令和元年9月10日発行(毎月1回10日発行)第747号 第66巻第9号 ISSN 0386-3042
令和元年9月10日発行(毎月1回10日発行)第747号 第66巻第9号 ISSN 0386-3042
商事仲裁・商事調停と商取引の実務・法務 2 0 1 9
座談会
9
◆ 3つの新仲裁規則の理論と実務
-商事仲裁規則・インタラクティヴ仲裁規則・UNCITRAL仲裁管理規則-
SEPTEMBER
英文契約によるリスクマネジメント入門〔Ⅱ〕
─ 秘密保持・売買・販売店等各契約の主要条項編 ─
英文契約には国内契約とは異なる固有の発想や考え方、 特有の表現などがあることから、作成にあたり戸惑われることも多々あろうかと思われます。本セミナーでは、国際取引契約に関する相談に多数応じておられるxxxx弁護士を講師にお招きし、レター・オブ・インテント、秘密保持契約、売買契約、販売店契約の主要条項を中心に、リスク管理の視点から常に意識しておくべき基本的なポイントを分かりやすくご解説頂き、英文契約書の読解と作成に関する基本的な知識を習得していただきます。また、質疑応答コーナーでは、参加者から受け付けた事前質問への回答も行います。
本セミナーは、本年7月22日(月)に開催された「英文契約によるリスクマネジメント入門〔Ⅰ〕-総論・一般条項編-」の続編にあたりますが、前回受講されていない方も参加可能ですので、多数の皆様の参加をお待ちしています。
<開催要領>────────────────────────────────────
・日 時 2019年9月17日(火)13:30-16:30(13:10開場)
・場 所 大阪産業創造館 5階 研修室A・B(大阪市中央区本町1-4-5)
・講 師 xx xx x(弁護士・ニューヨーク州弁護士、xx法律事務所・外国法共同事業パートナー)
・受講料 当協会会員・大阪商工会議所会員 ¥10,000
非会員 ¥15,000(各1名に付き、テキスト・資料代および消費税を含む)お申し込み後のキャンセルはできません。なお、代理出席は可能です。
・定 員 50名(先着順)
<講義内容>────────────────────────────────────
Ⅰ.レター・オブ・インテント
~法的拘束力の有無~
Ⅱ.秘密保持契約
~どちらがどれだけの情報を出すかによるカスタマイズ~
Ⅳ.販売店契約
1.総論 ~意識、目的、類似概念、要注意地域~
2.各論 ~60のチェックポイント~
質疑応答(事前質問への回答を含む)
Ⅲ.売買契約
~売主と買主の主張が対立する条項を中心に~
<講師略歴>──────────────────────────────────── xx xx(xxx xxxx) 弁護士・NY州弁護士、xx法律事務所・外国法共同事業 パートナー洛星高校(京都市)卒業、東京大学法学部卒業。93年弁護士登録(大阪弁護士会)、xx法律事務所・外国法共
同事業入所。98年コーネル大学ロースクール修了(LLM)、98年~99年ピルズベリー・ウィンスロップ・ショー・ピットマン法律事務所ニューヨーク及びシンガポール事務所 勤務、99年ニューヨーク州弁護士登録。
専門分野は、国内外の紛争処理、M&A、倒産処理、商取引など。国際仲裁事件の仲裁人および仲裁代理人としても活躍している。英文契約セミナーや仲裁セミナーにおいて講師を多数務めている。
<申込方法>────────────────────────────────────
当協会ホームページ(xxx.xxxx.xx.xx)より、お申し込みください。後ほど、受講票と請求書をお送りいたします。
お問合せ:一般社団法人 日本商事仲裁協会 大阪事務所 電話 00-0000-0000
目 次
Contents
9
は し が き 4
Ⅰ. は じ め に 5
Ⅱ. 商 事 仲 裁 規 則 と イ ン タ ラ ク テ ィ ヴ 仲 裁 規 則 に 共 通 す る 規 定 改 正 6
1.仲裁人候補者名簿(商事仲裁規則9条、インタラクティヴ仲裁規則9条) 6
(a)本条の趣旨 6
(b)当事者による仲裁人の選任 7
(c)仲裁人候補者データベースの充実化 8
(d)JCAAによる仲裁人の選任 10
2.仲裁人のxx・独立(商事仲裁規則24条、インタラクティヴ仲裁規則24条) 11
(a)本条の趣旨 12
(b)仲裁人候補者が開示すべき事実の範囲 12
(c)仲裁人候補者が行うべき合理的な調査の範囲 14
(d)仲裁人候補者が行うべき合理的な調査の時期 17
3.第三仲裁人の選任のための当事者選任仲裁人による当事者への意見聴取(商事仲裁規則 28条5項、インタラクティヴ仲裁規則28条5項) 17
(a)本項の趣旨 18
(b)本項の運用と国際仲裁における実務 18
4.仲裁人による補助者の利用(商事仲裁規則33条、インタラクティヴ仲裁規則33条) 23
(a)本条の趣旨 23
(b)仲裁xの決定に実質的な影響を与える作業 24
(c)補助者を利用できる仲裁人と仲裁人の補助者の選任 26
5. 時 機 に 後 れ た 主 張 及 び 証 拠 x x の 却 下 ( 商 事 仲 裁 規 則 41 条 、 イ ン タ ラ ク テ ィ ヴ 仲 裁 規 則 41 条 ) 28
(a)本条の趣旨 28
(b)手続指揮のあり方、運用、実務の工夫等 28
(c)どのような場合に「時機に後れた」と言えるか 29
6.少数意見の公表の禁止(商事仲裁規則63条、インタラクティヴ仲裁規則64条) 30
(a)本条の趣旨 30
(b)仲裁人間での望ましい合議のあり方 31
(c)少数意見の仲裁人が取り得る選択肢 33
7.迅速仲裁手続(商事仲裁規則第2編、インタラクティヴ仲裁規則第2編) 36
(a)本手続の趣旨 37
(b)迅速仲裁手続の実務運用 37
8.仲裁人報償金の減額等(商事仲裁規則96条、インタラクティヴ仲裁規則96条)……… 40
(a)本条の趣旨 41
(b)仲裁人の辞任の場合 41
9. 仲 裁 人 報 償 金 に 関 す る 変 更 の 合 意 ( 商 事 仲 裁 規 則 97 条 ・ 98 条 、 イ ン タ ラ ク テ ィ ヴ 仲 裁 規 則 97 条 ・ 98 条 ) 44
(a)本条の趣旨 45
(b)変更合意の時期 46
Ⅲ. イ ン タ ラ ク テ ィ ヴ 仲 裁 規 則 に 特 有 の 論 点 48
1.仲裁廷による当事者の主張整理及び争点の提示(インタラクティヴ仲裁規則48条) 48
(a)本条の趣旨 48
(b)主張・争点整理のタイミング 49
2.仲裁xの暫定的な考え方の提示(インタラクティヴ仲裁規則56条) 54
(a)本条の趣旨 55
(b)仲裁xの暫定的な考え方の提示の時期 56
(c)仲裁xの暫定的な考え方の提示の方法 57
(d)心証開示の方法 60
(e)証人尋問の採否 62
(f)心証開示と和解の関係 65
3. 仲 裁 人 報 償 金 ( イ ン タ ラ ク テ ィ ヴ 仲 裁 規 則 94 条 ・ 95 条 ) 66
(a)規定の趣旨 66
(b)仲裁人の確保 67
Ⅳ. 仲 裁 規 則 の 選 択 68
1.UNCITRAL 仲 裁 規 則 +UNCITRAL 仲 裁 x x x 則 と の 使 い 分 け 68
2. 商 事 仲 裁 規 則 と イ ン タ ラ ク テ ィ ヴ 仲 裁 規 則 と の 使 い 分 け 70
3.3 つ の 仲 裁 規 則 の 使 い 分 け 70
4. 裁 判 と の 競 争 73
資 料 75
1. 商 事 仲 裁 規 則 76
2. イ ン タ ラ ク テ ィ ヴ 仲 裁 規 則 98
3.UNCITRAL Arbitration Rules 121
4.Administrative Rules for UNCITRAL Arbitration 136
会 員 通 信 142
バ ッ ク ナ ン バ ー 紹 介 144
【セミナー関連のご案内】
【 契 約 セ ミ ナ ー 〔 共 催 : 大 阪 商 工 会 議 所 〕 の ご 案 内 】( 大 阪 ) 表 2
【 国 際 取 引 セ ミ ナ ー 開 催 の ご 案 内 】( 東 京 ) 表 3
Contents of September, 2019
Preface 4
I. Introduction 5
II. Common Topics regarding Commercial Arbitration Rules (CAR) and Interactive Arbitration Rules (IAR) 6
1. List of Candidates for Arbitrators(CAR Art. 9 / IAR Art. 9) 6
2. Impartiality and Independence of Arbitrators(CAR Art. 24 / IAR Art. 24) 11
3. Ex Parte Communication between a Party-appointed Arbitrator and the Party Who Appointed Him/Her(CAR Art. 28.5 / IAR Art. 28.5) 17
4. Tribunal Secretary(CAR Art. 33 / IAR Art. 33) 23
5. Rejection of Party’s Untimely Submission of Statement or Evidence(CAR Art. 41 / IAR Art. 41) 28
6. Prohibition of Disclosing Dissenting Opinion(CAR Art. 63 / IAR Art. 64) 30
7. Expedited Arbitration Procedures (CAR Part 2 / IAR Part 2) 36
8. Reduction of Arbitrator’s Remuneration(CAR Art. 96 / IAR Art. 96) 40
9. Parties’ Agreement on Change of Arbitrator’s Remuneration(CAR Arts. 97 and 98 / IAR Arts. 97 and 98) 44
III. Particular Topics regarding Interactive Arbitration Rules 48
1. Arbitral Tribunal’s Active Role in Clarifying Parties’ Positions and Ascertaining Issues
(IAR Art. 48) 48
2. Expressing Arbitral Tribunal’s Preliminary Views(IAR Art. 56) 54
3. Arbitrator’s Remuneration(IAR Arts.94 and 95) 66
IV. Which one of the JCAA Arbitration Rules be selected? 68
1. Selection of UNCITRAL Arbitration Rules+Administrative Rules for UNCITRAL Arbitration 68
2. Commercial Arbitration Rule or Interactive Arbitration Rules: Which rules should be selected? 70
3. What the Users Should Consider When Selecting One of the Three Sets of JCAA Arbitration Rules? 70
4. Competition with Litigation 73
Martials 75
1. Commercial Arbitration Rules 76
2. Interactive Arbitration Rules 98
3. UNCITRAL Arbitration Rules 121
4. Administrative Rules for UNCITRAL Arbitration 136
Information for Members of JCAA 142
Table of Contents of Back-Numbers 144
【Seminar Information】
International Business Seminar (Tokyo) 2nd cover
International Business Seminar (Osaka) 3rd cover
国際取引上の紛争を解決する仲裁を⾃国において⾏うことは、単にインバウンドの経済効果を⽣むだけではなく、⾃国企業の紛争解決の利便性を⾼めるとともに、法の⽀配をもたらすインフラストラクチャーを国際社会に提供することを意味し、国際的ステイタスを⾼めることにも繋がることから、多くの国の政府及び仲裁機関は⾃国での仲裁を誘致する努⼒を重ねている。
⽇本においても、2017年以降、政府の「⾻太の⽅針」において「国際仲裁の活性化に向けた基盤整備のための取組」が謳われ、国際仲裁等のために利⽤可能な施設を法務省が提供するといった施策のほか、外国弁護⼠の⽇本での仲裁代理に関する制約を緩和するための法改正に向けた動きも具体化している。
以上のような背景の下、JCAAは、従来の2つの規則を改正するとともに、新たに1つの規則を制定し、次の3つの仲裁規則を揃えた。これらの規則は、2019年1⽉1⽇に施⾏されている。
■ 商事仲裁規則:従来からあるJCAAの商事仲裁規則を錬磨進化させ、外国の諸仲裁機関の規則には⾒られないきめ細かなルールを定め、円滑な紛争解決を提供する。
■ インタラクティヴ仲裁規則:上記の改正商事仲裁規則をベースに、⼿続過程において当事者と仲裁⼈との間で「対話」を⾏い、かつ、定額制の仲裁報償⾦により、当事者の予
⾒可能性が確保された上で、迅速な紛争解決を提供する。
■ UNCITRAL仲裁規則:世界標準の仲裁規則により、世界的に定評のある著名な仲裁⼈による最⾼品質の仲裁を提供する。
本号は、JCAAの「商事仲裁規則改正・制定検討委員会」の委員として、これら3つの仲裁規
則の検討に関与された⽅々をお招きして開催した座談会を、利⽤者の便宜となるようにまとめて掲載し、特別号としたものである。本号が、JCAAの仲裁規則の解釈・適⽤にあたられる仲裁⼈、代理⼈の⽅々の参考となるとともに、これらの規則の理論的な分析等に役立てば幸いである。
2019年9⽉
JCAA仲裁・調停担当業務執⾏理事
x x x x ⼈
座談会
3つの新仲裁規則の理論と実務
-商事仲裁規則・インタラクティヴ仲裁規則・UNCITRAL仲裁管理規則-
司 会:xx xx(一橋大学教授)
出席者:Xxxxxxx X. Xxxxxxx(弁護⼠/慶応義塾大学教授)xx xx(弁護⼠)
xx xx(東京大学教授)xx xx(弁護⼠)
xxxx⼈(JCAA仲裁・調停担当業務執⾏理事)
Ⅰ.はじめに
〇xx それでは座談会を始めたいと思います。司会のxxです。ご出席の⽅々から⾃己紹介をお願いします。
〇Xxxxxxx ⽇ 本国及び
ニューヨーク州の弁護⼠の Xxxxxxxです。⽇本で国際仲裁⼈として仲裁案件を多数扱ってきており、慶應義塾大学で国際仲裁の講義を担当しております。
〇xx xx⼠のxxです。 2014年の規則改正に引き続き規則改正の議論に参加させていただきました。弁護
⼠として紛争解決業務に携わっているほか、⽇xxx
⼠連合会の国際商事投資仲裁ADRワーキンググループにも参加しています。
〇xx 東京大学のxxです。私も、xx先⽣、xx先⽣とともに2014年の規則改正の作業に参加いたしました。専攻は民事訴訟法ですが、仲裁を含むADR全般に関心をもっております。
〇xx xx⼠のxxです。複雑・大規模な紛争の解決に取り組んでいます。2014年の規則改正と今回の規則改正に、委員として関与させていただきました。
〇道垣内 JCAAの仲裁・調停担当業務執⾏理事を務めておりますxxxです。これまでの主な経歴は、大学での国際私法・国際民事⼿xxの研究・教育です。弁護⼠登録はしているものの、法律実務家とはいえません。国際商事仲裁については論
文等を書いたり、また仲裁⼈の経験も若干ござい ます。仲裁制度作りについては、⽇本スポーツ仲裁機構の機構長・代表理事を2003年から12年間務めたという経験はあります。2018年6⽉にJCAAの非常勤役員ポストにつき、本⽇ご議論いただく3つの仲裁規則の改正・新設のファースト・ドラフトを作成しました。そして、様々な⽅々のご意⾒を伺って修正を繰り返し、本⽇お集まりの⽅々を委員とする規則改正・制定等検討委員会(xx委員長)にご審議いただいて⼿直しをし、さらに、パブリック・コメントで内外の専門家の⽅々からいただいたご指摘を踏まえ、最終案に至りました。そして、2018年12⽉6⽇のJCAA理事会で採⽤決定され、2019年1⽉1⽇に施⾏する運びとなりました。本⽇は、お忙しい中お集まりいただき、ありが とうございます。皆様のご予定が合うタイミングは滅多にはありませんので、長丁場ですが、この機会に重要な条項についてはすべてご議論いただき、実際の仲裁事件における規則の解釈・適⽤において参考となるような起草者意思を明らかにしていただきたいと存じます。よろしくお願い申し
上げます。
〇xx 一橋大学のxxです。民事⼿xxを専門にしていますが、仲裁法との関係では、現⾏仲裁法の制定に係る司法制度改革推進会議の仲裁検討会の委員として関与し、その後も若干の研究を
⾏っています。今回の規則改正では、委員会の座長を務めました。
Ⅱ.商事仲裁規則とインタラクティヴ仲裁規則に共通する規定改正
1.仲裁人候補者名簿(商事仲裁規則9条、インタラクティヴ仲裁規則9条)
商事仲裁規則第9条/インタラクティヴ仲裁規則第9条
当事者が仲裁⼈を選任する際の参考資料とし
て、当事者の要請があるときは、JCAAは仲裁
⼈候補者名簿を提供する。当事者は、当該名簿に掲載されていない者であっても仲裁⼈に選任することができる。
〇xx 本⽇は、最初に仲裁規則とインタラクティヴ仲裁規則に共通する規定改正の部分についてとり上げ、その後、インタラクティヴ仲裁規則に固有の問題、そして最後に各仲裁規則、これは UNCITRAL仲裁規則も含むのですが、仲裁規則の選択のポイントについてとり上げたいと思います。
まず共通部分に関する規定の第1の話題としまして、仲裁⼈候補者名簿の問題であります。それぞれの規則の9条の規定に関連することとして、 JCAAは仲裁⼈・調停⼈経験者リストを2018年8⽉にJCAAのウェブサイトに公開しています。この規定、リストの趣旨について、まずxxxxxからお話をいただければと思います。
(a)本条の趣旨
〇x垣内 仲裁機関を使って仲裁を⾏うことのメリットの一つは、仲裁⼈の候補者を紹介してもらえるという点と、当事者や当事者選任仲裁⼈では選任できない場合に仲裁⼈選任をしてもらえるという点にあります。もちろん当事者が独⾃に選び、あるいは当事者間で合意して選ぶことができればそれに越したことはないのですが、⾃分に近い⼈は両規則24条のxx性・独立性の要件を満たさないので、利害関係のない⼈であって、紛争解決を委ねるほど信頼できる⼈を探すのはなかなか難しいのです。ですから、具体的な紛争について適任な仲裁⼈候補者についての情報を提供することは仲裁機関の重要な役割だと思っています。
JCAAとしては、JCAA仲裁の実態が⾒えにくいという外部の声に応えるための一⽅策として、 2018年8⽉に仲裁⼈・調停⼈経験者リストを公表しました。これは、仲裁⼈選任の際に活⽤可能な
資料ではありますが、限定的な参考情報です。すなわち、1998年以降にJCAAでの仲裁⼈・調停⼈の経験者の⽅々のうち、公表に同意してくださった⽅のみのリストであり、ICC等他の仲裁機関での仲裁⼈等の経験は表示されておりません。このリストに未掲載の⽅々の中にも適任の⽅は多数いらっしゃいます。そういった前提でこのリストを参考資料としてご利⽤いただきたいと考えております。
さて、両規則の9条は、当事者からの要請があればJCAAが仲裁⼈候補者名簿を提供するという規定です。JCAAは従来、仲裁⼈候補者のリストを有しており、当事者からの要請があればそれをそのままお渡ししておりました。しかし、そのリストは固定的で、随時更新はしていたものの、その掲載の基準が必ずしも明確ではありませんでした。先に申しましたように、仲裁機関にとって仲裁⼈候補者の情報提供は大切な役割ですので、どのように改善するのがよいかについて⽇本仲裁⼈協会(XXX)の⽅々とも相談をいたしました。しかし、公表できるような仲裁⼈の適任者xxxの作成がなかなか困難でありまして、そのようなものの作成・公表は断念しました。
そこで、JCAAとしては、9条に定めるサービスを提供するため、非公開のものとして、仲裁⼈候補者データベースを構築することにいたしました。すなわち、JCAAが適任であろうと考える⽅々に連絡をして、3つの仲裁規則について説明した上で、紛争の当事者又はその代理⼈から依頼があった場合、どの規則のもとでの仲裁⼈をお務めいただけるか、UNCITRAL仲裁規則のもとでの仲裁の場合、時間単価がいくら以上であればお引き受けいただけるか、国籍、居住国、仲裁⼿続言語として可能な言語、⽣年、学歴、職歴を伺うほか、他の仲裁機関での仲裁を含む仲裁での経験(第三仲裁⼈・当事者選任仲裁⼈・代理⼈の別)その他の情報が掲載されているウェブページのURL等の情報を伺っています。
当事者から9条に基づく依頼がJCAAに対してあった場合、このデータベースその他の情報を勘案して、個別の仲裁事件ごとに適任な⽅々のお名
前等を掲載した名簿を提供することになります。xx性・独立性については、時間的余裕や名簿掲載者の⼈数によりますが、原則として、この情報提供の段階ではせず、特定の仲裁⼈を当事者が選任することにした際にそのチェックは⾏われることになります。
(b)当事者による仲裁人の選任
〇xx この規定の趣旨とその運⽤の⽅向についてご説明いただきましたが、今の点、当事者が仲裁⼈を選任するという場面で、当事者の代理⼈となられる立場を含めてご意⾒いかがでしょうか。この候補者名簿については当事者の要請があるときは提供することになっていますが、実際、要請することになるのでしょうか。
〇xx 代理⼈あるいは当事者の状況はいろいろで、既に仲裁⼈の候補者の名前をたくさん知っているという場合もあります。9条により提供される名簿は、クローズドではなくてオープンな名簿、すなわち名簿外からも選ぶことができます。当事者・代理⼈が仲裁⼈候補者を知らない、あるいは知っているけれどももう少し広く候補をあたってみたいというような場合には、JCAAにこの名簿の提供を要請することになるのではないかと思っています。
〇Xxxxxxx 特に⽇本での仲裁を経験していない当事者選任の仲裁⼈や代理⼈の観点からは、この種の名簿は重視される傾向がありますので、そういう意味では重要な資料になるのではないかと思います。
xxx Xxxxxxx先⽣のご発言とも関係して、1
点確認させていただければと思います。9条の文言からすると、当事者の要請があるときは提供するということですけれども、例えば当事者選任仲裁⼈が第三仲裁⼈を選任するような場合にも、仲裁⼈からの要請に応じて、適宜この名簿を提供することはあり得るという理解でよろしいですか。
〇道垣内 9条そのものの適⽤というわけではありませんが、当事者選任仲裁⼈が第三仲裁⼈を選任すべき場合において、要請があれば名簿を提供します。また、所定の期間内に合意ができないとき
には、JCAAが代わって仲裁⼈を選任することになるところ(28条6項)、このようなときも、この仲裁⼈候補者データベースは活⽤できると思います。
〇xx 別にそれを排除する趣旨ではない、ということですね。
〇xxx xx⼈候補者データベースは、貴重な資産であり、特に規定はなくてもデータベースを活⽤できる場合にはそうしていきたいと思っています
(c)仲裁人候補者データベースの充実化
〇道垣内 JCAAとして伺いたいことは、仲裁⼈候補者データベースの構築作業を今後とも継続的に進めて充実させていく必要があるわけですけれども、どのようにすれば適任者を特定することができるかという点です。具体的には、仲裁⼈に関する国際会議等に出席すると、出席者名簿にインディペンデント・アービトレーターと書いている
⼈が⾒受けられます。先⽇その種の会議に出席した際にはそういう⼈にできるだけ会って、JCAAへの情報提供をお願いしたのですが、直接お願いすることができたのはごく少数の⽅だけでした。どういう工夫をしていけば、よりよいデータベースになっていくのかについてご教示いただければと思います。
〇xx xの段階では実際に仲裁⼈、このJCAAで仲裁⼈を経験した⼈と、あとはアドホックにそういう会議の参加者とか著作物とかを通じて探していくということではないでしょうか。
〇道垣内 そういった⽅々にお願いして、まだ初期段階ですが、今のところ、⽇本⼈約100名、外国⼈約200名から情報提供をいただいています。
〇xx これをさらに充実する工夫か何かないかということですが、xx先⽣、何かご示唆をいただけますか。
〇xx データベースに掲載する仲裁⼈候補者をどのように増やすかという問題と、どのような情報をデータベースに盛り込むかという2つの問題があるのではないかと思います。
掲載する仲裁⼈候補者を増やすという面では、x垣内先⽣が今おっしゃったように、何かコンタ
クトがある都度、増やしていくことが考えられます。また、仲裁⼈の団体、例えばJAAもあるでしょうし、あるいは、Xxxxxxx先⽣がJapan ChapterのChairをされているCIArb(The Chartered Institute of Arbitrators)などの名簿を参考にすることが考えられます。CIArbの名簿は公表されているんですか。
〇Xxxxxxx xxような正式な名簿は作成しておりませんが、メンバーが個⼈的に案件にふさわしい仲裁⼈を紹介することはあります。
〇xx 名簿が公表されていれば、名簿を⾒ながら、可能な範囲でコンタクトをとって、掲載する仲裁⼈候補者を増やしていくことが考えられるかと思います。
掲載する情報の問題としては、当事者の立場からすると、請求権や事案の複雑xxx関係から、どのような仲裁⼈候補者を指名するのが適当なのかを考えていくことになると思います。そのため、仲裁⼈候補者の経歴等がわかるとありがたいと思います。仲裁⼈候補者がご⾃身のホームページをお持ちであれば、そのホームページにリンクするという⽅法もあるかと思います。
また、仲裁⼈候補者が過去に下した仲裁判断の傾向も重要な考慮要素です。JCAAの場合は仲裁判断を基本的に公表しない取扱いをしていると思うのですが、他の機関等の仲裁判断で公表されたものがあれば、その情報を掲載するとか、あるいは元裁判官の⽅でしたら、裁判官として関わられた判決の情報を掲載することも考えられるかもしれません。仲裁⼈候補者が、xx法の法学教育を受けられたのか、それとも、大陸法の法学教育を受けられたのかによっても、判断の傾向は大きく変わってくるのではないかと思います。
さらに、国籍を掲載することが考えられます。仲裁⼈候補者の国籍は、当事者の国籍の問題とも絡んでくるかもしれません。
これは実現できるかどうかわからないのですが、実際に仲裁が⾏われて、当事者が仲裁⼈に対してどのような感想を持ったか、例えば、当事者の意⾒をよく聞く⽅だったか、フェアな⽅だったか、当事者にとって良い仲裁⼈だったか、という
観点もあるかと思います。究極的には、⾃分が勝たせてもらえれば良い仲裁⼈ということになるかもしれませんが、良い仲裁⼈というのは、必ずしもそういうものではないと思います。他⽅で、 JCAAにとって良い仲裁⼈という観点もあるのではないかと思われ、仲裁機関を運営する観点からは、速やかに適切な仲裁判断を⾏う、また、取消しをされない仲裁判断を⾏う仲裁⼈が、良い仲裁
⼈ということになるのではないかと思います。 また、仲裁⼈の判断の傾向として、大局的なこ
とを大づかみにされて、細かいことはあまり気にされない⽅もいらっしゃるでしょうし、他⽅で厳密な判断を積み重ねていくという判断のスタイルの⽅もいらっしゃるでしょう。紛争の規模が大きい案件なのか、小さい案件なのか、複雑な案件なのか、比較的シンプルな案件なのかで、多分、適切な仲裁⼈は変わってくるかと思います。そういったことを公表するかどうかは難しい問題かと思いますが、データベースに入れていかれると有益ではないかと思います。
〇Xxxxxxx 仲裁⼈候補者データベースに登載されている⽅は、何らかの形で⽇本やJCAAとかかわりを持つ⽅が多いと思いますが、案件によっては例えばノルウェー法に基づく仲裁や、建築紛争など、特定の専門領域の仲裁⼈を探し求める場合もあると思います。そう考えるとすべての案件に対応できる仲裁⼈候補者データベースを作成・維持するのは難しい面がある一⽅、特殊な専門xxxについても、知⾒を得られる機会などがあれば、それも付随する情報としてデータベース化されておくとよいと思います。
もう1つ、xx先⽣もご示唆されていましたが、例えば、初めてJCAAの仲裁⼈をつとめた⽅を、今後名簿に掲載するべきかという問題があると思います。例えば、仲裁が終了した際に、当事者あるいは代理⼈にアンケートを出して、その声を聞くことも考えられます。xxxxが言われたように勝敗によって観点が異なるでしょうが、それを含めたデータを、今後のデータベース充実において参考にするというのは一案かと思います。
〇xx xxさん、Xxxxxxxさんから、情報を充
実させる場合にどういう情報を載せたらよいかというお話がありました。ただ、これは実際にやる場合に難しいところがあると思います。JCAAのデータベースに載せ、それから抽出して仲裁⼈候補者名簿等を当事者に提供する場合は、ある程度客観性が必要だと思います。今まで何件仲裁をやったかとか、チェアをどれだけ務めたかとか、そのあたりは解釈余地のない客観的な情報です。しかしxxさんがおっしゃった判断傾向とかになると、代理⼈・当事者としては知りたい情報ではありますけれども、それをJCAAの側から出すのはなかなか難しいのではないかと思っています。投資仲裁等では、まさに国側に有利な判断が多いのか、投資家側に有利な判断が多いのか、などいろいろなところで研究がなされていてデータベースもあるようですが、商事仲裁についてそこまでのものはないかと思います。
そのほかのバックグラウンドの情報としては、どういう教育を受けたか等は客観的な情報として出せます。あとは仲裁に関する論文、仲裁関係の所属団体でどういう役割を果たしているのか、このあたりも客観的な情報として載せることはできます。ただ、これらを網羅的かつxxに調べるのはなかなか難しいことだと思います。1つのやり
⽅は、ごく基礎的な情報だけを載せて、あとは先ほどxxさんから示唆があったように、各仲裁⼈候補者のウェブページがあると思いますので、そこにリンクを張って、適切な断り書きをつけて、そちらのほうを⾒ていただくということはあり得るのではないかと考えています。
〇xx 今、xx先⽣がおっしゃった点はそのとおりかなと思います。それから、先ほどxxさん、 Xxxxxxxさんから、当事者からのフィードバックも重要ではないかというお話がありました。これは、開示するというのはなかなか難しいところがあるのかもしれないですが、例えば仲裁⼈選任のためというよりも、仲裁⼈⾃らのスキル向上と申しますか、そういう観点からすると、特に経験がそれほど多くない仲裁⼈の場合には、当事者からのフィードバックが適切な形で伝えられれば、それをまた次の機会に⽣かすこともあり得るかと思
いますので、そういう観点からも重要な視点かなと感じたところです。
〇xx 私からも1点だけ。国内の特に仲裁、それもインタラクティヴ仲裁というのは、私の理解では、現在⽇本の裁判所がやっている民事訴訟⼿続にも近い部分があり、裁判官経験者というのはかなり重要な仲裁⼈の供給源になり得るかなと思っています。裁判官というのは、退官するときはその情報は公開されますし、ある程度内部では民事裁判官としての評判みたいなものも確立しているところがあると思いますので、そこである程度よい評判の裁判官みたいなものをデータベースに登載していくというのは可能なことなのかなと思っています。
〇道垣内 最後のご指摘の点は、特にインタラクティヴ仲裁についてはおっしゃるとおりだと思っています。実際、私の存じ上げている元裁判官で現在は弁護⼠登録をされているような⽅々にお願いし、さらに、その⽅々に紹介していただくということをして、相当数の元裁判官の⽅々の情報がデータベースに蓄積されつつあります。ただ、これは、私が知っているか否かという偶然の要素があり、客観性がなく、限界があります。どなたの情報がデータベースに入っているかは、お願いする際に決して外部には出さないというお約束で情報提供をいただいているので申し上げる訳にはいきません。ただ、データベースに既に掲載されている⽅に他の⽅を紹介していただく際には、ご紹介者のお名前を出してもいいですかということも伺っています。JCAAからその新しい⽅に連絡させていただく際にその⽅としても安心して情報を提供していただけるであろうと思うからであります。その限りで、一対一の関係で特定の⽅がデータベースに含まれていることをお知らせしていることになります。
(d)JCAAによる仲裁人の選任
〇xx 65歳が裁判官の定年ですが、⼒があり余っている⼈、まだ少なくとも10数年は十分やっていけそうな⼈が結構多いと思いますので、そういう⽅向でも努⼒いただければと思います。もう
1点この関連で、この9条⾃体は当事者が仲裁⼈を選任する場面ですが、規定の中で、JCAAが当事者にかわって仲裁⼈を選任するという規定が置かれているところも多くあります。例えば27条3項とか28条3項等々です。当事者が選任しない場合、または当事者選任仲裁⼈が選任しない場合に、 JCAAが選任をするということになりますが、その場合にも、なお当事者の意⾒を参考にするのか、あるいは参考にするとして、どこまでどのような
⽅法で参考にするのかという問題になると、JCAAとしてはどういうふうにすればいいのだろうとお悩みのところかと思います。xxxx、このあたりについて何かご示唆があればお願いします。
〇xx これはこれからのJCAAの実務の検討事項であるとは思います。JCAAが選ぶという場合は、当事者から、例えばこういう属性を持った⼈にしてほしいという意⾒が出ることはあるかもしれません。そういう意⾒があればそれは参考に聞くということになるでしょう。しかし、そうでない場合に常にJCAA側から意⾒を求めるということは、必要ないのではないかと思います。
ただ、例外的に、案件の種類によっては、この案件の場合にどういう分野の⼈が適切なのかを、当事者に聞かないとわからないことが、もしかしたらあるかもしれません。そういう場合にはJCAAの側からのイニシアチブで、当事者に意⾒を聞くということはあるかもしれせん。
なお、意⾒を聞くとしても、また、意⾒が出ることがあるとしても、それはあくまでも参考であって、JCAAを拘束するものではないという理解です。
〇道垣内 当事者の意向がJCAAを拘束するとすれば、動きがとれなくなってしまいかねません。 27条4項又は28条7項により、当事者がJCAAに対して、いずれの当事者の国籍とも異なる国籍を有する仲裁⼈を選任することを求めた場合であっても、JCAAはこれを尊重すると定められており、拘束するものではありません。
ただ、JCAAとしては、仲裁は当事者主導であるべきであり、仲裁機関として当事者の満足度を⾼める努⼒をすべきだと考えておりますので、当事
者の意向はできるだけ尊重すべきだと思っています。単独仲裁⼈の場合に所定の期間内に当事者の合意ができないとき(27条3項)や、3名の仲裁⼈の場合に当事者の一⽅が所定の期間内に仲裁⼈を選任しないとき(28条3項)には、JCAAが代わって仲裁⼈を選任することになるところ、JCAAがいきなり選任するのではなく、適切な場合には、複数の候補者を両当事者に提示して、それぞれの当事者に点数をつけてもらって、片⽅の当事者の選好に偏っておらず、かつ合計の点数が⾼い⼈を仲裁⼈に選任するという⽅法をとることもあり得ると思っています。実際、現在の商事仲裁規則の施
⾏前の事例ですが、単独仲裁⼈をJCAAが選任する際に、このような⽅法をとったことがあります。とにかく、当事者が違和感を抱くような仲裁⼈選任をJCAAがすることがないように努⼒したいと存じます。
〇xx そういうプラクティスは十分あり得ると思います。特に当事者に候補者を複数示した場合に、当事者がいろいろな理由から、この⼈だけはやめてくれというのはあるかもしれませんので、その機会を与えるという意味でも、それは意味のあるプラクティスではないかと思っています。
〇xxx すでに申しましたように、仲裁⼈候補者のお名前を提示する場合、緊急性の⾼い場合等を除き、原則として、その段階で利益相反のチェックはしません。あくまで、そのチェックは、当事者・当事者選任仲裁⼈・JCAAが候補者を特定して連絡をとった際に⾏われることになります。したがって、JCAAとしては相当多くの候補者の情報を持ち、コンフリクト・アウトになった場合にも迅速に対応できるように仲裁⼈候補者データベースを豊かにしておく必要があると思っております。
〇Freeman ちょっと異なる観点ですが、今後の仲裁の発展の観点からは、案件によってはJCAAのネットワークを活かして能⼒・実⼒が備わっていることを前提に、少し若⼿の⽅にも仲裁⼈を経験するチャンスを与えるという観点も、あってもよいのではないかと思っています。私⾃身も、最初に⼿掛けた数件の仲裁については、仲裁機関から選任されて機会を与えられ、仲裁の経験を積むこ
とができました。一つの観点として、仲裁⼈候補者の裾野を広げていくことも少し意識してもよいかもしれません。仲裁⼈を目指す者にとっては、初めて選任を受けられることは、仲裁のキャリアをスタートすることを意味しますので、そのような配慮があってもよいのかと思います。
2.仲裁人のxx・独立(商事仲裁規則24条、インタラクティヴ仲裁規則24条)
商事仲裁規則第24条/インタラクティヴ仲裁規則第24条
1
2
3
4
xxかつ独立でない者は仲裁⼈に就任してはならず、仲裁⼈は、その在任中はxxかつ独立であり続けなければならない。
仲裁⼈への就任の依頼を受けた者は、当事 者の目から⾒て⾃己のxx性又は独立性に 疑いを⽣じさせるおそれがある事実につい て合理的な調査を⾏わなければならない。その結果、そのような事実が判明した場合 には、当該依頼を受けた者は、仲裁⼈への 就任を辞退するか、又はそのような事実の すべてを依頼をした者に対して書面により 開示し、その者に依頼の撤回をするか否か の判断を委ねなければならない。
仲裁⼈に選任された者は、書面(以下「x
x独立表明書」という。)により、遅滞なく、当事者及びJCAAに対し、⾃己のxx性若しくは独立性に疑いを⽣じさせるおそれのあ る事実の全部を開示し、又はそれがない事 実を表明しなければならない。
仲裁⼈は、仲裁⼿続の進⾏中、当事者の目から⾒て⾃己のxx性又は独立性に疑いを
⽣じさせるおそれのある事実(すでに開示したものを除く。)について合理的な調査を⾏わなければならない。その結果、そのような事実が判明した場合には、当該仲裁
⼈は、書面により、遅滞なく、当事者及びJCAAに対し、これを開示しなければならない。仲裁⼈就任時に、その時点以降にかかる事実が⽣ずる可能性がある旨の一般的な開示を⾏うのみでは、この開示義務を履⾏したことにはならない。
〇xx それでは次の話題に移りたいと思います。24条の仲裁⼈のxx性・独立性についての規定です。特に24条2項以下については、周知の最
⾼裁平成29年12⽉12⽇決定(民集71巻10号2106頁)が背景にあり、それを受ける形でこのような規定改正がなされたという面があります。まず改正の趣旨についてxxxxxからお願いします。
(a)本条の趣旨
〇道垣内 仲裁機関として仲裁判断が裁判で取り消されるということは、その裁判の被告となった当事者に対して誠に申し訳ないことであり、あってはならないことだと思います。仲裁の振興のためには、今後、このようなことが⽣じないように最大限の努⼒をしていくという⽅針から、24条は詳細な規定になっております。仲裁⼈就任の打診を受けた⽅、仲裁⼈となった後も仲裁⼿続係属中ずっと、xxの上にも慎重にxx性・独立性の調査を⾏い、少しでも問題があるようであれば、積極的に開示もしてほしいということであります。
実際にどこまで開示するのかが問題となります。開示すべき事由は忌避事由よりも広いことは明らかだと思いますが、明確な線は引きにくいところかと思います。条文の文言通り、「当事者の目から⾒て」少しでも疑いが⽣ずるような事実はすべて開示していただきたいと考えております。仲裁判断の取消しの申立てが最終的には棄却されるとしても、そのような申立ては被告とされる当事者には迷惑なことですので、仲裁機関として仲裁⼈には、そもそもそのような申立てがされる余地がないくらいの広い開示を望みたいところです。IBA(International Bar Association)が作成した国際仲裁における利益相反に関するガイドラインがありますが、それによれば開示しなくてもいいとされているから開示しないという姿勢ではなく、少しでもどうかなと思う事実があれば、すべて開示していただきたいものです。
(b)仲裁人候補者が開示すべき事実の範囲
〇xx 「⾃己のxx性又は独立性に疑いを⽣じさせるおそれのある事実の全部を開示しなければ
ならない」というのが仲裁法18条3項の規定であります。商事仲裁規則24条2項は基本的にはそれと同じ文言が使われているわけですが、ただ、「当事者の目から⾒て」というものが加わっていて、
「当事者の目から⾒て⾃己のxx性又は独立性に疑いを⽣じさせるおそれのある事実」ということになっています。xxxxxからもお話がありましたが、これがどういう事実を指しているのかが問題です。網羅的に論じることはなかなか難しいと思いますけれども、それを仲裁⼈候補者として判断する上での留意点について参考となるものとして、お話に出てきたIBAの利益相反に関するガイドラインもあるわけですが、仲裁⼈候補者としてはどういった点を留意してこの開示を⾏えばいいかということが問題になろうかと思いますが、 Xxxxxxxさんから口火を切っていただけますか。
〇Xxxxxxx 「当事者の目から⾒て」という文言が入ったのは、恐らくIBAガイドラインの基準も参考にされている面があるのかと思います。客観基準より広く、主観的な当事者の目から⾒てどう思うかという観点をとり入れているのは、仲裁⼈の選任が、仲裁⼿続における最重要事項の1つであるということを反映しているかと思います。いったん選ばれると、最終的には仲裁⼈が下した仲裁判断は、事実認定や法の適⽤を理由に取り消されることはなく、⾃ら判断者を決定する当事者主義の観点からも重要だということが反映されていると思います。他⽅において、実際の開示にあたっては、確かに広く開示しておけば、当事者が異議を申し立てなければ、将来の仲裁判断の取消事由にならないという観点は1つあります。他⽅、同時に、xxxxxが言われたように、どの程度広く開示するかについては考慮を要するところで、実際には忌避事由にならない些細な内容を開示することによって、正当性のない異議の申立ての契機になるなど⼿続の遅延につながるおそれもありますので、この両⽅の要請を踏まえて検討するのがポイントになるかと思います。
どの程度の開示が適切かについては、文化的、法的なバックグラウンドによって⾒⽅が異なる中で、IBAガイドラインの提示する基準は、ソフト
ローの1つとして国際的にも有効に機能していて、恐らく半数以上の仲裁で使われている状況ですので、それを1つの参考にするのはよいプラクティスではないかと思います。
〇xx どこまで開示すべきかという点は仲裁法制定のときにも議論されましたし、各機関の規則の解釈について議論されているところだと思います。今回の改正で「当事者の目からみて」というのが入ったということですけれども、私は仲裁法 18条の利害関係情報の開示をさらに広げたというふうには考えておりません。ただ、仲裁法の解釈
⾃体が非常に幅のあるものなので、ここでいろいろな議論が起こるということだと思います。
