受注者は、仕様書作成、下請負先選定及び契約締結等の手続きを自らの責任の下で 実施して頂きますが、日本国の税金を原資とする本事業の特性を考慮の上、本ガイドラインを参照し、可能な限り JICA が定める調達のルール(会計関連規程等)に準じて、また、安全管理等にも十分留意の上、現地工事の第三者への「下請負」を行うようお願いいたします。
現地工事契約管理ガイドライン
1.本ガイドラインの目的
本ガイドラインは、受注者が業務対象国において建設・土木・設置工事等(以下、
「現地工事」という。)を第三者に「下請負」として発注する場合の選定方法や契約管理等について、ガイドラインとして取りまとめたものです。
受注者は、仕様書作成、下請負先選定及び契約締結等の手続きを自らの責任の下で 実施して頂きますが、日本国の税金を原資とする本事業の特性を考慮の上、本ガイドラインを参照し、可能な限り JICA が定める調達のルール(会計関連規程等)に準じて、また、安全管理等にも十分留意の上、現地工事の第三者への「下請負」を行うようお願いいたします。
なお、受注者と JICA 間の業務委託契約においては、業務委託契約約款第4条1項に定めるとおり、第三者への「下請負」は、原則として禁じられており、特記仕様書に第三者への「下請負」が可能な業務を定めているか、あらかじめ書面による JICA の承諾を得ない限り行うことは出来ません。そのため、業務対象国における現地工事の 実施に際しては、特記仕様書に規定しておくか JICA の書面による事前承諾を得て行う必要がある点にご留意ください。
2.設計・施工監理業者等の活用
受注者が、業務対象国において建設工事を発注する場合、工事の規模や種類にもよ りますが、信頼のおける建設コンサルタントや設計事務所等へ設計図面・技術仕様書 及び数量調書等、下請負先選定に必要な図書(入札図書・見積依頼図書、契約書等)の案の作成支援及び入札(調達)補助、下請負先選定後の施工監理、工事完成検査及 び契約不適合責任保証期間中の検査(後掲 5.(6)参照。)、工事遂行に必要不可欠 な書類作成の依頼等により、工事の品質の確保や現地事情を勘案した工期設定、順調 な工事完了の確保が期待できます。しかしながら、日本とは、自然環境・道路事情や 物流等のインフラ状況・商習慣・政治事情・社会背景・技術力のレベルなどが異なり ますので、施工業者のみならず建設コンサルタントや設計事務所等を活用する場合は、受注実績や経営状況等をよく検証した上で、発注条件や契約条項を検討してください。
なお、より効果的、効率的又は経済的な場合は、上記業務のうち、一部又は全部を業務従事者の担当業務(例:建設・土木設計、環境影響評価等)として設定することも可能です。
3.現地工事実施にかかる許認可
業務対象国にて現地工事を実施する場合、現地工事の対象となる土地の所有者の確認・使用の許可や現地工事を管轄する省庁からの許認可の必要の有無を受注者が必ず確認してください。許認可や利用許諾等が必要な場合は、それらを取得してから下請負先と契約締結し、現地工事の発注を行うようにしてください。
4.下請負先の選定
現地での下請負先を探すに際しては、先方実施機関やカウンターパート機関からの現地工事契約実績ショートリスト等を参考に、下請負先の候補となる建設業者の財務状況、施工実績や施工現場等を確認頂き、過去の賞罰関係の情報を入手した上で選定するように努めてください。
(1)選定方法
予定価格/調達価格により、以下の表のとおり適切な選定方法を定めています1。詳細は別紙「xx表(選定~契約~精算)」を参照してください。
予定価格 | 選定方法 |
1,000 万円超 | 競争入札(一般競争入札・指名競争入札) |
1,000 万円以下 | 指名競争入札又は見積競争 |
(2)選定方法の概要
選定方法とその概要は下表のとおりです。
選定方法 | 選定方法の概要 |
一般競争入札 | 競争参加者が、価格を記入した札を厳封にて提出し、予定価格の範囲内で最も安価な価格を提示したものを下請負先として選定する。競争参加者の募集方法として公告により、広く一般から 募る。 |
指名競争入札 | 特定の条件により受注者が指名した者同士で競争に付して決める方式。工事の内容・技術的難易度、工事規模、当該分野の建設業者の企業数にもよるが、可能な限り 5 者以上(最低でも 3 者、 最大で 10 者程度)を指名する。 |
1 特命随意契約の場合は、受注者は、下請負先を選定する前に 2 者打合簿にて、下請負の内容、特命随意契約の理由を改めて確認し、監督職員の合意を得てください。合意が得られない場合は、選定方式を見直していただきます。
見積競争 | 複数者(なるべく 3 者以上)に対して、以下の手順を明示した見積依頼書を配布し、手続きを行う。 ① 価格競争であることを明示し、 ② 見積り提出期限を設定し、 ③ 提出期限後に封函された見積書を一斉開封し(非公開。ただし関係者複数人の面前において)、 ④ その結果、発注者にとって有利な価格を提示した業者の順に契約交渉を行い、契約相手方を決定する。 見積競争参加者の募集方法は、「競争入札」と同様に、公告による。 |
