Contract
xx市建設工事請負契約における設計変更ガイドライン
【 建築工事・建築設備工事 】
令和2年3月
中津市総務部契約検査課
目 次
1.設計変更ガイドライン制定の背景 ・・・1 (1)制定の背景
1)公共建築工事の特性
2)改正品確法の施行
3)工事請負契約の原則 (2)制定の目的
2.用語の定義 ・・・4
3.基本事項 ・・・5
(1)変更の対象となる事項(契約約款の関連規程) (2)受注者・発注者の留意事項
(3)変更が不可能なケース
4.変更の具体例 ・・・9
(1)条件変更等の場合(契約約款第18条)
(2)発注者が変更を必要と認める場合(契約約款第19条) (3)工事を一時中止する必要がある場合(契約約款第20条)
(4)工期内に工事を完成することができない場合(契約約款第21条) (5)設計図書の訂正・変更及び資料作成
(6)設計変更の責任者
5.契約変更(工期・請負代金額の変更) ・・・18
6.仮設・施工方法等における「任意」と「指定」の取扱い ・・・19
7.Q&A ・・・20
1. 設計変更ガイドライン制定の背景
(1) 制定の背景
1)公共建築工事の特性
公共建築工事は、不特定多数の利用者や施設管理者等の様々な要望を総合的に勘案し設計された一品生産品的な目的物を、多種多様な自然・社会・環境条件の下において生産するという特殊性を有している。
そのため、工事の進捗と共に、当初発注時に予見できない施工条件や環境の変化などが起きることがあり、多くの公共建築工事で何らかの設計・契約変更が必要となっている。
また、公共建築工事は、工事内容や設計積算・契約方法等において、土木工事などの他の公共工事とは異なる特性を有している。
例えば、公共建築工事の契約は、契約内容に数量内訳書を含まない、いわゆる「図面契約」であり、工事数量を契約内容に含む公共土木工事とは異なる。
そのため、他の公共工事とは設計変更に関する条件や考え方に差があり、ガイドラインの内容も異なることに留意が必要である。
公共建築工事における設計変更が必要となる背景には、以下のような課題が揚げられる。
① 多種多様な現地の自然・社会・環境条件下で生産されるという特性から、設計図書に示された施工条件が、実際とは一致しない場合がある。
② 設計図書で想定していなかった条件が発生する場合がある。
③ 設計図書に誤謬(ごびゅう)、脱漏(だつろう)、不明確な表示の場合がある。
2)改正品確法の施行
「公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律」が、平成26年6月4日に公布、同日施行され、発注者の責務として以下の事項を新たに規定している。
改正品確法
(発注者の責務)
第七条 発注者は、基本理念にのっとり、現在及び将来の公共工事の品質が確保されるよう、公共工事の品質確保の担い手の中長期的な育成及び確保に配慮しつつ、仕様書及び設計書の作成、予定価格の作成、入札及び契約の方法の選択、契約の相手方の決定、工事の監督及び検査並びに工事中及び完成時の施工状況の確認及び評価その他の事務(以下「発注関係事務」という。)を、次に定めるところによる等適切に実施しなければならない。
(第一から四号省略)
五 設計図書(仕様書、設計書及び図面をいう。以下この号において同じ。)に適切 に施工条件を明示するとともに、設計図書に示された施工条件と実際の工事現場の状態が一致しない場合、設計図書に示されていない施工条件について予期することができない特別な状態が生じた場合その他の場合において必要があると認められるときは、適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請負代金の額又は工期の変更を行うこと。
改正品確法では、現在だけでなく将来にわたり、公共工事の品質が確保されるように「担い手の育成と確保」を新たな目的として加えており、第七条第一項第五号において、発注者の責務として「適切な施工条件の明示」、「適切な設計図書の変更及び請負代金額の変更又は工期の変更」を明記している。
3)工事請負契約の原則
公共工事の品質確保に当たっては、請負契約の当事者が各々の対等な立場における合意に基づいてxxな契約を締結し、xxに従って誠実にこれを履行するように配慮され
なければならないとされている。(改正品確法第3条第10項)
また、発注者及び受注者は、xx市公共工事請負契約約款(以下「契約約款」という。)に基づき、設計図書に従い、法令を遵守し、締結した契約を履行しなければならない。
