・千葉県総合計画について、千葉県が実施している進捗管理(PDCA)は適切に行われているか
第 1 包括外部監査の概要
Ⅰ 監査の種類
地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号。以下「法」という。)第 252 条の 37 第 1 項、及び第
2 項及び第 4 項並びにxx県外部監査契約に基づく監査に関する条例(平成 11 年xx県
条例第 1 号)第 2 条の規定に基づく包括外部監査である。
Ⅱ 選定した特定の事件(テーマ)
1 監査テーマ
県土整備事業に関する財務事務の執行について
2 監査の対象期間
原則として令和 2 年度(必要に応じて他年度についても対象とする。)
3 監査対象の範囲
(1) 対象とする部局等県土整備部
xx県土地開発公社
公益財団法人xx県下水道公社
公益財団法人xx県建設技術センター
(2) 対象とした事務等
監査の対象は、県土整備事業に関する財務事務の執行
Ⅲ 事件を選定した理由
xx県では、平成 29 年 10 月にxx県総合計画「次世代への飛躍輝け!ちば元気プラン」を策定し、基本理念として「xxは元気の発信源。首都圏、そして日本をリードし、県民が
『くらし満足度日本一』を感じ、誇れるxxを実現します。」を掲げ、3 つの基本目標を設定し、平成 32 年度(2020 年度)のxx県の目指す姿を示すとともに、xx県が進むべき方向を明らかにしている。設定されている 3 つの基本目標は、以下のとおりである。
Ⅰ 「安全で豊かなくらしの実現」
Ⅱ 「xxのxxを担う子どもの育成」
Ⅲ 「経済の活性化と交流基盤の整備」
とりわけ令和 2 年度は総合計画の実施計画の最終年度に該当し、10 年間の総仕上げとしての事業を実施している。
県土整備部においては、3 つの基本計画のうち、「安全で豊かなくらしの実現」及び「経済
の活性化と交流基盤の整備」の 2 つの基本目標の下に、各種事業を位置付けており、監査
対象である令和 2 年度においても、引き続きこれらの事業を重点的に実施し、総合計画の基本理念である「くらし満足度日本一」の実現に向け、総力を挙げて取り組んできた。これら県土整備部の事業に関する事項は、県民生活に直結する身近なテーマであることから、県民の関心が高い領域といえる。
このような中、県民に身近な県土整備に関する事業を取り上げ、これら事業の財務事務が、関係法規等に則り合規的に、かつ、時代の要請を反映した経済性・効率性・有効性を十分に追求して執行されているかについて監査を実施することは有用であると判断した。
Ⅳ 監査の視点
監査の視点は、以下のとおりである。
1 xx県総合計画「次世代への飛躍輝け!ちば元気プラン」における県土整備事業に関する進捗管理
・xx県総合計画について、xx県が実施している進捗管理(PDCA)は適切に行われているか
2 県土整備事業に関連して策定された整備計画及び道路の主要構造物である橋梁・トンネル・舗装・港湾・下水道施設・ダムその他関連設備等の維持・修繕計画等の進捗管理
・各課で計画された整備計画等の手続が適切に行われているか
・道路の主要構造物である橋梁・トンネル・舗装・港湾・下水道施設・ダムその他関連施設の維持・修繕計画等の進捗管理は適切に行われているか
3 県土整備事業に関する収入・支出及び資産の管理状況
・使用料等の徴収、減免及び債権管理は適切に行われているか
・施設・設備・備品等の現物管理が適切に行われているか
・契約事務は適切に行われているか
・県土整備事業に関する収入・支出状況に関する内部統制の整備状況
4 外郭団体における事業の管理状況及び出納その他の事務の執行状況
5 その他、テーマを踏まえて包括外部監査人が必要と認める手続
Ⅴ 主な監査手続
1 概要の把握
県土整備部の組織、人員、財務等について概要を把握するため、県土整備事業の状況及び課題等について担当者への質問及び関連する文書等の査閲を行った。
2 監査対象とした県土整備部の各部署及び外郭団体等の担当者への質問及び文書等の
査閲
県土整備部の財務に関する事務手続について、各所管部署及び外郭団体等の担当者への質問及び関連する帳簿、証拠資料及び文書等の査閲を行った。
以下の各部署に対して監査を実施した。
県土整備部
・県土整備政策課
土木事務所(15)[出張所(7)]
・技術管理課
・建設・不動産業課
・用地課
・道路計画課
・道路整備課
北xx道路建設事務所
・道路環境課
・河川整備課
一xx改修事務所・ダム管理事務所(2)
・河川環境課
・港湾課
港湾事務所(3)[支所(3)]
・営繕課
・施設改修課
・都市整備局都市計画課
・都市整備局市街地整備課区画整理事務所(3)
・都市整備局公園緑地課
・都市整備局下水道課下水道事務所(3)
・都市整備局建築指導課
・都市整備局住宅課
また、県土整備部の出先機関である 28 の事務所のうち葛南土木事務所、安房土木事務所、江戸川下水道事務所、管轄する外郭団体のうちxx県土地開発公社、公益財団法人xx県下水道公社、公益財団法人xx県建設技術センターに対して往査(実地調査)を行った。その他の事務所及び外郭団体については、県土整備部へのヒアリングや資料提示を受けて概括的に状況を把握した。
なお、上記事務所及び外郭団体を往査先として選定した理由は、以下のとおりである。
・葛南土木事務所
葛南土木事務所の行政区域は、xx県の北西部に位置するxx市、船橋市、浦安市の 3 市を所管している。面積は 160.3 ㎢であり、面積では県全体のわずか 3%
の地域に、人口では約 2 割の 130 万人が居住しており、人口密度が 1 ㎢当たり約
8,000 人を超える県内で最も高い地域となっている。首都東京に最も近い土木事務所であるとともに、治水、海岸整備等、道路事業以外の事業も多数抱えているため、事業の進捗及び管理状況を直接確認するため、往査先に選定した。
・安房土木事務所
安房土木事務所は、xx県の最xxにある土木事務所であり、安房合同庁舎内に事務所を構えている。当該事務所には鴨川出張所があり、xx市、鴨川市、南房総市及び鋸南町を所管している。面積は 576 平方キロメートル、人口約 12 万人であり、山林が多いことから、君津土木事務所と並んで橋梁及びトンネルを多く保有していることが特徴である。事業の進捗及び管理状況の確認、特に橋梁及びトンネルの保全状況等を直接確認するため、往査先に選定した。
・江戸川下水道事務所
江戸川下水道事務所は、江戸川左岸流域下水道事業を統括している。江戸川左岸流域下水道の 8 市(xx市、船橋市、xx市、xx市、柏市、流山市、xxx市、浦安市)は、人口増加の著しい地域であり、当初の計画処理人口から大きく増加している。江戸川第一終末処理場は、平成 18 年の事業変更認可に追加され、整備を進
めているところであり、必要な施設を集約して配置した第 1 期区域(9.8ha)を重点的に
整備し、施設が完成したことから令和 3 年 3 月 1 日付で供用開始している。下水道事業の進捗及び管理状況を直接確認するとともに、江戸川第一終末処理場建設工事についても管理監督すべき下水道事務所であることから、往査先として選定した。
・xx県土地開発公社
xx県土地開発公社は、「公有地の拡大の推進に関する法律」に基づき、県施策の一端を担う公法人として、国、県及び市町村から受託した公有地の先行取得等を行っているほか、土地造成事業として工業団地の開発を行っている。土地の先行取得についての主なものがxx県からの委託事業であり、xx県との関係が強い公法人であることから、その事業管理状況及び収支状況等を確認するため、往査先として選定した。
・公益財団法人xx県下水道公社
公益財団法人xx県下水道公社は、xx県より江戸川左岸流域下水道施設の維持管理業務を受託しているほか、印旛沼・手賀沼流域下水道施設についてxx県が民間業者に包括委託した業務の履行監視業務を行っている。xx県の下水道事業に深くかかわっていることから、その事業管理状況及び収支状況等を確認するため、往査先として選定した。
・公益財団法人xx県建設技術センター
公益財団法人xx県建設技術センターは、xx県内の地方公共団体が施工する建設事業の円滑で効率的な執行を支援するとともに、建設技術者の技術の向上を図り、良質な社会資本の整備に寄与することを目的として設立されている。そのため、事業収益の大半が県及び県内の地方公共団体であることから、公益性の高い団体と位置付けられている。県が実施する建設事業とのかかわりが強いことから、その事業管理状況及び収支状況等を確認するため、往査先として選定した。
3 過去の包括外部監査における指摘事項等(県土整備部及び外郭団体に関するもの)に対する県土整備部の措置状況等の把握及び検討
過去に実施された包括外部監査において県土整備部に関連した指摘及び意見について、指摘事項に対する措置状況及び意見に対する対応状況について、各所管部署等の担当者への質問及び関連する文書等の査閲を行った。
Ⅵ 「監査の結果(指摘)」及び「監査の意見(意見)」について
指摘及び意見の記載方法は、関連する事実の後に、「指摘」又は「意見」として記載している。指摘とは、主に合規性に関する事項(法令、条例、規則、規定又は要綱等に抵触する事項)、または経済性、効率性及び有効性に関する事項のうち著しく重要性が高いと判断する事項であり、県において措置が必要であると認められるものである。
また、意見とは、指摘には該当しないが、経済性、効率性及び有効性の観点から事務の執行の合理化のために改善を要望する事項であり、県がこの意見を受けて何らかの対応を図ることを強く期待するものである。
県は従来から指摘については、監査結果を参考に、措置を講じその状況を公表してきたが、意見については業務遂行の参考として受け止めてきた。なお、県は、平成 30 年度からは意見についても対応状況を公表している。
Ⅶ 監査の実施期間
令和 3 年 7 月 21 日から令和 4 年 2 月 18 日
Ⅷ 包括外部監査人及び補助者
1 包括外部監査人
公認会計士 xx xx
2 補助者
公認会計士 xx xx
公認会計士 xx xx
公認会計士 xx xx
公認会計士 xx xx
公認会計x xx xx
公認会計士 xx xx
公認会計士 xx xxx
公認会計士 xx xxxx会計士試験合格者 xx xx
Ⅸ 利害関係
包括外部監査の対象となった事件につき、県と包括外部監査人及び補助者との間には、法第 252 条の 29 に規定する利害関係はない。
Ⅹ その他
報告書中の表の内訳金額については、端数処理の関係で合計金額と一致しない場合がある。また、文中に数値を引用した場合にも端数処理の関係で金額が一致しない場合がある。
第 2 監査の結果
監査の結果の要約
項目別指摘数、意見数一覧
項 ⽬ | 指 摘 | 意 ⾒ | 合計 (再掲を含む) |
Ⅰ 県⼟整備部に関すること | 4 | 10 | 14 |
1 道路の整備について | 1 | 4 | 5 |
2 東京湾アクアラインの負担⾦⽀出について | 1 | 1 | 2 |
3 ⼟⽊事務所の⽼朽化に伴う耐震対策等について | 1 | 0 | 1 |
4 流域下⽔道事業の公営企業会計への移⾏について | 0 | 2 | 2 |
5 xx県⼟地開発公社との取引条件について | 0 | 1 | 1 |
6 xx県⼟地開発公社が⻑期保有する⼟地について | 0 | 2 | 2 |
7 公益財団法⼈xx県建設技術センターへの職員の派遣について | 1 | 0 | 1 |
Ⅱ 葛南⼟⽊事務所 | 5 | 4 | 9 |
2 ⽼朽化に伴う耐震対策等について | 1 | 0 | 1 |
3 随意契約について | 1 | 0 | 1 |
4 物品管理について | 1 | 3 | 4 |
5 現⾦・預⾦管理について | 2 | 0 | 2 |
6 ⼟⽊事務所に事務局を置く団体の管理について | 0 | 1 | 1 |
Ⅲ 安房⼟⽊事務所 | 4 | 10 | 14 |
2 ⽼朽化に伴う耐震対策等について | 1 | 0 | 1 |
3 契約について | 1 | 2 | 3 |
4 橋梁の管理について | 0 | 2 | 2 |
5 トンネルの管理について | 1 | 1 | 2 |
6 道路の維持管理について | 0 | 2 | 2 |
7 物品管理について | 0 | 1 | 1 |
8 債権管理について | 1 | 2 | 3 |
Ⅳ 江⼾xx⽔道事務所 | 0 | 6 | 6 |
2 流域下⽔道事業における負担⾦収⼊について | 0 | 1 | 1 |
3 業務委託契約について | 0 | 1 | 1 |
4 江⼾川第⼀終末処理場の建設に係る契約について | 0 | 1 | 1 |
5 固定資産の管理について | 0 | 2 | 2 |
6 情報セキュリティについて | 0 | 1 | 1 |
項 ⽬ | 指 摘 | 意 ⾒ | 合計 (再掲を含む) |
Ⅴ xx県⼟地開発公社 | 6 | 13 | 19 |
2 組織運営について | 3 | 2 | 5 |
3 保有する⼟地について | 1 | 4 | 5 |
4 あっせん等事業について | 0 | 1 | 1 |
5 情報セキュリティについて | 1 | 2 | 3 |
6 勤怠管理について | 1 | 1 | 2 |
7 消耗品管理について | 0 | 2 | 2 |
8 現⾦・預⾦管理について | 0 | 1 | 1 |
Ⅵ 公益財団法⼈xx県下⽔道公社 | 3 | 7 | 10 |
2 組織運営について | 0 | 2 | 2 |
3 下⽔道公社の実施する建設事業について | 0 | 1 | 1 |
4 勤怠管理について | 0 | 1 | 1 |
5 情報セキュリティについて | 1 | 2 | 3 |
6 物品管理について | 2 | 0 | 2 |
7 固定資産の管理について | 0 | 1 | 1 |
Ⅶ 公益財団法⼈xx県建設技術センター | 5 | 7 | 12 |
2 組織運営について | 2 | 1 | 3 |
3 事業内容について | 1 | 0 | 1 |
4 情報セキュリティについて | 1 | 2 | 3 |
5 賞与引当⾦に係る社会保険料未払分について | 1 | 0 | 1 |
6 税効果会計について | 0 | 1 | 1 |
7 公益法⼈における財務3基準について | 0 | 2 | 2 |
8 物品管理について | 0 | 1 | 1 |
Ⅷ 過年度指摘事項に関する監査の結果について | 0 | 1 | 1 |
1 過年度における包括外部監査の結果等について | 0 | 1 | 1 |
全体合計(再掲を除く) | 25 | 55 | 80 |
注)指摘、意見については、県土整備部に関することと各土木事務所、下水道事務所、各法人で同一の項目について記載しているものがあるため、全体合計数では重複分を控除している。なお再掲分については、指摘・意見の内容は同一であるが、本庁、出先機関等のそれぞれに対して措置等を求めるものである。
Ⅰ 県土整備部に関すること
1 道路の整備について
(1) 道路の整備について
道路事業として、県民生活の利便性向上を図り、道路交通の安全・安心を確保するとともに、県内経済の活性化と観光振興につなげるため、北xx道路、銚子連絡道路、xxグリーンライン等の整備を進めている。
街路事業として、都市中心部における道路交通の慢性的な渋滞等に対処するため、都市計画道路xx茜浜線(習志野市)等の整備及び連続立体交差事業を新京成線及び東武xx線において進めている。
県が管理している国・県道を良好な状態に維持し、交通安全の確保と沿道住民の生活環境を守るため、道路の舗装修繕を実施している。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
優先順位をつけて事業を実施しているか | ・事業の進捗の状況をヒアリングする。 |
用地交渉は継続的に行われているか | ・用地交渉の状況をヒアリングする。 |
(3) 実施結果
① 用地買収について
xx県における令和 2 年度の道路の開通延長・面積は、約 4.5 キロメートル・約 8 万
平方メートルである。直近 5 年間の道路の開通面積は約 22 万平方メートルである。
道路整備には、数年以上の期間がかかるため、(図表 1)主な着手中の路線のとおり、複数の路線について同時に用地買収を進めている。用地の取得が難航すると、道路整備に 30 年を要している例もある。なお、主な着手中の路線のうち、葛南土木事務所以外の未買収地の地図は提供されなかった。
(図表 1)主な着手中の路線(令和 3 年 6 月時点)
たとえば、葛南土木事務所管轄の鬼高xx線について、平成 11 年度より事業に着手
し、取得した用地の面積 8,491 平方メートル、累計金額 27 億円と大部分の用地買収が終わっており、残り数か所(約 2%)を残すのみとなっている。そのうち、最大の用地は面積 98 平方メートルであり、権利者が複数にわたっており大部分との契約を終えているが、残
りの権利者が未契約である。残りの権利者の中には最終交渉日が令和 2 年 6 月 19 日で、1 年以上交渉が途絶えている事例がある。その間に担当者も交代しており、現状、交渉関係が引き継がれていない。また、令和 2 年度の一部の用地交渉日誌には「公文書としてみない」との記述があり、今後の交渉の方向性が明確にされていない。
(図表 2)鬼高xx線の計画平面図
また、所有者が特定できていない共有地があり、過去に無償借地していたが、複数の相続登記が行われておらず、所有者を特定できていないため、県として所有権を取得する方法を検討していた。
その後、令和元年より、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に基づき、反対する所有者がおらず、建築物が無く現に利用されていない所有者不明の土地の場合、道路等の公共事業の手続の合理化・円滑化のため、収用委員会に代わり都道府県知事が裁定することが可能となっている。
各土木事務所には、上記のように、土地買収が終了するまでにあと一歩という事例が存在する。
県土整備部は、各土木事務所の困難案件を含めた用地買収について、各土木事務所から提出される執行工程表で進捗管理しているとのことである。なお、具体的な執行工程表の提出は無かった。県土整備部は、路線ごとの用地の取得状況は毎年度把握しているものの、目標管理はなく、年度毎の長期未取得用地に関する分析検討資料が無い。
指 摘(用地買収の日誌について)
葛南土木事務所における用地交渉において、1 年以上交渉が途絶えており、その間に担当者も交代しており、現状、交渉関係が引き継がれていない事例がある。また、令和 2 年度の一部の用地交渉日誌には「公文書としてみない」との記述がある。
交渉日誌は公文書とし、困難な状況等の引継ぎを前提として作成されたい。
意 見(鬼高xx線の早期買収について)
鬼高xx線について、面積 8,491 平方メートル、累計金額 27 億円の用地買収を終えており、あと数か所を残すのみとなっている。早期に開通しないことにより、27 億円の土地が利用されていない状況となっている。
この例のように、残りの未買収地の少ない路線については、所有者の理解を得て、早期に用地買収を行い、早期の開通をされたい。
意 見(所有者が特定できていない共有地について)
鬼高xx線の共有地について、相続登記が行われておらず、所有者を特定できていない。
令和元年より、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に基づき、反対する所有者がおらず、建築物が無く現に利用されていない所有者不明の土地の場合、道路等の公共事業の手続の合理化・円滑化のため、収用委員会に代わり都道府県知事が裁定することが可能となっており、同法に基づく裁定等の活用可能性について、xx、検討されたい。
意 見(土木事務所の進捗管理について)
用地買収について、県土整備部は各土木事務所の進捗状況を執行工程xxで把握しているとのことであるが、上記のように、数か所を残して長期間進展していないケースが散見される。
毎年度、県土整備部において、土木事務所における困難案件の用地交渉及び道路の整備状況について進捗の目標管理を行い、道路整備を計画的に実施されたい。
② 用地担当者の経験について
(図表 3)用地担当者の経験年数のとおり、xx土木事務所の用地担当者 9 名、安房土木事務所の用地担当者 7 名であり、用地担当者について、経験者が少なく、主事が多い構成となっている。
(図表 3)用地担当者の経験年数
年数 | 葛南土木事務所 | 安房土木事務所 |
1 年 | 5 人 | 1 人 |
2 年 | 1 人 | 3 人 |
3 年 | 1 人 | |
4 年 | 1 人 | 1 人 |
5 年 | ||
6 年 | 1 人 | |
7 年 | 1 人 | |
8 年 | ||
9 年 | 1 人 | |
10 年 | ||
合計 | 9 人 | 7 人 |
平均年数 | 2.7 年 | 3.3 年 |
たとえば、安房土木事務所における整備中の路線において、どの路線にも困難案件があり、交渉が途切れているものがある。
(図表 4)安房土木事務所における困難案件の例
路線 | 主な困難案件 |
一般国道 410 号 | 電話に出ないため、電話番号を教えてもらえない。 相続人の中に、海外在住者がいる。 |
xxxxxx線 | 相続人が多数で司法書士が取りまとめ中 |
xxxx線 | 商業施設の物件移転の補償算定中 |
鴨川xx線 | 相続人多数、境界確定必要など困難案件多数 |
鴨川xx線 | 県外居住者で契約了解後に連絡が途絶える |
用地の業務は、用地測量、建物調査、土地評価、税制など、多くの知識を必要とする業務であり、その中でも「用地交渉」は相当なスキルを必要とするものである。用地交渉の相手方となる地権者は世代、性別、地域性など様々であり、相手方が抱える問題も、補償金、移転先、相続など多種多様である。このような問題に対処するためには、専門的な知識を必要とすることはもちろんのこと、公共事業に対して協力を得るためには用地交渉の中で培う経験が必要となる。
県内の整備中の各路線には、相続人多数、相続人に海外在住者がいる、境界確定が必要、県外居住者と連絡が途絶えるなど、困難な案件が複数残っており、交渉に長期間を要している案件が少なくない。これらの困難案件に対応するためには、経験が必要で
あり、かつ、長期間にわたって、権利者との関係を継続させることが必要である。
しかし、県では、用地担当者も用地経験の有無にかかわらず人事異動があり、その結果、用地交渉の未経験者が土木事務所で 2~3 年用地業務を担当し、その後に別の業務に異動すると、用地の経験は蓄積されない。また、定年退職等により、用地交渉の経験者が少なくなっている。
現実的な対応として、困難案件は、用地経験者で構成されているxx県土地開発公社(以下、「土地開発公社」という。)に引き継ぐこともある。
意 見(用地担当者の経験について)
土木事務所の用地担当者について、経験者が少なく、主事が多い構成となっている。用地交渉は経験とスキルを必要とする業務であり、用地交渉の経験者が別の業務に異
動した後も、時期を見て再度用地業務を担当させるなど、経験が蓄積されるような取組を、県として検討されたい。これからの公務員は、専門的かつ広範囲な知識・経験が必要と考える。たとえば、土地開発公社の担当者に同行して経験を積むなど工夫されたい。
2 東京湾アクアラインの負担金支出について
(1) アクアライン割引について
東京湾アクアラインは、本県の課題である半島性を解消するものとして期待されていたが、開通当初は、通行料金の割高感などから交通量が低迷し、期待された機能を十分に発揮しているとは言えなかった。このため、県では国の支援も得て、平成 21 年 8 月から平成 26
年 3 月まで、東京湾アクアラインの通行料金を普通車 800 円とするなど、全車種(ETC車)
を対象とした大幅な料金引下げの社会実験を実施した。平成 26 年 4 月からは「アクアライ
ン割引」として、ETC普通車 800 円などの通行料金引下げを継続している。平成 30 年度
時点で、東京湾アクアラインの交通量は、平成 20 年度に比べて約 2.3 倍に増加している。
平成 26 年 4 月から実施されている「アクアライン割引」により、首都圏における交流・連携の
強化、物流の活性化、観光振興などが図られ、その経済波及効果(平成 26 年 4 月から平
成 28 年 9 月までの 2 年 6 か月間)は、首都圏全体で約 1,155 億円と推計され、首都圏の経済の活性化に大きく寄与している。県としては、今後、より一層の観光振興、企業立地の促進など、アクアラインを活用した地域づくりに取り組んでいくとしている。
(図表 5)東京湾アクアラインの通行料金
軽自動車 | 普通車 | 中型車 | 大型車 | 特大車 | |
