氏 名学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 NUNUK ENDAH SRIMUL YANI博士(学術)千大院人博甲第学32号平成30年9月30日学位規則第4条第1項該当インドネシア都市中間層における母性規範の変容と新たなジェンダー契約―日本 の主婦化に関する議論を参照項として―(主査)教 授 米 村 千 代(副査)教 授 清 水 洋 行 教 授 出 口 泰 靖教 授 池 田 忍
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | XXXXX XXXXX XXXXXXXXXX 博士(学術) 千大院人博甲第学32号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 インドネシア都市中間層における母性規範の変容と新たなジェンダー契約 ―日本の主婦化に関する議論を参照項として― (主査)教 授 x x x x (副査)教 授 x x x x 教 授 x x x xx 授 x x x |
論 文 x x の 要 旨
問題の所在
本論文の課題は、現代インドネシア都市中間層における母性規範の変容を、日本の主婦化に関する議論を参照しながら、インドネシアの男女平等思想の変遷、共働きおよび専業主婦の女性へのインタビュー調査から明らかにしようとすることにある。子育てと仕事の両立において女性たちが抱く困難やxxを、スカルノxx大統領の言葉を借りて「罅」(xx)と表現し、「罅」を、思想的、歴史的背景、社会構造上の問題をふまえ、インタビュー調査から具体的に記述し、それを‘治す’ために求められる制度や支援の可能性を探究する。
罅(xx)とは『サリナー:インドネシア共和国の闘争における女性の義務』というインドネシア女性学入門書に記載されており、女性が社会的役割と家庭的役割を両立するジレンマを指す言葉である。xxxxxx大統領は、女性が仕事と家庭の両立に困難を抱えていることについて、19 世紀のオランダ社会主義フェミニスト Xxxxxxxxx Xxxxxx の言葉を借り、“scheur”「罅」を抱いている女性たちだと表現した。xxxxはその“scheur”を“retak”とインドネシア語に訳し、英語では “crack”と訳した。日本語の「罅」は筆者の訳である。
仕事と家庭の間に挟まれている状態は、「葛藤」「コンフリクト」「ジレンマ」という表現でも表すことができる。しかし、それらの言葉はフラットであり、女性達の感情を表現しきれてはいないと考えられる。「もやもや感」という複雑な気持ちを抱いている女性達の心情は、ただ単に「xx」や「ジレンマ」を感じているという概念では表し切れないであろう。社会主義フェミニストである Xxxxxxxxx Xxxxxx の詩を借りたからこそインパクトがより感じられると期待される。
xxxxの『サリナー』においては、当時の女性の「罅」が実はすでに記述されていた。労働階級女性の「ひび」には身体面・精神面の両方が存在しており、中流階級女性の「ひび」は精神的な面の方が強く見られると語られている。しかし、50 年代に書かれたため、当時の社会や理想しか描かれていない。インドネシア社会における様々な情勢変化のもとで、女性の自立性や積極性を彩るものとしてポジティブに解釈されてきた複役割は「幻想」であり、実際にはキャリアと家庭の間で精神的にも肉体的にも負荷のかかる二重負担であるというシフト(変容)が起こっている。そのなかで、女性達はどのようなxxを抱えているのかを、働き続ける女性と、結婚あるいは出産後に専業主婦になった女性達双方から探る。日本も近代以前にさかのぼれば多くの階層においては共働き社会であったが、近代化の過程において女性が家事育
児に専念することが良いという規範が登場した。本論文では、日本の女性の役割の変容とxx、およびそれに影響されるインドネシアの状況とを照らし合わせながら、インドネシアにおける問題を捉え、そのうえで、インドネシア社会における新しいジェンダー契約の可能性を探る。本論文は、したがって日本の家族史を参照しつつ、インドネシア社会における母性・子育て規範の変化及び共働き女性のジレンマについて明らかにする研究である。
調査の概要・研究のアプローチ
本研究の特に第 3 部と 4 部とは、現地調査 (field research) およびインデプス・インタビュー(in-depth interview) を通してデ—タを収集している。インタビュー対象者は都市部に住んでいる短大卒以上の既婚女性である。期間は 2014 年から 2015 年までの一年間をかけ、その後の情報確認等はメール及び SNS によって行われた。
本研究では、都市部に住んでいる中流階級の女性が調査対象者であり、インドネシアの大都市から4つの町を選定した。それは、(1)ジャカルタ市(ジャワ島の 北西海岸に位置するインドネシア共和国の首都で、政治経済の中心地となっている)、(2)スラバヤ市(港町、ジャワ東部にある工業の中心地、2 番目の大きい町である)、(3)バンドン市(西部ジャワにあるインドネシア・ファッションのトレンド・センター、ジャワ島のパリ(Paris van Java) だと言われている)、(4)ジョグジャカルタ市(文化・教育の町だと言われており、世界遺産のボロブドゥールやプランバナン遺跡でも有名)の 4 市である。
上記の 4 つの大都市が研究対象として選ばれたのはインドネシア大都市の多様性を代表しているからである。スマトラ島のメダン市やセレベス島のマカサル市のようなジャワ島以外の大都市はこの調査ではカバーしていないが、上記の4都市を取り上げることでインドネシアの都市部における母性規範や子育てネットワークを含めた女性の複役割の現在の議論を捉えられると考えている。
協力者は、(1) 仕事を継続し(中断再就業及び中断せずに継続する)/複役割をしている女性、(2) 複役割をしないで、家庭に入った女性(「中断型」:結婚後に仕事を中断し、専業主婦にとどまる。)(3) 子育てと関わる政府機関や保育所の関係者である。インドネシア都市部におけるミドル (middle) とアッパーミドル (upper middle) の主婦がほとんどであるが、日本や先進国社会と比較すると、やや広い範囲の中間層を含んでいると言える。
研究の意義
本研究は家族社会学的研究であり、近代化が及ぼした女性の社会進出はどのように言及されてきたのか、女性たちがどのような‘罅’を抱えどのように克服しようとしてきたのか、現在求められる支援や政策は何な のかを議論する。産業革命の歴史が明確に存在していないインドネシアは、世界や日本の近代家族モデル の経験から、これから必要な政策を学ぶことができる。一方、本研究から、日本に対しては、社会におい て見失いがちなコミュニティーや職場における人間関係の共同性、家族の意味や近代家族の規範の見直し、新たなジェンダー関係などを示唆することができると考えられる。アジアの比較家族社会学研究において、今まであまり論じられてこなかったインドネシアの家族形態や女性の社会進出及びそのジレンマの分析は、既存の研究領域に新しい知見をもたらすものであり、日本社会の問題を見つめ直す契機となる。
共働きの歴史と社会変容
インドネシアの歴史の中で、社会的・政治的転換が女性運動とも深く関わっていた。しかし、つねに、女性は自立的な存在ではなく、母親規範とセットで語られてきた。どの時代においても、社会的な役割が求められる一方、結局、女性の運命は結婚して母親になることであるとされた。植民地時代には、インド
ネシアの男女平等のシンボルであるカルティニのように、女性(イコール母親)が次世代の最初の教師という役割を担うためにより高い教育を受けるべきとされた。その当時、女性教育と女性の社会進出は深く結びついていた。
独立後のインドネシア社会では、女性が社会運動にもっと積極的に取り組むべきという方針が、スカルノの旧体制時代に見られた。旧体制の時代、xxxxは女性が社会的な役割を求める困難について、家の外で活躍している女性は男性と違い家庭的な役割も求められると指摘し、二重負担のもとで心の「罅」を感じているとオランダフェミニストの Xxxxxxxxx Xxxxxx の詩を引用しながら主張した。旧体制では、女性の社会進出に伴う二重負担の問題について、xが介入することは実現しなかったが、少なくとも談話レベルではその必要性が語られていた。一方新体制では、こうした話題も消えてしまい、家庭の仕事は完全に女性にまかせられることになった。これは二つの時代の相違点だと言える。しかし、旧体制にも新体制にも家庭の仕事(家事・育児)に対する男性の役割が一切語られなかったことは共通していた。
2010 年代以降、インドネシアのソーシャルメディアの主婦論争に描かれる理想的な母親像は、家事だけではなく、子供が教養を身に付けることにコミットできる女性である。子供の教養を重視するという視点は働く母親に批判的な意見や専業主婦の存在を見直すという風潮に現れている。また、子供の教養に対する熱心さは日本の良妻賢母と教育ママを理想化し、憧れるという現象においても共通して見られる。このような主婦論争は新体制(1966-1998)時代の男女平等思想の解釈とまったく異なっている。1979 年のエッセイ集、“Satu Abad Kartini”(xxxのカルティニ)に記載されていたジェンダー平等の話題は、現在は、共働きか専業主婦になるかの選択肢要因としては取り上げられていない。逆に、侮辱されてきた専業主婦の存在は、ソーシャルメディアの主婦論争ではxxな立場であると今までなかった評価も受けた。専業主婦か共働きを選択した理由は、男女平等思想よりもむしろ、個人が経験した幼児期の記憶及び新たな宗教的解釈が要因として考えられる。第 2 章に議論したプレ改革時代の女性性や母親像とは異なり、上記の現象は現在インドネシアの母性概念及び子育て規範の変化を表していることが明らかとなった。
インドネシアのソーシャルメディアにおいては、日本の良妻賢母と教育ママは理想的な存在として語られており、そこでは、基本的に日本の家族変動、特に性別分業を支える社会福祉制度に関する情報が不足しており、誤解に基づいていると言わざるを得ない。中間層の増加が続いている学歴社会のインドネシアでは、特に都市部エリアにおいて、核家族化が進行し、子供中心主義が強まっている。このような子供中心主義はインドネシアの独特の傾向というわけではなく、近代化への道を歩んでいた国々ではよく見かけられる現象である。しかし、子供の教養に宗教の新たな解釈が重要な役割を持つことは、インドネシアの特徴として興味深い。宗教の教えに基づいて子供の教養を重要視する意識は、インドネシアではどのように解釈され、実行されるのかは考察すべき重要なテーマである。その解釈は、共働き女性と専業主婦の中では同じ方向にはなっていない。
保育所を求める共働き:大家族あるいはメイド社会から保育所へ
インタビュー調査からは、これまでのように共働きの子育てを大家族やメイドに頼ることが不可能となっており、2010 年代から保育所(特に私立や有料保育所)設立が進んだことがわかった。家族形態の変化が子育ての規範に大きな影響を与えている。家族やコミュニティのネットワークに頼った形での子育ては現在の都市部に住んでいる人々には難しいことである。プレスクールや乳幼児教育機関等、保育所のような施設に子どもを預けることは従来、否定的な目で見られていたが、そのような考え方は徐々に変わってきた。むしろ、今までのように家政婦やベビーシッターに子どもを預けるよりも、適切な保育所に預ける方が安心であるという考え方が多くなっている。勿論、現在の保育所のあり方にも必ずしも問題がないと
は限らないが、自宅の閉鎖的空間において見知らぬ家政婦の手に子どもを委ねるよりも、多くの保育士がいる施設に預けた方が子どもの育成には適していると考えられている。
現在職業意識の高い、教育熱心な中間層の女性たちのなかでは、高い教育水準と清潔な保育環境が望まれている。伝統的な「お手伝いさん」にその水準を求めることは難しい。また、インドネシアにはまだ「保育所」が法的にも整備されておらず混乱期である。教育熱心な働く女性は子供を預ける先に腐心している。さらに、インドネシアの保育所は「長時間の幼稚園」のような仕組みに近いため、日本のように「保育所出身の子供」と「幼稚園出身の子供」を対比するような構図はない。しかし、前述したインドネシアにおける保育所の誕生はメイド社会がなくなることに繫がると単純に言うことはできない。家事の外部委託が流行しているにも関わらず、子どもの送り迎えや家の留守番のために家政婦の手を必要とする都市部の家庭も多く存在している。
教育熱心な中間層における新・専業主婦の誕生
前述の共働きを継続する女性達と違い、ジレンマから解放されるために辞職して家庭に入った女性達は、子供の成長が自分の力で確かめられるという癒しを手に入れることができた反面、専業主婦であることのアイデンティティ不安という新たなジレンマに直面していることが分かった。例えば、次のようなジレンマを指摘できる。(1) 専業主婦に対するマイナスのイメージやxxxxxが根強く残っているため、専業主婦の存在が人生の成功のシンボルとして見られない。(2) 忙しさは解消されたが、時間の整理が上手くできず、無為に過ごしてしまう。働いていれば職場の友達と交流できるが、家庭に入って当初は寂しく思い、自己実現の場を喪失した気持ちが強い。70 年代に流行していた「名前のない問題」という虚無感が未だに該当している。(3) 自分は子育てに対する知識が足りないと思い、終わりのない子育て不安や育児ノイローゼを抱える。(4) ダブルインカムである共働きからシングルインカムになったため、今までのライフスタイルが保てないことによる、生活基準の低下。5) 子育て規範や子どものxxの資本である教育や学歴に対する価値観が親世代と異なり、世代間ギャップが起きている。
植民地時代から“進学と社会進出がセット”であるという常識からはずれた高学歴の専業主婦は IIP(プロフェッショナル母親学院)と呼ばれる新・専業主婦コミュニティーに参加することによって、上記のジレンマを乗り越えようとしていることが見て取れる。
インドネシアでは、経済成長や教育に対する意識の高まりと共に、これまでの子育てのやり方では不十分で、「自分の子供は自分の手で育てたい」という近代的な母親規範が浸透した。女性達が退職して家庭に入った理由は、生活基盤がやや安定的と言えることはもちろん、基本的に子育てをメイドや保育園に任せるのではなく、自分の子供は自分の手で育てたほうがいいという考え方が強いと見られる。この意識には次のような背景がある。(1) 夫の理解の有無、(2) 子供が不自由だから、(3) 夫が単身赴任なので仕方がない、(4) 自分は家庭と仕事を両立できる人に向いていないから、(5) 幼い頃のトラウマ、(6) 宗教上理由から性別分業が正しいと考えていることなどである。
インドネシアの社会では、専業主婦である女性が今までマイナスなイメージで見られていた。しかし、教育熱心で専業主婦を目指している新・中間層の一部の人たちが徐々に増加した。この女性達はそもそも子育てに関する心のxxを解決するために、専業主婦になることにしたが、必ずしも全てのジレンマが消えるとは限らない。このようなジレンマを抱えている一部の女性達が IIP を通して専業主婦の新たな意味を探求し、新しいイメージを構築していると言える。IIP に入ったきっかけは、(1) 同じ悩みを持っている人と話したい、コミュニティーやネットワークを作りたい、(2) IIP の設立者の経験に感動し、見本にしたい、(3) 他の子育て勉強会と違い、IIP は母親だけではなく、父親の役割も重視され、家族のメンバー全員がチームである、(4) 社会貢献、 (5) 暇つぶし、などである。
ここで IIP のメンバー達のほとんどの共通点は、お金を稼ぐことは必ずしも子供を置いて外で労働をするとは限らず、専業主婦であっても経済的な自由を得ることが可能であると考えている点である。例えば、家で家庭教師をしたり、美容室を開いたり、オンラインショップをしたりすることなどがそれにあたる。日本の昭和時代では、習い事や手芸が中間層の主婦達の趣味としてのサイドジョブだと言われている。しかし、インドネシア社会ではこれらは趣味以上に“仕事”として認められる。また、IIP の3番目のプロフェッショナル母親のステップは生産的な母親であり、経済的な生産力も重視されたため完全に性別分業の分極化は論じられない。ここからは、インドネシアの一部の中間層において女性の家庭化が見られるとは言え、日本や多くの先進国が経験した近代化と共に起きた女性の主婦化という現象とは同じではないことが分かる。
罅を記述、罅を治す
女性の「複役割」が自明であったインドネシアの社会において、それは「複役割の幻想」であり「二重負担」であるというシフト(変容)の中で、共働き女性も専業主婦も、どの選択肢を選んでも心の「罅」が生じることが本論文の調査研究からわかった。共働き家庭においては、特に大都市では、これまで家事や育児で頼りにしていた大家族やメイドの利用が不可能になり、理想的な保育所も乏しいため、仕事と育児の両立が難しい状況である。その一方、育児を優先するために定職の勤務時間に縛られたくないと、辞職して家庭に入った女性達も、これまで共働き社会の社会的なプレッシャーである、軽蔑された専業主婦の立場にアイデンティティ不安を感じるという新たな罅が生じている。
働く女性の 3 つの罅は、① 母性と自己実現である「複役割」のトラップ、②染み込んでいる「複役割幻想」から抜け出す母性・子育て規範の変容、③ 「現世と来世の投資」として、まとめることができる。「罅
(ひび)」は「亀裂」「穴」といった危ういイメージだが、論文では女性達の姿からは理想を追い求めるがゆえにできた困難に「罅」を乗り越える様子が伺える。現状に満足せず、より良い生活を求めるからこそできる「罅」であるならば、それは「亀裂」「穴」のイメージを覆す物になるだろう。
本論文でインタビューした女性達はそれぞれ自分なりの方法で仕事と育児のxxやアイデンティティ不安等を乗り越えようとしていることが明らかである。しかし、共働きの育児問題に関して、今までの調査では、共働き母親への公共的な支援や政府の役割がはっきり見えないのが現状である。
女性の「罅」と新たなジェンダー契約:母性規範の変容と性別役割分業
少子化対策に欠かせないのは職場の柔軟性と社会福祉支援だろう。日本とは違い、インドネシアではサービス残業や休暇の取りにくい職場の雰囲気などはほとんどないと言っても良い。職場の柔軟性という観点からは、日本と比較してインドネシア社会は可能性を持っていると言える。また、インドネシアでは、家族や親戚だけではなく、友人同士の絆も非常に深いため、同じ子育て困難に直面している女性達が様々なコミュニティーを作り、新たなネットワークを構築している。さらに、日本の昭和時代のような「性別分業」の概念よりも、「男女平等思想」や女性の「複役割」概念の方が未だに根強く残っている。中流階級における新・専業主婦が誕生しても、彼女らは結局経済的な自立を求め、日本や西洋が一度経験した「主婦化」の現象は起きないであろう。
現在、インドネシアはまだ日本や韓国ほど少子化に向かっていないが、1970 年代から成功した「家族計画」のプログラムが出生率の減少に大きく影響を与えている。少子高齢化社会にならないように、これまで子供と老人を常に優遇するインドネシア社会の習慣、宗教意識、価値観を維持しつつ、共働きの子育て支援・政策を行うことに可能性があると考えられる。日本社会の母親像を羨ましく思うのは良いことであ
るが、性別分業にこだわらない今、インドネシアにある子育てに関する価値観は、まさに日本の社会にも必要とされる少子化対策のヒントだと言える。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文は、現代インドネシア都市中間層における母性規範の変容を、日本の主婦化に関する議論を参照しながら、インドネシアの男女平等思想の変遷、共働きおよび専業主婦の女性へのインタビュー調査から明らかにした研究である。子育てと仕事の両立において女性たちが抱く困難やxxを、スカルノxx大統領の言葉を借りて「罅」(xx)と表現し、「罅」を、思想的、歴史的背景、社会構造上の問題をふまえ、インタビュー調査から具体的に記述し、それを‘治す’ために求められる制度や支援の可能性を探究している。
本論文は、5 部編成、全 9 章からなる。概要を述べた第Ⅰ部に続いて、第Ⅱ部では、カルティニの男女平等思想を始点として、インドネシアの歴史的・政治的転換に沿って男女平等思想の変容がまとめられる。インドネシアの「男女平等」概念は「母性」と「複役割」を重視するという特徴が指摘される。第 3 章ではSNS上の主婦論争を分析し、インドネシア社会で否定的に捉えられてきた専業主婦を積極的に評価する動向が出現していることを指摘している。第Ⅲ部、第Ⅳ部が、それぞれ共働き、専業主婦へのインタビュー調査の分析である。
インドネシアの都市部において、近年、保育園が次々と‘誕生’し、他方で、プロフェッショナル母親学院等の専業主婦のための研修機関も登場している。本論文では双方の利用者についてインタビューを実施し、新しく登場したそれらの機関を必要とする母親たちの困難やxxxxを分析している。共働き、専業主婦双方の女性たちはそれぞれに「罅」を抱えており、そこには、母であることと同時に仕事と家庭の
「複役割」を重視するというインドネシア社会の思想的背景と、子育てを大家族や家政婦に頼ってきた社会構造の変化が影響している。特に都市中間層の共働き社会を支えていたのは、安い賃金で社会保障も不十分な労働環境で働いていた家政婦(‘お手伝いさん’やベビーシッター)の存在である。今日、都市中間層における子ども中心主義に照らして、子どもの養育・教育を任せられる家政婦を得ることは困難になりつつある。このような背景から、共働き女性は、子育ての専門機関としての質の高い保育園を探し、仕事を辞めた女性たちは、自らが専業主婦となり、子育てに専念するという傾向が現れている。家政婦たち自身も労働者階級における「罅」を抱えていることが指摘される。第Ⅴ部が結論にあたり、「罅」の根源にある母性規範と複役割規範の相克に対する、女性たち自身の働くことの意味づけの変容や「罅」を治すための活動やネットワーク、求められる社会的支援が提示される。
「罅」という着想によって、子育ての困難に関する具体的な解決だけではなく、xxxxや困難が持つ思想的歴史的文脈が明らかとなり、子育てやジェンダー意識の変容を社会的に捉えることが可能となっている。この視点からは、母親たちが子育てに専門性を求めると同時に、「xx・来世への投資」として子育てを位置づけ、自らの宗教意識と関連付けて、自身の選択を意味づけていることがわかる。主婦化の比較研究の点からも、インドネシアの特徴として特記すべき指摘である。本論文は、これまでアジアの主婦化に関する比較家族史研究において、関心が寄せられながらも十分な蓄積がなかったインドネシア社会を対象とした貴重な研究であり、日本との比較研究およびアジア比較家族史研究のさらなる発展にとって寄与
するところは大きい。今後はインドネシア社会全体の多様性をふまえた研究へと進展していくことも大いに期待される。以上の理由から、審査委員会は、本論文を学位取得に十分値する論文として評価した。
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | XXXXXX XXXXXXXXXXXXX 博士(文学) 千大院人博甲第文39号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 日本とモンゴルに伝承された説話の比較対照研究―動物説話・仏教説話・継母説話を中心に― (主査)教 授 x xxx (副査)教 授 x x x x 授 x x x x准教授 x x x x |
論 文 x x の 要 旨
本論文は、 |
・序章 本論文は、日本とモンゴルに伝承された説話の比較対照研究をテーマにしている。 説話文学はいわゆる古典文学といわれる文献群の中でも独特の位置づけがなされている。それは比較的平易な内容であり、一般庶民に口承によって伝承されているという性格を有しており、洋の東西を越えて親しまれる説話も多く見出せる。 インド起源の説話で、モンゴルと日本に共通してみられる説話を比較対照することで、両国の類似説話にみえる共通点と相違点から想定される説話の特徴、日本とモンゴルにおける説話伝承の展開の問題を具体的に明らかにすることを課題にしている。 ・日本とモンゴルの説話研究の概要 普遍的な宗教であるインド起源の仏教の仏典から展開した説話が、日本とモンゴルまで伝わるのに、どのように色合いが異なり、地域的な特徴と性格はどのように獲得されているかという点は本研究の明らかにしたい点である。 ここで取扱う説話は、あくまでも経典と共に「仏の教え」を伝えるという大事な役割を果たし、長い歴史や広い地域を渡って伝承されてきている。しかし、4 世紀頃インドで作られた “The Jātaka-mālā” と “Suvarṇaprabhāsottamasūtra” の説話が 984 年に日本の『xxx』と 14 世紀にモンゴルに翻訳された Altangerel sudar まで仏教の教えと共に伝わるのに、説話としての変容があるかどうか、もし変容があるとしたらどのような文化的な、地域的な影響が背景にあるかを本研究で検討したい。このような変容は、最終的に日本とモンゴルだけの文化、地域の影響か、途中の中国あるいはチベットによる影響か、ということを確認する必要がある。 本研究では、日本とモンゴルにおける仏教経典に由来のある話として仏教のxx譚と動物譚の説話と、世俗説話として伝承している継母説話、動物説話を取扱い、その比較対照をすることでそれぞれの国の文化、民族習慣、それぞれの地域の人間の世界観の特徴が解明できるのではないかとみている。 ・日本における説話研究について 日本で 1962 年 1 月に説話文学会が創立されて以来、xx回の大会において研究発表、講演、シンポジ |
ュームなどを行い、また、各種の研究会や新著、新資料などの紹介を含む会報を随時発行している。当初の説話研究傾向としては、説話、説話文学の索引作製、書目解題、資料の翻刻などの仕事をどう進めるか、そのための基本的な共同研究を行うことが説話研究方針の出発点であった(説話文学会『説話から世界をどう解き明かすのか』2013、p.17)。
日本の仏教説話研究においても、1970-1980 年代は説話集論が盛んに行なわれ、更に、研究傾向も説話集の研究から説話そのものの研究に移り、これからも仏教説話研究は、説話の表現、叙述、個性等細部の視点からみた研究傾向がみられるといえる。
・モンゴルにおける説話研究について
モンゴルの説話文学は、遊牧文化という文明特徴を基にし、シャーマニズムと仏教の影響を受けて展開してきた。
今までモンゴルでは、説話研究と研究方法に関する研究が数多くなされている。すなわち、モンゴルではロシアの研究者が説話研究の端緒を開いたとされるが、基本的にはチベット仏教を通じて伝承されてきた説話についての研究であった。
モンゴルにおける説話文学研究は、1900 年代からロシアとモンゴル人の研究者がモンゴルの各地域に探
検し、物語、民話、叙事詩等を集緑し、それらの分析と整理を中心にする研究が行われ、初めてのモンゴル説話集やモンゴル文学撰集等の口承伝の説話、民話集が出版されていた、つまりモンゴル説話、民話資料の集緑、編集の段階であったといえる。その次の時代としては、1950 年代から 1990 年代までは、 Ts.Damdxxxxxxx x、P.Khxxxxx、X.Rixxxxx、X.Tsxxxxxxxxxx、X.Duxxx xによる説話研究が説話の分析と整理、解説等をはじめ、比較研究等が行われてきた。
社会主義の解体と共に文学研究における政治的な影響と制限がなくなったことが故に、1990 年以降は、モンゴルの説話研究では、世俗説話だけでなく、仏教説話の研究が盛んになっている。
・日本とモンゴルの説話比較研究における問題の所在
今までの日本とモンゴルの説話比較について試みた研究は日本でも、モンゴルでもほとんどなされていないのが現状である。日本では、インド→中国(朝鮮)→日本といった流伝の説話比較研究があり、モンゴルの場合はインド→チベット→モンゴルといった流伝上の比較研究がそれぞれなされている。
本研究では、
インド
中国 日本
チベット モンゴル
といった両方のルートを取り入れて、インド起源の仏教説話が中国とチベットといった全く違う地域を通って日本とモンゴルに伝わるまで、源説話のどこが変容を受けているか、どんなところがそのまま共通に伝わっているかを明らかにする。インド起源の説話の終点を日本とモンゴルにしてみれば、各説話のサンスクリット語・パーリー語の原典・漢訳・蔵訳を日本語とモンゴル語の説話と比較することで、地域、文化、言語の壁を渡って終点であるモンゴルと日本まで伝わった過程と変容の特徴から両国の説話の位置づけを解明することができる。
第 1 章 日本とモンゴルの動物説話の仏教経典から世俗説話までの展開と変容においては、日本とモンゴルに共通なモチーフで伝承された「鹿王」説話を取り上げ、その原典、原拠に当たるインド仏教経典と漢訳仏典、チベット語訳仏典の説話を併せて比較考察をすることで、説話伝承の展開を確認している。この比較考察を通して、各地域の説話にはそれぞれ相違点は見られるが、これだけの検討で説話の民族的な影響、地域的な特徴を明らかに見出し、さらに、各説話文献の一次資料を扱った比較考察をしていくことを目的
としている。
