第 1 回特定社債(一般担保付): A+
2018年 8月29日
【新規予備格付】
明治安田生命 2018 基金特定目的会社
第 1 回特定社債(一般担保付): A+
格付投資情報センター(R&I)は上記の格付を公表しました。
なお、本件は予備格付であり、最終的な契約内容などを確認し、改めて格付を付与します。
1.案件の概要
格付対象は、明治安田生命(原債務者)が新規に調達する 500 億円の基金を裏付資産として明治安田
生命 2018 基金特定目的会社が発行する特定社債。
2.信用格付
名称 | 第1回特定社債(一般担保付) |
格付アクション | 符号の新規付与 |
予備格付 | 長期個別債務格付 / A+ |
備考 | 格付は、特定社債の元本が償還期日に全額償還され、利息が期日通りに 支払われる可能性を評価している。 |
3.格付対象
発行体 | 明治安田生命2018基金特定目的会社 | 裏付資産 | 基金債権 |
名称 | 発行金額 (通貨) | 劣後比率 | 発行日 予定償還日最終償還日 | 償還方法 | クーポンタイプ利率 |
第1回特定社債(一般担保付) | 50,000,000,000円 (日本円) | - | 2018/ 9/25 2023/ 9/25 2023/ 9/25 | HB | 固定未定 |
注) 償還方法 HB:満期一括償還
<スキームの概要>
(1) 明治安田生命 2018 基金特定目的会社(発行体)は、「資産の流動化に関する法律」(「資産流動化法」)に基づき設立された特定目的会社である。一般社団法人明治安田生命基金流動化ファンディング(持株一般社団法人)が特定出資を保有する。
(2) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券(基金拠出者)は、基金拠出契約に基づき、2018 年 9 月 25
日に明治安田生命に対し 500 億円の基金を拠出する。
(3) 基金拠出者は、基金拠出日に基金債権譲渡契約に基づき同日付で上記基金債権を発行体に譲渡する。債権譲渡に際して、基金債権の債務者である明治安田生命の、基金債権の譲渡日の確定日付ある証書による異議なき承諾により、当該債権譲渡に関する債務者及び第三者に対する対抗要件を具備する。
(4) 発行体は、基金債権を裏付に第 1 回特定社債(500 億円)を発行し、特定社債の発行代わり金を原資として基金債権の譲渡代金を基金拠出者に支払う。
(5) 明治安田生命は、基金の利息を年 1 回 9 月に支払い、元本を 5 年後に一括償還する。明治安田生命は、特定社債の元利払日の 3 銀行営業日前に、基金の元利金を発行体名義の預金口座に直接振り込む。
(6) 基金の利息や元本は保険業法第 55 条の規定により繰り延べられる可能性がある。一定額の現金準備が当初より設定されるものの、基金利息や元本が繰り延べられ、特定社債利息や元本の支払い原資が不足すると、一定期間後に特定社債の期限の利益を喪失する。
(7) 発行体が受領する基金利息には源泉徴収税が課せられるため、各利払期日において特定社債の利息支払い原資が不足する可能性がある。この源泉徴収税に起因する特定社債の利息支払い原資の不足に対応するため、当初に現金準備が設定され、さらに発行体は明治安田生命と信用枠設定契約を締結する。
(8) 発行体は、株式会社化を理由として基金が期限前償還される場合には、特定社債を期限前償還する。明治安田生命が株式会社化する場合には、明治安田生命は基金拠出契約に基づき、基金の元本、経過利息及び違約金を支払う。株式会社化以外の理由により基金を期限前償還する場合には、特定社債の期限前償還の条件に関して、特定社債権者の同意を要する。
【スキーム図】
明治安田生命2018基金特定目的会社
三菱UFJモルガン・スタンレー証券
基金の元利払い
一般社団法人
明治安田生命基金流動化ファンディング
明治安田生命
一般社団法人基金拠出
当初基金拠出
特定出資全額を保有
基金債権譲渡
基金債権譲渡代金
特定社債の元利払い
特定社債投資家
特定社債 発行代わり金
優先出資 基金利息の源泉徴収税に関する信用枠設定契約
明治安田生命
4.格付の理由
(1) リスク要因
本件の主なリスクは、以下の通りである。
<仕組みに関するリスク>
i) SPV の倒産隔離性
ii) 預金先金融機関の破綻に関するリスク
iii) 基金利息に課せられる源泉徴収税に関するリスク
iv) ウォーターフォールに関するリスク
<裏付資産に関するリスク>
v) 基金のデフォルトリスク
(2) リスク要因分析
i) SPV の倒産隔離性
以下の対応から SPV の倒産隔離性は高いと判断した。
a) 発行体は、日本に設立された資産流動化法上の特定目的会社で、発行体の特定出資はすべて持株一般社団法人が保有している。持株一般社団法人の業務は特定目的会社等の持分を取得することに限定されており、b)、c)と同等の措置がなされている。
b) 発行体の取締役は東京共同会計事務所から派遣されている。
c) 発行体のスキーム関係者は、格付対象の責任財産を除く発行体の資産に対して強制執行を行う権利を放棄しており、かつ発行体に対して破産等の申し立てを行わないことを約束している。