(契約約款第1条)
(2) 制定の目的
本ガイドラインは、「1.設計変更ガイドライン制定の背景(1)制定の背景 1)公共建築工事の特性」で示した課題や改正品確法で求められる発注者の責務に対応するため、設計変更に関する手続きやルールを明確化することを目的としている。
本ガイドラインを制定し、受発注者間で共有することにより以下の効果が期待される。
① 契約関係の適正化、責任の所在の明確化。
② 設計図書の変更手続きの円滑化。
③ 契約関係の適正化により、必要とする工事目的物の品質の確保。
なお、本ガイドラインは一般的な考え方を示すものであり、それぞれの工事契約における変更については、現場条件や契約内容等に基づき個別に判断することになる。
2. 用語の定義
本ガイドラインにおいて使用する用語の定義は、以下の通りとする。
■ 「設計変更」とは、xx市公共工事請負契約約款(以下「契約約款」という。)第18条又は第19条の規定により図面又は仕様書を変更する場合、契約変更前( ※1 )に当該変更の内容をあらかじめ発注者が受注者に指示することをいう。
※1 重要変更の場合、原則施工前に変更契約締結。
■ 「契約変更」とは、契約約款第23条又は第24条の規定により協議し、工期又は請負代金額の変更の契約を締結することをいう。
■ 「書面」とは、発行年月日が記載され、署名又は捺印された文書をいう。
■ 「承諾」 とは、受注者が監督員に対し、書面で申し出た事項ついて監督員が書面を持って了解することをいう。
■ 「指示」とは、監督員が受注者に対し、工事の施工上必要な事項を書面によって示すことをいう。
■ 「協議」とは協議事項について、監督員と受注者とが結論を得るために合着し、その結果を書面によって示すことをいう。
※ 「質疑書」等の書面による質疑とその回答は 「協議」に該当するものと考えて差支えない。
■ 「軽微な設計変更」とは、構造、工法、位置、断面等の変更で重要なもの以外をいう。
3 . 基本事項
(1)変更の対象となる事項(契約約款の関連規程)
設計変更及び契約変更の対象となる事項は、契約約款に以下の通り定められている。本ガイドラインでは、主にxxに示した事項について取り上げる。
設計・契約変更の対象となる事項 | 契約約款 | |
1. | 図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しない場合(これらの優先順位が定められて いる場合を除く) | 第18条第1項第1号 |
2. | 設計図書に誤謬(ごびゅう)又は脱漏(だつろう)がある場合 | 第18条第1項第2号 |
3. | 設計図書の表示が明確でない場合 | 第18条第1項第3号 |
4. | 工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際 の工事現場が一致しない場合 | 第18条第1項第4号 |
5. | 設計図書で明示されていない施工条件について予期する ことができない特別な状態が生じた場合 | 第18条第1項第5号 |
6. | 発注者が必要と認め、設計図書の内容を変更する場合 | 第19条 |
7. | 工事を一時中止する必要がある場合 | 第20条 |
8. | 受注者の責めに帰することができない事由により工期内 に工事を完成することができない場合 | 第21条 |
※上記以外に、第8条(特許xxの使用)、第15条(支給材料及び貸与品)、第17条(設計図書不適合の場合の改造義務及び破壊検査等)、第22条(発注者の請求による工期の短縮等)、第25条(賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更)、第26条(臨機の措置)、 第27条
(一般的損害)、第28条(第三者に及ぼした損害)、第29条(不可抗力による損害)、第30条
(請負代金額の変更に代える設計図書の変更)、第33条(部分使用)に基づき、設計変更や契約変更を行う場合がある。
(2)受注者・発注者の留意事項
1)入札前に入念な精査・確認を行うこと
■ 発注者は、事前に施工条件等を十分に調査・検討し、必要事項を設計図書に適切に明示するよう努める。
■ 入札参加者は、入札前に仕様書、図面、契約書、現場等を熟覧のこと。
疑義があるときは、発注者へ説明を求めることができる(窓口等は入札説明書に記載)。入札前の段階で疑義を解決しておくことがスムーズな工事施工につながる。
