本的な事項を示すものであるということができ
るとしても,それのみをもって契約により生ずる当事者間の権利義務関係を確定するに足りるものとい
19
うことができないことは明らかであり,そしてそれを確定するに必要な事項については更に協議をした
上で契約書を作成することを予定していたものである以上,そこにその時点において了解に達した事項
が記載されているからといって,その事項のみについて直ちに契約としての効力を発生させる意思をx x及び被告らにおいて有していたものと推認することはできないというべきである。もし,右のような体裁及び内容の本件メモに当事者を拘束する契約としての効力を持たせることを署名当事者が意図したのであれば,その旨を特に明記することこそ自然である」
20 不履行の事由が売買契約上付随的であっても契約目的が達成できないときは催告解除できる(最判昭
43・2・23 民集22 巻2 号281 頁)
「売買契約においては,所有権移転登記手続は代金完済と同時にすること,それまでは買主(上告人) は契約の目的物である土地の上に建物その他の工作物を築造しないことという特別の約款がつけられていたことは,原審が適法に確定した事実である。ところで,右特別の約款が外見上は売買契約の付随的な約款とされていることは右確定事実から明らかであり,したがつて,売買契約締結の目的には必要不可欠なものではないが,売主(被上告人)にとつては代金の完全な支払の確保のために重要な意義をもつものであり,買主(上告人)もこの趣旨のもとにこの点につき合意したものであることは原判決(その引用する第xx判決を含む。)の判文からうかがわれる。そうとすれば,右特別の約款の不履行は契約締結の目的の達成に重大な影響を与えるものであるから,このような約款の債務は売買契約の要素たる債務にはいり,これが不履行を理由として売主は売買契約を解除することができると解する」
21 検収終了により瑕疵はないとする主張は認められない(東京高判昭61・5・28 判時1194 号82 頁)
「本件機械は,控訴人方工場に搬入され,組立のうえ据付を了したが,その試運転において,平行度, 支柱の傾き具合等の精度不良のため,遂に良好な製品を製造する機能を発揮するに至らず,右のような状態にあることについて控訴人の了解も得られなかったのであるから,未だ完成しておらず,本件契約に定める検収引渡しを完了していないものと認めるのが相当である。」
22 公営住宅法27 条は民法612 条に優先する(大阪地判昭34・3・14 判タ91 号65 頁)
「公営住宅法第21 条(現行27 条)第2項は,公営住宅の転貸及び入居の権利の譲渡を原則として禁 止し,たゞ事業主体の長の承認を得た場合に,例外として一部転貸が許されているにすぎない。そして公営住宅法が入居者資格を法定し,公募により入居者を定めることをxx的なたてまえとしていることを考え合わせると,法は,公営住宅の公益性から,前記のような譲渡及び全部転貸を絶対に禁止する趣旨であり,(公営住宅使用関係は民法上の賃貸借関係ではあるが,賃借権の譲渡及び転貸に関する民法第 612 条第1項の規定は,これに対する特別法たる公営住宅法第21 条第2項によつてその適用が排除されている),事業主体の長はこれに承認を与えることは許されず,かりに承認が与えられても無効であると解さなければならない。」
23 行政財産目的外利用の取消しは特別の事情により損失補償を要する(最判昭49・2・5 民集28 巻1 号
1 頁)
「行政財産に右の必要を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは,ひつきよう使 用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから,右使用権者は,行政財産に右の必要を生じたときは,原則として,地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであつて,その例外は,使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払をしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか,使用許可に際し別段の定めがされている等により,行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られる」
24 警備保証契約の性質(名古屋地判昭50・4・22 判時794 号73 頁)
「本件警備契約は契約書,警備計画書および協定事項に定められた方法を基準として被告に警備事務
をしてもらう点で準委任と同一性質を有するが,本件警備契約が有償で事故の発生の防止を目的として いる点で委任とも断定できない。更に本件警備契約は,事故の発生を防止する警備事務である点において労務を供すること自体を目的とする雇傭とも異り,本件警備料は1ヶ月金 17 万5000 円であるが,これは単に1人の警備員についての費用ではなく,被告の統制室,予備員,交替要員等の人的物的設備一切についてのものであるから,通常のxxの賃金と比較すべきものではないからそれをもって本件警備契約を雇傭契約と解すべきではない。従って本件警備契約は民法典に規定する労務供給契約の典型である請負,委任,雇傭のいずれにも属しない無名契約である労務供給の有償契約であって,有償契約の法理の下に解決すべきである。」
25 NHK集金業務は労働契約でなく委任と請負の混合契約(東京高判平15・8・27 判時1859 号154 頁)
「本件委託契約(NHK集金業務)においては,(中略)労働時間,就業場所,就業方法等が定められ ている労働契約とはおよそ異質であること,報酬は事務費の名目で支払われているが,その算出方法は要するに出来高払方式であって,受託業務の対価とみるのが相当であって,一定時間の労務提供の対価である賃金とは質的に異なっており,これを反映して報酬の税法上の区分も事業所得とされており,受託者らはそれに従い,経費控除をした上で事業所得として確定申告をしていること等契約の重要かつ本質的部分にわたって労働契約とはおよそ相入れない異質の諸事情が多々認められるのである。なお,業務用備品の返還義務などは契約の性質を左右するような本質的な要素ではない。(中略)本件委託契約について控訴人と被控訴人との間に使用従属関係を認めることは困難であるというべきであり,むしろ上記認定によると,強いて本件委託契約の法的性質をいえば,委任と請負の性格を併せ持つ混合契約としての性格を有するものと理解するのが実態に即した合理的な判断というべきである。」
* LPガスボンベ配送員につき労働者性を認めた事例(東京地判平25・10・24 判タ1419 号274 頁)
「労働者とは,使用者に使用されて労働し,賃金を支払われる者であり(労働契約法2条1項, 労基法9条),労働者性の有無は使用従属性の有無によって判断される。使用従属性の判断にあたっては,(1)指揮監督下の労働といえるか否かについて,仕事の依頼,業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無,業務遂行上の指揮監督の有無,勤務場所・勤務時間に関する拘束性の有無,代替性の有無等に照らして判断され,(2)報酬の労務対償性について,報酬が一定時間労務を提供していることに対する対価といえる場合には,使用従属性を補強するものとされ,(1),(2)の観点のみでは判断できない場合に,(3)事業者性の有無(機械・器具の負担関係,報酬の額,損害に対する責任等),専属性の程度等が勘案される。」
名古屋地判平14・5・29 労判835 号67 頁も同様
「形式的には,反訴被告の給与体系はその時々の最低保障額による固定給払のように見えるが,
その実質は,反訴被告の運賃収入の額に応じて給与の支払を受けているものであり,これは労基法
27 条にいう『出来高払制その他の請負制で使用する労働者』に該当するものというべきである。」
26 財務規則を遵守しない契約を違法とした例(水戸地判平3・11・12 判時1449 号86 頁)
「財務規則は地方自治法15 条1項に従って地方公共団体の長が定める内部規律ではあるが,地方公 共団体の長といえども当然これを遵守する義務があるうえ,財務規則119 条のような遅延損害金徴収規定は『政府契約の支払遅延防止等に関する法律』4 条3 号(同法14 条で地方公共団体に準用)などの規定を受けて設けられているものであるから,地方公共団体の長としては,その契約締結にあたり,事情のいかんにかかわらず,右規則に従った条項を合意する義務があるものと解すべきところ,右認定のとおり本件契約においては右規則に従った合意がされていないのであるから,これが違法であることは明らかである。」
27 入札段階で追加工事を認識していなかった場合は入札条件に追加工事を含めてなくとも違法でない
(大阪地判平30・5・24 判例自治449 号21 頁)
「契約の締結後にその内容を変更する必要があることを認識している場合には,本来その変更すべき
契約内容が確定した後に,新たな条件の下で入札に付すべきものであって,変更内容が当初から予想し 得る軽微な範囲にとどまる場合,変更内容が確定する前に早期に契約を締結して履行に着手する必要がある場合や履行に着手した後でなければ変更内容が確定しない場合に変更の可能性を示した上で入札に付すなど特段の事情がない限り,当該契約について不確定条件で入札を実施することは許されないものと解する」
28 約定に反した工事は安全性を備えていても瑕疵がある(最判平15・10・10 集民211 号13 頁)
「本件請負契約においては,上告人及び被上告人間で,本件建物の耐震性を高め,耐震性の面でより 安全性の高い建物にするため,xxの主柱につき断面の寸法300mm×300mm の鉄骨を使用することが,特に約定され,これが契約の重要な内容になっていたものというべきである。そうすると,この約定に違反して,同250mm×250mm の鉄骨を使用して施工されたxxの主柱の工事には,瑕疵があるものというべきである。」
* 「請負人に瑕疵担保責任が生ずるのは,『仕事ノ目的物ニ瑕疵アルトキ』(民法634 条1項)であ るが,この目的物に瑕疵があるとは,完成された仕事が契約で定めた内容どおりでなく,使用価値 又 は 交 換 価値を減少させる欠点があるか,又は当事者があらかじめ定めた性質を欠くなど不完全な点を有することであるとされており(xxx・債権各論中巻(2)631 頁),これが通説といえる。なお,請負契約の仕事の目的物の瑕疵をこのように考えると,請負人の債務不履行責任との差異は,瑕疵担保責任が無過失責任であることにあるといえよう。以上のような立場からすると,(当事者間であらかじめ了解されていた範囲内の変更といえるような,現場の状況に応じて若干の変更がされたなどといえる場合は別として,)建物の請負において設計図に反する工事が行われた場合など,注文者と請負人間であらかじめ定められた内容に反する工事が行われた場合には,瑕疵ある工事であるということになると解される。ところで,建物建築の請負契約の内容については,一般に,設計図だけで工事内容のすべてが明らかにならない場合が多く,そのような場合には,建築基準法に定める最低基準に達しないような建築請負契約を締結したと認められるような特別の事情がない限り,同基準に適合しない建物は瑕疵ある建物に当たると解されている。このように,建築基準法に定める基準の適合の有無が瑕疵の有無の判定基準とされることがあるが,これは,請負契約当事者の合理的意思として,建築物の安全性等に関する点については,少なくとも同基準に適合する建物を建築することが契約の内容になっていたと解されるということであって,当事者が,より安全性の高い建物にするなどのために,特に工事内容について合意をしていた場合には,その合意に反した工事による建物は,たとえ建築基準法の基準を満たし,一般的な安全性を備えていたとしても,瑕疵がある(判例タイムズ1138 号74 頁)」
29 設計図どおりの施工でも契約趣旨に適合しない道路に気付きながら何ら措置を採らなかったときは瑕
疵がある(東京高判昭52・9・20 判タ366 号239 頁)
「請負契約において,注文者は,双務契約の通則に従い,請負人が修補義務を履行するまで請負金の 支払を拒む同時履行抗弁権を有するものであり,本件において,被控訴人が本件請負工事の瑕疵を修補するまでは控訴人に請負代金の支払義務がない旨主張する控訴人は,右主張を提出することにより,右の同時履行抗弁権を行使する意思を表示したものと解されるのであるが,このような場合,注文者において請負人が負担するに至つた修補義務の内容を工事の規模,構造等に関する仕様の詳細に亘つて具体的に特定して主張立証すべきことは事柄の性質上当然であり,本件に則していえば,単に抽象的に自動車の乗入れが可能なように修補すべきであるという程度では足りないというべきである(修補義務の内容を上記のように具体的に特定することなしに,裁判所が判決主文において修補義務の履行と引き換えに請負代金を支払うべきことを命じた場合,請負代金債権の強制執行開始の段階においてはたして修補義務か履行されたか否かについての紛議を生ずるおそれがあり,請負契約上の紛争の迅速確実な解決の要請に添わない結果となる。この意味においても,修補義務の内容の具体的特定の必要があるということができる。)。」
30 瑕疵の存否の判断基準(最判平22・6・1 民集64 巻4 号953 頁)
「売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかにつ いては,売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべきところ,(中略)本件売買契約締結当時の取引観念上,それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されていなかったふっ素について,本件売買契約の当事者間において,それが人の健康を損なう限度を超えて本件土地の土壌に含まれていないことが予定されていたものとみることはできず,本件土地の土壌に溶出量基準値及び含有量基準値のいずれをも超えるふっ素が含まれていたとしても,そのことは,民法570 条にいう瑕疵には当たらない」
* 「本件と同様の争点があった下級審裁判例として,仙台地判平14・6・4 最高裁HP がある(仙台市の住民である原告らが,医薬品卸会社である被告に対し,仙台市立病院が購入した薬品に医療上の有効性がなかったとして,仙台市に代位して,瑕疵担保による損害賠償請求等をした住民訴訟。上記薬品は,売買契約当時,厚生大臣による製造承認を受けていたが,その後,中央薬事審議会により医薬上の有用性が確認されないとの再評価の答申がされた。)。同判決も,本判決と同様の観点から,瑕疵の主張を排斥している(判例タイムズ1326 号106 頁)。」
31 システムの不具合が瑕疵に当たるとされた例(東京地判平16・12・22 判時1905 号94 頁)