割引料金(ETC 車) | 640 円 | 800 円 | 960 円 | 1,320 円 | 2,200 円 |
通行料金(ETC 車) | 1,600 円 | 1,960 円 | 2,320 円 | 3,130 円 | 5,100 円 |
通行料金(現金) | 2,510 円 | 3,140 円 | 3,770 円 | 5,190 円 | 8,640 円 |
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
アクアライン割引の事業化時点での試算とその後の変動の有無について | ・社会実験終了後、事業化される際の交通量の試算について、ヒアリングするとともに、試算に関する資料を閲覧する。 ・事業化時に検討された交通量の試算条件について、現在でも大幅な変動が無い か確認する。 |
措置費の計算における検討について | ・予算策定時における措置費の算出方法についてヒアリングする。 ・東日本高速道路株式会社( 以下、 NEXCO という)に支払う措置費について、請求書に記載されている交通量等と、元となる資料を照合し、検討する。 |
(3) 実施結果
① 社会実験から事業化への転換時における検討について
アクアライン割引については、平成 26 年度に社会実験から事業に切り替えが行われ
ている。平成 21 年 8 月から実施されている社会実験の際には、料金設定(普通車 800円)、社会実験を行う際の費用の算定等について、検討が行われており、その結果、平成 21 年度の予算として 10 億円が計上されている。検討項目は、下記のとおりである。
1) 通行料金普通車 800 円の算出
アクアラインルートが湾岸(京葉道路、東関東道)ルートと同程度の通行料金となるように設定
2) 社会実験費用の算出
ⅰ)平成 21 年度想定交通量の設定
ⅱ)「生活対策(平成 21 年 3 月~)」による想定料金収入
ⅲ)「社会実験」による想定料金収入
ⅳ)減収額の計算
生活対策後の料金収入-社会実験後の料金収入=約 26 億円
このうち 8 か月分である約 17 億円を減収額とした
ⅴ)社会実験費用
ⅳ)の減収額+諸費用=約 20 億円
国土交通省と折半であるため、10 億円を予算として計上
平成 26 年度からアクアライン割引について事業化している。これは平成 25 年 12 月
20 日に国土交通省が公表した「新たな高速道路料金に関する基本方針」の中で、アクアラインについて「当分の間、xx県による費用負担を前提に、ET C 車を対象に現行の終日 800 円を継続」することとしており、当該基本方針に基づき事業化したものである。事
業は平成 26 年 4 月に開始されたが、事業化の際、国土交通省からは県負担額として年
間約 5 億円となることが口頭で説明されたとのことである。県の負担額約 5 億円について
は、平成 26 年度予算を計上するにあたり、社会実験等の実績値等に基づき、県独自で検討している。
検討結果より、県負担額は約 5 億円であり、国土交通省より説明された金額と合致す
る。よって、県としては約 5 億円が妥当であると判断し、予算計上している。
当該検討は、事業化された平成 26 年度における予算編成時のみであり、その後も各
年度 5 億円の予算を計上しているが、改めて予算の妥当性については検討していない。
② 経済波及効果の公表について
アクアラインの経済波及効果については、平成 21 年 8 月から実施された社会実験に
関し、平成 21 年 8 月~平成 22 年度の 1 年 8 か月の効果について、xx県ホームページにて結果が公表されている。発表によると、料金引下げによる首都圏全体の経済波及効果は約 358 億円、xx県における経済波及効果は約 249 億円とされている。なお、
平成 23 年度~平成 25 年度調査結果によると、平成 25 年度の交通量は実験前(平成
20 年度)と比較して約 1.9 倍に増加している。
また、事業化後については、平成 26 年 4 月~平成 28 年 9 月の 2 年 6 か月間の効
果について、平成 29 年 1 月 26 日付でxx県ホームページにおいて公表されている。
発表によると、料金引下げ継続による首都圏全体の経済波及効果は約 1,155 億円、x
x県における経済波及効果は約 869 億円とされている。しかし、事業化された後の経済
波及効果については、事業化された直後の平成 26 年 4 月~平成 28 年 9 月の 2 年 6か月についてのみ測定されており、それ以後の測定は行われていない。測定が行われない理由としては、経済波及効果の発生が明らかであり、平成 28 年度時点における経済波及効果と同様の効果が発揮し続けられていると考えられるからとの説明を受けた。
意 見(事業化後における適時の再検証について)
平成26 年度に社会実験から事業に切り替えが行われているが、アクアライン割引の経
済波及効果については、平成 28 年 10 月以降測定が行われていない。担当者の説明によると、経済波及効果の測定については、アクアラインに大きな影響を及ぼすような新たな道路整備や社会情勢の大きな変化があったときに実施するとのことであった。
現時点でアクアラインに大きな影響を及ぼすような新たな道路整備や社会情勢の大きな変化は確認できないが、周辺地域の道路整備及び利用状況の変化によるアクアライン
への影響も鑑みて、必要な都度、適時適切な経済波及効果等の測定を実施し、再検証することが望まれる。
③ 措置費の計算に関する検討
平成 26 年度より事業化するにあたり「東京湾アクアライン料金引下げ措置に関する基
本協定」(平成 26 年 3 月 31 日、平成 31 年 4 月 1 日付変更)をNEXCO と締結し、第 4条(措置費の支払)をもとに年度ごとに契約書を締結することにより、措置費を定めている。令和 2 年度においても、『「東京湾アクアライン料金引下げ措置に関する基本協定」第 4
条に基づく令和2 年度契約書』を締結し、別紙に定める「措置に要する費用の算出」に基づき措置費を算出している。
また、令和 2 年度の措置費は、NEXCO から送付されている「『「東京湾アクアライン料金引下げ措置に関する基本協定」第 4 条に基づく令和 2 年度契約書』第 2 条に基づく措置費の額について(報告)」に従った金額により支払われている。NE XCO から送付されている措置費の計算は、下記のとおりである。
〇アクアライン料金引下げに伴う措置費
■算定対象期間 令和 2 年 4 月 1 日から令和 3 年 3 月 31 日まで(365 日間)
■措置費の算定方法
措置費=(割引がなかった場合の料金収入-割引期間の料金収入)/(1+消費税率)/2
※収入は、xx・多頻度割引、マイレージ割引を考慮したもの
※算出した措置費は千円単位の端数は切り捨て
■措置費:甲(千葉県)への請求額
割引がなかった場合の料金収入 : 13,978,602 千円割引期間の料金収入 : 12,902,620 千円
消費税率 : 0.10
措置費 : 489,080 千円
これに対し、検査調書が発行されている。検査調書は、「東京湾アクアライン料金引下げ措置に関する基本協定」第4 条に基づく令和2 年度契約により、料金引下げ措置が通年に渡り適用されているかを確認し、発行している。ただし、契約金額については、「摘要欄による」とされており、摘要欄に「契約金額は、後日送付の契約書第 3 条の規定による
報告により確認」と記載されている。これは、措置費の金額が令和 3 年 3 月 31 日までに確定できず、後日 NEXCO から送付されてくる請求書により確定するためである。
NEXCO からの請求書は(報告)と同日である 2021 年 4 月 19 日付で発行されており、
請求額は 489,080 千円となっている。当該請求額については検証していないとのことであった。
監査人からの要請により、令和2 年度については NEXCO の交通量データ等により検証を行った。その結果、NEXCO の請求額(千葉県における措置費)489,080 千円の金額の妥当性が確認できた。
指 摘(措置費支払い時の継続的な検証について)
過年度における措置費の支払いについては、NEXCO から送付される請求書に記載されている請求額について検証することなく実行されていた。措置費は負担金という性質上、金額の検証が必要であるが、平成 26 年度に事業化されてから今回の包括外部監査が実施されるまで、1 度も検証されていない。今回対象となった令和 2 年度においては、 NEXCO からの報告及び請求書の金額について、NE XCO の交通量データ等により、措置費の金額につき合理性を確認することができた。
措置費について、令和 3 年度以降においても、請求額が適正であるかについて、 NEXCO の交通量データ等をもとに検証し、金額の妥当性を確認したうえで支払う必要がある。
3 土木事務所の老朽化に伴う耐震対策等について
(1) 土木事務所の老朽化に伴う耐震対策等について
葛南土木事務所及び安房土木事務所の建物の状況は以下のとおりである。
(図表 6)葛南土木事務所及び安房土木事務所の建物の状況
施設名称 | 建築年月日 | 築年数 | 構造 |
葛南土木事務所 | 1966/7/27 | 55 年 | RC |
安房合同庁舎 | 1972/3/25 | 49 年 | RC |
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
災害時の事務所建物・設備の耐震性等について | ・事務所建物の震災対応について土木事務所でヒアリングする。 ・事務所地域・敷地の震災時等の水害対応 について土木事務所でヒアリングする。 |
(3) 実施結果
① 土木事務所建物・設備について
1) 葛南土木事務所の地震対応
葛南土木事務所については、30 年前実施の耐震診断で倒壊可能性を示す I s 値
(構造耐震指標)が 0.54(0.6 未満だと倒壊可能性あり)であった。この数値(I s値)は、以
下のような目安となっている。
0.6 以上 倒壊又は崩壊する危険性が低い
0.3 以上 0.6 未満 倒壊又は崩壊する危険性がある
0.3 未満 倒壊又は崩壊する危険性が高い
また、土木事務所建物は、昭和 41 年の建築であり 55 年経過しているとともに昭和
56 年建築基準法改正前の建築である(現行の鉄筋コンクリート建築物の耐震基準を満たしていない)。
県有施設については「千葉県公共施設等総合管理計画」及び「千葉県県有建物長寿命化計画」(総務部資産経営課が作成)により対応している。
県としては、耐震診断はすでに行い、その結果で、移転・建替(集約)の検討を進めているところであり、改めて行う必要はないという認識のようである。葛南土木事務所は、
「千葉県県有建物長寿命化計画」において令和 9 年度までに整備に着手する建物に位置付けられているので、新たな耐震診断やそれに基づく応急的な耐震化工事の予定はないとのことである。
2) 安房土木事務所の地震対応
安房土木事務所入居の建物の所管は総務部安房地域振興事務所であり、家賃、維持・管理費、光熱水費の安房土木事務所の負担はない。
建築年度は昭和 47 年 3 月であり、直近の耐震診断は平成 2 年度に実施し、倒壊
可能性を示す構造耐震指標(Is 値)は 0.33 であった。
現状では、耐震工事は実施しておらず、割れ目埋め、屋上の防水、塗り替え工事程度である。
安房土木事務所が入る現在の建物は、建替計画があり(安房合同庁舎の再整備計
画:安房地域振興事務所、館山県税事務所、安房農業事務所、安房土木事務所他 6
機関が入居予定)、令和 8 年に完成予定である。
3) 葛南土木事務所の津波・高潮対応
葛南土木事務所所在地周辺の堤防等(港湾事務所の管理)については、平成 27 年版の千葉県の海岸保全基本計画によれば葛南土木事務所近辺の高潮の高さ予想は、 A.P.5.7m、また、津波の高さ予想は、T.P.3.1m となっている。
これに対し、葛南土木事務所近辺の防潮堤は、A.P.5.6m(港湾事務所所管)の高さで整備されているとのことである。
この状況について、葛南土木事務所の見解では、高潮の高さ予想においては数値上は 0.1m防潮堤の高さを超えるため、若干の懸念を持っているとのことである。
指 摘(土木事務所建物の災害対策について)
震災はいつ発生するかわからない。葛南土木事務所については、整備完了までの間に発生しないとは言い切れない。耐震診断を早急に実施すべきであり、必要な耐震化工事が認識されれば、応急的にでも耐震化工事を実施する必要性がある。
また、安房土木事務所の建物に関しては、30 年前実施の耐震診断で倒壊可能性を示す構造耐震指標が 0.33 であった。現在ではさらに劣化していることを推定すれば、倒壊可能性はかなり危険な水準にあると推察する。
事務所職員の安全面だけでなく、土木事務所は、千葉県業務継続計画の優先業務一覧(図表 7 参照)にもあるように、地域の災害発生時には中心となって対応すべき前線基地である。地震等で事務所が使えなくなった場合、県として県民を守れるのかの観点からも、早急な対応が必要である。
なお、葛南土木事務所の津波・高潮対策は、平成 27 年度(6 年前)のデータでなく、最新の知見に基づく予想等を加味した再検討が必要と考える。
(図表 7)千葉県業務継続計画の優先業務一覧(抜粋)
〇県土整備部
所属 | 業務種別 | 業務名 |
土木事務所 (15 事務所) | 応急復旧 | 1 現地震災対策班の設置 |
2 来所者の安全確保 | ||
3 情報収集 | ||
4 パトロールの実施 | ||
5 応急仮工事、応急本工事実施の指示 | ||
6 災害対策本部支部総務班との連絡調整に関 すること | ||
優先通常 | 1 庶務調整業務 | |
2 道路・河川・港湾・海岸・急傾斜地・公園施設 等に関する維持管理業務 | ||
3 法に基づく許認可業務・指導監督業務 |
4 流域下水道事業の公営企業会計への移行について
(1)千葉県における公営企業会計への移行に関する取組について
県においては、総務省からの要請を受け、流域下水道事業につき令和 2 年 4 月 1 日から公営企業会計へと移行している。公営企業会計への移行に際しては、総務省が策定・公表している「地方公営企業法の適用に関するマニュアル」を参考にしている。マニュアルでは、公営企業会計の適用に関する具体的な業務の処理手順・留意点や、固定資
産台帳の整備に関する考え方・標準的な水準等について取りまとめられている。
公営企業会計(財務規定等)を適用する目的は、公営企業の経営や資産の状況等を的確に把握し、経営基盤の強化に適切に取り組むための基礎情報とすることにある。固定資産の現在の価値、帳簿原価、取得年度、耐用年数、減価償却額等が適切に把握されていなくては、財務諸表を作成することができず、経営状況も資産の状況も把握することができない。このため、これらの固定資産情報を適切な形で取りまとめた帳簿である固定資産台帳を整備することが必要となる。
マニュアルによる固定資産台帳の整備に関する手順は、次のとおりとなる。
1)台帳整備の準備
ⅰ)資料の収集等
移行事務の準備で把握した既存資料を収集する。また、同様に移行事務の準備で検討した固定資産台帳への資産登録単位については、この段階で確定させる。
ⅱ)スケジュールの作成
移行事務の準備で把握した資料の状況、登録単位の設定方針や法適用する年度の予算編成時期等を踏まえ、固定資産台帳の整備スケジュールを作成する。
ⅲ)体制の検討等
職員の増員、公営企業の実務経験のある職員の配置など、人事部局との協議を踏まえ、体制の充実を検討するほか、台帳整備を委託により行う場合は、職員で対応する作業と委託する作業とを仕分けるなど、委託範囲を適切に設定する必要がある。
ⅳ)その他
全体的な作業ボリュームの推計等のため、仮調査として時期の異なる複数年度を抽出し、固定資産台帳の一部を作成してみることも有用である。仮調査の結果、業務委託の必要性、範囲を再検討することも十分に考えられる。
2)資産情報の整理
固定資産台帳に記載する有形固定資産及び無形固定資産のうち、工事により取得した資産以外の各種資産については、決算書、契約書、既存の台帳等から帳簿原価(取得価額)を把握する。工事により取得した資産については、決算情報の整理、工事関連情報の整理、間接費の配分、耐用年数が異なる資産の仕分けといった作業が必要となるため、手順に従って、帳簿原価(取得価額)等を把握する。
3)工事により取得した資産の帳簿原価(取得価額)等の把握についての流れ
ⅰ)年度別決算情報の作成
ⅱ)建設改良関係の決算情報の抽出
ⅲ)税抜処理及び財源の圧縮処理
ⅳ)工事関連情報及び工事別資産明細の作成
ⅴ)間接費の各工事等への配分
ⅵ)受益者負担金等の各工事等への配分
ⅶ)各工事等への情報集約
ⅷ)法適用時における資産の価額等の把握
上記手順に沿って固定資産台帳が作成されるが、固定資産台帳のもとになる情報は公有財産台帳である。公有財産台帳に記載されている資産及び工事について、過去にさかのぼって契約書、見積書、請求書等の証憑を調査し、工事については按分等を行い、固定資産台帳に記載する数字を算定し、作成している。そのため、公有財産台帳と固定資産台帳に記載されている金額の間のつながりを検証することは困難となっている。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
公営企業会計への移行について、適切に行われているか | ・打切決算、事務引継、総務大臣への報告等は適切に行われているか確認する。 ・開始貸借対照表の固定資産について固 定資産台帳との整合性を確認する。 |
下水道事業に係る固定資産台帳の作成について、適切に行われているか | ・固定資産台帳作成の過程についてヒアリングし、マニュアルに沿って作成されているかを確認する。 ・委託業者との契約書等を閲覧することにより、作成過程に漏れがないかを確認する。 ・公有財産台帳と固定資産台帳を閲覧し、比較することで、公有財産台帳と固定資産 台帳の間に齟齬のないことを確認する。 |
(3)実施結果
① 公営企業会計への移行について
打切決算については、出納閉鎖(3 月末)から 3 か月以内に証書類と合わせて知事へ提出されていること、書面に基づいて事務引継が行われていること、法適用を行った旨の総務大臣への報告が行われていることを確認した。
また、特例的収入及び支出の予算計上額と実績額の内訳を確認したところ、特例的収入は公益財団法人千葉県下水道公社(以下「下水道公社」という。)への委託料の精算による戻入等であり、特例的支出は工事費・委託料の未払金であった。特例的収入及び支出の実績額は、開始貸借対照表の未収金及び未払金と整合していた。
開始貸借対照表の主要な残高である固定資産と長期前受金については、固定資産台帳の帳簿価額及び財源情報と整合していた。
② 固定資産台帳の作成について
千葉県における流域下水道事業は、令和 2 年度から公営企業会計に移行しているため、固定資産台帳についても公営企業会計に即したものを作成している。
固定資産台帳の作成に当たっては、業者に委託している。作成の手順は、決算書を整理し、財源の確定をするとともに、建設財源及び間接費を配分したうえで、資産別取得価額を算定し、開始貸借対照表に記載するとともに、固定資産台帳に登録する。当該作業は、公有財産台帳に記載されている有形固定資産、無形固定資産について実施され、当時の契約書、見積書、請求書等と照合し、金額の正確性について確認している。工事については、過去の履歴についても調査し、可能な限り工事費と共通費等に分解し、按分計算することで、取得価額を計算している。よって、固定資産台帳を作成するにあたっては、マニュアルに沿った手順で作成しているといえる。
固定資産台帳の作成に際し、事前の調査として公有財産台帳に記載されている公有財産について、実在性を確認したうえで固定資産台帳に移行しているかについては、業者が実在性を確認したうえで移行しているとのことであったが、その記録は資産調査業務の報告書において作業過程が示されているのみであった。また、作成の過程において按分計算が入ることから、公有財産台帳に記載されている全ての資産が、固定資産台帳に転記されているかについて確認することは、困難である。
意 見(公有財産台帳における実在性確認について)
固定資産台帳作成の際、公有財産台帳に記載してある固定資産の実在性については、資産調査業務受託において受託業者が確認しているとのことであるが、回答は作業過程を示した報告書のみであり、実在性を確認した資料等については保管されていないため、閲覧することができなかった。実在性の確認については、業者任せにするだけでなく、下水道課においても帯同し、実在性を確認した結果についての資料を保管しておくべきである。
意 見(公有財産台帳から固定資産台帳への転記の網羅性確認について)
公有財産台帳から固定資産台帳への転記については、作成の過程で工事費及び間接費の按分計算が入ることから、公有財産台帳に記載されていたすべての資産が固
定資産台帳に転記されているかについて、確認することが困難である。下水道課からは、すべての資産が固定資産台帳に転記されているとの回答があったが、受託業者が実施し、提出した資産調査の結果について、下水道課で網羅性を確認した資料等については残されていない。実際に確認作業を行っているのであれば、当該作業についての記録を残しておくべきである。
5 千葉県土地開発公社との取引条件について
(1) 千葉県土地開発公社に委託しているあっせん等事業について
あっせん等事業は、国、県、市町村等からの委託により道路用地等の用地交渉業務等を行う事業である。令和 2 年度においては、県から国分下貝塚線用地取得事業ほか 18事業を受託し、取得業務を実施している。この事業では、44,113 千円を収益とし、 109,467 千円を原価として計上しており、赤字事業となっている。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
あっせん等事業の損益は妥当か | ・あっせん等事業の損益の資料を閲覧す る。 |
(3) 実施結果
土地開発公社に委託しているあっせん等事業は、国、県、市町村等からの委託により道路用地等の用地交渉業務等を行う事業である。令和 2 年度においては、県から国分
下貝塚線用地取得事業ほか 18 事業を受託し、取得業務を実施している。この事業では、
令和 2 年度において 44,113 千円を収益とし、109,467 千円を原価として計上しており、毎年度、数千万円の赤字事業となっている。
(図表 8)土地開発公社のあっせん等事業の収益・原価
(単位:千円)
平成 28 年度 | 平成 29 年度 | 平成 30 年度 | 令和 元年度 | 令和 2 年度 | |
収益 | 52,280 | 52,237 | 53,521 | 47,287 | 44,113 |
原価 | 75,805 | 64,516 | 78,177 | 98,180 | 109,466 |
損益 | △23,525 | △12,279 | △24,655 | △50,892 | △65,353 |
あっせん等事業は、用地交渉が成功した用地補償費の総額に応じて委託料が決められており、補償契約が成立しないと、土地開発公社の収益とならない。土地開発公社に
おいては、令和 2 年度は用地担当者 8 名が 2 名 1 班となり、地権者 149 名に対して、
348 回の交渉を行っている。職員 8 名の人件費は固定費であるが、補償契約が成立しないと収益とはならず、契約成立件数が予算に達しないため、人件費より収益が少なくなっている。
たとえば、令和 2 年度においては、美浜長作町線外 2 線について 4,840 千円の収益
の予定が、地権者 26 件中、契約が 0 件のため、実際の収益は 0 円であった。当該路線
の地権者 26 件に対して、年間 79 回にわたり交渉しているものの、収益がない。
県土整備部は、土地開発公社に対しては比較的困難な案件を委託しているにもかかわらず、契約に至らないと委託料が支払われない。そのため、交渉が複数年にわたる場合には交渉中の年度においては収益が得られないという、土地開発公社にとって不利な契約となっている。
あっせん等事業は毎年赤字であり、予算においても、あっせん等事業が赤字の場合における補填が検討されておらず、土地開発公社において全体の収支を考えなければならない状況となっている。
たとえば、特定の路線を開通させるために重要な土地が困難案件となっており、その周辺の地権者との契約がすべて成立しないケースなどがある。このようなケースでは、周辺の地権者と交渉しても、当該土地が契約した場合には契約するという回答しか得られず、交渉回数を増やしても契約が成立しないため、収益につながらないことがある。
困難案件について、契約が成立しなくても収益となるように、たとえば、事業反対者等の困難案件については、他県で導入している例もある「積上げ方式」を導入することも一案と考える。
