Contract
第3条(事業者及び消費者の努力)
(事業者及び消費者の努力)
第3条 事業者は、次に掲げる措置を講ずるよう努めなければならない。
一 消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が、その解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なものになるよう配慮すること。
二 消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものの性質に応じ、事業者が知ることができた個々の消費者の年齢、心身の状態、知識及び経験を総合的に考慮した上で、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供すること。
三 民法(明治29年法律第89号)第548条の2第1項に規定する定型取引合意に該当する消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者が同項に規定する定型約款の内容を容易に知り得る状態に置く措置を講じているときを除き、消費者が同法第548条の3第1項に規定する請求を行うために必要な情報を提供すること。
四 消費者の求めに応じて、消費者契約により定められた当該消費者が有する解除権の行使に関して必要な情報を提供すること。
2 消費者は、消費者契約を締結するに際しては、事業者から提供された情報を活用し、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容について理解するよう努めるものとする。
Ⅰ 第1項
1 趣旨等
(1)趣旨
本項は、第1条の目的に沿って、事業者の努力義務を規定したものである。事業者と消費者との間に情報・交渉力の格差が存在することが、事業者と消費者との間で締結された契約において発生する紛争の背景となることが少なくない。したがって事業者には、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が明確なものでかつ消費者にとって平易なものになるよう配慮すること(契約条項の明確化)が求められるとともに、消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供すること(情報提供)が求められる。なお、平成 30 年改正により、契約条項の明確化と情報の提供を第1号と第2号に分けて規定するとともに、それぞれについて改正がされた。また、令和4年通常国会改正により、第2号の勧誘時の情報提供の努力義務について考慮要素として年齢と心身の状態を追加する等の改正がされる
とともに、定型約款の表示請求権に関する情報提供及び解除権行使に必要な情報提供の努力義務も追加する改正がされた。
(2)事業者の努力義務を本法に規定する意義
書面交付等も含めて、事業者からの消費者に対する情報提供義務を規定した法律としては、商品先物取引法第 217 条、割賦販売法第3条、特定商取引法第4条、金
融商品取引法第 37 条の3、旅行業法第 12 条の4、宅地建物取引業法第 35 条第1項及び第2項等がある。
こうした法律に同趣旨の規定が存在するにもかかわらず本項に事業者の努力義務を規定するのは、これらが個別の業種を対象にしたものであるのに対して、消費者契約法は消費者契約全体に関して規定するものだからである。
一方で、本項に規定するような事業者の努力義務は、消費者基本法に規定すべきものということも考えられる。しかし、消費者基本法は抽象的な義務を規定しているのに対し、消費者契約法では努力義務とはいえ消費者契約という局面における具体化された義務を規定しており、実体規定と一体化して本項が規定されることには意義が存在する。
(3)努力義務という形式を採る理由
意思表示に瑕疵があるとして、取消しの効果が認められている場合は詐欺、強迫 に限られていることや、消費者契約法が消費者に自己責任を求めることが不適切な 場合に限って特別なルールを認めようという考え方からすると、単なる「情報の不 提供」で取消しを認めることについては慎重に考える必要があり、真に必要な場合 に限定する必要があると考えられる。第 17 次国民生活審議会消費者政策部会消費 者契約法検討委員会の場においても、単なる「重要事項」の不提供だけで、取消し 等の効果を付与するのは適当でないという見解が示された。したがって、取消しと いう効果を付与するのにふさわしい類型というのは、積極的にある事実が告知され る一方でそれに密接に関連する別の事実が告知されないことによって、消費者が重 要事項について誤認してしまうようなケースに限られるのではないかと考えられる。それ以外の情報の不提供の類型については努力義務にとどめることが適当であると 考えられる。
本項は努力義務であるので、本項に規定する義務違反を理由として契約の取消し
や損害賠償責任といった私法的効力が直ちに生ずるものではない。
もっとも、平成 30 年改正前の本項の規定に基づく努力義務を考慮してxxx上の説明義務を導いた上で、当該説明義務に違反したことが不法行為を構成するとして事業者に損害賠償責任を認めた裁判例(名古屋地判平成 28 年1月 21 日判例時報
2304 号 83 頁)があるように、本規定の義務違反が他の規定の解釈や適用に影響を与えることはあり得るものと考えられる。
また、適格消費者団体が、事業者が使用する契約条項が第8条第1項第1号及び
第3号に規定する免責条項に該当するとして差止請求をし、事業者は、当該契約条項は事業者が損害賠償責任を負わない場合を確認的に規定したものにすぎず免責条項ではないと主張した事案において、本項第1号に言及し、「事業者を救済する(不当条項性を否定する)との方向で、消費者契約の条項に文言を補い限定解釈をすることは、同項の趣旨に照らし、極力控えるのが相当である。」とし、問題となった条項の使用の差し止めを認めた裁判例が存在する(東京高判令和2年 11 月5日(裁判
所HP参照)。第xxはさいたま地判令和2年2月5日判時 2458 号 84 頁。)。
2 条文の解釈等
