Contract
◇ 資 料 ◇
中華人民共和国民法典(⚒・完)
x x x x x*
x x**(共訳)
第⚒分編 典型契約
第⚙章 売買契約
第595条(売買契約の定義)
売買契約とは,売主が目的物の所有権を買主に移転し,買主が代金を支払う契約をいう。
第596条(契約の内容)
売買契約の内容には通常,目的物の名称,数量,品質,代金,履行期限,履行場所及び履行方式,包装方式,検査基準及び検査方法,決済方式,契約に使用する言語及びその効力等の条項が含まれる。
第597条(目的物)
売主が処分権を取得していないことにより目的物の所有権を移転できない場合は,買主は契約を解除することができ,かつ売主に違約責任を負うよう請求することができる。
法律,行政法規で譲渡が禁止又は制限されている目的物については,その規定に従う。第598条(所有権の移転義務等)
売主は,買主に対して目的物又は目的物引取証を引き渡し,かつ目的物の所有権を
移転する義務を履行しなければならない。
第599条(関連書類の引渡義務)
売主は,約定又は取引慣習に従い,目的物引取証以外の関連証書及び資料を買主に引き渡さなければならない。
第600条(知的財産権の帰属)
知的財産権を備えている目的物を売却する場合は,法律に別段の定めがあるとき又は当事者に別途約定があるときを除き,当該目的物の知的財産権は,買主に属しない。第601条(引渡期限)
売主は,約定の期日に従い目的物を引き渡さなければならない。引渡期限を約定している場合は,売主は,当該引渡期間内のいつでも引き渡すことができる。
第602条(引渡期限が明確でない場合)
当事者が目的物の引渡期限を約定していない場合又は約定が不明確な場合は,本法第510条,第511条第⚔号の規定を適用する。第603条(引渡地)
売主は,約定の場所に従い,目的物を引き渡さなければならない。
当事者が引渡場所を約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第 510条の規定に基づいても確定することが
* xx・xxx 立命館大学法学部准教授
** シュ・ヨウ 静岡大学xx社会デザイン機構サステナビリティセンター法実務部門教授
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できないときは,以下の規定を適用する。
⑴ 目的物につき運送が必要な場合は,売主は目的物を第一運送人に引き渡し,これにより買主に運送し引き渡さなければならない。
⑵ 目物につき運送が必要でなく,売主と買主が契約締結時に目的物が特定の場所にあることを知っている場合は,売主は当該地点において目的物を引き渡さなければならない。目的物が特定の場所にあることを知らない場合は,売主の契約締結時の営業地において目的物を引き渡さなければならない。
第604条(危険負担)
目的物の毀損・滅失の危険は,目的物の引渡前は売主が負担し,引渡後は買主が負担する。但し,法律に別段の定めがある場合又は当事者に別途約定がある場合を除く。第605条(買主の原因による引渡遅延)
買主の原因により目的物を約定の期限に従い引き渡すことができない場合は,買主は,約定に違反した日から目的物の毀損・滅失の危険を負担しなければならない。 第606条(運送途中の売却)
売主が,運送人に運送させている途中の目的物を売却する場合は,当事者に別途約定がある場合を除き,毀損・滅失の危険は,契約が成立した時から買主が負担する。 第607条(引渡場所が明確でない場合)
売主が約定に従い目的物を買主の指定する場所に運送し,かつ運送人に引き渡した後,目的物の毀損・滅失の危険は買主が負担する。
当事者が引渡場所を約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第 603条第⚒項第⚑号の規定に従い目的物につき運送が必要なときは,売主が目的物を第一運送人に引き渡した後は,目的物の毀
損・滅失の危険は買主が負担する。
第608条(受領遅滞)
売主が約定に従い,又は本法第603条第
⚒項第⚒号の規定に従い目的物を引渡場所に置き,買主が約定に違反して受領しなかった場合は,目的物の毀損・滅失の危険は,約定に違反した日から買主が負担する。第609条(書類等の引渡と危険移転)
売主が約定に従い,目的物に関連する証書及び資料を引き渡していない場合は,目的物の毀損・滅失の危険の移転に影響を与えない。
第610条(契約不適合)
目的物が品質要求に合致せず,これにより契約目的の実現ができない場合は,買主は目的物の受領を拒絶し,又は契約を解除することができる。買主が目的物の受領を拒絶し,又は契約を解除したときは,目的物の毀損・滅失の危険は売主が負担する。第611条(買主の危険負担と売主の違約責任)
目的物の毀損・滅失の危険を買主が負担する場合は,売主の義務履行が約定に合致しないことを理由に,違約責任を負うよう請求する買主の権利に影響を与えない。 第612条(売主の権利保証義務)
売主は,引き渡す目的物につき,第三者が当該目的物に対していかなる権利も有しないことを保証する義務を負う。但し,法律に別段の定めがある場合を除く。
第613条(買主が悪意の場合)
買主が契約締結時に第三者が売買の目的物に対して権利を有することを知り又は知り得べき場合は,売主は,前条の規定する義務を負わない。
第614条(代金支払留保権)
買主は,第三者が目的物につき権利を有することを確実な証拠をもって証明することができる場合は,相応の代金の支払を中
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止することができる。但し,売主が適当な担保を提供したときを除く。
第615条(品質要求)
売主は,約定の品質要求に従い目的物を引き渡さなければならない。売主が目的物の品質に関する説明を提供した場合は,引き渡す目的物は,当該説明の品質要求に合致しなければならない。
第616条(品質要求が明確でない場合)
当事者が目的物の品質要求につき約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,本法第511条第⚑号の規定を適用する。
第617条(品質要求に合致しない場合)
売主の引き渡した目的物が品質要求に合致しない場合は,買主は,本法第582条ないし第584条の規定に従い違約責任を負うよう請求することができる。
第618条(瑕疵担保責任の軽減等)
当事者が売主の目的物に対する瑕疵担保責任を軽減し又は免除することを約定し,売主の故意または重大な過失により買主に目的物の瑕疵を告知しない場合は,売主は責任の軽減又は免除を主張する権利を有しない。
第619条(包装方式)
売主は,約定の包装方式に従い目的物を引き渡さなければならない。包装方式につき約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,一般的な方式に従い包装しなければならない。一般的な方式がないときは,目的物を保護するに足り,かつ資源の節約,生態環境の保護に資する包装方式を採用しなければならない。第620条(目的物の検査)
買主は,目的物を受領したときは,約定
の検査期間内に検査しなければならない。検査期間を約定していない場合は,遅滞なく検査しなければならない。
第621条(売主への通知)
当事者が検査期間を約定している場合は,買主は,検査期間内に,目的物の数量又は品質が約定に合致しない状況を売主に通知しなければならない。買主が通知を怠ったときは,目的物の数量又は品質が約定に合致しているものとみなす。
当事者が検査期間を約定していない場合は,買主は,目的物の数量又は品質が約定に合致しないことを発見し,又は発見すべき合理的な期間内に,売主に通知しなければならない。買主が合理的な期間内に通知しておらず,又は目的物を受領した日から
⚒年以内に売主に通知していないときは,目的物の数量又は品質が約定に合致しているものとみなす。但し,目的物につき品質保証期間があるときは,品質保証期間を適用し,当該⚒年の規定を適用しない。
売主が提供する目的物が約定に合致しないことを知り又は知り得べき場合は,買主は,前⚒項に規定する通知時期の制限を受けない。
第622条(検査期間)
当事者が約定した検査期間が過度に短く,目的物の性質及び取引慣習に基づき,買主が検査期間内に全面的な検査を完成させることが難しい場合は,当該期間は買主の外観上の瑕疵に対する異議申立の期間とのみみなす。
約定の検査期間又は品質保証期間が法律,行政法規の定める期間より短い場合は,法律,行政法規の規定する期間を基準としなければならない。
第623条(検査の推定)
当事者が検査期間につき約定しておら
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ず,買主が受取署名した送り状,確認書等に目的物の数量,型番,規格が明記されている場合は,買主が数量及び外観上の瑕疵につき検査を行ったものと推定する。但し,関連証拠で覆すに足りる場合を除く。第624条(検査基準)
売主は買主の指示に従い第三者に目的物を引き渡し,売主と買主の約定した検査基準が買主と第三者の約定した検査基準と一致しない場合は,売主と買主が約定した検査基準を基準とする。
第625条(目的物の回収)
法律,行政法規の規定又は当事者の約定により,目的物を有効使用年限満了後に回収しなければならない場合は,売主は自ら又は第三者に委任して目的物を回収する義務を負う。
第626条(代金の支払)
買主は約定の額及び支払方式に従い代金を支払わなければならない。代金の額及び支払方式につき約定していない又は約定が明確でない場合は,本法第510条,第511条第⚒号及び第⚕号の規定を適用する。
第627条(代金の支払場所)
買主は約定の場所に従い代金を支払わなければならない。支払の場所につき約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,買主は売主の営業地において支払わなければならない。但し,目的物の引渡又は目的物引取証の引渡を代金支払の条件とする旨約定している場合は,目的物の引渡がなされた場所又は目的物引取証の引渡がなされた場所において支払う。第628条(代金の支払時期)
買主は,約定の時期に従い代金を支払わなければならない。支払時期につき約定していない場合又は約定が不明確な場合にお
いて,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,買主は,目的物受領又は目的物引取証の受領と同時に支払わなければならない。
第629条(数量超過の引渡)
売主が目的物を過剰に引き渡した場合は,買主は過剰引渡分を受領し,又は受領を拒絶することができる。買主は,過剰引渡分を受領するときは,約定の価格に従い代金を支払う。買主は,過剰引渡分の受領を拒絶するときは,遅滞なく売主に通知しなければならない。
第630条(果実の帰属)
目的物の引渡前に生じた果実は,売主の所有に帰属し,引渡後に生じた果実は,買主の所有に帰属する。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。
第631条(主物と従物)
目的物の主物が約定に合致しないことを理由に契約が解除された場合は,契約解除の効力は,従物に及ぶ。目的物の従物が約定に合致しないことを理由に契約が解除された場合は,解除の効力は,主物に及ばない。第632条(契約の一部解除)
目的物が複数の場合において,そのうちの一部が約定に合致しないときは,買主は,当該一部につき解除をすることができる。但し,当該一部を他の部分と分離させると目的物の価値が明らかに損なわれるときは,買主は,複数の目的物につき契約を解除することができる。
第633条(分割引渡)
売主が目的物を分割して引き渡す場合において,売主がそのうちの⚑回分の目的物につき引渡をせず,又は引渡が約定に合致せず,これにより当該回分の目的物が契約目的を実現することができないときは,買主は,当該回分の目的物につき解除をする
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ことができる。
売主がそのうちの⚑回分の目的物を引き渡さず,又は引渡が約定に合致せず,これにより以降のその他の各回の目的物の引渡が契約目的を実現することができない場合は,買主は,当該回分及び以降のその他の各回の目的物につき解除をすることができる。
買主は,そのうちの⚑回分の目的物につき解除をする場合において,当該回分の目的物とその他の各回の目的物が相互依存しているときは,引渡済又は引渡前の各回分の目的物につき解除をすることができる。第634条(分割支払)
分割支払における買主の期限が到来した未払代金の金額が代金全額の⚕分の⚑に達し,催告後合理的な期間内に期限が到来した代金を依然として支払わない場合は,売主は,買主に代金全額の支払又は契約の解除を請求することができる。
売主は,契約を解除する場合は,買主に当該目的物の使用料の支払を請求することができる。
第635条(見本売買)
見本売買の当事者は,見本品を封印保管しなければならず,かつ見本品の品質につき説明をすることができる。売主が引き渡す目的物は,見本品及び売主が説明した品質と同じでなければならない。
第636条(見本品の隠れた瑕疵)
見本売買における買主が見本品に隠れた瑕疵があることを知らない場合は,引き渡す目的物が見本品と同じであるとしても,売主が引き渡す目的物の品質は,依然として同種物の通常の基準に合致していなければならない。
第637条(試用売買)
試用売買の当事者は,目的物の試用期間を約定することができる。試用期間につき
約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,売主がこれを確定する。
第638条(試用期間)
試用売買における買主は,試用期間内において,目的物を購入することができ,購入を拒絶することもできる。試用期間が満了しても,買主が目的物を購入するか否かにつき意思表示をしていない場合は,購入したものとみなす。
試用売買における買主は,試用期間内において,すでに一部の代金を支払い又は目的物に対し売却・賃貸・担保物権の設定等の行為を実施した場合は,購入の同意とみなす。
第639条(使用料)
試用売買の当事者が目的物の使用料につき約定していない又は約定が明確でない場合は,売主は買主に支払を請求する権利を有しない。
第640条(危険負担)
目的物の試用期間中における毀損・滅失の危険は,売主が負担する。
第641条(所有権の帰属)
当事者は,売買契約において買主が代金支払又はその他の義務を履行しない場合は,目的物の所有権は売主に帰属すると約定することができる。
売主が目的物に対して留保している所有権は,登記を経なければ,善意の第三者に対抗することができない。
第642条(目的物の取戻し)
当事者の約定により売主が契約目的物の所有権を留保し,目的物所有権の移転前において,買主が次の各号に掲げる状況のいずれかに該当し,売主に損害をもたらした場合,当事者に別途約定がある場合を除
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き,売主は目的物を取り戻す権利を有する。
⑴ 約定に従い代金を支払わず,催告を経ても合理的期間内に支払っていないとき
⑵ 約定に従い特定の条件を完成していないとき
⑶ 目的物の売却・質入れ又はその他の不当処分を行ったとき
売主は買主と協議を行い,目的物を取り戻すことができる。協議が合意に達しない場合は,担保物権の実行手続を参照して適用することができる。
第643条(目的物の買戻し)
売主が前条第1項の規定に基づき目的物を取り戻した後,買主は,双方の約定又は売主が指定した合理的な買戻期間内に,売主の目的物取り戻し事由を除去した場合は,目的物の買戻しを請求することができる。
買主が買戻し期間内に目的物を買い戻さず,売主は合理的な価格で目的物を第三者に売却することができ,売却代金から元の買主の未払代金及び必要な費用を控除しても余剰がある場合は,元の買主に返還しなければならず,不足分は元の買主が弁済する。第644条(入札売買)
入札売買の当事者の権利及び義務並びに入札手続等については,関連法律,行政法規の規定に従う。
第645条(競売)
競売の当事者の権利及び義務並びに競売手続等については,関連法律,行政法規の規定に従う。
第646条(その他の有償契約)
法律にその他の有償契約につき規定がある場合は,その規定に従い,規定がない場合は,売買契約の関連規定を参照して適用する。
第647条(交換)
当事者が物の交換取引を約定し,目的物の所有権を移転する場合は,売買契約の関連規定を参照して適用する。
第10章 電力・水・ガス・熱供給使用契約
第648条(電力供給使用契約の定義)
電力供給使用契約とは,電力供給者が電力使用者に対して電力を供給し,電力使用者が電気料金を支払う契約をいう。
社会公衆に向けて電気を供給する電力供給者は,電力使用者の合理的な契約締結要求を拒絶してはならない。
第649条(契約の内容)
電力供給使用契約の内容には通常,電力供給の方式,品質,時間,電力使用の容量,住所,性質,計量方式,電力価格,電気料金の決済方式,電力供給使用施設の維持保護責任等の条項が含まれる。
第650条(履行場所)
電力供給使用契約の履行場所は,当事者の約定に従う。当事者が約定していない場合又は約定が不明確な場合は,電力供給施設の所有権分界点を履行場所とする。
第651条(安全供給義務)
電力供給者は,国が規定する電力供給品質基準及び約定に従い安全に電力を供給しなければならない。電力供給者が国の規定する電力供給品質基準及び約定に従って安全に電力を供給せず,電力使用者に損失を与えた場合は,賠償責任を負わなければならない。
第652条(供給中断通知義務)
電力供給者は,電力供給設備の計画的点検修理,臨時点検修理,法に従った電力制限又は電力使用者の違法な電力使用等の原因により,電力供給を中断する必要がある場合は,国の関連規定に従い電力使用者に予め通知しなければならない。電力使用者
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に予め通知せずに電力供給を中断し,電力使用者に損失を与えた場合は,賠償責任を負わなければならない。
第653条(応急修理義務)
自然災害等の原因により停電した場合は,電力供給者は,国の関連規定に従い遅滞なく応急修理をしなければならない。遅滞なく応急修理をせず,電力使用者に損失を与えたときは,賠償責任を負わなければならない。
第654条(電気料金支払義務)
電力使用者は,国の関連規定及び当事者の約定に従い遅滞なく電気料金を支払わなければならない。電力使用者は,期限を過ぎても電気料金を支払わない場合は,約定に従い違約金を支払わなければならない。催告を経た後,電力使用者が合理的な期間内に依然として電気料金及び違約金を支払わないときは,電力供給者は,国が規定する手続に従い電力供給を中止することができる。
電力供給者が前項の規定に従い電力供給を中止した場合は,電力使用者に予め通知しなければならない。
第655条(安全使用義務)
電力使用者は,国の関連規定及び当事者の約定に従い安全に,節約して,計画的に電力を使用しなければならない。電力使用者は,国の関連規定及び当事者の約定に従って電力を使用せず,電力供給者に損失を与えた場合は,賠償責任を負わなければならない。
第656条(水供給使用契約等)
水供給使用,ガス供給使用,熱供給使用契約については,電力供給使用契約の関連規定を参照して適用する。
第11章 贈与契約
第657条(贈与契約の定義)
贈与契約とは,贈与者が自己の財産を無償で受贈者に与え,受贈者が贈与の受領を表示する契約をいう。
第658条(贈与の取消)
贈与者は,贈与財産の権利移転前においては,贈与を取り消すことができる。
公証を経た贈与契約又は法により取り消すことができない災害救援,貧困救済,障害者扶助等の公益・道徳上の義務的性質を有する贈与契約については,前項の規定を適用しない。
第659条(登記等)
贈与財産につき法に従い登記又はその他の手続を行う必要がある場合は,関連手続を行わなければならない。
第660条(引渡請求権)
公証を経た贈与契約又は法により取り消すことができない災害救援,貧困救済,障害者扶助等の公益・道徳上の義務的性質を有する贈与契約に関しては,贈与者が贈与財産を引き渡さない場合は,受贈者は引渡を請求することができる。
前項の規定に従い引き渡さなければならない贈与財産が贈与者の故意又は重大な過失により毀損・滅失した場合は,贈与者は賠償責任を負わなければならない。
第661条(負担付贈与)
贈与は,これに義務を付することができる。贈与に義務が付されている場合は,受贈
者は,約定に従い義務を履行しなければならない。
第662条(贈与財産の瑕疵)
贈与財産に瑕疵があった場合は,贈与者は責任を負わない。義務を付した贈与に関して,贈与財産に瑕疵があった場合は,贈
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与者は,付帯義務の限度内において売主と同じ責任を負う。
贈与者は,故意に瑕疵を告知せず,又は瑕疵がないことを保証し,受贈者に損失を与えた場合は,賠償責任を負わなければならない。
第663条(法定取消事由)
受贈者が次の各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合は,贈与者は,贈与を取り消すことができる。
⑴ 贈与者又は贈与者の近親者の合法的権利利益を著しく侵害する場合
⑵ 贈与者に対して扶養義務があるにもかかわらず,これを履行しない場合
⑶ 贈与契約で約定した義務を履行しない場合
贈与者の取消権は,取消事由を知り又は知り得べき日から⚑年以内に行使しなければならない。
第664条(相続人等の取消権)
受贈者の違法行為により贈与者が死亡し,又は民事行為能力を喪失した場合は,贈与者の相続人又は法定代理人は,贈与を取り消すことができる。
贈与者の相続人又は法定代理人の取消権は,取消事由を知り又は知り得べき日から
⚖箇月以内に行使しなければならない。
第665条(贈与取消の効果)
取消権者が贈与を取り消した場合は,受贈者に対して贈与財産の返還を請求することができる。
第666条(贈与者の経済状況悪化)
贈与者の経済状況が明らかに悪化し,その生産経営又は家庭生活に著しく影響を及ぼす場合は,贈与義務を以後履行しないことができる。
第12章 金銭貸借契約
第667条(金銭貸借契約の定義)
金銭貸借契約とは,借主が貸主から金銭を借り入れ,期限が到来した時に借入金を返済し,かつ利息を支払う契約をいう。 第668条(契約の形式及び内容)
金銭貸借契約は,書面の形式を採用しなければならない。但し,自然人間の金銭貸借に関しては,別途約定がある場合を除く。
金銭貸借契約の内容には通常,借入金の種類,幣種,用途,金額,利率,期限及び返済方式等の条項が含まれる。
第669条(情報提供義務)
金銭貸借契約を締結するにあたり,借主は,貸主の請求に従い借入金に関連する業務活動及び財務状況のxxの情報を提供しなければならない。
第670条(利息天引の禁止)
借入金の利息は,これを予め元金から控除してはならない。利息を予め元金から控除した場合は,実際の借入金の金額に従い借入金を返済し,かつ利息を計算しなければならない。
第671条(貸主及び借主の義務)
貸主は,約定の期日・金額に従って貸付金を提供せず,借主に損失を与えた場合は,損失を賠償しなければならない。
借主は,約定の期日・金額に従って借入金を受領しない場合は,約定の期日・金額に従い利息を支払わなければならない。 第672条(検査監督)
貸主は,約定に従い,貸付金の使用状況を検査し,監督することができる。借主は,約定に従い,貸主に対して関連財務会計報告書又はその他の資料を定期的に提供しなければならない。
第673条(借主の用途違反)
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借主が約定の借入金の用途に従って借入金を使用しない場合は,貸主は,貸付の実行を停止し,貸付金を期限前に回収し,又は契約を解除することができる。
第674条(利息支払期限)
借主は,約定の期限に従い利息を支払わなければならない。利息支払期限につき約定していない場合又は約定が不明確で,本法第510条の規定に基づいても確定できない場合において,借入期間が⚑年未満であるときは,借入金返済時に一括で支払わなければならない。借入期間が⚑年以上であるときは,⚑年経過毎に支払わなければならず,残余期間が⚑年未満であるときは,借入金返済時に一括で支払わなければならない。第675条(借入金返済期限)
借主は,約定の期限に従い借入金を返済しなげればならない。借入期間につき約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,借主は随時返済することができる。貸主は,借主に合理的な期間内に返済するよう催告することができる。第676条(遅延利息)
借主は,約定の期限に従って借入金を返済しない場合は,約定又は国の関連規定に従い遅延利息を支払わなければならない。第677条(期限前返済)
借主が借入金を期限前に償還する場合は,当事者に別途約定があるときを除き,実際の借入期間に従い利息を計算しなければならない。
第678条(返済期限の延期)
借主は,返済期限が到来する前に貸主に対して延期を申請することができる。貸主が同意した場合は,延期することができる。第679条(自然人間の金銭貸借の効力)
自然人間の金銭貸借契約は,貸主が貸付
金を提供した時から成立する。
第680条(自然人間の金銭貸借の利息)
高利貸しを禁止し,借入金の利率は国の関連規定に違反してはならない。
金銭貸借契約が利息の支払につき約定し ていない場合は,利息のないものとみなす。金銭貸借契約における利息支払の約定が 明確でなく,当事者が補充合意に達することができない場合は,当地又は当事者の取引方式,取引慣習,市場利率等の要素により利息を確定する。自然人間の金銭貸借の
場合は,利息のないものとみなす。
第13章 保証契約
第⚑節 一般規定
第681条(保証契約の定義)
保証契約とは,債権の実現を保障するため,債務者が弁済期にある債務を履行しない又は当事者が約定した事由が発生した場合に,保証人が債務を履行し又は責任を負うことを保証人と債権者が約定する契約をいう。
第682条(従たる契約・民事責任)
保証契約は,主たる債権債務契約の従たる契約である。主たる債権債務契約が無効であれば保証契約も無効である。但し,法律に別段の定めがある場合を除く。
保証契約が無効であると確認された後,債務者,保証人,債権者に過失がある場合には,その過失に基づき,相応の民事責任を各自が負わなければならない。
第683条(機関法人等による保証の禁止)
機関法人は,保証人となることはできない。但し,国務院の認可を得た上で外国政府又は国際経済組織の貸付を利用して再貸付を行う場合を除く。
公益を目的とする非営利法人,非法人組織は保証人となることはできない。
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
第684条(保証契約の内容)
保証契約の内容には通常,保証される主たる債権の種類・額,債務者が債務を履行する期限,保証の方式・範囲及び期間等の条項が含まれる。
第685条(書面契約等)
保証契約は単独で締結する書面契約であっても,主たる債権債務契約における保証条項であってもいい。