意 見(あっせん等事業について)
あっせん等事業は、用地交渉が成功した用地補償費の総額に応じて委託料が決められており、補償契約が成立しないと、土地開発公社の収益とならない。
事業反対者等の困難案件については、他県で導入している例もある「積上げ方式」を導入することも一案と考える。
6 千葉県土地開発公社が長期保有する土地について
(1)千葉県土地開発公社が長期保有する土地の概要
土地開発公社は、公有地取得事業、土地造成事業により土地の取得を行う。公有地取得事業は、国、県、市町村等が施工する公共・公益事業を円滑に執行するために必要な事業用地等の先行取得を行う事業である。公有地取得事業を実施する際には、土地の取得を土地開発公社名義で行う場合(公有用地取得)と県名義で行う場合(代行用地取得)場合がある。土地造成事業は、県の施策に沿い、工業団地や住宅等の用地取得・造成・分譲等
を行う事業である。
土地開発公社の事業に関連して取得した土地については、公有用地、代行用地、完成土地等、代替地の勘定科目で貸借対照表の流動資産に計上している。
それぞれの勘定科目に計上される土地は以下のとおりである。
公有用地とは、公有地取得事業により土地開発公社が所有権を取得した土地のうち、特定土地及び代替地以外の土地をいう。
特定土地とは、公有地の拡大の推進に関する法律第 17 条第 1 項第 1 号の規定により
土地開発公社が取得した土地のうち、地方公共団体等により再取得される見込みがなくなった土地をいう。
代行用地とは、公有地取得事業により土地開発公社が地方公共団体等に所有権を取得させた土地のうち、上記公有用地であった土地以外の土地をいう。
完成土地等とは、土地造成事業に係る土地のうち、次のものをいう。
・販売可能な状態にある土地
・当該土地にかかる開発計画が以下のような状態にある土地
・開発工事の着工予定時から概ね 5 年を経過しても開発用の土地等の買収が完了していない状態
・開発用の土地等の買収が完了した後概ね5 年を経過しても開発工事に着手していない状態
・開発工事の着手後中断しその後概ね 2 年を経過している状態
代替地とは、公有地の拡大の推進に関する法律(昭和 47 年法律第 66 号)第 17 条第 1項に掲げる事業により取得される土地の所有者等に対して、その土地に代わる土地として譲渡するために土地開発公社が取得した土地をいう。
公有地の拡大の推進に関する法律
(業務の範囲)
第十七条 土地開発公社は、第十条第一項の目的を達成するため、次に掲げる業務の全部又は一部を行うものとする。
一 次に掲げる土地の取得、造成その他の管理及び処分を行うこと。イ 第四条第一項又は第五条第一項に規定する土地
ロ 道路、公園、緑地その他の公共施設又は公用施設の用に供する土地ハ 公営企業の用に供する土地
ニ 都市計画法第四条第七項に規定する市街地開発事業その他政令で定める事業の用に供する土地
ホ イからニまでに掲げるもののほか、地域の秩序ある整備を図るために必要な土地と
して政令で定める土地
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
長期保有する土地に対する県の対応は適切に行われているか | ・保有する土地の保有期間、管理状況について担当者にヒアリングを行い、関連資 料を閲覧する。 |
(3) 実施結果
① 長期保有する土地の状況について
令和 2 年度末において保有する土地の勘定科目別の内訳は、以下のとおりである。
(図表 9)令和 2 年度末時点で土地開発公社が保有する土地の勘定科目別内訳
(単位:千円)
土地の区分 | 内訳 | 期末残高 |
公有用地 | 佐倉下根用地 | 535,968 |
かずさアカデミアパーク公的機関等用地取得 | 254,405 | |
都市計画道路用地取得 | 829,551 | |
合計 | 1,619,926 | |
代行用地 | 道路用地取得 | 2,012,602 |
首都圏中央連絡自動車道用地取得 | 188,461 | |
国道 51 号大栄拡幅用地取得 | 40,788 | |
合計 | 2,241,852 | |
完成土地等 | 佐倉第三工業団地 | 103,870 |
千葉土気緑の森工業団地 | 255,290 | |
合計 | 359,161 | |
代替地 | 佐倉第三工業団地 | 2,034 |
合計 | 2,034 |
上記のうち、公有用地の佐倉下根用地及びかずさアカデミアパーク公的機関等用地については長期保有している。
② 佐倉下根用地について
佐倉下根用地は、昭和 46 年、佐倉城跡に「国立歴史民俗博物館」を建設するにあたり、敷地内にあった国立佐倉療養所の移転用地として、県(教育庁)が当時の土地開発公社に取得を依頼し、土地開発公社が先行取得したが、地元医師会等が反対を表明したことから、移転先が佐倉市江原台(現・聖隷佐倉市民病院)に変更され、当該用地の利用目的がなく なり、土地利用が決まらないまま、土地開発公社の名義で長期保有している。現状、山林で形状や使い勝手ともに良くなく、また、時価(約 7 千万円)と簿価の乖離が大きく、県の再取
得が、行われていない。
(図表 10)佐倉下根用地の概要
所在 | 佐倉市岩名字大作 948 番地 他、55 筆 |
面積・地目 | 3.4 ヘクタール 山林、原野、畑 |
簿価 | 5.36 億円(用地取得費 2.64 億円、利息 2.42 億円等) |
佐倉下根用地のこれまでの検討状況等は以下のとおりであった。
(図表 11)佐倉下根用地の検討状況
昭和 54 年度 | 土地開発公社より県(教育庁)あてに、本件用地の再取得の依頼 があったが、県(教育庁)より買戻しの見通しが立たないと回答。 |
昭和 54 年度 | 県(宅地課)が土地開発公社に簿価凍結資金 5 億 3 千万円の無利子貸付を行い、土地開発公社は本件用地に係る借入金の返済 を行った。 |
平成 9 年度 | 宅地課長を委員長とした、県、県教育庁、佐倉市、土地開発公社による佐倉下根用地活用検討委員会を設置し、利活用方法を検討することとなった。なお、平成 19 年度から用地課長が委員長を 務めるようになった。 |
平成 28 年度 | 同委員会で暫定的土地活用として千葉県里山条例による土地活 用が決定し募集を開始。 |
平成 29 年度 | 同委員会からの依頼で里山活動団体と協定を締結。 |
令和 2 年度 | 里山活動団体と協定解除及び里山活動団体を再募集。 |
令和3 年5 月 | 竹を肥料化する技術を持つ民間企業を佐倉市から紹介され、本用地内の竹を伐採することで、森林環境の整備等につなげるよ う、検討を行っている。 |
令和3 年6 月 | 本用地の利活用について、全庁照会を行ったが、利活用を希望 する所属はなかった。 |
意 見(佐倉下根用地について)
平成 16 年度の包括外部監査の結果以降に大きな進展が見られない状況にある。本来、土地開発公社が長期保有すべきものではないため、県が土地を取得し、県の責任において土地の用途及び処分方針を検討する必要がある。
③ かずさアカデミアパーク用地について
かずさアカデミアパークは、上総新研究開発土地区画整理事業として、上総新研究開発土地区画整理組合が平成 2 年から平成 15 年にかけて施工、造成した。県は、かずさ
アカデミアパーク事業の早期完成及び、公的試験研究機関用地等の確保を目的とし、平成元年に土地開発公社と協定を締結し、以下の依頼をした。
・同パーク内の営農者所有地約 10 ヘクタールの土地開発公社名義による買収取得
・同営農者の営農継続のための代替地12 ヘクタールの土地開発公社名義による買収取得
・代替地の営農継続者への売却
かずさアカデミアパーク用地のこれまでの検討状況等は以下のとおりであった。
(図表 12)かずさアカデミアパークの検討状況
平成 4 年度以降 | 土地開発公社からの再取得を開始し、平成 6 年度までに全 5 件中 4 件について再取得した。 |
平成 6 年度 | 残りの 1 件については、平成 6 年 9 月議会において、43 億円の債務負担行為を設定したが、県の財政状況の厳しさか ら予算化されず、再取得は見送られてきた。 |
平成 13 年度 | 平成 13 年度 2 月補正予算で再取得費用が予算化され、一部再取得したものの、以降再び財政状況を理由に予算化さ れなくなったことから、再取得が見送られた。 |
平成 17 年度 | 平成 16 年度包括外部監査において、速やかに再取得すべきである旨指摘を受けたことから、厳しい財政状況を加味し、分割で計画的に取得することとし、平成 17 年度当初予算で 予算化されることとなった。平成 17 年度以降は毎年予算化 されており、計画的に再取得している。 |
平成 23 年度 | 平成 24 年 2 月議会において、平成 24 年度から令和 3 年 度の 10 年間の債務負担行為を設定し、毎年度 3 億 2,800 万円程を予算計上しながら、令和 4 年 3 月で全ての再取得が完了する見込みである。 |
意 見(長期保有していたかずさアカデミアパーク用地について)
土地開発公社が長期にわたり土地を保有していたかずさアカデミアパーク用地については、令和 4 年 3 月をもって全ての再取得が完了する見込とのことである。しかし、土地開発公社の土地取得原資は、主に金融機関からの借入金であり、長期にわたり土地を保有すると、借入期間中の金利は土地の取得費用として簿価に積み増されていくため土地保有に伴う県の財政負担は大きなものとなる。
実際に、かずさアカデミアパーク用地に対する令和 2 年度末までの支払利息の累計
は 1,876,937 千円であり、そのうち再取得が見送られた平成 7 年度以降の支払利息
の総額は 1,456,452 千円となっている。
本来、県が早期に買い取れば問題は生じないが、本事案が発生したことから、買取が長期化する場合に将来の財政負担を軽減させるためのルールを決めることが必要であると考える。
例えば、総務省に対しては、5 年超の長期保有土地の報告が求められていることから、5 年超の長期保有となった段階で、佐倉下根用地で過去に実施したような無利子貸付等を行うことができる仕組みを作るなどの方法が考えられる。
7 公益財団法人千葉県建設技術センターへの職員の派遣について
(1) 公益財団法人千葉県建設技術センターへの職員の派遣
センターの人員構成は、プロパー職員として、課長 1 名、班長 7 名、正職員 8 名、嘱
託 16 名、非常勤 2 名計 34 名と、県からの派遣職員として、理事長、専務理事、事業部
長、課長 3 名、一般職 6 名の計 12 名で構成されている。
(図表 13)建設技術センター組織図
理事⻑
専務理事
総務部長
総務課長
総務班長
副主幹技師主事
嘱託
事業部長
企画指導課長
企画指導第一班長
企画指導第二班長
主査
嘱託嘱託
建設課長
建設第一班長
主査 副主査副主査嘱託
建設第二班長
建設第三班長
主査 副主査技師 嘱託
副主査副主査嘱託 嘱託 嘱託
建築課長
建築班長
嘱託 嘱託 嘱託 非常勤非常勤
試験課長
試験班長
技師技師嘱託嘱託嘱託嘱託嘱託
: 県派遣職員
: プロパー職員
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
公益財団法人千葉県建設技術センター(以下「建設技術センター」という。)の運営及び組織について | ・組織図を入手し、プロパー職員と県からの派遣職員の配置について把握する。 ・現在の組織運営の状況について建設技 術センターでヒアリングする。 |
(3) 実施結果
建設技術センターの人員構成は、プロパー職員として、課長 1 名、班長 7 名、正職員
8 名、嘱託 16 名、非常勤 2 名計 34 名と、県からの派遣職員として、理事長、専務理事、
事業部長、課長 3 名、一般職 6 名の計 12 名で構成されている。
全体の人数バランスについては大きな問題はないが、組織の経営を担う理事長、専務理事(総務部長兼務)及び実務を所管し組織の管理を担う事業部長(企画指導課長兼務)、総務課長、建設課長、建築課長などの管理職は試験課長 1 名を除き、すべて県からの派遣職員が担っている。
また、県からの派遣期間は、基本的に役員は 1 年、その他は 2 年となっている。
指 摘(組織構成の適正化について)
組織運営上の幹部がほぼ県職員の派遣で構成され、基本的に 1 年~2 年で入れ替わるという状況は、組織の継続的な運営や中長期的な改善施策の実行などの面で、支障があると言わざるを得ない。
業務の改善提案なども在籍期間が短いこともあり、実現が困難となっている。
今後、建設技術センター側では、新人プロパー職員の採用や、中途職員の採用を積極的に実施する必要があるが、建設技術センター及び県は少なくともプロパー職員が管理職の中心を担うようになるまでは、県職員の派遣期間の延長等を考慮するなど、組織運営上の様々な工夫・配慮が必要である。
Ⅱ 葛南土木事務所
1 葛南土木事務所の概要
(1) 管内の状況及び業務の概要
葛南土木事務所の行政区域は、千葉県の北西部に位置する「市川市、船橋市、浦安市」の 3 市からなり、面積は 160.3 平方キロメ-トルで、東は八千代市、習志野市、北は松戸市、鎌ケ谷市に接し、西は江戸川を隔てて東京都、南は東京湾に臨んでおり、古くから木下、成田、千葉街道などの追分として、また江戸と利根川を結ぶ舟運の河港など交通の要衝として栄えてきた。
管内は、面積では県全体のわずか 3%の地域に、人口では約 2 割の 130 万人が居住
しており、人口密度が 1 平方キロ当たり 8,000 人を超える県内でも最も高い地域となっている。
管内の道路は、東京湾岸道路(東関東自動車道・国道 357 号)、京葉道路、国道14 号
など国、県合わせて 33 路線で構成されており、当事務所ではこのうち国道 14 号をはじ
め、県道市川松戸線等 27 路線、約 125 キロメートルを管理している。
河川については、国が管理している江戸川を除く一級河川旧江戸川や真間川等の 13
河川、二級河川海老川等の 5 河川の計 18 河川で、約 57 キロメ-トルを管理している。
また、現在の海岸線は、昭和 40 年代から埋め立てにより形成されたもので、このうち浦
安海岸と市川海岸の約 25 キロメ-トルを保全区域として管理している。
(2) 組織
① 組織図
(図表 14)葛南土木事務所組織図
② 職員の状況
(図表 15)葛南土木事務所の職員の状況
(令和 2 年 4 月 1 日現在)
所長 | 次長 | 検査担当 | 総務課 | 管理課 | 用地課 | 調整課 | 道路建設課 | 河川改良課 | 維持課 | 公園街路課 | 真間川改修課 | 計 | |
所長 | 1 | 1 | |||||||||||
次長(事) | 1 | 1 | |||||||||||
次長(技) | 3 | 3 | |||||||||||
課長 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | (1) | (1) | 7 | |||
副主幹 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 5 | |||||||
主査 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 6 | |||||||
副主査 | 4 | 1 | 2 | 1 | 1 | 4 | 13 | ||||||
主事 | 2 | 5 | 2 | 9 | |||||||||
技師 | 2 | 1 | 4 | 6 | 2 | 2 | 17 | ||||||
会計年度任用 職員 | 2 | 3 | 1 | 2 | 8 | ||||||||
計 | 1 | 4 | 1 | 7 | 10 | 10 | 5 | 4 | 8 | 10 | 3 | 7 | 70 |
( )内は次長が事務取扱 70 名中兼任職員 2 名含む
(3) 令和 2 年度予算(事業別予算構成内訳) (図表 16)葛南土木事務所の令和 2 年度予算
2 老朽化に伴う耐震対策等について
(1) 老朽化に伴う耐震対策等について
葛南土木事務所の建物の状況は以下のとおりである。
(図表 17)葛南土木事務所の建物の状況
施設名称 | 建築年月日 | 築年数 | 構造 |
葛南土木事務所 | 1966/7/27 | 55 年 | RC |
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
災害時の事務所建物・設備の耐震性等について | ・事務所建物の震災対応についてヒアリングする。 ・事務所地域・敷地の震災時等の水害対応 についてヒアリングする。 |
(3) 実施結果
① 地震対応
葛南土木事務所については、30 年前実施の耐震診断で倒壊可能性を示す I s 値(構造耐震指標)が 0.54(0.6 未満だと倒壊可能性あり)であった。この数値(I s値)は、以下のような目安となっている。
0.6 以上 倒壊又は崩壊する危険性が低い
0.3 以上 0.6 未満 倒壊又は崩壊する危険性がある
0.3 未満 倒壊又は崩壊する危険性が高い
また、土木事務所建物は、昭和 41 年の建築であり 55 年経過しているとともに昭和 56年建築基準法改正前の建築である(現行の鉄筋コンクリート建築物の耐震基準を満たしていない)。
県有施設については「千葉県公共施設等総合管理計画」(総務部資産経営課が作成)及び「千葉県県有建物長寿命化計画」(同)により対応している。
県としては、耐震診断はすでに行い、その結果で、移転・建替え(集約)の検討を進めているところであり、改めて行う必要はないという認識のようである。葛南土木事務所は、
「千葉県県有建物長寿命化計画」において令和 9 年度までに整備に着手する建物に位置付けられているので、新たな耐震診断やそれに基づく応急的な耐震化工事の予定はないとのことである。
② 津波・高潮対応
堤防等(港湾事務所所管)については、平成 27 年版の千葉県の海岸保全基本計画に
よれば葛南土木事務所近辺の高潮の高さ予想は A.P.5.7m、また、津波の高さ予想は、 T.P.3.1m となっている。
これに対し、葛南土木事務所近辺の防潮堤は、A.P.5.6m(港湾事務所所管)の高さで整備されているとのことである。
この状況について、葛南土木事務所の見解では、高潮の高さ予想においては数値上は 0.1m防潮堤の高さを超えるため、若干の懸念を持っているとのことである。
指 摘(土木事務所建物の災害対策について)
震災はいつ発生するかわからない。整備完了までの間に発生しないとは言い切れない。耐震診断を早急に実施すべきであり、耐震化工事の必要性が認識された場合は、応急的にでも耐震化工事を実施する必要性がある。
事務所職員の安全面だけでなく、土木事務所は、千葉県業務継続計画の優先業務一覧にもあるように、地域の災害発生時には中心となって対応すべき前線基地である。地震等で事務所が使えなくなった場合、県として県民を守れるのかの観点からも、早急な対応が必要である。
また、津波・高潮対策は、平成 27 年度(6 年前)のデータでなく、最新の知見に基づく予想等を加味した再検討が必要と考える。
【再掲】(図表 7)千葉県業務継続計画の優先業務一覧(抜粋)
〇県土整備部
所属 | 業務種別 | 業務名 |
土木事務所 (15 事務所) | 応急復旧 | 1 現地震災対策班の設置 |
2 来所者の安全確保 | ||
3 情報収集 | ||
4 パトロールの実施 | ||
5 応急仮工事、応急本工事実施の指示 | ||
6 災害対策本部支部総務班との連絡調整に関 すること | ||
優先通常 | 1 庶務調整業務 | |
2 道路・河川・港湾・海岸・急傾斜地・公園施設 等に関する維持管理業務 | ||
3 法に基づく許認可業務・指導監督業務 |
3 随意契約について
(1) 随意契約について
地方自治法第 234 条第 1 項には、自治体が締結可能な契約の方式が定められてい
る。このうち随意契約については、同条第 2 項及び地方自治法施行令第 167 条の 2 第
1 項において、契約可能な要件が定められている。
【地方自治法第 234 条(契約の締結)】第 1 項 売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。
第 2 項 前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。
【地方自治法施行令第 167 条の 2 第 1 項(随意契約)】
第 1 項 地方自治法第 234 条第 2 項の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。
1 号 売買、貸借、請負その他の契約で、予定価格(貸借の場合は予定賃貸借料の年額又は総額)が次の各号に掲げる額を超えないものをするとき。
(1)工事又は製造の請負 250 万円
(2)財産の買入れ 160 万円
(3)物件の借入れ 80 万円
(4)財産の売払い 50 万円
(5)物件の貸付け 30 万円
(6)その他のもの 100 万円
2 号 不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。
3 号 障害者支援施設、地域活動支援センター、障害福祉サービス事業を行う施設、小規
模作業所において製作された物品を買い入れる契約、及び上記施設に加えて、シルバー人材センター連合、シルバー人材センター等から役務の提供を受ける契約をするとき。
4 号 新たな事業分野の開拓を図る者が新商品として生産する物品を買い入れる契約をす
るとき。
5 号 緊急の必要により競争入札に付することができないとき。
6 号 競争入札に付することが不利と認められるとき。
7 号 時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき。
8 号 競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき。
9 号 落札者が契約を締結しないとき。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
工事契約、委託契約の適格性について | ・工事契約、委託契約の一覧表を入手し、個別の契約について契約書を閲覧する。 ・工事の内容、進捗状況等についてヒアリングする。 ・随意契約による工事契約について妥当性 を検証する。 |
(3) 実施結果
① 緊急、応急工事契約について
県単道路改良工事(行徳橋左岸取付道路排水工その 3)については、随契での契約となっているが、随意契約協議書には、県が一般社団法人千葉県建設業協会との基本協定(災害応急対策に関する業務細目協定)において、当該箇所のパトロール担当業者で、かつ、同箇所のその 2 工事を施工中のK 建設に地方自治法施行令 167 条の 2 第 1 項
5 号の規定(緊急の必要により競争入札に付することができないとき)により特命随意契約を結ぶとの記載がある。
一方で、土木事務所往査時には担当者から業者選定の理由として「競争入札に付することが不利と認められるとき」地方自治法施行令 167 条の 2 第 1 項 6 号、見積り合わせ
省略の理由として財務規則第 116 条の 2 運用通達 3 のオ(契約内容の特殊性により相手方が特定)としたとの説明を受けた。
後日、説明は誤りで、随意契約協議書に記載されている内容が正しい旨の回答を得た。
指 摘(随意契約適用の根拠について)
担当者による条文の適用勘違いが起こることからも、非常に紛らわしい状況が発生する緊急、応急、特殊工事などについて、不利(6 号)か緊急の必要(5 号)かを明確にするためにも、また見積合わせ省略理由として、運用通達 3 のオ(契約内容の特殊性により相手
方が特定)か 3 のイ(急施を要し時間的余裕がない)かを正しく判断するためにも、それぞれの適用されるケースを明文化し明確にする必要がある。
4 物品管理について
(1) 物品管理について
① 物品とは
地方自治法では、物品は、普通地方公共団体の所有に属する動産で、現金(現金に代えて納付される証券を含む。)、公有財産に属するもの、基金に属するもの以外のもの及び普通地方公共団体が使用のために保管する動産(政令で定める動産を除く。)とされ
ている(地方自治法第 239 条第 1 項)。
千葉県財務規則(以下、「財務規則」という)においても、物品の定義は、地方自治法を準用している(財務規則第 2 条第 15 号の 2)。
また、財務規則第 181 条において、物品を備品、消耗品、動物、材料品、生産物、不用品、受託品、寄託品に分類している。
