・絵コンテ、キャラクター設定、メカ・小物設定、作画参考資料、レイアウト、3D-L/O、色指定表、美術設定、美術ボード
令和5年度 文化庁「芸術家等の活動基盤強化芸術家等実務研修会の実施」事業
アニメーション制作者・制作会社に向けた適正な契約関係普及のための研修会
個人のアニメーション制作者と制作会社の業務委託契約
ガイドブック
基本編
令和6年3月
アニメーション制作分野で受注者となる個人の制作者、いわゆるフリーランスの方と、発注者となる制作会社等の事業者、その担当者を対象に、適正な契約について十分理解して、受注者の就業と発注者の事業がともに安心・安全に行えるように、契約内容の明確化や書面化と契約の実行の方法を解説し、契約書等のひな型例を掲載しています。
アニメーションの制作には多くの職種があり、業務と契約の内容が異なります。また、制作会社等や個人の間で多層的に受発注が行われ、同じ職場の中の同じ職種の人にも個人の制作者と雇用されている人が併存しています。
個人への会社等による業務の委託には、「下請代金支払遅延等防止法」(以下「下請法」という)や、2024年秋から施行の「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法) 」(以下「フリーランス新法」という)が適用され、請求、支払に係る消費税や所得税の扱いも法律にそって行うことが必要です。
このガイドブックは、個人の制作者と制作会社等の適正な業務委託契約について、アニメーションの制作に共通の 基本の契約と、代表的な職種の個別の業務の契約を分けて、法律の適用についても解説しています。このガイドブックを利用する際は、第1分冊で基本的な理解を得た上で、第2分冊で個別業務の契約について参照されることをお勧めします。
◆第1分冊 個人のアニメーション制作者と制作会社の業務委託契約 ガイドブック 基本編
◆第2分冊 個人のアニメーション制作者と制作会社の業務委託契約 ガイドブック 個別業務編
◆第3分冊 個人のアニメーション制作者と制作会社の業務委託契約 契約書・発注書、取引書面のひな型例と作成方法
はじめに 2
なぜ、契約? 4
受注者と発注者の合意により成立する契約 5
基本契約の9つの合意事項 6
個別契約=受発注時の4つの合意事項 7
業務の内容・仕様について 8
基本契約の9つの合意事項について 9
◆受注者と発注者①~② 10
◆担当業務 12
◆代金の計算方法①~② 13
◆支払方法①~➃ 15
◆業務の手続①~⑦ 20
◆リテイク、改変①~➃ 27
◆変更、解約、延期、中止①~➃ 31
◆著作権等①~⑤ 35
◆その他①~⑦ 40
目
次
契約は、個人の制作者=受注者と、主に制作会社等=発注者が、ともに安心して業務を行うためのものです。
◆法律 を守って業務を行うために必要です。
特に発注者は、 「下請法」 や「フリーランス新法」に従って支払期日等を定めて業務を行うことが必要です。また消費税や所得税の扱いも法律に従って行うことが必要です。このガイドブックは法律にそって業務の内容や手続を定め、書面の発行や文面で記録する方法を解説します。
◆業務の内容や支払金額、スケジュール を定めるために行います。
受注者が担当する業務の内容・業務の仕様(成果物のサイズや注意事項に書かれている作成方法など)や、支払金額、支払方法、業務の手続や進行の期日・期間について確認し、合意して、契約に定めて業務を行います。このガイドブックでは受注者と発注者が業務について確認する一般的な項目と方法を解説
しています。個々の受注者と発注者の契約はこれを参考にそれぞれの業務に応じて行ってください。
◆著作権や秘密保持 などについて信頼して業務を行うことが望まれます。
著作権の侵害の禁止や適正な扱い、業務上の秘密の保持などを定めて、安心して業務を行うための契約の方法を解説し、推奨しています。個々の受注者と発注者が可能な契約を行ってください。
受注・発注時には契約の締結、発注書の発行が必要です。またインボイス制度や
今後の「フリーランス新法」施行に向けて基本的な契約を見直すことが必要です。
契約は、受注者と発注者の合意により成立します。
同じ業務を継続し、繰り返して行うことが多い業務委託の契約は、
共通する事項を定める基本の契約と、個別の契約(発注)を分けて、確認、合意を行うと、効率的に契約を行うことができます。
◆「基本契約」 継続し、繰り返して行う取引の、毎回共通の事項について定める契約
(初めての受発注時には取引登録と同時に、または受発注実績があって未契約の場合は速やかに基本契約を行い、定期的に契約内容を見直すことが望まれます。)
どの業務を行う時にも共通の支払方法などの事項を確認し、合意して定めます。
◆「個別契約(発注)」 個別の業務の受発注の都度、個別の事項を定める契約
個々の業務の内容や支払金額など個別の事項を確認し、合意して定めます。
※基本契約に定める共通事項と、個別契約に定める個別の事項を、まとめて契約で定めることも可能です。一度のみの業務委託の場合はまとめて(1つの契約書で)契約することになります。
共通の事項、個別の事項を確認、合意した契約により業務を進めます。
基本契約の合意事項を9つに分けて解説します。
◆受注者と発注者 「初めて仕事を | ◆担当業務 「担当するのは | |
するけど 業務の定義 大丈夫?」 | この仕事」 | |
◆代金の計算方法 「尺、カット数、 | ◆支払方法 「納品・受領後、 | |
枚数、何で代金を 支払について 決めるの?」 | 60日以内に 所定の方法で」 | |
◆業務の手続 「納品・受領、支払を | ◆リテイク、改変 「納品・受領後に、不備がないのに、 | ◆変更、解約、 延期、中止 |
業務の進め方 予定通りに」 | 直すの?」 | 「中止? どうするの?」 |
◆著作権等 「描いた原画を | ◆その他 「その個人情報、 | |
ネットでみんなに 著作権、その他 見てもらい たいんだけど」 | 扱い注意!」 |