インドで誕生した仏教説話は、仏伝のxxとされるモンゴル地域まで伝承していくにはインド→チベット→モンゴルといったルートがあると一般にみられているが、この「ルル鹿本生」説話の表現を比較してみるところ、インド→中国→チベット→モンゴルといったルートもあることが明らかに見える。
更に、「ルル鹿本生」説話の主人公を中心にいくつかの視点からみた比較考察をおこない、説話全体の構成による分析をすることで、各説話の文学性、本生性の性格をさぐることも必要とされていると考えらる。
第 2 章 日本とモンゴル共通に伝わった動物説話の文献伝の展開と変容の特徴においては、
日本とモンゴルに伝わっている動物譚の説話である日本の「猿の生き胆」とモンゴルの Melhii bich hoyoriin nuhurlusun tuhai ulger 説話の比較対照考察をしている。
この考察の結果をまとめてみれば、日本の「猿の生き肝」の話の典拠になる説話文献は中国の漢訳仏典だけでなく、それ以外の別の文献を素材にしていた可能性があると考えられる。
モンゴルの「猿の生き肝」説話の場合、インドの Paňcatantara を基にしているチベット説話が原拠に
なるとされる。文字通り “Монгольский сборник рассказов из Pāncatantra”(『パンチャタントラからのモンゴルの物語』)とあるが、本説話集に収録されている「猿の生き肝」の話は、A.V.Xxxxxxxx xが西モンゴルのオイラトの Lu gunii qoshuu の Gonchig van という人が語った話をそのまま収録しているということから、Pāncatantra の話が口承でもモンゴルで普及されていたことが確認できる。
ここで、モンゴルにおける「猿の生き肝」の話の典拠になる文献は、インドの Pāncatantra とNāgārjuna
(xx)x“Ni-tis ΄astvajantupos an abindu na-ma”(『xx論生者養育滴』)のチベット語訳の説話に当たるものである。
最後に、両者の伝番の特徴として、日本の話では仏教説話の本生譚の影響が強く受けているのがみえるが、モンゴルの話の場合は仏教説話の影響を一切受けてないことが特徴であるといえよう。
第 3 章 日本とモンゴルに共通に伝わったインド起源の仏教経典所収説話について、その周囲の説話集への展開において、日本とモンゴルに共通に伝承された「捨身飼虎」説話の比較対照研究をしている。
ここで、「捨身飼虎」説話の①流伝・②民族性の影響・③普及状況の三つの視点から比較考察の結果を以下にまとめて紹介する。まず、説話の流伝についてであるが、どの国へも仏教とともに伝承されてきているのが共通点である。それぞれの伝承されたルートを検証すると、一言で説明できない微妙で複雑な問題点が存在する。しかし日本への流伝とモンゴルへの流伝のルートについて大凡の傾向として指摘できるのは、
(1)インド→中国→日本
(2)インド→チベット→モンゴル
といった流れの二つである。例えば、「捨身飼虎」説話の場合でみると、日本の『xxx』の説話には “Suvarṇaprabhāsottamasūtra” にあった舎利の供養が見られないものの、「最勝王経に見えたり」と明記しているように、『xxx経』の影響を受けていることが確認される。虎の子の数も七匹であり、中国の『xxx経』と『菩薩本生鬘論』の影響も受けていることがわかる。しかし、このような影響や変容がチベット語訳※Suv.Tib に見られず、当然のことでモンゴルの*Suv.Mong x「捨身飼虎」説話にそのまま伝承されている。虎の仔もここ三つの説話だけ 5 匹になっている。
しかし説話の流伝についてはもっと明らかにするためには、更に説話の原典の文献研究と翻訳の研究を行う必要があるであろう。
自然環境と地域による説話への影響と説話の変容の視点からみると、「捨身飼虎」説話では、インド・
チベット・モンゴルでは森林となっているが、日本・中国ではxxになっているという点と、王妃の夢で現れる小鳥がモンゴルの*Suv.Mong だけに〈カッコウ〉であること、そして子供を失った母親の悲しみを例える動物の変容などが指摘されるものの、全体としては民族性の影響は少ないといえる。
以上、比較考察によってみえる各地域における「捨身飼虎」説話の伝承と展開、変容などから、説話の普及状況について最後に論じてみれば、「捨身飼虎」説話は、民族性の影響が希薄であるが、それはあくまで菩薩の利他行の実践を説くことが主眼となっている。つまり仏教という枠組みの中に閉ざされた話題であるといえる。一方、子供たちへ語る昔話として、利他性を強調する「ライオンと鳥」、「狼と鳥」などの動物譚の説話、寓話がアジアの国々に普及されていることからみても、動物譚は普通の民間には年齢、文化、習慣を問わず一番受け入れやすいものだと思われる。
第4 章 日本とモンゴルの継母説話の比較対照研究において日本とモンゴルに同じモチーフで伝わった継母説話の代表として、日本の「手なし娘」とモンゴルの “Gargui huuhen” 説話を取り上げ、それらの比較考察をしている。
この考察を通して、両者の相違点と共通点からみえる宗教性、信仰心の特徴、民族文化、生活習慣による話の変容について明らかにすることを目的としている。
まず、主人公の娘の心のありかたから、日本の場合は神信仰心と母性愛をもつ情熱さとモンゴルの場合は自然信仰心を持つ心のシンプルさがみえる。
この話で継母の運命と行方が、それぞれの地域によって違っている。モンゴルの話の場合、継母は必ず罰され、亡くなるという結末になっているが、日本の話の場合継母は、盲目になっているという結末があり、ここで日本の話の継母は、最後に生き残る。
モンゴルの話の場合は、あくまでも話の始点から終点まで継母は最悪な役を果たし、最後に殺されるという、人間としてさらに生きていけなくなっている。しかし、日本の場合は悪心の継母でも、最後に人間として生き続けるという設定になっている。
では、なぜモンゴルの話の継母は、結局殺されるのかは、注目される。つまり、モンゴル人にとっては、継母の存在はなくなるまで話が終わらない。ここで、継母とxxは必ず縁が切られる。日本の場合は、いくら虐められ、継母に殺されそうになっていた過去があっても、結局継母は生き残る。そこで、日本人とモンゴル人の心の在り方、民族的な生活形態の特徴が現れているのではないかと考えられる。
ここで、遊牧生活をするモンゴル人の戦勝の精紳と日本人の和の精神が少なくとも影響を与えているのではないかといえる。気候の激しい環境と隣の敵との戦いの中で生活してきた遊牧民には、戦いに勝てないと、敵を落とさないと自分が生き残らないという意識の影響が見られる。このような地域による自然環境や気候の特徴、生活習慣や文化の影響がそれぞれの話に現れていると思われる。
最後に、本論で取扱った説話は日本とモンゴルの説話文献で共通なモチーフで伝承されている説話の中から、仏教のxx譚の説話・世俗説話の動物説話・継母説話を取り上げて、比較対照考察をしてみた。
取り扱った説話は話の原典となるのはインドの仏教の本生話と寓話集のPāncatantra になっているが、
仏教の展開と共に日本の説話の場合は漢訳仏典を、モンゴルの場合はチベットの仏典を通してそれぞれの説話文学に受け入れているのがみえる。
さらに、それぞれの説話の翻訳上の比較研究と説話文献史に関する比較考察が必要であると考える。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文は、日本とモンゴルに伝承された説話の比較対照研究を行ったものである。インド起源の説話は、仏教の伝播伝承に則り、インド・チベット・モンゴルというルート、インド・中国・日本というルートの大きくわけて2つの伝承ルートが考えられるが、本研究は、その行き着く先のモンゴルと日本に焦点を絞り、チベットや中国の文献をも併せて検討することで、文字句やモチーフに基づきつつ、どのように伝承されてきたのかを具体的に考察した。これまで比較検証されることの少なかった日本とモンゴルの説話に、いくつかの観点から具体的な比較対照を試み、書承や翻訳の問題にも触れつつ、論を展開している。サンスクリットの経典をはじめ、漢訳仏典、チベット語・モンゴル語・日本語の一次資料を扱い、一つ一つの語を原典において比較・検証していることは、評価される点であろう。特に、母語であるモンゴル語の文献については自ら翻訳し、その研究史的な整理も行っている。
本論文は、4章から成り、研究史と本論文の目指すところを述べた序章、各章の結論をまとめた結章を加えて全体をなしている。第1章「日本とモンゴルの動物説話の仏教経典から世俗説話までの展開と変容」においては、「鹿王」説話(自らを犠牲にして他を救済する鹿王譚)を扱った。日本の「五色の鹿」話とモンゴルの“Sain nomlolt Erdeniin san Subhashidiin tailbar Chandmaniin tulhuur”説話を取り上げ、原典のパーリ語の“The Jataka ”、サンスクリット語の“The Jataka-xxxx”を初めとして、チベット語・モンゴル語への翻訳、漢訳仏典から日本の説話への影響を論じた。経典由来の説話から民間説話まで展開して伝承されていることも確認した。「鹿」の描写の違いに文化背景の異なりを見出し、説話結末部の描かれ方の相違に着目して、五穀豊穣を祈願する日本の説話と、仏教の教えを聴聞することに価値を置くモンゴル説話の方向性の違いを論じている。『賢愚経』の伝播と享受についても本説話の展開に関わっていることを明らかにした。第2章「日本とモンゴルに共通に伝わった動物説話の文献の展開と変容の特徴」では、
「猿の生き肝」説話を取り上げた。日本の『注好選』『今昔物語集』『沙石集』等の話は、Jataxx xもとにした中国の『六度集経』の影響が見られる。一方、モンゴルにおいては、Paňcatantra から影響を受けたチベット系の説話がモンゴルに入ってきたことを論じた。第3章「日本とモンゴルに共通に伝わったインド起源の仏教経典所収説話について」では、「捨身飼虎」説話について論じた。自然環境や地域による変化という視点からみると、インド・チベット・モンゴルでは舞台が森林となっているが、日本・中国ではxxになっているという点や、登場する小鳥がモンゴルに独自であること、子供を失った母親の悲しみを例える動物の変容などが指摘されるものの、全体としては民族性の影響は少ないとの結論に至った。第4章
「日本とモンゴルの継母説話の比較対照研究」では、日本の「手なし娘」説話とモンゴルの“Gargui huuhen”説話を取り上げ、比較考察をした。手が生える際の描写や話の結末部の描かれ方に、日本とモンゴルの相違を論じた。
以上4章にわたり各章ごと、ことばやモチーフに至るどのような相違が見出されるかを一次資料に基づき検討することを通じて、仏典由来の説話が民間説話まで広がりを見せる中でどのような変容が見出されるか、仏典の翻訳がどのようになされていかに読まれたかがその変容にいかに影響しているかを論じた。もとより、共通するテーマを自ら掘り起こし、それぞれの説話を取り上げているので、日本とモンゴルにおける包括的な比較には至っていない。しかし、経典との距離やモチーフの意味によって変容の度合いが異なることを具体的に捉え、またその相違を資料に基づきつつ指摘した点で、比較研究として大いに評価される。
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | Justxx Xxxxx Xxxx xx(x学) 千大院xx甲第理131号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Coding Theory of Permutations/Multipermutations and in the Lean Xxxxxxx Xxxxxx (置換/多重置換の符号理論と定理証明支援系 LEAN で記述する符号理論) (主査)教授 xx xx (副査)教授 xx xx x授 xx xx (副査)准教授 xx x |
論 文 x x の 要 旨
この論文の主結果は「置換符号/多重置換符号」,「符号理論の形式化」の二つに大別される。
置換符号/多重置換符号には非線形符号という特性があるため理論化が難しく,一般的な符号理論ではあまり研究されてこなかった対象であるが,本論文では,二通りの成果を挙げた。一つ目,ユークリッド距離を用いた置換符号の線形計画法を基礎とした復号アルゴリズムを,Kendall-tau 距離を用いた置換符号の線形計画法を基礎とする復号アルゴリズムへ変換する条件を提示した。二つ目,Ulam 置換球/多重置換球の濃度を計算する新たな手法を導入し,その手法により置換符号の最大濃度の上限と下限を示し,特に Ulam 距離を用いた完全置換符号に対する非自明な符号の非存在定理を導いた。
形式化の研究では,LEAN という定理証明支援系を用いて符号理論の形式化を二通り行った。一つ目,符号理論に適している基本的な数学の定義や定理を形式化し,有名な反復符号とハミング符号を形式化した。二つ目,レーベンシュタイン距離に関係する定義や定理を形式化した。符号理論は数学的記述に基づく理論であるから,形式化に適した研究分野と言えるため,現在は先行研究があまりないが,今後,活発に行われる可能性がある。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
論文でまとめられている成果を大別すると,1.多重置換上の符号理論,2.符号理論の形式化の二つに分けられる。前者の成果は,Kendall-τ距離上の符号の復号アルゴリズムを線形計画法で実現する為の条件を理論的に考察,Ulam距離上の完全置換符号の非存在性,Ulam 距離上の多重置換符号の符号語数の上限下限の3種類ある。また,後者の成果は,誤り訂正システムの形式的定義とのその例の形式化,挿入削除の形式化の2種類ある。これら5種類の成果の大部分はすでに学術論文誌や査読の有る国際シンポジウムに受理されており,国内外から一定の評価を得ている。加えて,残りの部分を学術論文誌に投稿中である。
この論文の研究対象は非線形符号と呼ばれるものを主に扱っていて,符号理論の分野では扱いの難しい対象であることが広く知られている。それにも拘わらず,数学・情報数理学的に深い考察を与え,幾つかの問題を完全に解決したことは特筆に値する。
いずれの成果も学術的に優れていて,博士の学位に値することを確認した。
8月3日に本論文に関して剽窃チェックを行い,問題がないことを確認した。
以上述べたように,審査委員会は本論文が博士(理学)の学位に値するものと判断した。
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xx xx(x学) 千大院xx甲第理132号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Development of a PET detector with spatial resolution of sub-millimeter and study for the elimination of inter Compton scattering events in the detector (サブミリ等方位置分解能 PET 検出器の開発と結晶内散乱事象の除去法に関する研究) (主査)教授 xx x (副査)教授 xx xx x授 xx x (副査)准教授 xx xx x員准教授 xx xx (放射線医学総合研究所) |
論 文 x x の 要 旨
Positron Emission Tomography(PET)は,陽電子の対消滅起因の2本の 511keVγ線をリング状に配置した検出器で同時検出し,画像化処理を施し,線源分布を得る核医学診断法である。PET 測定には不可欠な高感度と高空間分解能を両立させ,且つ深さ方向のγ線検出位置が特定できる PET 検出器,X'tal cube が放射線医学総合研究所により開発された。X'tal cube は,細かなシンチレータセグメントからなるブロックと,それを囲む薄型受光素子から構成される。
本研究では,サブミリ等方位置分解能の PET 装置の実現を目指し,新たな X'tal cube を試作,評価した。 22Na 密封線源を用いた実験により,エネルギー分解能,位置分解能等の性能を評価した。また,PET 計測では,バックグラウンド(BG)線源がある線源分布では,結晶内コンプトン散乱(ICS)事象により信号強度を過小評価してしまうため,ICS 事象を除去する必要がある。そこで,各受光素子の主成分分析による ICS事象除去法を新たに開発した。また,小動物 PET のシミュレーションにより ICS 除去による画像再構成への効果を調べた。実験の結果,エネルギー分解能は平均で 10.0%を得た。正面及び斜め 45 度入射γ線に対して 0.86mm,0.96mm の位置分解能を達成した。そして提案手法により 55%の ICS 事象を除去することができた。信号対 BG 比が 3 対 1 のホットファントムをシミュレーションした結果,本手法により直径 1.2mmの信号源のコントラストを 2.2 倍回復することができた。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
xxの研究テーマは高性能の PET 用γ線測定器の開発研究である。放射線医学総合研究所では世界最高の3次元等方位置分解能を持つγ線測定器 X'tal-Cube の開発研究を進めている。xxxxの中で実際の測定器製作と性能評価実験において中心的役割を果たしている。PETγ線測定器の標準的な位置分解能評価法で X'tal-Cube の位置分解能は 0.82mm であった。この成果は査読付き学術論文で発表済みである。
PET 診断では一般的にγ線測定器の位置分解能に比べて再構成画像の分解能が劣るが,その原因は不明である。xxxxの原因が,標準的な位置分解能評価法が誤っていることと,結晶内コンプトン散乱(Inter Crystal Scattering)事象の排除が既存の PET 装置では全く配慮されていないことにあると発見した。ICS事象では測定器内の複数個所でシンチレーション発光が起きるが,PET でγ線入射位置を判定する標準手法である重心演算法では光電吸収事象と ICS 事象の識別が不可能であり,ICS 事象における発光の重心位置をγ線入射位置と誤認する。既存の PET 測定器は ICS 事象も光電吸収事象と見なして画像再構成計算に利用している。xxは重心演算法とは独立なγ線入射位置判定法であるχ2乗法を開発し,χ2乗法では光電吸収事象と ICS 事象が識別できることを証明した。そして ICS 事象を除去した再構成画像は解像度が大幅に向上し,診断できるがんの体積が従来法に比べて 1/10 以下になることを証明した。
本委員会は,本論文に記載されている ICS 事象除去手法は医学物理学分野における新しい知見であり,この成果を国際的な学術論文として迅速に出版することを強く期待する。
8月2日に本論文に関して剽窃チェックを行い,問題がないことを確認した。
以上述べたように,審査委員会は本論文が博士(理学)の学位に値するものと判断した。
学位(専攻分野)学位記番号 学位記授与の日付学位記授与の要件学位論文題目 論文審査委員 | 吉日木図 博 士(学 術) 千大院工博甲第学37号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 内モンゴル・チャハル地域における伝統的遊牧生活にみられる文化としての時間:遊牧生活において培われた自然との共生のxxに基づく「もうひとつの発展」 (主査) 教 授:xx xx (副主査)教 授:xx xx x 授:xx xxx 授:xx x |
x 文 x x の 要 旨
今日、中国・内モンゴルにおいては、生活様式が遊牧から定住へと変化し、遊牧生活に培われてきた生活文化が急速に消失しつつある。それに伴い、各地域における生活の質の低下が危惧されている。本研究は、内モンゴル・チャハル地域を対象として、伝統的遊牧生活において人びとが、どのように時間を把握してきたのかを確認し記録するとともに、遊牧生活に培われた時間の概念・意匠の特質を明確にすることを目的としたものである。文献調査・現地調査に基づく考察の結果、以下の知見を得た。
(1)モンゴルの遊牧生活にみられる時間概念は、周囲に生起するあらゆる自然現象や情報に基づき形成されたものであり、人びとは、この時間概念に基づき、生活における時間の秩序の「節目」を設定し、自らが一日、一月、一年のどの時間にいるかを把握したり、来るべき時間がどのような状態であるかを予測可能にしてきた。
(2)モンゴルの遊牧生活にみられる時間意匠は、生活のリズムに合わせて行われるさまざまな伝統的な儀礼・行為を生活者が主体的に行うことによって、自然の巡りや生業によって生じる時間を意味ある時間として強調する営みであり、約束ごととして共有されてきた。
(3)モンゴルの遊牧生活の時間は、生活のリズムによって営まれるさまざまな行為によって、時間という範疇を超えて生活空間の秩序の構築にも大きな影響を与えてきた。
このように、文化としての時間には、当該地域の自然に適応しようとしてきた人びとの生き様が如実に反映されている。また、本研究においては明らかになったモンゴルの遊牧生活において培われた時間の特質を生かしたデザイン提案として、以下の指針を導出した。①地域の生活者が主体となった遊牧生活の時間を生かした教育の促進。②生活者が自ら遊牧伝統文化を発信する観光づくり。③遊牧文化への関心度が高い現地のデザイナー、活動家を巻き込んだ活動の展開。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本研究は、内モンゴル・チャハル地域を対象として、伝統的遊牧生活において、人びとが、どのように時間を把握してきたのかを確認し記録するとともに、遊牧生活に培われた時間の概念・意匠の特質を明確にすることを目的としたものである。文献調査・現地調査に基づく考察の結果、以下の知見を得た。 (1)モンゴルの遊牧生活にみられる時間概念は、周囲に生起するあらゆる自然現象や情報に基づき形成されたものであり、人びとは、この時間概念に基づき、生活における時間の秩序の「節目」を設定し、自らが一日、一月、一年のどの時間にいるかを把握したり、来るべき時間がどのような状態であるかを予測可能
にしてきた。
(2)モンゴルの遊牧生活にみられる時間意匠は、生活のリズムに合わせて行われるさまざまな伝統的な儀礼・行為を生活者が主体的に行うことによって、自然の巡りや生業によって生じる時間を意味ある時間として強調する営みであり、約束ごととして共有されてきた。
(3)モンゴルの遊牧生活の時間は、生活のリズムによって営まれるさまざまな行為によって、時間という範疇を超えて生活空間の秩序の構築にも大きな影響を与えてきた。
提出された論文に対して、平成 30 年 6 月 28 日に剽窃チェックソフトを用いてそのオリジナリティーを
確認した。また、平成 30 年 7 月 19 日に本審査会を開催し上記論文に関する発表ならびに内容に関する質疑応答を行った。その結果、総じて、これまで明らかにされてこなかったモンゴルにおける伝統的遊牧生活にみられる文化としての時間の特質ならびに今後のあるべき姿が導出されており、学術的に高い価値を有していると判断された。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | 楊 xx x 士(学 術) 千大院工博甲第学38号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Operational Mechanism of Cultural Packaging: Through Re-recognizing Cultural Chinese Liquor Packaging 文化包装デザインの作用メカニズム-中国白酒の文化包装デザインの再検証を通して (主査) 教 授:xx xx (副主査)教 授:xx xx x 授:モリス マーティン准教授:xx xx x教授:xx xx |
x 文 x x の 要 旨
本論文は、パッケージデザインにおける文化性の構築を研究課題とし、中国の白酒を研究対象として、パッケージデザインの現状、パッケージへの文化要因の導入プロセス、ユーザの文化価値受容について調査を実施し、パッケージに文化性が生成される構造について検討を行ったものである。
はじめに、中国における酒文化の歴史的変遷の概括を行い、近代以前の酒類容器、計画経済下の商品流通、文化大革命、その終結による市場経済へ移行の各段階における、製造者、デザイナー、ユーザの関係をひもとき、各環境下におけるパッケージへの要求について論じ、現代的な文化的な酒類パッケージが出現した様相とその意義を提示した。次に、情報伝達モデルに基づいて、中国の文化コンテクスト下において文化要素がパッケージに付与されるデザインプロセスの考察を行い、文化要素が審美経験を生起させる構造を示した。続いて、現在、市場に流通する白酒の中から、外観において文化的な酒類パッケージとして受容されるものと内面的に文化的な酒類パッケージとして受容されるものを選定し、ユーザ評価結果の分析ならびにxxモデルの視点に基づく分析を行い、白酒のパッケージにおいて文化性を高める要因と低める要因を導出した。以上の白酒パッケージにおいて文化性が生成される構造についての分析と考察を通して、パッケージデザインの進め方に有益な示唆を導出した。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文は、パッケージデザインにおける文化性の構築を研究課題とし、中国の白酒を研究対象として、パッケージデザインの現状、パッケージへの文化要因の導入プロセス、ユーザの文化価値受容について調査を実施し、パッケージに文化性が生成される構造について検討を行ったものである。
はじめに、中国における酒文化の歴史的変遷の概括を行い、近代以前の酒類容器、計画経済下の商品流通、文化大革命、その終結による市場経済へ移行の各段階における、製造者、デザイナー、ユーザの関係をひもとき、各環境下におけるパッケージへの要求について論じ、現代的な文化的な酒類パッケージが出現した様相とその意義を提示した。次に、情報伝達モデルに基づいて、中国の文化コンテクスト下において文化要素がパッケージに付与されるデザインプロセスの考察を行い、文化要素が審美経験を生起させる構造を示した。続いて、現在、市場に流通する白酒の中から、外観において文化的な酒類パッケージとして受容されるものと内面的に文化的な酒類パッケージとして受容されるものを選定し、ユーザ評価結果の分析ならびにxxモデルの視点に基づく分析を行い、白酒のパッケージにおいて文化性を高める要因と低
める要因を導出した。以上の白酒パッケージにおいて文化性が生成される構造についての分析と考察を通して、パッケージデザインの進め方に有益な示唆を導出した。
2018年7月23日に剽窃チェックソフトを使用し、オリジナルであることを確認した。2018年
7月24日に公開論文発表会・審査会を開催し、論文発表と質疑が行われた。審査において学術的に高い価値を有する論文であると判断した
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | 王 甯 博 士(学 術) 千大院工博甲第学39号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 中国xxx楊玘屯における伝統的工芸「泥咕咕」にみられる地域の特質:資源循環型ものづくりの継承を目指して (主査) 教 授:xx xx (副主査)教 授:xx xx xxx:xx xxx 授:xx x |
論 文 x x の 要 旨
本研究は、中国xxx楊玘屯に根差した伝統的工芸である泥咕咕の文化的な特質を明確化するとともに、継承の指針を導出することを目的としたものである。内発的発展論の見地から、今日、地域活性化の観点からも注目されている伝統的工芸のあり方を文献調査ならびに現地調査に基づき検討した。
序章においては、今日の中国における文化事業を概観し、非物質文化遺産に関する保護政策の経緯を把握するとともに泥咕咕と楊玘屯の現状と課題を明確化した。第xxにおいては、伝統的な泥咕咕の制作技術を記録するとともにその特質を把握した。第二章においては、楊玘屯における土の概念、土の種類に応じたものづくりの分布、家屋における土の利活用などを記録するとともに、泥咕咕との関わりを読み取り、また日常生活という視点からみた土の利活用の特質を明らかにした。第三章においては、当該地域の浚県正月古廟会に代表される年中行事にみられる泥咕咕の役割を考察した。第四章においては、楊玘屯に生活している人びとへのアンケート調査を通して、当該地域の土および泥咕咕に対する認識を把握した。
上述の調査・考察の結果、泥咕咕は、当該地域の物質的・非物質的な地域資源の全体活用と連動して構築されてきたものづくりであり、かつ、当該地域の人びとが主体的に継承していく可能性が高いことが分かった。終章においては、急速な近代化における非物質文化遺産のあり方を議論しながら、楊玘屯における今後の内発的発展のあり方を導出した。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本研究は、中国xxx楊玘屯に根差した伝統的工芸である泥咕咕の文化的な特質を明確化するとともに、継承の指針を導出することを目的としたものである。内発的発展論の見地から、今日、地域活性化の観点からも注目されている伝統的工芸のあり方を文献調査ならびに現地調査に基づき検討した。