そして、物品の管理に関する規則として、財務規則第203 条において、「出納員、分任出納員、又は物品取扱員は、毎月一回、自己の保管に係る物品について、調査して、確認しなければならない。」と規定されているほか、「物品・委託契約及び物品管理事務の手引」に従って業務が行われている。
② 備品とは
備品とは、上記でも述べたように、財務規則第 181 条第 1 号において、「その性質上
長期間にわたって使用されるべき物」で、第 2 号の消耗品とは扱わないものと定義されている。
備品に該当する物品は、財務規則第 207 条第 1 号により、「備品出納簿」に必要事項を記載し、出納を整理しなければならないとされている。ただし、備品は物品管理システム上の物品台帳にて管理されており、財務規則第 209 条第 9 号における「電子計算組織に登録するもの」として、出納簿の記載の省略が可能である。
なお、物品の出納とは、財務規則第 2 条第 16 号に「購入、生産、寄附、返納、分類換え、保管換え、交付、売払い、廃棄、亡失等の事由により、物品が会計管理者、出納員、分任出納員又は物品取扱員の保管を離れ、又は保管に帰すること」と定義されている。
③ 消耗品とは
消耗品とは、上記でも述べたように、財務規則第 181 条第 2 号に「その性質上使用す
ることによって消耗する物」と定義されているほか、財務規則第 181 条第 1 号における例
外として「購入価額が 2 万円未満の物」と定義されている。
消耗品に該当する物品は、財務規則第 207 条第 2 号により、「消耗品出納簿」に必要
事項を記載し、出納を整理するほか、財務規則第 208 条第 2 号により、「消耗品受払簿」に必要事項を記載し、受払いを整理しなければならない。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
物品の管理は適切になされているか | ・備品出納簿及び物品管理システムを閲覧及び担当者への質問により管理状況を 確認する。 |
消耗品の管理は適切になされているか | ・消耗品出納簿の閲覧及び担当者への |
質問により管理状況を確認する。 |
(3) 実施結果
① 備品の管理について
葛南土木事務所において、令和 2 年度末時点で物品台帳にて管理している備品はシ
ュレッダー等の 2,227 品目、金額は 49,655 千円である。
財務規則第 203 条において、「出納員、分任出納員、又は物品取扱員は、毎月一回、自己の保管に係る物品について、調査して、確認しなければならない。」と規定されているものの、当該条項の「調査」は物品の実査を指しているわけではなく、「調査」の具体的な確認内容は各管理責任者の裁量に委ねられている。そのため、現状では物品の実査について規定上明記されていない。
当土木事務所において、備品の現物と台帳との整合性を確認しているのは、現物の入手(納品)時及び廃棄時のみである。年一回実施される出納局の会計検査の際に、検査担当者が台帳からランダムにサンプルを選択して実査をし、現物と台帳との整合性を確認しているとのことであるが、当土木事務所の物品取扱員としては定期的な実査を行っていない。
意 見(備品の実査について)
当土木事務所において、備品の現物と台帳との整合性を確認しているのは、現物の入手(納品)時及び廃棄時のみであり、定期的な実査を行っていない。備品の定期的な実査は適切な事務処理を担保するうえで重要な手続であることから、当土木事務所の物品取扱員として定期的な実査を、数年間のローテーションや毎年一定の件数を抽出するなどして行うことが望ましい。
② 消耗品の管理について
1) 消耗品出納簿の記載方法について
葛南土木事務所において保有している消耗品は、筆記具、電子計算機、DVD 等記録媒体等であり、消耗品置き場にて保管している。
消耗品出納簿により受払管理をしているが、Web カメラの納品時に消耗品出納簿へ受入 5 個と記帳し、同日に供用として払出 5 個の記帳を行っているため、現物が 5 個あり、複数の担当者が随時使用しているにもかかわらず、消耗品出納簿の現在高はゼロとなっている。
消耗品出納簿の記載方法について確認したところ、消耗品出納簿の払出は、分任出納員等の保管を離れた際に記載するものであり、所属内に消耗品が現存していたとしても、分任出納員等の保管にない場合には現在高はゼロになることがあるとのことであった。
上述の WEB カメラの例では、5 個が 2 月 19 日に、分任出納員(総務課長)の保管を
離れ、総務課長が(分任出納員ではなく)課長という立場で管理することとなり、分任出納員の保管を離れたため払出 5 とし、分任出納員(総務課長)が分任出納員として保管している WEB カメラは 0 個になることから現在高はゼロの記載になるとのことであった。
2) 棚卸(数量確認)ルールについて
財務規則第 203 条(調査)において、「出納員、分任出納員、又は物品取扱員は、毎月一回、自己の保管に係る物品について、調査して、確認しなければならない。」と規定されているものの、当該条項の「調査」は物品の棚卸を指しているわけではなく、「調査」の具体的な確認内容は各管理責任者の裁量に委ねられている。そのため、現状では物品の棚卸(数量確認)について規定上明記されていない。
当土木事務所において、定期的な消耗品の棚卸(数量確認)を行っておらず、保有し
ている在庫のあるべき数量と実際の在庫の数量との一致を確認していない。
指 摘(消耗品出納簿への払出の記載方法について)
購入したWeb カメラ 5 個について消耗品倉庫に保管し必要に応じて使用している。当該 Web カメラの納品時に消耗品出納簿へ受入 5 個と記帳し、同日に供用として払出 5個の記帳も行っている。総務課長が(分任出納員ではなく)課長という立場で管理していたWEB カメラが、分任出納員(総務課長)の保管に戻った際には、受入 5、現在高 5 とする必要がある。
使用していた消耗品について使用が終わり消耗品倉庫に戻した場合には、分任出納員(総務課長)の保管に戻ったと考えるべきで、消耗品出納簿に受入数量を記帳する必要がある。
意 見(消耗品の棚卸(数量確認)について)
消耗品の定期的な棚卸(数量確認)は適切な事務処理を担保するうえで重要な手続であることから、当土木事務所の物品取扱員として必要な範囲で定期的に、保有している在庫のあるべき数量と実際の在庫の数量の一致を確認する棚卸(数量確認)を行うことが望ましい。
③ 補修材料(消耗品)の管理について
道路補修材料は、葛南土木事務所で購入し、委託業者に払い出している。ここで、道路補修材料として受け払い管理しているものは、常温合材、グレーチング、スーパーロメンパッチ、スピーディモルタル、コールカット K など、道路舗装の応急措置として使用する原材料である。千葉県が受注者との間で交わしている「業務委託契約書」に添付されている「業務仕様書」第 14 条の支給材には、「本業務で使用する、常温合材、モルタル補修材、路面補修材、側溝蓋、グレーチングおよび歩車道境界ブロックは、発注者(千葉
県)より支給する。」とある。これら道路補修材料は、葛南土木事務所敷地内にある倉庫で保管され、委託業者に払い出す時は、土木事務所職員立ち合いの下で行っているが、日々の在庫管理に使用する管理簿はない。管理簿としては、財務規則第 117 号様式
「(受払)簿」を使用しているが、購入日に受け数を記入し、同日に同数量を払い出し数として記入しているため、常に在庫はゼロとなっている。実際には、先入先出により在庫を払い出しており、在庫は葛南土木事務所敷地内の倉庫にあることから、補修材料管理担当者の管理を離れたとは言えない。また、「(受払)簿」の上では期末在庫ゼロとなっていることから、保有している在庫につき、あるべき数量と実際の数量との一致を確認する棚卸 (数量確認)も実施していない。
意 見(補修材料の管理について)
補修材料につき、消耗品出納簿は作成されているが、購入日に受け入れた数量と同じ数量を払い出し数として記入しているため、常に在庫はゼロとなっている。これでは出納簿としての役割を果たしていない。消耗品出納簿については、購入時に入り数を、払い出し時に出数を記入することで、理論値である在庫数量を明確化し、期末において実地棚卸を実施することで、実在性を確保するとともに、理論値と実際値を比較することで、日々の出し入れの適正性を確認することが必要である。
5 現金・預金管理について
(1) 預金通帳等の管理について
県で保有している預金通帳等の取扱いについては、「預金通帳等の適正管理に関する要綱」に管理方法が規定されている。当該要綱には、所属として管理する預金通帳等、管理台帳の作成等、預金通帳等の管理、口座の解約・預金通帳等の引渡し等、管理台帳に記載されていない口座の報告が定められている。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
現金及び預金の管理状況を把握する | ・現金、預金通帳及びその他金券類について、金庫内の保管状況を確認し、簿外となっている現金や預金通帳等がないかを確かめる。 ・現金実査を実施する。 ・預金通帳の残高について、預金通帳管理台帳との一致を確認する。 |
(3) 実施結果
預金通帳管理台帳を入手し、すべての通帳が金庫に保管されているか確認を行うとともに、銀行口座の使用状況を通帳の記帳記録で確認した。
その結果、下記のとおり、10 年以上使用していない残高 1 円の私費通帳が 1 口座存在
した。
(図表 18) 10 年以上使用していない残高 1 円の通帳
口座名義 | 金融機関 | 性質 | 使途概要 | 最終記帳日 |
葛南地域整備センター 役付会 会計担当 | 千葉銀行 | 私費 | 所内関係職員による任 意団体 | 平成 18 年 3 月 13 日 |
担当者へ質問したところ、上記通帳に関する当時の具体的な使用用途は不明であり、残高 1 円をどのように処理すべきか結論が出ていないため、現在まで引き継がれているとのことであった。なお、当該口座については私費であるが、預金通帳管理台帳に記載があることから、県としては管理すべき通帳と認識している。
指 摘(10 年以上使用していない預金残高 1 円の通帳について)
通帳については、不要な通帳を保有していることで、管理が煩雑になるとともに、不正に使用される恐れがある。また、預金通帳等の適正管理に関する要綱の第 6 条にて、口座の開設目的が達成され、今後使用する見込みがなくなったと判断したときは、速やかに口座を解約するものと明記されている。
上記口座については、使途不明の状態で通帳の最終記帳日から 10 年以上が経過しており、使途不明の状態のまま通帳を保有し続けることは、預金通帳等の適正管理に関する要綱第 6 条に反するため、早期に解約するべきである。
また、下記の 2 口座については、往査当日に通帳の現物を確認できなかった。
(図表 19) 現物未確認の通帳一覧
口座名義 | 金融機関 | 性質 | 使途概要 | 最終記帳日 |
①真間川流域総合治水対策協議会対策推進委員会 委員 葛南土木事務所長 | 千葉銀行 | 団 体 費 (公費のみ) | 県に事務局を置く団体 | 令和 3 年 8 月 4 日 |
②葛南都市計画事務所親 睦会職員組合 | 千葉銀行 | 私費 | 所内関係職員に よる任意団体 | 未確認 |
・通帳①について
葛南土木事務所の高瀬分庁舎に保管されていたため、後日通帳のコピーを入手して実在性を確認した。また、預金通帳管理台帳に記載されている情報との一致を確認し、管理状況を確かめた。
・通帳②について
通帳を保有していなかったため、実在性を確認することができなかった。また、預金通帳管理台帳において、通帳の有無が「無」と記載され、預貯金通帳管理者及び届出印管理者についても明記されていなかった。
葛南土木事務所に経緯を確認したところ、当初は当該通帳の存在を把握していなかったが、千葉銀行より平成 29 年 12 月 4 日付の休眠口座通知を受理したことにより、預金通帳
管理台帳に追加し、現在に至っているとのことであった。また、当該通帳の残高は 47,905
円であり、時効期間の経過(最終取引から 10 年)により、口座は既に閉鎖されているとのことであった。
しかし、休眠口座通知に金額の記載がないため、外部証憑による残高の確認はできなかった。口座の残高については、土木事務所の職員が、千葉銀行船橋支店に電話聴取して確認したとのことである。
また、現時点において、当該口座の解約手続は未着手となっている。
指 摘(通帳未所有口座の解約について)
千葉銀行 葛南都市計画事務所親睦会職員組合名義の私費口座について、当初は当該口座の存在を把握していなかったが、千葉銀行より休眠口座通知を受理したことにより、預金通帳管理台帳に追加し、現在に至っている。預金通帳等の適正管理に関する要綱の第 2 条及び第 3 条により、通帳の管理義務が発生し、また、同要綱第 6 条にて、口座の開設目的が達成され、今後使用する見込みがなくなったと判断したときは、速やかに口座を解約するものと明記されている。
しかし、上記のとおり、通帳の所在は現在も不明であり、現時点において解約手続も未着手となっている。使途不明の状態のまま通帳を保有し続けることは、預金通帳等の適正管理に関する要綱第 6 条に反するため、早期に解約するべきである。
6 土木事務所に事務局を置く団体の管理について
(1) 土木事務所に事務局を置く団体の通帳の管理について
団体の都合により、団体に事務局の設置が困難な場合に、葛南土木事務所に事務局を置き、職員が団体の事務を実施しているケースがある。
こうした団体には、補助金や負担金(以下、「補助金等」という。)が交付されており、土木
事務所が補助金等の交付事務を行っているが、「(図表 20 土木事務所に事務局を置く団
体のうち通帳の管理をしている団体」に示すとおり、補助金等の入金された預金通帳及び支出の管理も行っている。
団体の事務局として事務従事する場合、公金以外の現金も取り扱うことになるが、土木事務所の職員が行う以上は、公金の例に準じて適正に処理をする必要がある。
通帳及び印鑑等の管理状況は、以下のとおりである。
・通帳と印鑑は別々の者が管理している。
・預金通帳と出納簿の一致を確認している。
・通帳管理者と出納管理者が同一人物である。
・金庫等の施錠できる場所に保管している。
(図表 20) 土木事務所に事務局を置く団体のうち通帳の管理をしている団体
団体名 | 通帳管理者 | 届出印管理者 | 出納管理者 |
千葉県道路協会葛南支部 | 葛南土木事務所 次長(一般行政) | 葛南土木事務所 所長 | 葛南土木事務所 次長(一般行政) |
千葉県河川協会葛南支部 | |||
真間川流域総合治水対策協 議会対策推進委員会 | 葛南土木事務所 副主査 | 葛南土木事務所 次長(土木) | 葛南土木事務所 副主査 |
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
預金通帳の管理状況を把握する | ・預金通帳、出納簿、預金通帳管理台帳を照合し、預金通帳等が適正に管理されてい ることを確かめる。 |
土木事務所に事務局を置く団体につ | ・土木事務所に事務局を置く団体につい |
いて、適切に職務分掌され、補助金 | て、補助金等交付業務の実施状況をヒアリ |
等交付に係る審査業務の独立性が担 | ングする。 |
保されているか確かめる |
(3) 実施結果
預金通帳、出納簿、預金通帳管理台帳の内容を照合し、預金通帳等の管理状況は妥当なものであることを確認した。
しかし、土木事務所に事務局を置く団体への補助金等交付事務及び支出管理については、通帳管理者である県の職員が実施しているため、県の職員により県、団体双方の事務が行われており、チェック機能の欠如が懸念される。補助金等を交付する所管課の職員が、補助金等の交付を受ける団体の事務局業務を行った場合、審査業務の独立性が阻害されかねない。
また、職員が執務時間内に事務を執行しており、預金を扱うことから団体の資産保全のリスクも存在するため、県がリスクを認識すべきである。
意 見(土木事務所に事務局を置く団体の事務について)
土木事務所に事務局を置く団体の事務について、土木事務所の職員が執務時間内に行っており、預金を扱うことから団体の資産保全のリスクも存在するため、県のリスクとして認識すべきである。
さらに、土木事務所に事務局を置く団体の「補助金等の申請、交付事務」に係る執行体制は、県の職員により県、団体双方の事務が行われており、チェック機能の欠如が懸念される。事務の公正性、透明性を担保する上でチェック機能は不可欠なものであるため、「補助金等の申請、交付事務」を行う際は、同一の県職員が団体の事務を実施しない等、事務の執行体制を見直す必要がある。
Ⅲ 安房土木事務所
1 安房土木事務所の概要
(1) 管内の状況及び業務の概要
安房土木事務所が所管する地域は、房総半島の南端に位置し、館山市、鴨川市、南房総市及び鋸南町の 3 市 1 町である。
面積は 576 平方キロメートル、人口は約 12 万人で、管理している道路は、一般国道
が 128 号と 410 号の 2 路線、主要地方道が鴨川保田線外 6 路線、一般県道が外野勝
山線外 23 路線、自転車道が和田白浜館山自転車道線の 1 路線で、総延長は約 388 キロメートルである。
所管する河川は、館山湾に注ぐ二級河川平久里川(19.47 キロメートル)や管内で一番長い加茂川(22.25 キロメートル)等、二級河川の 22 水系 33 河川である。
房総半島南部の嶺岡山系周辺は特有の地質から地すべり災害が多発しているため、管内では、27 地域を地すべり防止区域に指定している。
特定地域振興重要港湾(地方港湾)館山港は、県南の海上物資輸送拠点であり、地域振興に資する大型客船が着桟可能な多目的桟橋を供用開始している。
(2) 組織
① 組織図
(図表 21)令和 2 年度安房土木事務所組織図
② 職員配置
事務所の組織は総務課、管理課、用地課、調整課、建設課、維持課、建築宅地課の 7
課と鴨川出張所である。職員数は、事務職員 20 名、技術職員 37 名、合計 57 名で、他
に会計年度任用職員 12 名を加え合計 69 名となっている。
(図表 22)令和 2 年度安房土木事務所職員配置
(令和 2 年 4 月 1 日現在)
所長 | 次長 | 出張所長 | 課長 | 副主幹 | 主査 | 副主査 | 主事 | 技師 | 計 | 任 会 用 計 職 年 員 度 | 合計 | |
1 | 2 | 1 | 4 | 4 | ||||||||
総務課 | 1 | 1 | 2 | 2 | 6 | 2 | 8 | |||||
管理課 | 1 | 3 | 2 | 6 | 5 | 11 | ||||||
用地課 | 1 | 6 | 7 | 1 | 8 | |||||||
調整課 | 1 | 1 | 2 | 4 | 1 | 5 | ||||||
建設課 | 1 | 2 | 3 | 3 | 9 | 9 | ||||||
維持課 | 1 | 2 | 2 | 5 | 5 | |||||||
建築 宅地課 | 1 | 2 | 1 | 4 | 1 | 5 | ||||||
鴨川 出張所 | 1 | 2 | 3 | 6 | 12 | 2 | 14 | |||||
計 | 1 | 2 | 1 | 7 | 2 | 10 | 10 | 10 | 14 | 57 | 12 | 69 |
(3) 令和 2 年度予算(事業別予算構成内訳) (図表 23)令和 2 年度安房土木事務所予算
令和 2 年 4 月(単位:百万円)
事業名 | 補助事業費等 | 県単事業費 | 合計 |
道路事業 | 1,849.4 | 3,493.9 | 5,343.3 |
河川事業 | 98.3 | 335.1 | 433.4 |
地すべり・急傾斜・砂防 | 1,611.5 | 341.4 | 1,952.9 |
海岸事業 | 125.0 | 231.7 | 356.7 |
港湾事業 | 27.5 | 94.5 | 122.0 |
公園事業 | 15.0 | 39.5 | 54.5 |
災害復旧事業 | 529.4 | - | 529.4 |
合計 | 4256.1 | 4,536.1 | 8,792.2 |
2 老朽化に伴う耐震対策等について
(1) 老朽化に伴う耐震対策等について
安房土木事務所の建物の状況は以下のとおりである。
(図表 24)安房土木事務所の建物の状況
施設名称 | 建築年月日 | 築年数 | 構造 |
安房合同庁舎 | 1972/3/25 | 49 年 | RC |
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
災害時の事務所設備の耐震性等に ついて | ・事務所建物の震災対応についてヒアリング する。 |
(3) 実施結果
① 建物関係の防災対応
1) 土木事務所入居の建物の所管は総務部安房地域振興事務所家賃、維持・管理費、光熱水費の土木事務所の負担は無し。 建築年度 :昭和 47 年 3 月
耐震診断 :平成 2 年度に実施。構造耐震指標(I s 値):0.33
耐震工事 :実施していない。割れ目埋め、屋上の防水、塗り替え程度。外観上は極端な毀損等は無し。
参考:建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針(別表第六)
I s 値≧0.6:地震の振動及び衝撃に対して倒壊、又は崩壊する危険性が低い
0.6>Is 値≧0.3:地震の振動及び衝撃に対して倒壊、又は崩壊する危険性がある
0.3>Is 値:地震の振動及び衝撃に対して倒壊、又は崩壊する危険性が高い
2) 建替計画について
・安房合同庁舎の再整備(令和 3 年 6 月の県議会で承認)
整備期間:令和 3 年度~令和 8 年度概算事業費 約 51 億円
入居機関:安房地域振興事務所、館山県税事務所、安房農業事務所、安房土木事務所他 6 機関。
・鴨川庁舎の再整備(令和 3 年 6 月の県議会で承認)
整備期間令和 3 年度~令和 8 年度概算事業費 約 15 億円
指 摘(土木事務所建物の震災対応について)
30 年前実施の耐震診断で倒壊可能性を示すIs 値(構造耐震指標)は 0.33 であり、現在ではさらに劣化していることを推定すれば、倒壊可能性はかなり危険な水準にあると推察する。
土木事務所は県内に地震や風水害等の災害で被害があった場合、千葉県業務継続計画の優先業務一覧にもあるように、先頭に立って対応、復旧を担う組織である(図表 7千葉県業務継続計画の優先業務一覧参照)。
その現地本部が地震で倒壊または重大な被害を被って使えないということになれば、県民へのサポートが大幅に遅延することとなる。
5 年後を目途に、合同庁舎の建替計画が動き出したとのことであるが、5 年間地震が無
いとは言い切れない。早急に耐震診断をして応急措置を講じる必要がある。
3 契約について
(1) 契約の概要
① 随意契約
地方自治法第 234 条第 1 項には、自治体が締結可能な契約の方式が定められてい
る。このうち随意契約については、同条第 2 項及び地方自治法施行令第 167 条の 2 第
1 項において契約可能な要件が定められている。
② 入札
地方公共団体における調達は、その財源が税金によって賄われるものであるため、より良いもの、より安いものを調達しなければならない。そのため、地方公共団体が発注を行う場合には、不特定多数の参加者を募る調達方法である「一般競争入札」が原則とされている。
「一般競争入札」とは、公告によって不特定多数の者を誘引して、入札により申込をさせる方法により競争を行わせ、その申込のうち、地方公共団体にとって最も有利な条件をもって申込をした者を選定して、その者と契約を締結する方法をいう。県では、入札・契約制度の公正性、透明性、競争性を確保するため、平成6 年度から資格条件を付した一般競争入札を導入している。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
工事契約、委託契約の適格性について | ・工事契約、委託契約の一覧表を入手し、個別の契約について契約書を閲覧する。 ・工事の内容、進捗状況等についてヒアリングする。 ・随意契約による工事契約について妥当性を 検証する。 |
(3) 実施結果
① 県単道路改良工事(坂本・斜面対策工事)
随意契約理由書によれば、他社が受注した場合、現場が錯綜し円滑な工事実施が不可能となることから地方自治法施行令第 167 条の 2 第 1 項第 6 号(不利な場合)の規定により随意契約としたと記載されている。
随意契約
1 号(少額) 工事 250 万円未満、委託 100 万円未満
5 号(緊急) 競争入札を実施している余裕が無い
6 号(不利) 他者を選定すると不利な状況が生ずる
意 見(随意契約について)
他者では円滑な工事が不可能であるということと契約が不利になるということは、直接的には結びつかない。
流れとしては、
・他者では不可能(非常に困難)
・様々な手間や、期間延長、諸経費が掛かる
・当該業者の方が有利(他者だと不利になる)
