Contract
日付 2014 年 9 月 10 日
プロジェクト リース
項目 「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い」-契約変更時における借手の会計上の取扱い
これまでの議論の経緯
1. 日本再興戦略(2013 年 6 月 14 日閣議決定)に基づき実施する施策として、新たなスキーム(以下「本リース・スキーム」という。)によるリース取引が導入された。これを受けて、当委員会では、本xxx・xxxxによるリース取引について借手の会計処理及び開示の審議を行い、2014 年 6 月 30 日に実務対応報告第 31 号「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い」を公表した。
2. 本実務対応報告は、検討の対象に含まれなかった契約変更時の借手の会計上の取扱いについて、別途定める予定である旨を記述していた。
本資料の目的
3. 本資料では、2014 年 7 月 23 日及び 8 月 18 日のリース会計専門委員会における議 論を踏まえ、本リース・スキームにおける契約変更時の借手の会計上の取扱いにつ いて、事務局が実務対応報告において記述すべきと考えられる内容及びそれに関す る方向性と、これまでにリース会計専門委員会において示された主な意見を紹介し、ご意見いただくことを目的としている。
4. また、本資料の参考資料として、8 月 18 日のリース会計専門委員会の資料を添付している。
検討事項
5. 実務対応報告において記述すべき内容としては、以下の論点に関する事項が考えられる。
(1) 論点 1: 取り扱う契約内容の変更の範囲
(2) 論点 2: xxxxxx・xxx取引かどうかの再判定
(3) 論点 3: 契約変更時の会計処理
(4) 論点 4: 変動型及びハイブリッド型のリース料を有するリース契約の契約変更から派生する論点
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論点 1: 取り扱う契約内容の変更の範囲
(背景)
6. 2014 年 6 月 30 日公表の実務対応報告では、何が「契約内容が変更された場合」にあたるかについて、次のとおり記述している。
リース事業者(貸手)は、リース期間の中途で、事業会社(借手)との間で、リース取引開始時までに設定していたリース期間、月額・年額リース料又は見積残存価額を変更する旨の合意をした場合には、リース契約変更報告書により受託事業者
(事務局)に通知する。
変動型又はハイブリッド型のリース料を採用している場合であって、リース取引開始時までに設定していた変動リース料の算式を変更する旨の合意をした場合又は事務取扱要領第 3 条第 7 号ハ②に定める(上記(6)②に記載されている定め)、実際の稼働量が合理的な想定稼働量を上回った場合のリース契約の変更の場合も同様とする。
7. 本リース・スキームにおけるリース契約の契約内容の変更の具体的内容としては、次のようなものがあり得る。
(1) 借手と貸手の同意に基づき、リース期間の中途で、リース契約開始時までに設定していたリース期間、月額・年額リース料または見積残存価額の変更
(2) 変動型またはハイブリッド型のリース料を採用している場合であって、リース契約開始時までに設定していた変動リース料の算式を変更する合意をした場合のリース契約の変更、または、実際の稼働量が合理的な想定稼働量を上回った場合に事務取扱要領第 3 条第 7 号ハ②に従って行われるリース契約の変更
(リース会計専門委員会で示された意見)
8. リース会計専門委員会では、次のような意見が示された。
✓ 契約内容の変更には、他にも残存価額の見積りが変動するだけの場合等、様々なケースが想定されるので、検討の対象範囲をあまりに広げすぎると実務上の負担が心配である。
(今後の検討の方向性)
9. 事務局は、今後、第 7 項に記述した契約内容の変更に該当する場合について、特段、検討範囲を限定することなく検討することを考えている。ただし、本リース・スキームにおける契約変更はあまり多くないのではないかと聞かれることから、今後各論点についての検討を進めていく中で仮に再判定や会計処理等の取扱いについて複雑性への懸念が多く示された場合には、取り扱う契約内容の変更の範囲を絞ることを含めて検討することも考えられる。
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ディスカッション・ポイント 1 |