※どの業務を行う時にも変わらない共通事項のみの契約の事項です。代金の計算方法などが、業務の都度、変わる時には、個別の業務の契約で定めます。
個別契約(発注)=受発注時の合意事項を4つに分けて解説します。
◆作品と担当業務
◆支払金額
「そのカット、私の担当では
ないはずだけど」
「先月、請求した金額と、今月の支払金額が
違うんだけど」
◆業務の内容・仕様 ◆スケジュール
「サイズと解像度がわからないから作業が進め
られない」
「必要な素材が
揃ってないから作業が始め
られない」
※個別の業務を行うために必要な契約の事項です。上記以外にも業務を行うために必要な事項を確認・合意して契約します。
一般的に「業務の内容」という場合はこのガイドブックで別項目としている下記も含まれます。
◆作品と担当業務:制作を行うアニメーション作品と担当する業務(職種)
◆業務や成果物の数量:カット数、枚数等(単価をかけて代金を算出)
◆スケジュール:業務の開始日、検査日・期間、納品・受領日等
これ以外に定めておくべき「業務の内容」、特に作成する成果物、用いる素材のフォーマットや、成果物のチェック(検査)の基準となる「仕様」をまとめたのが「業務の内容・仕様」の項目です。 一般的に「仕様」は以下のように示されます。
◆作成する成果物、用いる素材の形式フォーマット
・用紙、サイズ、使用ソフト、解像度、レイヤー構成など
・使用する素材に関する禁止事項
◆指示書・注意事項に示されている指示内容や成果物の水準
・絵コンテ、キャラクター設定、メカ・小物設定、作画参考資料、レイアウト、3D-L/O、色指定表、美術設定、美術ボード
・絵コンテ注意事項、作画注意事項、動画注意事項、背景注意事項、仕上注意事項、3D注意事項、撮影注意事項
※合わせて、基礎要求度(テレビ(重・中・軽)、劇場、その他)、難易度(重さ、面倒さ、複雑さ)、
スケジュールの切迫度等や、担当するカット等の演出の意図や、求める動き等の表現、前後のつながり等の指示を示すことが望まれます。
上記で示された「仕様」の内容や水準に達していないと判断された場合は、チェック(検査)により、やり直し、リテイクの対象となり得ます。
基本契約の9つの合意事項について
「契約書・発注書、取引書面のひな型例と作成方法」参照
◆受注者(個人)の
氏名と住民票の住所を
確認して、契約者とします。
◆発注者(多くは法人)の
法人名と代表者または
契約の権限のある人と
受注者
登記簿の住所を
確認して、契約者とします。
発注者
◆受注者と発注者①
◆基本契約◆
発注者は、受注者が個人であることをよく確認して契約を行います。
◆個人への業務委託だと考えていても、
実際には異なることがあります。
受注者の立場 | 契約の種類 | |
個人の受注者(従業員を使用していない者)※ (発注者以外の法人に雇用されているが、個人への委託を希望する者も含む) | 個人の受注者との業務委託契約 ※「フリーランス新法」の対象 | 契個約人 との |
個人の受注者(従業員を使用している者) | ||
法人を設立し、その代表※ | 制作者が代表の法人との業務委託契約 ※当該法人が従業員を使用していない場合は 「フリーランス新法」の対象 | 契法約人 等との |
発注者の法人以外に雇用されている 社員、期間雇用、パート・アルバイト | 制作者を雇用する法人との業務委託契約 | |
派遣会社等の事業者に所属、そこへの委託を希望 | 発注者は派遣を行う事業者等との業務委託契約派遣される個人は派遣会社等との派遣契約 | |
発注者の法人の社員、期間雇用、パート・アルバイト | 発注者の法人との雇用契約 | 契雇約用 |
◆受注者と発注者②発注者による確認事項
◆基本契約◆
個別の業務において、受注者が共通して行う業務を下記の●…から確認します。
業務は2つの種類に分けられ、業務の手続が違います。
◆情報成果物の作成業務:アニメーションを構成する、いわゆる中間成果物の作成
●絵コンテ、キャラクターデザイン、その他設定
●レイアウト・ラフ原画(第1原画)、原画 ●動画
●色彩設計、色指定、仕上 ●美術設定、美術ボード、背景
●CG ●特殊効果、撮影監督、撮影 ●編集
◆役務の提供業務:アニメーション制作の指示、チェック(検査)や修正、または管理
●監督 ●演出 (総監督、シリーズディレクター、チーフディレクター、副監督、監督助手、演出助手)
●作画監督 ●動画検査 ●仕上検査 ●美術監督
●プロデューサー ●デスク ●制作進行
※上記は担当する業務の例です。上記以外の業務を担当することもあります。作画監督、動画検査、 仕上検査、美術監督が、一から成果物の作成を担当した場合、情報成果物の作成業務も行ったことになります。これをふくめて複数の業務を行う可能性がある場合は全て選びます。このガイドブックは脚本と音響・音声制作関連業務は対象にしていません。
◆担当業務
◆基本契約◆
情報成果物の作成、役務の提供の代金の計算方法が、個別の異なる業務を通じて共通の場合、
受注者と発注者は、確認、合意して、基本契約に定めます。
単価
合計代金
◆情報成果物の作成、役務の提供の代金は、代金計算の
単位
(作品全体、話数、
× 単位の数量 × =
シーン・カット数、(かける)
枚数、尺、月日時等)
(かける)
(が)
の積算等のような計算方法とすることを確認して、合意します。
基本契約で、毎回の業務に共通の代金計算の単位と共通の計算方法を定めることを推奨します。
単価と数量は個別契約で定めることを推奨します。
また、一定の計算方法によらない支払金額は個別契約で定めます。
この解説では、単価、合計代金は消費税抜き価格で扱うこととしています。
単価、代金が、消費税抜きの金額、または、含む金額、いずれなのか、確認が必要です。
◆代金の計算方法①
◆基本契約◆
何の単位によって代金を計算するのか、下の●・・・から確認します。
◆代金の計算の単位とは?