2)受注者は迅速な報告・協議を行うこと
■ 受注者は、契約約款第18条第1項に該当する事項等を発見したときは、その事実が確認できる資料を書面により監督員に提出し確認を求める。
■ 協議内容によっては各種検討・関係機関調整が必要など、発注者が受注者の意見を聴いたうえでやむを得ず回答までの期間を延長する場合もある。そのため、受注者はその事実が判明次第できるだけ早い段階で協議を行うことが重要となる。
■ 発注者が迅速な回答を行うためには、判断材料が必要となる。また、設計・契約変更を行うにあたり、発注者には、第三者に正当な理由等を説明する責任がある。
そのため、受注者に資料(図面、カタログ、計算書等の数値的根拠等)を求めること等について、ご理解を頂きたい。
3)発注者は多様な条件を検討したうえで迅速に回答すること
■ 発注者は、受注者から確認を求められた場合、直ちに調査し、原則として調査終了後
14日以内にその結果を受注者に通知することとされている(契約約款第18条第3項)。
■ 発注者は、上記の回答期限を守ることはもとより、迅速な対応を心がける。
■ 当初設計の考え方や設計条件を再確認して、設計変更の協議にあたる。
■ 当該工事における設計変更の必要性(規格の妥当性、変更対応の妥当性)を明確にする必要がある。
■ 技術的な妥当性だけでなく、多様な条件を検討したうえで受注者に回答する必要がある。
(例)変更での対応は妥当か(別工事で発注すべき内容ではないか)。
4)協議・回答などを書面でやり取りすること
■ 設計変更に係る協議・回答・指示等のやり取りは、書面により行う(書面によらず行った協議の結果は書面に残す)。
■ 受注者は監督員からの書面による指示・協議等の回答を得るまでは施工してはならない。
■ 契約約款第26条(臨機の措置)による場合は除く。
5)自主施工の原則
■ 仮設・施工方法等については、その責任の所在を明らかにする必要から、契約 約款及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者が定めるものとされている(契約約款第1条第3項)。
これは「自主施工の原則」とも言われ、発注者はこの原則を踏まえた適切な対応が必要である。
■ 発注者の対応が不適切な例。
・設計図書で指定されていないが、○○工法で積算しているとき、「○○工法以外での施工は不可」と対応する場合。
・新技術の活用について受注者から申し出があったときに、協議に応じない場合。
(3)変更が不可能なケース
1)手順・手続きに関すること
下記のような場合は、原則として設計・契約変更ができない。
ただし、契約約款第26条(臨機の措置)による場合は、この限りではない。
■ 設計図書に条件明示がない事項において、発注者と協議を行わない又は発注者からの指示等の通知がなく、受注者が独断で判断して施工した場合。
(説明)受注者は、契約約款第18条第1項により設計図書と工事現場の不一致、条件明示のない事項等を発見したときは、その事実が確認できる資料を書面により監督員に提出し確認を求めなければならない。
■ 契約約款及び標準仕様書に定められている所定の手続きを経ていない場合(契約約款第18条~24条、公共建築工事標準仕様書1.1.8~1.1.10)。
(説明)受注者・発注者は協議指示、一時中止、工期延期、請負代金額の変更など、所定の手続きを行わなければならない。
■ 正式な書面によらない事項(口頭のみの指示・協議等)の場合。
(説明)受注者・発注者は書面により指示・協議を行わなければならない。
2)変更要因に関すること
下記のような場合は、原則として設計・契約変更ができない。
■ 受注者自らの都合による変更の場合。
(説明)例えば、受注者の都合で設計図書よりグレードが高い製品を使用した場合などは、設計変更の対象とならない。
■ 任意の仮設・施工方法等を変更する場合(現地条件に不一致や変更等がある場合を除く)。
(説明)元々、任意としている仮設・施工方法等の変更は設計変更の対象とはならない。
ただし、設計図書で示された現地条件に不一致があった場合や、現場において施工上の条件が変わった場合(地中から障害物が出てきた場合など)は、対象になることがある。
→「Ⅵ.仮設・施工方法等における「任意」と「指定」の取扱い」参照
4. 変更の具体例
次のような場合は、所定の手続きを踏むことにより設計・契約変更が可能。
(1)条件変更等の場合(契約約款第18条)