忌避事由に当たるかどうかということと利害関係情報として開示すべき事実に当たるかということは別であり利害関係情報として開示すべき事実は、忌避事由よりも広いということであると思います。それからベストプラクティスとして、あるいはベタープラクティスとしては、これはIBAガイドラインにも書いてあったと思いますが、できるだけ開示する⽅向にというのはあるでしょう。仲裁⼈としても、後でいろいろなことを言われたくないので、できるだけ広く開示しておきたいという面はあります。ただ、何でもかんでも開示するというプラクティスについては、私は慎重に考えておりまして、例えば、司法研修所で同期あるいは同じクラスだったとか、さらには弁護⼠会の委員会で同じ委員を務めたとか、そういうものまで全て開示することが広く⾏われるようになると、これはこれで逆に開示しなかった⼈が何か隠したいことがあるのではないかなどと疑われるようなことになりますので、それはちょっと⾏き過ぎではないかと思っております。それから、先ほどXxxxxxxさんからIBAのガイドラインの話が出ましたが、多くの仲裁⼈は開示するかどうかについて、あるいは回避するかどうかについて、IBAのガイドラインを参考にしていると思います。
1つだけ例を紹介しますと、IBAのガイドラインでグリーンリストに入っているものがあります。これは基本的に開示しなくてよいという事項なのですが、私の経験したことで、グリーンリストに
入っていたけれども、やはり開示したものがあります。これは弁護⼠会の委員会あるいは執⾏部(エグゼクティブボード)に一緒に入っていたという場合です。これはIBAのガイドラインではグリーンリストに入っているわけですけれども、やはり当事者に開示しておくべきであろうと考え、開示したことがあります。なので、IBAのガイドラインもしゃくし定規に当てはめるのではなく、事案に応じて柔軟に考えていく。できるだけ開示する
⽅向でというのは私も賛成でございます。
〇道垣内 法律家同⼠の間、つまり仲裁⼈と当事者との間の利益相反の問題とは別に、仲裁⼈と当事者代理⼈との利益相反の問題もあるということですね。
〇xx はい。
〇xxx xx⼠会の執⾏部で一緒だったという例は後者の仲裁⼈と当事者代理⼈との間の利益相反の例ですね。依頼してきた当事者の代理⼈はわかると思うのですが、相⼿⽅である当事者にどういう弁護⼠がついているかは依頼を受けた段階ではわからないではないかと思います。しかし、法律家同⼠の利益相反もあり得るので、相⼿⽅当事者の代理⼈まで確認して仲裁⼈を引き受けるべきだということになるのでしょうか。
〇xx 仲裁⼈として依頼を受ける場合は、代理
⼈が誰かということがその時点でわかっていればそれも聞くようにしています。
〇xxx xxすると相⼿⽅当事者の代理⼈との間で利益相反があるので仲裁⼈を引き受けることができないということもあるということですね。
〇xx もちろんあります。
〇xxx xxすると、仲裁⼈を受任した後に相
⼿⽅の代理⼈が決まるとか、あるいは途中で相⼿
⽅の代理⼈が交代することもあり得ると思うのですが、困ることが出てきませんか。
〇xx ただ、それはその時点でまたこの代理⼈とはこういう関係にありましたと、その時点で開示することになるのではないでしょうか。
〇xxx xx点が忌避事由になることもあり得るのですか。
〇xx あり得ないことはないでしょうね。
〇xxx xxしますと、相⼿⽅が代理⼈を変更することによって、仲裁⼈を忌避に追い込むということもあり得るということでしょうか。
〇xx 極端な場合はそうなりますが、それは逆に言うと、その当事者の代理⼈が弁護⼠職務基本規定上、代理⼈につけるかという問題もあるのでしょうね。
〇xx 代理⼈の交代の関係で、仲裁⼈の許可を得ないと、代理⼈を交代できないという規定をプロシージャル・オーダー(Procedural Order)の中に置くことが考えられます。不利になって負けそうになってきたら辞任して別の代理⼈をつけ、その新しい代理⼈と仲裁⼈との間でコンフリクトを⽣じさせて、⼿続を混乱させるという例があるので、そのような事態を防ぐために、代理⼈は許可を得ない限り辞任できないという規定を、プロシージャル・オーダーの中に置いておくことが考えられます。
〇道垣内 そういった利益相反状態の作出を禁止しておけば、仲裁⼈としては新たな代理⼈の就任を認めないという措置をとることができるということですね。JCAAとして、そういうことも念頭において実務対応をするようにしたいと思います。
〇xx そういうことをする⼈は結構いるという
ことですかね。
〇道垣内 JCAAが⽤意しておくプロシージャル・オーダーのサンプルの中に入れておいたほうがいいですね。
〇xx 確かにそうですね。
〇xxx もっとも、仲裁⼈に当事者による代理
⼈選任について介入する権限はあるのでしょうか。
〇Freeman 代理⼈を選任する権利とややバッティングすることになります。明らかに仲裁⼈とのコンフリクトを作り出すために代理⼈の交代が
⾏われた場合には、その仲裁廷の権限に基づいて代理⼈を制裁する権限もあると言われていますし、そういった観点から何らかの規制ができることもあると思います。一般にその代理⼈と仲裁⼈との間のコンフリクトの規制というのは、当事者との間のものよりはやや緩やかなものになりますね。
〇xx そうしないと回っていかない。
〇Freeman 例えば、新しくついた代理⼈の⽅と仲裁⼈が、別の進⾏中の仲裁事件で一緒に仲裁⼈をしている場合、コンフリクトがあるというべきか否かについて両説あるようです。そのような場合には接触する機会があまりにも多いのでということで、他⽅の当事者からみると問題があると思われるのではないか、そういう観点から私は選任の申し出をお断りしたこともありますね。
〇xx 最初の段階で断るのはいいのですが、途中で⽣じた場合にいろいろな障害が出てきますね。
〇xx ⽇本の最⾼裁の古い判例(最判昭和30年 1⽉28⽇民集9巻1号83頁)によれば、裁判官が代理⼈の娘婿という関係にあったときにも忌避事由はないとされました。最⾼裁としても、先ほどからお話しのあった濫⽤的なことがある場合を懸念しているのかもしれません。
〇xx もっとも、この判決に対して学説はこぞって反対していますね。
〇xx そうですね。賛成している⼈はいないでしょうね。さすがに他⽅の当事者の目から⾒れば、いかがなものかと感じるだろうと思われます。
〇xx 補足ですが、「当事者の目から⾒て」という文言は、ICCの条文(11条2項、「in the eyes of the parties」)を参考にしたという経緯があったかと思います。その点はコンメンタール等に記録しておいていただくほうがいいかなと思います。解釈の際に参考になるかと思います。
(c)仲裁人候補者が行うべき合理的な調査の範囲
〇xx さて、「当事者の目から⾒て⾃己のxx性又は独立性に疑いを⽣じさせるおそれのある事実」を開示しなければいけないというわけですが、それを⾃分が知っていた場合に開示しなければならないことは当然ですが、先ほどの最⾼裁平成29年12⽉12⽇決定はそれだけではなく、当事者に一定の合理的な調査の義務を課すというような趣旨の判断をしています。それを受ける形で24条2項は、そのような事実について合理的な調査を⾏わなければならないとし、合理的な調査に基づきわかった事実を開示するという構造になっているところ、その合理的な調査という範囲はどういうよ
うなことをする必要があるのか。これはこの最⾼裁決定をめぐっても議論のあるところですけれども、xxxxからお願いします。
〇xx この最⾼裁決定についてはご紹介があったとおりで、仲裁⼈は、仲裁法18条4項の事実の有無に関する合理的な範囲の調査により通常判明し得るものをも開示すべき義務を負う、とするものです。これを受けて24条2項、4項は「合理的な調査」という文言を⽤いているということかと思います。
もちろん、仲裁地を⽇本とする前提で考えれば、最⾼裁の判断を尊重する必要があるということになるわけですけれども、最⾼裁は、合理的な範囲の調査の内容を必ずしも正面からは明らかにしていません。ただ、最⾼裁決定における当てはめ部分を⾒ますと、当該事件における仲裁⼈の所属事務所において、どのような利益相反関係の有無を確認する体制があったのかということが判然としないという点を問題としていて、この事務所が国際的な大規模事務所であって各国にオフィスを持っているということは、認定事実にも含まれているわけですけれども、それだけで本件の判断が下せるというようには最⾼裁は考えていません。だから差し戻しをしたということで、もう少し当該事務所で具体的にどのような体制がとられていたのかについての事実認定が必要だと判断しているのだろうと思います。逆に言えば大規模事務所なら規範的に当然に利益相反に関する事情が判明するような体制が整備されているべきである、といった前提には必ずしも立っていない。もう少し具体的に、実際にどういう体制がとられていたかということを問題にしているということであろうと思います。
他⽅、24条は最⾼裁決定と若干表現の仕⽅が違うところがあります。まず、最⾼裁決定が正面から問題にしているのはあくまで開示義務の範囲で、
「合理的な範囲の調査」云々というのは、いかなる場合に開示義務違反が認められるか、という問題との関係で述べられているにとどまりますが、 JCAAの規則は正面から、合理的な調査を⾏わなければならないとしており、いわば調査義務という
ものを正面から定めています。
ただ、そのこともありまして、24条の文言を⾒ると、調査義務が開示義務の範囲にどのように響いてくるのか若干わかりにくいところがあるようにも思われます。一⽅では、24条2項・4項では、「合理的な調査を⾏わなければならない」と定めていて、その結果、そのような事実が判明した場合には、「就任を辞退するか、…そのような事実のすべてを…書面により開示し」なければならない(2項)、あるいは、「これを開示しなければならない」
(4項)と規定しています。その反面、合理的な調査が尽くされなかったため判明しなかった事実については、開示する義務があるのかどうか、2項や4項の文言からは、必ずしもはっきりしないような印象があります。ただ24条3項では、仲裁⼈に選任された者一般的な開示義務を定めており、この趣旨が2項や3項の場合にも及ぶのだとすれば、最終的には最⾼裁決定と同じような考え⽅になるのかなと思います。つまり、合理的な調査をすれば通常判明し得た事実について開示しなかった場合には、開示義務違反があるということになるのだろうと思います。
さらに、最⾼裁決定と対比した場合に、24条が規律をより明確化している部分としては、調査義務の主体は、仲裁⼈への就任の依頼を受けた者、あるいは仲裁⼈であるとされ、義務の主体がはっきりしている、という点があります。最⾼裁決定は調査義務そのものについて判示しているわけではありませんので、誰が調査するのかという点については、必ずしも正面から明示されていません。基本的には開示義務の主体が仲裁⼈ですから、調査の主体も仲裁⼈が想定されているということなのだろうと思いますけれども、そうだとすれば JCAAの規則はその点を明確化しているということになろうかと思います。
そうした観点から⾒ますと、ここで問題となっている調査義務というのは、当該仲裁⼈あるいは仲裁⼈への就任の依頼を受けた者が、⾃身としてどの範囲の調査をする必要があるのかという問題であって、所属している法律事務所が主体だということでは必ずしもありませんので、法律事務所
の体制整備の責任のようなものを当然に仲裁⼈が負うということでもないのかなと思われるところです。
ただ、具体的な事案で例えば所属している事務所の調査体制に不備があるという場合に、まさにそのことに起因してある事実が判明しなかったときに、合理的な調査が尽くされていたといえるのかいえないのかはかなり微妙な問題で、仲裁⼈としてはその事務所にいる以上、それ以上に調査はできなかったということであれば、仲裁⼈を主体として考えれば義務違反はないという考え⽅もあるいはあり得るのかもしれませんが、そこはなかなか難しい問題を含んでいるかなと思っております。
もう少し具体的に、合理的な調査というのは一体いかなる内容のものなのかという点は、先ほど申しましたように最⾼裁⾃身は明らかにしていないので、そこは今後の解釈あるいは判例の展開に委ねられていると、実定法の問題としては言わざるを得ないと思います。また最⾼裁は、なぜ合理的な範囲の調査で通常判明し得たものに限定されるのかということについて、これも特段積極的な論拠は挙げておりません。したがって、最⾼裁があげた論拠から何かを導くことも、直ちにはできないところがあります。
ただ、これは推測を含むことになりますが、最⾼裁がそのような範囲の限定をしているのは、一⽅で仲裁⼈あるいはその就任の依頼を受けた者に対して、不可能なことを要求するとか、過度の負担を強いたりすることは相当でないだろうということが考慮されていると思われますし、また少し別な観点として、仲裁判断の安定性の確保という点も考慮されているのかもしれません。したがいまして、一般的に言えば、仲裁⼈が過度な労⼒や時間を投じなければできないような調査というのは合理的な調査とは言えない。逆に、何を常識と言うかということは難しいわけですけれども、常識的な範囲の能⼒や時間的な負担において判明し得ると評価できるものについては、ここで言う合理的な調査の内容となるということかなと思います。
実際上は弁護⼠倫理等との関係で、通常の弁護
⼠業務との関係でも、弁護⼠法あるいはさまざま
な弁護⼠に関する規範との関係でコンフリクト・チェックが要求されるということがありますので、通常、弁護⼠業務として必要とされるコンフリクト・チェックのレベルでの調査というのは、最低限ここでの合理的な調査に含まれることになるかと思います。
ただ、代理⼈として事件を受任する場合と仲裁
⼈として執務する場合とでは職務の内容に違いがありますので、仲裁⼈の場合における開示義務の範囲が、一般的な代理⼈としての受任の場合とやや出入りがあるという可能性はあって、それが仲裁⼈の場合に特に広いということがあったとすると、それにどこまで対応すべきかというのはなかなか難しい問題かなと思います。
例えば最⾼裁決定の事案ですと、合併によって法⼈名や資本関係が変わったりして変遷があったりということもありますので、名称だけ⾒ていたのではなかなか判明しないような事情があったのかなと思われます。これはIBAのガイドラインでもでてきますように、資本関係等に変化があった場合でも開示義務があると言われるような場合もあるわけです。そうしますと、依頼⼈の名称からは関係が必ずしも判明しないような場合について、仲裁⼈の場合には問題になり得るとして、それが当然に解明できるような体制を整えておく必要があるのかどうかというと、そこは議論が分かれ得るところかと思います。難しい問題ですが、私は、そこは、必ずしも通常の体制で判明しなかったものについてわからなかったという場合には、開示義務違反とまでは言えないという考え⽅もあり得るのかなと考えております。
また、最⾼裁決定の事案は、仲裁⼈の所属する事務所に後で新たに弁護⼠が加入してきて、その弁護⼠がコンフリクトのある事案に関与していたという事例です。これは通常そうした新規加入の弁護⼠がいた場合にコンフリクト・チェックというのはなされるものだろうと思われますので、その時点で改めてチェックするところまでは必要なのではないかと考えているところです。
〇xx 詳細にご説明いただきました。どうぞxxxx。
〇xx これは確かに仲裁⼈の義務であって、所属事務所、所属事業体に何らかの責任を課すものではないというのは当然のことです。ただ、そういう事務所に所属していること⾃体が、まさに仲裁⼈がそこで仕事をしているわけですから、その事務所のコンフリクト・チェックの体制が不十分であるという場合に、事務所の体制が緩いから、仲裁⼈は開示義務違反あるいは調査義務違反を免れるということにはならないと思います。そういう事務所に対しては体制を改めさせるべきだとか、あるいは極端な話、そのような事務所をやめるべきだということになると思います。そこは厳しく考えておかなければならないと思います。そうはいってもこの最⾼裁決定のように法⼈のオーナーシップまで調査するかというと、確かにそれはなかなか難しい問題があるかもしれません。
それからもう1つだけ付け加えると、法律事務所であれば、通常コンフリクト・チェックはやるわけです。弁護⼠職務基本規程上の問題があります。これも事務所によって違いはあるのでしょうが、多くの事務所はコンフリクト・チェックを割と広めにかけます。というのは職務基本規程上、代理できるかどうか、相談できるかどうかという問題だけではなく、このことを、依頼を受けた⼈に開示すべきかどうかとか、そういうレベルでも考えますので、割と広めにコンフリクト・チェックは
⾏われているのではないかと思います。それをスタンダードにして仲裁⼈の関係でも合理的な調査をしているかどうかを考えることはできるのではないかと思っています。もちろん限界事例としていろいろ難しい問題があるのは承知しています。
〇xx ほかにいかがでしょうか。
〇Freeman 1点だけ。xxxxが言われたように、このコンフリクト・チェックに関しては、実務的には厳格に臨んだほうが、今後法律事務所におけるコンフリクト・チェック体制をより強化する意味でよいことだと思いますし、将来は、AI技術が発展すれば、調査は容易になる面もあると思います。
(d)仲裁人候補者が行うべき合理的な調査の時期
〇xx 24条に関する最後の論点として、最⾼裁決定でもそうですが、合理的な調査は、仲裁⼈就任時だけではなくて仲裁⼿続の進⾏中、ある意味では常に⾏わなければなりません。そのため、24条4項は、仲裁⼿xx⾏中もそのような調査を⾏うべき義務を明記しています。そういう⼿xx⾏中の調査について、先ほどもちょっと出てきましたが、仲裁⼈の所属事務所に新しい弁護⼠が入ってきたときとか、いろいろな契機があるのかもしれませんが、仲裁⼿xx⾏中の利益相反のチェックのあり⽅について、xxxxのほうからお願いします。
〇xx ⼿xx⾏中の利益相反、利害関係の調査の問題というと、新しい弁護⼠が事務所に加入したという場合もありますし、新しい案件が入ってきたという場合もあります。仲裁⼈の受任時には、もちろん仲裁⼈の側から事務所内にコンフリクト・チェックを能動的にかけるわけです。しかし、その後新しい弁護⼠が入ってきたり、新しい案件が入ってきたときに、仲裁⼈の側から一々そういう調査をかけるかというとそれは普通なくて、入ってきた新⼈や案件の担当弁護⼠がコンフリクト・チェックを所内にかけます。そこで仲裁⼈が発⾒して、これは仲裁⼈である私の関係では利害関係情報に当たるということを発⾒するというシステムではないかと思います。
仲裁⼈は⼿続の進⾏中、合理的な調査を⾏わなければならないというふうに能動的に書いてありますけれども、事務所内のコンフリクト・チェックの仕組みが適切に整っていないと、仲裁⼈としては危ないことになるわけです。このことは仲裁
⼈だけではなく、その事務所に所属する弁護⼠として危ないことになるわけです。従って、事務所の所内体制を整えるのは重要なことであると思っています。
3.第三仲裁人の選任のための当事者選任仲裁人による当事者への意見聴取(商事仲裁規則28条5項、インタラクティヴ仲裁規則28条5項)
商事仲裁規則第28条/インタラクティヴ仲裁規則第28条
(仲裁⼈の選任-仲裁⼈が3⼈の場合)
5 当該2⼈の仲裁⼈は、すべての当事者の書面による合意がある場合に限り、第三仲裁
⼈の選任について、⾃らを選任した当事者 から個別に意⾒を聴くことができる。一⽅ の当事者が仲裁⼈を選任しない場合には、当事者に選任された仲裁⼈は第三仲裁⼈の 選任について当該当事者の意⾒を個別に聴 くことはできない。
〇xx 続きまして28条についてです。3⼈の仲裁⼈の場合に第三仲裁⼈の選任について、今回の改正で28条5項の規定が置かれています。当事者から選任された2⼈の仲裁⼈が、第三仲裁⼈を選任する場合において、⾃らを選任した当事者から、その第三仲裁⼈の選任についての意⾒を聞くことができるかという問題を扱っています。これは過去のJCAA仲裁の事例でも問題になったことがありますので明示的な規定を置いたわけです。28条 5項の規定によれば、全ての当事者の書面による合意がある場合に限ってそのような個別の意⾒聴取ができるとされています。さらに、一⽅当事者が仲裁⼈を選任しない場合においては、他⽅当事者が選任した仲裁⼈が当該当事者の意⾒を聞くというのは、当事者間の事前合意がある場合であってもできないとされています。この規定の趣旨について、まずxxxxxから説明をお願いします。
(a)本項の趣旨
〇道垣内 仲裁⼈に就任した以上、それ以降に⾃分を仲裁⼈に選任した当事者とだけ個別に連絡をとること⾃体に問題があると思っております。これまで、いくつかの会合等で、特に弁護⼠を長くされている仲裁⼈経験者の⽅々の中には、仲裁における当事者の満足度を⾼めるためにはその意⾒を聴くのは当然いいだろうと言われる⽅も相当いらっしゃり、私としては非常に違和感を持って参りました。いずれが正しいのかということとは別
に、このように、第三仲裁⼈選任の際の当事者選任仲裁⼈の⾏為規範について異なる理解があるということですと、この点についてのxxの規定を置かないと、一⽅の当事者選任仲裁⼈は当事者と連絡せず、他⽅の当事者選任仲裁⼈は当然いいだろうと思って当事者と連絡をとるという不xxなことが⽣じかねません。そこで、xxの規定を置いて、この点についてのデフォルト・ルールを定めたのが28条5項です。
どちらをデフォルトにするかは一つの問題ですが、28条5項は、デフォルト・ルールとしては連絡を禁止し、これを解除するには当事者間の書面による合意が必要という建付けにしています。当事者間で、お互い第三仲裁⼈については当事者選任仲裁⼈から話を聞きたいですねという話し合いがうまくできれば、書面でその旨合意して仲裁⼈に連絡するということになろうかと思います。仲裁条項の中で事前合意しておくことも、今後はあるかもしれません。ただ、当事者選任仲裁⼈が個別にそれぞれの当事者に意⾒を聴くということになると、まるで当事者選任仲裁⼈がその当事者の代理⼈のような振る舞いをすることになるので、できれば両仲裁⼈から両当事者に同時に意⾒を聴くのが本来のあり⽅だろうと思います。もっとも、この点は規定していませんので、当事者間の合意においてここまで定めていない場合には、当事者選任仲裁⼈の⽅々次第ということになります。
なお、28条5項第2文は、一⽅の当事者が仲裁⼈選任を懈怠したためにJCAAが仲裁⼈を選任し、当事者選任仲裁⼈とJCAA選任仲裁⼈とで第三仲裁
⼈を選任する場合、当事者選任仲裁⼈の⽅だけが当該当事者に意⾒を聴くということになるのは不xxだろうということから定めたものです。第2文は、そのような場合には、当事者選任仲裁⼈の
⽅も当該当事者に連絡をとってはならない旨定めています。
(b)本項の運用と国際仲裁における実務
〇xx xx的な発想としては、たとえ当事者選任の仲裁⼈であれ仲裁⼈である以上、一⽅当事者と個別に接触することは基本的には相当でないと
いうことを前提として、ただ全ての当事者が合意している場合を例外としているという趣旨の規定かと思われます。この前提については異なる考え
⽅もあるとxxxxxからはご紹介がありましたが、この当事者選任仲裁⼈と、当事者またはその代理⼈が個別に連絡をとるということの問題性といいますか、それはどういうふうに仲裁の世界で認識されているのでしょうか。Xxxxxxxさんからお願いします。
〇Xxxxxxx 一般的に当事者と仲裁⼈や仲裁⼈候補者との間の連絡というのは、xxxxxも言われたようにex parte communicationと呼ばれて、国際仲裁では、原則として禁止されているとの認識がありますので、その点は注意を要するところだと思います。他⽅で、判断権者を当事者が選ぶことができることは、当事者の合意による紛争解決⽅式である国際仲裁の重要な特徴の1つでもありますので、仲裁⼈候補者のインタビューは、一般的には一定の範囲で許容されるとするのが国際仲裁のほぼ共通のプラクティスなわけです。
そのときの留意点としては、あくまでも仲裁⼈としての適格性やスケジュール等時間的な意味を含めた対応可能性をはかるために必要最小限の範囲で⾏うことが重要であり、xx性や独立性に疑いを⽣じさせるような連絡の取り⽅は問題であって,そういうことは厳に避けなければならないと認識されていると思います。
先ほど話題になりましたIBAのガイドラインの中でも、仲裁⼈のavailability、qualificationに限定して接触した事実は、開示を要しないグリーンリストの項目にあがっており、紛争についての主張の当否や⼿続的な内容については触れていないことが条件となっていますので、そのような判断に必要な範囲に限定して、事案の概要や当事者の主張の対立状況は簡潔に説明してもよいと考えられています。特に、主張の当否については言及せず、意⾒を求めないのが重要なポイントになると思います。
以上は、28条5項の前提となることです。28条5項が規制の対象としているのは、申し上げたような注意をした上で当事者選任仲裁⼈が決まった後
に⾏われる第三仲裁⼈の選任の問題にフォーカスされています。
〇xx ありがとうございました。
xxx Xxxxxxxxxと重なるかもしれませんが、当事者選任仲裁⼈は当事者から個別に選任されているわけではありますが、仲裁⼈に就任したら独立かつ不偏に⾏動しなければいけないということになります。したがって、その事件の中身について、あるいは⼿続の進め⽅について、当事者とxxx・xxx(ex parte)で交渉することについて、積極的な評価をする⼈は恐らく仲裁xxxxxxの中ではいないと思います。
一⽅、第三仲裁⼈の選任というのは、当事者にとっては非常に重要なことであり、まさに仲裁xの構成を決定するところですので、これについて当事者選任仲裁⼈がエクス・パルテで当事者に接触するということは広く⾏われているプラクティスですし、それ⾃体についてネガティブな評価をする⼈はそれほど多くないという認識です。問題はそのコミュニケーションの中身なのだと思います。
ただ、問題は、それをやっていいとは言っても、一⽅の仲裁⼈だけが一⽅当事者とそういう接触をして、他⽅はそういうことは全然しないというのは、それは偏頗な気がします。その意味で、28条 5項で全当事者の了解をとるというのは、透明性を⾼めるという意味でよい規律ではないかと思います。
〇xx そうするとこの28条5項は、国際仲裁の実務からすると、必ず書面による同意が必要であるという点で、やや制限的になっていると理解すればよいのでしょうか。
〇xx そうとも言えると思います。ただ実際には、第三仲裁⼈の選任について、当事者から意⾒を出してもらうということについて、それぞれの当事者の了解を各当事者選任仲裁⼈を通じてメールでとった経験もあり、それで対処できると思います。いずれにせよ、一⽅だけが連絡をとるということについては、慎重な考え⽅があるのではないでしょうか。その意味で、この規定には、それほど違和感はありません。
さて、実際どうやって同意をとるかということ
ですが、当事者選任仲裁⼈双⽅から、当事者の意
⾒を伺いつつ第三仲裁⼈を選任するという⽅法をとりたいと思いますが、この⽅法は両当事者が合意しないと実施しませんいうことを当事者に伝えるというプロセスを経ることにより、28条5項が定める当事者間の合意をとることができるのではないかと思います。このプロセスは当事者と当該当事者が選任した仲裁⼈とのxxx・xxxのコミュニケーションになりますけれども、それはさすがに許していただかないと、この規定は回っていかないと思います。
〇xxx xxような場合には、JCAAにその旨連絡していただければ、JCAAから両当事者に当事者選任仲裁⼈がお考えの⽅法を伝えることができると思います。
〇xx そういうやり⽅もありますね。
〇Xxxxxxx x⽤上、2条3項によれば、28条5項の「書面」にはEメールも含まれますので、xxxxが言われたように、各当事者選任仲裁⼈が当事者にメールで諮って、「こういう形でやりたいと思いますがいいですか」と確認すればそれほど違和感はないですし、不都合もないのではないかと思います。
〇xx 今おっしゃっていただいたような運⽤で当事者選任仲裁⼈の側で、⾃分を選んだ当事者に第三仲裁⼈選任についての意⾒を聴いたほうがよいと判断して、両⽅の当事者から意⾒を聴取する
⽅法を採⽤するとして、そのように、第三仲裁⼈の選任について当事者またはその代理⼈の意⾒を聴いたほうがよいと当事者選任仲裁⼈が考えるのは、どのような場合なのでしょうか。一般論では難しいのかもしれませんけれども、xxxxにもしご示唆があればお願いします。
〇xx 大変難しい問題かと思います。ただ、若干整理をする必要があるかと思っています。1つには、これはJCAA選任の場合についても、先ほどxxxxxからご説明がありましたが、仲裁の場合には判断権者を⾃分の意思で当事者が選べるというのが、裁判などと比較した場合の大きな特徴というかメリットですから、仲裁⼈が3⼈の場合でも、3⼈目についても当事者の意思を尊重し反
映させるという考え⽅は、それ⾃体としては十分あり得る考え⽅なのだろうと思います。
ただ、私の理解では、28条5項はあくまで個別にそれぞれの当事者選任仲裁⼈が意⾒を相⼿⽅の知らない形で聴くということを、どういった条件で認めるかということを定めております。例えば当事者選任仲裁⼈が両者連名で、第三仲裁⼈についてこういう候補者を考えているけれども、それについてどう思うかというような意⾒聴取を当事者双⽅にし、当事者がそれぞれ意⾒を出すということについては、このルールで禁止されているものではないと思われます。また、JCAAを通じてその種の意⾒聴取をすることも当然できるので、そのようにすれば、それぞれの当事者選任仲裁⼈が当事者から個別に意⾒を聴くというのではない形で、当事者の意思を反映することができ、そのような⼿段は許容されていると思っています。
そう考えると、あくまで個別に聴くという⼿段をとらなければならない場合というのが本当に存在するのかというと、それは疑問かなと私⾃身は考えております。ただ、もう少し問題を広く設定して、それぞれの当事者の意⾒をどういう場合に聴くことが求められるかというように考えた場合には、このルールでは当事者の書面による合意があれば聴くことができるということが定められていて、書面で当事者が仮に事前にそういう合意をしていたとすれば、それは当事者としては第三仲裁⼈を選任する際に意⾒を聴いてほしいという意思を持っているということでしょうから、その場合には当事者選任仲裁⼈としては、まずは意⾒を聴くべきなんだろうということは一般的にはあるかと思います。
ですから、その場合はいいとしまして、検討を要する問題としては、1つには、当事者として事前にそういう合意をしておいたほうがいいと考えられるような事案があるのかどうかという点があります。もう1つの問題としては、タイミングの点にも関係しますけれども、事前の合意はない場合において、しかし当事者選任仲裁⼈に選任された仲裁⼈としては、当事者から個別に意⾒聴取をしたほうがいいのではないかと考えるような場合
があるとすれば、合意の取り付けが必要だということで、先ほどxxxxからお話のあったようなプロセスを踏むことになるかと思います。そうだとしますと、問題は、そのようなプロセスが望ましいと仲裁⼈が考える場合として、どういうものが考えられるのか、ということかと思います。
ただ、これら2つの問題は、あらわれ⽅は少し違うのですけれども、基本的には同じ問題かと思っております。その上で、それはどういう場合かと考えますと、なかなか一般的な答えは難しいかと思いますけれども、ごく抽象的に言えば、第三仲裁⼈に求められる属性、例えば専門知識や経験等ですが、これについて当事者が特別な要望を持っていると思われるのだけれども、しかしその具体的な内容について、当事者選任仲裁⼈には必ずしもはっきりわからない場合があるとすれば、これは意⾒を聴いたほうがいいのだろうということになるのかなと思います。
また、これは先ほど2つあげた点の中では第2の点で、当事者選任仲裁⼈が意⾒を聴いたほうがいいと考える場面として、1つには、一⽅の当事者選任仲裁⼈が、ある第三仲裁⼈を強⼒に推しているというときに、他⽅の当事者選任仲裁⼈としても同じ判断だということであれば問題ないのかもしれませんが、なぜそこまでその⼈を推してくるのかよくわからないとか、何かその背景等について判断に迷うところがあるという場合、これはちょっと当事者の意⾒を聴いておいたほうが安全ではないかということで、お互い聴くことにしましょうという提案をしていくことはあり得るのかな、ということを少し想像した次第です。実務については弁護⼠の先⽣⽅から教えていただければと思います。
〇xx 最後に言われた場面において、はたして両当事者の合意が成立するのだろうかという気もしなくはないけれども、いかがでしょうか。
〇xx そうですね。成立しなければどうするのでしょうかね。もう一⽅の当事者選任仲裁⼈の出
⽅にもよるかと思いますが、その仲裁⼈が意⾒を聴くことはいいですよということであれば、2⼈でそういった合意を取り付けようとするというこ
とかもしれませんが、あくまでそれは別に必要ないでしょうという考えのときに、どうするかというのは難しい問題ですね。
〇xxx かつて仲裁⼈を務めた際にそういうことがありました。3名で仲裁廷を構成すべき場合で、私と外国在住の外国弁護⼠がそれぞれ当事者選任仲裁⼈でした。第三仲裁⼈の選任についてその⼈とemailでやりとりをしたうえで、彼女は電話で相談しましょうと連絡してきました。電話で話せば何とかなるかというと、そう簡単にはいかないだろうと思ったのですが、とりあえず電話で話をしました。⾒ず知らずの外国弁護⼠との間で共通のしかも第三仲裁⼈として適任の⼈を⾒つけるのはそう簡単ではありませんでした。結局、私の提案で、双⽅から7名だったかとにかく同数の名前を出して、それを混ぜてアルファベット順に並べたリストを両当事者に同時に示し、何⼈にしたかは忘れましたが、それぞれの当事者が同数の拒否したい⼈に印を付けて、相⼿⽅当事者には⾒せず、仲裁⼈だけに返送してもらいました。おそらく両当事者の代理⼈は相当に調査をしたと思います。相当数の×がつき、その結果、3名に絞り込まれましたので、当事者選任仲裁⼈である我々の間で、その3名について色々と調べて当事者選任仲裁⼈の間での合意でそのうちのひとりを第三仲裁⼈に選任しました。
このように、当事者選任仲裁⼈として⾃分の持っている情報が限られており、調査能⼒にも限界がある以上、第三仲裁⼈としての適格者探しにおいて、当事者及びその代理⼈の⽅がよほど情報は豊富だろうし、調査能⼒もあるだろうという状況は少なくないと思います。そのような場合、両仲裁⼈から両当事者に意⾒を聴くというのが有益でありかつフェアであろうと思います。
〇xx xのお話だと、当事者の意⾒を聴く必要があると思われる場合はかなりありそうだという感じになりますか。
〇道垣内 国際仲裁において、当事者選任仲裁⼈が両者ともファーストネームで呼び合う仲裁xxxxの一員であれば第三仲裁⼈選任は簡単でしょうが、そうでない場合には、当事者の意向を
聴かずに、両者の合意によって第三仲裁⼈の選任をするのは大変であり、また危険かもしれないと思います。
〇xx よく知っている⼈が一緒に仲裁⼈に選ばれることもありますけど、そうでないことも結構あるので、x垣内さんがおっしゃったような状況というのは結構頻繁に⽣ずるのではないでしょうか。私もそういう場面を何度か経験したことがあります。従って、透明性を⾼めた上で、こういうプラクティスは残しておくのは必要ではないかと思います。
話は変わりますが、当事者に聴くときにどういう聴き⽅をするか、これもいろいろありまして、名前を出してもらうというやり⽅もありますし、xxxxxがおっしゃったようにこちらから名前を出して、それについて意⾒を聴くというやり⽅もあります。また、もっと抽象的に、どういう属性の⼈がいいですかという聴き⽅をすることもあります。そのほかいろいろあり得ます。
それから、聴取したことを、もちろんもう一⼈の当事者選任仲裁⼈には伝えるわけですが、相⼿
⽅の当事者に伝えるかどうか、これはxxx・xx・xxxだと思います。また最終的に2⼈で話し合って決めるわけですが、その理由を当事者に示すかどうか、これもケース・バイ・ケースで、私が経験した事例では、最終的にどういう理由でこの⼈にしたかというのは示さないことが多かったように思います。ただ、ここも本当に仲裁⼈によって、あるいは事案によってやり⽅はそれぞれだと思いますので、あまりがちがちに決める必要はないのではないかと思っています。
〇Xxxxxxx 一般には、紛争で対立している当事者がいる状況で、第三仲裁⼈について合意をするのは難しいと感じられるでしょうが、xxxxも言われたように、仲裁⼈の選任は、国際仲裁では重要な当事者の権限でもありますので、合意を試みたほうが私はベターだと思うのです。文献によれば仲裁⼈3名の仲裁xを構成する場合には、 70%ぐらいのケースで実際に仲裁⼈の長について当事者選任仲裁⼈の間で合意ができていると言われています。単独仲裁⼈については、20%と低く
なりますが、当事者選任仲裁⼈も、長の選任プロセスにかかわることによって、選任のxx性・独立性が促進される面もありますので、私は、当事者の意⾒を聴きながら決めるプロセスが確立されるのがむしろ望ましいように思います。
〇xx なるほど。Frxxxxxxxxご意⾒だと、できるだけ当事者選任仲裁⼈は、むしろこの合意をとる⽅向で運⽤したほうがよいということになりますか。
〇Frxxxxx xは当事者の意⾒の徴求を試みたほうがいいのではないかと思います。
〇xx 私も当事者の立場からすると、一般的には、意⾒を聴いてもらったほうが満足度は⾼まるのではないかと思います。
〇Frxxxxx xう1つ、最近経験したプラクティカル⽅法としは、各当事者が第三仲裁⼈の候補者名を提案する際、代理⼈とも当事者とも一度も会ったこともなく全く関係をもたない候補者のリストを出してもらうという形をとったことがあります。接触したこともない⼈物を候補者とすると、合意しやすいことになります。
〇xx 既にでてきているところもありますけれども、その「書面による合意」をとるタイミングについてですが、xxさん、いかがでしょうか。
〇xx もう既に議論されていますが、当事者選任仲裁⼈が主導でやるのであれば、第三仲裁⼈の候補者を検討する段階で、当事者選任仲裁⼈の間で相談をした上で、⾃らを選任した当事者との間で個別に話をする、あるいは、JCAAにお願いして事務局から当事者にコンタクトすることが考えられます。仲裁⼈2⼈の連名で、両当事者に聴くという⽅法もあると思われます。どれがよいかは仲裁⼈の判断だと思いますが、事務局を通じて⾏う
⽅法や仲裁⼈2⼈の連名で⾏う⽅法のほうが、問題が⽣じる可能性がより小さいと思います。
当事者主導の場合は、当事者が、仲裁規則の規定を検討し、第三仲裁⼈について⾃分の意⾒を聴いて欲しいと考えて、当事者間で交渉をしてくれれば、その結果を⼿続に乗せてもらえればよいと思います。さらに踏み込んで、JCAAから、「第三仲裁⼈について意⾒を聴いてもらうことを希望し
ますか」というアンケートを、仲裁申立書が提出されたときに申立⼈にお渡ししたり、被申立⼈に仲裁申立ての通知を送る際に同封するというのも 1つの選択肢としてはあるかと思います。当事者がイエスと回答すれば、合意の取得の⼿続を進めやすくなりますし、逆に、嫌だと言っているのであれば、どうするかを判断しやすくなると思いました。
〇道垣内 ちなみに、先ほどFrxxxxxxxxあげていらっしゃった当事者選任仲裁⼈の間での第三仲裁⼈についての合意達成率について、JCAAの数字を申し上げます。過去10年間の統計によると、仲裁⼈の数が3⼈のとき、3⼈目の選任をJCAAが
⾏うケースというのは2割弱しかなく、80%以上のケースで当事者選任仲裁⼈が決めています。
商事仲裁規則第33条
1 仲裁⼈は、仲裁判断を含む仲裁廷の決定に
2
3
4
実質的な影響を与える作業を第三者に委ねてはならない。
単独仲裁⼈又は仲裁廷の長は、前項の定め
に反しない限り、仲裁⼈の任務遂⾏に係る 補助をさせる第三者(以下「仲裁⼈補助者」という。)を⽤いることができる。ただし、この場合には、仲裁⼈補助者に関する情報 を示した上で、その⽤いようとする作業x xについて説明し、仲裁⼈補助者に報酬を
⽀払う場合にはその計算⽅法等を明らかにした上で、書面によりすべての当事者の了解を得なければならない。
仲裁⼈補助者については、第24条及び第42 条第2項の規定を準⽤する。
仲裁⼈補助者の報酬及び経費は第101条に定める単独仲裁⼈又は仲裁廷の長の経費と する。ただし、仲裁⼈補助者の報酬の額は、当該仲裁⼈について第94条の上限額を算定 する際には、当該仲裁⼈の報償⾦と読み替 えるものとする。
4.仲裁人による補助者の利用(商事仲裁規則33条、インタラクティヴ仲裁規則33条)
インタラクティヴ仲裁規則第33条
1 仲裁⼈は、仲裁判断を含む仲裁廷の決定に
2
3
4
実質的な影響を与える作業を第三者に委ねてはならない。
単独仲裁⼈又は仲裁廷の長は、前項の定め
に反しない限り、仲裁⼈の任務遂⾏に係る 補助をさせる第三者(以下「仲裁⼈補助者」という。)を⽤いることができる。ただし、この場合には、仲裁⼈補助者に関する情報 を示した上で、その⽤いようとする作業x xについて説明し、書面によりすべての当 事者の了解を得なければならない。
仲裁⼈補助者については、第24条及び第42 条第2項の規定を準⽤する。
仲裁⼈補助者の報酬及び経費は、これを⽤いる単独仲裁⼈又は仲裁廷の長の負担とする。
〇xx それでは、続きまして実務的には非常に重要な問題で、新たな条文が設けられたところとして、33条の仲裁⼈による補助者の利⽤の問題について議論していただきたいと思います。33条は、補助者を第三者が利⽤できない場合、そして補助者を利⽤する場合の具体的な⼿xxについてかなり明確にしたということですが、この規定の意義、趣旨について道垣内さんからお願いいたします。
(a)本条の趣旨
〇道垣内 このような規定を置いている機関はあまりないだろうと思います。JCAAは、今回の改正の⽅針の一つとして、xxの規定がないために⽣ずる⾒解の対立や、同じ仲裁廷を構成する仲裁⼈でさえ異なる理解に基づく異なる処理をするといった不統一の発⽣を避けるため、そのような原因となる事項についてはxxの規定を置くという
⽅針を立て、それに基づいて原案を作成しました。その一つがこの仲裁⼈補助者についてです。当 然の常識だと思っているその常識が、もしかしたら⼈によって違うかもしれないので、あえてデフォルト・ルールを明確に定め、それと異なる当事者間の合意を認めるということです。実際私が
仲裁⼈として経験した際、主仲裁⼈の⽅からのメールのCCのところに、途中から知らない名前が登場し、そのアドレスを⾒ると、どうやら主仲裁
⼈と同じ事務所の弁護⼠で、おそらくドラフティングの⼿伝いをしていたアソシエイトであろうと思いました。その際には、パートナー弁護⼠としては通常の仕事と同じようにアソシエイトを使うというプラクティスなのだなと思い、あえてその点について質問はしなかったのですが、改めて考えますと、当事者から全く了解をとらないでそのようなことをすることは問題ではないかと考えました。そのケースでは、当該主仲裁⼈としてはそのアソシエイトの報酬は請求しなかったので、そのまま最後まで当事者が知るところとはならなかったと思います。
何が問題かと申しますと、第1に、情報漏洩の可能性が⾼くなるということです。もちろん、どの国でも情報管理に関する弁護⼠倫理は厳格でしょうし、事務所にはそれを実効的するためのルールはあると思いますが、それでも情報漏洩の点でアソシエイトを無断で使うことは問題だろう思います。第2に、当該アソシエイトについて個
⼈的なコンフリクト・チェックがされているのかという点、たとえばそのアソシエイトのおじさんの会社が当事者かもしれないわけですから、そういったチェックをきちんとしてもらうのがよいのではないかということです。第3に、おそらくこれが最大の問題でしょうが、当事者の意思に反していないかということです。当事者としては、信頼できる⽅だということでその仲裁⼈を選任しているのに、アソシエイトに相当部分の仕事をさせているとすれば、それは期待に反する恐れもあるだろうということです。
もっとも、そのような仲裁⼈補助者を使うことは合理的な面もあります。⾼い時間単価の仲裁⼈が、当事者の表記や事実関係のまとめを含むすべてを⾃分で作業をするということになると、仲裁
⼈報償⾦は⾼くなってしまうのに対して、仲裁⼿続・仲裁判断の本質部分にかかわらない一部の作業を安い単価のアソシエイトにさせれば、全体のコストは安くなるからです。また、忙しい⾼名な
仲裁⼈にとって、アソシエイトを使うことができないのであれば、とても仲裁⼈を務めることはできないということもあり得ます。したがって、仲裁⼈補助者を絶対的に排除するという必要はなく、排除することが不合理な場合もあろうかと思います。