第三者が一方的に書面形式で債権者に対して保証を行った場合は,債権者が受領しかつ異議を述べないときは,保証契約は成立する。
第686条(保証の方式)
保証の方式には,一般保証と連帯責任保証が含まれる。
当事者が保証契約において保証の方式につき約定していない場合又は約定が不明確な場合は,一般保証に基づいて保証責任を負う。
第687条(一般保証)
当事者が保証契約において,債務者が債務を履行できないとき,保証人が保証責任を負うことを約定している場合は,一般保証とする。
一般保証の保証人は,主契約の紛争が裁判又は仲裁を経ておらず,かつ債務者の財産につき法により強制執行をしたにもかかわらず債務を履行することができないという状況が生じていないとき,債権者に対し保証責任の負担を拒絶する権利を有する。但し,次の各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合は除く。
⑴ 債務者が行方不明であり,かつ執行に提供できる財産がないとき
⑵ 人民法院が債務者の破産事件を受理したとき
⑶ 債務者の財産が全部の債務の履行に
足りない又は債務能力を喪失したことを証明する証拠が債権者にあるとき
⑷ 保証人が書面で本項に規定する権利を放棄したとき
第688条(連帯責任保証)
保証人は債務者とともに債務に対して連帯責任を負う旨を,当事者が保証契約において約定した場合,これを連帯責任保証とする。
連帯責任保証における債務者が弁済期にある債務を履行しない又は当事者の約定した事由が発生した場合は,債権者は債務者に債務の履行を請求することもできるし,保証人にその保証範囲内において保証責任を負うよう請求することもできる。
第689条(求償権担保)
保証人は,債務者に求償権担保の提供を請求することができる。
第690条(根保証契約)
保証人と債権者は協議をして根保証契約を締結し,最高債権額の限度内において一定期間連続して発生する債権に保証を提供することを約定することができる。
根保証契約は本章の規定を適用するほか,本法第⚒編根抵当権の関連規定を参照して適用する。
第⚒節 保証責任
第691条(被担保債権の範囲)
保証の範囲には,主債権並びに利息,違約金,損害賠償金及び債権を実現する費用が含まれる。当事者に別途約定がある場合はその約定に従う。
第692条(保証期間)
保証期間は保証人が保証責任を負う期間を確定するものであり,中止・中断及び延長は発生しない。
債権者と保証人は保証期間を約定するこ
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とができる。但し,約定の保証期間が主債務の履行期限より早い又は主債務の履行期限と同時に満了した場合は,約定がないものとみなす。約定がない又は約定が明確でない場合は,保証期間は主債務履行期限到来日から⚖箇月とする。
債権者と債務者が主債務の履行期限につき約定がない又は約定が明確でない場合は,保証期間は債権者が債務者に債務履行を請求する猶予期限満了日から起算する。第693条(保証責任の期間)
一般保証の債権者が保証の期間内において,債務者に対して訴訟の提起又は仲裁の申立をしない場合には,保証人は以後保証の責任を負わない。
連帯責任保証の債権者が保証の期間内において保証人に対して保証責任を負うよう請求しない場合には,保証人は以後保証の責任を負わない。
第694条(訴訟時効の起算)
一般保証の債権者が保証期間の満了前に債務者に対して訴訟の提起又は仲裁の申立を行った場合は,保証人が保証責任の負担を拒絶する権利が消滅する日から保証債務の訴訟時効を起算する。
連帯責任保証の債権者が保証期間の満了前に保証人に対して保証責任を負うよう請求した場合は,債権者が保証人に保証責任の負担を請求した日から,保証債務の訴訟時効を起算する。
第695条(主たる債権債務契約の変更)
債権者と債務者が保証人の書面による同意を得ずに,協議で主たる債権債務契約の内容を変更し,債務を軽減する場合は,保証人は変更後の債務につき依然として保証責任を負う。債務を加重する場合は,保証人は加重部分につき保証責任を負わない。債権者と債務者が主たる債権債務契約の
履行期限につき変更を行い,保証人の書面による同意を得ていない場合は,保証期間は影響を受けない。
第696条(債権譲渡)
債権者が債権の全部または一部を譲渡し,保証人に通知しなければ,当該譲渡は保証人に対し効力を生じない。
保証人と債権者が債権譲渡の禁止を約定し,債権者が保証人の書面による同意を得ずに債権を譲渡した場合は,保証人は譲受人に対し以後保証責任を負わない。
第697条(債務の移転)
債権者が保証人の書面による同意を得ずに,債務者の債務の全部又は一部の移転を許可する場合は,保証人は同意を得ずに移転した債務につき以後保証責任を負わない。但し,債権者と保証人に別途約定がある場合は除く。
第三者が債務に加入した場合は,保証人の保証責任は影響を受けない。
第698条(債権者の権利行使の過失)
一般保証の保証人は主たる債務の履行期限満了後に,債権者に債務者が執行に提供できる財産のxxの状況を提供し,債権者が権利行使を放棄し又は怠ることにより当該財産の執行がなされない場合は,保証人は執行に提供できる財産の価値の範囲内において以後保証責任を負わない。
第699条(複数の保証人)
同一の債務について複数の保証人がいる場合は,保証人は保証契約で約定した保証割合に従って保証責任を負う。保証割合について約定がない場合は,債権者はいずれの保証人にもその保証範囲内において保証責任を負うことを請求することができる。第700条(保証人の求償権)
保証人が保証責任を負担した後,当事者に別途約定がある場合を除き,その負担す
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る保証責任の範囲内において債務者に対して求償をする権利を有し,債権者の債務者に対する権利を有する。但し,債権者の利益を害してはならない。
第701条(抗弁権)
保証人は,債務者の債権者に対する抗弁を主張することができる。債務者が抗弁を放棄する場合は,保証人は依然として債権者に対して抗弁を主張する権利を有する。第702条(相殺権と取消権)
債務者が債権者に対して相殺権又は取消権を有する場合は,保証人は相応の範囲内において保証責任の負担を拒絶することができる。
第14章 賃貸借契約
第703条(賃貸借契約の定義)
賃貸借契約とは,賃貸人が賃貸物を賃借人に引き渡して使用・収益をさせ,賃借人が賃料を支払う契約をいう。
第704条(契約の内容)
賃貸借契約の内容には通常,賃貸物の名称,数量,用途,賃貸借期間,賃料並びに賃料支払の期限及び方式,賃貸物の維持修繕等の条項が含まれる。
第705条(賃貸借期間)
賃貸借期間は,20年を超えてはならない。20年を超える場合は,超過部分は無効とする。
賃貸借期間が満了するにあたり,当事者は,賃貸借契約を更新することができる。但し,契約で定める賃貸借期間は,更新の日から20年を超えてはならない。
第706条(登記)
当事者が法律,行政法規の規定に従い賃貸借契約の登記記録手続を行わない場合は,契約の効力に影響を与えない。
第707条(契約の形式)
賃貸借期間が⚖箇月以上である場合は,書面の形式を採用しなければならない。当事者が書面の形式を採用せず,賃貸借期間を確定することができない場合は,期間の定めのない賃貸借とみなす。
第708条(賃貸人の義務)
賃貸人は,約定に従い賃貸物を賃借人に引き渡し,かつ賃貸借期間において賃貸物を約定の用途に合致するよう保たなければならない。
第709条(賃借人の義務)
貸借人は,約定の方法に従い賃借物を使用しなければならない。賃借物の使用方法につき約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,賃借物の性質に従い使用しなければならない。
第710条(賃借物の損耗)
賃借人は,約定の方法に従い,又は賃借物の性質に基づき賃借物を使用し,これにより賃借物が損耗を被った場合は,賠償責任を負わない。
第711条(賃借人の違約責任)
賃借人が約定の方法又は賃借物の性質に従って賃借物を使用せず,これにより賃借物が損失を被った場合は,賃貸人は,契約を解除し,かつ損失の賠償を請求することができる。
第712条(賃貸人の維持修繕義務)
賃貸人は,賃貸物の維持修繕義務を履行しなければならない。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。
第713条(賃借人の維持修繕請求xx)
賃借人は,貸借物につき維持修繕が必要な場合は,賃貸人に合理的な期間内に維持修繕するよう請求することができる。賃貸人が維持修繕義務を履行していないときは,賃借人は自ら維持修繕を行うことがで
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き,維持修繕費用は賃貸人が負担する。賃 借物の維持修繕により賃借人の使用に影響を及ぼした場合は,相応に賃料を減額し,又は賃貸借期間を延長しなければならない。賃借人の過失により賃借物の維持修繕が 必要となった場合は,賃貸人は前項規定の
維持修繕責任を負わない。
第714条(賃借人の保管義務)
賃借人は,賃借物を適切に保管しなければならず,保管が不適切であったことにより賃借物の毀損・滅失をもたらした場合は,賠償責任を負わなければならない。 第715条(改良・増設)
賃借人は,賃貸人の同意を得て,賃借物に対して改良を加え,又は他の物を増設することができる。
賃借人が賃貸人の同意を得ずに,賃借物に対して改良を加え,又は他の物を増設した場合は,賃貸人は,賃借人に原状回復又は損失の賠償を請求することができる。 第716条(転貸)
賃借人は,賃貸人の同意を得て,賃借物を第三者に転貸することができる。賃借人が転貸する場合は,賃借人と賃貸人の間の賃貸借契約は,引き続き有効である。第三者が賃借物に損失をもたらしたときは,賃借人は,損失を賠償しなければならない。賃借人が賃貸人の同意を得ずに転貸した 場合は,賃貸人は契約を解除することがで
きる。
第717条(転貸期間)
賃借人が賃貸人の同意を得て賃借物を第三者に転貸し,転貸期間が賃借人の残余賃借期間を超えている場合は,超過部分の約定は賃貸人に対し法的拘束力を有しない。但し,賃貸人と賃借人に別途約定がある場合を除く。
第718条(転貸の同意)
賃貸人は,賃借人の転貸を知り又は知り得べきにもかかわらず,⚖箇月以内に異議を述べない場合は,賃貸人が転貸に同意したものとみなす。
第719条(賃料の滞納)
賃借人が賃料を滞納した場合は,転借人は賃借人に代わってその滞納賃料及び違約金を支払うことができる。但し,転貸契約が賃貸人に対し法的拘束力を有しない場合を除く。
転借人が代わって支払った賃料及び違約金は,転借人が賃借人に支払うべき賃料に充てることができる。支払うべき賃料の金額を超える場合は,賃借人に求償することができる。
第720条(賃借物の収益)
賃貸借期間において賃借物の占有・使用により得た収益は,賃借人の所有に帰属する。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。
第721条(賃料支払期限)
賃借人は,約定の期限に従い賃料を支払わなければならない。賃料の支払期限につき約定していない場合又は約定が不明確で,本法第510条の規定に基づいても確定できない場合において,賃貸借期間が⚑年未満であるときは,賃貸借期間満了時に支払わなければならない。賃貸借期間が⚑年以上であるときは,⚑年経過毎に支払わなければならず,残余期間が⚑年未満であるときは,賃貸借期間満了時に支払わなければならない。
第722条(賃料支払義務違反)
賃借人が正当な理由なく賃料を支払っておらず,又は支払を遅延した場合は,賃貸人は,賃借人に合理的な期間内に支払うよう請求することができる。賃借人が期限を過ぎても支払わないときは,賃貸人は契約
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を解除することができる。
第723条(第三者の権利主張)
第三者の権利主張により賃借人が賃借物の使用・収益をすることができない場合は,賃借人は賃料の減額又は賃料を支払わないことを請求することができる。
第三者が権利を主張した場合は,賃借人は遅滞なく賃貸人に通知しなければならない。第724条(契約解除)
次に掲げる各号のいずれかに該当し,賃借人以外の原因で賃借物の使用ができない場合は,賃借人は契約を解除することができる。
⑴ 賃借物が司法機関又は行政機関により法により差し押さえ,押収されたとき
⑵ 賃借物の権利帰属に争いがあるとき
⑶ 賃借物に法律,行政法規の使用条件に関する強制的規定に違反する状況があるとき
第725条(賃貸物の所有権の変動)
賃借人が賃貸借契約によって賃借物を占有している期間内において賃借物の所有権の変動が発生した場合は,賃貸借契約の効力に影響を与えない。
第726条(賃貸建物の売却)
賃貸人は,賃貸建物を売却する場合は,売却前の合理的な期間内に賃借人に通知しなければならず,賃借人は,同等の条件で優先的に購入する権利を有する。但し,建物の共有者が優先購入権を行使し,又は賃貸人が建物を近親者に売却した場合を除く。
賃貸人が通知義務を履行した後,賃借人が15日以内に購入意思を明確に表明しない場合は,賃借人が優先購入権を放棄したものとみなす。
第727条(競売)
賃貸人が競売者に賃貸建物の競売を依頼した場合は,競売の5日前に賃借人に通知
しなければならない。賃借人が競売に参加しない場合は,優先購入権を放棄したものとみなす。
第728条(損害賠償請求)
賃貸人が賃借人に通知せず,又は賃借人の優先購入権の行使を妨げるその他の状況がある場合は,賃借人は賃貸人に賠償責任を負うよう請求することができる。但し,賃貸人と第三者が締結した建物売買契約の効力は影響を受けない。
第729条(賃借物の毀損・滅失)
賃借人の責めに帰することができない事由により,賃借物の一部又は全部が毀損・滅失した場合は,賃借人は,賃料の減額又は賃料を支払わないことを請求することができる。賃借物の一部又は全部が毀損・滅失したことにより,契約目的の実現ができないときは,賃借人は契約を解除することができる。
第730条(賃貸借期間が明確でない場合)
当事者が賃貸借期間につき約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,期間の定めのない賃貸借とみなす。当事者は,随時契約を解除することができるが,合理的な期間前に相手方に通知しなければならない。
第731条(賃借人の安全・健康を脅かす場合)賃借物が賃借人の安全又は健康を脅かす 場合は,賃借人が契約締結時に当該賃借物の品質が不合格であることを明らかに知っていたときでも,賃借人は,依然として随
時契約を解除することができる。
第732条(賃借人の死亡)
賃借人が建物賃貸借期間中に死亡した場合は,生前これと共に居住していた者又は共同経営者は,原賃貸借契約に従い当該建物を賃借することができる。
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第733条(賃借物の返還)
賃貸借期間が満了するにあたり,賃借人は,賃借物を返還しなければならない。返還する賃借物は,約定又は賃借物の性質に従い使用した後の状態に合致しなければならない。
第734条(黙示の更新)
賃貸借期間が満了するにあたり,賃借人が賃借物の使用を継続し,賃貸人が異議を述べない場合は,原賃貸借契約は,引き続き有効とする。但し,賃貸借期間は,期間の定めがないものとする。
賃貸借期間が満了するにあたり,建物の賃借人は,同等の条件で優先的に賃借する権利を有する。
第15章 ファイナンスリース契約
第735条(ファイナンスリース契約の定義)ファイナンスリース契約とは,賃貸人 が,売主・賃貸物に対する賃借人の選択に基づき,売主から賃貸物を購入し,賃借人の使用に供し,賃借人がリース料を支払う
契約をいう。
第736条(契約の内容及び形式)
ファイナンスリース契約の内容には通常,賃貸物の名称,数量,規格,技術性能,検査方法,リース期間,リース料の内訳並びにその支払期限及び方式,幣種,リース期間満了後の賃貸物の帰属等の条項が含まれる。
ファイナンスリース契約は,書面の形式を採用しなければならない。
第737条(契約の無効)
当事者が虚構の賃貸物の方式により締結したファイナンスリース契約は無効とする。第738条(行政許可)
法律,行政法規の規定により,賃貸物の経営使用に関して行政許可を取得しなけれ
ばならない場合は,賃貸人による行政許可の未取得は,ファイナンスリース契約の効力に影響を与えない。
第739条(目的物の引渡)
賃貸人が売主・賃貸物に対する賃借人の選択に基づき締結した売買契約に関しては,売主は,約定に従い賃借人に目的物を引き渡さなければならず,賃借人は,目的物受領に関連する買主の権利を有する。 第740条(賃貸物の受領拒絶)
売主が賃借人に目的物を引き渡す義務に違反し,次の各号に掲げるいずれかに該当する場合は,賃借人は売主の引き渡す賃貸物の受領を拒絶することができる。
⑴ 目的物が著しく約定に合致しないとき
⑵ 約定に従い目的物を引き渡さず,賃借人または賃貸人の催告後も合理的な期間内に引き渡さないとき
賃借人が目的物の受領を拒絶する場合は,遅滞なく賃貸人に通知しなければならない。第741条(賠償請求権の行使)
賃貸人・売主・賃借人は,売主が売買契約上の義務を履行しない場合は,賃借人が賠償請求の権利を行使することを約定することができる。賃借人が賠償請求の権利を行使するときは,賃貸人は協力しなければならない。
第742条(リース料の減額請求)
賃借人の売主に対する賠償請求の権利行使は,リース料の支払義務の履行に影響を与えない。但し,賃借人が賃貸人の技能により賃借物を確定し,又は賃貸人が賃貸物の選択に関与した場合は,賃借人は相応のリース料の減額を請求することができる。第743条(賠償請求)
賃貸人が次の各号に掲げるいずれかに該当し,賃借人の売主に対する賠償請求の権利行使が失敗した場合は,賃借人は賃貸人
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
に相応の責任を負うよう請求することができる。
⑴ 賃貸物の品質に瑕疵があることを明らかに知りながら賃借人に告知しないとき
⑵ 賃借人の賠償請求の権利行使時に,遅滞なく必要な協力を提供しないとき 賃貸人が売主に対してのみ行使できる賠
償請求の権利行使を怠り,賃借人に損失をもたらした場合は,賃借人は賃貸人に賠償責任を負うよう請求することができる。 第744条(賃貸人による売買契約変更の禁止)
賃貸人が売主・賃貸物に対する賃借人の選択に基づき締結した売買契約に関しては,賃借人の同意を得なければ,賃貸人は,賃借人に関連する契約内容を変更してはならない。
第745条(対抗力)
賃貸人の賃貸物に対して有する所有権は,登記を経なければ,善意の第三者に対抗することができない。
第746条(リース料)
ファイナンスリース契約のリース料は,当事者に別途約定がある場合を除き,賃貸物購入原価の大部分又は全部及び賃貸人の合理的な利潤に基づき確定しなければならない。
第747条(賃貸物の瑕疵)
賃貸物が約定に合致せず,又は使用目的に合致しない場合は,賃貸人は責任を負わない。但し,賃借人が賃貸人の技能に依拠して賃借物を確定し,又は賃貸人が賃貸物の選択に関与した場合を除く。
第748条(占有・使用の保証)
賃貸人は,賃借人の賃貸物に対する占有及び使用を保証しなければならない。
賃貸人が次の各号に掲げる状況のいずれかに該当する場合は,賃借人は損失の賠償
を請求する権利を有する。
⑴ 正当な理由なく賃貸物を回収したとき
⑵ 正当な理由なく賃借人の賃借物に対する占有と使用を妨害・邪魔したとき
⑶ 賃貸人の原因により第三者が賃貸物に対し権利を主張したとき
⑷ 賃借人の賃借物に対する占有と使用を不当に影響するその他の事由
第749条(第三者の損害)
賃借人が賃貸物を占有している期間に,賃貸物が第三者の人身に損害を与え,又は財産に損失をもたらした場合は,賃貸人は責任を負わない。
第750条(賃貸物の保管・維持修繕)
賃借人は,賃貸物を適切に保管し,使用しなければならない。
賃借人は,賃貸物の占有期間における維持修繕義務を履行しなければならない。 第751条(賃借物の毀損・滅失)
賃借人が賃借物を占有している期間に,賃借物が毀損・滅失した場合は,賃貸人は賃借人に引き続きリース料を支払うよう請求する権利を有する。但し,法律に別段の定めがある場合又は当事者に別途約定がある場合を除く。
第752条(リース料の支払)
賃借人は,約定に従いリース料を支払わなければならない。賃借人が催告を経た後合理的な期間内に依然としてリース料を支払わない場合は,賃貸人は,リース料全額の支払を請求することができ,契約を解除し賃貸物を回収することもできる。
第753条(賃貸人による契約解除)
賃借人が賃貸人の同意を得ずに,賃借物を譲渡・抵当・質入れ・投資出資又はその他の方式で処分を行った場合は,賃貸人はファイナンスリース契約を解除することができる。
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第754条(賃貸人と賃借人による契約解除)次の各号に掲げる事由のいずれかに該当 する場合は,賃貸人又は賃借人はファイナンスリース契約を解除することができる。
⑴ 賃貸人と売主が締結した売買契約が解除,無効の確認又は取り消され,かつ新たに売買契約を締結することができないとき
⑵ 賃貸物が当事者の責めに帰することができない事由により毀損・滅失し,かつ修復又は代替物の確定ができないとき
⑶ 売主が原因でファイナンスリース契約の目的を実現することができないとき
第755条(損害賠償請求)
ファイナンスリース契約が売買契約の解除・無効の確認又は取消により解除され,売主・賃貸物を賃借人が選択した場合は,賃貸人は賃借人に相応の損失を賠償するよう請求する権利を有する。但し,賃貸人が原因で売買契約の解除・無効の確認又は取消になった場合を除く。
賃貸人の損失が売買契約の解除・無効の確認又は取消時に賠償を得た場合は,賃借人は再度相応の賠償責任を負わない。
第756条(補償請求)
ファイナンスリース契約が賃貸物の賃借人への引き渡し後に意外な毀損・滅失等当事者の責めに帰することができない事由により解除された場合は,賃貸人は賃借人に賃貸物の減価償却状況に照らし補償を行うよう請求することができる。
第757条(賃貸物の帰属)
賃貸人と賃借人はリース期間満了後の賃貸物の帰属について約定することができる。賃貸物の帰属につき約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定すること
ができないときは,賃貸物の所有権は賃貸人に帰属する。
第758条(賃貸物の価値の一部返還請求権)当事者がリース期間満了後の賃貸物が賃 借人の所有に帰属する旨を約定し,賃借人がすでにリース料の大部分を支払ったが,残存リース料を支払う能力がなく,賃貸人がこれにより契約を解除して賃貸物を回収した場合において,回収した賃貸物の価値が賃借人の未払のリース料及びその他の費用を超えているときは,賃借人は相応の返
還を請求することができる。
当事者がリース期間満了後の賃貸物が賃貸人の所有に帰属する旨を約定し,賃貸物の毀損・滅失又は他の物への付合・混合により,賃借人が返還することができない場合は,賃貸人は賃借人に合理的な補償を行うよう請求する権利を有する。
第759条(所有権の帰属)
当事者がリース期間満了後,賃借人は賃貸人に象徴的な価格のみ支払う必要がある旨約定している場合は,約定のリース料の義務履行後に賃貸物の所有権は賃借人に帰属するとみなす。
第760条(賃貸物の帰属)
ファイナンスリース契約が無効となり,当事者が当該状況下の賃貸物の帰属について約定している場合は,その約定に従う。約定がない又は約定が明確でない場合は,賃貸物を賃貸人に返還しなければならない。但し,賃借人が原因で契約が無効となり,賃貸人が返還を請求しない又は返還後著しく賃貸物の効用を低下させる場合は,賃貸物の所有権は賃借人に帰属し,賃借人が賃貸人に合理的な補償を行う。
第16章 ファクタリング契約
第761条(ファクタリング契約の定義)
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ファクタリング契約とは,売掛債権者が今ある又は将来ある売掛金をファクタリング業者に譲渡し,ファクタリング業者が資金の融通,売掛金の管理又は催促,買掛債務者による弁済の担保等のサービスを提供する契約をいう。
第762条(契約の内容)
ファクタリング契約の内容には通常,業務類型,サービス範囲,サービス期間,基礎取引契約状況,売掛金情報,ファクタリング融資額又はサービス報酬及びその支払方法等の条項が含まれる。
ファクタリング契約は,書面の形式を採用しなければならない。
第763条(売掛金の虚構)
売掛債権者は,買掛債務者と売掛金を虚構し,これを譲渡の目的物とし,ファクタリング業者とファクタリング契約を締結した場合は,買掛債務者は売掛金の不存在を理由にファクタリング業者に対抗することができない。但し,ファクタリング業者が明らかに虚構を知っていた場合を除く。 第764条(売掛金譲渡の通知)
ファクタリング業者が買掛債務者に売掛金譲渡の通知を発出する場合は,ファクタリング業者の身分を表明し,かつ必要な証書を付しなければならない。
第765条(売掛金譲渡の通知受領)
買掛債務者が売掛金譲渡の通知を受領した後,売掛債権者と買掛債務者は正当な理由なく協議して基礎取引契約を変更又は終了し,ファクタリング業者に不利な影響を与えた場合は,ファクタリング業者に対し効力を生じない。
第766条(遡求権を有する場合)
当事者がファクタリングに対し遡求権を有すると約定している場合は,ファクタリング業者は売掛債権者にファクタリング融
資資金元利の返還又は売掛金債権の買戻を主張することができ,買掛債務者に売掛金債権を主張することもできる。ファクタリング業者が買掛債務者に売掛金債権を主張しなければならず,ファクタリング融資資金元利及び関連費用を控除後余剰がある場合は,余剰部分を売掛債権者に返還しなければならない。
第767条(遡求権を有しない場合)
当事者がファクタリングに対し遡求権を有しないと約定している場合は,ファクタリング業者は買掛債務者に売掛金債権を主張しなければならず,ファクタリング業者がファクタリング融資資金元利及び関連費用を超える部分を取得した場合は,売掛債権者に返還する必要はない。
第768条(登記の先後)
売掛債権者が同一の売掛金につき数個のファクタリング契約を締結し,多くのファクタリング業者が権利を主張する場合は,登記済みのものは未登記のものより優先的に売掛金を取得する。いずれも登記済みの場合は,登記の先後により売掛金を取得する。いずれも未登記の場合は,買掛債務者に最も先に到達した譲渡通知において明記されているファクタリング業者が売掛金を取得する。未登記であり未通知の場合は,ファクタリング融資額又はサービス報酬の割合に応じて売掛金を取得する。
第769条(債権譲渡の関連規定の準用)
本章に規定がない場合は,本編第⚖章債権譲渡の関連規定を適用する。
第17章 請負契約
第770条(請負契約の定義)
請負契約とは,請負人が注文者の要求に従い仕事を完成し,仕事の成果を引き渡し,注文者が報酬を支払う契約をいう。
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請負は,加工,注文製作,修理,複製,試験,検査等の仕事を含む。