「本件規模のシステムの場合に通常要求される一括在庫引当処理の一般的仕様は,数十秒からせいぜ い1,2分程度というのであり,被告の主張によっても,簡単な修正により,30 秒程度に修正できたというのであって,これらに照らせば,本件程度のシステムにおける一括在庫引当処理に要する時間は,せいぜい数分程度が一般的に要求される内容であったということができ,テストデータ 300 件ですら処理時間に44 分も要するようなシステムは,およそ本件契約の内容に適合しないものというほかない。(中略)同程度のシステムに通常要求される内容に適合せず,他方で,前記したような処理時間を許容するような合意を認めることもできないのであるから,瑕疵に該当する」
* 「コンピュータのシステム開発においては,その開発中においては注文者からの情報の提供を要することがあり,また,開発が一定の程度進行しても,外見からは直ちに不具合が明らかにならず,注文者によるシステムのテストをもって初めてその不具合を特定しうる場合があり得るものであって,通常の請負契約と比べ,注文者の果たすべき役割をより広くとらえることが考えられる(判例タイムズ1194 号171 頁)。」
32 システム開発の完成が問われた例(東京地判平14・4・22 判タ1127 号161 頁)
「民法632 条及び633 条は,(中略)仕事の結果が不完全な場合のうち仕事の目的物に瑕疵がある場合 と仕事が完成していない場合とを区別し,仕事の目的物に瑕疵が存在しても,それが隠れたものであると顕れたものであるとを問わず,そのために仕事が完成していないものとはしない趣旨であると解される。よって,請負人が仕事を完成させたか否かについては,仕事が当初の請負契約で予定していた最後の工程まで終えているか否かを基準として判断すべきであり,注文者は,請負人が仕事の最後の工程まで終え目的物を引き渡したときには,単に,仕事の目的物に瑕疵があるというだけの理由で請負代金の支払を拒むことはできない」
* 「コンピュータの発達に伴い,コンピュータソフトの制作を巡り,その瑕疵を巡る事件が増加し,実務xxx処理に苦慮している現状にある(コンピュータの瑕疵を巡る紛争は,通常民事訴訟事件の中で,解決困難な複雑訴訟の典型例といっても過言ではない)。これまで,コンピュータプログラム,ソフトの制作を巡りその瑕疵が問題となった事案としては,①東京地判平2・3・30 判時1372 号101頁(コンピュータプログラムの改造・ソフト作成につき債務不履行責任を肯定),②東京地判平3・2・ 22 本誌770 号218 頁(コンピュータプログラムが完成していないとして代金請求を否定),③東京地判平6・1・28 判時1515 号101 頁(コンピュータシステムに欠陥はないとして損害賠償請求を否定),
④東京地判平 9・2・18 本誌 964 号 172 頁(コンピュータプログラムに欠陥はないとして損害賠償請
求を否定),⑤広島地判平 11・10・27 判時 1699 号 101 頁(基幹業務システムコンピュータのソフト制作の欠陥を原因とする損害賠償を肯定)などがあるが,未だ事例としてはそれ程多くなく,本判決は,今後のこの種事件の処理にとって有益な指針を示すものと思われる(判例タイムズ 1127 号 161 頁)」
33 入札の場合の契約成立時期(最判昭35・5・24 民集14 巻7 号1154 頁)
「国が当事者となり,売買等の契約を競争入札の方法によつて締結する場合に落札者があつたときは, 国および落札者は,互に相手方に対し契約を結ぶ義務を負うにxxxのであり,この段階では予約が成立したにとどまり本契約はいまだ成立せず,本契約は,契約書の作成によりはじめて成立すると解すべきである。」
* 入札を申込,契約書作成を承諾と解する見解はとり得ない(参考判例評釈,判例タイムズ106 号 33 頁)
「公告を申込みの誘引,入札を申込,契約書作成を承諾と解する見解も考えられる。しかし,そ のように考えると公告後の撤回変更が可能となり(民法521 条参照,筆者注:現行523 条),法の安定を害するし,入札に対しては国が承諾するかどうかについて裁量の余地が残され,その間に不正を誘発するおそれがあるので,この見解は実際上採用し難い」
34 システム開発契約の成立時期(名古屋地判平16・1・28 裁判所ウェブサイト)
「本件総合システムの導入に際して締結されるような,業務用コンピューターソフトの作成やカスタ マイズを目的とする請負契約は,業者とユーザー間の仕様確認等の交渉を経て,業者から仕様書及び見積書などが提示され,これをユーザーが承認して発注することにより相互の債権債務の内容が確定したところで成立するに至るのが通常であると考えられる。(中略)原告は,本件提案書等の提出をもって,被告らによる契約の申込みである旨主張するが,本件提案書は,上述のとおり,被告らにおいて原告の業務内容等を十分に検討した上で作成されたものとは認められない上,その内容は必ずしも具体的でなく,原告らの要望に即した形で被告ら及びその提供するシステム等の概要及び長所を紹介したものとの域を出ないともいい得る。また,原告は,被告に対する本件採用通知の送付をもって,契約の申込みに対する承諾である旨主張するが,上記のとおり,本件提案書の内容は必ずしも具体的ではないのであるから,何について承諾をしたといえるのかが明確でなく,むしろ,本件採用通知の送付は,今後本件総合システムの導入を委託する業者として交渉していく相手方を被告に決定したことを意味するに止まるものと解するのが相当である。以上によると,本件においては,原告と被告との間で,個別のシステム又はプログラム等につき,仕様確認等の交渉を経て,カスタマイズの有無,カスタマイズの範囲及び費用等につき合意がされた時点で,契約として成立することが予定されていたものというべきである。」
* 「コンピューターソフトの制作等を目的とする契約関係においては,制作すべきソフト等の具体的
内容が交渉初期の段階で明確にされておらず,その後数次の打合せを経て,確定されることが少なくないようである。本件は,契約の成否が主たる争点となったものであるが,上記の契約関係における債権債務の内容(仕事の完成の有無,瑕疵の存否)や,打合せ等に協力する義務違反の有無などといった点が争われる事例もあるようである。参考となる裁判例として,東京地判平9・9・24 判タ967 号
168 頁,広島地判平11・10・27 判時1699 号101 頁,那覇地判平12・5・10 判タ1094 号177 頁,東京地判平14・4・22 判タ1127 号161 頁などがある(判例タイムズ1194 号198 頁)。」
35 違約金の範囲としての弁護士費用の合理性(東京高判平26・4・16 判時2226 号26 頁)
「管理費等の徴収について,組合員が期日までに納付すべき金額を納付しない場合に,管理組合が, 未払金額について,『違約金としての弁護士費用』を加算して,その組合員に請求することができると定めているところ,本件管理規約もこれに依拠するものである。そして,違約金とは,一般に契約を締結する場合において,契約に違反したときに,債務者が一定の金員を債権者に支払う旨を約束し,それにより支払われるものである。債務不履行に基づく損害賠償請求をする際の弁護士費用については,その性
質上,相手方に請求できないと解されるから,管理組合が区分所有者に対し,滞納管理費等を訴訟上請 求し,それが認められた場合であっても,管理組合にとって,所要の弁護士費用や手続費用が持ち出しになってしまう事態が生じ得る。しかし,それは区分所有者は当然に負担すべき管理費等の支払義務を怠っているのに対し,管理組合は,その当然の義務の履行を求めているにすぎないことを考えると,xxの観点からは問題である。そこで,本件管理規約36 条3項により,本件のような場合について,弁護士費用を違約金として請求することができるように定めているのである。このような定めは合理的なものであり,違約金の性格は違約罰(制裁金)と解する」
* 「先行裁判例としては,①本判決と同じく,弁護士費用は実費相当額としたものとして,東京地判平18・5・17(判例秘書),②原判決と同じく,弁護士費用は裁判所の認定する相当額としたものとして,東京地判平 19・7・31(判例秘書)がみられる。学説では,標準管理規約にいう違約金としての弁護士費用の性格は,規定の定め方から,債務不履行による損害賠償(遅延損害金)とは別途に請求することのできる制裁金と解する見解(xxxxx=xxxx編『コンメンタールマンション標準管理規約』212 頁)がみられるが,本判決と同旨である(判例タイムズ1417 号107 頁)。」
36 用語の意義(大阪高判昭37・12・10 判時327 号46 頁)
「『すみやかに』という文言は(銃砲刀剣類等所持取締法)第17 条第1項においてのみ用いられてい るものではなく,広く各法令において慣用されている法令用語であつて,そこには立法上の技術に基く定着した一定の約束と慣例が認められるのである。即ち『すみやかに』は,『直ちに』『「遅滞なく』という用語とともに時間的即時性を表わすものとして用いられるが,これらは区別して用いられており,その即時性は,最も強いものが『直ちに』であり,ついで『すみやかに』,さらに『遅滞なく』の順に弱まつており,『遅滞なく』は正当な又は合理的な理由による遅滞は許容されるものと解されている。(中略)従つて原判決が本法第17 条第1項は,同条項における『すみやかに』という用語が『何日以内』というような数量的観念とは異り主観性の強いもので,客観性が稀薄であり不明確であるから,同条違反に対する本法第33 条の罰則は罪刑法定主義ひいては憲法第31 条に違反して全面的に無効であり,その適用は拒否せらるべきであるとしているのは,法律解釈における方法を誤つたものといわねばならない。」
* あいまいな用語の使用は罪刑法定主義に反するとしました。契約書の文言も争いを避けるには「〇
日以内」とすべきです。
37 秘密保持の内容(大阪地判平16・5・20 裁判所ウェブサイト)
「本件基本契約は,原告が,原告製の昇降機を購入したすべての顧客方(現場)において,自ら昇降 機を据え付け,あるいはその後の保守点検等を行うことが困難であるため,協力業者にこれを委託する旨の契約であって,協力業者は,原告と当該顧客との間の契約の履行のために,本件基本契約に基づき,保守点検等請負業務を行うにすぎない。このような本件基本契約の性質からすれば,本件基本契約に明示に規定されていなくとも,協力業者は,契約有効期間中は,原告の顧客に対し原告との保守点検等請負契約を解消し,協力業者と直接に契約を締結するよう勧誘してはならない,とりわけ,(中略)保守点検等請負業務を実際行っている顧客先に対して,保守点検額を低額にする旨示した上で勧誘をしてはならないという,xxx上の義務があるというべきである。」
* エレベーターの保守点検業務につき,秘密保持義務の内容が問われました。
38 退職後の秘密の特定(東京地判平20・11・26 判時2040 号126 頁)
「従業員が退職した後においては,その職業選択の自由が保障されるべきであるから,契約上の秘密 保持義務の範囲については,その義務を課すのが合理的であるといえる内容に限定して解釈するのが相当であるところ,本件各秘密合意の内容は,(中略)秘密保持の対象となる本件機密事項等についての具体的な定義はなく,その例示すら挙げられておらず,また,本件各秘密保持合意の内容が記載された『誓約書』と題する書面及び『秘密保持に関する誓約書』と題する書面にも,本件機密事項等についての定義,例示は一切記載されていないことが認められるから,いかなる情報が本件各秘密合意によって保護
の対象となる本件機密事項等に当たるのかは不明といわざるを得ない。しかも,(中略)原告の従業員は, 本件仕入先情報が外部に漏らすことの許されない営業秘密として保護されているということを認識できるような状況に置かれていたとはいえないのである。このような事情に照らせば,本件各秘密保持合意を締結した被告Aに対し,本件仕入先情報が本件機密事項等に該当するとして,それについての秘密保持義務を負わせることは,予測可能性を著しく害し,退職後の行動を不当に制限する結果をもたらすものであって,不合理であるといわざるを得ない。したがって,本件仕入先情報が秘密保持義務の対象となる本件機密事項等に該当すると認めることはできない。」
39 連帯債務者1人の確定判決により他の連帯債務者に10 年延長の効力は及ばない(東京高判昭45・4・
2 判時607 号44 頁)
「民法457 条1項は主たる債務が時効によつて消滅することを防ぐための規定であり,もつぱら,主 たる債務の履行を担保することを目的とする保証債務の附従性に基づくものであると解されるから,主たる債務の消滅時効期間が判決の確定に伴つて10 年に延長されるときには,これに応じて保証人の債務の消滅時効期間も同じく 10 年に変ずるものと解するのが相当であり(最高裁昭和 43 年(オ)第 519 号昭和43 年10 月17 日判決最高裁裁判集民事92 号601 頁参照),(中略)民法457 条1項は保証債務の従属性に基づく規定であつて,連帯債務には適用されないと解すべきである」
40 連帯納税義務に係る固定資産税の1人の告知は他の共有者の租税債務を成立させていない(大阪高判昭58・3・30 行裁例集34 巻3 号566 頁)
「共有土地についての固定資産税及び都市計画税は,共有者が連帯して納付する義務を負い。これらの税は,賦課課税方式をとつており,納税通知書を納税者に送付することによりその租税債権が具体的に成立するものと解すべきである(地方税法-以下法という-第 10 条の2,第 13 条,第 359 条以下)。右連帯納付義務については民法の連帯債務の効力等の規定が準用されているけれども(法第 10 条),前 記納税通知書の送付による納税の告知は,履行の請求としての効力のほか,税額確定の効力を有しており,右税額確定の効力は,民法第 434 条にいう「履行ノ請求」に含まれないから,右法条を準用する余地はないものといわねばならない。従つて共有土地についての固定資産税等は,納税通知書の送付によりその名宛人として送付を受けた者に対してのみ具体的な租税債権が成立し,その余の連帯納付義務者は,抽象的租税債務を負担するにとゞxx,未だ具体的租税債務は成立していない」
* 地方税の連帯納税義務(最判平1・7・14 判時1327 号21 頁)
「地方団体の徴収金の連帯納入義務については,連帯債務に関する民法432 条から434 条まで,437条及び439 条から444 条までの規定を準用するものとされているところ(地方税法10 条),連帯納入 義務者の1人について生じた税額確定の効力は,他の連帯納入義務者との関係において絶対的効力を生ずるものではなく,民法440 条の準用により単に相対的効力を生ずるにとどまるものであって,連帯納入義務者に対する税額確定の手続は,連帯納入義務者ごとに各別に行われることを要するものと解するのが相当であるから,地方税法14 条の10 を適用する場合における法定納期限等もこれに応じて各連帯納入義務者ごとに相対的に定まるものというべきである。」
注:民法の連帯債務は契約により各人の負担割合,責任が決まっており,当然に知っているが,税 の場合は各人の負担割合がAほか〇名で送付された場合,ほか〇名の負担割合は知り得ない。
41 公営住宅保証人の請求が権利の濫用とされた例(広島地裁福山支部判平20・2・21 裁判所ウェブサイ ト)