d) 発行体の業務は、格付対象を発行することに関連する業務に限定されている。
e) 発行体は、本スキームに関連する以外の追加的な債務を負わない。
ii) 預金先金融機関の破綻に関するリスク
明治安田生命は基金の元利金を、発行体名義の預金口座に直接振り込む。
発行体は預金口座を当初、三菱 UFJ 信託銀行に開設し、以後、預金口座を開設している金融機関の R&I による短期格付が a-1 未満となった場合、a-1 以上の短期格付を有する金融機関に預金口座を移管する。
iii) 基金利息に課せられる源泉徴収税に関するリスク
発行体が受領する基金利息には源泉徴収税が課せられるため、各利払期日において特定社債の利息支払い原資が不足し、特定社債の利息の期日通りの支払いが妨げられる可能性がある。
この源泉徴収税に起因する特定社債の利息支払い原資の不足に対処するため、以下の仕組みを採用する。
A) 1 年目の特定社債利息支払いに関する仕組み
本案件では、基金利息から控除される源泉徴収税の還付を受けることを企図して、特定目的会社である発行体の課税所得が毎年ゼロとなるようにする。ただし 1 年目の受取基金利息に関する源泉徴収税の還付日は、1 年目の特定社債利払い期日よりも後になる。
この 1 年目の特定社債利息支払い原資の不足については、基本的に案件当初において積立てる現金準備金がカバーする仕組みとなっている。
B) 2 年目以降の特定社債利息支払いに関する仕組み
2 年目の基金利息にも 1 年目と同率の源泉徴収税が課せられる。ただし 1 年目の基金利息に関する源泉徴収税は、2 年目の特定社債の利息支払期日よりも前に還付される予定である。従って、2 年目の正味の基金利息に加えて、1 年目の基金利息の源泉徴収税に関する還付金を 2 年目の特定社債利息支払原資として充当することが可能となる。3 年目以降の特定社債の利息支払いについても同様である。
前年の還付金を翌年の特定社債利息支払原資に充当する仕組みによって、2 年目以降の特定社債の利息支払原資を確保する。
C) 明治安田生命と締結する信用枠設定契約
上記 B)の仕組みは、①発行体の課税所得が毎年ゼロとなることによって源泉徴収税が全額還付される、②還付手続きが適切に履行され翌年の特定社債の利払期日よりも前に源泉徴収税の還付が行われる、③本案件の償還までの期間において源泉徴収税の税率が現状のままである-などを前提にしている。これらの前提と異なる事態が生じる場合、利息の支払い原資が不足する可能性がある。
このようなリスクに対処するため、発行体は明治安田生命と信用枠設定契約を締結する。信用枠設定契約に基づく借入金の返済順位は、特定社債の元利払いに劣後している。
iv) ウォーターフォールに関するリスク
発行体は当初諸費用と期中の諸費用をあらかじめ見積もり、明治安田生命からの優先出資により賄う。
v) 基金のデフォルトリスク
裏付資産である基金の債務者である明治安田生命がデフォルトする場合、または基金利息や元本が保険業法第 55 条の規定により繰り延べられる場合、特定社債は期限の利益を喪失し、特定社債の元本は満額償還されない可能性がある。この場合、特定社債の回収の程度は、基金の回収の程度に依存すると考えられる。
R&I は、基金の性質を考慮し、明治安田生命の基金の予備格付を A+とした。裏付資産である明治安田生命の基金の評価に関しては、2018 年 8 月 29 日付で公表する当該基金の予備格付についてのニュースリリースを参照されたい。
(3) 総合評価
格付対象を総合的に評価し、格付対象の長期個別債務格付を付与した。
5.損失、キャッシュフロー及び感応度の分析に関する情報
信用補完 | なし |
流動性補完 | 発行体が明治安田生命と締結する信用枠設定契約 |
下記格付方法を格付対象に適用する場合、格付対象の現時点での信用力は、裏付資産である基金の長期個別債務格付の水準に依存する。
6.格付方法
格付対象の評価において、R&I は主に以下の格付方法を用いた。
公表年月 | 項目 |
2016 年 11 月 | 第 1 章 総論 |
2016 年 11 月 | 第 2 章 各論 仕組みに関するリスク |
2016 年 11 月 | 第 3 章 各論 裏付資産に関するリスク 第 11 節 その他金銭債権等(信託受益権を含む) |
2016 年 11 月 | 第 4 章 各論 キャッシュフローリスク 第 7 節 裏付資産及び仕組み関係者等の信用格付を基にする分析方法 |
上記の格付方法は以下のホームページに公開している。
https://www.r-i.co.jp/rating/about/rating_method.html
「格付提供方針等」3. に掲げる開示事項
(1)信用格付業者の商号又は名称及び登録番号並びに当該信用格付業者に対して直近一年以内に講じられた 監督上の措置の内容 | |
商号又は名称:株式会社格付投資情報センター登録番号:金融庁長官(格付)第6号 直近一年以内に講じられた監督上の措置:なし | |
(2)信用格付を付与した年月日 | |