上記で示した今後検討すべき契約内容の変更の範囲について、同意するか。 |
論点 2: xxxxxx・xxx取引かどうかの再判定
(1) A 法: 当初のリース取引開始日に遡って再判定を行うアプローチ
(2) B 法: 契約変更時から将来に向かって再判定を行うアプローチ
11. このような 2 つの手法については、契約内容の変更が生じた要因等によって、それぞれ、より正当化される場合が異なるとも考えられる(詳細については、参考資料の第 24 項から第 26 項を参照)。
(1) A 法がより正当化されると考えられる場合
• 例えば、リース開始後においてリース物件の状況の変化(価値の変動等)が当初に想定されたものと大きく乖離していない場合を想定する。この場合、契約内容の変更により生じたのは、リース開始時において算定されたリース物件に関するコストの負担及び経済的利益の享受の割合についての、借手と貸手の間の追加的な移転と考えられる。
(2) B 法がより正当化されると考えられる場合
• 例えば、リース開始後においてリース物件の状況の変化(価値の変動等)が当初に想定されたものから大きく乖離した場合を想定する。この場合、契約内容の変更により生じたのは、上記の(1)とは異なり、契約変更時におけるリース物件に関するコスト及び経済的利益1について、借手と貸手の間でその負担や享受の割合についての新たな取り決めがなされたことと考えられる。
(リース会計専門委員会で示された意見)
1 契約内容の変更によって借手が追加的なリース料の支払いを負担する場合、リース物件の使用に伴って生じるコストについて、借手と貸手の間での移転が生じていると考えられる。一方で、リース物件からもたらされる経済的利益については、借手と貸手の間で上記のコストと同程度の移転が生じているとは言えないかもしれない。例えば、リース開始後から契約変更時までの間にリース物件の価値が上昇しているとすれば、契約内容の変更が行われたことにより、貸手が負担するリース物件の所有に伴うコストの一部は借手に移転する一方で、貸手が保持するリース物件からもたらされる経済的利益はそれほど借手へ移転していないとも考えられる。
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12. リース会計専門委員会では、次のような意見が示された。
A法を支持する意見
✓ B 法の場合に必要となる契約変更時におけるリース物件の見積現金購入価額の入手は実務上困難であり、事務局案のとおり、A 法を採用するしかないのではないか。
✓ 実務ではリース開始後の中途の時点における見積現金購入価額は判明しないことが多いことから、A 法を採用するという考え方に賛成する。
その他の意見
✓ 契約変更時に見積現金購入価額を入手できる場合には、A 法以外に、B 法を採用することも可能にしてはどうか。
(事務局が考える今後の方向性)
13. 固定型のリース料のケースについて、以下の理由から A 法とすることでどうか。
(1) 理論的には、個々のリース契約ごとにその変更の要因を分析の上で、2 つのアプローチを使い分けることがより適切であると考えられるが、現実的には、多かれ少なかれ、契約変更は第 11 項に記述した 2 つの要因の組み合わせにより生じると想定される。したがって、契約変更がいずれかの要因のみにより生じたと言い切ることは困難であろう。但し、多くの場合、固定型のリース料のケースにおける契約変更はリース期間の変更により生じるであろうことを踏まえると、契約変更によってリース物件に関するコストの負担等について借手と貸手の間で何らかの移転が生じる(第 11 項(1)参照)一方で、契約変更時におけるリース物件に関するコストの負担等についての新たな取り決めがなされた(第 11 項(2)参照)かどうかは、必ずしも明らかではないと考えられる。
(2) 契約変更時のリース物件の見積現金購入価額の測定を要しないという点から、
A 法のほうが B 法より実行可能性が高いと考えられる。
ディスカッション・ポイント 2 |
(xxxxxx・xxxかどうかの再判定) A 法をとるという事務局の考える方向性を支持するか。また、その理由は何か。 |
論点 3: 契約変更時の会計処理
14. 契約内容の変更の結果生じるリースの分類の推移として最も検討の必要性が高いと考えられるオペレーティング・リースからファイナンス・リースへ分類が変わるケースを対象として、契約変更時の会計処理について検討を行っている。