■担当業務の成果物(工程毎の、いわゆる中間成果物)の数
●シリーズ作品全体=通常1式 ●単独作品全体=通常1式
●シリーズ作品の各話=通常1話
●担当シーン数=▢シーン ●担当カット数= ▢カット
●担当動画枚数= ▢枚
■作成する成果物(工程毎の、いわゆる中間成果物)の時間の長さ
●尺(秒数)= ▢秒
■業務の期間
●月・日・時間= ▢月・ ▢日・ ▢時間
※カット数・枚数×単価と、月単位×月数等、2つの計算方法の代金の合計を支払金額とすることがあります。
※長期にわたる業務は中間払いなどで分割することもあります。
◆代金の計算方法②
◆基本契約◆
受注者と発注者は下記のような支払方法を確認し、合意して、基本契約に定め、個別の業務の代金等の支払を行います。
◆支払期日:納品・受領(役務の完了)から60日以内
作画などの情報成果物の作成業務では、個別の業務が継続していても、それぞれの成果物の納品・受領から60日以内とすることが必要です。
成果物分の請求を毎月締め日に受け付け、翌月の同日に支払うなどの方法が一般的です。
この場合も、それぞれの成果物の納品・受領から60日以内に支払を行うことが必要です。
◆支払方法:銀行口座振込などの支払方法を確認
◆消費税 :受注者が適格請求書発行事業者であるかどうか、 消費税の扱いについての確認が必要
◆所得税 :個人への業務委託の支払は源泉徴収の対象
支払の期日は法律に従い、消費税や源泉徴収の扱いを適正に行うことが必要です。
◆支払方法①
◆基本契約◆
◆支払期日は、納品・受領 (役務の提供では完了) から60日以内
のできるだけ短い期間に設定することが必要です。
◆ 「下請法」、「フリーランス新法」に定められた期日です。
請求を締め日で取りまとめて支払を行う場合、毎月末を締め日にして、翌月末日に支払う等として、請求日=納品・受領 (完了) の日から60日以内とします。
(「フリーランス新法」の適用対象取引については、発注者がグロス請け、下請、孫請け等の場合、
一定の要件の下、その業務については元委託支払期日から30日以内を支払期日とすることができます。)
◆複数の契約による請求を複数受け付けた場合に、それぞれ納品・受領 (完了) の日から
60日以内であれば、合算して支払うことができます。
◆銀行振込の場合、基本契約の時に口座名義・種別・番号を登録しておくことを推奨します。受注者が指定した口座に振込み、手数料は発注者が負担します。支払日が銀行の休業日のため振込日を繰り延べる場合は、契約書に定めておく
ことが必要です。(下請法が適用される取引は2日を超える繰り延べはできません。)
◆支払いが遅延した場合、下請法は遅延利息を支払うことを定めています。
◆支払方法②期日、方法等
◆基本契約◆
◆発注者は、
受注者が適格請求書発行事業者か、登録していない事業者か、確認します。
・受注者の適格請求書発行事業者登録は義務ではありません。発注者は登録を強制できません。
■受注者が適格請求書発行事業者の場合
・適格請求書発行事業者は、
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号、➁取引年月日、➂取引内容※1、➃適用税率、
⑤消 税額等、⑥書類の交付を受ける事業者(発注者)の氏名又は名称を記載した適格請求書(インボイス)を発行します。
※1 ➂取引内容は合計代金(消 税抜き金額)と明細、合計支払金額を記載します。
※2 ➃・⑤は税率ごとに区分することが求められていますが、アニメーション制作に係る代金の消 税率は10%です。
・適格請求書発行事業者である受注者は、消 税の申告・納税が必要です。
・発注者は納付する消 税額を計算する際、インボイス記載の税額全額を仕入控除することができます。
・発注者は繰り返して取引を行う受注者の登録番号をあらかじめ把握しておくことを推奨します。
◆支払方法③消費税⑴
◆基本契約◆
■受注者が適格請求書発行事業者として登録してない事業者の場合
・適格請求書発行事業者として登録していない受注者の請求は、消税について発注者との確認が必要です。
受注者は、発注者と協議して、消 税相当分の支払と請求書への記載方法について定めてください。
・インボイス制度の実施を契機として支払金額等の取引条件を見直す場合に、
一方的に値下げを通告する等の発注者の行為は下請法・独占禁止法上問題となることがあるため、
受注者と十分に協議する必要があります。
・適格請求書発行事業者でない事業者は、消 税を請求しても売上に係る消 税額の納付を免除されます。