(1)契約条項の明確化ア 平成 30 年改正の趣旨
平成 30 年改正前の本項は、事業者の努力義務として、事業者が消費者契約の条項を定めるに当たっては消費者契約の内容が明確かつ平易なものになるよう配慮することを定めていた。
消費者契約の内容が真に明確であれば、その解釈に疑義が生ずることはないはずである。しかし、実際に使用されている消費者契約の条項の中には、xxすると明確のようであるものの、真に明確であるとはいえず、その結果、解釈に疑義が生じている条項が散見される。例えば、契約書の条項を単に「A、B」と記載する場合は、xxすると明確のようであるが、「AかつB」とも「A又はB」とも解釈することが可能となり、解釈について疑義が生じ得る。そのため、平成 30 年改正によって、「解釈について疑義が生じない」という部分を条文上明示することで、事業者に対して明確な条項を定めるよう、より分かりやすい形で促すこととされた。
また、消費者契約の内容について解釈に疑義が生じない明確なものになるよう配慮する旨を条文上明らかにすることは、条項使用者不利の原則が本項の趣旨から導かれる考え方の一つであることを条文上より明確にするという意味も持つものと考えられる。
イ 条文の解釈
① 「権利義務」と「その他の契約の内容」
本項第1号は、事業者に対して、消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮に努めることを求めている。
「契約の内容」には、商品・権利・役務等の質及び用途、契約の目的物の対価や取引条件、商品名、事業者の名称等が含まれる。このうち、契約の目的物の対価や取引条件は消費者の「権利義務」に該当する。また商品・権利・役務等の質及び用途は全てではないものの、一部は消費者の「権利義務」に該当し得る。消費者の「権利義務」に該当する部分は「契約の内容」の中でも主要な部分であるので特に例示したものであり、「契約の内容」に含まれる。
② 「解釈について疑義が生じない」
「解釈について疑義が生じない」については、契約の内容が解釈によって確定されることはあり得るものであり、契約の内容について解釈が必要であることをもって、「解釈について疑義が生じ」ていることを意味するものではない。
● 条項使用者不利の原則
契約の条項について、解釈を尽くしてもなお複数の解釈の可能性が残る場合には、条項の使用者に不利な解釈を採用すべきであるという考え方を条項使用者不利の原則という。
この原則の根拠としては、消費者と事業者との間には情報・交渉力の格差があることに鑑みると、条項が不明確であることによって複数の解釈が可能である場合、紛争が生じたときには消費者は事業者から不利な解釈を押し付けられるおそれがあるので、消費者の利益の擁護を図る必要があることが挙げられる。また、条項使用者不利の原則によって、事業者に対して明確な条項を作成するインセンティブを与えることになり、ひいては条項の解釈に関する消費者と事業者との間の紛争を未然に防止することが期待できる。
本法には条項使用者不利の原則を定めたxxの規定はないものの、事業者は「消費者契約の内容が、その解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なものになるよう配慮する」よう努めなければならないという本項第1号の趣旨から導かれる考え方の一つであるということができる(注)。
(注)条項使用者不利の原則を適用することが考えられる具体的な事例としては、例えば、消費者契約の条項において消費者が事業者に対して金銭支払義務を負う要件として「A、B」と定められていたものの、他の条項ではAやBという文言が用いられておらず、AやBの定義を定めた規定もない等により、「A、B」が、AかつBなのか、A又はBなのかを、解釈を尽くしても確定することができない場合が考えられる。この場合、AかつBと解釈する方が、A又はBと解釈するよりも、消費者が金銭支払義務を負う範囲が狭くなる点で事業者に不利であるため、条項使用者不利の原則を適用した場合には、AかつBと解釈することになると考えられる。
③ 「明確なもので、かつ、消費者にとって平易なもの」
第 17 次国民生活審議会消費者政策部会消費者契約法検討委員会報告においては、簡易生命保険法第7条第3項(注)(当時のもの)を参考に「……明確にするとともに、分かりやすいものにするよう配慮しなければならない」という表現を用いている。これを条文化したものが平成 30 年改正前の「明確かつ平易」という表現である。
平成 30 年改正によって、「その解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なもの」という表現とされた。
(注)簡易生命保険法は平成 19 年 10 月1日廃止された。消費者契約法立案当時の条文は、以下のとおり。
第7条第3項
郵政大臣は、保険約款を定めるに当たつては、簡易生命保険が簡易に利用できる生命保険として国民に提供される制度であることに留意し、簡易生命保険の範囲及び保険契約による権利義務を明確にするとともに、分かりやすいものにするよう配慮しなければならない。
(2)契約内容に関する情報提供
ア 平成 30 年改正の趣旨
消費者と事業者との間には情報の質及び量について構造的な格差があることから、改正前の本項は、事業者の努力義務として、事業者の消費者に対する契約内容に関 する一般的な情報提供を規定していた。
もっとも、提供された情報をどの程度理解することができるかは個々の消費者の知識及び経験や消費者契約の目的となるものの性質によってそれぞれ異なるものであり、「消費者の理解を深めるために」情報を提供するという当該規定の趣旨に照らすと、事業者は、勧誘に際して、消費者契約の目的となるものの性質に応じ、個々の消費者の知識及び経験を考慮した上で、必要な情報を提供することが望ましいと考えられる。
そこで、平成 30 年改正により、情報提供の在り方として、「物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものの性質に応じ、個々の消費者の知識及び経験を考慮した上で」という文言を追加することとされた。
イ 令和4年通常国会改正の趣旨