1)概要
受注者は、契約約款第18条第1項各号に該当する事実を発見したときは、直ちに監督員に通知し、確認を請求しなければならない。
発注者が調査を行い、受注者の意見を聴いた上で、必要と認められる場合は設計変更を行う。またその場合において、必要と認められるときは工期又は請負代金額の変更を行う。
契約約款
第18条 受注者は、工事の施工に当たり、次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは、その旨を直ちに監督員に通知し、その確認を請求しなければならない。
(1)図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないこと(これらの優先順位が定められている場合を除く。)
(2)設計図書に誤謬(ごびゅう)又は脱漏(だつろう)があること (3)設計図書の表示が明確でないこと
(4)工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと
(5)設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じたこと。
2 監督員は、前項の規定による確認を請求されたとき又は自ら前項各号に掲げる事実を発見したときは、受注者の立会いの上、直ちに調査を行わなければならない。ただし、受注者が立会いに応じない場合には、受注者の立会いを得ずに行うことができる。
3 発注者は、受注者の意見を聴いて、調査の結果(これに対してとるべき措置を指示する必要があるときは、当該指示を含む。)をとりまとめ、調査の終了後14 日以内に、その結果を受注者に通知しなければならない。
ただし、その期間内に通知できないやむを得ない理由があるときは、あらかじめ受注者の意見を聴いた上、当該期間を延長することができる。
2)具体的な事例
■ 契約約款第18条第1項第1号(図面、仕様書等の記載の不一致)関係
・仕様書と図面の寸法、数量等の記載が一致しない場合
・工事施工上、必要な材料名について図面ごとに一致しない場合
・建築、電気設備及び機械設備の各分野の設計内容が互いに整合していない場合 など
■ 契約約款第18条第1項第2号(設計図書の誤謬(ごびゅう)又は脱漏(だつろう))関係
・使用する材料の仕様が明示されていない場合 など
■ 契約約款第18条第1項第3号(設計図書の表示内容が不明確)関係
・図面の記載内容が読み取れない場合 など
■ 契約約款第18条第1項第4号(設計図書と現場の施工条件の不一致)関係
・設計図書に明示された想定支持地盤と実際の工事現場が大きく異なる事実が判明した場合
・施工中に設計図書に示されていないアスベスト含有建材を発見し、調査及び撤去が必要となった場合
・設計図書に明示された配管・配線等と実際の工事現場における配管・配線等が大きく異なる事実が判明した場合 など
■ 契約約款第18条第1項第5号(予期できない特別な状態が生じた)関係
・施工中に地中障害物を発見し、撤去が必要となった場合
・施工中に埋蔵文化財を発見し、調査が必要となった場合 など
3)設計変更手続きフロー
中津市公共工事請負契約約款 第18条第1項
(1) 図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないこと(これらの優先順位が定められている場合を除く。)。
(2) 設計図書に誤謬又は脱漏があること。
(3) 設計図書の表示が明確でないこと。
(4) 工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと。
(5) 設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じたこと。
発注者
受注者
(約款第18条第2項) (約款第18条第1項)
約款第18条第1項に該当する事実を発見 約款第18条第1項に該当する事実を発見
(約款第18条第3項)調査結果のとりまとめ
調査結果の通知:協議終了後14日以内
(とるべき措置の指示含む)
(約款第18条第2項)発注者:調査の実施
受注者:立会い
(約款第18条第1項)通知し確認を請求
意見
(約款第18条第3項)
受理
不要
終了 設計変更
の要否
(約款第18条第4項)
約款第18条第1項
約款第18条第1項
(約款第18条第4項第3号)協議
約款第18条第1項第一~三号に該当