「公営住宅が住宅に困窮する低所得者に対し低廉な家賃で賃貸し,市民生活の安定と社会福祉増進を 目的としていることから,公営住宅の賃貸借契約に基づく賃料等の滞納があった場合のxxx請求訴訟の提起に関して,その行政実務において,滞納額とこれについての賃借人の対応の誠実さなどを考慮して慎重に処理すること自体は相当且つ適切な処置であるとしても,そのことによって滞納賃料等の額が拡大した場合に,その損害の負担を安易に連帯保証人に転嫁することは許されず,xxx請求訴訟の提
起を猶予する等の処置をするに際しては,連帯保証人からの要望があった場合等の特段の事情のない限 り,滞納額の増加の状況を連帯保証人に適宜通知して連帯保証人の負担が増えることの了解を求めるなど,連帯保証人に対しても相応の措置を講ずべきものである」
42 公営住宅使用料の未納を連帯保証人へ請求したことが権利の濫用に当たるとされた例(東京高判令1・
7・17 判タ1473 号45 頁)
「被控訴人(注:連帯保証人)は(注:公営住宅入居者)が生活保護を受給していることは知ってい ても,これを廃止されることになることは知らずにいたのであり,実際,生活保護廃止後に(注:公営住宅入居者)の滞納賃料は累積し,その支払について控訴人(注:市)から督促依頼状が送付され,被控訴人は,本件連帯保証契約の解除権行使等の方策を検討する機会もないまま,控訴人に促されて,平成28 年6 月11 日には平成28 年4 月分までの累積債務額について分納誓約書を提出していること,その頃には被控訴人も 70 歳に達して年金受給者となっており,(注:公営住宅入居者)とも連絡が取れず困っていたことを控訴人も把握していたこと,平成 28 年5 月27 日に控訴人から債権移管決定通知書が送付されて以降は,被控訴人もしばしば控訴人の担当者に対して,(注:公営住宅入居者)に対して本件住宅から追い出すなどの厳しい対応をすることを要求したり,自分も年金生活者で分割払いの履行もなかなか困難であることなどを訴えていたこと等が認められるのであって,このような経緯に照らせば,(注:公営住宅入居者)の生活保護が廃止された以後は,控訴人は被控訴人の支払債務の拡大を防止すべき措置を適切に講ずべきであり,かかる措置をとることなくその後の賃料を被控訴人に請求することは,権利の濫用にあたる」
43 相続の承認又は放棄の熟慮期間(最判昭59・4・27 民集38 巻6 号698 頁)
「(民法915 条1項の)熟慮期間は,原則として,相続人が前記の各事実を知つた時から起算すべきも |
のであるが,相続人が,右各事実を知つた場合であつても,右各事実を知つた時から3か月以内に限定 |
承認又は相続放棄をしなかつたのが,被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり,かつ, |
被相続人の生活歴,被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相 |
続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があつて,相続人において右のように信ずるに |
ついて相当な理由があると認められるときには,相続人が前記の各事実を知つた時から熟慮期間を起算 |
すべきであるとすることは相当でないものというべきであり,熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は 一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解する」 |
44 保証債務を承認した後も保証人は主債務を援用できる(東京高判平7・2・14 判時1526 号102 頁)
「主債務の時効完成後に保証人が保証債務を履行した場合でも,主債務が時効により消滅するか否かにかかわりなく保証債務を履行するという論旨に出たものであるときは格別,そうでなければ,保証人は,主債務の時効を援用する権利を失わない」
45 老人保健法に基づく診療報酬返還請求権の時効(名古屋地判平29・7・19 D1-Law28263738)
「仮に,診療報酬債権が市町村と保険医療機関等の公法上の法律関係に基づいて発生する権利である としても,診療報酬の返還請求権が直ちに公法上の債権としての性質を帯びるとはいえない。すなわち,診療報酬の返還請求権は,市町村が支払った診療報酬の返還に係るものではあるが,民法703 条に基づく請求権であり,診療報酬債権のように法に発生の基礎を有する債権ではない。むしろ,普通地方公共団体が債権者であっても,保健医療機関等に対して診療報酬の不当利得の返還を求める関係は,損失者と受益者の間に財産上の均衡を図り,xxを回復しようとする点において,私人相互間における不当利得関係とその目的性質を異にするものではない」
46 税誤還付の返還請求は民法の不当利得である(大阪地判令3・10・13 金融・商事判例1631 号42 頁)
「本件不当利得返還請求権は,地方税法に基づく住民税の徴収関係にある原告,被告間において,住
民税に係る還付金の還付の過程で発生したものではあるが,賦課,更正等の行政庁が税額を確定・変更 させる処分によって発生した債権ではない(中略)。すなわち,本件不当利得返還請求権は,原告の職員が本件還付通知書に還付額を1桁多く記載するという過誤を起こし,その後の本件過還付金の振込み時にも同過誤が看過され,最終的に本来の還付額を超えた金銭が被告に交付されたことにより発生したものであって,その返還の請求は,単に本来債務が存在しないにもかかわらずその弁済として支払った金銭の返還を求める請求であるから,その法律関係は,いわゆる非債弁済,すなわち法律上の原因のない利得につき,xxの理念に基づいてその調整を図る関係,すなわち民事上の不当利得関係にほかならない。」
* 誤納金の還付は規定がありますが(地方税法17 条以下),本件は自治体が誤って還付した場合に なり,地方税法の範囲からは除かれます。
47 生活保護法63 条による返還金の性質(東京高判令2・6・8 判タ1478 号31 頁)
「(生活保護法63 条が),返還額について『その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において』と 上限となる金額を定める一方,その算定方法を具体的に規定せず,『保護の実施機関の定める額』と規定しているのは,まず自身の資産を活用することを求める保護の補足性の原則(同法4条1項)を踏まえて,本来受ける必要がなかった支給済みの保護費の全額を返還させることを原則としつつも,生活に困窮する国民に最低限度の生活を保障し,その自立を助長するという同法の目的(1条)に鑑み,全額を返還させることが不可能又は不相当である場合には,支給済みの保護費の範囲内において適切な返還額を定めることができるものとする趣旨に出たものであると解される。そして,生活保護法63 条に基づく返還額の決定に当たっては,被保護者の資産,収入の状況,地域の実情等を踏まえた個別具体的かつ技術的な判断を要するものというべきであるから,その決定については,保護の実施機関の合理的な裁量に委ねられているというべきであり,保護の実施機関が支給済みの保護費の範囲内でした返還額の決定が違法となるのは,保護の実施機関に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものと認められる場合に限られる」
* 後日資力があると判明した場合も63 条が適用されます(神戸地判平24・10・18 裁判所ウェブサイ
ト)
「(生活保護)法63 条は,法4条3項に基づき保護費を受給した場合等において,当該受給者においてその資力を現実に活用することができる状態になったときには,当該受給者に対し,保護費の返還義務を課すこととしたものと解される。そして,かかる法63 条の趣旨及び同条の文言が『急迫の場合等』とあって法4条3項所定の『急迫の場合』に限定していないことに照らせば,法63 条は,法4条
3項による保護が行われた場合のみならず,先に行われた保護の時点では必要であるとして保護が行 われたが,後に資力があったことが判明した場合に,これを事後的に調整するためにも適用される」
この判例は結局,自立費用を見て返還を決定すべきとし,裁量権の濫用としました(大阪高判 25・12・13
裁判所ウェブサイト)。
「(生活保護)法63 条は,被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を 受けたときは,保護費を支給した都道府県又は市町村に対して,すみやかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならないと規定し,その受けた保護金品に相当する金額を一律に返還させるのではなく,その金額の範囲内において保護の実施機関に返還させるべき額を決定させることとし,返還額について保護の実施機関の裁量を認めている。これは,法が最低限度の生活を保障するとともに保護金品が被保護者の自立を助長することを目的としていること(1条)に照らし,保護金品が被保護者の自立に資する形で使用される場合には,その返還を免除することが法の目的にかなうからである。」
48 生活保護法78 条は申告すべき事実を隠匿し,申告指示に応じない場合を含む(名古屋地判平31・
1・31 判時2454 号5 頁)
「(生活保護)法78 条1項にいう「不実の申請その他不正な手段」とは,積極的に虚偽の事実を申告
することのみならず,本来申告すべき事実を隠匿することも含まれ,申告について口頭又は文書による 指示を受けたにもかかわらず,それに応じなかったときもこれに該当する」
* 「本判決は,生活保護費徴収決定に係る通知書に関し,理由の提示が不十分であり,行政手続法 14 条 1 項本文に違反するとした点,生活保護法 78 条の『不実の申請その他不正な手段』の該当性を判断している点において,行政実務上及び裁判実務上参考になると思われる(判例タイムズ1478号165 頁)」
49 税の告知後の相続人への通知は時効中断の効力はない(最判令2・6・26 民集74 巻4 号759 頁)
「(地方税)法において,税額等が確定し,その徴収手続として納付又は納入の告知がされた地方団体の徴収金に関し,再度同告知がされることは予定されていないというべきである。(中略)被相続人に対 して既に納付又は納入の告知がされた地方団体の徴収金につき,納期限等を定めてその納付等を求める旨の相続人に対する通知は,これに係る地方税の徴収権について,地方税法18 条の2第1項1号に基づく消滅時効の中断の効力を有しない」
* 「会計法における納入の告知に時効中断効が認められている理由については,納入の告知が,法令 の規定により一定の手続と形式を要し,かつxx慎重に行われるものであるから十分に確実性のあるものであり,私人が行う催告のような非形式的請求とは異なり,裁判上の手続に比べて必ずしも軽視できない公の手続行為であることに基づくなどと説明されており(xxxx編『平成27 年改訂版 会計法精解』710 頁等),(中略)再度の納付の告知に時効中断効が認められるかが問題となる。この点について明示的に述べた文献や裁判例等は見当たらないが,会計法上の納入の告知に関しては,1 回限り行い得るものであり,2 度以上の納入の告知は,たとえ納入告知書の形式の文書をもってされても,単なる催告にすぎず,それ自体では時効中断の効力は生じないと一般に解されているようであり
(xxxx『逐条会計法概説』326 頁等),xxx判昭和32 年7 月31 日・訟務月報3 巻7 号43 頁も同様の判断をしている(このほか,地方税法上の督促に関し,再度行った督促は履行の催告としての効果を生ずるにすぎないとするもの〔xxxx『租税法〔第3 版〕』262 頁等〕もある。)。本判決は,地方税法が,地方団体の徴収金の徴収に関して段階的な手続を定めており,納付又は納入の告知が繰 り返されることを予定していないことや,同告知の性質に照らして特別に時効中断効を付与したものと解されることを根拠に,地方税法 18 条の2 第1 項1 号に基づく時効中断効は最初に行われたものについてのみ生ずるとして,会計法上の納入の告知等に関する上記のような一般的な理解と同様の立場を採ることを明らかにしている(判例タイムズ1480 号83 頁)。」
50 条例による乳幼児医療費助成の処分性(名古屋地判平16・9・9 判タ1196 号50 頁)
「給付行政の分野においても,立法政策として,一定の者に補助金等の支給を受ける権利を与えるとともに,行政庁による一方的な支給(ないし不支給)決定という形式を採ることによって,当該行為を行政処分として構成する場合がある。このように,どのような行為を行政処分とするかは,個別的な立法政策によって定まる問題であるから,行政庁の当該行為が処分性を有するか否かは,その根拠となる 法令の目的,要件,手続,効果などを個別具体的に検討し,当該行為を行政庁の優越的な意思の発動として行わせ,私人に対してその結果を受忍すべき一般的拘束を課することとしているか否か,またこのような意思の発動を適法とするための要件を定めて行政庁がこの要件の充足の有無を判断して行動すべきことを要求しているか否かを総合的に判断して決すべきものであり,つまるところ,当該法令の解釈問題に帰するというべきである。(中略)個別法において不服申立手続についての定めがない場合には,一般法である行政不服審査法及び行政事件訴訟法が適用される(ちなみに,被告が児童手当についての不服申立手続を定めた規定として指摘する法25 条も,自由選択主義を定めた行政事件訴訟法8条
1項本文に対する特則を定めたものにすぎない。)から,そのような規定があることが行政処分性を認めるための必要条件であると解することはできない上,仮に本件通知の行政処分性を否定すると,被助 成資格を有しながら本件助成を拒否された申請者は,せいぜい平等原則違反を理由として事後的に民事上の損害賠償請求をするほかないが,本件の乳幼児医療費助成制度のように大量かつ反復的な処理
を行うものにあっては,この救済方法はあまりに迂遠に過ぎるといわざるを得ず,かえって,乳幼児の 医療費助成を通じてその福祉の増進を図るという目的に照らせば,端的に行政処分性を認めて抗告訴訟による救済を図るのが相当と解される。」
51 給水契約は普通取引約款である(神戸地判平30・6・1 裁判所ウェブサイト)
「水道法14 条は,1項において,水道事業者に対し,水道の供給条件について供給規程を定めなけれ ばならないと規定し,2項において,供給規程の内容が同項各号の要件に適合するものでなければならないと規定する。(中略)給水契約は,不特定多数の者を相手方として行う取引であり,その内容を画一的に定めることが,契約当事者双方にとって合理的であるため,水道事業者において,給水契約の内容とすることを目的として,供給規程を定めておくこととしたものと解される。この趣旨からすれば,供給規程は,いわゆる普通取引約款と類似の効力を有し,これが条例として公布され,施行された場合には,当然に給水契約の内容となると解するのが相当である。そして,供給規程である給水条例は,前記のように普通取引約款と類似の効力を有するものに過ぎず,強行法規となると解することまではできないから,契約当事者間において,給水条例と異なる合意をした場合,その合意が直ちに無効となると解することはできない。」
52 給水契約と当事者の合意に基づく契約の成立(秋田地判平3・7・8 判時1404 号110 頁)