・インボイス制度開始後は、発注者はインボイスでないと仕入税額控除を行えませんが、経過措置として 請求書に記載の合計支払金額から算出した消費税相当分については、部分的に仕入税額控除ができます。 (令和8年9月までは8割、令和8年10月から令和11年9月までは5割)
なお、1万円未満の課税仕入については、発注者はインボイスがなくても仕入税額控除ができます。
◆支払方法③消費税⑵
◆基本契約◆
アニメーション制作の業務委託料金(代金)の個人への支払は、ほとんどの場合※、所得税の源泉徴収を行うことが必要です。
※源泉徴収が必要な報酬・料金等とは? 詳しくは国税庁ホームページを参照
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm
◆源泉徴収は、発注者が支払時に税額を引いた金額を受注者に
支払い、発注者が受注者分の納税を行う制度です。
・発注者が源泉徴収を行うために、受注者のマイナンバーが必要です。
受注者は定められた方法で、発注者にマイナンバーを知らせることが必要です。
発注者は定められた方法で、受注者からマイナンバーを受け取り、管理することが必要です。
・発注者は1年分の源泉徴収額を取りまとめた源泉徴収票を受注者に送付することが必要です。
・受注者は確定申告の際に発注者から送付された源泉徴収票によって源泉徴収額を申告します。
1年間の所得税額の計算により還付が得られることがあります。
◆支払方法➃所得税の源泉徴収
◆基本契約◆
発注者は、個別の業務の発注、納品・受領、支払の時に、法律で定められた手続を行うことが必要です。受注者は請求書を発行します。
こうした手続を行うことを基本契約で定めます。
◆業務の手続
・発注者は、個別の業務の発注時に、納品・受領(役務の提供では完了)、検査、支払の期日を受注者に示し、合意して定めます。
・発注者は、これを記載した契約書(発注書)を発行し、納品・受領(役務の提供では完了)、支払を文面で記録し、必要な期間、保存することが必要です。受注者は請求書を発行します。
◆情報成果物の作成業務の手続
・情報成果物の作成業務では受注者と発注者が
「納品・受領」とチェック(検査)、修正、検収の方法に
(チェック・修正・検収)
【発注】【納品・受領】【請求】【支払】
ついて確認し、発注者は「納品・受領」「検査」の日を発注時の書面に記載することが必要です。
◆役務の提供業務の手続 ・役務の提供業務では受注者と発注者が「完了」となる
(確認)
【発注】【完了】【請求】【支払】
条件・時期を確認し、発注者は「完了」の日を発注時の書面に記載することが必要です。
業務の手続の期日と、スケジュール、作品・担当業務・仕様、支払金額は、業務の都度、確認、合意し、個別契約・発注書に定めます。
◆業務の手続①
◆基本契約◆
下請法で定められた納品・受領の時期と、作成した成果物のチェック(検査)、修正、検収の方法、時期・期間との関係を、確認し、合意することが重要です。
◆下請法による受領の時期は
■作成した成果物を制作進行やチェック(検査)者に渡した時です。
・この日から60日以内に支払を行う必要があります。
・ただし、一定の情報成果物について、あらかじめ合意した場合、発注者、または発注者が指定したチェック
(検査)者が、一定の水準に達していること(チェック(検査)の対象になり得ること)を確認した時とすることができます。しかし、この場合も、あらかじめ定めた納品・受領日には、確認の有無にかかわらず、
発注者が成果物を受領したものとみなされ、その日が支払期日の起算点となります。
・チェック(検査)によって、成果物に仕様との不適合等(瑕疵)が見つかった場合、発注者は受注者にやり直し(修正)を求めることができます。この場合の納品・受領の時期は、やり直し(修正)をした成果物を渡した時、受け取った時になります。
・不適合等(瑕疵)のある成果物にやり直し(修正)を求めるためには、発注者は個別の業務の契約において、業務の内容や仕様書(注意事項等)によってチェック(検査)の基準を示し、不適合等(瑕疵)があるといえる必要があります。
・またチェック(検査)と修正、修正した成果物を発注者が確認する検収の時期と期間を示し、受注者、成果物の作成者と、発注者が指定するチェック(検査)者の間で合意しておくことが必要です。
また、チェック(検査)者にはチェック(検査) の業務の完了の条件・時期を示しておくことが望まれます。
◆業務の手続②情報成果物の作成業務の納品・受領とチェック・修正、検収
◆基本契約◆
情報成果物の作成業務では、発注者が、納品・受領、検査、支払の期日を記載した契約書(発注書)を発行し、納品・受領(役務の提供では完了)、支払を文面で記録し、必要な期間、保存することが必要です。
受注者は請求書を発行します。