なお、JICA 調達・派遣業務部では、JICA 在外事務所が調達する際に参照する入札図書雛型、見積依頼書雛型(英文。契約書等を含む。)等を準備していますので、これらを参照したい場合は、調達・派遣業務部調達推進第二課(xxxx0@xxxx.xx.xx)まで連絡してください。
5.下請負先との契約
(1)契約条件の確認
本事業に係る下請負先の権利義務関係は、受注者と下請負先との間で締結される契約書に規定されますので、入札図書の作成時や当該契約締結時に受注者が責任をもって法的リスクを低減すべく、業務対象国の関連法令に知見のある弁護士に当該契約書等のリーガルチェックを依頼するなど入念に確認してください。なお、当該契約書等のリーガルチェックに要する費用等は、計上費目のうちの「Ⅲ.管理費」に含まれるものとします。また、受注者と JICA との業務委託契約約款第9条に定めるとおり、業務の実施において生じた損害(当該約款に別途定める場合及び JICA に帰責性のある損害を除く。)については受注者が負担することと規定されているので、受注者と下請負先との契約上の紛争や賠償等は、両当事者間のみで解決することとなり、JICAが下請負先に係る紛争の仲介や賠償額を負担することはありません。
なお、前払等に関し受注者が受ける損害についても、受注者の責任の下で解決することになるので(業務委託契約約款第9条参照)、調達先との契約交渉で前払金等を要求された場合は、工事目的物の完成検査前に契約相手方が債務不履行を起こした際に前払金等の債権回収できる手段(前払保証書の取付、出来高払の設定)を十分に検討してください。
(2)契約締結と JICA への報告
下請負先と契約を締結する際には、必ず契約書を作成してください。
1)契約の基本的項目
契約書には、以下の枠内に記載のある内容を基礎的な項目として含めてください。また必要があれば、受注者がその責任と権限の下に、下請負先と協議の上、追加事項を記載し作成してください。契約署名者は業務xx者としてください。
1.契約件名
2.契約年月日
3.契約金額(支払通貨の指定を含む)
4.業務内容(工事の仕様・数量等)
5.業務の履行期限
6.支払条件(前払、部分払等)及び方法(後掲(5)参照)
7.履行の監督及び検査
8.契約の解除
9.危険負担
10.契約内容の変更又は履行中止の場合の損害負担
11.工事目的物の検査・引渡し後の契約不適合責任およびその保証期間
12.紛争の解決方法
13.第三者に及ぼす損害の責任
14.その他(準拠法、使用言語等)
2)打合簿による報告
業務xx者は、下請負先を選定し、契約を締結した後は速やかに、監督職員に対し選定経緯と契約内容を報告してください。JICA で選定手続きにおける関連書類を確認する場合がありますので、書類は適切に保管ください。打合簿には、選定の報告書と契約書の写し(英語以外の言語の場合、xx又は英文の翻訳もつける)を添付してください。
3)下請負先、内容の確認
現地での下請負について、受注者が選定経緯及び契約書(写)を提出した際、JICAは下請負先に対して、内容に関する事実(下請負先との契約の有無、契約金額、契約業務内容)の確認を行い、受注者からの報告内容と相違がないことを確認する場合があります。
(3)監督・検査
現地工事の監督業務は、監督者2が行います。監督者は、工事期間中、工事現場での立会いや工事進捗報告書(工事安全管理を含む)などに基づき工事の進捗を確認させてください。下請負先から工事完了の通知を受けた場合、工事の発注者(受注者)は、できるだけ下請負先、相手国政府等の機関の立会の下で、工事の完成を確認するための検査(以下「完成検査」という。)を必ず行ってください。なお、現地工事の規模等によっては JICA 在外拠点も立会う場合もありますので、工事完了の通知を受けた際は、JICA 在外事務所へ一報願います。
検査不合格の場合は、直ちに下請負先に修補による履行の追完を請求して、改めて検査を行ってください。
完成検査合格後は、打合簿を、JICA へ提出してください。
(補足)令和 2 年 4 月施行の日本における改正民法においては、「瑕疵(改正前民法 570条)」という文言は使われなくなり、「契約の内容に適合しないもの(改正後民法 562 条)」という文言になりました。併せて、改正後民法 566 条において、
「売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。」と規定しています。
業務対象国の法令に合わせて、検査不合格の場合の履行の追完や検査合格・引渡し後の契約不適合責任保証期間を設定し、その期間内に契約不適合が判明した場合には、業務対象国の法令に従って下請負先が対応することを明記するなど、当該規定を下請負先との契約の内容に含めてください。
(4)工事目的物の譲渡
受注者が下請負先に請け負わせて実施した現地工事の工事目的物は、速やかに相手国政府等の機関へ譲渡する必要があります。譲渡に際しては、譲渡先である相手国政府等の機関の長又はそれに準ずる者が署名をした受領書(譲渡確認書)を徴取し、JICAへ提出して下さい。なお、現地工事の実施及び工事目的物の受け取りについては、事前に相手国政府等の機関が合意していることが前提です。
2監督者は発注者(受注者)権限の一部を授権している施工監理者を指します。例えば、ローカルコンサルタント、建