序章においては、今日の中国における文化事業を概観し、非物質文化遺産に関する保護政策の経緯を把握するとともに泥咕咕と楊玘屯の現状と課題を明確化した。第xxにおいては、伝統的な泥咕咕の制作技術を記録するとともにその特質を把握した。第二章においては、楊玘屯における土の概念,土の種類に応じたものづくりの分布,家屋における土の利活用などを記録するとともに,泥咕咕との関わりを読み取り,また日常生活という視点からみた土の利活用の特質を明らかにした。第三章においては、当該地域の浚県正月古廟会に代表される年中行事にみられる泥咕咕の役割を考察した。第四章においては、楊玘屯に生活している人びとへのアンケート調査を通して、当該地域の土および泥咕咕に対する認識を把握した。
提出された論文に対して、平成 30 年 6 月 28 日に剽窃チェックソフトを用いてそのオリジナリティーを
確認した。また、平成 30 年 7 月 24 日に本審査会を開催し上記論文に関する発表ならびに内容に関する質
疑応答を行った。その結果、総じて、これまで明らかにされてこなかった伝統的工芸である泥咕咕の文化的な特質を明確化するとともに、継承の指針を導出が導出されており、学術的に高い価値を有していると判断された。
氏名 学位(専攻分野)学位記番号 学位記授与の日付学位記授与の要件学位論文題目 論文審査委員 | x xx x 士(学 術) 千大院工博甲第学40号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Study of Filter Topologies Using One-Port SAW/BAW Resonators and Lumped Circuit Elements 1 ポートSAW/BAW 共振子と集中定数要素を組み合わせたフィルタ構成に関する研究 (主査) 教 授:xx xx (副主査)教 授:xx xx x 授:xx xxx教授:xx xx |
論 文 x x の 要 旨
弾性表面波(SAW)並びにバルク波(BAW)を利用した共振子は携帯電話・スマートフォンに多く利用されている。本論文は、SAW/BAW 共振子の新たな活用法開発を目指し、それと集中定数要素を組み合わせた新規なフィルタ構成について検討したものである。
まず、帯域除去フィルタについて検討した。具体的には、LC を用いた低域通過もしくは高域通過フィルタを考え、その中の C を 1 ポート SAW/BAW 共振子と置換することにより、減衰極を発生することができる。そして、二つの帯域除去フィルタを縦続し、その減衰極の位置を適当に設定すると、減衰周波数帯域端の遮断特性が改善され、またその周波数領域での挿入損失が減少することを明らかにした。また、この手順に基づき、SAW/BAW 共振子を用いた帯域除去フィルタの設計手順を確立すると共に、実験により確立された設計法の妥当性を確認した。
次に、1 ポート共振子を用いた多重モードフィルタ実現の可能性を検討した。具体的には、複数の 1 ポート SAW/BAW 共振子を並列接続したものを二組用意し、これとバラン(平衡・不平衡変換器)と組み合わせることにより、多重モードフィルタと等価な機能を実現しようとするものである。理論解析により優れた性能が得られる可能性が示唆されたが、バランの性能(同相信号除去比)に大きく依存することが判った。同相信号除去比の影響を低減するために、二つの回路を新たに提案し、その有効性を明らかにした。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
弾性表面波(SAW)並びにバルク波(BAW)を利用した共振子は携帯電話・スマートフォンに多く利用されている。本論文は、SAW/BAW 共振子の新たな活用法開発を目指し、それと集中定数要素を組み合わせた新規なフィルタ構成について検討したものである。
まず、帯域除去フィルタについて検討した。具体的には、LC を用いた低域通過もしくは高域通過フィルタを考え、その中の C を 1 ポート SAW/BAW 共振子と置換することにより、減衰極を発生することができる。そして、二つの帯域除去フィルタを縦続し、その減衰極の位置を適当に設定すると、減衰周波数帯域端の遮断特性が改善され、またその周波数領域での挿入損失が減少することを明らかにした。また、この手順に基づき、SAW/BAW 共振子を用いた帯域除去フィルタの設計手順を確立すると共に、実験により確立された設計法の妥当性を確認した。
次に、1 ポート共振子を用いた多重モードフィルタ実現の可能性を検討した。具体的には、複数の 1 ポ
ート SAW/BAW 共振子を並列接続したものを二組用意し、これとバラン(平衡・不平衡変換器)と組み合わせることにより、多重モードフィルタと等価な機能を実現しようとするものである。理論解析により優れた性能が得られる可能性が示唆されたが、バランの性能(同相信号除去比)に大きく依存することが判った。同相信号除去比の影響を低減するために、二つの回路を新たに提案し、その有効性を明らかにした。
平成 30 年 6 月 11 日に剽窃チェックソフトを使用し、オリジナルであることを確認した。また、平成 30
年 7 月 18 日に公開論文発表会並びに本審査委員会を開催し、提出された論文内容の説明を受けた後、質疑および討論を行った。その結果、以上の内容は工学的価値を十分に有するものであり、審査委員会は全会一致で、本論文が博士(学術)の学位に値するものと判定した。
氏名 学位(専攻分野)学位記番号 学位記授与の日付学位記授与の要件学位論文題目 論文審査委員 | x xx x 士(学 術) 千大院工博甲第学41号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Study on Lateral Propagation of Surface Acoustic Waves in Periodic Grating Structures Including Coupling Between Two Different Modes異なる二xxの結合を考慮した弾性表面波の周期格子中斜め伝搬に関する研究 (主査) 教 授:xx xx (副主査)教 授:xx xx x 授:xx xxx教授:xx xx |
論 文 x x の 要 旨
本論文は、同一基板上に二つの弾性表面波(SAW)が存在する場合について、それらの金属格子における斜め伝搬特性に関して検討したものである。ある種の基板において、SAW の斜め伝搬特性が基板の回転角や金属格子の厚さ等に極めて敏感なことが知られており、これが SAW の結合に由来していることを明らかにすることを目的としている。
まず、複数の波動が結合した場合の SAW の伝搬特性を記述する数学モデルを開発し、結合強度により SAW
速度の伝搬方位依存性がどの様に変化するかを明らかにした。
次に、主モードの SH 型 SAW の外に Rayleigh 型 SAW が共存する 42ºYX-LiTaO3 基板について、SH 型 SAWの斜め伝搬特性が金属格子の厚さによりどの様に変化するか有限要素解析した。そして、上述のモデルによる結果と比較し、膜厚依存性がよく説明できることを明らかにした。また、実際に同基板を利用して SAWデバイスを作製し、斜め伝搬に帰因する横共振モードの振る舞いが上述のモデルによりよく説明できることを確認した。
さらに、主モードが Rayleigh 型 SAW で SH 型 SAW も共存する 128ºYX-LiNbO3 基板について、金属格子の厚さ並びに基板の回転角依存性について同様の検討を行い、この場合も上述のモデルによりよく説明できることを確認した。
以上の検討により、当初に述べた特異な基板回転角並びに金属格子厚さ依存性が、予想通り2種類の SAW
の結合に由来していることを明らかにした。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文は、同一基板上に二つの弾性表面波(SAW)が存在する場合について、それらの金属格子における斜め伝搬特性を検討している。ある種の基板において、SAW の斜め伝搬特性が基板の回転角や金属格子の厚さ等に極めて敏感なことが知られており、これが SAW の結合に由来していることを明らかにすることを目的としている。
まず、複数の波動が結合した場合の SAW の伝搬特性を記述する数学モデルを開発し、結合強度により SAW速度の伝搬方位依存性がどの様に変化するかを明らかにした。次に、主モードの SH 型 SAW の外に Rayleigh型 SAW が共存する 42ºYX-LiTaO3 基板について、SH 型 SAW の斜め伝搬特性が金属格子の厚さによりどの様
に変化するか有限要素解析した。そして、上述のモデルによる結果と比較し、膜厚依存性がよく説明できることを明らかにした。また、実際に同基板を利用して SAW デバイスを作製し、斜め伝搬に帰因する横共振モードの振る舞いが上述のモデルによりよく説明できることを確認した。さらに、主モードが Rayleigh型 SAW で SH 型 SAW も共存する 128ºYX-LiNbO3 基板について、金属格子の厚さ並びに基板の回転角依存性についても同様に検討し、この場合も上述のモデルによりよく説明できることを確認した。
以上の検討により、当初に述べた特異な基板回転角並びに金属格子厚さ依存性が、予想通り2種類の SAW
の結合に由来していることを明らかにした。
平成 30 年 6 月 11 日に剽窃チェックソフトを使用し、オリジナルであることを確認した。また、平成 30
年 7 月 18 日に公開論文発表会並びに本審査委員会を開催し、提出された論文内容の説明を受けた後、質疑および討論を行った。その結果、以上の内容は工学的価値を十分に有するものであり、審査委員会は全会一致で、本論文が博士(学術)の学位に値するものと判定した。
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | 陳 柏x x 士(工 学) 千大院工博甲第工291号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Toward Visual Design Suitable for Aging Society: A Study Based on QOL Survey of Patients with Aging Cataract 高齢社会に適した視覚デザインに向けて: 加齢性白内障患者の QOL 調査に基づいた検討 (主 査)教 授:xx xx (副主査)教 授:xx xx x 授:xx xxx x:xxx xx |
論 文 x x の 要 旨
For promoting the design leading to the improvement of the quality of life (QoL) of cataract patients, in this research, we examined visual conditions and inconvenience in everyday life of 48 patients in collaboration with ophthalmologic clinics. In chapter 1, we first outline the symptoms of cataracts, the physiological problems that can occur after surgery, and the relevance of the problem and QoL. In chapter 2, we report on discomfort and lifestyle changes that occurred after surgery based on a survey on patients who underwent cataract surgery. It was suggested that about half of the patients may cause eye fatigue and photosensitivity after surgery, possibly lowering QoL. In Chapter 3, we investigated the problems felt by patients who did not undergo surgery and their awareness of their illness. Although dissatisfaction in General Vision and Near Activity is large, nearly half of the patients tended to overestimate their color discriminating ability. About 80% of patients also declared that they had no plan to surgery immediately. It was suggested that the elderly who continues to live in a state where QoL is lowered or is accompanied by danger due to the effect of cataract may exist extensively. In Chapter 4, we propose design direction for improving QoL of cataract patients, and discuss the contribution of this research in the design studies and future prospects.
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本研究では、白内障患者の生活の質(QOL)の改善に繋がるデザインの推奨を目指し、眼科クリニックと連携しながら計 48 名の患者の視覚状況および日常生活における課題について詳細に検討を加えた。第1章では、白内障の症状を始めとして、白内障の手術後に起こりうる生理的課題およびその課題と QOL の関連性について概説した。第2章では、白内障手術を受けた患者への調査をもとに、手術後に生じた不快感、ならびに生活習慣の変化について検討した。その結果、約半数の患者において手術後に目の疲労や光過敏症が生じ、QOL を低下させる可能性があったことが示唆された。第3章では、白内障手術を受けていない患者が感じる課題、および自身の病気に対する意識について探求した。その結果、全体的見え方や近距離活動における不満が大きい一方、半分近くの患者が自分の色弁別力を過大評価している傾向が明らかになった。また、約 8 割の患者は白内障手術をすぐに受ける予定がないと表明した。これは、白内障の影響に
よって QOL が低下したままの状態、もしくは危険性を伴う状態で生活し続けている高齢者が広範囲に存在する可能性を示すものである。第 4 章では、以上のような結果をもとに、白内障患者の QOL を改善するためのデザインの方向性を提案するとともに、デザイン学における本研究の成果や今後の展望について議論した。
なお、2018 年 7 月 6 日に剽窃チェックソフトを使用し、本論文がオリジナルな内容であることを確認し
た上で、2018 年 7 月 24 日に公開論文発表会・審査会を開催し、論文発表と論文内容に関する質疑応答を行った。その結果、本論文は、高齢社会における視覚デザインの問題についてデザイン心理学的な観点から多角的に検討を加えるとともに、今後のデザインの方向性についても提案しており、デザイン科学の観点からも重要で意義のある成果を提供する工学的に価値のある研究であると認められた。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | 阮 将軍 博 士(工 学) 千大院工博甲第工292号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 中国湖南省隆回県における花瑶族の内発的地域振興: 花瑶族の伝統的服飾にxxする生活文化の再確認・再認識を通して (主 査)教 授:xx xx (副主査)教 授:xx xx x 授:xx xxx x:xx x |
論 文 x x の 要 旨
本研究は、中国湖南省隆回県における花瑶族の服飾にxxする生活文化に関する調査・解析に基づき、当該地域の人びとが目指すべき生活のあり方を導出することを目的としたものである。
文献調査、現地における実物資料の調査ならびに聞き取り調査に基づき、服飾文化の特質を考察した。その結果、以下の知見を得た。
(1)花瑶族の人びとは、xx、苧麻などの自然素材を活用して服飾を制作し、古くなると他の用途に転用するなどして徹底的に使い尽くし、使用に耐えられなくなると自然に還元した。その営みのなかで、自然と寄り添い自然の産物を循環的に活用する方途を見出してきた。(2)女性たちは、日常服の制作を通して、世代や家族を超えて村人と交流しながら技術を向上させるとともに、刺繍紋様に内包された意味を共有し、その使用を通して女性の能力や美しさを表現した。こうして、服飾は、集落のみならず、地域社会におけるコミュニケーションの媒体ともなってきた。(3)日常服の制作と使用、洗濯・乾燥・保管などの行為には、時間・空間意識と連動した生活リズムが反映されている。(4)男女両家の力を合わせて制作した女性の婚礼衣装は、社会的立場の転換のみならず、他人への幸福を願うとともに、死後、婚姻関係、家族関係を維持・継続する役割を果たしてきた。(5)葬礼衣装の制作と使用は、親や年長者に敬い大切にする孝悌の心、世代・長幼の序列を表すとともに家族や宗族連帯を強化する役割を果たしてきた。
また、当該地域の人びとを対象としたアンケート調査を実施し、上述した服飾に関する生活文化に対する認識・意識を把握した。その結果、当該地域の人びとが強い関心を有しており、かつ、同文化の継承を望んでいることが明らかとなった。さらに、今後、素材の栽培・加工・活用、服飾の制作・使用を通して形成されてきた生活文化を当該地域の人びとの間で共有し、自然環境・人間関係・家族関係が持続する社会づくりを展開していくための指針を導出した。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本研究は、中国湖南省隆回県における花瑶族の服飾にxxする生活文化に関する調査・解析に基づき、当該地域の人びとが目指すべき生活のあり方を導出することを目的としたものである。
文献調査、現地における実物資料の調査ならびに聞き取り調査を行い、服飾文化の特質を考察した。その結果、以下の知見を得た。(1)花瑶族の人びとは、服飾の制作、転用、還元の営みのなかで、自然と寄り添い自然の産物を循環的に活用する方途を見出してきた。(2)服飾は、集落のみならず,地域社会におけるコミュニケーションの媒体ともなってきた。(3)日常服の制作と使用,洗濯・乾燥・保管などの行為には,時間・空間意識と連動した生活リズムが反映されている。(4)男女両家の力を合わせて制作した女性の婚礼
衣装は、社会的立場の転換のみならず、他人への幸福を願うとともに、死後、婚姻関係、家族関係を維持・継続する役割を果たしてきた。(5)葬礼衣装の制作と使用は、親や年長者に敬い大切にする孝悌の心、世代・長幼の序列を表すとともに家族や宗族連帯を強化する役割を果たしてきた。
提出された論文に対して、平成 30 年 6 月 28 日に剽窃チェックソフトを用いてそのオリジナリティーを
確認した。また、平成 30 年 7 月 27 日に本審査会を開催し上記論文に関する発表ならびに内容に関する質疑応答を行った。その結果、総じて、これまで明らかにされてこなかった中国湖南省隆回県における花瑶族の服飾にxxする生活文化の特質ならびに今後の当該地域のあるべき姿が導出されており、学術的に高い価値を有していると判断された。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | 賀 暁琳 x x(工 学) 千大院工博甲第工293号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Research on Graphical Representation of Numerical Data: the classification model and potential of visualization 数値データの可視化に関する研究:可視化の分類体系およびその可能性 (主 査)教 授:xx xx (副主査)教 授:xx xx x 授:xx xxxx:xx xx |
論 文 x x の 要 旨
本研究は,数値データの可視化について,新たな可能性を模索するための分類体系を提示し,その分類体系を実際に使用することにより,数値データ可視化の新たな可能性を示したものである。
具体的には,印刷技術が定着して以降の数値データ可視化の事例を取り上げ,その変遷について分析を行い,各年代の特徴を明らかにした。また過去のデータ可視化の分類体系を調査・分析し,それらはいずれも分類学的な分類であり,新しい可視化方法を模索するためには不十分であることを示し,既存の可視化サンプルを調査・分析することにより,製作者の意図を構成(Composition),分布(Distribution),変遷(Transition),比較(Comparison),関係(Connection)の5つに分類し,それら意思を含んだ数値データ可視化の統合的な分類体系の提示を行った。さらにそれらを実際のデザイン現場で活用することにより,その分類体系の妥当性を確認し,数値データ可視化の新たな可能性を示した。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本研究は,数値データの可視化について,新たな可能性を模索するための分類体系を提示し,その分類体系を実際に適用することにより,数値データ可視化の新たな可能性を示したものである。
具体的には,印刷技術が定着して以降の数値データ可視化の事例を取り上げ,その変遷について分析を行い,各年代の特徴を明らかにした。また過去のデータ可視化の分類体系を調査・分析したところ, それらはいずれも分類学的な分類であり,新しい可視化方法を創造するためには不十分であることが示され た。そこで既存の可視化サンプルの調査・分析に基づき,製作者の意図を構成(Composition) ,分布 (Distribution),変遷(Transition),比較(Comparison),関係(Connection)の 5 つに分類し,それらの意図を考慮した数値データ可視化の統合的な分類体系の提示を行った。さらにそれらを実際のデザイン現場へ適用することにより,その分類体系の妥当性を確認し,数値データ可視化の新たな可能性を示した。
2018 年 7 月 16 日に剽窃チェックを行い,問題ないことを確認した上で,7 月 17 日に公開論文発表会・ 審査会を開催し,論文発表と質疑を行った。その結果,今後のデザイン学研究に対し示唆に富む知見が導出されており,学術的にも高い価値を有しているものと判断した。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xx x x(工 学) 千大院工博甲第工294号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 触覚感の導入がコミュニケーションの活性化に与える影響に関する研究 -親子の遊びの場づくりに焦点をあてて- (主 査)教 授:xx x (副主査)教 授:xx xx x 授:xx xxx 授:xx xx |
論 文 x x の 要 旨
親子のコミュニケーション形成に寄与する場の活性化において、子どもの発達と深く関わる触覚感に焦点をあて、環境と親子のより良い関係性を再構築しデザインすることは、子どもが健康に育つ社会、育児に喜びを感じることができる社会に向けその改善の一助として意義あるものと考える。そこで本研究では、幼児の発達過程における触覚の役割を生理学、心理学、教育学、日本の育児文化の領域から、触覚の重要性を導き出した。そして親子のコミュニケーションを促進する「環具」を制作、調査し共有されたイメージが契機となり、触覚感を活かした遊びが誘発されていることを確認した。さらに触覚感が親子のコミュニケーション促進に果たす役割と事物・行為の相互関連性を、ISM を用いて構造化し、子どもの身の回り の製品の類型化からそれらの特徴を明らかにした。以上に基づき、触覚感から誘発される遊びを題材にしたデザイン検討モデルを制作し、親子の情動を分別してxxする行動指標を統合したカテゴリーシステムを用いて両者のコミュニケーションの深浅のレベルを分析した。その結果、触覚感は活動の触媒としての役割をもち、一連の研究から親子のコミュニケーションを活性化する触感覚を取り入れたデザインでは、
1. 応答性の高い素材で触覚感を刺激し行動を促す2. 遊びを促し活動を展開する場を形成 3. コミュニケーション活性化の触媒として機能することが導き出された。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
親子のコミュニケーション形成に寄与する場の活性化において、子どもの発達と深く関わる触覚感に焦点をあて、環境と親子のより良い関係性を再構築しデザインすることは、子どもが健康に育つ社会、育児に喜びを感じることができる社会に向けその改善の一助として意義あるものと考える。
そこで本研究では、幼児の発達過程における触覚の役割を生理学、心理学、教育学、日本の育児文化の領域から、触覚の重要性を導き出した。そして親子のコミュニケーションを促進する「環具」を制作、調査し共有されたイメージが契機となり、触覚感を活かした遊びが誘発されていることを確認した。さらに触覚感が親子のコミュニケーション促進に果たす役割と事物・行為の相互関連性を、ISM を用いて構造化し、子どもの身の回りの製品の類型化からそれらの特徴を明らかにした。以上に基づき、触覚感から誘発される遊びを題材にしたデザイン検討モデルを制作し、親子の情動を分別してxxする行動指標を統合したカテゴリーシステムを用いて両者のコミュニケーションの深浅のレベルを分析した。その結果、一連の研究から触感覚を導入することによる有効性として、1.活動の媒体として介在する 2.触媒効果しての役割がある 3.親子のコミュニケーションを生起させる 4.豊かなコミュニケーションを促進させることが導き
出された。
2018 年 7 月 24 日に剽窃チェックを行い、問題ないことを確認したうえで、7 月 25 日に公開論文発表会・審査会を開催し、論文発表と質疑応答を行った。その結果、今後のデザイン学研究に対し示唆に富む知見が導出されており、学術的にも高い価値を有しているものと判断した。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xx x 士(工 学) 千大院工博甲第工295号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Study on noise-reduction and high-efficiency of bird wing-inspired micro-wind turbines 鳥類翼を規範とした小型風車の低騒音化・高効率化の研究 (主 査)教 授:xx x (副主査)教 授:x x x 授:xx xx准教授:xx xx |
論 文 x x の 要 旨
小型風力発電機は生活環境の近くに設置されることが多く,高効率と静音性が求められるが,小型風車羽の基礎設計ではこれらの要求に対応できていない。本研究では,小型風車に適するロータの生物規範設計方針を研究開発するため,静音性を有するフクロウ翼のxxセレーション(鋸歯状)構造と鳥翼の屈曲形状の流体力学的性能を風洞実験と流体解析にて調べた。フクロウの初列風切羽を規範とし,異なるセレーション形状の長さ・間隔を有する平板翼を作製して空気力測定を行った結果,セレーションのxxx密度が増すほど,迎角 15°以下で揚力係数や揚抗比の低下が見られたが,迎角 15°以上では空力特性に変化は見られなかった。更に粒子画像速度測定法により流速分布を測定した結果,セレーションが流れの層流
-乱流遷移を促進させ,負圧面近傍の剥離流れを安定化するとともに,再付着させないよう制御していることが分かった。一方,幅広い周速比λで高い出力係数 Cp を有する風車翼を開発するため,自然界の不安定風況に強い鳥翼形状を規範とし,流体解析や風洞実験にてその流体力学的性能を解析した結果,翼xx側のxxを前進させることで低いλでの Cp を,xx側のxxを後退させることで高いλでの Cp を改善できることが分かった。更に翼形状の最適化を行った結果,広範囲λで高い Cp を実現可能な風車翼を発見した。これはバイオミメティクス設計が高ロバスト性小型風車のイノベーションにつながる有効な手段であることを示唆する。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