手続:書面の発行、文面の確認 | 書面の発行、文面の確認の方法 | |
発注前 | 業務依頼(の文面) | 発注者が受注者に案を示して依頼。発注書・仕様書案の提示を推奨。 |
依頼の承諾(の文面、見積書とその承認) | 受注者が上記の案を確認して、承諾。文面での承諾を推奨。 または、受注者が見積書を発行、発注者が見積書を確認、承諾。 | |
発注時 | 個別業務の契約書 (発注書)、必要な 場合、仕様書を添付 | 発注者は、法律に従い、個別の業務毎に発注書の発行が必要。 必要に応じて仕様書を添付。 |
納品時 | 納品 (の文面)確認 | 受注者が納品を発注者と確認。その内容を文面で示すことを推奨。 |
受領時 | 受領の文面確認 | 発注者が、納品の受領を受注者に文面で示し、確認、文面を保存。 |
請求時 | 請求書の発行 | 受注者が納品・受領時、または月毎等、定められた時期に発行。 |
発注者、受注者ともに業務の依頼・承諾から、納品・受領までの手続ごとに、口頭ではなく文面で相手方と確認することを推奨します。アニメーション制作では、カット袋や伝票に、成果物の受け渡しやチェック
(検査)、修正の期日や数量が記録されています。これらを納品・受領の手続の文面とすることができます。
業務の依頼・承諾、納品・受領の文面と請求書は、発注者が発行する発注書と書式・フォームを揃えて受注者・発注者間で運用すると効率的です。(契約書・発注書、取引書面のひな型例参照)
◆業務の手続③情報成果物の作成業務の書面の発行、文面の確認
◆基本契約◆
情報成果物の作成業務では「納品・受領」の時期と、チェック(検査)、修正、完成した成果物を発注者が確認する検収の時期・方法の関係を確認することが特に重要です。
受注者(個人の制作者)
業務
手
の 毎回共通の基本的な
続 契約内容の合意
その都度の業務の契約内容の合意
契約・発注
契
基本契約
個別業務契約(発注書)
支払
納品・受領 請求
(チェック・修正・確認・検収)
文書 基
契 ま 業 仕約個 個
(
(
(
(
仕 書業
別
本
請
面面 約
≒
契
での 様書面務
の注推
約
の発 書発化依
)
書
確行 案書奨頼
認、 、
継
業 業 業
務 務 務
た書務 様書は面委 書、積推託 の発書奨承 発注
)
)
見化
の
務
業
諾
行書
、
(
必
依
業
要
の
合頼 等 務
書 受 別
化
求
面納 領 の
書
文
務
推品 の 業
)
面
奨
の終了
演指
チ 必 再
クにれ者
成
ェ出定発 要 確
備託し
の 準委続
行
進 のた
依委 内
)
意
提素始
頼託 容
の の
のな開 作供材
ッ等さ注
(
)
た
検よ に査る
修な 認 請
正場 ・ 求
合 検
、 収
発注者
◆業務の手続➃情報成果物の作成業務のフローチャート
◆基本契約◆
役務の提供業務では、役務の提供が完了する条件・時期を確認することが望まれます。支払は完了の日から60日以内に行う必要があります。
◆完了・時期の条件の確認
・「下請法」では、個別の業務の契約で定めた役務を終了した時が、業務の完了です。
・監督、演出の業務では、製作者へのアニメーション作品の納品を終えた時を「完了」とすることが
あります。作画監督、動画検査の業務ではチェック(検査)後に修正した成果物の再チェック(再検査)を
終え、発注者が成果物を確認する検収を終えた時を「完了」とすることがあります。契約時に「完了」の条件・時期を確認する必要があります。
・発注者が、受注者に業務の完了を文面で確認(完了確認書など)することを推奨します。
・役務の提供業務の完了から60日以内に支払を行うことが必要です。
・通常、個別の契約の期限は支払までとします。これ以外の場合は、協議し、個別契約に定めます。
・業務の報告は完了時に限らず、日報・週報等で行うことを推奨します。
◆業務の手続⑤役務の提供業務の完了の確認
◆基本契約◆
役務の提供業務では、発注者が、完了の条件・時期、支払の期日を記載した契約書(発注書)を発行し、完了、支払を文面で記録し、必要な期間、保存することが必要です。
受注者は請求書を発行します。
手続:書面の発行、文面の確認 | 書面の発行、文面の確認の方法 | |
発注前 | 業務依頼(の文面) | 発注者が受注者に案を示して依頼。発注書・仕様書案の提示を推奨。 |
依頼の承諾(の文面) | 受注者が上記の案を確認して、承諾。文面での承諾を推奨。 | |
発注時 | 個別業務の契約書= 発注書、必要な場合、仕様書を添付 | 発注者は、法律に従い、個別の業務毎に発注書の発行が必要。必要に応じて仕様書を添付。 |
完了時 | 完了の確認(の文面) | 発注者が、業務の完了を文面で示し、受注者と確認、文面を保存。 |