第771条(契約の内容)
請負契約の内容には通常,請負の目的物,数量,品質,報酬,請負方式,材料の提供,履行期限,検収の基準及び方法等の条項が含まれる。
第772条(主要な仕事)
請負人は,自己の設備・技術及び労力をもって,主要な仕事を完成しなければならない。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。
請負人は,自らが請け負った主要な仕事を第三者に任せて完成させる場合は,当該第三者が完成した仕事の成果につき注文者に対して責任を負わなければならない。注文者の同意を得ていないときは,注文者は契約を解除することもできる。
第773条(補助的な仕事)
請負人は,自らが請け負った補助的な仕事を第三者に任せて完成させることができる。請負人は,自らが請け負った補助的な仕事を第三者に任せて完成させる場合は,当該第三者が完成した仕事の成果につき注文者に対して責任を負わなければならない。第774条(請負人が材料を提供する場合)
請負人が材料を提供する場合は,約定に従い材料を選択して使用し,かつ注文者による検査を受け入れなければならない。 第775条(注文者が材料を提供する場合)
注文者が材料を提供する場合は,約定に従い材料を提供しなければならない。請負人は,注文者が提供した材料に対し,遅滞なく検査をしなければならず,約定に合致しないことを発見したときは,遅滞なく注文者に交換・補充し,又はその他の救済措置を講じるよう通知しなければならない。請負人は,注文者が提供した材料を無断
で交換してはならず,修理の必要がない部品を交換してはならない。
第776条(注文者の不合理な要求)
請負人は,注文者が提供した図面又は技術上の要求が不合理であることを発見した場合は,遅滞なく注文者に通知しなければならない。注文者は,回答を怠った等の原因により請負人に損失を与えたときは,損失を賠償しなければならない。
第777条(仕事の要求の変更)
注文者は,途中で請負の仕事の要求を変更し,請負人に損失を与えた場合は,損失を賠償しなければならない。
第778条(注文者の協力)
請負の仕事につき注文者の協力が必要な場合は,注文者は協力する義務を負う。注文者が協力義務を履行せず,これにより請負の仕事を完成することができなくなった場合は,請負人は,注文者に合理的な期間内に義務を履行するよう催告することができ,かつ履行期限を延長することができる。注文者が期限を過ぎても履行しないときは,請負人は契約を解除することができる。 第779条(注文者の監督検査)
請負人は,仕事の期間において,注文者が必要とする監督検査を受け入れなければならない。注文者は,監督検査により請負人の正常な仕事を妨げてはならない。
第780条(仕事の成果の引渡)
請負人は,仕事を完成した場合は,注文者に対して仕事の成果を引き渡し,かつ必要な技術資料及び関連品質証明を提出しなければならない。注文者は,当該仕事の成果を検収しなければならない。
第781条(品質要求不適合)
請負人が引き渡した仕事の成果が品質要求に合致しない場合は,注文者は,請負人に修理,再製作,報酬の減額,損失の賠償
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xの違約責任を負うよう合理的に選択して請求することができる。
第782条(報酬の支払期限)
注文者は,約定の期限に従い報酬を支払わなければならない。報酬支払の期限について約定がない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,注文者は,請負人が仕事の成果を引き渡す時に支払わなければならない。仕事の成果の一部が引き渡されるときは,注文者は相応の支払をしなければならない。
第783条(請負人の留置権)
注文者が請負人に対して報酬又は材料等の代金を支払っていない場合は,請負人は,完成した仕事の成果に対し,留置権を有し,又は引渡を拒絶する権利を有する。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。第784条(請負人の保管責任)
請負人は,注文者から提供された材料及び完成した仕事の成果を適切に保管しなければならず,保管が不適切であったことにより毀損・滅失をもたらした場合は,賠償責任を負わなければならない。
第785条(請負人の秘密保持義務)
請負人は,注文者の要求に従い秘密を保持しなければならず,注文者の許可を得なければ,複製品又は技術資料を保存してはならない。
第786条(共同請負人)
共同請負人は,注文者に対して連帯責任を負う。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。
第787条(注文者の解除権)
注文者は,請負人が仕事を完成させる前に,随時請負契約を解除することができ,請負人に損失を与えた場合は,損失を賠償しなければならない。
第18章 建設工事契約
第788条(建設工事契約の定義)
建設工事契約とは,請負人が工事建設を行い,発注者が代金を支払う契約をいう。建設工事契約は,工事の実地調査契約,
設計契約,施工契約を含む。
第789条(契約の形式)
建設工事契約は,書面の形式を採用しなければならない。
第790条(建設工事の入札)
建設工事の入札募集・入札活動は,関連法律の規定に従い公開,xx,xxに行わなければならない。
第791条(発注・請負・下請)
発注者は,総合請負人と建設工事契約を締結することができ,実地調査人,設計者,施工者と個別に実地調査,設計,施工の請負契約を締結することもできる。発注者は,⚑人の請負人が完成すべき建設工事を複数の部分に分割してxxの請負人に請け負わせてはならない。
総合請負人又は実地調査,設計,施工の請負人は,発注者の同意を得て,自らが請け負った仕事の一部を第三者に任せて完成させることができる。第三者は,自らが完成した仕事の成果につき総合請負人又は実地調査,設計,施工の請負人と共に発注者に対して連帯責任を負う。請負人は,自らが請け負った建設工事の全部を第三者に下請けさせ,又は自らが請け負った建設工事の全部を分割した後に分割請負の名目で個別に第三者に下請けさせてはならない。
請負人が相応の資質条件を具備しない単位に工事を分割請負させることは,禁じられる。分割請負単位が自ら請け負った工事をさらに分割請負させることは,禁じられる。建設工事の主体構造の施工は,必ず請
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負人が自ら完成しなければならない。
第792条(国の重大な建設工事契約)
国の重大な建設工事契約は,国の規定する手続及び国が認可した投資計画,フィージビリティ・スタディ報告書等の文書に従い締結しなければならない。
第793条(契約の無効)
建設工事施工契約は無効であるが,建設工事が検収後合格の場合は,契約の工事代金に関する約定を参照して金銭に換算して請負人に補償することができる。
建設工事施工契約が無効であり,かつ建設工事が検収後不合格の場合は,以下の各号に掲げる状況に従い処理する。
⑴ 修復後の建設工事が検収後合格の場合は,注文者は請負人に修復費用の負担を請求することができる。
⑵ 修復後の建設工事が検収後不合格の場合は,請負人は契約の工事代金に関する約定を参照して金銭に換算して補償を請求する権利を有しない。
注文者が建設工事の不合格によりもたらした損失に過失がある場合は,相応の責任を負わなければならない。
第794条(実地調査,設計契約の内容)
実地調査契約,設計契約の内容には通常,関連基礎資料及び概予算等の文書の期限,品質要求,費用及びその他の協力条件等の条項が含まれる。
第795条(施工契約の内容)
施工契約の内容には通常,工事範囲,建設工期,中間引渡工事の着工及び竣工期日,工事の品質,工事xx費,技術資料の引渡期日,材料及び設備の供給責任,資金の支給及び決済,竣工検収,品質保修範囲及び品質保証期間,相互協力等の条項が含まれる。第796条(監理)
建設工事において監理を実行する場合
は,発注者は,監理人と書面の形式を採用して監理委託契約を締結しなければならない。発注者と監理人の権利及び義務並びに法的責任については,本編の委任契約及びその他の関連法律,行政法規の規定に従わなければならない。
第797条(検査)
発注者は,請負人の正常な作業を妨げない状況の下で,随時作業の進度,品質について検査を行うことができる。
第798条(隠蔽工事)
隠蔽工事に関しては,請負人は,隠蔽前に発注者に検査するよう通知しなければならない。発注者が遅滞なく検査しなかった場合は,請負人は工期を延長することができ,かつ作業停止,手待ち等の損失の賠償を請求する権利を有する。
第799条(検収)
建設工事の竣工後,発注者は施工図面及び説明書,国が公布した施工検収規範及び品質検査基準に基づき遅滞なく検収を行わなければならない。検収後合格した場合は,発注者は約定に従い代金を支払い,かつ当該建設工事を受領しなければならない。
建設工事の竣工は検収合格後初めて引き渡して使用させることができる。検収を経ていない場合又は検収不合格の場合は,引き渡して使用させてはならない。
第800条(実地調査人・設計者の責任)
実地調査,設計の品質が要求に合致せず,又は実地調査,設計の文書を期限に従って提出せずに工期が延び,発注者に損失を与えた場合は,実地調査人,設計者は,実地調査,設計を継続し,完全なものとし,実地調査費,設計費を減額し,又は免除し,かつ損失を賠償しなければならない。第801条(施工者の責任)
施工者の原因により建設工事の品質が約
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xに合致しない場合は,発注者は施工者に対し,合理的な期間内に無償で修理し,又はやり直し,改造修補するよう請求する権利を有する。修理又はやり直し,改造修補を経た後,引渡が期限を過ぎたときは,施工者は違約責任を負わなければならない。第802条(請負人の責任)
請負人の原因により建設工事が合理的な使用期間内において人身の損害及び財産の損失をもたらした場合は,請負人は賠償責任を負わなければならない。
第803条(発注者による原材料等の不提供)発注者が約定の時間及び条件に従い原材 料,設備,場所,資金,技術資料を提供しない場合は,請負人は工期を延長することができ,かつ作業停止,手待ち等の損失の
賠償を請求する権利を有する。
第804条(発注者の原因による建設停止等)発注者の原因により工事が途中で建設停 止,建設延期となった場合は,発注者は損失の補填又は軽減のための措置を講じ,これによりもたらされた作業停止,手待ち,再運搬,機械設備の移動,材料及び部材の滞貨等の損失及び実際の費用を請負人に賠
償しなければならない。
第805条(発注者による契約変更等)
発注者が計画を変更し,提供した資料が正確でなく,又は必須の実地調査,設計の仕事のための条件を期限に従って提供しなかったことにより,実地調査,設計のやり直し,作業停止又は設計の修正をもたらした場合は,発注者は実地調査人,設計者が実際に費やした作業量に従い費用を増額して支払わなければならない。
第806条(契約解除)
請負人が建設工事を下請負,違法に分割請負させた場合は,注文者は契約を解除することができる。
注文者の提供した主要建設材料,建設構造部品及び設備が強制的基準に合致せず,又は協力義務を履行せず,これにより請負人が施工できず,催告後に合理的期間内に依然として相応の義務を履行しない場合は,請負人は契約を解除することができる。
契約解除後,すでに完成した建設工事の品質が合格の場合は,注文者は約定に従い相応の工事代金を支払わなければならい。すでに完成した建設工事の品質が不合格の場合は,本法第793条の規定を参照して処理する。
第807条(発注者の代金未払)
発注者が約定に従い代金を支払わない場合は,請負人は発注者に対し,合理的な期間内に代金を支払うよう催告することができる。発注者が期限を過ぎても支払わないときは,建設工事の性質に照らして金銭換算,競売に適しないものを除き,請負人は発注者と合意の上で当該工事を金銭に換算することができ,人民法院に当該工事を法に従い競売するよう請求することもできる。建設工事の代金については,当該工事の金銭換算又は競売の代金から優先して弁済を受ける。
第808条(請負契約の規定の適用)
本章に規定がない場合は,請負契約の関連規定を適用する。
第19章 運送契約
第⚑節 一般規定
第809条(運送契約の定義)
運送契約とは,運送人が旅客又は貨物を運送開始場所から約定の場所まで運送し,旅客・荷送人又は荷受人が切符代又は運送費用を支払う契約をいう。
第810条(公共運送)
公共運送に従事する運送人は,旅客・荷
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送人の通常の合理的な運送要求を拒絶してはならない。
第811条(安全運送)
運送人は,約定の期限又は合理的期限内に旅客・貨物を約定の場所まで安全に運送しなければならない。
第812条(運送路線)
運送人は,約定の運送路線又は通常の運送路線に従い旅客・貨物を約定の場所まで運送しなければならない。
第813条(運送費用等の支払)
旅客・荷送人又は荷受人は,切符代又は運送費用を支払わなければならない。運送人が約定の路線又は通常の路線に従い運送せず,切符代又は運送費用を増加させた場合は,旅客・荷送人又は荷受人は,増加した分の切符代又は運送費用の支払を拒絶することができる。
第⚒節 旅客運送契約第814条(契約の成立)
旅客運送契約は,運送人が旅客に切符を引き渡した時に成立する。但し,当事者に別途約定がある場合又は別段の取引慣習がある場合を除く。
第815条(旅客の義務)
旅客は,有効な切符記載の時間・便名及び座席番号に従い搭乗しなければならない。旅客が切符を持たずに搭乗し,区間を超えて搭乗し,等級を超えて搭乗し,又は減額条件に合致しない割引切符を持って搭乗した場合は,切符代の不足分を支払わなければならず,運送人は,規定に従い切符代を増額徴収することができる。旅客が切符代を支払わないときは,運送人は運送を拒絶することができる。
実名制旅客運送契約の旅客が切符を紛失した場合は,運送人に紛失を届け再発行を
請求することができ,運送人は切符代及びその他の不合理な費用を再度徴収してはならない。
第816条(切符の払戻し又は変更)
旅客は,自己の原因により切符記載の時間に従い搭乗することができない場合は,約定の期限内に切符の払戻し又は変更の手続を行わなければならない。期限を過ぎてから手続をしたときは,運送人は切符代を払い戻さないことができ,かつ以後運送義務を負わない。
第817条(荷物の携帯)
旅客は荷物の携帯にあたり,約定の限度量及び種類に合致しなければならない。限度量を超えて,又は種類に違反して荷物を携帯する場合は,託送手続を行わなければならない。
第818条(携帯禁止物)
旅客は,可燃性,爆発性,毒性,腐食性,放射性を有し,及び輸送手段上の人身及び財産の安全を脅かすおそれのある危険物品又はその他の禁制品を携帯し,又は荷物の中に紛れ込ませて持ち込んではならない。
旅客が前項の規定に違反した場合は,運送人は危険物品又は禁制品を下ろし,廃棄し,又は関連部門に提出することができる。旅客があくまでも危険物品又は禁制品を携帯し,又は紛れ込ませて持ち込むときは,運送人は運送を拒絶しなければならない。第819条(旅客への告知等)
運送人は,安全運送義務を厳格に履行しなければならず,遅滞なく旅客に安全運送上注意すべき事項を告知しなければならない。旅客は,運送人が安全運送のために行う合理的な配置に積極的に助力及び協力しなければならない。
第820条(運送遅延等)
運送人は,有効な切符記載の時間・便名
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xび座席番号に従い旅客を運送しなければならない。運送人は,運送が遅延した場合又はその他正常に運送ができない場合は,遅滞なく旅客に告知し注意を与え,必要な安全措置を講じなければならず,かつ旅客の請求に基づき他の便に振り替え,又は切符を払い戻さなければならない。これにより旅客に損失をもたらした場合は,運送人は賠償責任を負わなければならない。但し,運送人の責めに帰することができない場合を除く。
第821条(サービス水準の変更)
運送人が無断でサービス水準を低下させた場合は,旅客の請求に基づき切符を払い戻し,又は切符代を減額しなければならない。サービス水準を向上させた場合は,切符代を増額徴収してはならない。
第822条(旅客の救助)
運送人は運送の過程において,急病にかかり,分娩し,危険に瀕している旅客の救助に尽力しなければならない。
第823条(旅客の死傷)
運送人は,運送過程における旅客の死傷につき賠償責任を負わなければならない。但し,死傷が旅客自身の健康上の原因により生じた場合又は死傷が旅客の故意,重大な過失により生じたことを運送人が証明する場合を除く。
前項の規定は,規定に従い切符を免除され,優待切符を持ち,又は運送人の許可を得て搭乗する切符を持たない旅客にも適用する。
第824条(荷物の毀損・滅失)
運送過程における旅客が携帯する物品の毀損・滅失については,運送人に過失がある場合は,賠償責任を負わなければならない。
旅客の託送した荷物が毀損し,滅失した場合は,貨物運送の関連規定を適用する。
第⚓節 貨物運送契約 第825条(荷送人の責任)
荷送人は貨物運送の手続を行うにあたり,運送人に対し,荷受人の氏名・名称又は指示に基づく荷受人,貨物の名称・性質・重量・数量・荷受場所等の貨物運送に関する必要な状況を正確に表明しなければならない。
荷送人の申告が不実であり,又は重要な状況を遺漏していたことにより,運送人に損失を与えた場合は,荷送人は賠償責任を負わなければならない。
第826条(関連手続文書)
貨物運送につき審査認可・検査等の手続を行う必要がある場合は,荷送人は関連手続完了に関する文書を運送人に提出しなければならない。
第827条(包装)
荷送人は,約定の方式に従い貨物を包装しなければならない。包装方式につき約定していない場合又は約定が明確でない場合は,本法第619条の規定を適用する。
荷送人が前項の規定に違反した場合は,運送人は運送を拒絶することができる。 第828条(危険物品)
荷送人は,可燃性,爆発性,毒性,腐食性,放射性を有する等の危険物品を託送する場合は,危険物品運送に関する国の規定に従い危険物品を適切に包装し,危険物の標識及びラベルを施し,かつ危険物品の名称,性質及び防護措置に関する書面の資料を運送人に提出しなければならない。
荷送人が前項の規定に違反した場合は,運送人は運送を拒絶することができ,損失の発生を回避するために相応の措置を講じることもでき,これにより生じた費用は荷送人が負担する。
第829条(運送の中止等)
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運送人が貨物を荷受人に引き渡す前において,荷送人は運送人に対し,運送の中止,貨物の返還,到達地の変更,又は貨物のその他の荷受人への引き渡しを請求することができる。但し,これにより運送人が被った損失を賠償しなければならない。 第830条(貨物の引取)
貨物の運送到達後,運送人は荷受人を知っている場合は,遅滞なく荷受人に通知しなければならず,荷受人は遅滞なく貨物を引き取らなければならない。荷受人が期限を過ぎてから貨物を引き取る場合は,運送人に対して保管費等の費用を支払わなければならない。
第831条(貨物の検査)
荷受人は貨物を引き取るにあたり,約定の期限に従い貨物を検査しなければならない。貨物を検査する期限につき約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても碓定できないときは,合理的な期間内に貨物を検査しなければならない。荷受人が約定の期限又は合理的な期間内に貨物の数量,毀損等につき異議を述べない場合は,運送人がすでに運送証の記載に従い引き渡したことの初歩的証拠とみなす。
第832条(貨物の毀損・滅失)
運送人は,運送過程における貨物の毀損・滅失につき賠償責任を負う。但し,貨物の毀損・滅失が不可抗力,貨物自体の本来の性質又は合理的な損耗及び荷送人・荷受人の過失によりもたらされたことを運送人が証明する場合は,賠償責任を負わない。第833条(貨物の賠償額)
貨物の毀損・滅失の賠償額につき当事者に約定がある場合は,その約定に従う。約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいて
も確定できないときは,引き渡した時又は引き渡すべきであった時の貨物到達地の市場価格に従い計算する。法律,行政法規に賠償額の計算方法及び賠償限度額につき別段の定めがある場合は,その規定に従う。第834条(連絡輸送)
複数の運送人が同一の運送方式により連絡輸送する場合は,荷送人と契約を締結した運送人は,全行程の運送につき責任を負わなければならない。損失が特定の運送区間において生じたときは,荷送人と契約を締結した運送人及び当該区間の運送人は,連帯責任を負う。
第835条(不可抗力による滅失)
貨物が運送過程において不可抗力により滅失した場合において,運賃未収受であるときは,運送人は運賃の支払を請求することはできない。運賃収受済であるときは,荷送人はその返還を請求することができる。法律に別段の定めがある場合は,その規定に従う。
第836条(運送人の留置権)
荷送人又は荷受人が運賃・保管費又はその他の費用を支払わない場合は,運送人は相応の運送貨物に対し留置権を有する。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。第837条(供託)
荷受人が明らかでなく,又は荷受人が正当な理由なく貨物の受領を拒絶した場合は,運送人は法により貨物を供託することができる。
第⚔節 複合運送契約
第838条(複合運送事③者)
複合運送事業者は,複合運送契約を履行し,又は履行を組織する責任を負い,全行程の運送につき運送人の権利を有し,運送人の義務を負う。
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x839条(責任の約定)
複合運送事業者は,複合運送に参加する各区間の運送人と複合運送契約の各区間の運送につき相互間の責任を約定することができる。但し,当該約定は,複合運送事業者が全行程の運送につき負う義務に影響を与えない。
第840条(複合運送証券)
複合運送事業者は,荷送人が引き渡す貨物を受領した時,複合運送証券を発行しなければならない。荷送人の請求に従い,複合運送証券は,譲渡可能な証券であってもよく,譲渡不可の証券であってもよい。 第841条(荷送人の損害賠償責任)
荷送人の貨物託送時の過失により複合運送事業者に損失を与えた場合は,荷送人がすでに複合運送証券を譲渡していたとしても,荷送人は依然として賠償責任を負わなければならない。
第842条(貨物の毀損・滅失)
貨物の毀損・滅失が複合運送の特定の運送区間において生じた場合は,複合運送事業者の賠償責任及び責任限度額については,当該区間の運送方式を規整する関連法律規定を適用する。貨物の毀損・滅失が生じた運送区間を確定できないときは,本章の規定に従い賠償責任を負う。
第20章 技術契約
第⚑節 一般規定
第843条(技術契約の定義)
技術契約とは,当事者が技術の開発,譲渡,ライセンス,コンサルティング又はサービスにつき締結する相互間の権利及び義務を確立する契約をいう。
第844条(技術契約の締結)
技術契約の締結は,知的財産権の保護及び科学技術の進歩に資するもので,科学技
術成果の研究開発,転化,応用及び普及を促進するものでなければならない。
第845条(契約の内容)
技術契約の内容には通常,プロジェクト名称,目的物の内容・範囲及び条件,履行の計画・場所及び方式,技術情報及び資料の秘密保持,技術成果の帰属及び収益の分配方法,検収の基準及び方法,名詞及び専門用語の解釈等の条項が含まれる。
契約の履行に関連する技術背景資料,フィージビリティ・スタディ及び技術評価報告,プロジェクトの任務書及び計画書,技術標準,技術規範,原設計及び工程文書,並びにその他の技術文書は,当事者の約定に従い契約の構成部分とすることができる。
技術契約が特許に関わる場合は,発明創造の名称,特許出願者及び特許権者,出願日,出願番号,特許番号並びに特許権の有効期間を明記しなければならない。
第846条(代金・報酬又は使用料の支払方法)技術契約の代金・報酬又は使用料の支払 方式は当事者が約定し,一括計算一括払い又は一括計算分割払いを採用することができ,歩合払い又は歩合払いに前払イニシャルフィーを加えた方式を採用することもで
きる。
歩合払いを約定した場合は,製品価格,特許の実施及び技術秘密の使用後に増加した生産高,利潤又は製品売上高の一定の比率に従い歩合を計算することができ,約定のその他の方式に従い計算することもできる。歩合払いの比率は,固定比率,毎年逓増する比率又は毎年逓減する比率を採用することができる。
歩合払いを約定した場合は,当事者は関連会計帳薄の閲覧方法を約定することができる。
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
第847条(職務技術成果)
職務技術成果の使用権・譲渡権が法人又は非法人組織に属する場合は,法人又は非法人組織は当該職務技術成果につき技術契約を締結することができる。法人又は非法人組織が技術契約を締結して職務技術成果を譲渡するときは,職務技術成果の完成者は同等の条件で優先的に譲り受ける権利を有する。
職務技術成果とは,法人もしくは非法人組織の仕事上の任務を執行し,又は主に法人もしくは非法人組織の物質的,技術的条件を利用して完成した技術成果をいう。 第848条(非職務技術成果)
非職務技術成果の使用権・譲渡権は技術成果を完成した個人に属し,技術成果を完成した個人は当該非職務技術成果につき技術契約を締結することができる。
第849条(完成者の権利)
技術成果を完成した個人は,技術成果に関する文書に自己が技術成果の完成者であることを明記する権利及び栄誉証書・奨励を取得する権利を有する。
第850条(無効な技術契約)
不法に技術を独占し,又は他人の技術成果を侵害する技術契約は,無効とする。
第⚒節 技術開発契約
第851条(技術開発契約の定義等)
技術開発契約とは,当事者間で新技術,新製品,新工程,新品種又は新材料及びそのシステムの研究開発につき締結する契約をいう。
技術開発契約は,委託開発契約及び共同開発契約を含む。
技術開発契約は,書面の形式を採用しなければならない。
当事者間で実用価値のある科学技術成果
の転化の実施につき締結される契約については,技術開発契約の関連規定を参照して適用する。
第852条(委託人の義務)
委託開発契約の委託人は,約定に従い,研究開発経費及び報酬を支払い,技術資料を提供し,研究開発要求を提出し,協力事項を完成し,研究開発成果を受領しなければならない。
第853条(研究開発者の義務)
委託開発契約の研究開発者は,約定に従い,研究開発計画を制定及び実施し,研究開発経費を合理的に使用し,期限どおりに研究開発の仕事を完成し,研究開発成果を引き渡し,関連の技術資料及び必要な技術指導を提供し,委託人の研究開発成果の把握を助けなければならない。
第854条(委託人の違約責任)
委託開発契約の当事者が約定に違反し,研究開発の仕事の停滞・遅延又は失敗をもたらした場合は,違約責任を負わなければならない。
第855条(共同開発当事者の義務)