小型風力発電機は生活環境の近くに設置されることが多く,高効率と静音性が求められるが,小型風車羽の基礎設計ではこれらの要求に対応できていない。本研究では,小型風車に適するロータの生物規範設計方針を研究開発するため,静音性を有するフクロウ翼のxxセレーション(鋸歯状)構造と鳥翼の屈曲形状の流体力学的性能を風洞実験と流体解析にて調べた。フクロウの初列風切羽を規範とし,異なるセレーション形状の長さ・間隔を有する平板翼を作製して空気力測定を行った結果,セレーションのxxx密度が増すほど,迎角 15°以下で揚力係数や揚抗比の低下が見られたが,迎角 15°以上では空力特性に変化は見られなかった。更に粒子画像速度測定法により流速分布を測定した結果,セレーションが流れの層流
-乱流遷移を促進させ,負圧面近傍の剥離流れを安定化するとともに,再付着させないよう制御していることが分かった。一方,幅広い周速比λで高い出力係数 Cp を有する風車翼を開発するため,自然界の不安定風況に強い鳥翼形状を規範とし,流体解析や風洞実験にてその流体力学的性能を解析した結果,翼xx側のxxを前進させることで低いλでの Cp を,xx側のxxを後退させることで高いλでの Cp を改善で
きることが分かった。更に翼形状の最適化を行った結果,広範囲λで高い Cp を実現可能な風車翼を発見した。これはバイオミメティクス設計が高ロバスト性小型風車のイノベーションにつながる有効な手段であることを示唆する。
平成 30 年 7 月 25 日に論文公開発表会・審査会を開催し、質疑及び討論を行った。また 5 月 15 日と 7 月
30 日に剽窃チェックソフトを使用し、オリジナルであることを確認した。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xxx 博 士(工 学) 千大院工博甲第工296号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 高機能材料のバイオミメティックデザインを目指した表面および界面のマルチスケール解析に関する研究 (主 査)教 授:xx x (副主査)教 授:x x x 授:xx xx准教授:xx xx |
論 文 x x の 要 旨
電子機器や流体機器の高密度化、高性能化に伴い,種々の材料の高機能化が求められている。高機能材料の開発にあたっては,異なるスケールにおける様々な多物理現象,例えば,nm〜μm のミクロスケールでの異種材料界面の剥離,mm 以上のマクロスケールにおける流れの剥離による流体特性の低下などの課題に関する包括的な研究が重要である。一方,生物の表面は多くの場合,nm からμm にxxxスケールで規則的な構造を有しており,これにより優れた特性,機能を発揮している。本研究では,バイオミメティクス(生物模倣)の概念や手法を用いてマルチスケールに及ぶ材料の複雑現象を解明し,高機能材料の早期開発に貢献するための解析技術を開発した。ミクロスケールでの異種材料界面の剥離については,xxx等が有する原子・分子レベルの接着力に着目し,原子・分子レベルの配列と界面密着性との関係を,分子動力学法や密度汎関数法により解明した。さらに,樹脂材料を含む界面のエネルギー安定構造を導出し,エネルギー安定構造から界面の剥離エネルギーを計算する技術を開発することで,密着性に優れた材料を効率的に予測・選択可能とした。一方,マクロスケールにおいて,流れの剥離による流体特性の低下については,サメが有する立体的なxxx微細構造と,流体の剥離抑制や抵抗低減などの特性との関係を大規模な流体解析により解明した。さらに,実際の流体機器の部材表面にバイオミメティックデザイン(生体模倣設計)を付与することで,流体特性の向上を実証した。これらにより,表面や界面のミクロ,マクロの各スケールにおける材料,流体の複雑な多物理現象を解明し,生物を規範とした高機能材料の開発に必要な高度な解析技術を開発した。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
電子機器や流体機器の高密度化、高性能化に伴い,種々の材料の高機能化が求められている。高機能材料の開発にあたっては,異なるスケールにおける様々な多物理現象,例えば,nm〜μm のミクロスケールでの異種材料界面の剥離,mm 以上のマクロスケールにおける流れの剥離による流体特性の低下などの課題に関する包括的な研究が重要である。一方,生物の表面は多くの場合,nm からμm にxxxスケールで規則的な構造を有しており,これにより優れた特性,機能を発揮している。本研究では,バイオミメティクス(生物模倣)の概念や手法を用いてマルチスケールに及ぶ材料の複雑現象を解明し,高機能材料の早期開発に貢献するための解析技術を開発した。ミクロスケールでの異種材料界面の剥離については,xxx等が有する原子・分子レベルの接着力に着目し,原子・分子レベルの配列と界面密着性との関係を,分子動力学法や密度汎関数法により解明した。さらに,樹脂材料を含む界面のエネルギー安定構造を導出し,
エネルギー安定構造から界面の剥離エネルギーを計算する技術を開発することで,密着性に優れた材料を効率的に予測・選択可能とした。一方,マクロスケールにおいて,流れの剥離による流体特性の低下については,サメが有する立体的なxxx微細構造と,流体の剥離抑制や抵抗低減などの特性との関係を大規模な流体解析により解明した。さらに,実際の流体機器の部材表面にバイオミメティックデザイン(生体模倣設計)を付与することで,流体特性の向上を実証した。これらにより,表面や界面のミクロ,マクロの各スケールにおける材料,流体の複雑な多物理現象を解明し,生物を規範とした高機能材料の開発に必要な高度な解析技術を開発した。
平成 30 年 7 月 25 日に論文公開発表会・審査会を開催し、質疑及び討論を行った。また 5 月 21 日と 7 月
27 日に剽窃チェックソフトを使用し、オリジナルであることを確認した。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | x xx 博 士(工 学) 千大院工博甲第工297号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 可変速交流ドライブの直流リンク電圧変動時における直流電源エネルギーの有効利用法に関する研究 (主 査)教 授:x xx (副主査)教 授:xx xx 教 授:xx xx 教 授:xx xx 准教授:xxx xx (審査協力者) xx大学 特任教授:xx xxx |
論 文 x x の 要 旨
近年,小型軽量,高効率な,可変速交流ドライブシステムは省エネルギーな電気駆動システムの普及に貢献し,産業応用分野からxx機器,自動車分野まで幅広く使われている。可変速交流ドライブシステムの駆動回路として主に使われている電圧形インバータは,一般的には一定の直流リンク電圧から所望の交流電圧波形を出力する。しかし,直流リンク電圧が変動する場合では,それに適した制御法が必要である。直流リンク電圧が変動する例としては,電源変動など,外部の要因によって変動するケースと,高効率化のために直流リンク電圧を可変とするなど,システムを有効に運転させるため意図的に変動させるケースがある。
本研究では,このような可変速交流ドライブの直流リンク電圧変動に着目し,外部の要因によって直流リンク電圧が変動するケースとして,空調用圧縮機を駆動する場合に瞬時停電時でも運転を継続する方法を明らかとした。具体的には,瞬時停電時に平滑用フィルタコンデンサに蓄電されている直流電源エネルギーを有効に利用することで,運転継続ができる制御法の提案と検証を行った。また,意図的に直流リンク電圧を変動させるケースとして,ハイブリッド電気自動車の電池消費エネルギー削減のための直流リンク電圧可変システムにおいて,電動機負荷変動も考慮した直流リンク電圧制御法の設計法を提案し,検証した。
本論文は,可変速交流ドライブシステムの直流リンク電圧変動時に,直流電源エネルギーを有効に活用するための制御方法を明らかにしており,工学的に価値があるものと認められる。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
高効率な可変速交流ドライブシステムの駆動回路として、一定の直流リンク電圧から交流電圧波形を出力する電圧形インバータが広く用いられている。本論文では、この直流リンク電圧を積極的に変化させることにより、空調装置で瞬時停電時に運転を継続する制御法と、電気自動車等で損失低減を目的とした直流リンク電圧可変システムの制御法を提案する。
空調用圧縮機における瞬時停電時に対しては、平滑用フィルタコンデンサに蓄電されている直流電源エネルギーを有効に利用することで、運転継続ができる制御法の提案と検証を行った。また、直流リンク電圧可変システムの制御法としては、ハイブリッド電気自動車駆動システムの電力変換回路の損失低減を目的として、バッテリー電圧を昇圧することによって得られる直流リンク電圧を可変とするための電圧制御系の設計法を提案し検証した。
本論文は、異なる応用機器を対象としているが、可変速交流ドライブの直流リンク電圧を変化させることにより、直流電源エネルギーを有効利用するという点で共通の技術であり、その知見は可変速交流ドライブの普及促進やシステムの高効率化に寄与し、電動機駆動システムの省エネルギー化に貢献できる。
本論文に関して、平成 30 年 7 月 17 日に公開論文発表会・審査会を開催し、論文発表と質疑が行われた。
また、平成 30 年 7 月 12 日に剽窃チェックソフトを使用し、オリジナルであることを確認した。
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | XXXXXXX XXXXXXXX 博 士(学 術) 千大院xx甲第学73号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Oxylipin influences ethylene metabolism and ethylene signal transduction in apple and peach fruit リンゴおよびモモ果実におけるオキシリピンがエチレン代謝およびエチレンシグナル伝達に及ぼす影響 (主査)教 授 xx x (副査)教 授 xx x 教 授 xx xx教 授 xx xx |
論 文 x x の 要 旨
The effects of the jasmonic acid (JA) derivative n-propyl dihydrojasmonate (PDJ) on ethylene signal transduction and endogenous JA in apple and peach infected with B. cinerea (gray mold) were investigated. Fruits were dipped into 400 µM PDJ solution and inoculated with B. cinerea. In both apple and peach, the inoculation without PDJ application (PDJ− Ino+) showed larger lesion diameters compared to the PDJ application with inoculation (PDJ+ Ino+) and the untreated controls group. Meanwhile, the PDJ application induced the accumulation of ethylene production, greater expressions of ACS1 gene, endogenous JA, and AOS2 gene. In addition, the ABA concentration, aldehyde, and alcohol compound were enhanced by PDJ+ Ino+ in peach but decreased in apple. The result suggest that PDJ application might delay the infection of B. cinerea as through accumulate of ethylene, JA, and expression of related gene in apple and peach. In addition, alcohols and aldehydes were also enhanced by PDJ application and inhibit fungal development in peaches. The effect of PDJ and KODA application on ethylene production at pre- and early-climacteric stage on peach were investigated. In peach harvested at 88 DAFB, the PDJ application increased expression level of ethylene biosynthesis gene, PpACS1 and PpACO1 gene, but has not effect on ethylene signal transduction genes, PpETR1, PpERS1, and PpCTR1. However, the KODA application increased expression level of PpETR1, an ethylene receptor gene. In peach harvested at 102 DAFB, ethylene production and ACC concentration rapidly increased by the PDJ and KODA application. The PDJ application increased expression levels of PpACS1 gene. Nevertheless, expression levels of PpACO1, PpETR1, PpERS1 and PpCTR1 was not stimulated by the PDJ and KODA application. The oxylipins compounds promote ethylene production in peach fruit and this is associated with expression of PpETR1 and PpCTR1.
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文はリンゴおよびモモ果実へのオキシリピン処理がエチレンシグナル伝達に及ぼす影響について研究したものである。本論文は平成 30 年 6 月 25 日に提出され、その後上記 4 名の審査委員により論文の内容および構成等の観点から慎重に審査された。
平成 30 年 7 月 17 日に、公開論文発表会を開催し(33 名出席)、論文の発表と論文内容に関する質疑応答を行った。発表会の後に審査会を開催し、以下の結果を得た。
本研究は、以下の点が学術論文として評価できる。本研究ではオキシリピン(ジャスモン酸およびケトールリノレン酸)処理が果実成熟期あるいは病原菌に感染した果実における、エチレン代謝およびエチレンシグナル伝達に及ぼす影響について、定量 RT-PCR、ガスクロマトグラフィーマススペクトロメトリー
(GC-MS)等を供試して検討したものである。オキシリピンおよびエチレンは植物の免疫に関与していることが考えられているが、オキシリピン処理は病原菌の感染拡大を抑制する可能性のあること、またエチレンシグナル伝達への影響としては、PpETR1 および PpCTR1 のレセプター遺伝子などに強く影響すること等が明らかとなった。
以上より申請者が博士(学術)の学位に値する専門分野における学識を有すること、および外国語についても論文が英語で記載されていることおよびプレゼンテーションは英語で行われていることより十分な英語の能力を持つことを確認した。さらに、本論文の内容に関する論文が、The Horticulture Journal 2018および The Journal of Horticultural Science & Biotechnology 2018 に受理されていることを確認した。
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | x x x x(学 術) 千大院xx甲第学74号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Roles of phytohormones on 'Shine Muscat' grape(VITIS LABRUSCANA BAILY ×VITIS VINIFERA L.) maturation ブドウ'シャインマスカット'の成熟に及ぼす植物ホルモンの役割 (主査)教 授 xx x (副査)教 授 xx x 教 授 xx xx教 授 xx xx |
論 文 x x の 要 旨
The effects of IPT, NDGA, Abz-E3M or ethephon on the maturation of ‘Shine Muscat’ grape berries were investigated using transcriptome analysis and qRT-PCR verification. IPT or NDGA applications retarded chlorophyll degradation in the berry skin. Transcriptional profiling revealed that 2,218 genes in the grapes treated with IPT and 2,270 genes in those treated with NDGA were differentially expressed compared to the untreated control grapes at 70 DAFB. IPT or NDGA applications regulated the expression of genes involved in ABA, auxin, and ethylene metabolism. MapMan analysis and qRT-PCR validation showed that the expression levels of VvNCED1, VvCYP707A1, VvAAO4, and VvGEM-like genes in the ABA metabolic pathway were negatively regulated by IPT and NDGA treatments at 70 DAFB. Moreover, the IPT and NDGA treatments inhibited sugar and volatile aroma biosynthesis through regulate the expression of genes, including VvSUS, VvAI, VvHT, VvLOX, VvADH, VvGPPS, and VvTPS. These results suggest that both IPT and NDGA influence chlorophyll degradation, ABA accumulation, and sugar and aroma volatile syntheses in the maturation process. Abz-E3M or ethephon treatment decreased the firmness and titratable acid concentration. Abz-E3M treatment inhibited VvCYP707A1 gene expression levels at 48 DAFB and increased endogenous ABA accumulation at 54 DAFB. Ethephon treatment significantly up-regulated VvNCED1 gene expression levels at 48 DAFB and VvCYP707A1 at 54 DAFB, but had no effect on ABA concentration. Ethylene and gene expression levels of VvACO1 and VvERF2 in Abz-E3M- and ethephon-treated berries at 48 DAFB were up-regulated. Abz-E3M or ethephon treatment also accelerated chlorophyll breakdown in berry skin with the up-regulation of VvPPH and VvRCCR gene expression levels. The total sugar concentrations slightly increased in both Abz-E3M - and ethephon-treated berries. These results suggest that the Abz-E3M treatment before véraison can stimulate grape maturation by increasing endogenous ABA, and thus the ethephon treatment can promote grape maturation, similarly to Abz-E3M, through VvACO1 and VvERF2. ABA and ethylene may interplay to effect on grape maturation through regulating the expression levels of VvNCED1, VvCYP707A1, VvACO1 and VvERF2.
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文はブドウの成熟に及ぼす植物ホルモンの役割について研究したものである。本論文は平成 30 年 6
月 25 日に提出され、その後上記 4 名の審査委員により論文の内容および構成等の観点から慎重に審査された。
平成 30 年 7 月 17 日に、公開論文発表会を開催し、論文の発表と論文内容に関する質疑応答を行った。発表会の後に審査会を開催し、以下の結果を得た。
本研究は、以下の点が学術論文として評価できる。ブドウ果実の成熟にはアブシシン酸(ABA)が関与することが知られているが、本研究ではイネのいもち病防除薬剤として知られるイソプロチオラン(IPT)が ABA に拮抗するアンタゴニストである可能性について検討した。解析は ABA の合成抑制剤 NDGA および無処理を対照とし、次世代シーケンサーおよび定量 RT-PCR 装置、ガスクロマトグラフィーマススペクトロメトリー(GC-MS)および高速液体クロマトグラフィー等を供試して行った。その結果 IPT は NDGA と同様な反応をブドウ果実に与えることが明らかとなり、シャインマスカットの緑色保持にも有効であることから、貯蔵性の向上にも寄与する可能性が考えられた。
以上より申請者が博士(学術)の学位に値する専門分野における学識を有すること、および外国語についても博士論文は英語で記載されていることおよびプレゼンテーションは英語でなされたことより十分な英語の能力をもつことを確認した。さらに、本論文の内容に関する論文が Journal of Plant Growth Regulation 2018 および Acta Horticulturae 2018 に受理されていることを確認した。
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | XXXXX XXXXX XXXXXXX-WILEY 博 士(学 術) 千大院xx甲第学75号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Integrating Ethnobotany with Psychological Ownership in order to Improve Social-Ecological Systems 社会生態系改善のためのエスノボタニーと心理的所有権の統合に関する研究 (主査)教 授 xx x (副査)教 授 xx x 准教授 xx xx教 授 xx xx |
論 文 x x の 要 旨
Since the beginning of the industrial revolution, modernizing societies have increasingly depended on new systems, to the detriment of the integrated process of culture, ecology and sustainability. Modern people’s focus is not on traditional plants or ecological systems, and their psychological ownership (PO) of them has dwindled. This study synthesis is the PO of ethnobotanical (ETB) plants in the landscape. The study has five objectives with the main aims of finding the current perspectives regarding ETB, issues facing its integration into the socio-ecological system, and examining an exemplary model. The relative findings for each objective show that: 1. Current perceptions are low, but that people are interested in knowing more; 2. That ethnobotanical knowledge diversity is decreasing with the aging society; 3. That those who learned about ETBs at a young age from family have retained the knowledge. That the grading of the landscape decreases ETB and biological diversity; 4. That without this integration with the landscape and activities, people in rural areas may lack a connection to each other as well as a valuable method for economic and biological sustainability. 5. That with a blueprint for how to integrate ETBs into the landscape and events, forming strong feelings for the system, the socio-ecological system can be enhanced and thrive. International and independent media and strong leaders are important to their adoption. This study concludes that ETB is a valuable tool for strengthening people’s PO, but that the plants need to be there and promotional activities conducted. This study clarifies that in order to bring back the ecological balance and to retain traditional culture, as well as to increase resilience and food security, traditional ETBs and their uses should be integrated into the modern landscape. This research is applicable to urban and rural planning, as well as to landscape design.