そこで、33条2項は、単独仲裁⼈及び仲裁廷の長は、「仲裁⼈補助者に関する情報を示した上で、その⽤いようとする作業内容について説明し、仲裁⼈補助者に報酬を⽀払う場合にはその計算⽅法等を明らかにした上で、書面によりすべての当事者の了解を得」ることができれば、仲裁⼈補助者を⽤いることができるということにしています。
また、同条3項は、仲裁⼈のxx性・独立性に関する24条と守秘義務に関する42条2項を仲裁⼈補助者にも準⽤する旨定めています。さらに同条 4項は、⽤いることが認められた仲裁⼈補助者の報酬や経費(審問のために外国から⽇本に来るということもあります)は、101条に定める単独仲裁⼈又は仲裁廷の長の経費とすることとしています。33条4項但書は、94条に定める仲裁⼈報償⾦の上限額については(これは仲裁⼈ごとに計算します)、仲裁⼈補助者の報酬額はこの上限額に含まれることとしています。これは、仲裁⼈補助者を⽤いた結果、当事者の予測可能性を確保するために設定している仲裁⼈報償⾦の上限額が突破されてしまうことを防ぐためです。
(b)仲裁廷の決定に実質的な影響を与える作業
〇xx そういう趣旨で33条1項では、仲裁廷の決定に実質的な影響を与える作業は、2項のような⼿続を経るとしても、それはできないということが明らかにされる一⽅、この2項で任務遂⾏に係る補助について定めています。非常に形式的なコピーをとるといった作業は2項の範囲には含まれないという理解で起草委員会の議論は進められたかと思います。そういう秘書のような⼈と区別された「仲裁⼈補助者」に、どういうような作業をさせることができるのか、できないのかというようなこと、具体例を含めてまず整理したいと思います。xxxxxらお願いします。
〇xx これについては仲裁⼈によって考え⽅は異なるかもしれません。一般的に言うと弁護⼠である仲裁⼈の場合は、実際にやってもらうかどうか別として、仲裁⼈補助者にやってもらえることを割と広く捉える傾向にあるのではないかと思います。これに対して、元裁判官あるいは研究者の
⽅は、もうちょっと狭く捉える傾向にあるのではないかと思いますが、これも⼈によるかもしれません。
弁護⼠を例にあげたのは、弁護⼠の仕事では⽇ごろアソシエイトを使って仕事しますので、⾃分は⼿を動かさないという⼈も結構多いからです。ただ、ここで押さえておかなければならないのは一般の事件と違って、この仲裁⼈の事務所はアソシエイトがいてしっかりしているからその仲裁⼈に依頼するのではなくて、やはり仲裁⼈個⼈に依頼するということであると思います。したがって、一般の事件のプラクティスを仲裁⼈の仕事に持ち込むことは、適切ではないと考えています。
そういう前置きをした上で、補助者にどのような作業をさせることができるのかということですが、広く捉えると、いろいろな書面のドラフトです。⼿続指示書、争点整理書面、主張要旨の書面のドラフトです。ここで言っているドラフトというのはあくまでもファースト・ドラフトですので、最終的に起案の責任を持つのは仲裁⼈ということになります。それから法律調査を補助してもらうこと、証拠の整理をしてもらうこと、さらに仲裁判断書の⼿続経過のところあるいは当事者の主張の整理部分のドラフトをしてもらうことはありうると思います。また、審問や⼿続協議の立ち会い、合議に同席することもあり得ると思っています。
以上の私があげたものは広過ぎるというご意⾒もあるかもしれませんが、評価規範として許される範囲は広くとっておいたほうがよいと考えています。その上で、ベストプラクティスとしてどうかというのはまた別です。ただ、仲裁判断の理由の部分を含めて全体のファースト・ドラフトの作成をしてもらうというのは、さすがに⾏き過ぎかもしれません。こういった判断作業は仲裁⼈にしかできないことですので、裁判官と同じくご⾃身
ですべきことであると考えています。
先ほどxxxxxら紹介のあった33条1項で、仲裁廷の決定に実質的な影響を与える作業を第三者に委ねてはならないという規定の解釈ですけれども、程度次第ではありますが、先ほど私が申し上げたドラフト作業あるいは法律調査も実質的な影響はあるじゃないかとの⾒⽅もあるかもしれません。決定権はもちろんないわけですけれども、実質的な影響、コントリビューションはあるという議論もあり得ると思います。
先ほど申し上げたように、評価規範としてはそこまで厳格に考えるのではなく、ベストプラクティス、ベタープラクティスの問題、あるいは仲裁⼈の倫理の問題として、仲裁⼈の場合のアソシエイトの使い⽅を考えればよいのではないかと思っています。このように仲裁⼈によって考え⽅が異なり得る事項についてあまり厳格な解釈をとりますと、仲裁規則違反ということになりかねず、
⼿続違反ということでいろいろなクレーム、さらに取消事由として主張されたりするということを考えなければなりません。
もう1つ重要なことは、当事者に開示して了解をとるということです。これはどういう使い⽅をする場合でも必要ではないかと思っています。それから派⽣する問題として、補助者についても利害関係情報の開示とか、独立性・xx性の表明ということが仲裁⼈と同様に問題になります。その違反については仲裁⼈が責任を持つことが重要ではないかと思います。
〇xx xほどの質問で、純粋に事務的な部分の仕事というのは、この規定の適⽤外という理解でいいですか。
〇xx 私はそういう理解です。仲裁⼈補助者にそれをやらせることももちろんできるわけですが、当事者の了解を得た仲裁⼈補助者はもっと多くのことができるはずです。秘書に作業をしてもらうということは、「仲裁廷の決定に実質的な影響を与える作業」でない限りできることを定めている33条1項の規定があるからではなくて、この規定があってもなくても当然できることだと考えています。秘書とか事務員を使うことはあっても
よいし、その補助者がたまたま弁護⼠であっても構わない。そうしないと第三仲裁⼈・単独仲裁⼈以外の仲裁⼈は全部⾃分でファイリングもやらなければいけないのかということになりますが、そんなことはあり得ないわけです。
〇xx xxxかなり仲裁⼈の実際の仕事においては重要な部分だと思いますので、ご意⾒をいただければと思います。
〇Xxxxxxx xxxxx非常に的確にまとめてくださったと思います。1つ付け加えるとすれば、アメリカの裁判所のプラクティスでは、ロークラークに判決の起案をしてもらうことがあります。仲裁では、その点は異なる理解がされるべきであり、仲裁判断の過程は、その仲裁⼈に委託した重要事項なので、厳格に仲裁⼈が直接関与する必要があると思います。他⽅、仲裁判断の事実や
⼿続的な経緯について確認をしたり、プルーフリードしてもらって正確性を⾼めるといった作業は、実質的な内容に影響がないという解釈でよろしいかと思いますが、仲裁判断のコアな部分は仲裁⼈が⾃分で⾏うという原則を守ってもらいたいというものです。
〇xx 仲裁⼈が、アソシエイトに対し、仲裁判断のファースト・ドラフトを依頼する場合について質問です。アソシエイトが、ゼロから⾃分で考えてドラフトをするのは、当然、許されないと思います。他⽅で、仲裁⼈が、これはこういう事件だから、ここに記載すべき点はこれこれで、結論はこうなるというように、筋道まで示した上で、それを具体的に文字に起こすことを依頼する、そのようなものも禁じられると考えたほうがよいのか、その程度であれば大丈夫だと考えるべきなのか、いかがでしょうか。
〇Xxxxxxx xxxxx言われたように、規則に違反すると結果は重大ですので、そのようにすることは規則に違反するかという観点と、ベストプラクティス、あるいは仲裁⼈の倫理や職業観の問題としては、そのようにすることはどうなのかという問題は分けて考えないといけないと思います。xxxxx言われたような指示に基づいてドラフトしてもらうやり⽅は、仲裁⼈によってはあり得
ると思うのですけれども、私の経験では、実際の国際仲裁では例は少ないという印象を持っています。ただ、それは恐らく個々の仲裁⼈の判断に委ねられてもよいところではないかと思います。
〇xx 33条1項の違反にはならないだろうということですかね。
〇道垣内 規則改正・制定検討委員会に原案を提出した立場で申しますと、仲裁⼈がロジックを示してアソシエイトがそれに従って書くというのは、仲裁⼈主導ですので、そういうことが認められないとは考えておりません。33条1項にいう「仲裁判断を含む仲裁廷の決定に実質的な影響を与える作業」というのは、決定を左右することという趣旨です。したがって、この枠でドラフトしてみてくださいというのであれば全然構わないし、仲裁判断の中でも、例えば事実の経緯の部分は最初からアソシエイトにドラフトさせてもいいと思います。また、プロシージャル・オーダーについても、内容を決めているのが仲裁⼈であれば、そのことを文章化する作業がその決定の内容を左右することは全くないと思います。
(c)補助者を利用できる仲裁人と仲裁人の補助者の選任
〇xx 33条2項によりますと、第三仲裁⼈及び
単独仲裁⼈のみが補助者を使うことができるという定めになっています。多くの場合は、特に国際仲裁の場合は、第三仲裁⼈がいろいろなものをドラフトします。ただ、そうでない場合も時々あって、例えば⽇本国内の仲裁というか、国際仲裁でも⽇本の仲裁⼈だけが仲裁についている場合は、その3⼈の中で一番ジュニアの⼈が、あるいは中間の⼈が第1ドラフトを書くこともあります。その場合その仲裁⼈は第三仲裁⼈ではないので補助者を使えないということになるので、そこがちょっと不便かなと思います。ただ、もしそういう事態が⽣ずれば、それは個別の合意で、すなわち5条で別段の合意はできるということになっていますので、それで対処できるのではないかと考えています。
〇道垣内 33条2項において、仲裁⼈補助者を⽤
いることができるのは単独仲裁⼈と仲裁廷の長だけであって、当事者選任仲裁⼈を外しているのは、 31条3項に対応しています。すなわち、同条が規定しているように、3名の仲裁⼈による仲裁廷の場合、仲裁廷の長が、審問等の主宰、当事者等への連絡、そして最も大変な仕事である仲裁判断を含む文書のファースト・ドラフトを作成することになっており、これに対応して、33条2項は単独仲裁⼈に加えて、仲裁廷の長が仲裁⼈補助者を⽤いることを想定しています。もっとも、31条3項は仲裁⼈の間で異なる合意をすることは妨げない旨明記しています。
なお、そのような合意により、ファースト・ドラフトを作成するのが他の仲裁⼈ということになりますと、99条1項に定めているように仲裁⼈報償
⾦の上限額についても、合計額の範囲内で、仲裁
⼈の間で合意をするのが合理的だろうと思います。
〇xxx xx、わが国では、若⼿の当事者選任仲裁⼈が、仲裁廷の長から指示をされて、31条3項の職務を⾏うことがしばしば⾒受けらるようですが、国際仲裁では、通常、仲裁廷の長が⾏っているように思います。
〇xx 確かに31条3項によれば、仲裁⼈間では
異なる合意をすることができるわけですけれども、そのような合意をしたからといって直ちにジュニアの仲裁⼈が仲裁⼈補助者を使えることにはならないですよね。
〇xx xxお話は、31条3項でその役割を変更した場合に、33条2項の解釈として仲裁廷の長は、ドラフトすることになったジュニアの仲裁⼈になるのか、という問題ですね。
〇道垣内 ご指摘の通り、31条3項の規定内容を変更する別段の合意が仲裁⼈の間でされた場合にも、それだけで直ちに仲裁廷の長でないけれどもドラフトをすることになった仲裁⼈が仲裁⼈補助者を使うことができるかというと、33条2項に照らせば、それだけでは使えないと思います。したがって、まずは原則として、第三仲裁⼈を選任する際に、⾃らファースト・ドラフトをする⽅を選んでいただきたいと考えています。最近のケースで、当事者選任仲裁⼈が比較的年配の先⽣であっ
ても、ドラフティングなどの実務能⼒を重視して、第三仲裁⼈として若⼿の⽅を合意選任するというものもあります。
〇xx ただ、xxxxxおっしゃったように、 31条3項の別段の合意が仲裁⼈の間で成立していて、かつ33条2項の全ての当事者の書面による了解が得られるのだとすると、結局5条に定めている当事者間の別段の了解があると解することはできるのではないでしょうか。
〇xx 33条2項の定める当事者の了解があるということで、処理すればいいのでしょうね。
〇xx xxxか仲裁⼈補助者の選任、あるいは
⼿続の進⾏中の仲裁⼈補助者の管理といった点について、実務上仲裁⼈が留意すべき点について、 Frxxxxxxんいかがでしょうか。
〇Frxxxxx x然なことですけれども、コンフリクト・チェックなどについては、仲裁⼈を選任する場合と同等の注意が必要ですし、実際33条3項で24条、42条を準⽤していますので、それに基づくプラクティスを徹底していくことが大切かと思います。また、先の議論にあったように、仲裁⼈補助者の仲裁への関与は、内容によっては⼿続的な瑕疵につながり得ますし、第三仲裁⼈が仲裁⼈補助者を選任した場合には、ほかの仲裁⼈にも信頼されることも重要ですので、選任にあたっては、正確性など能⼒的な面にも十分留意することが重要かなと思います。
他⽅、⼿xx⾏中の注意事項としては、ほかの仲裁⼈が、第三仲裁⼈が仲裁⼈補助者に依頼している内容について同意していることを確認することも重要だと思います。例えば仲裁⼈の合議への陪席などは、当然ほかの仲裁⼈の了解を得た上ですべきではないかと思います。
なお、仲裁⼈補助者の報酬を別途請求する場合には、それがタイム・チャージ制であれば、業務時間を記録する必要がありますが、その際に、合議の秘密が守られるように、記録の仕⽅についても少し注意したほうがいいと思います。例えば、何々の論点についてリサーチしましたといった書き⽅はせずに、抽象的な形で記録するほうが適切かと思います。
5.時機に後れた主張及び証拠申出の却下(商事仲裁規則41条、インタラクティヴ仲裁規則41条)
商事仲裁規則第41条/インタラクティヴ仲裁規則第41条
仲裁廷は、時機に後れた主張及び証拠申出を却下することができる。
〇xx それでは、次は41条の「時機に後れた主張及び証拠の却下」という規定です。これについて、その趣旨について、道垣内さんからお願いします。
(a)本条の趣旨
〇道垣内 これは⼿xxでは条文がなくても当然とされていることかもしれないのですけれども、いろいろな国の⼈がかかわる仲裁においては、時機に後れたという理由で申し出た証拠調べ、あるいは主張が認められない当事者が不服を申し立てるということもあり得るし、仲裁判断の取消しの申立てをしてくるということもあり得るので、xxの規定を置いておくことが有益であろうということから設けられたものであると理解しております。この規定があることによって、タイムリーな
⼿xx⾏に協⼒するように仲裁廷から言いやすいでしょうし、他の規定における規律との関係でも、原則がはっきりすると、当該他の規定の位置づけがはっきりするということもあろうか思います。
(b)手続指揮のあり方、運用、実務の工夫等
〇xx ⼿xx的には一般的にこのような規定があることが多いわけですけれども、規定の存在によって、却下されないように適切な時機に当事者が主張書面や証拠を提出することが期待されるわけです。そのような⼿xx⾏に向けての仲裁廷のあり⽅、運⽤、実務の工夫、そういったことについてxxさんからお願いします。
〇xx どのように⼿続運営するかということなのですが、例えば43条2項に基づく審理計画を早期の段階で立てて、いつまでに書面を出すかということを決めるのが基本になると思います。国際
仲裁でよくあるパターンとしては、1回目の書面の交換があり、もう1回、書面の交換があって、ヒアリングにいくことが多いようです。そういう流れを初めに示すと、基本的に1回目の書面で出してください、反論という形であれば、2回目の書面の交換の際にも出せます、というイメージが当事者にわかるので、しかるべき段階で出していただくという⽅向につながるのかなと思います。
もっとも、仲裁廷が審理をしている過程で、また、当事者が準備している過程で、新たな証拠が発⾒されるということはしばしば経験するところなので、追加の主張・証拠をどこまで許容できるかという問題はあると思います。しかし、基本的には、43条2項の審理予定表が示されることによって、当事者はその予定表に合わせて対応していくべきであると思います。
他⽅で、伝統的な⽇本の民事訴訟のやり⽅、双
⽅が反論を次々と繰り返していくという形になると、いつまでに提出すべきなのか、なかなか目星がつけにくくなるのかなと思います。
〇xx 事前に審理予定表を作成して当事者に示して、時機に後れるかどうかということのめどを示すことが重要ではないかというご指摘かと思います。そのほか、何か実務的な観点からご指摘いただくことはありますか。
〇xx 41条が存在しなかったかつての規則のも
とでも、運⽤上、時機に後れているという理由で当事者の主張等を却下することはできたのだと思います。仲裁⼈の⼿続的な裁量の一つであると思っています。
なかなか一般的に言うのは難しいのですが、仲裁については、一つは一審限りであるということと、それから仲裁法25条2項に事案について説明する十分な機会を与えなければいけないという規律があるので、私の知る限り、多くの仲裁⼈は、主張とか証拠申出、要するに攻撃防御⽅法の提出を時機に後れたという理由で却下するということは、かなりxxの要ることで、一般にそのような裁量権⾏使は慎重にしてきたのではないかと思っています。このような理由での却下をしますと、後で仲裁法25条違反を仲裁判断の取消しの申立て
の理由の一つとして主張されかねませんので、仲裁⼈としては慎重に対応すると思います。
xxさんがおっしゃったように、やはり前広に審理計画を示すこと、それからもう一つは、ウォーニングを与えることが有益ではないかと思います。単に審理計画を示すだけでは、いつが締切りなのかというのははっきりしないので、やはり、いついつまでに出してください、その後は仲裁廷の特別の許可がない限り攻撃防御⽅法の提出はできませんという明確な指示を出し、ウォーニングを明確に与えることが重要ではないかと思っています。
〇Frxxxxx xの点にもかかわることですが、実務上のプラクティスとして、よく使われる⽅法として、ヒアリングが終了した後に改めて、⼿続決定や当事者への告知の形で、以後は主張や証拠の提出は原則としては認めないというようなことを宣言することがあります。この41条があることで、このような運⽤がしやすくなるように思います。
〇出井 Freemanさんから、ヒアリングが終了した後でそのような⼿続き決定をするというご指摘がありました。確かに、それがある意味では最終の締切りなのかもしれません。ただ、もっと前の段階、つまりヒアリングに入る前の段階で、新たな主張とか書証の提出はこれ以上ありませんね、ということを多くの仲裁⼈が確認するのではないでしょうか。
その例外となるのが、証⼈尋問の途中で出てきた新たな争点についての反論とか証拠提出を許すかどうか、さらには弾劾証拠を許すかどうか、弾劾証拠に対する反論を許すかどうか、そういう問題はありますが、それ以外はヒアリングの前に主張・書面の証拠についても、実質は締め切るということが多いのではないかと思いますし、そうあるべきではないかと思います。
そうしないと、ヒアリングの証⼈尋問において、何をターゲットにしていいのかどうかわからなくなってしまうという問題がありますので。
(c)どのような場合に「時機に後れた」と言えるか
〇xx x、実務的な運⽤、工夫についてお話をいただきましたけれども、この条文の解釈としては、「時機に後れた」ことをどういうふうに判断
するのか。これについては、民事訴訟法にも同様の条文があり、さまざまな議論がされているところです。これもまた一般論は非常に難しいところかと思うのですが、この判断基準について、どういうふうに考えればよいのかということについて、xxさんからお願いできますか。
〇xx ご指摘のあった民事訴訟法の条文というのは157条の規定ですけれども、157条はこちらの規則と少し異なりまして、却下には、時機に後れたことに加えて、「故意又は重大な過失」によることと、それから「訴訟の完結を遅延させること」というのが要件として必要とされており、その場合に却下できるということになっております。
こちらの41条は、もっぱら「時機に後れた」ということが要件として明示されているということですけれども、実際に、その主張や証拠申出を却下するかどうかについては、これは「できる」ということですので、仲裁廷の裁量にゆだねられているということかと思います。その裁量権⾏使の過程では、民事訴訟法で掲げられているのと同じような事情、すなわち「時機に後れた」ということについて、当事者にどの程度、責めに帰すべき事由があるのか、あるいは当該主張とか証拠申出を許すことによって、どの程度、⼿続の完結が遅延することになるのかといったことが考慮されるということかなと理解をしております。
また、その大前提として、そもそも「時機に後れた」と言えるのかどうかということですけれども、これについては、この規則ですと、大原則として44条の1項で、「当事者は、この規則又は仲裁廷が定める期間内に、主張書面及び証拠を仲裁廷に提出しなければならない」ということになっていまして、規則で定めている期間がある場合にはそれによりますし、仲裁廷が期間を別途定めた場合には、その期間内に提出すべきだということになっておりますから、これに違反することになりますと、形式的には「時機に後れた」ということになるのだろうと思います。
規則のほうで時期や期間に関して定めているものとしては、まず、出発点として、仲裁申立の段階で、14条の1項7号ですけれども、「請求を根拠
づける理由及び証明⽅法」について記載すること、これが必要的記載事項となっており、また被申立
⼈の側では、申立の通知を受領してから4週間以内に答弁書を提出すべきことになっております。
答弁書では、これは18条の1項5号ですけれども、
「答弁の理由及び証明⽅法」を記載する、これがまた答弁書の必要的記載事項ということになっておりますので、申立⼈の場合については、請求原因事実や、それを立証するための証拠、被申立⼈の側では基本的な抗弁事実や、それに関する証拠については、原則として申立書または答弁書に記載することが要求されているということが、まずあろうかと思います。
したがって、基本的な請求原因事実であるにもかかわらず、申立書に記載せずに、後で言ってくるということは、これは形式的には「時機に後れた」と評価されることはあり得るかと思います。
ただ、実際には、申立・答弁書が出て以降に仲裁廷が成立し、そこで43条2項ですけれども、審理予定表を作成するということになっておりますから、そこで定めた期間内に必要な事実、あるいは証拠申立がされれば、「時機に後れた」ものとして却下されることはないだろうと考えられるところです。
逆に、審理予定表に定めた期限を徒過して提出されたものについては、これは「時機に後れた」ということになるわけで、その上で、どの程度おくれているのかとか、どういう事情でおくれたのか、あるいはこれを認めることによって、どの程度、⼿続が遅延するのかといった点を勘案して、却下するかどうかを判断するということになろうかと思います。
〇Frxxxxx x実上の留意点としてですけれども、言うまでもないとは思うのですが、仲裁廷から当事者に対して、証拠の提出や説明を求めるという場合はこれに当たらないということは敷衍しておきたいと思います。実際上も仲裁判断を起案しているときに、疑問に思った点について、当事者のxxにも配慮しながら、当事者に説明や情報提供、証拠や主張の補充を求めるということはあり得ることかなと思います。
〇xx 仲裁法31条3項は、「すべての当事者は、
仲裁⼿続の進⾏中において、⾃己の陳述の変更又は追加をすることができる。ただし、当該変更又は追加が時機に後れてされたものであるときは、仲裁廷は、これを許さないことができる」と規定しています。
〇xx なるほど。実質的に同じ規律はあるということですね。ありがとうございました。
〇xx 陳述についてですね、これは。証拠申出は明示的には書いていないですけれども。
〇xx 書いていない。まあ、でも同じなんでしょうね。ありがとうございました。
6.少数意見の公表の禁止(商事仲裁規則63条、インタラクティヴ仲裁規則64条)
商事仲裁規則第63条/インタラクティヴ仲裁規則第64条
3⼈の仲裁⼈で構成される仲裁廷の場合、仲裁
判断には第32条第1項及び第2項に基づく仲裁廷としての決定のみを記載し、仲裁⼈は、その少数意⾒をいかなる形であれ仲裁廷の外に漏らしてはならない。
〇xx では引き続きまして、今度は仲裁判断にかかわることでありますけれども、商事仲裁規則でいえば63条、インタラクティヴ仲裁では64条になりますが、「少数意⾒の公表の禁止」という規定であります。これについては⼿続規則をつくる際、かなりの議論というか、激論があったように記憶をしていますけれども……。改正の趣旨について、道垣内さんからお願いします。
(a)本条の趣旨
〇道垣内 3名の仲裁⼈で仲裁廷が構成されている場合、意⾒が分かれたときには多数決で決定することになるわけですが、そのとき、少数意⾒となった仲裁⼈はその少数意⾒を仲裁判断の中で書くことができるかという問題です。この点については学術上も、仲裁実務上も、賛否両論あるところだと認識しております。かつてJCAA仲裁において、この点について何も定めていない規則のもと
で、仲裁⼈のひとりから少数意⾒を書きたいとの申し出があり、⼿続諮問委員会において審議し、それはできないとの決定をしたことがあります。ただ、既に申しましたように、異なる⾒解も世の中にはあり、xxの規定を置いて明確にすることがよいとの判断から、少数意⾒の公表を禁止する旨定めています(63条)。もちろん、5条が許容している当事者の別段の合意はこの場合にも優先します。もっとも、当事者がこれを認めるという合意をすることは一般的には考えられません。とにかく、どうすればいいのか揉めて、無駄な時間がかかることはできるだけ避け、何らかの⽅向性は提示を示すべきだという全体の⽅針から、詳細な規定の一つとして入れた次第です。
なぜ少数意⾒の公表禁止をデフォルト・ルールとしているのかの理由として、3つほど考えられると思っています。第1に、意味がないということです。すなわち、仲裁判断は秘密であり、非公開ですので、少数意⾒を書いたからといって、それを読むのは当事者だけであり、それを書いた仲裁⼈の⾃己満足でしかない。また、当事者にとっては多数意⾒による仲裁判断だけが確定判決と同一の効⼒があるわけですから、少数意⾒に何らの法的効⼒はないということです。
第2に、少数意⾒を書きたいという⼈が当事者選任仲裁⼈の場合ですと、⾃分を選んでくれた当事者に対して忠誠心を示すという、よからぬ気持ちがあるかもしれないということです。xxxまた仲裁⼈として選任してほしいという気持ちがあるとすれば、仲裁⼈としての倫理上是認できないと考えられます。
第3に、少数意⾒の内容次第では、仲裁判断の取消しの申立てを誘発しかねないということがあります。場合によっては、⾃分を選んだ当事者に仲裁判断で負けた後に争う⼿段を提供しようという極めて悪質な仲裁⼈もいないとは限りません。そうでなくても、勝った当事者にとっては、少数意⾒が、仲裁判断の取消しの申立てや外国での仲裁判断の執⾏に対する抗弁の端緒となることは迷惑なことです。
以上のような理由から、第63条が置かれたと理
解しております。
(b)仲裁人間での望ましい合議のあり方
〇xx この規定は、意⾒が割れ、多数決で仲裁判断に至ったときには、少数意⾒になった仲裁⼈は⾃分の意⾒を仲裁廷外に漏らすことは許されないと定めていますが、その前提として、その前の段階の仲裁判断に至る合議の運⽤ともかかわってくるところがあるかと思います。
仲裁⼈間での望ましい合議のあり⽅、すなわち、当然のことながら、合議においては仲裁⼈が十分に意⾒を戦わせるということは必須だと思われますが、その合議で仲裁⼈の間に異なる意⾒が出たような場合には、どのような形で対処するのがよいのか、そのあたりの実務的な運⽤について、xxxxxほうからお願いいたします。
〇xx これは難しい問題ですし、仲裁⼈によっても、やり⽅はかなり違うのではないかと思います。仲裁⼈が同じ地域にいるか、別々の地域にいるかによっても、やり⽅は大きく異なってくると思います。
仲裁⼈の合議のあり⽅というのは、まさにブ
ラックボックスなので、想像の域を出ませんけれども、一応、多くの国際仲裁でマジョリティだと思われる別々の地域に仲裁⼈がいる場合のことを想定してお話をします。
文字どおり、会って、みっちり議論を⾏うこともあれば、1回会って簡単な意⾒交換をした上で、あとはドラフトに基づいてメールあるいは電話会議で詰めていくということもあります。
合議の回数ですけれども、通常は、最初の⼿続カンファレンスの前に1回、これはおそらく電話会議のことが多いと思いますが、合議を⾏い、それから審問の前にもう1回、これも電話会議のことが多いのですが、合議を⾏い、それから審問の後に、これは実際に会して合議を⾏うことが多いのではないかと思います。
その後は、先ほど申し上げたように、誰かが、基本的には第三仲裁⼈ですが、第三仲裁⼈が仲裁判断書のドラフトをつくって、それにその他の仲裁⼈がコメントを述べていきながら、仲裁判断書
を完成させるというプロセスがとられることが多いというのが私の経験です。
合議の進⾏は、当然、第三仲裁⼈がリードするわけですが、これも私の限られた経験ですけれども、多くの合議はコンセンサスを目指して⾏われます。最初から結論や争点ごとに多数決を採るようなことをするのではなくて、やはりそれぞれ意
⾒を述べてもらい、さらに議論をして、コンセン サス、すなわち3⼈の意⾒の一致を目指すわけです。問題は、意⾒が分かれたときです。これをどう するのかというのは、なかなか難しいところで、案件にもよりますし、仲裁⼈のキャラクター、あるいはバックグラウンドにもよると思います。十分検討して意⾒を出しあった以上はあまり変わることはないという想定で、あとは多数決で粛々とやりましょうかという⽅もいれば、もうちょっと議論してみましょうということで、その合議を結構、何回も繰り返すという仲裁⼈もいます。ケース・バイ・ケースということになるかと思います。
裁判の場合も同じ問題があるかと思いますが、最終的には多数決ということになっています。多数決の採り⽅も、実はそんな簡単ではなくて、さすがに仲裁判断書全体について、これでOKか、イエスかノーかという採り⽅はしないと思いますが、例えば請求項目ごとに決を採っていくというやり⽅、請求項目の中にもさらに争点がありますが、争点ごとに採っていくやり⽅とか、精密なやり⽅をしようと思えば、いくらでもできるわけで、そこはなかなか難しいところだと思います。
したがって、結論はOKであっても、その理由づけは納得できないということも結構多いわけで、この理由づけだと仲裁判断が取り消されるおそれがありますよ、だからこちらの理由づけでいくべきだといった議論を戦わせることもあるので、意⾒が分かれた場合についての処理というのはなかなか難しいところです。
それから、先ほど道垣内さんから趣旨の説明があったとおり、少数意⾒の記載については、委員会においてもいろいろな意⾒がありました。先ほど申し上げたように、少数意⾒を認めないと、結局、結論や理由づけがおかしくなってしまい、後
で仲裁判断取消しになったり、あるいは訴えられたりした場合にリスクヘッジができない、だから少数意⾒は書けるようにしておくべきだという意
⾒も出されました。
他⽅、少数意⾒の記載を認めると、先ほど道垣内さんがおっしゃったような、いろいろな弊害的なことも出てくることが考えられるし、少数意⾒を書くことが許容されているのに書かなかったということは、賛成したというふうに推認されてしまうということもありうるとすれば、それもどうかと思います。
この規定は少数意⾒の記載は許されないと明記されており、もちろん当事者の合意による変更は可能ということですが、これが実務上、どういうふうに運⽤されるのか、仲裁⼈にとって、これで本当に不都合がないのか、慎重に運⽤をみるべきであると思っております。
〇xx いくつかの点についてお話をいただきましたが、まず合議の運⽤について、どの時点で合議をするのか、それから合議の進⾏の⽅法等についての実務的なご紹介がありました。このあたりは実務的には、いかがでしょうか。
〇Frxxxxx x数意⾒の記載については、そもそ
も仲裁判断に理由を付すことのコロラリーとして、当事者に反対理由も含めた判断理由を知ってもらうということをプラスの要素として考える意
⾒や、反対意⾒を記載することによって、多数意
⾒がより熟慮されたものになるメリットも指摘されているころで、国際的にも議論があるところです。今回は、道垣内さんが言われたような、少数意⾒の公表が悪⽤されたり、不適切に使われたりする場合のネガティブな部分を重視して、禁止を明記したということかと思います。
〇xx この点は両論ともに十分あり得るところだと思います。いずれにしても、この規則では原則禁止という規律が示されましたが、これを前提に、そのとおりでいくのか、それとも別段の合意をして少数意⾒を記載する形での仲裁判断を望むのかというのは、一応、当事者のイニシアティヴに委ねられています。ですので、今後、その運⽤を⾒ていて弊害が⽣じないようであれば、これは
十分合理的な選択だったという評価はあり得るのかなと思っているところです。
(c)少数意見の仲裁人が取り得る選択肢
〇xx 仲裁⼈間で、当然、異なる意⾒が合議の段階ではあり得るということを前提として、最終的に多数意⾒と少数意⾒とに分かれた場合、少数意⾒の公表をどうするかについて、デフォルト・ルールとしては、先ほど説明されたような弊害に鑑みて公表できないこととしたということです。裁判での少数意⾒の表記の仕⽅についても、私の理解では、アメリカなどのコモン・ロー諸国ではどちらかといえば少数意⾒も判決に記載するということが望ましいと考えられているのに対して、大陸法諸国においては、少数意⾒は基本的には公表しないという立場をとっていて、そういう司法の文化によっても考え⽅は分かれてくるところかもしれません。
この規定の下では、最終的に多数意⾒に賛成できないと考えた仲裁⼈は少数意⾒を公表することができないわけですが、その他にどういうような
⾏動をとることができるのかという点は、仲裁にとっては大きな問題になろうかと思います。xxさん、いかができしょうか。
〇xx 仲裁⼈の立場からすると、3つの選択肢があるのではないかなと思っています。1つ目は、署名を拒否するという選択肢。2つ目は、辞任するという選択肢。3つ目は、意⾒は違うけれども、最終的には納得するということで特に何もしない、普通に署名するという選択肢、この3つがあるかと思います。
1つ目の署名しないについてですが、コンメンタール(xxxxxか著『仲裁法コンメンタール』
(2003年)215頁)でも想定されています。もっとも、そのようなことが許されるかという問題があります。
また、署名を拒否した場合、仲裁判断⾃体は、 3⼈中、過半数の2⼈が署名すれば成立するのですが、1名の署名がないことの理由を付すとすれば、
「多数意⾒に基づく仲裁判断に反対であると述べて署名を拒否した」というふうに書くのか、ある
いは単に「署名を拒否した」と書くのか、問題になると思います。反対したので署名を拒否したと書くことは実質的にこの規定に抵触するということであれば、理由はよくわからないけれども署名を拒否したということで、単に「署名を拒否した」と書くしかないということになるのでしょうか。あるいは、「仲裁⼈Xは署名を拒否したので署名しない」と書くことになるのかなと思います。
2つ目の選択肢は辞任するというものです。これはかなり思い切った対応で、その後の⼿続がどうなるのかという問題があります。また、辞任の場合、恐らく、当該仲裁⼈への報償⾦の⽀払いはないということになりそうです。仲裁⼈には、これらの点をご検討の上、どうするかというのを決めていただくことになるかと思います。
3つ目の選択肢ですが、最終的に意⾒が合致しないことに至った過程にもよるのだと思うのですが、審議が尽くされたということであれば、仲裁判断に記載される意⾒には個⼈的には賛成できないとしても、仲裁判断には賛成するという選択肢もあると思います。
〇xx 3つの可能性を整理していただきましたが、第1点の「署名しない」というのは、確かに商事仲裁規則66条6項(インタラクティヴ仲裁規則67条6項)で「仲裁⼈は、仲裁判断書に署名しなければならない」と定められていますが、それに続けて、「仲裁⼈の過半数が署名すれば足りる」と定められており、署名しない仲裁⼈がいることを前提とした規定になっているわけです。
これがどういうことを想定しているかですが、病気などで、どうしても署名ができない場合当然それに該当するのでしょうけれども、判断書に反対であるから署名しないということが認められるのかどうかということは、一つの解釈上の問題になり得ると思います。xxxx、このあたりはどうですか。
〇xx この点は仲裁法39条に、商事仲裁規則66条6項(インタラクティヴ仲裁規則67条6項)のベースになる規定があります。立案担当者のコンメンタールの記載(xxxxxか著『仲裁法コンメンタール』(2003年)215頁)などを⾒ますと、何らかの理由で一部の仲裁⼈が署名できない場合、あ
るいは署名を拒絶する場合に、仲裁判断成立が不可能になったり遅延したりするのを防ぐため云々ということで、拒絶する場合も想定は一応しているということです。そして、なぜ署名を拒絶するのかと考えますと、仲裁判断に反対しているという場合も十分に考えられるかなと思いますので、そういう場合も一応あり得るという前提で仲裁法はできているのかなと思います。
〇xx 署名拒絶は、商事仲裁規則63条(インタラクティヴ仲裁規則64条)の違反にはならないという理解でいいのですかね。
〇xx xx場合、「仲裁判断に反対だから署名しない」とまで書くということになると、63条(64条)の趣旨には沿わないことになると思われますので、そこは単に、「仲裁⼈Aは拒絶するため署名がない」、という記載にとどめるのが63条(64条)と66条(67条)、双⽅の調整点ということでしょうか。そのあたりは、xx先⽣が先ほどおっしゃったとおりかなと思います。
〇xx それは可能であるということですかね。
〇xx 私は、仲裁判断に反対であるということを理由に署名を拒否することは許されないのではないかと思っています。
ただ、許されないとはいっても、実際上、そういう場合が⽣じたときに困るので、救済規定を設けたのが仲裁法の規定ではないかと思います。
もう一つ、xxさんがおっしゃった対応の3つの選択肢の中の最後の何もしない、つまり、仲裁判断書にそのまま署名をするという選択肢に関して、署名したからといって仲裁判断書の結論理由すべてに必ずしも賛成しているという意思表示と解釈することは、おかしいのではないかと思っています。こういう形で多数決の末、仲裁判断書が成立したということを認めるということではあっても、⾃分がそれに賛成したということの意思表示とは解すべきではないのではないかと思います。
3つの選択肢とおっしゃったのですが、もう1つあり得る選択肢は、その段階で当事者に働きかけて、別途の合意を取るというのはないのでしょうか。もちろん、ほかの仲裁⼈がOKしないと、それはできませんけれどもね。
〇道垣内 両当事者に少数意⾒を書いてよいかということを質問することは、仲裁廷の合議の内容を漏らすことになるように思いますが、いかがでしょうか。
〇xx それを漏らしたことになるということでしょうか。
〇xx 仲裁廷全体として、そう働きかけするのは大丈夫ですね。
〇xx 仲裁廷から、事情により少数意⾒を書いてよいことにしていいのかどうかを当事者に聞いて、それでよいとなれば書ける、そういう道はないのだろうかと思ったのですけれども、そこはいかがでしょうか。
〇xx いかがですか。
〇xx そういうことをしたときに、この規則に違反するとか、あるいは仲裁法の規定に反するかといえば、「仲裁廷が」という形でやれば、規則違反にはならないのではないかと思います。しかし、それが適切なプラクティスかというと、仲裁
⼈に選任されて,これを受ける段階で、どういう
ルールの下で⾏われる仲裁であるかということを踏まえて受任すべきであるようにも思われます。そういう意味では、初めの段階で合意を取り付けるというのはあり得るのかもしれませんけれども、最終段階に至って、実際、合議で紛糾して、少数意⾒を書きたくなったということで、その段階で少数意⾒の記載に関する働きかけをするというのが適切かと言われると、それはちょっと疑問かなという印象を持ちました。
〇xx 私も、よほどの場合だと思っているのですが、ただ最初の段階では、⾃分が少数意⾒を書かなければならないような結論になるとは、普通は思わないわけで、やはりそれをどうしても書かざるを得ない場合というのは、合議の途中の段階や合議が終わった段階ではないかと思うので、そういう問題提起をしたわけです。私も、それが広く⾏われるべきプラクティスだとは思いません。
〇道垣内 仲裁判断書の理由の最後のところに、
「以上の理由により全員一致で主文のとおり判断した。」と書くところ、「全員一致で」という部分を「多数決で」と書くとすれば、少数意⾒である
仲裁⼈としても署名に少し抵抗はなくなるのではないでしょか。もちろん、そのように書くことが多数意⾒で認められる必要はあります。
〇xx 少数意⾒があったということは示すということですね。
〇道垣内 正面からは書かず、あったことを示唆するだけに止めるというものです。
〇xx 確かに、3⼈全員でも多数決は多数決であるからということですね。
〇Xxxxxxx xxようにしたとしても、道垣内さんが言われたような弊害は⽣じ得るのではないでしょうか。
〇道垣内 私が申し上げたかったのは、そう記載することによって、多数意⾒に従って書かれている仲裁判断の内容に反対であるのにそれに署名する仲裁⼈の心の葛藤を何とか避けることになるのではないかという思いからです。
〇xx そういうことですね。
〇xx 一般的には、「全員一致で」というのは記載するのでしょうか。判決の場合には、「当裁判所は」ですよね。それとパラレルに考えれば「、当仲裁廷は」ということになりそうですが、いかがでしょうか。
〇道垣内 全員一致と書くのが普通かどうかはと
もかく「、多数決で」とあえて書くということです。
〇Freeman あともう一つ、実務的な、中間的な対処法としては、比較的仲裁⼈の間に意⾒対立はあるけれども、比較的友好的な場合になりますが、ある論点については異論もあったということを脚注等に書くことは考えられますし、それによって、当事者は、⾃分なりの推測を働かせるでしょうから、そういった⽅法もありうるところかもしれません。
〇xx そうですね、仲裁判断理由の書き⽅で、うまく調整できれば、それは⽇本でも最⾼裁の合議判決では、そういうやりとりをしつつ判決をまとめていっているのだと思いますので、それが一番望ましいということなのですかね。
〇xx Frxxxxxx⽣のやり⽅は、63条(64条)
には抵触はしないのでしょうか。「少数意⾒」の解釈の仕⽅なんだと思いますけれども、脚注であっても、少数意⾒があったこと⾃体を公表する
ことは問題にならないのでしょうか。
〇xx 63条(64条)は、少数意⾒があったこと
⾃体の公表の禁止か、誰がその少数意⾒を言っているのかの公表の禁止か、誰がどういう理由で反対なのかの公表の禁止か、何段階かあるような気がしますけれども、それぞれによって弊害も違ってくるような気は確かにしますね。
〇xx 理由の中に、「これこれ、こういう考え
⽅もあるが、何々である」というふうに書くのは、構わないと思います。「これこれ、こういう考え
⽅を主張する仲裁⼈もいたが」というふうに書くと、先ほどの問題になってくるわけですね。そういう場合、当事者のどちらかが主張しているでしょうから「、そういう意⾒もあるが」と書くのは、おかしくないと思いますね。
〇xx それを⽀持する仲裁⼈がいたということを明らかにすると、誰が、ということは言わなくても、63条(64条)には引っかかるということですか。
〇Freeman 規定の趣旨からすると問題ないようにも思いますが、形式的には引っかかり得るという議論はあり得るので注意は必要でしょうね。
〇xx ただ実際上は、ある程度わかりますよね。
⾃分が選んだ仲裁⼈が、多分そう言ったのだろうなという推測は働くのかもしれないですね。
〇Freeman それで弊害があるかというと、必ずしもないのではないかと思います。
〇xx ということですかね。私⾃身も、多数意