第四~五号に該当し、工事目的物の変更が伴うもの
第四~五号に該当し、工事目的物の変更が伴わないもの
(約款第18条第4項第1号) (約款第18条第4項第2,3号)
設計図書の訂正 設計図書の変更
設計変更の指示 受理
必要であると認められるとき
(約款第18条第5項)
(約款第23条、第24条)
発注者と受注者の協議
・工期の変更
・請負代金額の変更
※1
※1
設計変更に係る契約の変更内容が軽微な場合は、当該 契約の履行期限前に一括して変更契約の締結を行うことができるため、契約締結前に 訂正・変更の指示を行うこと ができる。
契約締結(協議の成立)
※xx「約款」:xx市公共工事請負契約約款
(2) 発注者が変更を必要と認める場合(契約約款第19条)
1)概要
発注者が工事の施工前や施工途中に必要と認めるときは、変更内容を受注者に通知して設計変更を行うことができる。またその場合、必要があると認められるときは、契約変更
(工期または請負代金額の変更)を行う。
契約約款
第19条 発注者は、必要があると認められるときは、設計図書の変更内容を受注者に通知して、設計図書を変更することができる。
この場合において、発注者は、必要があると認められるときは、工期若しくは請負代金額を変更 し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
2)具体的な事例
・関係機関等調整の結果、施工内容等を変更する場合。
・同時に施工する必要がある工種が判明し、追加する場合。
・特定行政庁、消防署、電力、水道、ガス等の事業者などとの協議により、施工内容の変更、工事の追加をする場合。
・使用材料を変更する場合。
・関連する工事の影響により施工条件が変わったため、施工内容を変更する場合。など
(3)工事を一時中止する必要がある場合(契約約款第20条)
1)概要
受注者の責めに帰することができない自然的又は人為的事象により、受注者が工事を施工できないと認められる場合は、発注者は工事の全部又は一部の施工を
一時中止させなければならない。またその場合、必要があると認められるときは、工期を延長し、受注者が一時中止に伴う増加費用を必要としたときはその費用を負担
しなければならない。
契約約款
第20条 工事用地等の確保ができない等のため又は暴風、豪雨、高潮、地震、地すべり、落盤、火災、騒乱、暴動その他の自然的又は人為的な事象(以下「天災等」という。)であって受注者の責めに帰すことができないものにより工事目的物等に損害を生じ若しくは工事現場の状態が変動したため、受注者が工事を施工できないと認められるときは、発注者は、工事の中止内容を直ちに受注者に通知して、工事の全部又は 一部の施工を一時中止させなければならない。
2 発注者は、前項の規定によるほか、必要があると認めるときは、工事の中止内容を受注者に通知して、工事の全部又は一部の施工を一時中止させることができる。
3 発注者は、前2項の規定により工事の施工を一時中止させた場合において、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者が工事の続行に備え工事現場を維持し若しくは労働者、建設機械器具等を保持するための費用その他の工事の施工の一時 中止に伴う増加費用を必要とし若しくは受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
2)具体的な事例
・設計図書に工事着工の時期が定められていた場合で、その期日までに受注者の責めによらず着工できない場合。
・受注者の責めによらない何かのトラブル(地元調整等)が生じた場合。
・予見できない事態が発生した(地中障害物の発見等)場合。
・工事用地等の確保が行われていない場合。
・埋蔵文化財の発掘又は調査の事由により工事を施工できない場合。 など
(4)工期内に工事を完成することができない場合(契約約款第21条)
1)概要
受注者は、天候の不良、関連工事の調整への協力その他受注者の責めに帰する ことができない事由により、工期内に工事を完成させることができない場合は、発注者に工期の延長変更を請求することができる。
発注者は、必要があると認められるときは工期を延長する契約変更を行う。
また、工期延長が発注者の責めに帰すべき事由による場合は、請負代金額について必要と認められる変更を行う。
契約約款
