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これだけは知っておきたい
ポイント労働法
C
O
N
T
E
N
T
S
1 労働契約と労働条件の明示
2 派遣労働者
3 有期労働契約の契約期間とルール
4 就業規則
5 労働時間と休憩・休日・休暇
6 賃金
7 時間外労働・休日労働・深夜労働と割増賃金
8 労働安全衛生・健康管理
9 労働保険・社会保険
P 2
P 4
P 5
P 7
P 8
P 12
P 14
P 17
P 18
10 育児・介護休業、子の看護休暇、介護休暇
11 男女雇用機会均等・母性保護
12 職場におけるハラスメント防止対策
13 退職
14 解雇・雇止め
15 高年齢者雇用・障がい者雇用
16 労働組合
いろいろな相談窓口
P 20
P 22
P 23
P 26
P 27
P 29
P 30
P 31
■ 法律名の略称
労基法[ 労働基準法 ]
派遣法 [ 労働者派遣法:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 ]均等法[ 男女雇用機会均等法:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律]高年法[ 高年齢者雇用安定法:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 ]
育介法[ 育児・介護休業法:育児休業、介護休業等育児又は介護を行う労働者の福祉に関する法律 ]障害者雇用法[ 障害者雇用促進法:障害者の雇用の促進等に関する法律 ]
パート・有期法[ パートタイム・有期雇用労働法:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 ]
有期雇用特別措置法[ 専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法 ]
労働施策総合推進法[ 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 ]
フリーランス・事業者間取引適正化等法[特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律]
■ このパンフレットでは、労働者を雇用する使用者・事業主・事業者などをまとめて「会社」と表記しています。
■ 「労働者」は、正社員やパートタイム労働者、アルバイト、派遣労働者、契約社員(有期労働契約)などの名称にかかわらず、事業または事務所に使用される者で賃金が支払われる者すべてを含めています。
労組法[ 労働組合法 ]
職安法 [ 職業安定法 ]
労契法[ 労働契約法 ]
安衛法[ 労働安全衛生法 ]
はじめに(用語解説)
令和5年 11 月発行
大分県労政・相談情報センター(大分県商工観光労働部雇用労働政策課)
1 労働契約と労働条件の明示
★労働契約を結ぶときは、会社は労働者に対し労働条件を明示し、一定の事項については原則、書面で交付しなければならない
★会社は、労働者の同意なく一方的に労働契約の内容を変更することはできない
(1)労働者の募集・採用時の労働条件の明示
▼会社は、ハローワークやその他の職業紹介事業者等を利用して労働者を募集する際は、従事すべき業務の内容や賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければなりません。また、募集時の明示内容に変更があった場合は、できる限り速やかに、その変更内容について明示しなければなりません。[職安法5条の3]
(2)労働契約、業務委託、請負
▼会社が、労働者を採用するときは、会社と労働者で労働契約を結びます。契約を結ぶ際は、後でトラブルにならないよう、労働条件を具体的に示すとともに、書面を交付し、双方で契約内容をしっかり確認してお
くことが重要です。 [労基法 15 条、労契法3条]
▼労働契約とは、労働者が会社に使用されて労働する義務を負い、会社が労働者に対して賃金を支払う義務を負うことを内容とする契約です。 [労契法6条]
▼労働契約は、労働者と会社の間の合意によってその内容を定めることが基本ですが、労基法や労働協約
(会社と労働組合との取り決め)で定める労働条件を下回る内容で契約を締結した場合、その部分は無効となり、労基法や労働協約で定める基準によることになります。 [労基法 13 条、労組法 16 条]
▼就業規則の基準に達していない場合についても同様に、その部分は無効となり、就業規則で定める基準によることになります。 [労契法 12 条] (「就業規則」の項を参照)
▼業務委託や請負として働く場合には、注文主から受けた仕事の完成に対する報酬が支払われるので、注文
主の指揮命令を受けない事業主として扱われ、基本的には労働者としての保護を受けることはできません。ただし、業務委託や請負の契約であっても、会社の指揮命令の下で労働し、かつ、賃金を支払われていると
認められるなど、その働き方の実態から労働者であると判断されれば、労働法の保護を受けることができます。
プラットフォームワーカーを巡る問題
財の売買や労務の提供を行う基盤のことであり、プラットフォームワークは「プラットフォームを介した労
統一的な定義はありませんが、プラットフォームは「オンライン環境下で、電子的手段により、遠隔的に、
働力取引の下での働き方」との考え方があります。
て労務を提供するもの)」と、「CS(クラウドソーシング)型(プラットフォームを介して利用者と対面す
プラットフォームワークは、「Uber(ウーバー)型(プラットフォームを介して利用者・顧客と対面し
受けられないことが問題となっています。
務プラットフォームワーカー(就労者)については、プラットフォームを介して顧客(発注者)に対して労
ることなく労務を提供するもの)」があると考えられます。
・サービスを提供するものをいいます。また、独立自営業者(個人事業主)とみなされ、労働法の適用を
注意:2021 年9 月から労災保険特別加入の対象が新設され、原動機付自転車または自転車を使用して行う
貨物の運送の事業(Uber Eats 配達員など)の加入が認められることとなりました。
(3)労働条件の明示、書面(労働条件通知書)の交付
▼労働契約を結ぶ場合には、労働契約書の作成までは義務づけられていませんが、会社は、労働者に対して労働条件を明示しなければならず、一定の事項については書面で交付しなければなりません。(労基法施行
規則第5条第4項)
▼ただし、労働者が希望する場合は、①FAXの送信、②電子メール等の送信(出力し書面の作成が可能なも
のに限る)でも明示することができます。なお、労働契約の内容と実際の労働条件が異なる場合、労働者は即時に労働契約を解除することができます。 [労基法 15 条]
▼会社には、労働契約の締結に伴い、労働者の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする安全配慮義務が発生します。[労契法5条]
▼シフト制労働者の場合でも、労働契約締結時点で始業と終業時刻が確定している日については、労働条件通知書などに単に「シフトによる」と記載するだけではなく、労働日ごとの始業・終業時刻を明記するか、原則的な始業・終業時刻を記載した上で、一定期間分のシフト表等を併せて労働者に交付する必要があります。また、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明記する必要があります。その他、
①シフト作成時に事前に労働者の意見を聞くこと、シフトの通知期限、シフトの通知方法
②シフトを一旦確定したのちにシフト期間開始前に変更する場合の会社や労働者からの申し出の期限や手続き、シフト期間開始後に確定労働日、労働時間をキャンセル、変更する場合の期限や手続き
などの事項も定めておくことが考えられます。
会社が労働者に対し明示しなければならない労働条件
明示しなければならない事項 書面の交付によらなければならない事項 ① 労働契約の期間 ② 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項 2024 年 4 月から更新上限の有無、内容について明示することが義務付けられます。 また、無期転換の申込機会や無期転換後の労働条件について明示することも義務付けられます。 ③ 就業の場所、従事すべき業務 2024 年 4 月から就業場所・業務の変更の範囲についての明示が含まれます。 ➃ 始業と終業の時刻、早出・残業等の有無、休憩時間、休日、休暇に関する事項 (交替制勤務の場合は就業時転換に関する事項) ⑤ 賃金の決定・計算・支払いの方法及び賃金の締切り・支払いの時期 ⑥ 退職に関する事項(解雇の事由を含む) ⑦ 昇給に関する事項 |
定めをした場合に明示しなければならない事項 ⑧ 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払いの方法、支払い時期 ⑨ 臨時に支払われる賃金、賞与等及び最低賃金額に関する事項 ⑩ 労働者に負担させる食費、作業用品などに関する事項 ⑪ 安全・衛生 ⑪ 職業訓練 ⑪ 災害補償、業務外の傷病扶助 ⑭ 表彰、制裁 ⑪ 休職 |
パートタイム・有期雇用労働者の場合は以下の項目も書面を交付する対象[パート・有期法6条] 書面の交付によらなければならない事項 ⑯ 昇給の有無 ⑰ 退職手当の有無 ⑱ 賞与の有無 ⑲ 雇用管理に関する相談窓口 |
(4)契約期間
▼労働契約には、契約期間の定めのない『無期労働契約』と、契約期間の定めのある『有期労働契約』があります。「有期労働契約」の契約期間は、原則として3年を超えることができません。 [労基法 14 条]
【例外】 ・高度で専門的な知識を持つ者や 60 歳以上の者との契約:5年以内
・有期の土木工事など一定の事業の完了に必要な期間を定めている契約:期間終了まで
(5)試用期間
▼会社が労働者の本採用を決定する前に、一定期間、その労働者の能力や適性を見極めるための試用期間を設ける場合は、契約締結時にその旨を明示しておかなければなりません。なお、試用期間の長さについ
て特に明確な規定はありませんが、不必要に長い期間を設けることはできません。(※業務内容などに応じて1~6か月程度が一般的です。)
なお、試用期間中であっても、労働者には労働基準法が適用されるほか、加入要件を満たす場合には、会社は労働者の労働保険、社会保険などに加入させなければなりません。
(6)パートタイム・有期雇用労働者の場合の説明義務
▼パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れたとき、会社は以下の項目について説明しなければなりません。なお、説明は口頭で行うことが原則ですが、書面にして渡すことが望ましいとされています。
[パート・有期法 14 条]
パートタイム・有期雇用労働者への説明が義務づけられている項目
① 不合理な待遇の禁止 ② 待遇の差別的取扱い禁止 ③ 賃金の決定方法 ➃ 教育訓練の実施
⑤ 福利厚生施設(休憩室・給食施設等)の利用 ⑥ 正社員への転換を推進するための措置
(7)労働契約の禁止事項
▼労働契約の締結にあたり、労基法では次の事項を条件とする契約を禁止しています。
[労基法 16 条~18 条]
① 違約金・損害賠償額の予定 ② 前借金と賃金の相殺 ③ 強制貯金
(8)労働条件の変更
▼会社は、締結した労働契約の労働条件(勤務時間、賃金の額など)について、労働者の同意なしに一方的に変更することはできません。[労契法8条]
(9)不合理な待遇差及び差別的取扱の禁止(同一労働同一賃金)
[パート・有期法8条~12 条・14 条][派遣法 30 条の3~30 条の6、31 条の2]
▼同一の会社と労働契約を結んでいる正規労働者と非正規労働者(パート・有期雇用・派遣等)の間で、
労働条件(賃金・労働時間、各種手当、福利厚生施設の利用など)を不合理に相違させることは禁止されています。
▼正規労働者と非正規労働者の待遇差について、「どのような待遇差が不合理となるか」の判断基準は、厚生労働省が策定した「同一労働同一賃金ガイドライン」で示されています。
▼非正規労働者から正規労働者との待遇差の理由等の説明を求められた場合、会社に説明義務が課されています。また、説明を求めた場合の不利益な取扱いも禁止されています。
※厚生労働省のホームページに「同一労働同一賃金ガイドライン」など詳しく掲載されています。
(「同一労働同一賃金 厚生労働省」で検索)
(10)求人票等の労働条件との相違
▼求人票や求人情報雑誌、求人情報サイトなどに書かれている労働条件は、労働者を募集するための「目安」であるため、求人票等を提出した後に会社の事情により労働条件が変わる場合があります。
▼求人票と実際の労働条件が異なる場合は、ハローワークや労働局に相談することができます。
(11)フリーランスとしての安定的従事の環境整備
▼「フリーランス・事業者間取引適正化等法」が令和 5 年4月 28 日に可決成立し、5 月 12 日に公布されま
した。公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日に施行されます。 施行後は、フリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則 60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けらます。