共同開発契約の当事者は,約定に従い,技術をもってする投資を含む投資を行い,研究開発の仕事に分担して参与し,研究開発の仕事に協力して力を合わせなければならない。
第856条(研究開発当事者の違約責任)
共同開発契約の当事者が約定に違反し,研究開発の仕事の停滞・遅延又は失敗をもたらした場合は,違約責任を負わなければならない。
第857条(契約の解除)
技術開発契約の目的物たる技術がすでに他人によって公開され,これにより技術開発契約の履行の意義がなくなった場合は,当事者は契約を解除することができる。
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第858条(危険責任)
技術開発契約の履行過程において,克服不可能な技術的困難が生じ,これにより研究開発が失敗し,又は一部失敗した場合の危険責任は,当事者が約定する。約定がない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,危険は当事者が合理的に分担する。
当事者の一方は,前項に規定する研究開発を失敗させ,又は一部失敗させるおそれのある状況を発見した場合は,遅滞なく他の一方に通知して損失の軽減のための適切な措置を講じなければならない。遅滞なく通知して適切な措置を講じることをせず,これにより損失が拡大したときは,拡大した損失につき責任を負わなければならない。第859条(委託開発における発明)
委託開発で完成した発明創造については,法律に別段の定めがある又は当事者に別途約定がある場合を除き,特許を出願する権利は研究開発者に属する。研究開発者が特許権を取得した場合は,委託人は法により当該特許を実施することができる。
研究開発者が特許出願権を譲渡する場合は,委託人は同等の条件で優先的に譲り受ける権利を有する。
第860条(共同開発における発明)
共同開発で完成した発明創造については,特許を出願する権利は共同開発の当事者の共有に属する。当事者の一方がその共有する特許出願権を譲渡する場合は,その他の各当事者は同等の条件で優先的に譲り受ける権利を有する。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。
共同開発の当事者の一方がその共有する特許出願権の放棄を言明した場合は,当事者に別途約定がある場合を除き,他の一方
が単独で出願し,又はその他の各当事者が共同で出願することができる。出願者が特許権を取得した場合は,特許出願権を放棄した一方は無償で当該特許を実施することができる。
共同開発の当事者の一方が特許出願に同意しない場合は,他の一方又はその他の各当事者は特許を出願してはならない。
第861条(技術秘密成果)
委託開発又は共同開発で完成した技術秘密成果の使用権・譲渡権及び収益の分配方法は,当事者が約定する。約定がない場合又は約定が不明確な場合において,本法第 510条の規定に基づいても確定できないときは,同様の技術プランが特許権を授与されるまで,当事者はいずれも使用及び譲渡の権利を有する。但し,委託開発の研究開発者は,研究開発成果を委託人に引き渡す前においては,研究開発成果を第三者に譲渡してはならない。
第⚓節 技術譲渡契約及び技術ライセンス契約
第862条(技術譲渡契約・技術ライセンス契約の定義等)
技術譲渡契約とは,技術を合法的に有する権利者が,現有の特定の特許,特許出願,技術秘密に関連する権利を他人に譲渡して締結する契約をいう。
技術ライセンス契約とは,技術を合法的に有する権利者が,現有の特定の特許,技術秘密に関連する権利を他人に実施・使用させることを許諾して締結する契約をいう。
技術譲渡契約及び技術ライセンス契約における技術実施の専用設備・原材料又は関連する技術コンサルティング,技術サービスの提供に関する約定は,契約の構成部分である。
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
第863条(契約の形式等)
技術譲渡契約は,特許権譲渡,特許出願権譲渡,技術秘密譲渡等の契約を含む。
技術ライセンス契約は,特許実施許諾,技術秘密使用許諾等の契約を含む。
技術譲渡契約及び技術ライセンス契約は,書面の形式を採用しなければならない。第864条(実施・使用の範囲の約定)
技術譲渡契約及び技術ライセンス契約には,特許実施又は技術秘密使用の範囲を定めることができる。但し,技術競争及び技術発展を制限してはならない。
第865条(特許実施許諾契約の有効期間)
特許実施許諾契約は,当該特許権の存続期間内においてのみ有効である。特許権の有効期間が満了し,又は特許権の無効が宣告された場合は,特許権者は当該特許につき他人と特許実施許諾契約を締結してはならない。
第866 条(特許実施許諾契約のライセンサーの義務)
特許実施許諾契約のライセンサーは,約定に従い,ライセンシーに特許の実施を許可し,特許の実施に関連する技術資料を引き渡し,必要な技術指導を提供しなければならない。
第867 条(特許実施許諾契約のライセンシーの義務)
特許実施許諾契約のライセンシーは,約定に従い特許を実施しなければならず,約定以外の第三者に当該特許の実施を許可してはならず,かつ約定に従い使用料を支払わなければならない。
第868 条(技術秘密譲渡契約のライセンサーの義務)
技術秘密譲渡契約の譲渡人及び技術秘密使用許諾契約のライセンサーは,約定に従い,技術資料を提供し,技術指導を行い,
技術の実用性・信頼性を保証し,秘密保持義務を負わなければならない。
前項規定の秘密保持義務は,ランセンサーの特許出願を制限しない。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。
第869 条(技術秘密譲渡契約のライセンシーの義務)
技術秘密譲渡契約の譲受人及び技術秘密使用許諾契約のライセンシーは,約定に従い,技術を使用し,譲渡金・使用料を支払い,秘密保持義務を負わなければならない。第870条(譲渡人・ライセンサーの保証義務)
技術譲渡契約の譲渡人及び技術ライセンス契約のライセンサーは,自己がその提供する技術の合法な保有者であることを保証し,かつその提供する技術が完全で,誤りがなく,有効であり,約定の目標を達成できることを保証しなければならない。
第871条(譲受人・ライセンシーの秘密保持義務)
技術譲渡契約の譲受人及び技術ライセンス契約のライセンシーは,約定の範囲及び期間に従い,譲渡人・ライセンサーが提供した技術中の未公開の秘密部分につき,秘密保持義務を負わなければならない。
第872条(ライセンサー・譲渡人の違約責任)ライセンサーは,約定に従い技術を許可 しない場合は,使用料の一部又は全部を返還しなければならず,かつ違約責任を負わなければならない。約定の範囲を超えて特許を実施し,もしくは技術秘密を使用した場合,約定に違反して無断で第三者に当該特許の実施もしくは当該技術秘密の使用を許可した場合は,違約行為を停止し,違約責任を負わなければならない。約定の秘密保持義務に違反した場合は,違約責任を負
わなければならない。
譲渡人が違約責任を負わなければならな
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
い場合は,前項の規定を参照して適用する。第873条(xxxxxx・xx人の違約責任)ライセンシーは,約定に従い使用料を支 払わない場合は,使用料の不足分を支払い,かつ約定に従い違約金を支払わなければならない。使用料の不足分を支払わず,又は違約金を支払わない場合は,特許の実施又は技術秘密の使用を停止し,技術資料を返却し,違約責任を負わなければならない。約定の範囲を超えて特許を実施し,もしくは技術秘密を使用した場合,ライセンサーの同意を得ることなく無断で第三者に当該特許の実施もしくは当該技術秘密の使用を許可した場合は,違約行為を停止し,違約責任を負わなければならない。約定の秘密保持義務に違反した場合は,違約責任
を負わなければならない。
譲受人が違約責任を負わなければならない場合は,前項の規定を参照して適用する。第874条(権利利益侵害責任)
譲受人又はxxxxxxが約定に従い特許を実施し,技術秘密を使用し,他人の合法的権利利益を侵害することになった場合は,譲渡人又はxxxxxxが責任を負う。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。第875条(後続改良)
当事者は,互恵の原則に従い,契約において,特許の実施,技術秘密の使用につき後続改良をした技術成果の享受方法を約定することができる。約定がない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,一方が後続改良をした技術成果について,その他の各当事者は享受する権利を有しない。第876条(本節の関連規定の準用)
集積回路設計専有権,植物新品種権,コンピュータソフトウェア著作xxその他の知的財産権の譲渡及び許可は,本節の関連
規定を参照して適用する。
第877条(技術輸出入契約等)
法律,行政法規に技術輸出入契約又は特許,特許出願契約につき別段の定めがある場合は,その規定に従う。
第⚔節 技術コンサルティング契約及び技術サービス契約
第878条(技術コンサルティング契約の定義)技術コンサルティング契約とは,当事者 の一方が技術知識をもって相手方に特定の技術プロジェクトにつきフィージビリティ・スタディ,技術予測,専門技術調査,分析評価報告等を提供して締結する契
約をいう。
技術サービス契約とは,当事者の一方が技術知識をもって相手方のために特定の技術的問題を解決するために締結する契約をいい,請負契約及び建設工事契約を含まない。第879条(技術コンサルティング契約の委
託人の義務)
技術コンサルティング契約の委託人は,約定に従い,コンサルティングを求める問題を明らかにし,技術背景資料及び関連技術資料を提供し,受託人の仕事の成果を受領し,報酬を支払わなければならない。 第880条(技術コンサルティング契約の受
託人の職務)
技術コンサルティング契約の受託人は,約定の期限に従い,コンサルティング報告を完成し,又は問題に回答しなければならず,提出するコンサルティング報告は,約定の要求に達していなければならない。 第881条(技術コンサルティング契約の違
約責任)
技術コンサルティング契約の委託人は,約定に従い必要な資料を提供せず,仕事の進度及び品質に影響を及ぼし,仕事の成果
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
を受領せず,又は期限を過ぎてから受領した場合は,支払った報酬は,これを取り戻してはならず,支払っていない報酬は,これを支払わなければならない。
技術コンサルティング契約の受託人は,期限どおりにコンサルティング報告を提出しておらず,又は提出したコンサルティング報告が約定に合致しない場合は,報酬の減額又は免除等の違約責任を負わなければならない。
技術コンサルティング契約の委託人が受託人の約定の要求に合致するコンサルティング報告及び意見に従い意思決定を行ったことにより生じた損失は,委託人が負う。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。第882条(技術サービス契約の委託人の義務)
技術サービス契約の委託人は,約定に従い,仕事のための条件を提供し,協力事項を完成し,仕事の成果を受領し,かつ報酬を支払わなければならない。
第883条(技術サービス契約の受託人の義務)技術サービス契約の受託人は,約定に従 い,サービス項目を完成し,技術的問題を解決し,仕事の品質を保証し,かつ技術的問題を解決する知識を伝授しなければなら
ない。
第884条(技術サービス契約の違約責任)
技術サービス契約の委託人は,契約上の義務を履行せず,又は契約上の義務の履行が約定に合致せず,仕事の進度及び品質に影響を及ぼし,仕事の成果を受領せず,又は期限を過ぎてから受領した場合は,支払った報酬は,これを取り戻してはならず,支払っていない報酬は,これを支払わなければならない。
技術サービス契約の受託人は,約定に従いサービスの仕事を完成していない場合は,報酬免除等の違約責任を負わなければ
ならない。
第885条(新たな技術成果)
技術コンサルティング契約,技術サービス契約の履行過程で,受託人が委託人の提供した技術資料及び仕事のための条件を利用して完成した新たな技術成果は,受託人に属する。委託人が受託人の仕事の成果を利用して完成した新たな技術成果は,委託人に属する。当事者に別途約定がある場合は,その約定に従う。
第886条(費用負担)
技術コンサルティング契約及び技術サービス契約において,受託人の正常な仕事の展開に必要な費用の負担につき約定していない場合又は約定が不明確な場合は,受託人が負担する。
第887条(技術仲介契約等)
法律,行政法規に技術仲介契約,技術訓練契約につき別段の定めがある場合は,その規定に従う。
第21章 寄託契約
第888条(寄託契約の定義)
寄託契約とは,受寄者が寄託者から引き渡された寄託物を保管し,かつ当該物を返還する契約をいう。
寄託者が受寄者のところで買い物,飲食,宿泊等の活動に従事し,物品を特定の場所に保存する場合は,保管とみなす。但し,当事者に別途約定がある又は別段の取引慣習がある場合を除く。
第889条(保管料の支払)
寄託者は,約定に従い受寄者に保管料を支払わなければならない。
当事者が保管料につき約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,無償保管とみなす。
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
第890条(契約の成立)
寄託契約は,寄託物の引渡時に成立する。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。第891条(保管証憑)
寄託者が受寄者に寄託物を引き渡す場合は,受寄者は保管証憑を提出しなければならない。但し,別段の取引慣習がある場合を除く。
第892条(保管方法等)
受寄者は,寄託物を適切に保管しなければならない。
当事者は,保管の場所又は方法を約定することができる。緊急の状況又は寄託者の利益を維持保護するためである場合を除き,無断で保管の場所又は方法を変更してはならない。
第893条(寄託者の告知義務)
寄託者が引き渡す寄託物に瑕疵があり,又は寄託物の性質に照らして特殊な保管措置を講じる必要がある場合は,寄託者は関連の状況を受寄者に告知しなければならない。寄託者が告知せず,これにより寄託物が損失を被った場合は,受寄者は賠償責任を負わない。受寄者がこれにより損失を被った場合は,受寄者が知り又は知り得べきでありながら,救済措置を講じていないときを除き,寄託者は賠償責任を負わなければならない。
第894条(第三者による保管)
受寄者は,寄託物を第三者に保管させてはならない。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。
受寄者が前項の規定に違反し,寄託物を第三者に保管させ,寄託物に損失をもたらした場合は,賠償責任を負わなければならない。
第895条(寄託物の使用)
受寄者は,寄託物を使用し,又は第三者
に寄託物の使用を許可してはならない。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。第896条(第三者の権利主張)
第三者が寄託物につき権利を主張した場合は,法に従い寄託物につき保全又は執行措置がなされるときを除き,受寄者は寄託者に寄託物の返還義務を履行しなければならない。
第三者が受寄者に対して訴訟を提起し,又は寄託物につき差押を申請した場合は,受寄者は遅滞なく寄託者に通知しなければならない。
第897条(寄託物の毀損・滅失)
保管期間において,受寄者の保管が不適切であったことにより寄託物の毀損・滅失が生じた場合は,受寄者は賠償責任を負わなければならない。但し,無償受寄者が自己に故意又は重大な過失がないことを証明したときは,賠償責任を負わない。
第898条(貴重物品)
寄託者が金銭,有価証券又はその他の貴重物品を寄託する場合は,受寄者に言明しなければならず,受寄者がこれを検収し,又は封印保管する。寄託者が言明していないときは,当該物品の毀損・滅失後,受寄者は一般物品に照らして賠償をすることができる。
第899条(寄託物の受領)
寄託者は,随時寄託物を受け取ることができる。
当事者が保管期間につき約定していない場合又は約定が不明確な場合は,受寄者は随時寄託者に寄託物を受け取るよう請求することができる。保管期間を約定している場合は,受寄者は特別の事由のない限り,寄託者に寄託物を期限前に受け取るよう請求してはならない。
第900条(寄託物及び果実の返還)
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
保管期間が満了した場合又は寄託者が寄託物を期限前に受け取る場合は,受寄者は原物及びその果実を寄託者に返還しなければならない。
第901条(消費寄託)
受寄者が金銭を保管する場合は,同じ種類・数量の金銭を返還することができる。その他の代替物を保管する場合は,約定に従い同じ種類・品質・数量の物品を返還することができる。
第902条(保管料の支払)
有償の寄託契約に関しては,寄託者は約定の期限に従い受寄者に保管料を支払わなければならない。
当事者が支払期限につき約定していない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,寄託物の受取と同時に支払わなければならない。
第903条(受寄者の留置権)
寄託者が約定に従い保管料又はその他の費用を支払わない場合は,受寄者は寄託物に対し留置権を有する。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。
第22章 倉庫保管契約
第904条(倉庫保管契約の定義)
倉庫保管契約とは,保管人が寄託者から引き渡された倉庫保管物を保管し,寄託者が倉庫保管料を支払う契約をいう。
第905条(契約の効力発生)
倉庫保管契約は,保管人と寄託者の意思表示が一致した時に成立する。
第906条(危険物品等の保管)
可燃性,爆発性,毒性,腐食性,放射性を有する等の危険物品又は変質しやすい物品を保管するにあたり,寄託者は,当該物品の性質を説明し,関連資料を提供しなけ
ればならない。
寄託者が前項の規定に違反した場合は,保管人は倉庫保管物の受入を拒むことができ,損失の発生を回避するために相応の措置を講じることもでき,これにより発生した費用は寄託者が負担する。
保管人は,可燃性,爆発性,毒性,腐食性,放射性を有する等の危険物品を保管する場合は,相応の保管条件を具備していなければならない。
第907条(検収)
保管人は,約定に従い,入庫する倉庫保管物に対して検収を行わなければならない。保管人は,検収時に,入庫する倉庫保管物が約定に合致しないことを発見した場合は,遅滞なく寄託者に通知しなければならない。保管人が検収した後,倉庫保管物の品種・数量・品質が約定に合致しない状況が発生した場合は,保管人は賠償責任を負わなければならない。
第908条(倉庫証券等)
寄託者が倉庫保管物を引き渡す場合は,保管人は倉庫証券,入庫証券等の証憑を提出しなければならない。
第909条(倉庫証券の記載事項)
保管人は,倉庫証券に署名又は押印しなければならない。倉庫証券には,次の事項が含まれる。
⑴ 寄託者の氏名又は名称及び住所
⑵ 倉庫保管物の品種,数量,品質,包装及びその件数並びに標記
⑶ 倉庫保管物の損耗基準
⑷ 保管場所
⑸ 保管期限
⑹ 倉庫保管料
⑺ 倉庫保管物がすでに保険手続を経ている場合は,その保険の金額,期間及び保険者の名称
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・朱)
⑻ 発行人,発行地及び発行日
第910条(倉庫証券の裏書)
倉庫証券とは,倉庫保管物引取の証憑をいう。寄託者又は倉庫証券の所持人は,倉庫証券に裏書し,かつ保管人の署名又は押印を得た場合は,倉庫保管物引取の権利を譲渡することができる。
第911条(倉庫保管物に対する検査等)
保管人は,寄託者又は倉庫証券の所持人の請求に基づき,倉庫保管物を検査し,又は見本品を取り出すことに同意しなければならない。
第912条(変質等の通知)
保管人は,入庫した倉庫保管物に変質又はその他の損壊があることを発見した場合は,遅滞なく寄託者又は倉庫証券の所持人に通知しなければならない。
第913条(変質等の処置)
保管人は,入庫した倉庫保管物に変質又はその他の損壊があり,その他の倉庫保管物の安全及び正常な保管を脅かす状況を発見した場合は,寄託者又は倉庫証券の所持人に必要な処置を講じるよう催告しなければならない。緊急の状況では,保管人は必要な処置を講じることができる。但し,事後に当該状況を遅滞なく寄託者又は倉庫証券の所持人に通知しなければならない。 第914条(保管期間が明確でない場合の引取)
当事者が保管期間につき約定していない場合又は約定が不明確な場合は,寄託者又は倉庫証券の所持人は,倉庫保管物を随時引き取ることができ,保管人も随時寄託者又は倉庫証券の所持人に対し,倉庫保管物を引き取るよう請求することができる。但し,必要な準備時間を与えなければならない。第915条(保管期間満了時の引取)
保管期間が満了した場合は,寄託者又は倉庫証券の所持人は,倉庫証券,入庫証券
等に基づき倉庫保管物を引き取らなければならない。寄託者又は倉庫証券の所持人が期限を過ぎてから引き取る場合は,倉庫保管料を増額徴収する。期限前に引き取る場合は,倉庫保管料を減額しない。
第916条(倉庫保管物を引き取らない場合)保管期間が満了しても,寄託者又は倉庫 証券の所持人が倉庫保管物を引き取らない場合は,保管人は合理的な期間内に引き取るよう催告することができる。期限を過ぎても引き取らないときは,保管人は倉庫保
管物を供託することができる。
第917条(保管物の毀損・滅失)
保管期間において,保管人の保管が不適切であったことにより倉庫保管物の毀損・滅失が生じた場合は,保管人は賠償責任を負わなければならない。倉庫保管物本体の自然な性質により,又は包装が約定に合致せず,もしくは有効な保管期間を超えたことにより,倉庫保管物の変質・損傷が生じた場合は,保管人は賠償責任を負わない。第918条(寄託契約の規定の適用)
本章に規定がない場合は,寄託契約の関連規定を適用する。
第23章 委任契約
第919条(委任契約の定義)
委任契約とは,委任者と受任者との間で,受任者が委任者の事務を処理することを定める契約をいう。
第920条(委任の方法)
委任者は,受任者に⚑件又は数件の事務の処理を特に委任することができ,受任者に一切の事務の処理を包括的に委任することもできる。
第921条(費用)
委任者は,委任事務を処理する費用を前払しなければならない。受任者が委任事務
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
を処理するために立替払した必要費用については,委任者は当該費用を償還し,かつその利息を支払わなければならない。
第922条(委任者の指示)
受任者は,委任者の指示に従い委任事務を処理しなければならない。委任者の指示を変更する必要がある場合は,委任者の同意を得なければならない。緊急の状況で,委任者と連絡をとることが難しいときは,受任者は委任事務を適切に処理しなければならない。但し,事後に当該状況を遅滞なく委任者に報告しなければならない。
第923条(再委任)
受任者は,委任事務を自ら処理しなければならない。委任者の同意を得た場合は,受任者は,再委任することができる。再委任が同意又は追認を経ている場合は,委任者は委任事務につき,再委任を受けた第三者に直接指示することができ,受任者は第三者の選任及びその第三者に対する指示についてのみ責任を負う。再委任が同意又は追認を経ていない場合は,受任者は再委任を受けた第三者の行為につき責任を負わなければならない。但し,緊急の状況の下で受任者が委任者の利益を維持保護するために第三者に再委任が必要であるときを除く。第924条(受任者の報告義務)
受任者は,委任者の請求に従い,委任事務の処理状況を報告しなければならない。委任契約が終了したときは,受任者は委任事務の結果を報告しなければならない。 第925条(悪意の第三者との契約)
受任者が自己の名義で委任者の授権の範囲内で第三者と締結した契約については,第三者が契約締結時に受任者と委任者の間の代理関係を知っていた場合は,当該契約は直接委任者及び第三者を拘束する。但し,当該契約が受任者及び第三者のみを拘
束することを証明する確実な証拠があるときを除く。
第926条(善意の第三者との契約)
受任者が自己の名義で第三者と契約を締結する時に,第三者が受任者と委任者の間の代理関係を知らなかった場合において,受任者が第三者の原因により委任者に対して義務を履行しないときは,受任者は委任者に第三者を開示しなければならず,委任者はこれにより受任者の第三者に対する権利を行使することができる。但し,第三者が受任者と契約を締結する時に当該委任者を知っていたら契約を締結しなかった場合を除く。
受任者が委任者の原因により第三者に対して義務を履行しない場合は,受任者は第三者に委任者を開示しなければならず,第三者はこれにより受任者又は委任者を相手方として選択し,その権利を主張することができる。但し,第三者は選定した相手方を変更してはならない。
委任者が受任者の第三者に対する権利を行使した場合は,第三者は委任者に,その受任者に対する抗弁を主張することができる。第三者が委任者をその相手方として選定したときは,委任者は第三者に,その受任者に対する抗弁及び受任者の第三者に対する抗弁を主張することができる。
第927条(取得財産の引渡義務)
受任者が委任事務の処理にあたり取得した財産を委任者に引き渡さなければならない。第928条(委任報酬の支払)
受任者が委任事務を完成した場合は,委任者は約定に従い受任者に報酬を支払わなければならない。
受任者の責めに帰することができない事由により委任契約が解除され,又は委任事務の完成ができない場合は,委任者は受任
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
xに相応の報酬を支払わなければならない。当事者に別途約定がある場合は,その約定に従う。
第929条(受任者の賠償責任)
有償の委任契約に関しては,受任者の過失により委任者に損失がもたらされた場合は,委任者は損失の賠償を請求することができる。無償の委任契約に関しては,受任者の故意又は重大な過失により委任者に損失がもたらされた場合は,委任者は損失の賠償を請求することができる。
受任者が権限を超えて委任者に損失を与えた場合は,損失を賠償しなければならない。第930条(受任者の損害賠償請求権)
受任者の委任事務処理時に,自己の責めに帰することができない事由により損失を被った場合は,委任者に損失の賠償を請求することができる。
第931条(第三者への委任)
委任者は受任者の同意を得て,受任者の他に,第三者に委任事務の処理を委任することができる。これにより受任者に損失がもたらされた場合は,受任者は委任者に損失の賠償を請求することができる。
第932条(共同受任)
複数の受任者が共同で委任事務を処理する場合は,委任者に対し連帯責任を負う。第933条(契約の解除)
委任者又は受任者は,随時委任契約を解除することができる。契約の解除により相手方に損失を与えた場合は,当該当事者の責めに帰することができない事由によるときを除き,無償の委任契約の解除者は不当な解除時期によりもたらした直接な損失を賠償しなければならず,有償の委任契約の解除者は相手方の直接な損失及び契約履行後の得べかりし利益を賠償しなければならない。