請求時 | 請求書の発行 | 受注者が完了時、または月毎等、定められた時期に発行。 |
発注者、受注者ともに業務の依頼・承諾から、完了までの手続ごとに、口頭ではなく文面で相手方と 確認することを推奨します。アニメーション制作では、カット袋や伝票、日報に、工程の進捗の期日や数量が記録されています。これらを完了の確認の手続の文面とすることができます。
業務の依頼・承諾、完了の確認の文面と請求書は、発注者が発行する発注書と書式・フォームを揃えて受注者・発注者間で運用すると効率的です。(契約書・発注書、取引書面のひな型例参照)
業務の報告は完了時に限らず、日報・週報等で行うことを推奨します。
◆業務の手続⑥役務の提供業務の書面の発行、文面の確認
◆基本契約◆
役務の提供業務では、発注者が受注者が業務の「完了」の条件・時期を確認してください。
(
)
(
)
(
)
(
(
)
)
(
)
≒
受注者(個人の制作者)
業務の手続 | 基本契約 | |||
個別業務の契約(発注書) | ||||
毎回共通の基本的な その都度の業務の 契約・ 完了 請求 支払 契約内容の合意 契約内容の合意 発注 (確認) | ||||
文書面面でのの発確行認、 | 契 基 契 ま 業 仕約個 本 仕約書業 た書務 様書別 書完 請 契 様書面務 は面委 の、 業 面了 求 書発化依 見化託 発 化 約 の注推 積推 発 務 推確 書 書 案書奨頼 書奨承 行注の 奨認 、 諾 書 、 | 個別の務の終了 | ||
業務の進行 | 業継 業 依 必業 チ成指 場修 準務続 依務 合頼 等要務 指検ェ果定 合正 再 請 備委し 頼委 意内 のなの 示査ッ物さ のが 確 求 託た 託 容 提素開 クのれ 指必 認 の の の 供材始 た 示要 な |
発注者
◆業務の手続⑦役務の提供業務のフローチャート
◆基本契約◆
成果物の納品・受領後にリテイク、改変による修正が発生した場合について、共通する基本的な対応を確認し、合意して、基本契約に定めます。
ここでは
◆リテイクは、
各工程の成果物の納品・受領後、
ラッシュチェック等で出た修正指示により修正すること
としています。
◆改変は、
作品公開後の内容変更等により修正すること
としています。
◆リテイク、改変①
◆基本契約◆
納品・受領した後に、成果物に仕様との不適合等(瑕疵(かし))が見つかった場合について、共通する対応を確認し、合意し、基本契約に定めます。
(かし)
◆納品・受領後に各工程の成果物に
仕様との不適合等(瑕疵)が見つかった場合
・その成果物のチェック(検査)者にも確認し、作成した受注者とチェック(検査)者と
発注者が対応を協議します。
・下請法では、成果物に瑕疵(かし)がある場合は少なくとも受領後1年間(一定の場合は延長可)は作業者にやり直しを行ってもらうことが可能とされています。
・この成果物の修正は、受注者とチェック(検査)者とも協議して行うことが望まれます。
成果物の瑕疵(かし)以外の修正が必要になる場合は、契約した業務とは別途の業務としての発注が必要になります。
・納品・受領後の成果物の修正を行う場合、その後工程にも修正が生じます。
後工程の修正を依頼する場合、別途の業務として支払金額、仕様、スケジュールを
定めることが必要です。
◆リテイク②納品・受領後に不適合等が見つかった場合
◆基本契約◆
納品・受領後の成果物を、仕様との不適合等(瑕疵(かし))ではない理由で修正を行う場合について、共通する対応を確認し、合意し、基本契約に定めます。
(かし)
◆納品・受領後の各工程の成果物に
仕様との不適合等(瑕疵)はないが、修正を行う場合
・その成果物の修正を誰が行うか?
●必ず受注者が行う
●受注者には依頼せず、受注者以外の制作者が行う
●その都度協議する
以上のいずれとするか、共通する対応を定められる場合は、確認し、合意して
基本契約に定めます。
・発注者が受注者にこの修正を依頼する場合は、別途の業務として支払金額、仕様、スケジュール等を定めることが必要です。
◆リテイク③納品・受領後に不適合等ではない理由で修正する場合
◆基本契約◆
作品の公開後に改変、修正を行うことになった場合について共通する対応を確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆作品の公開後の改変により、各工程の成果物の修正を行うことになった場合
・発注者は、受注者、主に監督、演出、プロデューサー、デスク、作画監督、美術監督、
色彩設計、CGディレクター等の指示者に、改変の了承を必要とするか確認します。
・その成果物の修正を誰が行うか?