なお、発注者から仕事のやり方や作業の時間まで事細かに指示されるなどのことがあれば、労働者性が認められ、労働関係法令が適用されます。
2 派遣労働者
★派遣労働者と派遣元との雇用契約、派遣元と派遣先との労働者派遣契約の締結が必要である ★派遣先と派遣労働者との間に雇用関係はないが、指揮命令関係はある |
▼労働者派遣は一部の例外を除き、どの業務についても行うことができます。労働者派遣を行う場合、派遣労働者と派遣元との雇用契約、派遣元と派遣先との労働者派遣契約を締結することが必要です。なお、派遣先と派遣労働者との間に雇用関係はありませんが、指揮命令関係はあります。 [派遣法2条]
(1)派遣の受入期間
▼派遣法による労働者派遣は、あくまで「臨時的・一時的な働き方」が原則であるため、次のような『派遣受入期間の制限』が設けられています。 [派遣法 35 条の2、35 条の3、40 条の2、40 条の3]
・『事業所単位の期間制限』⇒ 派遣先は、派遣先の事業所等ごとの業務について、3年を超えて派遣労働
者を受け入れることはできません。ただし、派遣先の過半数労働組合等からの意見聴取手続きによって3年まで延長すること(それ以降の再延長についても同様の手続きにより可能)ができます。
・『個人単位の期間制限』⇒ 派遣先は、派遣先の事業所等における同一の組織単位(課単位)ごとの業務について、3年を超えて同じ派遣労働者を受け入れることはできません。
▼雇用期間が 30 日以内の日雇派遣は、「政令で定める一定の業務の場合」、または「政令で定める一定の労働者の場合」を除き、原則として禁止されています。 [派遣法 35 条の4]
▼労働者派遣の終了後に再度同じ派遣労働者を受け入れる場合、派遣終了と次の派遣開始の間が3か月
(クーリング期間)を超えないときは、労働者派遣は継続しているものとみなされます。
(2)元の勤務先への派遣の禁止
▼派遣元は、原則として、派遣先を離職してから1年以内の者を、その派遣先に派遣労働者として派遣してはいけません。ただし、60 歳以上の定年退職者は例外が認められています。
[派遣法 35 条の5・40 条の9、派遣法施行規則 33 条の 10]
(3)不合理な待遇の禁止
▼派遣労働者の待遇については、派遣元は次の2つのうちいずれかの方式により派遣労働者の待遇を確保しなければなりません。[派遣法 30 条の3、30 条の4]
①派遣先均等・均衡方式
派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇によるもの
②労使協定方式
派遣元事業主が過半数労働組合(なければ過半数代表者)と一定要件を満たす労使協定を締結し、その協定に基づく待遇によるもの
3 有期労働契約の契約期間とルール
★労働契約には、期間の定めのない契約と期間の定めのある契約がある
(以下、期間の定めのある労働契約を「有期労働契約」という)
★有期労働契約は原則3年を超える期間は締結できない
(1)有期労働契約
▼有期労働契約は契約期間の始まりと終わりの日が定められている労働契約です。
「有期雇用」「期間雇用」とも呼ばれたりします。有期労働契約の下で働く労働者を「契約社員」と言うこともあります。※期間の定めのない労働契約は、定年以外に労働契約が終わる時期が定められていません。
(2)契約期間の上限
▼有期労働契約による場合は、契約期間に上限があり、原則として3年を超える契約は許されません。仮に
3年を超える契約を結んだとしても、その契約期間は3年となります。ただし、一定の専門的知識・技術・経験を持つ労働者や 60 歳以上の者を雇い入れる場合は、5年までの契約が認められています。また、有期の土木工事等、一定の事業の完了を契約期間と定める場合は、その定めた期間とできます。
[労基法 14 条1項]
(3)契約期間途中の解雇・退職
▼会社は「やむを得ない事由」がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇できません。
[労契法 17 条1項](「14 解雇・雇止め」の項を参照)
▼有期契約労働者が契約期間中に退職を申し出ることができるのは、民法上の「やむを得ない事由」がある
場合に限られます。 [民法 628 条]
ただし、労基法 137 条により 1 年を超える有期労働契約(一定の事業の完了を契約期間と定めるものなどを除く)の場合は、契約期間の初日から1年を経過すれば、「やむを得ない事由」がなくても退職を申し出ることができます。
(4)有期労働契約の無期転換ルール
① 有期労働契約が無期労働契約に転換する場合
▼同一の会社との間で締結されている有期労働契約が、繰り返し更新され、通算した契約期間が5年を超える場合には、有期契約労働者は会社に対して無期労働契約(期間の定めのない労働契約)への転換を申
し込むことができ、会社は労働者からの申し込みがあった場合、その申し込みを拒むことはできません。
[労契法 18 条]
1年契約を更新して5年超となるケース
通算5年
申込期間 ※7年目以降の申込みもできる
1年
1年
1年
1年
1年
1年
無期労働契約
▲ △
契約締結 更新
△
更新
△
更新
△
更新
△
更新
▲
転換
3年契約を更新して5年超となるケース
通算5年
3年
3年
無期労働契約
▲
契約締結
△
更新
申込期間
▲
転換
② 通算契約期間の計算とクーリング期間
▼同一の使用者との間で有期労働契約を締結していない期間(無契約期間)が、一定の長さ以上になる場合、この期間が「クーリング期間」として扱われ、それ以前の契約期間は通算対象から除外されます。
▼クーリング期間は、それまでの通算期間が1年以上の場合には6か月、1年未満の場合には原則的に契約期間の2分の1以上の期間(端数は1か月単位で切上げ)です。
③ 無期転換後の労働条件
▼無期労働契約に転換した後の労働条件は、原則として、契約期間を除き、直前の有期労働契約と同一の労働条件となります。ただし、契約期間を除く労働条件は、労働協約、就業規則あるいは個々の労働契約により、別段の定めがある場合はそれに従います。
➃ 無期転換ルールの特例
▼大学等及び研究開発法人の研究者等については、無期労働契約への転換の申込みには、有期労働契約が通算 10 年を超えることが必要です。
▼都道府県労働局から認定を受けた事業主は、①「5年を超える一定の期間内に完了する業務」に従事する、高収入かつ高度の専門的知識等を有する有期雇用労働者(上限 10 年)が、その業務に従事してい
る期間、②定年後引き続いて雇用される有期雇用労働者が、その事業主に定年後引き続いて雇用される期間について、無期転換申込権が発生しない特例措置があります。
⑤ 無期転換ルールの改正
▼有期契約労働者が無期転換ルールを知る機会が少ないことから、制度が改正され、令和6年4月1日より、無期転換申込権が発生する契約更新時に申込の機会を明示すること等が使用者側に義務づけられます。
4 就業規則
★就業規則とは、賃金や労働時間などの労働条件や職場内の規律などを定めたものである
★就業規則は、法令違反や労働基準法の基準を下回る定めをすることはできない
★会社は労働者に不利益となる就業規則の変更を一方的に行うことができない
▼就業規則とは、労働時間・賃金などの労働条件や経営上の必要から、働くうえで労働者が守らなければ ならない規律などを事業場ごとに定めたものです。
(1)就業規則の作成、意見聴取、届出と周知
▼パートタイム労働者、アルバイト、派遣労働者、契約社員なども含めて常時 10 人以上(原則、会社の事
業所(工場や営業所)ごとを単位とする)を使用する会社は、必ず就業規則を作成して所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。就業規則を変更した場合も同様に届出が必要です。[労基法 89 条]
▼会社は就業規則に、法令違反や労働基準法の基準を下回る定めをすることはできません。また、当該事業場について適用される労働協約にも反してはいけません。 [労基法 92 条]
▼会社は、就業規則を作成・変更する場合、労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数を代表
する者の意見を聴かなければなりません。パートタイム労働者に関する就業規則についても同様です。
[労基法 90 条、パート・有期法7条]
▼会社は、就業規則を労働者に周知する義務があります。 [労基法 106 条]
【周知方法】 ・常に職場内の見やすい場所に掲示または備え付ける
・労働者に書面で渡す
・磁気テープ、磁気ディスクなどに記録し、かつ、職場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する
(2)就業規則の記載事項
▼就業規則には、必ず記載しなければならない事項と、その事項について定めた場合には必ず記載しなければならない事項とがあります。 [労基法 89 条]
必ず記載しなければならない事項
① 始業と終業の時刻、休憩時間、休日・休暇に関する事項(交代制勤務の場合は就業時転換)
② 賃金の決定、計算と支払の方法、締切りと支払の時期、昇給に関する事項
③ 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
定めた場合は必ず記載しなければならない事項
② 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項 ⑥ 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
① 退職手当に関する事項
⑤ 職業訓練に関する事項
③ 食費・作業用品などの負担に関する事項
➃ 安全衛生に関する事項
⑦ 表彰、制裁の種類・程度に関する事項
⑧ その他全労働者に適用される事項
(3)不利益変更の禁止
▼会社は労働者の合意なしに、労働者にとって労働条件が不利益となる就業規則の変更をすることはでき
ません。ただし、引き下げる理由や不利益の程度などを総合的に判断して合理的である場合は例外とされ、会社は就業規則を変更して労働者に周知することで労働条件を変更できます。
[労契法9条・10 条]
5 労働時間と休憩・休日・休暇
★法定労働時間は、原則として休憩時間を除き1日8時間以内、1週 40 時間以内
(業種による例外や変形労働時間制などがある)
★休憩は、労働時間6時間を超える場合は少なくとも 45 分、8時間を超える場合は少なくとも1時間を付与しなければならない
★会社は、週に1日または4週間に4日以上の休日を与えなければならない
★年次有給休暇は、パートタイマーなども含めすべての労働者が対象で、それぞれの勤務実態によって付与され、労働者の希望する日に取得できることが原則である
★会社は、年次有給休暇が年間 10 日以上付与された労働者に対し、年5日については取得させなければならない
(1)法定労働時間
▼会社は、労働者に対して休憩時間を除いて1日に8時間、1週間に 40 時間を超えて労働させてはなりません。これを法定労働時間といいます。 [労基法 32 条]
▼「特例措置」として、常時9人以下の労働者を使用する商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業 については『1週 44 時間以内』とすることが認められています。また、一定の手続きをとることで、『変形
労働時間制』のほか『みなし労働時間制』や『裁量労働制』を採用することが認められています。
[労基法 40 条、32 条の 2~32 条の 5、38 条の 2~38 条の 4]
週 44時間 特例措置対象事業場 常時9人以下の労働者を使用する事業場
【商業】
・物品の販売、配給
・保管・倉庫業、携帯品預かり 所
・理容業、美容業
【映画・演劇業】・映画・演劇等の興 業
・不動産(土地・建物等)の分譲販売
【保健衛生業】 ・病院、医院、診療所、助産所などの治療看護を行う事業
・生活保護法による救護施設、更生施設、医療保護施設など
・児童福祉法による助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、児童養護施設、
・身体障害者福祉法による身体障害者の更生施設、療養施設、授産施設など
児童自立施設など
・障害者総合支援法による障害者支援施設
・老人福祉法による老人福祉施設
・聾学校、盲学校、養護学校に設置される寄宿舎
・児童相談所・婦人相談所に付設される一時保護所
・公衆浴場法による公衆浴場など
【接客娯楽業】 ・旅館、料理店、飲食店、接客業、娯楽業
・ボウリング場、ゴルフ場、結婚式場、会社のクラブ、保養所、個室付浴場など
(2)変形労働時間制
▼業種や業務の内容によっては、時期や曜日によって仕事量に差があり、上記の法定労働時間がうまく当てはまらない場合があります。この場合、仕事量にゆとりのある特定の期間や特定の日の労働時間を短くし、仕事量の多い時期に法定労働時間を超えた労働時間を設定することができます。これを『変形労働時間制』といいます。 [労基法 32 条の 2~5]
▼変形労働時間制を取り入れる時は、就業規則や労使協定で具体的な内容を決めておく必要があります。
(労働基準監督署への届出が必要な場合があります。)
変形労働時間制の種類と概要
超える日または1週に 40 時間(特例事業場は週 44 時間)を超えて労働させることができます。
② 1年単位の変形労働時間制
1か月を超え1年以内の一定の期間において、平均して1週間あたりの労働時間が 40 時間以内であ