・よって特命随意が合理的。
ということを、他者との工事日数や見積額等で比較して明示することが必要となる。合わせて相見積もりも実施することが望ましい。
② 待崎橋耐震補強工事
令和元年度 181,643 千円
内令和 2 年度 159,814 千円(前払い 50,150 千円+完成精算払い 109,664 千円)
令和 2 年度 211,266 千円
内令和 2 年度前払い 83,150 千円(40%)
2 件とも 1 者入札で落札された。県土整備部では、「建設工事に係る一般競争入札実施
要領(平成 6 年 3 月 31 日制定)」において、入札に参加するための地域要件について「県内に本店がある者」又は「県内に本店又は建設業法に基づく許可を得た事業所がある者」と設定している場合及び地域要件を設定していない場合は、1 者入札でも落札を認めている (地域限定の応札制限を設けた入札では 1 者入札は認めていない)。
意 見(1 者入札について)
当該契約については実施要領上は許容の範囲であるが、一般競争入札において1 者入札で落札という状況は、制度の趣旨からして望ましいものではない。
できるだけ、1 者入札を解消する方策の検討や努力が望まれる。
③ 県単道路維持修繕委託契約について
県単道路維持修繕委託契約(契約金額:35,858 千円)は、安房土木事務所管内の道路の小規模の修繕を行う年間契約である。パトロールや県民からの通報に基づき必要な修繕箇所について、穴埋め、蓋取り替え、側溝清掃、土砂片付け、歩道清掃、草刈り、障害物除去などを当日の指示に基づいて行う委託契約である。
日々の作業終了後に委託先から提出される作業日報について、日付誤り、作業内容の番号誤り、写真の番号誤り、〇〇宅前→△△宅前の名前誤りなどの不備が多数ある。加えて、土木事務所から支給される資材を使用した作業の記載があるにもかかわらず資材使用欄の記入が全くない不備が多数ある。
さらに、安房土木事務所の日報確認者の印漏れが毎月何件かあり、その理由は、確認担当者が不在日に押印しなかったとのことである。
このような作業日報の不備の原因として、令和 2 年度においては、委託先、委託先の作
業従事者、土木事務所の担当者の双方とも交代している状況があり、作業日報の確認すべき事項について、土木事務所において引継ぎがなく、担当者の作業日報に対する認識が乏しかったものと思われる。
作業日報は委託業務の日々の実施内容について、委託者と県が確認したことを残す書面であり、実施内容の記載に誤りがないことを双方が確認し、確認したことを押印により残す書面である。
指 摘(県単道路維持修繕委託契約の作業日報について)
県単道路維持修繕委託契約において、日々の作業終了後に委託先から提出される作業日報について、日付誤りなどの不備が多数ある。加えて、土木事務所から支給される資材を使用した作業の記載があるにもかかわらず資材使用欄の記入が全くない不備が多数ある。
さらに、安房土木事務所の日報確認者の印漏れが毎月あり、その理由は、確認担当者が不在日に押印しなかったとのことである。しかし、作業日報は当日の作業終了後に提出された際に、当日に指示した作業が実施されたことを確認する書類であるから、確認担当者が不在の場合には、代理の確認者が作業内容を確認し押印すべきであった。
県単道路維持修繕委託契約の作業日報は実施日の作業内容を確認する手段であるため、作業日報の内容を適切に確認するとともに、確認したことを押印することにより確実に残されたい。
作業日報の不備は、単に担当者の問題ではなく、作業日報のチェック事項について引き継ぎがないことが問題である。適切な引き継ぎを実施されたい。
(図表 25)作業日報
様式-2 | ||||||||||||
作 | 業 | 日 | 報 | |||||||||
作 業 日 | 令和 年 | 月 | 日 曜日 | 天 候 | ||||||||
日報確認者名 | 安房土木事務所 | 監督員 | 印 | |||||||||
報告者氏名 | 主 任 技 術 者 | 印 | ||||||||||
作業従事者 | ||||||||||||
氏 名 | ||||||||||||
作業内容 No, | 1 穴 埋 め | 2 | 蓋取り替え | 3 | 側溝清掃 | 4 | 土砂片付け | |||||
5 歩道清掃 | 6 | 草 刈 り | 7 | 凍結対策 | 8 | 雪害対策 | ||||||
9 障害物除去 | 10 | 油漏れ処理 | 11 | 事故処理 | 12 | そ の 他 | ||||||
作業番号 | № | № | № | |||||||||
作業時間 | : ~ : | : ~ | : | : | ~ : | |||||||
作 | 路 線 名 | |||||||||||
業 | 地 先 名 | |||||||||||
箇 | 目 標 物 | |||||||||||
所 | 苦 情 № | |||||||||||
出来高 | ||||||||||||
残土・浚渫量 | ||||||||||||
発生材 | ||||||||||||
累計作業日 | 日 | 作業者走行距離 | ㎞ | |||||||||
資材使用量 | 加 熱 合 材 | t | 常温合材 | 袋 | ||||||||
側 溝 甲 蓋 | 寸法 | 枚 | ||||||||||
側 溝 甲 蓋 | 寸法 | 枚 | ||||||||||
U 字 溝 甲 蓋 | 寸法 | 枚 | ||||||||||
グレーチング | 寸法 | 枚 | ||||||||||
4 橋梁の管理について
(1) 安房土木事務所管内の橋梁の状況
① 安房土木事務所管内の道路及び橋梁の現況について
安房土木事務所管内の道路及び橋梁の状況は、以下のとおりである。
(図表 26)安房土木事務所管内の道路及び橋梁の状況
路線種別 | 路線数 | 道路延長(m) | 橋梁(※) | |
個数 | 延長(m) | |||
一般国道 | 2 | 111,591 | 137 | 3,913 |
主要地方道 | 8 | 109,695 | 131 | 1,686 |
一般県道 | 24 | 132,094 | 124 | 1605 |
自転車道 | 1 | 25,361 | 32 | 575 |
※ 橋梁数は国交省の道路統計年報において定義されている点検対象橋梁数を記載している。
(出所:安房土木事務所令和 2 年度事業概要)
② 橋梁の定期点検について
平成 25 年 6 月 25 日に道路法等の一部を改正する法律(平成 25 年法律第 30 号)が公
布され、平成 25 年 9 月 2 日より施行され、平成 26 年 3 月 31 日に道路法施行規則の一
部を改正する省令(平成 26 年国土交通省令第 39 号)及びトンネル等の健全性の診断結果
の分類に関する告示(平成 26 年国土交通省令告示第 426 号)が公布され、平成 26 年 7
月 1 日より施行された。あわせて、平成 26 年 4 月 14 日の社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会における「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」が示された。
これにより、橋梁の点検は近接目視により 5 年に 1 回の頻度を基本とし、その健全性に
ついては 4 段階に区分することとなっている。県においても、当該改正を受けて、橋梁の定期点検を実施している。
国土交通省は、橋梁定期点検要領を定め、道路法施行規則第 4 条の 5 の 6 の規定に基づいて行う定期点検について、道路管理者が遵守すべき事項や法令を運用するにあたり最低限配慮すべき事項を示している。
当該要領において健全性の判定区分を以下のとおり定めている。
(図表 27)要領における健全性の判定区分
区分 | 定義 | |
Ⅰ | 健全 | 道路橋の機能に支障が生じていない状態。 |
Ⅱ | 予防保全段階 | 道路橋の機能に支障が生じていないが、予防保全の観点か ら措置を講ずることが望ましい状態。 |
Ⅲ | 早期措置段階 | 道路橋の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を 講ずべき状態。 |
Ⅳ | 緊急措置段階 | 道路橋の機能に支障が生じている、又は生じる可能性が著 しく高く、緊急に措置を講ずべき状態。 |
また、判定区分のⅠ~Ⅳに分類する場合の措置の基本的な考え方は以下のとおりとしている。
(図表 28)判定区分Ⅰ~Ⅳに分類する場合の措置の基本的な考え方
Ⅰ | 監視や対策を行う必要のない状態 |
Ⅱ | 状況に応じて、監視や対策を行うことが望ましい状態 |
Ⅲ | 早期に監視や対策を行う必要がある状態 |
Ⅳ | 緊急に対策を行う必要がある状態 |
橋梁定期点検要領では、判定区分Ⅲである道路橋や部材については次回定期点検までに措置を講ずべきである一方で、判定区分Ⅱである道路橋や部材は、次回定期点検までに予防保全の観点からの措置を行うのが望ましいものであるとされている。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
橋梁の定期点検は計画的に実施されているか。 | ・橋梁の点検結果について担当者にヒアリングをし、関連資料を閲覧する。 |
橋梁長寿命化のための修繕計画は策定されているか、また、修繕は計画どおり進捗しているか。 | ・橋梁の長寿命化の修繕計画及び修繕の実施状況について担当者にヒアリングをし、関連資料を閲覧する。 ・現場視察を行う。 |
橋梁の耐震化のための計画は策定されているか、また、耐震化は計画どおり 進捗しているか。 | ・橋梁の耐震化のための計画及び耐震化工事の実施状況について担当者にヒアリング をし、関連資料を閲覧する。 |
(3) 実施結果
① 橋梁の定期点検の実施状況について
安房土木事務所における橋梁の定期点検の実施状況は以下のとおりであった。
(図表 29)安房土木事務所における橋梁の定期点検実施状況
一巡目 | 年度 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 合計 |
点検数 | - | 42 | 129 | 157 | 96 | 424 | |
Ⅳ | - | - | - | 1 | - | 1 | |
Ⅲ | - | 11 | 16 | 20 | 18 | 65 | |
Ⅱ | - | 23 | 76 | 71 | 38 | 208 | |
Ⅰ | - | 8 | 37 | 65 | 40 | 150 |
二巡目 | 年度 | 2019 | 2020 |
点検数 | 41 | 29 | |
Ⅳ | - | - | |
Ⅲ | 14 | 14 | |
Ⅱ | 19 | 12 | |
Ⅰ | 8 | 3 |
また、2019 年度及び 2020 年度に点検を行った 70 橋梁について 1 巡目の結果と対比
すると以下のとおりであった。点検結果の区分が 2 ランク上昇している橋梁について確認したところ、改修工事により点検結果の区分が上昇したものであった。
(図表 30)点検結果の区分が 2 ランク上昇している橋梁
一巡目点検結果 | 件数 | 二巡目点検結果 | 件数 | 備考 |
Ⅲ | 24 | Ⅲ | 20 | |
Ⅱ | 2 | |||
Ⅰ | 2 | 改修工事により区分Ⅰへ | ||
Ⅱ | 38 | Ⅲ | 7 | |
Ⅱ | 23 | |||
Ⅰ | 8 | |||
Ⅰ | 8 | Ⅲ | 1 | |
Ⅱ | 6 | |||
Ⅰ | 1 |
② 橋梁長寿命化のための修繕計画について
県では、千葉県橋梁長寿命化修繕計画を策定し、予防保全的な維持管理を実施することで、計画的な維持管理を行っている。長寿命化修繕計画では、点検結果から現状の損傷状況を把握して修繕を計画していくものであるため、点検結果Ⅲ及びⅣの橋梁について修繕計画が策定されているかを確認したところ、1 巡目の点検結果Ⅲ及びⅣの橋梁は 66 橋
梁であるのに対して、長寿命化修繕計画で修繕が計画されている橋梁は 65 橋梁であった。判定結果Ⅲの川端橋及び名戸川橋については、修繕計画策定時に対策が完了していたため対象橋梁に含めておらず、判定Ⅰの洲貝川橋については計画策定時に設計が完了していたため修繕計画に取り込んでいた。そのため、点検結果と修繕計画の対象橋梁は整合していることが確認できた。
③ 長寿命化修繕計画における修繕計画とその実施状況について
長寿命化修繕計画における安房土木事務所の修繕計画とその実施状況を確認したところ、長寿命化修繕計画で修繕が計画されている 65 橋梁のうち、監査時点において未着手
となっている橋梁は 24 橋梁あり、内訳は設計及び工事の遅れている橋梁が 1 橋梁、設計
が遅れている橋梁が 15 橋梁、令和 4 年度に設計を計画している橋梁が 8 橋梁あった。一
方、令和 4 年度以降に設計を計画していた橋梁のうち令和 3 年度以前に設計に着手して
いる橋梁は 6 橋梁であった。長寿命化修繕計画の遅れは、台風による災害復旧を優先していたためとのことであった。また、先行着手している案件は、現地確認により比較的工期がかからず容易に修繕を行うことができる案件に対応しているためであった。
(図表 31)長寿命化修繕計画における修繕計画の実施状況
南房千倉大橋
設計及び工事の遅れている橋梁
里見橋 2 号側道橋、南朝夷 1 号橋(仮称)、豊津橋、鏡浦橋、境橋、三号橋、川口 1 号
橋(仮称)、伊戸 1 号橋(仮称)、増間 3 号橋(仮称)、白浜 1 号橋(仮称)、伊戸自転車 3
号橋(仮称)、佐野橋側道橋、松尾橋、大橋、横峰橋
設計が遅れている橋梁
新大井橋、新海発橋、西長田 1 号橋(仮称)、神余 1 号橋(仮称)、二号橋、逆川橋、関
谷川橋、大里橋
令和 4 年度に設計を計画している橋梁
意 見(橋梁の修繕着手の遅れについて)
一巡目点検で早期に措置を講ずべき状態(判定区分Ⅲ)又は緊急に措置を講ずべき状態(判定区分Ⅳ)と診断された橋梁で、2020 年度末までに修繕等の措置に着手した割合は、判定区分Ⅳは 100%、判定区分Ⅲでは 58%であった。道路橋定期点検要領において判定区分Ⅲ・Ⅳである橋梁は次回点検まで(5 年以内)に措置を講ずるべきとされているため修繕着手が遅れている状況にある。現状の進捗を考慮して、判定区分Ⅲの橋梁について5 年以内の着手が難しいようであれば、該当する橋梁について優先順位付けをしてリスクの高い
橋梁から優先して修繕を行っていくことが必要である。
④ 橋梁の耐震化の対応状況について
県では、橋梁の耐震補強を行うために、昭和 55 年より前に建設、昭和 55 年以降平成 8年より前に建設といった耐震性能上の優先度と跨道橋、跨線橋、県境橋、一時緊急輸送道路上の橋といった道路の優先度から耐震補強をする橋の優先順位をつけたうえで耐震補強を行っている。県の進捗状況確認用の耐震補強リストによると安房土木事務所においては平成 28 年度から令和 7 年度の 10 年間で 38 橋について耐震補強を行うことを目指しており、現在 3 件が完了、1 件が継続中となっている。
橋梁の耐震化については、進捗状況確認用の耐震補強リストは存在するものの公式な計画としては策定されていない。これは、橋梁については関係者との協議が長期間にわたるなど、着手時期について県が独自に決定できない場合があり、精度のある計画が作成できないからとのことであった。
意 見(橋梁耐震化計画の作成及び事業実施状況の公表について)
県では、橋梁の耐震化については、公式な計画として策定・公表していない。これは、橋梁については関係者との協議が長期間にわたるなど、着手時期について県が独自に決定できない場合があり、精度のある計画が作成できないからとのことであった。しかし、他の自治体で橋梁の耐震化計画を作成して対応している自治体も存在するため、計画策定について検討されたい。
精度のある計画が作成できないというのであれば、少なくとも耐震化が必要な橋梁と対応への基本方針、年度の耐震化の実施状況、進捗率等を開示することで県民に対して耐震化の実施状況について情報を発信されたい。
5 トンネルの管理について
(1) トンネルの管理について
① 安房土木事務所管内の道路及びトンネルの現況について
安房土木事務所管内の道路及びトンネルの状況は、以下のとおりである。
(図表 32)安房土木事務所管内の道路及びトンネルの状況
路線種別 | 路線数 | 道路延長(m) | トンネル | |
個数 | 延長(m) | |||
一般国道 | 2 | 111,591 | 18 | 4,581 |
主要地方道 | 8 | 109,695 | 8 | 702 |
一般県道 | 24 | 132,094 | 7 | 1,164 |
(出所:安房土木事務所令和 2 年度事業概要)
② トンネルの定期点検について
平成 26 年 4 月 14 日の社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会における「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」を受けて、道路法施行規則の一部を改正する省令(平成 26 年国土交通省令第 39 号)及びトンネル等の健全性の診断結果の分類に関する
告示(平成 26 年国土交通省令告示第 426 号)が平成 26 年 3 月 31 日に公布され、平成
26 年 7 月 1 日より施行されている。
これにより、トンネルの点検は近接目視により 5 年に 1 回の頻度を基本とし、その健全性
については 4 段階に区分することとなっている。県においても、当該改正を受けて、トンネルの定期点検を実施している。
国土交通省は、道路トンネル定期点検要領を定め、道路法施行規則第 4 条の 5 の 6 の規定に基づいて行う定期点検について、道路管理者が遵守すべき事項や法令を運用するにあたり最低限配慮すべき事項を示している。
当該要領において健全性の判定区分を以下のとおり定めている。
(図表 33)要領における健全性の判定区分
区分 | 定義 | |
Ⅰ | 健全 | 道路トンネルの機能に支障が生じていない状態。 |
Ⅱ | 予防保全段階 | 道路トンネルの機能に支障が生じていないが、予防保全の 観点から措置を講ずることが望ましい状態。 |
Ⅲ | 早期措置段階 | 道路トンネルの機能に支障が生じる可能性があり、早期に措 置を講ずべき状態。 |
Ⅳ | 緊急措置段階 | 道路トンネルの機能に支障が生じている、又は生じる可能性 が著しく高く、緊急に措置を講ずべき状態。 |
また、判定区分のⅠ~Ⅳに分類する場合の措置の基本的な考え方は以下のとおりとしている。
(図表 34)判定区分Ⅰ~Ⅳに分類する場合の措置の基本的な考え方
Ⅰ | 監視や対策を行う必要のない状態 |
Ⅱ | 状況に応じて、監視や対策を行うことが望ましい状態 |
Ⅲ | 早期に監視や対策を行う必要がある状態 |
Ⅳ | 緊急に対策を行う必要がある状態 |
道路トンネル定期点検要領では、判定区分Ⅲである道路トンネルや変状については次回定期点検までに措置を講ずべきである一方で、判定区分Ⅱである道路トンネルや変状は、次回定期点検までに予防保全の観点からの措置を行うのが望ましいものであるとされてい る。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
トンネルの定期点検は計画的に実施さ れているか。 | ・トンネルの点検結果について担当者にヒア リングをし、関連資料を閲覧する。 |
トンネル長寿命化のための修繕計画は策定されているか、また、修繕は計画どおり進捗しているか。 | ・トンネルの長寿命化の修繕計画及び修繕の実施状況について担当者にヒアリングをし、関連資料を閲覧する。 ・現場視察を行う。 |
(3) 実施結果
① トンネルの定期点検の実施状況について
安房土木事務所におけるトンネルの定期点検の実施状況は以下のとおりであった。
(図表 35)安房土木事務所におけるトンネル定期点検実施状況
一巡目 | 年度 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 合計 |
点検数 | - | - | 14 | 9 | 10 | 33 | |
Ⅳ | - | - | 0 | 0 | 0 | 0 | |
Ⅲ | - | - | 7 | 4 | 4 | 15 | |
Ⅱ | - | - | 7 | 3 | 6 | 16 | |
Ⅰ | - | - | 0 | 2 | 0 | 2 |
二巡目 | 年度 | 2019 |
点検数 | 10 | |
Ⅳ | 0 | |
Ⅲ | 7 | |
Ⅱ | 3 | |
Ⅰ | 0 |
また、2019 年度に点検を行った 10 トンネルについて 1 巡目の結果と対比すると以下のとおりであり、点検結果が著しく悪化しているトンネルはなかった。
(図表 36)2019 年度に点検を行った 10 トンネルについての点検結果
トンネル名 | 1 巡目 | 2 巡目 | ||
点検年度 | 点検結果 | 点検年度 | 点検結果 | |
内浦トンネル | 2016 | Ⅲ | 2019 | Ⅲ |
川谷トンネル | 2016 | Ⅲ | 2019 | Ⅲ |
中山トンネル | 2016 | Ⅲ | 2019 | Ⅲ |
清澄トンネル | 2016 | Ⅲ | 2019 | Ⅲ |
西原トンネル | 2016 | Ⅲ | 2019 | Ⅲ |
荒樫トンネル | 2016 | Ⅲ | 2019 | Ⅲ |
実入トンネル | 2016 | Ⅱ | 2019 | Ⅱ |
小湊トンネル | 2016 | Ⅱ | 2019 | Ⅱ |
大神宮隧道 | 2016 | Ⅱ | 2019 | Ⅱ |
遠藤トンネル | 2016 | Ⅲ | 2019 | Ⅲ |
② トンネル長寿命化のための修繕計画について
県では、千葉県トンネル長寿命化修繕計画を策定し、予防保全的な維持管理を実施することで、計画的な維持管理を行っている。長寿命化修繕計画では、点検結果から現状の損傷状況を把握して修繕を計画していくものであるため、点検結果Ⅲのトンネルについて修繕計画が策定されているかを確認したところ、1 巡目の点検結果Ⅲのトンネルは 14 トンネルであるのに対して、長寿命化修繕計画で修繕が計画されているトンネルは 16 トンネルであった。
(図表 37)修繕計画が策定されているトンネルの点検結果
修繕計画が策定 されているトンネル名 | 点検結果 |
龍ヶ尾トンネル | Ⅲ |
坂下トンネル | Ⅲ |
向原トンネル | Ⅲ |
岩井トンネル | Ⅲ |
内浦トンネル | Ⅲ |
二夕間トンネル | Ⅲ |
池ノ谷トンネル | Ⅲ |
天津トンネル | Ⅰ |
嶺岡トンネル | Ⅲ |
日蓮トンネル | Ⅰ |
中山トンネル | Ⅲ |
清澄トンネル | Ⅲ |
西原トンネル | Ⅲ |
荒樫トンネル | Ⅲ |
実入歩道トンネル | Ⅲ |
川谷トンネル | Ⅲ |
天津トンネル及び日蓮トンネルについて、点検結果がⅠであるにもかかわらず長寿命化修繕計画を策定している理由を確認したところ、当該 2 トンネルについて公表されている点検結果(Ⅰ)は誤りであり、点検結果(Ⅲ)であり、国土交通省のホームページの全国道路構造物情報マップ(判定区分Ⅲ及びⅣのトンネルの点検記録と措置状況)が不正確なものであることが判明した。これは、公表資料を作成する際の転記誤りが原因とのことであった。
指 摘(点検結果の公表資料の誤りについて)
判定Ⅰで修繕実施中のものがあったため、点検結果の報告書を閲覧したところ判定区分はⅢであった。結果として、全国道路構造物情報マップ(判定区分Ⅲ及びⅣのトンネルの点検記録と措置状況)が不正確なものとなっていた。当該誤りについては修正する等適切に対応されたい。
③ 長寿命化修繕計画における修繕計画とその実施状況について
長寿命化修繕計画における安房土木事務所の修繕計画とその実施状況を確認したところ、その状況は以下のとおりであった。概ね計画どおりに進んでいることが確認できた。
(図表 38)安房土木事務所の修繕計画とその実施状況
トンネル名 | 設計実施 | 工事完成 | 工事実施状況 |
龍ヶ尾トンネル | 2018 年度 | 2021 年度 | 2021 年度工事完了 |
坂下トンネル | 2018 年度 | 2020 年度 | 2020 年度工事完了 |
向原トンネル | 2018 年度 | 2019 年度 | 2019 年度工事完了 |
岩井トンネル | 2018 年度 | 2020 年度 | 2020 年度工事完了 |
内浦トンネル | 2020 年度 | 2022 年度 | 工事発注の設計単価を決定するための 資材価格特別調査業務を実施中 |
二夕間トンネル | 2020 年度 | 2022 年度 | 工事発注の設計単価を決定するための 資材価格特別調査業務を実施中 |