近年、消費者取引がますます多様化・複雑化していることに照らすと、事業者には個々の消費者の理解に応じた丁寧な情報提供をより積極的に行うことが求められている。ところが、事業者にとって消費者の知識及び経験は分からないことが多く、本号第2号の活用にも限界があった。そこで、考慮すべき消費者の事情として年齢及び心身の状態を追加するとともに、消費者の年齢、心身の状態、知識及び経験を総合的に考慮した上で情報を提供する旨を規定することとされた。
ウ 条文の解釈
① 「物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものの性質に応じ」
本号の「物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるもの」については、第4条第4項参照のこと。
個々の消費者の知識及び経験の考慮が求められる程度は、消費者契約の目的となるものの性質によって異なるものと考えられる。
例えば、消費者契約の目的となるものが使用方法の複雑ではない日用品等である場合、こうした性質を踏まえると、売主である事業者が買主である消費者の知識及び経験を考慮すべき程度は必ずしも高くないものと考えられる。
他方、消費者契約の目的となるものが複雑な仕組みの商品・役務である場合、消 費者が十分に理解できないおそれがある等の当該商品・役務の性質を踏まえると、 事業者が消費者の知識及び経験を考慮すべき程度は相対的に高いものと考えられる。
② 「事業者が知ることができた個々の消費者の年齢、心身の状態、知識及び経験を総合的に考慮した上で」
情報を提供するに当たって考慮すべき個々の消費者の事情としては、消費者の理解の不十分さを伺わせる手がかりとなるものという観点から、「年齢」、「心身の状態」、「知識及び経験」を規定している。
例えば、対面取引等において、若年者である又は高齢者であるという意味で、消費者の「年齢」を知ることができたのであれば、必要に応じ、消費者の「年齢」を考慮して説明することが求められるし、消費者が若年者や高齢者ではなかったとしても、消費者の判断力が低下していることを知ることができたのであれば、必要に応じ、「心身の状態」を考慮して説明することが求められる。また、消費者が若年者や高齢者であって、知識や経験が十分でないようなときには、この点を考慮して、一般的・平均的な消費者のときよりも、より基礎的な内容から説明を始めること等が事業者に求められる。さらに、特定の考慮事情のみで(例えば、消費者の「年齢」だけを基準として)画一的な対応をするようなことは避けるべきである。これらの点を明らかにするため、「事業者が知ることができた」個々の消費者の事情を「総合的に」考慮する旨を定めることとされた。
もっとも、事業者に期待されるのは、事業者がこれらの消費者の事情を知ることができた場合には、その事情を考慮した上で情報提供を行うことであり、事業者に対し、これらの事情を積極的に調査することまで求めるものではない。
③ 「消費者契約の内容についての」
本項第2号が事業者に消費者へ提供することを要請している情報とは、「消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての」情報のことであり、契約内容以外の周辺的な情報まで含めることを意味するものではない。具体的には、対象となっている商品以外の商品に関する比較情報や、モデルチェンジに関する情報等は「消費者の権利義務その他の消費者契約の内容」には該当せず、事業者が提供するよう努めなければならない情報には当たらない。
④ 「必要な情報」
上記のような情報提供努力義務が事業者にあるとしても、消費者契約の内容につ いての情報を全て提供することまで本法は事業者に対して求めているわけではない。消費者契約の内容についての情報のうち、消費者が当該契約を締結するのに必要な ものを提供すれば足りる。その範囲は、第4条第5項第1号及び第2号にいう「消
費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべき」重要なものよりは広い概念であるが、消費者が当然に知っているような情報まで提供する努力義務はない。
(3)定型約款の表示請求権に関する情報提供
ア 趣旨
ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものは、民法上、「定型取引」と定義され、この定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体を「定型約款」という。この定型約款を準備した者は、定型取引を行うことの合意の前又はその合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な理由でその定型約款の内容を示さなければならない(民法第 548 条の3第1項。以下「定型約款の表示請求権」という。)。
定型取引の相手方に認められる定型約款の表示請求権は、契約の締結前後に定型約款の内容を知る権利を保障するものであり、重要な権利である。しかし、定型約款準備者の相手方が消費者である場合には、当該消費者は定型約款の表示請求権があることを知らないことも多いと考えられる。そこで、令和4年通常国会改正により、本項第3号において、消費者が定型約款の表示請求権を実際に行使できるようにするため、定型約款準備者である事業者の努力義務として、定型約款の表示請求権についての必要な情報を提供する旨を規定することとされた。
もっとも、事業者が、消費者が定型約款の内容を容易に知り得る状態に置く措置を講じている場合もあると考えられ、この場合には、別途、定型約款の表示請求権についての情報提供を行う必要はないと考えられることから、事業者は当該情報提供についての努力義務を負わないこととされた(注)。
(注)消費者契約において定型約款が用いられる場合には、情報・交渉力において構造的に劣位にある消費者が、安心して定型約款による取引を行えるようにする必要があり、この観点から、消費者が定型約款の内容を確認したいと考える場合には、定型約款準備者に請求するまでもなく、容易に定型約款の内容を知ることができるようにするのが本来望ましいものと考えられる。