れば、1日8時間を超える日または1週 40 時間を超える週があっても、1日 10 時間、1週 52 時間までを限度に労働させることができます。
③ 1週間単位の非定型的変形労働時間制
労働者が 29 人以下の小売業、旅館、料理店及び飲食店については、労使協定により一週間単位で毎日の労働時間を弾力的に定めることができる。この協定は労働基準監督署に届け出る必要がある。1週間の労働時間が 40 時間の枠内におさまっていれば、1日について 10 時間まで労働させることがで
きます。
➃ フレックスタイム制
3か月以内の一定期間(清算期間)の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲で各自の始業・終
業時刻、労働時間を選択して働くことができます。
清算期間を平均して1週間あたりの労働時間が 40 時間(特例事業場は 44 時間)を超えていなければ法定労働時間を超える日または週があっても時間外労働とはなりません。ただし、清算期間が1か月を
超え3か月以内の場合は、清算期間を1か月ごとに区分した各1か月の週平均労働時間が 50 時間を超えるときは、その超える時間に対して割増賃金を支払わなければなりません。
① 1か月単位の変形労働時間制
1か月以内の一定の期間について、平均して1週間の労働時間が 40 時間以内であれば1日8時間を
1か月単位の変形労働時間制の例 (月末が忙しく、月初めと月中が比較的暇である場合)
休 休
日 日
休
日
休 休
日 日
休
日
休
日
8 8 8 8 8 日
休
時 時 時 時 時
7
時
7 7 7 7 7 7
7 間 間 間 間 間
間
時 時 時 時 時 時
7 7 7 7 7
間 間 間 間 間 間
時 時 時 時 時
7 7 7
7 7
間 間 間 間 間
時 時 時
間 間 間
時 時
間 間
時 30 30 30 30 30
間 分 分 分 分 分
【上記の計算例】
※条件①:1日7時間労働を基本とし、月末の5出勤日のみ 8.5 時間労働とした場合
※条件②:勤務日数 23 日・休日8日の月の場合
⇒1週間あたりの平均労働時間は
(7時間×18 日+8.5 時間×5日)÷(31 日÷7)=38.05 時間<40 時間
(3)シフト制(交替勤務制)
▼複数の勤務時間帯があり、組ごと、または労働者ごとの勤務時間が一定の規則に従い周期的に変わっていく交替制の適用を受け、勤務時間が一定期間(1 週間、1 か月など)ごとに作成される勤務シフトなどで変わる形態です。
※勤務形態としては、2交替制や3交替制などのシフト制度を使い、「変形労働時間制」を併用している例が多くあります。(病院、介護施設、コンビニ、ホテルなど)
▼労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合における就業時転換に関する事項(シフトに関する事
項)は、雇用時の絶対的明示事項(必ず明示しなければならない事項)とされています。 [労基法施行規則 5 条]
(4)勤務間インターバル制度
▼『勤務間インターバル制度』とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間
(インターバル)を9~11 時間以上を目安に確保する仕組みです。この仕組みを会社の努力義務とすることで、労働者の十分な生活時間や睡眠時間を確保しようとするものです。
▼勤務間インターバル制度の導入も含めた労働時間等の改善のために必要な措置を講じるよう、会社に努力義務が課されています。 [労働時間等設定改善法2条]
(5)休 憩
▼会社は労働者に対し、『労働時間が6時間を超える場合には少なくとも 45 分以上』、『8時間を超える場
合には少なくとも1時間以上』の休憩を労働時間の途中に与えなければなりません。また、労働者は休憩時間を自由に利用することができます。 [労基法 34 条]
▼休憩は、全労働者に一斉に与えることが原則ですが、労使協定を結ぶことで別々に与えることもできま
す。ただし、「運輸交通業」、「商業」、「金融・広告業」、「映画・演劇業」、「通信業」、「保健衛生業」、「 接客娯楽業」、「官公署」については、労使協定の締結なしに休憩時間を一斉に与えなくてもよいことになっています。 [ 労基法 40 条、労基法施行規則 31 条]
(6)休 日
▼『休日』とは、労働契約上の労働義務がない日をいいます。
▼労基法では、会社は毎週少なくとも1日、または4週間に4日以上の休日(変形休日制)を労働者に与えなければなりません。これを『法定休日』といいます。
▼法定休日は、曜日に関係なく定めることができますが、原則として暦日(午前 0:00~午後 12:00 まで
の 24 時間)で与えなければなりません。 [労基法 35 条](罰則:6か月以下の懲役または 30 万円以下の罰金)
(7)振替休日と代休
▼仕事の都合でどうしても休日に働く必要があるとき、その代わりの休日を取る方法として『振替休日』と
『代休』があります。
▼「振替休日」とは、就業規則に振替ができる旨の規定を設け、働くこととなった休日と振り替える勤務日
を事前に設定するものです。休日が労働日となるため休日労働とはなりませんが、週をまたがる振替により当該週の法定労働時間を超える場合は、時間外労働の割増賃金が必要となります。
▼「代休」とは、休日出勤を命じた後に、適宜代わりの休日を与えるものです。任意に与えることができま
振替休日と代休の主な違い
すが、労働者の健康管理面からなるべく早めに与えることが望ましいでしょう。また、休日労働となるため、所定休日では 25%以上、法定休日では 35%以上の割増賃金が必要となります。
振替休日 | 代休 | |
どのようなもの | 事前に休日と労働日を変更するもの | 休日労働させ、事後に休日を付与するもの |
就業規則などの定め | 必要 | 手続や賃金について規定が必要 |
休日の事前の特定 | 必要 | 必要なし |
休日労働に係る36協定 | 必要なし | 法定休日に働かせるには必要 |
割 増 賃 金 | 必要なし ※当該週の法定労働時間を超えるとき は時間外労働の割増賃金が必要 | 必要 所定休日は 25%、法定休日は 35% |
(8)年次有給休暇(年休)[労基法39条]
▼会社は、『採用後6か月以上継続して勤務』し、『全労働日の8割以上出勤』した労働者に対して、次表のとおり年休を与えなければなりません。また、6か月未満の短期契約を結んでいる労働者であっても、契
約を更新し、継続して6か月以上勤務するようになった場合には年休を与えなければなりません。
▼パートタイム労働者など所定労働時間の短い労働者にも、『採用後6か月以上勤務』、『全労働日の8割以上出勤』の条件を満たせば、次表のとおり年次有給休暇が付与されます。
勤続年数別付与日数 | ||||||
6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
10 日 | 11 日 | 12 日 | 14 日 | 16 日 | 18 日 | 20 日 |
勤続年数別付与日数 | ||||||||
週所定 労働日数 | 年間所定 労働日数 | 6か月 | 1年 6か月 | 2年 6か月 | 3年 6か月 | 4年 6か月 | 5年 6か月 | 6年 6か月以上 |
4日 | 169 ~216 日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10 日 | 12 日 | 13 日 | 15 日 |
3日 | 121 ~168 日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10 日 | 11 日 |
2日 | 73 ~120 日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48 ~ 72 日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
年次有給休暇の付与日数 ※フルタイム、パートタイム、アルバイト、契約社員等を問わない。
①週の所定労働時間が 30 時間以上、所定労働日数が週5日以上または1年間の所定労働日数が 217 日以上の労働者
②週の所定労働時間が 30 時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下または1年間の所定労働日数が 216 日以下の労働者
(9)年休の取得と時季変更権
▼年休は労働者が希望する日に取得できることが原則で、会社が取得目的を強制的に確認することはできません。また、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしてはなり
ません。
▼事業の正常な運営を妨げる場合に限り、会社には年休の取得日を変更する権利(時季変更権)が認められています。ただし、単に「忙しいから」という理由だけで年休の時季を変更することはできません。
(10)年休の繰り越し
▼『年休の請求権の消滅時効は2年[労基法 115 条]』となっているため、労働者は付与された年に全ての日数の年休を取得できなかった場合は、残りの日数を翌年まで繰り越すことができます。
(11)年休の時間単位取得と計画的付与制度
▼年休は、労働者の過半数を代表する者との間で労使協定を締結することにより、『年5日を限度として時間単位で取得』することができます。
▼同じく労使協定を締結することにより、「付与された日数のうち5日を除いた残りの日数」について、例
えば夏季、年末年始の時季などに、会社は、全従業員への一斉付与や係・グループごとの交替制付与、労働者ごとの取得計画表を作成したうえでの個人別付与というような方法で、『計画的に年休を付与』することができます。
(12)年5日の年休を取得させる義務 [労基法39条7項]
▼年休は、労働者が会社に取得希望日を申し出ることが原則ですが、多くの会社で年休の取得率が低調な
現状があります。そのため、労基法の改正により平成 31 年4月1日から、年間 10 日以上の年休が付与されているすべての労働者に対し、そのうち5日については会社が労働者に取得時季の意見を聴取し、意見を尊重した上で、時季を指定して年休を取得させる義務が課されています。与えなかった場合は罰則があります。
(13)年休の管理
▼会社は労働者ごとに年休を与えた時季、日数及び基準日を記載する年次有給休暇管理簿を作成し、5 年間保存しなければなりません。(ただし、当分の間は 3 年間)[ 労基法施行規則 24 条の7]
(14)年休に対する賃金
▼「年休」は、『有給休暇』であるため、会社は労働者が年休を取得した日に対しても賃金を支払わなければなりません。
▼会社は、労働者が年休を取得した場合、どの方式によって賃金を支払うか、次のいずれかを選択し、あらかじめ就業規則またはこれに準じるものに規定しておく必要があります。
【年休に対する賃金の支払方法】
① 労働基準法で定める方法により計算した平均賃金(3か月間分をベース)
② 所定労働時間に労働した場合に支払われる通常の賃金
③労使協定に基づく健康保険法第 40 条第 1 項で定める標準報酬月額の 30 分の 1 に相当する金額
6 賃
金
★賃金から控除する(差し引く)ことができるのは、税金や保険料などに限られる
★地域ごとに最低賃金が定められ、その額を下回る賃金を支払うことは違法である
★何らかの理由で会社に対し損害賠償することになっても、労働者の同意なしに賃金から賠償額を控除することはできない
(1)賃金支払いの5原則
▼賃金とは、「給料、手当、賞与」などの名称の如何を問わず、労働の対償として会社が労働者に払うすべてのものをいいます。 [労基法 11 条]
▼労働基準法は、『賃金支払いの5原則』を定めています。 [労基法 24 条]
賃金支払いの5原則
① 通貨払いの原則:賃金は通貨払が原則。ただし、労働者の同意があれば口座振り込みが可能。
※令和 5 年 4 月 1 日から労使協定が締結され労働者の同意があればデジタル払いが可能となった。
② 直接払いの原則:賃金は労働者本人に直接支払わなくてはならない
③ 全額払いの原則:賃金は全額支払わなければならない。会社の都合による一方的な控除は禁止
➃ 毎月1回以上払いの原則:賃金は少なくとも毎月1回支払わなくてはならない
⑤ 一定期日支払いの原則:賃金は毎月一定の期日に支払わなくてはならない
(2)賃金からの控除
▼賃金は全額払いが原則ですが、法令に基づく税金、社会保険料などや、事業場の過半数労働者の代表者と書面による協定を締結したもの(例:社宅使用料、親睦会費など)については、控除することができます。
(3)最低賃金
▼最低賃金法により、パートタイム労働者やアルバイトも含む労働者の賃金の最低額が地域ごとに時間給で定められています。
▼最低賃金には、都道府県ごとに定められる『地域別最低賃金(毎年 10 月頃改定)』と、特定の産業について定められる『特定(産業別)最低賃金(毎年 12 月頃改定)』があります。
なお、大分県の地域別最低賃金は令和5年 10 月6日から翌年の改定発効日までは時間額 899 円です。
▼最低賃金には、皆勤手当、通勤手当、残業手当などのほか、臨時に支払われる賃金などは含まれません。
▼賃金が時間給以外で定められている場合は、その賃金を時間あたりの金額に換算して、最低賃金と比較します。
▼会社と最低賃金未満の労働契約を結んだとしても無効となって、最低賃金の額まで引き上げられます。また、最低賃金以上の賃金を支払わないと、最低賃金法違反となり罰則があります。