「水道供給契約は,私法上の契約であって,どのような内容の水道供給契約が成立したかは,私法上 の契約理論により決定され,当該契約を締結した当事者間の合意に基づき,その合意を内容とした契約が成立する。ところで,水道供給契約はいわゆる付合契約であるが,右の理は付合契約においても変わるところはない。すなわち,付合契約においては,相手方は予め定められた内容の契約を締結するかどうかの自由しか有しないものであるが,契約の当事者が予め定められた約款と異なる合意をすれば,付合契約といえども予め定められた約款ではなく,その合意に基づく内容の契約が成立する。したがって,原告と被告との間で,『浴場用』を適用するとの合意が成立している以上,原告,被告間においては,浴場用水道料金を支払うとの内容の水道供給契約が成立しているものと解するほかはなく,右合意が条例に違反して無効であるかどうかの点はしばらくおき,原告,被告間に一般用水道料金を支払うべき義務があるとの内容の契約が成立したものと解することはできず,右内容の契約が成立したことを前提とする原告の主張は,その前提において失当である」
53 同時履行の抗弁権の牽連性(東京高判昭50・12・18 判時806 号35 頁)
「(印刷製本)9・10 月号の納入が当初の予定よりも遅れたのは,本件取引に際しては納入後すみや かに代金を支払うとの約定がなされていたにもかかわらず,控訴人が納入ずみの5・6月号および7・
8月号分の代金を支払おうとしないため,印刷製本は予定日までに完了していたが,被控訴人において その納入を一時的にストップして代金を支払うよう折衝していたことによるものであることが認められるから,被控訴人が9・10 月号について当初の納入期限を徒過したことはなんら違法ではないというべきである。けだし,納入ずみの5・6月号および7・8月号分の代金債務と9・10 月号の納入義務とは,それ自体は別個の法律行為によって生じたものであるが,同一雑誌の印刷製本という継続的取引から生じた相互に密接な関連を有する債務であるから,その履行についても一定の牽連関係があるのは当然であって,控訴人がすでに期限の到来した代金債務の履行をしない以上,被控訴人は,右代金債務の履行があるまで,のちに期限が到来した納入義務の履行を拒みうると解することが,継続的取引契約の趣旨に合致し,かつ,当事者間のxxに適する」
* この判例からすると,市内転居を繰り返した場合の水道料金未納について給水停止要件に該当する かどうか見解が分かれます。
住宅困窮の要件(東京地判昭60・2・27 判時1184 号64 頁)
「『現に住宅に困窮していることが明らかな者であること』の要件は,単に入居者の入居時だけの要件
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ではなく,入居者の居住継続の要件でもあると解するのが相当である。従つて,都営住宅の入居者が,他 に移転可能な住居を取得したときは,それにも拘らず,なお当該都営住宅の入居を継続することを正当とするような特段の事由のない限り,原則として当該入居者は都営住宅の入居資格を失い,それをそのまま継続することは,条例5条1項3号に違反するに至るものというべきであつて,都知事は当該入居者に対し,公xx22 条1項5号,25 条1項,条例20 条1項5号により,当該都営住宅の明渡を請求することができる」
55 公営住宅の明渡事由(東京高判昭61・9・29 判タ627 号152 頁)
「入居後住宅を取得する等して住宅困窮の状態が解消された場合については,法及び条例は,報告, 調査,認定等の手続規定を欠くのみならず,この場合の明渡請求に関しては何ら規定していないから,住宅困窮の状態にあることは入居資格の要件とするにとどめていると解するのが相当である。したがつて,法及び条例の規定に基づき,入居後住宅困窮の状態が解消されたこと自体を理由として明渡しを求めることはできないというべきである。」
* 「この裁判例及び他の要件に係る解釈との均衡を踏まえると,住宅困窮要件を充たさなくなった ことを理由として直ちに明渡請求を行うことは適当でなく,明渡請求は借地借家法に基づく正当事由があることを理由に行うことが可能と考えられる(xxxほか「逐条解説 公営住宅法 改訂版」ぎょうせい,2012 年,103 頁)。」
56 暴力団員であることが判明した場合に公営住宅の明渡しを求めることは法の下の平等に反しない(最 判平27・3・27 民集69 巻2 号419 頁)
「地方公共団体が住宅を供給する場合において,当該住宅に入居させ又は入居を継続させる者をどの ようなものとするのかについては,その性質上,地方公共団体に一定の裁量があるというべきである。そして,暴力団員は,前記のとおり,集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体の構成員と定義されているところ,このような暴力団員が市営住宅に入居し続ける場合には,当該市営住宅の他の入居者等の生活の平穏が害されるおそれを否定することはできない。他方において,暴力団員は,自らの意思により暴力団を脱退し,そうすることで暴力団員でなくなることが可能であり,また,暴力団員が市営住宅の明渡しをせざるを得ないとしても,それは,当該市営住宅には居住することができなくなるというにすぎず,当該市営住宅以外における居住についてまで制限を受けるわけではない。以上の諸点を考慮すると,本件規定は暴力団員について合理的な理由のない差別をするものということはできない。したがって,本件規定は,憲法14 条1項に違反しない。また,本件規定により制限される利益は,結局のところ,社会福祉的観点から供給される市営住宅に暴力団員が入居し又は入居し続ける利益にすぎず,上記の諸点に照らすと,本件規定による居住の制限は,公共の福祉による必要かつ合理的なものであることが明らかである。したがって,本件規定は,憲法22 条1項に違反しない。」
* 本件は憲法上の問題として争われましたが,明渡しは「信頼関係の破壊」の範囲という点でも原
審で争われ参考になる事案です(大阪高判平25・6・28 民集69 巻2 号447 頁)。
「公営住宅の使用関係については,特別法である公営住宅法及びこれに基づく条例が一般法であ る民法ないし借地借家法に優先して適用されるところ,前記のとおり,本件条例が暴力団員である者に市営住宅の供給を拒絶する旨定めていることには合理的な理由があるというべきである上,原審判を補正の上引用して認定したとおり,控訴人は,本件住宅の入居承認を得た平成17 年当時,市営住宅に入居する必要性は低く,入居承認を受けた後も本件住宅には入居せず,平成22 年に同居承認を受けて控訴人xxら夫婦を本件住宅に居住させるようになったものであって,これは真に住宅に困窮している者に対して住宅を供給するという公営住宅の趣旨にそぐわない行為であったといわねばならず,控訴人において,本件賃貸借契約の解除までは家賃の滞納もなく,地域活動をするなど近隣住民に迷惑をかけるような行為をしたことがなかったとしても,同控訴人について信頼関係を破壊しない特段の事情があるということはできない。」
57 医師法19 条の応招義務と病院の損害賠償(神戸地判平4・6・30 判時1458 号127 頁)
「(医師法)19 条1項は,(中略)医師の応招義務を規定したものと解されるところ,同応招義務は直 接には公法上の義務であり,したがつて,医師が診療を拒否した場合でも,それが直ちに民事上の責任に結びつくものではないというべきである。しかしながら,右法条項の文言内容からすれば,右応招義務は患者保護の側面をも有すると解されるから,医師が診療を拒否して患者に損害を与えた場合には,当該医師に過失があるという一応の推定がなされ,同医師において同診療拒否を正当ならしめる事由の存在,すなわち,この正当事由に該当する具体的事実を主張・立証しないかぎり,同医師は,患者の被つた損害を賠償すべき責任を負うと解するのが相当である。また,病院では,医師が公衆又は特定多数人のため,医業をなす場所であり,傷病者が科学的で且つ適切な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され,且つ,運営されるものでなければならない(医療法1条の2第1項)故,病院も,医師と同様の診療義務を負うと解するのが相当である。(中略)本件においても,被告病院の所属医師,ひいては,被告病院は,右説示にかかる診療義務(応招義務)を有しているのであるから,被告病院の所属医師が診療を拒否して患者に損害を与えた場合には,被告病院に過失があるという一応の推定がなされ,同病院は,右説示にかかる診療拒否を正当ならしめる事由の存在,すなわち,この正当事由に該当する具体的事実を主張・立証しないかぎり,患者の被つた損害を賠償すべき責任を負う」
* 本件の事故当時,本件病院に外科医が救急担当医師として在院していたから,脳外科及び整形外科
の専門医がいなくても医療を施すことが人的にも物理的にも可能であったと認定し,本件診療拒否を正当ならしめる事由の存在は肯認し得ないとして,Aの慰謝料として 150 万円を認容した(判例タイムズ
802 号196 頁)。
58 診療拒否に正当な理由があるとされた例(名古屋地判昭58・8・19 判時1104 号107 頁)
「医師法19 条1項(中略)規定における医師の義務は公法上の義務と解すべきであり,右義務違反が 直ちに民法上の不法行為を構成するものと断ずることには疑問がある。仮に民法上の不法行為を構成するとしても,(中略)脳外科の専門医である同医師としては,同女を入院診察したとしても内科医である同被告のなした右措置以上の適切な措置を採ることは困難であり,他の専門医の診療を受けさせた方が適切であると判断したものと推認されること,等の事情を考慮すると,やむを得ざる入院診療の拒否であり,前記医師法上の義務違反には該当しない」
参考文献
1 公法と私法の関係
「ある事業を行政法で制限する場合,取引に関する干渉があっても,これは行政目的でやっているので民法上の効果とは直接に関係しない,行政規制の違反に対して罰則があっても私法的な効力が当然に失われるものではない,(中略)民法 91 条の反対解釈によれば,法令中の公の秩序に関する規定と異なった意思表示は強行規定に違反し,効力を生じないわけです。これが,民法の出発点ですけれども,既にこの体系自身に明らかなギャップがあります。つまり民法91 条で,法令中の秩序に関しない規定を任意 規定として,そうでないものを強行規定としますと,公法上のいろいろな取引規制というものは,一体どちらに入るのか。これは任意規定とは言えないであろう。例えば,運送業を営むには免許を必要とするのに,当事者間で,『本契約は運送業者が免許をもっていなくても有効である。』旨を特約しても,任意規定であるから有効だというのは解釈論として無理でしょう。(中略)判例を見ますと,上告審レベルの判例の多くはかかる場合であっても私法的な効力は妨げられないとしています。(中略)行政規制が強く社会的な公益ないし公共の利益に関わる場合,(中略)例えば,弁護士法違反で非弁活動に当たる場合に委任契約の効力は認められていません。無免許の診療契約も,ここに入るべきだろうと思います(xxxxx「民法の理論と体系」一粒社,1987 年,237 頁)。」
2 請求書,領収書の印鑑使用
「法律上会社の完全な請求書あるいは領収書は,①会社の商号,②代表資格,③代表者の氏名,④会社の代表者印として登記所に届け出てある印鑑が備わっているときとされております(「地方財務実務提要」ぎょうせい,3084 頁)。」
3 会社印のない請求書による支払いの可否
「自治法第232 条の5第1項の規定により,地方公共団体は債権者のためでなければ支出することができないとされています。ところで,会社が債権者である場合,会社の債権行使として実際に請求行為をするのは,会社の代表機関である代表取締役です。そこで,通常,会社の作成する請求書には,当該請求書によって行われる請求行為が当該会社を代表して代表取締役が行うものであることを明示し,その権限と責任の所在を明らかにするために,会社印と代表取締役の印とが押印されています。しかし,法律的には,代表取締役の印が押印してあり,かつ,その印鑑が登記所に届け出てある印鑑であること を証する印鑑証明書(商業登記法第12 条第1項)が領収書に添付され,又はあらかじめ県に届け出てあれば,当該代表取締役が債権者である会社を代表して請求行為をしていることが確認できますので,会社印の押印がなくとも支払は可能です(「地方財務実務提要」ぎょうせい,3085 頁)。」
4 動機の錯誤における契約の内容化
「動機が表意者側の一方的行為である意思表示の内容となったというだけでなく,それが契約すなわち法律行為の内容とされたかどうかが重要となる。そこで,その『内容化』の意味がさらに問われる。これについては,当該契約において履行すべき給付又は債務内容として合意に達したことを要するのではなく,ある事実の存在又は内容が契約の目的達成のために必要不可欠な前提となっており,契約の効力 に影響を及ぼす旨につき,当事者双方の共通理解が形成されていることで足りるとして,『合意内容として取り込まれた』ことの意味を柔軟に解すべき旨が指摘されている(xxxx,NBL1024 号 19 頁以下,xxxx・民法判例百選Ⅰ<第7版>51 頁など)(xxx監修「改正民法(債権法)における判例法理の射程」第一法規,2020 年,40 頁)。」
5 使用料の滞納と不服申立て
「督促が時効中断の効力を有するのは,公の施設の使用料全てについてであるが(中略),(注:自治法 231 条による督促)及び(注:督促手数料の徴収滞納処分)から(注:自治法 231 条の3の督促によ
る審査請求)までの定めが適用されるのは,その利用関係が処分によってなされたものに限られる。すなわち,自治法231 条の3第1項の督促は管理者たる地方公共団体の長による一方的な行為であり,(注: 督促)手数料及び延滞金の支払い義務を生じさせ(同条2項),地方税の滞納処分の例による処分を可能にする(同条3項)という法律効果を有する処分である。公の施設の使用料の支払いが対等な当事者間の合意である契約に基づくものである場合に,当該支払いが遅延したということだけで,債権者が優越的な地位を取得し,契約に定めのない不利益を債務者に及ぼすことができるというのは,利用関係の設定が契約によるものであることと矛盾する。また,私法上の債権については,弁済期の到来によって当然に法定の遅延損害金の請求権が発生する(民法404 条・412 条・415 条・419 条1項本文)のであるから,督促によって延滞金の支払い義務を発生させる債権は私法上のものではあり得ない(xxx「自治体財務の実務と理論―違法・不当といわれないために」ぎょうせい,2015 年,164 頁)。」
6 国民健康保険の督促手数料の消滅時効
「国民健康保険の督促手数料についても,これが保険料の納入を催促する際に要した費用の回収を目 的とするものであり,保険料の延滞金と同様に,保険料に付随する債権であるところ,消滅時効の制度の趣旨が,権利の上に眠る者を保護する必要はない,あるいは証拠資料の散逸の可能性を考慮する必要があると説明されるものであることからすると,付随する権利の消滅時効の期間が本体債権よりも長いことに合理性や妥当性を感じ難く,むしろ両者は一致すると考える方が自然かつ合理的である。督促手数料の消滅時効の期間のみを5年とする積極的な理由は認められない。そこで督促手数料についても,保険料の時効についての規定(国民健康保険法 110 条1項)が準用され,地方自治法 236 条の「他の法律に定めがある」場合に該当するとして,保険料の延滞金債権の消滅時効の期間も2年と考えるのが妥当といえる(「自治体職員のための事例解説 債権管理・回収の手引き」第一法規)。」