第934条(契約の終了)
委任者の死亡,消滅又は受任者の死亡,民事行為能力の喪失,消滅の場合は,委任契約は終了する。但し,当事者に別途約定があるとき又は委任事務の性質に基づき終了すべきでないときを除く。
第935条(委任者の死亡等)
委任者の死亡又は破産宣告,解散により委任契約が終了し,委任者の利益を損なうことになる場合は,委任者の相続人,遺産管理人又は清算者が委任事務を引き継ぐまでは,受任者は委任事務の処理を継続しなければならない。
第936条(受任者の死亡等)
受任者の死亡,民事行為能力の喪失又は破産宣告,解散により委任契約が終了した場合は,受任者の相続人,遺産管理人,法定代理人又は清算者は,遅滞なく委任者に通知しなければならない。委任契約が終了したことにより,委任者の利益を損なうことになるときは,委任者が善後処理を行うまでは,受任者の相続人,遺産管理人,法定代理人又は清算者は,必要な措置を講じなければならない。
第24章 不動産管理サービス契約
第937条(不動産管理サービス契約の定義)不動産管理サービス契約とは,不動産x xサービス者が不動産管理サービス区域内において,所有者に建物及びその付属施設の維持修繕・環境衛生並びに関連秩序の管理維持等の不動産管理サービスを提供し,
所有者が管理費を支払う契約をいう。
不動産管理サービス者には不動産管理サービス会社及びその他の管理人が含まれる。第938条(契約の内容)
不動産管理ザービス契約の内容には通常,サービス事項,サービス品質,サービ
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
ス費用の基準及び徴収方法,維持修繕資金の使用,サービス用建物の管理・使用,サービス期間,サービス引継ぎ等の条項が含まれる。
不動産管理サービス者が公開で行った所有者に資するサービスの承諾は,不動産管理サービス契約の構成部分とする。
不動産管理サービス契約は,書面の形式を採用しなければならない。
第939条(所有者に対する拘束力)
施工主が法により不動産管理サービス者と締結した前期不動産管理サービス契約及び管理組合理事会が管理組合と法により採用した不動産管理サービス者と締結した不動産管理サービス契約は,所有者に対し法的拘束力を有する。
第940条(前期不動産管理サービス契約の終了)
施工主が法により不動産管理サービス者と締結した前期不動産管理サービス契約において,サービス期間満了前に,管理組合理事会又は所有者と新不動産管理サービス者が締結する不動産管理サービス契約は効力を生じると約定している場合は,前期不動産管理サービス契約は終了する。
第941条(委託)
不動産管理サービス者は,不動産管理サービス区域内の一部特定サービス事項を専門のサービス組織又はその他の第三者に委託する場合は,当該特定サービス事項につき所有者に対し責任を負わなければならない。
不動産管理サービス者はその提供すべきサービスを全部第三者に再委託し,又は全部の不動産管理サービスを分解し,それぞれ第三者に再委託してはならない。
第942条(合理的な措置)
不動産管理サービス者は約定及び不動産
の使用性質に従い,不動産管理サービス区域内の所有者共有部分に適切な修繕・維持・清掃・緑化及び経営管理を行い,不動産管理サービス区域内の基本秩序を維持し,所有者の人身・財産の安全の保護に合理的な措置を講じなければならない。
不動産管理サービス区域内における治安,環境保護,消防等に関する法律法規に違反する行為に対し,不動産管理サービス者は遅滞なく合理的な措置を講じて制止し,関連行政主管部門に報告し協力して処理に当たらなければならない。
第943条(公開・報告)
不動産管理サービス者は,定期的にサービス事項,責任者,品質要求,費用徴収項目,費用徴収基準,履行状況及び維持修繕資金使用状況,所有者共有部分の経営・収益状況等につき,合理的な方式で所有者に公開し,かつ管理組合・管理組合理事会に報告を行わなければならない。
第944条(管理費の支払)
所有者は約定に従い不動産管理サービス者に管理費を支払わなければならない。不動産管理サービス者がすでに約定及び関連規定に従いサービスを提供している場合は,所有者は関連不動産管理サービスを受けていない又は受ける必要がないことを理由に管理費の支払を拒絶してはならない。所有者が約定に違反し期限を過ぎてもx x費を支払わない場合は,不動産管理サービス者は合理的な期間内に支払うよう催告することができる。期限を過ぎても支払わない場合は,不動産管理サービス者は訴訟
の提起又は仲裁の申立ができる。
不動産管理サービス者は,電気・水道・暖房・ガス供給の停止等の方式で管理費の支払を催促してはならない。
第945条(所有者の告知義務等)
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
x有者が家屋を装飾内装した場合は,事前に不動産管理サービス者に告知し,不動産管理サービス者の提示した合理的な注意事項を遵守し,必要な現場検査に協力しなければならない。
所有者が専有部分を譲渡・賃貸し,居住権を設定し又は法により共有部分の用途を変更する場合は,遅滞なく関連状況を不動産管理サービス者に告知しなければならない。第946条(契約解除)
所有者が法定手続により不動産管理サービス者を解任すると共同で決定した場合は,不動産管理サービス契約を解除することができる。解任を決定した場合は,60日前に書面で不動産管理サービス者に通知しなければならない。但し,契約で通知期間につき別段の定めがある場合を除く。
前項の規定により契約を解除し不動産管理サービス者に損失をもたらした場合は,所有者の責めに帰することができない事由を除き,所有者は損失を賠償しなければならない。
第947条(延長)
不動産管理サービス期間満了前に,所有者が法により採用の延長を共同で決定した場合は,原不動産管理サービス者と契約期間満了前に不動産管理サービス契約を更新しなければならない。
不動産管理サービス期間満了前に,不動産管理サービス契約者が更新に同意しない場合は,契約期間満了90日前に書面で所有者又は管理組合理事会に通知しなければならない。但し,契約で通知期間につき別段の定めがある場合を除く。
第948条(期間の定めのない契約)
不動産管理サービス期間満了前に,所有者が法により採用の延長又は他の不動産管理サービス者の採用を決定せず,不動産管
理サービス者が引き続き不動産管理サービ スを提供している場合は,原不動産管理サービス契約は引き続き有効とする。但し,サービス期間は期間の定めのないものとする。当事者は随時期間の定めのない不動産x xサービス契約を解除することができる。但し,60日前に書面で相手方に通知しなけ
ればならない。
第949条(契約の終了)
不動産管理サービス契約が終了した場合は,原不動産管理サービス者は約定の期間内又は合理的な期間内に不動産管理サービス区域から退去し,不動産管理サービス用建物,関連施設,不動産管理サービスに必要な関連資料等を管理組合理事会,自ら管理を行うことを決定した所有者又は所有者が指定した者に返還し,新不動産管理サービス者への引継業務に協力し,かつ不動産管理の使用・管理状況を事実の通り告知しなければならない。
原不動産管理サービス者が前項の規定に違反した場合は,所有者に不動産管理サービス契約終了後の管理費の支払を請求してはならず,所有者に損失をもたらした場合は,損失を賠償しなければならない。
第950条(経過措置)
不動産管理サービス契約終了後,所有者もしくは管理組合が採用した新不動産管理サービス者又は自ら管理を行うと決定した所有者が管理を引き継ぐまで,原不動産管理サービス者は引き続き不動産管理サービス事項を処理し,かつ所有者に当該期間の管理費の支払を請求することができる。
第25章 取次契約
第951条(取次契約の定義)
取次契約とは,取次人が自己の名義で委託人のために商取引活動に従事し,委託人
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
が報酬を支払う契約をいう。
第952条(費用)
取次人が委託事務を処理するにあたり支出した費用は,取次人が負担する。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。
第953条(委託物の保管)
取次人が委託物を占有する場合は,委託物を適切に保管しなければならない。
第954条(委託物の処分)
委託物を取次人に引き渡した時に瑕疵があり,又は腐乱・変質しやすい場合は,委託人の同意を得て,取次人は当該物を処分することができる。遅滞なく委託人と連絡を取ることができないときは,取次人は合理的に処分することができる。
第955条(委託人の指定価格)
取次人は,委託人が指定した価格より低い価格で売却し,又は委託人が指定した価格より高い価格で購入する場合は,委託人の同意を得なければならない。委託人の同意を得ずに取次人がその差額を補償するときは,当該売買は委託人に対して効力を生じる。
取次人は,委託人が指定した価格より高い価格で売却し,又は委託人が指定した価格より低い価格で購入する場合は,約定に従い報酬を増額することができる。約定がない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,当該利益は委託人に帰属する。
委託人が価格につき特別な指示をした場合は,取次人は当該指示に反して売却又は購入してはならない。
第956条(介入権)
取次人が市場価格のある商品を売却又は購入するにあたり,委託人が反対の意思表示をした場合を除き,取次人は自ら買主又
は売主となることができる。
取次人は,前項規定の事由に該当する場合も,依然として委託人に報酬の支払を請求することができる。
第957条(供託)
取次人が約定に従い委託物を購入した場合は,委託人は遅滞なく受領しなければならない。取次人の催告を経て,委託人が正当な理由なく受領を拒絶したときは,取次人は法により委託物を供託することができる。
委託物の売却ができない場合又は委託人が売却を撤回した場合において,取次人の催告を経て,委託人が当該物を回収せず,又は処分しないときは,取次人は法により委託物を供託することができる。
第958条(取次人の契約上の地位)
取次人が第三者と契約を締結する場合は,取次人は当該契約につき直接に権利を有し,義務を負う。
第三者が義務を履行せず,これにより委託人が損害を被った場合は,取次人は賠償責任を負わなければならない。但し,取次人と委託人に別途約定がある場合を除く。第959条(取次報酬の支払及び留置権)
取次人が委託事務を完成し,又は一部完成した場合は,委託人は取次人に相応の報酬を支払わなければならない。委託人が期限を過ぎても報酬を支払わないときは,取次人は委託物に対し留置権を有する。但し,当事者に別途約定がある場合を除く。第960条(委任契約の規定の適用)
本章に規定がない場合は,委任契約の関連規定を参照して適用する。
第26章 仲介契約
第961条(仲介契約の定義)
仲介契約とは,仲介人が委託人に契約締結の機会を報告し,又は契約締結の媒介
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
xービスを提供し,委託人が報酬を支払う契約をいう。
第962条(報告義務)
仲介人は,契約締結に関連する事項につき,委託人に事実の通り報告しなければならない。
仲介人が故意に契約締結に関連する重要事実を隠蔽し,又は虚偽の状況を提供し,委託人の利益を損なった場合は,報酬の支払を請求してはならず,かつ賠償責任を負わなければならない。
第963条(報酬)
仲介人の助力により契約が成立した場合は,委託人は約定に従い報酬を支払わなければならない。仲介人の報酬につき約定がない場合又は約定が不明確な場合において,本法第510条の規定に基づいても確定できないときは,仲介人の労務に基づき合理的に確定する。仲介人が契約締結の媒介サービスを提供したことにより契約の成立を促進させた場合は,当該契約の当事者が仲介人の報酬を均等に負担する。
仲介人の助力により契約が成立した場合は,仲介活動の費用は仲介人が負担する。第964条(必要費用)
仲介人の助力により契約が成立していない場合は,報酬の支払を請求してはならない。但し,約定に従い委託人に対し,仲介活動に従事するにあたり支出した必要費用の支払を請求することができる。
第965条(報酬の支払)
委託人が仲介人のサービスを受けた後,仲介人の提供する取引機会又は仲介サービスを利用し,仲介人を介さず直接契約を締結した場合は,仲介人に報酬を支払わなければならない。
第966条(委任契約の規定の適用)
本章に規定がない場合は,委任契約の関
連規定を参照して適用する。
第27章 組合契約
第967条(組合契約の定義)
組合契約とは,複数の組合員が共同の事業目的のために締結する,利益を共に享受し,危険を共に負担する合意をいう。
第968条(出資義務)
組合員は約定の出資方式,金額及び納付期限に従い,出資義務を履行しなければならない。
第969条(財産等の帰属)
組合員の出資,組合業務により法により取得した収益及びその他の財産は,組合財産に属する。
組合契約終了前,組合員は組合財産の分割を請求してはならない。
第970条(組合③務)
組合員が組合業務につき決定を行った場合は,組合契約に別段の定めがある場合を除き,総組合員の一致した合意を経なければならない。
組合業務は,総組合員が共同で執行する。組合契約の約定又は総組合員の決定により,⚑人又はxxの組合員に組合業務の執行を委任することができ,その他の組合員は組合業務を執行しないが,執行状況を監督する権利を有する。
組合員が組合業務をそれぞれ執行する場合は,業務執行の組合員はその他の組合員の執行業務に対して異議を述べることができる。異議を述べた後,その他の組合員は当該業務の執行を暫定的に停止しなければならない。
第971条(報酬の支払請求)
組合員は組合業務の執行により報酬の支払を請求してはならない。但し,組合契約に別段の定めがある場合は除く。
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
第972条(利潤分配及び欠損分担)
組合の利潤分配及び欠損分担は,組合契約の約定により処理する。組合契約に約定がない場合又は約定が不明確な場合は,組合の協議により決定する。協議が合意に達成しない場合は,実際に納付した出資割合により分配・分担する。出資割合を確定することができない場合は,組合員が均等に分配・分担する。
第973条(連帯責任)
組合員は組合債務に対し連帯責任を負う。組合債務の弁済が自己の負担すべき割合を超えている組合員は,その他の組合員に対し求償する権利を有する。
第974条(譲渡)
組合契約に別段の定めがある場合を除き,組合員は組合員以外の者に財産割合の全部又は一部を譲渡する場合は,その他の組合員の一致した同意を得る必要がある。第975条(権利の代位行使)
組合員の債権者は,本章の規定及び組合契約に基づいて有する組合員の権利を代位行使してはならない。但し,組合員の有する利益分配請求権を除く。
第976条(期間の定めのない組合)
組合期間につき組合員に約定がない場合又は約定が不明確な場合において,本法第 510条の規定に基づいても確定することができないときは,期間の定めのない組合とみなす。
組合期間が満了し,組合員が引き続き組合業務を執行し,その他の組合員が異議を述べない場合は,原組合契約は引き続き有効であるが,組合期間は期間の定めのないものとみなす。
組合員は期間の定めのない組合契約を随時解除することができる。但し,合理的な期間内にその他の組合員に通知しなければ
ならない。
第977条(組合契約の終了)
組合員が死亡,民事行為能力の喪失又は消滅した場合は,組合契約は終了する。但し,組合契約に別段の定めがある場合又は組合業務の性質により終了すべきでない場合を除く。
第978条(分配)
組合契約が終了した後,終了により生じた費用の支払後及び組合債務の弁済後に組合財産に余剰がある場合は,本法第972条の規定に基づいて分配を行う。
第⚓分編 準契約
第28章 事務管理
第979条(事務管理の定義)
管理者に法定又は約定の義務がなく,他人の利益損失を回避するために他人の事務の管理を行う場合は,受益者に管理事務により支出した必要な費用の償還を請求することができる。管理者が管理事務により損失を被った場合は,受益者に適当な補償を請求することができる。
管理事務が受益者のxxの意思に合致しない場合は,管理者は前項の規定する権利を有しない。但し,受益者のxxの意思が法律に違反し,又は公序良俗に反する場合を除く。
第980条(受益者の責任)
管理者の管理事務が前項の規定する事由に該当しないが,受益者が管理利益を有する場合は,受益者はその獲得利益の範囲内において管理者に対し前条第⚑項の規定する義務を負わなければならない。
第981条(中断)
管理者による他人の事務の管理は,受益者に資する方法を採用しなければならな
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
x。管理の中断が受益者にとって不利となる場合は,正当な理由がなければ中断してはならない。
第982条(通知)
管理者は他人の事務を管理するとき,受益者に通知することができる場合は,遅滞なく受益者に通知しなければならない。管理した事務を緊急に処理する必要のない場合は,受益者の指示を待たなければならない。第983条(報告)
管理の終結後,管理者は受益者に管理事務の状況を報告しなければならない。管理者が管理事務により取得した財産は,遅滞なく受益者に引き渡さなければならない。第984条(委任契約の関連規定の適用)
管理者の管理事務が受益者の事後追認を得た場合は,管理事務の開始時から委任契約の関連規定を適用する。但し,管理者に別段の意思表示がある場合を除く。
第29章 不当利得
第985条(不当利得)
利得者が法律上の根拠なく不当に利益を取得した場合は,損失を受けた者は利得者に獲得した利益の返還を請求することができる。但し,次の各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合は除く。
⑴ 道徳上の義務を履行するために行った給付
⑵ 債務の期限到来前の弁済
⑶ 給付義務のないことを明らかに知りながら行った債務弁済
第986条(利得者の善意)
利得者が獲得した利益に法律上の根拠がないことを知らずかつ知り得べきでなく,獲得した利益がすでに存在しない場合は,当該利益の返還義務を負わない。
第987条(利得者の悪意)
利得者が獲得した利益に法律上の根拠がないことを知り又は知り得べき場合は,損失を受けた者は利得者に獲得した利益の返還を請求し,かつ法により損失の賠償を請求することができる。
第988条(返還義務)
利得者がすでに獲得した利益を無償で第三者に譲渡した場合は,損失を受けた者は第三者に相応の範囲内において返還義務を負うよう請求することができる。
第⚔編 人格権
第⚑章 一般規定 第989条(適用範囲)
本編は,人格権の享有及び保護から生じる民事関係を調整する。
第990条(定義)
人格権は,民事主体が享有する生命権,身体権,健康権,氏名権,名称権,肖像権,名誉権,栄誉権,プライバシーxxの権利である。
前項が規定する人格権のほかに,自然人は人身の自由,人格の尊厳から生じたその他の人格的権利利益を享有する。
第991条(人格権の保護)
民事主体の人格権は,法的保護を受け,いかなる組織又は個人も侵害してはならない。第992条(人格権行使の制限)
人格権は,放棄・譲渡又は相続してはならない。
第993条(他人による使用)
民事主体は他人に自己の氏名・名称・肖像等の使用を許可することができる。但し,法律の規定により,又はその性質により許可してはならないものを除く。
第994条(死者の人格権)
死者の氏名・肖像・名誉・栄誉・プライ
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
バシー・遺体等が侵害を受けたとき,その配偶者・子・父母は,法に従い行為者に民事責任を負うよう請求する権利を有する。死者に配偶者・子がおらず,かつその父母がすでに死亡した場合は,その他の近親者は,法に従い行為者に民事責任を負うよう請求する権利を有する。
第995条(請求権の発生及び訴訟時効規定の不適用)
人格権が侵害を受けたとき,被害者は本法又はその他の法律の規定に従い,行為者に民事責任を負うよう請求する権利を有する。被害者による侵害の停止,妨害の排除,危険の除去,影響の除去,名誉の回復,謝罪の請求権は,訴訟時効の規定を適用しない。
第996条(違約責任と精神的損害賠償との併存)
一方の当事者の違約行為により,相手方の人格権を害し,かつ重大な精神的な損害をもたらしたとき,損害を受けた方がその違約責任を負うよう請求することを選択した場合,損害を受けた方による精神的損害賠償の請求に影響を与えない。
第997条(差止請求権)
民事主体は,その人格権を侵害する違法行為を行為者が実施し,又は実施しようとしており,これを直ちに阻止しなければ,その合法的な権利・利益に回復不能な損害をもたらすことを証明する証拠があるときは,行為者による関連行為の停止を命じるよう措置を講じることを,法に従い人民法院に申請する権利を有する。
第998条(民事責任認定の考慮要素)
生命権・身体権及び健康権以外の人格権を侵害した場合の行為者の民事責任を認定するとき,行為者と被害者の職業,影響の範囲,過失の程度及び行為の目的,方式,
結果等の要素を考慮しなければならない。
第999条(公共の利益のための個人情報等の利用)
公共の利益のために新聞報道,世論監督等の行為を実施するとき,民事主体の氏名・名称・肖像・個人情報等を合理的に使用することができる。不合理な利用によって民事主体の人格権を侵害したときは,法に従い民事責任を負わなければならない。第1000条(責任負担の範囲及び執行)
人格権侵害により行為者が影響の除去,名誉の回復,謝罪等の民事責任を負うときは,行為の具体的な方式ともたらした影響の範囲に相当でなければならない。
前項が規定する民事責任を負うことを行為者が拒絶したときは,人民法院は新聞・インターネット等のメディアに公告を掲載し,又は法的効力が生じた判決文書を公布する等の方式によって執行することができる。発生した費用は行為者の負担とする。第1001条(婚姻家庭関係等の身分権利の保護)
婚姻家庭関係等から生じた自然人の身分権利についての保護は,本法第⚑編,第⚕編及びその他の法律の関連規定を適用する。規定がないときは,その性質に従い本編人格権保護の関連規定を参照し適用することができる。
第⚒章 生命権・身体権及び健康権
第1002条(生命権)
自然人は生命権を有する。自然人の生命安全と生命尊厳は法的保護を受ける。いかなる組織又は個人も他人の生命権を侵害してはならない。
第1003条(身体権)
自然人は身体権を有する。自然人の身体完全性と行動自由は法的保護を受ける。いかなる組織又は個人も他人の身体権を侵害
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
xてはならない。
第1004条(健康権)
自然人は健康権を有する。自然人の心身健康は法的保護を受ける。いかなる組織又は個人も他人の健康権を侵害してはならない。第1005条(法定救助義務)
自然人の生命権・身体権・健康権が侵害を受け,又はその他の危機的状況にあるとき,法定救助義務を負う組織又は個人は,遅滞なく救助を施さなければならない。 第1006条(献体等)
完全民事行為能力者は,法に従いその人体細胞,人体組織,人体器官,遺体を無償で提供することを自ら決定することができる。いかなる組織又は個人もその提供につき強迫,詐欺,利益による勧誘をしてはならない。
完全民事行為能力者は前項の規定に従い提供に同意するときは,書面の形式を採用しなければならず,遺言を作成することもできる。
自然人は生前に提供に同意しないことを表明しなかったときは,当該自然人の死亡後,その配偶者・xxの子・父母は共同で寄付を決定することができる。提供の決定は,書面の形式を採用しなければならない。第1007条(臓器等の売買禁止)
いかなる形式での人体細胞,人体組織,人体器官,遺体の売買も禁止される。
前項の規定に違反した売買行為は,無効とする。
第1008条(臨床試験時の同意等)
新薬・医療機器を研究製造し,又は新しい予防治療法を発展させるために,臨床試験が必要なときは,法に従い関連する主管部門の認可を経て,かつ倫理委員会の審査による同意を得なければならない。被験者又はその後見人に試験の目的・用途及び発
生しうるリスク等の詳細状況を告知し,その書面による同意を得なければならない。臨床試験を行うときは,被験者に試験費
用を徴収してはならない。
第1009条(遺伝子等の研究時の遵守事項)人体の遺伝子・人体の胚胎等に関連する 医学及び科学研究活動に従事するときは,法律,行政法規及び国の関連規定を遵守しなければならならず,人体健康の危害,倫理道徳の違反,公共の利益の損害をしては
ならない。
第1010条(セクハラ被害者の請求xx)
他人の意思に反し,言語,文字,画像,身体的行為等の方式によって他人にセクハラを行ったときは,被害者は,法に従い行為者に民事責任を負うよう請求する権利を有する。
機関,企業,学校等の組織(原語は単位)は,合理的な予防,告発の受理,調査処理等の措置を講じなければならず,職権・従属関係等を利用して行うセクハラを防止,制止しなければならない。
第1011条(行動自由等の侵害)
違法な拘束等の方式によって他人の行動自由を制限し,又は他人の身体を違法に捜査したときは,被害者は,法に従い行為者に民事責任を負うよう請求する権利を有する。
第⚓章 氏名権と名称権
第1012条(氏名権)
自然人は氏名権を享有し,法に従い決定・使用・変更し,又は他人による自己の氏名の使用を許可する権利を有する。但し,公序良俗に反してはならない。
第1013条(名称権)
法人・非法人組織は名称権を享有し,法に従い決定,使用・変更・譲渡し,又は他人による自己の名称の使用を許可する権利
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
を有する。
第1014条(氏名権・名称権の保護)
いかなる組織又は個人も干渉・盗用・なりすまし等の方式によって他人の氏名権又は名称権を侵害してはならない。
第1015条(氏名の決定)
自然人は父又は母の氏に従わなければならない。但し,次の各号に掲げる事由のいずれかが生じたときは,父と母以外の氏から選択することができる。
⑴ その他の直系尊属血縁親族の氏から選択すること
⑵ 法定扶養者以外の人による扶養のため,その扶養者の氏を選択すること
⑶ 公序良俗に反しないその他の正当な理由があること
少数民族の自然人の氏名は,その民族の文化伝統と風俗慣習に従うことができる。第1016条(氏名・名称の登記)
自然人が氏名を決定・変更し,又は法人・非法人組織が名称を決定・変更・譲渡するときは,法に従い関係する機関で登記手続を行わなければならない。但し,法律に別段の定めがある場合を除く。
民事主体が氏名・名称を変更したときは,変更前に行った民事法律行為は本人に対し法的拘束力を有する。
第1017条(知名度の高いペンネーム等の保護)一定の社会的知名度を有するペンネー ム,芸名,ハンドルネーム,訳名,屋号,氏名と名称の略称等について,他人による使用が民衆に十分に混同をもたらすときは,氏名権及び名称権保護の関連規定を参