(4)給与の減額(減給処分・損害賠償)
▼労働者が規律違反をした場合、懲戒処分のひとつである減給処分(給与の一部の減額)を受けることがあります。
▼会社が労働者に減給処分などの制裁をする場合には、あらかじめ就業規則に定めをしておかなければなりません。また、減給する金額については以下のような制限があります。[労基法 91 条]
減給処分に関する制限 [労基法 91 条]
① 減給する事案1件について、減給総額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない
② 事案が複数回生じた場合でも、減給額の合計は、一賃金支払期(月給制なら1か月)の給与額の 10 分の1を超えてはならない
※減給の総額が上記の制限を超える場合は、複数の賃金支払期に渡って減給する必要がある
また、減給の額は、過去の例などと比較して妥当でなくてはなりません。労働者に損害賠償義務がある場
合も、会社が一方的に給与から賠償額を控除することは、賃金の全額払い原則(労基法 24 条)に違反することになります。
▼労働者の不注意で、例えば、会社の機械を故障させたり、社用車の交通事故などにより会社に損害を与え
た場合に、会社から損害賠償を求められることがあります。この場合、まず賠償金の額が妥当であるかどうかについて、会社とよく話し合う必要があります。
▼今までの裁判では、労働者に故意や重大な過失がある場合に限って損害賠償責任を認めた判例が多く、その場合でも労働者に請求する賠償額は制限されるケースが一般的です。損害賠償については次の点に注意が必要です。
損害賠償に関する制限
① 損害賠償の額を、労働契約や就業規則にあらかじめ定めておくことはできない [労基法 16 条]
② 損害賠償額を労働者の自由な意思に基づき相殺に同意した場合を除き、給与から差し引くことは、
「全額払いの原則」により禁止
(5)休業手当
▼会社側の都合で休業する場合は、労働者に平均賃金の6割以上の『休業手当』を支払わなくてはなりません。 [労基法 26 条]
▼平均賃金とは、原則、直前の賃金締切日以前3か月間に支払われた賃金の総支給額を、その期間の総日数で割った金額です。 [労基法 12 条]
未払賃金の立替払い制度(会社が倒産した場合) [賃金支払確保法7条]
会社が倒産して賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、国が会社に代わって未払い賃金・退職金の一部を立て替える制度です。利用する場合はいくつかの条件があるため、すみやかに労働基準
監督署に相談してください。
詳しくは「独立行政法人 労働者健康安全機構」のウェブサイトをご覧ください。
7 時間外労働・休日労働・深夜労働と割増賃金
★会社は、法定労働時間を超えて労働させる時間外労働や休日労働、深夜労働に対して、それぞれに応じた割増賃金を支払わなければならない
★会社が労働者に時間外労働や休日労働をさせるためには労使協定(36 協定)が必要
★労使協定( 36 協定) での時間外労働時間の上限は、原則1か月 45 時間、1年 360 時間となる
(1)時間外労働・休日労働・深夜労働
▼時間外労働・・法定労働時間(1日8時間または週 40 時間、特例措置対象事業場は1日8時間ま たは週 44 時間)を超えて働くこと
▼休日労働・・・法定休日(原則毎週少なくとも1日の休日、または4週間に4日以上の休日)に働くこと
▼深夜労働・・・午後 10 時~午前5時までの間に働くこと
※パートタイム労働者も契約の労働時間を超えて働いた場合は、時間給を分単位で残業代を支払わなければなりません。(1か月単位で端数処理をすることは認められています。)
※特例措置対象事業場:常時9人以下の労働者を使用する事業場で①商業、②映画・演劇業、③保健衛 生業、➃接客娯楽業を営む事業場
(2)労働時間の客観的な把握
▼長時間労働が課題とされている現状を踏まえ、会社は裁量労働制適用者や管理監督者も含め、全ての労働者の「労働時間の状況を客観的な方法その他の適切な方法で把握すること」が義務づけられています。
[安衛法 66 条の 8 の 3]
▼労働時間の把握は、会社が自ら現認することにより確認する方法や、タイムレコーダー、IC カード、パソコンの使用記録等による方法により、適正な労働時間の把握のための措置を講じなければなりません。
(3)割増賃金
▼会社は、時間外労働・休日労働・深夜労働をさせた場合は、一定以上の率を乗じた割増賃金を支払わな ければなりません。[労基法 37 条]
割増賃金の支払いが必要な場合と割増率
▼労働契約で定める『所定労働時間』を超えて時間外労働をさせたとしても、「1日 8 時間、週 40 時間の法定労働時間(特例措置対象事業場は週 44 時間)」を超えない場合は、割増賃金を支払う必要はありませんが、所定労働時間外部分の賃金は支払うことになります。なお、月に 60 時間を超えた時間外労働に対する割増率 50%以上の割増賃金を支払う代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。
割増賃金の支払いが必要な場合 | 割増率 |
①時間外労働 ※法定労働時間(1日8時間・週 40 時間、特別措置対象事業場は週 44 時間)を超える労働 | 25 %以上 |
②1か月 60 時間を超える時間外労働 (算定に法定休日労働は含まれません。) | 50 %以上 |
③深夜労働(午後 10 時から午前5時までの労働) | 25 %以上 |
➃休日労働(週1日または4週に4日の法定休日の労働) | 35 %以上 |
上記①から➃が重複した場合 ① + ③ 時間外労働が深夜労働の時間帯に及んだ場合 ③ + ➃ 休日労働が深夜労働の時間帯に及んだ場合 ② + ③ 月 60 時間を超える時間外労働が深夜労働に及んだ場合 | 25% + 25% =50%以上 35% + 25% =60%以上 50% + 25% =75%以上 |
(4)労使協定(36(サブロク)協定)と残業時間の上限規制
▼会社が時間外労働、休日労働をさせる場合には、災害等のために臨時の必要がある場合[労基法 33 条]
を除き、労働者の過半数を代表する者との間で「労基法 36 条に基づく労使協定(通称、「36 協定」サブロク協定)」を結び、労働基準監督署へ届け出なくてはなりません。 [労基法 36 条]
▼「36 協定」で定めることができる時間外労働時間については、次のとおり上限が定められています。
【時間外労働の上限時間】
① 1年間 360 時間(1年単位の変形労働時間制の場合は 320 時間)
② 1か月 45 時間(1年単位の変形労働時間制の場合は 42 時間)
▼臨時的な特別の事情がある場合に限り、『特別条項付き協定』を結ぶことで、原則の上限時間を超えて年間6か月まで時間外労働をさせることができます。この臨時的な特別の事情がある場合の時間外労働時間についても、次のとおり上限が定められています。
【臨時的時間外労働の上限時間】
① 1年間 720 時間以内(休日労働を含まない)
② 1か月 100 時間未満(休日労働含む)
③ 複数月平均 80 時間以内(休日労働含む)
➃ 時間外労働が月 45 時間を超えることができるのは、年6か月が限度
▼建設事業、自動車運転業務、医師の時間外労働上限規制
長時間労働の背景に、業務の特殊性や取引慣行の課題があることから、時間外労働上限規制の適用が猶予されていた以下の事業・業務についても、令和 6 年 4 月 1 日から上限規制が適用されます。
○建設事業
ただし、災害の復旧、復興の事業に関しては上記「臨時的時間外労働の上限時間」②、③は適用なし
○自動車運転業務
年間上限 960 時間となり、上記「臨時的時間外労働の上限時間」②、③、➃は適用なし
○医師
ただし、病院等の勤務医は原則的に年間上限 960 時間 など
▼脳・心臓疾患に係る労災認定基準においては、週 40 時間を超える時間外・休日労働が概ね月 45 時間を
超えて長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まり、発症前 1 か月間に概ね 100 時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月あたり概ね 80 時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できるとされています。他にも拘束時間が長い勤務や休
日のない連続勤務など労働時間の不規則性も関連するとされています。また、業務における強い心理的負荷による精神障害で、正常な認識、行為選択能力や自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害され、自殺に至る場合があるとされています。(R3.9.14 基発第 914 第 1 号通知)
副業・兼業
副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にあり、副業・兼業を行う理由は、収入の増や自分の活躍の場を広げることや現在の仕事での能力向上等さまざまです。
裁判例においても、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であり、企業がそれを制限することが許されるのは、①労務提供上の支障がある場合、②業務上の秘密が漏洩する場合、③競業により自社の利益が害される場合、➃自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合と解されているとしています。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当とされており、労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められるとされています。
副業・兼業の場合には、次の点に留意して就業規則の整備や労働者への注意喚起を行う必要があります。ア 安全配慮義務 副業・兼業を行う労働者を使用するすべての会社が安全配慮義務を負っている。
イ 秘密保持義務 労働者は、会社の業務上の秘密を守る義務を負っている。
ウ 競業避止義務 労働者は、一般に、在職中、会社と競合する業務を行わない義務を負っていると解されている。
エ 誠実義務 労働者は、会社の名誉・信用を毀損しないなど誠実に行動することが要請される。
労働時間管理
ア 労働者が、事業主を異にする複数の事業場において「労働時間制限が適用される労働者」に該当する場合に、それらの複数の事業場における労働時間が通算される。[労基法 38 条]
ただし、労基法が適用されないフリーランス、独立、起業、共同経営等の場合は通算されない。
イ 法定労働時間について、その適用において自らの事業場における労働時間及び他の会社の事業場における労働時間が通算される。
労働時間の通算
ア 労働時間を通算管理する使用者
副業・兼業を行う労働者を使用するすべての使用者は、それぞれ、自らの事業場における労働時間 と他の会社の事業場における労働時間とを通算して管理する必要がある。
イ 労働時間の通算方法
① 原則的な労働時間管理の方法(所定労働時間の通算)
自社と副業・兼務先の所定労働時間を通算した結果、自社の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、その超えた部分が時間外労働となり、時間的に後から労働契約を締結した会社が自社の 36 協定で定めるところによってその時間外労働を行わせることになる。
② 簡便な労働時間管理の方法(管理モデルの導入)
自社と副業・兼務先の労働時間を通算して、法定労働時間を超えた時間数が時間外労働の上限規 制の範囲内において、各々の事業場における労働時間の上限を設定する。
8 労働安全衛生・健康管理
★会社には、労働者の生命や身体・心身の健康を危険から保護するよう十分に配慮する「安全配慮義務」「職場環境配慮義務」がある
★会社は、常時雇用する労働者に対して、1年以内ごとに1回など、健康診断を行わなければならない
★労働者数 50 人以上の事業場にはストレスチェック実施、産業医選任、衛生委員会設置が義務づけられている
(1)安全配慮義務、職場環境配慮義務・健康配慮義務
▼「安全配慮義務」とは、労働者が会社の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命や身体、健康を危険から保護するよう十分に配慮すべき事業者の義務をいいます。 [労契法5条]
「安全配慮義務」の中に「職場環境配慮義務」があります。これは会社が事業場の安全衛生の向上を図るため、作業環境を快適な状態に維持管理するための措置、労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置、作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設または設備の設置または
整備、その他快適な職場環境を形成するため必要な措置が義務づけられていることをいいます。
また、「安全配慮義務」の中に「健康配慮義務」があります。これは会社が、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない責務です。
上記の義務を会社が果たさず、労働災害を発生させた場合は、債務不履行に基づく民事上の損害賠償の責任(民法 415 条)が生じます。