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15. まず、当該ケースを対象とした場合、契約変更時においてリース資産及びリース債務を測定する方法として、次の 2 通りの会計処理が考えられる。
(1) 1 法:当初のリース取引開始日に遡ってxxxxxx・xxx取引の会計処理をしたかのように測定する。
(2) 2 法:契約変更時以降に生じるリース料等の条件に基づき、測定する。
16. 次に、上記において、1 法の会計処理を採用する場合には、リース資産とリース債務の差額をどのように会計処理するかの検討が必要となる。この手法としては次の 3 つが考えられる。
(1) α法:リース資産とリース債務の差額を契約変更時に損益に認識する方法
(2) β法:リース資産とリース債務の差額を繰り延べ、残存するリース期間にわたり損益を配分する方法
(3) γ法:上記の 2 つの方法と同様にリース債務を算定した上で、リース資産をこれと同額認識することにより、差額を生じさせない方法
(リース会計専門委員会で示された意見)
17. 上記の点について、リース会計専門委員会では、次のような意見が示された。
✓ 事務局提案の A 法と 2 法の組合せは実務的であり賛成したい。なお、その根拠を実務対応報告上どのように記載すべきかについて検討してほしい。
✓ 再判定の処理として A 法をとるなら、契約変更時の会計処理として 1 法の α法が理論的であり、重要性がない場合に限って、1 法のα法ではなく、1法のγ法または 2 法を採用できるとすることも考えられるのではないか。
✓ (参考資料の)第 43 項にあるように、理論的には個々のリース契約ごとにその変更の要因を分析の上で 2 つのアプローチを使い分けるのが適切であるとの考え方に賛成であり、一方、実務上の配慮として、単一のアプローチを要求することにも賛成である。ただし、A 法と 1 法、B 法と 2 法の組合せが整合的と考えられることから、A 法と 2 法の組合せを提案する事務局案には違和感を覚える。
✓ ファイナンス・リース取引かどうかの再判定を遡及して行うということであれば、リース資産とリース負債の差額に関して過年度財務諸表を遡及修正するという方法も考えられるのではないか。遡って再判定を行うということは過去の計算が現時点では適切ではなくなったという事実を含意するものとも言え、(参考資料の)第 49 項のように、契約の変更は会計方針の変更や誤謬と性質が異なると明確に言い切ってしまってよいか疑問
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である。
18. また、リース会計専門委員会では、前項の点以外にも次のような意見が示された。
(1) リース料が定額ではない場合の会計処理
✓ リース料が意図的に調整されて定額ではない場合については検討が必要であると考える。
✓ オペレーティング・リースからオペレーティング・リースへの変更でも、再判定を遡及して行うのであれば、契約変更時に改定後のリース料を用いて、当該費用を遡及して均して認識する必要があるのではないか。
✓ 実務で実際にフリーレント期間が生じるのは、借手の予算獲得が間に合わず、最初の方の期間のリース料を無料にする代わりに、後ろの期間のリース料を上げることで、実質的に正当なリース料の回収を図る場合と認識している。したがって、リース料を均等に均して認識するのが適切と考える。
(2) 割引率
✓ 割引率については必要以上に複雑にしすぎないよう配慮が必要であると考える。
✓ 理論的には、割引率として、契約変更時の借手の与信コスト相当と見られる率を使うことが適切と考えられるが、実務的には当初の割引率をそのまま使用するなどの対処が必要になるかもしれない。
✓ 契約変更の際、実質的にリース契約が継続していると考えられる場合と、新たな契約が締結されたと考えられる場合があり、前者であれば割引率は当初のものをそのまま使用し、後者であれば割引率として新たなxx率を使用する等、状況に応じて使い分けるのが最も理論的であると考える。重要性がないと判断される場合などにおいてのみ、一律に後者の処理を使用することが最も適切であると考える。
(事務局が考える今後の方向性)
19. オペレーティング・リースからファイナンス・リースへ分類が変わるケースでは、以下の点を踏まえて、契約変更時においてリース資産及びリース債務を測定する方法として 2 法(第 15 項参照)を採用することでどうか。