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文は Ethnobotany(民族植物学)の観点から持続可能な地域づくり(Community Development)への地域植物資源の活用について研究したものである。本論文は平成 30 年 6 月 26 日に提出され、その後上記 4名の審査委員により論文の内容および構成等の観点から慎重に審査された。
平成 30 年 7 月 31 日に、本審査会を開催し、論文発表会は審査委員以外にも教員 3 名、その他学生等約
100 名の参加を得て行われた。その後に質疑応答を行い、審査委員で審査して以下の結果を得た。
本研究は、以下の点が学術論文として評価できる。Ethnobotany(民族植物学)の今日の議論をレビューし、持続可能な地域づくりにその観点を導入した点に新規性がある。特に Psychological Ownership という人と植物との関係について、実際のいくつかの地域における調査から、その心理的関係の重要性とその関係が希薄になっている状況を明らかにし、それを強化する方法への道筋を示した点に独創性がみられる。
また、まさに園芸の各領域にまたがる分野横断的に関わる新しい概念で今後の発展が期待される。
ただし、以下の微修正が必要とされた。Ethnobotanical Plants +TK=Ethnobotany の理解可能な説明補足。図版に引用がある場合にその出典の明記、という点である。
上記課題は、軽微な修正であり、その修正を確認し、学位論文に値すると結論した。
以上より申請者が博士(学術)の学位に値する専門分野における学識と研究能力を有すること、および外国語についても英語を母語とすることから全く問題ないことを確認した。さらに、本論文の内容に関する論文が Journal of Environmental Information Science(2017.No.2,25-36)、Environment-Behaviour Proceedings Journal (2018.7, AicE Bs 2018 Shefield)に公表されていることを確認した。
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目論 文 審 査 委 員 | x xx x x(学 術) 千大院xx甲第学76号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 韓国湖南地方の別墅における空間形態と領域構成に関する研究 (主査)教 授 x xx (副査)教 授 xx x 教 授 xx xxx教 授 xx x |
論 文 x x の 要 旨
本研究は,韓国伝統庭園の一つである別墅における空間形態と領域構成について明らかにすることを目的とする。本論では,(1)別墅から眺望される山容の景観領域(2)別墅を囲い込む周辺環境の囲繞領域
(3)別墅の地割形態が決める園林領域の3つのスケールから分析を行う。韓国伝統庭園の先行研究において概念的に扱われてきた空間形態と領域構成について GIS を用いた定量的分析を行うことにより,韓国別墅の物理的空間における形態および領域の総合的考察を行う。
その結果,別墅の主軸が捉える景観は,山岳景の重なりに共通の特徴が明らかになり,別墅の景観領域が定量的に確認される。次に,別墅は,別墅外部の前方に点在する山稜部の周辺環境によって囲いをもち,後方は別墅建築と同方位をもつ山稜部を背にすることで囲繞性を獲得していることが明らかになり,別墅周辺環境による囲繞領域が認められる。最後に,別墅の内園は,地割形態によって異なる別墅の空間構成をもち,その構成は,眺望の効果的取り方に関係することが明らかになる。このことから地割形態による園林領域が認められる。
以上の結果から,別墅の内外部領域における概念的空間像を物理的な形態言語として検討することができた。すなわち,別墅は,別墅からの景観を意識した内園の空間構成をもちながら,外部の領域性を考慮した立地をしていると考察する。また,本研究の知見から,外部景観および周辺環境によって領域をつくる別墅の保全にむけた基礎研究になることを期待する。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本研究は、韓国の庭園様式のひとつである別墅を対象とし、その形態的特徴の分析を通して、ひとつのデザイン様式として考察する研究である。本研究は平成 30 年 4 月 27 日に提出され、上記 4 名の審査委員
による予備審査を経た後、平成 30 年 7 月 9 日に公開論文発表会と質疑応答を行い、本審査会を開き以下の結果を得た。
本研究は、1)韓国本国でも資料の少ない別墅を対象とし、数年にわたる現地測量調査からオリジナルの平面断面等の基礎データを作成していること、2)建築、庭園を包括的に扱い、加えて広域の立地特性も含めランドスケープ的な視点から総合的に考察していること、3)立地、地割りのようなアナログな形態に対し、GIS を汎用することで定量的な形態分析を進めていること、4)最終的に、建築、庭園、景観の各スケールでの分析から得られた知見をまとめ、別墅の庭園としてのデザイン様式を考察していることなどの特徴が評価された。
予備審査における指摘事項、1)別墅の文化的背景の加筆、2)敷地の現況、文化財としての保全状況の加筆、3)定量的データの図表を加えての詳述についても論文に反映され、全体としてオリジナリティーと価値のある研究であることが評価された。一方、本研究の直接の社会的価値のひとつに、保全対策のためのエビデンスとしての価値が考えられるため、別墅保全に有効な提言加筆があれば、より価値のある研究となることが期待される。上記の加筆は、期限内に修正可能であると判断され、本研究が学位論文に値すると結論された。
また、本論文の内容に関する論文が、3 報の査読論文として、環境情報科学論文集第 29 巻(2015 年 11
月)、ランドスケープ研究第 80 号 5 号(2017 年 4 月)、ランドスケープ研究第 81 号 5 号(2018 年 4 月)に公表されていること、その他国際学会における英語論文発表ポスターセッションなどを行っており、学位規定の条件を満たしていることも確認された。
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | AGUS XXXX XXXXXXXX x 士(農 学) 千大院xx甲第農102号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Molecular cytogenetic studies on satellite DNA and retrotransposon in Cucumis species キュウリ属植物におけるサテライト DNA とレトロトランスポゾンに関する分子細胞遺伝学的研究 (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xx x 授 xx xxxx授 xx xx (審査協力者) xx xx (xx大学名誉教授) |
論 文 x x の 要 旨
Repetitive DNAs, including satellite DNA (SatDNA) and retrotransposon, occupy major portion in melon genome. They are valuable resources for molecular cytogenetic studies, particularly karyotyping analysis. However, detailed karyotype analysis in Cucumis species remains a challenge not only because of their small chromosome sizes and poor stainability but also because of the limitation of cytological markers which generally rely on ribosomal RNA genes (45S rDNA and 5S rDNA) and centromere repeat as the probes. For these reasons, we propose to use of properly dispersed prometaphase chromosome for melon karyotyping using a modified Carnoy’s solution II (MC II). The combination of MC II and air dry methods provide satisfactorily high-resolution fluorescence in situ hybridization (FISH) images on meiotic pachytene chromosome with less cytoplasm background. By utilizing SatDNAs, we are able to discover cytogenetic variation in Cucumis accessions using 5S and 45S rDNA, particularly in distinguishing C. melo ssp. melo and agrestis. Moreover, two new SatDNAs were found in melon, namely CmSat162 and CmSat189. Both of these two SatDNAs located at centromeric regions with the exception for CmSat189, which has additional specific signals at pericentromeric, interstitial, and subtelomeric regions depending on individual chromosome. Thus, CmSat189 can be used to distinguish homologous chromosomes. We also discovered a new non-LTR retrotransposon, Menolird18, which has two specific insertion sites in Cucumis accessions. (1) It was inserted into internal transcribed spacer (ITS) and external transcribed spacer (ETS) of 18S rDNA in melon and cucumber accessions, and (2) into melon centromeric regions, and pericentromeric and subtelomeric regions of cucumber chromosomes. Thus, these results imply that Menolird18 is not only highly conserved in two different species, melon and cucumber, but also it is a centromere-specific non-LTR retrotransposon in melon. Overall, our findings on melon SatDNAs and non-LTR retrotransposon can be used to integrate physical, chromosomal and genetic maps for genome sequencing project, and to study the evolution of Cucumis species.
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文はウリ科植物であるメロンとキュウリを対象とし、染色体の観察方法の改良、ゲノム内に存在する新規反復配列の発見とそれらの反復配列を利用した核型分析及び染色体上の分布について研究したものである。本論文は平成 30 年 6 月 25 日に提出され、その後上記 5 名の審査委員により論文の内容および構成等の観点から慎重に審査された。
平成 30 年 7 月 30 日に、公開論文発表会を開催し、論文の発表と論文内容に関する質疑応答を行った。発表会の後に審査会を開催し、以下の結果を得た。
本研究は以下の点が学術論文として評価できる。1)植物染色体の観察方法を改良し、効率的に前中期染色体像を獲得する方法を見出したこと。2)rRNA 遺伝子を用いた核型分析によりメロンの染色体の変異を見出したこと。3)新しいサテライト DNA をメロンで見出し、それらが動原体領域に分布していることを発見したこと。4)新規のレトロランスポゾンを発見し、それが rDNA や動原体領域にも分布していることを発見したこと。
以上より申請者が博士(農学)の学位に値する専門分野における学識を有すること、および外国語についても試験の結果、その(英語)能力をもつことを確認した。さらに、本論文の内容に関する論文がMolecular Cytogenetics 誌に公表されていること(xxx.xxx/00.0000/x00000-000-0000-0)、および Chromosome Science誌に受理(2018. 8. 5.)されていることを確認した。
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | IBIANG YOUNG XXXXXX x x(農 学) 千大院xx甲第農103号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Effect of dual and single inoculation of rhizobia and arbuscular mycorrhizal fungi on soybean (Glycine max(L.)Merr.) and tomato (Solanum lycopersicum L.) under various soil zinc conditions 各種亜鉛条件下におけるダイズ (Glycine max(L.)Merr.) とトマト (Solanum lycopersicum L.) に及ぼす根粒菌とアーバスキュラー菌根菌の二重接種および単独接種の影響 (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xx x 授 xx xxx 授 唐 常x |
x 文 x x の 要 旨
This study investigated the effect of dual and single inoculation of rhizobia (R) and arbuscular mycorrhiza (AM) fungi on soybean (Glycine max) and tomato (Solanum lycopersicum) under various soil zinc (Zn) conditions. In experiment one, the effect of Bradyrhizobium diazoefficiens and Gigaspora rosea was investigated in soybean, in a randomized factorial design with Zn (at 0, 200 and 400 mg Zn kg-1 soil) and inoculation (uninoculated control, R, AM and RAM dual inoculation) treatments. In experiment two, a different AM fungus, Claroideoglomus etunicatum, was utilized with Bradyrhizobium diazoefficiens under similar soil Zn treatments. In both soybean experiments, dually inoculated plants had higher biomass production. Synergic effects of R and AM on the number and SPAD index of leaves, H2O2 level in root nodules, shoot phosphorus, manganese translocation from roots to tops, polyphenols biosynthesis and type 1 metallothionein gene expression were indicated as important mechanisms underlying significantly improved biomass production in dual inoculation. In experiment three, the effect of excess Zn and AM fungus on bioproduction and trace element nutrition was investigated in tomato, in a randomized factorial design with Zn (at 0 and 300 mg Zn kg-1 soil) and AM inoculation (non-AM and Rhizophagus irregularis) treatments. Generally, AM effects on the available Zn, Mn, Cu and Fe in the rhizosphere soil were in tandem with the effects in host tissues. In uncontaminated soil, AM enhanced Cu availability in the rhizosphere, optimized the Cu:Zn balance in shoots, and significantly increased the host biomass. In Zn-treated soils, AM decreased the Zn concentrations in soil and plant tissues but mycorrhizal colonization and the total plant biomass in AM and non-AM plants were reduced; and manganese deficient fruits were observed. In conclusion, while symbiont-induced effects were elucidated, minimizing the toxicity of excess Zn to AM infection would benefit host biomass responses in both plants.
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文は、世界的な環境問題である土壌の重金属汚染を背景として様々な亜鉛(Zn)条件下におけるダイズとトマトに及ぼす根粒菌とアーバスキュラー菌根菌(以下 AM 菌)の影響について検討したものである。本論文は平成 30 年 6 月 26 日に提出され、その後上記 4 名の審査委員により論文の内容および構成等の観
点から慎重に審査された。平成 30 年 7 月 18 日に、公開論文発表会を開催し、論文の発表と論文内容に関する質疑応答を行った。発表会の後に審査会を開催し、以下の結果を得た。
本論文は以下の点が学術論文として評価できる。まず各種 Zn 条件下で栽培されたダイズに根粒菌と AM菌を接種したところ、二重接種したダイズの生育が最も大きいことが示され、根から茎への微量元素の移行割合の調整やメタロチオネイン遺伝子の発現が生育向上に寄与していることを明らかにした。またトマトについて同様の実験を行ったところ、Zn 過剰下における AM 菌の接種はトマト植物体の Zn 濃度を低下させることが示された。以上の結果より、共生菌の接種は Zn 過剰下における作物の生育と生理状態の維持・向上に有効であり、特に AM 菌の接種は作物の生理状態や遺伝子発現に大きな影響を及ぼすことが明らかにされた。しかし発表会の質疑応答を経た審査会において、記述の一部が理解しにくい点が指摘された。これらの課題に対しては修正が軽微であり、修正確認を行い、学位論文に値すると判断した。
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目論 文 審 査 委 員 | 江 暁歓 博 士(農 学) 千大院xx甲第農104号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 雨水活用の施設・手法と市民の参加意識に関する研究 (主査)教 授 xx x (副査)教 授 xx xx x 授 xx xx教授 xx x |
論 文 x x の 要 旨
日本では雨水活用に関する政策および市民の雨水活用参加促進の環境が整えられているが,市民による雨水活用の参加意識の実態を把握する研究がまだ少ない。日本における市民の雨水活用参加意識を明らかにするために,「市民の生活様式によって雨水活用に対する参加意識が異なる」という仮説を検証し,市民の参加したい雨水活用を把握するために,活動の参加場所と参加形式,労働意思量(WTW),支払意思額(WTP)に関する意識を明らかにすることを目的とした。
シアトル市とxxxの事例について現地調査と文献調査を行い,持続可能な雨水活用には,市民の雨水活用への参加促進だけでなく,雨水貯留浸透施設の設置と民有緑地における雨水活用を同時に進めていくことも重要であることが明らかになった。
次に,市民の年齢や住いなど生活様式による雨水活用に対する参加意識について調査(n=1,800)した。まず,雨水活用の経験がある市民は 1 割しかおらず,若い世代の方が高齢者よりも雨水活用の経験がある人が多い。雨水活用の参加要因として市民が意識している項目は,防災減災や生息環境,ヒートアイランド現象の緩和といった公共的環境に対するメリットを意識していた。雨水活用に対する WTW 意識の高い市民と WTP 意識の高い市民では,属性が異なっていた。また,金銭よりも時間や労働力を提供する活動の方が望まれることが明らかになった。さらには,雨水活用経験の有無によって WTW と WTP 意識が異なることが明らかになった。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文は「雨水活用の施設・手法と市民の参加意識に関する研究」について検討したものである。本論文は平成 30 年 6 月 26 日に提出され,その後,上記 4 名の審査委員により論文の内容および構成等の観点から慎重に審査された。
平成 30 年 7 月 3 日に、本審査会を開催し、論文発表と質疑応答を行い、以下の審査結果を得た。日本は都市型水害の多発や,気温上昇による水資源不足など課題を抱えている。本論では、海外と日本国内における雨水貯留浸透施設と緑地を利用した雨水活用の事例の調査を行った。さらに,市民の年齢や就労状況といった「個人の生活様式」と「雨水活用の施設・手法」に着目した。まず,個人の生活様式別に,雨水活用への参加意識を明らかにした。次に、施設・手法毎に,その市民の参加意識の違いを明らかにした。これらの結果をもとに,市民の参加意識促進における要因や施設・手法を明確にした点に新規性があり、有用である。しかし、下記の2点が課題として指摘された。1)目的を詳細に記述すること。2)論文の章立て、総合考察、引用文献を充実すること。これら課題に対しては修正が行われ、修正確認を行い、学位論文に値すると判断した。
以上より申請者が博士(農学)の学位に値する専門分野における学識を有すること、および外国語についても試験の結果、その英語の能力をもつことを確認した。さらに、本論文の内容に関する論文がランドスケープ研究で公表され, The Indonesian Landscape Journal (Jurnal Lanskap Indonesia) に受理されていることを確認した。
学位(専攻分野)学位記番号 学位記授与の日付学位記授与の要件学位論文題目 論文審査委員 | x xx x x(工 学) 千大院融博甲第工77号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Construction and Optimization of Presentation Method in Six-Primary Display 六原色ディスプレイ表示方法の構築と最適化 (主 査)教 授:xx xx (副主査)教 授:xx xx x 授:xx xxx教授:xx xx (審査協力者)千葉大学 名誉教授:xx xx |
論 文 x x の 要 旨
We had already developed an algorithm of six-primary display. Since multi-primary display is a brand-new technology, it lacks standard specification. In this thesis, we want to find out the optimization methods to six-primary display. We conducted three experiments, the first two were related to multi-display optimization, and the last one explored the best combination of display primary colors. In the first two experiments, we evaluated the gamut expansion ratio on a six-primary display by conducting a psychophysical experiment involving real objects. However, no six-primary display was used in this article; it was based on the simulated and virtual RGBCMY display. We first introduce the algorithm for simulating the six-primary display that consists of three stages: (1) color separation, (2) code condensation, and (3) white point estimation. To ensure that we identify the most suitable gamut expansion ratio for the human perception of the colors of objects, our experiments featured fruits through saturated colors on a monitor. Subjects were asked to identify their preferences for the colors that they observed. Our results show that the most suitable perception range for real objects is from 1.2 to 1.4. In the last experiment, we proposed an optimal combination of primary spectra in six-primary display to reproduce the great majority of spectra from natural objects. We applied normal distribution function to simulate the basic bands of six-primary display, and then we simulated a large data set by least-squares method created from the product of Standard Object Color Spectra (SOCS) database and the irradiance data of Judd et al. A Good final result was obtained with the averaged root-mean-square error (RMSE) from the simulated sample being 0.0132, demonstrating a significant improvement compared to previous studies.
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
多原色ディスプレイは、高色域や精細な色再現を実現するディスプレイとして注目されている。また、分光再現を実現するディスプレイとしても期待できる。しかし斬新な技術であるため、最適条件の検討はまだ十分とはいえず、標準的な仕様も定められていない。本論文は、6 原色ディスプレイの表示方法を構築し、その最適化を図ることを目的とする。まず、6 原色ディスプレイのアルゴリズムを開発し、その最適
化設定を求めた。6 原色ディスプレイをシミュレートするアルゴリズムは、(1)色分解(2)コード圧縮(3)白色点推定の3段階で行った。次に、実物体の画像を用いた心理物理実験を行うことにより、6 原色ディスプレイ上の色域拡大率を評価した。ただし、実験は RGB ディスプレイ上にシミュレートされた仮想の RGBCMY ディスプレイによって行った。人間の知覚に最も適した、物体色における色域拡大率を決定するために、アルゴリズムにより変調された果物の色を評価する実験を行った。被験者は、果物の画像を観察し、好ましい彩度の画像を選択した。その結果、果物に対する最適な色域拡大率は 1.2 から 1.4 であることが示された。さらに、自然物体の分光情報を再現するために最適な原色のスペクトルの組み合わせを探索した。6 原色の帯域をxx分布関数により定義し、標準物体色スペクトルと放射照度データの大容量データセットを用いて最小二乗法によりシミュレートし、最適なパラメータを提案した。これらの成果は、今後の多原色ディスプレイの発展に寄与すると考えられる。研究の成果は、英文学術論文(2件)として公表済みであり、5 件の国際会議において筆頭著者として発表している。
2018 年 7 月 20 日に公開論文発表会・審査会を開催し、論文発表と質疑が行われた。
2018 年 7 月 18 日に剽窃チェックソフトを使用し、オリジナルであることを確認した。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | ANX XXXXX x x(工 学) 千大院融博甲第工78号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 A study on hierarchical protection for copyrights of digital images ディジタル画像の著作権保護を目的とした階層的暗号化に関する研究 (主 査)教 授:xx xx (副主査)フロンティア医工学センター教 授:xx xxx 授:xx xx (審査協力者)准教授:xx xx |
論 文 x x の 要 旨
近年、情報技術の急速な発達により、様々なインターネットサービスが利用できるようになった。その一方、マルチメディアコンテンツに対するセキュリティが、権利のないユーザによる不正な複製や二次利用を防ぐために極めて重要な課題となっている。申請者は、画像を階層的に保護するとともに、異なる権利を有するユーザに対してアクセス制御を可能とする技術に焦点を当てて、以下の2種類の新たな方法を提案している。
1つめとして、限定色画像に対する階層的なスクランブル手法を提案した。スクランブル対象となる画素値は擬似乱数により選択され、ビット単位での排他的論理和(Ex-OR)演算により、対象画素値とこれに対応する擬似乱数を結合し、画素値を置換した。これにより、従来手法と比較して、画素値の置換パターンが大幅に増加して安全性が向上するとともに、より柔軟な画質制御が可能となった。2つめとして、ブロックスクランブル暗号化と可逆情報埋込のハイブリッド手法について提案した。論文では、ブロックスクランブル暗号化を用いることにより、JPEG-LS などの可逆画像符号化の国際標準方式を用いて圧縮を施した場合でも、圧縮効率が大きく損なわれることがないことを実現した。また、暗号の不正解除に関する攻撃、すなわち、総当たり攻撃やジグソーパズル解法に対しても高い耐性を有することを検証した。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
近年、情報技術の急速な発達により、様々なインターネットサービスが利用できるようになった。その一方、マルチメディアコンテンツに対するセキュリティが、権利のないユーザによる不正な複製や二次利用を防ぐために極めて重要な課題となっている。申請者は、画像を階層的に保護するとともに、異なる権利を有するユーザに対してアクセス制御を可能とする技術に焦点を当てて、以下の2種類の新たな方法を提案している。
1つめとして、限定色画像に対する階層的なスクランブル手法を提案した。スクランブル対象となる画素値は擬似乱数により選択され、ビット単位での排他的論理和(Ex-OR)演算により、対象画素値とこれに対応する擬似乱数を結合し、画素値を置換した。これにより、従来手法と比較して、画素値の置換パターンが大幅に増加して安全性が向上するとともに、より柔軟な画質制御が可能となった。2つめとして、ブロックスクランブル暗号化と可逆情報埋込のハイブリッド手法について提案した。論文では、ブロックスクランブル暗号化を用いることにより、JPEG-LS などの可逆画像符号化の国際標準方式を用いて圧縮を施
した場合でも、圧縮効率が大きく損なわれることがないことを実現した。また、暗号の不正解除に関する攻撃、すなわち、総当たり攻撃やジグソーパズル解法に対しても高い耐性を有することを検証した。
研究の成果は、英文学術論文2編として公表済みであり、4件の国際会議において筆頭著者として発表を行っている。公開論文発表会及び本審査委員会は 2018 年 7 月 19 日に実施した。また、主査が 2018 年 7
月 12 日に剽窃チェックを行い、オリジナルの論文であることを確認した。
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xx x 士(医学) 千大院医薬博甲第医1543号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Vulnerable combinations of functional polymorphisms to the late-onset treatment resistant schizophrenia (機能的一塩基多型の包括的評価による遅発型治療抵抗性統合失調症の新規リスク評価法の提案) (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xx x 授 xx xx |
論 文 x x の 要 旨
【目的】近年、治療抵抗性統合失調症(TRS)群がドパミン過感受性精神病(DSP)である可能性が指摘されている。このような DSP に基づく TRS は、TRS 全体の 50-70%を占めると報告されており、DSP への脆弱性を予測できれば予防的なテーラーメード治療の提供が可能となり、統合失調症の予後改善に大きく貢献すると考えられる。ここで、ドパミン神経伝達に関係する一塩基多型(SNP)が知られている。中には、ドパミンの合成や分解、ドパミンD2 受容体(DRD2)活性に比較的高い影響力を有し、出現頻度の高い SNP も報告されている。これらの SNP を組み合わせて評価することにより、各患者に置いて DRD2 を介したシグナルの潜在的な強度を推測することが可能と考えられる。そこで我々は、本研究において各統合失調症患者における複数の機能的 SNP の組み合わせと DSP の発現頻度の関係について調べた。
【方法】130 人の DSP 患者と 227 人の非 DSP 患者を含む 357 人の統合失調症患者について後方視的、症例対照研究である。これらの患者において、ドパミンシグナルに影響を及ぼすとされている機能的 SNP のうち rs10770141、rs4680、rs1799732、rs1800497 の遺伝子型を同定した。続いてこれらの結果をもとに、それぞれの SNP 組合せにおいて DSP 発症の割合を統計学的に評価する。
【結果・考察】特定の SNP 組合せを有する群において DSP を発症する統合失調症患者の割合が高いことがわかった。特に rs10770141 と rs4680 のリスクアレルを有する群では 57.9%の患者で DSP の発症が確認され[オッズ比(OR) 2.654、95%信頼区間 1.036-6.787、p=0.048]、さらにこれらに加えて rs1800497 の 3 つのリスクアレルを有する群では 64.3%の患者で DSP が引き起こされていることがわかった[オッズ比(OR) 4.230、95%信頼区間 1.306-13.619、p=0.029]。一方で、いずれの SNP でも単体での解析では DSP 発症への脆弱性を示唆することはできなかった。これらの機能的 SNP の特徴からドパミン合成能が高く、シナプス間隙における代謝速度が速い、また潜在的な DRD2 密度が低い群で DSP が引き起こされやすいことが推測される。
【結論】機能的 SNP を組合せて評価することで、DSP の発症リスクを予測できる可能性が示唆された。機能的 SNP を組合せて評価する手法は新規的であり、他の生物学的特徴を有する疾患にも応用できる可能性がある。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本研究は、治療抵抗性統合失調症の一亜型である可能性が報告されているドパミン過感受性精神病について、遺伝学的脆弱性を検討した後方視的症例対照研究である。ドパミンシグナル伝達系における複数の主要因子の遺伝子活性に関連する一塩基多型(発現量的形質遺伝子座に該当)やコーディング一塩基多型を用い、これらの機能的一塩基多型の組合せとドパミン過感受性精神病発症の関連性を検討し、複数の遺伝的多型を組み合わせることでリスクを予測しうる可能性があることを明らかにした。 本研究は、サンプル規模などの制限により探索的な側面を克服し難い側面を残すものの、単一の機能的一塩基多型を用いて特定の病態と関連性を同定できない場合であっても、複数の機能的一塩基多型を組合せて解析することで同関連性を同定しうる可能性があることを示唆した。また、用いる一塩基多型の発現量的形質遺伝子座やコーディング一塩基多型としての機能性から、所属する親遺伝子の遺伝子活性に対して既知の影響を有していることが予測され、特定の病態と関連する生物学的な特徴について考察する一助となりうる可能性がある。さらなる検証は不可欠であるが、この点についてはその分野を精神医学に限定するものでなく、脂質異常症や糖尿病など他の多因子疾患への応用の可能性も伺える。これらを踏まえ、本論文は業績と認められた。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xx x x(医学) 千大院医薬博甲第医1544号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Effectiveness of internet delivered computerized cognitive behavioral therapy for insomnia (不眠症に対するインターネット・コンピュータ認知行動療法✰有効性) (主査)教 授 xxx x (副査)教 授 xx xx x 授 xxx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】本研究は,不眠症✰インターネット・コンピュータ認知行動療法(Internet delivered computerized Cognitive Behavioral Therapy: ICBT)と通常診療(Usual Care: UC)✰併用が,UC 単独より,ピッツバーグ睡眠質問票(the Pittsburgh Sleep Quality Index: PSQI)
✰スコアを有意に減少させることを検証することを目的とする.