7 医療行為は準委任契約である
「医療契約のさいには,医師は患者の命令に従うものではなく(雇用ではない),病気治癒が実現(完成)するかどうかは不明であるか,不能の場合もあり(請負でもない),治療行為は法律行為(注:契約締結など代理行為をする場合)ではない(委任ともいえない)から,右の3種類(雇用,請負,委任)の契約のどれにも入らない。しかし,準委任について定める民法 656 条は『この節の〔委任に属する〕規 定は,法律行為でない事務の委託について準用する』と規定しており,医療行為は右の『法律行為でない事務』に該当するから,医療契約は準委任契約とみられ,委任の規定の適用をうける,と解される。もっとも,医療契約は有償であるが-黙っていても,医師・患者ともに支払いを伴うものと観念している
-,これは準委任契約であることを妨げない。美容整形などは医療ではなく,所期の目的を達成すること が重要な点にかんがみ,これを請負と解すべきである(xxxxx「消費者民法のすすめ〔補訂3版〕」法律文化社,2008 年,150 頁)。」
8 継続的契約は一時的な契約と同様には解除できない
「財の移転を媒介するのが売買であるのに対し,賃貸借は財の利用をとりもつ契約ということができる。(中略)ごく一般的に言えば,継続的契約は,賃貸借だけでなく,他人に雇われて働き給料をもらう雇用契約や一定の報酬を得て建物を建築する請負契約などもそうであるが,当事者の間に債権債務関係 をかなりの期間生じさせることから,一時的契約と同じようなかたちでは契約関係を解消させることはできない。(中略)継続的契約では,当事者が長期間向かいあって,お互いの債務を履行し続けるのであるから,当事者間の信頼関係が重視される。建物の賃貸借で,借家人がたまたま1カ月分の家賃の支払を遅らせたことを理由に,また,借家人の無断また貸しを理由に(民法612 条),家主が解除しようとしても,借家人が家主との信頼関係を破壊していない場合には,解除できない,とされている。要するに,
1カ月分の家賃の遅れや,無断の1回の間貸しくらいでは,家主は借家人を追い出せない,と言ってよい。それまでの間,家主と借家人はお互いに信頼し合ってうまくやってきたのだから,借家人の小さい落ち度につけ込んで,追い出すようなことは許されない,というわけである(xxxxx「民法の常識」
有斐閣,1993 年,55 頁)。」
9 一般競争入札,指名競争入札,随意契約
「競争入札とは,契約の相手方を募り,契約内容を提示させ,最も安価な契約内容を提示した者を契 約の相手方として選定する方法である。そのなかで,応募者を限定しない方式が一般競争入札と呼ばれ,応募できる者を行政が一定の基準に基づいて指名する方式が指名競争入札と呼ばれる。これに対し,随意契約とは,複数の候補者を競争させた上で選定する方式ではなく,行政が任意に相手方を決定できる方式であって,契約金額が少額であったり,特殊な技術を要したりするため入札手続によることが適当でない場合に用いられることがある。公金の有効利用および応募者間のxxという観点から,一般競争入札が原則的な形態とされている(xxxほか「行政法」有斐閣,2017 年,92 頁,xxxx執筆部分)。」
10 契約変更と覚書
「システム開発委託契約書などIT関連の契約では,仕様,委託料(対価),納期の3つの条件が重要ですが,契約締結後に使用などの変更が頻繁に行われます。その際に,いちいち両当事者の代表者が書面で変更契約を取り交わすのは,実務的に効率が悪いでしょう。そこで通常は契約書に両当事者のプロ ジェクト責任者を決めておき,その責任者へこうした実務上の仕様などの変更について権限を与えておき,契約変更に対応することが実際上よく行われています(xxxx「初めての人のための契約書の実務(第3版)」中央経済社,2018 年,32 頁)。」
11 行政行為と契約の立法的選択
「受益(授益)処分では,立法的選択の余地があることが多い。補助金は,契約とも構成できるが,国の補助金については補助金適正化法による行政処分扱いとされている。行政財産の使用許可の撤回,公務員の免職は一方的な意思表示で効力を生じ,執行を要しない点で,権利義務の一方的な形成手法であるが,そのもとである行政財産の使用許可,公務員採用を契約として構成すれば,その撤回,免職も,私法上の行為として構成できる。その意味は,それをめぐる争いは,民事法,民事訴訟によるのではなく,行政不服審査,行政訴訟によらせるというものである。(中略)公営住宅の使用関係も,契約として 構成できるが,現行法は,その使用を許す行為を賃貸借の契約ではなく,許可と構成している(xxxx
「行政法解釈学Ⅰ」有斐閣,2008 年,413 頁)。」
* 近年の公営住宅の判例は許可という文言を使用しても,契約行為と解する場合が多い。
12 定型約款
「保険契約で経験するように,細かい技術的な内容に至るまですべての条項を完全に理解するのは,いかにも煩わしく,ひとによっては理解不能の場合する考えられる。このような場合に,理解したかぎりの内容でしか契約は成立しない,などと言えば,穴だらけの契約となって,契約は成立していないとされかねないし,場合によっては顧客がかえって不利になることもあり得よう。そこで,その種の契約で,どの点とどの点が不可欠な要点(要素)であるかを確定し,要素について理解と同意があれば,あ とは約款に定めたとおりということで,すべての条項が契約の内容に組み入れられたことになると,考えるべきであろう(xxxxx「消費者民法のすすめ〔補訂3版〕」法律文化社,2008 年,115 頁)。」
条文集
改正前民法
(錯誤)
第95 条 意思表示は,法律行為の要素に錯誤があったときは,無効とする。ただし,表意者に重大な過失があったときは,表意者は,自らその無効を主張することができない。
第173 条 次に掲げる債権は,2年間行使しないときは,消滅する。
(1)及び(2)略
(3) 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育,衣食又は寄宿の代価について有する債権
(賠償額の予定)
第420 条 当事者は,債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において, 裁判所は,その額を増減することができない。
2及び3略
(債権者の危険負担)
第534 条 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において,その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し,又は損傷したときは,その滅失又は損傷は,債権者の負担に帰する。
2 不特定物に関する契約については,第401 条第2項の規定によりその物が確定した時から,前項の規定を適用する。
(債務者の危険負担等)
第536 条 前2条に規定する場合を除き,当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは,債務者は,反対給付を受ける権利を有しない。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは,債務者は,反対給付を受ける権利を失わない。この場合において,自己の債務を免れたことによって利益を得たときは,これを債権者に償還しなければならない。
(売主の瑕疵担保責任)
第570 条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは,第566 条の規定を準用する。ただし,強制競売の場合は,この限りでない。
改正民法
(任意規定と異なる意思表示)
第 91 条 法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは,その意思に従う。
(錯誤)
第95 条 意思表示は,次に掲げる錯誤に基づくものであって,その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社 会通念に照らして重要なものであるときは,取り消すことができる。
(1) 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
(2) 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識がxxに反する錯誤
2 前項第2号の規定による意思表示の取消しは,その事情が法律行為の基礎とされていることが表示さ れていたときに限り,することができる。
3及び4略
(公示による意思表示)
第98 条 意思表示は,表意者が相手方を知ることができず,又はその所在を知ることができないときは,公示の方法によってすることができる。
2略
3 公示による意思表示は,最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に,相手方に到達したものとみなす。ただし,表意者が相手方を知らないこと又はその所在
を知らないことについて過失があったときは,到達の効力を生じない。
4及び5略
(期限の利益の喪失)
第137 条 次に掲げる場合には,債務者は,期限の利益を主張することができない。
(1) 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
(2) 債務者が担保を滅失させ,損傷させ,又は減少させたとき。
(3) 債務者が担保を供する義務を負う場合において,これを供しないとき。
(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第151 条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは,次に掲げる時のいずれか早い時までの間は,時効は,完成しない。
(1) その合意があった時から1年を経過した時
(2) その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは,その期間を経過した時
(3) 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは,その通知の時から6箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は,同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし,その効力は,時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第1項の合意は,同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても,同様とする。
4及び5略
(承認による時効の更新)
第152 条 時効は,権利の承認があったときは,その時から新たにその進行を始める。
2略
(債権等の消滅時効)
第166 条 債権は,次に掲げる場合には,時効によって消滅する。
(1) 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
(2) 権利を行使することができる時から10 年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は,権利を行使することができる時から20 年間行使しないときは,時効によって消滅する。
(公道に至るための他の土地の通行権)
第210 条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は,公道に至るため,その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2 池沼,河川,水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき,又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも,前項と同様とする。
(遺失物の拾得)
第240 条 遺失物は,遺失物法(平成18 年法律第73 号)の定めるところに従い公告をした後3箇月以内にその所有者が判明しないときは,これを拾得した者がその所有権を取得する。
(一般の先取特権)
第306 条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の総財産について先取特権を有する。
(1) 共益の費用
(2) 雇用関係
(3) 葬式の費用
(4) 日用品の供給
(日用品供給の先取特権)
第310 条 日用品の供給の先取特権は,債務者又はその扶養すべき同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の6箇月間の飲食料品,燃料及び電気の供給について存在する。
(法定利率)
第404 条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは,その利率は,その利息が生じた最 初の時点における法定利率による。
2 法定利率は,年3パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず,法定利率は,法務省令で定めるところにより,3年を1期とし,1期ごとに,次項の規定により変動するものとする。
4 各期における法定利率は,この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合
(その割合に1パーセント未満の端数があるときは,これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し,又は減算した割合とする。
5 前項に規定する「基準割合」とは,法務省令で定めるところにより,各期の初日の属する年の六年前の年の1月から前々年の12 月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が1年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60 で除して計算した割合(その割合に0.1 パーセント未満の端数があるときは,これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。
(履行期と履行遅滞)
第412 条 債務の履行について確定期限があるときは,債務者は,その期限の到来した時から遅滞の責任 を負う。
2 債務の履行について不確定期限があるときは,債務者は,その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
3 債務の履行について期限を定めなかったときは,債務者は,履行の請求を受けた時から遅滞の責任を 負う。
(債務不履行による損害賠償)