⾒に反対だからといって署名を拒否するというのは、少なくとも望ましくはないような気がします。仲裁⼈は、仲裁⼈と選任された以上は、最後に署名をするところまでが基本的にはその職務なのだろうという感じがします。本来のあり⽅としては、理由の書き⽅のところで、できるだけ⾃分の意⾒を入れてもらうように頑張るというところなのかなと思います。そういう努⼒が実を結ばなかった場合、最後の最後には仲裁⼈報償⾦を捨てて辞任するということになるほかないように思います。
〇xx 辞任されるよりは、署名されないだけのほうが前には進むのではないでしょうか。辞任されると、不都合ではないですか。
〇道垣内 ⾃己都合で辞任されると、その仲裁⼈
に報償⾦を⽀払うのか否かという問題が⽣ずることになりかねません。事案の処理について不都合があるかというと、少数意⾒の仲裁⼈が辞任しても、最後の段階ですから、仲裁⼈を補充しないという判断を他の2名の仲裁⼈がして、そのまま2名の多数意⾒で仲裁判断をすることができると思います。
〇xx できるでしょうね。どういう実務になっていくかということは、今後非常に興味深いところですね。
商事仲裁規則第2編(インタラクティヴ仲裁規則第2編第84条から第91条)
第83条(第1編の規定との関係)
1 第2編は第1編の規定の特則として、迅速に仲裁⼿続を進めるために必要な事項を定める。
2 第2編に規定がない事項については、第1編の規定の定めるところによる。
第84条(迅速仲裁手続の適用)
1 申立ての請求⾦額又は請求の経済的価値が5,000万円(外国通貨から換算する場合には、申立ての⽇の直前の営業⽇におけるTTM
(Telegraphic Transfer Middle Rate) を 含む妥当な変換レートにより⽇本円に換算し た額による。以下同じ。)未満の場合には、第2 編の規定による。ただし、仲裁合意において仲裁⼈の数を3名とする合意がある場合、又は被申立⼈が仲裁申立ての通知を 受領した⽇から2週間以内に当事者が事件を迅速仲裁⼿続によらない旨の書面による 合意をJCAAに通知した場合には第1編の規定による。
2 申立ての請求⾦額又は請求の経済的価値が5,000万円以上の場合であっても、被申立⼈が仲裁申立ての通知を受領した⽇から2週間以内に、当事者が事件を迅速仲裁⼿続によるべき旨の書面による合意をし、JCAAに通知した場合には第2編の規定による。
7.迅速仲裁手続(商事仲裁規則第2編、インタラクティヴ仲裁規則第2編)
3 第2編の規定によるべき仲裁申立てがされた場合であっても、次条の規定に従って、請求⾦額若しくは請求の経済的価値が 5,000万円以上の反対請求の申立てがされた場合又は⾃働債権の⾦額若しくは経済的価値が5,000万円以上の相殺の抗弁の提出があったときは、第1編の規定による⼿続に移⾏する。ただし、当事者が迅速仲裁⼿続によるべき旨の書面による合意をした場合には引き続き第2編の規定による。
4 主たる請求に附帯する利息その他の果実、損害、違約⾦又は費⽤の価額は、前三項の請求
⾦額又は請求の経済的価値に算入しない。
5 請求の経済的価値の算定ができないとき若しくは極めて困難であるとき、又は請求の経済的価値に関し当事者間に争いがあるときは、第1項から第3項の経済的価値は5,000万円を超えるものとみなす。
6 JCAAは、迅速仲裁⼿続によることが確定したときは、遅滞なく、当事者及び仲裁⼈にその旨を通知する。
第85条(反対請求の申立て及び相殺の抗弁の提出期限)
第2編の規定によるべき仲裁申立てがされた場
合においては、被申立⼈が仲裁申立ての通知を受領した⽇から2週間以内に限り、被申立⼈は反対請求の申立て又は相殺の抗弁の提出をすることができる。
第86条(申立て等の変更の禁止)
いずれの当事者もその申立て(反対請求の申立てを含む。)又は相殺の抗弁を変更することができない。
第87条(仲裁人の選任)
1 仲裁⼈は1⼈とする。
2 当事者は、迅速仲裁⼿続による旨のJCAAからの通知を受領した⽇から2週間以内に合意により仲裁⼈の選任をし、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対して仲裁⼈選任通知をしなければならない。
3 前項に定める期間内に当事者が仲裁⼈選任の通知をしない場合には、JCAAが仲裁⼈を選任する。
4 前項の規定によりJCAAが仲裁⼈を選任する場合において、当事者がいずれの当事者の国籍とも異なる国籍を有する仲裁⼈を選任することを求めたときは、JCAAはこれを尊重するものとする。
5 当事者による仲裁⼈選任の効⼒は、JCAAが選任を確認することによって⽣ずる。JCAA は、その選任が不適当であることが明らかであると認める場合には、当事者にその意⾒を聴いた上で、理由を示すことなく、その選任の確認をしないことができる。
6 JCAAは、仲裁⼈の選任を確認したときは、遅滞なく、当事者及び仲裁⼈にその旨を通知 する。
7 JCAAが仲裁⼈の選任を確認しなかった場合には、当事者は、JCAAが定める期限までに新たな仲裁⼈を選任しなければならない。
第88条(書面審理の原則)
1 仲裁廷は、原則として、審問期⽇を開かず、書面審理により仲裁⼿続を進める。
2 当事者の意⾒を聴いた上で、仲裁廷が審問の必要があると認める場合には、合理的な⽅法により、審問期⽇は可能な限り短期としなければならない。
第89条(仲裁判断の期限)
仲裁廷は、その成立の⽇から3か⽉以内に仲裁判断をするよう努めなければならない。
第90条(手続参加及び複数の仲裁手続の併合の禁止)
第56条及び第57条の規定は、第2編の規定による⼿続には適⽤しない。
〇xx それでは、通常の仲裁についてはとりあえず終えて、次に「迅速仲裁⼿続」をとり上げよ
うと思います。以前の規則では「簡易仲裁⼿続」という名称でしたが、これを変更したものです。仲裁規則では83条以下、インタラクティヴ仲裁では84条以下に規定されています。この改正の趣旨について、まずご説明をお願いします。
(a)本手続の趣旨
〇道垣内 当事者にとってはどんな紛争も重大ですから、「簡易」に解決するという表現よりも、「迅速」に解決しますという⽅がいいだろうということから、名称を変更しました。
内容については、前の規則では、2,000万円未満だったところ、5,000万円未満のケースであれば、当事者が別段の合意をしない限り、迅速仲裁
⼿続が⾏われることになるように改正しています。もちろん、5000万円未満の紛争であっても、当事者が別段の合意をして通常の⼿続で仲裁をすることは可能です。他⽅、5,000万円以上のケースでも、当事者の合意があれば、迅速仲裁⼿続によることができます。
迅速仲裁⼿続では、1⼈の仲裁⼈で(商事仲裁規則87条1項。インタラクティヴ仲裁規則では1か条づつ大きな数字の条文。以下同じ)、3カ⽉以内に仲裁判断をするよう努めなければなりません
(89条)。前の規則では3カ⽉以内「しなければならない」だったのですけれども、仲裁⼈として相当大変な作業をしていただくケースも少なくなかったため、少し緩和して「努めなければならない」ということに改正しております。書面審理であって、証⼈尋問はしないのが原則です(88条)。そのほか、反対請求の申立てや相殺の抗弁の提出期限を仲裁申立ての通知受領⽇から2週間に限定したり(85条)、⼿続参加等を認めなかったり(90条)、以上のルールが全体として、⼿続を早く進めるためのセットになっています。
したがって、予想される紛争次第では、早く紛争解決をしたい⼈は迅速仲裁⼿続を仲裁合意の中で特定しておくことは合理的であろうと思います。
(b)迅速仲裁手続の実務運用
〇xx そういうことで迅速な仲裁⼿続を⽤意し
たということですね。特に「原則として、審問期
⽇を開かず、書面審理により仲裁⼿続を進める」と定める88条1項の規定が設けられているところが大きいかと思います。一応「原則として」となっていて、例外的には審問期⽇は開けるということになっているわけですが、例外的に審問を開催すべきかどうかということを、どういうふうに判断するのかというのが、実務上、一つ問題になりそうです。Freexxxxx、xれに何かありますか。
〇Freexxx xず審問というのは、本来、仲裁⼿ 続において⼿続保障の重要な部分ですが、他⽅で、一般的には迅速性・効率性の観点から、当事者が書面審理に合意することもできるとされています。ただ、少し注意が必要なのは、この規定は5,000 万円以下の紛争については⾃動的に迅速⼿続によることにされていますので、そのことを十分認識していない当事者がいる場合に、⼿続保障にかかわるので、機械的に審問の要請を拒否することは注意すべきであり、場合によってはそれを理由に仲裁判断取消の申立てにもつながり得るところだ
と思います。
類型化するのは難しいとは思うのですけれども、例えば非常に複雑な事実関係があって、どうしても当事者から説明を受けないと理解しがたいような場合や物理的に検証が必要な場合、例えばある書証について成立の真正が問題となっているようなときには、限定的に審問を開催することを検討するのではないかと思います。
もちろん迅速性をうたっているわけですので、必ずしも代理⼈も当事者も含めて、一堂に会して、非常に費⽤や時間のかかる形で実施する必要はなく、状況に応じて、例えば電話会議やテレビ会議で⾏っても、十分、審問としては成り立ち、迅速性とのバランスもでき、⼿続保障が問題とされるリスクは相当軽減されるので、そういった⽅法も考えられるべきかと思います。
〇xx 今回の改正により、⼿続が明確化され、かつ迅速に進めるという趣旨が明確にされて、かつ5,000万円未満の⾦額については、デフォルトは、この迅速仲裁⼿続によるということになったので、かなり利⽤される場合がでてきそうな感じ
があります。従来2,000万円が基準でしたので、1億円はちょっと⾼過ぎるのではないかということで、5,000万円ということになったわけですが、これをどういうふうに考えるべきでしょうか。将来的にこれを引き上げるということも考えられるでしょうか。そのあたり、xxxxxxコメントをいただけますか。
〇xx 私⾃身は、従来のJCAAの取り扱い事件における請求⾦額の相場というのは、必ずしも把握していないのですけれども、一般的な感覚で言えば、5,000万円というのはそれなりに大きな額ではあって、⼿続の名称も変わったわけですけれども、実質からいっても、もはや少額事件のための簡易⼿続というイメージは必ずしも当てはまらないものになったのかなと思います。
ちなみに裁判の場合、最⾼裁判所事務総局民事局「平成29年度民事事件の概況」(法曹時報70巻 11号3041頁以下)などをみますと、地裁の民事第xx通常訴訟では、一番多い価格帯というか、訴額の分布が140万円から500万円までで、これが全体の約4割を占めているほか、地裁でも140万円以下のものが2割弱あります。これらを合わせますと、地裁の民事訴訟は6割ぐらいが訴額500万円までの事件ということになります。さらに、500万円から1,000万円の事件が12.7%ということですので、地裁の民事訴訟の場合には、少なくとも7割ぐらいの事件が訴額5,000万円までに収まるということで、迅速仲裁⼿続は、訴訟で言えばかなりのボリュームゾーンを押さえていることになるのかなと思います。
そうした事件が原則として仲裁廷成立から3ヵ
⽉以内に解決されるということになると、このインパクトは非常に大きいという⾒⽅ができるかなと思います。それがうまく実現されていけば、訴訟に対して仲裁は非常に迅速であるという評判を確立することにつながりますから、仲裁の魅⼒を強化するという意味では非常に望ましいことかと思います。
もっとも、⾦額がそれなりに大きな額になってきますので、当事者としても、解決の質に対する要求が相応に⾼くなってくる面はあるだろうと思
われまして、何か当事者がその点に不満をもって
「早かろう悪かろう」みたいなイメージがついてしまうと、それは問題だろうと思います。
他⽅で、この⼿続で迅速に処理を図る主要な⼿段としては、書面審理で済ませるということがあげられますが、訴訟であれば、訴額5,000万円ぐらいの事件で、実際に争われている場合には、証
⼈尋問をするのがごく普通ではないかと思われます。仲裁⼿続でも、先ほどFreexxxxxからもご指摘がありましたけれども、一部の事件では証⼈尋問等が必要になることがあるだろうと思います。そして、それがかなりの事件で必要だということになってきますと、この⼿続にいったとしても、実際は審問をやるとなれば3ヵ⽉では難しいということもあろうかと思いますから、かなり長期化するものも出てくる。
そうなると、通常⼿続との比較で、迅速仲裁というのは名ばかりじゃないかという実態が起きるおそれもないわけではなく、そういうことになるとすれば、⾦額を引き上げることによるデメリットということになるのかなと思います。
なお、仮に、この⼿続がうまく進んでいった場合には、さらに⾦額を引き上げることはどうかというお話がありましたけれども、現在の規則でも、 5,000万円を超えるものについて、当事者が合意すれば、迅速仲裁⼿続を使うことができるということになっておりますので、例えばこの⼿続の評判がよいということで、合意がかなりなされるようなことになってくれば、もう少し様子を⾒て、
⾦額を上げていくというようなことも、あるいはあり得るのかなとは思います。
〇xx xxさんの最初にありましたけれども、 JCAAでの仲裁事件の係争額は大体どれぐらいなのでしょうか。
〇事務局 最近の統計で、紛争⾦額のボリュームゾーンは1億円から10億円です。前の規則のもとでは2,000万円未満のものが原則として簡易仲裁規則の適⽤とされていたのですが、2,000万円未満のものはだいたい1割から2割ぐらいです。
〇xx そうすると、5,000万円未満の事件は3割程度ということでしょうか。
〇事務局 3割足らずです。1億円未満であれば3割強になります。
〇xx そういうことですね。
〇xx 旧規則のもとで、2,000万円未満の事件の場合、簡易仲裁⼿続で処理したものも結構あるのですか。
〇事務局 簡易⼿続で⾏われる事件は、全体の1割から2割ぐらいで、毎年1、2件です。
〇xx 2,000万円未満だけれども、当事者の合意で通常の⼿続で処理するということもあるのでしょうか。
〇事務局 それはないです。
〇xx 審問はしないことが多いのでしょうか。
〇事務局 通常、審問を⾏っています。500万円ぐらいの小額事件で、被申立⼈の中国の企業に、わざわざ来てもらうのは大変だということで、仲裁⼈が双⽅の当事者から合意を取りつけて、書面審理のみで⼿続を⾏った例があります。
〇xx 3ヵ⽉でやっていたのですか。
〇事務局 原則、3ヵ⽉ですが、その期間ではできない場合もあり、そういう場合は、期限の延長をしています。
〇道垣内 これからはテレビ会議を通じても臨場感が失われないような大容量通信がもっと安く利
⽤できるでしょうから、完全な書面審理にする必要は必ずしもないと思われます。テレビ会議を活
⽤して、充実した審理を迅速にできるのではないでしょうか。
〇xx 仲裁廷成立から3ヵ⽉というのは、相当チャレンジングな設定だと思います。それを守れるかは、⾦額の多寡もそうなのですが、どういう争点なのかということによるのだと思います。例えば契約の解釈とか、法律の解釈だけが争点だというようなものだったら、両⽅から主張書面が提出され、それをもとに審問を経ずにごく短期間で判断することができるのかもしれませんが、事実に争いがあるようなものだと、審問を経ずに仲裁判断を出すのはなかなか難しいのではないでしょうか。
なお、審問を実施すると時間がかかるかというと、書面のやりとりだけよりも、審問を開いて一
2 前項(2)の規定にかかわらず、複数の仲裁⼈により仲裁廷が構成されている場合であって、死亡又は疾病により仲裁⼈が欠けたときは、仲裁⼈でなくなるまでの仲裁時間、最終的な紛争解決における貢献度その他の事情を勘案して、JCAAが当該仲裁⼈の仲裁⼈報償⾦の額を決定する。
インタラクティヴ仲裁規則第96条
1 仲裁⼈報償⾦は、当事者によるすべての請求の取り下げにより仲裁⼿続が終了した場合で あっても、減額されない。ただし、次項以下 の規定の適⽤があるときはこの限りではない。
2 以下に定める場合には、仲裁⼈の報償⾦は
⽀払われない。
(1)仲裁廷が成立する前に仲裁⼿続が終了した場合:すべての仲裁⼈
(2)死亡、忌避、解任(当事者間の合意による解任を除く。)又は辞任によって仲裁⼈が欠けた場合:当該仲裁⼈
3 前項(2)の規定にかかわらず、複数の仲裁⼈により仲裁廷が構成されている場合であって、死亡又は疾病により仲裁⼈が欠けたときは、最終的な紛争解決における貢献度その他の事情を勘案して、JCAAが当該仲裁⼈の仲裁⼈報償⾦の額を決定する。
4 第2項(2)の場合において、補充仲裁⼈が選任されたときには、補充仲裁⼈の仲裁⼈報償⾦は、第94条第1項又は第95条第1項によって計算される⾦額とする。
5 仲裁合意が不存在又は無効であることを理由として、仲裁⼿続の終了決定がされた場合には、その判断をした者の報償⾦は、第94 条第1項又は第95条第1項によって計算される⾦額の半額とする。
気に主張整理をして、その場で心証を取って判断につなげるというほうが早い場合もむしろあり得ると思います。したがって、必ずしも、審問を実施しないことが常に時間の短縮につながるという関係にあるわけではないように思います。
それにしても3ヵ⽉というのは非常にチャレンジングな期間であると実務家としては思います。しかし、それにチャレンジしていかないといけないということでしょう。先ほど道垣内さんがおっしゃったように、審問といっても、テレビ会議とか、電話会議とか、いろんな⽅法がありますので、そういうものを柔軟に使っていくということではないかと思います。
〇xx それはそうでしょうね。両当事者及びその代理⼈に任せているだけでは、なかなか迅速には進まないですよね。
⼿続のスピードは、裁判と比較した場合、仲裁の非常に大きなアトラクティブな部分だというふうに思われます。この迅速仲裁⼿続がうまく進んでいけば、通常の仲裁にもいい影響を及ぼすということになろうかと思いますので、この運⽤は非常に注目されるところなのだろうと思います。
他⽅で、当事者の⼿続保障の点で、Freexxxxxがおっしゃった問題がありますので、仲裁⼈も当事者も十分に⼿続保障を意識して⼿続を進めてもらうことが非常に重要なことであろうかと思います。
8.仲裁人報償金の減額等(商事仲裁規則96条、インタラクティヴ仲裁規則96条)
商事仲裁規則第96条
1 以下に定める場合には、仲裁⼈の報償⾦は
⽀払われない。
(1)仲裁廷が成立する前に仲裁⼿続が終了した場合:すべての仲裁⼈
(2)死亡、忌避、解任(当事者間の合意による解任を除く。)又は辞任によって仲裁⼈が欠けた場合:当該仲裁⼈
〇xx xxx裁⼈報償⾦に移りたいと思います。96条は「仲裁⼈報償⾦の減額等」という規定です。新しく導入されたものです。まず、この規定の趣旨について、道垣内さんからお願いします。
(a)本条の趣旨
〇道垣内 直前の商事仲裁規則の改正のときは私が改正検討委員会の委員長だったのですけれども、仲裁⼈報償⾦とか費⽤とかについてはあまり関心がなく、⽅向性について特段の考えはありませんでした。しかし、立場が変わって、JCAAの執
⾏理事になってみると、随分とものの⾒⽅、⾒え
⽅が変わるものだと思います。このたびの改正及び新規則制定では、こういうところがとても大切だということを思った次第です。
96条は、仲裁⼈報償⾦を払わない場合を定めています。一つは、同条1項1号が定めている場合、すなわち、仲裁廷が成立する前に仲裁⼿続が終了した場合です。この場合には、すべての仲裁⼈の報償⾦を⽀払いません。既に利益相反調査等の⼿続を終えていらっしゃるかもしれませんが、それほど⼿間がかかっていないと考えられるのと、それが仲裁⼿続開始後30⽇以内であって、申立てに係る請求の全部が取り下げられたときには、当事者に管理料⾦の90%を返還してしまうからです
(105条。迅速仲裁⼿続の場合には仲裁⼿続開始後 10⽇以内)。
もう一つは、2号が定めている場合、すなわち、死亡、忌避、解任又は辞任によって仲裁⼈が欠けた場合で、これらの場合には当該仲裁⼈の報償⾦を⽀払いません。ただし、解任のうち、当事者間の合意による解任の場合には、仲裁⼈には何らの非がないと推定されますので、仲裁⼈報償⾦をお
⽀払いします。それ以外の事情によって仲裁⼈が欠けた場合に、紛争を解決してもらいたいという当事者の最終的な目的に照らして、当事者が仲裁
⼈報償⾦を負担する謂われはないと考えられるので、⽀払いはしないこととしているわけです。また、仲裁⼈報償⾦の上限額との関係上、欠けた仲裁⼈に報償⾦を⽀払うと、補充される仲裁⼈の上限額はその分だけ縮減されることになり(これは当事者から⾒れば⾃らの与り知らない事情で上限額が増加する理由はないと考えられるからです)、そのことも考慮する必要があります。そういった観点から、欠けた仲裁⼈に報償⾦を⽀払うべき場合とそうでない場合とを整理したのが96条であり
ます。
死亡はご本⼈の責任ではないとも言えますが、当事者から⾒れば、結局、その仲裁⼈の作業は何ら役に立っていないのであれば、⽀払う謂われはないと考えられます。ということは、逆に、紛争解決に向けて役に立つ成果が引き継がれる場合にはお⽀払いをするべきだということになりますので、96条2項は、「複数の仲裁⼈により仲裁廷が構成されている場合であって、死亡又は疾病により仲裁⼈が欠けたときは、仲裁⼈でなくなるまでの仲裁時間、最終的な紛争解決における貢献度その他の事情を勘案して、JCAAが当該仲裁⼈の仲裁⼈報償⾦の額を決定する。」と定めています。実際にはJCAAは貢献度の判断はできないので、残りの仲裁⼈の⽅々に欠けた仲裁⼈の貢献度についてのご意⾒をいただくことになろうかと思います。そのご意⾒は、「その他の事情」に含まれると思われます。極端な場合としては、結審し、合議も終了していて、仲裁判断に署名する前にお亡くなりになったような場合、残りの仲裁⼈2名の署名で仲裁判断は成立するので、お亡くなりなった仲裁
⼈のご遺族に100%の報償⾦をお⽀払いすることになろうかと思います。
先ほどの少数意⾒についての議論において出てきましたが、少数意⾒を書くことができないのであれば辞任するというのは、そのご本⼈の都合であって、当事者から⾒ると、仲裁⼈に報償⾦を⽀払う必要はないということになるのではないかと思います。
(b)仲裁人の辞任の場合
〇xx こういう形で報償⾦が⽀払われない場合というものが明確化されたわけですけれども、道垣内さんからもお話があったように、忌避とか解任というのは、基本的には仲裁⼈側の事情によるものでありますので、報償⾦が⽀払われないことは基本的にやむを得ないところはあるということだと思います。
最も問題になるのは、辞任の場合ということになろうかと思います。具体的に仲裁⼈が辞任しなければならない場合についてですが、先ほど仲裁
判断に反対である場合というのが1つの例として挙がっていたかと思われますし、もちろん病気で辞任するということはあり得ることなのかなと思われるわけですが、その他、辞任するのは実務的にはどういう場合があるのでしょうか。xxxxxxがでしょうか。
〇xx 思いつくのは、仲裁⼈が公職に就任し、かつ、その公職が兼業を禁じている場合です。
また、先ほど議論になりましたが、仲裁判断書の結論とか理由に⾃分は承服できないということから辞任をする場合です。仲裁法上は、辞任は特に正当な理由は必要なかったかと思います。一種の委任契約ということで、理由の如何を問わず辞任できると思いますが、仲裁判断の理由・結論に承服できないから辞任するというのが本当に許されるのかどうか、これは議論があり得るところだと思います。
また、弁護⼠である仲裁⼈の場合は、弁護⼠のプロフェッションとしての義務との相克から、どうしても辞任を検討せざるを得ないというのは、これは想定しておかなければいけないのかもしれません。
さらに、途中から事務所の弁護⼠が新しい案件を受任したことによって、その段階でコンフリクトが⽣じてしまうこともあり得ます。事務所によって、いろいろな規則があるでしょうが、そういう場合は、その新しい案件を受任しないでくださいというのが普通だとは思うのです。しかし、事務所内の⼒関係でそうならない場合もあるということも聞いております。その結果、回避事由に当たる場合は、辞任せざるを得ないということかと思います。
よく議論されるのは、忌避を申し立てられたり、忌避まではいかなくても、仲裁⼈の開示した情報に基づいてチャレンジされたりした場合ですね。そういう場合に忌避を申し立てられたら辞任する、気持ち悪いから辞任しますという対応をとる仲裁⼈もいるやに聞いています。そこは議論のあるところで、忌避が認められて排除されない限りは、仲裁⼈として務めるべきであるという考え⽅もあるかと思います。ここは、おそらく考え⽅が
分かれるのではないかと思います。
〇xx ありがとうございました。いくつか具体的に辞任せざるを得ない、辞任することが実務上あり得る場合をあげていただきました。
まず、死亡の場合については、96条2項で、複数仲裁⼈の場合には、その死亡した仲裁⼈の報償
⾦がゼロになるとは限らないようになっているわけですが、ここで疾病により欠けた場合も同じように扱われていますね。
〇道垣内 疾病の場合は当事者に迷惑をかけたくないということで辞任されることがあり、それは辞任ではあるのですが、⾃己都合で勝⼿に辞任するのとは異なり、死亡の場合と同じように、場合によっては報償⾦をお⽀払いすべきこともあるだろうと考えたためです。
〇xx そうですね。疾病によって辞任した場合は、この2項で、いろいろな事情を考慮して報償
⾦額を決定するということですね。
ただ単独仲裁⼈の場合は、作業の引き継ぎは実際上できないので、死亡でも疾病による辞任でも報償⾦はゼロにならざるを得ないわけですね。これはちょっと気の毒な感じもあるわけですけれども、しかし後から選ばれた仲裁⼈がやり直さざるを得ないということで、そのために当事者の⽀払額が増えるのはおかしいだろうということで、そういうことになったということかと思います。
公職就任というのは、これはしょうがないですかね。公職を受ける以上は、仲裁⼈報償⾦はゼロになっても、それはまあ、しょうがないだろうと思います。
〇道垣内 ご本⼈にとってはしょうがないのかも知れませんが、当事者からみると大変な迷惑ですね。いったん仲裁⼈を引き受けて途中まで作業をしてきたわけですから、公職就任というご判断は、報償⾦をゼロとするだけでは足りず、当事者に損失を与えていることをどう考えるという問題があるように思います。
〇xx そういうことですか。
〇道垣内 それまで時間は経過し、その間の代理
⼈弁護⼠の仕事の一部は流⽤可能であるとしても、タイム・チャージであれば一定の部分は無駄
になります。仲裁⼈報償⾦がゼロになるのだからよいではないかというわけにはいかないようにも思われます。
〇xx そうですね。仲裁⼈は公職をなるべくは断るべきだということかもしれないけれども、断れない公職もあると思われます。難しいところですね。
xxxxがあげて下さった別の問題のうち、事後的な利益相反の場合についてです。これは先ほど忌避のところでもでてきたところですけれども、仲裁⼈の所属事務所への新⼈弁護⼠の加入といった事後的な事情の変化によって利益相反状態になってしまったということで、仲裁⼈が辞任せざるを得ない状況がでてくるのではないかということでした。ただ本来的には、そういう事件を事務所として受け入れてくれるなということを仲裁⼈としては言うべきではないかというお話でした。
そういうような状況になるということを、どのように回避すべきか、どういうことが考えられるかとか、難しい問題かもしれませんが、いかがでしょうか。
〇xx 仲裁⼈を受任するときには、コンフリクト・チェックをかけます。しかし、普通の弁護⼠は、その際には、「当事者は⾃分とは関係ない」という程度の判断しかしないと思うのです。また、将来、関連して何かが動きそうだという情報があれば、仲裁⼈就任をやめてほしいとか申入れをすると思うのですけれども、そういう情報がない限り、コンフリクト・チェックの時点で何か申入れをすることは難しいと思います。そして、後になって、その大きい案件が、突然、来たときに、どうするのかという問題が⽣じると思います。そこは、先
⾏する仕事をしている弁護⼠がいる以上、後から来た案件はお断りしようというパターンと、事務所内の⼒関係で、その大きい案件を受けたいというパターンがあるかと思います。
その後者のxxxxの場合、仲裁⼈が引き続き職務を⾏うことについて同意をいただけるかどうかというのが、次に問題となります。他の選択肢として、仲裁⼈が、事務所をやめるということも、論理的にはあるかもしれませんが、そこまで要求
するのは⾏き過ぎという気がします。
事務所に所属する⼈の構成は基本的に変わらないが新たな案件が来るパターンと、最⾼裁の事件のように、新たな⼈が事務所に入って来るというパターン、あるいは、事務所⾃体が合併するというパターンもあるので、難しい問題をはらんでいます。
こうした問題を考慮すると、インディペンデント・アービトレーターのほうが、1⼈で活動されているので、コンフリクトの可能性は相当程度下がるのではないかと思います。
他⽅で、インディペンデント・アービトレーターであっても、何年かやっているうちに気が変わって、他の事務所に合流される⽅というのもいらっしゃると思います。その場合、その仲裁案件が終わるまで移籍するのを待っていただくとか、そういう判断になるのかなという気もする反面、その仲裁⼿続がせいぜい1年で終わるだろうと思っていたところ、いろいろあって5年も10年も仲裁⼿続をやっているといった事情があれば、合流されようとしている⽅に気の毒であるという感じもします。
別の視点として、選任時にそのような状況が起きにくい⼈、例えば、⽇本の当事者とアメリカの当事者の仲裁事件であるときに、仲裁⼈がドイツの仕事ばかりしている⼈である場合や、ドイツの仕事ばかりしている事務所の⼈である場合には、恐らく、取扱分野が異なるので、コンフリクトの問題は回避しやすくなるのではないかと思います。しかしながら、その場合、仲裁⼈の専門性の観点からは、取扱分野がちょっと離れていってしまう可能性があるので、バランスを考える必要があると思います。
〇道垣内 法律事務所の運営という観点からは、その所属弁護⼠が仲裁⼈に就任するということは、1年近く、場合によってはもっと長く、仲裁事件の両当事者の別の案件を受任できなくなるということを意味するわけですから、事務所全体として失うかもしれない仕事は大きいと判断し、仲裁⼈の受任を抑制することもあり得るように思われます。実際のところはどうなのでしょうか。
〇xx 実際、普通の案件では一⽅の当事者との 関係だけが問題なのですが、仲裁⼈としてのコンフリクトの場合は、おっしゃったように、両当事者なので、ダブルのインパクトがあり得ますよね。仲裁⼈にとって、IBAのガイドライン上、レッ ドにあたるような場合で、回避しなければなりま
せん。
ただ、それはさすがにそういう状況になってしまう新たな案件の他の弁護⼠による受任については、事務所内で、それはやめてくれということは言えるのではないかと思います。難しいのは、オレンジ、例えば別の案件で当事者の案件を受任するという場合です。このような場合は利害関係情報として開示しなければなりませんよね。開示して、場合によってはチャレンジされて、忌避事由になることもあり得ます。そういうことになり得る場合に、案件を受任しないでくれということを他の弁護⼠に言えるかというと、そこがなかなか難しいところだと思います。
〇xx 実際のJCAAでの仲裁において、今までそういう問題が⽣じた案件はあったのですか。
〇事務局 ありました。仲裁⼈就任後、仲裁⼈と同じ事務所に所属する別の弁護⼠が、仲裁事件の当事者の関連会社を相⼿⽅とする訴訟⼿続の代理
⼈を受任し、このことを、事後的に利害関係情報として当事者に開示したという事例です。当事者からは忌避申立てがされなかったので、実際には影響はありませんでした。
〇xx xx⼈の所属事務所の他の弁護⼠が仲裁事件の当事者が関係する事件を辞任したという事例ですね。
〇事務局 そうです。その弁護⼠が問題となる新規案件を代理⼈として受任する前のコンフリクト・チェックの際に仲裁⼈がその受任をやめてもらうよう依頼したのではなくて、その弁護⼠は代理⼈に就任した後になって、そのような受任の事実を仲裁⼈が認識したという説明でした。コンフリクト・チェックの体制は弁護⼠事務所によってまちまちだとは思いますが、いずれにしても、仲裁事件の当事者が比較的大きな会社であり、関連会社が多数あるような会社であればあるほど、事
後的にコンフリクトが⽣じうるような事態はでてくると思います。
〇xx 道垣内先⽣がおっしゃったように、事務所のマネジメントからすると、どちらかというと、パートナーには仲裁⼈を受けてもらいたくないという意向が多いですかね。それは難しいところです。
〇道垣内 そういうリスクがあるとすれば、すなわち、仮に仲裁⼈と同じ事務所の他の弁護⼠が当該仲裁事件の当事者の別の事件の依頼があった場合にこれを受任し、先に仲裁⼈に就任している弁護⼠の⽅が辞任するということも、事務所全体の利益の観点からあり得るということであれば、そもそも仲裁⼈を受任すべきではないと思います。
〇xx 最初からね。
〇xxx xx⼈を引き受けた後に⾃分の事務所の都合で仲裁⼈を辞任することは、仲裁の当事者に大変な迷惑をかけるので、そういうことはやめてほしいと思います。
〇xx 事務所側から⾒れば、仲裁⼈に辞任をしてもらうということがやむを得ないという場合もあるということでしょうか。
〇xx そこは事務所次第でしょう。仲裁⼈を受任することについて、事務所があまりいい顔をされないというのは、そういうことがあるからですね。
〇xx 逆に言うと、仲裁⼈のマーケットが小さくなるということを意味しますよね。そのバランスは難しいところではあると思います。
〇xxx xxの市場が大きくなって、インディペンデント・アービトレーターという単独で仕事をする仲裁⼈が増えればいいですけれども、現状ではそれは無理ですね。
〇xx ⽇本の現状では確かにそうですね。
9.仲裁人報償金に関する変更の合意(商事仲裁規則97条・98条、インタラクティヴ仲裁規則97条・ 98条)
商事仲裁規則
第97条(仲裁x成立前の仲裁人報償金に関する変更の合意)
1 前四条の規定にかかわらず、第31条第2項に従って仲裁廷が成立する前に、すべての当事者が書面により合意する場合には、仲裁⼈報償⾦の時間単価、上限額、時間単価の逓減及び仲裁⼈報償⾦の減額等について変更することができる。
2 第28条第6項及び第29条第6項に従って、 JCAAが選任する仲裁⼈の報償⾦の時間単価、上限額、時間単価の逓減及び仲裁⼈報償⾦の減額等については、前項の合意により定められた条件のうち、仲裁⼈により有利な条件を下まわらないものとする。
3 当事者は、第1項に定める合意をした場合には、遅滞なく、JCAAにその合意内容を通知するものとする。
第98条(仲裁x成立後の仲裁人報償金額に関する変更の禁止)
1 仲裁⼈は、第31条第2項に従って仲裁廷が
成立した後は、当事者及びJCAAに対して仲裁⼈報償⾦の時間単価、上限額、時間単価の逓減及び仲裁⼈報償⾦の減額等の変更について交渉してはならない。
2 すべての当事者が同意する場合であっても、第31条第2項に従って仲裁廷が成立した後は、第3編に定める仲裁⼈報償⾦の時間単価、上限額、時間単価の逓減及び仲裁
⼈報償⾦の減額等について変更することができない。
インタラクティヴ仲裁規則
第97条(仲裁x成立前の仲裁人報償金に関する変更の合意)
1 前三条の規定に関わらず、第31条第2項に
従って仲裁廷が成立する前に、すべての当事者が書面により合意する場合に限り、第 3編の規定に定める仲裁⼈報償⾦の額及び仲裁⼈報償⾦の減額等について変更することができる。
2 第28条第6項及び第29条第6項に従って、JCAAが選任する仲裁⼈の報償⾦の額及び仲裁⼈報償⾦の減額等については、前項の合 意により定められた条件のうち、仲裁⼈に より有利な条件を下まわらないものとする。
3 当事者は、第1項に定める合意をした場合には、遅滞なく、JCAAにその合意内容を通知するものとする。
第98条(仲裁x成立後の仲裁人報償金額に関する変更の禁止)
1 仲裁⼈は、第31条第2項に従って仲裁廷が
成立した後は、当事者及びJCAAに対して仲裁⼈報償⾦の⾦額及び仲裁⼈報償⾦の減額等の変更について交渉してはならない。
2 すべての当事者が同意する場合であっても、第31条第2項に従って仲裁廷が成立した後は、第3編に定める仲裁⼈報償⾦の⾦額及び仲裁⼈報償⾦の減額等は変更することができない。
(a)本条の趣旨
〇xx xx、仲裁⼈報酬との関係の問題として、 97条及び98条に規定されている仲裁⼈報償⾦の変更に関する問題に移りたいと思います。97条は仲裁廷成立前の変更の合意について定めており、98条は仲裁廷成立後の変更は禁止されるという規定です。これらについて、まず改正の趣旨のご説明をお願いいたします。
〇道垣内 98条がここでは大切であり、この前提として97条が置かれていると理解しています。97条1項によれば、デフォルト・ルールとして、仲裁
⼈報償⾦について定めている前4カ条の規定にかかわらず、仲裁廷が成立するまでであれば、すべての当事者の書面による合意により、仲裁⼈報償⾦の時間単価、上限額、時間単価の逓減、報償⾦の減額等について変更してよい旨定めています。これにより、当事者間ではすべての仲裁⼈の変更後の報償⾦の条件は透明化されるということです。
また、同条2項によれば、JCAAが選任した仲裁
⼈の報償⾦の条件は、当事者により変更された仲裁⼈報償⾦の条件を下まわらないことが必要である旨定められています。これにより、JCAA選任仲裁⼈の報償⾦と他の仲裁⼈の報償⾦とを比べて、前者の⽅が劣るということはないということになります。
以上を前提として、98条は、仲裁廷成立後は、仲裁⼈は報償⾦の条件について変更の交渉をしてはならず(1項)、また、すべての当事者が同意しても報償⾦の条件は変更をすることはできない(2項)旨定めています。論理的には、98条の1項と 2項との両⽅の規定がある必要はないはずです。仲裁⼈からの変更交渉は禁止されているので、当事者が変更に同意するという事態は⽣じないからです。しかし、仲裁⼈から申し出たわけではないけれども、当事者が忖度して、当事者間の合意で仲裁⼈報償⾦を変更するといった不透明なことも
⽣じかねないので、あえて両⽅を規定しているわけです。
旧規則のもとでは、仲裁⼈からの申し出により、仲裁⼈報償⾦を変更するか否かが仲裁⼈報償⾦委員会により審議されるということがありました。この背景としては、仲裁⼈の時間単価の逓減が始まるのが、旧規則では60時間経過の時からであり、この段階で5%低くなり、以後50時間ごとに5%ずつ低くなり、当初額の50%になるまでそれが続くという仕組みだったことがあります。60時間に達する例は少なくありませんでした。そこで、これを改正して、逓減が始まる閾値を150時間にしています(商事仲裁規則95条1項)。その上で、98条に変更禁止規定を置いたわけです。仲裁⼈は当事者に対して優越的地位にいるので、当事者は仲裁
⼈の意向には逆らいにくいことは想像に難くありません。そこで、旧規則のもとでは、仲裁⼈からの申し出があった際、当事者の意⾒を聴くわけですが、その回答は決して仲裁⼈に伝わることがないように細心の注意を払ってきたとのことです。その上で、仲裁⼈報償⾦委員会の決定により最終判断をしていました。
そもそも、仲裁⼈としての仕事を始めてから、⼿
続の途中で報償⾦を増やしてほしいという申し出をすることは、その強い立場を考えると、あまり健全ではないように思われます。⼿術中に外科医が報酬を増やして欲しいというようなものだからです。
なお、5条によれば、原則として、第3編の規定は当事者の合意でも変更できないとされています。第3編の規定において特に当事者の合意で変更できる旨定められていれば変更できますが、98条にはそのような定めはないので、これは当事者の合意によっても変更できないということになります。
(b)変更合意の時期
〇xx 事後的な変更はできないということですね。他⽅、97条によれば、仲裁廷成立前はあり得るということですけれども、この事前の合意というのがあり得るのか、あり得るとすればどういうような場合、どういうような合意がなされるのかということですが、Xxxxxxxさん、何か考えられるところはありますか。
〇Xxxxxxx まず仲裁⼈報償⾦は、ユーザーからすると低いほうがいいということはありますが、一⽅、仲裁⼈のマーケットの中で、国際的に活躍されている仲裁⼈にも、JCAA仲裁のファンになってもらうことも大切で、仲裁⼈マーケットの状況を⾒ながら、報償⾦の適正性をみていくのがよろしいのかなと思います。その中で、事前の合意に関しては、例えば、非常に小規模な事件の場合、報償⾦が低いにもかかわらず⼿間がかかるような案件の場合には、当事者と合意の上、例えば報償
⾦の水準を増額するとか、定額にするといったアレンジもできるでしょう。
あとは、非常に大規模で複雑な案件で、どうしても2年、3年かかってしまうケースも現実的にはあり得るわけで、そういった場合には、報奨⾦の逓減ルールを最初から除外することも、合理的な合意としてあり得ると思います。仲裁⼈報償⾦の事前の変更については、以上のような場合が想定されるかと思います。
〇事務局 通常は、仲裁⼈が選任のためにアプローチされたとき、当事者がxxx・xxxxxxを説明すると思います。そのときに仲裁⼈候補
者の側から、これでは受任できないから、もっと
⾼い時間単価にして欲しいと言われた場合、その
⼈にあくまでお願いしたいという判断をするときには、他⽅の当事者に連絡して、両者の間でその
⼈の仲裁⼈報償⾦の算定⽅法を変更する合意をすることになろうかと思われます
〇xx なるほど。仲裁⼈候補者の対応を⾒てということですね。
〇道垣内 そうですね。5万円の時間単価でお願いしたいと言われたときに、それではちょっと私の通常の時間単価とは違うという反応をされることはあり得ると思います。
〇Freeman 段階としては、当事者選任仲裁⼈が両⽅選ばれた後で、第三仲裁⼈を選ぶときに、その段階までに合意すればいいので、第三仲裁⼈を選任する過程で報償⾦の話がでてきて合意をするということもあり得るでしょう。
〇道垣内 商事仲裁規則のもとでは、係争額に応
じて仲裁⼈報償⾦の上限額は決まっています。どれだけの時間がかかるかわからないのに、その上限に達した場合、以後もずっと仲裁⼈として拘束されるのは困るということはあると思います。そのように仲裁⼈がお考えであれば、あらかじめ上限額の点は適⽤ないとの合意をしておいてもらうということはあろうかと思います。
〇xx 単独の場合だと、仲裁xの成立はいつの時点になりますか。
〇事務局 JCAAにより確認又は選任されたときです。その段階で初めて事件の資料をお送りします。仲裁⼈就任の打診を受けた⽅から、仲裁規則の内容の説明を求められましたら、規則をお送りし、説明しております。
〇xx 段階としては、単独仲裁の場合は確かに
難しいですね。他⽅、合議体の場合は、それぞれの当事者選任仲裁⼈が、当事者からアプローチを受けた段階が1つです。その後、第三仲裁⼈を選ぶときに、第三仲裁⼈のほうから、いろいろ問題提起があったりした場合、その段階での変更合意があり得ると思います。第三仲裁⼈や当事者選任仲裁⼈への就任を依頼された⽅には、規則の内容を一応、説明はしてあげるわけですよね。そのと
きに、第三仲裁⼈のフィーだけ別にするか、あるいは、それだったら全員を別の合意にするかということを、その段階で話し合って当事者に提起する、その2つの段階があり得るのですかね。単独仲裁の場合は、確かに難しいですね。
〇Xxxxxxx 特にJCAAが選任する場合が難しいですね。
〇道垣内 仲裁規則の説明についてですが、仲裁規則をお渡しするだけでは読んでいただけないおそれがあるので、規則の中で重要な点、注意すべき点を書き出したものを作成して、お渡しする必要があるだろうと思います。
〇xx そこでいろいろごちゃごちゃ言う⼈は、選
任しないということになってしまうのでしょうか。
〇道垣内 後でもめると面倒なので、避けることはあり得ると思います。
〇xx 選任同意書に署名する段階で、契約書ではないですけれども、参考として報償⾦の扱いはこうなっていますというのを署名欄の上に書いておき、その下に署名していただく、あるいは署名する前に踏みとどまっていただく、ということも考えられます。
〇道垣内 ちなみに、商事仲裁規則によることとしつつ、インタラクティヴ仲裁規則が定めている定額制の仲裁⼈報償⾦を採⽤したいという当事者がいるとどうすればよいかですが、商事仲裁規則を選んでしまっていると、第3編についての当事者による変更合意はできません(5条)。どうすればよいかというと、インタラクティヴ仲裁規則によるという合意をしていただいて、第1編及び第2編の部分を商事仲裁規則第1編及び第2編と入れ替えれば、商事仲裁規則の⼿続規定によりつつ、仲裁⼈報償⾦を定額制とすることができます。裏技です。