(2)健康診断
▼会社は常時雇用する労働者に対して健康診断を実施しなければなりません。 [安衛法 66 条]
実施しなければならない主な健康診断
②一般健康診断(定期健康診断)・・・・・・常時雇用する労働者について、1年以内ごとに1回実施
③深夜業等の特定業務に従事する
労働者に対する健康診断・・・・・・・・常時雇用する労働者について、6か月以内ごとに1回実施
➃有害業務(粉じん業務、有機溶剤業務、石綿業務、鉛業務等)に従事する労働者
に対する特殊健康診断・・・・・・・・・6か月以上ごとに1回実施(業務により異 なる)
①雇入時の健康診断・・・・・・ ・・・・・
常時雇用する労働者を雇い入れるときに実施
▼パートタイム労働者や有期雇用労働者も次の2つの要件を満たせば健康診断の対象となります。
【要件】① 1週間の所定労働時間数が通常の労働者の4分の3以上
② 以下の項目のうちいずれかを満たす者 a.労働契約期間に定めがない者
b.労働契約期間に定めがあり、契約期間が1年以上である者
c.労働契約期間が1年未満であるが、契約更新により引き続き1年以上使用される予定の者、または1年以上引き続き使用されている者
(3)ストレスチェック
▼労働者数 50 人以上の事業場(50 人未満の事業場は当分の間努力義務)は、労働者に対し医師等によるストレスチェックを実施しなければなりません。 [安衛法 66 条の10 ]
▼会社は、検査結果が一定の要件に該当した労働者から申出があった場合、医師による面接指導を実施しなければなりません。また、面接指導の結果に基づいて医師の意見を聴き、必要に応じた措置をとらなくてはいけません。
(4)体制整備[安衛法13条~13条の3、18条、104条]
▼労働者数 50 人以上の会社においては、『産業医』の選任が義務づけられています。また、50 人未満の会社には選任義務はありませんが、労働者の健康管理を医師等に行わせる努力義務があります。
▼労働者数 50 人以上の事業場においては、『衛生委員会』の設置が義務づけられています。
▼会社は、長時間労働の状況や労働者の業務の状況など、「産業医」が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供しなければいけません。
▼「産業医」は、労働者の健康を確保するために必要があるときは、会社に対して勧告することができま
す。
▼会社は、「産業医」から勧告を受けた場合、会社の「衛生委員会」または「安全衛生委員会」に報告し、実効性のある健康確保対策の検討に役立てなければなりません。
▼会社は、「産業医」等が労働者からの健康相談に応じるための体制整備に努めなければなりません。
▼会社は、労働者の健康情報を収集し、当該収集の目的の範囲内で保管・使用をしなければなりません。また、会社は労働者の健康情報の適正な管理のために、必要な措置を講じなければなりません。
9 労働保険・社会保険
★労働者の保険は、労働保険(雇用保険・労災保険)と社会保険(健康保険・厚生年金保険)がある
★労災保険は、一部の農林水産業を除くすべての会社が、働く期間や時間によらず、1日だけのアルバイトでも必ず加入しなければならない
(1)雇用保険
▼雇用保険は、労働者が失業した場合などに必要な給付金が支払われる保険制度です。
▼会社の規模にかかわらず、次の2つの要件を満たす労働者(パートタイム労働者も含む)は雇用保険に加入し被保険者となります。保険料は労働者と会社で負担します。
【加入要件】 ① 週の所定労働時間が 20 時間以上であること(複数の会社に雇用される労働者は主に生計を維持するに必要な賃金を受ける一つの会社(週所定労働時間が 20 時間以上)のみで加入します。なお、令和 4 年 1 月 1 日から、複数の会社に雇用される 65 歳以
上の労働者は、二つの会社(週所定労働時間が 5 時間以上 20 時間未満のものに限る)の週所定労働時間を合計して 20 時間以上であれば、本人がハローワークに申出を行うことで特例的に被保険者となることができるようになりました。)
② 31 日以上引き続き雇用されることが見込まれること
▼加入資格のある労働者が未加入であった場合、未加入と確認された日から2年前まで遡って加入できます。(雇用保険料が給与から控除されていたことが書面により確認できる場合は2年を超えた期間でも加
入できます。)
▼65 歳以上の労働者も「高年齢被保険者」として、雇用保険の給付金の適用対象となっています。
▼雇用保険の給付を受けるためには次の要件を満たす必要があります。
【給付要件】 ① 離職日以前の2年間に賃金支払基礎日数 11 日以上の月が 12 か月以上あること
② 倒産解雇等により離職した場合は、離職日以前の1年間に賃金支払基礎日数 11 日以上の月が6か月以上あること
退職事由による給付制限等
会社を辞めた(辞めさせられた)場合、要件を満たしていれば、雇用保険(失業等給付)の基本手当が
受給できます。この基本手当の給付については、退職事由により「特定受給資格者」もしくは「特定理由離職者」に位置づけられるかどうかによって、「2か月間の給付制限の有無」や「給付日数の期間」に、通常の自己都合退職や懲戒解雇による離職者との違いが生じます。
○「特定受給資格者」⇒ ① 「倒産」等により離職した者
(破産、事業所廃止、事業所移転による通勤困難など)
②「解雇(懲戒解雇を除く)」等により離職した者
(労働条件の著しい相違、賃金の未払い・大幅低下、就業環境を著しく害 するような言動により離職した等の理由を含む)
○「特定理由離職者」⇒ ① 期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ当該労働契約について 更新を希望したにもかかわらず、更新の合意が成立しなかったことにより
離職した者
② 正当な理由のある自己都合により離職した者
(心身の障害・疾病・負傷等、妊娠・出産・育児等、父母の扶養または 親族の看護等、特定の理由による通勤困難など)
(2)労災保険
▼労災保険は、労働者が仕事や通勤に関連してけがや病気、死亡した場合に本人や遺族に支払われる保険給
付制度で、長時間労働や職場でのいじめ・パワハラ、セクハラ、カスハラ等の出来事に係る心理的負荷に よる精神障害でも、業務によるものとして認められる場合があります。働く期間や時間にかかわらず、1日だけのアルバイトも含めて、すべての労働者が加入対象となり、保険料は会社が全額負担します。
【強制加入の例外】① 個人経営の農水産業で常時労働者数5人未満の事業
② 個人経営の林業で労働者を常時使用しない事業(年間使用労働者延べ人数300人未満)
※いずれの事業所も、労災保険に加入する場合は、事業主や労働者の過半数の意思によ
り任意適用の手続きをする必要があります。
▼労災保険は、業務災害または通勤災害に遭った労働者自身か遺族の方が、労働基準監督署に請求します。その際、「療養」、「休業」、「障害」、「遺族」の保険給付の請求には、会社の証明書が必要となります。(※万
が一、会社からの証明が受けられない場合でも申請できます。)
▼労災保険の種類によって、「療養(補償)給付」、「休業(補償)給付」、「葬祭料(葬祭給付)」、「介護(補償)給付」は2年、「障害(補償)給付」、「遺族(補償)給付」は5年の消滅時効があります。
(3)社会保険(健康保険・厚生年金保険)
▼「健康保険」は、労働者やその家族がけがや病気をしたときのための保険制度です。医療を受けるときに利用する保険証はこの制度によって交付されています。
▼「厚生年金保険」とは、労働者が高齢になったときや障害・死亡時などに受け取ることができる年金の保険制度です。
▼健康保険と厚生年金保険をまとめて「社会保険」といい、保険料は労働者と会社が1/2ずつ負担します。
▼社会保険への加入義務等がある会社のことを「適用事業所」と呼び、適用事業所には2種類あります。
【適用事業所の区分】
① 強制適用事業所・・・社会保険の加入が義務づけられている 事業所 a.全ての法人事業所
b.常時5人以上の労働者を使用する個人事業所
※5人以上の個人事業所であっても、サービス業の一部(クリーニング業、飲食店、ビル清掃業等)、農林漁業などの事業所は除かれます。
② 任意適用事業所・・・加入義務はないが、次の条件を満たせば加入ができる事業所
a.従業員の半数以上が健康保険と厚生年金保険の適用事業所になることに同意していること b.上記の同意後、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けること
▼勤務先の事業所が適用事業所であれば、そこで常時使用される労働者は社会保険に加入し、被保険者とな
ります。
▼適用事業所で働く 70 歳未満の者は、原則として厚生年金保険と健康保険の両方に加入、70 歳以上 75 歳未満の者は、原則として健康保険のみ加入しなければなりません。
▼パートタイム労働者や雇用期間の短い労働者の加入要件は次のとおりです。
社会保険の加入対象となるパートタイム労働者(次の1または2を満たす者)
2:「5要件」:次の①~⑤を満たすこと
1:「4分の3基準」:1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が通常の労働者の3/4以上
① 週の所定労働時間が 20 時間以上 込まれること
② 雇用期間が継続して2か月以上見
③ 月額賃金8万8千円以上
⑤ 被保険者数が 101 人以上
➃ 学生でないこと
⑥ 被保険者数が 100 人以下の場合、社会保険への加入について
( ※国・地方公共団体は 100 人以下も、上記①~➃の要件を満たせば対象となる。)
労使合意による申出がなされている
雇用期間の短い労働者の社会保険加入
契約期間が2か月以内の労働者は、その期間を超えて引き続き雇用すれば、引き続いた日から
対象となる。
(4)いわゆる「年収の壁」
▼パートなどの労働者の年収がある一定金額を超えると、税金や社会保険料の負担が増えて手取りが減少することがあります。これらは「年収の壁」と言われており、金額の目安は次のとおりとなります。
①100 万円:超えると住民税が課税される。(居住の市町村によって多少金額が異なります)
②103 万円:超えると所得税が課税される。学生などで扶養家族になっている方は扶養者の税制上の扶養か
ら外れ税金が増えることもある。
③106 万円:超えると前頁の「社会保険の加入対象となるパートタイム労働者」の2の要件を満たす者は社会保険料の納付が必要となる。
➃130 万円:超えると配偶者や親などの社会保険の扶養から外れ、社会保険料の納付が必要となる。学生は自分でバイト先か国の健康保険の加入が必要となる。なお、この金額は副業、兼業も含めた年収で判断される。
⑤150 万円:超えると扶養者の配偶者特別控除が満額(38 万円)から段階的に減額される。
年収の壁・支援強化パッケージ
(令和5年9月 27 日 厚生労働省発表)
人手不足への対応が急務となる中、厚生労働省では当面の対応として、令和5年 10 月から以下の施策(支援強化パッケージ)を進め、パートタイム労働者などが「年収の壁」を意識せず働くことのできる環境づくりを後押しするとともに、さらに、制度の見直しに取り組むこととなりました。
○ 106 万円の壁への対応
①キャリアアップ助成金
労働者が社会保険に加入することで手取り収入を減らさない取組(例:保険料負担軽減のための手当(社会
保険適用促進手当)支給)を実施した企業に対し、労働者1人あたり最大 50 万円の支援
②社会保険適用促進手当
社会保険適用にあたって新たに発生した本人負担の保険料相当額を上限として、被保険者の標準報酬算定
に考慮しない。つまり、社会保険適用促進手当は社会保険料の算定対象外となる。
○ 130 万円の壁への対応
③事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
労働時間延長等に伴い一時的に年収が 130 万円以上となる場合には、一時的な収入変動である旨の事業主の証明添付で、引き続き被扶養者認定を可能とする仕組みづくり
○ 配偶者手当への対応
➃企業の配偶者手当の見直し促進見直し手順等を作成・公表予定
※今後の制度見直し等の詳細については厚生労働省HPでご確認ください。
(「年収の壁・支援強化パッケージ 厚生労働省」で検索)
10 育児・介護休業、子の看護休暇、介護休暇
★会社は、男性・女性を問わず、労働者から育児休業・介護休業の申出を受けた場合、原則、会社は断ることができない
★会社には、育児・介護にかかる休業や休暇のほか、労働者の育児・介護の状況によって 、就業場所の変更に際してなど、「仕事と家庭の両立」ができるように配慮しなければならない。
(1)育児休業・介護休業
▼労働者から申出があった場合、会社は男性・女性を問わず、育児休業・介護休業を取らせなければなり ません。 [育介法5~16 条]
▼本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して事業主から個別に育児休業制度等の周知及び休業の取得意向の確認を行うことが義務づけられています。[育介法 21 条]
▼パートタイム労働者などの有期雇用労働者も、それぞれの条件を満たす場合は取得できます。
▼休業中の賃金については法律の定めがないため、有給か無給かは会社の就業規則の定めによります。ただし、一定の条件を満たす場合は、雇用保険から育児休業給付金や介護休業給付金が支払われます。