設コンサルタント及び設計事務所、外部人材等。施工監理を建設コンサルタントや設計会社へ依頼する場合は、その社から指名する者。依頼しない場合は、受注者又は外部人材(以下、「業務従事者」という。)に監督業務を実施可能な者がいればその業務従事者。
(5)支払
支払は、完成検査合格後が原則です。
下請負先から工事完了の通知を受けた場合、工事の発注者(受注者)は、完成検査」を自ら行います。
検査合格の場合、JICA では引受け証明書を下請負先に発給し、この証明書の発給をもって、支払が行われることとしています。なお、支払の事実確認を容易にするため、現金による支払でなく、可能な限り銀行振込としてください。
なお、前払等に関し受注者が受ける損害については、受注者の責任の下で解決することになります。(業務委託契約約款第9条)
下請負先との契約交渉で前払金等を要求された場合は、契約が履行されない場合のリスクが生じるため、一定の範囲内に限定し(JICA では契約金額の 40%を上限としています。)、さらに工事の完成検査前に契約相手方が債務不履行を起こした際に前払金等の債権回収できる手段(前払保証書の取付、出来高払の設定)を十分に検討してください。
(6)契約不適合責任の保証期間中の検査
下請負先との契約書3においては、業務対象国の法令や慣例等に沿って、引き渡された工事目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないもの(以下、「契約不適合責任」という。)である場合について、契約不適合責任とその保証期間を設定し、下請負先が現地工事にかかる適切な担保責任を負うことも明記してください。
契約不適合責任の保証期間の満了に先立ち、契約不適合が発見された場合、契約に基づきその修補を受注者が下請負先に指示をしてください。
契約不適合責任の保証期間満了前に行う検査は、受注者、下請負先、相手国政府等の機関の3者による立会が望ましいです。工事目的物の普及・実証を目的としている場合は、できるだけ JICA との契約履行期間内に契約不適合責任の保証期間を設定し、保証期間満了前の検査を実施してから調査を終了できるよう、業務計画の立案にあたり、業務対象国の法令や慣例等に従いつつ、この検査の実施に努めてください。
(7)契約変更
JICA との業務委託契約の特記仕様書に定めた下請負先の業務の内容に変更が生じる場合は、事態が発生する前に、担当課監督職員に相談の上、当該変更に係る打合簿の作成又は契約変更を行ってください。また、受注者と下請負先との間においても、必要な契約変更を行ってください。
3建設コンサルタント又は設計事務所との施工監理契約や工事監督業務契約に契約不適合に係る業務が想定される場合も含む。
(8)精算
精算時には JICA へ契約金額精算報告書を提出してください。必要書類は別紙「xx表」をご参照ください。JICA は、契約金額精算報告書の検査時に、下請負にかかる契約書に基づき支払がなされたかを確認します。
(9)第三者による抽出検査
JICA は毎年、JICA と締結した本事業に係る業務委託契約を含むすべての契約のうち下請負先との契約がある契約を対象に、現地工事にかかる下請負先との契約の実施結果に関する抽出検査を実施します。同検査では、JICA 在外拠点が傭上する第三者により、下請負先との業務が契約書に基づいて実施されたかどうかを確認しま
す。
検査対象案件を実施した受注者には、JICA の抽出検査への協力を個別に依頼しますので、その際は必要な資料の提供等についてご協力をお願いします。
6.安全管理
工事安全対策4における基本的な考え方は、「施設建設等を伴う ODA 事業の工事安全方針」(xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxxxx/xxxxxxx/xxx_xxxxxx/xxxxx.xxxx)をご参照ください。
工事安全管理については「ODA 建設工事安全管理ガイダンス(2014 年 9 月)」
( xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxxxx/xxxxxxx/xxx_xxxxxx/xx00xx00000xx0xx- att/guidance_ja.pdf)を公表しています。このガイダンスを順守して、適切な安全管理に努めてください。
7.環境社会配慮
現地工事を実施するにあたっては、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(2010年 4 月)」(xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxxxxx/xxxxxxxxx/xxx/xxxxxxxxx00.xxx)に従い、業務対象国の環境や社会に与える影響等に十分に配慮をし、適切な環境社会配慮が実施されるように努めてください。
以上
別紙:xx表(選定~契約~精算)
4施工中の工事管理及び工事完成後の使用安全の双方の安全にも留意してください。
民間連携事業 業務委託契約 契約管理ガイドライン別添5.現地工事契約管理ガイドライン