イ 条文の解釈
① 「消費者が…定型約款の内容を容易に知り得る状態に置く措置」
消費者が定型約款の内容を容易に知り得る状態に置く措置としては、定型約款を記載した書面を交付することや、定型約款を記録したCD、DVDなどの電磁的記録を提供することが考えられる(民法第 548 条の3第1項ただし書参照)。また、定型約款を契約の内容とするためには、定型約款準備者(事業者)は、定型約款を契
約の内容とする旨の合意をするか、又は、あらかじめ定型約款を契約の内容とする旨を相手方(消費者)に表示する必要があるので(民法第 548 条の2第1項各号)、この合意又は表示と連携する形で、契約を締結しようとしている消費者が定型約款の内容を確認したいと考えたときに、容易に定型約款の内容に辿り着く(アクセスする)ことができるようにすることも、消費者が定型約款の内容を容易に知り得る状態に置く措置であると考えられる。
例えば、①店舗における取引であれば、消費者が契約を締結するまでに目に入る場所に、「当店では〇〇約款(定型約款)を使用しています。詳細は当社ウェブサイトをご覧ください」と記載した紙を貼り、店舗のウェブサイトの分かりやすいところに定型約款を掲載すること、②駐車場やコインロッカーの利用契約であれば、消費者が契約をする際に目につく場所に、定型約款の内容を記載した札を立てたり、定型約款の内容を記載したシールを貼ったりしておくこと、③オンライン取引であれば、契約締結画面までの間に画面上で認識可能な形で定型約款のリンクを表示し、そのリンクをクリックすると定型約款の内容が表示されるようにすることが考えられる。
② 「請求を行うために必要な情報」
定型約款の表示請求権に係る「請求を行うために必要な情報」には、定型約款の表示請求権の存在のみならず、消費者が請求をする場合の事業者の連絡先(住所やメールアドレス)、事業者が表示請求に関して書式を用意しているのであればその書式等が含まれる。
(4)消費者の解除権の行使に関する情報提供
ア 趣旨
消費者契約において任意解除権が設定されていても、その存在や行使の方法が、消費者にとって分かりにくい等の理由により、消費者による契約の任意解除が困難となる事例が見られる。任意解除権に係る事項は、本項第2号によって勧誘時の情報提供の努力義務の対象とされているものの、実際に消費者が任意解除について関心を抱くのは、解除しようと考えた段階であることが多いと考えられるから、勧誘時のみの情報提供では実効性が低い。
また、任意解除の方法を消費者が知らないために任意解除ができない事態も消費者と事業者との間の情報・交渉力の格差に起因する消費者被害である。
そこで、令和4年通常国会改正により、本項第4号において、消費者の理解を深め、消費者被害の発生を防止するため、消費者の求めに応じて当該消費者が有する解除権の行使に関して必要な情報を提供する努力義務が定められた。
なお、本項第4号は全ての消費者契約を対象とするものであり、オンライン、非オンラインの消費者契約のいずれであるかを問わない。また、いわゆるサブスクリプション契約も含まれる。
本法に規定される事業者の努力義務は、従前は契約締結時までのものであったが、令和4年通常国会改正によって、契約締結後の契約からの離脱の場面等にまで射程が広げられた。
イ 条文の解釈
① 「消費者の求めに応じて」
本項第4号の努力義務は、解除権行使を考えようとする場面で消費者の理解を深めるという趣旨に基づくことから、消費者が解除権の行使に関する情報の提供を求めたときに事業者に課せられるものとされている。
② 「消費者契約により定められた当該消費者が有する解除権」
「消費者契約により定められた当該消費者が有する解除権」とは、消費者と事業者の解除についての合意によって発生する解除権(約定解除権)を指す(注)。そのため、民法第 541 条等の法律の規定による法定解除権と同一の内容の解除権を消費者契約で合意した場合は含まれないが、例えば、事業者の債務不履行を理由として消費者が消費者契約を解除するための要件を加重するように、消費者契約で法定解除権の条件を変更する合意をする場合は含まれる。
(注)民法第 540 条第1項で「契約……により当事者の一方が解除権を有するとき」と規定される解除権である。
③ 「解除権の行使に関して必要な情報」
「解除権の行使に関して必要な情報」とは、消費者契約を消費者が解除する際に必要な具体的な手順等の情報を指す。
例えば、消費者契約の締結後に事業者のウェブサイト上で解除の手続をしようとしてもどの画面にアクセスすれば良いのか分かりにくい、手続が複雑・煩雑である等の事例では、任意解除権を行使するために具体的にどのような手順を踏めば解除できるのか等の情報が該当する。
仮にウェブサイト上に解除の手続の方法が表示されているが、その具体的な手順が消費者にとって分かりにくい場合には、事業者は、単に当該ウェブサイトの存在を消費者に伝えたのみでは消費者に必要な情報を提供したこととならない場合もあると考えられる。一方で、ウェブサイト上に解除の手続が消費者にとって分かりやすく表示されており、具体的な手順も分かりやすい場合には、事業者は、当該ウェブサイトの存在を消費者に伝えるだけで、具体的な手順の詳細まで伝えないことでも、消費者に必要な情報を提供したこととなる場合もあると考えられる。
Ⅱ 第2項
1 趣旨
本項は、第1条の目的に沿って、消費者の努力義務を規定したものである。規制緩和・撤廃後の自己責任に基づく市民社会においては、消費者も契約の当事者としての責任を自覚し、その責任を果たさなければならないことから、消費者には、消費者契約を締結するに際しては、事業者から提供された情報を活用し、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容について理解することが求められることとなる。消費者の内容理解義務を規定した法律としては、食料・農業・農村基本法第 12 条 や消費者基本法第7条などがある。こうした法律に同趣旨の規定が存在するにもかかわらず本項に事業者及び消費者の努力義務を規定するのは、こうした法律が消費者基本法を除いて個別の業種を対象にしたものであるのに対して、消費者契約法は