(1) xxxxxx・xxx取引かどうかの再判定に関する論点 2 において A 法を採る方向性を示している(第 13 項参照)ことを踏まえると、参照するリース期間という意味では、本論点 3 においては 1 法を採ることが整合的とも考えられる。しかしながら、両者の整合性については、必ずしも常に確保されるべきとまでは言えないかもれない。例えば、IAS 第 17 号の記述(参考資料の第 13 項
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参照)については、実務上の取扱いは分かれているものの、再判定についてはリース開始日に遡及したかのように行う一方で、会計処理については残存期間にわたって新しい契約とみなして取り扱う場合がある。
(2) また、オペレーティング・リースからファイナンス・リースへの判定が変更されるケースにおいて、契約変更時にはじめてオンバランスされる際に、資産(リース資産)と負債(リース債務)が異なる金額で算定されること(すなわち、1法を前提とした場合のα法やβ法)については、相当程度の数の関係者が直感に反すると考えるかもしれない。
(3) この点からは、2 法のように、契約変更時にリース資産とリース債務を同額で測定することによって、両者が異なる金額で測定されることやその結果として生じる差額の処理の問題を回避できる。なお、両者を同額で測定するという点では、1 法を前提とした上でのγ法も考えられるが、当該手法ではリース債務について当初のリース取引開始日に遡って会計処理をしたかのように測定することが要求される一方で、結果的に測定されるリース資産の金額そのものには理論的な根拠は乏しいと考えられる。
ディスカッション・ポイント 3 |
(契約変更時の会計処理) a. 2 法をとるという事務局の考える方向性を支持するか。また、その理由は何か。 b. 仮に、2 法以外の手法を支持する場合、どの手法を支持するか。また、その理由は何か。 |
論点 4: 変動型及びハイブリッド型のリース料を有するリース契約の契約変更から派生する論点
20. 本リース・スキームでは、固定型のリース料のケースと比較した場合、変動型及びハイブリッド型のリース料のケースにおいて、潜在的に契約変更が生じる可能性は高いと考えられるかもしれない。これは、変動型等においては、例えば、当初の合理的な想定稼働量よりも多くの稼働実績が生じたときに、借手と貸手の合意によりリース料率の将来に向かった変更が行われる可能性があるからである。
(リース会計専門委員会で示された意見)
21. リース会計専門委員会では、次のような意見が示された。
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✓ 設例では、当初想定していた合理的な想定稼働量よりも実際の稼働量が上回り、リース契約が変更された場合の計算例が示されているが、その後の期間につい ては、見直し後の想定稼働量が実際の稼働量と一致することを前提にしている ものの、実際には両者は一致しないので、その差額に関して、どのような会計 処理が求められるのかを示してはどうか。
(事務局が考える今後の方向性)
22. 変動型またはハイブリッド型のリース料のケースにおいても、再判定の手法や契約変更時の会計処理について、より正当化される手法は、契約内容の変更が生じた要因等によって異なると考えられる。しかしながら、対象となるリース取引に対して異なるアプローチを設けることは、今回の検討対象であるリース取引に対して、過度に複雑な要求事項を設けることにつながることが懸念される。
23. 実務上、変動型またはハイブリッド型のケースにおいても、B 法(第 10 項参照)において、契約変更時における本リース・スキームが対象とする先端設備の見積現金購入価額を算出することについては、受入れが困難な程の負担が生じることが懸念される。また、今回の検討において、固定型のリース料のケースと変動型またはハイブリッド型のリース料のケースについて、異なる取扱いを設けることは、必要以上に複雑性を生じさせることになると考えられる。
24. したがって、今後の検討においては、固定型のリース料のケースと変動型またはハイブリッド型のリース料のケースについて、再判定の手法及び会計処理の手法について、同様の取扱いを設ける方向で検討すべきと考えられる。
ディスカッション・ポイント 4 |
変動型及びハイブリッド型のリース料を有するリース契約の契約変更の会計処理について、固定型のリース料を有する場合と同様の取扱いとすべきとす るという事務局の考える方向性を支持するか。また、その理由は何か。 |
以 上
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