池ノ谷トンネル | 2021 年度 | 2022 年度 | 補修設計を実施中 |
天津トンネル | 2021 年度 | 2022 年度 | 補修設計を実施中 |
嶺岡トンネル | 2021 年度 | 2023 年度 | 当期補修設計を実施予定 |
日蓮トンネル | 2021 年度 | 2022 年度 | 補修設計を実施中 |
中山トンネル | 2021 年度 | 2022 年度 | 補修設計を実施中 |
清澄トンネル | 2021 年度 | 2023 年度 | 当期補修設計を実施予定 |
西原トンネル | 2021 年度 | 2023 年度 | 当期補修設計を実施予定 |
荒樫トンネル | 2021 年度 | 2023 年度 | 当期補修設計を実施予定 |
実入歩道 | 2021 年度 | 2023 年度 | 当期補修設計を実施予定 |
川谷トンネル | 2022 年度 | 2023 年度 | 当期補修設計を実施予定 |
④ 橋梁及びトンネルの定期点検及び長寿命化の修繕工事の実施状況の開示について 橋梁及びトンネルの定期点検の状況ついては、道路メンテナンス年報の参考データとし
て、管理施設数、うち点検対象施設数、点検実施数、判定区分内訳(2016~2020 年度点
検結果)、年度点検実施施設名一覧、各都道府県における道路管理者毎の老朽化対策状況が、また、全国道路構造物情報マップにおいて、全国の判定区分Ⅲ及びⅣのトンネルの点検記録と措置状況が国土交通省のホームページに公表されている。一方で、県のホームページでは、道路施設点検として、橋梁点検結果(1 巡目:平成 26 年度から平成 30 年度)が土木事務所ごとに取り纏められ公表されており、国土交通省の道路メンテナンス年報のホームページへのリンクがされている。
意 見(定期点検及び長寿命化の修繕工事の実施状況の開示について)
県のホームページでは道路施設点検として各橋梁の診断結果を土木事務所ごとに表にして公表しているが、トンネル等の診断結果やそれぞれの措置状況(工事実施状況)は公表していない。橋梁の診断結果についても、1 巡目(平成 26 年度から平成 30 年度)の診断結
果の公表にとどまっている。そのため、その後の工事実施状況や 2 巡目の診断結果(途中経過)については分からない状況にある。
国土交通省で公表されている情報と重複する部分はあるが、全体の概要を説明するなど県民目線で分かりやすい情報開示について検討されたい。
6 道路の維持管理について
(1) 道路の維持管理について
県が管理している国・県道を良好な状態に維持し、交通安全の確保と沿道住民の生活環境を守るため、道路の舗装修繕を実施している。
土木事務所は、用地の買収、道路の設計・工事監督、維持管理を行っている。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
適時に道路の補修をしているか | ・道路補修の状況をヒアリングする。 ・パトロールの状況をヒアリングする。 ・維持管理に関する資料の閲覧する。 |
(3) 実施結果
① 道路維持修繕について
道路の維持管理を目的として、平常時のパトロールとして、日常パトロール、詳細パトロールがある。このほかに、あるくパトロールがある。
日常パトロールは、道路施設等の損傷・劣化及び安全対策等について、安全かつ円滑な通行に支障となる恐れがある要因を発見するため、日常的に車で実施するパトロールをいう。
詳細パトロールは、所管区域内管理道路すべてについて道路施設等及び交通の状況等の詳細な状況を把握するため、毎年度歩行により実施するパトロールをいう。
あるくパトロールは、道路施設や交差点通行の支障となる障害物を点検し改善を図るため、「あるくパトロール実施要領」に基づき実施するパトロールをいう。
それぞれのパトロールにおいて修繕の必要箇所がリストアップされ、その後の改善の経過が管理されている。
このうち、「あるくパトロール」を 8 月及び 9 月に実施し、実施直後に発見箇所を報告した
のち、その後の修繕等について 2 月末時点の改善状況を道路環境課に報告することとなっている。8 月の道の日にちなんで 8 月及び 9 月に実施し、NPO 法人など、職員以外の県民も参加して行っている。
「あるくパトロール」に関して、安房土木事務所から道路環境課への令和 2 年 2 月末時点
の改善状況の報告において、令和 2 年 1 月までに工事で対応した 1 件について、未処理として誤って報告されている。
3 種のパトロールがある中で、「あるくパトロール」における発見箇所について 2 月の改善状況を報告する目的が不明である。報告内容が予算に反映されるなどの目的がなく、報告そのものが目的となっている。
意 見(あるくパトロールについて)
「あるくパトロール」2 月の改善状況の報告目的が不明である。いずれのパトロールによって把握されようと、すべての発見事項に対して、修繕等の改善を実施することが肝要であり、
「あるくパトロール」のみの改善状況を報告しても、所内供覧をしているだけである。「あるくパトロール」のみの改善状況の報告は廃止し、その他のパトロールと同列で報告されたい。
8 月の道の日にちなんで安房土木事務所では 8 月に実施しているが、夏休み中で交通
量の多い時期に、NPO の方と複数人で実施しており、交通事故になりかねないため、8 月
にこだわらず、交通量の少ない時期に実施することを検討されたい。
② 県民相談カードについて
県民から寄せられる道路に関する苦情・要望について、県民相談カードを作成している。県民相談カードには、受付年月日、相談者、相談内容、処理方法等を記載し、処理が終了したものは維持課長の承認印を押印して保管している。
県民相談カードについて、1 件ごとにエクセルで管理するとともに、県民相談処理状況一覧にて、PC で処理状況を管理している。
安房土木事務所において、令和 2 年度における県民相談カード 150、160 について、印刷のファイリングが抜けていた。その理由は、通常、処理後に押印する際に印刷しているため、年度末において改善未了であったため印刷が未了であったためである。
意 見(県民相談カードについて)
令和 2 年度における県民相談カード 150、160 について、印刷物のファイリングが抜けていた。その理由は、通常、処理後に押印する際に印刷しているが、年度末において改善未了であったため印刷が未了であったことである。
押印する事務を減らす意味でも、県民相談カードについて、エクセル管理を正として、承認日・承認者を残すことを検討されたい。
7 物品管理について
(1) 物品管理について
物品の調査については、財務規則に以下のとおり規定されている。
(調査)
第二百三条 出納員、分任出納員又は物品取扱員は、毎月一回、自己の保管に係る物品について、調査して、確認しなければならない。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
物品調査の実施状況 | ・物品調査の実施結果に関し、関連資料の 閲覧及び担当者へのヒアリングを実施する。 |
(3) 実施結果
物品については、財務規則により毎月一回、調査及び確認することとなっている。令和 2
年度において、総務課担当者が毎月物品調査を実施しているとのことであるが、実施結果
が残されていない。
意 見(物品管理について)
物品調査については、財務規則に則り調査を実施した事実を明らかにするため、また事後的な検証を可能とするために実施結果を記録及び保管する必要がある。
8 債権管理について
(1) 債権管理について
未収金回収対策マニュアル(河川環境課 平成 20 年 4 月)に、以下の記載がある。
目的
河川海岸地域の自然環境への著しい支障や国民の自由な利用の阻害となった不法占用などの不当な行為に対して実施した行政代執行に要した費用、各法令に基づく負担金及び使用料等及びその他強制手続きや事務管理等に要した費用の徴収に関しては、債務者が悪質で巧妙に納付を逃れたり、納入すべき金額が高額となっているなど、その回収には困難を極めているところであります。また、その費用の回収に当る職員が、徴収事務やそれに伴う複雑かつ高度な事務に不慣れなことから本マニュアルを作成し、その事務をわかりやすくし、早期費用の回収を推進するものである。
(中略)
滞納処分
督促状による納付の不履行により強制徴収することとなるが、まずは、催告書を送付するに当たり個別に以下の書類を取り揃え、滞納整理票(別紙様式 1、2)を作成し、目録を付してファイルする。記事は、簡潔に要点や情報を中心に記載すること。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
滞納未収入金に係る督促業務の実施 状況 | ・未収金回収対策マニュアル、関連資料の 閲覧及び担当者へのヒアリングを実施する。 |
年度末における収入未済額の繰越処 理が正しく行われているか | ・収入未済額繰越伝票、および添付書類を 閲覧する。 |
(3) 実施結果
① 滞納未収入金の管理について
滞納未収入金(令和 3 年 3 月 31 日時点残高 35,985 円、件数 3 件)に関し、未収金回
収対策マニュアル(河川環境課平成 20 年 4 月)に沿って管理を行っている。管理状況に関しては、滞納整理票に債務者名・債務者住所・債務内容・金額・督促履歴等を記録しているが、以下の滞納未収入金に関して、既に入金済みであるにもかかわらず当該滞納整理票に顛末の記載がなされていない。
(図表 39)滞納未収入金の状況
債務者 | K 社 |
内容 | 海岸保全区域使用料 |
金額 | 3,200 円 |
発生年月 | 令和 2 年 4 月 |
債務者 | 個人 |
内容 | 国有土地使用料(公共空地) |
金額 | 113,470 円 |
発生年月 | 令和 2 年 5 月 |
なお、K 社については令和 2 年 10 月 23 日、個人については令和 2 年 6 月 25 日に、それぞれ入金されていることを確認している。
意 見(滞納未収入金の管理について)
滞納整理票については、未収金回収対策マニュアルに従った記載をし、督促履歴や顛末等について一見してわかるよう記載されなければならないが、当該事例では顛末の記載を失念していた。滞納未収入金の督促を適時適切に実施するために、顛末を漏れなく記載する必要がある。
② 財務情報システムの繰越処理について
千葉県の財務情報(債権管理情報を含む)システムは、未回収分の債権について次年度繰越処理をすると、繰越された債権については、前年度の 3 月末債権残高に表示されなくなる。そのため、財務規則の運用通達では、「収入未済額繰越伝票」を起票する際に、「収入未済額一覧表」を添付して決裁することとなっている。つまり、繰り越す収入未済金が確定した 4 月の段階で、3 月 31 日(年度末)時点の「収入未済額一覧表」を出力し、その確定額を確認した上で「収入未済額繰越伝票(4 月 1 日付け)」を起票するという本来の適正な繰越手続きを行えば、「決算月における正しい未済額」の一覧表も伝票と併せて文書保管されることになる。しかしながら、令和 2 年度末の繰越処理においては収入の見込みがないこと、また年度当初の多忙を懸念し、3 月 31 日(年度末)時点の「収入未済額一覧表」を添付せ
ず、事前に準備した 2 月末時点の「収入未済額一覧表」を添付していた。そのため、往査当日、3 月 31 日(年度末)時点での「収入未済額一覧表」を閲覧することができなかった。
なお、財務情報システムにおける収入未済額繰越伝票を起票すると前年度 3 月末の一覧表に表示されなくなる現象は、安房土木事務所に特有のものではなく、当該財務情報システムを使用する県土整備部及び出先機関共通の事象である。
指 摘(「収入未済額一覧表」の添付漏れについて)
安房土木事務所では、「収入未済額繰越伝票」を起票する際に 3 月 31 日(年度末)時点の「収入未済額一覧表」の出力及び添付を失念しており、財務規則運用通達に沿った処理が行われていなかった。この点につき、今後は通達に沿った処理を行うことが必要である。
意 見(財務情報システムについて)
県土整備部で使用している財務情報システムは、未回収の債権につき次年度繰越処理をすることで、前期末残高が表示されなくなるという仕様となっている。そのため、繰越後に 3 月 31 日(年度末)の「収入未済額一覧表」を印刷した場合、決算の金額と明細の金額が不
一致となる。当該不一致を回避するために、未収額が確定すると 3 月 31 日(年度末)時点
での「収入未済額一覧表」を印刷し、添付することが求められているが、そもそも、次年度繰越処理後においても「収入未済額一覧表」に前期末残高が表示される仕様となれば、このような手間は生じない。財務情報システムについては、システムの改修を含めた対応策について、担当部署と検討し、最善の方法を探ることが望まれる。
Ⅳ 江戸川下水道事務所
1 江戸川下水道事務所の概要
(1) 江戸川下水道事務所の概要について
江戸川左岸流域下水道事業の管内区域は、市川市、船橋市、松戸市、野田市、柏市、流山市、浦安市、鎌ケ谷市の 8 市で、昭和 40 年代以降急激に都市化が進み、令和 3 年 3
月 1 日現在で約 270 万人(県の総人口約 628 万人)で、県人口の 43.0 パーセントを占めている。
この著しい都市化により、江戸川の水質汚濁が年々進行していたことから、昭和 45 年 9月に公害対策基本法に基づく水質環境基準の類型指定がなされ、水質浄化の第一施策として昭和 48 年 3 月に都市計画決定並びに事業認可を受けて江戸川左岸流域下水道事業に着手した。この事業の計画面積は、20,417 ヘクタールで、8 市の行政区域面積の約 41 パーセントを占めている。汚水処理の対象となる計画人口は、令和6 年度の土地利用人
口密度を想定して、約 142 万人となっている。
(2) 組織及び人員配置
① 組織図
(図表 40)江戸川下水道事務所組織図
② 職員配置
(図表 41)江戸川下水道事務所の職員配置
(令和 3 年 8 月 1 日現在)
区分 | 事務職員 | 技術職員 | 計 | 前年度計 | 増減 |
所属長 | 0 | 1 | 1 | 1 | 0 |
次長 | 1 | 2 | 3 | 3 | 0 |
課長・主幹 | 1 | 1 | 2 | 2 | 0 |
課長(副主幹) | 0 | 1 | 1 | 1 | 0 |
副主幹 | 1(兼 1) | 5 | 6(兼 1) | 7(兼 1) | -1 |
主査 | 2(兼 1) | 5 | 7(兼 1) | 5(兼 1) | 2 |
副主査 | 0 | 3 | 3 | 4 | -1 |
主任技師 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
主事・技師 | 5 | 8 | 13 | 16 | -3 |
その他の職員 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
小計 | 10(兼 2) | 26 | 36(兼 2) | 39(兼 2) | -3 |
会計年度任用職員 | 0 | 0 | 0 | 1 | -1 |
合計 | 10(兼 2) | 26 | 36(兼 2) | 40(兼 2) | -4 |
休職 1 名
(3) 令和 2 年度予算
① 予算
(図表 42)令和 2 年度江戸川下水道事務所予算
(単位:百万円)
区分 | 現年 | 繰越 | 合計 |
収益的支出 | 12,217 | - | 12,217 |
流域下水道事業費用 | 12,217 | - | 12,217 |
営業費用 | 12,217 | - | 12,217 |
資本的支出 | 6,053 | 4,060 | 10,113 |
建設改良費 | 5,434 | 4,060 | 9,494 |
建設事業費 | 1,985 | 2,960 | 4,945 |
建設総務費 | 3,449 | 1,100 | 4,549 |
資産購入費 | 619 | - | 619 |
有形固定資産購入費 | 615 | - | 615 |
無形固定資産購入費 | 4 | - | 4 |
合計 | 18,270 | 4,060 | 22,330 |
(4) 主要事業の概要
江戸川左岸流域下水道事業の総事業費は 3,820 億円で、管渠延長 115.5 ㎞、ポンプ
場 3 箇所及び終末処理場 2 箇所を建設しようとするものである。
現在、管渠については、行徳幹線・浦安幹線・流山第一幹線・流山第二幹線・矢切幹線・市野谷幹線・野田幹線・市川幹線・松戸幹線及び江戸川幹線の全線並びに連絡幹線の一部が供用開始している。
終末処理場については、第二終末処理場の水処理施設 8 系列及び東系列 1/2 が完成し、日平均 364,000 ㎥の汚水処理が可能となっている。また、令和 3 年 3 月 1 日には、第
一終末処理場を供用開始しており、日平均 20,000 ㎥の汚水処理が可能となっている。
2 流域下水道事業における負担金収入について
(1) 流域下水道事業における負担金収入について
① 流域下水道事業における負担金収入について
流域下水道は、行政区域にとらわれることなく、一つの河川・湖沼などの区域にある二つ以上の市町村の公共下水道から流れてくる下水を広域的に集めて、終末処理場で浄化し、公共用水域に放流する大規模な下水道のことである。そのため、市町村が個々に下水を処理するよりも、一括処理する方が効果的な場合に実施され、公共下水道が接続する幹線管渠及び終末処理場の建設・管理は県が行っている。
流域下水道事業は、各市町村からの維持管理費負担金等により運営が行われ、終末処理場の建設費については、補助金、企業債、各市町村からの建設費負担金等によって賄われている。
令和 2 年度の収益的収入の維持管理費負担金の決算額は、19,714,323 千円、資本的収入の建設費負担金の決算額は 886,756 千円であった。
② 維持管理費負担金の請求事務処理について
維持管理費負担金の請求事務処理の概要は以下のとおりである。
・前年 10 月に負担金予定額の算定を行う。負担金予定額は、「千葉県流域下水道事業経営戦略」(以下、「経営戦略」という。)で設定した汚水量に単価を乗じて算定(A)する。
↓
・当年度の6 月、9 月、12 月、3 月に負担金の請求を行う。6 月、9 月、12 月については、 10 月に算定した負担金予定額の 1/4 の請求(A/4)を行う。3 月の請求は、負担金予定額の 1/4 から執行残と不用額を控除した額(A/4-執行残-不用額=B)となる。
↓
・翌年度の 7 月に負担金の精算を行う。負担金の精算は、3 月の負担金の請求額から追加不用額と精算時水量による変更分について行われる。
③ 建設費負担金の請求事務処理について
建設費負担金の請求事務処理の概要は以下のとおりである。
・前年 10 月に負担金予定額の算定を行う。負担金予定額は、当初予算の市町村費(C)としている。なお、補助事業における市町村費は全体の 1/4(全体の 1/2 が国費、全体の 1/4 は県費)、単独事業での市町村費は全体の 1/2(残りの 1/2 は県費)となる。
↓
・当年度の6 月、9 月、12 月、3 月に負担金の請求を行う。6 月、9 月、12 月については、
10 月に決定した負担金予定額の 1/4 の請求(C/4)を行う。3 月の請求は、負担金予定額
の 1/4 から 2 月補正後の市町村費予算までの減額分と前年度の執行残を控除した額とする。3 月に前年度分の最終調整を行うため、維持管理費負担金と異なり 7 月に精算は行われない。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
維持管理費負担金の請求根拠は適切か。 | ・維持管理費負担金の請求根拠について担当者にヒアリングを行い、根拠資料を閲覧す る。 |
建設費負担金の請求根拠は適切か。 | ・建設費負担金の請求根拠について担当者 にヒアリングを行い、根拠資料を閲覧する。 |
一般会計繰入金の計算は適切か。 | ・一般会計繰入金の計算根拠について担当者にヒアリングを行い、根拠資料を閲覧す る。 |
(3) 実施結果
① 流域下水道維持管理費負担金の計算根拠について
1) 請求額の計算根拠について
各市へ請求する流域下水道維持管理費負担金は、以下の算式により計算されている。
・令和 2 年度の負担金予定額の算定負担金予定額(総額)
=負担金対象汚水量(㎥)(予定)×単価(江戸川左岸流域は 63.4 円)
※負担金対象汚水量(㎥)(予定)は、経営戦略で策定した汚水量
・各市の負担金対象汚水量(予定)(㎥)の算定
6 月、9 月、12 月請求分
各市の負担金対象汚水量(予定)(㎥)
=処理場流入水量(その他水量除く)(予定)
×各市の下水道使用料調定汚水量(予定)÷調定汚水量の 8 市合計(予定)
3 月請求分
各市の負担金対象汚水量(見込)(㎥)
=処理場流入水量(その他水量除く)(見込)
×各市の下水道使用料調定汚水量(見込)÷調定汚水量の 8 市合計(見込)
7 月精算分
各市の負担金対象汚水量(実績)(㎥)
=処理場流入水量(その他水量除く)(実績)
×各市の下水道使用料調定汚水量(実績)÷調定汚水量の 8 市合計(実績)
なお、上記式のうち処理場流入水量(その他水量除く)において、その他水量を除いている理由は、手賀沼流域において、道路の路面上の細かな塵を含んだ雨水を処理場で処理しており、その水量等を除いているためである。
また、下水道使用料調定汚水量は、上水道の使用量のことであり、処理場流入水量は、処理場のポンプでくみ上げた水量を測定したものである。下水道使用料調定汚水量の 8 市合計と処理場流入水量は、家庭から処理場に流入する間で雨水が含まれるため数字は一致しない。
2) 単価の根拠について
江戸川左岸流域における単価の 63.4 円については、法適用された令和 2 年度より改定
されている。単価は 5 年ごとに流域関連市町村等からの意見を聞いたうえで、見直し、改定
を行っている。今回の単価については、令和 2 年度から令和 6 年度までの江戸川左岸流域の収益的収支予算を基に算定されている。
当該予算には、減価償却費が含まれているため建設費の負担範囲をどこまでとするかが問題となる。現在の処理においては、「減価償却費-長期前受金戻入」の部分について流域を構成する各市が負担している。当該部分は、建設費における県費のうち起債対象外の部分である。県としては流域加入自治体のみに財源をつけることは他団体との公平性の観点から好ましくないと考えているためとのことであった。
この点、総務省からの通知「下水道事業繰出基準の運用について」(平成 18 年 4 月 19
日総財経第 69 号)において、「流域下水道事業にあっては、都道府県と市町村の間で適切な負担区分を協議して負担額を決められたい。」とされており、減価償却費を含めるべきかについては、流域加入団体との協議により決めることとなっており、当該通知に基づいた処理となっていた。
また、当該予算においては予備費が含まれると共に、決算において予算で見込む以上の利益が計上された場合に、当該利益部分については取り扱いも整理されている必要がある。
この点については、関連各市が参加する千葉県流域下水道維持管理連絡調整会議委員会において、予備費については、3 流域全体で約 10 億円(5 年間の累計)を見込むこと、予備費は利益積立金に積立てを行い、その 5%については減債積立金として翌年度に取り崩すこと、利益積立金は 10 億円を限度額とし、10 億円に達した場合にはこれを保持し、次回の単価改定では、原則予備費を見込まないこと、利益積立金としての必要額は、次期単価改定時に検討し、関連市町と協議することが決められており、取り扱いが整理されていることが確認できた。
意 見(予備費の取り扱いについて)
予備費については関連各市が参加する千葉県流域下水道維持管理連絡調整会議委員会においてその取扱いが決定している。予算通りの執行が行われると当初予算における予備費は、決算においてはプラスの収支差額となり、利益剰余金に積み立てられることになる。想定より利益剰余金が増加した場合は、本来的には、各市の負担金が当初想定より過大な状態になるため、当該取り扱いに基づいて適切に処理を行い、利益剰余金が過剰とならないように留意されたい。
② 建設費負担金の計算根拠について
流域下水道の建設費について、財源として市町村が負担する部分が建設費負担金となる。具体的には、国の補助率 1/2 の補助事業については建設費の 1/4、国の補助率 2/3 の補助事業については建設費の 1/6、県単独事業については建設費の 1/2 を建設費負担金として各市町村に請求している。
各市の負担率は、平成 23 年度に策定された江戸川左岸流域下水道事業全体計画に基
づいて平成 24 年度より新負担率が適用されている。新負担率は、以下のように計算されている。