出生時育児休業 | 育 児 休 業 | 介 護 休 業 | |
内 容 | ・育児休業とは別に、男性は、子の出生後8週間以内に、 (産後パパ育休)を4週間まで取得できます。2回に分割して取得することが可能で す。[ 育介法9条の2] | ・原則として子が1歳になるまでの連続する期間(子1人 につき原則として分割して 2回) | ・対象家族1人につき、通算 93 日まで (3回まで分割可能) |
対象者 | ・日雇いを除く労働者 ※ 有期雇用労働者の場合は次の条件を満たす者 ・子の出生の日または出産予定 日のいずれか遅い日から起算して8週間を経過する日 の翌日から6か月を経過す る日までに労働契約の期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと | ・日雇いを除く労働者 ※有期雇用労働者の場合は次の条件を満たす者 ・子が1歳6か月(2歳までの 延長を申し出る場合は2歳)に達する日までに労働契約 の期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと | ・日雇いを除く労働者 ※有期雇用労働者の場合は次の条件を満たす者 ・取得開始予定日から起算し て 93 日を経過する日から6か月を経過する日までに労 働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと |
育児休業・介護休業
(2)子の看護休暇、介護休暇
▼子の看護休暇は、小学校入学前までの子の病気の世話や予防接種・健康診断を受けさせるときに取得できます。
また、介護休暇は、要介護状態の家族の介護その他の世話に利用できる休暇です。 [育介法 16 条の2、 16 条の5]
▼取得可能日数は、子の看護休暇は対象となる子が1人の場合は年5日まで、2人以上の場合は年 10 日までで、半日単位、時間単位での取得もできます。
介護休暇は、要介護状態にある家族が1人のときは年5日まで、2人以上のときは年 10 日まで取得でき
ます。半日単位、時間単位でも取得できます。
[育介法 16 条の2、16 条の5]
(3)男性の育児休業
▼男女とも仕事と育児を両立できるように、産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)の創設や雇用環境整備、個別周知・意向確認の措置が義務化されています。
【雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務】育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
育児休業と産後パパ育休の申し出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じなければなりません。※複数の措置を講じることが望ましいです。
① 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
② 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
➃ 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
【妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置】
本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する事の周知と休業の取得意向の確認を、個別に行わなければなりません。
※取得を控えさせるような形での個別周知と意向確認は認められません。
▼令和 5 年 4 月 1 日から常時雇用する労働者が 1,000 人を超える企業は、男性労働者の育児休業取得率等の公表が義務づけられました。[育介法 22 条の 2]
(4)その他の措置
▼育児・介護については、育児・介護休業法により、そのほかにもさまざまな対策が取られています。
(例)○ 短時間勤務・労働時間の短縮 ○ 時間外労働・深夜労働の制限 ○ 所定外労働の免除
○ 勤務地の変更・異動の際の配慮 ○ 解雇・降格など不利益な取扱いの禁止
11 男女雇用機会均等・母性保護
★男女雇用機会均等、母性保護に関する規定は、パートタイム労働者などにも適用される
(1)性別による差別の禁止
▼次の事項について、性別を理由に差別することが禁止されています。 [均等法5条・6条]
○ 募集・採用 ○ 配置・昇進・降格・教育訓練 ○ 一定の福利厚生
○ 職種・雇用形態の変更 ○ 退職の勧奨・定年・解雇 ○ 労働契約の更新
(2)母性保護
▼妊娠・出産後等の女性労働者(パートタイム労働者なども含む)に関して、労基法、均等法には、母性保護のための様々な規定があります。
母性保護に関する規定
②労働時間に関する制限
③産前産後の休業
①坑内業務・危険有害業務への就業制限:危険な場所や有害な作業への従事制限[労基法 64 条の2・3]
➃育児時間の付与
:時間外・休日・深夜労働等について請求があった場合[労基法 66 条]
:原則、産前6週間・産後8週間の就業禁止[労基法 65 条]
※ 産前休業は本人の請求が必要。産後は、最初の6週間は就業禁止。その後の2週間は、医師が認めた業務への就業は可能
:生後1年未満の場合、通常の休憩以外に1日に2回、それぞれ 30 分
⑤通院時間確保・勤務時間変更等:保健指導や健康診査を受診するための時間の確保や医師等から指導を受
けた場合は、その女性労働者が、その指導を守ることができるようにするため、勤務時間の変更や勤務の軽減等の措置[均等法 12 条・13 条]
女性労働者に関する規定
①坑内業務・危険有害業務への就業制限:危険な場所や有害な業務への就業制限[労基法 64 条の2・3]
以上の育児に必要な時間を請求可能[労基法 67 条]
②生理日の就業制限
:生理日の就業が著しく困難な女性の請求により就業制限[労基法 68 条]
12 職場におけるハラスメント防止対策
職場におけるパワーハラスメント
★会社にパワーハラスメントの防止措置が義務づけられている
★パワーハラスメントによる労使紛争が、労働局長による紛争解決援助、紛争調停委員会による調停(行政ADR)の対象とされている
(1)パワハラ防止のための雇用管理上の措置
▼職場における上司や同僚などからのいじめ•嫌がらせなどのパワーハラスメントについて、セクハラや妊
娠•出産•育児休業等に関するハラスメントと同様に会社には防止対策を講じることが義務づけられています。[労働施策総合推進法 30 条の2第1項]
▼会社は、①会社によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知•啓発、②苦情などに対する相談体制の整
備、③被害を受けた労働者へのケアや再発防止などの措置をしなければなりません。
▼会社が、適切な措置を講じていない場合は是正措置の対象となります。
パワハラの定義(3要素)
以下の①~③を全て満たす行為
① 優越的な関係を背景とした言動
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
③ 労働者の就業環境が害されるもの
※なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務の指示•指導はパワハラに該当しない。
▼パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合は、労働局に調停など個別紛争解決援助の申し出ができます。
パワハラの類型例
① 身体的な攻撃
③ 人間関係からの切り離し : 隔離•仲間外し•無視
② 精神的な攻撃
: 暴行•傷害
: 脅迫•名誉棄損•侮辱•ひどい暴言
➃ 過大な要求
⑤ 過小な要求
: 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
: 業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる
⑥ 個の侵害
ことや仕事を与えないこと
(以上は、あくまで代表的な言動の類型を示したものです。)
: 私的なことに過度に立ち入ること
パワハラへの対応
① パワハラを行う者に対して拒絶•不快の意思を示す → 相手によってはパワハラをやめさせる効果がある
② 相談窓口や、信頼できる上司•同僚に相談する → 改善に向けた対応が期待できる
③ 労働局や県などの公的機関に相談する → 取るべき対応についてのアドバイスを受けられる
➃ パワハラの事実を記録する(メモ•録音など) → 後日、裁判になった場合などに備える
⑤ 暴力的なパワハラの場合は、まず身を守る → 場合によっては警察などに保護を求める
⑥ 心身のダメージを回復させる → 医療機関の診断を受け、休養•入院等の対応をとる
(2)会社(使用者)の責任
▼加害者は、不法行為責任(民法 709 条)を問われますが、会社は加害者の不法行為について使用者責任
(民法 715 条)が問われ、加害者とともに被害者に賠償責任を負うリスクがあります。
さらに、会社は、労働者に対して労働契約上の安全配慮義務を負うことから(労契法5条)、職場のハラスメントの防止や雇用管理上講ずべき措置の義務を怠った場合には債務不履行責任(民法 415 条)を問われ、損害賠償責任を負うリスクがあります。
職場におけるセクシュアルハラスメント
(1)セクシュアルハラスメント(セクハラ)の防止
▼『セクハラ』とは、「職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応によって、その労働者が労働条件などの面で不利益を受けたり、性的な言動によってその労働者の就業環境が害されること」をいいます。〔均等法 11 条〕
▼会社には『セクハラ』を防止するために必要な措置をとることが義務づけられています。[均等法 11 条、 11 条の2]
セクハラとなりうる典型例
〇 性的な冗談やからかい
〇 食事やデートなどへの執拗な誘い
〇 性的な事実関係を尋ねること
〇 身体への不必要な接触 など
〇 性的関係の強要
〇 性的な噂を意図的に流すこと
〇 わいせつな図画の配布•掲示
職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
(1)婚姻・妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止
▼女性労働者に対して婚姻•妊娠•出産したことなどを理由に、解雇その他不利益な取扱いをすることは禁止されています。[均等法9条]
▼婚姻、妊娠•出産、育児休業の取得等を理由として、解雇や上司•同僚からの嫌がらせ、不利益な取り扱いをすることを職場における妊娠•出産•育児休業等に関するハラスメントといい、一般に「マタニティ
ハラスメント(マタハラ)」といいます。また、男性労働者については一般に「パタニティハラスメント
(パタハラ)」といいます。
▼業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものはハラスメ
ントに該当しないとされています。
▼会社には、「マタハラ」を防止するために必要な措置を取ることが義務づけられています。[均等法 11 条、 11 条の2、11 条の3、11 条の4]
(2)育児休業、介護休業等の利用を理由とする不利益取扱いの禁止
▼男性•女性労働者に対して育児休業、介護休業その他の子の養育または家族の介護に関する制度の利用に関して、申出や取得したことなどを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをすることは禁止されています。
[育介法 10 条、16 条]
不利益取扱いとなる事例
○ 解雇
○ 降格
○ 契約の不更新(雇止め) ○ 就業環境を害すること(嫌がらせ)
○ 退職強要
○ 更新回数の引き下げ
○ 不利益な昇進•昇格の人事査定
○ 不利益な配置転換 ○ 減給•不利益な賞与算定 ○ 派遣先による当該派遣労働者の受け入れ拒否
(厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし」より)
○ 労働契約内容の変更の強要 ○ 不利益な自宅待機を命じること
各ハラスメント共通
職場におけるパワハラ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止するために講ずべき措置
事業主の方針の明確化とその周知•啓発 | •ハラスメントの内容や行ってはならない旨の方針を明確化し、管理 監督者を含む労働者に周知•啓発する •ハラスメント行為者は厳正に対処する旨の方針•対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知•啓発する |
相談(苦情を含む)に応じ、 適切に対応するために必要な体制の整備 | •相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する •相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにする とともに、発生のおそれがある場合や、ハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に応じる |