照し適用する。
第⚔章 肖像権
第1018条(肖像権)
自然人は肖像権を有し,法に従い作成・
使用・公開し,又は他人による自己の肖像の使用を許可する権利を有する。
肖像とは,映像・彫刻・絵画等の方式により,一定の媒体上に反映させた特定の自然人を識別できる外在的形象である。
第1019条(肖像権の保護)
いかなる組織又は個人も醜悪化,汚損又は情報技術の手段による偽造等の方式によって他人の肖像権を侵害してはならない。肖像権者の同意を得なければ,肖像権者の肖像を作成・使用・公開をしてはならない。但し,法律に別段の定めがある場合を除く。
肖像権者の同意を得なければ,肖像作品の権利者は発表,複製,発行,賃貸,展示等の方式によって肖像権者の肖像を使用又は公開してはならない。
第1020条(肖像権の無許可使用)
次に掲げる行為を合理的に行うときは,肖像権者の同意を得る必要がない。
⑴ 個人学習,芸術鑑賞,教室での講義又は科学研究のために,肖像権者がすでに公開している肖像を必要な範囲内において使用すること。
⑵ 新聞報道を行うために,不可避的に肖像権者の肖像を作成・使用・公開すること。
⑶ 法に従い職務を履行するために,国家機関が肖像権者の肖像を必要な範囲内において作成・使用・公開すること。
⑷ 特定の公共環境を展示するために,不可避的に肖像権者の肖像を作成・使用・公開すること。
⑸ 公共の利益又は肖像権者の合法的な権利利益を維持するために,肖像権者の肖像を作成・使用・公開するその他の行為。
第1021条(肖像使用許諾契約の解釈)
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
x像使用許諾契約における肖像使用の条項の理解について当事者に争いがあるときは,肖像権者に有利な解釈をしなければならない。
第1022条(肖像使用許諾契約の解除)
当事者が肖像使用許諾の期限について約定せず,又は約定が不明確なときは,いずれかの当事者も随時に肖像使用許諾契約を解除することができる。但し,合理的な期間内に相手に通知しなければならない。
当事者が肖像使用許諾の期限について明確に約定し,肖像権者に正当な理由があるとき,肖像使用許諾契約を解除することができる。但し,合理的な期間内に相手に通知しなければならない。契約の解除により相手に損失をもたらしたとき,肖像権者に帰責事由がない場合を除き,損失を賠償しなければならない。
第1023条(氏名等の使用許諾や音声の保護)
氏名等の使用許諾については,肖像使用許諾の関連規定を参照し適用する。
自然人の音声の保護については,肖像権保護の関連規定を参照し適用する。
第⚕章 名誉権と栄誉権
第1024条(名誉権)
民事主体は名誉権を有する。いかなる組織又は個人も,侮辱・誹謗等の方式で他人の名誉権を侵害してはならない。
名誉とは,民事主体の品性,名声,才能,信用等の社会的評価である。
第1025条(名誉権の侵害)
行為者が公共の利益のために新聞報道・世論監督等の行為を行い,他人の名誉に影響を与えた場合は,民事責任を負わない。但し,次の各号に掲げる事由のいずれかが生じたときを除く。
⑴ 事実を捏造・歪曲したとき
⑵ 他人が提供した事実と甚だしく異なる内容について,合理的な事実確認義務を尽くさなかったとき
⑶ 侮辱的な言辞等の使用によって他人の名誉を貶めたとき
第1026条(合理的な事実確認義務の認定基準)行為者が前条第⚒号の規定する合理的な 事実確認義務を尽くしたか否かを認定するときは,次に掲げる要素を考慮しなければ
ならない。
⑴ 内容の出所の信用度
⑵ 明らかに争いを引き起こす可能性のある内容について必要な調査を行ったか否か
⑶ 内容の時限性
⑷ 内容と公序良俗との関連性
⑸ 被害者の名誉が貶められる可能性
⑹ 事実確認の能力とコスト
第1027条(創作と名誉権侵害)
行為者の発表した文学・芸術作品が,実在する人物・出来事又は特定の人をその描く対象とし,侮辱・誹謗の内容を含み,他人の名誉権を侵害したときは,被害者は,法に従い行為者に民事責任を負うよう請求する権利を有する。
行為者の発表した文学・芸術作品が,特定の人をその描く対象とせず,単にそのプロットが当該特定の人の状況と相似する場合は,民事責任を負わない。
第1028条(報道による名誉権侵害)
民事主体は,新聞・インターネット等のメディアの報道内容がxxでなく,その名誉権を侵害したと証明する証拠があるときは,当該メディアに遅滞なく訂正又は削除等の必要な措置を講じるよう請求する権利を有する。
第1029条(信用評価)
民事主体は,法に従い自己の信用評価を
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
照会することができる。不当な信用評価を発見したときは,異議申立てを行い,かつ訂正・削除等の必要な措置を講じるよう請求する権利を有する。信用評価者は遅滞なく照合しなければならず,事実と判明した場合は,遅滞なく必要な措置を講じなければならない。
第1030条(信用情報処理者についての適用規定)
民事主体と信用評価機構等の信用情報処理者との関係については,本編における個人情報保護の規定及びその他の法律,行政法規の関連規定を適用する。
第1031条(栄誉権)
民事主体は栄誉権を有する。いかなる組織又は個人も違法に他人の栄誉称号を剥奪してはならず,他人の栄誉を中傷し,貶めてはならない。
獲得した栄誉称号が記載すべきにもかかわらず記載されていないときは,民事主体は記載を請求することができる。獲得した栄誉称号の記載に誤りがあるときは,民事主体は訂正を請求することができる。
第⚖章 プライバシー権と個人情報保護
第1032条(プライバシー権)
自然人はプライバシー権を有する。いかなる組織又は個人も,詮索,騒擾,暴露,公開等の方式によって他人のプライバシー権を侵害してはならない。
プライバシーとは,自然人の個人生活の安静及び他人に知られたくない個人空間,個人活動,個人情報である。
第1033条(プライバシー権の保護)
法律に別段の定め又は権利者の明確な同意があるときを除き,いかなる組織又は個人も次に掲げる行為を行ってはならない。
⑴ 電話,ショートメッセージ,インス
タントメッセンジャーツール,電子メール,ビラ等の方式によって他人の個人生活の安静を騒擾すること
⑵ 他人の住宅・ホテルの部屋等の個人空間を侵入,撮影,覗くこと
⑶ 他人の個人活動を撮影,覗き,盗聴,公開すること
⑷ 他人の身体の私的部分を撮影し,覗くこと
⑸ 他人の個人情報を処理すること
⑹ その他の方式によって他人のプライバシー権を侵害すること
第1034条(個人情報保護)
自然人の個人情報は,法的保護を受ける。個人情報とは,電子的に又はその他の方
法で記録した単独又は他の情報と組み合わせて特定の自然人を識別できる各種の情報である。自然人の氏名,生年月日,身分証明書番号,生体認証情報,住所,電話番号,電子メールアドレス,健康状態,個人の所在に関する情報等が含まれる。
個人情報の中のプライベートな情報は,プライバシー権の規定を適用する。規定がない場合は,個人情報保護に関する規定を適用する。
第1035条(個人情報の処理)
個人情報を処理する場合は,合法・正当・必要の原則に従わなければならず,過度に処理してはならず,かつ次に掲げる条件に合致しなければならない。
⑴ 当該自然人又はその後見人の同意を得ること。但し,法律および行政法規に別段の規定がある場合を除く
⑵ 情報処理の規則を公開すること
⑶ 情報処理の目的・方法・範囲を明示すること
⑷ 法律,行政法規の規定及び双方の約定に反しないこと
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・朱)
個人情報の処理には,個人情報の収集,保管,利用,加工,送信,提供,開示等が含まれる。
第1036条(合法的な個人情報処理)
個人情報を処理する際に,次に掲げる事由のいずれかが生じたとき,行為者は民事責任を負わないものとする。
⑴ 当該自然人又はその後見人の同意した範囲内で合理的に行った行為
⑵ 当該自然人が自ら開示した情報,又はその他の合法的に開示された情報を合理的に処理した場合。但し,当該自然人が明確に拒否し,又はその情報処理が本人の重大な利益を侵害した場合を除く
⑶ 公共の利益又は当該自然人の合法的権利利益の維持のために合理的に行ったその他の行為
第1037条(情報処理者に対する請求権)
自然人は,法に従って情報処理者にその個人情報の閲覧又はコピーを求めることができる。情報に誤りがあることを発見した場合は,異議を唱える権利を有し,かつ遅滞なく修正を行う等の必要な措置を請求する権利を有する。
自然人は,情報処理者が法律,行政法規の規定又は双方の約定に違反して個人情報を処理したことを発見した場合は,情報処理者に遅滞なく削除することを請求する権利を有する。
第1038条(情報処理者の義務)
情報処理者は,収集・保管する個人情報を漏洩又は改竄してはならない。自然人の同意を得ることなく,個人情報を他人に不法に提供してはならない。但し,加工を経て特定の個人を識別することができず,かつ復元できないものを除く。
情報処理者は,技術的措置及びその他の
必要な措置を講じ,収集・保存した個人情報の安全を確保し,情報の漏洩・改竄・紛失を防止しなければならない。個人情報の漏洩・改竄・紛失が発生し,又はその恐れがある場合は,遅滞なく救済措置を講じ,規定に従って自然人に通知し,かつ関連する主管部門に報告しなければならない。 第1039条(国家機関等の守秘義務)
国家機関,行政機能を負う法定機構及びその職員は,職務を遂行する際に知った自然人のプライバシー及び個人情報を秘密にし,それを漏洩し又は他人に不法に提供してはならない。
第⚕編 婚姻家庭
第⚑章 一般規定
第1040条(適用範囲)
本編は,婚姻家庭から生じる民事関係を調整する。
第1041条(基本原則)
婚姻家庭は,国家の保護を受ける。
婚姻の自由,xx一婦,男女平等の婚姻制度を実行する。
女性,未xx者,高齢者及び身体障害者の合法的権利利益を保護する。
第1042条(禁止事項)
親が取り決めた婚姻,売買婚及びその他の婚姻の自由に干渉する行為を禁止する。婚姻を口実に財物を要求することを禁止する。
重婚を禁止する。配偶者を有する者が他の者と同棲することを禁止する。
家庭内暴力を禁止する。家族構成員間の虐待及び遺棄を禁止する。
第1043条(推進事項)
家族は,優良家風の樹立,家族xxの発揚をしなければならず,家族品格の構築を重視しなければならない。
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
夫婦は互いに誠実であり,尊重し,思いやり合わなければならない。家族構成員間においては高齢者を敬い,幼い者を慈しみ,互いに助け合い,平等で,仲睦まじく,品格ある婚姻家庭関係を維持しなければならない。
第1044条(養子縁組)
養子縁組は養子に最も有利な原則に従わなければならず,養子と養親の合法的な権利利益を保障しなければならない。
養子縁組の名を借りた未xx者の売買を禁止する。
第1045条(親族・近親族・家族構成員)
親族には,配偶者,血縁親族,姻族が含まれる。
配偶者,父母,子,兄弟姉妹,祖父母,外祖父母,孫,外孫を近親族とする。
配偶者,父母,子及びその他の共同生活している近親族を家族構成員とする。
第⚒章 婚姻
第1046条(自由原則)
結婚は,男女双方の完全な自由意思によらなければならない。いかなる一方による他方への強制も禁止する。いかなる組織又は個人による干渉も禁止する。
第1047条(婚姻年齢)
婚姻年齢は,男性満22歳,女性満20歳より前であってはならない。
第1048条(婚姻禁止事項)
直系血族又はxx以内の傍系血族による婚姻は禁止する。
第1049条(婚姻登記)
結婚しようとする男女双方は,自ら婚姻登記機関に赴き婚姻登記を申請しなければならない。本法の規定に合致するときは登記を行い,結婚証書を発行する。婚姻登記の完了により,婚姻関係が確立する。婚姻
登記を行っていないときは,登記手続を補完しなければならない。
第1050条(家族構成員の約定)
婚姻登記後,男女双方の約定に従い,妻は夫の家族構成員となることができ,夫は妻の家族構成員となることができる。
第1051条(婚姻の無効)
次の各号に掲げる事由のいずれかが生じたときは,婚姻は無効となる。
⑴ 重婚
⑵ 婚姻を禁止されている親族関係にあること
⑶ 法定の婚姻年齢に達していないこと
第1052条(脅迫等による婚姻の取消)
脅迫により結婚したとき,脅迫された方は人民法院に対し婚姻の取消を請求することができる。
婚姻の取消請求は,脅迫行為が終了した 日より⚑年以内に提起しなければならない。違法に人身の自由を制限された当事者が 婚姻の取消を請求するときは,人身の自由を回復した日より⚑年以内に提起しなけれ
ばならない。
第1053条(疾患告知義務)
一方に重大な疾患があるときは,婚姻登記前に事実の通り他方に告知しなければならない。事実の通り告知しないときは,他方は人民法院に婚姻の取消を請求することができる。
婚姻の取消を請求するときは,取消事由を知り又は知り得べき日より1年以内に提起しなければならない。
第1054条(婚姻無効・取消の効力)
無効又は取り消された婚姻は,初めから法的拘束力を有せず,当事者は夫婦としての権利及び義務を有しない。同居期間中に得た財産は,当事者の協議により処理する。協議が調わないときは,人民法院が過失の
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
xい方への配慮原則に従い判決をする。重 婚がもたらした婚姻無効の財産処理については,合法的な婚姻当事者の財産的権利利益を侵害してはならない。当事者が産んだ子は,本法の親子に関する規定を適用する。婚姻が無効又は取り消されたときは,過 失のない方は損害賠償を請求する権利を有
する。
第⚓章 家庭関係
第⚑節 夫婦関係
第1055条(夫婦地位の平等)
婚姻家庭における夫婦の地位は平等である。
第1056条(氏名の使用)
夫婦双方は共に自らの氏名を使用する権利を有する。
第1057条(自由制限の禁止)
夫婦双方は生産,仕事,学習及び社会活動に参加する自由を有し,一方が他方に対し制限又は干渉をしてはならない。
第1058条(子に対する扶養等の権利義務)夫婦双方は未xxの子をxx・教育及び 保護する権利を有し,共に未xxの子をx
x・教育及び保護する義務を負う。
第1059条(夫婦間の扶養義務)
夫婦は互いに対し扶養の義務を負う。 扶養を必要とする一方は,他方が扶養義
務を履行しないときに,扶養費の支払を請求する権利を有する。
第1060条(日常家事債務)
日常家庭生活の必要のために行った夫婦一方の民事法律行為は,夫婦双方にその効力を生ずる。但し,夫婦の一方が相手方と別途約定がある場合を除く。
夫婦間における他方への民事法律行為を行う範囲についての制限は,善意の相手方に対抗することができない。
第1061条(夫婦の相続権)
夫婦は互いに遺産を相続する権利を有する。
第1062条(夫婦財産の共有制)
夫婦が婚姻関係存続期間中に得た下記の財産は,夫婦の共有財産とし,夫婦の共有に属する。
⑴ 給与,ボーナス,労務報酬
⑵ 生産,経営,投資の収益
⑶ 知的財産権の収益
⑷ 相続又は贈与によって得た財産。但し,本法第1063条第⚓号が規定するものを除く
⑸ 共有に属すべきその他の財産
夫婦は共有財産に対し,平等の処理権を有する。
第1063条(夫婦の一方に属する財産)
次に掲げる財産は,夫婦の一方の財産とする。
⑴ 一方の婚姻前の財産
⑵ 一方が人身損害により得た賠償又は補償
⑶ 遺言又は贈与契約において一方のみに属すると確定された財産
⑷ 一方が専用する生活用品
⑸ 一方に属すべきその他の財産
第1064条(夫婦の共同債務)
夫婦双方が共同で署名し,又は夫婦の一方が事後の追認を行う等の共同の意思表示によって負う債務,及び夫婦の一方が婚姻関係存続期間中に,日常家庭生活のために個人名義で負う債務は,夫婦の共同債務に属する。
夫婦の一方が婚姻関係存続期間中に,日常家庭生活の必要を超えて個人名義で負う債務は,夫婦の共同債務に属さない。但し,債権者は,当該債務が夫婦の共同生活,共同生産経営のためのもの,又は夫婦双方の共同の意思表示によるものであることを証明することができる場合を除く。
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第1065条(財産の約定と債務の弁済)
男女双方は,婚姻関係存続期間中に得た財産及び婚姻前の財産について,各自の所有,共有,又は一部の各自の所有,一部共有に属することを約定することができる。約定は書面の形式によらなければならない。約定がない又は約定が不明確なときは,本法第1062条,第1063条の規定を適用する。
夫婦の婚姻関係存続期間中に得た財産及び婚姻前の財産についての約定は,双方に対し法的拘束力を有する。
夫婦が婚姻関係存続期間中に得た財産について各自の所有に属すると約定したとき,夫又は妻の一方が対外的に負う債務は,相手方が当該約定を知っていた場合は,夫又は妻の一方の個人財産によって弁済する。第1066条(夫婦共同財産の分割請求権)
婚姻関係存続期間中に,次に掲げる事由のいずれかが生じたときは,夫婦の一方は人民法院に対し共同財産の分割を請求することができる。
⑴ 一方が夫婦共同財産を隠匿,移転,売却,毀損,浪費し,又は夫婦共同債務を捏造する等,夫婦共同財産の利益を著しく損害する行為
⑵ 一方の法定扶養義務を負う者が重大疾患のために治療が必要なときに,他方が関連する医療費用の支払に同意しない場合
第⚒節 父母・子の関係及びその他の近親族関係
第1067条(父母と子の間の扶養義務)
父母がxxの義務を履行しないとき,未xxの子又は自立して生活することのできないxxの子は,父母にxx費の支払を請求する権利を有する。
xxの子が扶養義務を履行しないとき,
労働能力を欠き又は生活に困窮している父母は,xxの子に扶養費の支払を請求する権利を有する。
第1068条(父母の子への権利義務)
父母は未xxの子を教育・保護する権利と義務を有する。未xxの子が他人に損害をもたらしたときは,父母は法に従い民事責任を負わなければならない。
第1069条(父母婚姻自由の尊重)
子は,父母の婚姻の権利を尊重しなければならず,父母の離婚,再婚及び婚姻後の生活に干渉してはならない。子の父母への扶養義務は,父母の婚姻関係の変化によって終了しない。
第1070条(父母と子の間の相続権)
父母と子は,互いに遺産を相続する権利を有する。
第1071条(非嫡出子の保護)
非嫡出子は嫡出子と同等の権利を有し,いかなる組織又は個人も危害を加え,差別してはならない。
非嫡出子を直接xxしない実父又は実母は,その未xxの子又は自立して生活することができないxxの子のxx費を負担しなければならない。
第1072条(継親とxx)
継親とxxの間において,虐待又は差別をしてはならない。
継父又は継母とそのxx教育を受けているxxとの間の権利義務は,本法の親子関係の関連規定を適用する。
第1073条(親子関係の確認・否認)
親子関係に異議があり,かつ正当な理由があるときは,父又は母は,人民法院に提訴し,親子関係の確認又は否認を請求することができる。
親子関係に異議があり,かつ正当な理由があるときは,xxの子は,人民法院に提
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
xし,親子関係の確認を請求することができる。
第1074条(祖父母と孫との間の相互扶養義務)負担能力のある祖父母・外祖父母は,父 母がすでに死亡し又は父母にxx能力のない未xxの孫・外孫に対しxx義務を負う。負担能力のある孫・外孫は,子がすでに 死亡し又は子に扶養能力のない祖父母・外
祖父母に対し扶養義務を負う。
第1075条(兄・姉と弟・妹との間の相互扶養義務)
負担能力のある兄・姉は,父母がすでに死亡し又は父母にxx能力のない未xxの弟・妹に対し扶養義務を負う。
兄・姉により扶養され成長した負担能力のある弟・妹は,労働能力又は生活の糧を欠く兄・姉に対し扶養義務を負う。
第⚔章 離婚
第1076条(協議離婚)
夫婦双方が離婚を自ら望むときは,書面によって離婚の協議書を締結しなければならず,かつ自ら婚姻登記機関に赴き離婚の登記を申請しなければならない。
離婚の協議書には,双方が離婚を自ら望む意思表示及び子のxx,財産,債務の処理等の事項についての一致した意見を明記しなければならない。
第1077条(協議離婚のクーリングオフ)
婚姻登記機関が離婚登記の申請を受理した日より30日以内に,いずれかが離婚を翻意したときは,婚姻登記機関に離婚登記の申請の撤回を求めることができる。
前項の規定する期間満了後30日以内に,双方は自ら婚姻登記機関に赴き離婚証書の交付を申請しなければならない。申請しないときは,離婚登記申請の撤回とみなす。第1078条(離婚証書の交付)
婚姻登記機関は,双方が確かに自由意思によって離婚すること,xxxのxx,財産,債務の処理等の事項について協議が調ったことを究明したとき,登記を行い,離婚証書を交付する。
第1079条(離婚の調停及び訴訟)
夫婦の一方が離婚を求めるとき,関係組織が調停を行うか,又は直接人民法院に離婚訴訟を提起することができる。
人民法院が離婚事件を審理するとき,調停を行わなければならない。感情がすでに破綻し,調停の効果がない場合は,離婚を認めなければならない。
次に掲げる事由のいずれかが生じ,調停の効果がない場合は,離婚を認めなければならない。
⑴ 重婚又は他人と同棲している場合
⑵ 家庭内暴力を行い,又は家族構成員を虐待・遺棄した場合
⑶ 賭博・麻薬使用等の悪習があり,度々注意しても改めない場合
⑷ 感情の不和のため,別居が⚒年を経過した場合
⑸ その他の夫婦感情の破綻をもたらす事由
一方が失踪宣告され,他方が離婚訴訟を提起したときは,離婚を認めなければならない。
人民法院の判決によって離婚を認められなかった後,双方がさらに⚑年別居したとき,一方が再度離婚訴訟を提起した場合は,離婚を認めなければならない。
第1080条(婚姻関係の解消)
離婚登記が完成し,又は離婚判決書・調停書の効力が生じたとき,婚姻関係は解消する。
第1081条(現役軍人の離婚)
現役軍人の配偶者が離婚を求めるときは,
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軍人の同意を得なければならない。但し, 軍人の方に重大な過失がある場合を除く。第1082条(離婚による女性側の不利益の防止)女性側の妊娠中,分娩後⚑年以内又は妊 娠中絶後⚖箇月以内は,男性側は離婚を求めることはできない。但し,女性側が離婚を求めた場合,又は男性側からの離婚請求を確かに受理する必要があると人民法院が
認めた場合を除く。
第1083条(離婚後の婚姻の復活)
離婚後,男女双方が自由意思によって婚姻関係を回復させることを望む場合,婚姻登記機関へ赴き再度婚姻の登記をしなければならない。
第1084条(離婚後の子の扶養)
父母と子の間の関係は,父母の離婚によって解消しない。離婚後,子が父又は母のいずれが直接にxxしているかを問わず,依然として父母双方の子である。
離婚後,父母は子に対し依然としてx x・教育・保護の権利を有し,義務を負う。離婚後,⚒歳未満の子は,母が直接xx することを原則とする。⚒歳以上の子は,父母双方がそのxx問題について協議が調わないときは,人民法院は双方の具体的事情を踏まえ,未xx者の子に最も有利な原則に基づき判決する。子が⚘歳以上のときは,そのxxの意思を尊重しなければなら
ない。
第1085条(離婚後の子の扶養費)
離婚後,一方が子を直接xxするとき,他方は一部又は全部のxx費を負担しなければならない。負担する費用の額及びその期間の長さは,双方の協議による。協議が調わないときは,人民法院が判決する。
前項の規定する協議書又は判決は,子が必要な場合に,協議書又は判決で決定された額を超える合理的な請求を父母のいずれ
かに提起することを妨げない。
第1086条(離婚後の面会交流権)
離婚後,子を直接xxしない父又は母は,子との面会交流の権利を有し,他方はそれに協力する義務を負う。
面会交流権行使の方式・時期は,当事者の協議による。協議が調わないときは,人民法院が判決する。
父又は母の面会交流が,子の心身の健康に不利のときは,人民法院が法に従い面会交流を中断することができる。中断事由の消滅後は,面会交流を回復しなければならない。
第1087条(財産分与)
離婚の際,夫婦の共有財産は双方の協議により処理する。協議が調わないときは,人民法院が財産の具体的な状況,子と女性側及び無過失側の権利利益に配慮する原則に従い判決する。
夫又は妻が家族土地請負経営において有する権利利益等については,法に従い保護しなければならない。
第1088条(特別補償請求権)
夫婦の一方が子のxx,高齢者の世話,他方の仕事への協力等において,比較的多くの義務を負担した場合,離婚時に他方に補償を請求する権利を有し,他方は補償しなければならない。具体的な方法は,双方の協議による。協議が調わないときは,人民法院が判決する。
第1089条(共有債務の弁済)
離婚の際,夫婦の共有債務は,共同で弁済しなければならない。共有財産では完済に不足し,又は財産が各自の所有に属す場合は,双方の協議により弁済する。協議が調わないときは,人民法院が判決する。 第1090条(生活困窮者の援助)
離婚の際,一方が生活に困窮している場
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xは,負担能力を有する他方は適当な援助をしなければならない。具体的な方法は,双方の協議による。協議が調わないときは,人民法院が判決する。
第1091条(慰謝料)
次に掲げる事由のいずれかが生じ,離婚をもたらしたとき,過失のない方は損害賠償を請求する権利を有する。
⑴ 重婚
⑵ 他人との同棲
⑶ 家庭内暴力
⑷ 家族構成員の虐待・遺棄
⑸ その他の重大な過失
第1092条(共有財産侵害等が生じた際の財産分与)
夫婦の一方が夫婦の共有財産を隠匿,移転,売却,毀損,浪費し,又は夫婦の共有債務を捏造して他方の財産の横領を企む場合,離婚の際に夫婦の共有財産を分割するとき,当該の者に対し,少なく分与し又は分与しないことができる。離婚後,他方が上記の行為があったことを発見した場合,人民法院に訴訟を提起し,夫婦の共有財産を再度分割するよう請求することができる。
第⚕章 養子縁組
第⚑節 養子縁組の成立
第1093条(養子となる者の範囲)
次に掲げる未xx者は,養子とすることができる。
⑴ 父母を喪失した孤児
⑵ 実父母を見つけられない未xx者
⑶ 実父母に特殊な困難があり,xx能力がない子
第1094条(養子として送り出す者の範囲)
次に掲げる個人・組織は,養子を送り出す者となることができる。
⑴ 孤児の後見人
⑵ 児童福祉機構
⑶ 特殊な困難があり,子をxxする能力のない実父母
第1095条(民事法律行為を欠く両親の子を養子として送り出す場合)
未xx者の父母は共に完全な民事行為能力を欠き,かつ当該未xx者に深刻な危害を加える可能性があるときは,当該未xx者の後見人は未xx者を養子として送り出すことができる。
第1096条(孤児を養子として送り出す場合)後見人が孤児を養子として送り出すと き,xx義務を負う者の同意を得なければならない。xx義務を負う者が養子として送り出すことに同意せず,後見人が継続して後見の責務を履行することを望まない場合は,本法第⚑編の規定に従い,別途後見
人を確定しなければならない。