●必ず受注者が行う
●受注者には依頼せず、受注者以外の制作者が行う
●その都度協議する
以上のいずれとするか、共通する対応を定められる場合は、確認し、合意して基本契約に定めます。
・発注者が受注者に修正を依頼する場合、別途の業務として支払金額、仕様、スケジュールを
定めることが必要です。
◆改変➃作品の公開後に改変、修正を行うことになった場合
◆基本契約◆
場合のために、共通する基本的な対応を確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆変更
業務の期日、数量、金額の変更、その他の変更が生じる場合、ただちに受注者と発注者が確認し、必要に応じて対応を協議し、発注者はただちに変更内容を記載した契約書(発注書)の再発行をして受注者に通知し、また、変更内容を文面にして保存します。
◆解約
受注者、または発注者が解約を必要とする場合の解約の方法を確認し、協議します。
◆延期、中止
発注者の都合で、または発注者の都合ではない理由で、個別の契約により制作しているアニメーション
作品や担当の業務が延期、または中止になった場合の対応の方法を確認します。
◆変更、解約、延期、中止①
◆基本契約◆
個別の業務の契約内容の変更が発生した場合、受注者の不利益にならないために、
共通する基本的な対応を確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆変更を、受注者、または発注者が、必要とする場合
・業務の期日の変更や、数量の変更、これにより生じる金額の変更は、
受注者の不利益にならないように確認し、発注者は変更内容を記載した契約書(発注書)をただちに再発行し、受注者に通知することが必要です。
・上記以外の契約内容の変更は、変更を必要とする者ができるだけ早い日までに告知し、
受注者と発注者が対応を協議の上、契約変更の合意を得て、変更内容を記載した
契約書(発注書)を再発行します。
・契約内容の変更により受注者または発注者に損害や追加の作業が生じた場合、損害を負った側、作業を負担した側は、相手方に損害金または追加の代金の支払を請求できることとします。
◆変更②
◆基本契約◆
共通する基本的な対応を確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆解約を、受注者、または発注者が、必要とする場合
・受注者、または発注者が、自己の都合で解約を必要とする場合、解約を必要とする者が解除日の30日前のできるだけ早い日までに告知し、対応を協議の上、対応に合意し、契約の解約の書面を発行します。
(「フリーランス新法」では、発注者は、継続的業務委託を中途で解除する場合は原則として中途解除日の30日前までに受注者に対し予告しなければならないと定められています。)
・発注者の都合で解約を行なった場合、発注者は解約の決定までに受注者が行った業務の納品を受領し、相当分の金額を支払うこととします。
・契約の解約により受注者または発注者に損害が生じた場合、損害を負った側は、相手方に
損害金の支払を請求できることとします。
◆解約③
◆基本契約◆
共通する基本的な対応を確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆延期、または中止が、発注者の都合で、または発注者の都合ではない理由で
あっても、生じた場合
・発注者は受注者にただちに告知し、協議の上、対応を書面で確認します。延期の場合、
再開の対応も協議の上、書面で確認します。
・発注者は、延期、中止の決定までに受注者が行った業務の納品を受領し、相当分の金額を支払うこととします。
・発注者の都合で生じた契約の延期、中止により、受注者に損害が生じた場合、受注者は発注者に損害金の支払を請求できることとします。
◆延期、中止➃
◆基本契約◆
共通する基本的な事項を確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆著作権等の侵害の禁止や適正な扱いの基本的な事項
・侵害の禁止
・成果物等の扱い
・成果物に含まれる受注者の著作物の扱い
・アニメーション作品の公開・利用
・作品公開時の制作者名の表示、広報協力
◆著作権等①
◆基本契約◆
個々の業務に共通する著作権等の侵害の禁止について、確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆侵害の禁止
・受注者と発注者は、制作するアニメーション作品の著作権とそれに含まれる脚本、音楽の
著作権や、商標権、意匠権等の知的財産権を侵害しないことが必要です。
・発注者は、制作するアニメーション作品の権利を侵害する、または第三者の著作権等の
知的財産権、その他あらゆる権利を侵害する資料の提供や指示を、受注者に行わないことが必要です。
・受注者は、作成する成果物が第三者の著作権等の知的財産権、その他あらゆる権利を侵害しないことが必要です。
・権利侵害の主張がされた時は、権利侵害の原因を生じさせた者自身によって解決することが必要です。またこれにより侵害された者、アニメーション作品に係る権利者、
受注者、発注者に損害が生じた場合、違反した者に損害金の支払を請求できることとします。
◆著作権等②侵害の禁止
◆基本契約◆
アニメーション作品は映画の著作物です。作品の著作権は製作者(制作資金を負担した
会社や製作委員会)に帰属し、この会社や製作委員会が著作権者です。これをふまえて、
個々の業務に共通する成果物の扱いについて、確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆成果物の扱い
・受注者が作成する成果物、中間成果物、資料・素材(受注者が業務の受注に先立って創作した著作物を除く)は、発注者に所有権及び著作権等の知的財産権を譲渡し、
アニメーションの作品の著作権者である製作者が、発注者を介し、または発注者から
譲渡を受けて、所有・保有し、管理する。また、この譲渡の代金は業務委託料金(代金)に 含まれる。受注者は譲渡した成果物等に関し、著作者人格権は行使しないとするのが一般的です。業務のために渡された前工程の成果物、中間成果物、資料・素材は発注者に返却し、
また受注者が作成した成果物、中間成果物、資料・素材は発注者に提出するのが一般的です。
こうした取り決めを、確認し、合意して基本契約に定めます。
・受注者が、作成した成果物、中間成果物、資料・素材の利用を希望するときは、発注者を通じて所有権者兼著作権者の許諾を得なければならないとするのが一般的です。
(受注者が作成した成果物を自身の実績として一般公開したり、SNS等に掲載する場合もこれにあてはまります。)
◆著作権等③成果物の扱い
◆基本契約◆
アニメーション作品に利用する受注者の著作物の扱いについて、共通する基本的な対応を、確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆成果物に含まれる受注者の著作物の扱い