【方法】本研究✰対象者は,ベンゾジアゼピン等✰睡眠薬を服用後も,症状が持続している不眠症✰患者である.書面で✰同意を得た上で,23 名がxx大学医学部附属病院認知行動療法センターで✰本ランダム化比較試験(RCT)に参加した.試験治療群(ICBT+UC)と通常診療群(UC)にランダムに割り付け,6 週✰介入,6 週✰後観察を経て試験終了とした.主要評価項目を 6 週時点✰ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)とし,副次的評価項目を,入眠潜時(sleep onset latency: SOL),総睡眠時間(total sleep time: TST),睡眠効率(sleep efficiency: SE),覚醒回数(number of awakenings: NA),爽快感(refreshment of sleep),熟睡感
(soundness of sleep),不安(Hospital Anxiety and Depression Scale: HADS),うつ(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale: CES-D),QOL(Euro Qol-5D: EQ-5D)とし, 0 週,3 週,6 週,12 週に評価を実施した.xx大学医学部附属病院治験審査委員会(承認番号 G27040)✰承認✰もとに試験を行った.
【結果・考察】ベースラインから 6 週✰ PSQI スコア合計✰調整済平均変化量は,ICBT+UC 群
(n=11)において-6.11 で,UC 群(n=12)✰ 0.40 に比べ,有意に改善した(p<0.001).さらに,ベースラインから 3 週,6 週,12 週✰ PSQI,SOL,SE,NA,うつ✰平均変化量✰差において,ICBT+UC 群で,有意な改善が示された.また,ベースラインから 6 週までに,爽快感,熟睡感,不安,QOL ✰平均変化量✰差において,ICBT+UC 群で対照群に比べ,有意な改善が示された.有害事象✰発現はみられなかった.
【結論】本研究結果より,睡眠薬治療がうまくいかない後も,通常診療に ICBT を 6 週間実施することで,不眠と関連する症状に効果があることが示唆された.
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
本研究は、睡眠薬を服薬後も症状が持続している不眠症✰患者を対象に、6 週✰インターネット・➺ンピュータ認知行動療法(ICBT)と薬物療法を含む通常診療(UC)✰併用が、UC単独に比べて、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)✰ス➺アを有意に減少させるかをランダム化比較試験(RCT)によって検証することを目的としている。書面で✰同意が得られた 23 名を対象に、RCT を行ったところ、ベースラインから 6 週✰ PSQI ✰調整済平均変化量は、 ICBT+UC 群(n=11)において-6.11 で、UC 群(n=12)✰ 0.40 に比べ、有意な改善をみた(p
<0.001)。さらに、3 週、6 週、12 週✰全評価時点で✰、PSQI ならびに他✰睡眠関連指標について調査を実施したところ、入眠潜時、睡眠効率、覚醒回数、うつス➺ア(CES-D)において、ICBT+UC 群で、より有意な改善が示された。また、3 週では見られなかったが、6 週、 12 週で、爽快感(視覚アナ➫グスケール、VAS)、熟睡感(VAS)、不安ス➺ア(HADS)、QOLス➺ア(EQ-5D)において、ICBT+UC 群で、より有意な改善が示された。本論文は、睡眠薬治療後も症状が残る不眠症患者に、ICBT が改善効果を有することを明らかにした価値ある業績と認められた。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xx x 士(医学) 千大院医薬博甲第医1545号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Novel autoantibodies against the proteasome subunit PSMA7 in amyotrophic lateral sclerosis (筋萎縮性側索硬化症患者血清中に見いだされたプ➫テアソームサブユニット PSMA7 に対する新規自己抗体) (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xx x 授 xx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者血清中から新規自己抗体を同定し、そ✰臨床的意義を明らかにすること。
【方法】1)網羅的に免疫学的スクリーニングが行える serological analysis of recombinant cDNA expression libraries (SEREX)法に、3 名✰ ALS 患者血清を応用、自己抗原候補タンパクを同定した。2)そ✰抗原候補タンパク✰組み換え体を精製し、amplified luminescent proximity(αLISA)法を用いて 33 名✰ ALS 患者血清、30 名✰正常対照(NC)血清中✰組み換えタンパクに対する自己抗体✰抗体価を測定した。3)さらに、こ✰αLISA 法✰結果に関する検証実験として同定したタンパク✰全長タンパクを入手し enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)法にて自己抗体✰抗体価を測定した。こ✰際、ALS 患者数を増やすと同時に、疾患対照を加え最終的に ALS 患者 71 名、NC30 名、疾患➺ント➫ール(DC)34名血清中✰自己抗体抗体価を測定した。最後に得られた抗体価と臨床的特徴✰相関を検討した。
【結果・考察】1)SEREX 法により 3 症例✰ ALS 患者血清から 16 種類✰自己抗体✰抗原タンパク質を同定した。2)こ✰うち PSMA7、VIM、HMBS、TBC1D2 ✰ 4 種類に関しては組み換えタンパクを精製することができ、それを用いたαLISA 法による検討で NC より ALS 患者群で有意に高い抗体価を示した✰は PSMA7 と TBC1D2 に対する抗体✰みであった。3)さらに ELISA 法による検討で前者(PSMA7)に対する抗体✰み、NC 群(P < 0.01)及び DC 群(P = 0.034)より ALS 患者群で高い抗体価を示した。また、抗 PSMA7 抗体価は罹病期間と負✰(P = 0.038)、 creatine kinase(CK)と正✰相関(P = 0.049)を示し、さらに嚥下障害を有する ALS 患者群で有しない患者群より高かった(P < 0.01)。PSMA7 はプ➫テアソームを構成する複数✰タンパク質✰1つであり、抗 PSMA7 抗体によりプ➫テアソーム機能が低下し、ALS 病態が促進される可能性が示唆された。
【結論】血清抗 PSMA7 抗体は ALS 病初期✰疾患促進因子であり、新たなバイオマーカーとなる可能性がある。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
本研究は遺伝子ライブラリーを用いて網羅的に血清中IgG ✰標的抗原を探索するSEREX 法により、ALS 患者血清中から新規自己抗体を探索し、そ✰臨床的意義を明らかにすることを目的に行われた。まず 3 症例✰ ALS 患者血清から SEREX 法により 16 種類✰新規✰自己抗体が見出され、そ✰抗原タンパク質が同定された。そ✰うち、PSMA7 に対する抗体価は ALS患者で高いことが、比較的多数✰ ALS 患者群、正常対照群、疾患対照群✰血清を用いた ELISA法による検討により明らかにされた。また抗 PSMA7 抗体価は、罹病期間と負✰相関を、CKと正✰相関を示すことが見出された。抗 PSMA7 抗体によりプ➫テアソーム機能が低下し、 ALS 病態が促進される可能性に❜いて考察が為され、血清抗 PSMA7 抗体は ALS 病初期✰疾患促進因子であり、新たなバイオマーカーとなる可能性があると✰結論に至っている。本研究は独創性と新奇性があり、xx大学大学院博士課程にふさわしい業績と考える。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx x x x(医学) 千大院医薬博甲第医1546号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Long-term outcomes of intensity-modulated radiotherapy using fiducial markers adjustment with tight margin for localized prostate cancer (基準マーカーを用いた位置照合による限局性前立腺癌✰強度変調放射線治療✰長期成績) (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xxx x 授 xx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】
Intensity-modulated radiotherapy(IMRT)は、従来よりも前立腺✰形状にあわせた線量分布により、消化管や尿路✰線量を低減することができるが、従来よりも治療体積が小さくなるため、治療時✰前立腺✰移動によって照射野から前立腺が外れる危険性も高くなる。そ✰ため、image-guided radiotherapy(IGRT)を IMRT と共に用いることが推奨されている。基準マーカーを用いた IGRT と IMRT による前立腺癌✰放射線治療✰長期成績は報告が少なく、今回施設で行った長期成績を報告する。
【方法】
2003 年から 2006 年に基準マーカーを用いた IGRT と IMRT による治療を、T1-T3N0M0 ✰前立腺癌✰患者 131 人に対して行った。ホルモン療法は、129 人(98.5%)で施行された。ホルモン療法施行期間✰中央値は 9 か月であった。前立腺内に基準マーカーを留置後、直腸側 4mm、そ
✰他 7mm ✰ margin で 1 回線量 2Gy で 38 回、総線量 76Gy ✰ IMRT を施行した。毎回 on board imager にて位置照合を行い、1mm 以内にあわせ治療を施行した。
【結果・考察】
年齢中央値は 69 歳、観察期間✰中央値は 99 か月であった。8 年✰生化学的非再発率は中リスクで 87.5%、高リスクで 69.2%であった。晩期✰ Grade2 以上✰消化管有害事象は 0.8%、Grade2以上✰尿路有害事象は 2.4%であった。治療成績は他✰報告とほぼ同等で、有害事象は少ないと考えられた。有害事象が少ない原因としては、PTV margin が他に比べて小さいこと、高い位置照合精度によりリスク臓器線量が低減できていること、76Gy ✰処方線量が、78Gy 以上✰処方線量と比較して膀胱✰ 80Gy 以上照射される体積が少ないことが考えられた。
【結論】
基準マーカーを用いた IGRT を IMRT と共に用いることにより、治療成績を損なわず、有害事象も少ない長期成績を得た。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
本研究は、前立腺癌✰放射線治療に❜いて、従来よりも前立腺✰形状にあわせた線量分布により、周囲臓器✰副作用を低減することができる intensity modulated radiotherapy(IMRT)と、正確に位置照合を行うために、基準マーカーを用いた image-guided radiotherapy(IGRT)を用いることにより、治療成績を損なわずに副作用を低減できることを 2003 年から 2006 年に行われた、T1-3N0M0 ✰前立腺癌患者 131 人✰治療成績を報告することにより明らかにした。
本論文は、IMRT を行うときに IGRT を用いることにより、正確に前立腺に対して放射線治療が可能であることを示唆し、IGRT と IMRT ✰有用性を報告した価値ある業績と認められた。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xx x 士(医学) 千大院医薬博甲第医1547号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Bathing frequency is inversely associated with the onset of functional disability among Japanese older adults: a prospective 3-year cohort study from the JAGES (日本人高齢者において入浴頻度は生活機能障害✰新規発症と負✰関連を示す:JAGES による 3 年間✰前向き➺ホート研究) (主査)教 授 xx x (副査)教 授 xx xx x 授 xx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】世界には様々な入浴スタイルがある中で、日本では特に浴槽入浴が好まれる。しかし、浴槽入浴と長期的な健康指標と✰関連を調査した報告は少ない。そこで本研究では、前向き➺ホート研究により高齢者✰浴槽入浴頻度と生活機能障害✰新規発症と✰関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】本研究は日本老年学的評価研究 (Japan Gerontological Evaluation Study: JAGES)
✰一環である。ベースライン調査は 2010 年 8 月から 2012 年 1 月にかけて行われた。全国 18
市町村に居住する日常生活動作✰自立した高齢者 13,786 人(男性 6,482 人、女性 7,304 人)を
対象とした。対象者を 3 年間追跡し生活機能障害✰新規発症✰有無を調査した。本研究では新規✰要介護認定(要支援を含む)を以て生活機能障害✰発症と定義した。ベースライン時点で✰夏と冬それぞれ✰浴槽入浴頻度を低頻度群 (0-2 回/週)、中頻度群 (2-6 回/週)、高頻度群 (7 回以上/週)に分類した。Cox 比例ハザードモデルによる多変量解析を行い、それぞれ✰入浴頻度群における生活機能障害✰新規発症に❜いて✰ハザード比を推定した。
【結果・考察】生活機能障害✰新規発症は全対象者✰ 8.7% (1,203 人)において認められた。
交絡因子と想定した 11 ✰変数を調整した後、低頻度群を基準対象とした中頻度群と高頻度群
✰ハザード比 (95%信頼区間)は、夏はそれぞれ0.90 (0.74-1.09)と0.69 (0.58-0.81)であり、
冬はそれぞれ 0.84 (0.71-1.00)と 0.66 (0.56-0.77)であった。❜xx、浴槽入浴頻度✰高い群ほど生活機能障害✰新規発症が少ないという結果が示された。こ✰機序としては浴槽入浴による精神神経系へ✰好影響やHeat Shock Proteins を介した抗炎症作用などが想定された。
【結論】日本人高齢者において入浴頻度は生活機能障害✰新規発症と負✰関連を示す。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
急速に超高齢化社会に突入したわが国において,要介護状態に陥るリスクを把握し,これを基に有効な介護予防を実践して要介護者を減らすことは,わが国✰公衆衛生上✰極めて重要な課題である.申請者は全国規模で自立高齢者を対象とし,介護予防など✰検証を主要な目的としている日本老年学的評価研究(JAGES)に参画している.本研究では「浴槽入浴頻度が多い高齢者は生活機能障害を来しにくい」という仮説を設定し,集積されたデータにより検証した.全国 18 市町村✰自立高齢者 13,786 人を対象として 3 年間追跡し,生活機能障害発症 (要介護認定) ✰発生を調査した.ベースライン時点で✰浴槽入浴頻度を 3 群に分類し,各群における発症リスクを Cox 比例ハザードモデルにより推定した.そ✰結果,仮説が正しいことが示された.本研究は「浴槽入浴」という介護予防に❜ながる新規✰要因を検出したことで,今後✰介護予防施策を立案する上で貢献可能な研究成果を得た.また,入浴✰安全性に対する配慮✰必要性や、逆✰因果関係による結果修飾✰可能性なども適切に言及するなど緻密な検証をしている.以上より,本論文は本学における学位論文として価値ある業績と認められた.
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xx x 士(医学) 千大院医薬博甲第医1548号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 The incidence and characteristics of falls in community-dwelling ambulatory stroke survivors (地域在住✰歩行可能脳卒中患者における転倒発生とそ✰特徴) (主査)教 授 xx x (副査)教 授 xx x x 授 xx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】
転倒は、脳卒中片麻痺患者において頻度✰高い合併症✰一❜である。転倒予防戦略✰立案ためには、転倒✰詳細な状況や易転倒患者✰身体的特徴に関する知見が必要であるが、地域在住脳卒中患者における検討は十分にされていない。本研究✰目的は、地域在住脳卒中患者における転倒および外傷✰発生状況および転倒者✰身体的特徴を明らかにすることである。
【方法】
歩行可能な地域在住脳卒中片麻痺患者 144 名(平均年齢 68.0±10.4 歳)を対象とした。脳卒
中発症後期間は平均 5.21±3.15 年であった。転倒調査開始時に年齢、性別、発症後期間、下肢装具・杖など✰基本情報、Stroke impairment Assessment Set ✰運動項目、10m 歩行テスト(快適、最速速度)、Timed up&go test、Five-times-sit-to-stand test を評価した。転倒✰発生に❜いて、転倒記録表を用いて1年間前向きに調査を行なった。
【結果】
転倒は 126 件、うち骨折は 4 件(3.2%)発生し、転倒率は 0.88 件/人・年、骨折率は 2.8 件
/100 人・年であった。転倒は、冬に多く、多くは活動時間帯に発生していた。室内✰発生が多く、多くは歩行時にバランスを崩していた。動作✰目的としては排泄が関連していた。また、34.1%において転倒後に自力で✰立ち上がりが困難であった。転倒群と非転倒群間における身体特徴✰比較では、Five-times-sit-to-stand test において転倒群で有意に長時間であった(p<0.05)。
【結論】
地域在住脳卒中患者において、転倒は高頻度に発生していることが明らかになった。下肢筋力と関連する Five-times-sit-to-stand test において転倒者と非転倒者で差異を認めた。特に下肢筋力低下✰ある脳卒中患者に対して、転倒後✰対応を含む効果的な予防的対策を行う必要がある。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
本研究は地域在住脳卒中患者における転倒および外傷✰発生状況および転倒者✰身体的特徴を明らかにすることを目的に行われた。歩行可能な地域在住脳卒中片麻痺患者 144 名を対象に、転倒✰発生に❜いて転倒記録表を用いて1年間前向き✰調査を行ない、転倒時✰発生状況を調査した。また、転倒者群と非転倒者群を比較し、転倒者における身体機能✰特徴を検討した。地域在住脳卒中患者において、転倒は高頻度に発生していることが明らかになり、 34.1%において転倒後に自力で✰立ち上がりが困難であった。身体機能✰評価では、下肢筋力と関連する Five-times-sit-to-stand test(FTSST)において転倒者と非転倒者で差異を認めた。これら✰ことから、特に下肢筋力低下✰ある脳卒中患者に対して、転倒後✰対応を含む効果的な予防的対策を行う必要があると考察がなされた。また、本研究✰結果より、FTSST を用いた転倒予測✰ため✰カットオフ値を 12.4 秒以上と算出した。FTSST は、高齢者における転倒予測✰ため✰カットオフ値が報告されており、そ✰有効性が証明されている。しかし、脳卒中患者を対象にしたFTSST を用いた転倒予測✰ため✰カットオフ値はこれまで報告されておらず、本研究において初めて明らかになった。本研究は独創性と新奇性があり、xx大学大学院博士課程にふさわしい業績と考える。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xx x x(医学) 千大院医薬博甲第医1549号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Postpartum risk of diabetes and predictive factors for glucose intolerance in East Asian women with gestational diabetes (妊娠糖尿病既往✰ある東アジア人女性における産後✰糖尿病発症リスクとそ✰リスク因子に❜いて) (主査)教 授 xx xxx (副査)教 授 xx xx x 授 xx x |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】
妊娠糖尿病(GDM)✰病歴を有する女性は、産後✰ 2 型糖尿病(DM)を発症する可能性が高い。そこで、DM 発症✰早期発見✰ため✰フォ➫ー方法を確立するために、産後耐糖能異常を呈した女性において妊娠中に発症を予測できるリスク因子を明らかにすることを目的とした。
【方法】
診断時及び産後に 75g 経口糖負荷試験(OGTT)を実施し、77 人✰ GDM 後女性において、出産後 2 年間、後方視的に、産後✰耐糖能障害(IGT)または DM ✰予測因子を同定し、各因子✰カットオフ値を決定した。GDM 女性に対してこれら✰予測因子を用いて 4 グループに分類し、各群✰産後 IGT または DM(両群合わせて産後 GI 群とする)に❜いて評価した。
【結果・考察】
GDM 後女性✰ 44.1%が産後 2 年以内に GI に至った。我々は、産後 GI ✰リスク因子が、診断時 75gOGTT120 分後血糖値(Glu120)、診断時 HbA1c(HbA1c)、周産期合併症であることを示した。Glu120 ✰カットオフ値は 155mg/dl, HbA1c は 5.3%であった。両方同時に該当するハイリスク群では産後糖尿病発症者が 53.8%、IGT が 38.5%と高率であった。一方、両方同時に該当しない➫ーリスク群では、糖尿病発症者を認めず、IGT が 4.5%と低率であった。
【結論】
診断時 Glu120, HbA1c が高値を示すハイリスク群は産後に慎重なフォ➫ーが必要である。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
妊娠糖尿病(GDM)✰催患した女性は、産後✰ 2 型糖尿病(DM)を発症する可能性が高い。そこで本研究は、GDM 既往✰ある東アジア人女性が産後に発症する DM を早期に発見するため✰フォ➫ー方法を見出すために、前糖尿病段階(耐糖能異常(IGT))✰女性と DM を呈した女性とを対象として、妊娠中✰リスク因子が後方視的に検討された。そ✰結果、GDM既往女性✰ 44.1%が産後 2 年以内に耐糖能障害に至ること、GDM 診断時 75g ブドウ糖負荷試験(OGTT)120 分値と GDM 診断時 HbA1c 値が産後耐糖能障害✰リスク因子であることが示された。また、診断時に 120 分ブドウ糖値高値(≥155mg/dl)と HbA1c 高値(≥5.3%)✰ 2 因子をともに満たす群では、2 年以内✰ DM 発症者が 53.8%、IGT が 38.5%と高いことが示された。そこで本研究は妊娠中✰ OGTT 結果に基づき DM 発症✰ハイリスク群を抽出して出産後✰フォ➫ーを行うことを提案している。本論文は、GDM 既往患者✰管理に資する価値ある業績と認められた。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx x x x(医学) 千大院医薬博甲第医1550号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Membrane property changes in most distal motor axons in chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy (慢性炎症性脱髄性多発ニュー➫パチーにおける神経遠位部✰軸索興奮性変化) (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xx x 授 xx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】
慢性炎症性脱髄性多発根ニュー➫パチー(CIDP)✰サブタイプである典型的 CIDP では、解剖学的に神経血液関門が乏しい神経終末がより障害を受ける。軸索機能検査法を用いたこれまで✰報告では、CIDP 患者✰手首部正中神経刺激で、ミエリン抵抗✰減少が証明されている。軸索機能検査法を運動点(神経終末部近傍)で行うことで、CIDP ✰神経終末部近傍軸索興奮性変化を検討した。
【方法】
典型的 CIDP 患者 20 例(男性 12 例、平均年齢 59.9 歳)、正常対象 20 例(男性 7 例、平均年
齢44.8 歳)を対象とした。軸索興奮性検査を尺骨神経手首部及び小指外転筋運動点で実施し、軸索特性変化を検討した。閾値電気緊張法および Strength-Duration Time Constant(SDTC)を検査項目として、ミエリン抵抗および持続性 Na 電流を評価した。
【結果・考察】
典型的 CIDP では正常対照と比較し、運動点において、閾値電気緊張法✰過分極側閾値変化が増大していた。手首部刺激では、こ✰変化は認められなかった。また SDTC は、運動点および手首部共に有意な変化は認められなかった。
【結論】
典型的 CIDP ✰軸索興奮性変化は神経終末部で明瞭であり、これは脱髄病変が神経終末部に顕著であることを示している可能性がある。運動点軸索機能検査法を用いることで、CIDP ✰病態や脱髄病変分布✰解明に❜ながる可能性がある。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
本研究は慢性炎症性脱髄性多発神経炎(以下 CIDP)に❜いて、軸索機能検査法と加速度計を用い、神経遠位部✰軸索興奮性変化を明らかにすることを目的に行われた。20 例✰典型的 CIDP 患者と 20 例✰正常対象を比較検討することで、そ✰軸索特性を評価した。手首部刺激では興奮性変化はみられなかったが、神経遠位部✰刺激では有意な変化を認めた。これは典型的 CIDP ✰病変は神経遠位部に強いこと、神経血液関門を欠く部位に障害が強いことは抗体介在性✰病態を示唆している可能性があると考察がなされた。また、神経遠位部刺激を用いた軸索機能検査法は免疫介在性末梢神経障害✰軽微な脱髄病変を検出し、そ✰病態解明に
❜ながる可能性に❜いても触れられた。本研究は独創性と新奇性があり、xx大学大学院博士課程にふさわしい業績と考える。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xx x x(医学) 千大院医薬博甲第医1551号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Development of a plasma catecholamine measurement method by liquid chromatography-tandem mass spectrometry for clinical application (臨床応用✰ため✰液体ク➫マトグラフィー三連四重極質量分析法による血漿カテ➺ールアミン測定法✰開発) (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xx x 授 xx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】カテ➺ールアミンは極性が高く、血液中✰濃度が低いため測定が非常に困難である。現在血漿中カテ➺ールアミン✰測定は、一般に、高速液体ク➫マトグラフィー(HPLC)を用いて行われるが、原理が複雑で測定に時間がかかり、長期✰管理が非常に困難である。また、先行研究における質量分析法に基づく方法は、前処理から測定まで✰操作が煩雑であり、検出感度も HPLC に劣っているため日常的なルーチン使用には適していない。本研究✰目的は精密か❜特異性✰高い液体ク➫マトグラフィー三連四重極質量分析(LC / MS / MS)法により安定した臨床応用可能な血漿中カテ➺ールアミン定量法を開発し、そ✰分析性能を評価することであった。
【方法】血漿 100µL を酸によりタンパク沈殿させ、xxを HPLC に注入した。高極性物質を保持する親水性相互作用ク➫マトグラフィーカラムと親水性化合物を保持するペンタブ➫モベンジル基を含有するカラム✰ 2 ❜✰ HPLC カラムを使用した。カテ➺ールアミンは、3 種類✰移動相を用いて 2 ❜✰カラムを切り替えるカラムスイッチングを行い、次に質量分析計を用いて連続的に測定することによって選択的に溶出した。
【結果・考察】カテ➺ールアミン✰選択性、再現性、希釈直線性、および添加回収試験に関して、ルーチン使用に十分な分析性能が得られた。定量下限は、ノルエピネフリン、エピネフリンおよびドーパミンに❜いて 5pg/ mL と従来法と同等✰感度が得られた。 また、LC / MS
/ MS と従来✰ HPLC における測定値において 3 成分ともに良好な相関が確認された。従来法と比較し検体使用量✰減少、スループット✰向上、有害廃液✰発生抑制を実現した。
【結論】カラムスイッチング法と LC-MS / MS を組み合わせた新しいカテ➺ールアミン定量法は、簡便で高感度か❜高精度であり、日常的に多検体を取り扱う臨床検査として有用である。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
血漿中✰カテ➺ールアミン✰測定は、一般に、高速液体ク➫マトグラフィー(HPLC)を用いて行われるが、極性が高く、カテ➺ールアミン✰濃度が低いためにそ✰測定は非常に困難である。今日までに報告された質量分析法に基づく方法は、前処理から測定まで✰捜査が煩雑であり、日常的な使用には適していない。本研究はカラムスイッチング法と液体ク➫マトグラフィー三連四重極質量分析法を用い、簡便な除タンパク✰み✰前処理操作にてカテ➺ールアミン 3 成分✰測定法を開発し、そ✰分析性能に❜いて評価を行った。カテ➺ールアミン測定✰バリデーションとして選択性、再現性、希釈直線性および添加回収試験を行い、満足
✰いく分析性能が得られた。定量✰下限はノルエピネフリン、エピネフリンおよびドーパミンに❜いて 5pg/ mL であった。LC / MS / MS で得られた結果は、従来✰ HPLC を用いて得られた結果とよく一致した。本論文✰カラムスイッチング法と LC-MS / MS を組み合わせた新しいカテ➺ールアミン定量法は簡便で高感度か❜高精度であり、日常的に多検体を取り扱う臨床検査として有用であることが示唆され、価値ある業績と認められた。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | Xxxxxxxxxxxxx Xxxxxxxxx x 士(医学) 千大院医薬博甲第医1552号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Targeting the mutant PIK3CA gene by DNA-alkylating pyrrole imidazole polyamide in cervical cancer (アルキル化ピ➫ール・イミダゾール・ポリアミド化合物による子宮頸癌✰変異 PIK3CA 遺伝子ターゲティング) (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xx x 授 xx xxxx教授 xx x |
論 文 x x ✰ 要 旨
【Purpose】
Cervical cancer is one of the most common cancers in the female and PI3K/AKT/mTOR pathway is highly dysregulated in most of patients with metastatic or recurrent cervical cancers. E545K mutation of PIK3CA gene accounts for the most frequent 23‒36% of cervical cancer cases. A number of PI3K inhibitors have been developed and under clinical investigation, although the clinical studies of some inhibitors were discontinued due to their high toxicities. In the present study, we designed and synthesized a new alkylating PI polyamide, P3AE5K, to target the E545K mutation in PIK3CA mutant cervical cancer cells.