第21条 受注者は、天候の不良、第2条の規定に基づく関連工事の調整への協力その他受注者の責めに帰すことができない事由により工期内に工事を完成することができないときは、その理由を明示した書面により、発注者に工期の延長変更を請求することができる。
2 発注者は、前項の規定による請求があった場合において、必要があると認められるときは、工期を延長しなければならない。発注者は、その工期の延長が発注者の責めに帰すべき事由による場合においては、請負代金額 について必要と認められる変更を行い、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
2)具体的な事例
・天候不良により工程に遅延を生じた場合。
・施設側(発注者側)の都合により工事の時間帯を制限する必要が生じた場合。など
(5) 設計図書の訂正・変更及び資料作成
契約約款第18条第4項に基づき、設計図書の訂正又は変更は発注者が行う。
契約約款
(条件変更等)第 18条
4 前項の調査の結果において第1項の事実が確認された場合において、必要があると認められるときは、次に掲げるところにより、設計図書の訂正又は変更を行わなければならな い。
(1) 第1項第1号から第3号までのいずれかに該当し設計図書を訂正する必要があるもの発注者が行う。
(2) 第1項第4号又は第5号に該当し設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴うもの 発注者が行う。
(3) 第1項第4号又は第5号に該当し設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴わないもの 発注者と受注者とが協議して発注者が行う。
ただし、設計変更するために必要な資料の作成について受注者に行わせる場合は、以下の手続きによるものとする。
・設計変更が必要な内容については、受発注者間で確認する。
・設計変更するために必要な資料の作成について、受発注者間で協議し、合意を図った後、発注者が具体的な指示を書面で行う。
・発注者は、受注者が作成した設計変更の資料を確認する。
(6)設計変更の責任者
設計図書の訂正・変更は、契約約款第18条第4項に基づき発注者が行わなければならない。ただし、受発注者の協議により、以下のとおり責任者を明確にする。
発注者の責による訂正・変更
・設計図書の訂正・変更は、契約約款第18 条第4項に基づき発注者が行わなければならない。
・発注者は、受注者から提出される確認資料を活用、必要に応じてコンサルタントへの発注を行い設計図書(図面及び仕様書等)の訂正・変更を行う。
・発注者の責による変更で以下の場合について、次項よりその変更作業内容を示す。なお、訂正については受注者から提出される確認資料をもとに発注者が訂正する。
・確認資料とは、設計図面との対比図、取り合い図、施工図(協議に要する図面であり、変更設計図面ではない。)等を含むものとする。
1)条件変更に伴う場合
・契約約款第18 条第1項(条件変更等)に該当する変更の場合、受注者から提出される確認資料を活用して、発注者が作成することが基本となる。
【施工前・施工途中共通】
発注者の作業内容 | 受注者の作業内容 | |
変更設計図面 | 【施工前・施工途中】 ・受注者が作成する施工図等の確認資料をもとに作成する。 | 【施工前・施工途中】 ・確認資料を作成する。 |
【施工前】 | ||
・受注者が作成する施工図等の確認資料 | ||
変更数量計算書 | をもとに作成する。 【施工途中】 | 【施工途中】 |
・受注者が作成する出来形数量をもとに作 | ・出来形数量計算書を作成す | |
成する。 | る。 |
2)新たな構造計算が必要になった場合
・新たに構造計算が必要になった場合、発注者は自ら又は必要に応じてコンサルタント等へ業務を発注し、変更図面等を作成する。
・受注者は、必要に応じて発注者と協議により土質資料及び試験結果を発注者に提出する。
【施工前・施工途中共通】
発注者の作業内容 | 受注者の作業内容 | |
変更設計図面 | ①必要に応じてコンサルタント等へ業務を発注する。(新たに構造計算が必要な場合) ②発注者が自ら行う。(上記①以外の場 合) | ・必要に応じて土質資料及び試験結果を提出する。 |
変更数量計算書 | ①必要に応じてコンサルタント等へ業務を発注する。(新たに構造計算が必要な場合) ②発注者が自ら行う。(上記①以外の場 合) | - |
5. 契約変更(工期・請負代金額の変更)