消費者契約全体に関して規定するものだからである。
一方で、本項に規定するような消費者の努力義務は、消費者基本法に規定すべきものということも考えられる。しかし、消費者基本法は抽象的な義務を規定しているのに対し、消費者契約法では努力義務とはいえ消費者契約という局面における具体化された義務を規定しており、実体規定と一体化して本項が規定されることには意義が存在する。
2 条文の解釈
①「提供された情報を活用」
本項では消費者に対して、事業者から提供された情報を活用することを要請しているが、この背景には消費者が自ら収集した情報も活用することが当然に存在する。しかし、事業者と消費者との間には情報・交渉力の格差が存在することから、消費者には自ら情報を収集する努力までも求めるものではない。事業者から情報が提供されることを前提として、少なくとも提供された情報は活用することを消費者に求めるものである。
②「理解するよう努める」
消費者は、事業者から提供された情報を活用して契約の内容を理解することが求められるとしても、当該契約の内容を全て理解することはおよそ不可能である。消費者に求められているのは契約内容を完全に理解することではなく、自己責任を問い得る程度のレベルまで契約内容を理解し、本法で取消しとされるようなトラブルに至らないようにすることである。
3 「努めなければならない」(第1項)と「努めるものとする」(第2項)との差異
法制執務研究会編『新訂ワークブック法制執務第2版』(ぎょうせい、2018)によると、「『……するものとする』は、『……しなければならない』がある一定の義務付
けを意味するのに対して、通常は、それより若干弱いニュアンスを表し、一般的な原則あるいは方針を示す規定の述語として用いられる」とされている。自己責任に基づき、消費者も契約の当事者としての責任を自覚し、その責任を果たさなければならないことを前提としつつ、消費者と事業者との間の情報・交渉力の格差に鑑みて消費者に求められる努力のニュアンスを若干弱めたものである。
● サルベージ条項
サルベージ条項とは、ある条項が本来は強行法規に反し全部無効となる場合 に、その条項の効力を強行法規によって無効とされない範囲に限定する趣旨の条項をいう。例えば、本来であれば無効となるべき条項に「法律で許容される範囲において」という文言を加えたものがこれに当たる。
サルベージ条項が使用された場合、有効とされる条項の範囲が明示されていないため、消費者が不利益を受けるおそれがあるという問題がある。
事業者は、消費者にとって「消費者契約の内容が、その解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易な」条項を作成するよう配慮する努力義務を負っていることから(第3条第1項第1号)、サルベージ条項を使用せずに具体的に条項を作成するよう努めるべきである。
令和4年通常国会改正により、サルベージ条項のうち、事業者の損害賠償責任の一部を免除するものについて、事業者の軽過失による場合にのみ適用されることを明らかにしていないものを無効とする規定が設けられた(第8条第3項)。サルベージ条項のうち、事業者の損害賠償責任の一部を免除するものとして、例えば、「賠償額は、法律で許容される範囲内において、10 万円を限度とします」という条項があるが、法は事業者の故意又は重過失による損害賠償の一部を免除する条項を無効としていることから(第8条第1項第2号、第4号)、令和4年通常国会改正により追加された第8条第3項により、「賠償額は 10 万円を限度とします。ただし、事業者の故意又は重過失による場合を除きます」と具体的に書き分けなければ当該条項は無効とされることとなった。第8条第3項の解説を参照。
● 事業者の情報提供義務及び消費者の内容理解義務に関する立法例
商品先物取引法(昭和 25 年法律第 239 号)
(商品取引契約の締結前の書面の交付)
第 217 条 商品先物取引業者は、商品取引契約を締結しようとするときは、主務省令で定めるところにより、あらかじめ、顧客に対し次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一 当該商品取引契約に基づく取引(第2条第3項第4号に掲げる取引にあつては同号の権利を行使することにより成立する同号イからホまでに掲げる取引をいい、同条第 14 項第4号に掲げる取引にあつては同号の権利を行使することにより成立する同号イからニまでに掲げる取引をいい、同項第5号に掲げる取引にあつては同号の権利を行使することにより成立する同号に規定する金銭を授受することとなる取引をいう。)の額(取引の対価の額又は約定価格若しくは約定数値に、その取引の件数又は数量を乗じて得た額をいう。)が、当該取引について顧客が預託すべき取引証拠金、取次証拠金又は清算取次証拠金その他の保証金その他主務省令で定めるもの(以下この項及び第 220 条の2第1項において「取引証拠金等」という。)の額を上回る可能性がある場合にあつては、次に掲げる事項
イ 当該取引の額が当該取引証拠金等の額を上回る可能性がある旨
ロ 当該取引の額の当該取引証拠金等の額に対する比率(当該比率を算出することができない場合にあつては、その旨及びその理由)
二 商品市場における相場その他の商品の価格又は商品指数に係る変動により当該商品取引契約に基づく取引について当該顧客に損失が生ずることとなるおそれがあり、かつ、当該損失の額が取引証拠金等の額を上回ることとなるおそれがある場合には、その旨
三 前2号に掲げるもののほか、当該商品取引契約に関する事項であつて、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして政令で定めるもの
四 前3号に掲げるもののほか、当該商品取引契約の概要その他の主務省令で定める事項
2 商品先物取引業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該顧客の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて主務省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該書面に記載すべき事項を当該方法により提供した商品先物取引業者は、当該書面を交付したものとみなす。