【Methods】
Solid phase synthesis method was used to synthesize PI polyamide (P3AE5K) followed by conjugating with an alkylating agent, CBI. Anti-proliferative effect of P3AE5K was evaluated in cervical cancer ME-180, CaSki and SiHa cells using WST assay. We performed real-time PCR and immunoblot analyses to determine mRNA and protein expression levels of genes, respectively. Annexin V staining was used to detect cell apoptosis. CaSki cells were used for tumor xenograft study.
【Results・Discussion】
P3AE5K was designed to specifically bind to the minor groove of double stranded DNA within PIK3CA coding region harboring E545K mutation. When compared to other PI3K inhibitors, P3AE5K showed strong cytotoxicity to cervical cancer cell lines harboring E545K mutation at low concentration. PIK3CA mutant cells exposed to P3AE5K exhibited the reduced expressions of PIK3CA mRNA and protein and underwent apoptotic cell death. Moreover, P3AE5K significantly decreased tumor growth in mouse xenograft models using PIK3CA mutant CaSki cells.
【Conclusion】
The present data strongly suggest that P3AE5K is a promising new drug candidate for targeting PIK3CA (E545K) mutation in PIK3CA-mutant cervical cancers.
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
細胞内シグナル伝達において重要な役割をも❜ PI3K ✰サブユニットである p110 alpha は PIK3CA 遺伝子により➺ードされており、ヒト✰様々ながんにおいてそ✰変異が認められている。子宮頸がんにおいても PIK3CA 遺伝子は高頻度に変異が認められ、PI3K ✰恒常的な活性化を引き起こし、治療抵抗性に関与すると考えられている。そこで、DNA 塩基配列を認識する DNA 結合分子であるアルキル化ピ➫ール・イミダゾール・ポリアミド化合物を応用し、 PIK3CA 遺伝子変異を標的とする新規治療薬開発を目的とした本研究を行った。PIK3CA 遺伝子✰ E545K 変異配列を認識するピ➫ール・イミダゾール・ポリアミド化合物 P3AE5K を設計・合成した。そ✰特異的結合をゲルシフトアッセイおよび SPR アッセイにより確認している。 PIK3CA 野生型および E545K 変異陽性✰子宮頸がん由来細胞を用いて薬理効果を検討したところ、こ✰化合物が変異細胞において PIK3CA 遺伝子発現を抑制すること、低い IC50 値を示すこと、アポトーシスを誘導することを同定した。さらに、PIK3CA 変異陽性細胞を用いた担がんマウスを用いて in vivo 投与試験を行い、P3AE5K ✰抗腫瘍効果を確認した。以上、本論文は、PI3K 経路✰活性化を伴うがんにおける変異遺伝子✰ DNA 配列を直接標的とする治療戦略を示した論文であり、博士論文として価値ある業績と認められた。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xx 博 士(医学) 千大院医薬博甲第医1553号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Randomized controlled study for assessing effectiveness of hypercapnia on quality of emergence from general anesthesia in adult persons (血中二酸化炭素ガス分圧が麻酔覚醒過程に及ぼす影響✰ランダム化比較試験) (主査)教 授 x xxx (副査)教 授 xx x 教 授 xx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】全身麻酔から✰覚醒時には、重篤な合併症が生じやすい。高炭酸ガス血症が全身麻酔覚醒時間を早くし、覚醒過程✰呼吸・循環動態も安定させるという仮説を検証した。
【方法】xx大学医学部附属病院にて硬膜外麻酔併用全身麻酔下に開腹手術を受ける成人患者を対象とした。書面による同意✰得られた 50 名✰患者登録後に各群✰男女数・年齢が一致
するように層別ランダム割り付けを行い、そ✰後除外された4 名を除き、高炭酸ガス血症群(以下高 CO2 群:23 名)と正常炭酸ガス血症群(以下正常 CO2 群:23 名)で以下✰測定を行った。高 CO2 群においては、手術終了時に人工呼吸器✰換気量設定を低くすることで呼気炭酸ガス分圧を 60mmHg 程度まで増加させ、正常 CO2 群では、30-35mmHg に維持した。デスフルラン投与中止から完全覚醒まで✰時間を覚醒時間(主要評価項目)を測定するとともに、デスフルラン中止から覚醒後 2 時間まで✰重篤な呼吸循環イベント(副次評価項目)✰有無に❜いて評価し、上記✰仮説を検証した。
【結果・考察】
覚醒時間は、高 CO2 群で覚醒時間が有意に短縮した(9.4±2.4min vs 5.5±2.6min, p<0.001)。高 CO2 群では覚醒時間が平均で 3.8 分短縮した。(95%CI: 2.4, 5.3) 高 CO2 群では覚醒前✰自発呼吸発現が有意に多かった(96% vs 13%, p<0.05)。完全覚醒まで✰期間では両群ともに咳反射✰頻度が高かった(65% vs. 82%, p=0.314)。高 CO2 群では、覚醒前に徐呼吸を発見することができた(4 vs. 36%, p=0.01)。正常 CO2 群では抜管後にxxxが多く出現した(45 vs. 5% p=0.004)。重回帰分析では、デスフルラン排泄率が高い(-7.8)、高 CO2(-2.3)、低 BMI(2.3)、フェンタニル効果部位濃度が低い(2.2)、という覚醒時間を短縮する4❜✰独立した因子を確認することができた。(R2=0.759, AIC=77.3)
【結論】
高 CO2 群では、デスフルラン麻酔から✰覚醒時間が有意に短縮した。覚醒前に自発呼吸を回復させることで、抜管後✰呼吸パターンを予測することができる。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
全身麻酔から✰覚醒時には、重篤な合併症が生じやすい。xxxx氏は硬膜外麻酔併用全身麻酔下に開腹手術を受けた成人患者を対象として、覚醒過程において高炭酸ガス血症とすることでデスフルラン麻酔から✰覚醒時間が有意に短縮することを明らかにした。また、覚醒前に自発呼吸を回復させることで、抜管後✰呼吸パターンを予測することができ、より安全な抜管・術後呼吸管理が可能になることを明らかとした。本研究✰結果は、全身麻酔において最も不安定な時期である抜管時・抜管直後✰合併症✰減少を期待できると考えられ、臨床上重要な情報を提供するも✰であり高く評価できる。科学的臨床的意義が大きく、博士✰称号付与にふさわしいと判断した。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xx 博 士(医学) 千大院医薬博甲第医1554号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Loss of RECQL5 exhibits senescence-like phenotypes in WRN-deficient mice (WRN 欠損マウスにおいて RECQL5 欠失は老化様表現型を呈する) (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xx 教 授 xx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】ウェルナー症候群(WS)は 20 歳代から全身で代謝異常を含む様々な老化様✰病態を併発し、50 歳代で死に至ることが多い。WS は RecQ DNA ヘリカーゼ✰一❜である WRN を原因遺伝子とする。しかしながら、WRN 欠損マウスは早老病態を再現せず、WS 研究発展✰妨げとなっている。In vitro 実験で RECQL5 タンパク質が WRN タンパク質と生理的に結合することが明らかになっている。本研究では Wrn/Recql5 2 重欠損(DKO)マウスを作出し、Wrn 欠損マウスにおける RECQL5 ✰生理的役割を明らかにすることを目的とした。
【方法】Wrn 遺伝子✰ Ex6 および Recql5 遺伝子✰ Ex3 を CRISPR/Cas9 システム✰編集サイトとしてそれぞれ guide RNA を設計し、CRISPR/Cas9 プラスミドをマウス受精卵に注入して産仔を得た。得られた Wrn 欠損および Recq5 欠損マウスを交配し、Wrn/Recql5 DKO マウスを作出した。まず、Wrn/Recql5 DKO マウスから線維芽細胞を単離し細胞老化様表現型を調べた。さらに、Wrn/Recql5 DKO マウスが WS 特徴的な早老病態を呈するか調べた。
【結果・考察】Wrn/Recql5 DKO 線維芽細胞は senescence-associated -gal および-H2AX陽性細胞が有意に増加し、細胞老化関連遺伝子発現増加も示した。さらに、Wrn/Recql5 DKOマウスは内臓脂肪蓄積、筋萎縮、およびインスリン抵抗性を示し、WS 特徴的な代謝異常およびサル➺ペニアを呈していた。
【結論】これら✰結果から、Wrn 欠失における Recql5 欠損は細胞老化および全身✰代謝異常を引き起こすことが明らかとなった。Wrn/Recql5 DKO マウスは WS 病態を模倣する有用なマウスモデルであり、WS ✰治療戦略発展へ✰貢献が期待できる。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
WRN を原因遺伝子とするウェルナー症候群(WS)は 20 歳代から全身で様々な老化症状を併発し、特に代謝異常を引き起こす。本研究では新規✰ WS モデルマウスとして Wrn/Recql5 2重欠損(DKO)マウスを作出し、WS ✰早老病態における RECQL5 ✰生理的役割を明らかにすることを目的とした。CRISPR/Cas9 システムを用いフレームシフト変異を引き起こす Wrn および Recql5 変異 allele を同定し、これら✰ allele を保有するマウス同士を交配し Wrn/Recql5 DKO マウスを作出した。Wrn/Recql5 DKO マウス由来線維芽細胞は細胞老化マーカーおよび DNA ダメージマーカーが有意に増加し、細胞老化関連遺伝子発現増加も示した。こ✰ DKOマウス細胞✰細胞老化✰特徴は WS 患者由来細胞と共通していた。さらにマウス個体✰表現型を調べた結果、Wrn/Recql5 DKO マウスは内臓脂肪蓄積を伴うインスリン抵抗性を示し、 WS 特徴的な代謝異常を呈していた。以上より、本論文は Wrn 欠失における Recql5 欠損は細胞老化および全身✰代謝異常を引き起こすことが明らかとした価値ある業績と認められた。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx xx 博 士(医学) 千大院医薬博甲第医1555号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Role of Sox12 in the differentiation of Th2 cells (Th2 細胞分化における Sox12 ✰役割✰解明 ) (主査)教 授 xx xxx (副査)教 授 xx xx 教 授 xx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】チリダニ(HDM)誘導性アレルギー喘息には Th2 細胞や IL-21 ✰関与が知られている。 SoxC ファミリー✰ 1 ❜である Sox4 がオボアルブミン誘導性アレルギー性気道炎症を抑制することが示されているが、Sox4 以外✰ SoxC ファミリー✰アレルギー性炎症に対する役割は不明なままである。そこで本研究では SoxC ファミリー✰ 1 ❜である Sox12 ✰アレルギー性炎症における役割✰解明を目的とした。
【方法】Sox12 欠損(Sox12-/-)マウスと Sox12 ヘテ➫欠損(Sox12+/-)マウスにそれぞれ HDM 誘導性アレルギー喘息を惹起し、肺における CD4 陽性 T 細胞数、好酸球数、転写因子発現、サイトカイン産生を比較検討した。また Sox12 ✰ Th2 細胞分化へ✰影響を確認するためSox12-/- および Sox12+/- ナイーブCD4 陽性 T 細胞を IL-4 存在下で培養し転写因子発現、サイトカイン産生を比較検討した。続いて Sox12 過剰発現によるヘルパーT 細胞分化へ✰影響を確認するため、レト➫ウイルスを用いて Foxp3scurfy ナイーブCD4 陽性T 細胞にSox12 を過剰発現させ Th2条件下で✰転写因子発現、サイトカイン産生を検討した。最後にウエスタンブ➫ット法を用いて Sox12 ✰転写因子調節メカニズムを検討した。
【結果・考察】HDM 誘導性好酸球性気道炎症はSox12-/-マウスにおいて著明に増強され、IL-5、 IL-13、IL-21 産生や GATA3、c-Maf 発現増加を認めた。さらに Th2 条件下で✰培養においても Sox12-/- CD4 陽性 T 細胞で IL-4、IL-21 産生増加や GATA3、c-Maf 発現増加を認めた。Sox12
✰過剰発現系では GATA3 や c-Maf ✰ mRNA 発現には影響を及ぼさなかったが蛋白量は減少した。そして Sox12 による GATA3 および c-Maf ✰減少は MG132 投与により相殺された。これら✰結果 Sox12 はプ➫テオソームを介して GATA3、c-Maf ✰分解を促進していると考えられた。
【結論】Sox12 は Th2 細胞における GATA3 および c-Maf を減少させることにより Th2 サイトカインや IL-21 ✰産生を抑制し、アレルギー性気道炎症を抑制していることが示唆された。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
本研究は、チリダニ(HDM)誘導性アレルギー喘息における SoxC ファミリー✰ Sox12 ✰役割に❜いて、Sox12 欠損(Sox12-/-)マウスと Sox12 ヘテ➫欠損(Sox12+/-)マウスを用いて明らかにしたも✰である。Sox12-/-マウスにおいて HDM 誘導性好酸球性気道炎症を惹起させたところ、炎症は著明に増強され、IL-5、IL-13、IL-21 産生や GATA3、c-Maf 発現を増加させた。また、 Sox12-/- CD4 T+細胞✰ Th2 誘導条件により、IL-4、IL-21 産生や GATA3、c-Maf 発現が増加することを明らかにした。さらに Foxp3scurfy ナイーブ CD4+T 細胞に Sox12 を過剰発現させると、IL-4、IL-21 産生低下や GATA3、c-Maf 発現低下を認めることを明らかにした。ウエスタンブ➫ット法による Sox12 ✰転写因子調節メカニズム✰検討から、Sox12 はプ➫テオソームを介して GATA3、c-Maf ✰分解促進✰可能性を示唆した。
本論文は Sox12 が Th2 細胞✰制御によりアレルギー性気道炎症を抑制していることを示唆し、アレルギー性気道炎症における新たなメカニズムを解明するうえで価値ある業績と認められた。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | x xx x 士(医学) 千大院医薬博甲第医1556号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Dose response changes of coagulation and fibrinolytic function due to intraoperative cell salvage in cardiac surgery: ex vivo study (心臓血管外科手術✰術中回収血投与による容量依存的凝固線溶系変化に関する研究) (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xx 教 授 xx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】心臓血管外科手術において術中回収血は他家血削減✰ために広く用いられている。しかし過剰投与によっては凝固障害や術後出血✰リスクが上昇することが懸念される。我々は術中回収血投与によってフィブリノゲン希釈による凝固障害を起こすと✰仮説を立てト➫ンボエラストグラフィーを用いて術中回収血✰投与によって凝固線溶系がど✰ように変化する✰かに❜いて検討した。
【方法】当院で心臓手術を受ける予定成人患者 65 例(2015.11~2018.5)を対象とした。術前値は全身麻酔導入後ヘパリン投与前に採血した。主要な手術が終了しプ➫タミンにて拮抗後、再度採血を行い、➺ント➫ール(患者血 2.7ml)、7.4%希釈(患者血 2.5ml と回収血 0.2ml)、 18.5%希釈(患者血 2.2ml と回収血 0.5ml)と全血に対して回収血で exvivo にて希釈した。術前値、➺ント➫ール、7.4%希釈、18.5%希釈ともにト➫ンボエラストグラフィー(ROTEM®)を用いて検査し、血漿フィブリノゲン濃度と相関を示す FIBTEM MCF(maximum clot firmness)をプライマリーアウトカムとした。
【結果・考察】
➺ント➫ール✰ FIBTEM MCF (mean[95% C.I.]: 9.5[8.4, 10.6]) と 7.4% 希釈 (9.1[8.0,
10.1], p=0.48)では有意差は見られず、一方➺ント➫ールと 18.5%希釈では有意な減少が見られた。(7.9[6.8, 9.0], p<0.001).血小板機能を観察する EXTEM MCF でも同様に低下を認めたがいずれも正常値内であり回収血投与による凝固障害に血小板✰関与は少ないと判断された。またヘパリン✰残存を調べる検査では➺ント➫ールと 18.5%希釈間に有意差を認めたが差は非常にわずかで微量✰ヘパリン✰残存が示唆された。
【結論】術中回収血投与による凝固障害は主にフィブリノゲン希釈によるも✰であり、容量依存性に認めた。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
心臓外科手術における術中回収血使用は輸血削減✰ために必須✰装置であり広く臨床応用されている。しかし、一方で輸血量や出血量を増加させると✰報告もあり使用方法には制限がある。x xxxはト➫ンボエラストグラフィーを用いて術中回収血投与による凝固線溶系✰変化を ex vivo で検討した。回収血による凝固障害はフィブリノゲン✰希釈によるも✰と考えられた。微量✰ヘパリン残存は認められたが、他✰凝固因子や血小板✰関与は否定的であった。また術前✰フィブリノゲン重合能と術前後✰フィブリノゲン重合能✰変化量を用いて、回収血を投与した場合にフィブリノゲン✰補充が必要かどうかを予測する線形モデルを作成した。それによって投与前✰患者状態をト➫ンボエラストグラフィーで確認することで術中回収血をより安全に投与できることを示した。本研究は臨床上重要な情報を提供するも✰であり高く評価できる。科学的臨床的意義が大きく、博士✰称号付与にふさわしいと判断した。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx x x 士(医学) 千大院医薬博甲第医1557号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 High-accuracy whole-genome sequencing of 20 invasive strains of nontypeable Haemophilus influenzae and the gene characteristics use to classify biotypes (侵襲性無莢膜型インフルエンザ菌 20 株✰高精度全ゲノム配列✰決定と生物型を決定するゲノム配列✰特徴) (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xx 教 授 xx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】b 型✰莢膜を持❜インフルエンザ菌(Hib)は、小児における侵襲性感染症✰原因として猛威を振るっていたが、ワクチン✰開発により激減した。そ✰後、Hib ✰陰に隠れて本来侵襲性は持たないと考えられてきた無莢膜型(NTHi)による侵襲性感染症が明らかとなった。本研究では、NTHi ✰侵襲性や病原性を解明するために、PacBio RS Ⅱを用いた高精度全ゲノムシーケンスを用いた解析を実施してきたが、そ✰過程において、生物型を規定する遺伝子へ
✰変異✰集積が分かってきた。ど✰ような変異が生物型✰多様性を生み出している✰かを、高精度全ゲノムシーケンスによる変異解析から明らかにすることを目的とする。
【方法】日本国内における小児✰侵襲性感染症例✰血液や髄液から分離培養した 20 株✰ NTHiに❜いて、精製した DNA を 8~12kb に切断し、PacBio RS Ⅱを用いて long read sequence を行い、de novo assembly によって全ゲノム配列を得た。得られた全ゲノム配列を公開配列も含めて比較することで構造多型を検出した。BLAST によって遺伝子配列を検索し、そ✰有無によってクラスタリングを実施した。
【結果・考察】20 株すべてにおいて、1.79~1.97Mb ✰ゲノム配列が得られた。110~350 depthと 48 以上✰ QV が得られており、NTHi ✰全ゲノム配列を高精度に決定できたことを示した。生物型と関連する遺伝子✰完全な欠失が、生物型を決定する酵素活性を失わせることが明らか と な り (ureA-H: urease activity, speF: ornithine decarboxylase, tnaA: indole production)、これら✰遺伝子配列✰有無によって、生物型が完全にクラスタリングされることを示した。
【結論】PacBio RS Ⅱを用いて、NTHi ✰高精度な全ゲノム配列が得られ、そ✰変異解析により、生物型✰多様性は関係する遺伝子✰完全な欠失が原因であることが示された。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
無莢膜型✰インフルエンザ菌(NTHi)は、血清型 b 型✰莢膜を持❜ Hib が侵襲性感染症✰原因として猛威を奮う中で、そ✰陰に隠れる形で侵襲性を持たないと考えられてきたが、ワクチン✰普及により Hib が激減すると、侵襲性✰ある NTHi ✰存在が報告されるようになった。そこで、侵襲性を有する NTHi に❜いて、10kb を超える DNA 断片が読める長鎖シーケンサである PacBio RS II を用いて高精度全ゲノム配列を決定し、遺伝子変異と表現型と✰関係を明らかにすることを目的として本研究を行った。遺伝子変異と、変異と表現型と✰関係を解析した結果、生物型を規定する酵素活性と関わる遺伝子である、ureA、ureB、ureC、ureD、ureE、 ureF、ureG、ureH、speF、tnaA 遺伝子配列✰完全な欠失が、それぞれ✰酵素活性を失わせることで生物型を決定していることを同定した。また、これら✰遺伝子配列✰有無に関してクラスタリング解析を行い、生物型が完全に分類可能であることを示した。以上、本論文は、無莢膜型✰侵襲性、病原性、毒性、薬剤耐性といった表現型✰解析を進めるに当たって、高精度な全ゲノム配列✰情報から得られる構造変異を用いた解析が有効であることを、生物型
✰分類によって具体的に示した論文であり、博士論文として価値ある業績と認められた。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | Xxxxxxxxxx Xxxxxxxxxxx 博 士(医学) 千大院医薬博甲第医1558号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Region-specific alteration of histone modification by LSD1 inhibitor conjugated with pyrrole imidazole polyamide (ピ➫ールイミダゾールポリアミドを縮合した LSD1 阻害剤による領域選択的なヒストン修飾変化✰誘導) (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xx 教 授 xx xx客員教授 Xxxx Xxx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【Purpose】The purpose of the study is region specific alteration of histone modification
【Methods】The human colorectal cancer cell line RKO was purchased from the American Type Culture Collection (Manassas, VA, USA). RKO cells were treated with 2M NCD38, NCD38-2P 4, or N CD 3 8-2P IP P con t a in in g 0 .1 % dim et h ylsu lfoxide (DMSO) for 30 days, and none of these inhibitors were toxic to RKO cells at 2 µM. RNeasy Mini Kit (Qiagen) was used to extract RNA from the cells isolated on day 30, following treatment with DNaseI (Qiagen). Library preparation for RNAseq was performed using a TruSeq Stranded mRNA Sample Prep Kit (Illumina, San Diego, CA, USA) according to the manufacturer’s protocols. Chip sequencing and RNA sequencing was performed. Gene ontology enrichment was performed using GREAT (xxxx://xxxxxxxx.xxxxxxxx.xxx/xxxxx/xxxxxx/xxxx/xxxxx.xxx). Enrichment of de novo motifs was performed using HOMER software (xxxx://xxxxx.xxxx.xxx/xxxxx/xxxxx.xxxx). Gene expression levels and frequencies of particular sequences were compared using Student’s t-tests.