契約変更(工期または請負代金額の変更)を行う場合において、工期の変更、請負代 金額の変更または損害を及ぼしたとき等の必要な費用の負担は、受注者と発注者が協議して定める。(契約約款第23条及び第24条)
(1)工期変更について
工期変更の対象であると確認された場合、受注者は公共建築工事標準仕様書1.1.10により、必要とする変更日数の算出根拠、変更工程表その他必要な資料を添付した工期変更の協議書を発注者へ提出し、協議を行い工期の変更を定める。
(2)請負代金額の変更について
発注者は、請負代金額の変更に加えて、必要な費用を負担しなければなりません。必要な費用とは、設計図書の訂正・変更によって生じた以下の項目など、発注者の
過失による損害賠償や予期できない施工条件の変更に伴い発生する受注者の費用の補填などで次のものが考えられる。
① 手戻り費用、又は改造費
② 不要となった材料の売却損、労働者の帰郷費用
③ 不要となった建設機械器具の損料及び回送費
④ 不要となった仮設物に係る損失
なお、発注者が負担する費用の額は、発注者と受注者とが協議して定める。
6. 仮設・施工方法等における「任意」と「指定」の取扱い
契約約款第1条第3項において、工事目的物を完成させるための仮設・施工方法等については、その責任の所在を明らかにする必要から、原則として受注者が定めるものとされています(自主施工の原則)。この原則を踏まえ、下記の「指定」と「任意」を適切に取り扱う必要がある。
(1)指定
■ 仮設・施工方法等を発注者があらかじめ決定する必要がある場合に、設計図書に条件として仮設・施工方法等を明示することを「指定」と言う。
■ 指定された仮設・施工方法等は、所定の手続きを行うことで、設計変更の対象となることがある。
(2) 任意
■ 仮設・施工方法等について契約約款及び設計図書に特別の定めがない場合に、
「自主施工の原則」により受注者の責任において選択するものを「任意」と言う。
■ 「指定」されたもの以外は「任意」である。
■ 原則として設計変更の対象としない。
■ ただし、設計図書に明示された施工条件と実際の現場の条件が一致しない場合で、所定の手続きを行った場合は、設計変更の対象となることがある。
■ 「参考図」で示した内容は「任意」ですが、参考図で示した内容と施工内容が大幅に異なる場合は協議の対象となることがある。
任 意 | x x | |
設計図書における明示 | 施工方法等の具体的な図示や記述なし (参考図として標準的な工法を示す場合があるが、その内容は 任意とみなす)。 | 施工方法等に関する具体的な図示や記述あり。 契約条件として位置づけられる。 |
仮設・施工方法等の変更 | 変更にあたって発注者の指示は必要ない(施工計画書等の修正は必要)。 | 変更するには発注者の指示が必要。 |
仮設・施工方法等の変更がある場合の設計変更 | 設計変更の対象とならない。 | 設計変更の対象となる。 |
当初明示した条件の変更がある場合の設計変更 | 設計変更の対象となる場合がある。 | 設計変更の対象となる。 |
7. Q&A
1.ガイドライン全般
Q1 設計変更された内容の契約変更手続きは、いつ頃行うのが適正ですか。
現場条件等の変更があり、発注者が施工条件の変更の必要性を認めた場合でも、契約変更手続きは工期末に一括して行われるケースが多くあります。
その都度、契約変更手続きを実施できないのですか。
A1 設計変更に伴う契約変更手続きは、その必要が生じた都度実施することとなります。ただし、建築・建築設備工事においては軽微な設計変更も多くあり、それらに伴う契約変更手続きについては工期末に一括して行う場合もあります。
2.「指定」と「任意」の考え方(仮設)
任意仮設の設計変更の考え方を教えてください。
A2 設計変更は、契約約款第18条又は19条の規定により図面又は仕様書を変更する場合において、契約変更の手続きの前に当該変更の内容をあらかじめ発注者が受注者に指示することをいいます。任意仮設は、契約約款第1条第3項により受注者がその責任において定めるものとされているため、設計変更の対象となりません。
一方、施工条件と実際の工程現場が一致しない場合や当初発注時点で予期しえなかった現場条件等が確認された場合は、受発注者間の協議により、設計変更の対象となります。これに伴う任意仮設の変更は、請負代金額の変更の対象となります。