割賦販売法(昭和 36 年法律第 159 号)
(割賦販売条件の表示)
第3条 割賦販売を業とする者(以下「割賦販売業者」という。)は、前条第1項第1号に規定する割賦販売(カード等を利用者に交付し又は付与し、そのカード等の提示若しくは通知を受けて、又はそれと引換えに当該利用者に商品若しくは権利を販売し、又は役務を提供するものを除く。)の方法により、指定商品若しくは指定権利を販売しようとするとき又は指定役務を提供しようとするときは、その相手方に対して、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、当該指定商品、当該指定権利又は当該指定役務に関する次の事項を示さなければならない。 一 商品若しくは権利の現金販売価格(商品の引渡し又は権利の移転と同時にその代金の全額
を受領する場合の価格をいう。以下同じ。)又は役務の現金提供価格(役務を提供する契約の締結と同時にその対価の全額を受領する場合の価格をいう。以下同じ。)
二 商品若しくは権利の割賦販売価格(割賦販売の方法により商品又は権利を販売する場合の価格をいう。以下同じ。)又は役務の割賦提供価格(割賦販売の方法により役務を提供する場合の価格をいう。以下同じ。)
三 割賦販売に係る商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払(その支払に充てるための預金の預入れを含む。次項を除き、以下同じ。)の期間及び回数
四 第 11 条に規定する前払式割賦販売以外の割賦販売の場合には、経済産業省令・内閣府令で定める方法により算定した割賦販売の手数料の料率
五 第 11 条に規定する前払式割賦販売の場合には、商品の引渡時期
2 割賦販売業者は、前条第1項第1号に規定する割賦販売(カード等を利用者に交付し又は付与し、そのカード等の提示若しくは通知を受けて、又はそれと引換えに当該利用者に商品若しくは権利を販売し、又は役務を提供するものに限る。)の方法により、指定商品若しくは指定権利を販売するため又は指定役務を提供するため、カード等を利用者に交付し又は付与するときは、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、当該割賦販売をする場合における商品若
しくは権利の販売条件又は役務の提供条件に関する次の事項を記載した書面を当該利用者に交付しなければならない。
一 割賦販売に係る商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の期間及び回数二 経済産業省令・内閣府令で定める方法により算定した割賦販売の手数料の料率三 前2号に掲げるもののほか、経済産業省令・内閣府令で定める事項
3 割賦販売業者は、前条第1項第2号に規定する割賦販売の方法により、指定商品若しくは指定権利を販売するため又は指定役務を提供するため、カード等を利用者に交付し又は付与するときは、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、当該割賦販売をする場合における商品若しくは権利の販売条件又は役務の提供条件に関する次の事項を記載した書面を当該利用者に交付しなければならない。
一 利用者が弁済をすべき時期及び当該時期ごとの弁済金の額の算定方法
二 経済産業省令・内閣府令で定める方法により算定した割賦販売の手数料の料率三 前2号に掲げるもののほか、経済産業省令・内閣府令で定める事項
4 割賦販売業者は、第1項、第2項又は前項の割賦販売の方法により指定商品若しくは指定権利を販売する場合の販売条件又は指定役務を提供する場合の提供条件について広告をするときは、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、当該広告に、それぞれ第1項各号、第2項各号又は前項各号の事項を表示しなければならない。
特定商取引法(昭和 51 年法律第 57 号)
(訪問販売における書面の交付)
第4条 販売業者又は役務提供事業者は、営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利につき売買契約の申込みを受け、若しくは役務につき役務提供契約の申込みを受けたとき又は営業所等において特定顧客から商品若しくは特定権利につき売買契約の申込みを受け、若しくは役務につき役務提供契約の申込みを受けたときは、直ちに、主務省令で定めるところにより、次の事項についてその申込みの内容を記載した書面をその申込みをした者に交付しなければならない。ただし、その申込みを受けた際その売買契約又は役務提供契約を締結した場合においては、この限りでない。
一 商品若しくは権利又は役務の種類
二 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価
三 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法四 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
五 第9条第1項の規定による売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又は売買契約若しくは役務提供契約の解除に関する事項(同条第2項から第7項までの規定に関する事項
(第 26 条第2項、第4項又は第5項の規定の適用がある場合にあつては、当該各項の規定に関する事項を含む。)を含む。)
六 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項
金融商品取引法(昭和 23 年法律第 25 号)
(契約締結前の書面の交付)