・新負担率=各市が負担すべき残建設費負担金/全体の残建設費負担金総額
・全体の残建設費負担金
=全体の建設費負担金―全体の平成 23 年度までの建設費負担額
・各市が負担すべき残建設費負担金
=各市の建設費負担金―各市の平成 23 年度までの建設費負担額
・全体の建設費負担金
=全体事業費(382,000 百万円)のうち、財源として市が負担すべき部分(82,155 百万円)
・各市の建設費負担金
=全体の建設費負担金(82,155 百万円)×各市の計画汚水量割合
・各市の計画汚水量割合
=該当する市の日最大計画汚水量/日最大計画汚水量 8 市合計
各市が最終的に負担することになる建設費負担金は、全体計画の計画汚水量割合に基づいており、指摘すべき事項は検出されなかった。
③ 一般会計繰入金の計算根拠について
令和 2 年度の一般会計繰入金は2,372,453 千円であり、その内訳は以下のとおりであった。
(図表 43)令和 2 年度一般繰入金内訳
(単位:千円)
繰入金の内訳 | 金額 |
人件費 | 46,291 |
建設費 | 209,361 |
公債費(元金分) | 1,810,699 |
公債費(利息分) | 306,102 |
合計 | 2,372,453 |
上記のうち、人件費と公債費(利息分)の合計額 352,393 千円が損益計算書の営業外収
益-他会計補助金として計上されており、建設費と公債費(元金分)の合計額 2,020,060 千円が資本的収入の他会計補助金として計上されている。
なお、上記建設費に対する繰入れは、各市が負担している建設費負担金の積算には含まれていない部分である。
一般会計繰入金の繰入れ根拠を確認したところ、以下のとおりであった。
人件費については、市町村指導及び流域別下水道総合計画の業務を行う職員分を一般会計が負担している。市町村指導の業務については、その性質から県が負担すべきものである。また、流域別下水道総合計画の業務についても、県全体の計画策定の業務であることから一般会計で負担すべきものであると考えられる。
建設費については、施設の建設に直接結びつかない資材価格調査などの企業債の起債対象外となる事業費については、一般会計が負担している。これは、関係市町村に負担させるべき額は、その建設に要する費用については、当該費用から国費を除いた額の 2 分
の 1 以下の額とすることとされているためであった。
人件費及び建設費の繰出基準は、総務副大臣通知『令和 2 年度の地方公営企業繰出金について(通知)』等に規定されていないため、地方公営企業法第十七条の三を根拠として、一般会計から繰入れを行うものとのことであった。
一方で、公債費については、総務副大臣通知『令和 2 年度の地方公営企業繰出金について(通知)』に規定されており、当該繰出基準に基づき算出した繰入額は以下のとおりであった。
(図表 44)繰出基準に基づき算出した繰入額
(単位:千円)
操出基準の該当部分 | 繰入額 |
第 8 下水道事業 2 分流式下水道等に要する経費 | 1,185,610 |
第 8 下水道事業 3 流域下水道の建設に要する経費 | 522,687 |
第 8 下水道事業 7 高度処理に要する経費 | 51,719 |
第 8 下水道事業 10 地方公営企業法の適用に要する経費 | 17,073 |
第 10 その他 5 臨時財政特例債の償還に要する経費 | 339,712 |
合計 | 2,116,801 |
一般会計繰入金の計算根拠について、指摘すべき事項は検出されなかった。
3 業務委託契約について
(1) 契約の概要
① 随意契約
地方自治法第 234 条第 1 項には、自治体が締結可能な契約の方式が定められてい
る。このうち随意契約については、同条第 2 項及び地方自治法施行令第 167 条の 2 第
1 項において契約可能な要件が定められている。
② 入札
地方公共団体における調達は、その財源が税金によって賄われるものであるため、より良いもの、より安いものを調達しなければならない。そのため、地方公共団体が発注を行う場合には、不特定多数の参加者を募る調達方法である「一般競争入札」が原則とされている。
「一般競争入札」とは、公告によって不特定多数の者を誘引して、入札により申込をさせる方法により競争を行わせ、その申込のうち、地方公共団体にとって最も有利な条件をもって申込をした者を選定して、その者と契約を締結する方法をいう。県では、入札・契約制度の公正性、透明性、競争性を確保するため、平成6 年度から資格条件を付した一般競争入札を導入している。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
業務委託契約の適格性について | ・業務契約一覧を入手し、個別の契約について契約書を閲覧する。 ・契約内容、進捗状況等についてヒアリング する。 |
契約手続きの適正性について | ・個別契約の入札手続きについて検証する。 ・随意契約の妥当性について検証する。 |
(3) 実施結果
① 千葉県下水道公社との業務委託契約(随意契約)
毎月各種報告を受け、報告書も受領しており、検査担当副主幹がその内容をチェックし、検査調書を作成している。また、問題事項についてはその都度打合せ記録を作成している。
当該随意契約については、理由は明確であり、適切な書類作成、承認関係も実施されている。
② 委託費関係の一般競争入札について
江戸川左岸流域下水道脱水ケーキ、し渣及び沈砂の収集運搬及び処分業務の委託契約については、全体を 7 つの契約に分けて、各々1 者入札で、ほぼ前年度と同一業者が契約しており、中には数期にわたり同一業者が継続して契約している事例もある。特殊な業務であり、大規模な企業も無いので、業務を分けて契約している(処理量 2 万トン 1 件と
1 万トン 4 件、3 千トン 2 件)とのことである。
前年度の同業務は、1 件数千トンの単位で、(その 17)まであった。緊急契約を除外してすべて 1 者入札であるが、応札者なしで、再入札した案件も 4 件あった。
なお、この業務委託契約は、政府調達に関する協定(WTO協定)に基づく調達契約で、国内外を問わず入札参加資格において地域要件を設定していないものであり、「物品・委託契約及び物品管理事務の手引」(令和 3 年 5 月総務部管財課)によれば、『一般競争入札においては、入札者は、当初は他に入札者があるかどうかを知る由もないのであるから、他に入札者があるであろうことを予想し、これと競争する意思をもって入札に参加するはずであって、この意味において入札の本質である競争性は失われていないものであり、また、一般競争入札は、広く公告をして入札希望者を募集するもので、それにもかかわらず、入札者が 1 人にすぎなかったということは、他の同業者は、競争入札をするまでもなく、すでに
競争に敗れた者とみるべきであり、したがって、たとえ 1 人だけの入札でも入札に必要な競
争性は失われるものではないともいえるので、1 人だけで入札を行っても差し支えないものである。』
との文言に従って、1 者入札でも原則として認められるとの下水道事務所の見解である。なお、令和5 年度に焼却施設が完成すれば、下水道脱水ケーキの外部業者への業務委
託の分量が半分以下になるので、1 者入札は解消できる見通しとのことである。
意 見(1 者入札について)
入札制度の趣旨からして、1 者入札は極力回避する必要がある。
また、「物品・委託契約及び物品管理事務の手引」(令和 3 年 5 月総務部管財課)を 1 者入札正当性の根拠にしているが、手引きに記載されている状況判断と当該委託契約案件では、実態認識に大きな乖離があると言わざるを得ない。
さらに、継続して同一業者が落札・受託している契約もあり、入札及び契約結果の状況をみると果たして適切な競争があったのかという点について、疑義が残る。
令和 5 年度には、下水道脱水ケーキの外部業者への業務委託の分量半減により、入札
において競争状態が作られる見通しとの説明であるが、それ以前にもできるだけ 1 者入札を回避する方策の検討及び努力が求められる。
4 江戸川第一終末処理場の建設に係る契約について
(1) 江戸川第一終末処理場の整備について
① 事業の概要
江戸川第一終末処理場は、生活環境の改善や公共水域を保全するために、昭和 56
年から供用している江戸川第二終末処理場と合わせて、江戸川左岸流域下水道の 8 市 (市川市、船橋市、松戸市、野田市、柏市、流山市、鎌ケ谷市、浦安市)からの汚水を処理する施設であり、計画処理人口の増加により、平成 18 年の事業変更認可に追加され整備を進めている。
(図表 45)江戸川第一終末処理場の概要
所在地 | 市川市本行徳地先 |
敷地面積 | 約 30.3ha |
処理水量(日平均) | 約 20 万㎥ |
下水道事業計画(認可日) | 平成 18 年 3 月 3 日 |
都市計画事業(認可日) | 平成 18 年 3 月 23 日 |
② 第 1 期区域で供用開始する主な施設
江戸川第一終末処理場は、早期供用開始を図るため必要な施設を集約して配置した第 1 期区域(9.8ha)を重点的に整備し、施設が完成したことから令和 3 年 3 月 1 日付で
供用を開始している。第 1 期区域では、汚水処理に必要な施設として、主ポンプ棟、水
処理施設(第 1 系列)、汚水処理棟などを供用開始した。なお、残りの区域(20.5ha)については、公共下水道整備の進捗や汚水の流入量の増加等を考慮し、必要な施設を段階的に整備していくこととしている。
(図表 46)江戸川第一終末処理場の全体計画及び第 1 期計画
全体計画 | 第 1 期計画 (平成 18~令和 2) | |
整備面積 | 約 30.3ha | 約 9.8ha |
処理水量 | 約 20 万㎥/日平均 | 約 2 万㎥/日平均 |
③ 今後の整備について
今後の整備については、令和2 年度から水処理施設(第2 系列)の整備を進めるため、
基礎工事に着手している。汚泥焼却炉については、令和 5 年度の完成を目指し整備を進めている。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
日本下水道事業団との協定について、金額、工期等どのように決められているか | ・日本下水道事業団との協定書を閲覧し、条件等を確認する。 ・協定書の金額に変更がある場合には、債務負担額の変更につき適切な手続きが 取られているかを確認する。 |
(3)実施結果
① 江戸川第一終末処理場の建設工事委託について
江戸川第一終末処理場の汚泥焼却施設建設工事については、日本下水道事業団との委託契約に基づき実施されている。日本下水道事業団との契約は、平成 29 年 8 月
23 日に基本協定を結んでいるが、それ以降、基本協定の変更が 1 回、基本協定に基づ
く年度実施協定については 11 回の変更を重ねている。協定の変更履歴は、下記のとおりである。
(図表 47)基本協定及び年度実施協定の変更履歴
協定 | 締結日 | 内容 |
基本協定 | 平成 29 年 8 月 23 日 | 協定額 8,924,582 千円 期間 平成 29 年度~平成 32 年度 |
年度実施協定 | 平成 29 年 10 月 17 日 | 協定額 8,924,582 千円 期間 平成 29 年度~平成 32 年度 |
年度実施協定 第 1 回変更 | 平成 30 年 3 月 22 日 | 平成 29 年度完成期限の変更 平成 30 年 3 月 31 日→平成 30 年 9 月 28 日 |
年度実施協定 | 平成 30 年 9 月 27 日 | 平成 29 年度完成期限の変更 |
第 2 回変更 | 平成 30 年 9 月 28 日→平成 31 年 3 月 29 日 | |
年度実施協定第 3 回変更 | 平成 31 年 3 月 11 日 | 協定額 8,924,582 千円→8,899,124 千円 平成 29 年度分 416,582 千円→394,724 千円 平成 30 年度分 1,143,070 千円→1,139,470 千円 |
年度実施協定 第 4 回変更 | 平成 31 年 3 月 28 日 | 平成 30 年度分完成期限の変更 平成 31 年 3 月 31 日→平成 31 年 9 月 30 日 |
年度実施協定 第 5 回変更 | 令和元年 9 月 26 日 | 平成 30 年度完成期限の変更 平成 31 年 9 月 30 日→令和 2 年 3 月 31 日 |
年度実施協定第 6 回変更 | 令和 2 年 3 月 25 日 | 協定額 8,899,124 千円→5,825,188 千円 平成 30 年度分 1,139,470 千円→821,700 千円 令和 2 年度分 5,873,938 千円→3,117,772 千円 |
年度実施協定 第 7 回変更 | 令和 2 年 3 月 27 日 | 平成 31 年度完成期限の変更 平成 32 年 3 月 31 日→令和 2 年 9 月 30 日 |
年度実施協定 第 8 回変更 | 令和 2 年 9 月 25 日 | 平成 31 年度完成期限の変更 令和 2 年 9 月 30 日→令和 3 年 3 月 31 日 |
基本協定 第 1 回変更 | 令和 3 年 1 月 27 日 | 協定額 8,924,582 千円→6,050,915 千円 期間 平成 32 年度→令和 5 年度 |
年度実施協定第 9 回変更 | 令和 3 年 1 月 27 日 | 協定額 5,825,188 千円→6,050,915 千円 令和元年度分 1,490,992 千円→1,013,398 千円令和 2 年度分 3,117,772 千円→2,150,000 千円 令和 3 年度分 0 千円→ 573,201 千円 令和 4 年度分 0 千円→ 552,402 千円 令和 5 年度分 0 千円→ 545,490 千円 |
年度実施協定 第 10 回変更 | 令和 3 年 3 月 31 日 | 令和 2 年度完成期限の変更 令和 3 年 3 月 31 日→令和 3 年 9 月 30 日 |
年度実施協定 第 11 回変更 | 令和 3 年 9 月 27 日 | 令和 2 年度分完成期限の変更 令和 3 年 9 月 30 日→令和 4 年 3 月 31 日 |
また、協定書額の変更とそれに合わせた債務負担額の変更及び支出状況は、下記のとおりである。
(図表 48)協定書額の変更、債務負担額の変更及び支出状況の一覧
【当初年度実施協定(平成 29 年 10 月 17 日)】 (単位:千円)
年度 | 協定額 | 支出 (現年分) | 支出 (繰越分) | 支出額計 |
平成 29 年度 | 416,582 | 0 | 0 | 0 |
平成 30 年度 | 1,143,070 | 0 | 0 | 0 |
平成 31 年度 | 1,490,992 | 0 | 0 | 0 |
平成 32 年度 | 5,873,938 | 0 | 0 | 0 |
計 | 8,924,582 | 0 | 0 | 0 |
【年度実施協定第 3 回変更(平成 31 年 3 月 11 日)】 (単位:千円)
年度 | 協定額 | 支出 (現年分) | 支出 (繰越分) | 支出額計 |
平成 29 年度 | 394,724 | 0 | 394,724 | 394,724 |
平成 30 年度 | 1,139,470 | 0 | 0 | 0 |
平成 31 年度 | 1,490,992 | 0 | 0 | 0 |
平成 32 年度 | 5,873,938 | 0 | 0 | 0 |
計 | 8,899,124 | 0 | 394,724 | 394,724 |
【年度実施協定第 6 回変更(令和 2 年 3 月 25 日)】 (単位:千円)
年度 | 協定額 | 支出 (現年分) | 支出 (繰越分) | 支出額計 |
平成 29 年度 | 394,724 | 0 | 394,724 | 394,724 |
平成 30 年度 | 821,700 | 320,400 | 501,300 | 821,700 |
令和元年度 | 1,490,992 | 0 | 0 | 0 |
令和 2 年度 | 3,117,772 | 0 | 0 | 0 |
計 | 5,825,188 | 320,400 | 896,024 | 1,216,424 |
【年度実施協定第 9 回変更(令和 3 年 1 月 27 日)】 (単位:千円)
年度 | 協定額 | 支出 (現年分) | 支出 (繰越分) | 支出額計 |
平成 29 年度 | 394,724 | 0 | 394,724 | 394,724 |
平成 30 年度 | 821,700 | 320,400 | 501,300 | 821,700 |
令和元年度 | 1,013,398 | 510,992 | 502,406 | 1,013,398 |
令和 2 年度 | 2,150,000 | 480,000 | 0 | 480,000 |
令和 3 年度 | 573,201 | |||
令和 4 年度 | 552,402 | |||
令和 5 年度 | 545,490 | |||
計 | 6,050,915 | 1,311,392 | 1,398,430 | 2,709,822 |
令和 2 年 3 月 25 日の第 6 回変更において、平成 30 年度の協定額が 1,139,470 千
円から 821,700 千円へ 317,770 千円の減額、平成 32 年度(令和 2 年度)の協定額が
5,873,938 千円から 3,117,772 千円へ 2,756,166 千円の減額となっている。
平成 30 年度の減額は、平成 31 年 3 月の契約を目指していた、汚泥焼却炉建設工事
において、入札不調が重なり、契約が令和元年 12 月に遅延したことにより、平成 30 年
度分の事業費の執行が困難となったことから、減額したものである。また、平成 31 年度 (令和元年度)の減額は、汚泥焼却炉建設工事の契約により、予定していた工事の発注が完了したことから、契約実績に応じて協定額を変更したものである。これにより、債務負担行為の額が、3,073,936 千円減額になっている。
また、令和3 年1 月27 日の第9 回変更において、令和元年度の協定額が 1,490,992
千円から 1,013,398 千円へ 477,594 千円の減額になり、令和 2 年度の協定額が
3,117,772 千円から2,150,000 千円へ967,772 千円の減額になり、令和3 年度573,201
千円、令和 4 年度 552,402 千円、令和 5 年度 545,490 千円が新設されている。
令和 3 年 1 月 27 日の変更は、汚泥焼却炉建設工事において築造する煙突について、当初予定していた工法で施工できる専門業者の確保が困難なことから、施工方法の見直しが生じ、それに対応した事業費及び事業期間の変更を実施したとのことであった。令和 3 年の第 9 回変更において、令和元年度の減額を行っており、既に繰越となって
いる債務負担額の減額となっているほか、工事期間が令和 5 年度まで延長されており、
当初計画時点から 3 年延長されている。
意 見(協定書見直しに伴う債務負担額の減少について)
当初の計画では 8,924,582 千円であった事業規模(債務負担額)が、令和 3 年 1 月
27 日の協定変更では 6,050,915 千円となっており、その差額は 2,873,667 千円と多額である。また、完成年度についても、当初計画の平成 32(令和 2)年度から令和 5 年度へと延長されている。
終末処理場の建設は県事業の中でも大規模な建設事業ではあるが、債務負担額に基づき予算を策定するだけでなく起債計画も立案することを鑑みると、繰越後の支出総額の大幅な変更は予算統制上適切ではないため当初の積算をより正確に行うことが望まれる。
5 固定資産の管理について
(1) 公営企業会計への移行
千葉県における流域下水道事業は、総務省の要請に応じ、令和 2 年 4 月 1 日より公営企業会計に移行している。そのため、財務規則についても、「千葉県財務規則」の他に「千葉県流域下水道事業財務規則」を制定し、当該財務規則に基づき会計を行っている。
(2)固定資産に係る財務規則について
① 固定資産の範囲
「千葉県流域下水道事業財務規則」第 75 条(固定資産の範囲)に、固定資産の範囲が定められている。当該規定に従い、判断した結果、固定資産に該当するものが固定資産台帳に記入される。
② 固定資産の実査について
「千葉県流域下水道事業財務規則」第 79 条(報告)に、固定資産台帳に記載されている
固定資産についての実地照合についての規定がある。第 79 条によると、年一回以上固定資産の実地照合を行い、局長に報告しなければならないとされており、少なくとも年一回は固定資産台帳に基づく実地照合が求められていることになる。
第 79 条(報告)
1 課長及び所長は、年一回以上それぞれ所管に係る固定資産の実地照合を行い、局長に報告しなければならない。
2 課長及び所長は、その所管に係る固定資産のうち、土地について形状変更その他の事由により字、地番、地目又は地積に変更があったときは、その内容を明らかにし、関係図書を添付して速やかに局長に報告しなければならない。
3 局長は、課長及び所長に対し、固定資産について報告若しくは資料の提出を求め、
又は実地照合を行うことができる。
千葉県流域下水道事業経理事務の手引(千葉県県土整備部都市整備局下水道課 令和 3 年 3 月)において、本体工事を前提に実施した設計委託及び調査業務委託に関して以下の記載がある。
14 節別支出事務手続
(2)資本的支出
単体の委託業務としては完成している場合であっても、目的の本体工事が完了するまでは建設仮勘定として計上しなければならない。
これは、本体の取得を前提としなければ実施の必要がない業務という点で、本体工事と一体不可分の業務として捉えるべきものであり、本体工事の完了後に、対象となる本体
の取得価額の一部に含めるべきものであることによる。
(3) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
固定資産台帳に基づいた実地照合 | ・「千葉県流域下水道事業財務規則」に規定されている実地照合が行われ、下水道課に報告されているかについて、質問及び閲 覧により確認する。 |
固定資産の取得取引に係る取得原価の 範囲 | ・固定資産の取得取引につき、関連資料の 閲覧及び担当者へのヒアリングを実施する。 |
(4) 実施結果
① 固定資産の実地照合について
令和 2 年度から公営企業会計に移行していることから、令和 2 年 4 月 1 日を施行日とした「千葉県流域下水道事業財務規則」が制定され、また、固定資産台帳についても公営企業会計に即したものとなっている。令和 2 年度においては、公営企業会計に即した固定資産台帳を基に、実地照合を行うことになるが、実際には、実地照合は行われていなかった。
その理由としては、会計制度移行時の固定資産データは、3 年間にわたる資産調査業務委託において受託業者による十分な照合が行われているものと認識しており、また、令和 2年度の会計制度移行による事務を優先した結果、実地照合の実施について下水道課から具体的な指示を各事務所に出すことができなかったため、結果として実地照合が行われなかったとしている。
令和 3 年度についても、実査の範囲、方法等含め、方向性が確立されていないことから、
令和 3 年 11 月末時点において、実地照合は実施されていない。
意 見(固定資産の実地照合について)
令和 2 年度について、固定資産の実地照合は行われていなかった。これについては、
「千葉県流域下水道事業財務規則」第 79 条第 1 項の規定に反しているが、江戸川下水道事務所においては、下水道課から具体的な指示が出ていないことから、実地照合が実施できなかったとしている。
令和 3 年度以降の固定資産実地照合については、令和 3 年 12 月に発出された事務通
知に基づき、適正な資産状況の把握に努めるべきである。
② 管渠内角落し設置及び撤去工事について
令和 3 年 1 月に以下の固定資産を一部除却している。
(図表 49)固定資産一部除却の概要
名称 | 江戸川左岸流域下水道管渠築造工事 (江戸川幹線 845 工区) |
固定資産番号 | 014901 |
帳簿価額 | 1,823,362 千円 |
取得年月 | 平成 31 年 4 月 |
除却額 | 13,598 千円 |
除却年月 | 令和 3 年 1 月 |
江戸川左岸流域下水道管渠築造工事のうち、除却した固定資産は水流をせき止める役割を持つ角落しで、汚水を集めてすみやかに終末処理場へ送るための管渠内に設置される。当該角落しは、令和 3 年 3 月 1 日に供用が開始された江戸川第一終末処理場の建設工事にあたり、建設途中の当該処理場への汚水の流入を防ぐことを目的として設置された。その後、当該固定資産は、令和 3 年 1 月に江戸川第一終末処理場の試運転に合わせて