Q3 設計変更ガイドランの「指定」と「任意」の考え方で、参考図等で示した内容と施工内容が大幅に異なる場合」は、何に基づいて「協議」の対象となるのですか。
A3 「参考図等で示した内容と施工内容が大幅に異なる場合」の協議は、契約約款第1
8条第4項3号に基づき、受発注者間で行われます。
Q4 重機等施工機械の移動範囲の地盤強度が足りないことから、当初契約時の設計図書に無い敷鉄板等の仮設物が必要となりました。発注者がその必要性を認めた場合、設計変更の対象となりますか。
A4 仮設物の施工方法は任意であるため、原則として設計変更の対象なりません。 ただし、工事契約後の現地調査等の結果により地盤強度が足りないことが判明した場合は、契約約款第18条第1項第3号に該当するものと考えられるため、受発注者間の協議により、設計図書の変更を行い、請負代金額を変更する場合もあります。
(契約約款第18条第4項3号、同条第5項)
Q5 雨水配水管等の地下埋設物の設置に当たり、発注者はオープンカット(任意)によることを見込んでいたが、受注者から土留としてxxを設置して掘削したいとの提案を受けました。この場合、設計変更の対象となりますか。
A5 工事の目的は地下埋設物等を設置することであり、その方法は任意です。この場合のxxについては任意の仮設物となるため、受注者の提案は原則として設計変更の対象となりません。
ただし、発注者の想定するオープンカットによる施工が現場の諸条件等を踏まえ合理的ではないことが判明した場合や当初発注時点で予期しえなかった現場条件等が確認された場合は、受発注者の協議により、設計図書の変更を行い、請負代金額を変更する場合もあります。(契約約款第18条第4項3号、同条第5項)
Q6 施工条件の変化により、タワークレーンの仕様等とともに、取付・解体用の補助クレーンにも変更が必要となる場合、取付、解体用の補助クレーンについても設計変更の対象となりますか。
A6 施工方法は任意であるため、タワークレーン本体及び取付、解体用の補助クレーンについては原則として設計変更の対象となりません。
ただし、発注者の想定する施工方法が現場の諸条件等を踏まえ合理的ではないことが判明した場合や当初発注時点で予期しえなかった現場条件等が確認された場合は、受発注者の協議により、設計図書の変更を行い、請負代金額を変更する場合もあります。(契約約款第18条第4項5号、同条第5項)
その場合は、タワークレーン及びこれと連携して使用する取付、解体用の補助クレーンとは一体で機能するものであることから、タワークレーン本体の仕様等が変更となる場合には、取付、解体用の補助クレーンも含めて請負代金額の変更を行うこととなります。
3.個別事例
Q7 工事契約後、使用材料の入手が不可能(生産中止等)なことが判明し、材料規格等を変更する場合、設計変更の対象となりますか。
A7 受注者の調査により、工事契約後に設計図書に示された使用材料の入手が不可能であると判明した場合は、契約約款第18条第1項第2号に該当すると考えられるため、設計変更の対象となります。(契約約款第18条第4項第1号)
なお、発注者は使用材料を変更することによる建築物への設計上の妥当性の検証及び経済性等の検討を行う必要があります。
Q8 工事契約後、使用材料の入手に想定以上の時間がかかることが判明し、材料規格等を変更する場合、設計変更の対象となりますか。
A8 受注者は、使用材料の入手にかかる時間について工事契約前に想定し、工事を受注したと考えられます。よって、契約約款第18条第1項の条件変更等には該当しないので、原則として設計変更の対象となりません。
ただし、発注者の使用材料の選定に明らかに責がある場合及び発注段階では想定されない事象により材料等を変更せざるを得ない場合は、設計変更の対象となる場合もあります。(契約約款第18条第4項第1号、第3号)
Q9 杭の施工中に、発注時は想定されていなかった地中障害物が発見されたため、地中障害物の除去を行う期間、杭の施工のみ一部一時中止する必要が生じた。その期間における建設機械のリース代等の費用の考え方を教えてください。
A9 受注者の責によらない「地中障害物」により工事を一部一時中止した場合に必要 となる建設機械のリース代等の費用は、契約約款第20条第3項により中止期間中において現場維持や工事の続行に備えて保持するために必要となる費用等に該当すると考えられます。発注者は、工事一時中止に伴う増加費用について、受注者から請求があった場合、必要があると認められるときは契約変更を行うこととなります。