第1097条(実父母が子を養子として送り出す場合)
実父母が子を養子として送り出すときは,双方が共同で行わなければならない。実父母の一方が不明,又は探し出すことができないときは,片方によって養子として送り出すことができる。
第1098条(養親となる者の条件)
養親となる者は,次に掲げる条件を同時に具備しなければならない。
⑴ 子がいない,又は⚑人しかいないこと
⑵ 養子をxx・教育及び保護する能力を有すること
⑶ 医学的見地からみて,養子縁組すべきでない疾病がないこと
⑷ 養子の健やかな成長に不利な違法犯罪記録がないこと
⑸ 30歳以上であること
第1099条(血族の子を養子とする場合)
xx以内の同世代の傍系血族の子を養子
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
とするときは,本法第1093条第⚓号,第 1094条第⚓号及び第1102条の規定の制限を受けない。
華僑がxx以内の同世代の傍系血族の子を養子とするときは,本法第1098条第⚑号の規定の制限も受けない。
第1100条(養子の数への制限)
子のいない養親は,⚒名を養子とすることができる。子のいる養親は,⚑名の養子のみと縁組ができる。
孤児,障害を持つ未xx者又は児童福祉機構が養育する実父母を探し出すことのできない未xx者を養子とするときは,前項及び本法第1098条第⚑号の規定の制限を受けない。
第1101条(配偶者のある者が養子縁組をする場合)
配偶者のある者が養子縁組をするときは,夫婦が共同で行わなければならない。第1102条(配偶者のない者が異性の子を養
子とする場合)
配偶者のない者が異性の子を養子とするときは,養子となる者と養親となる者の年齢差は40以上でなければならない。
第1103条(継父母がxxを養子とする場合)継父又は継母は,xxxx父母の同意を 経て,xxを養子とすることができ,かつ本法第1093条第⚓号,第1094条第⚓号,第 1098条及び第1100条第⚑項の規定の制限を
受けない。
第1104条(自由意思の尊重)
養親の養子縁組と養子の送り出しは,その双方の自由意思によらなければならない。
⚘歳以上の未xx者を養子とするときは,養子となる者の同意を得なければならない。第1105条(養子の登記等)
養子縁組は県クラス以上の人民政府の民政部門で登記を行わなければならない。養
子縁組は,登記の日より成立する。
実父母を探し出すことのできない未xx者を養子とする場合は,登記を行う民政部門は,登記を行う前に公告しなければならない。
養子縁組の当事者が養子縁組の協議書の締結を望むときは,養子縁組の協議書を締結することができる。
養子縁組の当事者の全員又は一方が養子縁組の公証手続を求める場合は,養子縁組の公証を行わなければならない。
県クラス以上の人民政府の民政部門は,法に従い養子縁組のアセスメントを行わなければならない。
第1106条(養子の戸籍登記)
養子縁組の成立後,公安機関は国の関連規定に従い,養子のために戸籍の登記を行わなければならない。
第1107条(孤児等のxx関係の法適用)
孤児又は実父母にxx能力のない子を,実父母の親族・友人がxxすることができる。xx者及び被xx者の関係は,本章の規定を適用しない。
第1108条(優先的xxx)
配偶者の一方が死亡し,他方が未xx者の子を養子として送り出す場合は,死亡した一方の父母が優先的にxxする権利を有する。
第1109条(外国籍の養親)
外国人は,法に従い中華人民共和国において養子縁組をすることができる。
外国人が中華人民共和国において養子縁組をするときは,その所在国の主管機関の当該国の法律に従った審査承認を経なければならない。養親となる者は,その所在国の権限ある機関が発行したその年齢,婚姻,職業,財産,健康,過去に刑事処罰を受けたことがあるか否か等の状況を証明す
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
x資料を提出しなければならず,かつ書面で養子を送り出す者と協議書を締結し,自ら省,自治区,直轄市の人民政府の民政部門で登記を行わなければならない。
前項が規定する証明資料は,養親となる者の所在国の外交機関又は外交機関が授権した機構の認証を経なければならず,かつ中華人民共和国の当該国の駐在公館の認証を経なければならない。但し,国に別段の規定がある場合を除く。
第1110条(養子縁組の守秘義務)
養親となる者,養子を送り出す者が養子縁組の秘密を守るよう要求した場合は,その他の者は,その意思を尊重し,秘密を漏洩してはならない。
第⚒節 養子縁組の効力第1111条(適用規定等)
養子縁組が成立した日より,養親と養子との間の権利義務関係は,本法の父母・子の関係に関連する規定を適用する。養子と養親の近親者との間の権利義務関係は,本法の子と父母の近親者との関係に関連する規定を適用する。
養子と実父母及びその他の近親者との間の権利義務関係は,養子縁組の成立により消滅する。
第1112条(養子の氏)
養子はxx又は養母の氏に従うことができ,当事者が協議して一致すれば,従来の氏を継続することもできる。
第1113条(養子縁組の無効)
本法第⚑編が規定する民事法律行為の無効に関連する事由が生じたとき,又は本編の規定に違反した養子縁組は,無効とする。
無効な養子縁組は,初めから法的拘束力を有しない。
第⚓節 養子縁組の解消 第1114条(解消の制限等)
養親は養子がxxに達するまで,養子縁組を解消することができない。但し,養親と養子を送り出す者が協議して解消する場合を除く。養子が⚘歳以上の場合は,本人の同意を経なければならない。
養親がxx義務を履行せず,虐待・遺棄等の未xxの養子の合法的な権利利益を侵害する行為を行った場合は,養子を送り出す者は,養子養親間の養子縁組の解消を求める権利を有する。養子を送り出す者と養親が養子縁組の解消に関する協議に達することができないときは,人民法院に訴訟を提起することができる。
第1115条(養親と成人養子の関係の悪化)養親と成人した養子の関係が悪化し,共 同生活ができないときは,協議して養子縁組を解消することができる。協議に達することができない場合は,人民法院に訴訟を
提起することができる。
第1116条(解消の登記)
当事者が協議して養子縁組を解消する場合は,民政部門へ赴き養子縁組の解消の登記を行わなければならない。
第1117条(解消後の権利義務関係)
養子縁組の解消後,養子と養親及びその他の近親者間の権利義務関係は直ちに消滅し,実父母及びその他の近親者間の権利義務関係は自動的に回復する。但し,成人した養子と実父母及びその他の近親者間の権利義務関係が回復するか否かについては,協議によって確定することができる。
第1118条(解消後の生活費の支払及びxx費の補償)
養子縁組の解消後,養親のxxによって成人に達した養子は,労働能力と生活の糧を欠く養親に対し,生活費を支払わなけれ
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
ばならない。養子の成人後,養親への虐待・遺棄により養子縁組を解消する場合は,養親は養子に養子縁組期間中に支出したxx費の補償を求めることができる。
実父母が養子縁組の解消を求める場合は,養親は実父母に養子縁組期間中に支出したxx費について適切な額の補償を求めることができる。但し,養親の養子への虐待・遺棄によって養子縁組を解消した場合を除く。
第⚖編 相続
第⚑章 一般規定
第1119条(適用範囲)
本編は,相続から生じた民事関係を調整する。
第1120条(相続権の保護)
国は,自然人の相続権を保護する。
第1121条(相続の開始時等)
相続は,被相続人の死亡したときより開始する。
相互に相続関係にあるxxが同一の事件において死亡し,死亡の時間を確定することができない場合は,他に相続人のいない者が先に死亡したものと推定する。全員に他の相続人がおり,世代が異なる場合は,尊属が先に死亡したものと推定する。世代が同一の場合は,同時に死亡したものと推定し,相互に相続は生じないものとする。第1122条(遺産)
遺産とは,自然人の死亡時に遺留した個人の合法的財産である。
法律の規定又はその性質によって相続してはならない遺産は,相続することができない。
第1123条(遺言等の優先順位)
相続開始後は,法定相続に従い行う。遺
言がある場合は,遺言相続又は遺贈に従い行う。遺贈扶養協議書があるときは,協議書に従い行う。
第1124条(相続・遺贈の放棄)
相続開始後に相続人が相続を放棄する場合は,遺産を処理する前に書面によって相続放棄の表示を行わなければならない。表示を行わない場合は,遺産を相続するものとみなす。
受遺者は,遺贈を知った日より60日以内に遺贈を受領又は放棄の表示を行わなければならない。期限内に表示を行わない場合は,遺贈を放棄するものとみなす。
第1125条(相続欠格事由)
相続人が次に掲げる行為のいずれかを行ったときは,相続権を喪失する。
⑴ 被相続人を故意に殺害したとき
⑵ 遺産争奪のために他の相続人を殺害したとき
⑶ 被相続人を遺棄したとき,又は被相続人を虐待し情状が重大なとき
⑷ 遺言を偽造,改竄,隠匿又は破棄し,情状が重大なとき
⑸ 詐欺,脅迫の手段によって被相続人の遺言の設立・変更又は撤回を強制又は妨害し,情状が重大なとき
相続人が前項第⚓号から第⚕号の行為を行ったが,真剣に悔い改め,被相続人が許し又は後に相続人として遺言に記載した場合は,当該相続人の相続権は喪失しない。受遺者が本条第⚑項の規定する行為を 行った場合は,遺贈を受け取る権利は喪失
する。
第⚒章 法定相続
第1126条(男女平等原則)
相続権は,男女平等である。
第1127条(法定相続の順位等)
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
x産は,次に掲げる順位に従い相続する。
⑴ 第⚑順位:配偶者,子,父母
⑵ 第⚒順位:兄弟姉妹,祖父母,外祖父母
相続開始後は,第⚑順位の相続人が相続し,第⚒順位の相続人は相続しない。第⚑順位の相続人による相続がない場合は,第
⚒順位の相続人が相続する。
本編がいう子には,嫡出子,非嫡出子,養子及び扶養関係にあるxxxxまれる。本編がいう父母には,実父母,養親及び
扶養関係にある継父母が含まれる。
本編がいう兄弟姉妹には,同父母の兄弟姉妹,同父異母又は同母異父の兄弟姉妹,養兄弟姉妹,扶養関係にある継兄弟姉妹が含まれる。
第1128条(代襲相続)
被相続人の子が被相続人より先に死亡した場合は,被相続人の子の直系卑属が代襲相続する。
被相続人の兄弟姉妹が被相続人より先に死亡した場合は,被相続人の兄弟姉妹の子が代襲相続する。
代襲相続人は,一般に被代襲相続人が相続する権利のある遺産分のみを相続することができる。
第1129条(第⚑順位相続人の例外)
配偶者を亡くした妻が夫の父母に対し,配偶者を亡くした夫が妻の父母に対し,主な扶養義務を果たしたときは,第⚑順位の相続人となる。
第1130条(相続分均等の原則及びその例外)
同一順位の相続人の遺産相続分は,一般に均等とする。
生活に特殊な困難があり,かつ労働能力を欠く相続人に対しては,遺産を分配するときに,配慮をしなければならない。
被相続人に主な扶養義務を果たし,又は
被相続人と共同生活をしていた相続人に対しては,遺産を分配するときに,多く分けることができる。
扶養能力及び扶養の条件を持つ相続人が,扶養義務を果たさない場合は,遺産を分配するときに,分けない又は少なく分けることができる。
相続人が協議して同意した場合は,均等にしないこともできる。
第1131条(非相続人への遺産配分)
相続人以外の被相続人の扶養に頼っていた者,又は相続人以外の被相続人の扶養を多く行った者に対して,適当な遺産を分けることができる。
第1132条(遺産分割の原則及び紛争解決方法)相続人は,相互に寛容心を持ちつつ譲り 合い,和睦と団結の精神に基づいて,協議して相続問題を処理しなければならない。遺産分割の時点,方法,相続分については,相続人が協議して確定する。協議が調わない場合は,人民調停委員会が調停し,又は人民法院に訴訟を提起することができる。
第⚓章 遺言相続と遺贈
第1133条(遺言相続)
自然人は,本法の規定に従い遺言を作成し個人の財産を処分することができ,かつ遺言執行者を指定することができる。
自然人は,遺言を作成し,法定相続人の
⚑人又はxxを指定して個人の財産を相続させることができる。
自然人は,遺言を作成し,個人の財産を国・集団又は法定相続人以外の組織・個人に贈与することができる。
自然人は,法に従い遺言信託を設定することができる。
第1134条(自筆遺言)
自筆遺言は,遺言者が自ら書き,署名
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し,年・月・日を明記する。
第1135条(代書遺言)
代書遺言は,⚒名以上の証人が立ち合い,その内の⚑名が代書し,かつ遺言者・代書者及びその他の証人が署名し,年・月・日を明記する。
第1136条(プリントアウト遺言)
プリントアウト遺言は,⚒名以上の証人が立ち会わなければならない。遺言者及び証人は遺言の全頁に署名し,年・月・日を明記しなければならない。
第1137条(録音録画遺言)
録音録画の形式によって遺言を作成する場合は,⚒名以上の証人が立ち会わなければならない。遺言者及び証人は,録音録画の中にその氏名又は肖像,及び年・月・日を記録しなければならない。
第1138条(危急時の口頭での遺言)
遺言者は,危急の状況において口頭での遺言を作成することができる。口頭での遺言は,⚒名以上の証人が立ち会わなければならない。危急の状況が解消した後,遺言者が書面又は録音録画の形式によって遺言を作成することできる場合は,口頭でなされた遺言は無効とする。
第1139条(公証遺言)
公証遺言は,遺言者が公証機構を経て行う。
第1140条(遺言作成時の証人)
次に掲げる者は,遺言の証人となることができない。
⑴ 民事行為無能力者,制限民事行為能力者及びその他の立ち会いをする能力を有しない者
⑵ 相続人,受遺者
⑶ 相続人,受遺者と利害関係を有する者
第1141条(必留分)
遺言は,労働能力を欠き,かつ生活の糧を有しない相続人のために必要な遺産分を
保留しなければならない。
第1142条(遺言の撤回・変更)
遺言者は,自ら作成した遺言を撤回,変更することができる。
遺言作成後,遺言者が遺言の内容に反する民事法律行為を行った場合は,遺言における関連する内容の撤回とみなす。
複数の遺言が作成され,内容が相互に抵触する場合は,最後の遺言による。
第1143条(遺言の無効)
民事行為無能力者又は制限民事行為能力者が作成した遺言は,無効である。
遺言は遺言者のxxの意思によらなければならず,詐欺・脅迫を受けて作成した遺言は無効である。
偽造した遺言は,無効である。
遺言が改竄された場合は,改竄された内容は無効である。
第1144条(負担付きの遺言・遺贈)
負担付きの遺言相続又は遺贈の場合は,相続人又は受遺者は義務を履行しなければならない。正当な理由なく義務を履行しない場合は,利害関係者又は関係する組織の請求を経て,人民法院は,その義務付き部分の遺産取得の権利を取り消すことができる。
第⚔章 遺産の処理
第1145条(遺産管理人)
相続開始後に,遺言執行者は遺産管理人となる。遺言執行者がいない場合は,相続人は遅滞なく遺産管理人を選出しなければならない。相続人が選出しない場合は,相続人が共同で遺産管理人を担当する。相続人がおらず,又は相続人全員が相続放棄をする場合は,被相続人生前の住所地の民政部門又は村民委員会が遺産管理人を担当する。第1146条(遺産管理人の指定)
遺産管理人の確定について争いがある場
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・朱)
合は,利害関係者は遺産管理人の指定を人民法院に申請することができる。
第1147条(遺産管理人の責務)
遺産管理人は,次に掲げる責務を履行しなければならない。
⑴ 遺産を整理し,かつ遺産リストを作成すること
⑵ 相続人に遺産の状況を報告すること
⑶ 必要な措置を講じて遺産の毀損・滅失を防止すること
⑷ 被相続人の債権債務を処理すること
⑸ 遺言又は法律の規定に従い遺産を分割すること
⑹ 遺産管理に関するその他の必要な行為を行うこと
第1148条(遺産管理人の民事責任)
遺産管理人は,法に従い責務を履行しなければならず,故意又は重大な過失によって相続人,受遺者,債権者に損害をもたらした場合は,民事責任を負わなければならない。
第1149条(遺産管理人の報酬)
遺産管理人は,法律の規定又は約定に従い報酬を得ることができる。
第1150条(相続開始後の通知)
相続開始後に,被相続人の死亡を知った相続人は,遅滞なくその他の相続人及び遺言執行者に通知しなければならない。相続人の中に被相続人の死亡を知る者がいない場合,又は被相続人の死亡を知っても通知することができない場合は,被相続人の生前の職場又は住所地の居民委員会,村民委員会が通知の責任を負う。
第1151条(遺産の善管義務)
遺産を保有している者は,遺産を適切に保管しなければならず,いかなる組織又は個人も横領又は争奪をしてはならない。
第1152条(遺産分割前に相続人が死亡した場合の遺産処理)
相続開始後に,相続人が遺産分割前に死亡し,かつ相続放棄をしなかった場合は,当該相続人の相続すべき財産はその相続人に移転する。但し,遺言にその他の処分がある場合を除く。
第1153条(共有財産の分割義務)
夫婦共有の財産は,約定があるものを除き,遺産分割のときに,先に共有財産の半分を取り出し配偶者の所有としなければならず,その余りは被相続人の財産とする。遺産が家族共有財産に属する場合は,遺 産分割のときに,先に他人の財産を取り出
さなければならない。
第1154条(遺言等がある場合の法定相続に従う遺産)
次に掲げる事由のいずれかがあるときは,遺産における関係する部分は法定相続に従い行わなければならない。
⑴ 遺言相続人が相続を放棄し,又は受遺者が遺贈を放棄するとき
⑵ 遺言相続人が相続権を喪失し,又は受遺者が遺贈を受け取る権利を喪失するとき
⑶ 遺言相続人,受遺者が遺言者より先に死亡し又は終了するとき
⑷ 遺言の無効部分が及ぶ遺産
⑸ 遺言で未処分の遺産
第1155条(胎児の相続分)
遺産分割時に,胎児の相続分を留保しなければならない。分娩時に胎児が死亡している場合は,留保した分は法定相続に従い行う。
第1156条(遺産分割の原則)
遺産分割は,生産と生活の需要に有利でなければならず,遺産の効用を損なってはならない。
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分割に適しない遺産は,換価・適切な補償又は共有等の方法によって処理することができる。
第1157条(再婚した配偶者の相続権)
夫婦の一方が死亡後に,他方が再婚した場合は,相続する財産を処分する権利を有し,いかなる組織又は個人も干渉してはならない。
第1158条(遺贈扶養協定書)
自然人は,相続人以外の組織又は個人と遺贈扶養協定書を締結することができる。協定書に従い,当該組織又は個人は当該自然人の生前扶養及び死後葬儀の義務を負い,遺贈を受け取る権利を有する。
第1159条(遺産分割時の優先事項)
遺産分割において,被相続人の法に従い納付すべき税金及び債務を弁済しなければならない。但し,労働能力を欠き,かつ生活の糧を有しない相続人のために必要な遺産を留保しなければならない。
第1160条(相続する者のいない財産の処分)相続する者がなく,かつ受遺者のいない 財産は,国の所有となり,公益事業に用いる。死者が生前に集団所有制の組織の構成員であった場合は,所在していた集団所有
制の組織の所有に帰する。
第1161条(限定承認)
相続人は,得る遺産の実際の価値を限度に被相続人の法に従い納付すべき税金及び債務を弁済する。遺産の実際の価値を超過する部分については,相続人が自ら返済する場合はこの限りでない。
相続人が相続放棄する場合は,被相続人の法に従い納付すべき税金及び債務を弁済する責任を負わなくてもよい。
第1162条(遺贈執行時の弁済義務)
遺贈の執行は,遺贈者の法に従い納付すべき税金及び債務の弁済を妨害してはいけ
ない。
第1163条(法定相続・遺言相続及び遺贈共存時の弁済義務)
法定相続・遺言相続及び遺贈が同時に存在する場合は,法定相続人によって被相続人の法に従い納付すべき税金及び債務を弁済する。法定相続遺産の実際の価値を超過する部分については,遺言相続人と受遺者が遺産取得の割合に応じて弁済する。
第⚗編 権利侵害責任(不法行為)
第⚑章 一般規定
第1164条(適用範囲)
本編は,民事権利利益の侵害から生じた民事関係を調整する。
第1165条(過失責任原則と中間責任)
行為者が過失により他人の民事権利利益を侵害し,損害をもたらしたときは,権利侵害責任を負わなければならない。
法律の規定に従い行為者に過失があることが推定され,行為者が自己に過失がないことを証明できない場合は,権利侵害責任を負わなければならない。
第1166条(無過失責任原則)
行為者が他人の民事権利利益に損害をもたらし,行為者の過失の有無を問わず,法律が権利侵害責任を負わなければならないと規定している場合は,その規定に従う。第1167条(侵害の停止・妨害の排除・危険
の除去に関する特則)
権利侵害行為が他人の人身・財産の安全を脅かす場合は,被侵害者は,侵害者に対し,侵害の停止,妨害の排除,危険の除去等の権利侵害責任を負うよう請求する権利を有する。
第1168条(共同不法行為)
⚒人以上が共同で権利侵害行為を実施
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
x,他人に損害をもたらしたときは,連帯して責任を負わなければならない。
第1169条(教唆者・幇助者の責任)
他人を教唆・幇助して権利侵害行為を実施させたときは,行為者と連帯して責任を負わなければならない。
民事行為無能力者,制限民事行為能力者を教唆・幇助して権利侵害行為を実施させたときは,権利侵害責任を負わなければならない。当該民事行為無能力者,制限民事行為能力者の後見人が後見の責務を尽くさなかったときは,相応の責任を負わなければならない。
第1170条(加害者不明時の責任)
⚒人以上で他人の人身・財産の安全を脅かす行為を実施し,そのうち⚑人又はxxの行為が他人に損害をもたらした場合において,具体的な侵害者が特定できるときは,その侵害者が責任を負わなければならない。具体的な侵害者を特定することができないときは,行為者が連帯して責任を負う。 第1171条(競合的権利利益侵害行為の責任
―その一)
⚒人以上がそれぞれ権利侵害行為を実施し,同一の損害をもたらし,各人の権利侵害行為がいずれも全損害をもたらすに足りる場合は,行為者が連帯して責任を負う。第1172条(競合的権利利益侵害行為の責任
―その二)
⚒人以上がそれぞれ権利侵害行為を実施し,同一の損害をもたらし,責任の大小を確定することができる場合は,各自が相応の責任を負う。責任の大小を確定することができない場合は,均等に責任を負う。 第1173条(責任の軽減)
被侵害者は同一の損害の発生又は拡大につき過失がある場合は,侵害者の責任を軽減することができる。
第1174条(責任の免除)
損害が被害者の故意によりもたらされた場合は,行為者は責任を負わない。
第1175条(第三者の権利利益侵害責任)
損害が第三者によりもたらされた場合は,第三者が権利侵害責任を負わなければならない。
第1176条(リスクのある活動参加時の責任)一定のリスクがある文化スポーツ活動に 参加し,他の参加者の行為によって損害を受けた場合は,被害者はその他の参加者に権利侵害の責任を負うよう請求してはならない。但し,その他の参加者が損害の発生
につき故意又は重大な過失がある場合を除く。活動を組織する者の責任は,本法第1198
条から第1201条の規定を適用する。
第1177条(緊急時の措置)
合法的な権利利益が侵害され,状況が緊急で,かつ直ぐに国家機関の保護を受けられず,直ちに措置を講じなければその合法的な権利利益に補填することのできない損害をもたらす場合は,被害者は,自己の合法的な権利利益を保護する必要な範囲内において,侵害者の財物を差し押さえる等の合理的な措置を講じることができる。但し,関係する国家機関に処理するよう遅滞なく請求しなければならない。
被害者が講じた措置が不当のため他人に損害をもたらした場合は,権利侵害責任を負わなければならない。
第1178条(免責・責任軽減の特別規定の適用)本法及びその他の法律に免責又は責任軽 減の事由に関する別段の定めがある場合
は,その規定に従う。
第⚒章 損害賠償
第1179条(人身損害の賠償内容)
他人を侵害して人身損害をもたらした場
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合は,医療費,看護費,交通費,栄養費,入院食事補助費等の治療及びリハビリテーションのために支出した合理的な費用並びに休業により減少した収入を賠償しなければならない。後遺障害が生じた場合は,更に補助用具費用及び後遺障害賠償金を賠償しなければならない。死亡した場合は,更に葬祭費及び死亡賠償金を賠償しなければならない。
第1180条(複数の死者が生じた際の死亡賠償金)
同一の権利侵害行為により多数の死者が生じた場合は,同じ金額で死亡賠償金を確定することができる。
第1181条(被侵害者の権利の承継)
被侵害者が死亡したときは,その近親者は,侵害者に対し,権利侵害責任を負うよう請求する権利を有する。被侵害者が組織であり,当該組織が分立・合併した場合は,権利を承継した組織は,侵害者に対し,権利侵害責任を負うよう請求する権利を有する。
被侵害者が死亡した場合は,被侵害者の医療費・葬祭費等の合理的な費用を支払った者は,侵害者に対し,その費用を賠償するよう請求する権利を有する。但し,侵害者が当該費用をすでに支払った場合を除く。第1182条(人身侵害における財産的損害の
算定法)
他人の人身的権利利益を侵害して財産的損害をもたらした場合は,これにより被侵害者が受けた損失,又は侵害者が得た利益に基づき賠償する。被侵害者が受けた損失及び侵害者がこれにより受けた利益の確定ができず,賠償額につき被侵害者と侵害者の協議が調わず,人民法院に訴訟を提起した場合は,人民法院が実際の状況に基づき賠償額を確定する。
第1183条(精神的損害賠償)
自然人の人身的権利利益を侵害して重大な精神的損害をもたらした場合は,被侵害者は,精神的損害賠償を請求する権利を有する。
故意又は重大な過失によって自然人の人身的意味を持つ特定の物を侵害し,重大な精神的損害をもたらしたときは,被侵害者は,精神的損害賠償を請求する権利を有する。第1184条(財産的損害の算定基準時)
他人の財産を侵害した場合は,財産の損失は,損失が生じた時の市場価格又はその他の合理的な方式により算定する。
第1185条(知的財産権侵害時の懲罰的損害賠償)
故意によって他人の知的財産権を侵害して情状が重大な場合は,被侵害者は,相応の懲罰的損害賠償を請求する権利を有する。第1186条(xx原則)
被害者及び行為者のいずれにも損害の発生につき過失がない場合は,法律の規定に従い双方がその損失を分担する。
第1187条(損害賠償金の支払方法)
損害発生後に,当事者は,賠償金の支払方法を協議することができる。協議が調わない場合は,賠償金を一括払いしなければならない。一括払いが確かに困難な場合は,分割して支払うことができる。但し,被侵害者は相応の担保の提供を請求する権利を有する。
第⚓章 責任主体の特別規定
第1188条(後見人の責任)