定額制は事務所経営的には困るとおっしゃる弁護⼠の⽅もいらっしゃいますが、当事者からみればわかりやすいので、是非その採⽤を検討していただければと思います。
〇xx それはわかりやすいですよね。
〇xxx xxxx、インタラクティヴ仲裁規則の2回の書面により「対話」もお勧めなのですが、
それには抵抗があるということであれば、第1編及び第2編を全部とり替えるという先に申し上げた⽅法をご検討いただければと思います。
〇xx さすがに、細かく調整するのは難しいかなと思います。
〇道垣内 JCAAとして、分かりやすいメニューを提供することができればよいと思っています。
〇Freeman 当事者の合意が明確になる形にしておくことが重要で、いろいろなやり⽅があると思うのですが、例えば仲裁⼈がJCAAに対して、要望書に条件を明記して、JCAAから当事者に諮ってもらって合意をしてもらい、その後で仲裁⼈と当事者の間で明確にする、という⽅法が考えられます。
〇道垣内 98条の変更には該当しないようにするということですね。
〇Freeman 97条ですね。例えば仲裁⼈が直接、当事者とやりとりをすることには抵抗があることもあろうかと思いますので、JCAAに間に入っていただいて、当事者が率直な意⾒が言えるように配慮した上で当事者と仲裁⼈との間で合意をいただき、その後で第一⼿続決定に要望書を引⽤する形で、当事者の合意があったことを記録するというような形にすれば、スマートにいくように思います。
インタラクティヴ仲裁規則第48条
1 仲裁xは、⼿続のできるだけ早い段階で、当事者の請求に関する事実上及び法律上の 根拠についての主張を整理し、それを前提 として導き出される暫定的な事実上及び法 律上の争点とともに、書面により当事者に 提示して、期限を定めて、当事者に意⾒を 述べる機会を与えなければならない。
2 当事者は、仲裁xが定めた期限までに、前項により仲裁xが提示した当事者の主張の 整理及び争点について、同意する部分とし ない部分とを明らかにして、書面により、意⾒を述べるものとする。
Ⅲ.インタラクティヴ仲裁規則に特有の論点 1.仲裁廷による当事者の主張整理及び争点の提示(インタラクティヴ仲裁規則48条)
3 仲裁xは、前項により当事者が述べた意⾒を考慮して、当事者の主張の整理及び争点を修正することができる。
4 仲裁xは、前項の規定により加筆修正された当事者の主張の整理を、そのまま、仲裁判断における当事者の主張の部分の記載とすることができる。
5 前項の規定に関わらず、その後の⼿続の進
⾏に伴い、当事者の主張の整理について加 筆修正が必要であると思料する当事者は、その旨仲裁廷に書面により申し出ることが できる。仲裁xは、時機に後れていること を理由にその申し出を退けない限り、その 加筆修正後の当事者の主張の整理を仲裁判 断における当事者の主張の部分として採⽤ することができる。
〇xx 商事仲裁規則とインタラクティヴ仲裁規則に共通する規定についてはご議論いただきました。そこで、引き続きまして、新たに設けられた「インタラクティヴ仲裁規則」に特有の論点についてご議論をいただきたいと思います。
まずインタラクティヴ仲裁規則48条(仲裁xに
よる当事者の主張整理及び争点の提示)についてですが、この規定の趣旨について、xxxxxからお願いします。
(a)本条の趣旨
〇道垣内 48条は、インタラクティヴ仲裁規則が仲裁xに義務づけている2回の書面による「対話」のうちの第1回のものに関する規定です。仲裁xは、当事者の主張を整理し、それを前提として導き出される暫定的な争点を書面にして当事者に示し、期間を定めて当事者の意⾒を聴き、その意⾒をもとにその書面を修正し、以後の⼿続の一応の前提とすることを定めています。
⼿続のできるだけ早い段階で、当事者が提出してきた書面を⾒て、事実に関する主張と法律に関する主張に分け、例えば表の形で両者の主張を対比する書面を作成すれば、仲裁⼈による当事者の
主張を把握する作業が⾏われるので、仲裁⼈として仲裁⼿続についてグリップを効かせることができるようになり、また当事者としても、仲裁⼈がきちんと当事者の主張を理解してくれているか否かを確認できるという安心感を与えると思います。もっとも、いずれにしても、⼿続の早い段階での一応の整理なので、この整理を精緻に⾏い、時間を費やすことはあまり⽣産的ではないと考えております。一応整理し、当事者から意⾒があれば、もともと当事者の主張を整理したものですから、原則としてそのまま受け容れて修正すればよいと思います。また、特に事実に関する整理は、最終的な仲裁判断において、当事者の事実に関する主張は「以下のとおり」ということで、そのまま表を仲裁判断に貼り付けてもよいと思います。当事者として大切なことは、仲裁判断の中の仲裁xの判断の部分であり、きちんと仲裁廷の論理が示され、しかるべき結論が導かれていることであって、当事者の主張や⼿続の経緯が詳しく書かれていることではないはずだからです。
そのほか、48条5項は、その後の⼿続の進⾏に伴い、当事者の主張の整理について加筆修正が必要であると思料する当事者は、その旨仲裁廷に書面により申し出ることができ、仲裁廷は、その主張が時機に後れていない限り、それを受け容れればよいということを定めています。
(b)主張・争点整理のタイミング
〇xx xxような趣旨で、こういう作業をすることになったわけです。最初に問題なのは、タイミングです。48条1項は「⼿続のできるだけ早い段階で」と規定されていますが、具体的にどのぐらいのタイミングで主張整理、争点整理が⾏われることになるかというあたりの実務的な感覚を示していただければと思います。xxxxからお願いできますか。
〇xx 「当事者の請求に関する事実上及び法律上の根拠についての主張を整理」の意味をどう解するかによります。経験上、意味のある実質的な争点整理ができるというのは、申立書、答弁書が出ればできる場合もあるものの、それはむしろま
れで、その後、主張書面プラス書証を1往復、場合によっては1往復半あるいは場合によって2往復した段階くらいではないかと思います。つまり、請求原因も含めて主な主張と、重要な間接事実も含めて主張が出て、かつ書証が出ているという段階が、このような整理をすることができるタイミングだと思います。さらに証拠開示がされる場合には、証拠開示の後ということになるのかもしれません。
そのような意味だとすると、できるだけ早い段階でといってもあまり早くなくて、仲裁申立てと審問の中間ぐらいの段階にいってしまうのではないかという気もします。運⽤のあり⽅は今後の問題であろうと思います。
他⽅、商事仲裁規則46条1項は、できるだけ早い時期に争点整理に努めるべきことを定めており、2項は付託事項書について定めています。ICC等で⾏われている付託事項書(Terms of Reference)は申立書と答弁書が出た段階で⾏われます。しかし、 ICCの場合、当事者の請求の趣旨と紛争の範囲を確定するぐらいの意味しかなくて、それはそれで意味はあるのですが、実質的な争点整理とまでは言えないように思います。インタラクティヴ仲裁規則48条で規定している「主張」の「整理」はこの程度でよいのでしょうか。
もっと実質的な整理だとすると、先ほど申し上げたように、申立書、答弁書が提出され、それから1往復、最大限2往復ぐらいのやりとりがあった後、証拠開示がされる場合には、その後ということになるように思います。そして、証拠開示がされる場合は、証拠開示の前に暫定的な争点整理を 1回⾏って、証拠開示の後、もう1回、それでよいか確認をするという2段階に分けて争点整理を⾏うことも考えられます。このあたり、皆さんのイメージがそれぞれ違うかもしれないので、ぜひご意⾒をいただければと思っております。
〇xxx xxxxxおっしゃったように厳格に仕切るのは、私がこの規定のファースト・ドラフトを作成したときに思い描いていたイメージとは大分違っています。もっと早い段階で、すなわち、 1往復、せいぜい2往復した段階で、もっとラフな
形で整理した書面を示すというイメージです。
〇xx 1往復というのは、申立書、答弁書でしょうか。
〇道垣内 そうです。ラフなイメージというのは、そもそも、仲裁⼈はまだ心証を形成するに至っていないわけですから、当事者の主張を整理するとこんな感じになり、そうすると、こういう点が争点になりそうに思われるけれども、どうでしょう、という感じです。当事者は、それを⾒て⼿直しを求め、重要な点について以後の⼿続について証拠を出していくということでよいのではないかと思っています。
xxxxxおっしゃったように2回に分けてこの⼿続をするのは少し重たすぎるように思います。そこまですると、この後の第2回目の書面による「対話」(56条)と随分と似通ったものになってしまいそうです。
〇xx そうすると、ICCの⼿続でいう付託事項書作成の段階ですか。
〇道垣内 付託事項書はもっときちんと詰めて、それを⼿続の基礎にするものだと思います。これに対して、インタラクティヴ規則48条の書面による「対話」は、きちんと詰めて記載するわけではなく、当事者の主張していることを整理しているだけです。
〇xx それよりもさらに前の段階ということですか。それでしたら、別に難しいこともないと思いますし、できることは限られてくると思います。
〇道垣内 そうです。難しくないことであるけれども、それはいい効果を⽣むだろうという思いからドラフトしたものです。
〇xx x⽅、それがどれだけ役に立つのかなという気もしますけど。
〇道垣内 仲裁⼈の中には、少なくとも途中の段階で、きちんと当事者の申立書や答弁書を読んでいるのだろうかと思わざるを得ない⽅もいらっしゃるのではないかと思います。当事者主義と称してそういった姿勢で仲裁に臨むことはインタラクティヴ仲裁⼿続では許されません。仲裁⼈は早い段階で事案を理解する作業を⾃ら⾏うことが義務づけられるので、それをいやがる仲裁⼈もいる
かもしれませんが、当事者にとってはよいことではないかと思います。
〇xx 逆に言えば、当事者が提出する書面は、ある程度詳しいものだという設定ですね。
〇道垣内 そうですね。
〇xx そうでないとほとんど意味ないですね。
〇道垣内 コピー&ペーストすればよいくらいにきちんとした主張・答弁を当事者がしてくれれば、仲裁⼈は楽ですが、そうでないと、当事者にこの点はどうかという質問を仲裁⼈からすることも必要になってくるかも知れません。
〇xx どういう書面のやりとりがされるか、そ
れ次第でしょうね。
〇xx 申立書、答弁書の1往復の段階でそこまで出てくるものもありますけれども、実際はもう 1往復くらいしないと出てこない場合が多いのではないでしょうか。
〇道垣内 そうですね。1往復で主張をまとめることができる程度には把握できないという場合には、もう1往復が必要になろうかと思います。申立書、答弁書、反論書、再反論書が提出された段階です。ただ、3往復もする必要はないと思います。
〇xx それくらいでできる場合もかなりありま
すけどね。
〇道垣内 48条1項に定める書面の作成ができる段階か否かの判断は仲裁⼈次第でしょうが、場合によっては、できる範囲で書面を作成し、その中で、この点については一⽅の当事者の主張はなお明らかではないと書いてもよいと思います。
〇xx できる範囲でする。
〇道垣内 そうです。
〇xx この制度のイメージとして、仲裁廷、仲裁⼈のほうが能動的に争点整理するというところに意味があるのでしょうか。
〇道垣内 そうですね。
〇xx 例えば主張対比表的なものをつくるというのであれば、申立書と答弁書が出た段階で仲裁廷はフォーマットをつくって、当事者に対して記入を求めるということも考えられますが。
〇道垣内 そうです。そのフォーマットのモデルもJCAAとして提供していきたいと思います。
〇xx そうすると、それに当事者の⽅で書き込んでいく。比べて⾒て、重なっているところは赤線を引いて、対立点は黄色でマークするとか、そうやって争点を明らかにしていくことはあり得ると思うのですけれども。それですと、当事者としては、表をつくる段階で申立書・答弁書には書いていない事項でも書き加えていくことは可能ですね。それで争点がまとまっていくというプロセスは考えられるのかなと思うのですけれども。
〇道垣内 そういうやり⽅でもいいと思います。当事者がきちんと主張していなければ、そのような能動的な⽅法で仲裁廷から働きかけることもあり得ると思います。いずれにしても、仲裁廷⾃身がこの作業のイニシアティヴをとって、進め⽅をきちんと考えるという点に意味があると思っております。
裁判所の⼿続について、これまでいろいろな議論がされ、実際に実施された例も多くあり、うまくいかなかった例もあると伺っていますけれども、そういうものと比べて、この48条の⼿続はどう評価されるのでしょうか。法廷で、若い裁判官にやらせている作業に近いのか、そのあたりのことをよく知りませんので、ご教示いただき、その教訓をインタラクティヴ仲裁に活かしていきたいと思います。
〇xx 裁判所で⾏っている争点整理は、むしろ第2段階での「対話」のようなことをしていて、かなり当事者の主張を詰めて、釈明もして、全部証拠を出させるというものです。
〇xxx xx先⽣がおっしゃったのはそのような感じでしょうか。
〇xx それに近いと思います。
〇xx そこまでのことは要求しないということでしょうか。
〇道垣内 ⼿続の早い段階でするとすれば、そこまでやるのは相当大変ですし、あまり無理なことをしていただく必要はないと思います。56条の2回目の書面による「対話」ではかなり詰めた作業が必要になりますが、48条の⽅は単なる整理という位置づけでいいと思います。
〇xx 違いは心証開示するかどうかだけになっ
てしまいますね。
〇xx 第1段階はもう少し軽くというイメージでしょうか。当事者に言いっ放しにすると論点がぼやけ、拡散するので、一定のフォーマットに従ってまとめておくということがイメージされているということですかね。
〇xx 先ほどICCの付託事項書の話が出ました
けど、付託事項書も、⼿続的なところは文言を詰めますけれども、当事者の主張のところは多くの仲裁⼈が当事者に書かせます。
〇道垣内 主張のところはそうですね。
〇xx 書かせて、それをそのまま使うという感じなので、それに近いイメージですか。
〇道垣内 そうです。そのようなイメージで起草しました。
〇xx インタラクティヴ仲裁の場合、7.5カ⽉で仲裁判断を出さなければいけませんので(43条1項)、それを前提に当事者も動かないと間に合わなくなってしまいます。したがって、答弁書も、それなりの内容のものを出して、請求原因と抗弁がどういう構造になっているのかを示し、さらには、再抗弁についてもある程度予期して、反論をしながら対応する必要があるのではないかと思います。
〇xx 答弁書の段階で、ですか。
〇xx 答弁書の段階で、そのように対応することが当事者に求められてくるのではないかと思います。
〇Xxxxxxx x⽤次第だと思いますが、インタラクティヴ規則という名の通り、設計思想としては、より職権主義的な運⽤をして、できるだけ迅速かつ焦点を絞って解決していくということだと思います。それであれば、裁判所で⾏われる釈明に近いようなことも最初の申立書、答弁書が出た段階で、申立書の申し立ては請求原因がちゃんと成り立っていないように⾒受けられれば、そのことは指摘すべきではないかと思います。理想形としては。そういったプラクティスが確立すれば、前もって当事者も申立書の段階でもう少し詳しい主張を書くようになっていくでしょうから、この理想に近い形で運⽤されていくのではないでしょうか。
〇xx ディスカバリーみたいなものは想定していないということですか。
〇道垣内 そういうことをするとすれば、この48条の⼿続の後です。
〇xx 今議論をうかがっていておおよそのイメージはわかりました。そういうイメージをこの規則を使う仲裁⼈や当事者が共通に持てるかどうかが問題でしょうね。また、この座談会記事を読んだ仲裁⼈がどういうふうに考えるのかという問題ですね。
〇xx インタラクティヴ仲裁というのは、そう
いうものだということであれば、この座談会を読んでいる⼈にはそういうふうに動いてもらうことが期待されますね。
〇道垣内 ラフな整理をした書面が仲裁廷から出てきて、それに対して、当事者がその整理をよりきちんとするための主張をするという作業をした上で審理を続けていけば、仲裁廷としては争点について心証ができてくる、というのがこの制度の設計図です。
〇xx 48条1項によれば、そういう書面を「当事者に提示して、期間を定めて、当事者に意⾒を述べる機会を与えなければならない」と書いてあるものですから、仲裁廷から争点整理案を示して、それにコメントをもらうという感じでとらえていたのですが、今のお話だと、この後も、さらに書面のやりとりがあるわけですね。
〇道垣内 そうです。あり得ます。
〇xx そうすると、当事者に意⾒を述べる機会というのは、その後の書面のやりとりで代替してもらっても構わないということになりますか。
〇道垣内 ええ。とはいえ、48条に定める書面を仲裁廷が示せば、当事者は何らかの反応をすると思います。当事者が、事実に関する項目のうち、他の部分は仲裁廷のまとめ⽅でよいけれども、項目X番については、次のように修正してほしい、という書面が出てきた場合、私が仲裁⼈であれば、原則としてはその通りに修正します。所詮、当事者の主張のまとめですから。もし、その通りに修正すると、仲裁廷が作成している書面の論理構成がおかしくなるというのであれば、それこそ意味がある齟齬なので、是非当事者とやりとりをして
争いの構図について共通の理解を得て、整合性のあるまとめにすべきであろうと思います。もちろん、その過程で、相⼿⽅当事者が何か言ってくることもあろうかと思います。その場合には、それについても適切に対応して、仲裁廷と全当事者が同じ土俵にいることを確認した上で次の⼿続に進むことが⽣産的であろうと思います。
ただ、仲裁廷が示した暫定的な争点については、あまりにこの段階で詰めようとすることは⽣産的ではないと思います。当事者の意⾒は意⾒として記録した上で、次に⼿続を進めていき、56条に基づく2回目の書面による「対話」である暫定的な心証開示をする段階で、その意⾒も踏まえた争点整理を示しますから、ということでよいのではないかと思います。
〇xx 現在、IT化の関係で、裁判所では模擬裁判なども積極的に⾏っているようです。そこでは、例えば、第1回期⽇で主張整理表と時系列表をつくりましょうという打ち合わせをしたうえで、ファイルを共有できるアプリケーションを利⽤して、主張整理表は次回期⽇の2週間前までにまず原告側が請求原因などを記載し、その後、被告側が認否とか抗弁とか関連証拠とかを全部記入して、最終的には裁判所が期⽇1週間ぐらい前に両⽅に書いてもらったのを⾒て、次の期⽇で、その内容について、「被告がこう書いているのは、むしろこちらの項目に移したほうがよいのではないか」とか、「この点は何も書いてないけれども、訴状と答弁書からすると、訴状のこの記載はここに書かれるべきものではないか」とかいった釈明をする、といった進め⽅も試⾏されているようです。このようなやり⽅は、インタラクティヴ仲裁のイメージに近いところがあるのかなとも思いますが、どうでしょうか。
〇道垣内 48条が想定している仲裁廷の書面は当事者が主張していることそのままを整理しているだけですので、当事者⾃身に書いてもらうのが効率的であれば、それも一⽅法かもしれません。ただ、48条は、仲裁廷にこの段階できちんと紛争の構図を論理的に整理してもらうことにより、後の
⼿続が脱線してしまって無駄な時間を費やすことがないよう⼿続指揮をしてもらおうという効果も
狙っているので、当事者にすべて書いてもらうのでは、その効果は得られません。48条は仲裁廷が整理した書面を当事者に提示しなければならないと定めており、丸投げはこの規定の趣旨に反するであろうと思います。
〇xx 裁判所が試みている⽅法では、当事者が書き込むわけです。訴状に書いていないことをどこまで書いてよいのか迷うとか、いろいろ感想があったようですけれども、かなり早い段階で、そういう⼿続をしようと試みているようです。
〇道垣内 今後、インタラクティヴ仲裁規則に基
づいた模擬仲裁を企画すべきですね。
〇xx 確かにやってみないとイメージが共通しない。また当事者の対応関係を明らかにするという作業を、できるだけ早い段階で⾏うという。
〇道垣内 両当事者の事実及び法律上の主張を対比できる表が効率的であろうと思っております。仲裁判断の当事者の主張の部分には、その表をそのまま貼ればいいと思っております。判決書ではそのような表を貼り付けてもいいのですか。
〇xx そういうふうにしようというのが今回の
構想だと思います。
〇道垣内 そうですか。そのようにしてくれると判決文も読みやすくなりますね。
〇xx 表のままになるのかどうかわかりませんけど、そうなのですかね。
〇xx 変更はできると思います。
〇xx 法律上、そのような様式に変更していけないことはないですよね。
〇xx 表が貼ってある判決は⾒たことがあります。
〇道垣内 そうですか。
〇xx xxx、延々と表が続いているとなると、それがよいのかという問題はあると思います。
〇xx そうやって、当事者が言っていることをそのまま表に張りつけていくのでしたら、それはできるのでしょうが、それが果たしてどれほど審理の充実・促進に意味があるのかというのは、いまひとつわからないですけどね。主張整理で意を
⽤いなければいけないのは、この論点とこの論点
がどういう論理的な関係にあるのかとか、そういうところなので。ただ、そこまで詰める必要はな
いということですか。
〇道垣内 48条の整理は、56条に基づく2回目の書面による「対話」に向けた準備ですから、まずは整理をしておくということです。当然、論理的整合性がある整理です。仲裁廷は提出された書面を読んで、⾃らの理解する構図に従って整理するので、当事者としては、仲裁廷がその段階で考えている構図が⾒えてくることになります。
〇xx 提出された書面は読んで頭の中では大まかな構図ができていると思いますけど、確かに当事者に示せるような書面にまとめている⼈は少ないかもしれませんね。
〇道垣内 この点は、インタラクティヴ仲裁の場合のように書面による「対話」が義務づけられていない商事仲裁規則に従って⾏われる仲裁においても、仲裁廷の裁量によって同じことをすることはできます。私としては、裁量により、そのような作業をした⽅がよいと思っております。
〇xx それを当事者に示すということですね。
〇道垣内 はい。まとめた以上、闘う土俵のイメージは共有することが有意義だと思います。
〇xx 示すことによって、それはやらなければいけないという意識も働くということですね。
〇道垣内 仲裁⼈の中には、あまり早い段階で書面を読むと、忘れてしまって、また読み直さなければならないので、当面は当事者に提出させておいて、証⼈尋問を⾏うか否かの判断、あるいは尋問のための審問直前になってまとめて読むほうがよいと思う⽅もいるように思われます。そうすると、当事者としては本当の争点はどこなのかが⼿探り状態のままとなり、⼿続を効率的に進めることはできず、場合によっては無駄な主張や証⼈尋問を⾏うということになってしまいかねません。そのために時間はどんどん経ってしまうということが懸念されます。ですから、商事仲裁規則の下での仲裁でも、仲裁⼈としては、インタラクティヴ仲裁的に書面による「対話」を⾏うことがあってよいと思います。
〇Xxxxxxx xの暫定的な考えの提示にもかかわりますが、一つの理想的な運⽤⽅法としては、ただ整理するだけでなく、そこででてくるポイント
を能動的に仲裁廷のほうから立証をどうするのか問題提起したり、法的な問題点を指摘したり、といったことも許容する規則と理解する余地もあるかもしれませんね。
〇道垣内 理想的に⾏われればいいですが、難しいところですね。
〇Frxxxxx xれは難しいところですけども。
〇道垣内 仲裁⼈によっては、上⼿にされる⽅もいらっしゃると思います。
〇xx そうですね。
〇Freeman 趣旨に沿った運⽤を促す一助として、もしできたら、コメンタリーを作成するとともに、そういった争点整理表のサンプルを提供するということもあり得るでしょうし、JCAAの⽅でも、イノベーティブな提案の活⽤やフォローアップをしていただけるとよいと思います。
〇道垣内 委員会でご議論いただいたのですけれど、暫定的にせよ、論点はこんなところではないかと書面に記載すること⾃体が、どちらかの当事者、特にしっかりしていない側を助けることになりかねないのではないか、という問題があります。意図はしていなくても、片⽅に肩入れしていると受けとられるおそれがあるということです。
〇Freeman そうですね。
〇道垣内 裁判でもこの点は問題となると思いますが、どのように考えられているのでしょうか。
〇xx すぐ議論になるところですよね、裁判所の中立性みたいなものは。そこは考え⽅がかなり分かれますよね。裁判官の釈明は当事者に対する情報提供であって、別に中立性を害するものではないと私は思っています。裁判官の場合は、そういう片⽅を助けることになりはしないかという意識から、かなりちゅうちょする⼈は多いようにも思います。仲裁においては、仲裁⼈は、よりそういう気遣いをするでしょうかね。
〇Freeman コモンロー系の仲裁⼈は、当事者主義を徹底していて、⼿続の途中で積極的に仲裁⼈の考え⽅を示すことは少ないです。最後のヒアリングのときに思ったことを言うぐらいだと思います。ただ、このインタラクティヴ仲裁規則の中ではそうすることが義務であると明記されているの
で、仲裁廷としては、そういう役割を果たすということを当事者が義務づけていると理解できるので、積極的に釈明等ができると思います。
〇xx そうですね。今の議論は、イメージを喚起するにはよい議論だったのではないかと思います。xxxx、先ほどのご発言にもありましたけれ ども、「主張整理」「暫定的な争点」の書き⽅、場合によっては仲裁判断に引⽤する48条4項になっているわけですが、そのあたりのイメージはどう
でしょうか。
〇xx これは裁判実務でも裁判官によって創意工夫が図られてきたということがあって、仲裁の場合でも、最終的には各仲裁⼈の創意工夫にゆだねられるということかと思います。基本的には法律上の問題点というか、争点として、どういうものがあって、対応する事実上の主張として、双⽅がどういうことを述べており、事実上の主張の間でどこが一致していて、どこについて争いがあるのかということがわかる形で示されればよいのだろうと思います。フォーマットとしては、両者の主張が対比できるような表形式を使うということも考えられると思いますし、その際、時系列でまとめていくという考え⽅もあり得ますけれども、法律上の争点がかなり複雑なものになるような場合には、単に時系列ということではなくて問題点ごとに主張をまとめていくということもよいのではないかと思います。
また、これは条文では要求してないのですけれども、既に出てきている書証等がある場合には、どの点にどの書証が関連するのかを付記しておくこともよいのではないかと思います。
インタラクティヴ仲裁規則第56条
1 仲裁廷は、当事者が主張立証活動を過不足なく、 かつ効率的に⾏うことができるようにするため、証⼈尋問の要否を決定する前までに、次に定める事項を可能な限り整理し、当事者に対し書面により提示しなければならない。
2.仲裁廷の暫定的な考え方の提示(インタラクティヴ仲裁規則56条)
(1)仲裁廷が重要と思料する事実上の争点及びそれについての暫定的な考え⽅
(2)仲裁廷が重要と思料する法律上の争点及
びそれについての暫定的な考え⽅
(3)その他重要であると思料する事項
2 仲裁廷は、前項に定める各項目について、
3
4
5
6
期限を定めて、当事者に対し、意⾒を述べる機会を与えければならない。
当事者は、前項により定められた期限まで
に、書面により、第1項に定める各項目について意⾒を述べることができる。この意
⾒においては、証⼈尋問を求めるか否かについての意⾒も述べることができる。
仲裁廷は、第3項に従い提出された当事者の意⾒を勘案し、証⼈尋問を⾏うか否かを決定しなければならない
第1項の規定により提示された⾒解は、その後の仲裁廷の判断を何ら拘束するものではない。
当事者は、仲裁⼈が第1項の規定により⾒解を提示したことを理由として当該仲裁⼈の忌避を申し立てることはできない。
(a)本条の趣旨
〇xx では次に、インタラクウティヴ仲裁規則の核となる規定である56条に移りましょう。まず、趣旨のご説明をお願いします。
〇道垣内 56条の目的は、1項に定めておりますとおり、「当事者が主張立証活動を過不足なく、かつ効率的に⾏うことができるようにする」ことにあります。特に原案のファースト・ドラフトを作成する段階で考えたのは、証⼈尋問を⾏うか否かはコストや時間の点で重大なことですので、それを⾏うか否かを適切に判断し、⾏う場合には、過不足なく、かつ効率的に証⼈尋問が実施されるようにしたいということでした。
具体的な紛争において、何が勝敗を左右する重大な争点であって、何をターゲットにして主張立証すればいいのか、これまでの⾃分の側の主張は仲裁廷にどう捉えられているのかということが示
されることの意義は大きいだろうと思います。仲裁廷が考えている構図が何らわからないまま、想定されるあらゆる論点について主張立証をして、最後に上訴ができない仲裁判断が下されるということは怖いことです。したがって、⼿続の後半になると思いますが、仲裁廷の暫定的な心証が開示されるということは効果的な主張立証に有益であろうと思っております。
56条1項に従ってする書面による心証開示の具体的な書き⽅は難しいと思います。とはいえ、最終的には仲裁判断を書くわけですから、これは、その前段階のものと位置づけることができますので、書けない訳はないと思います。56条の書面を示す段階では、なおはっきりしない点があるというのであれば、はっきりしないと書くことで足りると思います。暫定的な考え⽅として、ある項目については「なお判断しかねている」と書かれていれば、その点がある⽅向に判断されることが有利な側はそういう判断になるように主張立証を尽くし、相⼿⽅当事者はそれに対して反論・反証をすればいいので、メリハリの効いた⼿続になると思います。
そして、同条3項の当事者の意⾒を踏まえて、場合によっては、1項の書面を修正して、もう1回示すということもあり得ると思います。この段階で決めるべきことは、証⼈尋問を本当にしますか
(証⼈尋問をする場合に備えての⽇程の確保は⼿続の最初の⽅で決めておくのが一般的かと思います)と当事者に問いかけ、当事者の意⾒を踏まえて証⼈尋問を実施するかしないかを決めるわけですから、それに役立つやりとりが⾏われるべきだと思います。
56条5項では、1項により示した心証はあくまで暫定的なものであるので、後にこれを覆すことは当然許容されることを念のために規定しています。覆す可能性があるからこそ、この心証開示には意味があるのであって、あたり前のことを定めているだけです。いったん開示した以上、後からひっくり返すのは難しいと考える⽣真面目な⽅もいらっしゃるかもしれませんが、あくまで「当事者が主張立証活動を過不足なく、かつ効率的に⾏
うことができるようにするため」の⼿続ですから、全く拘束⼒はありませんということを明記しております。
なお、⾃分の側に不利な心証を開示した仲裁⼈を何とかして忌避するという戦術をとる当事者が出てくるのは本来の目的を逸脱した副作⽤ですので、56条6項では、1項に基づく心証開示をしたことを理由とする忌避申立てをすることはできない旨注意的に規定しています。他の理由で忌避申立てをすることは止めることはできませんが、少なくとも1項に基づく⾒解を示したことを理由にすることはできませんということです。
以上のような56条の⼿続が上⼿く⾏くかどうかは仲裁⼈の腕にかかっています。とはいえ、上⼿く動かすにはどうしたらよいかを一般的に考えることも有意義だと思われますので、JCAAとしては、サンプルやモデルを作る努⼒をしたいと思っております。
最後に、56条の副次的な効果について触れておきたいと思います。それは、和解を考える契機になり得るということです。暫定的とはいえ、仲裁廷の心証が書面で示されますので、この段階で、さらに⼿続を進めていくか、あるいは和解交渉を始めるかの判断のヒントになると思われます。特に、口頭での心証開示ではなく、書面による心証開示ですから、そのまま経営判断の場で配布するということも可能になります。口頭での心証開示のニュアンスを読みとるという曖昧さがないことから、的確なビジネス判断もできるのではないかと思っております。
(b)仲裁廷の暫定的な考え方の提示の時期
〇xx xxx、xの56条の規定がインタラクティヴ仲裁の中核的な規定にあたると思われますので、もう少し詳しくご議論をいただきたいと思います。
まずは、どれぐらいの時点で書面による心証開示をするのかということですが、56条1項では証
⼈尋問の要否を決定する前までというふうになっているところです。先ほどのお話で、基本的には、主張立証活動を過不足なく、かつ効率的に⾏うと
いう趣旨だということですけれども、xxさん、このタイミングについてどういうふうに考えればよいでしょうか。
〇xx どのような⼿続モデルを想定するかによって変わってくるのかなと思っています。例えば主張書面を2往復させて証⼈尋問にいくような場合には、2往復した段階でひととおり当事者の主張がされるので、その段階で提示するということになるかと思います。他⽅で、さみだれ式に⼿続を進⾏させる場合には、ある程度、中身が煮詰まってきたらやるということになるかなと思います。
また、責任論と損害論とを分けて審理したほうが効率的であるような大型の事件であれば、例えば責任論が一段落したら1回やって、損害論が一段落したらもう1回やるとか、そういうことも考えられると思っております。
〇xx 責任論と損害論との2段階に分けるとすれば、それぞれについての証⼈尋問を⾏う前の段階でということですか。
〇xx そうです。
〇xx x⼈尋問を⾏う前というと、証⼈を誰にするかを決めるため、証⼈の要否を決める前ということになりますね。その時点で⼿続的・実質的な争点の整理がどの段階なのかという問題がありますね。これは⼿続モデルにもよるし、ケース・バイ・ケースかもしれません。
〇xx x⼈尋問の要否を決定するのは、証⼈尋問の直前になるのだと思います。もっとも、証⼈尋問の期⽇は、あらかじめ、ある程度⽇数を決めて設定しておかなければならないので、仲裁申立てと答弁があり、仲裁廷が成立した段階で進⾏協議(スケジューリング・カンファレンス)を⾏い(43条2項)、そこで、例えば、主張書面の2往復について期限を決めて、証⼈尋問を何⽉何⽇から1週間やりますというふうに決めておくことになると思います。その後、2回主張書面を出した段階で、暫定的な考え⽅を提示し、証⼈として採⽤するかどうかというのが決まって、証⼈尋問に突入していくというイメージを考えています。
そうすると、証⼈候補者については、進⾏協議の段階で⽇程は押さえておいて、主張書面を提出
する際に陳述書も出していただくことになろうかと思います。ただし、実際に証⼈として尋問されるかどうかは、暫定的な考え⽅を提示された段階で決まるというイメージを持っております。
〇xx 細かな話ですけども、陳述書をどの段階で出させるかというのはいろいろあって、証⼈を決めた後で出させる場合もあるのではないかと思います。書面の交換とあわせて陳述書を一緒に出すというほうが多いですかね。そうすると、今のxxさんの言われたことに合致してきますね。
〇Freexxx xxさんが言われたのは、通常の⽅法かと思いますが、規則上も「証⼈尋問の要否を決定する前まで」と、証⼈尋問と連動させたような記載になってはいます。しかし、イノベーティブな規則の精神を⽣かすとすれば、運⽤次第では、主張書面を2往復する前の1往復したところで、最初の争点整理の段階でも、主張⾃体失当に近い主張については積極的に指摘することも考えられなくはないと思います。あるいは、第1ラウンドの主張書面のやりとりの後で、ちょっとクッションを置いて争点整理をして、第2ラウンドの主張のフォーカルポイントを絞っていき、それが重要な争点に焦点をあてたヒアリングにつながっていくというような運⽤も理想型としてはあり得るのかもしれない。
〇道垣内 そうですね。そもそもこの規定は書面による心証開示を義務づけているわけですが、商事仲裁規則に基づく仲裁においても、仲裁⼈の裁量で、心証開示は同じようにできるはずです。インタラクティヴ仲裁の特徴はそれを義務化しているところだけですので、いずれの規則のもとでの仲裁⼿続でも、仲裁⼈の裁量で、事案に即した適切な⼿続をすることはできると思います。もちろん、両当事者が合意してそのようなことはしないで下さいということであれば、それに従うべきだと思いますが、そうでない限り、仲裁⼿続における仲裁⼈の裁量は相当広いと思います。
〇xx そうでしょうね。インタラクティヴ仲裁の全体の趣旨からすれば、まさにFreexxxxxが言われたような運⽤というのは趣旨にかなっているということになるのではないでしょうか。一定
の段階で、しかも書面でこれを提示しなければならないというところが非常に大きな特色があると思います。
〇xx Xxxxxxxxxのご発言の中で、初期の段階で仲裁廷がいろいろ言うというのは、ここは重要だと思うけれども、ここはあまり成り立たない、あまり重要ではない主張だというような割り振りをしていくとともに、重要な点については、もっと補充があるようであれば補充してくれとか、そういう話かと思います。これに対して、56条で定めているのは、最終的に残った重要と思われる点についての暫定的な心証を明らかにするということを義務づけているということです。したがって、 Freexxxxxがおっしゃったようなことは、より早い段階でも当然あり得るのだろうなという感じはします。
(c)仲裁廷の暫定的な考え方の提示の方法
〇xx タイミングについては、ある程度のコンセンサスがあると思います。次に、具体的に書面に記載する内容についてですが、56条1項の1号と 2号で、仲裁廷が重要と思料する事実上の争点と法律上の争点のそれぞれについて、仲裁廷がそれを確定することで、争点の重要性を明らかにすることになっています。逆に言えば、重要と思わない軽微な争点については、それを争点から実質的には落としていくということになるのだろうと思われます。この判断がどういうふうに⾏われるのかというあたりについて、Freexxxxxからコメントをいただければと思います。
〇Freexxx xれは難しい点だと思います。そもそも書面で意⾒を述べる難しさについては、規則の制定過程でも意⾒を述べさせていただいたところです。抽象的に言えば、重要というのは仲裁廷のする最終的な仲裁判断に影響を及ぼすことをいうのではないかと思います。
そのタイミングについては、先ほど理想的な運
⽤というところで述べさせていただいたように、可能な限り早いほうがよいとは思います。具体的には、どれぐらい詳細な申立書や答弁書、準備書面が出てくるかにもかかわりますので、一概には
言えませんが、形としては、裁判所でいう釈明に似たような運⽤も加味したやり⽅になるのかなと思います。
〇xx それに対して2項で、当事者の側からは、この争点も重要であるという主張が出てくることは想定されるということなのでしょうね。
〇Freeman そうですね。ですから、そういった意⾒が出てきたときに、どう対応するかは思案のしどころだと思います。場合によっては、電話会議などで当事者と少しやりとりをして、詳細を詰めて、必要があれば、重要な点を追加していくということもあるでしょうし、当事者が納得すれば違う形で少し整理をする等、最終的には当事者の納得も重要ですので、当事者の意⾒への配慮は必須ではないかと思います。
〇xx Freemanさんのご発言の中で、争点の確定という言葉が出てきたのですが、そこでいう確定というのは、それ以上の争点追加を許さない、あるいは争点追加する場合には仲裁廷の許可が必要であるとか、そういう意味での確定ではないのですね。
〇xx そうではないと思います。
〇xx 仲裁廷が重要と考えることを、単に示す・確認するみたいな感じですか。
〇xx ええそうでしょう。当事者からみれば、実際上は、そこで重要でないと言われると、仲裁判断の結果が決まってしまうということは想定されますので、重要な点ですが、その後の⼿続において仲裁廷の心証を覆すこともできるという前提かと思います。不意打ちを防止するという効果もあろうかと思います。
〇xx そういう意味で確定という言葉が使われているのであれば、そういうイメージでよいと思います。この重要というのも確認しておきたいのですが、軽微な争点については、仲裁廷が心証開示をしなくてよいという意味なのか、重要と考えたもの以外は争点から落としますよというサインなのか、そこを確認しておきたいです。
〇xx 後者でしょうか。
〇xx そうですか。私は前者にとらえていました。全ての争点について暫定的な考え⽅を示す必
要はないけれども、重要なものについてだけは暫定的な考え⽅を、わからないならわからないなりに示すということであって、ほかのものを争点から落としてしまうという趣旨ではないのではないかと思います。
〇xx 争点から落とすということの意味ですけれども、私の認識はFreexxxxxが言われた重要というのと同じことで、仲裁判断に影響すると思われる争点、最終的にその点の認定が仲裁判断を左右すると思われる点が重要な争点であって、結論に影響しないものは軽微であるという認識です。
〇道垣内 例えば契約違反をめぐる紛争において損害賠償請求がされていて、相⼿⽅は「契約がそもそも成立していない。仮に成立していても違反ではない」と主張しているとします。前者の契約が成立していないという点については、両当事者の社印のある契約書が存在し、それが偽造であるということを示す証拠は提出されてないという場合、契約の成否という点について、成立しているものと判断している、との記載をしていれば、相
⼿⽅からこの判断を覆すに足りる新たな証拠が提出されない限り、仲裁⼿続としては、契約違反の有無と違反があると認定された場合の損害賠償額の算定をめぐって進められていくということになると思います。
先程のお話によりますと、契約成立の点はもはや軽微な争点だから56条1項2号に基づいて取り上げる争点にはならないというお考えでしょうか。
〇Freexxx xれはケース・バイ・ケースだと思います。例えば、仲裁廷が、契約は成立していると判断して争点として取り上げなかったところ、当事者が「当事者が全く署名する気がないのに署名したことをヒアリングで立証したい」と主張してきた場合には、いうまでもなく当事者の重要性の判断をまずは尊重して争点を組み直す必要があると思います。
〇道垣内 仲裁廷としては、最初に示す書面では、契約成立のところはそもそも重要な争点ではないと判断して記載しないということもあり得るわけですね。
〇Freeman あり得るでしょう。
〇xx そうでしょうね。
〇道垣内 仲裁廷としてはそもそも争点として記載はしていなくても、当事者が争点としては残っていると主張するのであれば、それについて⾃己に有利に主張立証していくということですね。それはあってよいと思います。争点として復活ないし追加されるということですね。
〇xx それは争点になると考えます。契約違反の主張は契約が成立していることを前提としているので、契約が成立していないのであれば契約違反もあり得ない。結論に影響します。
〇道垣内 理論的にはそうでしょうね。
〇xx 当事者が主張して争っている以上は争点にはなる。しかし、そこについて心証開示をしなければいけないのかというと、そこまでの必要はないのではないかと思っていたのですが、いかがでしょうか。
〇xx xxx、xらかに契約は成立していると
いう心証を開示すべきなのではないですか。それを書面にして開示すべきであろう思います。
〇xx 何も言わなければ、仲裁廷はもはや契約成立という心証を形成していると受け取られると思います。当事者としては、まだその点について諦めていないのであれば、仲裁廷としては、争点としてあげておかなければならないのではないかと思います。しかし、それとその争点について心証を開示しなければならないかどうかは別の問題という整理です。
〇xx 仲裁廷としては契約成立とみているのであれば、証拠から明らかに契約は成立しているという心証を持っていると書くべきではないでしょうか。
〇xx そうすると、それは結構大変な作業になるような気がします。ひと言そういう争点もあるということをテイクノートするだけでもいいのではないかと思っていました。認められるかどうかの心証は示さないということです。