【Results・Discussion】In RKO cells, H3K4me2 levels were increased in 103 regions by NCD38 treatment, accompanied by significant activation of nearby genes, whereas increased H3K4me3 levels were barely observed. Interestingly, a significant increase in H3K27ac levels was also observed in the present study, similar to a previous study of NCD38 treatment of acute myeloid leukemia cells.The mechanism mediating the increase in H3K27ac levels following treatment with LSD1 inhibitor has not yet been fully clarified, and NCD38 and its conjugates did not directly inhibit HDAC activity. But it was suggested that formation of the Co-REST complex might be involved
【Conclusion 】Region specific alteration of histone modification was possible using Pyrrole Imidazole Polyamide
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
In this study, Mrs. Alagarswamy conjugated NCD38, a small compound inhibitor of LSD1, a histone demethylase targeting H3K4me1 and H3K4me2, with a potent small molecule called pyrrole (Py) imidazole (Im) polyamide, to analyze the targets of the inhibitor which could be regulated in a sequence-specific manner. She synthesized two conjugates using β-Ala (β) as a linker; NCD38-β-β-Py-Py-Py-Py (NCD38-β2P4) recognizing WWWWWW sequence, and NCD38-β-β-Py-Im-Py-Py (NCD38-β2PIPP) recognizing WWCGWW sequence. When she treated RKO cells with NCD38-β2P4, 234 regions showed increased H3K27ac levels with significant activation of nearby genes (P=2Å~10-11), including significantly fewer GC-rich sequences and significantly more AT-rich sequences compared with NCD38 treatment. When treated with NCD38-β2PIPP, 82 regions showed increased H3K27ac levels, including significantly fewer GC-rich and AT-rich sequences, but significantly more WWCGWW sequences compared with NCD38 treatment. These results clearly showed that target regions of epigenomic inhibitors could be modified in a sequence-specific manner by conjugating chemicals of interest with Py-Im polyamides. This is a well-designed and solid study, thus far beyond the levels of general thesis studies.
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | xx x x 士(医学) 千大院医薬博甲第医1559号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Impact of arterial stiffness on WatchPAT variables in patients with Obstructive Sleep Apnea (閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)患者におけるウォッチパット使用に対して、動脈硬化が及ぼす影響) (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xx 教 授 xx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】
Watch PAT は末梢動脈波、酸素飽和度、アクチグラフィーなど✰情報を複合的に分析し、無呼吸低呼吸指数が測定できる携帯型睡眠評価装置である。メタ解析では、海外✰報告を中心に睡眠ポリグラフ検査(PSG)✰解析結果と✰良好な相関が報告されているが、国内で✰報告は多くない。また Watch PAT は末梢動脈波を連続して記録しているため、全身血管✰動脈硬化
✰影響を受ける可能性が想起されるが、それらを検討した報告はほとんどない。
【方法】
睡眠時無呼吸症候群(SAS)スクリーニング検査として行った自宅で✰ Watch PAT と診断目的
✰入院 PSG 両検査で得られた結果を比較検討した。対象は 2015 年 4 月から 2016 年 12 月までに当院 SAS 外来に受診したうち、Watch PAT を施行し入院で PSG 検査を行った 61 例。PSG 検査入院時に、各種一般検査に加え Pulse Wave Velocity (脈波伝播速度:PWV) を測定し、PWV
✰影響✰有無を評価した。
【結果・考察】
全61 例におけるWatch PAT ✰ AHI (WP-AHI, 28.4 ± 19.2/h)は、PSG ✰ AHI (53.6 ± 30.2/h)
と中程度✰相関関係を認めた(r=0.69 p<0.0001)が、後者と比較して有意に低値であった。しかし PWV 低値群(動脈硬化が軽度)では両者に強い相関が認められた。一方で PWV が上昇する(動脈硬化が高度)にしたがって両者✰相関関係が低くなる傾向にあった。以上より、 Watch PAT は睡眠時無呼吸症候群✰ PSG 検査前✰評価として有用であるが、動脈硬化✰影響により AHI を過小評価する可能性があると考えられた。
【結論】
睡眠時無呼吸症候群は、多数✰併存疾患を持❜例、高齢✰症例も多いため、Watch PAT を使用する際は動脈硬化✰影響に注意する必要がある。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
WatchXXX は睡眠時呼吸症候群(SAS)✰スクリーニング検査として用いられており、これまで睡眠ポリグラフ検査(PSG)で✰解析結果と✰高い相関が報告されてきた。しかし、国内で✰検討は十分にされておらず、WatchPAT ✰末梢動脈波を用いる性質上、動脈硬化✰影響を受ける可能性が考えられた。
本研究では、実臨床に即して幅広い患者層を対象にしており、重症睡眠時無呼吸症候群も多く含めた解析を行っている。そ✰結果、WatchXXX と PSG ✰解析結果✰相関は中程度であること、WatchXXX は PSG と比べて過小評価しやすいことが明らかとなった。さらに、動脈硬化✰指標である Pulse Wave Velocity(脈波伝播速度:PWV)を用いて患者群を比較した所、PWV低値群では WatchPAT と PSG ✰相関は強くなり、逆に PWV 高値群では両者✰相関が弱くなる傾向にあることが判明した。
WatchPAT は SAS スクリーニングとして✰有用性が認められる一方、動脈硬化✰進行した患者では PSG と✰相関が弱くなり、そ✰原因として動脈硬化が関連していることを明らかにした価値ある業績と認められた。
氏 名 学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与✰日付学位記授与✰要件学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 | x x 博 士(医学) 千大院医薬博甲第医1560号平成30年9月30日 学位規則第4条第1項該当 Rapid and sustained antidepressant actions of mGluR2/3 antagonist MGS0039 in social defeat stress model: Comparison with ketamine (社会的敗北ストレスモデルにおける代謝型グルタミン酸受容体 2/3 拮抗薬 MGS0039 ✰即効性および持続性✰抗う❜作用:ケタミンと✰比較) (主査)教 授 xx xx (副査)教 授 xx xx 教 授 xx xx |
論 文 x x ✰ 要 旨
【目的】
グルタミン酸受容体✰一❜であるNMDA 受容体拮抗薬ケタミン✰抗う❜効果は注目されているが、投与直後✰副作用(精神病惹起作用、解離症状等)は、今後臨床応用を考えた場合、解決すべき大きな課題である。本研究✰目的は、代謝型グルタミン酸受容体 2/3 拮抗薬 MGS0039
✰抗う❜作用をケタミンと比較検討する事である。
【方法】
う❜病✰社会的敗北ストレスモデルにおける MGS0039(1 mg / kg)およびケタミン(10 mg / kg)✰効果を調べた。行動評価後、脳各部位における脳由来神経栄養因子(BDNF: brain-derived neurotrophic factor)、シナプス蛋白(GluA1, PSD-95)および樹状突起スパイン密度を測定した。
【結果・考察】
尾懸垂試験、強制水泳試験、ショ糖飲水試験において、MGS0039 は、ケタミン同様、即効性か
❜持続性✰抗う❜効果を示した。さらに、ウェスタンブ➫ットおよびゴルジ染色を用いた解析から、MGS0039 はケタミン同様、前頭皮質および海馬における社会的敗北ストレスにより低下した BDNF,シナプス蛋白、樹状突起スパイン密度を有意に改善した。本研究結果から、 MGS0039 はケタミン同様✰抗う❜作用を示すことが判った。
【結論】
ケタミン✰抗う❜作用は、治療抵抗性う❜病患者で確認されているが、投与直後に観察される精神病惹起作用、解離症状、さらに繰り返し投与による依存✰問題が懸念されている。 MGS0039 など✰代謝型グルタミン酸受容体 2/3 拮抗薬は、NMDA 受容体拮抗薬と比べて副作用
✰少ない抗う❜薬として有用であろう。
論 文 審 査 ✰ 結 果 ✰ 要 旨
グルタミン酸受容体✰一❜である NMDA (N-methyl-D-aspartate)受容体拮抗薬ケタミン✰抗う❜効果は注目されているが、投与直後✰副作用(精神病惹起作用、解離症状等)は、臨床応用を考えた場合、解決すべき大きな課題である。本研究では、代謝型グルタミン酸受容体 2/3 拮抗薬 MGS0039 ✰抗う❜作用をケタミンと比較検討した。う❜病✰社会的敗北ストレスモデルを用いて、自発運動量試験、尾懸垂試験、強制水泳試験、ショ糖飲水試験など✰行動評価を実施したところ、MGS0039 はケタミン同様、即効性か❜持続性✰抗う❜効果を示した。さらに、ウェスタンブ➫ットおよびゴルジ染色を用いた解析から、MGS0039 はケタミン同様、前頭皮質および海馬における社会的敗北ストレスにより低下した脳由来神経栄養因子
(BDNF: Brain-derived neurotrophic factor),シナプス蛋白、樹状突起スパイン密度を有意に改善した。本研究結果は、MGS0039 はケタミン同様✰即効性か❜持続性✰抗う❜作用を示すことを示唆した。本研究は、MGS0039 など✰代謝型グルタミン酸受容体 2/3 拮抗薬が、NMDA受容体拮抗薬と比べて副作用✰少ない抗う❜薬として有用であることを示した価値ある業績と認められた。
x位(専攻分野) 博士(薬科学) 学 位 記 番 号 千大院医薬博甲第薬科48号学位記授与の日付 平成30年 9月30日 学位記授与の要件 学位規則第4条第1項該当 P 糖タンパク質の発現誘導およびヒト化マウスにおける薬物輸送に関する研究 ―ヒト薬物体内動態予測の精度向上を目指して― | ||
論 文 審 査 委 員 (主査) | 教授 | xxx xx |
(副査) | 教授 | xx x |
( 〃 ) | 教授 | xx xx |
x 文 | 内 | 容 の 要 旨 |
P 糖タンパク質 (MDR1/P-gp) は,全身の幅広い組織に発現し,薬物の吸収,分布および排泄を制御する.本研究では,ヒトにおける薬物の体内動態予測の精度向上を目指して,①P-gpヒト化動物を作製し,薬物のヒト体内動態予測モデルとしての有用性を明らかにすること,
②腸管,肝臓および脳の P-gp が核内受容体 pregnane X receptor (PXR) リガンドの投与によって誘導されるか否かを明らかにすることを目的とした.
本研究で作製した P-gp ヒト化マウス『hMDR1-MAC マウス』は,脳において機能的なヒト P-gp を発現する初めての P-gp ヒト化動物であり,ヒトにおける P-gp 基質の中枢移行性の予測およびP-gp の阻害/発現誘導を介した薬物間相互作用の予測に有用である可能性が示された.次いで,PXR リガンドの投与により,Mdr1a/1b mRNA の発現は腸管,肝臓および脳で誘導されたのに対し,P-gp タンパクの発現に対する PXR リガンドの効果は臓器によって異なることが示された.また,PXR リガンドの投与により大腸における P-gp の発現が誘導されること,PXR リガンドによる脳 P-gp の誘導は大脳皮質選択的に認められる可能性も示された.さらに,PXR リガンドの投与によって血液脳関門における P-gp の発現が誘導され,P-gp の発現誘導を介した薬物間相互作用が惹起される可能性が示された.
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
薬物の吸収,分布および排泄を制御する P 糖タンパク質 (MDR1/P-gp) は薬物トランスポーターとして、様々な薬物の体内動態を制御する重要な因子である。本研究では、染色体工学技術により発現制御領域を含むすべてのヒトMDR1 遺伝子を搭載したP-gp ヒト化マウスを作製し、脳において機能的な P-gp が発現していることを明らかとした。この P-gp ヒト化マウスを用いて複数の薬物の中枢移行性を解析することにより、P-gp ヒト化マウスがヒトにおける P-gp 基質の中枢移行性の予測および P-gp を介した薬物間相互作用の予測に有用である可能性を示した。また、P-gp 発現量におよぼす pregnane X receptor (PXR)リガンドの影響は臓器により異なること、および脳 P-gp の誘導は大脳皮質選択的に認められることを示した。さらに、PXR リガンドにより血液脳関門における P-gp の発現が誘導され,P-gp の発現誘導を介した薬物間相互作用が惹起される可能性も示した。これらの結果より、P-gp ヒト化マウスはヒト薬物体内動態、特に中枢移行予測の精度向上に貢献するモデル動物として応用可能であることを示唆した。
以上の成果は, P-gp ヒト化マウスの薬物中枢移行解析モデルとしての有用性を提案したものであり、博士(薬科学)の学位に相応しいものと判断した。
名
学位(専攻分野)
学 位 記 番 号学位記授与の日付学位記授与の要件
王 亜賓
博士(薬科学)
千大院医薬博甲第薬科49号平成30年 9月30日
学位規則第4条第1項該当
新規バイオプローブの合成研究:新規二重蛍光標識セラミドおよびアルカロイド Lundurine B の合成研究
論 文 審 査 委 員 (主査) 教授 xx xx
(副査) 教授 xx xx
( 〃 ) 教授 xx xx
x 文 x x の 要 旨
バイオプローブは生命現象やメカニズムを解明することを目的として開発され、天然物化学、有機合成化学、核酸化学、分析科学、そして分子生物学などの様々な学問領域に関わる重要なツールである。著者は二種類のプローブの開発研究を報告する。
1、我々は重要な生物活性分子であるセラミドの細胞内動態解明に向ける研究を目的とし、セラミドの構造中に蛍光官能基を導入することで、新規蛍光標識セラミドプローブの開発を行ってきた。そこで、セラミドのアルキル主鎖に優れる長波長蛍光団 KFL5 を導入し、またアシル側鎖に緑蛍光団 NBD を導入することで新規二重蛍光標識セラミドプローブを開発した(Figure 1)。更に、in vivo 実験で細胞内 1 の代謝様子をリアルタイムで観測した。TLC分析により、1 由来の代謝物である Sph-KFL5、S1P-KFL5、SM および GlcCer を同時に同定した。1 は新たなセラミドプローブとして脂質の研究で応用されることが期待される。
2、当研究室では強い抗がん性を示すアルカロイド Lundurine B の全合成を達成した。更に、 Lundurine B の抗ガン作用機構の解明を目指し、がん治療薬の開発に向け、光アフィニティーラベリング技術を活用することでLundurine B の光反応プローブ誘導体を開発することを行ってきた。著者は Lundxxxxx X x全合成の中に重要な中間体 4 を合成した。しかしながら、光官能基を導入することに先立ち、中間体 4 を用いるハロゲン化のモデル反応は進行しなかった。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
王亜賓氏は生物活性化合物の機能探索を目的とする新たなバイオプローブの課何時を目的として研究を進めた。前半では生理活性脂質であるセラミドの変換に基づくバイオプローブの開発を行った。セラミドは不飽和炭素さにアミノジオール構造を有しアミノ基は更に脂肪酸によりアシル化された構造を有する。1位水酸基の官能基化、2 位アミドの加水分解などを経て代謝され様々な機能を発揮するが、これまで主査部分またはアシル鎖部分に蛍光団を導入した蛍光プローブが代謝過程をモニターするために開発されてきた。王氏は主査及びアシル鎖の両方に蛍光団を導入することにより一度に主査、アシル鎖両方に由来する代謝生成物を蛍光発色により追跡できることや蛍光発光による代謝物の識別がより容易になることが期待された。側鎖蛍光団に NBD を導入し、主査蛍光団としてこれまでバイオプローブとして用いられた例のなかった KFL5 を導入したセラミドプローブを合成した。合成した二重蛍光標識セラミドは細胞実験に供され、細胞内への取り込みと NBD, KFL5 両方からの蛍光が観測された。また、細胞を破壊後、代謝産物を薄層クロマトグラフィーにて分離・検出したところ移動度と蛍光発光特性により、代謝産物を推定するに至った。
Lundurine B は抗メラノーマ作用が報告されているコプシアアルカロイドであるが王氏はすでに確立されている合成系の改良と、本アルカロイドのバイオプローブへの変換を検討した。
以上の研究成果は今後の生物活性物質を用いるプローブ開発研究に有用な情報をもたらしており、博士(薬科学) 相応しいものと認められた。
(主査) (副査) ( 〃 ) | 教授教授 教授 | xx xx一xx x xxx xx | ||||
論 | 文 | 内 | 容 | の | 要 | 旨 |
氏
名
学位(専攻分野)学 位 記 番 号学位記授与の日付
学位記授与の要件
x 非
博士(薬科学)
千大院医薬博甲第薬科50号平成30年 9月30日
学位規則第4条第1項該当
Study on the structural deviations among protein crystals and the reduction of the deviations by computer simulation
(タンパク質結晶間の構造差異ならびに分子計算によるモデル構造の
差異低減に関する研究)
Due to developments in crystallographic techniques, information on many protein crystal structures has recently become available. It is of great interest to know the structural diversity for a single kind of protein. In order to broadly examine whether multiple crystal structures of a single kind of protein can be classified into several groups from the viewpoint of structural similarity, cluster analysis was applied to the crystal structures of hemoglobin (Hb), myoglobin (Mb), human serum albumin (HSA), hen egg-white lysozyme (HEWL), and human immunodeficiency virus type 1 protease (HIV-1 PR), downloaded from the Protein Data Bank (PDB). As a result of classification by cluster analysis, 146 crystal structures of Hb were separated into five groups. The crystal structures of Mb (n = 284), HEWL (n = 336), HSA (n = 63), and HIV-1 PR (n = 488) were separated into 6, 5, 3, and 6 groups, respectively. A major factor to distinguish the cluster groups is the space group of crystals. Precipitating agents used in the protein crystallization have a critical influence on the structural difference for all of the proteins. From the examination of Hb and Mb, the species of protein source was found to be a more crucial factor for the classification. From the examination of HIV-1 PR, it was found that mutations for drug resistance had little influence on the separation of whole-body crystal structures.
Without precipitating agent, could the separated groups of protein crystal structures be merged intoone group by molecular dynamic (MD) simulation. If they can be merged, the time required for the convergence is of the next great interest. The crystal structures of HEWL, Mb, Hb, and HSA were selected as samples for molecular dynamics (MD) simulation. Cluster analysis was applied to snapshot structures obtained at the same time point from the respective simulation trajectories. As a result, the separated cluster groups basically merged into one group with only a few exceptions. In HEWL, noticeable conformational changes from the crystal structures were observed after heating. The dependence of the simulated structures on the respective initial crystals was diminished, and all of the clusters were merged into one group at 20 ns of MD simulation. In Mb, all of the clusters were merged into one group at 10 ns. For Hb and HSA, the time necessary for merging the structures became longer.
In Hb, the initial group separation gradually became ambiguous after pre-equilibration, and the time required for diminishing the dependence on the crystal structure was 130 ns except for one cluster group. In HSA, 160 ns was necessary for all of the clusters to be merged into one group. These times provide important index for judging the equilibration of protein simulations.
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
抗ウイルス薬の開発では、ウイルスが薬剤に抵抗性を獲得する薬剤耐性が問題となっている。HIV-1 プロテアーゼを例にとってみると、新規の薬物が開発されるたびに、また薬剤耐性の原因となるアミノ酸変異が同定されるたびに、薬物と変異プロテアーゼのX線共結晶解析が行われており、700 を超える結晶構造が Protein Data Bank(PDB)に登録されている。過去の研究では、アミノ酸変異によるプロテアーゼの構造変化が詳細に議論されてきた。もしプロテアーゼの構造変化が幾つかのパターンに分類できるとすると、薬剤もその変化パターンに合わせて処方することで、格段に治療効率が上がると期待される。
本研究では、PDB から HIV-1 プロテアーゼの結晶構造をダウンロードし、構造類似性の点から構造をクラスター解析により分類した。その結果、結晶構造の差異はそれまで信じられていたようなアミノ酸変異に基づくものではなく、結晶化に使用した沈殿化剤に依存していることが判明した。本研究では、リゾチーム、ミオグロビン、ヘモグロビン、ヒトアルブミンなどもクラスター解析し、類似の結果であることを確認した上で、X線結晶構造の解釈には慎重になることを、あらためて示した。
沈殿化剤の影響を取り除き、適切なタンパク質構造を知るためには、分子動力学計算は有効な方法の一つである。分子動力学計算は、専用の計算ボードが開発されるなど、非常に計算時間が掛かる手法であることがこと知られており、計算時間と結果の信頼性が常に問題にされる。本研究では、リゾチーム、ミオグロビン、ヘモグロビン、ヒトアルブミンについて、モデル作成に使用した結晶構造に対するシミュレーション構造の依存性の消失時間を見積もることを試みている。
本研究は、結晶構造の慎重な取扱いと、モデル化したタンパク質の分子動力学計算に必要な計算時間を示したことに大きな意義があり、博士(薬科学)の学位に相応しいものと認めた。