第 37 条の3 金融商品取引業者等は、金融商品取引契約を締結しようとするときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、顧客に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。ただし、投資者の保護に支障を生ずることがない場合として内閣府令で定める場合は、この限りでない。
一 当該金融商品取引業者等の商号、名称又は氏名及び住所
二 金融商品取引業者等である旨及び当該金融商品取引業者等の登録番号三 当該金融商品取引契約の概要
四 手数料、報酬その他の当該金融商品取引契約に関して顧客が支払うべき対価に関する事項であつて内閣府令で定めるもの
五 顧客が行う金融商品取引行為について金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動により損失が生ずることとなるおそれがあるときは、その旨
六 前号の損失の額が顧客が預託すべき委託証拠金その他の保証金その他内閣府令で定めるものの額を上回るおそれがあるときは、その旨
七 前各号に掲げるもののほか、金融商品取引業の内容に関する事項であつて、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして内閣府令で定める事項
2 第 34 条の2第4項の規定は、前項の規定による書面の交付について準用する。
3 金融商品取引業者等は、第2条第2項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利に係る金融商品取引契約の締結の勧誘(募集若しくは売出し又は募集若しくは売出しの取扱いであつて、政令で定めるものに限る。)を行う場合には、あらかじめ、当該金融商品取引契約に係る第1項の書面の内容を内閣総理大臣に届け出なければならない。ただし、投資者の保護に支障を生ずることがない場合として内閣府令で定める場合は、この限りでない。
旅行業法(昭和 27 年法律第 239 号)
(取引条件の説明)
第 12 条の4 旅行業者等は、旅行者と企画旅行契約、手配旅行契約その他旅行業務に関し契約を締結しようとするときは、旅行者が依頼しようとする旅行業務の内容を確認した上、国土交通省令・内閣府令で定めるところにより、その取引の条件について旅行者に説明しなければならない。
2 旅行業者等は、前項の規定による説明をするときは、国土交通省令・内閣府令で定める場合を除き、旅行者に対し、旅行者が提供を受けることができる旅行に関するサービスの内容、旅行者が旅行業者等に支払うべき対価に関する事項、旅行業務取扱管理者の氏名、通訳案内士法
(昭和二十四年法律第二百十号)第二条第一項に規定する全国通訳案内士(以下単に「全国通訳案内士」という。)又は同条第二項に規定する地域通訳案内士(以下単に「地域通訳案内士」という。)の同行の有無その他の国土交通省令・内閣府令で定める事項を記載した書面を交付しなければならない。
3 旅行業者等は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、旅行者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令・内閣府令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該旅行業者等は、当該書面を交付したものとみなす。
宅地建物取引業法(昭和 27 年法律第 176 号)
(重要事項の説明等)
第 35 条 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第5号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
一 当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあつては、その名称)
二 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。以下この条において同じ。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
三 当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは、私道に関する負担に関する事項 四 飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備
されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関す
る事項)
五 当該宅地又は建物が宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、その完了時における形状、構造その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
六 当該建物が建物の区分所有等に関する法律(昭和 37 年法律第 69 号)第2条第1項に規定する区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、同条第4項に規定する共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地(一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、その土地を含む。)に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で契約内容の別に応じて国土交通省令・内閣府令で定めるもの
六の二 当該建物が既存の建物であるときは、次に掲げる事項
イ 建物状況調査(実施後国土交通省令で定める期間を経過していないものに限る。)を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要
ロ 設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況
七 代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭の額及び当該金銭の授受の目的八 契約の解除に関する事項