〇xx 単なる争点と重要な争点というのがある
わけですね。
〇道垣内 そうでしょうが、区別は難しいですね。
〇xx 実際の事件では、公序良俗違反とか、独
占禁止法違反とか、いろいろな主張がされることがあります。テイクノートはするけれども、それについて、これはなかなか難しいですよとか、これは証⼈尋問の結果によりますよとか、これはおそらく認められると思いますとか、いちいち結論に影響を及ぼし得る全部の争点について言わなければいけないとすると結構大変です。しかもそれを書面でということになるとなお大変です。なお、先ほど議論した例について、確かに、契約の成立の問題など議論の前提となるような争点の場合は心証開示すべきであるという考え⽅はあるでしょう。しかしそれを含めて何が重要かは仲裁廷の裁量ということでよいのではないかと思います。
〇道垣内 仲裁廷が重要と思料するか否かの判断次第かと思います。
〇xx 取るに足らない主張のようなものは書く必要がないということではないですか。
〇道垣内 当初は書かないで、当事者が指摘してくれば、事後的に争点として載せ、心証を示すということでしょうか。
〇xx 主張整理としては書いておかないとまずいと思います。
〇xx 主張整理としてはそうだけど、1項で定めている書面においては書く必要はないのではないでしょうか。
〇xx 確かに、56条1項の書面においてはそうかもしれませんね。
〇xx さきほどの例で、契約の成否は重要な争点ではないと考えれば、56条1項の書面には書かないのでしょうね。形式的には争点ではあるけれども、仲裁廷としては、明らかに契約は成立しているという心証を得ている以上、重要な争点だとはもはやいえず、56条1項の書面による心証開示の対象にはならないということになろうかと思います。
〇道垣内 仲裁判断にはもちろん書かなければいけないですね。
〇xx はい。仲裁判断には書くことになりますが、56条1項の書面に記載すべき重要な争点には、それは含まれないということかと思います。
〇道垣内 どの争点について事後の⼿続において
当事者に注⼒してほしいのかということを示すという仲裁廷からのメッセージという意味もあるのではないでしょうか。
〇xx そうした観点から⾒ますと実際には当事者は争っているのだけれども、それが重要な争点としてあがっていないということは、結論は決まっているというふうに仲裁廷が暫定的にではあるけれども判断しているということを黙示には開示していることになるかもしれません。
〇xx やり⽅によるのでしょうけど、そのように受け取られることもあり得ると思います。
〇xx 丁寧に書くということであれば、全部の争点を書いて、それぞれについての心証を開示するということはもちろん可能でしょうね。
〇xx それはあり得る⽅法でしょうね。
〇xx こういう書面を示すときに、当事者が契約の成否について争っているときに、それを全くテイクノートもしないとすると、当事者は提出した主張書面を仲裁廷は読んでいないのではないかという不満・不信につながることもあり、仲裁⼈としては注意を払うべきところだと思います。
〇xx 例えば、本件の争点としては1から8まであると全部書いて、以上のうち、本仲裁廷が重要と思料する争点は1と5と7であるとしたうえで、それぞれについて暫定的な考え⽅を示すというような書類をつくってもいいわけですね。
〇xx それは非常に丁寧ですね。
〇道垣内 1と5と7の項目については、まだ確たる心証は形成できていないけれども、これらは重要であると思料している旨明記し、残りの項目については現時点ではこの⽅向だと判断していると明記する⽅がいいのではないでしょうか。
〇xx 1と5と7の項目は重要であると思料してい
るけれども、まだ確たる心証が形成できていないということであれば、そう書いてもいいでしょうね。
〇xx そう考えますと、結局、暫定的な考え⽅は全ての争点について書くべきだということになりますか。
〇道垣内 全ての争点について心証を書く必要はないと思っております。
〇xx それを除くものは大体わかっているとい
うことを間接的に示しているということですね。
〇道垣内 今後の⼿続で判断を固めていく重要な争点はこれとこれだということが当事者にわかればいいのではないでしょうか。
〇xx 「重要な」のとらえ⽅ですが、契約の成立の部分は、ある意味どうでもいい論点ではあるけれども、そこが崩れると全てに影響があるという意味では、「重要な」に該当すると整理し、「契約の成立が争点になっている、暫定的な考え⽅として成立は認められる」と1⾏だけ書いておくのがよいのではないでしょうか。すなわち、暫定的な考え⽅の提示の際に注⼒するのは、以下のイロハの論点の⽅だけれども、契約成立についても1⾏書いておいたほうがよいのではないでしょうか。
〇道垣内 争点について、暫定的な心証形成ができているものはその内容を書き、できていないものについてはできていないと書くということでよいと思います。もっとも、前者の心証形成ができている項目について、当事者がその心証を覆すべく主張立証してくるということは当然あり得ると思います。それは、心証開示をするか否かを問わず、当事者が争うという姿勢をとる限り、止められないと思います。
〇xx そうですね。
〇xx 主たる論点が独占禁止法の点だとしたら、仲裁廷は、主たる論点は独占禁止法の問題だと理解していると、そのことがわかるように書くべきではないでしょうか。
〇xx そういうことがわかるように書ければ、基本的にはそれでいいと思います。
〇xxx x⼈尋問は時間が限られているわけですから、重要な争点について有利な判断を引き出すような証⼈を連れてきてくださいということです。
〇xx そうですね。証⼈尋問を効率的に⾏うためには、そういったサインを出すという意味は大いにありますね。
〇xx 裁判所で争点整理といわれることの本質もそれだと思っています。
(d)心証開示の方法
〇xx それから、暫定的な考え⽅ということで
すけれども、これも委員会ではどういうふうに書くのかということがかなり議論されました。心証の開示の仕⽅について、最初に道垣内さんからもご説明がありましたが、わからないことはわからないと書くということでよいということです。この点、xxxxxxお願いします。
〇xx 前にも議論しましたように、書面による心証開示というのは、裁判官であれ、仲裁⼈であれ、なかなか難しいところがあって、争点の特定、争点整理はそれほどでもないのですが、心証となると事件の結論を暫定的なものであれあらかじめかなりの程度言ってしまうようなことにもなるので、特に書面にする場合は言葉を選ばないと、偏頗だと言われかねない、受け取られかねないと思います。つまり、「証言も聞かずに、予断をもって書面だけで判断しているのか」ということを言われかねないので、仲裁⼈としては慎重になるところです。
そうすると、かなりぼかした表現になるか、あるいは先ほどの話で言うと、重要なところは証言を聞いて心証をとりますというような言い⽅になるでしょうか。もう少し踏み込んで、こういう点に注目をしていますと、それくらいまでは書けばよいのだと思いますが、なかなか書き⽅は難しいですね。
もう一つは、⼿続的なというか、実務的なことを申し上げますと、合議体で⾏う場合は、まさにどういう争点について、どこまでの心証を、どういう開示の仕⽅をするのかを書面に基づいて合議をするわけですね。そうすると、全部同じ地域に仲裁⼈がいれば会って何度も話し合いますけども、離れているとなかなかそれができなくて、このプロセスが実際にワークするのか懸念があります。結局当事者の了解をとってこのプロセスをやめてしまうか、あるいは当たり障りのない暫定的な考え⽅、中心的な争点については心証を示さないような開示になってしまうということも考えられます。
インタラクティヴ仲裁は、仲裁廷と当事者の間の対話を促進しより効率的な審理、迅速な審理を目指すというものですが、56条のプロセスが重いものになってしまい、所期の目的が達成できない
おそれがあることを懸念しています。おそらく、案件の性質や仲裁廷の構成にもよるのでしょうが、インタラクティヴ仲裁のよいところを活かせるよう、運⽤上の工夫が必要であると思います。
道垣内さんからご説明があったように、56条の趣旨は証⼈尋問あるいは審問での弁論について、全部を網羅的にやるのではなくて、仲裁廷が関心を持っている、あるいは疑問に思っているところを示してあげて、できるだけそこにフォーカスしてもらうというところに意味があるので、そういう趣旨を踏まえて暫定的な考え⽅の提示をすることになるでしょう。
ただ、「私は、この争点のあなたの主張は認められる可能性はないとこの段階で考えています」とか、そういうことを言うのは慎重になる仲裁⼈が多いのではないかなと思います。「争点であることはちゃんとわかっています。ご主張はわかっています。これよりも、こちらのほうがもっと大きな問題ではないでしょうか」くらいは言うと思いますが、それ以上はどうでしょうか。そして、そういったことは口頭だと言えるのですけど、書面にするとなると実務上はなかなか難しい問題に直面するのではないかなと思います。
〇道垣内 口頭での「対話」にも利点は多いと思うのですけれども、母国語が違う当事者・代理⼈が関わっている仲裁の場では、口頭で何らかのニュアンスを伝えようとしても、誤解や曲解が⽣じかねません。仲裁⼈に脅迫的なことを言われたといった受け取られ⽅をするリスクは是非避けるべきだと思います。書面を作成するのは大変ですが、書面で心証開示をするのでなければ弊害が大きいと思います。書面化することの利点のひとつとして、特に3名の仲裁⼈で構成される仲裁廷においては、仲裁⼈の合議が緻密に⾏われ、どのように事件を捉えているかについての相互理解が進むという点が間違いなくあると思います。
〇xx 今おっしゃったように、その合議をこの段階ですることを事実上義務づけるということになるのですね。
〇道垣内 3名の仲裁⼈の場合にはそういうことになると思います。
〇xx それはそれで審議の充実に資することであると思いますけれども、どれくらいプラクティカブルかどうかということが問題です。繰り返しますけど、同じ地域に仲裁⼈がいれば、それは可能なのでしょうが、⽇本とシンガポールとフランスに仲裁⼈がいるという場合に、どれだけそれができるのかというところが心配なところですね。
〇道垣内 テレビ会議なり電話会議をして、しっかり議論していただきたいと思います。書面を作成するわけですから、仲裁廷の長はそのドラフトを作成し、それを各仲裁⼈が読みながら議論をすることになると思います。会議の後、仲裁廷の長がそこでの結論を踏まえたドラフトを再度提出するか、その場で画面を共有しつつ修正するという作業をして、最終的に多数決で決定した文書を当事者に示すことになります。会議をすることは不可欠だと思います。
(e)証人尋問の採否
〇xx できるかどうかはともかくとして、大体のイメージはできたのではないかと思います。そうすると、こういう形で重要な争点とそれについての暫定的な考え⽅が提示され、それに対し、当事者が意⾒を述べる。先ほどからでているように、証⼈尋問をするかどうか、あるいはその中身を決めていくということが重要な目的で、当事者も証
⼈尋問を求めるか否かについて意⾒を述べることができる旨3項の後段で定められています。そして、その意⾒も勘案して仲裁廷が証⼈尋問を⾏うか否かを決定しなければならないというのが4項です。証⼈尋問を⾏うか否かの決定の場合に、どういう点を考慮して判断をするか、これもケース・バイ・ケースというところがあるのではないかと思いますけれども、xxxxxx、コメントいただけますか。
〇xx ごく一般的な整理として申しますと、証
⼈尋問を⾏うべきなのはどういう場合かといえば、ある事実について争いがあって、それについて心証を形成して確定する必要がある場合です。つまり、一⽅で、証⼈以外の証拠を⾒ても十分な心証を得ることができない場合であって、他⽅で、
証⼈尋問を実施すれば心証の確度といいましょうか、講学上の概念で言えば、解明度ということになるかと思いますが、これが向上するということが相応に⾒込まれる場合です。相応に⾒込まれるというのは、証⼈尋問をした場合における時間的あるいは⾦銭的なコストに⾒合うだけの向上が⾒込まれると判断されるという意味であり、そうであれば、証⼈尋問を⾏うことが適切だという判断になるのだろうと思います。
したがって、仲裁廷がそうした決定をする際に、前提として、その事実について確定する必要があるのかどうか、例えば先ほど契約の成否の話がありましたけれども、契約の成否について、既に結論が成立していないということで決まっているのであれば、その先の事実は確認する必要がないということになるわけです。また、その争点について判断をするまでもなく結論が出る場合や、他に十分な証拠があって、証⼈尋問をしても心証が動かないだろうと
⾒込まれる場合には、証⼈尋問の必要はないということになります。また証⼈は申請されているけれども、その証⼈に聞いてもどこまでわかるのかという点について、あまり⾒込みがないということであれば、証⼈尋問するだけのメリットがないということになるのだろうと思います。
他⽅で、心証形成の面ではある程度有効だろうと⾒込まれるのだけれども、証⼈が多数に及ぶとか、所在が離れていていろいろな場所に分散しているとか、健康上の状態に問題があるとかといったことで、事実上、尋問するのが困難だという場合もあり得ます。その場合に、例えば陳述書で済ませるといったような形で、その事実の重要度に応じて絞り込みを図っていくということは当然あるのだろうと思います。そのあたりの事情を種々勘案して、一番重要な⼈についてきちんと取り調べをするということかなと思っています。
〇xx xx段階で、尋問事項というか、この証
⼈についてはこういうことを聞くということも固まるということなのですね。
〇xx そうですね。要証事実は何かということの関係で必要性を判断するということにはならざるを得ないと思いますので、そこがあやふやだと、
証⼈尋問をわざわざ実施するということにはつながらないのかなと思います。
〇xx 実務的にはどうでしょうか。
〇xx 抽象的には、今おっしゃったとおりだと思います。ただ、先ほど申し上げたように、証⼈候補者は、圧倒的に多くの場合、当事者が出してくるわけですね。それがあまりにも多いと、どうにかして数を絞ってくれませんかということはありますが、当事者が出してきた証⼈を、「これは必要性がないから、つまり、ほかのところで心証が決まっていますから、この証⼈には聞かなくていいでしょう」として退ける仲裁⼈は、そんなに多くないのではないかと思います。先ほど申し上げたように、偏頗と言われるおそれとか、説明の十分な機会を与えなかったということで、25条違反を後で主張されるリスク等も考えると、できる限り当事者が出してくるものは受け入れるということだと思います。
もっとも、このインタラクティヴ仲裁でそういう実務傾向をそのまま持ち込んでよいのかというのはあるかと思います。ある程度、仲裁xが暫定的な考え⽅を示すことによって、当事者のほうで
⾃主的に「この証⼈は立てなくていいだろう」と判断する⽅向に持っていくことが期待されるのではないかと思います。それでも仲裁xは、例えば契約の成否についてはほぼ認められると思っていると書いたとしても、それだからこそ証⼈尋問で、なぜこれが錯誤無効だったかというのは明らかにしたいという場合には、それをだめだというのはなかなか難しいのではないかと思っています。
もう一点は、恐らく陳述書で代えられることもあるのだと思いますが、陳述書は反対尋問を経ないという供述証拠であり、相⼿⽅が供述者を反対尋問する権利というのは国際仲裁ではほぼ常識だと思います。したがって、相⼿⽅が同意しないと、逆にそれは証拠として採⽤することは控えるべきだという規制が働くのではないかと思います。
尋問事項の話が出ましたが、尋問事項という形で当事者が出してもらうということもあるでしょうし、先ほどxxさんとのやりとりの中にも出てきたように、その段階で既に陳述書が出ていて、
その陳述書に基づいて何を言うかはわかっていると、あとはその反対尋問だけであるという場合があると思いますので、そういうところで本当に必要な証⼈なのか、それは相⼿⽅もわかりますから、それだったら別に証⼈として証言を聞かなくても結構ですからと、あとは法律と契約の解釈の問題なのでということになるかもしれませんし、そういうふうにして証⼈尋問を⾏うか否かを決定するということは十分あり得ると思います。
〇xx ⽇本の裁判所の実務では、基本的には証
⼈尋問を⾏う場合、事前に陳述書を出すというのはかなり一般的な運営になっていると思いますけれども、仲裁では、必ずしも陳述書が出ているとは限らないということですか。
〇xx xているほうが多いと思いますけどね。
〇xx 相⼿⽅も大体どういうことを言うかということはわかっているということですね。
〇xx そうですね。仲裁では、主尋問は省略する場合も結構多くて、私は重要な部分だけは主尋問をやってくださいと言いますけど、審問は反対尋問の機会を保証するためというふうに割り切って位置づける仲裁⼈もいます。したがって、陳述書は出ているという前提ですね。
〇Xxxxxxx xxxxが言われた⼿続保障の重要性というのは同感するところです。当事者がどうしても立証したいという申し出をしてきたときに、どこでバランスをとるかというと、インタラクティヴ規則の趣旨からすると、できるだけ説得はするけれども、ぎりぎりのところでは当事者主義のほうに少しウェイトを置いて、当事者に証⼈尋問を実施させるということにはなるのではないかと思います。仲裁では、⼿続的な瑕疵が仲裁判断の取消事由になるという決定的な裁判との違いがありますので。ですから、そういうふうになるのではないかなと思います。
〇xx 既にでているところかもしれませんが、そういうことで証⼈尋問を⾏うということになったときに、インタラクティヴ仲裁の趣旨を踏まえて証⼈尋問を効率的に⾏っていくということについて、どういったところに注意して準備したらいいでしょうか。
〇xx インタラクティヴ仲裁かどうかにかかわらず、証⼈尋問は準備が一番重要だと思われます。まず、スケジュールをきちんと決めておくことが重要です。主尋問をやるなら何分、反対尋問は何分という形できちんと決めておく。あるいは、双
⽅、持ち時間は何時間というのがあって、ほぼ同
じような持ち時間で内訳を当事者が⾃由に割り振るというのもひとつの考え⽅としてあると思います。そのことを踏まえて、スケジュールをある程度きちんと決めておくことが考えられます。また、テクニカルな点としては、陳述書を提出して、証
⼈が何を話すか事前にわかるようにしておくことも重要だと思います。
それから、書証については、書証の量が少なければ問題は少ないと思いますが、大量にあるような場合には、例えば証⼈尋問で使うものは抜き出してバンドルにしておくとか、時系列に並べたバンドルを新たに作るとか、そういった工夫も必要になってくると思います。
さらに、通訳や速記があるのか、ないのかというところも、⼿続の進⾏にかかわってきて、事前調整がそれなりに必要になるかと思います。それから、通訳、速記の関係で機器を使うのであれば、その機器のデモを事前にやっておくといったことが、証⼈尋問をスムーズにやるポイントになると思います。
〇xx なるほど。
〇事務局 最初から仲裁⼈が質問するということはあり得ないのでしょうか。
〇xx 通常は、当事者(代理⼈)が最初に質問すると思います。
〇事務局 過去の事例で、代理⼈の先⽣が未熟な
⽅であったのですが、仲裁⼈が主導的に質問を⾏い、迅速に証⼈尋問を⾏った事例がありました。
〇xx 確かにドイツの民事訴訟では、そういう感じでやっていると思います。規定はありますね。
〇xx ⽇本の民事訴訟には尋問の順序の規定がありますが、仲裁には、尋問の順序について規定はないので、やることはできるのでしょうけど、あまりそれは⾒たことないですね。
〇xx 陳述書が提出されて主尋問を省略することとなり、さらに、反対尋問を⾏うべき当事者代
理⼈が出席しないのであれば、仲裁⼈に質問をしていただくということはあるかもしれません。もっとも、仲裁⼈が記録をきちんと読んでいることが、仲裁⼈から質問を⾏う前提になると思います。
〇xx このインタラクティヴ仲裁規則のもとで、仲裁⼈が暫定的な心証開示を書面でしていることを前提とすれば、仲裁⼈の主導によって証⼈尋問を進めることはできるのではないでしょうか。
〇xx 最初に仲裁⼈に質問をしていただいて、仲裁⼈が関心を持っている点を明らかにしていただいた上で、不足する点や、仲裁⼈の誤解があれば、当事者が更に補足するという進め⽅もあり得るかもしれません。
〇xx 先ほどご指摘があったように、当事者が
どうしても聞いてほしいとこだわっている証⼈については、仲裁xがいくらこれは必要ないだろうと思っても、それをやらないということは実際上難しいのではないかというのは、そのとおりだろうと思います。
関連して、⼿続費⽤の負担のところでは、仲裁xが当事者の負担割合を定めるわけですけれども、そのような証⼈についての尋問を実施したけれども、結果としてあまり意味がなかったという場合、常にというわけではありませんが、費⽤の負担割合の面で、その点を考慮するということはあり得るのかなと思います。
〇道垣内 さらに、証⼈尋問全体について、片⽅の当事者が証⼈尋問は必要ないと主張したにもかかわらず証⼈尋問が実施され、しかし結局は意味がなかったのであれば、証⼈尋問に係る費⽤は証
⼈尋問に固執した側が負担するということはあり得ると思います。
〇xx 別の話ですが、xx法の教育を受けた法律家は、尋問が長くなる傾向があるのではないかと思います。
〇Freeman そういう現象は確かにあり、当事者の口頭でのやりとりをすごく重視する傾向があると思います。
〇xx それは、仲裁⼈がxx法系であった場合ということでしょうか、それとも、代理⼈がxx法系である場合でしょうか。
〇xx 例えば⽇本の代理⼈だったら、30分で済ませられる尋問が、xx法系の代理⼈だと1時間とか2時間続くことがあります。⽇本の法律家は、パンデクテン法学の影響か、比較的、物事を整理して話す傾向があると思うのですが、xx法系の法律家は、同じことについてグルグルと回りながら話すというか、⾏ったり来たりしながら話すという傾向があるように感じています。
〇xxx 私の経験でも、xx法系の仲裁⼈と一緒に仲裁xを構成した際、一⽅の当事者側の証⼈
(従業員でした)が、当該当事者側に不利なことをポロッと言ったことがありました。その点は全体の中での比重はごく小さなことだったのですが、xx法系の法律家である仲裁⼈はこの点を大変重視しました。それは言い間違いかもしれないし、全体の中の一つの要素にすぎないとも思われるのですけれども、その発言を重視して、その当事者側の主張全体が怪しいのではないかというところまで考えるようでした。口から出た言葉というものの捉え⽅が少なくとも私とは大変違うと思ったので、強く印象づけられました。法文化の違いでしょうか。
〇xx xx法系では一般に口頭のやりとりを重視するのでしょうね。
〇Freeman すごく強い意味で重視する傾向があると思いますね。
〇xx ⽇本はどっちかというと、書面重視ですね。
〇xx そういうことから、xx法系の法律家が関わっている仲裁においては、スケジュールを組む際に、⽇本の法律家だけが関わる仲裁と比べて、ある程度の時間の余裕が必要になってくると思います。
〇Freeman そういったバックグラウンドを持っている場合は確かにそうかもしれませんね。
(f)心証開示と和解の関係
〇xx さて、xxxxxからお話があったように心証開示というのは、和解に対して一定の影響というか、促進する効果があるのではないかということがあります。民事訴訟の場合にも、心証開示と和解の関係は議論されているところですけれ
ども、インタラクティヴ仲裁でこういう暫定的な考え⽅が提示されるということと和解との関係について、いかがでしょうか。
〇Xxxxxxx x制度にもよりますが、国際仲裁では一般には、和解を仲裁⼈が積極的に勧めることは期待されておらず、そういう運⽤もなされていないのが一般的だと思います。インタラクティヴ仲裁規則について言うと、心証がかなり明確に示された場合には、それによって当事者が和解を促される可能性はあります。むしろ、そうすることによって仲裁判断を作成せずに終了すれば、報償
⾦も定額なので合理的ですね。仲裁⼈の立場からすると、仲裁判断作成に要する80時間ないし100時間という時間が節減されますし、当事者からすれば、それだけ迅速な解決に結びつくということもあり得るのではないでしょうか。
そのときには、JCAA規則の中で特徴的な、インタラクティヴ規則60条が、仲裁⼈が調停⼈を務める場合の特則として存在します。これを活かすことによって、同じ⼿続内で仲裁⼈に調停⼈を兼ねてもらい、効率的に和解による終結に至ることができるのも一つの選択肢かと思います。
〇xx xxこと⾃体は、いいことだろうということなのしょうか。
〇Freeman そうなのでしょうね。インタラクティヴ規則の趣旨からすると、迅速に心証開示することによる副次的な効果という位置づけでしょうが、それに当事者が納得して和解に応じるのであれば、当事者にとってもメリットではないでしょうか。
〇xx この段階での暫定的な考え⽅の提示が当事者間の和解に結果としてつながるということはあると思います。ただ、気をつけなければいけないのは、仲裁xが、仲裁xが和解のxxxxxxxをとることについては慎重な考え⽅が国際的には⽀配的であるという点であり、このことには留意しなければいけないと思います。特に⽇本の仲裁法は、それまでの⽇本の一部の仲裁実務への海外からの批判を踏まえて、原則として当事者の書面の承諾がなければ和解に入ってはならないとしており、UNCITRALモデル法よりもさらに厳しい規律を設けています。
インタラクティヴ仲裁規則はそれを変えるわけではありませんから、影響があるとしても、あくまでも事実上のものであると思います。
Xxxxxxxxxからもお話があったように、このインタラクティヴ仲裁に対してあり得る批判の一つとして、仲裁⼈が和解についてインセンティヴを持ってしまうのではないかという点があります。つまり、定額ですから、早く終わらせることにインセンティヴはありうるわけですね。まさに、早く終わらせるというのが、和解で早く終わらせるという⽅向に⾏くと、もともと⽇本の一部の仲裁実務に対してあった批判を再び呼び起こしてしまうことになるのではないかと思います。したがって、あくまでも、これは事実上の効果であるということで考えるべきだと私は思っております。
〇道垣内 おっしゃるとおりです。裁判は三審制ですので、地裁の裁判官がいくら強硬に和解を勧めても、「判決をください。控訴しますから」と言えますが、仲裁は一審制ですので、仲裁⼈は裁判官よりもずっと強い権限を持っています。そのため、仲裁⼈の姿勢次第では、「圧⼒をかけられた」と言われかねません。仲裁⼈の⽅にはこの点について相当注意して頂きたいと思います。
第94条(単独の仲裁人の場合の仲裁人報償金)
1 単独仲裁⼈による仲裁の場合の仲裁⼈報償
⾦は、以下の通りとする。
2 経済的価値が算定できないか又はその算定が困難な請求の経済的価値は7000万円とみなす。
3.仲裁人報償金(インタラクティヴ仲裁規則94条・ 95条)
請求⾦額又は請求の経済的価値 | 仲裁⼈報償⾦ (消費税を含まない。) |
5000万円未満 | 100万円 |
5000万円以上 1億円未満 | 200万円 |
1億円以上50億円未満 | 300万円 |
50億円以上 100億円未満 | 400万円 |
100億円以上 | 500万円 |
請求⾦額又は請求の経済的 価 値 ( 消 | 当事者選任仲裁⼈の報償⾦ 費税を含ま(消ない。) | 仲裁xの長の報 償 ⾦ 費税を含まない。) |
5000万円未満 | 70万円 | 120万円 |
5000万円以上 1億円未満 | 150万円 | 250万円 |
1億円以上 50億円未満 | 250万円 | 400万円 |
50億円以上 100億円未満 | 350万円 | 500万円 |
100億円以上 | 400万円 | 600万円 |
第95条(3名の仲裁人の場合の仲裁人報償金)
1 3名の仲裁⼈による仲裁の場合の仲裁⼈報償⾦は、以下の通りとする。
2 前項の請求⾦額又は請求の経済的価値の算定においては、前条第2項の規定を適⽤する。
〇xx 最後に仲裁報償⾦についてです。インタラクティヴ仲裁の特徴として、仲裁⼈報償⾦を原則として定額制にしているという点があります。タイム・チャージ制と比較した場合、トータルの⾦額が安くなるかどうかは、稼働時間次第ですね。とはいえ、概していえば、やや低い水準で定額化されたということになろうかと思います。このような規定の趣旨について、xxxxx、お願いします。
(a)規定の趣旨
〇道垣内 インタラクティヴ仲裁規則において仲裁⼈報償⾦を係争額に応じた定額制としている第 1の理由は、仲裁⼈の廉潔性という考え⽅にあります。判断権者なのだから、神の如くとまでは言いませんが、報酬のための仕事を超えた気⾼いものであるべきだという考え⽅です。代理⼈は依頼者のために苦労することが多いので、報酬は重要な要素かもしれませんが、仲裁⼈の立場は代理⼈とは大きく異なると思います。ただ、この点は議論があるところであり、これだけが理由ではありません。
第2の理由として、国内の紛争を視野に入れているということがあります。⽇本の国内紛争につ
いては裁判が圧倒的に優勢な紛争解決⼿段になっているわけですが、国内の当事者に仲裁を選択肢として考えていただくには、予測可能性をできるだけ⾼くする必要があり、一審制で定額の仲裁⼈報償⾦にすることにより、三審制の裁判と比べてトータルコストとして安いという判断をしていただくことが必要だろうと思ったわけです。そもそも、中堅企業以下の場合、紛争処理のために弁護
⼠さんに依頼する場合、成功報酬制を採⽤することが多いと思います。そのような当事者の中にはxxx・xxxx制というものをそもそも知らない⽅もいらっしゃるかもしれません。仮にタイム・チャージ制について説明して理解していただけるとしても、当事者としては早くてコストをかけない紛争解決を期待しているのに、仲裁⼈報償⾦は時間がかかればかかるほど⾼額になっていくという仕組みは気持ちとして違和感があり、理解しがたいと言われかねません。このようにコストについての予測可能性を⾼めようというのが第2の理由です。
第3に、迅速な解決にプラスに作⽤するだろうということも定額制採⽤の理由です。⼿続に要する時間が早くても遅くても同じ額ということは、無駄になってしまいそうな⼿続をすること、無⽤に長い仲裁判断を書くことは減るのではないかと思います。96条は、「仲裁⼈報償⾦は、当事者によるすべての請求の取り下げにより仲裁⼿続が終了した場合であっても、減額されない。」と定めています。
JCAA仲裁のxxxxx・xxxは、1億円から 10億円の間の事件ですので、単独仲裁⼈だと300万円であり、3⼈の仲裁だと、当事者選任仲裁⼈ 250万円が2名と仲裁xの長が400万円で、合わせて900万円となり、1000万円以下になるような設定にしています。当事者選任仲裁⼈と仲裁xの長との報償⾦額の比率は、想定される仕事量を反映しています。このような⾦額が安いか⾼いかは、どれくらいの時間がかかるかによるので、仲裁合意の際に⽣じ得る紛争の⾒通しを立てて慎重にお考えいただきたいと思います。
(b)仲裁人の確保
〇xx 定額制を設けた理由についてxxxxxから説明があり、こういう報酬水準になったということです。これについて何かコメントがあれば、いただければと思います。
〇xx 定額制のメリットは予測可能性があるということだと思います。それから、先ほどご説明があったように、結果として、全般的に抑えぎみになるということですね。他⽅で、インタラクティヴ仲裁というのは、仲裁⼈にとっても、代理⼈にとってもインテンシィヴな⼿続を要求することになるかと思います。インテンシィヴな⼿続であるのに報酬が低く抑えられるということについて仲裁⼈から文句が出ないか、そんなに安くてはお引き受けできませんと言われ、仲裁⼈のなり⼿が少なくなったりしないか、あるいは97条に基づき、仲裁廷成立前の当事者の合意により、増額変更される例が多くならないか等々、今後の運⽤が注視されます。
〇xxx 定額制の仲裁⼈報償⾦では仲裁⼈を受けてくれる⼈がいなくて困るのではないかとのご指摘は、パブリック・コメント等でもいただきました。しかし、実際には、仲裁⼈候補者データベースの構築の過程で、3つの仲裁規則について、仲裁⼈報償⾦の仕組みの違いについて説明した上で、どの規則のもとでの仲裁⼈をお務めいただけますかという質問をしているところ、これまでのところ、3つともチェックをつけて下さっている
⽅が一番多く、既に相当数に達しています。したがって、仲裁⼈のなり⼿が少ないのではないかという懸念は当たっていないのではないかと思われ、JCAAとしてはあまり心配しておりません。
〇事務局 仲裁⼈候補者データベースにおいて、現時点では、⽇本⼈の⽅は、どの規則のもとでの仲裁をお願いできるかという問いに対する回答としては商事仲裁規則が一番多く、UNCITRL仲裁規則が一番少ないです。他⽅、外国⼈の⽅の場合は、 UNCITRAL仲裁規則のもとでの仲裁であればするというのが一番多くて、インタラクティヴ仲裁が一番少ないです。とはいえ、圧倒的な数字の差があるというわけではありません。
〇道垣内 インタラクティヴ仲裁規則のもとでの仲裁⼈をやってもよいとする仲裁⼈の内訳はどうなっていますか。
〇事務局 2019年8⽉20⽇の時点で、全部で228名です。そのうち⽇本⼈が79名、外国⼈が149名です。データベースに入っている⽅々の数全体の半分以上です。
〇xxx xx⼈の仕事は、法律家としてはやってみたいと思われるようで、報償⾦は二の次だという⽅も結構いると思います。
〇Xxxxxxx 先ほど商事仲裁規則の議論でも申し上げましたけど、適正な報酬の設定は、有能な仲裁⼈を確保する上では重要な点だと思います。仲裁⼈のマーケットをどう考えるかにもかかわりますが、実⼒がある若⼿を活⽤していく⽅向もひとつのよい⽅策であり、報酬額が多少低くても引き受けて仲裁⼈を経験してもらうというような運⽤の仕⽅もあると思います。いずれにしても、非常に重要な点ですから、例えばICC仲裁でもされているように、仲裁の終了後に、当事者や仲裁⼈にアンケートなどを実施して、その報酬が適切であるかどうかを含め、インタラクティヴ仲裁規則についての満足度を調査するのも有益ではないでしょうか。
〇xxx ⽇本における仲裁の振興策の一環として、若い⽅にも是非仲裁⼈を経験してもらい、仲裁⼈として熟達していただきたいと思います。他
⽅、リタイアされた元裁判官の⽅とか、パートナーをお辞めになって、事務所経営と関係のない立場になられた⽅も、それぞれの経験を有益に活かしていただきたいと思っており、仲裁⼈の宝庫はあちこちにあると思っております。
〇Freeman そうかもしれませんね。
〇xx 最初に申し上げたように、リタイアした裁判官というのはひとつ、有⼒な仲裁⼈の供給源として考えられるだろうと思います。その⼈たちは霞を食べているわけではありませんが、既に十分食べられる蓄積はあるので、他⽅でしかし、まだ十分に活⼒をお持ちであり、紛争解決に携わることに前向きな⽅は結構いらっしゃるような感じがします。その⼈たちであれば、報償⾦の⾦額は
必ずしも問題ではなく、仲裁⼈を引き受けてくださるように思います。国内の仲裁事件であれば、特に有⼒な候補者であると思われます。
Ⅳ.仲裁規則の選択
1.UNCITRAL仲裁規則+UNCITRAL仲裁管理規則との使い分け
〇xx 以上で個別の規定の議論を終え、仲裁規
則の選択という問題に移りたいと思います。JCAAには、商事仲裁規則、インタラクティヴ仲裁規則、それからUNCITRAL仲裁規則という3つの規則があるところ、規則上は、商事仲裁規則がデフォルトになっていて、単にJCAAで仲裁をするという合意がある場合にはこれによることになります。すなわち、商事仲裁規則3条2項は、「この規則は、よるべき規則を特定しないで、JCAAのもとでの仲裁を⾏う旨の合意をしている場合にも適⽤される」と定めています。起草の過程においてはインタラクティヴ仲裁規則をxxxxx・xxxにしてはどうかという議論もあったかと思いますが、最終的には商事仲裁規則がxxxxx・xxxになっています。
もちろん、当事者にこの3つの規則のいずれかを選択すべきかをご検討いただき、いずれかを⾃発的に選んでいただくのが適切なことなのだろうと思われるわけです。具体的にどういう場合に、どの規則を選ぶのが適切かということについて、まず、JCAAにおいてUNCITRAL仲裁規則に基づく仲裁をすることを選択するということがどういう場合に考えられるかという点について、xxxxからお願いします。
〇xx UNCITRAL仲裁規則は基本的にアドホック仲裁において使えるようにということでつくられています。私も1件だけJCAAにおいてUNCITRAL仲裁規則に基づく仲裁をしたことがあります。ただ、当事者がどういう意図でそういうのを選んだのかはわかりません。
〇事務局 典型的には、⽇本企業が商事仲裁規則での仲裁を提案したところ、相⼿⽅の外国企業から、ローカルな仲裁機関の仲裁規則は使いたくないと言われ、商事仲裁規則での仲裁で押し切れな
いときに、UNCITRAL仲裁規則で合意を取りつけるという形で使われていると思われます。
〇道垣内 紛争解決条項のドラフトの段階において、外国企業にはUNCITRAL仲裁規則による仲裁は抵抗が少ないと思います。
〇xx みんなわかっているからということですかね。
〇道垣内 そうです。⽇本企業としては、外国で仲裁をする負担と⽇本で仲裁する負担の違いを考えれば、仲裁規則では譲っても、通常お願いしている弁護⼠さんにそのままお願いできる点等において、仲裁地は是非⽇本をとることのメリットは大きいと思います。
〇Xxxxxxx UNCITRAL仲裁規則は、機関仲裁としても使えるような補充ルールを組み合わせて、各国の仲裁機関で提供しています。xxxxが言われたように、もともとアドホック仲裁で⽤いられる仲裁規則のモデルとして策定されたわけですが、ルールの内容はコモンローと大陸法の双⽅の法制度において受け容れられるように考えられてつくられています。そういった意味でも、汎⽤性も⾼く、国連の関連機関がつくっているという意味で、規則⾃体の中立性に対する信頼が強いと思います。
ですから、どういう場合に使われるかというと、仲裁という紛争解決⼿段の独立性や中立性を重視するような当事者、例えば国家機関や準国家機関にとっては受け容れやすく、利⽤が⾒込まれるのではないかと思います。仲裁⼈報酬についても非常に柔軟に定められているので、フレキシビリティも⾼いと思います。
〇xx なるほど。具体的に商事仲裁規則と比べた場合、どのあたりが違うのでしょうか。
〇道垣内 UNCITRAL仲裁規則は条文の数が少ないです。
〇xx 詳しくは書いていないということですね。
〇道垣内 そうです。仲裁⼿続の⾻格しか定めていないので、仲裁廷の裁量の幅は極めて大きいという特徴があると思います。
〇Freeman 柔軟性が⾼いと、よく言われると思いますね。
〇道垣内 そうですね。常識的な内容のことしか規定されていませんから、ベテランの仲裁⼈であれば、いちいち条文に当たらなくても⼿続を進めることができると思います。これに対して、商事仲裁規則やインタラクティヴ仲裁規則は仲裁⼈就任時にお渡しすることになる注意メモに従って規則を読んでいただく必要があります。
〇xx xxあたりが当事者から⾒てもメリットにはなるということなのですかね。
〇Freeman そうかもしれませんね。もし⽇本が仲裁地として、例えばアジアの広い地域の仲裁事件を扱う機会が増えた場合にも、UNCITRAL仲裁規則という選択肢があるということはプラスになってくるかと思います。
〇xx なるほど。割合としては、それなりには
あるのでしょうか。
〇事務局 これまでのところ、10年に1件とか、そういうレベルです。
〇道垣内 従来は、JCAAでは、UNCITRAL仲裁規則に基づく仲裁も⾏いますという程度の扱いで、これを売り出そうという姿勢ではありませんでした。これからは、JCAAには3つの異なる特徴を持つ仲裁規則があるということを明確に打ち出していくことになりますので、UNCITRAL仲裁規則にもこれまで以上に光を当てていくことになろうかと思います。
〇Xxxxxxx 従来のUNCITRAL仲裁規則による仲裁の提供をJCAAがする場合にも、機関仲裁とするための補充規則が存在したわけですが、この補充規則は実質的には変わっていないですね。
〇道垣内 UNCITRAL仲裁管理規則も少し改正しましたが、それほど大幅には変えておりません。そもそも、UNCITRAL仲裁規則による仲裁⼿続を
⽇本的にローカライズさせたのでは意味がないので、必要最小限のことしか規定していません。
〇xx 今後は、JCAAにおけるUNCITRAL仲裁規則という選択肢が周知されるようになれば、国際仲裁についてもっと使われる可能性は出てくるということですかね。
〇道垣内 例えば⽇本の会社と韓国の会社との紛争について、わざわざシンガポールまで⾏って仲裁
をするよりも、⽇本か韓国のどちらかでした⽅が双
⽅にメリットがあるのではないかと思います。そのためには、クロス仲裁条項、すなわち、⽇本企業が申し立てる場合には韓国で、韓国企業が申し立てる場合には⽇本で、それぞれ仲裁をするという条項はもっと採⽤を検討していただくべきではないかと思っています。そしてその場合、いずれで⾏っても同じように仲裁をすることができるように、いずれもUNCIRAL仲裁規則により仲裁を⾏う旨合意することは極めて合理的な選択だと思います。
2.商事仲裁規則とインタラクティヴ仲裁規則との使い分け
〇xx xに、商事仲裁規則とインタラクティヴ
仲裁規則の使い分けは、これまでも議論として出てきているところはあるかと思いますが、選択する場合の考えられるポイントについて、xxxx、いかがですか。
〇xx 商事仲裁規則については、従来のJCAA規則を踏襲しつつブラッシュアップしてきたというもので、起草の際には各国の仲裁機関等のルールもいろいろと参照して、なるべく海外の当事者にとっても違和感のないような標準的なものとしてつくられてきたものかなと思いますので、特段の事情がなければ、デフォルトとしては、これを選ぶということでいいのではないかなと思います。
他⽅、インタラクティヴ仲裁規則のほうは、新機軸として、かなり特色のある⼿続を打ち出していますので、選択する際には、その特色を活かしていくことができると想定される場合に選択されることになると思います。仲裁xがかなり能動的に当事者とやりとりを⾏って、⽇本や一部ドイツのような裁判実務になじみがあるある意味では職権的な形で⾏われる仲裁ですので、大陸法系の法律家にはそれほど違和感がないということかと思いますけれども、コモンローの裁判実務とかそれに準じた仲裁実務に親しんでいる法律家の目から
⾒ると、少し異質なところがあるかと思います。そのあたりの特色を十分に理解した上で、納得して使っていただくというのが大事かなと思います。特に、仲裁⼈報償⾦について、インタラクティ
ヴ仲裁規則は割と⾦額が抑えられていて、かつ定額という特色があるわけですけれども、そこだけに目を奪われてこれを選ぶのではなく、インタラクティヴという点、すなわち、仲裁⼈と当事者が書面によるやりとりをしつつ進めていくという点が大きな特色ですので、⼿続の内容をよく理解した上で選んでいただくことが重要かなと思うところです。
3.3つの仲裁規則の使い分け
〇xx 私は、契約する際にどのような紛争を想定しているかによって、JCAAの3つの仲裁規則を使い分けるというのが一つの視点になると思っています。想定される紛争が大型で複雑であれば、 UNCITRAL規則のほうが向いていると思います。他⽅で、比較的小規模で早期の解決を目指すのであれば、インタラクティヴ仲裁規則が向いていると思っています。いずれでもなければ、商事仲裁規則がいいでしょう。また、交渉で⾏き詰まったら、とりあえずUNCITRAL規則での仲裁に合意しておいて、実際に紛争が起こった段階で、再交渉するというのもオプションとしてはあると思っています。ただし、紛争が⽣じた段階で、再交渉がうまくいくかどうかはわかりません。
〇道垣内 国際契約において、紛争が発⽣してしまった後、仲裁条項に定めている仲裁規則を変更する合意を得ることがどの程度可能かどうかわかりませんが、当該紛争に相応しいのか否かを合理的に判断していただき、合理的であれば変更合意を積極的にお考えいただきたいと思います。