第415 条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは,債権 者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし,その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは,この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において,債権者は,次に掲げるときは,債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
(1) 債務の履行が不能であるとき。
(2) 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
(3) 債務が契約によって生じたものである場合において,その契約が解除され,又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
(金銭債務の特則)
第419 条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については,その損害賠償の額は,債務者が遅滞の責任 を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし,約定利率が法定利率を超えるときは,約定利率による。
2 前項の損害賠償については,債権者は,損害の証明をすることを要しない。
3 第1項の損害賠償については,債務者は,不可抗力をもって抗弁とすることができない。
(賠償額の予定)
第420 条 当事者は,債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
2 賠償額の予定は,履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3 違約金は,賠償額の予定と推定する。
(保証人の責任等)
第446 条 保証人は,主たる債務者がその債務を履行しないときに,その履行をする責任を負う。
2 保証契約は,書面でしなければ,その効力を生じない。
3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは,その保証契約は,書面によってされたものとみなして,前項の規定を適用する。
(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)
第458 条の2 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,保証人の請求があったときは,債権者は,保証人に対し,遅滞なく,主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息,違約金,損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。
(主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務)
第458 条の3 主たる債務者が期限の利益を有する場合において,その利益を喪失したときは,債権者は,保証人に対し,その利益の喪失を知った時から2箇月以内に,その旨を通知しなければならない。
2 前項の期間内に同項の通知をしなかったときは,債権者は,保証人に対し,主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。
3 前2項の規定は,保証人が法人である場合には,適用しない。
(個人根保証契約の保証人の責任等)
第465 条の2 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は,主たる債務の元本,主たる債務に関する利息,違約金,損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について,その全部に係る極度額を限度として,その履行をする責任を負う。
2 個人根保証契約は,前項に規定する極度額を定めなければ,その効力を生じない。
3 第446 条第2項及び第3項の規定は,個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。
(個人根保証契約の元本の確定事由)
第465 条の4 次に掲げる場合には,個人根保証契約における主たる債務の元本は,確定する。ただし,第1号に掲げる場合にあっては,強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
(1) 債権者が,保証人の財産について,金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
(2) 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
(3) 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。
2 前項に規定する場合のほか,個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は,次に掲げる場合にも確定する。ただし,第1号に掲げる場合にあっては,強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
(1) 債権者が,主たる債務者の財産について,金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
(2) 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
(債権の譲渡性)
第466 条 債権は,譲り渡すことができる。ただし,その性質がこれを許さないときは,この限りでない。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し,又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても,債権の譲渡は,その効力を妨げられない。
3 前項に規定する場合には,譲渡制限の意思表示がされたことを知り,又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては,債務者は,その債務の履行を拒むことができ,かつ,譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
4 前項の規定は,債務者が債務を履行しない場合において,同項に規定する第三者が相当の期間を定め
て譲渡人への履行の催告をし,その期間内に履行がないときは,その債務者については,適用しない。
(譲渡制限の意思表示がされた債権に係る債務者の供託)
第466 条の2 債務者は,譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは,その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては,譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。
2 前項の規定により供託をした債務者は,遅滞なく,譲渡人及び譲受人に供託の通知をしなければならない。
3 第1項の規定により供託をした金銭は,譲受人に限り,還付を請求することができる。
(弁済)
第473 条 債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは,その債権は,消滅する。
(第三者の弁済)
第474 条 債務の弁済は,第三者もすることができる。
2 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は,債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし,債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは,この限りでない。
3 前項に規定する第三者は,債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし,その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において,そのことを債権者が知っていたときは,この限りでない。
4略
(弁済の場所及び時間)
第484 条 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは,特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において,その他の弁済は債権者の現在の住所において,それぞれしなければならない。
2 法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは,その取引時間内に限り,弁済をし,又は弁済の請求をすることができる。
(同種の給付を目的とする数個の債務がある場合の充当)
第488 条 債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において,弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき(次条第1項に規定する場合を除く。)は,弁済をする者は,給付の時に,その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
2 弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは,弁済を受領する者は,その受領の時に,その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし,弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは,この限りでない。
3 前2項の場合における弁済の充当の指定は,相手方に対する意思表示によってする。
4 弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも第1項又は第2項の規定による指定をしないときは,次の各号の定めるところに従い,その弁済を充当する。
(1) 債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは,弁済期にあるものに先に充当する。
(2) 全ての債務が弁済期にあるとき,又は弁済期にないときは,債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
(3) 債務者のために弁済の利益が相等しいときは,弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
(4) 前2号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は,各債務の額に応じて充当する。
(契約の締結及び内容の自由)
第521 条 何人も,法令に特別の定めがある場合を除き,契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2 契約の当事者は,法令の制限内において,契約の内容を自由に決定することができる。
(契約の成立と方式)
第522 条 契約は,契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対し て相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には,法令に特別の定めがある場合を除き,書面の作成その他の方式を具備することを要 しない。
(申込者の死亡等)
第526 条 申込者が申込みの通知を発した後に死亡し,意思能力を有しない常況にある者となり,又は行為能力の制限を受けた場合において,申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき,又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは,その申込みは,その効力を有しない。
(債務者の危険負担等)
第536 条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなった ときは,債権者は,反対給付の履行を拒むことができる。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付の履行を拒むことができない。この場合において,債務者は,自己の債務を免れたことによって利益を得たときは,これを債権者に償還しなければならない。
(催告による解除)
第541 条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において,相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし,その期間内に履行がないときは,相手方は,契約の解除をすることができる。ただし,その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは,この限りでない。
(催告によらない解除)
第542 条 次に掲げる場合には,債権者は,前条の催告をすることなく,直ちに契約の解除をすることができる。
(1) 債務の全部の履行が不能であるとき。
(2) 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
(3) 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において,残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
(4) 契約の性質又は当事者の意思表示により,特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において,債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
(5) 前各号に掲げる場合のほか,債務者がその債務の履行をせず,債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2 次に掲げる場合には,債権者は,前条の催告をすることなく,直ちに契約の一部の解除をすることができる。
(1) 債務の一部の履行が不能であるとき。
(2) 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
第543 条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは,債権者は,前二条の規定による契約の解除をすることができない。
(解除の効果)
第545 条 当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし,第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において,金銭を返還するときは,その受領の時から利息を付さなければならない。