事後の迅速かつ適切な対応 | •事実関係を迅速かつ正確に確認し、速やかに被害者に対する配慮の ための措置及び行為者に対する措置を適正に行う •再発防止に向けた措置を講ずる |
妊娠•出産•育児休業等に関 するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するため の措置 | •業務体制の整備など、会社や妊娠等した労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講ずる |
併せて講ずべき措置 | •相談者•行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講 じ、労働者に周知する •事業主に相談したこと、事実関係の確認に協力したこと、労働局の援助制度を利用したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱 いをされない旨を定め、労働者に周知•啓発する |
その他のハラスメント
(1)カスタマーハラスメント
顧客等からのクレーム•言動のうち、当該クレーム•言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段•態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段•態様により、労働者の就業環境が害されるもの
会社が他の会社の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)に関し行うことが望ましい取組
▼会社は、取引先等の他の事業主が雇用する労働者または他の事業主(その者が法人である場合にあっては 、
その役員)からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、カスタマーハラスメントを想定した事前の準備、実際に起こった際の対応として、以下の取組を実施するとよいでしょう。
カスタマーハラスメントを想定した事前の準備
① 事業主の基本方針•基本姿勢の明確化と労働者への周知•啓発
② 労働者(被害者)のための相談対応体制の整備と、労働者への周知
③ 対応方法、手順等をあらかじめ策定
➃ 社内対応ルールの労働者への教育•研修
カスタマーハラスメントが実際に起こった際の対応
⑤ 事実関係の正確な確認と事案への対応
⑥ 労働者への配慮の措置(一人で対応させず組織的に対応する。メンタルヘルス不調への対応等)
⑦ 再発防止のため、定期的な取組の見直しや改善と、継続的な取組
⑧ 相談者のプライバシー保護や相談したこと等を理由とする不利益取扱いを行わないこと、及び周知
(2)就活等ハラスメント
雇用する労働者以外の、取引先等の他の事業主が雇用する労働者、就職活動中の学生等の求職者、労働者以外の個人事業主などのフリーランス、インターンシップ中の者、教育実習生等に対するハラスメント
会社が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動(就活等ハラスメント)に関し行うことが望ましい取組
▼会社は、自社が雇用する労働者が、他の労働者(他の会社が雇用する労働者及び求職者を含む。)に対する言動のみならず、労働者以外の者に対する言動についても、その雇用する労働者が注意を払うよう配慮するとともに、事業主自身や労働者もその言動に注意を払うよう努めることが望ましいとされています。
▼望ましい取組
① 雇用管理上の措置として職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化等を行う際に、これらの者に対する言動についても同様の方針を示すこと。
② これらの者から職場におけるハラスメントに類すると考えられる相談があった場合に、その内容を踏まえて、他のハラスメントの雇用管理上の措置を参考にしつつ、必要に応じて適切な対応を行うように努めること。
13 退 職
★無期雇用労働者は、2週間前までに申し出ればいつでも退職できる
★有期雇用労働者は、やむを得ない事情がない限り、契約期間途中の退職はできない
▼一般に、労働者の一方的な意思で辞める場合を『自己都合退職』、会社に原因がある場合を『会社都合退職』、使用者と労働者の合意によって辞める場合を『合意退職』といいます。
▼自己都合や合意により退職する場合、仕事の引継ぎ期間などを会社と十分に話し合って時期を決めることが望ましいです。
▼労働者が就業のために住居を変更していた場合、労働条件の違いにより契約解除し、14 日以内に帰郷するときは、会社は必要な旅費を負担しなければなりません。 [労基法 15 条]
▼自らの意思で会社を退職する場合、下記の(1)、(2)のとおり無期労働契約の労働者(無期雇用労働者)か有期労働契約の労働者(有期雇用労働者)かによって違いがあります。
(1)無期労働契約の労働者(無期雇用労働者)の退職
▼退職したい日の2週間前までに申し出ることでいつでも退職することができます。 [民法 627 条]
▼就業規則に「1か月前までに申し出ること」などの規定がある場合には、それに従う方がトラブルを避けることができます。
▼就業規則の規定が「半年前に申し出ること」などと極端に長い場合は、労働者の退職の自由を制限することになり、その規定は無効になることがあります。
会社が退職を認めてくれない場合
退職する場合は、労働者と会社がお互いに納得した円満退職が望ましいのですが、人手不足などの理
由で会社が退職を認めない場合があります。後々のトラブルを避けるためにも十分に話し合う必要があ
りますが、どうしても折り合いがつかないこともあります。この場合でも労働者(無期契約労働者)には退職の自由があるので、退職届を提出すれば2週間後に退職できます。会社が退職届を受け取らない場合は内容証明郵便で郵送する方法があります。
(2)有期労働契約の労働者(有期雇用労働者)の退職
▼長期療養が必要な病気など、やむを得ない事情がない限り契約期間の途中で自由に退職できないのが原則です。 [民法 628 条]
▼1年間を超える有期労働契約(一定の事業の完了を契約期間と定める場合や、専門的知識等を有する労働者及び 60 歳以上の労働者を除く)については、契約期間の初日から1年を経過すれば、民法 627 条の
規定により労働者は会社に申し出ることで、いつでも退職することができます。 [労基法附則 137 条]
▼採用のときに明示された労働条件が事実と異なっていた場合は、ただちに契約を解除できます。
[労基法 15 条]
14 解雇・雇止め
★客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は無効となる
★有期労働契約でも、一定の場合は、会社は契約更新を断れない
(1)解雇の種類
▼会社の一方的な意思表示により労働者を辞めさせることを『解雇』といいます。
▼解雇には、次の3つの種類があります。
① 普通解雇•••労働契約を継続していくことが困難な事情(例:能力的な問題、健康上の理由など)があり、やむを得ず行う解雇であって、整理•懲戒解雇に該当しないもの。
② 整理解雇•••経営の悪化により、人員整理のために行う解雇。
③ 懲戒解雇•••労働者が服務規律に違反した場合や著しい非行(例:長期間の無断欠勤、刑法上の犯罪行為など)があった場合に懲戒処分の1つとして行われる解雇。
整理解雇に必要な4つの要件
① 人員削減に十分な必要性がある。
企業の維持•存続を図るために、整理解雇が必要かつ最も有効な方法であること
② 解雇を回避する努力を十分尽くした。
新規採用の中止、希望退職者の募集、一時帰休の実施、関連企業への出向など企業が解雇回避のため
努力したこと
③ 解雇対象者の選び方が公正•妥当である。
整理解雇の対象を決める基準が合理的かつ公平で、その運用も合理的であること
➃ 説明•協議手続を尽くしている。
解雇の必要性や規模•方法•整理基準などについて十分説明をし、労働者に納得してもらう努力をしたこと
整理解雇を行う場合、以下の要件が必要となります。
(2)解雇の理由
▼会社が労働者を解雇するためには、客観的に合理的な理由と社会通念上相当と認められることが必要です。そのような理由のない解雇は解雇権の濫用として無効となります。[労契法 16 条]
▼また、解雇の事由については、あらかじめ就業規則に定めておき、労働契約を結ぶときには、労働条件を明示した書面にも記載しておく必要があります。
「合理的な理由」の判断基準
たとえば、仕事上のミス、遅刻など、労働者の能力不足や勤務態度を理由として解雇する場合、一概
に回数だけで判断するのではなく、業務に支障をきたす影響の程度、職場秩序に与える影響、教育•研修による本人の改善見込み、前後の勤務状況などを考えて総合的に判断することになります。
会社から「来なくてもよい、辞めてもらえないか」と言われた場合
会社が労働者に退職を勧めることを「退職勧奨(かんしょう)」といい、これに応じた場合は解雇では
なく退職として扱われます。単に「来なくてもよい、辞めてもらいたい」と言われただけでは、解雇なのか退職勧奨なのか分からないことがあるので、必ず真意を会社に確認しましょう。労働者にとっては、解雇か退職かで雇用保険の支給金額や給付制限期間が変わります。(※)また、退職勧奨に応じるかどうかは労働者の自由です。すぐに返答せず、また、辞める気がない場合ははっきりと断ることが大切です。
※ 失業給付がもらえない期間
最初にハローワークに離職票の提出と求職の申し込みを行なった日(受給資格決定日)から、失業状態の日が通算して 7 日間は失業給付は支給されません(これを待期といいます)。
正当な理由がなく自己の都合で退職した人や自己の責任による重大な理由で解雇された人は、
7日間の待期後、さらに原則として2か月間(5年間のうち2回まで。それを超える場合、3か月間)は失業給付が支給されません(これを給付制限といいます)。給付が始まる時期は給付制限期間の終了後となります。
(3)解雇の制限(禁止)
▼さまざまな法律により、解雇が禁止されています。
法律で禁止されている解雇の例
① 仕事上のけが•病気の療養期間や産前産後休業期間と、その後 30 日以内の解雇 [労基法 19 条]
② 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇 [労基法3条]
③ 結婚•妊娠•出産や、育児•介護休業等の取得などを理由とした解雇 [均等法9条、育介法 10 条ほか]
➃ 会社の法令違反を労働基準監督署などに申告したことを理由とする解雇 [労基法 104 条]
⑤ 労働組合に加入していること、加入しようとしたこと等を理由とする解雇 [労組法7条]
⑥ 個別労働紛争の援助を求めたことなどを理由とする解雇 [個別労働関係紛争解決促進法4条]
⑦ セクハラ、マタハラ、パワハラ等の相談を行ったことや、雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことなどを理由とする解雇(均等法 11 条、労働施策総合推進法 30 条の 2)
(4)解雇予告と解雇予告手当
▼解雇することに十分な理由がある場合でも、解雇予告や手当の支払いなどの手続きが必要です。ただし、
天災事変や、労働者側に即時解雇されてもやむを得ない事情がある場合は、労働基準監督署長の認定を受けて予告なしに解雇ができます。 [労基法 20 条、施行規則7条]
▼14 日を超えない試用期間中や1か月を超えない日雇い労働者などの短期の契約で雇われる労働者は、原則、予告なしに解雇できます。 [労基法 21 条]
解雇予告
30 日以上前に労働者に予告しなければならない(口頭でもよいが後日のために書面で交付が望ましい)
解雇予告手当
解雇予告なしに即日解雇する場合は、平均賃金の 30 日分以上の解雇予告手当を払わなければならない解雇日までの日数が 30 日未満の場合は、不足する日数分の解雇予告手当を払わなければならない
(5)有期労働契約の労働者(有期契約労働者)の解雇と雇止め
▼会社は、原則として、契約期間の途中で有期労働契約の労働者を解雇することができません。 [労契法 17条](「有期雇用契約の契約期間とルール」の項を参照)
▼有期労働契約の契約期間が満了するとき、会社がその更新を拒否することを『雇止め』といいます。有期労
働契約の場合、契約期間満了による契約終了が原則ですが、次の場合には雇止めが認められず、会社はそれまでと同じ条件で契約更新するか、契約を終了する場合は、解雇と同様に解雇予告などの手続きを取らなければなりません。
「雇止め」が認められない場合 [労契法 19 条]
認められる場合
•労働者が「今回も契約更新されるだろう」と期待することに合理的な理由があると認められる場合
•上記の2つのうち、いずれかに該当する場合に会社が雇い止めすることが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、雇い止めが認められない。従前と同一の労働条件で有期労働契約が更新される。
•これまで契約更新を繰り返していて、その雇い止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同じであると
(6)労働者が辞めた後に会社が行う手続き
▼退職証明書の交付
退職•解雇に関わりなく、辞めた労働者から請求があった場合に、会社は使用期間、業務の種類、地位、退職の事由(解雇の場合はその理由)について証明書を遅滞なく交付しなければなりません。なお、証明書には労働者の請求しない事項は記入してはいけません。 [労基法 22 条]