・受注者となる監督やキャラクターデザイナーが、受注に先立って創作したキャラクターデザイン等、受注者の著作物を、発注者または著作権者である製作者がアニメーション作品に利用する場合、 これを利用する業務の発注前に、受注者と発注者が利用の条件や対価について合意します。
・アニメーション作品の製作者、または発注者は、上記の受注者の著作物をその作品に
利用するために、著作権 (著作物を利用する権利)の譲渡、または利用許諾について条件と対価を協議し、個別契約に定めます。
・受注者は、上記により譲渡した、または利用を許諾した受注者の著作物に関して、
著作者人格権(著作物を公表するかしないか・著作者名の表示をどうするかなどを決める権利、無断で改変されない権利)を行使しないことすることが一般的です。
◆著作権等➃成果物に含まれる受注者の著作物の扱い
◆基本契約◆
制作に参加したアニメーション作品の公開時の制作者表示や広報協力について、
共通する基本的な対応を、確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆作品公開時の制作者表示
・発注者は、作品公開時のクレジットに制作者を表示する場合、受注者の業務の種類と氏名(芸名、ペンネーム)等を確認します。
◆広報協力
・発注者は作品公開時に、必要な受注者に広報用コメントの使用や広報メディア出演等の協力を得ることを、確認し、合意して、基本契約に定めます。
この時のコメントの使用や出演の代金を業務委託契約の支払金額に含めるとする場合は、
これを確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆著作権等⑤作品公開時の制作者表示、広報協力
◆基本契約◆
◆安全・衛生
◆秘密保持
◆暴力団の排除
◆その都度の契約の終了後の扱い
◆協議
◆専属的合意管轄裁判所
◆その他①
◆基本契約◆
個々の業務に共通する安全や衛生等について、確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆安全・衛生
・発注者は、受注者が安全に業務を行うために、事故やハラスメントの防止、衛生や育児・介護との両立への配慮が必要です。(※1)
※1:2024年秋ごろから施行予定の「フリーランス新法」は、従業員を使用している発注者は、
ハラスメント行為に係る相談対応等必要な体制整備等の措置を講じなければならないとしています。従業員を使用し、かつ継続的業務委託を行っている発注者は、育児介護等と両立して業務を
行えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならないとしています。
詳細は厚生労働省ホームページ参照 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00002.html
※ :現状の制度では、受注者の業務中の事故の損害の補償や損傷、病気の受診や治療、療養は、受注者が加入した健康保険、労働災害保険によって、受注者自身で行うことになります。
国民健康保険は、個人で加入する以外に、国民健康保険組合を通じ、組合加盟の各団体の会員である人とその家族が加入する方法があります。労働災害保険は、2021年4月から全国アニメ制作従事者労災保険センターを通じて、政府管掌労災保険に特別加入できるようになりました。
◆その他②安全・衛生
◆基本契約◆
個々の業務に共通する秘密保持について、確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆秘密保持
・制作するアニメーション作品の情報や資料、成果物や作成途上の素材を、業務を行うため以外に、開示、加工、利用、複写、複製することを禁止します。
・受注者が業務によって知った発注者の企業情報や個人情報を、業務を行うため以外に、開示、加工、利用、複写、複製することを禁止します。
・発注者が業務によって知った受注者の個人情報を、業務を行うため以外に、開示、加工、利用、複写、複製することを禁止します。
・以上に違反し、情報や資料、成果物や作成途上の素材の不適切な扱いにより損害が生じた場合は損害を負った側が相手方に損害金の支払を請求できることとします。
◆その他③秘密保持
◆基本契約◆
個々の業務に共通する暴力団の排除について、確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆暴力団の排除
・受注者と発注者は、暴力団、暴力団員、暴力団関係者等の反社会的勢力との関与、利用、資金等の供給、便宜の供与をしていないことを確約します。
・これに違反した者に対して、相手方は即時に契約を解除できます。
・これに違反した者に対して、相手方は生じた損害金の支払を請求できます。
◆その他➃暴力団の排除
◆基本契約◆
個々の業務に共通する個別の業務の終了後の扱いについて、確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆個別の業務の終了後の扱い
・個別の業務の終了後も、個々の業務のアニメーション作品についての改変による修正、著作権等、秘密保持の事項など、効力存続を定めた事項は有効に存続します。
◆その他⑤個別の業務の終了後の扱い
◆基本契約◆
この契約及び、個々の業務の契約の協議について、確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆協議
・基本契約、個別の契約に記載のない事項や、契約の事項の解釈に疑いが生じたときは、
法令等の定めにより、また、受注者と発注者が誠意をもって協議して、解決します。
◆その他⑥協議
◆基本契約◆
基本契約、個別の業務の契約に関連する訴訟を行う場合の専属的合意管轄裁判所について、
確認し、合意して、基本契約に定めます。
◆専属的合意管轄裁判所
・基本契約、個別の業務の契約に関連する訴訟を行う場合の、第一審の専属的合意管轄裁判所を定めます。※
※一般的には発注者または受注者が所在する地方の裁判所に定めます。受注者が外国人の場合、また発注者が外国法人の場合の契約では、紛争解決に必要なコスト等を勘案して、訴訟を行うのを日本とするのか相手先国とするのか決定する必要があります。さらに、どの国の法律に 準拠するのか契約で定めることもあります。
◆その他⑦専属的合意管轄裁判所
◆基本契約◆
アニメーション制作者・制作会社に向けた適正な契約関係普及のための研修会個人のアニメーション制作者と制作会社の業務委託契約 ガイドブック 基本編
発行
文化庁(令和5年度「芸術家等の活動基盤強化芸術家等実務研修会の実施」事業)
【受託:一般社団法人日本動画協会】発行年月日
令和6年3月20日執筆者
一般社団法人日本動画協会 「芸術家等の活動基盤強化芸術家等実務研修会の実施」事業 事務局
小野打 恵(一般社団法人日本動画協会 働き方改革等検討委員会委員)
監修
小田 勇一(弁護士法人大江橋法律事務所 パートナー弁護士)
令和5年度 文化庁「芸術家等の活動基盤強化芸術家等実務研修会の実施」事業
アニメーション制作者・制作会社に向けた適正な契約関係普及のための研修会
個人のアニメーション制作者と制作会社の業務委託契約ガイドブック 基本編