〇xx また、紛争のコストについて言うと、国際案件になると、国内案件の同じ規模の紛争と比べると、10倍ぐらいの⼿間がかかるという感じです。そのため、国際案件では解決の大筋を⾒つけて早期に解決したいということであれば、インタラクティヴ仲裁が選択肢になると思います。逆に、お⾦をかけても厳密に⼿続を進めたいということであれば、UNCITRAL規則を選択することになるとのイメージを持っています。
さらに、会社への影響も重要な考慮要素です。その紛争の解決次第では会社がつぶれてしまうか
もしれないというほどの大事件であれば、お⾦をかけても、厳密に⼿続を進める必要が出てくるでしょう。あるいは、つぶれるほどではないけれども、ビジネス上のインパクトが大きいということであれば、お⾦をかけても厳密に⼿続を進めるという⽅向になるでしょう。逆に、⽇本とアジアの国の中小企業間での売買をめぐる紛争であれば、取引規模としてもそれほど大きくならないはずなので、そういった場合の売掛⾦に関する紛争といったものは、インタラクティヴ仲裁規則に基づく仲裁のほうが、紛争の解決と、その後の取引関係をどうするかという観点からすると、適切なのではないかと思っています。
〇xx 仲裁という枠内で考えると、そういうことかなと思います。ただ、xx先⽣の発言にも言外に含まれていたと思うのですけれども、最近はシンガポール条約の登場もあり、国際的なビジネス紛争でも、調停(mediation)がかなり注目を集めてきているかと思います。⽇本の当事者から
⾒ても、仲裁は裁断的な解決⽅法である以上負けるリスクもあるので、調停が魅⼒的に映るということもかなりありそうです。そういった調停のメリットが認識されてくると、仲裁の強⼒なライバルになってくるのかなという感じがしています。 JCAAは調停規則も持っているわけなので、そちらの問題ですね。
〇道垣内 そうですね。仲裁規則の一新の次は、調停規則のxxを目指しております。そして、調停を活性化させるべく、売り込みもしていきたいと思っております。
〇xx 皆さんの話にそれほどつけ加えることはないのですけれども、3つの中でどれをデフォルトにして進めるかというと、xxさんがおっしゃったように、何も考えなければ商事仲裁規則ということになると思います。xxさんのお話の中に⾦額が大きい場合はUNCITRAL規則という話がありましたが、UNCITRAL規則と商事仲裁規則の間で⾦額の多寡によって使い分ける理由は何なのでしょうか。
〇xx 仲裁⼈の報酬の点です。仲裁⼈がどれだけの時間をかけられるかというのが、どの規則か
によって大きく変わり得ると思っています。
〇xx 逆に言うと、商事仲裁規則に合意しておいて、仲裁⼈の定額制の部分は、仲裁廷成立前の合意でcontract outすれば解決する問題ですかね。
〇xx そうですね。そのような⽅法はあると思います。
〇xx インタラクティヴ仲裁については、既に申し上げたように、特に仲裁⼈にとってはインテンシィヴな⼿続なので、報酬の点もそうですが、期間についても、7.5カ⽉以内に終えなければならない点、これは延長可能ですが、インテンシィヴな⼿続で7.5カ⽉という短期間で仲裁判断をするのは、チャレンジングではないかと思います。特に最初の書面による争点整理はともかくとして、 2回目の暫定的な考え⽅の書面による提示については、先ほどお話ししたように、仲裁⼈間で協議をして合意をするための労⼒は相当なものがあるように思われます。そして提示した上で、さらに当事者から意⾒を求める期間を置かなければいけないということになると、かなり綿密に審理計画をし、当事者に対してもデマンディングに⼿続指揮をしていかないと、7.5カ⽉で終えるというのは難しいのではないかと思います。
したがって、インタラクティヴ仲裁は、通常の国際仲裁事件、すなわち、3⼈の仲裁⼈で仲裁廷が構成され、その3⼈がそれぞれ別の国にいるというようなものについて適⽤するのはなかなか難しいのではないかなという気がしています。
他⽅、国内の企業同⼠の国内仲裁、あるいは、一⽅が国内で他⽅は外資系企業の国内子会社とか、そういう場合で、さらに、仲裁⼈が全部⽇本にいるか、あるいは単独仲裁であるときには向いているように思います。もちろん、単独仲裁の場合であれば、運⽤しやすいと思います。仲裁⼈が 3⼈の場合には、仲裁判断書について合議をする段階のかなり前の段階でかなり合議に時間を費やすことになるので、それが⼿続の遅れにつながらないかなということが心配されます。したがって、国内仲裁で、そんなに争点が複雑ではなく、かつ単独仲裁⼈が担当する場合、これがインタラクティヴ仲裁に最適な事件ではないかなと想像して
います。
もう一点、インタラクティヴ仲裁に盛り込まれた特色ある事項は、インタラクティヴ仲裁⼿続でなくても、商事仲裁⼿続、さらにはUNCITRAL仲裁規則に基づく⼿続の中でも、報酬や期間の制約を外せばやってやれないことはないのですね。争点整理であれ、心証の暫定的な考え⽅の提示であれ、目指すところは審問、証⼈尋問を効率的にするとか、⼿続全体を短くするということですから、インタラクティヴ仲裁⼿続においてするだけではなく、部分的には商事仲規則やUNCITRAL仲裁規則に基づく⼿続でも使っていいし、使うことをむしろ目指すべきではないかと思っています。そういう実験的な実務運⽤はあってもよいのではないかと思っているところです。
もしかしたら、今まで世界の主流になってきたxx法系の国際仲裁実務から⾒ると異質なものを仲裁の世界に持ち込むことになるかもしれませんが、そうやって異質なものを持ち込んで、そこの相互作⽤で新しい仲裁実務を形成していくのが仲裁という紛争解決のいいところだと思います。
それから、xxxxxからプロモーションの話が出ましたが、最終的なユーザーは企業ですが、トランザクションの弁護⼠、さらにはインハウスの⽅々に、商事仲裁規則と特にインタラクティヴ仲裁規則を十分にご説明して、こういうこともできるのですよということをアピールしていくのは考えられるかと思っています。仲裁⼈へのプロモーションはまた別で、今回の規則改正にあたって、特にインタラクティヴ仲裁規則の導入について、JCAAが実施したパブリック・コメント募集において、⽇本の仲裁⼈のコミュニティーから結構厳しい懐疑的な意⾒が寄せられたことも踏まえなければならないと思います。また国際的な仲裁⼈コミュニティーの評価は継続的にモニターすべきでしょう。いずれにせよ、運⽤を積み重ねていくことだと思います。
〇道垣内 ドイツの仲裁機関の規則においても、 JCAAのインタラクティヴ仲裁規則による心証開示と同じようなことが定められています。ただし、心証開示をすることができるという規定です。そ
の理由は、仲裁規則を1つしか持っていないからだと思います。JCAAは3つの規則をメニューとして提示しているわけですから、心証開示義務を仲裁⼈に課すことを選択する場合にインタラクティヴ仲裁規則が選択されるのであって、そうでなければ、たとえば商事仲裁規則を選択して、仲裁⼈は裁量により心証開示をすることができるということになりますが、他⽅、心証開示を全くしなくてもいいということでよいわけです。いずれにしても、大陸法系の国は地球上を⾒渡すと幾つもあるわけで、そういう国の企業と⽇本企業との仲裁条項ではインタラクティヴ仲裁規則を選択するということは十分にあるのではないでしょうか。
〇xx それも単独仲裁だったらいろいろやりようはあるのですが、ほかの仲裁⼈がいる場合は、まず仲裁⼈間でやり⽅について合意をしなければいけないので、そこが結構大変だと思います。
〇xxx ⽇本と韓国の企業間紛争の仲裁であれば、⽇本の仲裁⼈と韓国の仲裁⼈と、3⼈目はそれ以外の大陸法系の国の仲裁⼈という組み合わせはあり得るかもしれません。
〇xx それはあり得るかもしれませんね。ライクマインディットな仲裁⼈によって構成される仲裁xによる仲裁と言うことですね。
〇xx 話が合う仲裁⼈であれば、比較的作業は円滑に進むかも知れませんね。
〇xx そういう場合ではなく、xx法系の仲裁
⼈がいる場合、このインタラクティヴ仲裁のやり
⽅を彼らに説明するのは結構⾻で、「一体、なぜそんなことをするのか」といったところから説明しなければならないと思います。他⽅、単独仲裁であれば、その問題はないし、また、ライクマインディッドな仲裁⼈同⼠だと、その問題はないので、いいと思います。
〇道垣内 たとえば⽇韓の企業間紛争のように、大陸法系の国の企業間の紛争であるのに、わざわざxx法系の法律家を仲裁⼈に選んで仲裁をしてもらうために、7時間以上も飛⾏機に乗らなければならないシンガポールで審問⼿続をしたりしないで、大陸法的なやり⽅で⽇本か韓国で審問をするということは十分あり得るのではないかと思っ
ております。
〇xx 例えば当事者選任の仲裁⼈が⽇本⼈とドイツ⼈とか、⽇本⼈と韓国⼈だったりしますね。そのときに、第三仲裁⼈として、xx法系の⾼名な仲裁⼈を香港とかシンガポールから呼ぶのではなくて、ドイツとか韓国とか⽇本の第三仲裁⼈を選ぶということによって、インタラクティヴ仲裁をやるというのは考えられると思います。
〇xx そういう地域の法律家は、JCAAの仲裁⼈候補者データベースには登載されているわけですね。
〇道垣内 はい、意識して集めています。ところで、フランス法系の法律家もドイツ・⽇本の法律家の発想と似ているのでしょうか。
〇xx どうですかね。マインドはかなり違いそうですね。裁判官の介入という意味では、フランスの裁判官はほとんど介入をしないですね。
〇xx そうですね。フランスは、全然インタラクティヴではないのではないですか。
〇道垣内 では、インタラクティヴ仲裁に適合する仲裁⼈のメンタリティーは大陸法系というよりは、ドイツ法系というべきですね。
〇Freeman インタラクティヴ仲裁規則はイノベーティヴな分、運⽤する上で問題も出てくるかもしれませんけが、可能な範囲でフィードバックをもらって、必要があれば⾒直していって、より使いやすいものにしていくとよいかと思います。
〇xx インタラクティヴ仲裁は一つの新しい基
軸として打ち出しているものですから、使われるようになれば、一つの新しい仲裁のモデルになり得るものかなと思っています。
私は、どっちかというと、国内仲裁における利
⽤が中心になるのではないかと思っています。もっとも、国内の紛争解決に仲裁を使うというxxxxは非常に⾼いのは確かです。3年くらい前の私法学会で、商事の契約条項についての分析がシンポジウムとして⾏われました。紛争解決条項のところは、仮に契約書に入れられていても、依然として紛争が起こった場合には誠意をもって真摯に解決するみたいな条項しかない割合がかなりの程度を占めているという結果でした。仲裁のところまでまだまだ話が⾏っていないという感じ
です。したがって、契約条項をつくる現場に、うまく働きかけるということに注⼒をしていただきたいと思っています。
〇xx 何年後かの時期を決めて、インタラクティヴ仲裁が実際にどのように動いているのかを評価することも重要だと思います。
4.裁判との競争
〇道垣内 ⽇本の仲裁の底上げのためには、国内事件の解決の⼿段として仲裁を採⽤していただくようプロモーションをしていく必要があると思っています。多くの途上国の裁判所はその国の⼈にとっても信頼性は十分ではないこともあるのに比べますと、⽇本の裁判所への信頼性は極めて⾼く、さらに、いろいろと改革が進み、さらによくなっていると思います。
そういう裁判所との競争において、国内事件で仲裁条項を契約書に入れていただくためにどういうプロモーションをすればいいでしょうか。そのヒントをいただきたいと思います。
〇xx 当事者が実際に紛争解決⼿段として仲裁を選択されるのは、代理⼈の弁護⼠と相談して決められるのだろうと思います。ところが、多くの弁護⼠は仲裁になじみがないので、まずは、売り込み先としては弁護⼠の⽅々であり、仲裁を認知してもらうことが大前提かと思います。裁判所による紛争処理と遜色がないこと、例えば仲裁⼈候補者としてはすばらしい実績のある元裁判官がずらりと揃っていますので、その意味では、一般的な裁判所の水準よりも⾼い質の判断がむしろ期待できますよ、といったアピールをすることは一つあり得る⽅法かなと思います。
〇道垣内 そうですね。元⾼裁の裁判官を仲裁⼈にするということは、いきなり⾼裁で裁判をしてもらうようなものだということをアピールできるのではないかと思っています。
〇xx そのほか、仲裁においては、上訴はないので迅速だし、⼿続そのものが短期で終わるように設計されているということに加えて、インタラクティヴ仲裁規則による仲裁であれば、心証も開示してもらえるので、最後に予想外の結果になっ
たのに上訴ができないといった不安はないですよというところもアピール・ポイントですかね。
〇道垣内 多くの司法試験合格者が仲裁を知らないまま法律家になっているのが現実です。ロースクールの講義の中で仲裁をきちんと取り上げてもらい、司法試験にも一度出題してもらうことができれば、受験⽣も最低限のことは勉強するようになるだろうと思います。
〇xx xx試験の対象範囲に入っているのですね。
〇xxx xx試験六法には仲裁法は入っていますので、民事訴訟法で出題してもらえれば、全受験⽣が勉強するようになるはずです。
〇xx ロースクールの民事訴訟法の授業で仲裁に一回分割くといったことは難しいでしょうね。民事訴訟法本体だけでも時間が足りないのに、仲裁まではとても無理だという感じです。
〇xx ADR法ではどうですか。
〇xx ロースクールではADR法は選択科目として置かれていて、受講者は、10⼈、20⼈ですけれども、そこでは私は仲裁も取り上げています。受
講者からは結構評判がいいように思いますが、そもそも関心があるから受講しているという面もあるかと思います。
〇xx xxという紛争解決⼿段は、一度使ってもらえれば、結構よかったという評価になる可能性は⾼いように思われます。
〇道垣内 よかったと言ってくれればいいですね。
〇事務局 初めて仲裁をご経験された先⽣からは、仲裁に実際に携わってみたら、思っていたよりよかったとの感想を言われることが多いです。
〇xx xxようなよい評判がなかなか一般には流布していないということがあるということかもしれません。以上で、本⽇の座談会は終わりたいと思います。
〇道垣内 本⽇はお忙しいところ、ありがとうございました。特にインタラクティヴ仲裁規則の実際の運⽤については、xxxが少し出てきた段階でご報告をし、必要な改善や⾒直しをしていきたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
資 料
1.商事仲裁規則 76
2.インタラクティヴ仲裁規則 98
3.UNCITRAL Arbitration Rules 121
4.Administrative Rules for UNCITRAL Arbitration 136
商事仲裁規則
2019年1⽉1⽇ 改正・施⾏
第1編 仲裁手続
第1章 総則 第1条(目的)
この規則は、当事者が紛争をこの規則による仲裁
により解決する旨の合意をした場合に⾏われる仲裁に係る⼿続その他の必要な事項を定める。
第2条(定義)
1 この規則において「JCAA」とは、一般社団法
⼈⽇本商事仲裁協会をいう。
2 この規則において、「当事者」とは、申立⼈、被申立⼈又はその双⽅をいう。
3 この規則において「書面」とは、電磁的記録を含むものとする。電磁的記録とは、電子的
⽅式、磁気的⽅式その他の知覚によっては認識することができない⽅式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の⽤に供されるものをいう。
4 この規則において「インタラクティヴ仲裁規則」とは、JCAAのインタラクティヴ仲裁規則をいう。
5 この規則において、「UNCITRAL仲裁規則」とは、JCAAのUNCITRAL仲裁管理規則によって補充されるUNCITRAL仲裁規則をいう。
第3条(この規則の適用)
1 この規則は、仲裁合意においてこの規則による仲裁を⾏う旨の合意がある場合に適⽤される。
2 この規則は、よるべき規則を特定しないで JCAAのもとでの仲裁を⾏う旨の合意をしている場合にも適⽤される。
3 前二項の規定にかかわらず、JCAAが確認又は選任した仲裁⼈が1⼈もいない段階において、すべての当事者がインタラクティヴ仲裁規則又はUNCITRAL仲裁規則による仲裁を⾏うことを書面により合意し、JCAAに通知した場合
(xxxが申立書においてインタラクティヴ仲裁規則又はUNCITRAL仲裁規則による仲裁を
⾏うことを求める旨記載し、被申立⼈が書面によりこれに同意した場合を含む。)には、インタラクティヴ仲裁規則又はUNCITRAL仲裁規則が適⽤される。この場合、その合意の時までにこの規則に基づいて⾏われた⼿続はその効⼒を失わない。
第4条(第1編と第2編から第4編までとの関係) 商事仲裁規則による旨の合意は、この規則の第2編から第4編までの規則を含むものとみなす。
第5条(別段の合意)
この規則が適⽤される場合には、当事者、仲裁x及びJCAA並びにこれらの間の関係は、この規則のほか、当事者間の別段の合意により規律される。ただし、第3編及び第4編についてはこの限りではない。
第6条(この規則の解釈)
1 この規則のxxは⽇本語及び英語とする。各言語の文言の意味するところに違いがあるとの疑義がある場合には、⽇本語の文言の意味するところが優先する。
2 この規則の解釈について争いがある場合は、 JCAAの解釈に従うものとする。ただし、第1編及び第2編の規定について仲裁廷が⾏った解釈は、その仲裁事件においては、JCAAの解釈に優先する。
第7条(通知等)
1 この規則により⾏う通知、提出及び送付(以下「通知等」と総称する。)は、別段の定めのある場合を除き、クーリエ便、書留郵便、電子メール、ファクシミリその他の合理的な⽅法によって⾏う。
2 通知等の宛先は、通知等の相⼿⽅の住所、居所、営業所、事務所(通知の相⼿⽅が法⼈その他の団体である場合には、その代表者の住所又は居所を含む。)、当該相⼿⽅が通常使⽤する
電子メールアドレス又はファクシミリ番号(ただし、当該相⼿⽅が指定したものがあるときは、その電子メールアドレスとする。)又は当該相⼿⽅が指定した宛先(以下「通知宛先」と総称する。)とする。
3 通知等は、通知等の相⼿⽅がこれを受領することによって効⼒を⽣ずる。
4 通知等の相⼿⽅がその受領を拒絶したときは、その発送の⽇から3⽇を経過した⽇(受領を拒絶した⽇が判明している場合には、その⽇)に受領されたものとみなす。
5 当事者(通知等の相⼿⽅を除く。)が相当の調査をしたにもかかわらずその相⼿⽅の通知宛先を知ることができないときは、通知等の相⼿⽅の最後に知れたる通知宛先に対して発送することにより通知等をすることができる。この場合において当該通知等は、発送の⽇から3⽇を経過した⽇に受領されたものとみなす。
6 前項の規定により通知等が相⼿⽅に受領されたものとみなされた場合には、同⼈に対して
⾏うそれ以降の通知等は、同項に定める⽅法によって⾏うことができる。
7 当事者は、移転その他の事情により、通知宛先に変更が⽣じた場合には、遅滞なく変更後の通知宛先を指定し、JCAA、仲裁⼈及び他の当事者に通知しなければならない。
第8条(事務局)
1 この規則による仲裁の⼿続管理は、JCAAが⾏う。
2 JCAAは、仲裁x又は当事者の要請があるときは、仲裁⼿続を遂⾏するために必要な通訳者及び速記者、審問室を⼿配する。
第9条(仲裁人候補者名簿)
当事者が仲裁⼈を選任する際の参考資料として、当事者の要請があるときは、JCAAは仲裁⼈候補者名簿を提供する。当事者は、当該名簿に掲載されていない者であっても仲裁⼈に選任することができる。
第10条(代理及び補佐)
当事者は、この規則による⼿続において、⾃己の選択する者に代理又は補佐をさせることができる。
1
第11条(言語)
1 仲裁xは、当事者間に別段の合意がない限り、遅滞なく仲裁⼿続における言語を決定しなければならない。仲裁廷は、言語を決定するに当り、仲裁合意を規定する契約書の言語、通訳及び翻訳の要否並びにその費⽤その他の関連する事情を考慮しなければならない。
2 仲裁廷は、すべての証拠書類について、それを提出する当事者に対し、仲裁⼿続における言語による翻訳文を添付することを求めることができる。
3 JCAAと当事者又は仲裁⼈との通信は、⽇本語又は英語により⾏うものとする。
第12条(手続の期間)
1 この規則における期間の計算においては、初
⽇を算入しない。
2 この規則における期間の計算においては、非営業⽇及び祝⽇を算入する。ただし、当該期間の末⽇が通知等の相⼿⽅が所在する地における非営業⽇又は祝⽇であるときには、期間は、その翌営業⽇に満了する。
3 当事者は、書面による合意により、第15条第2項、第18条第1項、第19条第1項、第20条及び第75条第7項に定める期間並びに仲裁廷又は JCAAがそれぞれ第12条第4項又は第12条第5項により定めた又は変更した期間を除き、この規則に規定する期間を変更することができる。この場合は、当事者は、遅滞なくJCAA及び仲裁廷にその旨を通知しなければならない。
4 仲裁廷は、必要と認めるときは、第43条第1項及び第60条第4項に定める期間及びJCAAが第 12条第5項により定めた又は変更した期間を除き、この規則に規定する期間(仲裁廷が定める期間を含む)を変更することができる。期間を変更した場合には、仲裁廷は、遅滞なく JCAA及び当事者にその旨を通知しなければならない。
5 JCAAは、必要と認めるときは、この規則による⼿続に関する期間を定め、又は変更することができる。
第13条(免責)
仲裁⼈、JCAA及びJCAAの役職員は、故意又は重過失による場合を除き、仲裁⼿続に関する作為又は不作為について責任を負わない。
第2章 仲裁手続の開始
第14条(仲裁申立て)
1 仲裁申立てをするには、申立⼈は、次に掲げる事項を記載した書面(以下「仲裁申立書」という。)をJCAAに提出しなければならない。
(1)紛争をこの規則による仲裁に付託すること
(2)援⽤する仲裁合意(仲裁⼈の数、仲裁⼈の選任⽅法、仲裁地及び仲裁⼿続に⽤いる言語の全部又は一部につき当事者間に合意がある場合には、かかる合意を含む。)
(3)当事者の氏名(当事者が法⼈その他の団体である場合には、その名称及び代表者の氏名)、住所及び判明しているその他の連絡先(当事者が個⼈の場合における勤務先住所等の書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(4)代理⼈を定める場合、その氏名、住所及びその他の連絡先(書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(5)請求の趣旨
(6)紛争の概要
(7)請求を根拠づける理由及び証明⽅法
2 仲裁申立書には、次の各号に定める事項を記載することができる。
(1)仲裁⼈を3⼈とする旨の事前の合意がある場合には、申立⼈が選任する仲裁⼈の氏名、住所及びその他の連絡先(書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(2)仲裁⼈の数、仲裁⼈の選任⽅法、仲裁地及び仲裁⼿続に⽤いる言語の全部又は一部に関する申立⼈の意⾒
(3)本案に適⽤すべき準拠法に関する申立⼈の意⾒
3 申立⼈は、仲裁申立書とともに、第1項(2)に定める仲裁合意を含む仲裁条項又は仲裁合意書の写しをJCAAに提出しなければならない。
4 申立⼈は、代理⼈によって仲裁⼿続を⾏う場合には、仲裁申立書とともに、委任状をJCAAに提出しなければならない。
5 申立⼈は、仲裁申立ての際、第4編に定める管理料⾦を納付しなければならない。JCAAは、申立⼈が管理料⾦を納付しないときは、仲裁申立てがなかったものとみなす。
6 仲裁⼿続は、仲裁申立書がJCAAに提出された
⽇に開始したものとみなす。
第15条(請求の併合)
1 以下の各号に掲げる場合には、複数の請求について、単一の申立てによって仲裁申立てをすること(以下「請求の併合」という。)ができる。
(1)同一の⼿続によることにつき、当事者全員の書面による合意がある場合
(2)申立てに係る請求のすべてが同一の仲裁合意に基づく場合
(3)同一の当事者間において、(a)複数の請求が同一又は同種の法律問題又は事実問題を含み、(b)いずれの請求についてもこの規則による仲裁又はJCAAにおける仲裁に付する旨の合意があって、(c)仲裁地、仲裁⼈の数、言語等の合意内容に照らして、同一の⼿続で審理することに
⽀障がないと認められる場合
2 請求の併合に対する異議は、被申立⼈が仲裁申立ての通知を受領した⽇から4週間以内に、書面により述べなければならない。この異議については、仲裁廷が第48条の規定に従って決定する。
第16条(仲裁申立ての通知)
1 JCAAは、第14条第1項から第5項までの規定(第 2項を除く。)に適合した仲裁申立てがされたことを確認した後、遅滞なく、被申立⼈に対し、仲裁申立てがあったことを通知する。この通知は、仲裁申立書を添付して⾏うものとする。
2 JCAAは、仲裁⼈を選任し、又は仲裁⼈の選任を確認した後、遅滞なく、当該仲裁⼈に対し、仲裁申立書を送付する。
第17条(仲裁廷構成のための手続の続行) JCAAは、被申立⼈が仲裁合意の存否若しくは効⼒又は請求の併合について異議を述べた場合であっても、仲裁廷構成のための⼿続を進めることができる。この場合において、仲裁合意の存否若しくは効⼒又は請求の併合についての異議の当否は、仲裁廷の成立後、第47条第1項又は第48条第1項の規定に従い仲裁廷が判断する。
第18条(答弁)
1 被申立⼈は、仲裁申立ての通知を受領した⽇から4週間以内に、次に掲げる事項を記載した書面(以下「答弁書」という。)をJCAAに提出しなければならない。
(1)当事者の氏名(当事者が法⼈その他の団体である場合には、その名称及び代表者の氏名)、住所及び被申立⼈のその他の連絡先(書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(2)代理⼈を定める場合、その氏名、住所及びその他の連絡先(書面送付場所電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(3)答弁の趣旨
(4)紛争の概要
(5)答弁の理由及び証明⽅法
2 答弁書には、次の各号に定める事項を記載することができる。
(1)仲裁⼈を3⼈とする旨の事前の合意がある場合に、被申立⼈が選任する仲裁⼈の氏名、住所及びその他の連絡先(書面送
付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
1
(2)仲裁⼈の数、仲裁⼈の選任⽅法、仲裁地及び仲裁⼿続に⽤いる言語の全部又は一部に関する被申立⼈の意⾒
(3)本案に適⽤すべき準拠法に関する被申立
⼈の意⾒
3 被申立⼈は、代理⼈によって仲裁⼿続を⾏う場合には、委任状をJCAAに提出しなければならない。
4 答弁書の提出があった場合には、JCAAは、遅滞なく、当事者、及び仲裁⼈が選任されているときは仲裁⼈にその写しを送付する。
第19条(反対請求の申立て)
1 被申立⼈は、以下の各号に掲げる場合には、仲裁申立ての通知を受領した⽇から4週間以内に限り、反対請求の申立てをすることができる。
(1)当事者全員の書面による合意がある場合
(2)申立⼈の請求と反対請求が同一の仲裁合意に基づくものである場合
(3)(a)申立⼈の請求と反対請求が同一又は同種の法律問題又は事実問題を含み、(b)いずれの請求についてもこの規則による仲裁又はJCAAにおける仲裁に付する旨の合意があって(、c)仲裁地、仲裁⼈の数、言語等の合意内容に照らして、同一の⼿続で審理することに⽀障がないと認められる場合
2 前項の反対請求の申立てについては、第14条、第15条第2項、第16条、第18条及び第23条の規定を準⽤する。
第20条(相殺の抗弁)
被申立⼈による相殺の抗弁の提出は、仲裁申立ての通知を受領した⽇から4週間以内に限り、書面により、することができる。
第21条(申立ての変更)
1 申立⼈(反対請求の申立⼈を含む。)は、以下の各号に掲げる場合には、申立ての変更をす
る旨を記載した書面をJCAAに提出して、その申立ての変更をすることができる。
(1)当事者全員の書面による合意がある場合
(2)変更前の請求と変更後の請求が同一の仲裁合意に基づくものである場合
(3)(a)変更前の請求と変更後の請求が同一又は同種の法律問題又は事実問題を含み、(b)いずれの請求についてもこの規則による仲裁又はJCAAにおける仲裁に付する旨の合意があって、(c)仲裁地、仲裁⼈の数、言語等の合意内容に照らして、同一の⼿続で審理することに⽀障がないと認められる場合
2 申立⼈(反対請求の申立⼈を含む。)は、仲裁廷が成立した後に申立ての変更をする場合は、仲裁廷の許可を得なければならない。仲裁廷は、許可をするについて予め相⼿⽅当事者の意⾒を聴かなければならない。
3 仲裁廷は、仲裁⼿続の進⾏の著しい遅延、相
⼿⽅当事者の不利益その他の事情に照らしてその申立ての変更を許可することが不適当と認めるときは、前項の申立ての変更について不許可の決定をすることができる。仲裁廷は、遅滞なく、許可又は不許可の決定を当事者に通知する。
4 申立ての変更については第14条、第15条第2項及び第16条の規定を準⽤する。
5 変更された申立てに対する答弁、反対請求又は相殺の抗弁については第18条、第19条又は第20条の規定を準⽤する。
第22条(提出部数)
1 第14条第1項、第15条第2項、第18条第1項(これらの規定を第19条第2項、前条第5項及び第 56条第6項において準⽤する場合を含む。)、第 20条及び前条第1項の規定により当事者が提出する書面の部数は、仲裁⼈の数(これが定まっていないときは3とする。)と相⼿⽅当事者の数に1を加えた数とする。ただし、委任状は1部で足りる。
2 前項の規定は、電子メール、ファクシミリそ
の他の電子通信⼿段によって提出する場合には適⽤しない。ただし、JCAA又は仲裁廷が当事者に対して一定部数の紙媒体の書面の提出を求めた場合には、当該部数を提出しなければならない。
第23条(仲裁申立てに係る請求の取下げ)
1 仲裁廷が成立する前においては、申立⼈は、 JCAAに対し、仲裁申立てに係る請求の一部又は全部を取り下げる旨を記載した書面(以下
「申立取下書」という。)を提出することにより仲裁申立てに係る請求の一部又は全部を取り下げることができる。JCAAは、被申立⼈に、これを通知する。
2 仲裁廷が成立した後においては、申立⼈は、仲裁廷に対し、申立取下書を提出し、かつ仲裁廷の許可を得て、仲裁申立てに係る請求の一部又は全部を取り下げることができる。
3 前項の許可申立てがあった場合には、仲裁廷は、被申立⼈の意⾒を聴いた上で、被申立⼈が取下げに遅滞なく異議を述べ、かつ、仲裁
⼿続に付された紛争の解決について被申立⼈が正当な利益を有すると仲裁廷が認める場合を除き、仲裁申立ての一部又は全部の取下げを許可しなければならない。
4 前項の規定により仲裁申立てに係る請求の全部の取下げを許可した場合には、仲裁廷は、仲裁⼿続の終了決定をしなければならない。
第3章 仲裁人及び仲裁廷
第24条(仲裁人のxx・独立)
1 xxかつ独立でない者は仲裁⼈に就任してはならず、仲裁⼈は、その在任中はxxかつ独立であり続けなければならない。
2 仲裁⼈への就任の依頼を受けた者は、当事者の目から⾒て⾃己のxx性又は独立性に疑いを⽣じさせるおそれがある事実について合理的な調査を⾏わなければならない。その結果、そのような事実が判明した場合には、当該依頼を受けた者は、仲裁⼈への就任を辞退する
か、又はそのような事実のすべてを依頼をした者に対して書面により開示し、その者に依頼の撤回をするか否かの判断を委ねなければならない。
3 仲裁⼈に選任された者は、書面(以下「xx独立表明書」という。)により、遅滞なく、当事者及びJCAAに対し、⾃己のxx性若しくは独立性に疑いを⽣じさせるおそれのある事実の全部を開示し、又はそれがない事実を表明しなければならない。
4 仲裁⼈は、仲裁⼿続の進⾏中、当事者の目から⾒て⾃己のxx性又は独立性に疑いを⽣じさせるおそれのある事実(すでに開示したものを除く。)について合理的な調査を⾏わなければならない。その結果、そのような事実が判明した場合には、当該仲裁⼈は、書面により、遅滞なく、当事者及びJCAAに対し、これを開示しなければならない。仲裁⼈就任時に、その時点以降にかかる事実が⽣ずる可能性がある旨の一般的な開示を⾏うのみでは、この開示義務を履⾏したことにはならない。
第25条(仲裁人の選任及び確認)
1 仲裁⼈は、当事者間の合意に従って選任される。
2 当事者間に前項に定める合意がない場合には、次条から第30条までの規定に従って選任される。
3 当事者が仲裁⼈を選任する場合及び仲裁⼈が第三仲裁⼈を選任する場合における選任の効
⼒は、JCAAが選任を確認することによって⽣ずる。
4 前項に定める確認を受けるため、仲裁⼈を選任した者は、JCAAに対し、次に定める文書を提出しなければならない。
(a)仲裁⼈選任通知書(確認を受けたい者の氏名、住所、その他の連絡先(書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)及び職業を記載するものとする。)
(b)仲裁⼈就任承諾書
(c)xx独立表明書
5 JCAAは、前項に定める文書の写しを当事者及
び仲裁⼈に遅滞なく送付する。
1
6 JCAAは、仲裁⼈の選任が不適当であることが明らかであると認める場合には、当該仲裁⼈を選任した者の意⾒を聴いた上で、理由を示すことなく、当該仲裁⼈の選任の確認をしないことができる。
7 JCAAは、仲裁⼈の選任を確認したときは、遅滞なく、当事者及び仲裁⼈にその旨を通知する。
8 JCAAが仲裁⼈の選任を確認しなかった場合には、当該仲裁⼈を選任した当事者又は仲裁⼈は、JCAAが定める期限までに新たな仲裁⼈を選任しなければならない。
第26条(仲裁人の数)
1 仲裁⼈の数は、原則として1⼈又は3⼈とする。
2 当事者が、被申立⼈が仲裁申立ての通知を受領した⽇から4週間以内に、仲裁⼈の数に関する合意をJCAAに書面により通知しないときは、仲裁⼈は1⼈とする。
3 いずれの当事者も、被申立⼈が仲裁申立ての通知を受領した⽇から4週間以内に、JCAAに対し、仲裁⼈の数を3⼈とすることを書面により求めることができる。この場合において、 JCAAが、紛争の⾦額、事件の難易その他の事情を考慮し、これを適当と認めたときは、仲裁⼈は3⼈とする。
4 JCAAは、遅滞なく、確定した仲裁⼈の数を当事者に通知する。
第27条(仲裁人の選任-仲裁人が1人の場合)
1 仲裁⼈を1⼈とする合意がある場合には、当事者は、被申立⼈が仲裁申立ての通知を受領した⽇から2週間以内に、仲裁⼈を合意により選任し、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁⼈の選任通知をしなければならない。
2 前条第2項の規定により仲裁⼈が1⼈とされた場合には、当事者は、前条第2項に定める通知期限から2週間以内に、合意により仲裁⼈を選任し、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁⼈の選任通知をしなければならない。
3 当事者が前二項の期間内に、第25条第4項の規
定に従いJCAAに対して仲裁⼈の選任通知をしない場合には、JCAAがその仲裁⼈を選任する。
4 前項の規定によりJCAAが仲裁⼈を選任する場合において、当事者がいずれの当事者の国籍とも異なる国籍を有する仲裁⼈を選任することを求めたときは、JCAAはこれを尊重するものとする。
第28条(仲裁人の選任-仲裁人が3人の場合)
1 仲裁⼈を3⼈とする合意がある場合には、当事者は、被申立⼈が仲裁申立ての通知を受領した⽇から3週間以内に、それぞれ1⼈の仲裁⼈を選任し、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁⼈の選任通知をしなければならない。
2 第26条第3項の規定により仲裁⼈が3⼈とされた場合には、申立⼈及び被申立⼈は、JCAAによるその旨の通知を受領した⽇から3週間以内に、それぞれ1⼈の仲裁⼈を選任し、第25条第 4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁⼈の選任通知をしなければならない。
3 当事者が前二項の期間内に、第25条第4項の規定に従いJCAAに対して仲裁⼈の選任通知をしない場合には、JCAAがその仲裁⼈を選任する。
4 前三項の規定により選任された2⼈の仲裁⼈は、当該2⼈の仲裁⼈のJCAAによる確認又は選任通知を受領した⽇から3週間以内に、第三仲裁⼈を合意により選任し、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁⼈の選任通知をしなければならない。
5 当該2⼈の仲裁⼈は、すべての当事者の書面による合意がある場合に限り、第三仲裁⼈の選任について、⾃らを選任した当事者から個別に意⾒を聴くことができる。一⽅の当事者が仲裁⼈を選任しない場合には、当事者に選任された仲裁⼈は第三仲裁⼈の選任について当該当事者の意⾒を個別に聴くことはできない。
6 仲裁⼈が第28条第4項の期間内に、第25条第4項の規定に従いJCAAに対して第三仲裁⼈の選任通知をしない場合には、JCAAが第三仲裁⼈を選任する。
7 前項の規定によりJCAAが仲裁⼈を選任する場合には、前条第4項の規定を準⽤する。
第29条(多数当事者仲裁において仲裁人が3人の場合)
1 仲裁⼈が3⼈の場合であって、申立⼈又は被申
立⼈が複数のときは、仲裁⼈は、本条の規定に従い選任される。
2 当事者の合意により仲裁⼈が3⼈とされた場合には、申立⼈(申立⼈が複数の場合を含む。以下本条において同じ。)及び被申立⼈(被申立⼈が複数の場合を含む。以下本条において同じ。)は、被申立⼈が仲裁申立ての通知を受領した⽇から3週間以内に、それぞれ1⼈の仲裁⼈を選任し、第25条第4項の規定に従い、 JCAAに対し、仲裁⼈の選任通知をしなければならない。
3 第26条第3項の規定により仲裁⼈が3⼈とされた場合には、申立⼈及び被申立⼈は、JCAAによるその旨の通知を受領した⽇から3週間以内に、それぞれ1⼈の仲裁⼈を選任し、第25条第 4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁⼈の選任通知をしなければならない。
4 前二項の規定により申立⼈及び被申立⼈がそれぞれ選任した2⼈の仲裁⼈は、当該2⼈の仲裁⼈のJCAAによる確認通知を受領した⽇から 3週間以内に、第三仲裁⼈を合意により選任し、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、仲裁⼈の選任通知をしなければならない。
5 前項の規定による第三仲裁⼈の選任にあたっては、第28条第5項の規定を準⽤する。
6 仲裁⼈が第29条第4項の期間内に、第25条第4項の規定に従い、仲裁⼈の選任通知をしない場合には、JCAAがその仲裁⼈を選任する。
7 前項の規定によりJCAAが仲裁⼈を選任する場合には、第27条第4項の規定を準⽤する。
8 申立⼈又は被申立⼈のいずれか又はその双⽅が、第2項又は第3項の期間内に、第25条第4項の規定に従い仲裁⼈の選任通知をJCAAにしない場合には、JCAAが3⼈の仲裁⼈をすべて選任する。この場合において、いずれの当事者
も異議を述べないときは、JCAAは、申立⼈又は被申立⼈のいずれかがすでに選任した仲裁
⼈を、3⼈の仲裁⼈の1⼈として選任することができる。
第30条(JCAAが仲裁人の選任をした場合の通知) JCAAが仲裁⼈を選任したときは、遅滞なく、当事者及び仲裁⼈に対し、第25条第4項(a)に定める文書を送付する。この場合において、JCAAは、同項(b)及び(c)に定める文書の写しを添付する。
第31条(仲裁廷)
1 この規則による仲裁は、第25条から第30条まで、第36条及び第56条の規定により選任された1⼈又は3⼈の仲裁⼈によって構成される仲裁廷によって⾏う。
2 仲裁廷は、すべての仲裁⼈がJCAAにより確認又は選任された時に成立する。
3 仲裁⼈の数が3⼈の場合は、第三仲裁⼈を仲裁廷の長とし、仲裁⼈による別段の合意がない限り、仲裁廷の長は以下の職務を⾏う。
(1)審問及び仲裁廷の合議を主宰する。
(2)仲裁廷を代表して当事者及びJCAAに対し連絡を⾏う。
(3)仲裁判断その他仲裁廷が作成する文書の最初の案を作成する。
第32条(仲裁廷の意思決定)
1 仲裁⼈の数が複数である場合には、仲裁廷の意思は、仲裁判断を含め、仲裁⼈の過半数をもって決定する。
2 仲裁廷の意思の決定について仲裁⼈の過半数で決することができないときは、仲裁廷の長の決するところによる。
3 仲裁⼿続における⼿続の進⾏に係る事項は、すべての当事者の合意又は他のすべての仲裁
⼈の委任があるときは、仲裁廷の長である仲裁⼈が決することができる。
第33条(仲裁人による補助者の利用)
1 仲裁⼈は、仲裁判断を含む仲裁廷の決定に実
質的な影響を与える作業を第三者に委ねてはならない。
1
2 単独仲裁⼈又は仲裁廷の長は、前項の定めに反しない限り、仲裁⼈の任務遂⾏に係る補助をさせる第三者(以下「仲裁⼈補助者」という。)を⽤いることができる。ただし、この場合には、仲裁⼈補助者に関する情報を示した上で、その⽤いようとする作業内容について説明し、仲裁⼈補助者に報酬を⽀払う場合にはその計算⽅法等を明らかにした上で、書面によりすべての当事者の了解を得なければならない。
3 仲裁⼈補助者については、第24条及び第42条第2項の規定を準⽤する。
4 仲裁⼈補助者の報酬及び経費は第101条に定める単独仲裁⼈又は仲裁廷の長の経費とする。ただし、仲裁⼈補助者の報酬の額は、当該仲裁⼈について第94条の上限額を算定する際には、当該仲裁⼈の報償⾦と読み替えるものとする。
第34条(仲裁人の忌避)
1 当事者は、仲裁⼈のxx性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるときは、その仲裁
⼈を忌避することができる。
2 仲裁⼈を選任し、又は仲裁⼈の選任について推薦その他これに類する関与をした当事者は、選任後に知った事由を忌避の原因とする場合に限り、その仲裁⼈を忌避することができる。
3 仲裁⼈の忌避の申立てをしようとする当事者は、JCAAが仲裁⼈の選任を確認した旨の通知
(JCAAが仲裁⼈を選任した場合は、仲裁⼈選任通知書)を受領した⽇又は第1項に定める事由のあることを知った⽇のいずれか遅い⽇から2週間以内に、忌避の原因を記載した書面(以下、「忌避申立書」という。)をJCAAに提出しなければならない。
4 忌避申立書の提出があった場合には、JCAAは、遅滞なく、他の当事者及び当該仲裁⼈に対し、当該忌避申立書の写しを添えて、その旨を通知する。
5 JCAAは、他の当事者及び当該仲裁⼈の意⾒を
聴いた上で、理由を示すことなく、忌避の当否について決定する。
第35条(仲裁人の解任)
仲裁⼈が任務を遂⾏せず若しくは任務の遂⾏を不当に遅滞させたとき、又は法律上若しくは事実上仲裁⼈が任務を遂⾏することができなくなったときは、JCAAは、当事者の書面による申立て又は職権により、当事者及び当該仲裁⼈の意⾒を聴いた上で、その仲裁⼈を解任することができる。
第36条(仲裁人の補充)
1 仲裁⼈の忌避、解任、辞任又は死亡により、仲裁⼿続終了前に仲裁⼈が欠けたときは、 JCAAは、遅滞なく、当事者及び他の仲裁⼈に、その旨を通知する。
2 前項の場合において、欠けた仲裁⼈が当事者又は他の仲裁⼈によって選任された者であるときは、当事者間に別段の合意がない限り、選任した当事者又は当該他の仲裁⼈は、前項の通知を受領した⽇から3週間以内に、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対し、補充すべき仲裁⼈(以下「補充仲裁⼈」という。)の選任を通知しなければならない。当事者又は当該他の仲裁⼈がこれを⾏わないときは、JCAAが補充仲裁⼈を選任する。
3 第1項の場合において、欠けた仲裁⼈がJCAAによって選任された者であるときは、当事者間に別段の合意がない限り、JCAAが補充仲裁
⼈を選任する。
第37条(審理終結後に仲裁人が欠けた場合)
前条の規定にかかわらず、審理の終結後、仲裁判断前に仲裁⼈が欠けた場合において、JCAAが、仲裁⼈及び当事者の意⾒を聴いて、仲裁⼈を補充しないことを相当と認めるときは、仲裁廷は、仲裁
⼈を補充することなく仲裁⼿続を続⾏し、仲裁判断をすることができる。
第38条(仲裁人を補充した場合の手続)
第36条の規定により仲裁⼈を補充した場合には、
仲裁廷は、当事者の意⾒を聴いて、すでに⾏われた⼿続を再び⾏うかどうか、及び⾏う場合にはその程度について決定しなければならない。