九 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
十 第 41 条第1項に規定する手付金等を受領しようとする場合における同条又は第 41 条の2の規定による措置の概要
十一 支払金又は預り金(宅地建物取引業者の相手方等からその取引の対象となる宅地又は建物に関し受領する代金、交換差金、借賃その他の金銭(第 41 条第1項又は第 41 条の2第1項の規定により保全の措置が講ぜられている手付金等を除く。)であつて国土交通省令・内閣府令で定めるものをいう。以下第 64 条の3第2項第1号において同じ。)を受領しようとする場合において、同号の規定による保証の措置その他国土交通省令・内閣府令で定める保全措置を講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要
十二 代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせんの内容及び当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置
十三 当該宅地又は建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置で国土交通省令・内 閣府令で定めるものを講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要 十四 その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性及び契約内容の別を勘案して、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める命令で定める
事項
イ 事業を営む場合以外の場合において宅地又は建物を買い、又は借りようとする個人である宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に資する事項を定める場合 国土交通省令・内閣府令
ロ イに規定する事項以外の事項を定める場合 国土交通省令
2 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の割賦販売(代金の全部又は一部について、目的物の引渡し後1年以上の期間にわたり、かつ、2回以上に分割して受領することを条件として販売することをいう。以下同じ。)の相手方に対して、その者が取得しようとする宅地又は建物に関し、その割賦販売の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。
一 現金販売価格(宅地又は建物の引渡しまでにその代金の全額を受領する場合の価格をいう。)
二 割賦販売価格(割賦販売の方法により販売する場合の価格をいう。)
三 宅地又は建物の引渡しまでに支払う金銭の額及び賦払金(割賦販売の契約に基づく各回ご
との代金の支払分で目的物の引渡し後のものをいう。第 42 条第1項において同じ。)の額並びにその支払の時期及び方法
3 宅地建物取引業者は、宅地又は建物に係る信託(当該宅地建物取引業者を委託者とするものに限る。)の受益権の売主となる場合における売買の相手方に対して、その者が取得しようとしている信託の受益権に係る信託財産である宅地又は建物に関し、その売買の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第5号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。ただし、その売買の相手方の利益の保護のため支障を生ずることがない場合として国土交通省令で定める場合は、この限りでない。
一 当該信託財産である宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあつては、その名称)
二 当該信託財産である宅地又は建物に係る都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で政令で定めるものに関する事項の概要
三 当該信託財産である宅地又は建物に係る私道に関する負担に関する事項
四 当該信託財産である宅地又は建物に係る飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)
五 当該信託財産である宅地又は建物が宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、その完了時における形状、構造その他国土交通省令で定める事項
六 当該信託財産である建物が建物の区分所有等に関する法律第2条第1項に規定する区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、同条第4項に規定する共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地(一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、その土地を含む。)に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で国土交通省令で定めるもの
七 その他当該信託の受益権の売買の相手方の利益の保護の必要性を勘案して国土交通省令で定める事項
食料・農業・農村基本法(平成 11 年法律第 106 号)
(消費者の役割)
第 12 条 消費者は、食料、農業及び農村に関する理解を深め、食料の消費生活の向上に積極的な役割を果たすものとする。
消費者基本法(昭和 43 年法律第 78 号)
第7条 消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、及び必要な情報を収集する等自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならない。
2 消費者は、消費生活に関し、環境の保全及び知的財産xxの適正な保護に配慮するよう努めなければならない。