▼退職時等の賃金支給、その他金品の返還
辞めた労働者から請求があった場合には、会社は『7日以内』に賃金を支払い、積立金•貯蓄金等労働者の権利に属するものはすべて返還しなければなりません。 [労基法 23 条]
▼退職金の支給
退職金の支給について法的な定めはありませんが、労働契約や会社の就業規則に定めをしている場合、あるいは定着した支給慣行がある場合には、会社はそれに従って退職金を支給しなければなりません。
退職金の支給時期を定めていない場合は、労働者から請求のあった日から7日以内に支給しなければなりません。
▼雇用保険被保険者離職証明書の提出
会社は、「雇用保険被保険者資格喪失届」に「雇用保険被保険者離職証明書」を添えて、労働者が辞めた日の翌日から起算して 10 日以内にハローワークに提出しなければなりません。[雇用保険法施行規則7条]会社は、ハローワークから離職証明書を受け取ったら、すみやかに離職した労働者に離職票を渡さなければなりません。
15 高年齢者雇用・障がい者雇用
★会社は 65 歳までの安定した雇用を確保するための措置を講じなければならない
★会社は 70 歳までの就業を確保するための措置を講じるように努めなければならない
★会社は法定雇用率以上の障がい者を雇用しなければならない
(1)高年齢者の雇用確保
▼会社は定年を定めるときは、60 歳以上の定年を定めなければなりません。 [高年法8条]
▼65 歳未満の定年を設けている会社は、高年齢者の 65 歳までの安定した雇用を確保するため、次のいずれ
かの措置を講じなければなりません。 [高年法9条]
【雇用確保措置】
① 65 歳までの定年の引き上げ ② 65 歳までの継続雇用制度の導入 ③ 定年の廃止
▼会社は、上記の「継続雇用制度」を導入する場合、希望者全員を制度の対象としなければなりません。ただし、法改正の際に設けられた経過措置により、改正法施行前(2013年3月 31 日)までに労使協定により対象者の基準を設けていた場合は、年金の報酬比例部分の支給開始年齢に達した者について、2025 年
3月 31 日までの間、引き続き基準を利用することができます。
【経過措置】 •2013年4月1日 ~ 2016年3月 31 日 ⇒ 61 歳以上の者
•2016年4月1日 ~ 2019年3月 31 日 ⇒ 62 歳以上の者
•2019年4月1日 ~ 2022年3月 31 日 ⇒ 63 歳以上の者
•2022年4月1日 ~ 2025年3月 31 日 ⇒ 64 歳以上の者
▼「継続雇用制度」を導入する場合、特例として、定年前に雇用していた企業以外の一定のグループ企業で
雇用する場合でも、法が求める雇用確保措置を講じているものと認められます。 [高年法9条]
▼65 歳以上 70 歳未満の定年を定めている会社及び 65 歳までの継続雇用制度を導入している会社は、令和
3年4月1日から高年齢者の 70 歳までの就業確保のため、次のいずれかの措置を講ずることが努力義務
となりました。 [高年法 10 条の2]
【就業確保措置】
① 70 歳までの定年の引き上げ、②70 歳までの継続雇用の制度の導入、③ 定年制の廃止、➃ 70 歳まで
継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、⑤ 70 歳まで継続的に会社が実施する社会貢献事業または会社が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入
※ ➃⑤は過半数労働組合等の同意を得ること。
(2)障がい者の雇用
▼会社は、その雇用する労働者に占める身体障がい者•知的障がい者•精神障がい者の割合が一定率(法定雇用率)以上になるようにしなければなりません。 [障害者雇用法 43 条]
【法定雇用率】(現行)
•民間企業 ⇒ 2.3 % •国、地方公共団体等 ⇒ 2. 6 % •都道府県等の教育委員会 ⇒ 2. 5 %
(2024.4.1 ~)※2024年4月1日から段階的に引上げられます。
•民間企業 ⇒ 2.5 % •国、地方公共団体等 ⇒ 2. 8 % •都道府県等の教育委員会 ⇒ 2. 7 %
▼会社は、労働者の募集•採用について、障がい者に対して、障がい者でない者と均等な機会を与えなければ
なりません。また、賃金の決定、教育訓練、福利厚生施設の利用その他の待遇について、障がい者でない者と不当な差別的取扱いをしてはなりません。 [障害者雇用法 34•35 条]
▼会社は、職場で働くにあたって、原則として、障がい者が障がい者でない者と均等な機会を得るのに支障と
なっている事情を改善するための措置を講じなければなりません。これを『合理的配慮の提供義務』といいます。 [障害者雇用法 36 条の2~36 条の4]
16 労働組合
★個人で会社と交渉することが困難な問題でも、労働組合が間に入って交渉できる場合がある
★パートタイム労働者だけで結成することもできるほか、1人でも加入できる労働組合もある
(1)労働組合について
▼「労働組合」は、憲法 28 条で保障された『労働三権』に基づいて、賃金などの労働条件の維持•改善することなどを目的として結成される団体です。[労組法2条]
▼会社が労働組合への加入や活動を制限することは、『不当労働行為』として禁止されています。 [労組法
7条]
▼賃金のほかにも、ハラスメントなどの人間関係、労働環境などの問題が起きたときは、まず加入している労働組合に相談して、会社側との話し合いを進める方法もあります。
(1)組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止
イ 労働者が、労働組合の組合員であること、労働組合に加入しようとしたこと、労働組合を結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたことを理由に、労働者を解雇したり、その他の不利益な取扱いをすること
ロ 労働者が労働組合に加入しないことや、労働組合から脱退することを雇用条件とすること(いわゆる黄犬契約)
(2)正当な理由のない団体交渉の拒否の禁止
使用者が、雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを、正当な理由なく拒むこと
※使用者が形式的に団体交渉に応じても、実質的に誠実な交渉を行わないこと(「不誠実団交」)もこれに含まれます
(3)労働組合の運営等に対する支配介入及び経費援助の禁止
イ 労働者が労働組合を結成し、又は運営することを支配し、又はこれに介入することロ 労働組合の運営のための経費の支払いにつき経理上の援助を与えること
(4)労働委員会への申立て等を理由とする不利益取扱いの禁止
労働者が労働委員会に対し、不当労働行為の申立てをし、若しくは中央労働委員会に対し再審査の申立てをしたこと、又は労働委員会がこれらの申立てに関し調査若しくは審問をし、若しくは労働争議の
調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言したことを理由として労働者を解雇し、その他の不利益な取扱いをすること
不当労働行為として禁止される行為 [労組法7条]
(2)労働組合への加入
▼労働組合は、会社ごとに作られる「企業別組合」が一般的ですが、会社の枠をこえて一定の地域などで作られる「合同労組」もあります。会社に労働組合がない場合でも、合同労組には1人でも加入することにより、会社と団体交渉を行うことができます。
いろいろな相談窓口(相談はすべて無料)
■ 年金・健康保険 ● 日本年金機構年金事務所 (大分)097-552-1211 (別府)0977-22-5111 厚生年金•健康保険の加入• (日田)0973-22-6174 (佐伯)0972-22-1970 脱退や保険料納付など ● 全国健康保険協会大分支部 097-573-5630 健康保険の給付•任意継続など ※ 国民年金に関することは、各市町村の窓口にお問い合わせください。 |
■ 外国人総合相談 仕事や普段の生活で困ったこと、心配なこと、わからないこと ● 大分県外国人総合相談センター 097-529-7119 【相談日】月曜日~土曜日(祝日、iichiko 総合文化センター休館日及び年末年始を除く) 10:00~17:00 大分市高砂町 2 番 33 号 iichiko 総合文化センター地下 1 階 【対応言語】日本語、英語、中国語、韓国語、ベトナム語、インドネシア語、ネパール語、タイ語など 20 言語 |
■ こころとからだの相談 こころの健康の不安、心配やお困りごと ● 大分県こころとからだの相談支援センター 予約•相談電話 097- 541- 6290 【相談日】 月曜日~金曜日(祝日除く) (受付)9:00 ~ 16:00(12:00 ~ 13:00 除く) |
■ 弁護士相談 ● 法テラス大分 050-3383-5520 月曜日~金曜日 9:00~21:00、土曜日 9:00~17:00 ※ 要事前予約 ● 九州労働弁護団 労働相談ホットライン 097-536-1221 水曜日 13:30~15:30 |
■ ジョブカフェおおいた 就職に関する総合相談(学生から概ね 49 歳以下の方対象)※要電話予約 就職相談•就職力バランス診断•企業情報•求人情報の提供•就職支援セミナー•就職後のフォロー ● ジョブカフェおおいた本センター 097-533-8878 大分市中央町 3-6-11 (ガレリア竹町)別府サテライト 0977-27-5988 別府市中央町 7-8(別府商工会議所 2 階) 中津サテライト 0979-22-1207 中津市殿町 1383-1(中津商工会議所内) 日田サテライト 0973-23-6898 日田市三本松 2-2-16 (日田商工会議所 1 階) 佐伯サテライト 0972-23-8730 佐伯市内町 1-7(仲町商店街 2 丁目) 【開所時間】本センター 月曜日~土曜日(祝日・年末年始の休暇を除く) 9:30~18:00 サテライト 月曜日~金曜日(祝日・年末年始の休暇を除く) 8:30~17:30 ※別府のみ 8:30~17:15 |
■ その他の相談窓口 ● 大分県労働委員会事務局 097-536-3650 労働組合と会社間の紛争や個別あっせん 【相談受付】 月曜日~金曜日(祝日除く) 9:00~17:00 〔労働組合〕 ● 連合大分 0120-154-052 月曜日~金曜日(祝日除く) 9:00~17:30 ● 大分ふれあいユニオン 097-551-7554 月曜日~金曜日(祝日除く) 10:00~18:00 ● 大分県労連 0120-378-060 月曜日~金曜日(祝日除く) 10:00~18:00 ● 自治労全国一般大分地方労働組合 097-513-2338 |
労働相談 働くことで悩んだらまず相談!
■ 大分県庁の相談窓口【大分県労政・相談情報センター】
フリーダイヤル 0120-601-540 スマホ・携帯から 097-532-3040
相談無料•秘密厳守
電話相談・来所相談
どちらでもよいです
相談日 月曜日~金曜日(祝日、年末年始の休暇を除く) 8:30~17:15 場 所 大分市大手町3丁目1番1号 大分県庁本館7階 雇用労働政策課内
大分県労政・相談情報センターは会社に対する指導や監督をする機関ではなく、 働く方々と会社との関係を安定させるための助言をする大分県が設置する機関です。
ご相談は、電話または来所によるものとしていますが、上記時間中にご相談
ができない場合は、メールによる相談をお受けします。<メール相談入力フォーム>
上記の通常相談や県内各地での弁護士や労働基準監督官、また県職員による相談会も開催しています。
<大分県 HP「おおいたの労働」労働相談のページ>
■ 国の相談窓口 会社に対し指導、助言等を行うことができる機関
[総合的な相談] ● 大分労働局 総合労働相談コーナー 097-536-0110
● 労働条件相談ほっとライン 0120-811-610
月曜日~金曜日 17:00~22:00 土日祝 9:00~21:00
[賃金・解雇・年休・残業など総合的な相談]
● 労働基準監督署 総合労働相談コーナー
(大分)097-535-1512 (中津)0979-22-2720 (日田)0973-22-6191
(佐伯)0972-22-3421 (豊後大野)0974-22-0153
[セクハラ・パワハラ、育児・介護関連などの相談]
● 大分労働局 雇用環境・均等室 097-532-4025
[派遣に関する相談]● 大分労働局 需給調整事業室 097-535-2095
[ハローワーク(職業紹介・失業給付などの相談)]
(大分)097-538-8609 (別府)0977-23-8609 (中津)0979-24-8609
(日田)0973-22-8609 (佐伯)0972-24-8609 (宇佐)0978-32-8609
(豊後大野)0974-22-8609
福岡市・大名に大分県の企業と学生が気軽に出会える空間『 dot. 』(ドット)を開設しています。
交流スペース、カフェスペースを設けており、県内企業等の情報発信や就職相談、各種イベント開催等に
発行 令和5年 11 月
大分県労政•相談情報センター大分市大手町 3 丁目 1 番 1 号 TEL 097-506-3353
(ドット.)
ご活用いただけます。ぜひご利用ください。
所在地:福岡市中央区大名 1-15-35 大名 247 ビル2階
お問い合わせ先: info@dot247.jp HP:https://dot247.jp/営業時間:火曜日~日曜日(盆•年末年始除く)11:00~20:00