2018年 8月28日 | |
(3)信用格付の付与に係る過程に関与した主任格付アナリストの氏名及び信用格付の付与について信用格付 業者を代表して責任を有する者の氏名 | |
主任格付アナリスト:橋本 翔太 信用格付の付与について代表して責任を有する者:住田 直伸 | |
(4)信用格付の付与に当たり採用した信用格付の対象となる事項の区分及びその細目に応じ記載された以下 の1)、2)の事項。並びに信用格付の対象となる事項の概要 | |
1)信用状態に関する評価の前提となる事項及び信用状態に関する評価の結果を示す等級を定めるために用いる基準 「格付付与方針」及び「格付符号と定義」をご覧下さい。 (格付付与方針) https://www.r-i.co.jp/rating/about/rating_grant.html (格付符号と定義) https://www.r-i.co.jp/rating/about/definition.html 2)信用格付の付与に係る方法の概要(ただし、重要なものに限る。)本リリース「6.格付方法」の項目をご覧下さい。 信用格付の対象となる事項の概要:本リリース「3.格付対象」の項目をご覧下さい。 | |
(5)格付関係者の氏名又は名称。ただし、金融商品取引業等に関する内閣府令(平成十九年内閣府令第五十 二号)第三百十三条第三項第三号にある、ただし書きの定めに従う。 | |
組成に関する事務の受託者 | 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 |
原資産の主たる保有者 | 該当無し |
原資産の発行者又は債務者 | 明治安田生命保険 |
損失の危険を移転する契約の締結者(第三者) | 該当無し |
特別目的法人 | 該当無し |
特定融資枠契約の締結者 | 該当無し |
(6)信用格付の対象となる事項が資産証券化商品の信用状態に関する評価であり、かつ、過去に信用格付を付与した資産証券化商品の設計と著しく異なる場合には、その旨 | |
本信用格付の対象となる事項は、資産証券化商品の信用状態に関する評価ではありません。 | |
(7)信用格付の付与が格付関係者からの依頼によるものでない場合には、その旨及び信用格付の付与に係る過程において格付関係者から公表されていない情報(信用評価に重要な影響を及ぼすと認められるもの に限る。)を入手したか否かの別 | |
該当無し | |
(8)付与した信用格付について更新を行わない場合には、その旨及びその理由 | |
該当無し |
(9)付与した信用格付の前提、意義及び限界に関する当該信用格付の対象となる事項の区分に応じた説明(信用格付の変動の特性に関する説明及び信用格付の対象となる事項が信用状態の変化に関する情報が限定されている金融商品の信用状態に関する評価である場合における当該信用格付の限界に関する説明を含 む。) | ||
R&Iの信用格付は、発行体が負う金融債務についての総合的な債務履行能力や個々の債務等が約定通りに履行される確実性(信用力)に対するR&Iの意見です。R&Iは信用格付によって、個々の債務等の流動性リスク、市場価値リスク、価格変動リスク等、信用リスク以外のリスクについて、何ら意見を表明するものではありません。信用格付は、いかなる意味においても、現在・過去・将来の事実の表明ではありません。また、R&Iは、明示・黙示を問わず、提供する信用格付、又はその他の意見についての正確性、適時性、完全性、商品性、及び特定目的への適合性その他一切の事項について、いかなる保証もしていません。 R&Iは、信用格付を行うに際して用いた情報に対し、品質確保の措置を講じていますが、これらの情報の正確性等について独自に検証しているわけではありません。R&Iは、必要と判断した場合には、信用格付を変更することがあります。また、資料・情報の不足や、その他の状況により、信用格付を保留したり、 取り下げたりすることがあります。 | ||
(10)信用格付の付与に当たり利用した主要な情報に関する次に掲げる事項 1)当該情報の概要 2)当該情報 の品質を確保するために講じられた措置の概要 3)当該情報の提供者 | ||
1)当該情報の概要 | 2)当該情報の品質を確保するため に講じられた措置の概要 | 3)当該情報の提供者 |
案件関連契約書 | 信用格付業者への表明保証等 | 組成に関する事務の受託者 |
裏付資産に関するデータ・資料 | 信用格付業者への表明保証等 | 組成に関する事務の受託者 |
(11)付与した信用格付の対象となる事項が資産証券化商品の信用状態に関する評価に関するものである場合 には、次に掲げる事項 | ||
本信用格付の対象となる事項は、資産証券化商品の信用状態に関する評価ではありません。 |
金融商品取引業等に関する内閣府令第 306 条第 1 項第 9 号に基づく開示事項
本信用格付の対象となる事項は、資産証券化商品の信用状態に関する評価ではありません。
信用格付の対象となる事項が資産証券化商品の信用状態に関する評価である場合、格付関係者に当該資産証券化商品の情報の公開を働きかけた内容及びその結果