民事行為無能力者,制限民事行為能力者が他人に損害をもたらした場合は,後見人が権利侵害責任を負う。後見人がその責務を尽くした場合は,その権利侵害責任を軽減することができる。
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
財産を有する民事行為無能力者,制限民事行為能力者が他人に損害をもたらした場合は,本人の財産から賠償金を支払う。不足の部分については,その後見人が賠償する。第1189条(後見の責務の委託後の責任)
民事行為無能力者,制限民事行為能力者が他人に損害をもたらし,後見人が後見の責務を他人に委託した場合は,後見人が権利侵害責任を負わなければならない。受託者に過失がある場合は,相応の責任を負う。第1190条(一時的な意識喪失等の場合の責任)
完全民事行為能力者が自己の行為を一時的に弁識することができず,又は制御不能により他人に損害をもたらし,過失がある場合は,権利侵害責任を負わなければならない。過失がない場合は,行為者の経済状況に基づき,被害者に対し適当な補償を行う。
完全民事行為能力者が酒酔い,麻酔薬又は向精神薬の濫用のため,自己の行為を一時的に弁識することができず,又は制御不能により他人に損害をもたらした場合は,権利侵害責任を負わなければならない。 第1191条(使用者責任)
使用者の従業員が職務の実行により他人に損害をもたらした場合は,使用者が権利侵害責任を負う。使用者が権利侵害責任を負った後,故意又は重大な過失のある従業員に求償することができる。
労務派遣期間中に,派遣された従業員が職務の実行により他人に損害をもたらした場合は,労務派遣を受け入れる使用者が権利侵害責任を負う。労務派遣機構に過失があるときは,相応の責任を負う。
第1192条(個人xxx関係に関する責任)個人間に労務関係が形成され,労務を提 供する側が労務により他人に損害をもたらした場合は,労務の提供を受け入れる側が権利侵害責任を負う。労務の提供を受け入
れる側が権利侵害責任を負った後,故意又は重大な過失のある労務提供側に求償することができる。労務提供側が労務により損害を受けた場合は,双方は各自の過失に基づき相応の責任を負う。
労務を提供する期間において,第三者の行為によって労務提供側に損害をもたらした場合は,労務提供側が第三者に権利侵害責任を請求する権利を有し,労務を受け入れる側に補償の給付を請求する権利も有する。労務を受け入れる側が補償した後,第三者に求償することができる。
第1193条(請負契約履行中の責任)
請負人は,仕事を行う期間中に第三者又は自己に損害をもたらした場合は,注文者は権利侵害責任を負わない。但し,注文者は,注文・指示又は選任について過失がある場合は,相応の責任を負わなければならない。
第1194条(インターネットによる権利侵害)ネットワークユーザー,ネットワーク サービス提供者が,ネットワークを利用して他人の民事権利利益を侵害した場合は,権利侵害責任を負わなければならない。法律に別段の定めがある場合は,その規定に
従う。
第1195条(ネットワーク環境における権利者の講じうる措置等)
ネットワークユーザーがネットワークサービスを利用して権利侵害行為を行った場合は,権利者は削除・遮蔽・接続の切断等の必要な措置を講じるようネットワークサービス提供者に通知する権利を有する。通知には,権利侵害行為の成立に関する初歩的な証拠及び権利者の真の身分情報が含まれなければならない。
ネットワークサービス提供者は,通知を受けた後,遅滞なく関連するネットワーク
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
ユーザーにその通知を転送し,かつ権利侵害行為の成立に関する初歩的な証拠及びサービスの種類に基づき必要な措置を講じなければならない。遅滞なく必要な措置を講じなかった場合は,拡大した損害について当該ネットワークユーザーと連帯して責任を負う。
権利者は,誤った通知によってネットワークユーザー又はネットワークサービス提供者に損害をもたらした場合は,権利侵害責任を負わなければならない。法律に別段の定めがある場合は,その規定に従う。第1196条(ネットワーク使用者による声明等)
ネットワークユーザーは,転送された通知を受領後に,ネットワークサービス提供者に権利侵害行為の不存在声明を提示することができる。声明には権利侵害行為の不存在に関する初歩的な証拠及びネットワークユーザーの真の身分情報が含まれなければならない。
ネットワークサービス提供者は声明を受領後,通知を出した権利者に当該声明を転送し,かつ関係する部門への告発,又は人民法院への提訴ができることを告知しなければならない。ネットワークサービス提供者は,転送された声明が権利者に到達後の合理的な期間内に,権利者の告発又は提訴の通知を受領していない場合は,遅滞なく講じた措置を終了しなければならない。 第1197条(悪意・過失のあるネットワーク
サービス提供者の責任)
ネットワークサービス提供者は,ネットワークユーザーがそのネットワークサービスを利用して他人の民事権利利益を侵害していることを知り又は知り得べきにもかかわらず,必要な措置を講じなかった場合は,当該ネットワークユーザーと連帯して責任を負う。
第1198条(安全配慮義務)
ホテル,デパート,銀行,駅,空港,体育館,娯楽施設等の営業施設,公共の場所の経営者,管理者又は大衆的活動の組織者は,安全配慮義務を尽くさず,他人に損害をもたらした場合は,権利侵害責任を負わなければならない。
第三者の行為により他人に損害をもたらした場合は,第三者が権利侵害責任を負う。経営者,管理者又は組織者が安全配慮義務を尽くさなかった場合は,相応の補充的責任を負う。経営者,管理者又は組織者が補充的責任を負った後,第三者に求償することができる。
第1199条(民事行為無能力者の人身損害と教育機関の責任)
民事行為無能力者が幼稚園,学校又はその他の教育機関で学習・生活をしている際に人身損害を受けた場合は,幼稚園,学校又はその他の教育機関は,権利侵害責任を負わなければならない。但し,教育・管理の職責を果たしたことを証明できる場合は,権利侵害責任を負わない。
第1200条(制限民事行為能力者の人身損害と教育機関の責任)
制限民事行為能力者が学校又はその他の教育機関で学習・生活している際に人身損害を受け,学校又はその他の教育機関が教育・管理の職責を果たさなかった場合は,権利侵害責任を負わなければならない。 第1201条(第三者が行った人身損害と教育
機関の責任)
民事行為無能力者又は制限民事行為能力者が幼稚園,学校又はその他の教育機関で学習・生活している際に,幼稚園,学校又はその他の教育機関以外の第三者により人身損害を受けた場合は,その第三者が権利侵害責任を負う。幼稚園,学校又はその他
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
の教育機関が管理の職責を果たさなかった場合は,相応の補充的責任を負う。幼稚園,学校又はその他の教育機関が補充的責任を負った後,第三者に求償することができる。
第⚔章 製造物責任
第1202条(生産者の責任)
製造物に欠陥が存在することにより他人に損害をもたらした場合は,生産者は,権利侵害責任を負わなければならない。
第1203条(損害賠償請求権の行使・求償権)製造物に欠陥が存在することにより他人 に損害をもたらした場合は,被侵害者は,製造物の生産者に賠償を請求することができ,製品の販売者に賠償を請求することも
できる。
製造物の欠陥が生産者により生じた場合は,販売者は賠償した後に生産者に対し求償する権利を有する。販売者の過失により製造物に欠陥が生じた場合は,生産者は賠償した後に販売者に対し求償する権利を有する。
第1204条(運送人・保管者等の第三者に対する求償権)
運送人・保管者等の第三者の過失により製造物に欠陥が生じ,他人に損害をもたらした場合は,製造物の生産者・販売者は,賠償した後に第三者に対し求償する権利を有する。
第1205条(侵害の停止・妨害の排除・危険の除去)
製造物の欠陥が他人の人身・財産の安全を脅かす場合は,被侵害者は,生産者・販売者に対し,侵害の停止,妨害の排除,危険の除去等の権利侵害責任を負うよう請求する権利を有する。
第1206条(流通後に欠陥が発見された場合の責任)
製造物が流通した後に欠陥の存在が発見された場合は,生産者・販売者は,遅滞なく販売の停止,警告,リコール等の救済措置をとらなければならない。遅滞なく救済措置をとらず,又は救済措置が不十分であったことにより損害の拡大をもたらした場合は,拡大した損害についても権利侵害責任を負わなければならない。
前項の規定に従いリコール措置を講じた場合は,生産者・販売者は,被侵害者がこれによって支出した必要な費用を負担しなければならない。
第1207条(懲罰的損害賠償)
製造物に欠陥があることを知りながら,生産販売を行い,又は前条の規定に従い有効な救済措置を講じずに,他人を死亡させ又は健康に重大な損害をもたらした場合は,被侵害者は相応の懲罰的損害賠償を請求する権利を有する。
第⚕章 自動車交通事故責任
第1208条(適用する規定)
自動車により交通事故が発生し,損害をもたらした場合は,道路交通安全法及び本法の関連規定に従い賠償責任を負う。
第1209条(自動車の賃貸借に関する責任)賃貸・使用貸借等の事由により,自動車 の所有者・管理者と使用者が同一でないときに,交通事故が発生し損害をもたらし,その責任が自動車側にある場合は,自動車の使用者が賠償責任を負う。損害の発生につき自動車の所有者・管理者に過失がある
場合は,相応の賠償責任を負う。
第1210条(自動車譲渡後の責任)
当事者間ですでに売買又はその他の方法により自動車を譲渡し,かつ引き渡した
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
が,所有権移転登記を行っていないときに交通事故が発生し損害をもたらし,その責任が自動車側にある場合は,譲受人が賠償責任を負う。
第1211条(名義借り)
名義借りの形式によって道路運送の経営活動に従事する自動車につき,交通事故が発生し損害をもたらし,その責任が自動車側にある場合は,名義借り人及び名義貸し人が連帯して責任を負う。
第1212条(無断使用の自動車の責任)
許可を得ずに他人の自動車を運転して交通事故が発生し損害をもたらし,その責任が自動車側にある場合は,自動車の使用者が賠償責任を負う。損害の発生につき自動車の所有者・管理者に過失がある場合は,相応の賠償責任を負う。但し,本章に別段の定めがある場合を除く。
第1213条(賠償者の順位)
自動車による交通事故が発生し損害をもたらし,その責任が自動車側にある場合は,加入した自動車強制保険の保険者が強制保険責任限度額の範囲内で賠償を行う。不足部分は,自動車商業保険の保険者が保険契約の約定に従い賠償を行う。さらに不足し,又は自動車商業保険に加入していない場合は,侵害者が賠償する。
第1214条(組立車・廃車の譲渡後の責任)
売買又はその他の方法によって組立車又は既に廃棄基準に達した自動車が譲渡され,交通事故が発生し損害をもたらした場合は,譲渡人と譲受人が連帯して責任を負う。 第1215条(盗難車の責任)
窃盗・強盗又は奪取された自動車の交通事故が発生し損害をもたらした場合は,窃盗・強盗又は奪取をした者が賠償責任を負う。窃盗・強盗又は奪取をした者が自動車の使用者と同一ではないとき,交通事故が
発生し損害をもたらし,その責任が自動車 側にある場合は,窃盗者・強盗者又は奪取者及び自動車の使用者が連帯して責任を負う。保険者が自動車強制保険責任限度額の範 囲内で救急費用を立て替えた場合は,交通事故の責任者に対し求償する権利を有する。
第1216条(加害者不明等の場合の責任)
自動車の運転者が交通事故発生後に逃走し,当該自動車が強制保険に加入している場合は,保険者は自動車強制保険責任限度額の範囲内で賠償を行う。自動車が不明である場合,強制保険に加入していない場合又は救急費用が自動車強制保険責任限度額の範囲を超過した場合において,被侵害者の人身死傷に関わる救助・葬祭等の費用が必要なときは,道路交通事故社会救助基金が立て替える。道路交通事故社会救助基金が立て替えた後,その管理機構は交通事故の責任者に対し求償する権利を有する。 第1217条(無償の同乗者への責任軽減)
非営業用自動車の交通事故が発生し,無償の同乗者に損害をもたらし,その責任が自動車側にある場合は,その賠償責任を軽減しなければならない。但し,自動車の使用者に故意又は重大な過失がある場合を除く。
第⚖章 医療損害責任
第1218条(医療機関の責任)
患者が診療活動中に損害を受け,医療機関又はその医療関係者に過失がある場合は,医療機関が賠償責任を負う。
第1219条(診療活動における説明義務)
医療関係者は,診療活動において,患者に対し病状及び医療措置を説明しなければならない。手術,特殊な検査,特殊な治療を実施する必要がある場合は,医療関係者は,遅滞なく患者に対し治療のリスク,代替的治療案等の状況を具体的に説明し,か
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
つその明確な同意を得なければならない。患者に説明することができない場合又は適さない場合は,患者の近親者に説明し,かつその明確な同意を得なければならない。医療関係者が前項の義務を尽くさず,患 者に損害をもたらした場合は,医療機関が
賠償責任を負わなければならない。
第1220条(緊急な状況の措置)
危篤状態にある患者の救命等の緊急な状況において,患者又はその近親者の意見を得ることができない場合は,医療機関の責任者又は授権された責任者の許可を得て,遅滞なく相応の医療措置を実施することができる。
第1221条(診療義務)
医療関係者は,診療活動において,当時の医療水準に相応する診療義務を尽くさず,患者に損害をもたらした場合は,医療機関が賠償責任を負わなければならない。第1222条(医療機関の過失の推定)
診療活動において患者に損害をもたらし,次に掲げる事由のいずれかが生じたときは,医療機関に過失があるものと推定する。
⑴ 法律,行政法規,規則及びその他の診療規範に関する規定に違反したとき
⑵ 紛争に関する診療資料を隠匿し又はその提供を拒絶したとき
⑶ 診療資料を遺失,偽造,改竄又は違法に廃棄したとき
第1223条(医薬品等の欠陥による損害の賠償)薬品,消毒製品,医療機器の欠陥又は不 合格の血液を輸血したことにより患者に損害をもたらした場合は,患者は,薬品販売許可の所持者,生産者,血液の供給機構に賠償を請求することができ,医療機関に賠償を請求することもできる。患者が医療機関に賠償を請求した場合,医療機関は賠償した後に責任のある薬品販売許可の所持
者,生産者,血液の供給機構に対し求償する権利を有する。
第1224条(医療機関の免責事由)
診療活動において患者に損害をもたらし,次に掲げる事由のいずれかが生じたとき,医療機関は,賠償責任を負わない。
⑴ 患者又はその近親者が,医療機関の診療規範に合致する診療に協力しないとき
⑵ 医療関係者が危篤状態にある患者の救命等の緊急な状況において,すでに合理的な診療義務を尽くしたとき
⑶ 当時の医療水準に鑑み,診療することが困難であったとき
前項第⚑号に掲げる事由において,医療機関又はその医療関係者にも過失があった場合は,相応の賠償責任を負わなければならない。
第1225条(診療資料等の取扱い)
医療機関及びその医療関係者は,規定に従い,入院日誌,医師の指示書,検査報告,手術及び麻酔の記録,病理資料,看護記録等の診療資料を記入し,かつ適切に保管しなければならない。
患者が前項の規定する診療資料の閲覧・複製を求める場合は,医療機関はこれを遅滞なく提供しなければならない。
第1226条(プライバシー及び個人情報の保護)医療機関及びその医療関係者は,患者の プライバシー及び個人情報を保護しなければならない。患者のプライバシー及び個人情報を漏洩し,又は患者の同意を得ずに患者の診療資料を公開した場合は,権利侵害
責任を負わなければならない。
第1227条(不必要な検査の禁止)
医療機関及びその医療関係者は,診療規範に反し不必要な検査を行ってはならない。
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
第1228条(医療機関及びその医療関係者の権利利益保護)
医療機関及びその医療関係者の合法的な権利利益は,法的保護を受ける。
医療秩序を攪乱し,医療関係者の業務・生活を妨害し,医療関係者の合法的な権利利益を侵害した場合は,法に従い法的責任を負わなければならない。
第⚗章 環境汚染及び生態破壊責任
第1229条(汚染・破壊者の責任)
環境汚染・生態破壊により他人に損害をもたらした場合は,侵害者は,権利侵害責任を負わなければならない。
第1230条(行為者が負う挙証責任)
環境汚染・生態破壊により紛争が発生した場合は,行為者は,法律が定める免責又は責任軽減の事由及びその行為と損害との間の因果関係の不存在につき,挙証責任を負わなければならない。
第1231条(共同侵害者の責任)
⚒人以上の侵害者が環境を汚染し,生態を破壊した場合は,その負う責任の大小は,汚染物の種類,濃度,排出量,生態破壊の方式,範囲,程度及びその行為の損害結果への作用等の要素により確定する。 第1232条(懲罰的損害賠償)
侵害者が法律の規定に違反し,故意の環境汚染・生態破壊により,重大な結果をもたらした場合は,被侵害者は,相応の懲罰的損害賠償を請求する権利を有する。
第1233条(第三者の過失による侵害)
第三者の過失により環境を汚染し,生態を破壊した場合は,被侵害者は,侵害者に対し賠償を請求することができ,第三者に賠償を請求することもできる。侵害者は賠償した後に,第三者に対し求償する権利を有する。
第1234条(生態環境の修復責任)
国の規定に違反して生態環境に損害をもたらし,生態環境が修復可能の場合は,国が定める機関又は法律が定める組織は,侵害者に合理的な期限内に修復の責任を負うよう請求する権利を有する。侵害者が期限内に修復しなかった場合,国が定める機関又は法律が定める組織は,自ら修復し,又は他人に委任して修復させることができ,所要の費用は侵害者が負担する。
第1235条(損失及び費用の算定)
国の規定に違反して生態環境に損害をもたらした場合は,国が定める機関又は法律が定める組織は,次に掲げる損失及び費用を侵害者に請求する権利を有する。
⑴ 生態環境が損害を受けてから修復完成までの間にそのサービス機能の喪失がもたらした損失
⑵ 生態環境の機能の永久的な損害がもたらした損失
⑶ 生態環境の損害の調査,アセスメント等の費用
⑷ 汚染を除去し,生態環境を修復する費用
⑸ 損害の発生及び拡大の防止に支払った合理的な費用
第⚘章 高度危険責任
第1236条(高度危険作③の従事者の責任)高度危険作業に従事し他人に損害をもた らした場合は,権利侵害責任を負わなけれ
ばならない。
第1237条(xx用核施設の責任)
xx用核施設又は核施設の核材料の搬入出のときに事故が発生し,他人に損害をもたらした場合は,xx用核施設の運営機構は,権利侵害責任を負わなければならない。但し,その損害が戦争,武装衝突,暴
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動等の事由又は被害者の故意によりもたらされたことを証明できる場合は,責任を負わない。
第1238条(xx用航空機の責任)
xx用航空機により他人に損害をもたらした場合は,xx用航空機の経営者は権利侵害責任を負わなければならない。但し,その損害が被害者の故意によりもたらされたことを証明できる場合は,責任を負わない。第1239条(高度危険物の占有・使用に関す
る責任)
可燃性,爆発性,猛毒性,高レベル放射性,強腐食性,高病原性等の高度危険物を占有又は使用し,他人に損害をもたらした場合は,占有者又は使用者が権利侵害責任を負わなければならない。但し,その損害が被害者の故意又は不可抗力によりもたらされたことを証明できる場合は,責任を負わない。損害の発生につき被侵害者に重大な過失がある場合は,占有者又は使用者の責任を軽減することができる。
第1240条(高所作③等に関する責任)
高所,高圧,地下の発掘作業に従事し,又は高速の軌道運送機具を使用し他人に損害をもたらした場合は,経営者は,権利侵害責任を負わなければならない。但し,その損害が被害者の故意又は不可抗力によりもたらされたことを証明できる場合は,責任を負わない。被侵害者に損害の発生につき重大な過失がある場合は,経営者の責任を軽減することができる。
第1241条(高度危険物の遺失・遺棄等に関する責任)
高度危険物を遺失又は遺棄し,他人に損害をもたらした場合は,所有者が権利侵害責任を負う。所有者が高度危険物を他人に渡し管理させた場合は,管理者が権利侵害責任を負う。所有者に過失がある場合は,
管理者と連帯して責任を負う。
第1242条(高度危険物の不法占有に関する責任)
高度危険物を不法に占有し他人に損害をもたらした場合は,不法占有者が権利侵害責任を負う。所有者・管理者が他人の不法占有を防止するために高度の注意義務を尽くしたことを証明できない場合は,不法占有者と連帯して責任を負わなければならない。第1243条(高度危険地域等への無断侵入に
関する責任)
許可を得ずに高度危険な活動が行われる区域又は高度危険物の保管区域に侵入し,損害を受けた場合において,管理者が既に万全な安全措置を講じ,かつ充分な警告の義務を尽くしたことを証明することができるときは,その責任を軽減し又は責任を免除することができる。
第1244条(賠償額に関する特則)
高度危険責任を負う場合において,法律が賠償の限度額を定めているときは,その規定に従う。但し,行為者に故意又は重大な過失がある場合を除く。
第⚙章 動物飼育損害責任
第1245条(動物の飼育者・管理者の責任)飼育している動物が他人に損害をもたら した場合は,動物の飼育者又は管理者は,権利侵害責任を負わなければならない。但し,その損害が被侵害者の故意又は重大な過失によりもたらされたことを証明することができる場合は,その責任を免除し又は
軽減することができる。
第1246条(安全措置の不備に関する責任)管理規定に違反して,動物に安全措置を 講じなかったことにより他人に損害をもたらした場合は,動物の飼育者又は管理者は,権利侵害責任を負わなければならな
立命館法学 2020 年 3 号(391号)
い。但し,被侵害者の故意によりもたらされたことを証明することができる場合は,その責任を軽減することができる。
第1247条(飼育禁止の危険な動物に関する責任)
飼育が禁止されている猛犬等の危険な動物が他人に損害をもたらした場合は,動物の飼育者又は管理者は,権利侵害責任を負わなければならない。
第1248条(動物園の動物に関する責任)
動物園の動物が他人に損害をもたらした場合は,動物園は権利侵害責任を負わなければならない。但し,管理の職責を果たしたことを証明できる場合は,権利侵害の責任を負わない。
第1249条(遺棄・逃走動物に関する責任)遺棄・逃走動物が遺棄され,又は逃走し ている間に他人に損害をもたらした場合は,動物の元の飼育者又は管理者は,権利
侵害責任を負わなければならない。
第1250条(第三者の過失による責任)
第三者の過失により動物が他人に損害をもたらした場合は,被侵害者は,動物の飼育者又は管理者に賠償を請求することができ,第三者に賠償を請求することもできる。動物の飼育者又は管理者は賠償後に,第三者に対し求償する権利を有する。
第1251条(動物飼育者の行為規範)
動物を飼育するときは,法律法規を遵守し,社会xxを尊重しなければならず,他人の生活を妨害してはならない。
第10章 建築物及び物件損害責任
第1252条(建築物等の倒壊に関する責任)建築物・構築物又はその他の施設が倒 壊・陥没し,他人に損害をもたらした場合は,建設業者と施工業者が連帯して責任を負う。但し,建設業者及び施工業者が品質
に欠陥がないことを証明することができる場合を除く。建設業者・施工業者が賠償した後に,他に責任者がいる場合は,その他の責任者に対し求償する権利を有する。
所有者,管理者,使用者又は第三者の原因により,建築物・構築物又はその他の施設が倒壊・陥没し,他人に損害をもたらした場合は,所有者,管理者,使用者又は第三者が権利利益侵害責任を負う。
第1253条(建築物等からの落下物に関する責任)
建築物・構築物又はその他の施設及びその設置物,懸架物が脱落・墜落し他人に損害をもたらし,所有者,管理者又は使用者が自己に過失がないことを証明できない場合は,権利侵害責任を負わなければならない。所有者,管理者又は使用者が賠償した後に,他に責任者がいる場合は,その他の責任者に対し求償する権利を有する。
第1254条(加害者不明時の補償)
建築物から物を投げ出すことを禁止する。建築物の中から投げ出された物,又は建築物からの落下物により他人に損害をもたらした場合は,侵害者が法に従い権利侵害責任を負う。調査を経ても具体的な侵害者を特定することが困難な場合は,自己が侵害者でないことを証明できる場合を除き,加害の可能性のある建築物使用者が補償する。加害の可能性のある建築物使用者が補償した後,侵害者に対し求償する権利を有する。
不動産管理サービス会社等の建物管理者は,必要な安全保障措置を講じて前項が規定する状況の発生を防止しなければならない。必要な安全保障措置を講じない場合は,法に従い安全保障義務を履行しなかった権利侵害責任を負わなければならない。
本条第⚑項が規定する状況が生じた場合
中華人民共和国民法典(⚒・完)(xx・x)
は,警察等の機関は法に従い遅滞なく調査し,責任者を突き止めなければならない。第1255条(積み置きされた物の倒壊に関す
る責任)
積み置きされた物が倒壊・転落又は落下し,他人に損害をもたらした場合において,積み置きをした者は,自己に過失がないことを証明できないときは,権利侵害責任を負わなければならない。
第1256条(公道における物の積み置き等に関する責任)
公道に通行を妨害する物を積み置き,ぶちまけ,散乱させて,他人に損害をもたらした場合は,行為者が権利侵害責任を負わなければならない。公道の管理者は,清掃,防護,警告等の義務を尽くしたことを証明できない場合は,相応の責任を負わなければならない。
第1257条(xxの倒壊等に関する責任)
xxが折れ,倒壊し,又はその果実が落下して,他人に損害をもたらした場合において,xxの所有者又は管理者は,自己に過失がないことを証明できないときは,権利侵害責任を負わなければならない。
第1258条(公共の場所・公道での工事に関する責任)
公共の場所又は公道において掘削作業を行い,地下施設等を修繕し取付けて,他人に損害をもたらした場合において,施工者は,明確な標識を設置し,安全措置を講じたことを証明できないときは,権利侵害責任を負わなければならない。
マンホール等の地下設備が他人に損害をもたらし,管理者が管理の職責を尽くしたことを証明できない場合は,権利侵害責任を負わなければならない。
附則
第1259条(数量・期間の起点)
民法でいう「以上」,「以下」,「以内」,
「満了」は,当該数を含む。「未満」,「超過」,「以外」は,当該数を含まない。 第1260条(施行日及び法律の廃止)
本法は,2021年⚑月⚑日より施行する。
「中華人民共和国婚姻法」,「中華人民共和国相続法」,「中華人民共和国民法通則」,
「中華人民共和国養子縁組法」,「中華人民共和国担保法」,「中華人民共和国契約法」,
「中華人民共和国物権法」,「中華人民共和国権利侵害責任法」,「中華人民共和国民法総則」は,同時に廃止する。