第4章 仲裁手続
第1節 審理手続第39条(仲裁地)
1 仲裁地は、当事者間に別段の合意がない限り、
第14条第1項に定める仲裁申立書を申立⼈が提出したJCAAの事務所の所在地とする。
2 仲裁廷は、当事者間に別段の合意がない限り、適当と認めるいかなる場所においても、仲裁
⼿続を⾏うことができる。
第40条(審理手続の進行)
1 審問その他の審理⼿続は、仲裁廷の指揮の下に⾏う。
2 仲裁廷は、当事者を平等に扱い、当事者が主張、立証及びこれに対する防御を⾏うに十分な機会を与えなければならない。
3 仲裁廷は、紛争の迅速な解決に努めなければならない。
4 当事者は、審理⼿続において提出するすべての書面を、仲裁⼈、相⼿⽅当事者及びJCAAに送付するものとする。仲裁廷は、当事者に対して書面による通知等を⾏う場合には、JCAAにその写しを送付するものとする。
第41条(時機に後れた主張及び証拠の却下)
仲裁廷は、時機に後れた主張及び証拠申出を却下することができる。
第42条(非公開・守秘義務)
1 仲裁⼿続及びその記録は、非公開とする。
2 仲裁⼈、JCAAの役職員、当事者、その代理⼈及び補佐⼈その他の仲裁⼿続に関係する者は、仲裁事件に関する事実又は仲裁⼿続を通じて知り得た事実を他に漏らしてはならず、これらに関する⾒解を述べてはならない。ただし、
その開示が法律に基づき又は訴訟⼿続で要求されている場合その他の正当な理由に基づき
⾏われる場合には、この限りでない。
第43条(仲裁判断までの期間及び審理予定表の作成)
1 仲裁廷は、その成立の⽇から9か⽉以内に仲裁判断をするよう努めなければならない。
2 仲裁廷は、前項の目標を達成するため、できる限り速やかに、準備会合、テレビ会議、電話会議、書面の交換その他の仲裁廷が定める
⽅法により当事者と協議を⾏い、必要かつ可能な範囲で、審理⼿続の予定を書面により作成し(以下「審理予定表」という。)、当事者及びJCAAに送付しなければならない。
3 仲裁廷は、当事者の意⾒を聴いて、前項の審理予定表を随時変更することができる。
第44条(主張書面及び証拠の提出)
1 当事者は、この規則又は仲裁廷が定める期間内に、法律及び事実に関する主張を記載した書面(以下「主張書面」という。)及び証拠を仲裁廷に提出しなければならない。
2 仲裁廷は、当事者から提出された主張書面及び証拠の受領を確認しなければならない。
第45条(当事者の懈怠)
1 仲裁廷は、一⽅の当事者がこの規則又は仲裁廷が定める期間内に主張書面(答弁書を含む。)を提出しない場合であっても、当該一⽅の当事者が他⽅の当事者の主張を認めたものとして取り扱うことなく、仲裁⼿続を続⾏しなければならない。
2 仲裁廷は、一⽅の当事者が、正当な理由なく、審問期⽇に出席せず、又は証拠書類を提出しない場合であっても、審理を続⾏し、又は審理を終結してその時までに収集された証拠に基づいて仲裁判断をすることができる。
第46条(争点整理及び付託事項書の作成)
1 仲裁廷は、⼿続のできるだけ早い段階で、当事者の意⾒を聴いて、争点の整理に努めなけ
ればならない。
1
2 仲裁廷は、効率的な審理を実現するため相当と認めるときは、当事者の意⾒を聴いて、当事者が仲裁廷に判断を求める事項及び主たる争点を記載した付託事項書を作成することができる。
第47条(仲裁権限に対する異議申立てについての決定)
1 仲裁廷は、仲裁合意の存否若しくは効⼒に関す
る主張についての判断その他の⾃己の仲裁権限の有無についての判断を示すことができる。
2 仲裁廷は、⾃己が仲裁権限を有しないと判断する場合には、仲裁⼿続の終了決定をしなければならない。
第48条(請求の併合に対する異議申立てについての決定)
1 仲裁廷は、請求の併合に対する異議申立てに
ついて判断を示すことができる。
2 仲裁廷は、第15条第1項に定める請求の併合の要件を満たさないと認める場合には、仲裁⼿続を分離する決定(以下「分離決定」という。)をし、その旨を当事者に通知しなければならない。ただし、第15条第2項に定める期間内に異議がなかった場合には、分離決定をすることができない。
3 分離決定があった場合には、仲裁廷の任務は終了し、分離された各請求について、各別に仲裁⼿続を⾏う。ただし、(a)第15条第2項に定める期間内に、異議をとどめなかった被申立⼈に係る請求及び(b)被申立⼈が分離決定の通知を受領した⽇から1週間以内に仲裁廷の任務の続⾏を求めた請求については、仲裁廷の任務は終了しない。
4 前項の規定により各別に仲裁⼿続を進める場合には、仲裁申立ての通知を受領した⽇を基準とする期間の計算においては、被申立⼈が分離決定の通知を受領した⽇を基準として計算する。
5 第66条第2項、第4項、第5項及び第6項並びに
第68条から第70条までの規定は、分離決定について準⽤する。
6 xx項の規定は、(a)反対請求の申立てが第19条第1項の要件を満たさないものとされた場合、
(b)(i)申立ての変更が第21条第1項の要件を満たさない場合、若しくは(ii)同条第3項の規定により許可されなかった場合、又は(c)(i)
⼿続参加の申立てが第56条第1項の要件を満たさない場合、若しくは(ii)同条第5項の規定により許されなかった場合に準⽤する。
7 前項の規定にかかわらず、以下の各号に掲げる請求については、仲裁廷の任務は終了しない。
(1)反対請求の申立て又は申立ての変更の前から係属する請求
(2)仲裁廷の成立後にされた⼿続参加の申立ての前から係属する請求
第49条(中間決定)
仲裁廷は、仲裁⼿xxに⽣じた争いにつき相当と認めるときは、これを裁定する中間決定をすることができる。この場合には、第66条第2項及び第 67条の規定を準⽤する。ただし、理由の記載は省略することができる。
第50条(審問の要否の決定)
1 仲裁廷は、仲裁⼿続を、審問を⾏って進めるか、又は文書その他の資料のみに基づいて進めるかを決定しなければならない。ただし、⼿続の適当な段階でいずれかの当事者の申立てがあれば、仲裁廷は審問を⾏わなければならない。
2 審問において証⼈尋問を⾏うか否かは、当事者の意⾒を聴いた上で、仲裁廷が決定する。
3 審問を⾏う場合、仲裁廷は、テレビ会議その他の⽅法も選択肢に入れて、適切な⽅法を選択するものとする。
第51条(審問の予定日時及び場所)
1 審問の予定⽇時及び場所は、仲裁廷が当事者の意⾒を聴いた上で決定する。審問が2⽇以上にわたる場合には、できる限り連続する⽇に開かなければならない。
2 審問の予定⽇時及び場所が決定されたときは、仲裁廷は、遅滞なくこれを当事者に通知しなければならない。
3 当事者双⽅から審問の予定⽇時の変更の申し出があったときは、その予定⽇時を変更しなければならない。一⽅の当事者から審問の予定⽇時の変更の申し出があったときは、仲裁廷は、やむを得ない事情があると認める場合に限り、その予定⽇時を変更することができる。
4 前項の申し出は、審問においてする場合又は第43条第2項に基づく協議を口頭で⾏う際にする場合を除き、書面でしなければならない。
第52条(当事者出席の原則)
1 審問期⽇は、すべての当事者の出席の下に開くことを原則とする。
2 当事者の一部又は全部が欠席した場合には、その欠席のまま審問期⽇を開くことができる。
第53条(異議権の放棄)
当事者が、この規則の規定が遵守されていないことを知りながら、遅滞なく異議を述べないときは、異議を述べる権利を放棄したものとみなす。
第54条(証拠)
1 当事者は、その請求又は防御の根拠となる事実を立証する責任を負う。
2 仲裁廷は、必要があると認めるときは、職権により、当事者から申し出がない証拠を取り調べることができる。
3 証拠調べは、審問期⽇外においても⾏うことができる。この場合においては、当事者に対し、当該証拠について口頭又は書面により意⾒を述べる機会を与えなければならない。
4 仲裁廷は、当事者の書面による申立て又は職権により、一⽅の当事者の所持する文書の取調べの必要があると認めるときは、その当事者の意⾒を聴いた上で、提出を拒む正当な理由があると仲裁廷が認める場合を除き、その提出を命じることができる。
第55条(仲裁廷による鑑定人の選任)
1 仲裁廷は、当事者の意⾒を聴いた上で、鑑定
⼈を選任し、必要な事項について鑑定をさせ、文書又は口頭によりその結果の報告をさせることができる。
2 仲裁廷は、鑑定⼈が前項の規定による報告をした後、当事者が要請したときは、審問期⽇において鑑定⼈に対して質問する機会を与えなければならない。仲裁廷は、必要と認めるときは、当事者が選任する他の鑑定⼈の意⾒書を提出する機会を与えることができる。
第56条(手続参加)
1 仲裁⼿続の当事者となっていない者であっても、以下の各号に掲げる場合には、申立⼈として仲裁⼿続に参加し、又はこの者を被申立
⼈として仲裁⼿続に参加させることができる。
(1)その者及び当事者全員の書面による当該参加に係る合意がある場合
(2)各申立てが同一の仲裁合意に基づくものである場合。ただし、仲裁⼿続の当事者となっていない者が、仲裁廷の成立後に被申立⼈として参加させられる場合には、その者の書面による同意を必要とする。
2 前項の⼿続参加が仲裁廷の成立前である場合には、仲裁⼈は、第25条から第27条、第29条及び第30条の規定に従って選任される。この場合、すでにこれらの規定に従って⾏われた仲裁⼈の選任は、その効⼒を失う。
3 前項の規定に従い仲裁⼈を選任する場合においては、第26条、第27条第1項及び第29条第2項に定める期間は、⼿続参加に係る請求の被申立⼈が⼿続参加の申立ての通知を受領した
⽇を基準として計算する。
4 第1項の⼿続参加が仲裁廷の成立後である場合には、仲裁廷の構成に影響を及ぼさない。
5 仲裁廷は、第1項に掲げる場合であっても、⼿続参加が仲裁⼿続を遅延させると認めるときその他の相当の理由があるときは、⼿続参加を許さないことができる。
6 ⼿続参加の申立てについては第14条、第15条
第2項及び第16条の規定を準⽤する。この場合において、第15条第2項、第16条第1項及び第 48条第3項ただし書の「被申立⼈」は、「参加申立⼈以外の当事者及び被申立⼈として参加を求められた者」と読み替える。
1
7 ⼿続参加に係る請求に対する答弁、反対請求又は相殺の抗弁については第18条、第19条又は第20条の規定を準⽤する。
第57条(複数の仲裁手続の併合)
仲裁廷は、当事者の書面による申立てにより、以下の各号に掲げる場合で、必要があると認めるときは、係属中の仲裁申立てと他の仲裁申立て(仲裁廷の成立前のものに限る。)とを併合して審理することができる。
(1)当事者(当該他の仲裁申立てに係る当事者を含む)全員の書面による合意がある場合
(2)係属中の仲裁申立てに係る請求と、当該他の仲裁申立てに係る請求が、同一の仲裁合意に基づくものである場合。ただし、当該他の仲裁申立てに係る請求の当事者が係属中の仲裁申立てに係る請求の当事者と異なる場合、当該他の仲裁申立てに係る請求の当事者の書面による同意を必要とする。
(3)係属中の仲裁申立てに係る請求と、当該他の仲裁申立てに係る請求が、同一の当事者間におけるものであり、(a)同一又は同種の法律問題又は事実問題を含み、(b)いずれの請求についてもこの規則による仲裁又はJCAAにおける仲裁に付する旨の合意があって、(c)仲裁地、仲裁⼈の数、言語等の合意内容に照らして、同一の⼿続で審理することに⽀障がないと認められる場合
第58条(調停)
1 当事者は、いつでも、書面による合意により、仲裁事件に係る紛争をJCAAの国際商事調停規則に基づく調停⼿続に付することができる。この場合には、次条第1項の場合を除き、当該紛争を担当している仲裁⼈とは異なる者を調停⼈に選任するものとする。
2 仲裁廷は、当事者が第1項に規定する合意をしたときは、申立てにより、仲裁⼿続を停止しなければならない。
3 いずれの当事者も、当事者の合意がない限り、調停⼿続で当事者がした提案、⾃白その他の陳述又は調停⼈の示した提案を仲裁⼿続において証拠として提出してはならない。
4 調停⼿続が、国際商事調停規則第10条第2項(2)から(5)までに定める事由により終了した場合、仲裁廷は、申立てにより、仲裁⼿続を再開する。
第59条(仲裁人が調停人を務める場合の特則)
1 前条第1項の規定にかかわらず、当事者は、書面による合意により、仲裁⼈を調停⼈に選任して、仲裁事件に係る紛争を国際商事調停規則に基づく調停⼿続に付することができる。この場合において、当事者は、仲裁⼈が調停
⼈を務めたこと又は務めていることを理由として当該仲裁⼈の忌避を申し立てることはできない。
2 国際商事調停規則第9条第5項の規定にかかわらず、仲裁事件に係る紛争について調停⼈を務める仲裁⼈は、当事者の書面による合意がなければ、一⽅の当事者と個別に協議することはできない。仲裁⼈は、一⽅の当事者と個別に協議した場合には、個別に協議したという事実(意⾒の内容等を含まない。)を、その都度、他のすべての当事者に伝えなければならない。
3 当事者は、第1項の規定により紛争を調停⼿続に付したときは、第1項に定める合意書の写しをJCAAに提出しなければならない。
4 本条の規定による調停⼈の報償⾦、申立料⾦及び管理料⾦は、以下のとおりとする。
(1)調停⼿続に係る申立料⾦及び管理料⾦は、納付を要しない。
(2)仲裁⼈による調停⼿続に係る報償⾦及び経費については、第81条、第82条及び第 3編の規定を適⽤する。
5 本条による調停の場合には、国際商事調停規
則(第2章の規定を除く)の規定を適⽤する。
第60条(審理の終結及び再開)
1 仲裁廷は、請求について当事者が主張、立証及びこれに対する防御を⾏うに十分な機会を与えられ、仲裁判断を⾏うことができると認めるときは、審理の終結を決定しなければならない。
2 仲裁廷は、仲裁⼿続において申し立てられた請求の一部について前項に定める要件を満たすと認めるときは、審理の一部の終結を決定することができる。
3 仲裁廷は、前二項に規定する審理終結の決定をするときは、適当な予告期間をおかなければならない。
4 仲裁廷は、必要があると認めるときは、審理を再開することができる。審理の再開は、原則として審理終結の⽇から3週間を経過する⽇以後には⾏わないものとする。
第61条(仲裁手続の終了)
1 仲裁⼿続は、仲裁判断が下された時、仲裁廷成立前に仲裁申立てに係る請求の全部が取り下げられた時、又は仲裁⼿続の終了決定があった時に、終了する。
2 仲裁廷は、以下の各号に掲げる場合には仲裁
⼿続の終了決定をしなければならない。
(1)第23条第3項の規定に従い仲裁申立てに係る請求の全部の取り下げを許可した場合
(2)第47条第2項の規定により⾃己が仲裁権限を有しないと判断する場合
(3)仲裁⼿続を続⾏する必要がないと認める場合又は仲裁⼿続を続⾏することが不可能であると認める場合
3 仲裁⼿続が終了したときは、仲裁廷の任務は終了する。ただし、第68条から第70条までの規定による⾏為をすることができる。
4 第66条第2項、第4項、第5項及び第6項並びに第67条の規定は、仲裁⼿続の終了決定について準⽤する。
第2節 仲裁判断
第62条(全部仲裁判断、一部仲裁判断、和解仲裁判断)
1 仲裁廷は、仲裁⼿続において申し立てられた
請求の全部について、仲裁判断をする。
2 前項の規定にかかわらず、仲裁廷は、第60条第2項に定める審理の一部終結決定をした場合には、当該決定に係る請求について、他の請求に先立って、仲裁判断をすることができる。
3 仲裁廷は、仲裁⼿続の進⾏中に和解した当事者双⽅の申立てがあるときは、当該和解の内容を仲裁判断とすることができる。
第63条(少数意見の公表の禁止)
3⼈の仲裁⼈で構成される仲裁廷の場合、仲裁判断には第32条第1項及び第2項に基づく仲裁廷としての決定のみを記載し、仲裁⼈は、その少数意⾒をいかなる形であれ仲裁廷の外に漏らしてはならない。
第64条(仲裁判断の効力)
仲裁判断は、終局的であり当事者を拘束する。
第65条(本案の準拠法)
1 仲裁廷が仲裁判断において準拠すべき法は、当事者が合意により定めるところによる。
2 前項の合意がないときは、仲裁廷は、仲裁⼿続に付された紛争に最も密接な関係がある国の法令であって事案に直接適⽤されるべきものを適⽤しなければならない。
3 仲裁廷は、当事者双⽅の明示された求めがある場合に限り、前二項の規定にかかわらず、xxと善により判断することができる。
第66条(仲裁判断書の部数及び記載事項)
1 仲裁廷は、当事者の数に1を加えた部数の仲裁判断書を作成する。
2 仲裁判断書には、次の事項を記載しなければならない。
(1)当事者の氏名及び住所(当事者が法⼈そ
の他の団体である場合には、その名称及び住所並びに代表者の氏名)
1
(2)代理⼈がある場合は、その氏名及び住所
(3)主文
(4)⼿続の経緯
(5)判断の理由
(6)判断の年⽉⽇
(7)仲裁地
3 当事者が判断の理由を要しない旨を合意している場合又は第62条第3項の規定により仲裁廷が和解の内容を仲裁判断とした場合は、理由の記載は省略する。この場合には、省略の理由を記載しなければならない。
4 仲裁廷は、仲裁判断書において、第80条第1項に定める費⽤について、合計額及び当事者間の負担割合を記載しなければならない。ただし、一部仲裁判断においてはこの限りでない。
5 前項の負担割合に基づき一⽅の当事者が他⽅の当事者に対して償還すべき額があるときは、仲裁廷は、仲裁判断書の主文において、その額を⽀払うべき旨の命令を記載しなければならない。
6 仲裁⼈は、仲裁判断書に署名しなければならない。ただし、仲裁⼈の数が複数の場合においては、仲裁⼈の過半数が署名すれば足りる。この場合には、署名が欠けている理由を仲裁判断書に記載しなければならない。
第67条(仲裁判断書の送付)
1 JCAAは、当事者が仲裁⼈報償⾦、仲裁⼈経費その他仲裁⼿続のための合理的な費⽤であってJCAAに納付すべき⾦額の全額をJCAAに納付した後、仲裁判断書を各当事者に送付しなければならない。
2 JCAAは、仲裁判断書1部を保管する。
第68条(仲裁判断の訂正)
1 仲裁廷は、当事者の書面による申立てにより又は職権で、仲裁判断における計算違い、誤記その他これらに類する誤りを訂正することができる。
2 当事者は、仲裁判断書を受領した⽇から4週間以内に限り、仲裁廷に対し、仲裁判断の訂正の申立てをすることができる。
第69条(仲裁廷による仲裁判断の解釈)
当事者は、仲裁判断書を受領した⽇から4週間以内に限り、仲裁廷に対し、仲裁判断の特定の部分の解釈を求める申立てを書面によりすることができる。
第70条(追加仲裁判断)
当事者は、仲裁⼿続において申し立てられた請求のうち仲裁判断において判断が示されなかったものがあるときは、仲裁判断書を受領した⽇から4週間以内に限り、仲裁廷に対し、その申立てについての仲裁判断を求める申立てを書面によりすることができる。
第5章 仲裁廷又は緊急仲裁人による保全措置命令
第1節 仲裁廷による保全措置命令第71条(保全措置命令)
1 当事者は、書面により、仲裁廷が相⼿⽅当事
者に対して保全措置を講じるべきことの命令
(以下「保全措置命令」という。)を求めることができる。求めることができる保全措置には、以下に掲げるものを含む。
(1)現状を維持し、又は原状を回復すること
(2)現在若しくは急迫の損害若しくは仲裁⼿続の妨害を防ぐ⾏為をし、又はこれを⽣じさせるおそれのある⾏為をやめること
(3)仲裁判断の内容を実現させる原資となる資産を保全すること
(4)紛争の解決に関連性を有し、かつ重要である可能性のある証拠を保全すること
2 前項(1)から(3)までに定める保全措置命令は、次に掲げる事由のいずれもが認められる場合にのみ発することができる。
(1)保全措置命令が発されない場合、損害賠
償を命じる仲裁判断では適切に回復できない損害が⽣じる可能性があり、かつその損害が保全措置命令によりその名宛⼈となる当事者に⽣じる可能性のある損害を十分に上回ること
(2)保全措置命令の申立てをした当事者の本案請求が認められる合理的な可能性があること
3 第1項(4)に定める保全措置命令は、仲裁廷が前項に掲げる事情を考慮して適当と認める場合にのみ発することができる。
4 仲裁廷は、保全措置命令を発するにあたっては、すべての当事者に意⾒を述べるための合理的な機会を与えなければならない。
5 保全措置命令には、第66条第2項、第67条及び第68条の規定を準⽤する。
6 当事者は、保全措置命令を受けた場合には、これを遵守しなければならない。
第72条(担保の提供)
仲裁廷は、保全措置命令を発するにあたって、保全措置命令を求める申立てをした当事者に対し、相当な担保を提供することを命じることができる。
第73条(事情変更の開示義務)
当事者は、保全措置命令の申立て又は保全措置命令の基礎となった事実に重大な変化があったときは、これを仲裁廷に開示しなければならない。
第74条(変更、停止及び取消し)
仲裁廷は、当事者の書面による申立てにより、又は特段の事情がある場合には職権で、当事者の意
⾒を聴いて、保全措置命令を変更し、停止し、又は取り消すことができる。この場合には第71条第 5項の規定を準⽤する。
第2節 緊急仲裁人による保全措置命令
第75条(緊急保全措置命令の申立て)
1 当事者は、仲裁廷の成立前又は仲裁⼈が欠けている場合において緊急の保全措置命令を求
めるときは、書面により、JCAAに対し、緊急仲裁⼈による保全措置命令(以下「緊急保全措置命令」という。)を求める申立てをすることができる。
2 緊急保全措置命令の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
(1)緊急仲裁⼈による保全措置命令を求めること及びその命令の内容
(2)援⽤する仲裁合意
(3)当事者の氏名(当事者が法⼈その他の団体である場合には、その名称及び代表者の氏名)、住所及び判明しているその他の連絡先(当事者が個⼈の場合における勤務先住所等の書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(4)代理⼈を定める場合、その氏名、住所及びその他の連絡先(書面送付場所、電話番号、ファクシミリ番号及び電子メールアドレス)
(5)紛争の概要
(6)緊急保全措置命令の必要性を基礎づける具体的事実
3 緊急保全措置命令の申立⼈は、緊急保全措置命令の申立書とともに、第2項(2)に定める仲裁合意を含む仲裁条項又は仲裁合意書の写しをJCAAに提出しなければならない。
4 申立⼈は、代理⼈によって緊急保全措置命令の申立てをする場合には、緊急保全措置命令の申立書とともに、委任状をJCAAに提出しなければならない。
5 申立⼈は、緊急保全措置命令の申立ての際、第102条第2項に定める緊急仲裁⼈報償⾦並びに第108条第2項に定める管理料⾦及び予納⾦を納付しなければならない。JCAAは、申立⼈がこれらの全額を納付しないときは、当該申立てがなかったものとみなす。
6 第16条及び第22条の規定は、緊急保全措置命令の申立てについて準⽤する。
7 緊急保全措置命令の申立書がJCAAに提出された時点で当該緊急保全措置命令の申立てに係る紛争に関し仲裁申立てがされていない場合
には、当該申立書の提出の⽇から10⽇以内に仲裁申立てをしなければならない。
1
第76条(緊急仲裁人)
1 緊急仲裁⼈の数は、1名とし、JCAAがこれを選任する。
2 xxかつ独立でない者は緊急仲裁⼈に就任してはならず、緊急仲裁⼈は、その在任中は、xxかつ独立でありつづけなければならない。
3 緊急仲裁⼈への就任の依頼を受けた者は、当事者の目から⾒て⾃己のxx性又は独立性に疑いを⽣じさせるおそれがある事実について合理的な調査を⾏わなければならない。その結果、そのような事実が判明した場合には、当該依頼を受けた者は、緊急仲裁⼈への就任を辞退するか又はそのような事実のすべてを JCAAに対して開示しなければならない。
4 JCAAは、(a)第75条第1項から第6項の規定に適合した緊急保全措置命令の申立てがされたことを確認し、(b)緊急仲裁⼈を選任することを適当と認めるときは、緊急保全措置命令申立書の提出を受けた⽇から2営業⽇以内に緊急仲裁⼈を選任するよう努めなければならない。
5 JCAAが緊急仲裁⼈を選任したときは、第30条の規定を準⽤する。
6 第34条に基づく緊急仲裁⼈に対する忌避申立ては、これを妨げない。ただし、同条第3項の規定にかかわらず、緊急仲裁⼈の選任通知を受領した⽇又は緊急仲裁⼈のxx性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があることを知った⽇のいずれか遅い⽇から2営業⽇以内に忌避申立書をJCAAに提出しなければならない。
7 緊急仲裁⼈の任務が終了したときは、緊急仲裁⼈に対する忌避申立てをすることができず、すでにした忌避申立てに係る⼿続は終了する。
第77条(緊急仲裁人の任務)
1 緊急仲裁⼈は、第71条から第74条の規定に従い、緊急保全措置命令を発し、変更し、停止し、又は取り消すことができる。
2 緊急仲裁⼈は、その選任後直ちに、緊急保全
措置命令に係る審理予定を立てなければならない。
3 緊急仲裁⼈は、緊急保全措置命令の適否の判断のために必要と認めるときは、1⽇に限り審問期⽇を開くことができる。
4 緊急仲裁⼈は、その選任の⽇から2週間以内に、緊急保全措置命令に係る決定をするよう努めなければならない。
5 当事者は、緊急保全措置命令を受けた場合には、これを遵守しなければならない。緊急保全措置命令は、仲裁廷が成立した時点、又は欠けた仲裁⼈について新たな仲裁⼈がJCAAにより確認若しくは選任された時点で、当該仲裁廷がした保全措置命令とみなし、仲裁廷が次条第2項による変更、停止又は取消しをするまで、その効⼒を維持する。
6 緊急保全措置命令は、次に掲げる場合には効
⼒を失う。
(1)当該保全措置命令が発令されてから3か
⽉以内に、仲裁廷が成立しないとき、又は欠けた仲裁⼈について新たな仲裁⼈が JCAAにより確認若しくは選任されないとき
(2)第61条第1項の規定により仲裁⼿続が終了したとき
(3)緊急保全措置命令の申立書がJCAAに提出された時点で当該緊急保全措置命令の申立てに係る紛争に関し仲裁申立てがされていない場合であって、当該申立書の提出の⽇から10⽇以内に仲裁申立てがなされないとき
7 緊急仲裁⼈の任務は、次に掲げる場合には終了する。ただし、JCAAが必要と認めるときは、緊急仲裁⼈の任務終了を延期することができる。
(1)緊急保全措置命令の申立書がJCAAに提出された時点で当該緊急保全措置命令の申立てに係る紛争に関し仲裁申立てがされていない場合であって、当該申立書の提出の⽇から10⽇以内に仲裁申立てがなされないとき
(2)仲裁廷が成立したとき
(3)欠けた仲裁⼈について新たな仲裁⼈がJCAA
により確認又は選任されたとき
8 緊急仲裁⼈は、当該紛争に関して仲裁⼈となることができない。ただし、当事者間で書面による別段の合意がある場合はこの限りでない。
第78条(仲裁廷による承認、変更、停止又は取消し)
1 緊急保全措置命令に係る判断は、仲裁廷を拘束しない。
2 仲裁廷は、緊急保全措置命令の全部又は一部を承認し、変更し、停止し、又は取り消すことができる。
第79条(準用規定)
緊急仲裁⼈及び緊急保全措置命令については、その性質に反しない限り、他の章の規定を準⽤する。
第6章 費用
第80条(費用の負担)
1 仲裁⼿続の費⽤には、仲裁⼈報償⾦、仲裁⼈経費、管理料⾦、その他仲裁⼿続のための合理的な費⽤のほか、当事者が負担する代理⼈その他の専門家の報酬及び経費であって、仲裁廷が合理的な範囲内であると認めるものが含まれる。
2 仲裁廷は、前項に定める各費⽤について、⼿続の経過、仲裁判断の内容その他の一切の事情を考慮して、各当事者の負担割合を定めることができる。ただし、仲裁廷が成立する前に、仲裁申立てに係る請求の全部が取り下げられた場合には、JCAAが各費⽤(当事者が負担する代理⼈その他の専門家の報酬及び経費を除く。)について各当事者の負担割合を定めることができる。
3 仲裁⼈報償⾦及び仲裁⼈経費については第3編の規定により、管理料⾦については第4編の規定により定める。
第81条(料金等の連帯納付義務)
すべての当事者は、仲裁⼈報償⾦、仲裁⼈経費そ
の他仲裁⼿続のための合理的な費⽤であって JCAAに納付すべきものについて、JCAAに対して連帯して責任を負う。
第82条(予納及び精算)
1 当事者は、仲裁⼈報償⾦、仲裁⼈経費その他仲裁⼿続のための合理的な費⽤に充当するため、JCAAの定める⾦額をその定める⽅法に従い、その定める期間内にJCAAに予納しなければならない。
2 当事者が前項の予納をしないときは、仲裁廷は、JCAAの求めにより、仲裁⼿続を停止し又は終了しなければならない。ただし、その予納されない分について他⽅の当事者が代わって予納したときは、この限りでない。
3 仲裁⼿続が終了した際に、当事者がJCAAに予納した⾦額が、第66条第4項の規定により仲裁廷が定めた当事者がJCAAに納付すべき⾦額を超えるときは、JCAAは、その差額を当事者に返還しなければならない。
第2編 迅速仲裁手続
第83条(第1編の規定との関係)
1 第2編は第1編の規定の特則として、迅速に仲裁⼿続を進めるために必要な事項を定める。
2 第2編に規定がない事項については、第1編の規定の定めるところによる。
第84条(迅速仲裁手続の適用)
1 申立ての請求⾦額又は請求の経済的価値が 5,000万円(外国通貨から換算する場合には、申立ての⽇の直前の営業⽇におけるTTM
(Telegraphic Transfer Middle Rate)を含む妥当な変換レートにより⽇本円に換算した額による。以下同じ。)未満の場合には、第2編の規定による。ただし、仲裁合意において仲裁
⼈の数を3名とする合意がある場合、又は被申立⼈が仲裁申立ての通知を受領した⽇から2週間以内に当事者が事件を迅速仲裁⼿続によらない旨の書面による合意をJCAAに通知した場
合には第1編の規定による。
1
2 申立ての請求⾦額又は請求の経済的価値が 5,000万円以上の場合であっても、被申立⼈が仲裁申立ての通知を受領した⽇から2週間以内に、当事者が事件を迅速仲裁⼿続によるべき旨の書面による合意をし、JCAAに通知した場合には第2編の規定による。
3 第2編の規定によるべき仲裁申立てがされた場合であっても、次条の規定に従って、請求⾦額若しくは請求の経済的価値が5,000万円以上の反対請求の申立てがされた場合又は⾃働債権の
⾦額若しくは経済的価値が5,000万円以上の相殺の抗弁の提出があったときは、第1編の規定による⼿続に移⾏する。ただし、当事者が迅速仲裁⼿続によるべき旨の書面による合意をした場合には引き続き第2編の規定による。
4 主たる請求に附帯する利息その他の果実、損害、違約⾦又は費⽤の価額は、前三項の請求
⾦額又は請求の経済的価値に算入しない。
5 請求の経済的価値の算定ができないとき若しくは極めて困難であるとき、又は請求の経済的価値に関し当事者間に争いがあるときは、第1項から第3項の経済的価値は5,000万円を超えるものとみなす。
6 JCAAは、迅速仲裁⼿続によることが確定したときは、遅滞なく、当事者及び仲裁⼈にその旨を通知する。
第85条(反対請求の申立て及び相殺の抗弁の提出期限)
第2編の規定によるべき仲裁申立てがされた場合
においては、被申立⼈が仲裁申立ての通知を受領した⽇から2週間以内に限り、被申立⼈は反対請求の申立て又は相殺の抗弁の提出をすることができる。
第86条(申立て等の変更の禁止)
いずれの当事者もその申立て(反対請求の申立てを含む。)又は相殺の抗弁を変更することができない。
第87条(仲裁人の選任)
1 仲裁⼈は1⼈とする。
2 当事者は、迅速仲裁⼿続による旨のJCAAからの通知を受領した⽇から2週間以内に合意により仲裁⼈の選任をし、第25条第4項の規定に従い、JCAAに対して仲裁⼈選任通知をしなければならない。
3 前項に定める期間内に当事者が仲裁⼈選任の通知をしない場合には、JCAAが仲裁⼈を選任する。
4 前項の規定によりJCAAが仲裁⼈を選任する場合において、当事者がいずれの当事者の国籍とも異なる国籍を有する仲裁⼈を選任することを求めたときは、JCAAはこれを尊重するものとする。
5 当事者による仲裁⼈選任の効⼒は、JCAAが選任を確認することによって⽣ずる。JCAAは、その選任が不適当であることが明らかであると認める場合には、当事者にその意⾒を聴いた上で、理由を示すことなく、その選任の確認をしないことができる。
6 JCAAは、仲裁⼈の選任を確認したときは、遅滞なく、当事者及び仲裁⼈にその旨を通知する。
7 JCAAが仲裁⼈の選任を確認しなかった場合には、当事者は、JCAAが定める期限までに新たな仲裁⼈を選任しなければならない。
第88条(書面審理の原則)
1 仲裁xは、原則として、審問期⽇を開かず、書面審理により仲裁⼿続を進める。
2 当事者の意⾒を聴いた上で、仲裁廷が審問の必要があると認める場合には、合理的な⽅法により、審問期⽇は可能な限り短期としなければならない。
第89条(仲裁判断の期限)
仲裁xは、その成立の⽇から3か⽉以内に仲裁判断をするよう努めなければならない。
第90条(手続参加及び複数の仲裁手続の併合の禁止)
第56条及び第57条の規定は、第2編の規定による
⼿続には適⽤しない。
第3編 仲裁人報償金
第91条(第3編の規定の適用)
第3編の規定は、第1編及び第2編の規定に基づく仲裁における仲裁⼈報償⾦等に適⽤される。
第92条(定義)
1 第3編において、請求⾦額又は請求の経済的価値は、以下の各号を総計した額とする。なお、複数の仲裁⼿続の併合があった場合は、それらの仲裁⼿続における以下の各号を合算した額とする。
(a)申立⼈の請求⾦額又は請求の経済的価値
(b)被申立⼈が反対請求申立てをする場合の請求⾦額又は請求の経済的価値
(c)第56条に基づく⼿続参加に係る請求の請求
⾦額又は請求の経済的価値
(d)第94条第2項に定めるみなし請求⾦額
(e)利息、損害⾦等を継続的に⽣ずる請求については、請求⾦額に申立ての⽇から1年間に⽣ずる利息、損害⾦等の額
(f)相殺の抗弁として提出した⾃働債権の⾦額
2 仲裁時間とは、仲裁⼿続のために合理的に必要とされた時間とする。ただし、仲裁⼈が仲裁⼿続のために必要とした移動の時間については、その2分の1を仲裁時間に加えるものとする。
3 第3編における円表示の⾦額は、外国通貨から換算する場合には、申立ての⽇の直前の営業
⽇のTTM(Telegraphic Transfer Middle Rate)を含む妥当な変換レートにより⽇本円に換算した額による。
第93条(タイム・チャージの原則)
1 仲裁⼈の報償⾦は、時間単価に仲裁時間を掛けたxxx・xxxxとする。
2 時間単価は5万円(消費税は含まない。)とする。
3 仲裁xは、JCAAに対し、第92条第2項に定める仲裁時間を、その⽇付ごとの内訳とともに
⽉毎に、翌⽉20⽇までに報告するものとする。
第94条(上限額)
1 単独仲裁⼈の報償⾦の上限額は、請求⾦額又は請求の経済的価値に応じて、以下の通りとする。
請求金額又は 請求の経済的価値 | 上限額 (消費税を含まない。) |
2000万円未満 | 200万円 |
2000万円以上、1億円未満の場合 | 200万円に2000万円を超える額の2.5%に相当する額を加えた額 |
1億円以上、5億円未満の場合 | 400万円に1億円を超える額の1.5%に相当する額を加えた額 |
5億円以上、10億円未満の場合 | 1000万円に5億円を超える額の0.4%に相当する額を加えた額 |
10億円以上、50億円未満の場合 | 1200万円に10億円を超える額の0.1%に相当する額を加えた額 |
50億円以上、100億円未満の場合 | 1600万円に50億円を超える額の0.08%に相当する額を加えた額 |
100億円以上の場合 | 2000万円に100億円を超える額の0.02%に相当する額を加えた額。ただし、3000万円を上限とする。 |
2 経済的価値が算定できない、又はその算定が著しく困難である請求の経済的価値は、7000万円とみなす。
3 3名の仲裁⼈により仲裁xが構成された場合の上限は、仲裁xの長及び当事者選任仲裁⼈について、単独仲裁⼈の場合の上限のそれぞれ 1.2倍及び0.8倍とする。
第95条(時間単価の逓減)
1 仲裁時間が150時間を超過した場合には、その後の時間単価は、当初時間単価の50%を限度として、50時間毎に当初時間単価の10%ずつ逓減するものとする。
2 前項の時間の計算に当たっては、第92条第2項但書の移動の時間を算入しない。
1
第96条(仲裁人報償金の減額等)
1 以下に定める場合には、仲裁⼈の報償⾦は⽀払われない。
(1)仲裁xが成立する前に仲裁⼿続が終了した場合:すべての仲裁⼈
(2)死亡、忌避、解任(当事者間の合意による解任を除く。)又は辞任によって仲裁⼈が欠けた場合:当該仲裁⼈
2 前項(2)の規定にかかわらず、複数の仲裁⼈により仲裁xが構成されている場合であって、死亡又は疾病により仲裁⼈が欠けたときは、仲裁⼈でなくなるまでの仲裁時間、最終的な紛争解決における貢献度その他の事情を勘案して、JCAAが当該仲裁⼈の仲裁⼈報償⾦の額を決定する。
第97条(仲裁x成立前の仲裁人報償金に関する変更の合意)
1 前四条の規定にかかわらず、第31条第2項に
従って仲裁廷が成立する前に、すべての当事者が書面により合意する場合には、仲裁⼈報償⾦の時間単価、上限額、時間単価の逓減及び仲裁⼈報償⾦の減額等について変更することができる。
2 第28条第6項及び第29条第6項に従って、JCAAが選任する仲裁⼈の報償⾦の時間単価、上限額、時間単価の逓減及び仲裁⼈報償⾦の減額等については、前項の合意により定められた条件のうち、仲裁⼈により有利な条件を下まわらないものとする。
3 当事者は、第1項に定める合意をした場合には、遅滞なく、JCAAにその合意内容を通知するものとする。
第98条(仲裁x成立後の仲裁人報償金額に関する変更の禁止)
1 仲裁⼈は、第31条第2項に従って仲裁廷が成立した後は、当事者及びJCAAに対して仲裁⼈報
償⾦の時間単価、上限額、時間単価の逓減及び仲裁⼈報償⾦の減額等の変更について交渉してはならない。
2 すべての当事者が同意する場合であっても、第31条第2項に従って仲裁廷が成立した後は、第3編に定める仲裁⼈報償⾦の時間単価、上限額、時間単価の逓減及び仲裁⼈報償⾦の減額等について変更することができない。
第99条(仲裁人の間での仲裁人報償金の変更の合意)
1 3名の仲裁⼈による仲裁の場合において、当事者選任仲裁⼈が第31条第3項に定める仲裁xの長の職務に属する事項を処理したときには、仲裁⼈3名全員の合意により、第94条第3項の規定にかかわらず、仲裁xの長の報償⾦額の上限を引き下げ、当該当事者選任仲裁⼈の報償⾦額の上限を単独仲裁⼈の場合の報償⾦の上限の1.2倍まで増やすことができる。ただし、 3名の仲裁⼈の仲裁⼈報償⾦の上限額の合計額は、単独仲裁⼈の場合の報償⾦の上限の2.8倍を超えてはならない。
2 仲裁xは、前項の合意をした場合には、その合意の内容を遅滞なくJCAAに通知するものとする。
第100条(仲裁人報償金の支払い)
1 JCAAは、仲裁⼈が仲裁判断をした場合、仲裁
⼿続終了決定をした場合その他の仲裁⼿続が終了した場合は、第68条から第70条に定める期限を過ぎた後、遅滞なく、仲裁⼈報償⾦を
⽀払う。
2 JCAAは、仲裁⼈が辞任その他の理由により仲裁⼈でなくなった場合は、第96条第1項により仲裁⼈報償⾦が⽀払われない場合を除き、第 68条から第70条に定める期限を過ぎた後、遅滞なく、その仲裁⼈に仲裁⼈報償⾦を⽀払う。
第101条(仲裁人経費)
1 仲裁⼈は、以下の項目の経費を負担した場合には、仲裁⼿続の遂⾏に必要かつ合理的な範囲で償還を受けることができる。
(1)交通費(航空運賃はビジネスクラス料⾦とし、他の交通⼿段においてもこれに相当するクラスの料⾦とする。)
(2)郵便、クーリエ、電話、コピーその他事件の特性により合理的に必要な経費として JCAAが認めるもの
(3)仲裁⼈補助者の報酬及び費⽤
2 仲裁⼈は、宿泊を必要とする場合には、宿泊費
(食事代その他の費⽤を含む。)として、1泊あたり6万円の⽀払いを受けることができる。
3 前二項については、第97条の規定を準⽤する。
4 当事者は前三項に定める経費及び宿泊費を負担し、JCAAにその償還及び⽀払いの事務を委託する。
5 JCAAは、仲裁⼈からの領収書又はこれに準ずる証明書類の提出と引き替えに、第1項から第 3項までに定める経費及び宿泊費の償還及び⽀払いを⾏う。
第102条(緊急仲裁人の報償金に関する特例)
1 第93条、第94条、第95条及び第99条の規定は、緊急仲裁⼈の報償⾦には適⽤しない。
2 緊急仲裁⼈の報償⾦は、請求⾦額又は請求の経済的価値のいかんにかかわらず、120万円とする。ただし、緊急仲裁⼈が緊急保全措置命令に係る決定をする前に⼿続が終了した場合、緊急仲裁⼈の報償⾦は30万円とする。
3 第96条、第97条、第98条、第100条及び第101条の規定は、緊急仲裁⼈の報償⾦及び経費について準⽤する。
第4編 管理料金
第103条(管理料金)
1 申立⼈が仲裁の申立てにあたってJCAAに納付すべき管理料⾦は、次の額に消費税額を加えた額とする。
請求金額又は 請求の経済的価値 | 管理料金の額 |
2000万円未満の場合 | 50万円 |
2000万円以上、1億円未満の場合 | 50万円に2000万円を超える額の1%に相当する額を加えた額 |
1億円以上、10億円未満の場合 | 130万円に1億円を超える額の0.3%に相当する額を加えた額 |
10億円以上、50億円未満の場合 | 400万円に10億円を超える額の0.25%に相当する額を加えた額 |
50億円以上、100億円未満の場合 | 1400万円に50億円を超える額の0.1%に相当する額を加えた額 |
100億円以上 | 1900万円に100億円を超える額の0.05%に相当する額を加えた額。ただし、2500万円を上限とする。 |
2 経済的価値の算定ができない請求、又は算定が極めて困難である請求の経済的価値は、 7000万円とみなす。
3 利息、損害⾦等を継続的に⽣ずる請求については、請求⾦額に申立ての⽇から1年間に⽣ずる利息、損害⾦等の額を加えた額によって管理料⾦を算定する。
4 第4編の規定における円表示の⾦額は、外国通貨から換算する場合には、申立ての⽇の直前の営業⽇におけるTTM(Telegraphic Transfer Middle Rate)を含む妥当な変換レートにより
⽇本円に換算した額による。
第104条(請求金額の変更と管理料金)
1 申立⼈が管理料⾦を納付した後に請求を増額又は追加したときは、変更後の請求につき前条を適⽤して得た⾦額を管理料⾦とする。ただし、前条第3項中「申立ての⽇」とあるのは「請求を増額又は追加した⽇」と読み替えるものとする。
2 前条第2項の規定により、7000万円の経済的価値があるとみなされた請求について、7000万円を超える経済的価値があると判明した場合には、前項の規定を準⽤する。
第105条(仲裁申立てに係る請求の全部の取下げ
と管理料金)
1
xxxが、仲裁⼿続開始後30⽇以内で、かつ、仲裁xが成立していないときに仲裁申立てに係る請求の全部を取り下げた場合には、JCAAは、管理料
⾦の90%を返還する。
第106条(迅速仲裁手続が適用される仲裁申立てに係る請求の全部の取下げと管理料金)
第2編の規定が適⽤される場合において、仲裁⼿
続開始後10⽇以内で、かつ、仲裁xが成立していないときに仲裁申立てに係る請求の全部を取り下げたときは、JCAAは管理料⾦の90%を返還する。
第107条(反対請求の申立て及び手続参加についての適用)
前四条の規定は、被申立⼈による反対請求の申立
て及び第56条に基づく⼿続参加の申立てについて適⽤する。
第108条(緊急保全措置命令の申立てに関する特例)
1 前五条の規定は、緊急保全措置命令の申立てには適⽤しない。
2 申立⼈が緊急保全措置命令の申立てにあたって納付すべき管理料⾦及び緊急仲裁⼈の費⽤その他⼿続のための合理的な費⽤の一部に充当するためJCAAに納付すべき予納⾦は、次のとおりとする。
管理料⾦:20万円に消費税を加えた額予納⾦:10万円
3 申立⼈が、緊急仲裁⼈が選任される前に緊急保全措置命令の申立てを取り下げた場合には、 JCAAは、管理料⾦の90%を返還する。
附 則
1 この規則は2019年1⽉1⽇から施⾏する。
2 この規則の施⾏前に⼿続が開始された仲裁事件については、なお従前の例による。ただし、当事者の合意により、その後の⼿続をこの規則によって⾏うことができる。この場合、従前の規則により⾏われた⼿続はその効⼒を失わない。