3 第1項本文の場合において,金銭以外の物を返還するときは,その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
4 解除権の行使は,損害賠償の請求を妨げない。
(定型約款の合意)
第548 条の2 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって,その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合 意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は,次に掲げる場合には,定型約款(定型取引において,契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
(1) 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
(2) 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
2 前項の規定にかかわらず,同項の条項のうち,相手方の権利を制限し,又は相手方の義務を加重する条項であって,その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては,合意をしなかったものとみなす。
(定型約款の内容の表示)
第548 条の3 定型取引を行い,又は行おうとする定型約款準備者は,定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には,遅滞なく,相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし,定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し,又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは,この限りでない。
2略
(買主の追完請求権)
第562 条 引き渡された目的物が種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは,買主は,売主に対し,目的物の修補,代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし,売主は,買主に不相当な負担を課するものでないときは,買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは,買主は,同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
(買主の代金減額請求権)
第563 条 前条第1項本文に規定する場合において,買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし,その期間内に履行の追完がないときは,買主は,その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず,次に掲げる場合には,買主は,同項の催告をすることなく,直ちに代金の減額を請求することができる。
(1) 履行の追完が不能であるとき。
(2) 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
(3) 契約の性質又は当事者の意思表示により,特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において,売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
(4) 前3号に掲げる場合のほか,買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは,買主は,前2項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第564 条 前2条の規定は,第415 条の規定による損害賠償の請求並びに第541 条及び第542 条の規定による解除権の行使を妨げない。
(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第566 条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において, 買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは,買主は,その不適合を
理由として,履行の追完の請求,代金の減額の請求,損害賠償の請求及び契約の解除をすることができ ない。ただし,売主が引渡しの時にその不適合を知り,又は重大な過失によって知らなかったときは,この限りでない。
(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)
第611 条 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合におい て,それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは,賃料は,その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて,減額される。
2略
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第612 条 賃借人は,賃貸人の承諾を得なければ,その賃借権を譲り渡し,又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは,賃貸人は,契約の解除をすることができる。
第622 条の2 賃貸人は,敷金(いかなる名目によるかを問わず,賃料債務その他の賃貸借に基づいて生 ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で,賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において,次に掲げるときは,賃借人に対し,その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
(1) 賃貸借が終了し,かつ,賃貸物の返還を受けたとき。
(2) 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は,賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは,敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において,賃借人は,賃貸人に対し,敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
(請負)
第632 条 請負は,当事者の一方がある仕事を完成することを約し,相手方がその仕事の結果に対してそ の報酬を支払うことを約することによって,その効力を生ずる。
(報酬の支払時期)
第633 条 報酬は,仕事の目的物の引渡しと同時に,支払わなければならない。ただし,物の引渡しを要しないときは,第624 条第1項の規定を準用する。
(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)
第634 条 次に掲げる場合において,請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文 者が利益を受けるときは,その部分を仕事の完成とみなす。この場合において,請負人は,注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
(1) 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
(2) 請負が仕事の完成前に解除されたとき。
(請負人の担保責任の制限)
第636 条 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては,仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は,注文者は,注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として,履行の追完の請求,報酬の減額の請求,損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし,請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは,この限りでない。
(注文者による契約の解除)
第641 条 請負人が仕事を完成しない間は,注文者は,いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
(委任)
第643 条 委任は,当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し,相手方がこれを承諾すること によって,その効力を生ずる。
(準委任)
第656 条 この節の規定は,法律行為でない事務の委託について準用する。
(事務管理)
第697 条 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(中略)は,その事務の性質に従い,最も本人の 利益に適合する方法によって,その事務の管理(中略)をしなければならない。
2 管理者は,本人の意思を知っているとき,又はこれを推知することができるときは,その意思に従って事務管理をしなければならない。
(不当利得の返還義務)
第703 条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け,そのために他人に損失を及ぼした者(中略)は,その利益の存する限度において,これを返還する義務を負う。
(不法行為による損害賠償)
第709 条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(日常の家事に関する債務の連帯責任)
第761 条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは,他の一方は,これによって 生じた債務について,連帯してその責任を負う。ただし,第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は,この限りでない。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第915 条 相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に,相続について, 単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし,この期間は,利害関係人又は検察官の請求によって,家庭裁判所において伸長することができる。
2略
地方自治法
(契約の締結)
第234 条 売買,貸借,請負その他の契約は,一般競争入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。
2 前項の指名競争入札,随意契約又はせり売りは,政令で定める場合に該当するときに限り,これによることができる。
3 普通地方公共団体は,一般競争入札又は指名競争入札(中略)に付する場合においては,政令の定めるところにより,契約の目的に応じ,予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもつて申込みをした者を契約の相手方とするものとする。ただし,普通地方公共団体の支出の原因となる契約については,政令の定めるところにより,予定価格の制限の範囲内の価格をもつて申込みをした者のうち最低の価格をもつて申込みをした者以外の者を契約の相手方とすることができる。
4 普通地方公共団体が競争入札につき入札保証金を納付させた場合において,落札者が契約を締結しないときは,その者の納付に係る入札保証金(中略)は,当該普通地方公共団体に帰属するものとする。
5 普通地方公共団体が契約につき契約書又は契約内容を記録した電磁的記録を作成する場合においては,当該普通地方公共団体の長又はその委任を受けた者が契約の相手方とともに,契約書に記名押印し,又 は契約内容を記録した電磁的記録に当該普通地方公共団体の長若しくはその委任を受けた者及び契約の 相手方の作成に係るもの であることを示すために講ずる措置であつて,当該電磁的記録が改変されているかどうかを確認することができる等これらの者の作成に係るものであることを確実に示すことができるものとして総務省令で定めるものを講じなければ,当該契約は,確定しないものとする。
6略
(契約の履行の確保)
第234 条の2 普通地方公共団体が工事若しくは製造その他についての請負契約又は物件の買入れその他
の契約を締結した場合においては,当該普通地方公共団体の職員は,政令の定めるところにより,契約の適正な履行を確保するため又はその受ける給付の完了の確認(中略)をするため必要な監督又は検査をしなければならない。
2 普通地方公共団体が契約の相手方をして契約保証金を納付させた場合において,契約の相手方が契約上の義務を履行しないときは,その契約保証金(中略)は,当該普通地方公共団体に帰属するものとする。ただし,損害の賠償又は違約金について契約で別段の定めをしたときは,その定めたところによるものとする。
(金銭債権の消滅時効)
第236 条 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は,時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか,これを行使することができる時から5年間行使しないときは,時効によつて消滅する。普通地方公共団体に対する権利で,金銭の給付を目的とするものについても,また同様とする。
2 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利の時効による消滅については,法律に特別の定めがある場合を除くほか,時効の援用を要せず,また,その利益を放棄することができないものとする。普通地方公共団体に対する権利で,金銭の給付を目的とするものについても,また同様とする。
3 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利について,消滅時効の完成猶予,更新その他の事項
(前項に規定する事項を除く。)に関し,適用すべき法律の規定がないときは,民法(明治 29 年法律第
89 号)の規定を準用する。普通地方公共団体に対する権利で,金銭の給付を目的とするものについても,また同様とする。