撤去したため、当該部分を除却した(除却額 13,598 千円)。
(図表 50)除却資産に関する時系列による説明
平成 18 年 3 月 | 江戸川第一終末処理場整備開始 |
平成 31 年 4 月 | 江戸川左岸流域下水道管渠築造工事完成 (江戸川幹線 845 工区) |
令和 3 年 1 月 | 上記固定資産の一部撤去 |
令和 3 年 3 月 | 江戸川第一終末処理場供用開始 |
上記のとおり、当該固定資産の設置及び撤去は、本体である江戸川第一終末処理場の取得を前提としなければ実施の必要がない工事で、本体工事と一体不可分の工事として捉えるべきものである。したがって、本体工事の完了後に、対象となる本体の取得価額の一部に含めて会計処理するものである。
意 見(固定資産の取得原価の範囲について)
当該固定資産の設置及び撤去は、本体である江戸川第一終末処理場の取得を前提としなければ実施の必要がない工事で、本体工事と一体不可分の工事として捉えるべきものである。今後同様の工事を実施する場合は、千葉県流域下水道事業経理事務の手引(千葉県県土整備部都市整備局下水道課 令和 3 年 3 月)において記載されている、本体工事を前提に実施した設計委託及び調査業務委託と同様に、本体工事の完了後、対象となる本体の取得価額の一部に含めて会計処理することが適切である。
6 情報セキュリティについて
(1) 情報セキュリティについて
「情報セキュリティ基本方針(一部抜粋)」
4 情報セキュリティ対策を適切に実施するため、職員等に対して必要な教育を実施します。
5 情報セキュリティ対策の実施状況の自己点検及び監査を通して、定期的に対策の見直しを実施します。
6 すべての職員は、情報セキュリティの重要性について共通の認識を持ち、業務の遂行にあたっては情報セキュリティ基本方針、情報セキュリティ対策基準及び実施手
順を遵守します。
千葉県では、情報セキュリティをどのようにとらえているのか、どのように安全である体制を維持していくのかについて宣言した「情報セキュリティ基本方針」を定めている。
千葉県では、「千葉県情報セキュリティ基本方針」を掲げ、千葉県職員は当該基本方針に基づき策定された「千葉県情報セキュリティ対策基準」に従い情報セキュリティ対策を実施している。
「千葉県情報セキュリティ対策基準」及び実施手順となる「千葉県情報セキュリティ対策基準に関する事務取扱要領」によると、主な対策としては物理的セキュリティとしての管理者 ID 、パスワードの設定等、人的セキュリティとしての情報セキュリティに関する研修等、技術的セキュリティとしての外部ネットワークとの接続制限等を実施することが挙げられている。人的セキュリティ対策の一例として、千葉県職員に対し総務部情報システム課による定期的な標的型攻撃メール対応訓練を実施している。
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
千葉県職員の情報セキュリティへの対応状況及び課題を把握する | ・情報セキュリティ関連の規程等を確認する。 ・情報資産台帳を閲覧する。 ・記録媒体の貸出について、貸出簿を閲覧する。 |
(3) 実施結果
① 情報セキュリティ関連の規程、情報資産台帳、県職員の情報セキュリティへの対応状況について
1) 管理すべき情報資産について
千葉県では、管理すべき情報資産について、以下のように規定されている。
「千葉県情報セキュリティ対策基準」(一部抜粋) (2)情報資産の範囲
ア 本対策基準が対象とする情報資産は、次のとおりとする。
(ア)ネットワーク、情報システム及びこれらに関する設備、電磁的記録媒体
(イ)ネットワーク及び情報システムで取り扱う情報(これらを印刷した文書を含む。)
(ウ)情報システムの仕様書及びネットワーク図等のシステム関連文書
2) 情報資産の管理状況について
江戸川下水道事務所では、千葉県情報セキュリティ対策基準に関する事務取扱要領に基づき、情報資産のうち秘密文書に相当する機密性を要する情報資産について情報資産台帳によってリスト化して管理している。
3) 県配付PC の管理状況について
江戸川下水道事務所における県配付PC について、配付パソコン等申請システムにて管理されていることを確認した。
4) 記録媒体の持ち出し管理簿の管理について
USB などの記録媒体について、千葉県情報セキュリティ対策基準に関する事務取扱要領に基づき、電磁的記録媒体管理簿を整備している。通常は次長が保管しており、職員から貸し出しの要望があった場合に貸し出しを行っている。記録媒体について貸し出しをする場合、所定の貸出簿に記録する必要がある。現状は要望がなく、実質貸し出しを行っていないとのことである。
セキュリティ対策としては、ファイル持ち出し申請システムにより申請し、承認者が承認しないと記録媒体へ情報の書き出しができないように制御されている。また、データを書き出した場合のログは、一定期間システム側で保存する仕組みとなっている。
江戸川下水道事務所における「貸出用 USB メモリ使用簿」を閲覧したところ、返却年月日の記載漏れが 1 件あったが、その他についての管理状況は良好であった。
意 見(貸出用USB メモリ使用簿の記載漏れについて)
江戸川下水道事務所では、概ね千葉県の定めるセキュリティ規程に従い運用されている。一方で、「貸出用 USB メモリ使用簿」の記載について、返却年月日の記載がないものが
1 件発見された。実際には USB が返却されていたが、返却年月日の記載を失念していたとのことである。今後は、記載不備がないよう、注意されたい。
Ⅴ 千葉県土地開発公社
1 千葉県土地開発公社の概要
(1) 設立趣旨
土地開発公社は、「公有地の拡大の推進に関する法律」(昭和 47 年法律第 66 号)に基づき、公共用地、公用地等の取得、管理処分等を行うことにより、地域の秩序ある整備と県民の福祉の増進に寄与することを目的として設立された特別法人である。
(2) 予算及び決算
① 予算
(図表 51)過去 3 年間の土地開発公社予算額
(単位:千円)
項目 | 令和 2 年度 | 令和元年度 | 平成 30 年度 |
事業収益 | 3,681,809 | 3,057,138 | 5,113,096 |
事業原価 | 3,334,036 | 2,776,158 | 4,544,927 |
販売費及び一般管理費 | 183,156 | 205,632 | 199,172 |
事業損益 | 164,617 | 75,348 | 368,997 |
経常損益 | 174,064 | 86,428 | 365,747 |
② 決算
(図表 52)過去 3 年間の土地開発公社決算額
(単位:千円)
項目 | 令和 2 年度 | 令和元年度 | 平成 30 年度 |
事業収益 | 2,896,264 | 3,585,123 | 4,360,123 |
事業原価 | 2,647,391 | 3,374,803 | 3,773,904 |
販売費及び一般管理費 | 144,766 | 165,003 | 167,698 |
事業損益 | 104,106 | 45,317 | 418,520 |
経常損益 | 115,748 | 57,590 | 419,796 |
当期純利益 | 114,184 | 57,590 | 302,350 |
(3) 主要事業の概要
土地開発公社は、「公有地の拡大の推進に関する法律」に基づき、以下の業務を行っている。
① 公有地取得事業
国、県、市町村等が施工する公共・公益事業を円滑に執行するために必要な事業用地及び代替地の先行取得を行う事業である。
公有地の拡大の推進に関する法律第 17 条第 1 項第 1 号に掲げる業務のうち、次に掲げる業務の全部又は一部を行うものである。
1 公有地の拡大の推進に関する法律第 4 条第 1 項又は第 5 条第 1 項に規定する土地
2 道路、公園、緑地その他公共施設又は公用施設の用に供する土地
3 公営企業の用に供する土地
4 都市計画法第4条第7項に規定する市街地開発事業その他政令で定める事業の用に供する土地
5 1 から 4 までに掲げるもののほか、地域の秩序ある整備を図るために必要な土地として政令で定める土地
・当該地域の自然環境を保全することが特に必要な土地
・史跡、名勝又は天然記念物の保護又は管理のために必要な土地
・航空機の騒音によって生ずる障害を防止し、又は軽減するために特に必要な土地
② 土地造成事業
生活・産業拠点創造のため、県の施策に沿い工業団地や住宅等の用地取得・造成・分譲・事業用借地を行う事業である。主な造成地は、千葉土気緑の森工業団地である。
③ 附帯等事業
公有地取得事業及び土地造成事業に附帯する業務及び保有地の賃貸等を行う事業である。
④ あっせん等事業
国、県、市町村等からの委託に基づく道路用地等の用地交渉業務などを行う事業である。
2 組織運営について
(1) 千葉県土地開発公社の組織
① 組織図
(図表 53)土地開発公社組織図
② 職員の配置
(図表 54)土地開発公社の職員配置(令和 3 年 3 月 31 日現在)
(単位:人)
所属 (部・課) | 総務部 | 事業部 | 計 | |||
総務課 | 用地第一課 | 用地第二課 | 業務課 | |||
職名 | 部長 | (1) | 1 | 1 | ||
次長 | 1 | 1 | 2 | |||
参事 | 0 | |||||
技監 | 0 | |||||
課長 | (1) | 1 | 1 | (1) | 2 | |
副参事 | 0 | |||||
副技監 | 0 | |||||
主幹 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | |
副主幹 | 2 | 1 | 6 | 2 | 11 | |
主査 | 1 | 1 | 2 | |||
副主査 | 1 | 1 | 2 | |||
主事 | 0 | |||||
技師 | 0 |
嘱託 | 0 | |||||
計 | 5 | 6 | 9 | 4 | 24 |
※事業部部長、次長は用地第一課に含めている。 ( )は兼務のため計に含まず
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
組織運営について | ・人事評価制度の概要、実際の運用についてヒアリングする。 ・令和 2 年度の人事評価結果について資料 により確認する。 |
監事と結んでいる会計指導業務契約の適正性について | ・監事としての業務と会計指導業務契約上実施しているS.O 氏の業務についてヒアリングする。 ・会計指導業務契約書及び会計指導内容記載の報告書を閲覧し、指導内容の適正性 について検証する。 |
会計処理の適切性について | ・法人所有の施設等の賃貸による収入の表示科目について検証する。 ・完成土地等売却収益の原価計上額の適正性について検証する。 ・賞与引当金及び賞与引当金に係る社会保険料が適正に計上されているか、計算資料 を閲覧、及び再計算することで確認する。 |
(3) 実施結果
① 人事評価について
人事評価は、定期的に毎年 2 月に実施している。
部長、県派遣職員は対象外(部長は常務理事が兼務、派遣職員はいない)。年度当初の本人による目標設定等は実施していない。
評価は絶対評価であり、5 段階評価である。
(評価結果の取扱い)
令和 2 年度の結果は、A 評価 10 名、B 評価 11 名、C 評価 1 名、D 評価 1 名 計 23
名で、評価に極端な偏りはない。
ヒアリングは必要に応じて実施しているが、本人への結果の通知はしていない。
給与等への反映については、参考値として採用しており、数年継続して高評価(低評価)
の場合は、昇給(減給)に反映することもある(3~4 年の評価推移表あり)。
また、昇格への反映についても、参考値として採用しており、さらに数年継続して高評価の場合は、昇格に反映することもある(3~4 年の評価推移表あり)。
意 見(人事評価結果について)
概ね的確な評価制度であるし、運用や結果の利用についても妥当と考える。ただ、本人への通知は必要であるし、特に A 評価の継続者、B 評価から C 評価または D 評価への降格者などについては、結果通知とともに、面談や必要に応じてカウンセリング等も検討されたい。
② 会計指導業務契約について
会計指導業務について、有限会社 C 会計と契約し、委託している。有限会社C 会計の取締役は土地開発公社監事のS.O 氏である。
外観的には、監事である S.O 氏が、別途報酬を得て、会計指導業務を行っているように見える。
また、S.O 氏の監事報酬は年間 80,000 円に対し、有限会社 C 会計には年間 580,800
円支払っており、対価の面でもアンバランスとなっている。
指 摘(監事と会計顧問の兼任状況の解消について)
現在の状況は、外観的には、監事としての地位を利用した契約の獲得との疑念を生じかねない。監事と会計顧問の兼任状態の解消及び監事報酬と有限会社 C 会計への委託報酬とのアンバランスについては、早急に解消する必要がある。
なお、土地開発公社からの回答では、令和 3 年度末をもって、S.O 監事が監事を退任するとのことである。
③ 会計について
1) 負担金収入(賃貸収入)について
土地開発公社所有の旧野球場をソーラーパネル発電会社へ賃貸しているが、勘定科目は事業外収益の負担金収入としている。従来、野球場として市民団体に貸していた時、使用料収入を「負担金収入」という科目で計上していた名残である。
また、土地開発公社 3 階部分を一般社団法人に賃貸しているが、この収入についても負担金収入として計上している。内容的には部屋の賃料、公租公課、維持管理費、減価償却費等となっているが、当該一般社団法人はこれら合計額の内、賃貸部分の面積割相当を支払っている。
意 見(賃貸収入の表示科目について)
民間の事業会社への 30 年間にわたる賃貸収入であるから、事業収入の賃貸等収入又は附帯等事業収益の保有土地賃貸等収益などが適切な処理である。
また、土地開発公社 3 階部分を一般社団法人に賃貸しているが、現在、負担金収入として表示している金額(内容的には部屋の賃料、公租公課、維持管理費等)は事業外の賃貸収入とすることが適切である。
2) 完成土地等売却収益の原価計上額について
従来、千葉土気緑の森工業団地について、完成土地等売却収益計上時の事業原価は
「収益計上額×0.808」で算出した金額を計上していた。ここで、0.808 は当該事業全体の見込み原価率(事業完成し精算時に算出されるであろう諸々の事業費も見込んだ予定原価率)であり、収益計上の各時点での実績原価率ではない。
従来の方法だと令和 3 年度の決算見通しをしたところ、原価計上予定額 217,370 千円
が簿価残高 175,951 千円を超過することが判明したため、急遽、令和 2 年度決算(2 年度補正予算計上時)から、原価額算定方法を従来の方法から、土地勘定の残存簿価に全体面積に占める売却対象面積を乗じた金額を計上する方法に変更した。
この結果、令和 2 年度の原価計上額は 99,264 千円から 19,389 千円へ減少した。また、
令和 3 年度の原価計上額は 217,370 千円から 47,385 千円へ減少することとなった。
指 摘(原価計上額の過少計上について)
令和 2 年度決算では、この処理方法の変更(会計方針の変更)については決算書のどこ
にも記載していないため、原価を恣意的に 79,874 千円減額調整する不適切な会計処理との疑念を抱かせる危惧がある。
なお、この計算方法の変更処理は、数年前に佐倉第三工業団地代替地の売却原価算定時にも実施している。
本来ならば、売却対象の事業土地の帳簿価格を面積按分し、これに加えて別途上乗せすべき事業費分(売却土地に対応する実績値)を事業原価に計上するなどの適切な会計処理を行うべきであった。
なお、土地開発公社からの回答では、令和 3 年度決算書で、当該変更について追加情報として、会計方針の変更(旨、影響額等)を注記するとのことである。
3) 賞与引当金及び賞与引当金に係る社会保険料の未払計上について
賞与引当金及び賞与引当金に係る社会保険料の未払計上に係る資料を閲覧した結果、賞与引当金に係る社会保険料の未払費用については、計上されていなかった。
平成 15 年より、賞与に関しても社会保険料を支払うことになっており、また、社会保険料
等の金額が合理的に見積もることができることから、当期に対応する分については、未払計上する必要がある。
賞与引当金の金額をもとに、社会保険料等を計算すると、次のようになる。
〇社会保険料等の額の計算
①健康保険料:12,273 千円×4.895%=600 千円
②介護保険料:12,273 千円×0.9%=110 千円
③厚生年金保険料:12,273 千円×9.15%=1,122 千円
①+②+③=600 千円+110 千円+1,122 千円
=1,834 千円
よって、1,834 千円の未払費用が未計上となっている。
指 摘(賞与引当金に係る社会保険料について)
賞与引当金に係る社会保険料について、期間に属する部分については未払費用として計上する必要があるが、令和 2 年度決算において計上されるべき未払費用 1,834 千円が、
計上されていなかった。令和 3 年度以降については、適切に計上することが求められる。
3 保有する土地について
(1)保有する土地の概要
① 事業内容について
土地開発公社は、公有地取得事業、土地造成事業、あっせん等事業、附帯等事業を行っている。公有地取得事業は、国、県、市町村等が施工する公共・公益事業を円滑に執行するために必要な事業用地等の先行取得を行う事業である。公有地取得事業を実施する際には、土地の取得を土地開発公社名義で行う場合(公有用地取得)と地方公共団体等名義で行う場合(代行用地取得)がある。土地造成事業は、県の施策に沿い、工業団地や住宅等の用地取得・造成・分譲等を行う事業である。あっせん等事業は、国、県、市町村等からの委託による道路用地等の用地交渉を行う事業である。
公有地取得事業、土地造成事業は、事業の実施に際して土地の取得が必要となる事業である。
令和元年度及び令和 2 年度の公有地取得事業収益及び土地造成事業収益の内訳は
以下のとおりであった。
(図表 55)令和 2 年度の公有地取得事業収益の内訳
(単位:千円)
公有地取得事業収益の内訳 | 令和元年度 | 令和 2 年度 | |
公有用地 | 佐倉下根 | 8,800 | - |
かずさ | 329,021 | 329,136 |
都市計画 | 762,455 | 512,658 | |
代行用地 | 県債道路 | 1,399,991 | 1,200,000 |
圏央道 | 542,835 | 420,013 | |
国道 51 号 | 23,000 | 23,000 | |
合計 | 3,066,103 | 2,484,808 |
(図表 56)令和 2 年度の土地造成事業収益の内訳
(単位:千円)
土地造成事業収益の内訳 | 令和元年度 | 令和 2 年度 | |
完成土地等 | 佐倉第三工業団地 | - | 1,295 |
千葉土気緑の森工業団地 | 232,285 | 122,851 | |
代替地 | 佐倉第三工業団地 | - | 3,257 |
造成地賃貸収入 | 千葉土気緑の森工業団地 | 160,075 | 160,595 |
あさひ鎌数工業団地 | 78,456 | 78,456 | |
合計 | 470,817 | 366,455 |
② 保有する土地の状況について
土地開発公社の事業に関連して取得した土地については、公有用地、代行用地、完成土地等、代替地の勘定科目で貸借対照表の流動資産に計上している。
それぞれの勘定科目に計上される土地は以下のとおりである。
公有用地とは、公有地取得事業により土地開発公社が所有権を取得した土地のうち、特定土地及び代替地以外の土地をいう。
特定土地とは、公有地の拡大の推進に関する法律第 17 条第 1 項第 1 号の規定により
土地開発公社が取得した土地のうち、地方公共団体等により再取得される見込みがなくなった土地をいう。
代行用地とは、公有地取得事業により土地開発公社が地方公共団体等に所有権を取得させた土地のうち、上記公有用地であった土地以外の土地をいう。
完成土地等とは、土地造成事業に係る土地のうち、次のものをいう。
・販売可能な状態にある土地
・当該土地にかかる開発計画が以下のような状態にある土地
・開発工事の着工予定時から概ね 5 年を経過しても開発用の土地等の買収が完了していない状態
・開発用の土地等の買収が完了した後概ね5 年を経過しても開発工事に着手していない状態
・開発工事の着手後中断しその後概ね 2 年を経過している状態
代替地とは、公有地の拡大の推進に関する法律(昭和 47 年法律第 66 号)第 17 条第 1
項に掲げる事業により取得される土地の所有者等に対して、その土地に代わる土地として譲渡するために土地開発公社が取得した土地をいう。
公有地の拡大の推進に関する法律
(業務の範囲)
第十七条 土地開発公社は、第十条第一項の目的を達成するため、次に掲げる業務の全部又は一部を行うものとする。
一 次に掲げる土地の取得、造成その他の管理及び処分を行うこと。イ 第四条第一項又は第五条第一項に規定する土地
ロ 道路、公園、緑地その他の公共施設又は公用施設の用に供する土地ハ 公営企業の用に供する土地
ニ 都市計画法第四条第七項に規定する市街地開発事業その他政令で定める事業の用に供する土地
ホ イからニまでに掲げるもののほか、地域の秩序ある整備を図るために必要な土地と
して政令で定める土地
令和元年度及び令和 2 年度の公有用地、代行用地、完成土地等、代替地の計上額は以下のとおりであった。
(図表 57)公有用地、代行用地、完成土地等、代替地の計上額
(単位:千円)
令和元年度 | 令和 2 年度 | |
公有用地 | 1,979,579 | 1,619,926 |
代行用地 | 3,519,324 | 2,241,852 |
完成土地等 | 347,027 | 359,161 |
代替地 | 703 | 2,034 |
合計 | 5,846,634 | 4,222,974 |
(2) 着眼点並びに監査手続
着眼点 | 監査手続 |
保有する土地は適切に管理されている か。 | 保有する土地の管理状況について担当者 にヒアリングを行い、関連資料を閲覧する。 |
(3) 実施結果
① 土地の内訳と保有期間について
令和 2 年度末において保有する土地の勘定科目別の内訳の増減は、以下のとおりであ
る。
(図表 58)令和 2 年度末における公有用地の勘定科目別内訳増減
(単位:千円)
公有用地 | 期首 | 増加 | 減少 | 期末 |
佐倉下根用地 | 535,948 | 19 | - | 535,968 |
かずさアカデミアパーク 公的機関等用地取得 | 560,709 | 8,389 | 314,693 | 254,405 |
都市計画道路用地取得 | 882,921 | 457,707 | 511,077 | 829,551 |
合計 | 1,979,579 | 466,117 | 825,771 | 1,619,926 |
(図表 59)令和 2 年度末における代行用地の勘定科目別内訳増減
(単位:千円)
代行用地 | 期首 | 増加 | 減少 | 期末 |
道路用地取得 | 2,819,313 | 387,202 | 1,193,914 | 2,012,602 |
首都圏中央連絡 自動車道用地取得 | 631,134 | 389 | 443,061 | 188,461 |
国道 51 号大栄拡幅用地取得 | 68,875 | 66 | 28,153 | 40,788 |
合計 | 3,519,324 | 387,658 | 1,665,130 | 2,241,852 |
(図表 60)令和 2 年度末における完成土地等の勘定科目別内訳増減
(単位:千円)
完成土地等 | 期首 | 増加 | 減少 | 期末 |
佐倉第三工業団地 | 94,848 | 10,233 | 1,211 | 103,870 |
千葉土気緑の森工業団地 | 252,179 | 22,460 | 19,349 | 255,290 |
合計 | 347,027 | 32,693 | 20,560 | 359,161 |
(図表 61)令和 2 年度末における代替地の勘定科目別内訳増減
(単位:千円)
代替地 | 期首 | 増加 | 減少 | 期末 |
佐倉第三工業団地 | 703 | 1,396 | 65 | 2,034 |
合計 | 703 | 1,396 | 65 | 2,034 |
公有用地の佐倉下根用地及びかずさアカデミアパーク公的機関等用地取得については長期保有している。また、完成土地等は、佐倉第三工業団地本体の周辺と千葉土気緑の森工業団地があり、代替地は上記佐倉第三工業団地の完成土地等の周辺に保有している。