4 法令の規定により普通地方公共団体がする納入の通知及び督促は,時効の更新の効力を有する。地方自治法施行令
(一般競争入札の入札保証金)
第167 条の7 普通地方公共団体は,一般競争入札により契約を締結しようとするときは,入札に参加しようとする者をして当該普通地方公共団体の規則で定める率又は額の入札保証金を納めさせなければならない。
2略
(契約保証金)
第167 条の16 普通地方公共団体は,当該普通地方公共団体と契約を締結する者をして当該普通地方公共団体の規則で定める率又は額の契約保証金を納めさせなければならない。
2略
(督促)
第171 条 普通地方公共団体の長は,債権(地方自治法第231 条の3第1項 に規定する歳入に係る債権 を除く。)について,履行期限までに履行しない者があるときは,期限を指定してこれを督促しなければならない。
(強制xxx)
第171 条の2 普通地方公共団体の長は,債権(地方自治法第231 条の3第3項 に規定する歳入に係る債権(以下「強制徴収により徴収する債権」という。)を除く。)について,地方自治法第231 条の3第
1項又は前条の規定による督促をした後相当の期間を経過してもなお履行されないときは,次の各号に掲げる措置をとらなければならない。ただし,第171 条の5の措置をとる場合又は第171 条の6の規定 により履行期限を延長する場合その他特別の事情があると認める場合は,この限りでない。
(1) 担保の付されている債権(保証人の保証がある債権を含む。)については,当該債権の内容に従い,その担保を処分し,若しくは競売その他の担保権の実行の手続をとり,又は保証人に対して履行を請求すること。
(2) 債務名義のある債権(次号の措置により債務名義を取得したものを含む。)については,強制執行の手続をとること。
(3) 前2号に該当しない債権(第1号に該当する債権で同号の措置をとつてなお履行されないものを含む。)については,訴訟手続(非訟事件の手続を含む。)により履行を請求すること。
(徴収停止)
第171 条の5 普通地方公共団体の長は,債権(強制徴収により徴収する債権を除く。)で履行期限後相当の期間を経過してもなお完全に履行されていないものについて,次の各号の一に該当し,これを履行させることが著しく困難又は不適当であると認めるときは,以後その保全及び取立てをしないことができる。
(1) 法人である債務者がその事業を休止し,将来その事業を再開する見込みが全くなく,かつ,差し押えることができる財産の価額が強制執行の費用をこえないと認められるとき。
(2) 債務者の所在が不明であり,かつ,差し押えることができる財産の価額が強制執行の費用をこえな いと認められるときその他これに類するとき。
(3) 債権金額が少額で,取立てに要する費用に満たないと認められるとき。地方税法
(相続による納税義務の承継)
第9条 相続(中略)又は民法(明治29 年法律第89 号)第951 条の法人は,被相続人(包括遺贈者を含む。以下本章において同じ。)に課されるべき,又は被相続人が納付し,若しくは納入すべき地方団体の徴収金(中略)を納付し,又は納入しなければならない。ただし,限定承認をした相続人は,相続によつて得た財産を限度とする。
2 前項の場合において,相続人が2人以上あるときは,各相続人は,被相続人の地方団体の徴収金を民法第 900 条から第 902 条までの規定によるその相続分によりあん分して計算した額を納付し,又は納入しなければならない。
3 前項の場合において,相続人のうちに相続によつて得た財産の価額が同項の規定により納付し,又は納入すべき地方団体の徴収金の額をこえている者があるときは,その相続人は,そのこえる価額を限度として,他の相続人が同項の規定により納付し,又は納入すべき地方団体の徴収金を納付し,又は納入する責に任ずる。
4 前3項の規定によつて承継する義務は,当該義務に係る申告又は報告の義務を含むものとする。
(相続人からの徴収の手続)
第9条の2 納税者又は特別徴収義務者(中略)につき相続があつた場合において,その相続人が2人以上あるときは,これらの相続人は,そのうちから被相続人の地方団体の徴収金の賦課徴収(滞納処分を除く。)及び還付に関する書類を受領する代表者を指定することができる。この場合において,その指定をした相続人は,その旨を地方団体の長に届け出なければならない。
2 地方団体の長は,前項前段の場合において,すべての相続人又はその相続分のうちに明らかでないものがあり,かつ,相当の期間内に同項後段の届出がないときは,相続人の1人を指定し,その者を同項に規定する代表者とすることができる。この場合において,その指定をした地方団体の長は,その旨を相続人に通知しなければならない。
3略
4 被相続人の地方団体の徴収金につき,被相続人の死亡後その死亡を知らないでその者の名義でした賦課徴収又は還付に関する処分で書類の送達を要するものは,その相続人の1人にその書類が送達された場合に限り,当該被相続人の地方団体の徴収金につきすべての相続人に対してされたものとみなす。
(滞納処分の停止の要件等)
第15 条の7 地方団体の長は,滞納者につき次の各号のいずれかに該当する事実があると認めるときは,滞納処分の執行を停止することができる。
(1) 滞納処分をすることができる財産がないとき。
(2) 滞納処分をすることによつてその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。
(3) その所在及び滞納処分をすることができる財産がともに不明であるとき。
2及び3略
4 第1項の規定により滞納処分の執行を停止した地方団体の徴収金を納付し,又は納入する義務は,その執行の停止が3年間継続したときは,消滅する。
5 第1項第1号の規定により滞納処分の執行を停止した場合において,その地方団体の徴収金が限定承認に係るものであるとき,その他その地方団体の徴収金を徴収することができないことが明らかであるときは,地方団体の長は,前項の規定にかかわらず,その地方団体の徴収金を納付し,又は納入する義務を直ちに消滅させることができる。
(過誤納金の充当)
第17 条の2 地方団体の長は,前条の規定により還付すべき場合において,その還付を受けるべき者につき納付し,又は納入すべきこととなつた地方団体の徴収金(中略)があるときは,前条の規定にかかわらず,過誤納金をその地方団体の徴収金に充当しなければならない。
2~5略
(還付加算金)
第 17 条の4 地方団体の長は,過誤納金を第 17 条又は第 17 条の2第1項から第3項までの規定により還付し,又は充当する場合には,次の各号に掲げる過誤納金の区分に従い当該各号に定める日の翌日から地方団体の長が還付のための支出を決定した日又は充当をした日(同日前に充当をするのに適することとなつた日がある場合には,当該適することとなつた日)までの期間の日数に応じ,その金額に年7.
3パーセントの割合を乗じて計算した金額(以下「還付加算金」という。)をその還付又は充当をすべき金額に加算しなければならない。
(1)~(4)略
2~5略
(地方税の消滅時効)
第18 条 地方団体の徴収金の徴収を目的とする地方団体の権利(中略)は,法定納期限(次の各号に掲げる地方団体の徴収金については,それぞれ当該各号に定める日)の翌日から起算して5年間行使しないこ とによつて,時効により消滅する。
(1) 第17 条の5第2項又は前条第1項第1号,第2号若しくは第4号若しくは同条第3項の規定の適用がある地方税若しくは加算金又は当該地方税に係る延滞金 第17 条の5第2項の更正若しくは決定があつた日又は前条第1項第1号の裁決等があつた日,同項第2号の決定,裁決若しくは判決があつた日若しくは同項第4号の更正若しくは決定があつた日若しくは同条第3各号に定める日
(2)略
(3) 督促手数料又は滞納処分費 その地方税の徴収権を行使することができる日
2 前項の場合には,時効の援用を要せず,また,その利益を放棄することができないものとする。
3 地方税の徴収権の時効については,この款に別段の定めがあるものを除き,民法の規定を準用する。
(書類の送達)
第 20 条 地方団体の徴収金の賦課徴収又は還付に関する書類は,郵便若しくは信書便による送達又は交付送達により,その送達を受けるべき者の住所,居所,事務所又は事業所に送達する。ただし,納税管理人があるときは,地方団体の徴収金の賦課徴収(滞納処分を除く。)又は還付に関する書類については,その住所,居所,事務所又は事業所に送達する。
2及び3略
4 通常の取扱いによる郵便又は信書便により第1項に規定する書類を発送した場合には,この法律に特 別の定めがある場合を除き,その郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律第2条第3項に規定する信書便物(中略)は,通常到達すべきであつた時に送達があつたものと推定する。
5 地方団体の長は,前項に規定する場合には,その書類の名称,その送達を受けるべき者の氏名,宛先及び発送の年月日を確認するに足りる記録を作成しておかなければならない。
(公示送達)
第20 条の2 地方団体の長は,前条の規定により送達すべき書類について,その送達を受けるべき者の住所,居所,事務所及び事業所が明らかでない場合又は外国においてすべき送達につき困難な事情があると認められる場合には,その送達に代えて公示送達をすることができる。
2略
3 前項の場合において,掲示を始めた日から起算して7日を経過したときは,書類の送達があつたものとみなす。
(第三者の納付又は納入及びその代位)
第20 条の6 地方団体の徴収金は,その納税者又は特別徴収義務者のために第三者が納付し,又は納入することができる。
2及び3略
(地方税に関する相殺)
第 20 条の9 地方団体の徴収金と地方団体に対する債権で金銭の給付を目的とするものとは,法律の別段の規定によらなければ,相殺することができない。還付金に係る債権と地方団体に対する債務で金銭の給付を目的とするものとについても,また同様とする。
電気事業法
(託送供給義務等)
第17 条 一般送配電事業者は,正当な理由がなければ,その供給区域における託送供給(中略)を拒んではならない。
2 一般送配電事業者は,その電力量調整供給を行うために過剰な供給能力を確保しなければならないこととなるおそれがあるときその他正当な理由がなければ,その供給区域における電力量調整供給を拒んではならない。
3~5略水道法
(給水義務)
第15 条 水道事業者は,事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは,正 当の理由がなければ,これを拒んではならない。
2略
3 水道事業者は,当該水道により給水を受ける者が料金を支払わないとき,正当な理由なしに給水装置 の検査を拒んだとき,その他正当な理由があるときは,前項本文の規定にかかわらず,その理由が継続する間,供給規程の定めるところにより,その者に対する給水を停止することができる。
医師法
第19 条 診療に従事する医師は,診察治療の求があつた場合には,正当な事由がなければ,これを拒んではならない。
2略
公営住宅法
(敷金)
第 18 条 事業主体は,公営住宅の入居者から3月分の家賃に相当する金額の範囲内において敷金を徴収することができる。
2 事業主体は,病気にかかつていることその他特別の事情がある場合において必要があると認めるときは,敷金を減免することができる。
3略
(入居者の保管義務等)
第27 条 公営住宅の入居者は,当該公営住宅又は共同施設について必要な注意を払い,これらを正常な状態において維持しなければならない。
2 公営住宅の入居者は,当該公営住宅を他の者に貸し,又はその入居の権利を他の者に譲渡してはなら ない。
3 公営住宅の入居者は,当該公営住宅の用途を変更してはならない。ただし,事業主体の承認を得たときは,他の用途に併用することができる。
4 公営住宅の入居者は,当該公営住宅を模様替し,又は増築してはならない。ただし,事業主体の承認を得たときは,この限りでない。
5 公営住宅の入居者は,当該公営住宅の入居の際に同居した親族(婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者その他婚姻の予約者を含む。)以外の者を同居させようとするときは,国土交通省令で定めるところにより,事業主体の承認を得なければならない。
6 公営住宅の入居者が死亡し,又は退去した場合において,その死亡時又は退去時に当該入居者と同居していた者は,国土交通省令で定めるところにより,事業主体の承認を受けて,引き続き,当該公営住宅に居住することができる。
(公営住宅の明渡し)
第32 条 事業主体は,次の各号のいずれかに該当する場合においては,入居者に対して,公営住宅の明渡しを請求することができる。
(1) 入居者が不正の行為によつて入居したとき。
(2) 入居者が家賃を3月以上滞納したとき。
(3) 入居者が公営住宅又は共同施設を故意に毀損したとき。
(4)~(6)略
2 公営住宅の入居者は,前項の請求を受けたときは,速やかに当該公営住宅を明け渡さなければならない。
3~6略
行旅病人及行旅死亡人取扱法
第 11 条 行旅死亡人取扱ノ費用ハ先ツ其ノ遺留ノ金銭若ハ有価証券ヲ以テ之ニ充テ仍足ラサルトキハ相続人ノ負担xx相続人ヨリ弁償ヲ得サルトキハ死亡人ノ扶養義務者ノ負担トス
遺失物法
(報労金)
第28 条 物件(誤って占有した他人の物を除く。)の返還を受ける遺失者は,当該物件の価格(第9条第
1項若しくは第2項又は第20 条第1項若しくは第2項の規定により売却された物件にあっては,当該売却による代金の額)の100 分の5以上100 分の20 以下に相当する額の報労金を拾得者に支払わなければならない。
2 前項の遺失者は,当該物件の交付を受けた施設占有者があるときは,同項の規定にかかわらず,拾得者及び当該施設占有者に対し,それぞれ同項に規定する額の2分の1の額の報労金を支払わなければならない。
3 国,地方公共団体,独立行政法人(中略),地方独立行政法人(中略)その他の公法人は,前2項の報労金を請求することができない。
建築基準法
(建築物が防火地域又は準防火地域の内外にわたる場合の措置)
第 65 条 建築物が防火地域又は準防火地域とこれらの地域として指定されていない区域にわたる場合においては,その全部についてそれぞれ防火地域又は準防火地域内の建築物に関する規定を適用する。ただし,その建築物が防火地域又は準防火地域外において防火壁で区画されている場合においては,その防火壁外の部分については,この限りでない。
2 建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合においては,その全部について防火地域内の建築物に関する規定を適用する。ただし,建築物が防火地域外において防火壁で区画されている場合においては,その防火壁外の部分については,準防火地域内の建築物に関する規定を適用する。
学校給食法
(経費の負担)
第 11 条 学校給食の実施に必要な施設及び設備に要する経費並びに学校給食の運営に要する経費のうち政令で定めるものは,義務教育諸学校の設置者の負担とする。
2 前項に規定する経費以外の学校給食に要する経費(以下「学校給食費」という。)は,学校給食を受ける児童又は生徒の学校教育法第16 条に規定する保護者の負担とする。